説明

核酸に基づく電気光学的センサーアレイおよび分析物を検出するための方法

本発明は、気相状態の分析物と反応する基板上に乾燥させた、フルオロフォア標識核酸を含むセンサーアレイを使用することによって、気相状態の分析物を検出、同定、およびモニターする方法に関する。このようなセンサーアレイを使用および製造する方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府支援
本明細書に記載する発明は、部分的に、米国国防総省高等研究計画(Defense Advance Research Projects Agency)契約第DAAK60-97-K-9502、海軍研究局(Office of Naval Research)助成金第N00014-95-1-1340および米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)助成金第DC00228による米国政府の支援を受けた。米国政府は本発明に一定の権利を有する。
【0002】
関連出願の相互参照
本願は、2002年11月25日提出の米国仮特許出願第60/428,869号および2002年11月25日提出の同時係属出願米国特許出願第10/303,548号の利益を主張する。
【0003】
発明の分野
本発明は全体として、化学的危害、空気保全、および病状のモニター、ならびに爆発物、地雷、および有害化学物質の検出に有用な組成物およびシステムに関する。本発明は、分析物を検出するための核酸に基づくセンサーおよび方法を提供する。より詳細には、本発明は、リアルタイムフィードバックおよび遠隔操作システムを含むサンプリング条件の制御によって気相中の未知の分析物を感知および検出するための、核酸に基づく光学的センサー、センサーアレイ、感知システム、および感知方法と、このようなセンサーおよびセンサーアレイを製造する方法とに関する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
爆発物、化学物質、および/または生物物質による攻撃の深刻な脅威は、現在の「同時多発テロ後(post September 11th, 2001)」時代における国家の安全に対する課題となっている。多種多様の化合物を検出でき、自動化されていて遠隔操作もでき、空港、海港、または他のスクリーニングシステムを含む現場条件で使用できる方法が特に望ましいであろう。例えば、信頼性が高く迅速かつ容易で比較的安価な適したスクリーニング方法が利用可能ではないため、現在、海港から米国に入る全てのコンテナの約2%しか任意の手段によってスクリーニングされていない。国家の安全のために、米国に輸送されるであろう例えば爆発物および毒性化学物質を検出することができるスクリーニング方法を開発することが急務である。例えば爆発物または化学兵器の微量の揮発性化合物を同定するための検出方法が、国家の安全目的のためのこのような新規スクリーニング方法に近づく可能な方法であると考えられる。
【0005】
また、揮発性化合物を検出し、同定するための他の現在可能な用途が数多くある。例えば、異なる化学的分析を使用して、臨床診断において既知の標的化学物質の有無が検出されており、基礎研究および薬物開発において未知の化合物および混合物が同定されており、例えば薬物の製造過程における試験および品質管理において既知の化合物の同一性および純度が実証されている。化学的検出は、実験室における分析にも実験室の外でも重要である。例として、ベッドサイド診断および有害な物質の環境モニタリングが挙げられる。爆発物および化学兵器の検出を含む「現場」における適用には、小型で携帯できる信頼性の高い使いやすい高価でない装置が必要とされる。
【0006】
化学的分析に現在利用可能な方法は数多くあり、各々特定の適用に適しており、各々利点と欠点を有する。例として、ガスクロマトグラフィー(GC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を含む種々の形態のクロマトグラフィー、および質量分析法(MS)、イオン移動度分光分析法(IMS)、ラマン分光分析法、および赤外分光分析法を含む分光分析法、ならびに他の化学的方法、免疫学的方法、および重量測定方法が挙げられる。また、異なる方法の組み合わせにより、例えば分析化学研究室で広範に使用されるGC/MSなどの、未知の化合物を同定する強力な手段を提供することができる。
【0007】
これらの分析方法の共通の特徴は、分析前に化学的試料を調製する必要があるということである。液体試料および固体試料は通常、適当な溶媒に溶解される。気相状態の化学物質の分析については、分析対象の物質量を増加するために事前に濃縮する段階が必要とされることが多い。
【0008】
気相状態の化学物質の事前濃縮は、大容量の大気を吸着性のTenaxまたは固相マイクロ抽出(SPME)トラップに通過させることに関係する。試料は、少量の液体溶剤を使用してトラップから除去されるか、または熱的に脱着されて分析用GCの流入口に直接導入される(Zhang, Z.、Yang, M. J.およびPawliszyn, J. (1994) Anal. Chem., 66: 844A-853A)。
【0009】
事前濃縮、次いで実施するGCまたはGC/MSを使用して、保健衛生および国内治安に関連する種々の検討において揮発性化学物質を検出し、定量化しており、例えば、水中 (Lambropoulou、D. A.およびAlbanis, T. A. (2001) J. Chromatogr., 922: 243-255;Cancho, B., Ventura, F.およびGalceran, M. T. (2002) J. Chromatogr., 943: 1-13) および土壌中(Cam, D. およびGagni, S. (2001) J. Chromatogr. Sci., 39: 481-486)の汚染物質の検出、血中の毒性物質の検出(Bouche, M. P.、Lambert, W. E.、Bocxlaer, J. F. V.、Piette, M. H.およびLeenheer, A. P. D. (2001) J. Anal. Toxicol., 26: 35-42;Musshoff, F.、Junker, H.およびMadea, B. (2002) J. Chromatogr. Sci., 40: 29-34)、検死組織中の薬物の検出(Mosaddegh, M. H.、Richardson, R.、Stoddart, R. W.およびMcClure, J. (2001) Ann. Clin. Biochem., 38: 541-547)、正常な呼吸(Grote, C.およびPawliszyn, J. (1997) Anal. Chem., 69: 587-596)および肺癌患者の呼吸(Phillips, M.、Gleeson, K.、Hughes, J. M. B.、Greenberg, J.、Cataneo, R. N.、Baker, L.およびMcVay, W. P. (1999) Lancet, 353: 1930-1933)中の有機化合物の検出、爆発物の痕跡の特徴づけ(Jenkins, T. F.、Leggett, D. C.、Miyares, P. H.、Walsh, M. E.、Ranney, T. A.、Cragin, J. H.およびGeorge, V. (2001) Talanta, 54: 501-513)ならびに大気および水中のサリンの検出(Schneider, J. F.、Boparai, A. S.およびReed, L. L. (2001) J. Chromatogr. Sci., 39: 420-424)が挙げられる。揮発性化合物の迅速な検出のためには、特別な試料調製段階を回避することが有利であろう。これは、検出が実験室外の現場条件で実施される適用において特に望ましいであろう。
【0010】
これらの方法を使用する揮発性化学物質の分析には、分析に伴う問題をそれぞれ最適化する必要がある。例えば、GCカラム、GC検出器、トラップコーティング、および流速は全て、関心対象の特定の揮発物について最適化する必要がある。また事前濃縮は、トラップに十分な物質を回収するのにかなりの時間がかかることがある。必要な時間は、トラップの吸着剤コーティング(異なるTenaxコーティングは異なる化合物に対して異なる親和性を有する)および大気中の元の試料濃度に依存する。従ってこのような分析方法は、安全スクリーニング、リアルタイム環境モニタリング、またはベッドサイド診断などの迅速な分析には一般に不適当である。従って、種々の濃度の多種多様の異なる化合物を迅速に分析することができる検出システムを開発することが有利であろう。
【0011】
空気捕集用の事前濃縮の別法は、関心対象の特定の化合物に応答する専用のセンサーを含有するシステムからなる。一般的な例としては、一酸化炭素、プロパン、および天然ガスの家庭用検出器が挙げられる。広範に応答するセンサー、例えば多数の揮発性有機化合物に応答するセンサーは入手可能であるが、これらの装置は検出した気体を同定しない。専用の選択的センサーを含有するシステムは同族の分析物に迅速に応答することができ、事前濃縮を必要としないかもしれないが、多数の揮発性化合物を検出し、同定する能力は、関心対象の各化合物に選択的な別個のセンサーを必要とするであろう。さらに、このような方法では、将来的な関心対象の化合物を検出することができない。従って、多種多様の化合物を感知し、同定することができるシステムを開発することが望ましいであろう。
【0012】
大気中の揮発性化合物を検出、識別、および同定することについて最も発達している化学的検出装置の1つは、おそらく陸生動物の嗅覚系である。嗅覚能力には、高い感受性(Passe, D. H.およびWalker, J. C. (1985) Neurosci. Biobehav. Rev., 9: 431-467)、多数の異なる化合物を検出し、識別する能力(例えば、Youngentob,S. L.、Markert, L. M.、Mozell, M. M.およびHornung, D. E. (1990) Physiol. Behav., 47: 1053-1059;Slotnick, B. M.、Kufera, A.およびSilberberg, A. M. (1991) Physiol. Behav., 50: 555-561;Lu, X.-C. M.、Slotnick, B. M.およびSilberberg, A. M. (1993) Physiol. Behav., 53: 795-804)および臭気を精細に識別する能力(例えば、齧歯類における個別認識−Yamazaki, K.、Singer, A.およびBeauchamp, G. K. (1998-1999) Genetica, 104: 235-240)が挙げられる。臭気分子が受容体タンパク質と相互作用する前でさえ、経過過程において、数多くの機序がこれらの能力に影響する。臭いを嗅ぐ行為、鼻の空気動力学、粘膜の溶媒和、および臭気物質除去が全て、嗅覚能力に何らかの役割を果たしている可能性が高い(Finger, T. E.、Silver, W. L.およびRestrepo, D.編、Neurobiology of Taste and Smell、201〜232ページ、John Wiley & Sons、New YorkにおけるChristensen, T. A.およびWhite, J. (2000)Representation of olfactory information in the brain)。臭気物質が鼻粘膜の嗅覚受容体タンパク質に到達すると、前記システムは個々の臭気物質各々に1つの受容体タンパク質を当てるわけではく、むしろ、広域的に応答する多数の受容体タンパク質に1つの種類の化合物が相互作用して、嗅覚感覚ニューロン集団の広範囲の時空間的活動パターン−言い換えると、経時的に発達する多数の感知要素の活動を生ずる(MacKay-Sim, A.、Shaman, P.およびMoulton, D. G. (1982) J. Neurophysiol., 48: 584-596;Kent, P. F.およびMozell, M. M. (1992) J. Neurophysiol, 68: 1804-1819)。次いで、これらの活動パターンは脳の嗅覚野の並列処理要素によって解釈されて、嗅覚経路の各レベルにおいて神経集団の広範囲な活動を生ずる(総説は、Finger, T. E.およびSilver, W. L.編、Neurobiology of Taste and Smell、205〜231ページ、John Wiley & Sons, Inc、New YorkにおけるKauer, J. S. (1987).Coding in the olfactory system.;Kauer, J. S. (1991). Trends Neurosci, 14: 79-85; Finger, T. E.、Silver, W. L.およびRestrepo, D.編、Neurobiology of Taste and Smell、201〜232ページ、John Wiley & Sons、New YorkにおけるChristensen, T. A.およびWhite, J. (2000). Representation of olfactory information in the brainを参照されたい)。
【0013】
嗅覚系の性質は、嗅覚機序に基づいて操作された装置が揮発性化合物の検出および同定に利点を有する可能性を示唆している。「人工的な鼻」または「電子鼻」と呼ばれるこのような装置は1980年代初期に初めて記述され(Persaud, K.およびDodd, G. (1982). Nature, 299: 352-355)、それ以来数多くのシステムが報告されている(例えば、Grate, J. W.、Rose-Pehrsson, S. L.、Venezky, D. L.、Klusty, M.およびWohltjen, H. (1993) Anal. Chem., 65: 1868-1881;Freund, M. S.およびLewis, N. S. (1995). Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 92: 2652-2656;White, J.、Kauer, J. S.、Dickinson, T. A.およびWalt, D. R. (1996) Anal. Chem., 68:2191-2202)を参照されたい)。
【0014】
これらの装置は全て、電子鼻を規定する2つの主要な特徴を組み入れている:1)広域的に反応するセンサーのアレイ、および2)センサー出力を処理するためのパターン認識方法。嗅覚系と同様に、臭気物質が多数のセンサーと相互作用してセンサーアレイに活性化パターンを形成する。市販および研究用の電子鼻は、導電性高分子、表面弾性波素子、固体素子、および光学的インテロゲーション(interrogation)を含む種々の化学的感知技術を利用している。パターン認識方法は一般に、統計学的方法またはコンピュータニューラルネットワークに関係する(総説は、Gardner, J. W.およびBartlett, P. N.、編(1992) Sensors and sensory systems for an electronic nose. Kluwer Academic Publishers、Dordrecht、オランダ;Gardner, J. W.およびBartlett, P. N. (1994). Sensors and Actuators B、18-19: 211-220;Kress-Rogers, E.編、Handbook of Biosensors and Electronic Noses: Medicine, Food, and the Environment、633〜652ページ. CRC Press、BocaRaton、FLにおけるGardner, J. W.およびHines, E. L. (1997). Pattern analysis techniques.;Dickinson, T. A.、White, J.、Kauer, J. S.およびWalt, D. R. (1998). Trends Biotechnol., 16:250-258を参照されたい)。
【0015】
市販の電子鼻の考えられる実際の用途には、食物/飲料分析、環境モニタリング、および医学的診断が挙げられる(Ping, W.、Yi, T.、Haibao, X.およびFarong, S. (1997) Biosens. Bioelectron., 12: 1031-1036;Dickinson, T. A.、White, J.、Kauer, J. S.およびWalt, D. R. (1998) Trends Biotechnol., 16: 250-258;Aathithan, S.、Plant, J. C.、Chaudry, A. N.およびFrench, G. L. (2001) J. Clin. Microbiol., 39: 2590-2593)。
【0016】
広域的に応答するセンサーアレイに基づいた気相状態の化学物質の検出システムは、従来の分析装置を上回る数多くの利点を提供する。電子鼻は大気を直接採取するので、試料の調製が必要ない。検出に必要な時間は、化学的センサーが応答してパターン認識を算出するのに必要な時間だけに制限され、これは最新のコンピュータ技術を使用すれば速い。従って、迅速に応答するセンサーを使用すれば、揮発物質の迅速な検出が可能になる。また、従来の分析装置は大型で、かなりの電力を必要とする傾向があるが、センサーアレイ装置は小型で携帯可能になる可能性がある。携帯用IMS装置は入手可能であるが、それらは現在、爆発物または薬物用のIontrack Instruments VaporTracer2の使用などの、特別で限定的な任務に調整されているので、電子鼻の広域性が損なわれている。
【0017】
センサーアレイ装置は、単一特異的なセンサーを使用するシステムを上回る数多くの利点をも有するであろう。第一に、真に「単一特異的な」センサーは、(不可能ではないにしても)製造が困難であり;広域的に応答するセンサーは容易に製造することができる。第二に、単一特異性が達成されたとしても、一部の化合物の検出には、関心対象の各化合物のための別個のセンサーの開発が必要とされるであろう。逆に、広域的に応答するセンサーの比較的小型のアレイは、理論的には、大多数の異なる化合物を識別することができる(Alkasab, T. K.、White, J.およびKauer, J. S. (2002) Chem. Senses, 27: 261-275)。第三に、限りある数の化合物に特異的なセンサーを含有する装置は、規定された標的セット以外のものを全く検出することができない。広域的に応答するセンサーを含有する装置は、将来的に関心対象になる化合物を検出し、識別する可能性を有するであろう。
【0018】
多種多様の分析物、例えば揮発性化学物質を検出し、正確に同定することができるセンサーを開発することが有利であると考えられる。このようなセンサーは、爆発物および化学兵器の検出などの国内治安への適用に特に有用であろう。
【発明の開示】
【0019】
発明の概要
本発明者らは、驚くべきことに、フルオロフォアを結合し、基板上で乾燥させた核酸は、外気中の揮発性化合物または分析物と反応し、大気中の反応する分析物を検出するためのセンサーとして使用できることを発見した。分析物と核酸物質の両方が水溶液中に存在する場合にのみ作動する、核酸に基づく他の感知物質とは明らかに異なる。
【0020】
本明細書全体において言及される「分析物」という用語は、任意の分子または化合物をいう。「揮発性分析物」は、例えば、液体の上部空間(headspace)、外気、呼吸試料、ガス中に存在するガス状または気相状態の分子もしくは化合物、または上記のいずれかの不純物としての分子もしくは化合物をいう。分析物はさらに、大気中に浮遊していられるほどの大きさの固体化合物、例えばウイルスエンベロープタンパク質または細菌細胞表面または胞子表面の分子、DNA、RNA、およびタンパク質などの他の起源から放出される高分子などの、ガス状態または気相状態で存在する粒子の表面に存在するダスト、分子、および化合物を含む。
【0021】
従って、本発明は、迅速な応答時間、迅速なサンプリング時間、サンプリングおよび検出パラメーターの動的な調節、分析物のサンプリング条件のインテリジェントなフィードバック制御、スマートモードサンプリング、最新の分析物検出アルゴリズムの適用によるスマートな検出、センサーのハイスループットスクリーニング、ならびに種々の標的分析物の高い感知、識別、および検出能力を有する、核酸に基づいたマルチセンサーである交差反応性センサーアレイを提供する核酸に基づいた化学的センサー、感知システム、ならびに感知および同定方法を提供する。
【0022】
本発明はさらに、種々の匂い(odor)または臭い(smell)、例えば気相状態またはガス状の分析物に関する同定情報を、遠隔的に、例えばインターネットまたは無線通信システムによって送信することができる、核酸-フルオロフォアに基づいた分析物感知システムを提供する。
【0023】
一態様において、本発明は、大気試料中の分析物、例えば揮発性分析物を検出および/または同定するための方法であって、
a. 大気試料に、基板を含む核酸に基づいたセンサーアレイを接触させる段階であって、フルオロフォアで標識した(フルオロフォアに結合している)核酸が基板に分散されており、フルオロフォアで標識した核酸は、分析物の存在下において励起光エネルギーに供すると特徴的な光学的応答を提供する段階と;
b. 分析物の有無を検出する段階と;
c. 大気試料中に見られる分析物を同定する段階と
を含む方法を提供する。
【0024】
基板は、例えば、紙、ガラス繊維、絹、および合成材料から製造される織物を含む異なる材料から製造することができる。
【0025】
好ましい一態様において、核酸/フルオロフォアは、基板の複数の内側面および外側面に分散される。
【0026】
一態様において、接触させる段階は、分析物を含有することが疑われる大気試料を試料チャンバーに引き入れ、大気試料にアレイを接触させることによって実施される。好ましい態様において、大気試料は5秒未満でチャンバーに引き入れられる。
【0027】
検出する段階は、センサーに励起光エネルギーを照射し、揮発性化合物の存在によってセンサーが生ずる光学的応答を、検出器手段を用いて測定することによって実施することができる。検出器手段には、例えば、光電子増倍管(PMT)、荷電結合ディスプレイ素子(CCD)検出器、光起電装置、光トランジスタ、およびフォトダイオードなどの種々の光検出器が挙げられる。好ましい態様において、フィルタ付きのフォトダイオード検出器が使用される。
【0028】
全ての態様において、分析物は、パターンマッチングアルゴリズムを使用し、核酸に基づいたセンサーアレイの光学的応答を特徴的な光学的応答と比較することによって同定することができる。
【0029】
具体的な態様において、分析物は、光学的応答の時空間的応答パターンを測定し、テンプレートマッチング、ニューラルネットワーク、遅延ニューラルネットワーク、または統計分析から選択される方法でパターンを認識することによって同定することができる。大気試料は、爆発物質または化学兵器を含む種々の物質由来の分析物を含有することが疑われる場合がある。
【0030】
本発明は、さらに、外気試料中の分析物を検出し、同定する感知システムを提供する。本発明のシステムは:a)複数の核酸を含む核酸に基づいたセンサーアレイと;b)核酸に結合しているフルオロフォアと;c)フルオロフォアが結合している核酸が結合している複数の基板と;d)基板支持体と;e)センサー要素に光学的に接続している複数の光源を含む励起光源アレイと;f)センサー要素に光学的に接続している複数の検出器を含む検出器アレイと;g)センサー要素、光源アレイ、検出器アレイを収容するための試料チャンバーと;h)制御された曝露時間でセンサーアレイに接触させるために、チャンバーに外気を引き込むための、チャンバーに取り付けられているサンプリング手段と;i)光源、検出器、およびサンプリング手段と電気的に連絡しているコントローラ手段であって、外気をサンプリングし、外気試料に対するアレイセンサーの光学的応答を測定し、揮発性化合物を検出するために、光源および検出器を用いてサンプリング手段を電気的に調整し、スイッチングするコントローラ手段と;j)測定されたセンサーの光学的応答を、分析物を標的とするセンサーの特徴的な光学的応答と比較して、外気試料中の分析物を同定するための分析物同定アルゴリズムとを備える。
【0031】
分析物感知システムの要素は、携帯用装置、別の物体、例えば出荷コンテナに取り付けられている装置と共に使用してもよく、x線スクリーニング機械などの別のスクリーニング装置と併用してもよい。または、システムの別個の要素、例えば要素a)〜i)は1つ以上の感知ユニットとして使用することができ、分析物同定アルゴリズムは遠隔地または隔てた位置のコンピュータに存在する。1つ以上の感知ユニットは、有線または無線ネットワークによってコンピュータに接続することができる。
【0032】
別の好ましい態様において、同定アルゴリズムは、センサーの応答がブランク大気と異なる場合には検出事象を報告し、パターンマッチアルゴリズムを使用して、存在する分析物を同定する。
【0033】
好ましい一態様において、本発明のシステムは、分析物に関する情報が遠隔地に転送されるように、核酸-フルオロフォアセンサーアレイがワイヤレスで互いに接続されている分析物感知システムの1つ以上の遠隔感知ユニットであって、分析物同定アルゴリズムを備えるユニットを含む。
【0034】
従って、一態様において、本発明は、ガス状または気相状態の試料を遠隔的に特徴づけるためのセンサーアレイシステムであって:a)少なくとも1つのセンサーが、フルオロフォアに結合している複数の核酸を含む核酸/フルオロフォア組み合わせを含み、分析物が接触すると検出可能な信号を提供する複数のセンサーと;b)検出可能な信号を測定することができる複数のセンサーと連絡している測定装置と;c)インターネット、光ファイバーケーブル、および/またはエアウェーブ周波数(air-wave frequency)によって検出可能な信号に対応する情報を遠隔地に送信するために測定装置と連絡している送信装置と;分析物を特徴づけることができるレジデントアルゴリズムを含むコンピュータとを含むセンサーアレイシステムを提供する。
【0035】
本発明はさらに、気相状態の分析物に応答することができる核酸を選択する方法であって、a)フルオロフォアで標識した核酸に気相状態の分析物を接触させる段階と;b)標的分析物の存在下および非存在下においてフルオロフォアの発光プロファイルを測定する段階であって、発光プロファイルの差が、核酸が気相状態の分析物に反応性であることを示す段階とを含む方法を提供する。
【0036】
本発明は、添付の特許請求の範囲に特徴的に示されている。本発明の他の特徴および利点は、本明細書および添付の図面を参照することによってさらに明確に理解することができる。
【0037】
発明の詳細な説明
本発明の核酸に基づいた感知方法および感知装置の設計は、電気光学的なハードウェア要素モジュール、マイクロプロセッサ制御およびソフトウェアによるサンプリング、および検出アルゴリズムの組み合わせにより、哺乳類の嗅覚系の構造および機能的特徴を模倣し、類似するものである。試料用空隙の設計は、匂いまたは臭い(すなわち気相状態の分析物)が感知モジュールに引き入れられ(「嗅がれ」または「吸入され」)、センサーアレイの複数の感知要素(「感覚ニューロン」)との相互作用が外部事象を誘発する、哺乳類の鼻腔を模倣するものである。
【0038】
分析物質の適用には、例えば、アルカン、アルケン、アルキン、ジエン、脂環式炭化水素、アレン、アルコール、エーテル、ケトン、アルデヒド、カルボニル、カルバニオン、生体アミン、チオール、多核芳香族を含む有機物質、およびこのような有機物質の誘導体、例えばハロゲン化物誘導体など、糖、イソプレン、およびイソプレノイドなどの生体分子、脂肪酸、および誘導体などの多種多様の化学物質のクラスが挙げられる。
【0039】
従って、センサー、アレイ、および鼻の商業的適用には、環境毒性学および改善、生物医学、物質の品質管理、食物および農産物モニタリング、麻酔薬検出、呼気中のアルコール分析装置、危険な流出物の同定、爆発物検出、見つけにくい排出物の同定、医学的診断、魚の鮮度、生物医学的用途および医学診断的用途のためのインビトロおよびインビボにおける細菌および微生物の検出および分類、重工業製品のモニタリング、外気モニタリング、労働者保護、排ガス制御、製品の品質試験、漏れの検出および同定、オイル/ガス石油化学的適用、可燃性ガス検出、H2Sモニタリング、危険な漏れの検出および同定、緊急事態対応および法的処置への適用、非合法物質の検出および同定、放火調査、密閉空間の調査、上下水道および電力への適用、排ガスモニタリング、変圧器の不良の検出、食物/飲料/農業への適用、鮮度の検出、果実の成熟制御、発酵過程のモニタリングおよび制御への適用、風味の配合および同定、製品の品質および同定、冷媒および燻蒸剤検出、化粧品/香水/香料の処方、製品品質試験、個人識別、化学的/プラスチック/薬学的適用、漏れの検出、溶剤回収の有効性、境界線モニタリング、製品品質試験、有害廃棄物処理場への適用、見つけにくい排出物の検出および同定、漏れの検出および同定、境界線モニタリング、輸送、危険な流出物のモニタリング、燃料補給作業、出荷用コンテナ検査、ディーゼル/ガソリン/航空燃料同定、建物/住居の天然ガス検出、ホルムアルデヒド検出、煙の検出、火災の検出、自動換気制御適用(料理、喫煙等)、空気取り入れモニタリング、病院/医学的麻酔および消毒ガス検出、感染性疾患検出および呼気への適用、体液分析、薬学的適用、薬物開発、遠隔手術等が挙げられる。
【0040】
プトレッシン、カダベリン、およびスペルミンなどの生体アミンは、植物、動物、および微生物の通常の代謝活動の結果として形成・分解され、肉(Veciananogues, J. Agr. Food Chem., 45: 2036-2041, 1997)、チーズ、アルコール飲料、および他の発酵食品などの食料品の鮮度を評価するために同定することができる。また、アニリンおよびo-トルイジンは肺癌被験者のバイオマーカーであることが報告されており(Pretiら、J. Chromat. Biomed. Appl. 432:1-11, 1988)、呼気中のアンモニアは、肝性脳症の診断、治療評価、および追跡調査におけるバイオマーカーであることが報告されているが(Shimamotoら、Hepatogastroenterology, 47(32): 443-5, 2000)、ジメチルアミンおよびトリメチルアミンは、腎不全患者が経験する「魚くさい」尿毒性の口臭の原因であることが報告されている。(Simenhoff, New England J. Med., 297: 132-135, 1977)。従って、一般に、生体アミンおよびチオールは、細菌、疾患状態、食品の鮮度、および他の臭気に基づく状態のバイオマーカーである。従って、本明細書に考察する核酸-フルオロフォアに基づいた鼻センサー要素およびアレイは、患者の尿、血液、汗、および唾液の上部空間中、ならびに呼気中の成分をモニターするため、発情期の時期などの種々の健康状態(Laneら、J Dairy Sci 81(8): 2145-50, 1998)および本明細書に考察する疾患を診断するために使用することができる。またセンサー要素は、魚の鮮度(揮発性アミンの痕跡に関する)などの食品の品質モニタリングのため、環境および産業への適用のため(オイルの品質、水の品質、大気の品質、ならびに汚染および漏れの検出)、他の生物医学への適用、法的処置への適用のため(ブレスアライザー(breathalayzer)、限定空間モニタリング(屋内空気の品質、フィルタブレークスルー等)、ならびにセンサーモダリティーを組み合わせたアレイの形態で使用することによって分析物検出を改善してセンサーアレイに機能および性能を加えるための上記の他の適用のために使用することができる。従って、本発明は、遠隔地から疾病および疾患をモニターする方法を医師および患者に提供する。本発明のシステムは、自宅で寝たきりの患者または特定の疾患状態の継続的なモニターを必要とする患者を医療担当者がモニターする際に有用であると考えられる。このような遠隔的なモニタリング能力により、医院または病院に繰り返し通院する必要性がなくなり、患者の健康および状態に関するリアルタイムデータを医師に提供することができる。
【0041】
一態様において、分析物が核酸/フルオロフォアに基づいた感知要素と相互作用すると、センサー要素がフィルタ付LEDアレイの励起光エネルギーに照射された場合に、検出可能で特徴的な波長の光エネルギーを発光する。本発明のマルチ要素式の核酸に基づいたセンサーアレイはこのように、外部の誘発事象に応答し、光エネルギーの発光が分析物の存在を信号化し、この誘発事象をフィルタ付フォトダイオードアレイによって検出する(「検出」)する点において、嗅覚系の感覚ニューロンを模倣している。フォトダイオード前置増幅器は、データ操作、分析、フィードバック制御、検出、および同定のために(「集積」)、光学的な信号を電気的な電圧信号に変換(「変換」)し、電気回路によって増幅、操作され、アナログ-デジタル(「A/D」)変換器およびソフトウェア制御式マイクロプロセッサに輸送(「送信」)することによって、嗅覚の感覚ニューロンを模倣している。検出、変換、送信、およびA/D特徴は、アレイの核酸に基づいたセンサー要素各々について反復される。本発明のセンサーアレイは、特定のサンプリング適用の分析物の検出、識別、および同定の必要性に応じて、要素およびチャネルを追加または除去することによって、限定されることなく、拡大または縮小されてもよい。
【0042】
図1Aおよび1Bは、本発明の分析物の感知および検出システムの概略を提供する。臭気源(2)の分析物はセンサーアレイに嗅がれる、すなわち輸送され、臭気物質は「スニフ(sniff)ポンプ」(4)を使用して核酸/フルオロフォアに基づいたセンサー要素のアレイと相互作用する。臭気物質の存在下においてセンサー要素(6)が光線エネルギーにより励起されると、分析物がセンサー要素の核酸/フルオロフォア化合物と相互作用することによって生じる発光光線の変化により検出可能な光学的応答信号を生ずる。核酸に基づいたアレイの臭気物質に対する時空間的な光学的応答は、例えば、パターンマッチング、ニューラルネットワーク、ニューロンネットワークまたは統計分析方法を適用して、臭気物質を検出、識別、および同定する、コンピュータ18に存在するスマート解析アルゴリズムによって、検出され、記録され、操作され、次いで既知の標的臭気物質に照合される。
【0043】
本発明の核酸/フルオロフォアに基づいたセンサーのハードウェアおよびソフトウェア要素および構成は、検出方法を迅速に調節することができるコンパクトで、携帯可能で、高価でなく、拡張可能で、迅速に応答する感知装置を提供する。本発明の設計および方法は:a)波長、強度、および周波数などの発光ダイオード(LED)の出力;b)波長、ゲイン、および周波数などのフォトダイオードの検出特性;c)周波数、持続時間、数、速度、および上昇-下降力学などのサンプリングパラメーター;ならびにd)分析物をサンプリング、検出、および同定する際の動的反応性のスマートフィードバック制御のための、サンプリング時間の一定なまたは一時的なフィルタ設定の、リアルタイムで迅速な調節を提供する。
【0044】
本発明の装置および方法は、動的な応答調節以外に、異なるセンサー、特に異なる波長で調査される同じ組成のものの同期性およびノイズ特性を評価するハードウェアおよびアルゴリズム実装をさらに提供する。これは、わずかな応答信号を同定および使用し、ノイズを排除する強力なツールとなる。
【0045】
独立に照射、検出、記録、および調節される感知チャネルを提供することによって、既存の臭気物質検出器では実現が困難なレベルの柔軟性、拡張性、携帯性、効率性、および経済性が達成される。また、小型で、高価でなく、柔軟にプログラム可能なコンピュータによるマイクロコンピュータプラットフォームおよび交換式核酸/フルオロフォアに基づいたセンサーおよびセンサーアレイモジュールの使用は、無線接続式感知ユニットなどの実社会における感知適用に極めて柔軟で目的に合ったセンサー性能および能力を提供する。このようなユニットの1つ以上を、例えば、物体を導いて、臭気物質または分析物質についてスクリーニングすることができるトンネル内に配置することができる。本発明の核酸-フルオロフォアセンサーアレイを含むこのような無線システムの適用には、臭気物質および/または分析物についての郵便物のスクリーニング、貨物自動車または船のコンテナ、乗用車、手荷物および他のこのような物体のスクリーニングが挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
本発明により有用な無線システムの例は、全体の内容が参照として本明細書に組み入れられている、例えば、米国特許第6,631,333号に詳細に記載されている。
【0047】
本発明により有用な核酸には、1本鎖および2本鎖RNAならびに1本鎖および2本鎖DNAおよびcDNAが挙げられる。本明細書において使用する核酸、オリゴヌクレオチド、および同様の用語は、核酸類似物、すなわちホスホジエステル骨格以外を有する類似物も含む。例えば、当技術分野において既知であり、骨格にホスホジエステル結合の代わりにペプチド結合を有するいわゆるペプチド核酸は、本発明の範囲内であると考えられる(Nielsenら、Science 254, 1497(1991))。または、修飾塩基を核酸配列に使用することができる。
【0048】
このような修飾塩基の例を以下の表1に掲載する。
【0049】
(表1)修飾塩基の例



