説明

柿染色布を利用した染色方法

【課題】柿染色布を利用した染色方法を提供する。
【解決手段】染色方法は、天然繊維を温水で濯いで軟らかくするステップS10と、青柿から抽出された柿渋染液に、染色しようとする天然繊維を浸漬して日光に露出及び乾燥させつつ第1次柿渋発色を行うステップS20と、アイ染液に前記天然繊維を浸漬した後、空気に露出させる酸化発色を2回繰り返して行い、酢を希薄させた水に浸漬した後に濯ぐステップS30と、柿渋染液に浸漬した後に乾燥させて第2次柿渋発色を行い、次いでクチナシまたはコチニール染液に浸漬して天然繊維を揉んだ後、ミョウバン溶液に浸漬して清い水が出るまで濯ぎ、その後、日光に露出させて乾燥させるステップS40と、柿渋染液に浸漬した後に日光に露出させて第3次柿渋発色を行うステップS50とを含む。これにより、自然かつ多様な色が発色した柿染色布を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柿染色布を利用した染色方法に係り、さらに詳細には、柿渋で染色した柿染色布に、天然植物材料であるアイ、クチナシ、コチニールを染色剤として天然染色を行って、自然でかつ多様な色を発現させることができ、通風性の良好な天然繊維を得ることができる柿染色布を利用した染色方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、柿渋を利用した染色は、柿服という名称で済州島を中心にした伝統工芸染色の一つであって、青柿から得た柿汁を繊維に沈積させた後、数週ないし数ヶ月にわたって日光に露出させて発色させることによって染物を得る。
そして、柿染色布は、前記柿渋の染色方法を利用して、天然原緞に柿渋を染色して乾燥させる過程を繰り返すことによって茶色に発色させた布を言う。
【0003】
前記のような柿渋染色における発色過程は、青柿中のタンニン成分が繊維に染着され、日光のエネルギーによってタンニン分子がゆっくり高分子化することによって赤褐色に発色する。
タンニン成分で染色すれば、布の通気性が良く、色が長く維持され、湿気に強くなるため、海岸や島嶼地方では網や作業服に柿渋を染色して使用する。
【0004】
ところが、日光に露出させる時間が長ければ長いほど、タンニンの分子量が次第に大きくなり、色が深色化するため、所望の色の繊維を得るには長期間がかかるだけでなく、大量の労動力が必要である。
【0005】
また、柿渋染色の短所は、タンニンの成分が最も多いとき、すなわち、青柿であるときに染材を採取せねばならなく、染色から発色までは長期間がかかるが、発色の途中に雨が降るときには日光が不十分であるため発色しない。また、発色する色が茶色系に限定され、天然物であるため、内部に残存する酵素によって醗酵または腐敗してしまって染みが生じ、したがって、所望する多様かつ美麗な天然色を得ることができないという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記問題点を解決するためになされたものであって、柿渋染色を行った柿染色布に、天然植物材料であるアイ、クチナシ、コチニールを染色剤として自然で美麗かつ多様な色を発現させることができる天然染色方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明によると、前記の目的を達成するための本発明に係る柿染色布を利用した染色方法は、天然繊維を温水で濯いで軟らかくするステップと、青柿から抽出された柿渋染液に、染色しようとする天然繊維を浸漬して日光に露出及び乾燥させつつ第1次柿渋発色を行うステップと、アイ染液に前記天然繊維を浸漬した後、空気に露出させる酸化発色を2回繰り返して行い、酢を希薄させた水に浸漬した後に濯ぐステップと、柿渋染液に浸漬した後に乾燥させて第2次柿渋発色を行い、次いでクチナシまたはコチニール染液に浸漬して天然繊維を揉んだ後、ミョウバン溶液に浸漬して清い水が出るまで濯ぎ、その後、日光に露出させて乾燥させるステップと、柿渋染液に浸漬した後に日光に露出させて第3次柿渋発色を行うステップと、を含むことを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の発明によると、本発明に係る柿染色布を利用した染色方法において、前記第1次、第2次、第3次柿渋発色を行うステップで日光で乾燥させて発色させる時間は3日ないし4日間であることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に記載の発明によると、本発明に係る柿染色布を利用した染色方法において、前記酸化発色を行うステップでアイ染液に浸漬する時間は30分以上、第2次柿渋発色後にクチナシまたはコチニール染液に浸漬する時間は10分以上であることを特徴にする。
【0010】
本発明に係る柿染色布を利用した染色方法によれば、茶色系の色を有する柿染色布に天然染色材料を加えることによって、自然で美麗かつ多様な色を発現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る柿染色布を利用した染色過程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、図面に示す実施形態についてさらに詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る柿染色布を利用した染色過程を示すフローチャートである。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る柿染色布を利用した染色方法は、天然繊維の軟化ステップ(S10)、第1次柿渋発色ステップ(S20)、酸化発色ステップ(S30)、第2次柿渋発色後の天然染色ステップ(S40)、第3次柿渋発色ステップ(S50)の順に行うことができる。
【0013】
