説明

核酸および/または他の構成要素を含有している合成ナノ構造体

合成ナノ構造体を含むナノ構造体と関係がある物品、組成物、キット、および方法を提供する。本明細書中に記載する特定の実施形態には、コア−シェル型配置を有している構造体が含まれる;例えば、ナノ構造体コアは、脂質二重層などの材料を含むシェルで囲繞することができ、オリゴヌクレオチドのような他の成分を含めることができる。いくつかの実施形態においては、構造体は、被験体に導入すると、核酸を送達するために使用することができ、および/または遺伝子発現を調節することができる。したがって、本明細書中に記載する構造体は、特定の疾患または身体状態を診断する、予防する、処置する、または管理するために使用することができる。いくつかの場合には、構造体は、治療薬および診断薬の両方である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、核酸および/または他の構成要素(entity)を含有している合成ナノ構造体に関する。ナノ構造体は、治療用途および/または診断用途に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
非ウイルスナノ粒子(NP)処方物は、短い治療用核酸(NA)オリゴヌクレオチド(例えば、アンチセンス−DNA(AS−DNA)、siRNA、およびmicroRNA)の標的化した細胞性送達についての固有の問題に取り組むために開発されている。化学的アプローチは、細胞の生物学的システムが合成ナノ構造体に曝されると生じる界面での問題を克服するNPの能力を強化するための限りなく高くなる生体模倣(biomimetic)能力を持つ様々な合成NPプラットフォームを提供するために利用されている。核酸送達および遺伝子調節の分野は進歩しているが、改良により多数の様々な分野での用途が見出されるであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
発明の概要
本発明は一般的に、核酸および/または他の構成要素を含有しているナノ構造体に関する。上記ナノ構造体は、治療用途および/または診断用途に使用することができる。上記ナノ構造体は、かなり多くの疾患プロセス(アテローム性動脈硬化症、炎症、およびがんを含むがこれらに限定されない)について核酸治療薬の標的化したインビボ送達について有用性を見出すことができる。本発明の主題には、いくつかの場合、相互関係のある生成物、特定の問題についての代替的な解決策、ならびに/あるいは1つ以上のシステムおよび/または物品の複数の様々な使用が含まれる。
【0004】
特定の状態の予防または処置のために化合物を被験体に投与するいくつかの方法を本明細書中で開示する。本発明の個々のそのような態様においては、本発明にはまた具体的に、その特定の状態の処置もしくは予防において使用するための化合物、ならびにその特定の状態の処置もしくは予防用の医薬品の製造のための上記化合物の使用も含まれることが理解される。
【0005】
別の態様においては、本発明は、本明細書中に記載する実施形態のうちの1つ以上、例えば、ナノ粒子を鋳型とする生体模倣物を含有している構造体を作製する方法に関する。別の態様においては、本発明は、本明細書中に記載する実施形態のうちの1つ以上を使用する方法に関する。上記構造体には、いくつかの実施形態においては、高密度リポタンパク質のナノ粒子を鋳型とする生体模倣物(「HDL NP」)が含まれ得る。例えば、上記構造体は、HDLと同じもしくは類似する形状、サイズ、および/または密度を有し得、そして/あるいは上記構造体は、内因性HDLと似ている表面特徴および/または表面濃度(例えば、Apo A−1(アポリポタンパク質)および/またはApo A−II、ならびに/あるいはそれらの成分の存在)を含み得る。上記構造体には、いくつかの実施形態において、内因性HDLに見られるものと似ているリン脂質が含まれ得る。いくつかの実施形態においては、上記構造体に、金から形成されたナノ構造体コアが含まれ得る。しかし、他のナノ構造体コアおよび材料を、他の実施形態において生体模倣構造体を形成させるための鋳型として使用できることが理解されるものとする。
【0006】
本発明の1つの態様は一般的に、核酸を送達するための生物学的システムと自然に調和する、生体模倣ナノ構造体の製造、特別の調製(directed tailoring)、およびインビトロでの特性決定に関する。高密度リポタンパク質(HDL)は、数多くの有益な機能を持つ自然に循環するヒトのナノ構造体である。HDLは、内皮細胞、マクロファージ、および肝細胞を含む特定の細胞タイプを自然に標的化する。ボトムアップ合成アプローチを使用して、天然の成熟した球状HDLと類似するサイズ、形状、および/または界面化学を持つ構造体を本明細書中で議論するように調製して、HDL NPのような構造体を形成させることができる。いくつかの実施形態において、HDL NPは、コレステロールを流出させ、輸送するための生物学的システムにおいてそれらの天然の対応物と同等に機能する。したがって、複数の実施形態の1つの組において、HDL NPのような構造体を、バイオミメティックスにより、どの程度、核酸送達のための生物学的システムに機能性のハイブリッド核酸−HDL NP(NA−HDL NP)をうまく組み込むために使用することができるかを評価するために使用することができる。
【0007】
本発明の1つの態様は一般的に、球状NPを鋳型とするHDL生体模倣構造体に関する。これらの構造体のコレステロールに対する結合定数は、例えば、インビボでの総コレステロールの濃度未満であり得る。いくつかの実施形態においては、これらの構造体のコレステロールに対する結合定数は、約K=10mM未満であり得る。これらの構造体は、内因性の球状HDLを模倣するように操作することができる。例えば、いくつかの実施形態においては、上記構造体は、内因性HDLに対する結合定数と実質的に類似する、コレステロール(または、トリグリセリド(triglyeride)のような別の脂質)に対する結合定数を有する。HDL NP構造体の表面成分には、複数の実施形態の1つの組においては、天然のHDLの表面成分が含まれる。例えば、1つの実施形態においては、Apo A−1の2〜3コピーを、NPに吸着されたリン脂質の層の中に埋め込むことができる。HDL NP構造体は、例えば、本明細書中に記載するような任意の適切なサイズを有し得る。いくつかの実施形態においては、HDL NPは、細胞(例えば、培養物中で増殖させたマウスマクロファージ(J774)およびヒトマクロファージ(THP−1)の両方)からの逆方向のコレステロール輸送を増大させることができる。さらに、HDL NPの一部は細胞により取り込まれ得、ここではこれらは明らかな細胞質局在性を有する。上記構造体にはまた、いくつかの実施形態においては、1つ以上の異なる核酸も含まれる。
【0008】
いくつかの実施形態において、上記構造体を、1つ超の機能性を含むように改変する。例えば、上記構造体は、チオール末端が改変されたオリゴヌクレオチド(すなわち、DNA、RNA、siRNA、mRNAなど)で表面に機能を持たせることができる。構造体はまた、遺伝子発現を調節することができるチオールで改変されたオリゴで表面に機能を持たせることもできる。これらの構造体は、未改変のオリゴヌクレオチドと比較して相補性核酸に対して高い親和性、ヌクレアーゼによる分解に対して低い感受性を有し得、80%、85%、90%、95%、97%、もしくは99%を上回る細胞内取り込みを有する、ならびに/あるいはほとんど毒性を示さないか、または毒性を示さない。上記構造体に結合したオリゴヌクレオチドの表面密度もまた、例えば、遺伝子のノックダウンを示すように制御することがでいる。DNA、RNA、またはsiRNAのようなオリゴヌクレオチドは、静電吸着または化学吸着技術(例えば、Au−SH結合化学反応(conjugation chemistry))のような技術を使用してナノ構造体コアに結合させることができる。
【0009】
複数の実施形態の1つの組は一般的に、固有であり、かつ極めて強力な二重活性のためにマクロファージおよび肝細胞を処理することができる特定のナノ材料構造体に関する。したがって、上記構造体は、両方の細胞タイプにおいて機能することができる。そのような構造体の設計には、逆方向のコレステロール流出を媒介する上記構造体の能力が低下する、およびその逆となる可能性がないように、siRNAの表面被覆率を平衡化することが含まれ得る。
【0010】
複数の実施形態の1つの組においては、構造体の1つのシリーズを提供する。1つの実施形態においては、構造体には、ナノ構造体コア、ナノ構造体コアを囲繞し、ナノ構造体コアに結合した脂質を含有しているシェル、および上記シェルの少なくとも一部と会合している、遺伝子発現を調節するように適応させたオリゴヌクレオチドが含まれる。上記構造体は、コレステロールを隔離するように適応させることができる。
【0011】
別の実施形態においては、構造体には、ナノ構造体コア、ナノ構造体コアを囲繞する疎水性のシェル、および上記シェルの少なくとも一部と会合している、遺伝子発現を調節するように適応させたオリゴヌクレオチドが含まれる。上記構造体は、コレステロールを隔離するように適応させることができる。
【0012】
別の実施形態においては、構造体に、ナノ構造体コア、およびナノ構造体コアと会合している、コレステロールで改変したオリゴヌクレオチドが含まれる。
【0013】
別の実施形態においては、ナノ構造体に、遺伝子発現を調節するように適応させたオリゴヌクレオチド、脂質、およびアポリポタンパク質が含まれる(comprising)。
【0014】
別の実施形態においては、ナノ構造体には、遺伝子発現を調節するように適応させたオリゴヌクレオチドおよびアポリポタンパク質A1が含まれる。
【0015】
いくつかの場合には、1つの方法に、被験体または生物学的試料に対して本明細書中に記載する構造体を送達する工程、および上記被験体または生物学的試料中で遺伝子発現を調節する工程が含まれる。
【0016】
いくつかの実施形態においては、薬学的組成物を提供する。上記組成物には、本明細書中に記載する構造体と、1種類以上の薬学的に許容可能なキャリア、添加物、および/または希釈剤が含まれ得る。
【0017】
いくつかの実施形態においては、疾患または身体状態を診断する、予防する、処置する、または管理するためのキットを提供する。上記キットには、本明細書中に記載する複数の構造体を含有している組成物と、疾患または身体状態を診断する、予防する、処置する、または管理するための上記組成物の使用についての指示が含まれ得る。
【0018】
特定の実施形態においては、本明細書中に記載する構造体は、治療薬および診断薬の両方として使用することができる単一の構成要素である。
【0019】
実施形態の別の組においては、方法の1つのシリーズを提供する。1つの実施形態においては、疾患または身体状態を診断する、予防する、処置する、または管理するための方法を提供する。上記方法には、本明細書中に記載する構造体(例えば、無機材料を含有しているナノ構造体コアと、上記ナノ構造体コアを囲繞し、それに結合したシェルを含有している構造体)を含有する、治療有効量の組成物を被験体に投与する工程が含まれる。上記構造体は、コレステロール(または特定の実施形態においては、他の脂質もしくは分子)を隔離するように適応させることができる。上記方法には、上記構造体がコレステロール(例えば、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも5、20、または50個のコレステロール分子)を隔離することを可能にする工程が含まれ得る。上記コレステロールは、例えば、エステル化コレステロールまたは遊離のコレステロールであり得る。他の実施形態においては、1つの方法には、上記構造体が特定のタイプまたは組成の分子(例えば、少なくとも5、20、または50個の特定のタイプまたは組成の分子)を隔離することを可能にする工程が含まれる。上記構造体は、試料または患者において遺伝子発現を調節するように適応させることができる。
【0020】
本発明の他の利点および新規特徴は、添付の図面とともに考察すると、本発明の種々の非制限的実施形態に関する以下の詳細な説明より明らかとなる。本明細書および参照により組み込まれる文献に不一致および/または矛盾する開示がある場合、本明細書が管理する。参照により組み込まれる2つ以上の文献に互いに不一致および/または矛盾する開示がある場合、実効日が後の文献が管理する。
【0021】
以下、本発明の非制限的実施形態を、図面を参照しながら例を挙げて説明する。各図面は模式的であって縮尺通りに示すことを意図していない。図において、例示する同一または略同一の要素は、それぞれ、単一の数字によって典型的に示す。明瞭性を目的として、すべての要素がすべての図中でラベル付けされるとは限らない。また、本発明の各実施形態の要素は、当業者が発明を理解するのに例示が必要でない程度に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、実施形態の1つの組にしたがって、核酸および/または他の構成要素を送達するために使用することができる構造体の一例を示す。
【図2】図2Aおよび2Bは、本明細書中に記載する実施形態にしたがって、核酸および/または他の構成要素を送達するために使用することができる様々な構造体を製造するための方法を示す。
【図3】図3は、実施形態の1つの組にしたがって、1つ以上のアポリポタンパク質と1つ以上のオリゴヌクレオチドを含有している構造体を製造するための方法を示す。
【図4】図4は、実施形態の1つの組にしたがって、構造体のシェルを形成する様々な成分を含有している構造体を製造するための方法を示す。
【図5】図5は、実施形態の1つの組にしたがって、ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)に送達される構造体の毒性実験の結果を示す。
【図6】図6は、実施形態の1つの組にしたがって、CoCl低酸素の誘導を使用してmiR−210を発現するように誘導したHUVEC中での、構造体によるマイクロRNA−210の調節を示す。
【図7】図7A〜7Cは、実施形態の1つの組にしたがって、本明細書中に記載する構造体をトランスフェクトした(transected)マウスJ774細胞を示している電子顕微鏡写真である。
【図8A】図8Aは、実施形態の1つの組にしたがった、HUVEC中でのmiR−210レベルの相対的発現を示す。
【図8B】図8Bは、実施形態の1つの組にしたがった、HUVECに対するLDH毒性を示す。
【図8C】図8Cは、実施形態の1つの組にしたがって、本明細書中に記載する構造体を使用したHUVEC中でのmiR−210のノックダウンを示す。
【図9−1】図9A〜9Dは、実施形態の1つの組にしたがう、PC3細胞中での本明細書中に記載する構造体の細胞分布を示している蛍光共焦点顕微鏡画像である。
【図9−2】図9E〜9Hは、PC3細胞中での本明細書中に記載する構造体の細胞分布を示している透過電子顕微鏡(TEM)画像である。
【図10】図10は、実施形態の1つの組にしたがう、本明細書中に記載する様々な構造体についての毒性データを示す。
【図11】図11は、実施形態の1つの組にしたがって、PC3細胞を塩化コバルトに対してPC3細胞を曝露することによる、PC3細胞での低酸素の化学的誘導の結果を示す。
【図12】図12は、実施形態の1つの組にしたがって、血清含有培地および血清非含有培地中での本明細書中に記載する様々な構造体で処理した後の、PC3細胞中での相対的なmiR−210発現を示す。
【図13A】図13Aは、実施形態の1つの組にしたがって、本明細書中に記載する様々な構造体で処理した後の、PC3細胞中での相対的なmiR−210発現を示す。
【図13B】図13Bは、miR−210の標的であるE2F3aのウェスタンブロットによる評価を示しており、それは、実施形態の1つの組にしたがう、本明細書中に記載する特定の構造体でのPC3細胞の処理が、E2F3aの抑制を解除することを示している。
【図14】図14は、実施形態の1つの組にしたがい、本明細書中に記載する様々な構造体で処理したPC3細胞中でのmiR−210ノックダウンの経時変化を示す。
【図15】図15は、実施形態の1つの組にしたがって、本明細書中に記載する構造体からの核酸の放出を可能にするために使用することができる成分の例を示す。
【図16】図16Aおよび16Bは、実施形態の1つの組にしたがって、混合単層で機能を持たせたナノ粒子の透過電子顕微鏡画像である。そして
【図17】図17は、実施形態の1つの組にしたがって、混合単層で機能を持たせたナノ粒子をトランスフェクトした(transected)LnCaP前立腺がん細胞を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
詳細な説明
合成ナノ構造体を含むナノ構造体に関する物品、組成物、キット、および方法を提供する。本明細書中に記載する特定の実施形態には、コア−シェル型の配置を有している構造体が含まれる。例えば、ナノ構造体コアは脂質二重層などの材料を含有しているシェルにより囲繞され得、そしてナノ構造体コアには、オリゴヌクレオチドのような他の成分が含まれ得る。いくつかの実施形態においては、上記構造体は、被験体に導入されると、核酸を送達するために使用することができ、そして/または遺伝子発現を調節することができる。したがって、本明細書中に記載する構造体は、特定の疾患または身体状態を診断する、予防する、処置する、または管理するために使用することができる。いくつかの場合には、上記構造体は、治療薬および診断薬のいずれでもある。
【0024】
生物学的システムへのナノ生体材料の継ぎ目のない一体化が、核酸の非ウイルスによる送達に重要である。核酸に基づく治療法の可能性を完全に実現するためには、そのような材料の製造が重要である。本発明の1つの態様では、遺伝子を調節する生体材料を合成するために生体模倣ナノ構造体プラットフォームを合理的な核酸化学と組み合わせる。いくつかの実施形態においては、ハイブリッド核酸−生体模倣構造体を、調節性核酸の標的化された化学的に誘発される放出のための生体−ナノ界面にうまく移動するように製造することができる。上記プラットフォームを固定するものが、複数の実施形態の1つの組において、合成のナノ粒子を鋳型とする構造体であり、例えば、高密度リポタンパク質のナノ粒子を鋳型とする生体模倣物(「HDL NP」)である。
【0025】
リポタンパク質はヒトの体内を循環し、疎水性分子(例えば、コレステロール)を輸送する。HDLは、無数の有益な生理学的機能(中でも最も注目すべき、アテローム動脈硬化性心血管疾患の予防を含む)を有する。機能的には、HDLは特定の細胞タイプ(例えば、内皮細胞、マクロファージ、肝細胞)を自然に標的化し、それらによって取り込まれ、コレステロールを移動させることができ、その後、血流の中に再度導入される。いくつかの実施形態においては、ナノ粒子足場をナノ構造体コアとして使用することにより、天然に存在している成熟した球状HDLの表面タンパク質と脂質成分をアセンブルさせることができる。サイズ、形状、および界面化学の観点からすると、得られるHDL構造体は、天然のHDLの模倣物であり得る。コアは、核酸(例えば、オリゴヌクレオチド)のような生体分子を結合させる能力を持つ無機ナノ粒子(例えば、AuNP)のようなナノ粒子であり得る。いくつかの実施形態においては、上記無機ナノ粒子を必要に応じて除去して、中空のコアまたは部分的に中空のコアを生成することができる。
【0026】
本明細書中の記載の多くは金ナノ粒子(例えば、鋳型またはナノ構造体コアとしての使用)について言及するが、これが単なる例にすぎないこと、そして他の構造体および材料を鋳型またはナノ構造体コアとして使用できることが理解されるものとする。
【0027】
複数の実施形態の1つの組においては、ナノ粒子(例えば、HDL NP)の表面に核酸を結合させるための合成方法を記載する。固相核酸合成を、ナノ構造体コアへの結合のために、コレステロールおよびアルキルチオールのような官能基で末端改変された一組のDNAまたはRNAオリゴヌクレオチドを生成するために利用することができる。オリゴヌクレオチドでのナノ構造体コアの体系的調製を、表面の化学的組成の制御を得るために使用することができる。界面化学が、少なくとも部分的に特定の生体−ナノ界面相互作用を制御すると考えられる。
【0028】
実施形態の別の組においては、固相DNA化学を、DNA−ナノ粒子(例えば、HDL NP)の結合のために合成オリゴヌクレオチドを調製するために使用する。例えば、得られる構造体からの核酸の放出が、特定の用途において有用であり得る。実施形態のなお別の組においては、本発明は、細胞培養物中の核酸で改変されたナノ構造体の遺伝子調節能力に関する。比較的高いスループットでは、そのような構造体の機能を、構造−機能の関係を示すためのモデルシステムにおいて評価することができる。重要であるのは、バイオミメティックスからのずれによりもたらされる機能的影響を界面化学(例えば、核酸放出機構)により推定することができ、そして上記機能的影響を、ハイブリッドDNA−HDL NPの最適な生体への組み込みのための機構を導くことについて直接試験できることである。
【0029】
具体的には、いくつかの実施形態において、本発明は、生体模倣HDLナノ構造体(HDL NP)のデノボ合成、および、標的化した遺伝子調節性オリゴヌクレオチド(例えば、コレステロール化オリゴヌクレオチド)を細胞の細胞質に送達するそれらの能力の評価に関する。がん細胞は、細胞膜の生合成と完全性の維持についてはHDLによるコレステロールの送達に依存する。したがって、アンドロゲン非感受性前立腺がん(PC3)の細胞モデルをこれらの研究に利用した。データは、表面に吸着させることによりコレステロール化したアンチセンスDNAを持つHDL AuNP(chol−DNA−HDL AuNP)が、標的化したchol−DNAを細胞の細胞質へと効率よく送達し、エンドソームの隔離を回避し、そしてモデルRNA標的を調節することを明らかにしている。chol−DNA−HDL AuNPのボトムアップ合成は、効率的な細胞性NA送達のための生体模倣プラットフォームを提供する。
【0030】
実施形態の別の組においては、本発明は一般に、アテローム性動脈硬化症および他の適応症の処置のための治療薬に関する。上記治療薬は、複数の実施形態の1つの組において、マクロファージ(コレステロールの取り込みおよび炎症)ならびに肝細胞(コレステロールを多く含む低密度リポタンパク質(LDL)の産生)のような細胞を標的にする。特定の実施形態は、ハイブリッドナノ粒子をベースとする高密度リポタンパク質模倣構造体(例えば、HDL NP)に関する。上記薬剤は、コレステロールスカベンジャー(マクロファージを標的化する)として、および/または遺伝子調節性の治療薬として(肝細胞を標的化する)として使用することができる。いくつかの実施形態においては、HDL NPの表面を、核酸、例えば、(例えば、肝細胞中で標的化した遺伝子発現を調節するための)siRNAで調製することができる。逆方向のコレステロールの輸送を増大させることに関して天然のHDLの活性を模倣することに加えて、そのような構造体は、LDLの主要な構造タンパク質であるアポリポタンパク質B−100(Apo B−100)の産生を標的化するsiRNAのHDL NPに媒介される送達を通じて肝細胞中で低密度リポタンパク質(LDL)の産生を減少させることができる。
【0031】
オリゴヌクレオチド(例えば、DNAまたはsiRNA)で機能を持たせたAuNPを用いて治療用遺伝子を調節するための現在のアプローチは、ナノ粒子がエネルギー依存性のエンドサイトーシスを通じて細胞により取り込まれることを明らかにする。このプロセスの結果は、ナノ粒子の多くがエンドソーム中に捕捉され得、細胞質中に最も集中するのではないことである。結合体ナノ構造体が、標的化した病理学的にアップレギュレートされた細胞内mRNA標的と相互作用することが必要である治療的アプローチについては、例えば、これにより、限られた治療効力が提供され得る。このように、本明細書中に記載する構造体により対処する1つの問題は、上記構造体の細胞内局在性である。上記構造体は、高い遺伝子調節能力を達成するために細胞内の細胞質に核酸を送達するために使用することができる。
【0032】
リン脂質小胞、またはリポソームを使用したこれまでの研究では、リン脂質が有効な薬物送達物質であることが示されている。いくつかの場合においては、リポソームは、細胞膜を透過することができる。しかし、複数の研究により、これらのリン脂質粒子(直径約100nm)が細胞膜を通過して細胞膜中に一時的な孔を生じ、これが細胞傷害性である可能性があることもまた示されている。いくつかの実施形態においては、本明細書中に記載する構造体を使用することにより、この細胞傷害性を低下させるかまたは回避することができる。これらの構造体は、いくつかの場合には、細胞膜を透過してエンドソームの隔離を回避することができる。構造体に核酸と脂質の両方が含まれるいくつかの実施形態においては、細胞との相互作用を、構造体の核酸:脂質比を最適化することにより、そして構造体の界面化学を合理的に調製することにより、調製することができる。
【0033】
本明細書中の記述の多くは高密度リポタンパク質の生体模倣物として作用する構造体について言及するが、本明細書中に記載する物品および方法は、何らかの治療効果、診断効果、および/または他の有益な効果を提供し得る、天然に存在している構成要素を含む他の構成要素の模倣物の形成にも有用であり得る。天然に存在している構成要素を模倣する構造体は、特定の適応症を処置または診断するために特定の細胞タイプを標的化するために使用することができる。いくつかのそのような生体模倣構造体には核酸が含まれ得、そして核酸送達のために使用することができ、核酸放出のために調製することができ、そして/または標的中での遺伝子発現を調節するために使用することができる。
【0034】
図1の具体的な実施形態には、コア16と上記コアを囲繞するシェル20を有している構造体10が含まれる。コアがナノ構造体である実施形態においては、コアには表面24が含まれ、表面24に対して1つ以上の成分を必要に応じて結合させることができる。例えば、いくつかの場合には、コア16はシェル20により囲繞されたナノ構造体であり、シェル20には内側表面28と外側表面32が含まれる。シェルには、複数の脂質のような1つ以上の成分34が含まれ得、成分34は互いに、そして/またはコアの表面24と必要に応じて会合することができる。構造体10には必要に応じて、タンパク質または他の構成要素のような1つ以上の成分36と、いくつかの実施形態においては、必要に応じて、試料または患者において核酸送達のためにおよび/または遺伝子発現を調節するために使用され得る1つ以上の核酸37および38(例えば、オリゴヌクレオチド)が含まれ得る。図1に具体的に示すように、核酸37は、シェルの一部に吸着(例えば、物理吸着)され得、核酸38はシェルの表面24に対して共有結合または共有結合に近い結合により結合され得る。
【0035】
成分34(例えば、脂質)は、コアに対して共有結合的に付着することにより、物理吸着(physisorbe)することにより、化学吸着(chemisorbe)することにより、または、イオン相互作用、疎水性および/または親水性相互作用、静電的相互作用、ファンデルワールス相互作用またはその組み合わせを介してコアに付着することにより、コアと会合してもよい。1つの特定の実施形態において、コアは金のナノ構造体を含み、シェルは金−チオール結合によってコアに付着する。任意により、成分34は互いに架橋することができる。シェルの成分の架橋は、たとえば、シェルへの、またはシェルの外部の領域とシェルの内部の領域との間での種の輸送の制御を可能にする。たとえば、比較的高い量の架橋は、ある種の小さいが大きくない分子がシェルを通過することを可能にするが、比較的低い架橋または架橋がない場合は、より大きな分子がシェルを通過することを可能にする。さらに、シェルを形成する成分は、単層または多層の形態であってもよい。それはさらに分子の輸送または隔離を容易にするか、妨げることができる。1つの例示的な実施形態において、シェル20がコレステロールを隔離するよう構成される脂質二重層を含む。
【0036】