【0050】
核酸配列の鎖長は、約1塩基の1本鎖DNAから最高約3千塩基の2本鎖DNAまで異なってもよい。好ましくは、約18〜24塩基対のオリゴヌクレオチドを使用する。
【0051】
本発明により有用な核酸は、当業者に既知の方法を使用して合成することができる。例えば、固相ホスホトリエステル法は、Sproatら(Oligonucleotide Synthesis - A practical approach (Gait, M. J.、編)、IRL Press、Oxford 83〜115、1984のSolid-phase synthesis of oligodeoxyribonucleotides by the phosphotriester method)に記載されているように使用することができる。固相ホスホトリエステル法の概念は4つの基本的な局面を有する:オリゴヌクレオチドは固相支持体に共有結合されたまま合成される、過剰の可溶性保護ヌクレオチドおよびカップリング試薬が反応を終了に誘導することができる、反応は1つの反応容器で実施されて固相支持体操作による機械的損失を減らし、最小量の出発物質を用いる合成を可能にする、および異質な反応を標準化する。これらの手法は全て容易に自動化され、市販のいくつかのオリゴヌクレオチド合成装置が当業者に既知である。固相オリゴヌクレオチド合成の最もよく使用される化学的経路は、BeaucageおよびCaruthers(Beaucage, S. L.およびCaruthers, M. H.(1981) Deoxynucleotide phosphoramidites - A new class of key intermediates for deoxypolynucleotide synthesis, Tetrahedron Lett. 22, 1859-1862)によって改良されたホスファイトトリエステル方法である。
【0052】
または、核酸は、例えば、プラスミド、コスミド、酵母人工染色体、および細菌人工染色体の形態の核酸断片を含むライブラリーから単離することができる。核酸は、ウイルスおよび原核細胞または真核細胞などの任意の他の起源から単離することもできる。核酸単離方法は日常的であり、プロトコールは、例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第3版、SambrookおよびRussel、Cold Spring Harbor Laboratory Press、2001から見つけることができる。
【0053】
単離後、単離された核酸は、例えば、制限酵素消化によってさらに改変することができる。単離された核酸は、PCRおよびランダムまたは特異的なプライマー配列を使用して増幅することができる。このようなプライマー配列は、オリゴヌクレオチド合成中にフルオロフォアで標識することもできる。
【0054】
一態様において、本発明に有用な核酸は、既存のアプタマーまたはランダムな配列ライブラリーから選択することができるアプタマーとほぼ同じである。アプタマーは、水溶液中で高い特異性でタンパク質または他の小分子に結合することができる1本鎖または2本鎖核酸と規定される。本発明において、核酸に基づいたセンサーは2つの重要な点においてアプタマーと異なる:1)核酸センサーは基板上で乾燥され、大気中の化合物と直接相互作用する、および2)核酸配列は、フルオロフォアと組み合わせて、多種多様の揮発性化合物と反応する能力について選択される。一般に、アプタマーは多数の非相互作用性オリゴヌクレオチドから選択され、ランダムな配列ライブラリーから出発して、所定のリガンドに対する高い親和性での結合のために核酸を最適化する指数関数的な濃縮によってリガンドを系統的に進化させる「SELEX」と名づけられるインビトロにおける選択実験が起源である(C. TuerkおよびL. Gold, Science 249, 505(1990);A. D. EllingtonおよびJ. W. Szostak、Nature 346, 818(1990))。インビトロにおける選択およびアプタマーに関する総説は、例えば、G. F. Joyce、Curr. Opin. Struct. Biol. 4, 331(1994);L.Gold、B. Polisky、O. C. Uhlenbeck、M. Yarus、Annu. Rev. Biochem. 64, 763(1995);J. R. LorschおよびJ. W. Szostak、Acc. Chem. Res. 29, 103 (1996);T. Pan、Curr. Opin. Chem. Biol. 1, 17(1997);Y. LiおよびR. R. Breaker、Curr. Opin. Struct. Biol. 9, 315(1999);M. Famulok、Curr. Opin. Struct. Biol. 9, 324(1999)を参照されたい。
【0055】
鎖長および核酸配列は容易に改変することができ、それによって可能なセンサーのレパートリーは、好ましくは約1塩基〜約3000塩基の範囲でほぼ無限である。感知用核酸配列の好ましい鎖長は、約10〜約2000塩基、約10〜約1000塩基、約10〜約500塩基、約15〜約400塩基、約15〜約300塩基、約15〜約200塩基、約15〜約100塩基、約15塩基〜約30、40、50、60、70、80、または90塩基と変わる。好ましい態様において、核酸は長さ約15〜24塩基である。
【0056】
分析物に対する核酸の応答性を試験するために、単離されたまたは合成された核酸をフルオロフォアで標識する。本明細書において使用する「フルオロフォア」という用語は、フルオロフォア、リン光体、および発光団、ならびに光子を吸着するが放射しない発色団をいうことが理解される。
【0057】
フルオロフォアは、分析物とセンサーの相互作用を変換する手段を提供する。例えば、本発明により有用なフルオロフォアには、OLIGREEN(Molecular Probes, Inc.、Eugene, OR)および以下の表2に掲載する他の蛍光染料が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
(表2)フルオロフォアならびにそれらの励起および発光波長の例




