説明

核酸の処理

本発明は、核酸特にメチル化された核酸の処理方法を提供する。1つの実施形態においては、該方法は、(a)核酸試料に対し変性環境を提供する工程;(b)重亜硫酸塩試薬と核酸試料を反応させ、反応物をインキュベートして、上記核酸試料中のメチル化されたヌクレオチドは変換されず、非メチル化ヌクレオチドは別の形態に変換された、処理済み核酸試料を形成する工程;(c)核酸沈殿工程に実質的に影響を与えないレベルまで塩濃度を低減させるために、処理済み核酸試料を希釈する工程;(d)処理済み核酸から不要な試薬又は希釈剤を全て実質的に除去するために、希釈した処理済み核酸を沈殿させる工程;及び(e)スルホン酸塩基を実質的に含まない核酸試料を得るために、処理済み核酸上に存在するスルホン酸塩基を除去するように沈殿した処理済み核酸の脱スルホン化を行う工程を含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸特にメチル化された核酸を重亜硫酸塩を用いて処理するための修正された方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動化されたシーケンシング技術における進歩の結果として、ヒトゲノムを含む数多くの動物ゲノムの完全なシーケンシングもたらすDNAのコーディング領域の決定に関する多くの研究作業が実施されてきた。しかしながら、長年にわたり、ゲノムDNAの大部分は非コーディングDNAであるものと認識されてきており、この部分はかつて「ジャンク」DNAとみなされていた。DNAの非コーディング領域の分析は現在、遺伝子発現及び機能の研究において重要なものとみなされている。核酸特にゲノムDNA中のメチル化状態又はパターンは、動物の体内での遺伝子の発現及び制御において機能的又は調節的役割をもつと考えられている。
【0003】
一本鎖DNA中において重亜硫酸ナトリウム(sodium bisulphite)は、5−メチルシトシンからチミンへの脱アミノ化の速度が非常に遅いのに比べ、シトシンを優先的にウラシルへと脱アミノ化することが示された(シャピロ(Shapiro)R.、ジフェート(DiFate)V.、及びウェルチャー(Welcher)M.、(1974)J.Am.Chem.Soc.96;906−912)。この観察事実は、フロマー(Frommer)ら、1992〔本明細書に参照により援用されているフロマー(Frommer)M、マクドナルド(McDonald)LE、ミラー(Millar)DS、コリス(Collis)CM、ワット(Watt)F、グリッグ(Grigg)GW、モロイ(Molloy)PL及びポール(Paul)CL。PNAS89;1827−1831(1992)〕の重亜硫酸塩ゲノム配列決定プロトコルの開発のための基礎として役立った。要約すると、現在実践されているこの方法には、DNAのアルカリ変性;重亜硫酸ナトリウムを用いた脱アミノ化;脱塩による脱スルホン化とそれに続く水酸化ナトリウム処理;中和及び脱塩といった一般的工程が関与している。
【0004】
重亜硫酸塩修飾手順及びその確立された変形手順がもつ主要な欠点の1つは、該手順が、結果としてもとの投入DNAの84〜96%を分解してしまうことが示された点にある(グルナウ(Grunau)ら、核酸研究(Nucleic Acids Research)29(13)e65:(2001))。該手順に付随する高い損失は、少数の細胞をそのメチル化状態についてうまく分析すること、又は、DNAがすでに部分的に分解した状態にある古いアーカイブ標本をうまく分析することが事実上非常に困難であるということを意味している。さらに、DNAは、細かく断片化され、配列中に莫大な数の「ギャップ」を有することから、現行の方法では、その固有の分解のため十分にクローニング、シーケンシング及びアセンブルができず、公共のヒトゲノムプロジェクト(国際ヒトゲノム配列決定共同事業体(International Human Genome Sequencing Consortium)、2001、ネイチャー(Nature)、409、860−921)又は民間のCELERA配列決定プロジェクト(J.クレイグ・ベンター(Craig Venter)ら、2001、サイエンス(Science)、291、1304−1351)によりうまく応用されてきたのと同じ要領でその全ゲノムメチル化プロフィールを決定するために1つの生体の完全なゲノムを配列決定し組立てることは不可能である。
【0005】
現在実践されている重亜硫酸塩方法のさらなる欠点は、一般に小さなDNAフラグメントしか増幅できないという点にある。経験は、一般に約500未満の塩基対(bp)しかうまく処理及び増幅され得ないということを示している。現行の技術は、一般に約50kbまでという大きな未処理ゲノムDNA領域を増幅することを可能にした長距離ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)といったような新しい分子生物学的方法には応用できない。現在のところ、哺乳動物ゲノム内の多数の遺伝子の長さが50kbを超えることから、無傷の遺伝子のメチル化状態を分析することさえ不可能である。
