説明

核医学診断X線CT装置

【課題】呼吸による体動に基づくPET画像のボケを低減でき、かつ1画素あたりの放射線カウント数が多い鮮明な核医学画像を少ない作業で得ることができる核医学診断X線CT装置を提供する。
【解決手段】PET/CT装置1において、データ収集部11は呼吸信号センサ25から収集された呼吸信号から作成されたトリガ信号に基づきPETデータ収集を開始して、サンプリング時間ごとに逐次にフレーム収集する。データ処理部13は収集されたPETデータからPET画像を再構成する。画像補正部16はX線CT装置30で息止め指示されて取得されるX線CT画像に合わせてサンプリング時間ごとに取得されるPET画像を非線形に変形し、画像重ね合わせ部17は変形されたPET画像を重ね合わせ、PET画像X線CT画像重ね合わせ部18はX線CT画像とPET画像とを重ね合わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、核医学診断X線CT装置に係り、特に、呼吸による体動に基づく核医学画像のボケを低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置として、PET/CT装置を例に挙げて説明する。PET/CT装置は、放射性薬剤が投与された被検体から発生する放射線に基づいて被検体のPET画像を求めるPET装置と、被検体の外部から照射されて被検体を透過するX線に基づいて被検体のX線CT画像を求めるX線CT装置とを備える。PET/CT装置に備えられるPET装置は、X線撮影よりも長い時間をかけて被検体から発生する放射線を検出して、検出される放射線カウント数に基づき三次元画像である核医学画像を再構成する。核医学画像は画像処理されてコロナル(環状)断面、アキシャル(体軸)断面、サジタル(矢状)断面に変換される。
【0003】
このようなPET/CT装置に備えられるPET装置で、例えば肺野からPETデータを収集する場合、被検体はPETデータの収集中に呼吸を繰り返すので、被検体が息を吸い込んでいる時間帯に検出される放射線の発生位置と被検体が息を吐き出している時間帯に検出される放射線の発生位置とはズレる。そして、このようなズレによって、再構成されるPET画像は現実の肺野の形態と比べて膨張あるいは収縮してボケる(空間分解能が悪い)。
【0004】
このように肺野のPET画像は空間分解能が悪いので、呼吸ゲートと呼ばれる撮影法が存在する。呼吸ゲートは、被検体の呼吸をセンサーで検出し、一定時間内に収集されるデータのうち吸気相あるいは呼気相のデータのみを収集する撮影法である。このような呼吸ゲートによって得られるPET画像は同一位相の画像であるのでボケが少ないが、単一位相で発生する放射線しか検出しないので放射線のカウント不足によってノイズが発生する(S/Nが悪化する)。
【0005】
単体のSPECT装置では、呼吸ゲートSPECTによって呼気相の画像と吸気相の画像をそれぞれ再構成し、次に一方の位相の画像に合わせて他方の位相の画像を非線形に変形し、最後に2つの位相の画像を合成する手法が存在する(例えば、非特許文献1参照)。また、肺野のPET画像においても同様の手法が紹介されている(非特許文献2参照)。
【非特許文献1】植英規、羽石秀昭、岩永秀幸、大石誉奈、井手正紘、菅一能「呼吸ゲートSPECT画像における非線形の動き補正」『信学技報』MI2004−56(2005−1)
【非特許文献2】植英規、山崎智浩、羽石秀昭「呼吸同期PETにおける呼吸補正法の提案」『MEDICAL IMAGING TECHNOLOGY』Vol.24 No.4(2006年9月)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、従来のPET/CT装置は、呼吸ゲート機能が備えられていないので、CT画像と全ての呼吸位相のデータに基づき再構成されるPET画像とを重ね合わせた画像はボケる(空間分解能が悪い)という問題がある。また、たとえ呼吸ゲート機能を備えたとしても、呼気相と吸気相のPET画像とを非線形に変換して合成されるPET画像とCT画像とを重ね合わせても、呼吸ゲートPETは呼気相と吸気相で発生する放射線しか検出できないので、放射線カウント数が不足して、重ね合わせた画像にノイズが発生する(S/Nが悪い)という問題がある。