【0059】
本発明により有用な好ましい染料には、OLIGREENまたはYO-PRO染料(Molecular Probes, Inc.、Eugene、OR)が挙げられる。
【0060】
各オリゴヌクレオチドを1つの種類のフルオロフォアで標識すること以外に、フルオロフォア/クエンチャーシステムも使用することができる。典型的には、これらのシステムは、フルオロフォア(例えばフルオレセイン)およびクエンチャー(例えばDABCYL)を、ヘアピン構造を形成するオリゴマー配列の末端に組み入れる(例えば、Tyagi, S.およびKramer, F. R. (1996) Nature Biotech., 14: 303-308;Hamaguchi, N.、Ellington, A.およびStanton, M. (2001) Anal. Biochem., 294: 126-131を参照されたい)。この立体配座において、DABCYLは、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)によってフルオレセインの蛍光を消光する。標的リガンドにオリゴマー配列が結合すると、オリゴマーの立体配座が変化し、フルオロフォアとクエンチャーを分離する。この分離は、フルオロフォアとクエンチャー間のFRETを低下し、フルオロフォアの発光波長の蛍光の変化を生ずる。
【0061】
ドナーおよびアクセプターの両方が同じ核酸に共有結合しているフルオロフォア/クエンチャーシステムのこれらのエネルギー転移ペアは当業者に既知である。Tyagiら(欧州特許第0 745 690 A2号(1996))およびPitnerら(米国特許第5,691,145号(1997))などに記載されているように、このようなエネルギー転移ペアは、オリゴヌクレオチドの立体配座の変化を検出するために使用されている。Hanら(米国特許第5,763,181号(1998))、Nadeauら(米国特許第5,846,726号(1998))、およびWangら(ANTIVIRAL CHEMISTRY & CHEMOTHERAPY 8, 303 (1997))などに記載されているように、それらはまたドナーとアクセプター染料の間の地点におけるオリゴヌクレオチドの切断を検出するためにも使用されている。Ju(米国特許第5,804,386号(1998)によって記載されているように、オリゴヌクレオチドに共有結合されているエネルギー転移ペアはまた、ドナー染料が励起されるとき、最終的な発光波長をシフトさせるためにも使用されている。
【0062】
他のフルオロフォア/クエンチャーシステムは当技術分野において記載されており、このようなシステムは本発明により使用することができる。例えば、LeeおよびFuerst(PCT国際特許出願の国際公開公報第99 28,500号)に記載されているように、1本鎖オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブにおける非共有結合により結合された核酸染色と共有結合により結合されたフルオロフォアとの組み合わせは、核酸染色または共有結合標識のどちらかの蛍光をモニタリングすることによって特異的なDNA標的配列を検出するために使用することができる。また、米国特許第6,333,327号は、増幅アッセイ中およびライゲーションアッセイ中にバックグラウンド蛍光を低下するため、ならびにハイブリダイゼーションを検出するためのフルオロフォア/クエンチャーシステムを開示している。
【0063】
核酸は、核酸の3'領域、5'領域、または内側をフルオロフォアで標識することができる。さらに、フルオロフォアは適用された染料であってもよい。
【0064】
本発明の核酸に基づいたセンサー中の核酸は、当業者に既知の技法を使用して標識される。このような方法には、例えば、核酸を染料と混合する方法、オリゴヌクレオチドの合成中に核酸の末端を標識する方法、またはPCR反応中に核酸を標識する方法が挙げられる。本発明によると、核酸にフルオロフォアを結合する任意の方法を使用することができる。
【0065】
核酸を標識するために染料を適用または使用する好ましい例には、例えばOLIGREENおよびTOTOファミリーのシアニンダイマー染料(Molecular Probes, Inc.)などの染料を核酸に直接適用して、標識核酸を作製する方法が挙げられる。
【0066】
核酸は核酸合成中に標識することもできる。3'末端および5'末端に蛍光染料分子を付加するための試薬、ならびに核酸配列内に染料分子を挿入するための標識dTは容易に入手できる(例えばGlen Research、Sterling、VA)。直接標識する方法を使用することにより、核酸配列内に挿入されるフルオロフォアの正確な量および位置を制御することができる。また、フルオロフォアは異なる位置に付加しても、または複数のフルオロフォアを核酸配列のいくつかの位置に付加することにより多種多様のセンサーを開発してもよい。
【0067】
センサーを構築するために使用する核酸の配列および/または構造はセンサーの応答プロファイルに影響を与える。核酸に基づいたセンサーを作製する際には、核酸に基づいたセンサーの応答性に対して配列(および構造)が与える影響を試験する。試験する各配列について、折畳み構造および融点を評価して、分析物の応答に対して特異的なDNA構造が与える影響を判定する。
【0068】
核酸に基づいたセンサーを作製する際に使用する核酸の量は、分析物に対するセンサーの応答に影響を与える。例えば、核酸に基づいたセンサーに対するDNA量の影響が予備的な実験において観察された(図11)。従って、各センサー構成について、核酸および(適用染料の)染料の濃度範囲を、望ましい結果、すなわち試験分析物に対する顕著な応答を生ずる量について試験する。
【0069】
核酸/フルオロフォア溶液は基板にできるだけ均一に適用することが望ましい。例えば、インクジェット適用システムを使用することができる。このシステムの場合には、圧電インクジェットは溶液の50 nlの液滴を噴出し、XYZ位置決めシステムを使用して基板の正確な位置に適用される。インクジェットシステムを使用して、核酸/フルオロフォア溶液をセンサー基板に適用することができる。
【0070】
センサーを作製するために使用する基板は、例えば、紙、ガラス繊維、合成材料製の線維などの異なる材料から製造することができる。しかし、試験分析物に対する応答性について核酸/フルオロフォアの組み合わせをスクリーニング/試験する目的のためには、ガラス基板を使用することができる。次いで、核酸/フルオロフォアの組み合わせは、応答が影響されないことを確実にするために、センサーに使用する目的の基板上で試験されるべきである。
【0071】
核酸/フルオロフォアに基づいたセンサー応答の長期安定性は、本発明において使用する上で重要である。蛍光染料は、励起光に繰り返し曝露すると光退色することがあり、染料によって異なる速度で光退色する。本発明は、(光線への曝露を短時間の1 msecパルスに制限することによって)光退色を最小にするように設計されており、分析物認識アルゴリズムは信号振幅の変化を受けにくい。しかし、起こりうる任意の光退色を減少すると、センサーの推定寿命が延長される。
【0072】
乾燥した核酸は長期間安定であり、理想的なセンサー材料である。しかし、分析物センサーに使用する核酸は経時的に分解し、分析物に対する応答が変わりうる。分解は最小である可能性が高く、容易に試験することができる。反復スニフの分析物の応答を、例えば上記の光退色試験のデータと比較する。光退色で説明できない任意の信号低下は核酸分解の影響を示唆している。核酸分解の徴候が見られたら、ヌクレアーゼ分解を低下するヌクレオチド修飾を使用して、例えばアプタマーへの適用について記載するように分解を少なくすることができる(Jayasena, S. D. (1999). Clin. Chem., 45: 1628-1650を参照されたい)。
【0073】
本発明はまた、臭気物質および/または気相状態の分析物に対する応答能力について核酸-フルオロフォアの組み合わせを同定し、選択するシステムを提供する。本発明の方法は、気相状態の分析物に核酸-フルオロフォア複合体を曝露する段階と、複合体からの光線の発光を分析物に添加する前と分析物に曝露中または曝露後で比較する段階を含み、分析物への曝露の前と曝露中または曝露後とでフルオロフォアから発光される光線の差が、核酸-フルオロフォアが分析物に応答することができることを示す。
【0074】
例えば、複数の異なる核酸-フルオロフォア複合体をガラスカバースリップなどの基板に適用することができ、次いで基板をアレイスキャナー内に配置し、スキャンして「前」の画像を作製する。チャンバーがスキャナー内にある間に、気相状態の分析物を、例えばシリンジを使用して注入する。例えば、シリンジを使用して、試料分析物を含有する容器からヘッドスペース蒸気の一部を抜き取ることができる。分析物の量はチャンバーのサイズに応じて変わってもよく、約0.25〜0.5 ml程度または約1、2、3、5、10、15mlまたは最高100 mlであってもよい。好ましい態様において、約0.5〜2.5 mlの気相状態の分析物を試験チャンバーに注入する。
【0075】
曝露時間は、約1秒から最長5、10、15、20、25、30、40および50秒、さらに最長数分、例えば、1、2、3、4、5、最長10分であってもよい。最も好ましくは、曝露時間は、約25秒〜約3分である。基板を含むチャンバーに試験分析物の臭気物質を注入後、チャンバーを再度スキャンして「後」の画像を得る。核酸-フルオロフォア複合体の特定の組み合わせのいずれかにおいて、前の画像と後の画像に差がある場合には、その複合体は気相状態のその特定の試験分析物に反応すると考えられる。前の画像と後の画像の差は、前の画像と後の画像の発光光線の強度の任意の検出可能な差であってもよい。図6は、マイクロアレイ形態の核酸のスクリーンの一例を示し、光線発光パターンの差を明確に評価することができる。
【0076】
チャンバーおよびスキャナーを使用する目標は、とにかく試験分析物に応答する何らかのおよび全ての核酸-フルオロフォアスポットを見つけることであるので、曝露時間および試験分析物の蒸気の量は変わりうる。時間および容量の主要なモチベーションは、全てのスポットが分析物の蒸気で確実に覆われることである。一態様において、2 mlのチャンバーが使用され、約2〜10 mlの容量の気相状態の分析物をチャンバーに注入することができる。高濃度の蒸気(すなわち飽和蒸気)を用いると、小容量で十分となりうる。低濃度の場合には、チャンバー内の空気を十分に確実に交換するために高容量が必要とされる。
【0077】
気体または気相状態の分析物は、好ましくは、比較的ゆっくりチャンバー内に注入される。例えば、約2 mlのチャンバーでは、注入速度は最も好ましくは約0.5〜1 ml/secである。
【0078】
本発明はさらに、分析物のサンプリングおよび検出中に不活性であっても活性であってもよい基板に配置された核酸/フルオロフォアに基づいたアレイセンサー要素組成物を提供する。典型的には不活性な支持体が従来の感知装置に使用されるが、本発明は、独自の化学的特徴、物理的特徴、吸着特徴、または光学的特徴によって特定の分析物に対するセンサーの応答を増強する活性な染料支持体材料を提供する。異なる基板支持体材料を1つのアレイに使用して、特定の支持体材料が特定のフルオロフォア、フルオロフォア化合物および核酸/フルオロフォア混合物に対応して、特定の揮発性分析物または臭気物質に対する高いセンサー応答を生じうる。
【0079】
種々のフルオロフォアおよび核酸/フルオロフォア混合物のセンサー応答信号を増強する繊維状の基板支持体は好ましい基板材料である。
【0080】
本発明のさらなる有利な特徴は、離脱可能または交換可能な核酸/フルオロフォアに基づいたアレイ、アレイ基板、または基板支持体を提供して、特定の分析物のサンプリングおよび検出要件に対応するようにセンサーアレイを変えることを容易にすることにある。一態様において、広域的なクラスおよび特定のクラスの分析物を同定するセンサーの検出能力を多様化および増強するために、多層状態のアレイ基板を使用することができる。
【0081】
最適なセンサーの信号発生および検出を提供するために、光発光ダイオードの励起光光源およびフォトダイオード検出器から適当な視角および距離にセンサー基板を位置決めすることが一般的に好ましいことを、当業者は認識していると思われる。好ましい一態様において、アレイ基板を位置決めし、固定するために別個の基板ホルダーを提供してもよい。別の好ましい態様において、アレイ基板の適切な位置決めおよび固定のために、試料チャンバーハウジングを構成してもよい。
【0082】
当業者によって理解されるように、可能な基板材料の数は非常に多い。可能な基板材料には、絹、ガラスおよび修飾ガラスまたは機能化ガラス、プラスチック(アクリル、ポリスチレンおよびスチレンと他の材料のコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、テフロン等を含む)、多糖、ナイロンまたはニトロセルロース、樹脂、シリカまたはシリコンおよび修飾シリコンを含むシリコン系材料、炭素、金属、無機ガラス、プラスチック、ならびに種々の他のポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
好ましい態様において、図10に示すようにLED光源とフォトダイオード検出器の間に基板を配置することができるように、光学的に透明な基板を使用する。LEDおよびフォトダイオードが基板の同じ側に配置される別の態様において、光学的に不透明または光学的に吸収性で反射性かつ散乱性の材料を使用することができる。
【0084】
従来の平坦、平面的、曲線的または非平面的な固体センサー基板を使用する場合には、これらの基板は一般に、自己支持性であり、基板支持体は必要でないが、任意に使用してもよい。
【0085】
従来の平坦、平面的、または曲線的非平面的固体センサー基板を使用することができるが、精細な繊維状の毛髪状の異なる材料、粒子、多孔性基板、またはフィルムを含む高度に入り組んだ表面に沈着染料によってセンサー表面積を増加させることができ、基板をサンプリング気流中に吊るす。本発明の革新的な基板の場合には、これらの好ましい基板態様は、試料の標的分析物とセンサー要素の接触および相互作用の増加、センサーの幾何学的表面積1単位あたりの光学的応答信号の増加、およびセンサー容積1単位あたりの光学的応答信号の増加を提供する。
【0086】
好ましい態様において、蒸気および流体の輸送を妨害しない実質的に開いた多孔性を有する、透過性が高く、表面積が大きく、織り目加工状、繊維状または粒子状の基板が望ましい。好ましい態様において、単層または多層の紙、フェルト、撚り、または織りの繊維状材料または織物を使用する。別の態様において、ゆるく充填した個々の繊維状または粒子状材料を使用することができる。
【0087】
最も好ましい態様において、信号増強のために繊維状基板材料を使用する。繊維状の基板を選択する際の重要な考慮点は、蒸気に対する基板の透過性、単位容積あたりの接近性の高い表面積、特定の分析物に対する応答信号の増強、感知物質と相互作用するために、分析物が外部および内部表面に自由に接近できるように基板が試料流と相互作用する方法である。特に有用な繊維基板は多孔性で軽量の紙またはティッシュ製品、例えば、Kimwipe(商標)(Kimberly-Clark Corp.、Roswell、GA)、レンズペーパー、フェイシャルティッシュー、ならびに綿、レーヨン、ガラス、およびニトロセルロース繊維製の製品、フェルト、中綿、織物(textile)、織物(woven fabric)、毛糸、糸、ひも、ロープ、紙などの天然または合成繊維を使用する他の繊維状材料、ならびにこのような材料の積層物または複合物は、それらが必要な流体透過性、表面積、容積に対する表面積の比、および蒸気および流体の分析物の自由輸送のための開いた多孔性を有する限り、等しく好適であろう。
【0088】
特に有用な無機繊維および繊維状材料の組成物は、ガラス、セラミック、金属、石英、シリカ、ケイ素、ケイ酸塩、シリサイド、炭化ケイ素、窒化ケイ素、アルミナ、アルミン酸塩、アルミナイド、炭素、グラファイト、ホウ素、ホウ酸塩、ホウ化物、および窒化ホウ素製の天然および合成繊維である。特に有用な天然または合成繊維および繊維状材料の組成物は、芳香族ポリアミド、ナイロン、ポリアリロニトリル、ポリエステル、オレフィン、アクリル、セルロース、アセテート、アニデックス(anidex)、アラミド、アズロン、アラトエステル(alatoester)、リオセル、スパンデックス、メラミン、モダクリル、ニトリル、ポリベンズイミダゾール(polybenzinidazole)、ポリプロピレン、レーヨン、リオレル(lyorell)、サラン、ヴィニヨン、トリアセテート、ビニール、レーヨン、カーボンピッチ、エポキシ、シリコーン、ゾルゲル、ポリフェニレン-ベンゾビス-オザゾール、硫化ポリフェニレン、ポリテトラフルオロエチレン、テフロン、および低密度または高密度ポリエチレン製のポリマー繊維である。好ましい一態様において、吸収性が高く、染料保持性がすぐれている繊維材料、例えばLyorellとして既知のセルロース系繊維を使用することができる。
【0089】
別の態様において、化学的サイズ剤、ポリマー、セラミックまたは金属材料を繊維にコーティングすることができる。修飾ポリビニルアセテート、有機シラン、カップリング剤、帯電防止剤および潤滑剤などの化学的サイズ剤を適宜使用することができる。
【0090】
本発明の信号増強作用のあるセンサー基板の特性に関して、約100 nm〜約1000μm RMSの範囲の高い地点(ピーク)および低い地点(谷)などの表面の地形的な特徴の分布を典型的に有する材料の表面を言う「織り目加工された」という用語の意図する意味を、一般に当業者は認識し、理解すると思われる。「高い透過性」という用語は、一般に、本質的に自由で、妨害のない接近性および対流的または拡散的な輸送を低粘性の流体に提供する開口性が高い多孔性を有する材料および材料の構造をいい、「大きい表面積」という用語は、一般に、少なくとも1 M2/gの表面積を有する材料をいい、典型的には2〜500 M2/gの範囲の表面積をいう。「容積に対する大きい面積」という用語は、一般に、容積に対する表面積の比が少なくとも1 M2/cm3である材料をいい、典型的には2〜1000 1 M2/cm3の容積に対する表面積の比をいう。「多孔性の」または「多孔性」という用語は、一般に、100 nm〜1000μmの孔サイズ分布を有する材料をいい、「開口性が高い多孔性」という用語は、一般に、孔分布が実質的に開いた孔を有する材料をいう。
【0091】
別の態様において、本発明のセンサー基板は、表面積、吸収性、接着性、疎水性、親水性、反発性、識別性または特異性を増強するために、化学的または物理的に改変することができる。いくつかの態様において、基板は、高い親和性、高い反発性、または分析物の吸着に対する立体障害性を提供するなど、分析物との相互作用のための化学的官能性を提供するように化学的に改変することができる。
【0092】
好ましい態様において、センサーは、好ましくは16××、約10 mm×12 mmのサイズの酸洗浄したシルクスクリーンの基板上に作製される。核酸/フルオロフォア混合物はシルクスクリーンにピペットで滴下され、好ましくは約5〜50μlの核酸/フルオロフォア混合物を使用し、約10〜60分、好ましくは約20〜30分、最も好ましくは約25分間空気乾燥される。センサーは各々70%エタノール中で約5分間すすぎ、空気乾燥させ、次いで支持体、例えばガラスカバースリップに取り付けられる。
【0093】
本発明の核酸/フルオロフォアに基づいたセンサーおよび感知システムは、迅速に応答し、比較的高価でなく、ダイナミックに構成可能で、インテリジェントな携帯用サンプリング装置を提供する。
【0094】
本発明のシステムの核酸-フルオロフォアセンサーに有用な好ましい検出装置は、全体の開示内容が参照として本明細書に組み入れられる発行米国特許第6,649,416号に詳細に記載されている。
【0095】
本装置は、信号、例えばアナログ電気信号を発生する核酸/フルオロフォアに基づいたセンサーアレイおよび検出器アレイシステムに、制御された拍動的な方法(スニフ)で分析物質(臭気物質)を送達する。センサー、検出器、およびサンプリング時点の数は、検出のために標的とされる分析物のクラスに応じて多くもまたは少なくもすることができる。例えば、アナログ信号は前置増幅器/増幅器モジュールで増幅およびフィルタリングされ、コンピュータのメモリモジュールに保存するためにアナログ/デジタル変換モジュールでデジタル化される。臭気物質の送達、サンプリング、分析、検出および同定を含む感知過程の全ての属性は、コンピュータによるプログラム式ソフトウェアの制御下にある。
【0096】
核酸/フルオロフォアに基づいたアレイを収容する感知装置は、特定の分析物を認識するように容易に学習される。学習は、既知の分析物セット、例えば爆発物の検出のためのDNTおよび他の芳香族ニトロ化合物を1回に1分析物ずつ装置に送達する段階と、各分析物の時空間的符号である値の行列をメモリに保存する段階からなる。学習後に未知の分析物をサンプリングする予定の場合には、未知の分析物を装置に送達し、未知の分析物から得られた値の行列を、学習段階中にメモリに保存された種々の分析物の行列テンプレートと比較する。次いで、数多くの異なるアルゴリズムを使用して、未知の分析物と保存されている行列のライブラリーとのベストマッチを決定する。一態様において、アルゴリズムは、保存されている行列の各ポイントと未知の行列との平方差の合計(sum of the squared difference)を算出してベストマッチを探索する。好ましい態様において、各センサー信号の立ち上がり期は、信号振幅および変化速度を表す2つのパラメーターを含む指数関数によりフィットされる。次いで、これらのパラメーターの行列を使用してセンサーアレイ応答を表し、平方差の合計を使用して上記のようにマッチを算出する。
【0097】
本感知システムは、スクリーンディスプレイ、プロット、プリントアウト、データベースファイル、および録音または合成音声メッセージを含むがこれらに限定されない種々の様式の出力結果を提供する。
【0098】
本発明の感知装置は、センサーアレイの個々のセンサー要素上の励起フィルタアレイによって集束される発光ダイオード(LED)を含む分析物送達システムおよびマルチ-チャネルアレイを収容するサンプリングチャンバーを含む。発光フィルタアレイでフィルタリングされたフォトダイオードアレイは、分析物送達システムによって試料チャンバー内に引き入れられる分析物との相互作用中にLED励起光をセンサー要素に照射することによって生じる放射光エネルギーを検出する。試料チャンバー内の大気温度、湿度、および粒子レベルは、種々の環境条件下におけるサンプリングの再現性を改善するために制御することができる。
【0099】
本感知装置は、一般に、インテリジェントなサンプリングおよび検出ならびに核酸/フルオロフォアに基づいたセンサーの感度および分析物識別の最適化のために、分析物送達および制御(すなわち空間的および時間的分布のマニピュレーション;温度、湿度、およびデューティサイクルの制御)、センサーアレイによる検出およびセンサー信号のマニピュレーション可能な様式への変換、変換出力事象の分析、ならびに分析物の送達、検出および分析のダイナミックフィードバック制御を含む、基本的な機能を提供する。
【0100】
図9は、好ましい核酸/フルオロフォアに基づいたセンサーアレイおよび感知システム要素の一般的なモジュール設計および構成を示す模式的ブロックダイアグラムを提供する。LED、励起フィルタ、センサー要素、(核酸/フルオロフォア)センサーアレイ基板、発光フィルタ、およびフォトダイオードを示す例示的なセンサーアレイ構成の詳細な模式図は図1Bに提供する。
【0101】
好ましい態様において、分析物送達システムは、試料の温度、湿度、流速、ならびに分析物送達の立ち上がりおよび立ち下がり時間、持続時間、および頻度のフィードバック制御を提供する。
【0102】
一般に感知チャンバーは:a)温度、湿度、空気の流速、適用する蒸気パルスの立ち上がりおよび立ち下がり時間ならびに頻度を制御する手段;b)感知領域にクロマトグラフィー面を与えるおよび/または感知面を濡らす、除湿する、もしくは感知面に分析物を分布する、または感知化学の応答を最適化するために、チャンバーの感知および非感知領域の表面特性を制御する手段(液体、粘液、またはゲルライニング);c)分析物の送達中一定に保持されても分析物送達中にフィードバック制御によって調節されてもよいチャンバーの形状を空気力学的に制御するための手段;およびd)形状、持続時間、空気の流速、一時的な覆い、および分析物サンプリング(スニッフィング(sniffing))の頻度をアクティブなダイナミックフィードバック制御する手段を含む。このようなフィードバックは、事前の分析物のサンプリングによって生ずるセンサーアレイの時空間的応答パターンを調査することによって誘導することができる。
【0103】
感知チャンバーは、種々の形状の空洞に検出器を配置することによって空気力学的な特性について最適化することができる。一態様において、センサーは流動通路の屈曲部に配置することができる。別の態様において、センサーは真直ぐな流動通路側に配置することができる。
【0104】
本発明は、離脱可能なセンサー基板に適用される核酸/フルオロフォア混合物から構成される感知要素を提供する。一態様において、薄膜状の核酸/フルオロフォア混合物を、平坦な絹、プラスチックまたはガラス基板に配置する。好ましい態様において、核酸/フルオロフォア混合物は、絹、天然または合成セルロース、ポリマー、ガラス、セラミック、金属、または他の材料製の繊維状支持体上にインクジェットプリンターを使用して直接配置される。繊維状の染料基板を使用すると、応答信号の大きさが劇的に増加し、装置の分析物検出および識別が改善される。別の態様において、核酸/フルオロフォアの薄膜を、気流の中心に配置した貫通している離脱可能な固相支持体に自由運動できるように吊るし、それによって揮発性化合物の分析物に核酸センサーの両面を曝露することができる。
【0105】
本発明による感知装置は、核酸/フルオロフォア複合体が取り付けられている支持体を含む交換可能で離脱可能なセンサーまたはセンサー要素を使用する。容易に離脱可能なセンサーは、感度を改善し、種々のサンプリング適用における特定の分析物の識別を最適化するために、感知部位の迅速な変更を容易にする。この特徴は、センサーに使用するための新規核酸配列および/または構造または異なるフルオロフォアを評価するため、また分析用の検出アルゴリズムを評価するために、異なる核酸/フルオロフォア混合物の迅速なスクリーニングをさらに提供する。
【0106】
センサー要素部位のサイズ、厚さおよび表面積は、感度および識別を最適化するため、ならびにセンサー要素を光源および検出器に効率的に接続するために調節することができる。一般に、センサーの幾何学的面積が大きく、センサー要素の幾何学的面積と光検出器の面積がかなり近いと、すぐれた感度が提供される。
【0107】
本発明の交差反応性のセンサーアレイは、狭いまたは広域的に応答するセンサー要素を含むことができる。センサーアレイ要素の数は、特定のサンプリング適用の必要性について設定することができる。規定された分析作業のための特定のセンサーは、アレイに存在する多数の可能な感知要素部位から選択することができる。センサーおよびアレイの構成は、特定の分析物識別作業の必要性に応じて、LED-センサー-フォトダイオード-フィルタチャネルを加えることによって調節することができる。
【0108】
好ましい一態様において、複数のセンサーアレイおよびアレイ基板をサンプリングチャンバーに配置することができる。このような複数のアレイは、第1の相互作用および分析物のサンプリングが広域的反応性センサーアレイにより、その後コンピュータからの分析情報フィードバックに基づいて分析物試料が追加のスニフのために自動的に、特定の種類の分析物を検出し同定するように設計された特定の第2階層のアレイに方向転換されるように、階層的に組織化された一連のセンサーアレイを含みうる。従って、複数の感知アレイは、さらに精細な識別が経路に沿って連続的に実施できるように、階層的に配列することができる。さらに、センサーの寿命は、短いパルスとして分析物を送達し、短時間だけLEDにパルスを出して光線曝露を少なくすることにより、必要時まで曝露から保護される余剰のアレイによって長くすることができる。光線曝露をさらに少なくするために、アバランシェ形フォトダイオードなどの高感度光検出器を使用する場合には、低い光線励起レベルを使用することができる。分析物を短時間だけ短くパルスすることによって感知表面を飽和から防ぎ、それによって分析物の接触後のセンサーの回復が改善される。
【0109】
増強されたスマートモード操作のために、分析物のサンプリングまたは検出に使用するアレイセンサーの数を、実際のサンプリング中またはサンプリング後のデータ分析中に「オン-ザ-フライ」インテリジェントフィードバックを使用してリアルタイムで調節することができる。例として、特定のセンサーが特定の分析物試料に反応しない場合には、マイクロコントローラにフィードバック制御を提供するスマートサンプリングまたは分析アルゴリズムによる考慮により、対応する感知チャネルを自動的に除去することができる。また、個々のセンサーの信号貢献に基づいて、分析および検出アルゴリズムにおける個々のセンサーの重み付けを調節することができる。個々のセンサーは異なる応答幅およびピークを有することを考慮すると、センサーの重み付けは異なる分析物について変わる。
【0110】
好ましい一態様において、16または32チャネルのセンサーアレイが使用される。例えば、32のセンサー要素の最適化されたアレイは、少なくとも1000の異なる分析物の種類を検出し、識別する能力を有するはずであると期待される。使用する核酸/フルオロフォアに基づいたセンサー材料は、ほとんど無限の多様性、従って分析物検出能力を提供し、適当に広いスペクトルの応答を有するように選択することができるので、特定の分析物検出作業に最適化された異なるセンサーアレイを選択することができる。
【0111】
典型的には、従来の蛍光感知システムには落射照射光学が使用されている。落射照射光学は、異なる励起および発光波長を使用する各チャネルに比較的複雑な二色性ミラー配列を必要とする。従って、落射照射様式では、励起フィルタ、二色性ミラー、および発光フィルタが各波長に必要である。本発明の感知システムは、励起および発光フィルタだけを必要とする透視(trans-illumination)構成を使用する。落射モードは、典型的には、光学的要素の臨界的な(critical)配列を必要とし、振動および動きに敏感であるので、本発明の透視モードは、周囲環境における屋外サンプリングのための頑強でコンパクトな携帯用の感知装置に有利である。
【0112】
本発明の光学的検出システムの模式ダイアグラムを図9のブロックダイアグラムに提供する。図1Bは、サンプリングチャンバーハウジング内の個々のLED-フォトダイオード-光学的フィルタ-センサーセットの構成および相対的な配向を模式図で示すサンプリングチャンバーの断面図を提供する。簡単にするために、図1Bの断面図は、2つのLED-フォトダイオード-フィルタ-センサーチャネルペアを含む2つの感知チャネルだけを示す。図1Aは、16のセンサーアレイ構成の図を示す。図1Aおよび1Bに示す部分的なアレイ構成は、サンプリングチャンバー内のセンサー、フィルタ、フォトダイオードおよびLEDの相対的な配向および位置決めを例示するために使用されているだけであり、本発明に使用することができるセンサーアレイのサイズの何らかの制限を示すことを意図していないことに留意することが重要である。本発明の実際の感知装置は、さらに大きいまたは小さいアレイ、および対応するLED-フォトダイオード-フィルタ-センサーセットを有する任意の数の感知チャネルを使用することができる。例えば、好ましい一態様において、32のLED-フォトダイオード-光学的フィルタ-センサーチャネルセットを使用する。センサーアレイチャネルの数は、特定のサンプリング適用および分析物識別の必要性に応じて増加または減少することができる。
【0113】
LED、フォトダイオード、励起フィルタおよび発光フィルタ、センサーおよびセンサーアレイ基板の構成および相対的な配向の一例を、図10に模式的に示す。8つのセンサー-LED-フォトダイオード-フィルタモジュールを図10に例として示すが、特定のサンプリングおよび検出の必要性に基づいてさらに大きいおよび小さいモジュールおよびアレイを構成することができる。例えば、一態様において、各モジュールに8つのセンサーを用いて4つのモジュールを並列して配列することによって32要素のセンサーアレイを集成することができる。図10に示すように、2×4のアレイ構成で3 mmの4つの穴を2カラム掘ることによって、複数のLEDを黒色のプラスチック支持体に取り付ける。LEDは取り付け用の穴に圧入し、交換のために容易に除去することができる。2×4のアレイ構成の8つのフォトダイオードを複数取り付けるために、同じ寸法のフォトダイオード支持体を使用する。LEDおよびフォトダイオードアレイは、ペアになっている列の間隔が中心距離約6 mmで、ペア間の間隔が中心距離8 mmとしてカラムに取り付ける。LEDアレイとフォトダイオードアレイのカラムの間隔は中心距離15 mmである。
【0114】
図10に示すように、径12.5 mmの励起フィルタは、2×2のアレイ構成でフィルタを収容するように、黒色のプラスチック支持体プレートに12.5 mmの4つの穴を掘ることによって形成した約30 mm×30 mm×6 mmの励起フィルタ支持体に取り付けられる。さらに大きいまたは小さいフィルタを有するさらに大きいまたは小さいフィルタアレイを含む他のフィルタ集成物構成を、他の態様に使用することができる。4つの発光フィルタを取り付けるために、励起フィルタ支持体と同じ寸法の同様の発光フィルタ支持体を製造する。発光フィルタおよび励起フィルタは、従来の位置決めねじでそれぞれの支持体に取り付けられる。得られた励起フィルタ支持体集成物は、従来の取り付けねじでLED支持体集成物の前面に直接取り付けられ、発光フィルタ支持体集成物はフォトダイオード支持体集成物の前面に直接取り付けられる。
【0115】
複数の核酸に基づいたセンサー要素は、透明なセンサーアレイ基板、例えばガラスカバースリップにコーティングまたは液滴として直接適用される。または、多孔性もしくは繊維状の感知要素を使用する場合には、これらは、透明なセンサーアレイ基板に取り付けられても、例えば、テープで貼られても、接着剤でつけられても、もしくはクランプで締められてもよく、または透明もしくは不透明であってもよいアレイ支持体の開口部もしくは貫通部に吊るされてもよい。離脱可能で交換可能なセンサーアレイ基板またはアレイ支持体基板は、基板支持体ホルダーを使用して発光フィルタ支持体の前面にぴったり取り付けることができる。基板支持体ホルダーは、例えば、成形された、好ましくはU字型の基板支持体フレームと、発光フィルタ支持体の前面に面している成形された基板支持体とを接着する、例えば接着剤で貼ることによって形成される。センサーアレイ基板またはアレイ支持体基板は、例えば、基板支持体フレーム、支持体に面するおよびフィルタ支持体の前面によって形成されるスロットまたはチャネル内に取り付けられる。基板支持体集成物は、交換可能なアレイ基板またはアレイ支持体基板の迅速な除去および交換を提供する。