【0006】
比較的小さい遺伝子(<4kb)のメチル化状態を見るためには、PCR反応を、問題の遺伝子領域全体にわたって互い違いにしなくてはならなかった(D.Sミラー(Millar)、K.Kオウ(Ow)、C.L.ポール(Paul)、P.J.ラッセル(Russell)、P.L.モロイ(Molloy)、S.J.クラーク(Clark)、1999、癌遺伝子(Oncogene)18(6):1313−24;ミラー(Millar)DS、ポール(Paul)CL、モロイ(Molloy)PL、クラーク(Clark)SJ.(2000)、J.Biol Chem;275(32);24893−9)。ここで、重亜硫酸塩DNA処理のために用いられている方法は、同様に、労力と時間のかかるものでもあった。標準的方法は、ゲノムDNAの一部の領域の非変換といったような問題の削減を試みるために、標準的に多数の管変更、カラム精製、透析、アガロースビーズ内へのDNAの包埋又は反応に対する添加剤の添加を必要とする。かくして、実質的なDNA分解を導かず、現行のDNA処理に付随する多数の問題を克服するか又は少なくとも削減するより信頼性の高い方法が必要とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、数多くの異なる分子生物学技術と共に使用するために適合可能で、効率が良くかつ核酸の有意な維持を達成することのできる、本書でヒト遺伝子シグネチャー(Human Genetic Signature)(HGS)重亜硫酸塩方法又は本発明の方法と呼ぶ核酸の改良型重亜硫酸塩処理方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、1つの実施形態においては、核酸を処理するための方法を提供している。該方法は、核酸試料を変性する工程;重亜硫酸塩試薬で核酸試料をインキュベートしかくしてスルホン酸塩基でメチル化ヌクレオチドを修飾する工程;修飾済み核酸試料を希釈する工程;修飾済み核酸試料を沈殿させる工程;及び修飾済み核酸試料を反応させてスルホン酸塩を除去する工程を含むことができる。核酸の変性は、例えばアルカリでの処理によって実施可能である。
【0009】
もう1つの実施形態においては、本発明は、核酸を処理する方法において、
(a)核酸試料に対し変性環境を提供する工程;
(b)重亜硫酸塩試薬と前記核酸試料を反応させ、該反応物をインキュベートして、前記核酸試料中のメチル化されたヌクレオチドは変換されず、非メチル化ヌクレオチドは別の形態に変換された、処理済み核酸試料を形成する工程;
(c)核酸沈殿工程に実質的に影響を与えないレベルまで塩濃度を低減させるために、前記処理済み核酸試料を希釈する工程;
(d)前記処理済み核酸試料から不要な試薬又は希釈剤を全て実質的に除去するために、前記希釈した処理済み核酸を沈殿させる工程;及び
(e)スルホン酸塩基を実質的に含まない核酸試料を得るために、前記処理済み核酸上に存在するスルホン酸塩基を除去するように前記沈殿した処理済み核酸の脱スルホン化を行う工程を含む方法を提供している。
【0010】
該方法は標準的に、試料中の出発核酸の約50%以上、一般的には約75%以上そして場合によっては約95%以上を維持する。本発明の方法は、核酸試料の実質的な分解又は喪失を全くひき起こすことなく実施することができる。これに対して、現在使用されている又は先行技術で記述されている重亜硫酸塩方法は、核酸試料の約96%までの喪失を標準的に結果としてもたらし、そのため分析のために実際利用可能であるのは核酸の約4%にすぎない。
【0011】
該方法は、さらに、
(f)処理済み核酸試料をさらに加工又は分析する工程を含んでいてよい。
【0012】
試料はDNA又はRNA又はDNAとRNAの両方の組合せを含むことができる。
【0013】
先行技術の方法とは異なり、重亜硫酸塩試薬から処理済み核酸を完全に分離又は単離する必要は全く無い。例えば先行技術の方法により現在必要とされているように、クロマトグラフィ分離方法を利用する必要性は全く無い。本発明に従った希釈工程は、試料の損失を最小限におさえるのを助ける。
【0014】
本発明は同様に、試薬の入ったキット及び本発明に従った方法を実施するための説明書にも関する。
【0015】
本明細書全体を通して、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「含む(comprise)」又は「comprises」又は「comprising」というその変形形態は、記述された要素、整数又は工程又はその群の内含を意味するもののその他のあらゆる要素、整数又は工程又はその群の除外を意味しないものとして理解される。
【0016】