【0007】
またさらに、非特許文献1または非特許文献2に記載されるように、一方の位相の画像に合わせて他方の位相の画像を非線形に変形し、最後に2つの位相の画像を合成する手法をPET/CT装置に応用した場合でも、肺のPET/CT画像を取得する場合、被検体が息を吸って止めている間に取得されるX線CT画像上の肺は、吸気相に合わせて変形されたPET画像上の肺よりも大きく膨らむので、このX線CT画像とPET画像とは正確に重ならない。その結果、X線CT画像とPET画像との重ね合わせ画像は空間分解能が悪く、S/Nが悪いという問題がある。
【0008】
そのため、従来、X線CT画像とPET画像とを正確に重ね合わせるには、まず、呼吸ゲートPETによって取得される呼気相のPET画像と吸気相のPET画像とを吸気相のPET画像に合わせて変形する。次に、変形されたPET画像と被検体が息を吸って止めている間に取得されるX線CT画像とを重ねあわせるが、重ならないので、このX線CT画像に合わせてPET画像を再び変形させる作業が必要である。
【0009】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、呼吸による体動に基づくPET画像のボケを低減でき、かつ1画素あたりの放射線カウント数が多い鮮明な核医学画像を少ない作業で得ることができる核医学診断X線CT装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1記載の発明は、放射性薬剤が投与された被検体から発生する放射線に基づいて被検体の核医学用データを求める核医学診断装置と、被検体の外部から照射されて被検体を透過するX線に基づいて被検体のX線CT画像を求めるX線CT装置とを備えた核医学診断X線CT装置において、被検体から生じる生体信号を収集する生体信号収集手段と、前記生体信号と関連付けて前記核医学用データを収集するデータ収集手段と、関連付けられた生体信号データを利用して、前記核医学用データから各生体信号の相毎の被検体の核医学画像を再構成する再構成手段と、前記各生体信号の相ごとに取得される核医学画像を被検体が息を止めている状態で取得されるX線CT画像に合わせて変形して各生体信号の相毎の核医学画像上の動きを補正する画像補正手段と、前記補正された核医学画像を重ね合わせる画像重ね合わせ手段と、重ね合わせて得られた核医学画像と前記被検体が息を止めている状態で取得されるX線CT画像とを重ね合わせる核医学画像X線CT画像重ね合わせ手段とを備えることを特徴とするものである。
【0011】
[作用・効果]請求項1記載の発明によれば、データ収集手段は、生体信号と関連付けて核医学用データを収集する。関連付けられた生体信号データを利用して、再構成手段は、このように収集される核医学用データから各生体信号の相毎の核医学画像を再構成する。画像補正手段は、各生体信号の相ごとに取得される核医学画像を被検体が息止めしている状態で取得されるX線CT画像に合わせて変形する。画像重ね合わせ手段は、このように変形される核医学画像を重ね合わせる。核医学画像X線CT画像重ね合わせ手段は、このように重ね合わされる核医学画像と前述のX線CT画像とを重ね合わせて、核医学画像とX線CT画像との重ね合わせ画像を取得する。このようにこの発明によれば、生体信号の相ごとに取得される核医学画像が息止めしている状態で取得されるX線CT画像に合わせて変形され、この変形される核医学画像が重ね合わされるので、この重ね合わされる核医学画像は息止めしている状態で取得されるX線CT画像に容易に一致する。よって、X線CT画像と核医学画像とを重ね合わせる際に、核医学画像を変形させる作業は一度で済む。
【0012】
したがって、X線CT画像と核医学画像とが容易に一致するので、呼吸による体動に基づくボケを低減でき、かつ1画素あたりの放射線カウント数が多い鮮明な核医学画像とX線CT画像との重ね合わせ画像を取得できる。