【0116】
センサーアレイは、図10に示すように、1つのセンサーアレイモジュール、または端と端を合わせて配列して多数のセンサー要素を含むマルチ-モジュールを形成する複数のセンサーモジュールを含んでもよい。LED-励起フィルタモジュール支持体集成物とフォトダイオード-発光フィルタ-センサーモジュール支持体集成物の底部端を、従来の取り付けねじでチャンバー支持体プレートに固定する。この構成では、LED集成物の励起フィルタ側は、フォトダイオード集成物のセンサーアレイ側に面する。LEDおよびフォトダイオードモジュールまたは複数のモジュールは、好ましくは、互いに平行に配列され、2つのモジュールの間隔は、LEDアレイによるセンサーアレイ要素の照射を最適化するように調節される。図10に示す好ましい一態様において、この間隔は約5 mmである。好ましい一態様において、32のセンサーアレイは、8つのセンサーモジュール4つをチャンバー支持体プレートに取り付けることによって形成される。さらに大きいまたは小さいセンサーモジュールおよびさらに少数または多数のモジュールを使用する他の構成を使用して、LED、フォトダイオード、フィルタおよびセンサー支持体ならびにチャンバー支持体プレートを調節し、LEDアレイによるセンサーアレイ要素の照射を最適化するように向かい合うLEDとフォトダイオードモジュールの間の空間を調節することによって、さらに小さいまたは大きいアレイを収容することができる。
【0117】
LED光源の市販の光学的バンドパス励起フィルタおよびフォトダイオード検出器の発光フィルタは、Andover Corp. (Salem、NH)およびCoherent Inc.(Santa Clara、CA)から入手した。これらのフィルタが1/4〜1 1/2インチサイズで入手可能である場合には、1/2インチフィルタを好ましい態様において使用した。例として、図10は、32のセンサーおよび感知チャネルを使用する態様の、励起および発光フィルタの相対的な配向、構成および間隔を模式図で示す。簡単にするために、図10は、32のチャネルセンサーアレイに使用する4つの8-センサーモジュールの1つだけを示す。4つのセンサーモジュールを用いるこの態様において、16の励起フィルタは、中心距離15 mmで2×8アレイで配列されている。この態様の場合、各発光フィルタは、中心間隔6 mmで隣接する2つのフォトダイオードペアを被覆している。この特定の態様では、アレイの32のセンサー要素は、LED-フォトダイオードペアのサイトラインの中心に配列した。各センサーチャネルが個別の励起および発光フィルタを有する、または3つ以上のセンサーチャネルが各励起および発光フィルタを共有する他の態様が考慮される。例えば、YO-PROおよびOligreen染料については、帯域幅40 nmの450 nmの励起フィルタおよび帯域幅70 mmの発光フィルタ550 nmを使用することができる(Coherent Inc.、Santa Clara、CA)。BOBO-3およびCy3(tm)などの染料はさらに長い波長を必要とし、当業者はこれを選択することができる。
【0118】
励起光エネルギーによるセンサー要素の照射は、任意の適当な光源を用いて実施することができる。従って、フィルタ付き光発光ダイオード(LED)、固体レーザー、または使用する染料指標のための適当な波長の白熱光源を使用することができる。好ましい態様において、各LED光線は、特定のセンサー要素の染料の励起波長に対応する励起フィルタを通過する。励起フィルタを使用する場合には、適当な波長のフィルタ付きの広帯域(「白色」)LEDを使用することができる。
【0119】
本発明は、他のセンサーと違って、個別にフィルタ付き感知チャネルを提供することによって、異なるセンサー要素を用いて複数の励起波長および複数の発光波長における同時サンプリングを可能にする。本発明は、アレイ中の各感知チャネルの照射の振幅、持続時間、およびデューティサイクルの個別制御を独自に提供する。ノイズの制御はフィードバック発揮される。蛍光染料の光退色の減少を含む、周囲光に対する応答の制御および信号検出の最適化は、キロヘルツ〜メガヘルツの種々の周波数でLED出力および同調的な増幅器検出をスイッチングし、調節することによって実施される。周囲光干渉の制御は、位相固定LEDフラッシングおよびフォトダイオード検出によって実施することができる。
【0120】
本発明において、核酸に基づいたセンサー要素は、各センサーの染料物質に適切な波長の集束光発光ダイオード(LED)によって直接照射される。LED励起光源を使用することによって達成される他の利点は、電力要求量が低いこと、操作温度が低いこと、および狭い領域への光線出力が高いことである。さらに、各センサーチャネルにLED光源を使用することによって、各LEDチャネルは、機械的なシャッターを使用しないで電気的に迅速かつ独立にスイッチングされうる。LEDチャネルは、マイクロコントローラからのフィードバックによって電気的に高速で個別に調節されうる。さらに、異なる励起波長を同時に提供して、アレイ測定中にフィルタを連続して機械的にスイッチングしなくてもすむように、LEDチャネルは個別にフィルタリングされうる。
【0121】
核酸に基づいたセンサー用の本発明により有用なLEDの例には、定格約466 nmのHosfelt#25-365、Ultra Bright Blue LEDが挙げられるが、これらに限定されない。本発明により有用な他のLEDは、上記の表に示すような、核酸に結合することができるそれぞれのおよび全ての蛍光分子に適当な波長に従って選択することができる。
【0122】
LEDはコンピュータ制御下でオン・オフされる。これらの装置は、最高メガヘルツ周波数の高速で応答することができるので、典型的には、光退色を低下するためにキロヘルツ周波数でフラッシュされる。このようなスイッチング速度は、機械的なシャッターを使用すると達成できない。LEDの迅速なスイッチング能力を使用してオン・オフすることによりデータ獲得中のセンサーの光退色を低下し、それによって試料スニフ中のデューティサイクルを短くすることにより総光線曝露を低下する。データ採取中だけ光が点灯し、次いでデータポイント間およびトライアル間は消灯するように、LEDは迅速に点滅する。
【0123】
光電子増倍管(PMT)、荷電結合ディスプレイ素子(charge-coupled display device)(CCD)検出器、光起電装置、光トランジスタ、およびフォトダイオードなどの種々の光検出器を、センサーの応答信号を検出するために使用することができるが、好ましい態様においては、フィルタ付きフォトダイオード検出器を使用する。別の好ましい態様においては、高感度アバランシェフォトダイオードを使用することができる。フォトダイオード検出器は、個々のチャネルの光学的フィルタリング、電流/電圧変換、信号増幅、および一時的なフィルタリングの独立した制御および調節を可能にするので、従来のCCDカメラ検出器と比較して明白な利点を有する。他の具体的な利点は、電力消費が少ないこと、電気回路が比較的単純であること、感度が高いこと、構成がしやすいこと、アレイ様式が複数あること(例えば、円形、四角形、または直線のアレイ)、メガヘルツ周波数における周波数応答が速く高いこと、ノイズが低いこと、ダイナミックレンジが広いこと、および低周波数回路で使用できることである。
【0124】
本発明の核酸に基づいた感知装置では、フィルタ付きフォトダイオード各々が1つのフィルタ付きLEDと共に整列されているか、あるいはフィルタ付きフォトダイオードのグループが1つのフィルタ付きLEDによって照射することができる、フィルタ付きフォトダイオードのアレイを使用する。個々のフォトダイオードは、各々、個々のセンサーが使用する特定の染料に適当な光学的発光フィルタを有する個々のセンサー要素部位と共に整列される。異なる発光フィルタが各フォトダイオードに使用されても、あるいは1つの発光フィルタが複数のフォトダイオードに共有されてもよい。フォトダイオード信号のノイズはフィードバックによって制御される。さらに、フィードバック制御は信号サンプリング期間および時間経過にわたって発揮される。識別的な信号入力を、別個の対照センサーおよび個々のサンプリングセンサーに使用することができる。好ましい一態様において、高感度アバランシェフォトダイオードを使用して、センサーの励起に必要なLED強度を低くし、それによってセンサーの光退色を低下することができる。
【0125】
一態様において、市販のEG&G VTP 1232フォトダイオード(EG&G, Inc、Gaithersburg、MD)および12.5 mmの発光フィルタ(Andover Corp.、Salem、NHおよびCoherent Inc.、Santa Clara、CA)を使用した。好ましい態様において、大面積のフォトダイオード(Hamamatsu part no. S2387-66R)を使用する。フォトダイオード検出器と併用使用する特定の発光フィルタは上記に考察されている。
【0126】
センサーは、同じLED、フォトダイオードおよび励起/発光フィルタを共有することができるが、別の態様において、別個のLED、フォトダイオード、センサー、および励起/発光フィルタを、センサー要素および感知チャネルの各々に使用することができる。一態様において、個々のセンサー要素および感知チャネルは、異なる感知材料、異なる励起波長、および/または異なる発光波長を同時に使用することができる。当業者は、本明細書に開示する教示内容に従って、センサーアレイのサイズおよび感知チャネルの数を増加または低下することができる。
【0127】
一態様において、全てのLEDは1つの定電圧回路によって電力を供給される。臭気物質が感知材料と相互作用する結果としての蛍光の変化は、フォトダイオードと、Warner Instruments(Hamden、CT)によって最初に設計され、現在はRed Shirt Imaging Inc(Fairfield、CT)から市販されている電流-電圧(I/V)コンバータとによって検出される。各検出器チャネルあたり1つのI/Vコンバータおよび増幅器/フィルタが使用される。このコンバータ/増幅器構成の独自の特徴は、試料送達前にLEDが活性化されると、フルレンジの高ゲイン増幅を使用して、サンプリング中の分析物によって発生される信号のわずかな変化を観察することができるように、増幅器をベースラインの値にリセットすることによって、センサー要素によって発生したバックグラウンドの蛍光信号を相殺することができるということである。また、増幅器ボードは、全てのチャネルのゲインおよびフィルタ時間定数に発揮されるソフトウェア制御の選択肢を有する。フォトダイオードの出力は12ビットA/Dコンバータを使用してデジタル化される。好ましい態様において、各LEDは、定電流回路によって独立に電力が供給される。各フォトダイオードの出力電流は電圧に変換され、Burr-Brown製の積算用プリアンプ/ADコンバータIC(DDC112)を使用して20ビットにデジタル化される。DDC112は、各センサーチャネルの別個のゲインコントロールを提供する。2つのプログラム可能な論理回路(PLD;Xilinx part no. XC95108-15PC84C)を含む回路は、16のDDC112チップについて高速タイミング制御信号を発生する。
【0128】
従って、上記のように照射およびスニフの開始および持続を操作することができること以外に、増幅器の時定数およびゲインもデータ獲得中にリアルタイムで制御することができる。これらのハードウェアの特徴は、関心対象の分析物または臭気物質を検出、識別および同定するための感知装置の応答を最適化するための明白な利点を提供する。
【0129】
一般に、本発明の核酸/フルオロフォアに基づいた感知システムは、送達される試料またはその分析物成分を特徴づけ、同定するために、核酸に基づいたセンサーアレイからのデータ出力の時空間的パターンを分析する。感知アレイからの使用可能な情報は、全てのセンサー要素によって発生されるセンサーの応答活動パターンから経時的に得られ、情報理論などの統計手段を使用して評価される。テンプレート比較、ニューラルネットワーク、主成分分析等を含むパターン認識アルゴリズムを、従来のデジタルCPU、ニューロナルネットワークシミュレーターチップ、または類似体のニューロナルネットワークコンピュータにおいて実行することができる。また、脳の嗅覚系および他の神経回路の生物学的に基づいた神経接続に基づいたアルゴリズムを使用することができる。
【0130】
本発明の感知装置の分析回路は、感知システムの検出、識別および同定能力に必要なハードウェア支持体を提供する。
【0131】
本発明は、刺激提示および経時的に得られるセンサー出力の変化の調査の時間的な制御を使用する。他のデザインと異なり、本発明の場合には、感知部位への分析物提示は、試料を密閉容器に封入することを必要とする陽圧パルシングではなく、陰圧「スニッフィング」によって実施される。また、本発明は、コンピュータ制御によるフィードバックによって電子的に調節することができるスニッフィングパラメーターを使用し、流速、スニフ期間、および時間プロファイルは、感知チャンバー内に引き入れられる周囲の臭気物質を検出するために特定のサンプリング環境および標的分析物について調整および調節することができる。サンプリングの調節は、その後のスニフが以前のものによって調節できるように、リアルタイムで実施することができる。本発明のスマートサンプリングモード能力を用いると、コンピュータはスニフを開始および停止し、サンプリング中にスニフパラメーターを調節および制御することができる。
【0132】
感知装置を学習させ、サンプリングされた流体中の未知の分析物を同定するために、既知の分析物(臭気物質)(純粋な化合物または複雑な混合物)の標的試料が必要である。
【0133】
全ての学習操作は、最初に、LEDを作動し、フォトダイオードからデジタル化したデータを取り、バックグラウンド蛍光を測定し、これをメモリに保存し、スニフポンプを作動し、ポンプを停止し、データ獲得を終了し、LEDを停止することを提供する自動サンプリングシーケンスを開始することによって、きれいな空気の試験スニフを先ず取る。次いで、標的分析物の容器を所定の位置に配置し、自動サンプリングシーケンスを開始することによって、標的分析物について装置を学習させる。標的分析物のサンプリングおよびデータ獲得事象のシーケンスは、空気のベースライン試料と同じである。この学習シーケンスを関心対象の各標的分析物について反復し、応答データをマイクロコントローラコンピュータRAMメモリモジュールに保存する。
【0134】
米国特許第6,649,416号に記載されている装置などの装置を使用する分析物提示およびデータ獲得後に、評価回路およびアルゴリズムが、パターン認識アルゴリズム、テンプレートマッチング、ニューラルネットワーク、統計分析、または複数点のデータ分析に有用であることが既知の他の分析方法によって、アレイの時空間的応答データを特徴づける。結果は、スクリーンに表示されても、合成音声で発声されても、またはサンプリング中の各時点における各センサーの蛍光変化の三次元応答曲面としてプロットされてもよい。感知装置がロボットビークルに搭載されている場合には、結果はフィードバック制御のために処理され、予定どおりに進行するかまたは適当な策を実行するかの決定が下される。
【0135】
任意に、複数の試料、または複数の分析物を含有する複合混合物をサンプリングする場合には、データサンプリングおよび獲得の調節はスマートアルゴリズムによるインテリジェントフィードバックに基づく。従って、リアルタイム、オン-ザ-フライフィードバックが、LED、フォトダイオード、もしくはスニッフィングハードウェア設定をダイナミックに調節しても、またはサンプリング期間、立ち上がり時間、緩和時間、前回のスニフからの遅延、増幅器のゲインおよび時定数などの分析物サンプリングパラメーターを調節してもよい。これらの調節は、分析物の検出および同定が行われるまで、同じサンプリング試行内の次のデータ獲得に与えることができる。
【0136】
ソフトウェアプログラムは、プレ-ブリーチング段階、LEDがセンサーを照射する期間、データ獲得の開始、分析物の適用、分析物提示期間、分析物提示の停止、各データ点の積分時間の期間、時点の数、および時点間の間隔を明確に制御する。これらのパラメーターは全て、オペレーターの直接介入によって、またはリアルタイムフィードバック制御を通じてサンプリング、データ獲得、または分析段階を調節するスマートアルゴリズムを用いてマイクロプロセッサをプログラムすることによって調節することができる。
【0137】
データは、フィルタリング、平滑化、統計的評価され、臭気物質を同定するために保存されているテンプレートのライブラリーと比較され、および/または以下に考察するアルゴリズムのいずれかによって操作される。データは、典型的には、各感知チャネルの蛍光の時間的変化を示す数のアレイとしてメモリに保存される。
【0138】
1. 検出方法およびアルゴリズム
A. 同期性、応答信号およびノイズ特性の評価
本発明のセンサーの検出および識別能力を改善するために、追加のアルゴリズムを使用して、異なるセンサー要素にわたる応答データの「同期性」を評価し、小さい応答信号を同定し、ノイズを排除することができる。「同期性」の評価は、複数の同一センサーの信号がスニフサイクル中に生じる時に関してどの程度同じであるかを分析することをいう。分析アルゴリズムを含む分野は非常に広く、多数の分析方法が利用可能である。異なる波長を有する複数の検出器チャネルの使用、シングルまたはマルチ-パルス分析物提示の使用、および逐次的でなく同時にセンサー要素からデータを獲得する能力などの本発明の特徴により、本発明のデザインは、人工鼻に従来使用されるものを超える数多くの別のアルゴリズムを考慮することができる。さらに、好ましい態様において、生物学的な回路に基づいたアルゴリズムを使用することができる(全体の内容が参照として本明細書に組み入れられる、J. Whiteら、Biol. Cybern. 78: 245-251(1998);J. Whiteら、Anal. Chem. 68(13): 2191-2202(1996)を参照されたい)。センサー応答データが平行して同時に獲得されるので、いくつかの態様において、本発明の装置は同期して生じる信号を使用することができる。
【0139】
検出アルゴリズム
試験物質の応答行列が、センサーの学習段階中に保存された標的分析物ライブラリー行列の1つに相当する程度は、数多くの方法で評価することができる。
【0140】
好ましい一態様において、各センサーの信号の立ち上がり期は、信号振幅および変化速度を表す2つのパラメーターを含む指数関数にフィットされる。次いで、これらのパラメーターの行列を使用して、センサーアレイ応答を表す。試験行列と学習行列の各パラメーター間の平方差の合計からマッチングを判定する。最も小さい合計を使用して、標的分析物のベストマッチを同定する。
【0141】
別の好ましい態様において、管理された、例えば、逆伝搬ニューラルネットワーク方法を使用することができる。これらの方法の例は、J. Whiteら、「Rapid Analyte Recognition In A Device Based On Optical Sensors And The Olfactory System」、Anal. Chem. 68(13): 2191-2202(1996)およびS. R. Johnsonら、「Identification Of Multiple Analytes Using An Optical Sensor Array And Pattern Recognition Neural Networks」、Anal. Chem. 69(22): 4641-4648(1997)に提供されている。
【0142】
別の好ましい態様において、J. Whiteら、「An Olfactory Neural Network For Vapor Recognition In An Artificial Nose」、Biol. Cybern. 78: 245-251(1998)に開示されているように、嗅覚系に基づいた分析回路を使用することができる。
【0143】
別の好ましい態様において、管理されていないニューラルネットワークを使用することができる。主成分分析および多次元尺度構成法は、実質的に、次元を減らすための管理されていない統計的方法である。一般に、管理されていないニューラルネットワークは、高次元の入力データを低次元の表示に組織化する。例えば、32のセンサーおよび20の時点を有する本発明の装置の一態様を仮定すると、合計640のデータ点を収集することができる。この態様では、各分析物提示は、可視化は困難であるが、数学的に操作することができる640次元空間の1地点と考えることができる。センサーおよび時間にわたって平均化することによって、データの次元を低下することができるが、典型的には約4次元を超えるデータの次元は可視化がやや困難である。
【0144】
自己組織マップ(SOM)は、データの次元を低下する管理されていないニューラルネットワークである。このようなSOM方法は、「臭気物質空間」を可視化するので、人工的な嗅覚系データを提示する上で興味深い。言い換えると、種々の分析物間の関係のマップは学習中に作製することができ;次いで学習中に、「マップ」上の試験分析物の位置が、この「空間」対する分析物の関係を示す。従って、SOMは、標的に対する未知の分析物の類似性を単純に示すのではなく、分析物間の関係を可視化する助けとなりうる。分析物の検出、識別および同定に特に有用となりうるSOM方法の例は、参照として本明細書に組み入れられるT. Kohonenら、「SOM-PAK: The Self-Organizing Map Program Package」、Report A31、Helsinki University of Technology、Laboratory of Computer and Information Science、Espoo、フィンランド(1996)およびT. Kohonen、Self-Organizing Maps、Series in Information Sciences、30巻、第2版、Springer-Verlag、Heidelberg(1997)によって開示されている。
【0145】
サンプリングおよび検出パラメーターの調節
学習に使用する標準によって形成される応答行列の評価に際し、周囲の流体の実際のサンプリングのために、スニッフィングパラメーター、ゲイン設定、および/またはフィルタ設定の調節を実施することができる。標準的な操作モードでは、これらの調節は、プログラム可能なマイクロコントローラまたはキーボード入力によりサンプリングおよびデータ獲得パラメーターを手動で変更するオペレーターの介入によってなされうる。後のセクションに記載する別のスマート操作モードでは、これらの調節は、マイクロコントローラの作動を誘導するスマートサンプリングおよび検出アルゴリズムによって自動的にオン-ザ-フライでなされうる。
【0146】
このような調節が感知性能を改善するかどうか、また、どの程度改善するかは、現時点の試料データが以前の操作で得られたデータより良いか悪いかを事前に判定または分析によって誘導した基準によってフィードバックおよび判定することによって、センサー応答を調査することによって評価することができる。最もすぐれた信号を与えるようなセンサーが認識アルゴリズムにおいて大きな影響を有するように、調節はまた、センサーの影響を識別的に重み付けすることからなりうる。これは、ノイズを低下するために信号をほとんどもしくは全く与えないセンサーを排除する、利用可能な最大レンジを使用するために何らかの標準的な値に対して残りの信号を正規化する、またはスニフサンプリングパラメーターを最適化するために分析物サンプリングおよび刺激獲得パラダイムを変更するなどの数多くの方法で実施することができる。
【0147】
「スマートモード」操作
本発明のスマートモードサンプリング能力の態様の一例は、試料のセッション中に取られる分析物試料の数および持続期間が、分析物の検出、識別および同定を改善するために、リアルタイムフィードバックおよび制御ループによって制御される場合である。他の態様において、別のスマートモードパラメーターおよび装置のサンプリング構成を、装置のメニューオプションにより学習中およびサンプリング中に手動でまたは自動的に選択することができる。スマートモードサンプリング構成は、単独または種々の組み合わせおよび順列で使用することができる。期待される一態様において、関心対象の特定の分析物の最良の検出および識別能力を提供するために、自動学習アルゴリズムを使用してパラメーター選択およびサンプリング構成を最適化することができる。別のスマートモードサンプリングオプションおよびパラメーター構成の具体的な例を以下に記載する。
【0148】
サンプリングパラメーター
スニフパラメーター-スニフ期間
特定の分析物に対して応答が遅いセンサーについては、スニフ期間を延長すると、信号振幅が増加され、検出精度が改善される。
【0149】
スニフパラメーター-スニフの数
最も簡単な実施では、複数のスニフにわたる信号を平均化して、信号対雑音を改善することができる。しかし、センサーが異なると複数のスニフに対する長期応答が異なる(一連のスニフにおいて高くなる信号、低くなる信号、または一定の信号を提供する)。(信号を単純に平均化するのではなく)スニフのこれらの変化をモニタリングすることによって、分析物識別のための追加の情報が提供されると思われる。
【0150】
スニフパラメーター-スニフ力学(立ち上がり時間、降下時間)
試料チャンバー弁の開閉の速度および程度を制御して、サンプリング(スニフ)力学を調節することができる。
【0151】
スニフ力学を変化させると、センサー応答の立ち上がりおよび降下段階の差を増強することができる。
【0152】
スニフパラメーター-スニフ速度
期待される一態様において、デジタル-アナログラインを使用して、スニフファンに供給される電圧を変更してファンの速度を変更するトランジスタを制御することができる。スニフ期間の変更と併用して、スニフ速度を変更すると、特定の分析物に対するサンサーの曝露を最適化することができる。
【0153】
スニフパラメーター-排出速度
スニフ速度を変更する場合と同様に、2つのファンを用いる態様における排出速度の変化は、分析物がセンサーから排出される速度を変更するであろう。1つのファンを用いるシステムでは、スニフ間のそのファンの速度も同様に変更することができる。次いで、分析物の識別を改善するために、動的なセンサー応答をその後のスニフにおいてモニターすることができる。
【0154】
LEDの強度
LEDの強度が強いと、光退色およびセンサーの劣化が早くなるが、分析物曝露中のセンサーの応答信号が大きくなる傾向もある。スマートモード態様では、通常のサンプリングは低LED強度で実施され、小さい応答信号が存在する場合には、分析物検出のために信頼できる信号が生じるまで、LED強度を漸増することができる。このスマートモードは、最小のLED強度で作動して光退色を低下することによって、センサーの寿命を延長する傾向があるであろう。
【0155】
LED波長
LEDの励起波長は調節することができる。3つの別個の波長を生じるLEDは市販されている。従来のLEDの波長は、印加電圧およびフリッカ周波数を変更することによって調節することができる。LED波長を変更することができることによって、装置はセンサーを最適な状態で励起し、スニフ中その励起を変更して、識別を改善することができる。
【0156】
増幅器のゲイン設定
典型的なサンプリング条件では、最も高いゲイン設定を使用する。このような条件下では、分析物によっては、増幅器を飽和するセンサー信号を生じるものもある。スマートモードサンプリング中にゲイン設定を調整することによって、増幅器チャネルが飽和した場合には、さらに低いゲイン設定で追加のスニフを実施することにより、より正確な時間経過および振幅情報を提供するであろう。
【0157】
増幅器の時間的なフィルタ設定
一体型の時間的なフィルタを有する増幅器を組み入れた態様では、フィルタ設定の変更を使用して、個々のセンサーチャネルの信号対雑音特徴を改善することができる。データ獲得およびA/D変換は、LEDパルスのタイミングと密接に関連する。しかし、ある程度の検出の増加は、特定の分析物の信号識別を改善するために、LEDパルス中のデータ獲得のタイミングを調節することによって達成することができる;従って、このパラメーターの調節は、ある種の分析物の検出および同定を改善することができる。
【0158】
個々のチャネルのゲインおよび時間的なフィルタ設定
増幅器の電子工学の本発明の一態様は、ゲインおよびフィルタ設定の操作を全体的に可能にする(すなわち、ゲインおよびフィルタの変更は全てのチャネルに同時に適用される)が、別のセンサーの態様では、個々のセンサーチャネルはスマートモードサンプリングおよび検出のために操作することもできる。
【0159】
これらおよび他のパラメーター変動を使用するスマートモード学習およびサンプリング手法を以下にさらに詳細に考察する。
【0160】
スマートモード学習
スマートモード学習は2つのセクションに分類することができる:第一に、「一次」スニフを規定するパラメーターを決定し、次に必要な場合もある任意の「二次」スニフのパラメーターを決定する。2セットのパラメーターの制限は異なる:一次スニフは、長期間にわたって定期的な間隔で適用され、できるだけ少量の光線にしかセンサーを曝露せずに光退色を低下させ、できるだけ少量の分析物にしかセンサーを曝露させずにセンサーの寿命を延長し回復時間を短縮するので、センサーの寿命に最小の影響しか与えないはずである。二次スニフは、さらに良好な識別を生じる信号を発生することが意図されている。
【0161】
光退色および退色操作
蛍光センサーを長時間の励起光に曝露すると光退色が生じ、センサーの蛍光出力が低下する。この蛍光は、励起光線が消えると経時的に回復する。センサーを応答データ獲得中に種々の間隔で長時間の励起光に曝露する態様では、センサー応答の変動が大きいようである。好ましくは、応答データは、定期的な15秒間隔で獲得される。センサーの退色操作は、データが実際に獲得される前にこの定期的な間隔を確立する。退色操作は、センサーからの信号が安定するまで反復される。短い励起光曝露(1〜5 ms)を使用する好ましい態様では、光退色によるスニフ間の変動は大幅に減少される。
【0162】
長時間の励起光曝露を使用する態様では、退色操作は、ブランクの空気試料のスニッフィングありまたはスニッフィングなしで獲得される。これらの操作の応答行列は、全てのデータポイントの平方和(SS)差を算出することによって以前のデータと比較する。第一の操作では、比較はゼロ行列に対してである。連続的なSS差がほとんど変化しないでSS差が安定している場合には、標的サンプリングの学習を開始する。SS差が安定していない場合には、15秒のインター-ラン遅延時間を使用し、次いで退色操作を反復する。オペレーターはSS差の安定性を視覚的に評価することができるが、この過程は連続的なSS差の最小変化を提供する基準を設定することによって自動化することができる;その基準に到達したら、プログラムを継続して標的サンプリングの学習を開始する。
【0163】
スマートノーズ試験
1つの分析物を試験するスマートノーズを2段階で実施することができる。第一に、一次スニフを取り、一次スニフが標的との良好なマッチを生じたら、そのマッチを報告する。第二に、一次スニフが良好なマッチを生じない場合には、学習によって規定される場合には、1回以上の二次スニフを取る。マッチ基準に到達しない場合には、マッチングの困難さを記録し、最も近いマッチを報告する。品質判定基準に到達したら、マッチを報告する。
【0164】
本発明により有用なフォトダイオードは、一般に、従来のCCDカメラ検出器の個々のピクセルより感度が高く、ダイナミックレンジが広い。本発明の装置の個々のセンサーのフォトダイオードの検出表面積は、従来のCCDカメラ検出器の個々のピクセル面積より大きい。また、本発明に使用するLEDおよびフォトダイオードの表面積により、より大きいセンサー要素面積を使用することができ、個々のセンサー要素のより大きい幾何学的表面積に対してサンプリングが実施される。さらに、本発明の多孔性が大きく表面積が広いセンサー基板は、容積に対するセンサー面積の比の実質的な増加、および三次元的な基板-センサー容積内で形成されるセンサー応答信号の容積測定サンプリングによりセンサー応答信号をさらに増強する。
【0165】
本発明のセンサーの高い感度は、気流中に「吊るした」多層の感知材料を使用し、表面積が大きいセンサー要素および表面積が大きいフォトダイオードを使用し、および/または信号が電子的に組み合わされるセンサーアレイ中に複数の同じ検出器のリプリケートを使用して信号を電子的に組み合わせることによってさらに増加することができる。異なる感知材料のリプリケートを異なるセンサーチャネルに組み入れることができる。リプリケートを使用すると、測定の再現性を証明するためのデータのデュプリケーションに関してだけでなく、増幅器などの電子的な要素からの関連のないノイズを低下することに関して利点を提供する。
【0166】
本発明は、気相状態の分析物に応答することができる核酸を選択する方法であって、a)フルオロフォアで標識した核酸に気相状態の分析物を接触させる段階と;b)標的分析物の存在下および非存在下においてフルオロフォアの発光プロファイルを測定する段階であって、発光プロファイルの差が、核酸が気相状態の分析物に応答することを示す段階とを含む方法をさらに提供する。
【0167】
本発明の方法による核酸は、以前に記載されている方法を使用するオリゴヌクレオチド合成方法、鋳型として任意のDNAを使用するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または、真核細胞および原核細胞、細菌の核酸ライブラリー、コスミド、酵母人工染色体等を含むが、これらに限定されない任意の起源からの核酸の単離を含むが、これらに限定されない当業者に既知の任意の方法によって作製することができる。
【0168】
核酸は、当業者に既知の任意の蛍光標識および方法を使用して標識することができる。一態様において、核酸は、Cy3(tm)標識で標識される。内部配列がランダム配列であり、N-およびC-末端が本質的に同じ配列またはアンカー配列を有する核酸オリゴマーのセットをデザインする。中間にランダムな20-merの配列を有するランダムオリゴヌクレオチドの例は