本明細書の中に含み入れられた文献、行為、材料、デバイス、物品などについての論述は全て、本発明についての前後関係を提供することのみを目的としたものにすぎない。これは、これらの事項のいずれか又は全てが先行技術の基礎の一部を成す又は本出願の各請求項の優先日以前にオーストラリアに存在していた通りの本発明に関連する分野における共通の一般的知識であったということの是認として考えられるべきものではない。
【0017】
本発明をより明確に理解できるようにするため、以下の図面及び実施例を参考にして、好ましい実施形態について説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
核酸を処理するための実施形態が以下の制限的意味のない詳細の中で記述されている。
【0019】
本発明は、核酸の処理及び分析方法を提供する。該方法は、それらが核酸の修飾のための単純でかつきわめて効率の良い方法を提供し例えばゲノムDNA又はRNAのメチル化パターン又はメチル化変化を検査するために使用可能であるという点で有利である。本発明の方法は、以前に知られていた方法に比べてさらに高い収量をもつ単純化された手順及びさらに高い分子量の分子を提供し、かくしてより少ない量の核酸の分析ならびに多数の試料に対する容易な応用を可能にする。
【0020】
本発明は、
核酸を処理する方法において、
(a)核酸試料に対し変性環境を提供する工程;
(b)重亜硫酸塩試薬と前記核酸試料を反応させ、該反応物をインキュベートして、前記核酸試料中のメチル化されたヌクレオチドは変換されず、非メチル化ヌクレオチドは別の形態に変換された、処理済み核酸試料を形成する工程;
(c)核酸沈殿工程に実質的に影響を与えないレベルまで塩濃度を低減させるために、前記処理済み核酸試料を希釈する工程;
(d)前記処理済み核酸試料から不要な試薬又は希釈剤を全て実質的に除去するために、前記希釈した処理済み核酸を沈殿させる工程;及び
(e)スルホン酸塩基を実質的に含まない核酸試料を得るために、前記処理済み核酸上に存在するスルホン酸塩基を除去するように前記沈殿した処理済み核酸の脱スルホン化を行う工程を含む方法を提供する。
【0021】
核酸試料の変性は、例えばDNA試料にアルカリ環境を提供することによって実施可能である。該方法は、DNA核酸試料の分析において特に有用である。RNA試料の変性は、二次構造を解消するためにRNAを加熱することによって実施可能である。加熱は標準的には約95℃まで、好ましくは約50℃〜70℃の間である。しかしながら、2次構造を除去するもののRNA分子を破壊又は分断しないようにRNAを好ましく変性させるように温度が選択されるということは理解されるであろう。
【0022】
脱スルホン化工程は一般に、処理済み核酸試料上に存在するスルホン酸塩基を除去するように制御された条件下で実施される。該方法は、それらが例えばDNAストランドといった核酸試料が有意なレベルまで破断又はせん断されないような形で実施されるため、有利である。従来の重亜硫酸塩手順の中で記述されているようなアルカリの添加が結果として全RNAの分解をもたらすことになるため、かかる方法は、RNA試料のために特に有利である。
【0023】
本発明は、かくして1つの実施形態において、核酸を処理するための方法を提供している。該方法は、核酸試料を変性する工程;重亜硫酸塩試薬で核酸試料をインキュベートしかくしてスルホン酸塩基でメチル化ヌクレオチドを修飾する工程;修飾済み核酸試料を希釈する工程;修飾済み核酸試料を沈殿させる工程;及び修飾済み核酸試料を反応させてスルホン酸塩を除去する工程を含むことができる。核酸の変性は、例えばアルカリでの処理、加熱又は一本鎖核酸の形成をもたらすその他の化学物質又はタンパク質試薬の添加によって実施可能である。
【0024】
該方法の結果として標準的に、試料中の出発核酸の約50%以上、一般的には約75%以上そして場合によっては約95%以上が維持されることになる。本発明者らは、該方法が、核酸試料の実質的な分解又は喪失を全くひき起こすことなく実施することができるものであるということを発見した。これに対して、現在使用されている又は先行技術で記述されている重亜硫酸塩方法は、核酸試料の約96%までの喪失を標準的に結果としてもたらす。
【0025】
該方法は、さらに、
(f)処理済み核酸試料を加工又は分析する工程を含んでいてよい。
【0026】
試料はDNA又はRNA又はDNAとRNAの両方の組合せを含むことができる。
【0027】
該試料は、組織、細胞から調製することが可能であり、そうでなければ、血液、尿、糞便、精液、脳脊髄液、洗液;脳、結腸、泌尿生殖器、肺、腎臓、造血、乳房、胸腺、こう丸、卵巣、子宮といった供給源由来の細胞又は組織;胎芽又は胎芽外系統、環境試料、植物、細菌、細胞内寄生ウイルス、真菌、原生動物、ウイロイドなどを含めた微生物由来の組織といったあらゆる生体試料であり得る。本発明による処理に適した最も良く記述されてきた哺乳動物細胞型は、B.アルバート(Alberts)ら、1989年「細胞の分子生物学(The Molecular Biology of the Cell)」、第2版、ガーランド出版社(Garland Publishing Inc.)ニューヨーク及びロンドン、p995〜997)の中に要約されている。