かかる実施形態は可能かもしれないが、コアを囲繞するシェルが完全にはコアを囲繞しなくてもよいことが理解されるはずである。たとえば、シェルは、コアの表面積の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも99%を囲繞してもよい。いくつかの場合において、シェルが実質的にコアを囲繞する。他の場合において、シェルは完全にコアを囲繞する。シェルの成分は、いくつかの場合、コアの表面全域に均一に分配されてもよく、そして他の場合において、一様ではなく分配されていてもよい。たとえば、シェルは、いくつかの場合において、いかなる材料も含まない部分(たとえば、穴)を含んでもよい。所望であれば、シェルは、シェルの中への、またはシェルからのある種の分子および成分の浸透および/または輸送を可能にするよう設計されてもよいが、シェルの中への、またはシェルからの他の分子および成分の浸透および/または輸送を防いでもよい。ある種の分子がシェル内部におよび/またはシェルを横切って浸透するおよび/または輸送される能力は、たとえばシェルを形成する成分の充填密度、およびシェルを形成する成分の化学および物理的性質に依存してもよい。本明細書に記載の通り、シェルはいくつかの実施形態において、材料の一つの層(単層)、または材料の多層を含んでもよい。
【0037】
構造体10は、構造体に任意により特異性を付与してもよいタンパク質、核酸および生物活性剤等の1以上の成分36をさらに含んでもよい。1以上の成分36はコア、シェルまたはそれらの両方と会合してもよく、たとえば、それらは、コアの表面24、シェルの内側表面28、シェルの外側表面32と会合してもよく、かつ/あるいはシェルに埋め込まれていてもよい。たとえば、1以上の成分36は、共有結合、物理吸着、化学吸着を介してコア、シェルまたはその両方と会合してもよく、または、イオン相互作用、疎水性および/または親水性相互作用、静電的相互作用、ファンデルワールス相互作用またはそれらの組み合わせを介して付着されてもよい。1つの特定の実施形態において、シェル20は、互いに共有結合または非共有結合したタンパク質および脂質の両方を含むリポタンパク質アセンブリまたは構造体の形態である。たとえば、シェルは、脂質の取込みを制御する酵素補因子、受容体リガンドおよび/または脂質輸送キャリアとして作用するアポリポタンパク質アセンブリの形態であり得る。本明細書に記載の通り、構造体の表面がHDL、LDLまたは他の構造体の一般的な表面組成を模倣するように、構造体10の成分が選択され、いくつかの実施形態において、コレステロールまたは他の構造体を隔離するように使用されてもよい。
【0038】
複数の実施形態の1つの組においては、上記構造体には、以下にさらに詳細に記載するように、試料または被験体において遺伝子発現を調節するように適応させ、配置する(arranged)ことができる1つ以上の核酸37および/または38(例えば、1つのオリゴヌクレオチド)が含まれる。
【0039】
本明細書に記載のもの以外の成分および構成がある種の構造体および組成物に適していてもよく、図1に示される成分のすべてがいくつかの実施形態の中に必ず存在するとは限らないことが理解されるべきである。
【0040】
図2Aおよび2Bは、本明細書中に記載する特定の構造体を製造するための一般的なアプローチを示す。上記構造体は、いくつかの実施形態においては、コレステロールを隔離するため、および核酸を送達するため、ならびに/または試料または患者において遺伝子発現を調節するための両方に使用することができる。具体的には、図2Aは、シェル20と、シェルの一部分上への核酸37(例えば、オリゴヌクレオチド)の吸着(例えば、物理吸着)を含む構造体11を示す。上記核酸は、シェルの内側部分、外側部分、内部、および/またはそれらの組み合わせに対して吸着させることができる。いくつかの実施形態においては、核酸37は、試料または患者において遺伝子発現を調節するように適応させたオリゴヌクレオチドである。
【0041】
図2Aに具体的に示すように、構造体11には、シェル20により実質的に囲繞されたコア16が含まれ得る。上記シェルには、成分34Aにより形成された第1層と、成分34Bにより形成された第2層が含まれ得る。いくつかの実施形態においては、成分34Aおよび/または34Bは、リン脂質のような脂質または本明細書中に記載する他の構成要素である。他の実施形態においては、成分34Aおよび/または34Bは、以下に詳細に記載するように、脂質以外の成分である。構造体11にはまた、シェルと会合した1つ以上の成分36(例えば、アポリポタンパク質のようなタンパク質)も含まれる。いくつかの実施形態においては、成分36が最初にコア16(コア16はナノ構造体コアであり得る)に導入され、続いて、構造体11のシェルを形成する成分34Aおよび34Bが導入される。成分36は、最初にコアの表面と会合し得(例えば、吸着によるかまたは他の相互作用による)、そしていくつかの場合には、コアの表面全体ではなく一部と会合し得る。成分34Aおよび/または34Bの添加により、コアの表面から成分36の一部を置き換えることができ、そして/または、成分36の部分が存在しないコア表面の部分と会合させることができる。構造体11は、シェルの外側成分34Bと、シェルの内側成分34Aと、内側成分と外側成分の間と、またはそれらの組み合わせと会合することができる1つ以上の核酸37の添加により形成させることができる。
【0042】
図2Bは、コアの表面に共有結合させられたかまたは共有結合に近い結合により結合させられた1つ以上の核酸38(例えば、オリゴヌクレオチド)を含む構造体12を形成させるための方法を示す。上記核酸は、コアの表面に直接結合させることができるか、または、間に介在する層(例えば、不動態化層(passivating layer))を介して結合させることができる。いくつかの実施形態においては、核酸38は、試料または患者において遺伝子発現を調節するように適応させたオリゴヌクレオチドである。構造体12を製造する方法には、例えば、1つ以上の成分36(例えば、アポリポタンパク質のようなタンパク質)をコア16に導入する工程が含まれ得る。成分36は、いくつかの実施形態においては、コアの表面全体ではなく一部と会合し得る。次いで、得られる構成要素が、官能基で末端改変される核酸38に曝され(subjected)得、上記官能基は、得られる構成要素がコアの表面と会合することを可能にする。次いで、得られる構成要素が成分34Aおよび/または34Bに曝され得る。成分34Aおよび/または34Bは、いくつかの実施形態においては、コアの表面から成分36の少なくとも一部を置き換えることができ、そして/または成分36の部分が存在しないコア表面の部分と会合することができる。
【0043】
図3は、脂質二重層と、上記脂質二重層の中に埋め込まれたアポリポタンパク質A1のようなタンパク質46とを含むシェル20により囲繞されているコア16を含む構造体13を形成させるための方法を示す。構造体13は、いくつかの実施形態においては、内因性高密度リポタンパク質の生体模倣物であり得る(例えば、形状、サイズ、および界面化学に関して)。脂質二重層を形成させるために使用することができる成分の特別な例としては、リン脂質44Aおよび44Bが挙げられる。試料または患者において遺伝子発現を調節するために使用することができる1つ以上のオリゴヌクレオチド47を、シェルの一部分の上に吸着させることができる。特定の成分46(例えば、APO−A1)、44Aおよび44B(例えば、リン脂質)、ならびに47(例えば、オリゴヌクレオチド)を示すが、他の実施形態では他の成分を使用することができる。そのような成分の例は本明細書中でさらに詳細に提供する。
【0044】
試料または患者を処置するための本明細書中に記載する組成物および方法、特に、核酸を送達するためおよび/または遺伝子発現を調節するための組成物および方法に、核酸が構造体の一部の上に吸着させられているか、または構造体の一部に対して共有結合/共有結合に近い結合により結合させられているかにかかわらず、任意の適切な構造体あるいは複数の構造体の組み合わせの使用が含まれ得ることが理解されるものとする。特定の実施形態においては、構造体コアの表面に吸着させた核酸は、例えば、結合定数とは無関係に、核酸が、構造体の表面に対する共有結合または共有結合に近い結合に適している基で末端改変されている実施形態と比較して、構造体の表面からの受動拡散または交換についてより大きな可能性がある。このように、いくつかの実施形態においては、核酸の共有結合または共有結合に近い結合を含む方法により、粒子の界面化学をより容易に制御することが可能になり得る。さらに、いくつかの場合には、核酸を吸着させた構造体の血清含有マトリックス(細胞培養物または血液)への添加により、上記構造体から他の血清リポタンパク質またはアルブミンへの、上記吸着させた核酸の移動が起こり得る。上記構造体の表面に対する核酸の共有結合または共有結合に近い結合は、いくつかの実施形態においては、核酸の保持に関してより安定な構造体を提供し得る。その囲繞環境に対して構造体から核酸を放出することが望ましい他の実施形態においては、吸着させた核酸を含む構造体が使用され得る。
【0045】
図4は、成分の混合層を有している構造体を製造するための方法を示す。シェル20には、コア16の表面上に単一の層(例えば、単層)を形成する成分54Aおよび54Bが含まれる。成分54Aおよび54Bとして使用することができる特定の化合物の例を図に示す。図4に具体的に示すように、成分54Aは、コアの外側表面に対して疎水性を付与するリン脂質であり得る。そのような成分は、核酸57(例えば、図中に具体的に示すオリゴヌクレオチドのようなオリゴヌクレオチド)のような1つ以上の生物活性剤の結合を可能にすることができる官能基を含み得る成分54Bに隣接して存在し得る。特定の化合物を図中に示すが、これが単なる例にすぎないこと、そして他の実施形態においては他の化合物を成分54A、54B、および57として使用できることが理解されるものとする。
【0046】
図1〜4に示されるコア16のようなコア(例えば、ナノ構造体コアまたは少なくとも部分的に中空であるコア)は、任意の好適な形状および/またはサイズを有し得る。たとえば、コアは、実質的に球形、非球形、楕円形、棒状、ピラミッド形、立方体形、円盤状、ワイヤー状、または不規則な形状であってもよい。コアは、最大断面寸法(または、場合によっては、最小断面寸法)が、たとえば、約500nm以下、約250nm以下、約100nm以下、約75nm以下、約50nm以下、約40nm以下、約35nm以下、約30nm以下、約25nm以下、約20nm以下、約15nm以下、約10nm以下、または約5nm以下である。いくつかの場合において、コアのアスペクト比は約1:1を上回り、3:1を上回り、または5:1を上回る。他の場合において、コアは、約10:1未満、5:1未満、または3:1未満のアスペクト比を有する。本明細書で使用される「アスペクト比」は幅に対する長さの比率を指す。ここで長さおよび幅は、互いに垂直に測定される。また、長さは最長の直線的に測定された寸法を指す。
【0047】
ナノ構造体コアは任意の好適な材料から形成されてもよい。たとえば、一実施形態において、ナノ構造体コアは無機材料を含む。無機材料としてはたとえば、金属(たとえば、Ag、Au、Pt、Fe、Cr、Co、Ni、Cu、Zn、Ti、Pdおよび他の金属)、半導体(たとえば、Rh、Ge、ケイ素、ケイ素化合物および合金、セレン化カドミウム、硫化カドミウム、砒化インジウム、およびリン化インジウム)、または絶縁体(たとえば、酸化ケイ素等のセラミックス)が挙げられる。無機材料は、任意の好適な量、たとえば、少なくとも1重量%、5重量%、10重量%、25重量%、50重量%、75重量%、90重量%、または99重量%でコア中に存在し得る。一実施形態において、コアは100重量%の無機材料より形成される。ナノ構造体コアは、いくつかの場合において、量子ドット、カーボンナノチューブ、カーボンナノワイヤーまたはカーボンナノロッドの形状であり得る。いくつかの場合において、ナノ構造体コアは、生体起源でない材料を含む、または、生体起源でない材料より形成される。いくつかの実施形態において、ナノ構造体は、たとえば、合成重合体および/または天然重合体等の1以上の有機材料を含む。合成重合体の例としては、ポリメタクリレート等の非分解性重合体、ポリ乳酸、ポリグリコール酸等の分解性重合体、およびそれらの共重合体等が挙げられる。天然重合体としては、たとえば、ヒアルロン酸、キトサンおよびコラーゲンが挙げられる。特定の実施形態においては、ナノ構造体コアには重合体材料は含まれない(例えば、これは非重合体材料である)。
【0048】
ナノ構造体コアの表面には、コアの内側部分を形成させるために使用する材料が含まれ得るか、またはナノ構造体コアの表面が、成分(例えば、シェルを形成する成分)の結合を促進するために1つ以上の化学物質により不動態化され得る。
【0049】
いくつかの場合には、コア16は中空であり、したがって、コア16にはナノ構造体コアは含まれない。よって、いくつかのそのような実施形態および他の実施形態においては、構造体10には、必要に応じて、成分(例えば、生物活性剤、コレステロール)がコア16およびシェルの外側の環境40に対して通過し、ならびにコア16およびシェルの外側の環境40から通過することを可能にすることができるシェルが含まれる。シェルを形成する成分の立体障害が原因で典型的には約100nmより大きい最大断面寸法を有する、特定の既存の中空構造体(例えば、リポソーム)とは対照的に、中空のコア(例えば、部分的にまたは全体的に中空のコア)を有している構造体10は非常に小さい場合があり、例えば、約100nm未満またはさらには約50nm未満の最大断面寸法を有する。例えば、リン脂質が立体的に制限されるため、リン脂質を含有する脂質二重層を含むリポソームは100nm未満のサイズで製造することが難しく、したがって、小さな曲率半径を持つ二重層の中空構造体を形成することは困難であるかまたは不可能となる。ナノ構造体コアをリン脂質または他の分子についての鋳型として使用し、次いで、ナノ構造体コアを除去することにより、小さい曲率半径を持つ中空の構造体または少なくとも部分的に中空の構造体を生じさせることができる。中空のコアを形成させるために使用することができる方法の例は、2009年4月24日に出願された、「Nanostructures Suitable for Sequestering Cholesterol and Other Molecules」の表題の国際特許公開番号WO/2009/131704(これは、全ての目的についてその全体が参照により本明細書中に組み入れられる)にさらに詳細に記載されている。
【0050】
コアを囲繞するシェルを含んでもよい、本明細書に記載の構造体は、任意の好適な形状および/またはサイズを有してもよい。たとえば、構造体の形状は、実質的に球形、楕円形、棒状、ピラミッド形、立方体形、円盤状、または凸凹状であってもよい。構造体の最大断面寸法(または、場合によっては、最小断面寸法)は、たとえば約500nm以下、約250nm以下、約100nm以下、約75nm以下、約50nm以下、約40nm以下、約35nm以下、約30nm以下、約25nm以下、約20nm以下、約15nm以下、または約5nm以下であり得る。また、構造体のアスペクト比は、コアのアスペクト比に実質的に類似していてもよい。
【0051】
構造体のシェルは、任意の好適な厚さを有し得る。たとえば、シェルの厚さは、(たとえば、シェルの内側表面から外側表面までが)少なくとも10オングストローム、少なくとも0.1nm、少なくとも1nm、少なくとも2nm、少なくとも5nm、少なくとも7nm、少なくとも10nm、少なくとも15nm、少なくとも20nm、少なくとも30nm、少なくとも50nm、少なくとも100nm、または少なくとも200nmであってもよい。いくつかの場合において、シェルの厚さは、(たとえば、シェルの内側表面から外側表面までが)200nm未満、100nm未満、50nm未満、30nm未満、20nm未満、15nm未満、10nm未満、7nm未満、5nm未満、3nm未満、2nm未満、または1nm未満である。このシェルは、上記の範囲の組み合わせを有していてもよい。
【0052】
当業者は、構造体および粒子のサイズを判定する技術に精通している。好適な技術としては、たとえば、動的光散乱(DLS)(たとえば、Malvern Zetasizer機器を使用する)、透過型電子顕微鏡、走査電子顕微鏡法、電気抵抗によるカウント、およびレーザー回折が挙げられる。他の好適な技術は、当業者にとって公知である。ナノ構造体のサイズを判定する多くの方法は公知であるが、本明細書に記載のサイズ(たとえば、最大または最小断面寸法、厚さ)は、動的光散乱によって測定されたものを指す。
【0053】
本明細書に記載の構造体のシェルは、疎水性材料、親水性材料、および/または両親媒性材料等の任意の好適な材料を含み得る。シェルは、ナノ構造体コアのための上記列挙されたような1以上の無機材料を含み得るが、多くの実施形態において、シェルは脂質またはある種の重合体等の有機材料を含む。
【0054】
いくつかの場合においては、シェルの成分は、例えば、構造体の表面上に電荷を付与するために荷電され得る。他の場合には、シェルの成分または構造体の表面は荷電していない。構造体の表面電荷はそのζ電位により測定することができる。いくつかの場合には、構造体は、例えば、−2mV〜+2mV、−5mV〜+5mV、−7mV〜+7mV、−10mV〜+10mV、−20mV〜+20mV、−30mV〜+30mV、−40mV〜+40mV、−50mV〜+50mV、−60mV〜+60mV、0mV〜±5mV、±10mV〜±30mV、±30mV〜±40mV、±40mV〜±60mV、または±60mV〜±80mVのζ電位を有する。いくつかの場合には、本明細書中に記載する構造体のζ電位は、−2mV以下、−5mV以下、−7mV以下、−10mV以下、−20mV以下、−30mV以下、−40mV以下、−50mV以下、または−60mV以下である。他の実施形態においては、本明細書中に記載する構造体のζ電位は、+2mV以上、+5mV以上、+7mV以上、+10mV以上、+20mV以上、+30mV以上、+40mV以上、+50mV以上、または+60mV以上である。ζ電位の他の値もまた可能である。
【0055】
1つの組の実施形態において、本明細書に記載の構造体またはその一部分、たとえば構造体のシェルは、1以上の天然または合成脂質または脂質アナログ(すなわち、親油性分子)を含む。1以上の脂質および/または脂質アナログは、構造体の単層または多層(たとえば、二重層)を形成してもよい。多層が形成されるいくつかの例において、天然または合成脂質または脂質アナログは、(たとえば、異なる層間で)互いに組み合う。天然または合成脂質または脂質アナログの非限定的例としては、脂肪酸アシル、グリセロ脂質、グリセロリン脂質、スフィンゴ脂質、サッカロ脂質、およびポリケチド(ケトアシルサブユニットの縮合に由来する)、ステロール脂質およびプレノール脂質(イソプレンサブユニットの縮合に由来する)、脂肪酸(たとえば、トリグリセリド、ジグリセリドおよびモノグリセリド)、ステロール含有代謝産物(例えば、コレステロール)、ならびにこれらの誘導体が挙げられる。
【0056】
一組の特定の実施形態において、本明細書に記載の構造体は1以上のリン脂質を含む。1以上のリン脂質としては、たとえば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、レシチン、β,γ−ジパルミトイル−α−レシチン、スフィンゴミエリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、N−(2,3−ジ(9−(Z)−オクタデケニルオキシ))−プロパ−1−イル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド、ホスファチジルエタノールアミン、リゾレシチン、リゾホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ケファリン、カルディオリピン、セレブロシド、ジセチルフォスフェート、ジオレイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジオレオイルホスファチジルグリセロール、パルミトイル−オレオイル−ホスファチジルコリン、ジ−ステアロイル−ホスファチジルコリン、ステアロイル−パルミトイル−ホスファチジルコリン、ジ−パルミトイル−ホスファチジルエタノールアミン、ジ−ステアロイル−ホスファチジルエタノールアミン、ジ−ミリストイル−ホスファチジルセリン、ジ−オレイル−ホスファチジルコリン、1,2−ジパミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホチオエタノール、およびそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの場合において、構造体のシェル(たとえば、二重層)は、50〜200の天然または合成脂質または脂質アナログ(たとえば、リン脂質)を含む。たとえば、シェルは、たとえば、構造体のサイズに応じて、約500未満、約400未満、約300未満、約200未満、または約100未満の天然または合成脂質または脂質アナログ(たとえば、リン脂質)を含み得る。特定の実施形態においては、本明細書中に記載する構造体には、内因性HDL中に見られるリン脂質と似ている1つ以上のリン脂質が含まれる。
【0057】
ステアリルアミン、ドセシルアミン、パルミチン酸アセチル、および脂肪酸アミドのような非リン含有脂質も使用され得る。他の実施形態において、脂肪、油、ろう、ステロール、および脂溶性ビタミン(たとえば、ビタミンA、D、EおよびK)等の他の脂質は、本明細書に記載の構造体の一部分を形成するために使用することができる。
【0058】
ナノ構造体のシェルまたは表面等の、本明細書に記載の構造体の一部分は、任意により構造体に疎水性を付与する1以上のアルキル基、たとえば、アルカン−、アルケン−、またはアルキン含有種を任意により含み得る。「アルキル」基は、直鎖アルキル基、分岐鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基、およびシクロアルキル置換アルキル基を含む飽和脂肪族基を指す。アルキル基は、たとえば、CからC40の間の様々な炭素数を有してもよい。いくつかの実施形態において、炭素数は、C、C10、C15、C20、C25、C30またはC35よりも大きくてよい。いくつかの実施形態において、直鎖または分岐鎖アルキルは、その骨格に、30個以下、いくつかの場合においては20個以下の炭素原子を有してもよい。いくつかの実施形態において、直鎖または分岐鎖アルキルは、その骨格(たとえば、直鎖ではC〜C12、分岐鎖ではC〜C12)に12個以下、6個以下、4個以下の炭素原子を有してもよい。同様に、シクロアルキルは、それらの環状構造中に3〜10個の炭素原子、または環状構造中に5個、6個または7個の炭素を有してもよい。アルキル基の例としては、たとえば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、シクロブチル、ヘキシル、シクロヘキシル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
アルキル基としては、任意の好適な末端基、たとえば、チオール基、シラン基、アミノ基(たとえば、置換されていないまたは置換されたアミン)、アミド基、イミン基、カルボキシル基、またはスルフェート基が挙げられ、たとえば、ナノ構造体コアへのリガンドの付着を直接的またはリンカーを介して可能にする。たとえば、不活性金属がナノ構造体コアを形成するために使用される場合、アルキル種は、金属−チオール結合を形成するチオール基を含んでもよい。いくつかの例において、アルキル種は少なくとも第2の末端基を含む。たとえば、種はポリエチレングリコール等の親水性の部分に結合されてもよい。他の実施形態において、第2の末端基は他の官能基(例えば、核酸のような生物活性剤に付着を可能にするカルボン酸)に共有結合的に付着することができる反応性基であってもよい。いくつかの例において、第2の末端基はリガンド/受容体相互作用(たとえば、ビオチン/ストレプトアビジン)に関係し得る。
【0060】
いくつかの実施形態において、シェルは重合体を含む。たとえば、両親媒性重合体が使用され得る。重合体はジブロック共重合体、トリブロック共重合体等であってもよく、たとえば、一方のブロックが疎水性重合体で、他方のブロックが親水性重合体である。たとえば、重合体は、α−ヒドロキシ酸(たとえば、乳酸)およびポリエチレングリコールの共重合体であってもよい。いくつかの場合において、シェルは、ある種のアクリル樹脂、アミドおよびイミド、炭酸塩、ジエン、エステル、エーテル、フルオロカーボン、オレフィン、スチレン、ビニルアセタール、ビニル、および塩化ビニリデン、ビニルエステル、ビニルエーテルおよびケトン等を含み得る重合体、およびビニルピリジンおよびビニルピロリドン重合体等の疎水性重合体を含む。他の場合において、シェルは、ある種のアクリル樹脂、アミン、エーテル、スチレン、ビニル酸およびビニルアルコールを含む重合体等の親水性重合体を含む。重合体は、荷電されていてもよくまたは荷電されていなくてもよい。本明細書に記載されるように、シェルの特定の成分は構造体にある種の官能性を付与するよう選択可能である。
【0061】
シェルが両親媒性材料を含む場合、材料はコアに関して、および/または互いに任意の好適な方法で配列することができる。たとえば、両親媒性材料は、コアに向けられた親水基、およびコアから離れて伸びる疎水基を含んでもよく、または、両親媒性材料は、コアに向けられた疎水基、およびコアから離れて伸びる親水基を含んでもよい。各構成の二重層も形成することができる。
【0062】
いくつかの場合には、本明細書中に記載する構造体のシェルを形成する成分は、少なくとも一部、上記成分の分子量に基づいて選択される。いくつかの場合には、シェルには、例えば、50,000g/mol以下、25,000g/mol以下、15,000g/mol以下、10,000g/mol以下、7,000g/mol以下、5,000g/mol以下、2,000g/mol以下、1,000g/mol以下、または500g/mol以下の分子量を有している成分が含まれるか、あるいはシェルは実質的にそのような成分から形成される。他の実施形態においては、成分の分子量は、1,000g/mol以上、2,000g/mol以上、5,000g/mol以上、7,000g/mol以上、10,000g/mol以上、15,000g/mol以上、25,000g/mol以上、または50,000g/mol以上である。上記成分は、本明細書中に記載するものと同様に、重合体の形態であってよく、また非重合体(例えば、脂質)の形態であってもよい。
【0063】
特定の実施形態においては、構造体には、成分の混合層(例えば、混合単層)を含有しているシェルが含まれる。例えば、1つの実施形態においては、シェルには、本明細書中に記載するもののような少なくとも2つのタイプの脂質(例えば、第1の脂質と第2の脂質)が含まれ得、これらが混合層(例えば、単層)を形成する。二重層構造(configuration)を含有しているシェルを有している特定の構造体を含むいくつかの実施形態においては、上記層のうちの少なくとも一方に、第1の成分と第2の成分の混合物が含まれ得る。複数の実施形態の1つの組においては、シェルには、本明細書中に記載するもののような脂質(例えば、第1の成分)と、本明細書中に記載するもののようなアルキル基を含有している化合物(例えば、第2の成分)(これをナノ構造体コアに対して結合させることができる)が含まれ得、上記2つの成分は混合層(例えば、単層)を形成することができる。アルキル基は、例えば、CからC40の間の様々な炭素数を有し得、必要に応じて、例えば、ナノ構造体コアへの基の結合を直接的またはリンカーを介して可能にすることができる1つ以上の適切な末端基(例えば、チオール基、シラン基、アミノ基(例えば、置換されていないアミンまたは置換されたアミン)、アミド基、イミン基、カルボキシル基、または硫酸基)に対して結合させることができる。いくつかの場合には、混合層の成分の1つには、ナノ構造体コアへの結合のための1つの末端と、核酸のような生物活性剤への結合のための第2の末端が含まれる。他のタイプの成分もまた、シェルの混合層に含めることができる。特定の実施形態においては、混合層には、層を形成する3種類以上、または4種類以上の異なる成分が含まれ得る。いくつかの場合には、混合層は自己集合した(self−assembled)単層である。
【0064】