【0013】
また、請求項2記載の発明は、請求項1に記載の核医学診断X線CT装置において、前記装置は、前記生体信号からトリガ信号を作るトリガ信号作成手段を備え、前記データ収集手段は、前記トリガ信号に基づき前記核医学用データの収集を開始してサンプリング時間ごとに前記核医学用データを収集し、前記再構成手段は、前記核医学用データから各サンプリング時間毎の被検体の核医学画像を再構成し、前記画像補正手段は、前記サンプリング時間ごとに取得される核医学画像を被検体が息を止めている状態で取得されるX線CT画像に合わせて変形して前記サンプリング時間ごとに取得される核医学画像上の動きを補正することを特徴とするものである。
【0014】
[作用・効果]請求項2記載の発明によれば、生体信号からトリガ信号を作るトリガ信号作成手段を備えることで、生体信号の相をサンプリング時間に限定して、トリガ信号に基づきサンプリング時間ごとに核医学用データを収集し、各サンプリング時間毎の被検体の核医学画像を再構成して、サンプリング時間毎の核医学画像が取得される。
【発明の効果】
【0015】
この発明に係る核医学診断X線CT装置によれば、生体信号の相ごとに取得される核医学画像が息止めしている状態で取得されるX線CT画像に合わせて変形され、この変形される核医学画像が重ね合わされるので、この重ね合わされる核医学画像は息止めしている状態で取得されるX線CT画像に容易に一致する。よって、X線CT画像と核医学画像とを重ね合わせる際に、核医学画像を変形させる作業は一度で済む。
【0016】
したがって、呼吸による体動に基づくボケを低減でき、かつ1画素あたりの放射線カウント数が多い鮮明な核医学画像をX線CT画像に重ね合わせることができる。この重ね合わせ像は従来のものと比べて、空間分解能およびS/Nが改善されているといえる。
【0017】
その結果とくに、核医学画像をコロナル断面で観察したときに境界が判然としない肺と肝臓について、より鮮明な核医学画像とX線CT画像との重ね合わせ画像を取得できるので、肺の下部に発生するガン部を肝臓ガンと誤って診断することを防止することができる。また反対に、肝臓の上部に発生するガン部を肺ガンと誤って診断することを防止することができる。
【0018】
さらに、従来の呼吸ゲートPETは呼吸センサで呼吸を呼気相と吸気相とに分けてデータ収集しているので、呼吸センサの検出精度がよくない場合や被検体が老齢者や病人など強い呼吸ができない者である場合に放射線カウント数が少ないという問題があるが、本発明に備えられるデータ収集手段は生体信号の相ごとに核医学用データを収集するので、呼吸センサの検出精度や被検体の健康状態に依存することなく十分な放射線カウント数が得られる。その結果、このような核医学画像とX線CT画像とが重ね合わされる画像によって、医師は従来よりも正確にガンを診断できる。
【実施例1】
【0019】
以下、図面を参照してこの発明の実施例1を説明する。
図1は、実施例1に係るPET/CT装置の全体構成図であり、図2は、実施例1に係るPET装置におけるPETデータ収集の際に使用されるタイミングチャートであり、図3は、実施例1に係るPET/CT装置において各位相で取得されるPET画像の模式図である。図4(a)は、実施例1に係るPET/CT装置におけるずれ補正の対象となるPET画像であり、(b)は基準となるX線CT画像である。
【0020】
図1に記載されるように、実施例1に係わるPET/CT装置1に備えられるPET装置2は、放射性薬剤が投与された被検体Pから発生する放射線を検出してPETデータを検出する一群の検出器3と、検出器3がトンネル部4の周囲にリング状に設けられるガントリ5と、被検体Pを載置してトンネル部4を出入する天板7が設けられるベッド9と、検出器3が検出するPETデータを収集するデータ収集部11と、収集されるPETデータをデータ処理するデータ処理部13と、データ収集やデータ処理や天板駆動やガントリ駆動を制御する制御部15とを備える。
【0021】