【0028】
ヒト、動物、植物、細菌及びウイルス由来の試料からのDNA又はRNA中の5−メチルシトシン残基の分析は、受精から死後48時間までの全ての細胞、組織及び器官内の全てのライフサイクル段階、ならびに顕微鏡スライドといった組織学的供給源から誘導されうる試料、ブロック中に包埋された試料、体液又は合成又は天然の表面又は液体から抽出された試料を網羅するものとする。
【0029】
分析は、健康な個体(WHOが定義づけしている健康)の細胞、組織及び器官ならびに病気の個体由来の細胞、組織及び器官の間の天然に発生する変異を含むことが意図されている。この意味での病気には、ジャン(Jean)D.ウイルソン(Wilson)ら、マグローヒル社(McGrraw Hill Inc.)編の「ハリソンの内科学原理(Harrison’s Principles of Internal Medicine)第12版以降の中で記述され言及されている全てのヒトの疾病、苦痛、不快、及び逸脱身体条件、ならびにOMIM(オンライン版ヒトメンデル遺伝(Online Mendelian Inheritance in Man)、
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)に記述されている全ての疾病、苦痛、不快及び逸脱身体条件が含まれるが、特に強調されるのは、主な死亡原因、すなわち、悪性新生物(癌)、虚血性心疾患、脳血管疾患、慢性閉塞性肺疾患、肺炎及びインフルエンザ、動脈疾患(アテローム性動脈硬化及び大動脈瘤)、真性糖尿病、及び中枢神経系疾患、ならびに社会的衰弱状態例えば不安症、ストレス関連の神経精神的身体条件及び肥満症、及び染色体数又は染色体再配置異常から生じる全ての身体条件(常染色体ならびに性染色体が関与する異数性、重複、欠損、転位及び挿入)、ならびにミトコンドリア・ゲノムの類似の異常である。
【0030】
正常な又は病気の個体は、(i)さまざまな民族性及び進化上の系統の個体群;(ii)種族及び地理的隔離集団;(iii)亜種;(iv)同じ又は異なる性別の双生児又はより高位の多生児;(v)正常な接合方法、人工授精、胚幹細胞方法又は核移植(体細胞又は生殖細胞系核から)によるクローニング、又はミトコンドリア又はその他の細胞小器官の投入又は修飾から生じた個体;(vi)トランスジェニックノックアウト、ノックイン又はノックダウン方法(インビボ、エクスビボ又は例えばRNAi、リボザイム、トランスポゾン活性化、薬物又は小分子方法、ペプチド核酸(PNA)、層間核酸(INA)、アルトリトール核酸(ANA)、ヘキシトール核酸(HNA)、ロックト核酸(LNA)、シクロヘキサニル核酸(CNA)など、又はトロジャンペプチドを含む(ただしこれに制限されるわけではない)核酸ベースの接合体により過渡的に又は永久的に遺伝子活性が改変されるあらゆる方法のいずれかによる)から誘導された個体又は正常又は異所性の妊娠のあらゆる段階にある個体、に由来するものであってよい。
【0031】
分析には同様に、正常に変動する及び病気の系の両方において、変化したパラメータ及び以下の状態の内在するメカニズムを見極めかつ治療的に改変させる目的で、細胞外又は細胞内様式でヒトの疾病に付随している原核生物又は真核生物及びウイルス(又はそれらの組合せ)からのDNA又はRNA内の5メチルシトシン残基も含まれる:
(I)遺伝的疾患
(II)生体又は非生体由来のいずれであれ、環境的に誘発された因子によってひき起こされる非遺伝的又はエピジェネティックな疾患(この意味での環境的という語には、妊娠のあらゆる段階の間又は受胎能及び不妊治療の条件下での、生体自体の内部での環境も含むものと考えられる);
(III)「プリオン」クラスの因子、圧力変化及び無重力状態への暴露、又は放射線の効果によってもたらされる効果を含む遺伝的又は非遺伝的疾患に対する素因;
(IV)加齢に伴ううつ病、苦痛、神経精神及び神経変性病及び更年期前及び更年期後の身体条件(両方の性別での受胎能力の減少を含む)を含めた、全ての細胞型、組織、器官系及び生命ネットワークにおける加齢プロセスでの5−メチルシトシンの変化;
(V)(DNA増幅、欠失、再配置、転位及び挿入事象から発生する異常な核型を伴う細胞内の変化を含めた)癌における5−メチルシトシンの変化、及び(日周期リズム、光周期、睡眠、記憶及び「時差ぼけ」に対する細胞周期の効果を含む)異なる細胞周期現象におけるその変動又は改変;
(VI)受精卵から胚形成、胎児の発育、誕生、青年期、成人期及び老齢期までの、最も広い意味で定義された代謝ネットワークにおける5−メチルシトシンの変化((イオン化又は非イオン化タイプのいずれであれ、又化学療法治療、岩といった付近の天然源からの高地暴露放射線又は軍事又は政府後援活動からの「フォールアウト」から生じたものであれ)あらゆるタイプの低酸素状態、酸素欠乏症、放射線によって、又はストレスによって、又はミトコンドリア、核又は細胞小器官ゲノムの間の不均衡によってもたらされる代謝効果を含む);