層を形成する成分が2以上存在する実施形態においては、それぞれの成分は、層の重量の例えば、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%の量で層中に存在し得る。例えば、2成分系においては、混合層中の第1の成分と第2の成分の合計量に対する第1の成分の百分率は、(重量で)例えば、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%であり得る。他の実施形態においては、2成分系において、混合層中の第1の成分と第2の成分の合計数と比較した第1の成分の百分率は、例えば、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%であり得る。
【0065】
複数の実施形態の1つの組においては、本明細書中に記載する構造体を、被験体または生物学的試料に対しておよび/あるいは被験体または生物学的試料から、特定の分子を隔離する、輸送する、または交換するように構築し、配置する。1つ以上の核酸を含み得る構造体はまた、試料または患者において核酸を送達する、核酸を放出する、および/または遺伝子発現を調節するようにも機能し得る。したがって、本明細書中の特定の構造体は複数の機能を有することができる。
【0066】
複数の実施形態の1つの組においては、本明細書中に記載する構造体を、ナノ構造体コアまたは中空のコアを含むかどうかにはかかわらず、被験体または生物学的試料に対して、および/あるいは被験体または生物学的試料から特定の分子を隔離する、輸送する、または交換するように構築し、配置する。例えば、被験体に導入すると、構造体は、細胞、組織、臓器、粒子、流体(例えば、血液)、およびそれらの一部のような、被験体中の1つ以上の成分と相互作用することができる。上記相互作用は、少なくとも一部、上記構造体のシェルを介して起こり得、そして上記相互作用には、例えば、被験体の1つ以上の成分から上記構造体への、および/または構造体から上記被験体の1つ以上の成分への、物質(例えば、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、核酸、栄養素)の交換が含まれ得る。いくつかのそのような実施形態においては、上記構造体のシェルを、被験体由来の1つ以上の物質との好ましい相互作用(例えば、結合、吸着、輸送)を可能にする特性を持つ成分を含むように設計することができる。例えば、シェルには、本明細書中に記載するように、特定の疎水性、親水性、表面電荷、官能基、結合についての特異性、および/または特定の相互作用を促進するための密度を有している成分が含まれ得る。特定の実施形態においては、被験体由来の1つ以上の物質が上記構造体により隔離され、そして上記構造体は、上記物質の排出、分解、および/または輸送を促進することができる。上記物質の排出、分解、および/または輸送は、特定の有益な効果および/または治療効果をもたらすことができる。このように、本明細書中に記載する構造体は、特定の疾患または身体状態の診断、予防、処置または管理のために使用することができる。
【0067】
実施形態の1つの特定の組においては、本明細書中に記載する構造体を、コレステロール(および/または他の脂質)を隔離するように構築し、配置する。理論に束縛されることは望まないが、本明細書中に記載する特定の構造体が、上記構造体の疎水性層(例えば、脂質二重層のような脂質層)との疎水性相互作用を介してコレステロールを隔離できるという仮説が立てられている。例えば、いくつかの場合には、コレステロールは疎水的相互作用により構造体の表面に対して(例えば、シェルの外側表面に対して)に結合することができる。他の場合には、コレステロールを、シェルの外側表面から、シェルの内側表面に、および/または構造体のコアに輸送することができる。コレステロールもまたシェルに、例えば、シェルの2つの層の間に埋め込むことができる。必要に応じて、本明細書中に記載する構造体には、コレステロールのおよび/または他の脂質の隔離を促進することができる、1つ以上のアポリポタンパク質(例えば、アポリタンパク質−A1)、タンパク質、またはペプチドを含めることができる。本明細書中に記載する構造体はまた、細胞から、または他の循環リポタンパク質種からコレステロールおよびリン脂質を除去することにより、コレステロールを隔離することができる。本明細書中に記載する構造体により隔離されたコレステロールは、いくつかの実施形態においては、酵素により(例えば、レシチン:アシルCoAトランスフェラーゼ(LCAT)によって)エステル化して、構造体の中心に向かって移動することができるコレステロールエステルを形成することができる。本明細書中に記載するように、コレステロールを隔離するように適応させた構造体はまた、患者または試料において核酸を送達する、および/または遺伝子発現を調節するように機能し得る。
【0068】
さらに、理論に束縛されることは望まないが、本明細書中に記載する特定の構造体は、高濃度のコレステロール(例えば、プラーク)からコレステロールを隔離し、かつ、それを肝臓に直接的または間接的に移動させることができると考えられる。例えば、コレステロールを、プラークからのコレステロールの直接的な流出により高濃度のコレステロールの領域(例えば、プラーク)から、またはプラークの任意の成分から、本明細書中に記載する構造体の中または上へ隔離することができる。いくつかのそのような実施形態においては、構造体により隔離されたコレステロールは、構造体によって肝臓に直接輸送される。他の実施形態においては、他の循環リポタンパク質種(例えば、LDL)が、コレステロール交換に関係し得る。例えば、いくつかの場合には、遊離のコレステロールまたはエステル化コレステロールが、他のリポタンパク質から本明細書中に記載する構造体へと移動させられる。他の場合においては、遊離のコレステロールまたはエステル化コレステロールが本明細書中に記載する構造体により隔離されると、コレステロールは、構造体から他のリポタンパク質種へと移動することができ、これは最終的には肝臓に行き着くことができる。したがって、そのような実施形態においては、本明細書中に記載する構造体は逆方向のコレステロール輸送を間接的に増大させることができる。さらに、本明細書中に記載する構造体から他のリポタンパク質種に遊離のコレステロールまたはエステル化コレステロールを隔離する場合は、構造体は、例えば、高コレステロール含有量の領域、プラーク、循環リポタンパク質、または高コレステロール濃度の他の生理学的部位からコレステロールをさらに隔離することができる。しかし、本明細書中に記載する構造体が、他のルート、例えば、尿を介してコレステロールおよび/または他の分子を除去することもでき、そして本発明はこの点に関しては限定されないことが理解されるものとする。いくつかの実施形態においては、構造体は、これらまたは他のルートによりコレステロールを隔離することができ、そしてまた、隔離プロセスの前、その間、またはその後に核酸を送達する、および/または遺伝子発現を調節するように機能することもできる。
【0069】
本明細書中に記載する構造体および/または組成物により隔離された分子(例えば、コレステロールまたは他の脂質)の量は、例えば、構造体のサイズ、粒子の生物学および界面化学、ならびに投与方法に依存し得る。例えば、構造体が末梢部から肝臓へと無期限に循環し再び出て行く場合は、構造体が再利用されるので、組成物が有効であるためには、比較的少数のコレステロール分子がそれぞれの構造体により隔離される必要がある。他方では、組成物が、例えば、コレステロールまたは胆汁酸塩結合性樹脂として経口的に使用される場合は、それぞれの構造体が、より多くの数のコレステロールを隔離してコレステロールの取込みを増加させることができる。また、構造体が、コレステロールを隔離した後で(例えば、肝臓または尿を介して)急速に排出されるようなサイズである場合は、構造体1つあたりの大量のコレステロールの取込みおよび/または継続的な注入を実施することができる。このように、薬学的組成物または他の処方物に取り込ませることができる本明細書中に記載する単一の構造体は、構造体のサイズ(例えば、表面積および/または体積)、特定の用途、ならびに投与方法に応じて変わり得る、例えば、少なくとも2、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも500、少なくとも1,000、少なくとも2,000、少なくとも5,000または少なくとも10,000個の、任意の適切な数の特定のタイプの分子(例えば、コレステロールのような脂質;エストロゲン、プロゲステロン、およびテストステロンのようなステロイド;胆汁酸塩など)を、使用中に、隔離することができる可能性がある。いくつかの場合には、そのような数の分子は1つの特定の例で、構造体に結合させることができる。
【0070】
いくつかの場合には、単一構造体は、例えば、約50mM以下、約15mM以下、約10mM以下、約5mM以下、約1mM以下、約100μM以下、約10μM以下、約1μM以下、約0.1μM以下、約50nM以下、約15nM以下、約10nM以下、約7nM以下、約5nM以下、約4nM以下、約2nM以下、約1nM以下、約0.1nM以下、約10pM以下、約1pM以下、約0.1pM以下、約10fM以下、または約1fM以下のコレステロールに対する結合定数Kを有する。いくつかの実施形態においては、構造体は、in vivoで、総コレステロール濃度未満のコレステロールに対する結合定数を有する。いくつかの場合には、総コレステロールは循環コレステロールの量である。特定の実施形態においては、構造体は、内因性HDLの結合定数と実質的に類似する、コレステロールに対する結合定数を有する。隔離されたコレステロールの量および結合定数を決定するための方法は、以下にさらに詳細に提供する。
【0071】
特定の実施形態においては、本明細書中に記載する構造体により隔離された分子は、例えば、隔離された分子の数に応じて、構造体のサイズ(例えば、横断面積、表面積および/または体積)を増大させる。本明細書中に記載するように、分子は、構造体の表面と会合することができ、構造体のシェルの中に埋め込むこともでき、構造体のコアに輸送することもでき、またはそれらを組み合わせることもできる。このため、いくつかの実施形態においては、構造体のサイズ(例えば、横断面積、表面積および/または体積)は、隔離後/隔離中の時間と比較して、隔離前の時間から少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも70%または少なくとも100%増加し得る。
【0072】
しかしながら、本明細書中の実施形態の多くはコレステロールまたは他の脂質を隔離する状況で記載されるが、本発明がそのような内容に限定されるものではなく、本明細書中に記載する構造体、組成物、キットおよび方法は、他の分子を隔離し、そして/あるいは他の疾患または身体状態を予防する、処置する、または管理するために、必要に応じて核酸送達および/または遺伝子調節と組み合わせて使用することができることが理解されるものとする。
【0073】
本明細書に記載されるように、本明細書に記載の構造体は、必要に応じて、1以上のタンパク質、ポリペプチドおよび/またはペプチド(たとえば、合成ペプチド、両親媒性ペプチド)を含んでもよい。1つの組の実施形態において、構造体は、構造体のコレステロール移送速度またはコレステロール担持能力を増加させることができる、タンパク質、ポリペプチドおよび/またはペプチドを含む。1以上のタンパク質またはペプチドは、コア(たとえば、コアの表面、またはコアに埋め込まれた)、シェル(たとえば、シェルの内側および/または外側表面、またはシェルに埋め込まれた)またはその両方と会合してもよい。会合としては、共有的または非共有的相互作用(たとえば、疎水性および/または親水性相互作用、静電的相互作用、ファンデルワールス相互作用)が挙げられる。
【0074】
本明細書に記載の構造体と会合し得る好適なタンパク質の例は、たとえば、アポリポタンパク質A(たとえば、apo A−I、apo A−II、apo A−IVおよびapo A−V)、アポリポタンパク質B(たとえば、apo B48およびapo B100)、アポリポタンパク質C(たとえば、apo C−I、apo C−II、apo C−IIIおよびapo C−IV)およびアポリポタンパク質D、E、H等のアポリポタンパク質である。具体的には、apo A、apo Aおよびapo Eは、代謝用として、肝臓へのコレステロールとコレステロールエステルの移送を促進させ、本明細書に記載の構造体に含めることは有用であり得る。さらに、またはあるいは、本明細書に記載の構造体は、上述のようなアポリポタンパク質の1以上のペプチドアナログを含んでもよい。構造体は、任意の好適な数、たとえば、少なくとも1、2、3、4、5、6または10個のアポリポタンパク質またはそのアナログを含んでもよい。ある実施形態において、構造体は、天然のHDL粒子に類似の1〜6個のアポリポタンパク質を含む。もちろん、他のタンパク質(たとえば、非アポリポタンパク質)も本明細書に記載の構造体に含めることができる。
【0075】
特定の実施形態においては、本明細書中に記載する構造体は、内因性HDLの結合親和性と実質的に等しい、マクロファージおよび肝細胞に対する結合親和性を示し得る。いくつかの場合には、本明細書中に記載する構造体は、内因性HDL上でのアポリポタンパク質の密度の30%以内、20%以内、または10%以内であるアポリポタンパク質(例えば、Apo A−1の密度を含む。
【0076】
任意により、1以上の酵素も、本明細書に記載の構造体と会合してもよい。たとえば、レシチン−コレステロールアシルトランスフェラーゼは、遊離コレステロールをコレステロールエステル(コレステロールのより疎水性の形態)に変換する酵素である。天然のリポタンパク質(たとえば、HDLおよびLDL)において、コレステロールエステルはリポタンパク質のコアへと隔離され、円盤形から球形にリポタンパク質を変形させる。したがって、本明細書に記載の構造体は、HDLおよびLDL構造体を模倣するためにレシチン−コレステロールアシルトランスフェラーゼを含んでもよい。HDLからLDL種までエステル化コレステロールを輸送するコレステロールエステル輸送タンパク質(CETP)等の他の酵素も含むことができる。
【0077】
いくつかの場合において、1以上の生物活性剤が本明細書に記載の構造体または組成物と会合する。1以上の生物活性剤は、任意により、構造体または組成物から放出されてもよい(たとえば、長期的または短期的放出)。生物活性剤は、生物学的な系に影響を及ぼす分子を含み、該分子としては、たとえば、タンパク質、核酸、治療薬、ビタミンおよびその誘導体、ウイルス画分、リポ多糖類、細菌画分、およびホルモンが挙げられる。目的の他の薬剤は化学療法剤を含んでもよく、癌患者の処置および管理に使用される。かかる分子は、抗増殖性剤、細胞毒性薬および免疫抑制剤として一般に特徴づけられ、タキソール、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ビンカアルカロイド、アクチノマイシンおよびエトポシド等の分子を含む。
【0078】
生物活性剤の他の例としては、心血管系作用薬、呼吸器用薬、交感神経作用様薬、コリン様作用薬、アドレナリン作用またはアドレナリン作動性ニューロン遮断薬、鎮痛剤/解熱剤、麻酔薬、喘息治療薬、抗生物質、抗うつ薬、糖尿病用薬、抗真菌剤、抗高血圧剤、抗炎症剤(たとえば、プレドニゾン等のグルココルチコイド)、核酸種(たとえば、炎症伝達物質に対するアンチセンスおよびsiRNA種)、抗腫瘍薬、抗不安薬、免疫抑制剤、免疫修飾剤、片頭痛治療剤(antimigraine agent)、鎮静剤/催眠薬、抗狭心症薬、抗精神病薬、躁病治療剤(antimanic agent)、抗不整脈薬、抗関節炎薬、痛風治療薬、抗凝固剤、血栓溶解剤、抗線維素溶解剤、ヘモレオロジック剤(hemorheologic agent)、抗血小板剤、抗痙攣薬、抗パーキンソン剤(antiparkinson agent)、抗ヒスタミン薬/かゆみ止め、カルシウム調整に有用な薬剤、抗菌性物質(antibacterials)、抗ウイルス薬(antivirals)、抗菌剤(antimicrobials)、消毒剤(anti−infective)、気管支拡張薬、血糖降下薬(hypoglycemic agent)、脂質低下薬(hypolipidemic agent)、赤血球形成刺激に有用な薬剤、抗潰瘍薬(antiulcer agent)/抗逆流薬(antireflux agent)、制吐薬(antinauseant)/鎮吐薬(antiemetic)および脂溶性ビタミン、コレステロール剤(たとえば、コレステロールレベルを下げることで知られる、Lipitor、Zocor等のスタチン)、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0079】
いくつかの実施形態において、1以上の核酸は、本明細書に記載の構造体と会合している。核酸は、可変長の、二本鎖または一本鎖デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)のいずれかを含む。核酸はセンスストランドおよびアンチセンスストランドを含む。ホスホロチエート、ホスホロアミダート、ホスホネートアナログ等の核酸アナログも考えられる核酸であり、使用されてもよい。核酸はさらに染色体および染色体断片を含む。
【0080】
いくつかの場合には、核酸はオリゴヌクレオチドである。核酸またはオリゴヌクレオチドは、本明細書中で議論するような任意の適切な様式で(例えば、コアと、シェルと、またはそれらの組み合わせで)本明細書中に記載する構造体と会合することができる。核酸またはオリゴヌクレオチドは、試料または患者において遺伝子発現を調節するように適応させ、配置することができる。任意の適切な技術(例えば、静電吸着技術、化学吸着技術、金−チオール結合化学反応など)を、本明細書中に記載する構造体の一部分に対して核酸またはオリゴヌクレオチドを結合させるために使用することができる。いくつかの例においてには、核酸またはオリゴヌクレオチドを、ナノ構造体コアに対して、またはシェルに対して、共有結合させるか、共有結合に近い結合により結合させる。他の例においては、核酸またはオリゴヌクレオチドをコレステロール(例えば、5’−コレステリルDNA)に対して共有結合させ、本明細書中に記載する構造体と任意の適切な様式で会合させる。核酸またはオリゴヌクレオチドとしては、例えば、DNA、RNAなどを挙げることができ、これらは一本鎖であっても二本鎖であってもよい。いくつかの場合には、核酸またはオリゴヌクレオチドはアンチセンスDNAであり得る。RNAの具体例としては、siRNA、mRNA、miRNA、tRNAなどが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの場合には、例えば、RNAは、siRNA、またはナノ粒子をそれに対して標的化させる細胞において遺伝子発現を調節するように選択された他のタイプのRNAであり得る。特定の実施形態においては、核酸またはオリゴヌクレオチドは合成のものである。いくつかの場合には、核酸またはオリゴヌクレオチドはコレステロール化されたものである。
【0081】
上記のように、本明細書中に記載する核酸化合物またはオリゴヌクレオチドは一本鎖であっても二本鎖であってもよい。二本鎖の化合物にはまた、鎖の一方または他方が一本鎖である突出または非相補性の領域も含めることができる。一本鎖化合物には、自己相補性の領域が含まれ得、これは、この化合物がいわゆる「ヘアピン」または「ステムループ」構造を形成し、二重へリックス構造の領域を持つことを意味している。核酸またはオリゴヌクレオチドには、全長の核酸配列またはリガンド核酸配列の1000以下、500以下、250以下、100以下、または50以下、35以下、30以下、25以下、22以下、20以下、18以下、15以下、12以下、10以下、8以下、6以下、5以下、4以下、または3以下のヌクレオチド(ヌクレオチド塩基または核酸塩基(nucleobase))からなる領域に対して相補的であるヌクレオチド配列が含まれ得る。相補性領域は、少なくとも8ヌクレオチド、状況によっては、少なくとも10ヌクレオチドまたは少なくとも15ヌクレオチド、状況によっては、15ヌクレオチド〜25ヌクレオチドの間、または状況によっては、3ヌクレオチド〜20ヌクレオチドの間(例えば、3ヌクレオチド〜10ヌクレオチドの間、または3ヌクレオチド〜10ヌクレオチドの間)であり得る。相補性領域は、標的転写物のイントロン、コード配列、または非コード配列、例えば、コード配列部分に含まれ得る。
【0082】
本明細書中に記載する核酸(ナノ構造体と会合することができる)は、約3〜約1000ヌクレオチド(ヌクレオチド塩基または核酸塩基)または約3〜約1000塩基対長、約3〜約700ヌクレオチドまたは約3〜約700塩基対長、約4〜約500ヌクレオチドまたは約4〜約500塩基対長、約3〜約200ヌクレオチドまたは約3〜約200塩基対長、約3〜約150ヌクレオチドまたは約3〜約150塩基対長、約3〜約100ヌクレオチドまたは約3〜約100塩基対長、約3〜約75ヌクレオチドまたは約3〜約75塩基対長、約10〜約50ヌクレオチドまたは約10〜約50塩基対長、約10〜約40ヌクレオチドまたは約10〜約40塩基対長、約10〜約30ヌクレオチドまたは約10〜約30塩基対長、約10〜約25ヌクレオチドまたは約10〜約25塩基対長、約3〜約30ヌクレオチドまたは約3〜約30塩基対長、約3〜約20ヌクレオチドまたは約3〜約20塩基対長、あるいは、約3〜約10ヌクレオチドまたは約3〜約10塩基対長、の長さを有し得る。いくつかの実施形態においては、核酸には、約200ヌクレオチドまたは約200塩基対長以下、約150ヌクレオチドまたは約150塩基対長以下、約100ヌクレオチドまたは約100塩基対長以下、約75ヌクレオチドまたは約75塩基対長以下、約50ヌクレオチドまたは約50塩基対長以下、約30ヌクレオチドまたは約30塩基対長以下、約25ヌクレオチドまたは約25塩基対長以下、約20ヌクレオチドまたは約20塩基対長以下、約15ヌクレオチドまたは約15塩基対長以下、あるいは、約10ヌクレオチドまたは約10塩基対長以下が含まれる。他の長さもまた可能である。本明細書中に記載するように、核酸は、いくつかの実施形態においては一本鎖であり得、他の実施形態においては二本鎖であり得る。
【0083】
特定の実施形態においては、本明細書中に記載する構造体には、標的に結合させるために使用することができる極めて短いオリゴヌクレオチドが含まれ得る。例えば、microRNAは、3または4塩基の長さのような短いものであり得る「シード配列(seed sequence)」の対合を介して3’−UTRに結合することができる。
【0084】
特定の実施形態においては、標的化した配列は、本明細書中に記載する構造体と会合することができる核酸に関して上記に記載したような長さを有し得る。例えば、標的化した配列は、約3〜約1000ヌクレオチド長、約3〜約700ヌクレオチド長、約4〜約500ヌクレオチド長、約3〜約200ヌクレオチド長、約3〜約150ヌクレオチド長、約3〜約100ヌクレオチド長、約3〜約75ヌクレオチド長、約10〜約50ヌクレオチド長、約10〜約40ヌクレオチド長、約10〜約30ヌクレオチド長、約10〜約25ヌクレオチド長、約3〜約30ヌクレオチド長、約3〜約20ヌクレオチド長、または約3〜約10ヌクレオチド長の長さを有し得る。他の長さもまた可能である。
【0085】
核酸またはオリゴヌクレオチドは、DNA(特にアンチセンスとして使用するためのもの)、RNA、またはRNA:DNAハイブリッドであり得る。任意の1つの鎖には、DNAとRNAの混合物、ならびに、DNAまたはRNAのいずれかとしては容易には分類することができない改変された形態が含まれ得る。例えば、いくつかの場合には、核酸は一本鎖であり、そしてRNAとDNA核酸塩基のハイブリッドである。同様に、二本鎖化合物は、DNA:DNA、DNA:RNA、またはRNA:RNAであり得、任意の1つの鎖にはまた、DNAとRNAの混合物、ならびに、DNAまたはRNAのいずれかとしては容易には分類することができない改変された形態が含まれ得る。例えば、いくつかの場合には、核酸は、一方、または他方、あるいは両方の鎖がRNAとDNA核酸塩基からなっている二重鎖である。本明細書中に記載する構造体と会合した核酸またはオリゴヌクレオチドは、いくつかの実施形態においては組み換え体であり得る。
【0086】
本明細書中に記載する構造体と会合した核酸またはオリゴヌクレオチドには、任意の様々な改変が含まれ得、これには、骨格(ヌクレオチド間結合を含む、天然の核酸中の糖−リン酸部分)または塩基部分(天然の核酸のプリンまたはピリミジン部分)についての1つ以上の改変が含まれる。例えば、いくつかの場合には、核酸を製造するために使用する核酸塩基の1つ以上を、例えば、ホスホロチオエート、モルホリノ、2’−F、および2’−OMeのような特定の化学的部分で改変する。いくつかの実施形態においては、核酸を、蛍光団または他の造影剤(例えば、ガドリニウム、放射性核種)で改変する。例えば、核酸には、標的タンパク質または小分子に結合すると蛍光強度が変化するように適応させた蛍光団が含まれ得る。別の例においては、アンチセンス核酸化合物は、いくつかの実施形態において、約3〜約30ヌクレオチドの長さを有し得、血清中、細胞中、または化合物が送達される可能性がある場所の中での安定性などの特性を改善するための1つ以上の改変を含み得る。RNAi構築物の場合は、標的転写物に相補的な鎖は、RNAまたはその改変物であり得る。他の鎖は、RNA、DNA、または任意の他の変種であり得る。二本鎖または一本鎖「ヘアピン」RNAi構築物の二重鎖部分は、例えば、18〜40ヌクレオチド長、例えば、必要に応じて、約20〜30ヌクレオチド長の長さを有し得る。触媒核酸または酵素核酸は、いくつかの場合には、リボザイムまたはDNA酵素であり得、そしてまた、触媒核酸または酵素核酸には改変された形態も含まれ得る。
【0087】
特定の実施形態においては、本明細書中に記載する構造体と会合した核酸またはオリゴヌクレオチドを、本明細書中に記載するような脂質で改変する。例えば、核酸またはオリゴヌクレオチドをコレステロール化することができ、例えば、核酸には、5’−コレステリルDNAまたは3’−コレステリルDNAが含まれ得る。
【0088】
本明細書中に記載する構造体と会合した核酸またはオリゴヌクレオチドは、本明細書中に記載する方法および当業者に公知の方法を含む任意の適切な方法を使用して製造することができる。核酸またはオリゴヌクレオチドは、必要に応じて、本明細書中に記載する構造体の一部分に対する結合を促進するために、任意の適切な様式で改変することができる。例えば、上記のように、1つの実施形態においては、結合前の核酸またはオリゴヌクレオチドは、コレステロール官能基を含めるために改変された末端を有する。別の実施形態においては、結合前の核酸またはオリゴヌクレオチドは、アルキルチオールを含めるために改変された末端を有する。本明細書中に記載するような他の改変もまた可能である。
【0089】
核酸化合物およびオリゴヌクレオチドは、本明細書中に記載する構造体と会合すると、非センスまたはセンス対照がほとんど効果を有さないかまたは全く効果を有さない生理学的条件下および濃度で生物学的試料または患者と接触させた場合には、標的の発現を、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%調節または調整する(例えば、発現を阻害する)ことができる。いくつかの実施形態においては、核酸化合物およびオリゴヌクレオチドは、本明細書中に記載する構造体と会合すると、生理学的条件下で生物学的試料または患者と接触させた場合には、本明細書中に記載する構造体と会合しない同じ核酸化合物およびオリゴヌクレオチド(例えば、遊離の核酸化合物およびオリゴヌクレオチド)よりも、少なくとも約50%多く、少なくとも約60%多く、少なくとも約70%多く、少なくとも約80%多く、または少なくとも約90%多く、標的の発現を調節または調整する(例えば、発現を阻害する)ことができる。
【0090】
いくつかの実施形態においては、上記範囲の1つ以上で標的の遺伝子発現を調節することができる本明細書中に記載する特定の構造体は、内因性HDLを模倣する構造体である。例えば、上記構造体には、核酸および/またはオリゴヌクレオチド、ならびに、脂質(例えば、リン脂質)およびアポリポタンパク質を含有しているシェルにより実質的に囲繞されたコアが含まれ得る。そのような構造体は、1)HDLを模倣するが、核酸化合物および/またはオリゴヌクレオチドを含まない類似する構造体;あるいは、他の実施形態においては、2)内因性HDLを模倣しない構造体と会合した同じ核酸化合物および/またはオリゴヌクレオチドのいずれよりも、生理学的条件下で生物学的試料または患者と接触させた場合に、標的の遺伝子発現を、少なくとも約50%多く、少なくとも約60%多く、少なくとも約70%多く、少なくとも約80%多く、または少なくとも約90%多く調節することができる。