PET/CT装置1に備えられるCT装置30は、被検体Pに対してコーン状のX線を照射するX線管31と、X線管31から照射されるX線を検出するX線検出器33と、X線管31とX線検出器33とをCTトンネル部35を挟んで対向配置するCTガントリ部37と、「息を吸って止めて下さい。」「息を吐いて楽にして下さい。」などの音声をスピーカで被検体Pに聞かせて呼吸指示をする呼吸指示部39と、X線検出器33で検出されるCTデータを収集するCTデータ収集部41と、収集されたCTデータからCT画像を再構成するCTデータ処理部43とを備える。
【0022】
さらに、PET/CT装置1は、X線CT画像に合わせてPET画像を変形する画像補正部16と、変形されるPET画像を重ね合わせる画像重ね合わせ部17と、PET画像とX線CT画像とを重ね合わせるPET画像X線CT画像重ね合わせ部18と、入力部21および出力部23とが備えられる。さらに、PET装置1には、天板7に載置される被検体Pの呼吸位相を検出する呼吸信号センサ25が備えられ、A/D変換器27を介してアナログからディジタルに変換して、呼吸信号は制御部15に出力される。
【0023】
なお、データ収集部11はこの発明のデータ収集手段に相当し、データ処理部13はこの発明の再構成手段に相当し、制御部15はこの発明のトリガ信号作成手段に相当し、画像補正部16はこの発明の画像補正手段に相当し、画像重ね合わせ部17はこの発明の画像重ね合わせ手段に相当し、PET画像X線CT画像重ね合わせ部18はこの発明の核医学画像X線CT画像重ね合わせ手段に相当し、呼吸信号センサ25はこの発明の生体信号収集手段に相当する。また、PET装置1はこの発明の核医学診断装置に相当し、PETデータはこの発明の核医学用データに相当し、PET画像はこの発明の核医学画像に相当する。X線CT装置30はこの発明のX線CT装置に相当する。
【0024】
入力部21は、1フレームあたりのデータ収集時間であるサンプリング時間を設定する。
【0025】
呼吸信号センサ25は、被検体Pの鼻あるいは口周りに装着されるセンサで、呼吸運動に伴いセンサ内の空気圧が変化すると、これを検知して気圧を電圧値に変換して、アナログ信号を出力するものである。このアナログ信号が呼吸信号となる。呼吸信号は制御部15に出力される。なお、呼吸信号は本発明の生体信号に相当する。
【0026】
図2に示すように、制御部15は、PETデータ収集の開始タイミングをとるトリガ信号Bを生体信号Aから作成する。制御部15は、被検体Pが最も深く息を吸い込んだ時点T1に同期してトリガ信号Bを発生させる。制御部15は、このトリガ信号Bをデータ収集部11に出力して、データ収集部11にデータ収集を開始させる。制御部15は、トリガ信号Bの立ち上がり時点T1に同期してサンプリング時間ごとにPETデータを収集するサンプリング信号Cをデータ収集部11に出力する。制御部15は、サンプリング信号Cの立ち下りT2,T4,T6に同期してフレームを切り換えるフレーム切換信号Dをデータ収集部11に出力する。
【0027】
データ収集部11は、トリガ信号Bに従ってデータ収集を開始し、サンプリング信号Cに従ってPETデータを収集し、フレーム切換信号Dに従って次のフレームに移動してサンプリング時間の間隔でPETデータを収集する。収集されたデータはデータ処理部13に出力される。
【0028】
データ処理部13は、データ収集部11から入力されたPETデータを各フレームごとに画像再構成する。データ処理部13は、図3に示すように、サンプリング時間を時相とするPET画像を作成する。図3(a)は被検体Pが最も深く息を吸い込んだ時点の肺部のPET画像であり、図2のタイミングT1とT2との間の時相で取得されたものである。図3(b)のPET画像は図2のタイミングT3とT4との間の時相で取得されたものであり、図3(c)のPET画像は図2のタイミングT5とT6との間の時相で取得されたものである。
【0029】
図4を参照してPET画像のずれ補正について説明する。図4(a)はサンプリング時間ごとに取得されるPET画像である。図4(b)は息止め指示されて得られるX線CT画像である。画像補正部16は、前記サンプリング時間ごとに取得されるPET画像を息止め指示されて得られるX線CT画像に合わせて変形する。