である。次いで、固定アンカー末端を有するこのようなランダムプライマーを使用して、細菌DNAなどの任意の起源から単離した核酸を増幅することによってライブラリーを作製することができる。ランダム配列を増幅したら、当業者に既知の方法を使用してライブラリー、例えばプラスミドライブラリーにクローニングすることができる。次いで、配列T(15)CCを有する順方向プライマーを、Cy3(tm)標識した逆方向プライマー

と組み合わせて用い、例えばPCRを使用してこのようなライブラリーを増幅することができる。
【0169】
本発明によると、核酸の内部が標識される場合には、任意の位置が利用可能である。例えば、標識は5'-末端もしくはその付近または3'末端もしくはその付近に位置してもよい。さらに、YO-PROおよびOligreenなどの適用染料を使用することもできる。
【0170】
核酸を標識したら、精製する。精製は、当業者に既知の任意の方法を使用して実施することができる。上記に概略する実施例では、オリゴdTスピンカラム(例えば、Amersham Biosciences Corp.、Piscataway、NJ社製)。
【0171】
本発明により有用なマイクロアレイスライドは、種々の表面基板および表面に核酸を沈着する方法を使用して作製することができる。例えば、数千の異なる核酸-フルオロフォア配列、例えばCy3で標識したDNA配列を含有するスポットを含有するガラスカバースリップを、ロボットマイクロアレイスポッターを使用して作製し、乾燥させることができる。次いで、ガラスカバースリップをチャンバー、例えば図7に示すチャンバーに配置し、気相状態の分析物に曝露する前と、気相状態の分析物に曝露中または曝露後とに分析する。
【0172】
前の画像と最中および/または後の画像との比較は、最中および/または後の画像から前の画像を引くことによって電子的に実施することができる(例えば図6)。画像のフルオロフォア発光パターンの強度の差は、核酸が気相状態の分析物に反応性であることを示す。発光パターンの差は、前の画像と最中の画像および/または後の画像間の発光強度の増加または減少でありうる。少なくとも約2%、5%、10〜15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%またはそれ以上および最高100%の減少は、核酸が臭気物質に応答することができることを示すと考えられる。前の画像と比較して、少なくとも約1%、3%、5%、10%、20%、30%、40%、50%またはそれ以上、51〜100%、200%、300%および1000%を含むが、これらに限定されない最中の画像および/または後の画像の増加は、核酸が気相状態の分析物に反応性であることを増加が示すと考えられる。
【0173】
センサーの応答は、基板に沈着する前の、核酸の緩衝液中に存在する塩または他の化学物質、またはセンサー調製時の異なる基板またはその他の使用によって変わりうる。
【0174】
塩の例には、