【0091】
いくつかの場合には、1つ以上の核酸化合物またはオリゴヌクレオチドを含み得る本明細書中に記載する構造体は、比較的高い細胞の取り込みを有し得る。例えば、細胞に送達する複数の構造体を含む組成物については、組成物中の構造体の少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%が細胞により取り込まれ得る。
【0092】
特定の実施形態においては、1つ以上の核酸化合物またはオリゴヌクレオチドを含み得る本明細書中に記載する構造体は、細胞に構造体が送達されると比較的低いエンドソームの隔離を有し得る(例えば、構造体のうちの比較的高い割合が細胞の細胞質中に残り得る)。細胞に侵入する構造体のうちの、例えば、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%が、細胞の細胞質中に残り得る。本明細書中に記載するように、エンドソームの隔離の回避により、構造体がより大きな治療効果を有することが可能となり得る。
【0093】
本明細書中に記載する成分、例えば、脂質、リン脂質、アルキル基、重合体、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、酵素、生物活性剤、核酸、および上記の標的化のための種が、任意の適切な様式で構造体と会合することができ、かつ、構造体の任意の適切な部分、例えば、コア、シェル、またはそれらの両方と会合できることが理解されるものとする。例えば、1つ以上のそのような成分が、コアの表面、コアの内部、シェルの内側表面、シェルの外側表面と会合することができ、かつ/あるいは、シェルに埋め込むことができる。さらに、いくつかの実施形態においては、そのような成分は、被験体の1つ以上の成分(例えば、細胞、組織、臓器、粒子、流体(例えば、血液)、およびその一部分)から本明細書中に記載する構造体へ、および/または、構造体から被験体の1つ以上の成分への、物質(例えば、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、核酸、栄養素)の交換および/または輸送を容易にするために使用することができる。いくつかの場合には、上記成分は、被験体由来の1つ以上の物質との好ましい相互作用(例えば、結合、吸着、輸送)を可能にする化学的および/また物理的特性を有する。
【0094】
さらに、本明細書中に記載する成分、例えば、脂質、リン脂質、アルキル基、重合体、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、酵素、生物活性剤、核酸、および本明細書中に記載する標的化のための種は、被験体または生物学的試料への投与前に、および/または、被験体または生物学的試料への投与後に本明細書中に記載する構造体と会合させることができる。例えば、いくつかの場合には、本明細書中に記載する構造体には、in vivoまたはin vitroで投与されるコアおよびシェルが含まれ、また、構造体は、被験体または生物学的試料から1つ以上の成分(例えば、アポリポタンパク質)を隔離した後により大きな治療効果を有する。すなわち、構造体は、投与された後に、構造体の効力を高めるために被験体または生物学的試料に由来する天然成分を使用することができる。
【0095】
いくつかの実施形態においては、本明細書中に記載する構造体には、様々な刺激により構造体(例えば、ナノ構造体コア表面)からの核酸の放出を制御するための調節性の核酸成分を含めることができる。刺激としては、例えば、ex vivo誘因(例えば、光)、生理学的誘因(例えば、細胞内環境の低下)、または病理学的誘因(例えば、反応性酸素種または低いpH)を挙げることができる。構造体の特性の調整もまた、構造体からの核酸の放出を促進するために使用することができる。例えば、シェルの一部分(例えば、リン脂質のような脂質)、構造体の電荷(例えば、構造体の表面)、タンパク質の有/無、および/または表面に吸着させた核酸に対して結合させたリガンド(例えば、コレステロール、または他の脂質など)を、いくつかの実施形態においては、構造体からの核酸の放出を促進するために改変することができる。核酸により誘発される放出機構を使用して、一旦細胞の内部に入った構造体の作用機構を試験し、様々な放出化学反応を用いて複数の物質を比較し、そして/または最初の試験後に表面に現れ得る生体−ナノ界面チャレンジ(bio−nano interfacial challenge)(例えば、エンドソームの隔離)を取り扱うための方法を提供することができる。
【0096】
いくつかの実施形態においては、核酸を放出するために使用することができる構造体を、例えば、ナノ構造体コアの表面に対するオリゴヌクレオチド(例えば、DNA)のAu−Sカップリングを使用して製造することができる。核酸放出のために本明細書中に記載する構造体とともに使用することができる成分の例を、図15と組み合わせて実施例5に記載する。いくつかの実施形態においては、構造体は、コアの表面上または構造体のシェル内の核酸配列の遺伝子を調節する部分を効率よく隔離することができ、遺伝子を調節する部分は、遺伝子発現を調節するために必要な細胞内の細胞質性機構に利用されない場合がある。例えば、コアを囲繞している構造体のシェルが、遺伝子発現を調節するために必要な細胞内の細胞質性機構に対して核酸が曝されることを妨げるかまたは阻害し得るが、構造体は、誘発されると核酸を放出するように適応させることができる。核酸放出のタイミングをそのような方法によって制御できることは有利である。さらに、いくつかの実施形態においては、核酸が構造体の表面に対して曝されないかまたは最小限しか曝されないように、構造体のシェルの中に核酸を隔離することにより、ヌクレアーゼによる核酸の分解を防ぐかまたは少なくすることができる。したがって、いくつかの場合には、核酸およびオリゴヌクレオチドは、本明細書中に記載する構造体と会合すると、ヌクレアーゼによる分解に対して低い感受性を有し得る。
【0097】
複数の実施形態の1つの組においては、処置方法に、試料または患者に対して本明細書中に記載する複数の構造体を送達する工程が含まれる。ここでは、上記構造体には、コアと、遺伝子発現を調節するように適応させたオリゴヌクレオチドを実質的に囲繞しているシェル(例えば、脂質または他の構成要素を含む)が含まれる。この方法にはまた、試料または患者に対して上記構造体からオリゴヌクレオチドを放出する工程、および試料または患者において遺伝子発現を調節する工程も含まれる。
【0098】
いくつかの実施形態においては、本明細書中に記載する構造体、組成物、および方法を標的化のために使用することができ、その結果、本明細書中に記載する構造体を特定の標的部位に送達することができる。標的化には、いくつかの実施形態において、特定の標的部位(単数または複数)に特異的な1つ以上のリガンドまたは受容体で上記構造体を機能化する工程が含まれ得る。例えば、本明細書中に記載する構造体には、標的化しようとする部位の表面上で発現される受容体に対するリガンド(またはリガンドに対する受容体)が含まれ得る。特定の表面成分の例としては、抗体(抗体フラグメントおよび誘導体を含む)、プラークマーカー、特定の細胞表面マーカー、小分子(例えば、葉酸塩)、およびアプタマー、すなわち、生物学的部分のような特定の標的分子を特異的に結合することができる核酸(例えば、RNAアプタマーおよびDNAアプタマー)が挙げられる。アテローム性動脈硬化プラーク中、およびプラークの近傍の血管内皮細胞中の特定の標的の例としては、フィブリン、マクロファージ、VCAM−1、E−セレクチン、インテグリン[アルファ][ベータ]、P−セレクチンおよびP−セレクチン糖タンパク質リガンド−1(PSGL−1)が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、本明細書中に記載する構造体のタンパク質成分を改変し、標的とする分子、例えば、Apo EまたはApo Aとして使用することができる。上記構造体には、さらに特定の小分子を標的とするための特定の基(例えば、アシアロ基)を含めることができる。
【0099】
1つの態様においては、本明細書中に記載するような構造体を、マクロファージもしくは肝細胞、または他の免疫細胞に対して標的化することができる。複数の実施形態の1つの組においては、例えば、構造体を、アテローム性動脈硬化症の処置のためにマクロファージに対して標的化することができる。例えば、構造体は、アテローム性動脈硬化症ならびにコレステロールおよび/またはマクロファージが関与している類似する状態を処置するために、マクロファージからコレステロールを隔離することができる。構造体はまた、試料または患者において核酸を送達する、および/または遺伝子発現を調節するように適応させることもできる。
【0100】
複数の実施形態の1つの組においては、本明細書中に記載する構造体、組成物、および方法を、異常脂質レベルと関係がある疾患または身体状態を診断する、予防する、処置する、または管理するために使用する。例えば、高密度リポタンパク質は、アテローム性動脈硬化症の発症、およびそれにより生じる、心疾患および発作のような疾病を防御する動的血清ナノ構造体である。天然に存在しているHDLを模倣する構造体を含むものなどの、本明細書中に記載する特定の組成物および方法を施行することにより、循環血清HDLレベル(例えば、低いHDLレベル)を増大させることができる。これは、例えば、逆方向のコレステロール輸送を増大させることにより、アテローム性動脈硬化症を予防する、および可能であれば逆転させるための有望な治療的アプローチを提供することができる。他の実施形態においては、本明細書中に記載する組成物および方法を使用して、LDLレベルを低下させる(例えば、高いLDLレベルを低下させる)、またはLDLレベルを一時的に増大させる(例えば、天然に存在しているLDLを模倣する構造体を使用することにより)ことができる。さらに、特定の実施形態においては、異常脂質レベルと関係がある疾患または身体状態の診断、予防、処置、または管理には、体の中を通るかまたは体の外へのコレステロールの流れ(flux)を増大させる方法により、逆方向のコレステロールの輸送を(例えば、直接的または間接的に)増大させるために、本明細書中に記載する構造体、組成物、および方法を使用する工程が含まれ得る。疾患または身体状態のそのような診断、予防、処置、または管理方法には、標的の遺伝子発現を調節するために、および/または核酸を送達するために上記構造体を使用する工程が含まれ得る。したがって、本明細書中に記載する特定の構造体は、コレステロールの隔離と、遺伝子調節性の治療薬としての機能の両方を行うことができる。
【0101】
死亡率と世界中での有病率を考慮すると、アテローム性動脈硬化症の重大性は深刻である。アテローム性動脈硬化症は、過剰な循環コレステロールにより起こる全身動脈管系の慢性の浸潤性かつ炎症性の疾患である。コレステロールは、ヒトの体の水性環境では不溶性であり、したがって、リポタンパク質(LP)として知られている動的ナノ粒子キャリアにより移動する。コレステロールの主なLPキャリアは、低密度リポタンパク質(LDL)および高密度リポタンパク質(HDL)である。LDLは肝臓を起源とし、高い循環レベルがアテローム性動脈硬化症を促進し、心血管疾患のリスクを高める。治療によるLDLの低下は、心血管疾患の死亡率を低下させることが示されている。逆に、HDLは、排出のための、末梢の蓄積部位(マクロファージ泡沫細胞)から肝臓への逆方向のコレステロールの輸送(RCT)を促進することが周知である。したがって、高いHDLレベルは、心血管疾患のリスクと逆相関している。現在LDLを低下させる治療法が存在しているにも関わらず、実質的な心血管疾患の負担(burden)に対処することが、HDLの有益な効果を生かすための治療用ストラテジーにおける強い目的である。本明細書中に記載する構造体は、いくつかの実施形態においては、アテローム性動脈硬化症を処置し、そして同時に核酸を送達する、および/または遺伝子発現を調節するように、内因性HDLを模倣するために使用することができる。例えば、複数の実施形態の1つの組においては、本明細書中に記載する構造体は、マクロファージからのコレステロールの隔離に関してHDLの生体模倣性の特徴を示すことができ、また、Apo B−100タンパク質の発現を低下させるために肝細胞に対して二重鎖siRNAを送達し、それによりLDLの産生を阻害するように表面を改変することもできる。したがって、上記構造体は1つ超の細胞タイプにおいて機能し得る。二重機能性を有しているそのような構造体の設計には、潜在的に、その粒子が逆方向のコレステロールの流出を媒介する能力を低下させない、およびその逆も同じであるように、siRNA(または他のオリゴヌクレオチド)の表面被覆度を平衡に保つことが含まれ得る。
【0102】
1つの特定の実施形態において、本明細書に記載の構造体、組成物、および方法は、アテローム性動脈硬化症の処置のために使用される。アテローム性動脈硬化症の処置は、少なくとも1つのアテローム性動脈硬化プラーク中のコレステロール含有量の減少をもたらす治療的介入を実施すること、または、アテローム性動脈硬化プラークの形成または拡張を予防的に阻害または防止することを含んでもよい。一般に、アテローム性動脈硬化プラークの体積、ゆえに、血管腔の閉塞の程度も減少する。いくつかの実施形態において、この構造体、組成物、および方法は、家族性高脂血症に関連するアテローム性動脈硬化病変を処置するのに有用である。
【0103】
本明細書に記載の組成物および方法は、アテローム性動脈硬化プラークのコレステロール含有量および/またはアテローム性動脈硬化プラークの体積を減少させ得る。コレステロール含有量は、たとえば、少なくとも10%〜30%、少なくとも30%〜50%、いくつかの例においては少なくとも50%〜85%以上減少してもよい。アテローム性動脈硬化プラークの体積も減少してもい。プラーク体積の減少は、たとえば、少なくとも5%〜30%、大抵は50%程度、いくつかの例においては75%以上であってもよい。アテローム性動脈硬化プラークのコレステロール含有量および/またはアテローム性動脈硬化プラークの体積の減少を決定する方法は、当業者に公知であり、血管内超音波および磁気共鳴画像形成を含む。
【0104】
本明細書中に記載する構造体および/または組成物の利益を受け得る、異常脂質レベルに関連する他の疾患または身体状態としては、例えば、コレステロールまたは他の物質を含有するプラークの沈積物が静脈の内膜および中膜内部に形成される静脈硬化症または任意の静脈の状態、急性冠症候群、安定狭心症、不安定狭心症を含む狭心症、炎症、敗血症、血管炎症、皮膚炎症、うっ血性心不全、冠性心疾患(CHD)、心室不整脈、末梢血管疾患、心筋梗塞、致命的な心筋梗塞、致命的ではない心筋梗塞の発症、虚血、心臓血管の虚血、一過性脳虚血発作、心疾患と無関係な虚血、虚血再潅流障害、脈管再生に対する必要性の低下、凝固障害、血小板減少、深部静脈血栓症、膵炎、非アルコール性脂肪肝炎、糖尿病性ニューロパチー、網膜症、有痛性糖尿病性神経障害、跛行、乾癬、重症虚血肢(critical limb ischemia)、不能症、異脂肪血症、高脂血症、高リポ蛋白血症、低αリポ蛋白血症、高トリグリセリド血、虚血症状に至る任意の狭窄状態、肥満、タイプIおよびタイプIIの両方を含む糖尿病、魚鱗癬(ichtyosis)、発作、脆弱なプラーク、下脚潰瘍形成、重篤な冠状動脈の虚血、リンパ腫、白内障、内皮機能不全、黄色腫、末端器官機能障害、血管疾患、喫煙および糖尿病が原因である血管疾患、頚動脈および冠動脈疾患、退行性および収縮性の確立されたプラーク、不安定プラーク、脆い血管内膜、不安定な血管内膜、内皮傷害、外科処置の結果である内皮の損傷、血管疾患に関連する病的状態、動脈の管腔での潰瘍形成、バルーン血管形成術の結果である再狭窄、タンパク質蓄積症(例えば、アルツハイマー病、プリオン病)、止血の疾患(例えば、血栓症、栓友病、播種性血管内凝固症候群、血小板減少、ヘパリン誘発血小板減少、血栓性血小板減少性紫斑病)、リウマチ病(例えば、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、多発性筋炎/皮膚筋炎、強皮症)、神経学的疾患(例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病)、またそれらの二次的な適応症(subindication)が挙げられる。本明細書中に記載するように、そのような状態は、標的の遺伝子発現を調節するように、および/または核酸を送達するように必要に応じて適応させることができる、本明細書中に記載する構造体を使用して処置または管理することができる。そのような疾患または状態の特定の処置あるいは管理方法には、コレステロールを隔離し、かつ遺伝子調節性治療薬としても機能するように、本明細書中に記載する構造体を使用することが含まれる。
【0105】
本明細書中に記載する構造体、組成物、および方法は、例えば、トリグリセリドレベルを低下させる、他の脂質のレベルを増大または低下させる、プラーク安定性を高めるまたはプラーク崩壊の可能性を低下させる、血管拡張を増加または減少させる、炎症を処置または予防する、炎症性疾患または炎症反応を処置または予防する、平滑筋および血管内膜を強化または安定化させる、肝臓への輸送のための細胞外コレステロールの流出を刺激する、免疫反応を調整する、アテローム性動脈硬化プラークからコレステロールを移動させる、任意の膜、細胞、組織、臓器、および、組成的および/または機能的改変が有利であろう細胞外領域および/または構造を改変すること、ならびに/あるいは疾患または身体状態と関係があるタンパク質を発現する遺伝子を調節することによって、異常脂質レベルに関連する疾患または身体状態を診断する、予防する、処置する、または管理することができる。1つ超のそのような方法の組み合わせもまた、疾患または身体状態を診断する、予防する、処置する、または管理するために使用することができる。
【0106】
実施形態の別の組において、上記構造体、組成物、および方法は、脈管状態または心臓血管状態を有する被験体または心臓血管状態を発症する危険のある被験体を処置するために使用される。脈管状態は、血管(動脈と静脈)に関する状態である。心臓血管状態、心臓および心臓に関連する血管に関する状態である。脈管状態の例としては、糖尿病性網膜症、糖尿病腎症、腎線維症、高血圧症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化プラーク、アテローム性動脈硬化プラークの破裂、脳血管発作(脳卒中)、一過性脳虚血発作(TIA)、末梢動脈障害、動脈閉塞性疾患、脈管の動脈瘤、虚血、虚血性潰瘍、心臓弁狭窄、心臓弁逆流、および間欠性跛行が挙げられる。心臓血管状態の例としては、冠動脈疾患、虚心性心筋症、心筋虚血、および虚血または心筋虚血後血管再生が挙げられる。
【0107】
本明細書に記載の構造体、組成物、および方法も、心臓血管状態を発症する危険のある被験体を処置するために使用することができる。心臓血管状態の危険度は、被験体にある危険因子の多数および重篤度または大きさに依存する。危険チャートおよび予測アルゴリズムは、危険因子の存在および重篤度に基づくヒト被験体の心臓血管状態の危険の評価に利用可能である。危険因子の存在および重篤度に基づくヒト被験体の心臓血管状態の危険を評価するために一般に用いられている1つのアルゴリズムは、フラミンガム心臓研究危険予測スコアである。被験体の10年の算出されたフラミンガム心臓研究危険スコアが10%を上回る場合、ヒト被験体が心臓血管状態を有する危険が高くなる。ヒト被験体における心血管系事象の危険を評価する他の方法は、フラミンガム心臓研究危険予測スコアに、CRP等の全身性炎症のマーカーのレベルの測定を組み込む包括的な危険スコアである。ヒト被験体における心血管系事象の危険を評価する他の方法としては、冠状動脈のカルシウム走査、心臓の磁気共鳴画像形成、および/または磁気共鳴血管撮影が挙げられる。
【0108】
また、本明細書に記載の構造体、組成物、および方法は、予防的処置に有用であり得る。予防的処置は、有用な以下の侵襲性の脈管手順であってもよい。たとえば、内皮に損傷を受けた脈管の領域は、アテローム性動脈硬化プラークが発生する危険性が増加する。したがって、冠動脈形成、脈管のバイパス移植術、および脈管の内皮層に損傷を与える他の処置等の侵襲性の脈管手順は、本発明の方法と共に実施されてもよい。侵襲性の脈管手順が内皮に損傷を与えるとき、構造体は、損傷を受けた領域からコレステロールを除去し、かつ内皮の治癒中にプラーク形成の拡張を阻害または防止するよう働いてもよい。
【0109】
高脂血症も本明細書に記載の組成物および方法によって処置されてもよい。遺伝的または二次的原因からの低αリポ蛋白血症、家族性混合型高脂血症、および家族性高コレステロール血症を有する個体への構造体(単独、またはapo−A1およびapo−A2等のタンパク質に結合される)の投与は有用な処置である。
【0110】
複数の実施形態の別の組においては、本明細書中に記載する構造体はがんを処置するために使用することができる。がん細胞は、細胞膜の生合成と完全性を維持するためには、HDLによるコレステロールの送達に依存し得る。このように、本明細書中に記載する構造体は、これらががん細胞を標的化できるように、内因性HDLを模倣するように適応させることができる。上記構造体はまた、一旦がん細胞の内部に入ると遺伝子発現を調節するようにも機能することができる。例えば、1つの特定の実施形態においては、構造体には、細胞内miR−210レベルを下げるように適応させた1つ以上のオリゴヌクレオチドが含まれ得る。細胞内miR−210レベルの低下は、ヒト臍静脈内皮細胞においては新脈管形成を阻害し、さらに、がん細胞のタイプにおいてはアポトーシスを誘導することが示されている。別の例においては、本明細書中に記載する構造体には、遺伝子発現を調節するようにがん細胞内でmRNA配列に対して選択的に結合するオリゴヌクレオチドが含まれ得る。例えば、構造体には、ヒトのがんにおいてほぼ普遍的にアップレギュレートされる抗アポトーシスタンパク質であるサバイビン(surviving)の発現を調節する核酸配列(例えば、抗サバイビンオリゴヌクレオチド)が含まれ得る。抗サバイビンオリゴヌクレオチドは、細胞内サバイビンmRNAを選択的に結合し、サバイビンタンパク質の発現をノックダウンさせ、そしてがん細胞の死を誘導する能力を有する。本明細書中に記載する構造体にはまた、がんを処置するための他のオリゴヌクレオチドも含まれ得る。
【0111】
いくつかの場合には、構造体を、コレステロールを隔離する、核酸を送達する、および/または遺伝子発現を調節するような1つ以上の他の機能と組み合わせて造影剤として使用することができる。例えば、構造体のナノ構造体コアには、造影剤としての使用に適している材料(例えば、金、酸化鉄、量子ドット、放射性核種など)が含まれ得る。他の実施形態においては、シェルには造影剤が含まれ得る。例えば、ナノ粒子または他の適切な造影剤を、シェルの脂質二重層の中に埋め込むことができ、また、シェルの内側表面または外側表面と会合させることもできる。造影剤は、MRI、X線、PET、CTなどのような当業者に公知の様々な画像化方法を増強するために使用することができる。
【0112】
いくつかの実施形態においては、本明細書中に記載する構造体を細胞内診断用センサーとして使用することができる。例えば、本明細書中に記載するように、核酸が会合した構造体を細胞の細胞質に送達することができ、ここで、上記構造体は、標的RNA配列とそれらのタンパク質標的の発現を調節する。細胞の細胞質に核酸を完全な状態で送達する能力は、RNA標的を調節するだけではなく、それらを検出する機会も提供する。例えば、いくつかの実施形態においては、ヘアピンの自己ハイブリダイゼーションが原因で3’および5’蛍光消光物質(fluor−quencher)の対がかなり近くに存在する「分子ビーコン」を、ビーコンに対する相補性の結合と蛍光消光の緩和があるため、送達して、細胞内標的mRNAを検出することができる。他の実施形態においては、短い核酸を、細胞内タンパク質(例えば、アプタマー)または小分子(例えば、ATPセンサー)の存在を、それぞれ、標的タンパク質または小分子の結合が原因で生じる蛍光の変化を通じて検出するように設計することができる。本明細書中に記載する構造体は、広範囲の生体分子に対する核酸センサーを送達するように作製することができ、そのセンサーは、例えば、標的分子の結合により増大した蛍光を通じて、上記生体分子の存在についての簡単な読み出しを提供する。
【0113】
いくつかの実施形態において、組成物は、被験体または生物学的試料に導入される。また、組成物および/または被験体もしくは生物学的試料の構造体は、被験体または生物学的試料の疾患または状態を決定することができるアッセイ条件にさらされる。構造体の少なくとも一部分は、被験体または生物学的試料から回収されてもよく、回収した構造体を用いてアッセイを行なってもよい。構造体に結合した、さもなければ構造体により隔離された分子の量および/または種類について、構造体をアッセイしてもよい。たとえば、1つの組の実施形態において、競合実験が行なわれ、たとえば、標識されたコレステロールが添加され、コレステロールの置換が監視される。標識コレステロールの取り込みがより多く測定されればされるほど、より少ない、結合した未標識の遊離コレステロールが存在する。これは、たとえば、本明細書に記載の構造体を含む組成物を被験体または生物学的試料に投与した後、および次いで、被験体または生物学的試料から構造体を回収した後に行なうことができる。たとえば、構造体が被験体または生物学的試料の中でどれ程のコレステロール(未標識)を隔離したか確かめるための診断薬として使用される場合にこの方法を使用することができる。
【0114】
他の方法も本明細書に記載の構造体によって隔離されたコレステロールの量を決定するために使用することができる。いくつかの場合において、標識コレステロール(たとえば、NBDコレステロール等の蛍光標識コレステロール、または放射性コレステロール)を使用することができる。標識コレステロールは、in vitroまたはin vitroのいずれかで構造体に添加することができる。標識コレステロールのない構造体を加えて結合の際の蛍光増加を測定することによって、構造体への標識コレステロールの結合定数を算出することができる。さらに、構造体からコレステロールを除去するために、粒子(たとえば、KCN)を溶解し、次に、溶液内で得られた蛍光を測定することができる。標準曲線と比較すると、1粒子当たりのコレステロール分子の数の決定を可能にするかもしれない。有機抽出および定量的質量分析等の他の方法も、本明細書に記載の1以上の構造体によって隔離されたコレステロールの量を算出するために使用することができる。
【0115】
本明細書に記載するように、本発明の構造体は、「薬学的組成物」または「薬学的に許容可能な」組成物中で使用されてもよく、1以上の薬学的に許容可能なキャリア、添加物および/または希釈剤とともに処方される、本明細書に記載の1以上の構造体の薬学的に有効な量を含む。本明細書に記載の薬学的組成物は、遺伝子の発現を制御することに関連する疾患または身体状態を含むがこれに限定されない、本明細書に記載の疾患または身体状態等の疾患または身体状態を診断、予防、処置、または管理するのに有用であり得る。いくつかの場合において、上記の構造体および組成物は、診断目的および治療目的の両方のために使用することができる。なお、図と関連して説明したものを含む、かかる薬学的組成物において本明細書に記載の任意の好適な構造体を使用することができることが理解されるべきである。いくつかの場合において、薬学的組成物中の構造体は、無機材料を含むナノ構造体コアと、実質的にナノ構造体コアを囲繞してナノ構造体コアに付着するシェルとを含む。
【0116】
薬学的組成物は、以下に適合されたものを含む、固体または液体形状で投与のために特別に処方されてもよい:経口投与、たとえば、水薬(drench)(水性または非水性の溶液または懸濁物)、錠剤、たとえば、口腔内、舌下、および全身吸収に標的化されたもの、ボーラス、粉末、顆粒、舌部への適用のためにペースト;非経口投与、たとえば、無菌溶液または懸濁物または徐放性処方物としての皮下、筋肉内、静脈内または硬膜外注射;局所適用、たとえば、クリーム、軟膏、または制御放出パッチ、皮膚、肺または口腔に適用される噴霧剤;膣内にまたは直腸内に、たとえば、ペッサリー、クリームまたは泡沫;舌下への;眼への;経皮的;鼻への;肺への;他の粘膜表面への。