【0030】
具体的には、三次元的な格子状に配置される多数の制御点M群からなる変形領域を変形対象となる位相の画像上に定義して、各制御点Mを三次元的に移動させる。各制御点M間の変位は、各制御点の周囲に存在する8点の制御点Mの移動状態を基に線形補間によって決定する。
【0031】
PET画像を非線形に変形すると、PET画像上のトレーサー粒子の密度分布が変化するので、変形後のPET画像の画素値を補正する必要がある。ここでは、PET画像上のトレーサー粒子の密度分布の変化と変形後のPET画像の画素値とを対応させる補正係数を以下のように求める。変形後のPET画像の画素値と補正係数とを積算することで、トレーサー粒子の密度分布の変化に対応する変形後の画素値が求まる。
【0032】
k(r)=Vafter(r)/Vbefore(r
【0033】
なお、Vbefore(r)とVafter(r)は、変形領域内の各画素位置rを取り囲むように存在する8つの制御点が構成する6面体の変形前後の体積を示す。補正係数は0.0以上の値をとり、6面体が引き伸ばされたら1.0より大きな値になり、逆に6面体が縮められたら1.0より小さな値になる。
【0034】
画像重ね合わせ部17は、各時相で取得されるPET画像を基準となる図4(b)のX線CT画像に重ね合わせて、1つのPET画像を形成する。各時相のPET画像は図4(b)のX線CT画像を基準に三次元的に変形されて重ね合わされるので、重ね合わせられたPET画像は被検体Pの呼吸による体動の影響が現れにくい。
【0035】
次に図1を参照して、この実施例に係るPET/CT装置1に備えられるX線CT装置30について説明する。
【0036】
制御部15は、「息を吸って止めて下さい。」という呼吸指示から「息を吐いて楽にして下さい。」という呼吸指示までの間、すなわち被検体Pが息を止めている間にX線を照射するようにX線管31のX線照射を制御する。
【0037】
CTデータ収集部41は、被検体Pが息を止めている間にX線管31が照射して、X線検出器33が検出するCTデータを収集する。CTデータ処理部43は被検体Pが息を止めている間に取得されるCTデータに基づいてCT画像を再構成するので、再構成されるCT画像は被検体Pの呼吸に基づく体動の影響が現れない。CTデータ処理部43は、CT画像を画像重ね合わせ部17に出力する。なお、被検体Pが息を止めている間に取得されるCTデータに基づいて再構成されるCT画像はこの発明の基準となるX線CT画像に相当する。
【0038】
画像重ね合わせ部17ではすでに、各サンプリング時間ごとに取得されたPET画像が非線形に変形されて、被検体Pが最も深く息を吸い込んだ時点を基準とするPET画像に残りのPET画像が重ね合わせられて、重ね合わせ処理済みのPET画像が取得されている。画像重ね合わせ部17は、被検体Pが最も深く息を吸い込んだ時点を基準として重ね合わせ処理されたPET画像と、呼吸指示して被検体Pが息を止めている間に取得されるCT画像とを重ね合わせるので、両画像はぴったりと重なり合う。
【0039】
次に、X線CT画像とPET画像との重ね合わせについて説明する。PET画像X線CT画像重ね合わせ部18は、被検体Pが息を止めている間に取得されるCT画像と、そのCT画像と同じ位相に変形されて重ね合わせられるPET画像とを重ね合わせる。
【0040】
実施例1に係るPET/CT装置1によれば、データ収集部11は呼吸信号センサ25から収集された呼吸信号から作成されたトリガ信号に基づきPETデータ収集を開始して、設定されたサンプリング時間の間PETデータをフレームごとに収集し続け、サンプリング時間毎に出力されるフレーム切換信号に基づき次のフレームにPETデータを収集する。データ処理部13は各フレームごとに収集されたPETデータからPET画像を再構成する。画像補正部16はX線CT装置30で息止め指示されて取得されるX線CT画像に合わせて他のサンプリング時間T1−T2、T3−T4、T5−T6等で取得されるPET画像を非線形に変形する。画像重ね合わせ部17は変形されたPET画像を重ね合わせる。PET画像X線CT画像重ね合わせ部18は息止め指示されて取得されるX線CT画像と変形されたPET画像とを重ね合わせる。これにより、サンプリング時間ごとに取得されるPET画像が息止めしている状態で取得されるX線CT画像に合わせて変形され、この変形されるPET画像が重ね合わされるので、この重ね合わされるPET画像は息止めしている状態で取得されるX線CT画像に容易に一致する。よって、X線CT画像とPET画像とを重ね合わせる際に、PET画像を変形させる作業は一度で済む。