が挙げられるが、これらに限定されない。
【0175】
気相状態の分析物に対する応答について核酸-フルオロフォアの最適な条件を試験する際に、本発明の方法により有用な陽イオンの例には、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:Ag−銀がマイクロアレイのCy3(tm)蛍光を増加することを示唆する論文に基づく;Re−レニウムがDNAに超伝導様の抵抗を生じるという論文に基づく;遷移金属、遷移金属の異なる酸化状態を試験したい(Cr、Co、およびZnはすでに試験済み);アルカリ金属、LI、Rb、およびFr(Na、K、およびCsはすでに試験済み);アルカリ土類金属、Be(Mg、Ca、Sr、Baはすでに試験済み);ランタニドおよびアクチニド系列、毒性または放射性がないものを使用する、(U02はすでに使用されている);3a〜6a族:水溶性のイオン形態を有するものを使用する(Alはすでに使用されている)。
【0176】
以下は、気相状態の分析物に対する応答について核酸を試験する際に、本発明により有用な陰イオンである:Cl、NO3、およびSO4
【0177】
種々のプラスチックおよびシラン処理した基板などの表面修飾基板などの、本願の別の箇所に掲載されている基板は、気相状態の分析物に対する核酸の応答を調節することができ、核酸を試験する場合および後に本発明により気相状態の分析物を検出する際に有用な実際の感知アレイを構成する場合に考慮すべきである。
【0178】
実施例1
携帯用EVIDならびにEVIDの感知チャンバー、センサー、光学的要素、スニフ機序、およびコンピュータ制御ラインの模式的概要を図1に示す。EVIDは、空中の分析物(例えば「臭気物質」)の短いパルスに曝露する結果、蛍光強度を変化させるセンサーアレイを使用する。本発明の形態のEVIDは、16の異なる励起波長および発光波長で照射され、観察することができる16のセンサーを含む。センサーは、大気が引き入れられる狭いチャンバーに沿って配置される(以下を参照されたい)。センサーを照射しモニターする光学的要素は、チャンバーの脇に沿って位置決めされる(図1B)。励起光は、使用するセンサーに適当な波長を提供するLEDによって発生される(例えば460 nmおよび530 nm)。
【0179】
染料で標識したDNAは分析物のセンサーとして作用することができる。蛍光染料で染色したDNAが分析物に応答するかどうかの最初の試験として、YO-PRO染料(Molecular Probes, Inc.)と混合し、基板材料上で乾燥させた標準的な2.9 kbのpBlueScriptSKプラスミドからセンサーを構成した(以下の方法の詳細を参照されたい)。YO-PRO単独で製造し、70%エタノール中で5分間洗浄したセンサーは、分析物応答を示さなかった(図2A)。しかし、少量のプラスミドとYO-PROを混合することによって製造したセンサーは、プロピオン酸に曝露させると蛍光の迅速で大きな低下を生じ、水、メタノール、およびトリエチルアミンに接触させるとそれより小さい変化を生じた(図2B)。
【0180】
2本鎖DNAを用いた試験は、配列に対する影響を示さなかった。異なる配列の2本鎖DNA自体が異なる分析物応答プロファイルのセンサーを生じうるかどうかの試験を開始するために、GCまたはATだけを含み、ヘアピン構造を形成するように設計した2つのオリゴヌクレオチドオリゴマーを合成した。一次配列はかなり異なるが、これらのヘアピンから製造した2つのセンサーは同様の分析物応答プロファイルを有した。ヘアピンセンサー応答は、pBluescriptSK DNAから製造したセンサーとも質的に同様であった。
【0181】
飽和蒸気の分数としての分析物の希釈は以下のようであった:水、10-1;メタノール(MeOH)、10-1;トリエチルアミン、10-2;およびプロピオン酸、10-1。各トレースは10の値の平均を示す;エラーバーは+/- 1 S.D.を示す。DNAに基づいた分析物センサーを用いる実験については、各種類のセンサーに同様の方法を使用した。簡単に説明すると、DNA溶液をTE(10 mM Tris、0.5 mM EDTA)で望ましい濃度(0.2〜40 ng/μl)に希釈した。20μlの希釈したDNAを1μlの濃縮染料ストックと混合し、室温において5分間インキュベーションした。染料のみの対照は染料ストック液1μlを20μlのTEに加えて作製した。センサーは、酸洗浄した16××シルクスクリーン(10 mm×12 mm)の基板上に作製した。DNA/染料混合液を基板にピペットでたらし、25分間乾燥させた。各センサーを70%エタノール中で5分間洗浄し、乾燥させ、次いでEVIDで試験するためにガラスカバースリップ上の支持体に取り付けた。
【0182】
1本鎖DNA配列は識別的な分析物応答を示すことができる。DNA配列の差が、異なる応答プロファイルを有するセンサーを生じうるかどうかのさらに別の試験として、蛍光染料OliGreen(Molecular Probes, Inc.)で染色した1本鎖DNAから製造したセンサーを試験した。OliGreen染料単独から製造したセンサーは、プロピオン酸に曝露に際して蛍光の低下を示したが、他の分析物ではほとんど変化しなかった(示していない)。この応答は、10分および15分の長い洗浄時間でもなくならなかった。Oligo dTおよびオリゴマーDS003から製造したセンサーは、プロピオン酸および試験した他の分析物に対して信号の増加を示した(DS003を図3Aに示す)。これら2つのセンサーの応答プロファイルは互いに類似しており、YO-PROと共に製造した2本鎖DNAセンサーの応答とも類似していた(図2B)。
【0183】
しかし、AJ001プライマー配列を用いて作製したセンサーは、顕著に異なる分析物応答プロファイルを有した(図3B)。このセンサーは、プロピオン酸およびメタノールに応答して蛍光の増加を示したが、試験した他の分析物に対しては相対的にほとんど変化しなかった。DNAに基づいた他のセンサーはプロピオン酸に対する応答を示したが、このAJ001センサーと同じくらい強いメタノール信号を示したものはなかった。
【0184】
OliGreenなどの適用染料の場合では、染料がDNA配列とどのように相互作用するかについてほとんど制御がない。染料-ヌクレオチド相互作用を明白に規定するために、本発明者らは、蛍光染料Cy3(tm)が合成中に5'末端に共有結合したオリゴヌクレオチドを試験した。Cy3(tm)で標識した配列から製造したセンサーは、明白に異なる分析物応答プロファイルを示すことができる。LAPP1センサー(図4A)はプロピオン酸およびトリエチルアミンに対してすぐれた感度を示し(検出限界は約10-3希釈)、メタノール、DNTおよびDMMPにすぐれた感度を示さなかった(検出限界は約2x 10-2希釈)。一方、LAPP2センサー(図4B)はトリエチルアミンにすぐれた感度を示し(検出限界は約10-3希釈)、DMMPにはあまりすぐれた感度を示さず(検出限界は約2×10-2希釈)、プロピオン酸、メタノール、またはDNTに対しては高濃度(10-1希釈)でも応答を示さなかった。
【0185】
本明細書に示すLAPP1などのある種のDNAに基づいたセンサーがDNTに応答することを強調することは重要である。Dr. Timothy Swager(MIT)が開発した芳香族ニトロ化合物感知ポリマーのほかには、本発明者らが試験した他の蛍光センサー種類はDNTに応答しない。また、LAPP1は、2×10-2、または約6 ppbの希釈でDNTに応答し、これらのセンサーはいくつかの分析物の低い蒸気濃度を検出することができることを示している。
【0186】
実施例2