(VII)タンパク質、ポリペプチド、ペプチド及びDNA、RNA、PNA、INA、ANA、HNA、LNA、CNAなど又はペプチドアプタマ−(翻訳後付加、翻訳後分割産物、翻訳後修飾(例えばインテイン及びエクステイン、ユビキネーション及び分解の産物)を伴うもの);希少天然アミノ酸ならびに学習、脳成長及び細胞死に関与するD−セリンといったような単一の希少アミノ酸を含有するタンパク質、ポリペプチド及びペプチド;薬物、生物医薬品、化学物質(ここで化学物質及び生物医薬品の定義は、G.アシュトン(Ashton)、2001、自然バイオテクノロジー(Nature Biotechnology)19、307−3111のものである)を含む);代謝物、新規塩、プロドラッグ、既存の化合物のエステル、ワクチン、抗原、ポリケチド、非リポゾームペプチド、ビタミン、及び(植物由来のシクロパミンといった)あらゆる天然源の分子に対する、分子、細胞、組織、器官及び全生体レベルでの応答に起因する5−メチルシトシンの改変;
(VIII)一本鎖又は二本鎖のいずれであれ、外部供給源からのものであれ、又は内因性トランスポゾン又はレトロトランスポゾン(SINES及びLINES)といった内部的に活性化されたものであれ、RNA及びDNAウイルスに対する分子、細胞、組織、器官及び全生体レベルでの応答に起因する、5−メチルシトシンの改変;
(IX)遺伝子又は非遺伝子由来のいずれであれ(又イントロンを含有するか否かに関わらず)RNA転写物の逆転写されたコピーに対する分子、細胞、組織、器官及び全生体レベルの応答に起因する、5−メチルシトシンの改変;
(X)(a)血液及び脳脊髄液ならびに妊娠前、中及び後の母性体液を含めた全ての流体の中を循環するDNA、RNA、PNA、INA、ANA、HNA、LNA、CNAなどの分子を含めた、DNA、RNA、PNA、INA、ANA、HNA、LNA、CNAなど(又はDNA、RNA、PNA、INA、ANA、HNA、LNA、CNA、その全ての組合せの中のいずれかのもののアプタマー)、(b)ペプチド及び核酸のキメラ;又はコレステロール部分、ホルモン及び核酸といったような天然分子のキメラである接合生体分子の組合せに対する分子、細胞、組織、器官及び全生体レベルでの応答に起因する5−メチルシトシンの改変;及び
(XI)以上の(i)〜(x)に記述した混乱のいずれかに対する、ヒト及び動物由来の(インビボ、エクスビボ又は新規環境又は天然及び合成の基質(又はそれらの組合せ)と結びつけた状態)基幹細胞の応答に起因する5−メチルシトシンの改変。
【0032】
核酸材料を得るための適切なあらゆる方法を使用することができる。例としては、制限的な意味なく、当業者にとって周知のものである市販のDNA/RNAキット又は試薬、ワークステーション、プロテアーゼ試薬を含有する標準的細胞溶解緩衝液及び有機抽出手順である。
【0033】
該方法は、反応容器の中で実施可能である。反応容器は、チューブ、プレート、キャピラリー、ウェル、遠心分離用チューブ、マイクロフュージ管、スライド、カバースリップ又は適切な任意の表面といった任意の適切な容器であり得る。該方法は一般に、核酸試料の分解又は損失の確率を削減するため1つの反応容器内で実施される。
【0034】
一般に、変性環境は、NaOHといったようなアルカリを添加することによって、又は試料を含有する核酸を加熱することによって、試料に対して提供される。アルカリ環境は、分子が重亜硫酸塩試薬と直ちに反応する状態へと二本鎖DNA酸性分子を変性するために提供される。しかしながら、熱処理といったその他の任意の変性方法又はKOHといったその他の任意の適切なアルカリ又は変性剤及び変性用試薬がその後の工程を著しく阻害しないかぎりにおいて、その他の任意のアルカリを添加したり使用したりすることができるということは理解されるであろう。アルカリはRNA分子の分解を結果としてもたらし従って熱変性といったようなもう1つの方法が望ましくなるため、このことはRNA分析にとって重要であり得る。
【0035】
一般に、重亜硫酸塩試薬はメタ重亜硫酸ナトリウムである。重亜硫酸塩試薬は、スルホン酸シトシンへのシトシン塩基のスルホン化とそれに続くスルホン化ウラシルへのスルホン化シトシンの加水分解的脱アミノ化をひき起こすために使用される。しかしながら、亜硫酸塩又は酢酸塩イオンといったようなその他の適切な任意の重亜硫酸塩試薬を使用することも可能であるということがわかるだろう(シャピロ(Shapiro)、R.、ジファーテ(Difate)、V.及びウェルチャー(Welcher)、M.(1974)、J.Am.Chem.Soc.96:906−912を参照のこと)。
【0036】
スルホン化試薬によるインキュベーションは、7未満のpHでかつスルホン酸ウラシル基の形成に有利に作用する温度で実施可能である。シトシン塩基をスルホン酸シトシンへ変換しその後スルホン酸ウラシルに変換するスルホン化反応を実施するためには、約7未満のpHが好ましい。しかしながら、本発明の方法は、望まれる場合にはpH7を上回るpHでのスルホン化反応により実施することもできる。