【0117】
本明細書で使用される「薬学的に許容可能な」なる語句は、過度の毒性も刺激もアレルギー反応も他の問題も合併症もなく、確固とした医学的判断の範囲内で、ヒトおよび動物の組織と接触における使用に適し、かつ合理的なベネフィット/リスク比と等しい、構造体、材料、組成物および/または剤形を指す。
【0118】
本明細書で使用される「薬学的に許容可能なキャリア」なる語は、ある器官、または身体の一部分から、他の器官、または身体の他の部分へ対象の化合物を担持または輸送することに関わる、薬学的に許容可能な材料、組成物またはビヒクル、たとえば、液体または固体充填剤、希釈剤、賦形剤、または材料を封入する溶媒を意味する。各キャリアは、処方物の他の成分と適合するという意味で「許容可能」であり、患者にとって有害ではない。薬学的に許容可能なキャリアとして作用することができる材料のいくつかの例としては、ラクトース、グルコースおよびスクロース等の糖類;コーンスターチおよびバレイショデンプン等のデンプン類;セルロース、およびカルボキシルメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース等のその誘導体;トラガント末;麦芽;ゼラチン;タルク;ココアバターおよび坐薬ろう等の賦形剤;落花生油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油および大豆油等の油類;プロピレングリコール等のグリコール類;グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール等の多価アルコール類;オレイン酸エチルおよびエチルラウレート等のエステル類;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム等の緩衝剤類;アルギン酸;発熱物質を含まない水;等張食塩水;リンゲル液;エチルアルコール;pH緩衝化溶液;ポリエステル類、ポリカーボネート類および/またはポリ無水物類;および薬学的処方物で使用される他の無毒性かつ適合性の物質が挙げられる。
【0119】
ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム等の、湿潤剤、乳化剤および滑沢剤、ならびに、着色剤、剥離剤、コーティング剤、甘味料、矯味矯臭剤、香料、防腐剤および酸化防止剤も、組成物には存在し得る。
【0120】
薬学的に許容可能な酸化防止剤の例としては、アスコルビン酸、塩酸システイン、硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等の水溶性抗酸化剤;パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ−トコフェロール等の油溶性抗酸化剤;クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸等の金属キレート剤が挙げられる。
【0121】
本明細書に記載の構造体は、経口的に投与されてもよく、非経口的に投与されてもよく、皮下に投与されてもよく、かつ/もしくは、静脈内に投与されてもよい。ある実施形態において、構造体または薬学的調製物は経口投与される。他の実施形態において、構造体または薬学的調製物は静脈内に投与される。投与の別の経路としては舌下、筋肉内および経皮的投与が挙げられる。
【0122】
本明細書に記載の薬学的組成物としては、経口投与、経鼻投与、局所(口腔内および舌下を含む)投与、直腸投与、膣口投与および/または非経口投与に適しているものが挙げられる。処方物は、単位剤形で好都合に存在していてもよく、薬学の技術において周知の任意の方法で調製されてもよい。単一の剤形を製造するためにキャリア材料と組み合わすことができる有効成分の量は、処置される宿主、および投与の特定の様式に応じて変化する。単一の剤形を製造するためにキャリア材料と組み合わすことができる有効成分の量は、一般に治療効果を生む化合物の量となる。一般に、この量は、有効成分の約1%から約99%まで、約5%から約70%まで、または約10%から約30%までの範囲である。
【0123】
経口投与に適した本発明の組成物は、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ(矯味矯臭された基剤(basis)を使用し、通常は、スクロースおよびアラビアゴムまたはトラガント)、散剤、顆粒剤の形態であり得、または水性または非水性の液体中の溶液または懸濁物として、または水中油または油中水型の液体乳剤として、またはエリキシルまたはシロップとして、または香錠(pastille)(ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアラビアゴムのような不活性の基剤を使用する)および/または口内洗剤(mouth wash)として存在し得、各々、有効成分として本明細書に記載の構造体を所定量含有する。本発明の構造体もボーラス、舐剤またはペーストとして投与されてもよい。
【0124】
経口投与のための発明の固体剤形(カプセル剤、錠剤、丸剤、糖剤、散剤、顆粒剤等)では、有効成分は、クエン酸ナトリウムまたはリン酸カルシウム等の1以上の薬学的に許容可能なキャリアおよび/または以下のいずれかと混合される。デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、および/またはケイ酸等の充填剤または増量剤;たとえば、カルボキシメチルセルロース、アルギナート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアラビアゴム等の結合剤;グリセロール等の湿潤剤(humectant);寒天、炭酸カルシウム、バレイショまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある種のシリケート、および炭酸ナトリウム等の崩壊剤;パラフィン等の溶解遅延剤(solution retarding agent);第四アンモニウム化合物等の吸収促進剤(absorption accelerator);たとえばセチルアルコール、グリセロールモノステアレート、および非イオンの界面活性剤等の湿潤剤;カオリンおよびベントナイト粘土等の吸着剤;タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体のポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物等の滑沢剤;および着色剤。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合には、薬学的組成物がさらに緩衝剤を含んでもよい。同様のタイプの固形組成物も、ラクトースまたは乳糖のような賦形剤、ならびに高分子量ポリエチレングリコールを使用する、ソフトシェル状またはハードシェル状のゼラチンカプセル剤中の充填剤として使用されてもよい。
【0125】
錠剤は、圧縮または成形によって任意に1以上の副成分を用いて作られてもよい。圧縮錠剤は、結合剤(たとえば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性の希釈剤、防腐剤、崩壊剤(たとえば、ナトリウムデンプングリコラートまたは架橋されたカルボキシルメチルセルロースナトリウム)、表面活性剤または分散剤を使用して調製されていてもよい。成形錠剤は、粉末化された構造体の混合物が不活性な液体希釈剤で湿らせる好適な機械で作られてもよい。
【0126】
錠剤、および糖剤、カプセル剤、丸剤および顆粒剤等の本発明の薬学的組成物の他の固体剤形は、任意により、腸溶コーティング、および製剤技術において周知の他のコーティング等の、コーティングおよびシェルで刻み目を付ける、または調製されてもよい。また、それらは、たとえば、所望の放出プロフィールを提供するために可変比率のヒドロキシプロピルメチルセルロース、他の重合体マトリクス、リポソームおよび/またはミクロスフェアを使用して有効成分の遅いまたは制御された放出を提供するよう処方され得る。それらは急速放出のために処方されてもよい(たとえば、凍結乾燥)。それらは、たとえば細菌を保持するフィルターによるろ過によってか、または、使用直前に、滅菌剤を、滅菌水に溶かすことができる無菌の固形組成物の形態またはいくつかの他の無菌注射媒体に組み込むことによって殺菌されてもよい。これらの組成物はさらに任意により不透明化剤(opacifying agent)を含んでもよく、または有効成分のみを放出するか、任意に遅延した様式で胃腸管のある部分で有効成分を放出する組成物であってもよい。使用可能な包埋組成物の例としては、重合体材料およびろうが挙げられる。上述の賦形剤の1つ以上を用いて、適当な場合、有効成分はさらにマイクロカプセル形状である得る。
【0127】
本明細書に記載の構造体の経口投与用の液体剤形は、薬学的に許容可能な乳剤、マイクロエマルジョン、溶液、分散物、懸濁物、シロップ剤およびエリキシル剤を含む。本発明の構造体に加えて、液体剤形は、たとえば水または他の溶媒等の、当該技術で一般に使用される不活性の希釈剤、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル等の可溶化剤および乳化剤、およびそれらの混合物を含有してもよい。
【0128】
不活性の希釈剤に加えて、経口組成物は、さらに湿潤剤、乳化および懸濁剤、甘味料、矯味矯臭剤、着色剤、香料および保存剤等の補助剤を含んでもよい。
【0129】
活性化合物に加えて、懸濁物は、たとえば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル等の懸濁剤、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天およびトラガント、およびそれらの混合物を含有してもよい。
【0130】
(たとえば、直腸または膣投与用の)本明細書に記載の薬学的組成物の処方物は坐薬としてあってもよく、これは、本発明の1以上の化合物を、たとえば、ココアバター、ポリエチレングリコール、坐薬ろうまたはサリチル酸塩を含む、1以上の好適な非刺激性賦形剤またはキャリアと混合することにより調製してもよく、また、これは、室温では固体であってもよいが、体温で液体となり、それ故、体内で溶けて構造体を放出する。
【0131】
本明細書に記載の構造体の局所的または経皮的投与の剤形は、散剤、噴霧剤、軟膏剤、ペースト剤、泡沫、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、溶液、パッチ、および吸入剤を含む。活性化合物は、無菌条件下で、薬学的に許容可能なキャリア、および、必要に応じて任意の防腐剤、緩衝剤または噴霧体と混合されてもよい。
【0132】
軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤およびゲル剤は、本発明の構造体に加えて、動物性および植物性の脂肪、油、ろう、パラフィン、デンプン、トラガント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛等の賦形剤、またはそれらの混合物を含んでもよい。
【0133】
散剤および噴霧剤は、本明細書に記載の構造体に加えて、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウムおよびポリアミド粉末等の賦形剤、またはこれらの物質の混合物を含有することができる。噴霧剤は、ブタンおよびプロパン等のクロロフルオロ炭化水素および揮発性の未置換炭化水素等の通例の噴霧体をさらに含有することができる。
【0134】
経皮的パッチは、体内への本明細書に記載の構造体の制御された送達を提供する追加の利点を有する。適切な媒体に構造体を溶解させるまたは分散させることは、かかる剤形を形成し得る。吸収促進剤も、皮膚を横切って構造体の流出(flux)を増加させるために使用することができる。律速膜を提供するか重合体マトリクスまたはゲル中の構造体を分散させることにより、かかる流出の速度を制御することができる。
【0135】
眼科用処方物、眼軟膏剤、粉末、溶液等も、本発明の範囲内であるとして企画される。
【0136】
非経口投与に適した、本明細書に記載の薬学的組成物は、1以上の本発明の構造体を、薬学的に許容可能な、無菌、等張性の水性または非水性の溶液、分散物、懸濁物または乳剤、あるいは使用前に無菌注射溶液または分散物へ再構成されてもよい無菌の粉末であって、これは、、糖、アルコール、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、処方物を意図した受容体の血液と等張性にする溶質または懸濁剤または増粘剤を含む、粉末と組み合わせて含む。
【0137】
本明細書に記載の薬学的組成物に使用されてもよい、好適な水性および非水性キャリアの例としては、水、エタノール、多価アルコール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、およびそれらの好適な混合物、オリーブ油等の植物油、およびオレイン酸エチル等の注射可能な有機エステルが挙げられる。適切な流動度は、たとえば、レシチン等のコーティング材料の使用により、分散物の場合に必要とされる粒度の維持、および界面活性剤の使用により維持することができる。
【0138】
これらの組成物は、さらに防腐剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤等の補助剤を含んでもよい。本発明の構造体上での微生物の活動の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、たとえば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸等の含有によって促進され得る。組成物へ、糖、塩化ナトリウムなどのような等張剤を含むことも望ましい。さらに、注射可能な薬学的形態の持続的吸収は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン等の吸収を遅らせる剤の含有によってもたらされてもよい。
【0139】
本明細書に記載するように、本発明に記載の構造体および組成物との使用に適した送達システムは、時限放出(time−release)、遅延放出、持続放出、または制御放出送達システムを含む。かかるシステムは、多くの場合に構造体の反復投与を回避し、被験体および医師に対する利便性を増加させ得る。多くのタイプの放出送達システムが利用可能であり、当業者に周知のものである。それらは、たとえば、ポリ乳酸および/またはポリグリコール酸、ポリ無水物、およびポリカプロラクトン等の重合体に基づくシステム;コレステロール等のステロール、コレステロールエステル、およびモノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリド等の脂肪酸または中性脂肪を含む脂質に基づく非重合体システム;ヒドロゲル放出システム;シラスティック・システム;ペプチドに基づくシステム;ワックス・コーティング;従来の結合剤および賦形剤を使用する圧縮錠剤;または部分的に融合された移植物(implant)。具体例としては、組成物がマトリクス内の形態で含まれている侵食性のシステム、または活性成分が放出速度を制御する拡散性のシステムが挙げられるが、それらに制限されない。組成物は、たとえば、ミクロスフェア、ヒドロゲル、重合体レザバ、コレステロールマトリクス、または重合体系としてあってもよい。いくつかの実施形態において、システムは、たとえば、処方物の拡散または浸食/分解速度を制御することにより、活性化合物の持続放出または制御放出を生じさせ得る。さらに、ポンプに基づくハードウェア送達システムが、いくつかの実施形態で使用されてもよい。本明細書に記載の構造体および組成物を、注射器、パッド、パッチ、チューブ、フィルム、MEMSに基づくデバイス、移植可能なデバイス等の送達デバイスと組み合わせる(たとえば、含ませる)ことができる。
【0140】
長期的な放出移植物の使用は、いくつかの場合において特に好適であり得る。本明細書において使用される「長期的な放出」は、移植物が構築および配置されて治療レベルの組成物を、少なくとも約30日間または約45日間、少なくとも約60または約90日間、または、いくつかの場合においてさらに長い期間送達することを意味する。長期的な放出移植物は、当業者にとって周知であり、上述の放出システムのうちのいくつかを含む。
【0141】
注射可能なデポ形態は、ポリラクチド−ポリグリコリド等の生分解性重合体に、本明細書に記載の構造体のマイクロカプセル化マトリクスを形成することにより作製することができる。構造体対重合体の比率、および使用される特定の重合体の性質に応じて、構造体の放出速度を制御することができる。他の生分解性重合体の例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が挙げられる。
【0142】
本発明に記載の構造体が医薬品としてヒトおよび動物に投与されるとき、それらは、そのまま与えられるか、または薬学的に許容可能なキャリアと組み合わせて、たとえば、約0.1%〜約99.5%、約0.5%〜約90%等の構造体を含有する薬学的組成物として与えられる。
【0143】
投与は、処置する条件に応じて、(たとえば、特定の部位、生理学的システム、組織、器官、または細胞型に)局所化されるか、または全身的であってもよい。たとえば、非経口(parental)注入により、移植により、経口で、経膣で、直腸で、口腔内に、肺を介して、局所的に、経鼻で、経皮的に、外科的投与により、または、組成物による標的へのアクセスが得られる任意の他の投与方法により、組成物を投与してもよい。本発明で使用され得る非経口(parental)様式としては、静脈内、皮内、皮下、窩内(intracavity)、筋肉内、腹腔内、硬膜外、または髄腔内が挙げられる。移植様式の例としては、任意の移植可能または注射可能な薬物送達システムが挙げられる。経口投与は、患者への利便性ならびに投薬スケジュールのためにいくつかの処置に有用であり得る。
【0144】
選択された投与経路にかかわらず、好適な水和形態で使用され得る本明細書に記載の構造体、および/または本発明の薬学的組成物は、当業者に公知の従来方法によって薬学的に許容可能な剤形へ処方される。
【0145】
本明細書に記載の組成物は、任意の潜在的に有害な副作用を回避するか最小化しながら、投与量(たとえば、最大量)で与えられてもよい。組成物は、有効量で、単独で、または他の化合物と組み合わせて投与することができる。たとえば、癌を処置する場合、組成物は、本明細書に記載の構造体と、癌を処置するために使用することができる他の化合物のカクテルとを含んでもよい。
【0146】
本明細書で使用される「治療上有効な量」なる語句は、任意の医療処置に適用可能な合理的なベネフィット・リスク比で、被験体にある程度の所望の治療効果をもたらすことに有効である本発明の構造体を含む材料または組成物の量を意味する。したがって、治療上有効な量は、たとえば、疾患または身体状態に関連する疾患進行を予防してもよく、最小化してもよく、逆転させてもよい。疾患進行は当業者に明白な臨床観察、研究所および画像検査によって監視することができる。治療上有効な量は、単回用量に有効な量、または複数用量治療、たとえば2回以上の用量で投与される量、または長期間にわたって投与される量の一部として有効な量になり得る。
【0147】
本明細書に記載の任意の1以上の構造体の有効量は、体重の約10ナノグラム/kg〜体重の約1000mg/kgで、投与頻度は一日に一度から一月に一度の範囲である。しかし、他の投薬量および頻度であってもよい、なぜなら、本発明は、この点に関して特に限定されないからである。被験体には、本明細書に記載の1以上の疾患または身体状態を処置するのに有効な量で、本発明に記載の1以上の構造体を投与してもよい。
【0148】
有効量は、処置される特定の状態に応じてもよい。当業者であれば、たとえば、肝機能検査(たとえば、トランスアミナーゼ)、腎臓機能検査(たとえば、クレアチニン)、心機能検査(たとえば、トロポニン、CRP)、免疫機能試験(たとえば、IL−1およびTNF−アルファなどのサイトカイン)等の方法により、組成物の有効量がどれほどなのか決定することができる。当然ではあるが、有効量は、処置すべき状態の重篤度;年齢、身体の状態、サイズおよび体重を含む個々の患者のパラメーター;併用している処置;処置の頻度;または投与の様式等の要因に依存する。これらの要因は、当業者に周知であり、単なる慣例的な実験で対処することができる。いくつかの場合に、最大用量、すなわち確固とした医学的判断による最も高い安全な用量が使用される。
【0149】
本明細書に記載の薬学的組成物中の有効成分の実際の投与量レベルは、特定の患者、組成物、投与のモードのための、所望の治療応答を達成するのに有効な有効成分の量を得るように、患者に対して有毒ではないように変化してもよい。
【0150】
選択された投与量レベルは様々な要因に依存する。その要因としては、使用される特定の本発明の構造体の活性、投与経路、投与の時間、使用される特定の構造体の排泄または代謝の速度、処置の期間、使用される特定の構造体と組み合わせて使用される他の薬物、化合物および/または材料、処置される患者の年齢、性別、体重、状態、総合的健康状態(general health)、および以前の病歴、および医療技術において周知の要因が挙げられる。
【0151】
当該技術における通常の技量を有する医師または獣医であれば、必要とされる有効量の薬学的組成物を容易に決定および処方することができる。たとえば、医師または獣医は、薬学的組成物に使用される本明細書に記載の構造体の用量を、所望の治療効果を達成するのに必要とされる量よりも低いレベルから開始し得、その後所望の効果が達成されるまで徐々に投与量を増加させ得る。
【0152】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の構造体または薬学的組成物は、被験体に長期間にわたって提供される。長期間処置は、任意の形態の長期間にわたる反復投与をも含み、たとえば、1ヵ月以上、1ヵ月と1年との間、1年以上、またはそれより長い間にわたる反復投与などである。多くの実施形態において、長期間処置は被験体の生涯にわたって構造体または薬学的組成物を繰り返し投与することを含む。たとえば、長期間処置は定期的な投与、たとえば1日当たり1回以上、1週間に1回以上、または1ヵ月に1回以上を含み得る。一般に、本明細書に記載の構造体の好適な用量、たとえば1日用量は、治療効果を生じるのに有効な最低用量である構造体の量である。そのような有効用量は、一般に上記の要因に左右される。一般に、示された効果のために使用される場合、患者のための本明細書に記載の構造体の用量は、1日当たり体重1kg当たり約0.0001mgから約100mgの範囲である。1日投与量は、体重1kg当たり0.001〜50mgの化合物、または体重1kg当たり0.01〜約10mgの化合物の範囲であってもよい。しかしながら、これより低いかより高い用量も使用することができる。いくつかの実施形態において、被験体に投与される用量は、年齢、疾患の進行、体重またはその他の要因により被験体の生理機能が変化するのとともに修正することができる。
【0153】
所望であれば、活性化合物の有効な1日量は、1日を通じて適切な間隔で別々に投与される2、3、4、5または6以上の下位用量として、場合によっては単位剤形において投与されてもよい。たとえば、指示および方法は、有害な影響または望ましくない影響を減少させるか回避しながらコレステロール(または他の脂質)の減少および/または疾患の処置を達成するために、特定の時間間隔および特定の用量で、特定の用量の組成物(特に、特定のサイズ範囲を有する本明細書に記載の構造体を含むもの)が投与される投薬レジメンを含み得る。
【0154】
本明細書に記載の構造体を単独で投与することが可能であるが、それは上記のような薬学的組成物として投与してもよい。本発明は、構造体の使用のための指示を任意に含むキットにパッケージされた疾患または身体状態を診断するか、予防するか、処置するか、管理するのに有用な前述の組成物のうちのいずれかを提供する。すなわち、キットは、疾患または身体の状態への関与のための組成物の使用の記述を含み得る。キットは、本明細書に議論されるような組成物の使用の記述をもさらに含み得る。キットは、本明細書に記載の2つ以上の組成物の組み合わせの使用のための指示をも含み得る。指示は、任意の好適な技術、たとえば経口、静脈内、または薬物送達の別の既知の経路によって組成物を投与するために提供されてもよい。
【0155】
本明細書に記載のキットは、1つ以上の容器をも含み得、それらは上記のような構造体、シグナル伝達構成要素、および/または生体分子をも含み得る。キットは、混合、希釈、および/または化合物の投与のための指示をさらに含み得る。キットは、混合、希釈、またはそのような処置を必要とする試料または患者への成分の投与のための容器とともに、1つ以上の溶媒、界面活性剤、防腐剤および/または希釈剤(たとえば生理食塩水(0.9%のNaCl)、または5%のデキストロース)を備えた他の容器も含み得る。
【0156】
キットの組成物は、任意の好適な形態、たとえば溶液または乾燥粉末として提供されてよい。提供される組成物が乾燥粉末である場合、粉末は好適な溶媒の追加によって再構成されてもよく、その好適な溶媒を提供することもできる。液体の形態の組成物が使用される実施形態において、液体の形態を濃縮するか、またはすぐに使用することができる。溶媒は、本発明の特定の構造体、および使用または投与の様式によって決まる。組成物に好適な溶媒は周知であり、文献において入手可能である。
【0157】
一組の実施形態の中で、キットは、バイアル、チューブ等(各容器は、本方法において使用される個別の要素のうちの1つを含む)の1つ以上の容器を含んでもよい。たとえば、容器のうちの1つは、アッセイにおける陽性対照を含んでもよい。さらに、キットは、他の成分、たとえばアッセイに役立つバッファーのための容器を含み得る。
【0158】
本明細書において使用される場合、「被験体」または「患者」は任意の哺乳動物(たとえばヒト)を指す。被験体または患者の例としては、ヒト、非ヒト霊長類、牛、馬、豚、羊、ヤギ、犬、猫、またはマウス、ラット、ハムスターまたはモルモット等のげっ歯類が挙げられる。一般に、本発明はヒトでの使用に向けられる。被験体は、ある疾患または身体状態と診断された被験体であるか、もしくは疾患または身体状態を有することがわかっている被験体であり得る。いくつかの実施形態において、被験体は、疾患または身体状態が発症する危険があると診断され得るか、もしくはそのような危険を有することがわかっていてよい。いくつかの実施形態において、被験体は、本明細書に記載の異常脂質レベルに関連する疾患または身体状態であると診断されるか、もしくはそれらを有することがわかっていてよい。特定の実施形態において、被験体は、被験体の既知の疾患または身体状態に基づいて処置のために選択され得る。いくつかの実施形態において、被験体は、被験体の疑わしい疾患または身体状態に基づいて処置のために選択され得る。いくつかの実施形態において、組成物は、疾患または身体状態の発症を防ぐために処置され得る。しかしながら、いくつかの実施形態において、既存の疾患または身体状態の存在が疑われ得るが未だ同定されないことがあり、本発明の組成物は疾患または身体状態のさらなる発症を診断するか防ぐために投与することができる。
【0159】
本明細書で使用される場合「生物学的試料」は、被験体から得られた、任意の細胞、身体組織または体液試料である。体液の非制限的な例としては、たとえば、リンパ、唾液、血液、尿などが挙げられる。本明細書に記載の様々な方法で使用するための組織および/または細胞の試料は、パンチ生検および細胞擦取、針生検などの組織生検を含むが、これらに限定されない標準的な方法;または吸引または他の好適な方法による血液または他の体液の収集によって得ることができる。
【0160】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を例示することを意図するが、制限的であるとは解釈されず、本発明の全容を例証するものではない。