【0187】
オリゴマーLAPP1、LAPP2、LAPPAS、およびLAJ001を合成し、合成中に(Glen Research社製のCy3(tm)ホスホルアミダイトを使用して)蛍光染料Cy3(tm)で5'末端を標識した。オリゴマーはTris-NaCl(10 mM Tris、50 mM NaCl、pH 8)中に225ng/μlの濃度で保存し、使用直前に蒸留水で50ng/μlの濃度に希釈した。センサーは、20μlの希釈オリゴマー溶液を酸洗浄した16××シルクスクリーンの10 mm×12 mm片に適用することによって構成した。センサーは室温において少なくとも30分乾燥させ、次いで試験のために支持体に取り付けた。
【0188】
全てのセンサーを装置に取り付け、同時に試験した。全て、540 nm(バンド幅30 nm)の励起光で照射した。LAPP1、LAPPAS、およびLAJ001で製造したセンサーは600 nm(バンド幅10 nm)で観察し、LAPP2は610 nm(バンド幅10 nm)で観察した。プロピオン酸、トリエチルアミン、メタノール、DNT、およびDMMP(ジメチルメチルホスホネート、サリンの刺激剤である有機リン酸化合物)の蒸気を、空気希釈オルファクトメーターを使用して、示した希釈で装置に提示した。図のグラフについては、各曲線の各点は、30秒間隔で取った10回の2秒スニフに対する平均センサー応答を示す;エラーバーは+/-1標準偏差を示す。臭気物質の信号振幅は、バックグラウンド空気の信号振幅(水平方向の点線で示す)の倍数として示す。
【0189】
最初の試験では、オリゴマー配列LAPP1およびLAPP2は、臭気物質のこの小さな試験セットに対してはっきりと異なる応答プロファイルを示した。LAPP1センサーはプロピオン酸およびトリエチルアミンにすぐれた感度を示し(検出限界は約0.001の希釈)、メタノール、DNTおよびDMMPにすぐれた感度を示さなかった(検出限界は約0.02の希釈)。一方、LAPP2センサーはトリエチルアミンにすぐれた感度を示し(検出限界は約0.001の希釈)、DMMPにすぐれた感度を示さず(検出限界は約0.02の希釈)、プロピオン酸、メタノール、またはDNTに対しては高濃度(0.1希釈)でもほとんど応答を示さなかった。LAPPASおよびLAJ001配列で製造したセンサーはLAPP2と同様の応答を示したが、振幅は小さかった。ヌクレオチド配列だけが異なるセンサーが、異なる臭気物質応答プロファイルを示すことができることを、これらのデータは示している。LAPP1は、0.02、または約6 ppbの希釈のDNTに応答し、これらのセンサーは低い蒸気濃度を検出することができることを示している。
【0190】
実施例3
上記の染料で標識したDNAに基づいたセンサーは、本明細書に記載するシステムを使用して選択することができる。異なる分析物に応答する異なるDNA配列を見つける方法は、最新のハイスループット方法および多数のDNAの相互作用を迅速に調査する装置を利用する。この方法の概略を図5に示し、以下のセクションに詳細を記載する。
【0191】
大規模なセンサーのスクリーニングの前に、パイロット実験シリーズにより図5に示す段階の詳細を確立する。本明細書の別の箇所に記載した方法を使用してセンサーとして使用するための多数のランダムDNA配列を作製するために、適当な配列長さを決定し、実際のセンサー鋳型をデザインし、必要な増幅および標識条件を確立する。完全長の配列ライブラリーを効果的なスクリーニングのために希釈する必要がある量も、異なる希釈液を試験することによって決定される。
【0192】
センサーの長さを決定する。本発明者らの予備的な研究で検討した1本鎖センサーは長さ18〜23塩基であった。しかし、識別的な分析物応答に必要な最小センサー長さは不明である。
【0193】
最終的なセンサーライブラリーが元の配列ライブラリーの重要な部分を示す場合には、センサーのスクリーニングが最も効果的であろう。元のライブラリーの異なる配列の数は4no.basesとして高くなるので、20塩基の配列長さは、スクリーニングできるものよりはるかに大きい、約1012配列の元のライブラリーを生じると思われる。
【0194】
最小有効センサー配列長さを決定するために、Cy3(tm)で標識したLAPP1およびLAPP2配列を記載するように使用する。2つの配列の中間点のスワップポイントから開始して、2つの配列のセクションをスワッピングした。どちらかの元の配列の分析物プロファイルの変化は、効果的なセンサー配列がスワップポイントより長いことを示す。
【0195】
分析物応答プロファイルに変化が見られなくなるまで、スワップポイントを(染料が結合する)5'末端から近い方または遠い方に適宜移動させる。この点が最小センサー長を規定する。
【0196】
センサーの鋳型を設計する。最小センサー長が決定されたら、センサー鋳型をデザインする。少なくとも2つの可能な増幅方法を使用する:ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)およびプライマー伸長(図5の段階4)。PCR増幅では、鋳型は、2つのアンカー配列が隣接するランダムセンサー配列(長さは上記で決定されている)からなる。または、鋳型が、ランダムセンサー部分と、それに続く1つのアンカー部分からなるプライマー伸長を増幅に使用することができる(鋳型の模式図は図5の一番上を参照されたい)。これらの鋳型の各々において、アンカー部分は、増幅に使用するプライマー配列と相補的である(プライマー伸長は1つのプライマーであり、PCRは2つのプライマーである)。各アンカー/プライマーペアはセンサー応答にできるだけ影響を与えないように短いが、増幅過程のために十分に高い融点を有する程度には長くなければならない。47℃の融点を持つと推定される、13塩基のアンカー/プライマー配列を最初に検討する。
【0197】
隣接するプライマー部分が分析物応答に与える影響を判定するために、両方の鋳型種に試験を実施する。1つまたは2つのプライマー配列が隣接する(図4に示す、LAPP1およびLAPP2などの)既知のセンサー領域を含有する配列を、結合染料標識と共に合成する。別の箇所に記載する方法を使用して、これらのセンサーの分析物応答を試験する。分析物応答を比較すると、PCRまたはプライマー伸長が増幅に使用されているかどうかが決定され(段階4)、最終的な鋳型デザインを決定する。
【0198】
標識手法を決定する。染料をセンサー配列に結合するための任意の増幅後手法は約10,000回反復しなければならないので、プライマー配列に対する染料は、必ずしもではなく好ましくはであるが、増幅中に組込まれるように結合される。配列のセンサー部分のできるだけ近くに染料分子を配置するために、アミノ-アリル修飾dCまたはdT(Glen Research)を合成中に組み入れることによってプライマーの3'末端を標識する。N-ヒドロキシスクシンイミドで官能化されたCy3(tm)(Amersham Biosciences)は染料をアミノ-アリルリンカーに結合する。染料の反応後、ゲルろ過による精製段階によって組込まれなかった染料を除去する。次いで、染料で標識したプライマーは増幅段階4に使用することができる。
【0199】
増幅条件を決定する。上記のように、PCRまたはプライマー伸長を使用して、上記の分析物試験の成果に応じて、配列ライブラリーの試料を増幅する(図5の段階4)。
【0200】
既知のセンサー配列を含有するセンサーの鋳型を用いる試験により、上記の染料で標識したプライマーを使用して、最適な緩衝液条件、試薬濃度、および温度サイクル条件を決定する。増幅は、増幅後のセンサー配列をガラススライドにスポットし、マイクロアレイスキャナーを使用して分析物応答について試験することによってモニターされる。
【0201】
最適希釈を決定する。センサーライブラリーを顕微鏡スライドガラスにスポットするために使用するロボットスポッターは、約10,000のセンサースポットを適用することができる。可能な最大数のセンサー配列をスクリーニングするためには、各スポットが複数の異なるセンサー配列を含有することが望ましい。しかし、スポットに反応性のないセンサー配列が多すぎると、1つの反応性センサーからの信号を不明瞭にすることがある。
【0202】
応答性の配列を不明瞭にすると思われる非応答性配列の数を推定するために、既知のセンサー配列LAPP1およびLAPP2を用いて試験を実施する。図4に示すように、LAPP1はプロピオン酸に応答するが、LAPP2は応答しない−従ってプロピオン酸はこれら2つのセンサー配列を識別する。種々の整数比の染料標識LAPP1およびLAPP2を有するスポットを顕微鏡スライドに適用し、センサーライブラリー全体をスクリーニングするために使用する条件下でプロピオン酸に曝露させる。LAPP2単独から識別可能なプロピオン酸信号を示す最も低いLAPP1:LAPP2比は、スポットあたりのセンサー配列の数の推定値を提供する。次いで、段階2の希釈および段階3に使用する試料容量によってスポットあたりのセンサーのこの数を設定する(図5)。
【0203】
異なるオリゴヌクレオチドに基づいたセンサーの大規模ランダムライブラリーを作製する。図5に概略を示し、上記に詳細を記載した段階を実施して、センサーライブラリーを作製して増幅し、分析物を用いるスクリーニングのために顕微鏡カバーガラスにスポットする。
【0204】
上記のセンサー鋳型を使用して、ランダム配列ライブラリーを合成する(図5の段階1)。1μlの試料が少なくとも1つ、おそらく複数の異なる配列を含有するように配列ライブラリーを希釈する(段階2)。1μlの試料を96ウェルプレートに入れる(段階3)。
【0205】
次いで、プライマー、塩基、ポリメラーゼ酵素、および緩衝液を各ウェルに天下する。PCT-225 PCR Tetradサーマルサイクラーを使用して、一度に4つのプレート(384の試料)を増幅する(段階4)。4つのプレートは1日で増幅できることが推定されるので、10,000の試料センサーライブラリー全体の増幅は26日必要である。次いで、BioRobotics MicroGrid IIマイクロアレイスポッターを使用して、10,000スポットの増幅配列を含有するセンサースライドを作製する(段階5)。スポットしたスライドの複数のリプリケートを作製し、将来のスクリーニングのためにほとんどを保存する。
【0206】
上記の方法を使用して作製したセンサーライブラリーを、爆発物関連化合物およびCWA刺激物質のセットを用いてスクリーニングする。分析物を用いる追加の試験のために、これらの化合物に対する応答を示すセンサースポットをさらに希釈、増幅、およびスライドにスポットし、独自のセンサー配列を位置決めする。次いで、標準的なDNA配列決定方法を使用して、配列を決定する。
【0207】
Packard BioChip Technologies ScanArray 4000アレイスキャナーを使用して、センサースライドを走査しながら、関心対象の分析物に曝露させる。これは、分析物をスキャニング中にスポットに適用できるように、密封スライドホルダーの構成を必要とする。1つの例示的なデザインを図7に示す。スクリーニングに使用することができる分析物の例は表3〜5に示す。
【0208】
分析物の曝露により蛍光の変化を示すスポットをさらに調査する。スポットを生じる増幅試料をさらに希釈して、個々の配列を含有するサブ試料を作製する。上記に展開したものと同じ増幅プロトコールを使用して、これらのサブ試料を再度増幅し、スライドにスポットする。従って、これらのスライドのスポットは個別のセンサー配列を含有する。これらのスライドをアレイスキャナーで分析物を用いて試験し、関心対象の臭気物質に対する個々のセンサー配列を同定する。標準的なDNA配列決定方法を使用して、反応性のセンサーを生じたサブ試料の配列を決定する。次いで、最終的な適当な配列を合成し、標識し、EVIDで直接試験する。
【0209】
上記のセンサーライブラリースクリーニングにおいて同定されたセンサーの各々について、表3、4および5に掲載する爆発物、関連化合物、および化学物質の各々について濃度-応答関数を求める。個々のセンサーについてこれらのデータを使用して、最適化したセンサーアレイを構成し、化合物の各々の検出下限を求める。これらの検出限界を、市販の装置の報告されている感度、化学物質の毒性データ、および、データが入手可能である場合には、学習したイヌの行動閾値と比較する。
【0210】
(表3)例示的な爆発物

【0211】
(表4)例示的な化学兵器/びらん剤

【0212】
(表5)例示的な化学兵器/神経物質

*http://www.dean.usma.edu/chem/Faculty/fountain/Fountainprcrsrch.htmより
【0213】
標準的な嗅覚測定の概念に基づき、イヌにおける検討(Hartellら、1998)で使用したシステムを模倣した空気希釈オルファクトメーターを使用して、分析物の制御された希釈物をEVIDに送達する。本構成では、フィルタ処理した圧縮空気をマス-フローコントローラ(Teledyne Hastings Instruments)のバンクに供給して、4つの大気または分析物チャネルを通じて流速を設定する。8つのチャネルを使用することもできる。1チャネルは、バックグラウンド(希釈剤)の空気流を1 L/min〜10 L/minに設定する。他の3つのチャネルは、分析物試料を含有するガス洗浄瓶および他の特注のガラス容器を介して空気(流速10 ml/min〜10 L/min)を供給する。分析物容器の下流では、各チャネルの分析物の流れは、流れを排気させるかまたは全てのチャネルを戻すマニホールドに誘導する電気的な弁(KIP Inc.)によって制御される。マニホールドは、EVIDの先がサンプリングのために突き出ているガラス製の分析物ポートに接続している。分析物の希釈は、希釈空気チャネルおよび分析物チャネルを通過する相対的な流速によって決定される。総流速は、典型的には、10 L/minである。
【0214】
センサーは、ある濃度範囲の分析物に対する応答によって特徴づけられる。各分析物の濃度-応答データを収集するために、上記のオルファクトメーターを使用して一連の濃度をEVIDに送達する。濃度を徐々に増加して、スニフ間隔を30秒として各濃度において10回のスニフを取った。一連の濃度は各々、飽和蒸気濃度の5×10-4希釈から開始して、希釈10-1まで濃度を約2倍にする段階的に上昇させる(すなわち、5×10-4、10-3、2×10-3、5×10-3、10-2、2×10-2、5×10-3、10-1)。装置のデータは、分析およびディスプレイのために別のコンピュータにログした。
【0215】
各センサーの検出限界は、信号の振幅をクリーンな空気の振幅と比較することによって求める。クリーンな空気の信号と有意に異なる信号を誘発する分析物の最低濃度が、そのシミュレート剤(simulant)に対するセンサーの検出限界である。全ての分析物について入手可能である全てのセンサーの検出限界をこの方法で求める。
【0216】
それぞれが1つ以上の分析物の検出限界が低いセンサーの最適なアレイを選択する。各化合物についてのこのアレイの検出限界は、上記に掲載する希釈の分析物のランダム提示を使用して求める。アレイの性能は、信号検出理論およびROC曲線を使用して評価する。これらの研究において求めたEVIDの検出限界を評価するために、値をCWA毒性データおよび学習したイヌを含む他の検出装置の感度と比較する。
【0217】
実施例4
核酸を作製し、気相状態の分析物に対する応答性について試験する。
【0218】
DNA-Cy3(tm)センサーライブラリー
ランダム内部配列および固定端を有するDNAオリゴマーセット(図11を参照されたい)は、Tufts University DNA/Protein Core Facilityによって作製されている。ランダムヌクレオチド組込みを使用して、オリゴマーのランダム部分を作製した。このランダムセットは、以下に記載するスクリーニングのために、DNA-Cy3(tm)ライブラリーを作製するための増幅および標識のDNA鋳型を提供する。
【0219】
センサーライブラリーの最初の増幅には2つの方法が可能である:
【0220】
PCR
ポリメラーゼ連鎖反応を使用して、最初にライブラリー配列を増幅することができる。決定されたプライマーおよびアンカー配列を有するランダムオリゴマーライブラリーは、マイクロタイタープレートの各ウェルが、平均して1分子のDNAを含有すると算出されるまで連続希釈することができ、最後の希釈は1:10を超えない。各ウェルのDNA分子は次に、以下の反応を通じてPCRにより増幅され、標識される。
【0221】
細菌
Invitrogen社製の市販のシングルコピークローニングキット(TOPO TAまたはZero Blunt TOPO PCR)の1つを使用して、DNAのランダム配列(図11)をプラスミドに挿入することによって予備的なライブラリーが構築されている。プラスミドを大腸菌(E. coli)に形質転換し、プラスミドに保有される抗生物質耐性遺伝子の発現についてコロニーを選択した。薬物耐性シングルコピープラスミドを有する細菌を選択することにより、1つおよび1つだけのDNAセンサー配列を各コロニーで発現させることができる。コロニーを取り、96ウェルプレートで増殖することができる。増殖後、少量の細菌を溶菌し、以下に記載するプライマーを使用して、センサー配列を増幅し、ウェル内でCy3(tm)標識することができる。
【0222】
DNA標識手法
DNAは、種々の機序および染料を使用して蛍光標識することができる。本発明者らは、本発明者らの実験において既存のマイクロアレイ技術の使用を容易にするためにCy3(tm)を選択した。重要なことに、本発明者らの予備的な研究は、5'標識した1本鎖DNA-Cy3(tm)センサーは臭気物質に確実に応答することを示している。DNAを5' Cy3(tm)標識する方法は、オリゴマー合成中にホスホルアミダイト化学に関係する5'キャッピング反応を使用する(試薬はGlen Reserachから利用可能)。
【0223】
ホスホルアミダイト化学はCy3(tm)をDNAに結合するための便利な方法を提供するが、それは合成反応にしか使用することができない。これは、DNAセンサー配列の増幅中にCy3(tm)を結合しない。本発明者らは代わりに、PCR反応にCy3(tm)標識したプライマーを使用して、規定の位置を標識することを選択した(図12)。Cy3(tm)で標識したプライマーは、修飾チミジンであるアミノ修飾物C2dT(Glen Research)を3'末端に有するオリゴマーを最初に合成することによって作製した。C2dTの短い2-炭素結合基は、DNAと2-炭素リンカーに結合したCy3(tm)の電気化学的相互作用の最も大きい可能性を提供するので、Cy3(tm)の結合部位としてC2dTを選択した。Cy3(tm)-NHSエステル(Amersham)は、アミド結合を介してC2dTに結合され、反応に離脱基としてNHSエステルを使用する(Amershamのプロトコールをこの反応に実施した)。最終的なDNA-Cy3(tm)産物が、制限酵素BsrD1を使用してプライマー配列の標識塩基を除く全てを除去した後に5'標識されるように、プライマーを3'標識した。5' C2dTを介して規定のオリゴマーに結合したCy3(tm)を使用する結果は、DNA-Cy3(tm)臭気物質センサーを作製する際のこの方法の有効性を示している。
【0224】
他のPCR検討では、Taqポリメラーゼを使用して、鎖の成長を妨害しないで、成長中のDNA鎖にCy3(tm)が結合したヌクレオチドが付加されている。Taqがランダムに標識ヌクレオチドを付加するときに、ところどころに組込まれる代わりに、成長中の鎖の開始時に標識がプライマーに存在することを除いて、本発明者らの方法は同様である。Cy3(tm)をプライマーに結合する反応が未完了である場合に存在しうる未標識プライマーを除去するために、Cy3(tm)標識プライマーを、逆相高圧液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)で精製した。この精製技法を使用した予備的な結果は成功であり、最適化されるであろう。
【0225】
コンピュータプログラムOligoを使用すると、プライマーの二次構造およびダイマーが生じる可能性は予測されなかったが、PCR条件は最大の増幅のために最適化する必要がある。最適化する具体的な因子は、MgCl2濃度、アニーリング温度、およびプライマー濃度である。PCRの最適化は、ランダムライブラリーの作製前に既知の配列を用いて実施されるが、予備的なデータは、適当なサイズのCy3(tm)標識PCR産物が本発明者らの標識プライマーを使用して作製することができることを示している。PCR産物は、19%ポリアクリルアミドゲル電気泳動を使用して分析される。DNAバンドは、1本鎖DNAバンドを示すSBYRおよび標識バンドを示すCy3(tm)蛍光タグ自体を使用して調査する。
【0226】
アンカー配列は、制限酵素BsrD1(New England Biolabs)を使用して、標識からアンカー配列を切断することによって除去する。
【0227】
BsrD1消化後に粘着末端が残存しているが、精製過程における相補鎖の融解は、粘着末端を分離するのに十分すぎるほどである。理論的には、BsD1制限部位またはプライマー配列を有するランダム配列によりライブラリー収率の弱冠の損失がある。ランダム配列のBsrD1制限部位による損失は、13×412配列であると算出される。プライマー配列のランダムマッチングによる損失は、各方向の各プライマーあたり正確なマッチが45であると算出される、すなわち合計46の配列が損失している。これらの損失をあわせると、ライブラリー全体の0.02%未満になる。
【0228】
PCR産物の精製
方法を最適化するために、オリゴdTスピンカラム(Amersham)を使用してDNAを精製する。ポリアクリルアミドゲル電気泳動を使用して、産物を分析する。しかし、大規模なDNAライブラリーでは、これらの方法はあまりにも遅く、労働集約的である。相補鎖、プライマー、未使用のdNTP、および反応緩衝液からの標識した1本鎖DNA(ssDNA)の分離は、望ましいssDNAが基板に結合した後に洗浄によって実施される。2つの可能な方法は以下の通り:
【0229】
ウェル内に固相オリゴdTを含有するマクロタイタープレートはSequitur, Inc.から入手可能である。PCR反応の温度の高いDNAをウェルに入れ、冷却が生じるにつれて、標識DNAのポリ(A)テールがウェル内のオリゴdTとアニーリングする。PCR反応混合物の残りを次いで洗い流す。
【0230】
TdTを使用して、ビオチン結合塩基を標識配列の3'末端に付加する。次いで、これを、ストレプトアビジンをコーティングしたスライドに結合させ、残りの物質を洗い流す。
【0231】
マイクロアレイスライドの作製
ロボットマイクロアレイスポッターを使用して、数千の異なるDNA-Cy3(tm)配列のスポットを含有するカバースリップを作製する。次いでカバースリップを、特別に構成したチャンバー内に配置する(図7)。
【0232】
プロトタイプ版のこのチャンバーを使用して、予備的な試験を実施した。スポット用ロボット(BioRobotics MicroGrid II)を使用して、合成中にCy3(tm)で標識した12の異なる配列のスポットをカバースリップにスポットし、カバースリップをプロトタイプのチャンバーに配置した。シリンジポンプを使用して、制御された方法で臭気物質をチャンバーに送達した。臭気物質送達前後に、マイクロアレイスキャナー(ScanArray 4000)を使用してカバースリップを画像化した。
【0233】
追加の結果
ここに概略する結果は、センサー構成中にDNA-Cy3(tm)緩衝液の塩含有量を変更し、センサーを作製するために異なる基板を使用することによって、センサー応答を調節する可能な方法を示す。
【0234】
異なる塩の影響
センサーを作製するために使用するDNA-Cy3(tm)溶液の塩含有量は、振幅および臭気物質応答プロファイルに関してセンサー応答に影響を与えることができることを本発明者らは見出した。
【0235】
以下の塩を試験した:

。これらの塩の組み合わせ以外に、試験したDNA-Cy3(tm)溶液は500μMのホウ酸ナトリウム緩衝液を含有した。
【0236】
これらの実験において、示した塩をDNA-Cy3(tm)溶液に添加し、次いで基板に適用し、乾燥した。20μlの溶液を10×12 mmのシルクスクリーン片に適用した。乾燥後、センサー上の実際の塩濃度は不明であるが、かなり高いと推定される。
【0237】
以下の陰イオンも、気相状態の分析物に対する応答について核酸を試験する際に有用である:Cl(本発明者らの試験においてすでに使用している);NO3(すでに使用している);SO4(すでに使用している)。
【0238】
本明細書および明細書全体に引用する参照文献は、全体の内容が参照として本明細書に組み入れられている。上記の実施例は、本発明を作製し、使用する際のガイドラインを提供する意味があるが、当業者が本発明の開示内容に基づいて作製することができるこれらの好ましい態様の全ての等価物をカバーすることを本発明は意味している。
【0239】
参照文献







【図面の簡単な説明】
【0240】
(図1)図1Aおよび1Bは、エレクト-オプティカル気相インテロゲーション装置(EVID)の携帯用の構成の一例を示す。図1Aは、EVIDセンサーチャンバー、気流通路(30)(太い矢印)、信号通路(実線の矢印)、およびコンピュータ制御ライン(破線の矢印)(8)の略図を示す。匂いのある空気とクリーンな空気とをスイッチングする3通路弁は、1対のサーボ制御弁(10)として使用される。図1Aおよび1Bにおいて、以下のパーツを示す:光発光ダイオード光源(12)および励起フィルタ(28)のパネル;フォトダイオード検出器(26)および発光フィルタ(14)のパネル;スニフポンプ(4);制御およびフィードバック制御(2方向の2重の矢印)(16);コンピュータ(18);16チャネル積算増幅器および20ビットA/D/コンバータ(20);供給源(24)からのクリーンな空気の吸気通路(22)。図1Bは、LED(12);発光フィルタ(14)励起フィルタ(28);およびフォトダイオード(26)を備える同じシステムの平面図の概略である。
(図2)図2Aおよび2Bは、YO-PROおよびpBluescriptSK DNAから製造されたセンサーの時間的な応答を示す。図2Aは、YO-PROから製造し、次いで70%エタノールで5分間洗浄したセンサーを示す。図2Bは、YO-PROおよび5ngのトータルpBlueScriptSK DNAから製造したセンサーを示す。飽和蒸気の分画としての分析物の希釈は以下のとおり:水、10-1;メタノール(MeOH)、10-1;トリエチルアミン、10-2;およびプロピオン酸、10-1。各トレースは、10回の平均値を示す;エラーバーは+/-1 S.D.を示す。DNAに基づいた分析物センサーを用いる実験については、各種類のセンサーについて同様の方法を使用した。簡単に説明すると、DNAの溶液をTE(1 Tris、0.5 mM EDTA)で望ましい濃度(0.2〜40 ng/μl)に希釈した。希釈したDNA 20μlを1μLの染料の濃縮ストック液と混合し、室温において5分間インキュベーションした。染料のみの対照は、染料のストック液1μlを20μlのTEに加えて作製した。センサーは、酸洗浄した16xxシルクスクリーン(10 mm×12 mm)の基板に作製した。DNA/染料混合物をピペットで基板にたらし、25分間乾燥させた。各センサーを70%エタノールで5分間洗浄して乾燥させ、次いでEVIDで試験するためのガラスカバースリップ上の基板に取り付けた(図2B)。
(図3)図3Aおよび3Bは、異なる短い配列の1本鎖DNAおよびOliGreen染料から製造したセンサーの時間的応答を示す。図3Aは、配列

を有するオリゴマーDS003を示す。図3Bは、配列

を有するオリゴマーAJ001を示す。センサー構成の詳細および分析物の希釈は図2を参照されたい。各トレースは10回の平均を示す;エラーバーは+/- 1 S.D.を示す。
(図4)図4Aおよび4Bは、合成中に蛍光染料Cy3(tm)で標識した2つのオリゴヌクレオチドの分析物濃縮の応答を示す(Glen Research製のCy3(tm)ホスホラミダイトを使用)。図4Aは、配列

であるLAPP1を示す。図4Bは、配列

であるLAPP2を示す。オリゴマーは、225 ng/μlの濃度でTris-NaCl(10 mM Tris、50 mM NaCl、pH 8)中に保存し、次いで使用直前に蒸留水で50 ng/μlの濃度に希釈した。センサー構成の詳細は図2を参照されたい。信号の振幅は、以下に記載するようにセンサーの時間的な信号を指数関数に適応することによって得られるパラメーターである。センサーの信号およびデータ処理。各データ点は10回の平均である;エラーバーは+/- 1 S.D.を示す。
(図5)センサーライブラリー作製およびスクリーニングの段階の概略を示す。PCR鋳型a)またはプライマー伸長鋳型b)は、それぞれ、2つまたは1つのプライマーで増幅される。段階1:ランダム配列ライブラリーを合成する;段階2:ライブラリーを希釈する;段階3:試料を104個の96ウェルプレートに入れる;段階4:核酸を増幅し、標識する;段階5:ロボットスポッターを使用して高密度センサーライブラリーを作製する;段階6:気相状態の分析物を適用する前後にセンサーライブラリーをアレイスキャナーで画像化する。
(図6)1セットのセンサースポットの強力なプロピオン酸臭気応答の一例を示す。データは、ScanArray 4000マイクロアレイスキャナーを使用して収集した。左の画像は、クリーンな大気のセンサースポットのバックグラウンド蛍光を示す。中央の画像は、飽和蒸気プロピオン酸を試験チャンバーに注入した後の同じスポットの蛍光レベルを示す。右の画像は、左の画像を中央の画像から引いたときの蛍光の変化を示す。12×12のブロックのカバースリップ(垂直方向の12の反復と水平方向の12の異なる配列)にスポットのアレイを適用した;2つの反復ブロック(Rep1およびRep2)は3つの異なるイオン条件下で適用した:50 mM MgCl2、50 mM NaCl、および水。1つのセンサー配列TLAPP1の水溶液は蛍光の強力な増加を示し、他の配列はより小さい蛍光変化を示した。
(図7)図7Aおよび7Bは、気相状態の分析物に対する応答性について核酸を試験する場合に、センサーアレイに分析物を送達するための例示的なチャンバー(32)のダイアグラムを示す。図7Aはチャンバーの平面図を示し、図7Bはチャンバーの側面図を示す。黒一色(34)はステンレス鋼を示し、濃い目の灰色(36)は40ミクロンの孔サイズのスレンレス鋼フィルタを示す。臭気物質を注入するチューブは21ゲージのテフロンチューブであり、白色のチューブ(38)で示す。分析物はチューブに注入され、フィルタ(40)(濃い灰色のブロック)を通過して出てくる。チャンバーの内側(42)は、分析物がフィルタを通過した後に分析物に曝露されるカバースリップを有する(チャンバーのステンレス鋼壁の内側の白色の領域)。この図に示すチャンバーの径は、ScanArray 4000でガラス製のカバースリップを読むのに適している。
(図8)分析が離れた位置で実施される本発明のセンサーシステムのブロックダイアグラムを示し、チャンバーの内部に核酸アレイ(2)を有するセンサーチャンバー(1)を示す。
(図9)本発明のシステムの一態様のハードウェア要素を示すブロックダイアグラムである。
(図10)センサーアレイモジュールの略図である。
(図11)ランダム内部配列および固定端を有するオリゴマーの配列である。
(図12)PCR反応プライマーおよび2本鎖産物を示す。星印は、下のプライマーの5'dTTPヌクレオチドのCy3(tm)標識を示す。
【図1A】

【図1B】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気試料中の分析物を検出するための方法であって、
a. 該大気試料に、基板を含む核酸/フルオロフォアに基づいたセンサーアレイを接触させる段階であって、フルオロフォアで標識された核酸は該基板に分散されており、フルオロフォアで標識された該核酸は分析物の存在下において励起光エネルギーに供されると特徴的な光学的応答を提供する段階と;
b. 分析物の有無を検出する段階と
を含む方法。
【請求項2】
核酸が基板の複数の内側面および外側面に分散されている、請求項1記載の方法。
【請求項3】
接触させる段階が、分析物を含有すると考えられる大気試料を試料チャンバーに引き込む段階と、核酸/フルオロフォアに基づいたセンサーアレイを該大気試料に曝露する段階とをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
検出する段階が:
a. 核酸/フルオロフォアに基づいたセンサーアレイに励起光エネルギーを照射する段階と;
b. 分析物の存在によって該核酸/フルオロフォアに基づいたセンサーアレイが生ずる光学的応答を検出器手段で測定する段階と
をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
パターンマッチングアルゴリズムを使用することによって分析物を同定する段階と、核酸/フルオロフォアに基づいたセンサーアレイの光学的応答を特徴的な光学的応答と比較する段階とをさらに含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
光学的応答の時空間的応答パターンを提供することによって分析物を同定する段階と、テンプレートマッチング、ニューラルネットワーク、遅延ニューラルネットワーク、および統計分析からなる群より選択される方法によってパターンを認識する段階とをさらに含む、請求項4記載の方法。
【請求項7】
大気試料が爆発物を含有することが疑われる、請求項1記載の方法。
【請求項8】
大気試料が化学兵器剤を含有することが疑われる、請求項1記載の方法。
【請求項9】
気相状態の分析物に応答することができる核酸を選択する方法であって、
a. フルオロフォア標識した核酸に気相状態の分析物を接触させる段階と;
b. 標的分析物の存在下および非存在下においてフルオロフォアの発光プロファイルを測定する段階であって、発光プロファイルの差が、核酸が気相状態の分析物に応答することを示す段階と
を含む方法。
【請求項10】
核酸が鎖長1〜3000塩基である、請求項1〜9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
核酸が鎖長10〜500塩基である、請求項1〜10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
核酸が鎖長15〜24塩基である、請求項1〜11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
フルオロフォアが核酸の3'領域または5'領域に結合される、請求項1〜12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
核酸がフルオロフォアで内部標識されている、請求項1〜13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
フルオロフォアが塗布染料である、請求項1〜14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
塗布染料がYO-PROまたはOliGreenである、請求項15記載の方法。
【請求項17】
基板がシルクスクリーンである、請求項1〜16のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
基板がガラスである、請求項1〜17のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
大気試料中の揮発性化合物を検出し同定するための感知システムであって、
a. 複数の核酸を含む核酸/フルオロフォアに基づいたセンサーアレイと;
b. 該核酸に結合しているフルオロフォアと;
c. 該核酸が結合している複数の基板と;
d. 基板支持体と;
e. 該センサー要素に光学的に接続している複数の光源を含む励起光源アレイと;
f. 該センサー要素に光学的に接続している複数の検出器を含む検出器アレイと;
g. 該センサー要素、該光源アレイ、該検出器アレイを収容するための試料チャンバーと;
h. 制御された曝露時間で該核酸/フルオロフォアに基づいたセンサーアレイに接触させるために該チャンバーに該外気を引き込むための、該チャンバーに封入されているサンプリング手段と;
i. 該光源、該検出器、および該サンプリング手段と電気的に連絡しているコントローラー手段であって、該外気をサンプリングし、該外気試料に対する該核酸/フルオロフォアに基づいたセンサーアレイの光学的応答を測定し、該揮発性化合物を検出するために、該光源および該検出器を用いてサンプリング手段を電気的に調整し、スイッチングするコントローラー手段と;
j. 該測定されたセンサーの光学的応答を、分析物を標的とする該センサーの特徴的な光学的応答と比較して、該大気試料中の該分析物を同定するための分析物同定アルゴリズムと
を含む感知システム。
【請求項20】
大気試料中の分析物を知能的に検出し同定する感知システムであって、
a. フルオロフォアに結合している複数の核酸を含む核酸/フルオロフォアに基づいたセンサーアレイと;
b. 該核酸/フルオロフォアに基づいたセンサーアレイと連絡している複数の検出器を含む検出器アレイと;
c. 該核酸/フルオロフォアに基づいたセンサーアレイおよび該検出器アレイを収容するためのサンプリングチャンバーと;
d. 制御された曝露時間で該核酸/フルオロフォアに基づいたセンサーアレイに接触させるために該チャンバーに該外気を引き込むための、該チャンバーに封入されているサンプリング手段と;
e. 該サンプリング手段および該検出器アレイと連絡しているマイクロコントローラであって、該コントローラ手段は、該外気をサンプリングし、該大気試料に対する該センサーの応答を測定し、該分析物を検出し、分析物の検出結果を報告するために、該サンプリング手段および該検出器アレイを調整し、スイッチングするマイクロコントローラと;
f. 該マイクロコントローラに指示を与えるためのサンプリングアルゴリズムと;
g. 該サンプリングアルゴリズムおよび該マイクロコントローラと連絡している分析物同定アルゴリズムであって、分析物に曝露する前後の該測定されたセンサーの光学的応答を分析物に対する該センサーの特徴的な応答と比較し、該大気試料中の該分析物を同定する分析物同定アルゴリズムと
を含む感知システム。
【請求項21】
同定アルゴリズムが、測定された光学的応答の時空間的パターンを特徴的な応答の時空間的パターンと比較する応答報告と;パターンマッチ、遅延ニューラルネットワークマッチおよびニューロナルネットワークマッチからなる群より選択される同定報告とを含む、請求項20記載の感知システム。
【請求項22】
出荷用容器に取り付けられている、請求項20記載の感知システム。
【請求項23】
x線スクリーニング機械に取り付けられている、請求項20記載の感知システム。
【請求項24】
遠隔制御可能である、請求項20記載の感知システム。
【請求項25】
手持ち式装置に組み入れられている、請求項20記載の感知システム。
【請求項26】
ガス状または蒸気試料を遠隔的に特徴づけるためのセンサーアレイシステムであって、
a. 少なくとも1つのセンサーが、フルオロフォアに結合している複数の核酸を含む核酸/フルオロフォアの組み合わせを含み、分析物が接触すると検出可能な信号を提供する複数のセンサーと;
b. 検出可能な信号を測定することができる複数のセンサーと連絡している測定装置と;
c. インターネット、光ファイバーケーブル、および/またはエアウェーブ周波数によって検出可能な信号に対応する情報を遠隔地に送信するために測定装置と連絡している送信装置と;分析物を特徴づけることができるレジデントアルゴリズムを含むコンピュータと
を含むセンサーアレイシステム。
【請求項27】
送信装置と連絡している複数の測定装置を含む、請求項23記載のセンサーアレイシステム。

【公表番号】特表2006−507507(P2006−507507A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−555829(P2004−555829)
【出願日】平成15年11月25日(2003.11.25)
【国際出願番号】PCT/US2003/038186
【国際公開番号】WO2004/048937
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
テフロン
【出願人】(503216502)タフツ ユニバーシティー (7)
【Fターム(参考)】