【0037】
スルホン化反応は、重亜硫酸塩反応を増強させる能力をもつ添加剤の存在下で実施可能である。適切な添加剤の例としては、キノール、尿素、メトキシアミンがあるがこれらに制限されるわけではない。これらの試薬のうち、キノールは還元剤である。尿素及びメトキシアミンは、重亜硫酸塩反応の効率を改善するために添加される作用物質である。重亜硫酸塩反応を補助するためにその他の添加剤又は作用物質も提供できることがわかるだろう。
【0038】
スルホン化反応の結果として非メチル化シトシンがウラシルへと変換される一方で核酸試料中のメチル化シトシンは変化の無い状態にとどまることになる。
【0039】
うまく作用することがわかった反応条件は、以下の通りである。処理すべき変性DNA又はその他の核酸を、20μlの体積となるように補給する。次に、pH5.0の作られたばかりの2Mのメタ重亜硫酸ナトリウム溶液(BDH AnalaR#10356.4D)208μl(pHは10Mの水酸化ナトリウム(BDH AnalaR#10252.4X)を添加することで調整する)を、10mMのキノール溶液(BDH AnalaR#103122E)12μlと共に添加する。添加されるキノールの濃度は、実験的に判定される通り約10〜500mMの範囲内のいずれかである。次に溶液を混合し、208μlの鉱油(シグマ分子生物学グレード(Sigma molecular biology grade)M−5904)で覆う。次に試料を一晩適切な温度、例えば室温又は別の適切な温度で放置して、完全な重亜硫酸塩変換のための時間を与える。上述の体積、濃度及びインキュベーション時間及び温度が単なる一例であり、反応条件が核酸のスルホン化に適しているかぎり変動させることができるものであることは当業者には理解される。同様に、本発明の方法の工程の順序も、スルホン化及び脱スルホン化工程が充分に実施されるかぎり変動可能であるということも理解される。
【0040】
希釈工程は、その後の反応を阻害する塩がスルホン化された核酸と共沈しないような形で実施される。塩濃度は、約1M未満まで希釈される。一般に希釈工程は、塩濃度を約0.5Mより低く減少させるべく水又は緩衝液を用いて実施される。例えば、塩濃度は一般に、約1mM未満〜約1M、特に約0.5M未満、約0.4M未満、約0.3M未満、約0.2M未満、約0.1M未満、約50mM未満、約20mM未満、約10mM未満、さらには望まれる場合には約1mM未満にさえ希釈される。当業者であれば、核酸試料のさらなる浄化又は操作を最小限におさえてその後の工程を実施できるような形で、核酸との塩沈殿を減少させる適切な希釈度を容易に判定することができる。希釈は一般に水中で実施されるが、その緩衝液が核酸と共に著しく沈殿するか、又は塩を著しく沈殿させてその後の反応を阻害するのでないかぎり、任意の適切な緩衝液中、例えばトリス/EDTA又はその他の緩衝液中で実施することもできる。
【0041】
先行技術の方法とは異なり、重亜硫酸塩試薬から処理済み核酸を完全に分離又は単離する必要は全く無い。例えば先行技術の方法により現在必要とされているように、クロマトグラフィ分離方法を利用する必要性は全く無い。本発明に従った希釈工程は、試料の損失を最小限におさえるのを助ける。
【0042】
一般に、沈殿は、アルコールといったような沈殿剤を用いて実施される。核酸の沈殿のためのアルコールの例は、イソプロパノール、エタノール又はその他の適切なあらゆるアルコール中から選択可能である。
【0043】
脱スルホン化工程は、沈殿した処理済み核酸のpHを約12.5まで調整することにより実施可能である。アルカリ性環境に対する暴露は、酸性pHに対する以前の暴露によって誘発される核酸内の脱プリン部位でのストランド破断を促進する傾向をもつ。従って、ストランド破断を回避すべきである場合には、アルカリ性pH処理は最小限におさえられる。この工程は、適切な緩衝液又はアルカリ試薬でpH10.5前後で効率良く実施することができる。適切な緩衝液又はアルカリ試薬の例としてはpH7.0〜12.5を有する緩衝液が含まれる。当業者であれば、適切な緩衝液又はアルカリ試薬を広い範囲の入手可能な既知の緩衝液及びアルカリ試薬の中から選択できるということがわかるだろう。
【0044】
脱スルホン化工程のための温度範囲は、室温から約96℃までであり、時間は、使用される条件に応じて2分から96時間以上まで変動し得る。当業者であれば、脱スルホン化反応を実施するための適切な時間及び温度を容易に決定することができる。充分な脱スルホン化を可能にするべくインキュベーション時間が延長させられるかぎりにおいて、室温未満の温度を使用することも可能である。かくして、インキュベーション工程は、約10℃、約20℃、約22℃、約25℃、約30℃、約35℃、約37℃、約40℃、約45℃、約50℃、約55℃、約60℃、約65℃、約70℃、約75℃、約80℃、約85℃、約90℃、約95℃、及び約96℃で実施することができる。脱スルホン化反応を実施するための特に有用な温度は約55℃である。これらの及びその他のインキュベーション及び/又は反応工程は、充分な反応工程が実施されるかぎりにおいて、上述の通り、さまざまな温度で類似の要領で実施可能である。