【0041】
したがって、呼吸による体動に基づくボケを低減でき、かつ1画素あたりの放射線カウント数が多い鮮明なPET画像を取得できる。これにより、PET装置1では呼吸による体動に基づくボケを低減でき、かつ1画素あたりの放射線カウント数が多い鮮明なPET画像を取得できる。このようにして取得されるPET画像を呼吸指示して被検体Pが息を止めている間に取得されるCT画像に重ね合わせるので、呼吸による体動に基づくボケを低減でき、かつ1画素あたりの放射線カウント数が多い鮮明なPET画像をX線CT画像に重ね合わせることができる。この重ね合わせ像は従来のものと比べて、空間分解能およびS/Nが改善されているといえる。
【0042】
その結果、被検体Pの形態情報が豊富なX線CT画像と重ね合わせてガンなどの病変部が存在する臓器を正確に診断できる。とくに、PET画像をコロナル断面で観察したときに境界が判然としない臓器(例えば肺と肝臓)で、肺と肝臓といった呼吸による体動により位置関係が大きく変化する臓器について、PET画像上で重ならないよう補正することができるので、肺ガンを肝臓ガンと誤って診断することを防止することができる。
【0043】
さらに、従来の呼吸ゲートPETは呼吸センサで呼吸を呼気相と吸気相とに分けてデータ収集しているので、呼吸センサの検出精度がよくない場合や被検体Pが老齢者や病人など強い呼吸ができない者である場合に放射線カウント数が少ないという問題があるが、本実施例1に備えられるデータ収集部11はサンプリング時間ごとにPETデータを収集するので、呼吸センサの検出精度や被検体Pの健康状態に依存することなく十分な放射線カウント数が得られる。その結果、このようなPET画像とX線CT画像とが重ね合わされる画像によって、医師は従来よりも正確にガンを診断できる。
【実施例2】
【0044】
次に、図面を参照してこの発明の実施例2を説明する。
図5は、実施例2に係るPET装置におけるPETデータ収集の際に使用されるタイミングチャートである。
【0045】
上述した実施例1では、生体信号(実施例1では呼吸信号)からトリガ信号を作るトリガ信号作成手段の機能を制御部15が備えることで、生体信号の相をサンプリング時間に限定して、トリガ信号に基づきサンプリング時間ごとにPETデータを収集し、各サンプリング時間毎の被検体Pの核医学画像を再構成して、サンプリング時間毎のPET画像が取得されていた。本実施例2では、生体信号からトリガ信号を作らずに任意のタイミングでトリガ信号を出力している。
【0046】
図5に示すように、本実施例2では、PETデータ収集の開始タイミングをとるトリガ信号Bを生体信号Aから作成せずに、任意のタイミングで出力する。制御部15は、このトリガ信号Bをデータ収集部11に出力して、データ収集部11にデータ収集を開始させる。制御部15は、トリガ信号Bの立ち上がり時点T1に同期してPETデータを収集するサンプリング信号Cをデータ収集部11に出力する。本実施例2でのサンプリング信号Cは、実施例1のようなサンプリング時間ごとに出力されずに連続的に出力される。したがって、サンプリング時間よりも短い時間間隔でPETデータを連続的に収集する。収集されたPETデータのうち、データ取り出し信号Eに同期して、そのデータ取り出し信号Eの出力でのタイミングのPETデータのみを取り出すことで、PETデータを選択的に収集している。
【0047】