【実施例】
【0161】
実施例1
本実施例は、表面成分の比を制御するように、DNA−HDL AuNPの形態においてハイブリッド構造体の表面を化学的に調製するための方法を記載する。DNA−HDL AuNPは、コレステロールを隔離し、かつ核酸を送達するかまたは遺伝子発現を調節するように機能し得る。
【0162】
5nmの直径のクエン酸塩で安定化させたAu NP(Ted Pella)を、2つの合成アプローチ(図2Aおよび2B)を使用して、テンプレートである球状の合成HDL AuNPに対して使用した。
【0163】
HDL AuNPを、HO/エタノール(EtOH)の溶液中で製造した。AuNP、DNA、APOAI、および各リン脂質は、HO/EtOH(50%までのEtOH)中で可溶性であり、安定である。この方法は、個々の表面成分をHDL AuNPに対して段階的に添加すること、および未反応の成分とEtOHの除去を可能にする。
【0164】
典型的なHDL AuNP合成においては、水性溶液中のクエン酸塩で安定化させた金ナノ粒子(80nM、5±0.75nm、Ted Pella,Inc.)を、ガラスバイアル中で、5倍過剰量の精製したヒトAPOA1(400nM、Biodesign International)と混合する。この溶液を、撹拌しながら室温で一晩混合することが可能である。次に、それぞれ、AuNPの濃度に関して100倍過剰量の、1:1比の1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート]:1−2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(Avanti Polar Lipids)を、クロロホルム中に調製した。次いで、リン脂質混合物を水性AuNP/APOA1溶液に添加し、これは層状混合物を生じる。この混合物をボルテックスして軽く超音波処理し、これにより、ピンク色の泡状の混合物が生じる。この混合物を、クロロホルムを蒸発させるために、段階的に約65℃に加熱する。溶液を冷却させた後、HDL−AuNPの精製を遠心分離(15,800g×45分)およびNanopure(商標)水中への再懸濁により達成する。
【0165】
第1の合成方法(図2A)の場合は、HDL AuNPを、上記に記載したように製造し、漸増濃度の5’−コレステロール化DNA(chol−DNA)をHDL AuNPに添加した。例えば、chol−DNA−HDL AuNPを、HDL AuNPに対して100倍モル濃度過剰量のコレステリル−DNAを添加することにより製造した。全てのオリゴヌクレオチドは、標準的なホスホルアミダイト化学(Expedite 8909)を使用して製造し、逆相HPLC(Varian ProStar 210)を使用して精製した。使用した配列を表1に示す。4時間のインキュベーション後、DNA−HDL AuNPを、1mLのアリコートに分け、遠心分離(15,800g×45分)してHDL AuNP表面に結合していないDNAを除去し、上清をデカントし、その後、DNA−HDL AuNPを、約30μlのリン酸緩衝食塩水(1×PBS、0.15MのNaCl、0.01Mのリン酸緩衝液、pH=7.5)中に再懸濁した。上記アリコートをボルテックスし、軽く超音波処理して、chol−DNA−HDL AuNPペレット全てを確実に懸濁物にした。chol−DNA−HDL AuNPの濃縮した溶液を合わせて、約1μMの最終濃度とした。粒子濃度を、UV−Vis分光光度計(Agilent 8453)を使用して測定した。5nmのAuNPについて、λmax=520nm、および吸光係数、ε=9.696×10−1cm−1。粒子を、使用するまで4℃で保存した。
【0166】
3’−蛍光団標識(例えば、シアニン3または5)DNAを、HDL AuNP表面に結合したDNAの量を定量化するために使用した。また、蛍光標識したDNAを使用して、HDL AuNPの表面に対するコレステロール−DNAについてのKを計算するための結合等温式を構築した。
【0167】
第2の合成方法(図2B)については、合成を、HO中で開始した。ここでは、5nmのAuNPを、最初にAPOAIで表面に機能を持たせた。APOAIはAuNPの表面に吸着する;しかし、AuNP表面に堅く結合するアルキルチオールオリゴを添加すると、リガンド交換により表面のAPOAIの除去が促進され得る。APOAIの表面での吸着とチオールで改変したDNAの表面吸着は、化学量論によりある程度制御することができる。チオール−DNAの負荷が迅速なAPOAIの放出により損なわれる事象においては、APOAI上の第1級アミンを、機能を損なうことなくAPOAIの結合を確実にすることができるTraut’s試薬を使用してチオール基を改変することができる。APOAIのTraut’s改変をHDL AuNPについて使用することができ、これは、HDL AuNPおよび天然のAPOAIと比較して、コレステロール流出アッセイにおいて明らかな差異が認められていない(未公開データ)。NaCl濃度を、生理学的濃度の近くまで増大させ(0.15M、コロイドを不可逆的に脱安定化させることのないように、ゆっくりと増大させ)、その際、チオール−DNA(antago−miR−210/対照)を、AuNPに関して化学量論的量を増大させて添加した。最後に、PLを、生じつつあるDNA−HDL AuNP表面上に残っている部位に機能性を持たせるために、エタノール溶液中に添加した。最終的な構築物を、遠心分離を使用して精製した。いくつかの場合には、遠心分離により不可逆的なナノ粒子の凝集を促進し得、この場合、透析、または濾過/透析の組み合わせ(ダイアフィルトレーション)のいずれかを精製のために使用することができる。
【0168】
【表1】

【0169】
実施例2
本実施例は、DNA−HDL AuNPの形態の構造体が低い毒性を有し、細胞において遺伝子発現を調節するために使用できることをを示す。このDNAを、構造体のリン脂質二重層シェル上に静電気的に物理吸着させた。
【0170】
HDL AuNPは、図2Aと組み合わせて実施例1に記載した方法を使用して製造し、その後、コレステロールで末端改変したDNA antago−miRと混合した。得られたDNA−HDL AuNPを、結合していないコレステロールで標識したDNAから精製するために遠心分離した(3回)。添加したDNAは、標的化microRNA−210の逆相補性「antago−miR」分子である。MicroRNA−210は、特有症候の(pathognomic)低酸素により調節されるmicroRNAである。細胞内miR−210レベルの低下は、ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)において新脈管形成を阻害すること、ならびに、がん細胞タイプにおいてアポトーシスを誘導することが示されている。HDL AuNPが内皮細胞を自然に標的化するので、HUVECを、これらの実験に使用した。細胞の低酸素を、miR−210が周知の生成物である、低酸素反応性の要素によるHIF−1α駆動性の発現を促進するための十分に確立されている機構である、塩化コバルト(CoCl)を使用して化学的に誘導した。DNA−HDL AuNPでの処理は、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)アッセイを用いて測定した場合、細胞傷害性を生じなかった(図5)。処理した細胞対未処理の細胞からの全RNAの抽出後に、スクランブルした対照に対する、miR−210を標的化するantago−miR−210−HDL AuNPの機能をRT−PCRを用いて測定したところ、HUVEC miR−210レベルが有意に低下していた(図6)。
【0171】
実施例3
本実施例は、細胞内核酸調節のためのハイブリッドDNA−HDL−AuNP構造体の使用とDNA−AuNP構造体の使用との比較を示す。
【0172】
DNA−HDL AuNPを、DNA antagomiR−210オリゴヌクレオチド(5−tcagccgctgtgacacgcacag−a(10)−SH−3)または対照DNAオリゴヌクレオチド(5−ccccgtaatcttcataatccgag−a(10)−SH−3)のいずれかを用いて製造した。対照オリゴヌクレオチドは、既知の発現されるヒトRNA配列に対して配列相補性を有さない。MiR−210は、細胞の低酸素条件下でアップレギュレートされることが示されており、ここでは、MiR−210は、酸素正常状態−低酸素に対する広範囲の細胞性応答を調節し、較正するように機能する。塩化コバルト(CoCl、300マイクロモル濃度)を使用することにより低酸素状態へと化学的に誘導したHUVECを研究した。これらの条件下では、miR−210レベルは大きく増大した。標準的な手順に従い(Rosiら、Science,2006,312,p.1027)、antago−miR−210(上記配列)として知られているmiR−210のDNA逆相補鎖で表面に機能を持たせた13nmの金ナノ粒子(AuNPs)、またはantago−miR−210配列(上記配列)を同時に持たせたHDL AuNPのいずれかを製造した。antago−miR−210−HDL AuNPの場合は、DNA antago−miR−210配列を、HDL AuNPの表面に対して静電気的に物理吸着させた。それぞれの場合において、最終的な結合体を反復遠心分離と、1×リン酸緩衝食塩水中への再懸濁(3×、15,000RPM)を繰り返し使用して精製した。対照DNA antago−miRを製造し、同様の様式で(上記順序)で金ナノ粒子結合体に負荷した。
【0173】
ハイブリッドDNA−HDL AuNP構造体を使用することによる標的化した治療用核酸の細胞質への送達の成功に関する、驚くほど有意である最初の観察は、有意な数の5nmのDNA−HDL AuNPが細胞の細胞質区画中に残っていることの直接の観察である。図7A〜7Cは、DNA−HDL AuNP構造体に対する曝露(24時間のトランスフェクション、50nMのHDL AuNP)後に単層細胞培養物中で増殖させたマウスマクロファージ(J774)の電子顕微鏡写真(EM)である。EMは、5nmのDNA−HDL AuNP構造体が細胞質区画に含まれないことを示している(図7A〜7B)。DNA−HDL AuNPの多数の蓄積が、細胞の細胞質区画の中で見られる(図7A中の矢印を参照のこと)。矢印の拡大図を図7Bに示す。これは、細胞質小胞の中(A)および外(B)での構造体の蓄積を示す。図7B中のA、Bに示した領域の拡大図(図7C)は、構造体(5nmの直径)を明らかに示している。細胞質中に遊離しているDNA−HDL AuNP構造体(B)に対して、細胞内小胞体中にあるDNA−AuNP構造体(A)の群を対比させることができる。この観察は、標的化した核酸(DNAまたはRNA)治療薬(例えば、antago−miR、siRNA、miRなど)をもまた含むHDL AuNP構造体のような特定の構造体を、細胞内RNA種(例えば、内因性microRNA(miR)、またはメッセンジャーRNA(mRNA))を調節するためにうまく使用することができるとの仮説を導いた。
【0174】
miR−210をCoCl誘導下で細胞にトランスフェクションして、細胞内miR−210レベルをダウンレギュレートする様々な構造体の能力を比較した。miR−210レベルを内因性GAPDHに対して最初に正規化し、その後、CoClで誘導したがAuNPで処理していないHUVEC細胞中のmiR−210に対して正規化した。図8Aに示すように、CoClに対して曝露しなかったHUVEC細胞に対して、CoClは、HUVEC細胞中でmiR−210の発現を効率よく増大させた。antago−miR−210 HDL AuNP(APOA1、50nM)に曝露した細胞は、24時間、48時間、および72時間でmiR−210レベルの有意なノックダウンを示す。72時間では、細胞が回復し始めているように見えた。antago−miR−control HDL AuNPは、miR−210発現の低下を示さない。比較の手段として、antagomiR−210と対照配列を表面に結合させた13nmのAuNPを製造した。これらの構造体(1nM)のトランスフェクションによってmiR−210の中程度のノックダウンが生じたが、対照は、予想したとおり限定されたノックダウンを示した。まとめると、これらのデータは、HDL AuNPの状況(この場合は表面での物理吸着)で運ばれる核酸(この場合は、miR−210に対するDNA antago−miR)が細胞内核酸種(例えば、miR−210)を効率よく標的化し、調節できることを示す。対照粒子は、miR−210発現の状況において最小限のオフターゲット、非特異的活性を示す。
【0175】
データはまた、antago−miR−210−HDL AuNPのトランスフェクションが非毒性であることも示している。これは、形質膜の破壊のマーカーである乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の細胞性の放出をアッセイすることにより決定した。細胞形質膜の完全性が失われる場合は、細胞質の酵素である乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)が細胞培養培地中に漏れでた。LDHについての比色分析アッセイを使用して、培養細胞に対しては非毒性であることがこれまでに明らかにされているantago−miR−210 AuNP(13nmの直径)(Massichら、Mol Pharm,6(6),p.1934,2009)で処理したHUVEC細胞とantago−miR−210/対照HDL−AuNPで処理したHUVEC細胞との間での差異を評価した。図8Bは、HUVEC細胞に対するLDHの毒性を示す。最大可能なLDH活性(溶解細胞)を最も右側に示す。示すように、CoClで誘導した細胞および誘導していない細胞は、ベースラインでの最小限の形質膜の崩壊と一致して、培地中へのLDHの漏れがほとんどないことを示す。antago−miR−210/対照AuNP(13nm、1nM)またはantago−miR−210/対照HDL AuNP(5nm、50nM)のいずれかで処理した細胞は、ベースラインを上回るほどの細胞傷害性の増大を示さない。
【0176】
さらに、第2の組の構造体が、HUVEC細胞中のmiR−210を効率よく標的化し、ダウンレギュレートすることが示された(図8C)。これらの構造体を、上記と同様に、しかし、miR−210または対照オリゴに対してDNA antago−miRを共有結合(吸着に対して)させて製造した。図8Cに示すように、miR−210の調節は、HUVEC細胞においてmiR−210(a210)を標的化する、リン脂質(PL)を含む構造体またはリン脂質を含まない構造体を使用して効率よく達成された。全ての場合において、5nmのAuNPは、鋳型となるナノ構造体コア材料としての役目を担い、全ての場合において、アポリポタンパク質A−I(APOAI)は、構築物の表面上に存在する。
【0177】
具体的には、図8Cは、構造体を使用したHUVEC中でのmiR−210のノックダウンを示す。ここでは、microRNA−210に対するantagomiRが、HDL AuNPのコアでの5nmのAuNPの表面に対する吸着のために、チオールで末端改変される。示すように、CoClで誘導した陽性対照である(誘導したHUVEC)HUVEC細胞は、非誘導のHUVECと比較して、強いmiR−210発現を示す。2組の粒子を製造し、CoClで誘導したHUVEC細胞にトランスフェクトした。最初の2つのバーは、APOAIタンパク質とmiR−210に対して結合したantagomiR−DNA(5−APO−a210)を伴う5nmのAuNPを、非標的化対照DNA(5−APO−c210)を伴う同じ構築物に対して示す。標的化した因子の場合は、miR−210はおよそ60%減少する。バー3および4は、最初の2つに類似するが、それぞれが、標準的なHDL AuNPに使用したリン脂質二重層をもまた含む構築物の別の組を示す。示すように、miR−210をノックダウンするように標的化した5−APO−a210−PLも、約60%調節するように作用する。対照粒子(5−APO−c210−PL)はmiR−210のノックダウンを示さない。
【0178】
全体として、これらのデータは、HDL AuNPの細胞質局在性、antago−miR−210 HDL AuNPによる細胞内miR−210発現の調節のためのantago−miR−210の効率的な送達、およびantago−miR−210 HDL AuNPの毒性の欠失を示す。
【0179】
実施例4
本実施例は、核酸のための細胞性送達ビヒクルとしてのハイブリッドchol−DNA−HDL AuNPのような構造体の使用を示す。
【0180】
高密度リポタンパク質は、HDL受容体を過剰発現するがん細胞を強烈に標的化する。がん細胞によるコレステロールの取り込みの一般的な必要性は、標的化した治療薬の送達のために操作した組み換え体リポタンパク質(特に、組み換え体HDL)を使用することへの関心のきっかけとなった。全身のアンドロゲン除去にも関らず、インビボで増殖する進行した前立腺がん細胞は、アンドロゲン非感受性と見られる;しかし、データは、これらが、増殖を維持するためにHDLからコレステロールを取り込み、内因的にテストステロンを産生する能力を獲得することを示している。したがって、前立腺がんは、膜の完全性とテストステロンの産生の両方についてのコレステロールの二重の必要性が、HDL生体模倣物を利用する遺伝子送達ストラテジーを試験する理想的なモデルを提供する特有の場合を示す。
【0181】
HDL AuNPは、蛍光コレステロールアナログである25−[N−[(7−ニトロ−2−1,3−ベンゾキサジアゾール−4−イル)メチル]アミノ]−27−ノルコレステロール(NBD−コレステロール)(K=3.8nM)に対して堅く結合する。HDL AuNPは、それらの表面上に約3コピーのアポリポタンパク質A−I(APOAI)を有し得、両性イオン性ジパルミトイル−ホスファチジルコリン(DPPC)の外部リーフレット単層(leaflet monolayer)を有し得る。生体模倣性HDL AuNPによるNBD−コレステロールの堅い結合、ホスホコリン含有リン脂質との核酸の既知の静電気的複合体形成、ならびに、天然のHDL種によるコレステロール化核酸の自発的会合および効率的な細胞への送達を裏付けているデータのため、本発明者らは、コレステリル−DNA種を吸着したハイブリッドHDL AuNP(chol−DNA−HDL AuNP)を、細胞への核酸送達のためにデノボ合成できるとの仮説を立てた。
【0182】
天然に存在している成熟した球状HDLのサイズ、形状、および界面化学を厳密に模倣する生体模倣HDLナノ構造体を、実施例1に記載した方法を使用し、図3に示す工程にしたがって、表面に固定したコレステリルを結合体化したDNA配列を用いて製造した。簡単に説明すると、コロイド状金ナノ粒子(AuNP、5+/−0.15nm)の水性溶液をアポリポタンパク質A−I(APOAI)と混合した。次いで、リン脂質の混合物を、生体模倣性HDL AuNPを形成させるためにAuNPの表面に添加した。HDL AuNPを、遠心分離と水中での再懸濁により精製する。microRNA−210(miR−210)に対するコレステロール化した逆相補性DNA「antagomiR」および対照のスクランブルDNAをこの実験のために選択した。
【0183】
上記HDL AuNPを、Nanopure(商標)水中でコレステリル−DNAオリゴ(100:1、chol−DNA:AuNP)とともにインキュベートした。4時間のインキュベーション後、chol−DNA−HDL AuNPをペレット化し(15,800g、45分)、そしてHDL AuNP表面に結合しなかった核酸を除去するためにリン酸緩衝食塩水(1×PBS、0.15MのNaCl、0.01Mのリン酸緩衝液、pH=7.5)中に再懸濁した。図3は、個々の5nmのAuNPとchol−DNA−HDL AuNPの透過電子顕微鏡写真を示す。
【0184】
動的光散乱を、合成プロセスの各工程での構造体のサイズの増大を評価するために使用した。予想したとおり、構造体の流体力学的直径は、APOAIの添加(9±1nm)、HDL AuNPの形成(10±1nm)、およびコレステロール化核酸の添加(11±1nm)を行うと、増大した(表2)。UV−Vis分光光度法により、緩衝食塩水中でのDNA−HDL AuNP構造体の安定性を確認する。表面プラズモンバンドは約520nmに集中し、凝集したAuNPではなく分散と一致し(これを参照のこと)、表面の機能化後の結合体の安定性を明らかに示している(表2)。さらに、chol−DNA−HDL AuNPについては、260nmに強い吸収帯があり、これは結合体表面上のDNAと一致する。
【0185】
【表2】

【0186】
chol−DNA−HDL AuNPの表面上のオリゴヌクレオチドの数を蛍光標識したオリゴヌクレオチドを使用して定量化し、構造体あたり約13個であることが明らかになった。最後に、蛍光団標識アポリポタンパク質A−I(APOAI)を使用して、表面上に結合したAPOAI分子の数を定量化するためのHDL AuNPとchol−DNA−HDL AuNPを製造した。データは、chol−DNA HDL AuNPの表面上に約2コピーのAPOAIが存在していること、およびAPOAIが、chol−DNAの存在下では構造体表面に結合したままであることを明らかにしている。
【0187】
mRNAの翻訳は、内因性microRNA(miR)により厳密に調節される細胞質のプロセスである。短い核酸を含む細胞質RNAの効率的な調節には、エンドソームの隔離の回避が必要である。chol−DNA−HDL AuNPの細胞内取り込み、細胞内局在性、および細胞の細胞傷害性の評価を、上記に記載したとおりに行った。蛍光団標識オリゴヌクレオチドを含むchol−DNA−HDL AuNPを使用することにより、共焦点蛍光光学顕微鏡法によって、構築物がPC3細胞と会合し、PC3細胞中に迅速に侵入することが明らかになった(図9A〜9D)。
【0188】
図9A〜9Dは蛍光共焦点顕微鏡法の画像であり、図9E〜9Hは、PC3細胞中でのchol−DNA−HDL AuNPの細胞性分布を示している透過電子顕微鏡法の画像である。共焦点実験およびTEM実験のいずれについても、化学的低酸素を、chol−DNA−HDL AuNPでの処理(50nM、最終)の前に12時間、300μΜの塩化コバルト(CoCl2)でPC3細胞に誘導した。左。蛍光標識したDNA(「AuNP」)を用いて製造したchol−DNA−HDL AuNPを細胞とともにインキュベートし、様々な時点で画像化した。ケラチンと核(「Hoescht」)を細胞固定後に染色した。chol−DNA−HDL AuNPとの4時間(図9A)、8時間(図9B)、12時間(図9C)、および24時間(図9D)のインキュベーション後に画像を取得した。電子顕微鏡法の画像については、16時間のchol−DNA−HDL AuNPでのトランスフェクション後に得た。矢印は、PC3細胞の細胞質中のAuNPを示す。倍率:(図9E)890×、(図9F)2900×、(図9G)6800×、(図9H)98000×。
【0189】
約4時間で、蛍光シグナルは細胞膜に局在化し、続いて、点状小胞(punctuate vesicle)に取り込まれた。次いで、蛍光シグナルは、約24時間で小胞中に再度パッケージされる前に細胞の細胞質内に均一に分布するように現れる。これらのデータは、蛍光標識したchol−DNAが、chol−DNA−HDL AuNPでの処理後に細胞の細胞質内に存在することを裏付けるが、結合体のAuNP成分の細胞取り込みまたはその細胞内位置に関する情報を提供するものではない。chol−DNA−HDL AuNPでの細胞の処理(16時間)後、透過電子顕微鏡法(TEM)は、AuNPが細胞の細胞質中に存在し、エンドソームの隔離がないことを示す(図9E〜9H)。これは、いずれの理論にも束縛はされないが、コレステロール化したDNAと複合体形成したHDL AuNPリン脂質の集合特性、および/または両親媒性APOAIタンパク質の存在、結合体の小さいサイズ、および表面電荷のためであり得ることの重要な知見である。最終的には、chol−DNA−HDL AuNPの毒性を、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)放出アッセイを使用することにより調べた。処理後、標的RNAの調節に必要な濃度を十分に上回るchol−DNA−HDL AuNP濃度でもなお、バックグラウンドレベルを上回る毒性は観察されなかった(図10)。図10は、HDL AuNP処理、DNA−HDL AuNP処理、およびDNAだけでの処理が細胞傷害性ではなかったことを示している。
【0190】
標的RNAを調節するchol−DNA−HDL AuNPの能力を、がん関連細胞培養物系:化学的低酸素に供したアンドロゲン非感受性ヒト前立腺がん細胞(PC3)において評価した。細胞の低酸素はがんを定義する特徴である。低酸素誘導因子−1α(HIF−1α)は、がん細胞がそれを通じて低酸素に直接反応する転写因子である。HIF−1αを安定化させる塩化コバルト(CoCl、[300μΜ])に対してPC3細胞を曝露することにより、その細胞中で低酸素を化学的に誘導した(図11)。
【0191】
安定化させたHIF−1αは、細胞の核に位置を変え、標的遺伝子中の低酸素反応エレメント(HRE)からの転写を誘導する。上流のHREに対するHIF−1αの結合により直接調節されるmicroRNA−210は、低酸素により誘導される最もよく知られているmicroRNAである。E2F転写因子3(E2F3A)はmiR−210により負に調節されることが示されており、このモデル系での分析のためのタンパク質として選択した。
【0192】
chol−DNA−HDL AuNPの標的化機能を確認するために、リアルタイム定量的PCR(RT−qPCR)を、PC3細胞中のmiR−210レベルを測定するために行った。U6小核RNAを内因性対照として使用した。最初の細胞の処理は、血清中に存在するリポタンパク質によるchol−DNAの取り込みの混乱の可能性を回避するために、無血清培地中で行った。比較手段として、同様の実験を、血清含有培地中で行った(図12)。
【0193】
図13Aに示すように、miR−210標的化chol−DNA−HDL AuNPでの処理により、HDL−AuNPだけの対照と比較して細胞miR−210のレベルにおいて80%の低下が、そして遊離のantagomiR−210と比較して55%の低下が生じる。遊離のコレステリル−DNAを、chol−DNA−HDL AuNPの表面上に吸着させたコレステリル−DNAに基づいて等モル添加した。HDL AuNP(ビヒクル対照)、スクランブルchol−DNA−HDL AuNP、および遊離のスクランブルchol−DNAは、miR−210レベルを認め得るほどに変化させることはなかった(図13A)。72時間で、miR−210レベルが回復し始めることは明らかである(図14)。
【0194】
antagomiR−210の送達と機能をタンパク質レベルで確認するために、ウェスタンブロッティングを、chol−DNA−HDL AuNPでの処理後にE2F3Aについて行った。図13Bに示すように、PC3細胞はE2F3Aを発現し、そのレベルは、予想したとおり、CoClで化学的低酸素を誘導すると抑制される(Giannakakis,Cancer Cell Bio)。miR−210に対する抗miRを表面に結合体化した10nMのchol−DNA−HDL AuNPで、PC3細胞を処理することにより、E2F3A発現の抑制解除が生じる。それは、約10倍モル濃度過剰量で添加した遊離のchol−DNA抗miR−210のそれよりも優れている。ベクターだけのHDL AuNP、スクランブルchol−DNA HDL AuNP、および遊離の対照スクランブル配列は抑制解除を生じない。
【0195】
図13Aおよび13Bは、miR−210のchol−DNA−HDL AuNP媒介性ノックダウンのRT−PCRおよびウェスタンブロットによる評価を示す。(図13A)miR−210レベルでは、chol−DNA−HDL AuNP antagomiR−210での処理により、HDL AuNPのみとの比較および遊離のchol−antagomiR−210の等モル用量との比較のいずれにおいても、CoClの環境(setting)においてmiR−210発現が有意に低下する(P<0.01、n=3)。(図13B)miR−210の標的であるE2F3aのウェスタンブロットは、chol−DNA−HDL AuNP antagomiR−210での処理によりE2F3Aが抑制解除されることを明らかにしている(上段)。GAPDHを、タンパク質対照として使用した(下段)。