【0045】
本発明は、メチル化された核酸の効率の良い特徴づけのための方法を提供する。該方法は、核酸試料についての効率の良いスルホン化及及び脱スルホン化工程を実施できるようにする。しかしながら、スルホン化又は脱スルホン化工程のいずれも完全に実施する必要はなく、本書で開示する通り核酸のメチル化をその後特徴づけするのに充分なだけ実施すればよい、ということは理解される。当業者であれば、これらの工程をほぼ完全まで実施すべきか否か又は所望の分析のためには不完全な反応で充分であるか否かを容易に判定することができる。例えば、少数の細胞又は少量の核酸試料が使用される場合、より完全な反応を実施することが一般に望まれる。さらに大量の核酸試料が特徴づけされる場合、核酸試料のメチル化状態のその後の分析のために充分な反応産物をなおも提供する一方で、さほど完全でない反応を実施することが可能である。
【0046】
本書で開示されている通り、本発明は、核酸を適切に処理するための方法を提供する。該方法は、本書に開示されているように1つの細胞、組織又は生体の状態の尺度として核酸集団のメチル化状態を分析するために使用可能である。本発明の方法は、核酸を処理するためにこれまでに使用された方法に比べいくつかの利点を提供する。1つの利点は、本発明の方法が、従来スルホン化の後に核酸試料を脱塩するのに使用されるクロマトグラフィ工程の省略を可能にするという点にある(クラーク(Clark)ら、1994 Nucleic Acids Res.22:2990−2997)。該クロマトグラフィ工程はスルホン化された核酸の損失を導き、このことは、少量の出発材料で作業している場合に特に問題となる可能性がある。
【0047】
本発明のもう1つの利点は、塩濃度を希釈し核酸を沈殿させることによりきわめて効率良く脱塩工程が実施されるという点にある。希釈工程は、核酸を沈殿させたときに脱スルホン化といったようなその後の工程と干渉しない量よりさらに低く塩濃度を減少させる。沈殿工程はかなり効率が良く、任意には核酸沈殿の効率を増大させる担体を内含することもできる。かくして、本発明の方法は、損失を最小限にし、核酸試料の回収を増大させる。従って、本発明の方法は、より少量の出発材料を使用しメチル化に関し効率良く特徴づけできるようにするという付加的な利点を提供する。本発明は、核酸から望ましくないあらゆる試薬又は希釈剤を除去する工程において、やっかいで効率の悪いクロマトグラフィ分離方法の代りに単純な希釈及び沈殿方法を使用することによってクラーク(Clark)ら、1994 Nucleic Acids Res.22:2990−2997の方法を改良する方法を提供している。
【0048】
さらに、わずかにアルカリ性のpHで緩衝溶液を使用することにより、問題の核酸が実質的に断片化される確率を減少させることができる。緩衝溶液のpHをpH12.5よりもはるかに高く増大させることで、高分子量の核酸の非常に実質的な断片化が導かれることが実証された。従って、かかる断片化を最小限におさえたい場合には、一般に約pH11未満のアルカリ性pHが用いられる。
【0049】
本発明のさらにもう1つの利点は、各試料について単一の管又は容器の中で反応を実施し、かくして試料の損失を最小限におさえ数多くの試料の加工を可能にすることができるという点にある。本発明の方法のこれまでの方法と比べたさらなる利点は、ひとたびスルホン化された時点で、クラーク(Clark)ら、1994に記述した方法にあるように強塩基の添加及びその後の塩除去を必要とするのではなくむしろ脱スルホン化工程を実施するために塩基性pHをもつ緩衝液中に該核酸を再懸濁させることができる、という点にある。
【0050】
さらにもう1つの利点は、本発明の方法が処理に先立ち制限酵素での任意の消化を可能にするという点にある。従来の重亜硫酸塩処理方法は一般に、処理及び増幅をうまく行うために制限酵素での初期消化工程を含み、従って長距離PCR反応には適用不可能である。しかしながら、本発明の方法は、スルホン化反応に先立つ制限酵素での予備消化を必要とせず、ここでも又より長いフラグメントについてPCRを実施する選択肢と同様により少ない操作を可能にする。
【0051】
本発明の方法は、細胞、組織又は生体のメチル化状態を特徴づけするために使用可能である。本発明の方法は同様に、本明細書に参照により援用されているフロマー(Frommer)らのProc.Natl.Acad、Sci、USA89、1827〜1831(1992)に記述されているもののようなゲノム配列決定方法と併用することもできる。
【0052】