前記天然繊維の軟化ステップ(S10)は、染色原緞に柿渋を染色する前に、染色原緞である天然繊維を温水で濯いで糊気を除去することによって天然繊維を柔らかくするステップである。
前記天然繊維が軟化ステップで柔らかくなれば、次に行う柿渋染色及び天然染色ステップで染液をさらに多く吸収することができる。
【0014】
次いで、柿渋染液に前記軟化された天然繊維をよく揉んで日光に3日ないし4日間発色させる第1次柿渋発色ステップを行う(S20)。
柿渋の抽出方法は、柿汁から抽出する方法と、柿の葉の汁から抽出する方法とに分けられる。
【0015】
まず、柿汁から柿渋染液を抽出する方法は、地域によって時期の差は多少あるが、7月初旬頃から7月末頃までの柿を利用するが、タンニン成分がなくなる前までの青柿から柿渋を抽出する。
柿は、熟れが足りない青柿に糊付けの効果があり、異物が付きにくいだけでなく、夏にも凉しい。
柿があまりにも熟れれば、渋味がなくなって染色するには良くないため、採取した柿は採取当日に汁を出して使用することが好ましい。
柿渋染液は、採取した柿を臼、ミキサーまたは大型の食品ミキサーで粉砕して、麻布または綿袋に入れて汁を出して抽出する。
【0016】
一方、柿の葉の汁から柿渋染色を抽出する場合には、柿の葉を千切りして粉砕して麻布袋または綿袋に入れて汁を出して柿渋染液を抽出する。
【0017】
本発明の一実施形態で、柿渋染液は、天然繊維からなる染色原緞5ヤードに柿渋染液を約1.8リットル染色し、日光で3ないし4日間乾燥させつつ第1次柿渋発色を行えば、天然繊維は柿染色布になる。
【0018】
次いで、前記第1次柿渋発色した柿染色布をアイ染液に約30分間浸漬して空気に露出させて酸化発色を2回繰り返して行い、酢を希釈させた水に約10分間浸漬して濯ぐ(S30)。
【0019】
このとき、アイ染液は、前記染色原緞である柿染色布5ヤードに、アイを乾燥させたアイ粉250gを水にこねて準備する。
前記のアイ染液は、原緞を青色系に発色させるものであって、発色する濃度によって前記アイ粉250gに混合する水の量は1.8リットルから18リットルまで多様に選択することができる。
【0020】
次いで、前記酸化発色した柿染色布をS20と同様に柿渋染液に浸漬した後、日光で3日ないし4日間乾燥させて第2次柿渋発色させた後、クチナシまたはコチニール染液で約10分間揉んでミョウバン溶液に約5分間浸漬してから取り出し、清い水が出るまで濯いだ後、日光で十分に乾燥させて天然染色処理を行う(S40)。
【0021】
前記天然染色ステップで使用される染色材料であるクチナシは、原緞を黄色系の色に発色させるものであって、乾燥したクチナシの実100gを水に入れて沸かして煎じ出すことによってクチナシ染液を準備するが、発色する濃度によって混合する水の量は1.8リットルから18リットルまで多様に選択することができる。
【0022】
また、前記コチニールは、サボテンに寄生する虫の一種であって、乾燥したコチニール100gを水と混合して沸かして煎じ出することによってコチニール染液を準備するが、発色する濃度によって混合する水の量は1.8リットルから18リットルまで多様に選択することができる。
【0023】
前記天然染色ステップで天然染色材料によってさらに良好に発色させるために、天然材料染液で浸漬した柿染色布をミョウバン溶液に約5分間浸漬するが、前記ミョウバン溶液はミョウバン50gと水5リットルとを混合して準備する。
【0024】
次いで、前記天然染色ステップを経た柿染色布に、S20と同様に再度柿渋染液に浸漬した後、日光で3日ないし4日間乾燥させて第3次柿渋発色させることによって多様かつ自然な色を柿染色布に発色させる(S50)。
【0025】
以上、本発明は、記載された具体的な実施形態についてのみ詳細に説明したが、本発明の技術的思想の範囲内で多様な変形及び修正が可能であるということは当業者にとっては明らかであり、このような変形及び修正が特許請求の範囲に属するということは言うまでもない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然繊維を温水で濯いで軟らかくするステップと、
青柿から抽出された柿渋染液に、染色しようとする天然繊維を浸漬して日光に露出及び乾燥させつつ第1次柿渋発色を行うステップと、
アイ染液に前記天然繊維を浸漬した後、空気に露出させる酸化発色を2回繰り返して行い、酢を希薄させた水に浸漬した後に濯ぐステップと、
柿渋染液に浸漬した後に乾燥させて第2次柿渋発色を行い、次いでクチナシまたはコチニール染液に浸漬して天然繊維を揉んだ後、ミョウバン溶液に浸漬して清い水が出るまで濯ぎ、その後、日光に露出させて乾燥させるステップと、
柿渋染液に浸漬した後に日光に露出させて第3次柿渋発色を行うステップと、を含むことを特徴とする柿染色布を利用した染色方法。
【請求項2】
前記第1次、第2次、第3次柿渋発色を行うステップで日光で乾燥させて発色させる時間は3日ないし4日間であることを特徴とする請求項1に記載の柿染色布を利用した染色方法。
【請求項3】
前記酸化発色を行うステップでアイ染液に浸漬する時間は30分以上、第2次柿渋発色後にクチナシまたはコチニール染液に浸漬する時間は10分以上であることを特徴とする請求項1に記載の柿染色布を利用した染色方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−12379(P2011−12379A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215848(P2009−215848)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(509262312)
【氏名又は名称原語表記】CHOI Soo Man
【住所又は居所原語表記】1245−14,Ido 1−dong,Cheju−Si,Cheju−Do,Korea
【Fターム(参考)】