【0196】
これらのデータは、核酸の細胞性送達ビヒクルとしてのハイブリッドchol−DNA−HDL AuNP構造体についての説得力のある証拠を提供する。chol−DNA−HDL AuNPはPC3細胞に侵入し、エンドソームの隔離を回避し、細胞毒性を示さず、そして本実験においては、細胞内miR−210を特異的に標的化するように機能し、その既知の標的であるE2F3Aを抑制解除する。
【0197】
HDL AuNPプラットフォームは、合成プロセス全体について重要な制御を提供し、上記プラットフォームは、核酸、脂質含有量、最終的な結合体のサイズ、および界面化学の同定に関して全体に通じている。これらの要素のそれぞれが、生体−ナノ界面でのナノ粒子の機能に重要であることが知られている。さらに、生体模倣HDL AuNPプラットフォームは、全身薬物動態、細胞標的化、および公知のHDL受容体(例えば、スカベンジャー受容体B−1型(SR−B1))を通じた受容体に媒介される結合体の取り込みに関して利点を提供することができる。このように、ハイブリッド生体模倣性リポタンパク質剤については、アテローム性動脈硬化症、炎症、およびがんを含む幾つもの疾患プロセスに対する核酸治療薬の標的化したin vivo送達について顕著な有用性を見出すことができる。
【0198】
材料および方法
DNAおよびAPOAIの定量化:DNA−HDL AuNP表面上のDNAの量を測定するために、蛍光修飾物質を持つオリゴヌクレオチドを使用した(表1)。HDL−AuNPを、上記に記載した手順を使用して合成し、それらの濃度をUV−Visにより決定した。蛍光が結合したDNAを遊離させるために、金ナノ粒子をKCN(40mM、最終)で酸化し、溶液の蛍光を測定した。粒子当たりのDNA鎖の数を、既知の濃度の蛍光標識DNAを用いて作成した標準曲線の蛍光測定値に対して得られた蛍光測定値を比較することにより決定した。
【0199】
APOAI分子の数の定量化は、蛍光標識したAPOAIを使用して同様に行った、APOAIを、製造業者の指示にしたがって、市販されているタンパク質標識キット(Invitrogen)を使用してAlexa−488で標識した。
【0200】
動的光散乱/UV−Vis:HDL−AuNPを水の中に10nMの濃度になるように希釈した。動的光散乱(DLS)測定は、Zetasizer Nano ZS(Malvern)を使用して行った。流体力学的直径を数的関数(number function)にしたがって報告する。水および緩衝食塩水中での凝集に対するHDL−AuNPの安定性を、Agilent 8453 UV−Vis分光光度計を使用して測定した。
【0201】
細胞培養:前立腺腺癌細胞(PC3)は、American Type Cell Culture(ATCC,CRL−1435)から入手し、10%のウシ胎仔血清(FBS)と1%のペニシリンストレプトマイシンを補充したRPMI 1640培地(Invitrogen,11835−030)中で増殖させた。細胞をT75フラスコ中で培養し、6、12、または24ウェルプレート中へと継代培養した。細胞を、5%のCO中、37℃でインキュベートした。実験プロトコールにしたがい、細胞を血清非含有培地中で、ならびに化学的に誘導した低酸素下で培養した。低酸素を化学的に誘導するために、300μΜの塩化コバルト(CoCl)を、処理の少なくとも12時間前に培地に添加した。本明細書中に記載するように、CoClでの処理により、HIF−1αの有意な安定化がもたらされ、RT−qPCRデータは、miR−210レベルの有意な増大を明らかにしている。
【0202】
光学顕微鏡法:生存細胞の画像化による観察は、63×1.4 NA対物レンズと空気流ステージインキュベータ(airstream stage incubator)(Nevtek)を備えたZeiss LSM 510共焦点顕微鏡を使用して、37℃で行った。
【0203】
細胞を、10%のFBSと1%のペニシリンストレプトマイシンを補充したRPMI 1640培地中、ガラスカバーガラス(glass coverslip)上で増殖させた。PC3細胞での化学的低酸素の誘導を、処理の12時間前に細胞培養培地に対して300μΜ(最終)の塩化コバルト(CoCl)を添加することにより開始した。PC3細胞をDNA−HDL AuNP(50nM、最終)で処理し、様々な時点で画像化した。画像化の前に、細胞培養培地を取り除き、細胞を1×PBSで洗浄した。次に、細胞を1×PBS中の3.7%のホルムアルデヒド(FA)中に固定し、免疫蛍光のために処理した。上記細胞を、1:100希釈で使用したパン−サイトケラチンに対する抗体(c−11、Sigma、c2931)で染色した。二次抗体は、1:100希釈で使用したロバ抗マウスalexa−568(Invitrogen)であった。Hoechstを細胞の核を染色するために使用し、二次抗体とともに添加した。カバーガラスを、50%のグリセロールの0.01mg/mLのp−フェニレンジアミンとの混合物中でガラススライド上に表を下に向けておいた。カバーガラスを透明な爪艶出し剤(nailpolish)(Electron Microscopy Sciences)でシールした。スライドを光から保護し、共焦点画像化の前に−20℃で保存した。
【0204】
電子顕微鏡法:細胞:PC3細胞を、10%のウシ胎仔血清と1%のペニシリンストレプトマイシンを補充したRPMI 1640培地中、Thermonexカバーガラス上で培養した。低酸素は、トランスフェクションの12時間前に培養培地に対して300μΜ(最終)のCoClを添加することにより化学的に誘導した。細胞を、50nM(最終)のDNA−HDL AuNPで処理した。DNA−HDL AuNPとのインキュベーション後、細胞を1×PBSで2回洗浄し、その後、0.1Mのカコジル酸ナトリウム緩衝液(SCB)中の2%のパラホルムアルデヒド/2.5%のグルタルアルデヒドに浸した。その後、細胞を0.1MのSCBでリンスし、0.1MのSCB中に2%の四酸化オスミウムを含有している二次固定剤中に置いた。次に、細胞を蒸留水でリンスし、3%の酢酸ウラニルで染色した。固定した試料を蒸留水でリンスし、その後、グレードを徐々に高くしたエタノール中で脱水した。プロピレンオキサイドを遷移緩衝液(transitional buffer)として使用し、組織を、Epon 812およびAraldite樹脂中に包埋した。試料を60℃のオーブンに入れて硬化させた。これらのブロックを、超ミクロトームを使用して切片化し、その後、TEM画像化のためにグリッド上にマウントした。TEM画像は、120kVで操作したFEI Tecnai Spirit G2を使用して得た。
【0205】
粒子:TEM粒子試料は、200メッシュのカーボンフィルムをコーティングした銅グリッド(Electron Microscopy Sciences)を使用して調製した。2つの試料を調製した。5nmの直径のAuNPおよびchol−DNA−HDL AuNPの小さいアリコートをグリッドにスポットし、過剰であった分を濾紙で取り除き、試料を乾燥させた。その後、試料を画像化の前に3%の酢酸ウラニルで染色した(15分)。TEM画像を、120kVで操作したFEI Tecnai Spirit G2を使用して得た。
【0206】
細胞傷害性:細胞の細胞傷害性実験は、市販されている酵素的比色による乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)アッセイを使用して、製造業者のプロトコールにしたがって行った(Roche Applied Sciences)。LDHは、細胞死後に細胞培養培地中に放出される細胞内酵素である。処理した細胞プールならびに未処理の細胞プールについて様々な時点で収集した古い細胞増殖培地を、300gで10分間スピンダウンさせ、細胞の破片を取り除いた。続いて、培地試料のこれらの上清をLDHレベルについてアッセイした。最大LDHレベルを確立するために、1つの未処理のそして低酸素刺激していない細胞プールを、細胞増殖培地への1%のTriton−X 100の導入により溶解させた。新鮮なPC3細胞増殖培地をブランクとして使用した。試料をアッセイ培地(DMEM中の1%の血清)で20倍に希釈した。LDH活性を製造業者のプロトコールにしたがって作業試薬を添加することにより測定し、試料を室温で30分間インキュベートした。LDHレベルを分光光度測定法により定量化した。
【0207】
miR−210についてのRT−qPCR:PC3細胞を上記プロトコールにしたがって培養した。処理後、細胞を溶解させ、全RNAをTRIzol(登録商標)試薬(Invitrogen)を使用して抽出した。全RNAを定量化し、その完全性を、260nmおよび280nmでの吸光度を測定することによりNanoDrop Technologies ND−100分光光度計を使用して評価した。1.8〜2.0の間のA260/A280比を持つ試料を分析に使用した。続いて、全RNA試料を2ng/μlの濃度になるように希釈した。TaqMan(商標)RT Kitと、TaqMan(商標)U6−snRNAプローブおよびhsa−miR−210 RTプローブを使用して、製造業者のプロトコールにしたがって、それぞれの試料由来の10ngの全RNAを15μlの全反応容量中で逆転写(RT)させた。次に、製造業者のプロトコールにしたがい、RT試料を使用して、TaqMan(商標)PCR Master MixとTaqMan(商標)U6−snRNAプローブおよびhsa−miR−210プローブを使用して、384ウェルプレートの中で、20μlの最終容量のqPCR反応を組み立てた。qPCR反応を、ABI Prism Model 7900HTを使用して行った。データは、内因性対照としてU6小核RNAを使用し、比較C法を使用して分析した。
【0208】
ウェスタンブロット:PC3細胞を、およそ80%のコンフルエントまで上記のように培養した。細胞を、標的化したスクランブル対照chol−DNA(100nMおよび500nM)、HDL AuNPベクター(10nMおよび50nM)、ならびに標的化したスクランブル対照chol−DNA−HDL AuNP(10nMおよび50nM)で処理した。PC3細胞を24時間曝露した。次に、細胞を1×PBSで2回洗浄した。全細胞のタンパク質を、哺乳動物タンパク質抽出試薬(M−PER,Thermo)を使用し、製造業者のプロトコールにしたがって抽出した。それぞれの試料のタンパク質濃度を、ウシ血清アルブミン(BSA)標準曲線と570nmでの比色の読み取りを使用してBradfordアッセイにしたがいCoomassieタンパク質染色(BioRad)を使用して測定した。それぞれの試料の全タンパク質濃度を等しくし(20μg)、ローディング緩衝液と混合し、その後、電気泳動による分離を行った。4〜20%のTris−HCL Criterionポリアクリルアミドゲルを分離に使用した(200V、約1時間)。ゲルを4℃で一晩、ニトロセルロースメンブレンに移動させた。移動後、メンブレンを水中で洗浄し(5分)、その後、約1時間乾燥させた。上記メンブレンをメタノール中で再度湿らせ、その後、Ponceau染色×5分に移した。軽くリンスした後、メンブレンを画像化した(Epsonスキャナー)。免疫ブロッティングの前に、メンブレンをTBST(Tween=0.1%)で20分間洗浄した。その後、メンブレンのブロッキングを、5%のミルク/TBSTを使用し、1時間で完了した。一次E2F3A抗体(ポリクローナル、ウサギ、C−18 Santa Cruz、1:200)を添加し、4℃で一晩インキュベートした。その後、メンブレンを、TBST中で10分間、3回洗浄した。次いで、二次抗体(ヤギ抗ウサギIgG、HRP−結合体、1:10,000、Jackson ImmunoResearch)を、5%のミルク/TBST中に添加し、室温(RT)で1時間インキュベートした。最後に、メンブレンをECL Plus(GE Healthcare)比色試薬を用いてRTで5分間現像した。その後、メンブレンを画像化した。GAPDHを対照として使用した。GAPDHの免疫ブロッティングを、E2F3Aと同様に行った。GAPDH抗体(マウス、1:20,000)はHRPを結合体化したもの(Sigma)であり、これをRTで1時間インキュベートした。
【0209】
実施例5
この先見的実施例は、本明細書中に記載する構造体から核酸を放出するために使用することができる方法を示す。特に、基準単位の(modular)核酸成分を持つ核酸−HDL AuNPを、例えば、ex vivo誘因(例えば、光)、生理学的誘因(例えば、細胞内環境の低下)または、病理学的誘因(例えば、反応性酸素種または低いpH)のような様々な刺激によるAuNP表面からの核酸の放出を制御するために使用することができる。
【0210】
DNA−HDL AuNP構造体は、構造体がその構造体の表面上のDNA配列の遺伝子調節部分を効率よく隔離し、遺伝子発現を調節するために必要な細胞内細胞質性機構がこれを利用できなくなるように、Auナノ構造体コアの表面に対してDNAオリゴヌクレオチドのAu−Sカップリングを使用して製造することができる。核酸に誘発される放出機構をDNA−HDL AuNPプラットフォーム中に工学技術で作製することにより、一旦細胞の内部に入ったDNA−HDL AuNP構造体の作用機構を試験し、複数の材料を様々な放出化学反応を用いて比較し、そして最初の試験後に表面となり得る生体−ナノ界面チャレンジ(例えば、エンドソームの隔離)に対処するためにプラットフォームに柔軟性を導入するための方法が提供される。
【0211】
複数の実施形態の1つの組においては、この目的の下で製造したDNA−HDL AuNP構造体は、図2Bおよび図15にしたがって進められるものである。図15に示すように、成分59により示す機能化したオリゴヌクレオチドを、例えば、4個の異なるユニット60、62、64、および66を含むように製造することができる。複数の実施形態の1つの組において、ブロック60は、構造体の一部分(例えば、シェルまたはナノ構造体コア)に対して成分59を結合させることが可能である末端改変型である。ブロック62は、ブロック64により示す放出リンカーに対してブロック60を結合させることができるリンカーである。上記放出リンカーは、成分59からの調節性核酸66のカップリングと放出を可能にすることができる。ユニット60、62、64、および66のそれぞれに使用することができる特定の化合物の例を図15に示す。PEG=ポリエチレングリコールおよびSPDP=N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート。
【0212】
固相ホスホルアミダイト化学は、機能化したオリゴヌクレオチドを製造するために使用することができる方法の一例である。個々のブロックについての対象とする操作(directed manipulation)を、それぞれが核酸の放出を、そして最終的にはin vitroでの機能をどのように変化させるかを決定するために行う。最初に、3’−チオール末端改変(ブロック60)を、AuNP表面に対するDNAの結合とロードを駆動するように操作することができる。3’−チオール部分の操作は、例えば、全てのDNA−HDL AuNP表面成分のロードを最適化するために使用することができる。次に、核酸放出の方法としての細胞内還元およびジスルフィドリガンド交換の例を示す。放出リンカーであるブロック64を、リンカーの化学的実態(chemical identity)が核酸放出にどのように影響を及ぼすかを具体的に試験するために、除去することを含め体系的に変化させる。ジスルフィドの場合には、グルタチオンに媒介されるリガンド交換と核酸放出を、そのつなぎ鎖がDNA−HDL AuNPの表面からの放出にどのような影響を及ぼすかを体系的に評価するために、溶液中で研究する。次に、異なるつなぎ鎖(ブロック62)(つなぎ鎖なしを含む)を、つなぎ鎖の長さが核酸の放出をどのように変化させるかを評価するために、チオールエレメント(ブロック60)と連結エレメント(ブロック64)との間に加える。ホスホルアミダイト化学および固相合成、ならびに直接的な結合化学反応を使用して手作業により付加することができる他の方法(例えば、EDC/NHS)にそのまま適合する多数のチオール、つなぎ鎖、および連結化学物質が存在している。図15は、いくつかの一般的なホスホルアミダイトおよびコンビナトリアル架橋ストラテジーを示す。
【0213】
最後に、調節性核酸はユニット66を示す。これらの実験のために、細胞中に導入したDNAの潜在的な広範囲の用途の理由、およびその安定性の理由から、一本鎖DNAに焦点が当てられる。DNA antago−miR−210およびスクランブル配列を研究するが、本明細書中に記載するような他のオリゴヌクレオチドを使用することができる。それぞれの場合において、核酸放出の直接的な評価は、適切な化学的勾配(例えば、pHまたはグルタチオン滴定)または光を使用して溶液中で行われる。DNAの安定性は、AuNPの表面への結合により高めることができる。AuNP上の核酸の安定性は密度と関係があるが、HDL AuNPプラットフォームは、リン脂質層内に核酸を隔離し、ヌクレアーゼの接近を妨げることにより利点を提供することができる。これは、つなぎ鎖の長さを含む、結合させたオリゴの他の特性に大きく依存し得る。標準的な蛍光アッセイおよび融解転移アッセイを使用することにより、固定化したDNAオリゴヌクレオチドの安定性と認識特性の両方を測定する。
【0214】
実施例6
本実施例は、構造体のコアへの治療用オリゴヌクレオチドの共有結合を可能にするために、混合単層の構成を有しているシェルを持つ構造体について記載する。
【0215】
混合単層構造体は、メルカプトヘキサデカン酸(MHA)のカルボン酸基のこの場合では、連結エレメントを介するナノ構造体コアに対する治療用オリゴヌクレオチドの共有結合を可能にすることができる。MHAをリン脂質と一体化させることにより、t核酸配列をナノ粒子に結合体化させることができ、いくつかの場合には、エンドソームの隔離を克服することができる。1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミドヒドロクロリドおよびN−ヒドロキシスルホスクシンイミド(EDC/NHS)化学は、第1級アミンに対するそれらの反応性を増大させ、それにより、安定なアミド結合を生じさせるための、カルボン酸基を活性化させる十分に確立した方法である。ここでは、EDC/NHSを、MHAのカルボン酸基と第1級アミンで末端改変したオリゴヌクレオチドとの間でのアミド結合の形成を促進するために使用した。
【0216】
細胞内のmRNA配列に対して選択的に結合する短い核酸配列の使用は、十分に確立されている遺伝子調節方法である。本実施例においては、ヒトのがんにおいてほぼ例外なくアップレギュレートされる抗アポトーシスタンパク質であるサバイビンの発現を調節することが示されているDNA配列を、モデル核酸治療薬として選択した。抗サバイビンオリゴヌクレオチドに対して共有結合させた混合単層AuNPは、細胞内サバイビンmRNAに選択的に結合し、サバイビンタンパク質の発現をノックダウンさせ、がん細胞の死を誘導する能力を有する。
【0217】
材料および方法
リン脂質およびMHAの混合単層ナノ粒子の合成:
混合単層AuNPの合成のための模式図を図4に示す。チオールで改変したリン脂質、1,2−ビス(11−メルカプトウンデカノイル)−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(C10)および1,2−ビス(16−メルカプトヘキサデカノイル)−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(C15)、ならびにメルカプトヘキサデカン酸(MHA)を、10nmのAuNPの表面上に吸着させた。典型的な合成においては、10nmのAuNPを、エタノールと水の1:1混合物中に懸濁し、100倍過剰量の適切な脂質と混合した。脂質とAuNPの溶液を一晩混合した。未反応の脂質を、透析[10kDの分子量カットオフ(MWCO)、SnakeSkin 透析用チューブ(dialysis tubing)(Thermo Scientific)]を使用して、結合体化させた脂質−AuNPの溶液から除去した。MHAに対する脂質(C10またはC15)の様々な比を、ナノ構造体コアの表面に対するオリゴヌクレオチドのカップリングを最適化するために利用した。
【0218】
ナノ構造体の特性決定:動的光散乱(DLS,Malvern)測定法を、流体力学的直径の増大を明らかにすることによりAuNPの化学的機能化を確認するために使用した。透過電子顕微鏡法(TEM、FEI Spirit)を使用して、AuNPの表面上の脂質層を画像化した。脂質層は、酢酸ウラニル染色を使用して同定した。最後に、炭酸水素ナトリウムの使用を、AuNPの表面に吸着したMHA分子のカルボン酸末端基の存在を定性的に確認するために使用した。
【0219】
DNAの固定化:アンチセンスサバイビンオリゴヌクレオチド配列をこの実験のために選択した(5’−CCCAGCCTTCCAGCTCCTTG−3’)。上記配列は、標準的な固相ホスホルアミダイト化学を使用して合成し、MHAのカルボン酸部分に対するEDC/NHSカップリングのために5’アミン基でキャップをつけた。3’蛍光団標識(フルオレセイン)を、オリゴヌクレオチドの結合体AuNPローディングを容易に定量化するため、および細胞培養実験のための視覚的標識とするために使用した。改変したアンチセンスオリゴヌクレオチドを、高速液体クロマトグラフィーを使用して精製した。アンチセンスサバイビンDNAの混合単層AuNPの表面へのカップリングは、AuNP上の蛍光標識したDNAの濃度を測定するために、蛍光プレートリーダーを使用して決定した。標識したオリゴヌクレオチドの標準的な希釈系列を使用して、粒子あたりのDNA鎖の適切な数を決定した。
【0220】
がん細胞へのナノ粒子の取り込み:混合単層構造体を、培養物中で増殖させたヒト前立腺がん細胞(LnCaP)に添加し、共焦点蛍光顕微鏡法を使用して画像化した。LnCaP細胞を、ガラス底の生存細胞を画像化するための皿の中で60〜80%の細胞集密度になるまで単層細胞培養物中で増殖させた。混合単層でDNAを機能化したAuNPを、100pMの濃度でトランスフェクトし(12時間)、リン酸緩衝食塩水(PBS)とともにインキュベートした細胞の対照群と比較した。インキュベーション後、細胞の単層をPBSで洗浄し(3回)、そしてLeibovitz’s培地を、生存細胞の共焦点顕微鏡法による画像化のために添加した。
【0221】
結果
ナノ粒子の特性決定:動的光散乱を、表面改変の前後のナノ粒子のサイズを測定するために使用した(表3)。未改変のAuNPは、9±1nmの流体力学的半径を有する。リン脂質とMHAを添加すると、ナノ粒子の直径は有意に増大し、粒子の表面上の混合脂質単層の存在を裏付ける。全体として、C15脂質の流体力学的直径はC10脂質よりも大きく、これは、C10脂質に対するC15脂質のアルキルテールの長さの差と一致する。
【0222】
【表3】

【0223】
図16Aおよび16Bは、それぞれが10:1の、MHAに対するリン脂質比を持つ、C10およびC15脂質混合単層構造体のTEM画像である。酢酸ウラニルでの陰性染色後、かさ様(halo−like)の環が、それぞれの構造体の周囲を囲むように現れ、これは、ナノ構造体コアの表面上の混合単層の存在を裏付けている。
【0224】
カルボン酸基の存在を、炭酸水素ナトリウムの添加と気泡(二酸化炭素)の放出により定性的に確認した。この実験の反応は以下のとおりである:R−COOH + NaHCO → R−COONa + HO(l) + CO(g)。
【0225】
DNAの固定化:蛍光の測定値は、混合単層リン脂質で機能化したAuNPのDNAに結合する能力を示す。遊離の蛍光標識したオリゴヌクレオチドの標準曲線を、混合単層ナノ粒子に結合したDNA配列の濃度と数を決定するために利用した(表4)。一般的には、結果は、MHAに対するリン脂質の比が増大するに伴い、AuNP表面に結合したオリゴヌクレオチドの数が増大することを示す。混合単層AuNPに対するオリゴヌクレオチドの最適な結合は、C15リン脂質に対するC10リン脂質について観察された。
【0226】
【表4】

【0227】
がん細胞へのナノ粒子の取り込み:LnCaP前立腺がん細胞を、混合単層DNAで機能化したAuNPでトランスフェクトし、共焦点顕微鏡法を使用して画像化した(図17)。細胞を、10:1の比のC10脂質とMHAの混合単層またはC15脂質とMHAの混合単層で機能化したAuNPでトランスフェクトした。それぞれの場合において、混合単層AuNPは、フルオレセインで標識したDNAで表面に機能を持たせた。図17の画像は、細胞の対照群においては蛍光がないことを示す(予想した結果)。ナノ粒子の蛍光シグナルと相中のLnCaP細胞の共局在化は、両方の結合体がLnCaP細胞と効率よく相互作用することを暗に意味している。混合単層ナノ粒子の細胞内局在性はこれらの画像からは確認することはできない。
【0228】
結果は、チオールで改変したリン脂質とMHAの混合単層を持つAuNPを製造できることを示す。MHAをAuNPの表面成分として使用することにより、アミン末端化(amine−terminated)DNAオリゴヌクレオチドの共有結合を、十分に確立されているEDC/NHSカップリング化学を使用して達成することができる。C10脂質を含有している混合単層ナノ粒子は、一緒に吸着させたMHA分子のアミン末端化オリゴヌクレオチドの共有結合に適している化学的バックグラウンドを提供する。おそらく、いくつかの実施形態においては、C10脂質に対してC15脂質のより長いアルキルテール長が、生じる(incoming)アミン末端化DNA配列に対し有効なMHAカップリングに対して大きな立体障害を生じ得る。
【0229】
治療薬としてのDNA機能化混合単層AuNPを使用することの実現可能性を決定するために、培養物中で増殖させた前立腺がん細胞中に取り込まれるそれらの能力を評価した。最初の細胞取り込み実験は、ナノ粒子結合体ががん細胞と好ましい方法で相互作用することを暗に意味している。将来の研究は、混合単層AuNP DNA結合体のがん細胞との相互作用に焦点をあて、それらの細胞内分布および生物学的機能をさらに徹底的に評価するであろう。
【0230】
本実験の結果は、細胞のトランスフェクションおよび遺伝子調節の状況においてこれらの生物学的分子の両方の利点を強力に実現するために、脂質とDNAの両方でAuNPの表面を機能化する成果が得られているアプローチを示す。
【0231】
これらの結果はまた、簡便なEDC/NHSカップリング化学を使用して混合単層AuNPの表面にカップリングさせたタンパク質または他の生物学的に重要な分子を用いる他の用途を含む将来の研究の可能性も開く。
【0232】
本発明のいくつかの実施形態が本明細書に記述され例証されたが、当業者であれば、機能を実行し、および/または結果を得、および/または本明細書に記載の1つ以上の利点を得るために、容易に様々な他の手段および/または構造体の構想を描くだろう。また、各々のそのような変更および/または修正は、本発明の範囲内であると考えられる。より一般的には、当業者は、本明細書に記載のすべてのパラメーター、寸法、材料、および構成は例示を意図し、実際のパラメーター、寸法、材料および/または構成は、本発明の教示(複数可)が使用される特定の適用(複数可)に応じて決まることを容易に認識するだろう。当業者は、型通りの実験作業を行なうだけで、本明細書に記載の特定の実施形態の多くの等価物を認識するか、または確認することができるだろう。したがって、先の実施形態は例示としてのみ提示され、添付の請求項およびその等価物の範囲内で、具体的に記載され特許請求されたものとは別のやり方で本発明を実施することができることが理解されるであろう。本発明は、本明細書に記載の個々の特徴、システム、物品、材料、キットおよび/または方法に関する。さらに、2つ以上のそのような特徴、システム、物品、材料、キットおよび/または方法のいかなる組み合わせも、そのような特徴、システム、物品、材料、キットおよび/または方法が、相互に一貫しない場合を除き、本発明の範囲内に含まれる。
【0233】
本明細書に定義され使用される定義はすべて、辞書の定義、参照によって組み込まれた文献中の定義および/または定義された用語の通常の意味に優先すると理解されるべきである。
【0234】