生体信号AからPETデータの時相を識別して、データ取り出し信号Eの出力のタイミングを決定することで、そのデータ取り出し信号Eの出力でのタイミングのPETデータのみを取り出す。このようなタイミングでPETデータを取り出して収集することで、生体信号Aと関連付けてPETデータを収集することが可能である。図5のチャートでは、生体信号Aの吸気相のタイミングでデータ取り出し信号Eを出力し、吸気相ごとにPETデータ、さらにはPET画像を取得したが、吸気相のタイミングに限定されず、任意のタイミングでもよい。したがって、生体信号AからPETデータの時相を識別して、データ取り出し信号Eの出力のタイミングを任意に決定してもよい。また、データ取り出し信号EがONになっている時間幅(すなわちPETデータの取り出し時間)も任意に変更することができる。なお、データ取り出し信号Eを発生させずに、生体信号AからPETデータの時相を識別して、その時相ごとに合わせてPETデータを選択して収集することも可能である。
【0048】
実施例2に係るPET/CT装置1によれば、データ収集部11は、生体信号Aと関連付けてPETデータを収集する。関連付けられた生体信号データを利用して、データ処理部13はPETデータから各生体信号Aの相毎のPET画像を再構成する。画像補正部16は各生体信号Aの相ごとに取得されるPET画像をX線CT装置30で息止め指示されて取得されるX線CT画像に合わせて非線形に変形する。画像重ね合わせ部17は変形されたPET画像を重ね合わせる。PET画像X線CT画像重ね合わせ部18は息止め指示されて取得されるX線CT画像と変形されたPET画像とを重ね合わせる。これにより、生体信号Aの相ごとに取得されるPET画像が息止めしている状態で取得されるX線CT画像に合わせて変形され、この変形されるPET画像が重ね合わされるので、この重ね合わされるPET画像は息止めしている状態で取得されるX線CT画像に容易に一致する。よって、実施例1と同様に、X線CT画像とPET画像とを重ね合わせる際に、PET画像を変形させる作業は一度で済む。
【0049】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0050】
(1)上述した各実施例では、本発明の生体信号として呼吸信号を例に挙げて説明したが、この他に心拍信号であっても構わない。
【0051】
(2)上述した各実施例では、PET/CT装置1でX線照射して検出されるX線CTデータに基づきX線CT画像を取得したが、すでに別のX線CT装置で呼吸指示して取得されたX線CT画像に基づいて画像重ね合わせをしても構わない。
【0052】
(3)上述した各実施例では、PETデータを再構成して得られた各時相のPET画像を重ね合わせていたが、PETデータを再構成する前に、PETデータを基準となる時相のPETデータに合わせて変形補正して、補正されたPETデータを基準となる時相のPETデータに重ね合わせて、重ね合わせられたPETデータからPET画像を再構成しても構わない。これにより、各生体信号の相(実施例1ではサンプリング時間)ごとに収集されるPETデータは被検体Pの呼吸による体動を補正されるので、再構成されて得られるPET画像は呼吸による体動に基づくボケを低減できる。なお、PETデータの一例はサイノグラムである。
【0053】
(4)上述した各実施例では、本発明の核医学診断装置としてPET装置を例に挙げて説明したがSPECT装置でも構わない。
【0054】
(5)上述した実施例1では、本発明の基準となるサンプリング時間に取得された核医学画像として被検体Pが最も深く息を吸い込んだ時点(図2に示されるT1−T2)を基準とするPET画像を例に挙げて説明したが、被検者Pが最も息を吐いた時点(図2に示されるT5−6)で取得されるPET画像を基準としても、被検者Pの呼吸動の中間時点(図2に示されるT3−T4)で取得されるPET画像を基準としても、その他の時点を基準としても構わない。
【0055】
(6)上述した実施例1では、サンプリング時間を入力部21で設定されるサンプリング時間として説明したが、PET/CT装置1にあらかじめ記憶されるサンプリング時間でも構わない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】実施例1に係る実施例1に係るPET/CT装置を示す全体構成図である。