本明細書および請求項の中で使用される場合、不定冠詞「a」および「an」は、明白に別途示されない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0235】
表現「および/または(and/or)」は、本明細書中および特許請求の範囲において使用する場合は、エレメントのうちの「いずれかまたは両方」がそのように結合していること、すなわち、いくつかの場合には、結合した状態で存在し、他の場合には別々に存在する複数のエレメントを意味することが理解されるものとする。「および/または」を用いて列挙する複数のエレメント、すなわち、そのように結合している「1つ以上(one or more)」のエレメントも、同様に解釈されるものとする。「および/または」の句により具体的に記載されるエレメント以外の他のエレメントも、具体的に記載したそのようなエレメントと関係があるか関係がないかにかかわらず、必要に応じて存在し得る。したがって、限定的ではない例として、「Aおよび/またはB」との言及は、「含む(comprising)」のようなオープンエンドの用語と組み合わせて使用する場合は、1つの実施形態においては、Aだけ(必要に応じて、B以外のエレメントを含む)を意味することができ;別の実施形態においては、Bだけ(必要に応じて、A以外のエレメントを含む)を意味することができ;なお別の実施形態においては、AとBの両方(必要に応じて他のエレメントも含む)を意味することができるなどであり得る。
【0236】
本明細書中および特許請求の範囲において使用する場合は、「または(or)」は、上記で定義した「および/または(and/or)」と同じ意味を有すると理解されるものとする。例えば、リストの中の項目を分ける場合には、「または」あるいは「および/または」は、包括的である、すなわち、多数のエレメントもしくはエレメントのリストのうちの少なくとも1つを含むが、1つ超も含み、必要に応じて、さらなる列挙されていない項目も含むと解釈されるべきである。それとは反対に、「そのうちの1つだけ(only one of)」または「そのうちの正確に1つ(exactly one of)」、または特許請求の範囲の中で使用される場合は「からなる(consisting of)」のような明らかに示される用語だけが、多数のエレメントまたはエレメントのリストのうちの正確に1つのエレメントを含むことを意味する。一般的には、用語「または(or)」は、本明細書中で使用する場合は、排他性の用語(例えば、「いずれか(either)」、「そのうちの1つ(one of)」、「そのうちの1つだけ(only one of)」、または「そのうちの正確に1つ(exactly one of)」が前にある場合には、代替えを排除する(すなわち、「一方または他方であって、両方ではない(one or the other but not both)」)ことを示すとしてのみ解釈されるべきである。「本質的にそれからなる(consisting essentially of)」は、特許請求の範囲において使用する場合は、特許法の分野で使用される場合のその通常の意味を有するものとする。
【0237】
明細書中および特許請求の範囲において使用する場合は、1つ以上のエレメントのリストに関する表現「少なくとも1つ(at least one)」は、エレメントのリストの中に具体的に列挙した個々のおよび全てのエレメントのうちの少なくとも1つを必ずしも含む必要はなく、エレメントのリストの中の複数のエレメントの任意の組み合わせを排除しない、エレメントのリストの中の任意の1つ以上のエレメントから選択した少なくとも1つのエレメントを意味すると理解されるものとする。この定義はまた、具体的に示したエレメントと関係があるか、無関係であるかにはかかわらず、表現「少なくとも1つ」が意味するエレメントのリスクの中に具体的に示したエレメント以外のエレメントが必要に応じて存在し得ることを可能にする。したがって、限定ではない例として、「AおよびBのうちの少なくとも1つ(at least one of A and B)」(または、同等であるのは、「AまたはBの少なくとも1つ(at least one of A or B)」あるいは同等であるのは、「Aおよび/またはBの少なくとも1つ(at least one of A and/or B)」は、1つの実施形態においては、Bの存在を伴わない(そして必要に応じて、B以外のエレメントを含む)少なくとも1つ、必要に応じて1つ超のAを含むことを意味することができ;別の実施形態においては、Aの存在を伴わない(そして必要に応じて、A以外のエレメントを含む)少なくとも1つ、必要に応じて1つ超のBを含むことを意味することができ;なお別の実施形態においては、少なくとも1つ、必要に応じて1つ超のAと、少なくとも1つ、必要に応じて1つ超のB(そして必要に応じて他のエレメントも含む)を意味することができるなどである。
【0238】
さらに、別途示されない限り、2つ以上の工程または行為を含む本明細書中で請求されたいかなる方法においても、当該方法の工程または行為の順序は、当該方法の工程または行為の記載された順序に必ずしも限定されないことを理解するべきである。
【0239】
上記の明細書と同様に請求項でも、すべての移行句、たとえば「comprising」、「including」、「carrying」、「having」、「containing」、「involving」、「holding」、「composed of」等はオープンエンドであると理解され、すなわち、限定されずに含むことを意図する。移行句「consisting of」および「consisting essentially of」だけが、それぞれ、米国特許庁の審査手続便覧第2111.03章に規定されたクローズドまたはセミクローズドの移行句であるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ構造体コア;
該ナノ構造体コアを囲繞し、該ナノ構造体コアに結合した脂質を含有しているシェル;および
該シェルの少なくとも一部と会合している、遺伝子発現を調節するように適応させたオリゴヌクレオチド
を含有している構造体であって、コレステロールを隔離するように適応させた、構造体。
【請求項2】
ナノ構造体コア;
該ナノ構造体コアを囲繞している疎水性のシェル;および
該シェルの少なくとも一部と会合している、遺伝子発現を調節するように適応させたオリゴヌクレオチド
を含有している構造体であって、コレステロールを隔離するように適応させた、構造体。
【請求項3】
ナノ構造体コア;および
該ナノ構造体コアと会合している、コレステロールで改変されたオリゴヌクレオチド
を含有している構造体。
【請求項4】
遺伝子発現を調節するように適応させたオリゴヌクレオチド、脂質、およびアポリポタンパク質を含有しているナノ構造体。
【請求項5】
遺伝子発現を調節するように適応させたオリゴヌクレオチドおよびアポリポタンパク質A1を含有しているナノ構造体。
【請求項6】
上記請求項のいずれか1項に記載の構造体を被験体または生物学的試料に対して送達する工程;および
該被験体または生物学的試料において遺伝子発現を調節する工程
を含む、方法。
【請求項7】
上記請求項のいずれか1項に記載の構造体;および
1種類以上の薬学的に許容可能なキャリア、添加物、および/または希釈剤
を含有している、薬学的組成物。
【請求項8】
上記請求項のいずれか1項に記載の複数の構造体を含有している組成物;および
疾患または身体状態を診断する、予防する、処置する、または管理するための該組成物の使用についての指示
を含む、疾患または身体状態を診断する、予防する、処置する、または管理するためのキット。
【請求項9】
前記構造体がコレステロールに対して約10mM以下の結合定数Kを有している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項10】
前記オリゴヌクレオチドが遺伝子発現を調節することができる、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項11】
前記シェルが前記ナノ構造体コアを実質的に囲繞している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項12】
前記シェルが脂質を含有している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項13】
前記シェルがリン脂質を含有している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項14】
前記シェルが脂質単層を含有している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項15】
前記シェルが脂質二重層を含有している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項16】
前記脂質二重層がリン脂質を含有している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項17】
前記脂質二重層が50〜200のリン脂質を含有している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項18】
前記リン脂質が、以下:
【化1】

を含有している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項19】
前記リン脂質が、以下:
【化2】

を含有している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項20】
前記脂質二重層の少なくとも一部が前記コアに対して共有結合させられている、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項21】
前記脂質二重層の少なくとも一部が前記コアに対して物理吸着させられている、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項22】
前記脂質二重層が、前記コアに向かう複数の親水基と、該コアから遠ざかるように伸びる複数の疎水基を含有している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項23】
前記脂質二重層が、チオール−金属結合を介して前記ナノ構造体コアに結合している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項24】
前記脂質二重層が、アミノ基を介して前記ナノ構造体コアに結合している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項25】
前記構造体の少なくとも一部分と会合したタンパク質を含有している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項26】
前記シェルの少なくとも外側表面と会合したタンパク質を含有している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項27】
前記シェルがリポタンパク質構造物を含有している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項28】
前記シェルがアポリポタンパク質を含有している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項29】
前記シェルが被験体由来のアポリポタンパク質を含有している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項30】
前記アポリポタンパク質がアポリポタンパク質A−I、アポリポタンパク質A−II、またはアポリポタンパク質Eである、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項31】
前記構造体が1〜6個のアポリポタンパク質を有している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項32】
前記構造体が、内因性HDLにApo A−1の密度の10%以内である該Apo A−1の密度を含有している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項33】
前記シェルが、第1層と第2層を含有しており、前記アポリポタンパク質の少なくとも一部が、該第1層と該第2層との間に位置している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項34】
前記シェルが、成分の自己集合した単層を含有している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項35】
前記シェルが複数の成分の混合層を含有している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項36】
前記シェルが、チオール末端基を含有する複数の成分の混合層を含有している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項37】
前記シェルが約1,000g/mol未満の分子量を有する成分から実質的に形成されている、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項38】
前記シェルが、非重合体の成分から実質的に形成されている、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項39】
前記シェルが荷電されていない成分から実質的に形成されている、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項40】
前記シェルが少なくとも3つの層を含有している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項41】
前記構造体が、内因性HDLのマクロファージおよび肝細胞に対する結合親和性に実質的に等しい、マクロファージおよび肝細胞に対する結合親和性を示す。上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項42】
前記構造体が、約50nm以下の最大断面寸法を有している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項43】
前記構造体が、約35nm以下の最大断面寸法を有している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項44】
前記構造体が、約30nm以下の最大断面寸法を有している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項45】
前記構造体が、中空であるかまたは少なくとも部分的に中空であるコアを含有している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項46】
前記コアが、約50nm以下の最大断面寸法を有している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項47】
前記コアが、約30nm以下の最大断面寸法を有している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項48】
前記コアが、約25nm以下の最大断面寸法を有している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項49】
前記コアが、約20nm以下の最大断面寸法を有している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項50】
前記コアが、約15nm以下、約10nm以下、または約5nm以下の最大断面寸法を有している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項51】
前記ナノ構造体コアが無機ナノ構造体である、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項52】
前記ナノ構造体コアが無機材料を含有している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項53】
前記ナノ構造体コアが金属を含有しているか、または該ナノ構造体コアが実質的に金属から形成されている、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項54】
前記ナノ構造体コアが金を含有している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項55】
前記ナノ構造体コアが半導体を含有しているか、または該ナノ構造体コアが実質的に半導体から形成されている、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項56】
前記ナノ構造体が重合体を含有しているか、または該ナノ構造体が実質的に重合体から形成されている、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項57】
前記ナノ構造体コアが量子ドットを含有している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項58】
前記ナノ構造体が実質的に球状である、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項59】
前記ナノ構造体コアが非球状である、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項60】
前記ナノ構造体が円盤状である、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項61】
前記ナノ構造体コアがナノチューブである、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項62】
前記ナノ構造体コアがナノロッドである、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項63】
前記構造体と会合させた生物活性剤をさらに含有している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項64】
前記生物活性剤が、抗炎症剤、核酸種剤、化学療法剤、およびコレステロール剤の1つ以上を含有している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項65】
上記請求項のいずれか1項に記載の複数の構造体の混合物であって、該複数の構造体が、該構造体の約20%以下が、平均断面寸法の約20%より大きい断面寸法を有するような断面寸法の分布を有している、複数の構造体の混合物。
【請求項66】
前記構造体が、使用中に少なくとも5分子のコレステロールを隔離するように適応させた、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項67】
前記コレステロールがエステル化コレステロールである、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項68】
前記コレステロールが遊離のコレステロールである、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項69】
前記構造体が造影剤を含有している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項70】
前記シェルが造影剤を含有している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項71】
前記ナノ構造体コアが造影剤を含有している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項72】
前記構造体が酵素を含有している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項73】
前記構造体がレシチン−コレステロールアシルトランスフェラーゼを含有している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項74】
前記疾患または身体状態ががんと関係がある、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項75】
前記疾患または身体状態が炎症と関係がある、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項76】
前記疾患または身体状態が前立腺がんと関係がある、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項77】
前記疾患または身体状態がアテローム性動脈硬化症を含んでいる、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項78】
前記疾患または身体状態が高脂質血症を含んでいる、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項79】
前記疾患または身体状態がタンパク質蓄積症を含んでいる、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項80】
前記疾患または身体状態が止血の疾患を含んでいる、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項81】
前記疾患または身体状態がリウマチ性疾患を含んでいる、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項82】
前記疾患または身体状態が神経学的疾患を含んでいる、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項83】
前記組成物が投与スケジュールにしたがって単回用量または分割用量で投与される、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項84】
約8〜約500ヌクレオチドまたは約8〜約500塩基対長、約10〜約200ヌクレオチドまたは約10〜約200塩基対長、約10〜約150ヌクレオチドまたは約10〜約150塩基対長、約10〜約100ヌクレオチドまたは約10〜約100塩基対長、約10〜約75ヌクレオチドまたは約10〜約75塩基対長、あるいは約10〜約50ヌクレオチドまたは約10〜約50塩基対長の長さを有している核酸あるいはオリゴヌクレオチドを含む、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項85】
前記オリゴヌクレオチドが一本鎖である、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項86】
前記オリゴヌクレオチドが二本鎖である、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項87】
前記オリゴヌクレオチドが、アンチセンスDNA、siRNA、またはmicroRNAを含んでいる、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項88】
前記構造体から前記オリゴヌクレオチドの少なくとも一部を放出する工程をさらに含む、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項89】
前記オリゴヌクレオチドが前記ナノ構造体コアもしくは前記シェルに共有結合しているか、または共有結合に近い結合で結合している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項90】
前記オリゴヌクレオチドが前記シェルの一部に物理吸着している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項91】
前記オリゴヌクレオチドがコレステロールに共有結合している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項92】
前記オリゴヌクレオチドが脂質で改変されている、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項93】
前記オリゴヌクレオチドがコレステロール化されている、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項94】
前記オリゴヌクレオチドが、5’−コレステリルDNAまたは3’−コレステリルDNAを含有している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項95】
前記オリゴヌクレオチドが、結合前に、アルキルチオールを含むように改変された末端を有している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項96】
前記オリゴヌクレオチドが、生理学的条件下で、非センスまたはセンス対照がほとんど効果を有さないかまたは全く効果を有さない濃度で、生物学的試料または患者と接触させた場合に、標的の発現を少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%まで調節するように適応させたかあるいは配置している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項97】
前記構造体が治療薬および診断薬の両方である、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項98】
前記構造体が、治療用オリゴヌクレオチドを送達するように適応させ、そして/または細胞内診断用センサーとして使用するように適応させた、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。
【請求項99】
前記オリゴヌクレオチドが、標的タンパク質または小分子に結合すると蛍光強度が変化するように適応させた蛍光団を含有している、上記請求項のいずれか1項に記載の構造体、薬学的組成物、キット、または方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9−2】
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【図10】
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【図12】
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【図13A】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図3】
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【図9−1】
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【図11】
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【図13B】
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【図17】
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【公表番号】特表2013−517298(P2013−517298A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−549160(P2012−549160)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【国際出願番号】PCT/US2011/021753
【国際公開番号】WO2011/091065
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(511124183)ノースウェスタン ユニバーシティ (9)
【Fターム(参考)】