【図2】実施例1に係る実施例1に係るPET/CT装置におけるPETデータ収集の際に使用されるタイミングチャートである。
【図3】実施例1に係るPET/CT装置において各時相で取得されるPET画像を示す模式図である。
【図4】実施例1に係るPET/CT装置において各時相で取得されるPET画像を非線形に変形する手法を示す模式図である。
【図5】実施例2に係る実施例1に係るPET/CT装置におけるPETデータ収集の際に使用されるタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0057】
1 …PET/CT装置
2 …PET装置
11 …データ収集部
13 …データ処理部
15 …制御部
16 …画像補正部
17 …画像重ね合わせ部
18 …PET画像X線CT画像重ね合わせ部
25 …生体信号センサ
30 …X線CT装置
39 …呼吸指示部
41 …CTデータ収集部
43 …CTデータ処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性薬剤が投与された被検体から発生する放射線に基づいて被検体の核医学用データを求める核医学診断装置と、被検体の外部から照射されて被検体を透過するX線に基づいて被検体のX線CT画像を求めるX線CT装置とを備えた核医学診断X線CT装置において、被検体から生じる生体信号を収集する生体信号収集手段と、前記生体信号と関連付けて前記核医学用データを収集するデータ収集手段と、関連付けられた生体信号データを利用して、前記核医学用データから各生体信号の相毎の被検体の核医学画像を再構成する再構成手段と、前記各生体信号の相ごとに取得される核医学画像を被検体が息を止めている状態で取得されるX線CT画像に合わせて変形して各生体信号の相毎の核医学画像上の動きを補正する画像補正手段と、前記補正された核医学画像を重ね合わせる画像重ね合わせ手段と、重ね合わせて得られた核医学画像と前記被検体が息を止めている状態で取得されるX線CT画像とを重ね合わせる核医学画像X線CT画像重ね合わせ手段とを備えることを特徴とする核医学診断X線CT装置。
【請求項2】
請求項1に記載の核医学診断X線CT装置において、前記装置は、前記生体信号からトリガ信号を作るトリガ信号作成手段を備え、前記データ収集手段は、前記トリガ信号に基づき前記核医学用データの収集を開始してサンプリング時間ごとに前記核医学用データを収集し、前記再構成手段は、前記核医学用データから各サンプリング時間毎の被検体の核医学画像を再構成し、前記画像補正手段は、前記サンプリング時間ごとに取得される核医学画像を被検体が息を止めている状態で取得されるX線CT画像に合わせて変形して前記サンプリング時間ごとに取得される核医学画像上の動きを補正することを特徴とする核医学診断X線CT装置。
【請求項3】
請求項1に記載の核医学診断X線CT装置において、前記核医学用データを連続的に収集し、その収集された核医学用データのうち、前記生体信号から核医学用データの時相を識別して、データ取り出し信号の出力のタイミングを決定することで、そのデータ取り出し信号の出力でのタイミングの核医学用データのみを取り出して収集することを特徴とする核医学診断X線CT装置。
【請求項4】
請求項1に記載の核医学診断X線CT装置において、前記核医学用データを連続的に収集し、その収集された核医学用データのうち、前記生体信号から核医学用データの時相を識別して、その時相ごとに合わせて核医学用データを選択して収集することを特徴とする核医学診断X線CT装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−156856(P2009−156856A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−115633(P2008−115633)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】