本発明はさらに、1つの試料のメチル化状態を判定する方法をも提供する。該方法は、核酸の処理のための本発明の方法すなわちHGS方法を用いて試料について実施することができる。試料のメチル化状態の判定方法は、その試料のメチル化状態が基準試料との関係において比較され判定され得るように、テスト試料と対照試料で並行して実施することができる。例えば、試料は、全般的に又は特定の部位においてメチル化の増加又は減少が存在するか否かを判定するために比較され得る。かかる判定は、本書中で論述する通り1つの疾病の予後を診断及び/又は判定するために使用することができる。該方法は、例えば診断的利用分野において試料のメチル化状態の報告をさらに含むことができる。
【0053】
本発明に従った方法は、キット内で使用するために特に適している。かかるキットは標準的に試薬及び本発明を実施するための説明書を含んでいる。適切なキットを提供することによって、エンドユーザーが、メチル化された核酸について作業を行ない再現可能で一貫性のある結果を得るようにすることが可能である。
【0054】
本発明の方法の構成要素をキットの形で提供できることは理解される。該キットは、該当する化学的試薬、反応管及び本発明の方法を実施するための説明書を含むことができる。
【実施例】
【0055】
方法及び試薬
化学物質は以下のとおりに入手した:アガロースはバイオラッド(BioRad)(カリフォルニハ州ハーキュリーズ(Hercules):認証済み分子生物学グレード#161−3101)より;氷酢酸はBDH(オーストラリア、キルシス(Kylsyth、Australia);AnalaR100015N)より;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)はBDH(AnalaR10093.5V)より;エタノールはアルドリッチ(Aldrich)(ミズーリ州セントルイス(St.Louis);200プルーフE702−3)より;イソプロパノールはシグマ(Sigma)(ミズーリ州セントルイス(St.Louis);99%+シグマ(Sigma)I−9516)より;鉱油はシグマ(Sigma)(M−5904)より;酢酸ナトリウム溶液3Mはシグマ(Sigma)(S−7899)より;塩化ナトリウムはシグマ(Sigma)(ACS試薬S9888)より;そして水酸化ナトリウムはBDH(AnalaR#10252、4X)より。
【0056】
酵素/試薬は以下の通りに入手した:EcoR1はロッシュ(Roche)(インディアナ州インディアナポリス(Indianapolis);#87930626、10単位/μl)より;HindIIIはバイオラブ(Biolabs)(マサチューセッツ州ベバリー(Beverly);#R01045、10単位/μl)より;PCRマスターミックスはプロメガ(Promega)(ウイスコンシン州マジソン(Madison);#M7505)より;そしてDNAマーカーは、シグマ(Sigma)(直接投入PCR低ラダー100〜1000bp、シグマ(Sigma)D−3687及び100−10Kb、シグマ(Sigma)D−7058)より。
【0057】
溶液は以下の通りであった:(1)10mMのトリス(Tris)/0.1MのEDTA、pH7.0〜12.5;(2)3MのNaOH(水50ml中6g;BDH AnalaR#10252.4X);(3)2Mメタ重亜硫酸塩(水20ml中7.6gと416μlの10NのNaOH(BDH AnalaR#10356.4D);(4)10mMのキノール(水50ml中0.055g;BDH AnalaR#103122E);(5)50×TAEゲル電気泳動緩衝液(242gのトリズマ(Trizma)塩基、57.1mlの氷酢酸、37.2gのEDTA及び1lの水);及び(6)5×アガロースゲル・ローディングバッファ(1mlの1%ブロモフェノールブルー(シグマ(Sigma)B6131)、1mlのキシレンシアノール(シグマ(Sigma)X−4126)、3.2mlのグリセロール(シグマ(Sigma)G6279)、8μlの0.5MのEDTA pH8.0、200μlの50X TAE緩衝液及び10mlの水)。
【0058】
組織及び細胞系
組織及び細胞系は以下の通り入手した:HeLa(子宮頸がん細胞系、ATCC CCL−2);LNCaP(前立腺癌細胞系、ATCC#CRL−10995);HepG2(肝癌細胞系、ATCC#HB−8065);及びMCF−7(乳癌細胞系、ATCC#HTB−22)は、American Type Culture Collectionから入手した。
【0059】
LNCaP細胞成長用のT培地の調製のためには、試薬は以下に記すもの以外、ギブコ(Gibco)/BRC又はインビトロジェン(Invitrogen)から入手した:DMEM粉末、10袋(10×1l;#31600−034);F−12K栄養素混合物、カイゲン(Kaighn)の改変(500ml;#21127−022);L−グルタミン、200mM(100ml;#25030−081);ペニシリン/ストレプトマイシン5000U/ml、5000μg/ml(100mlの#15070−063サーモトレース(Thermo Trace));ウシ胎児血清(500ml;#15−010−0500Vシグマ(Sigma));インシュリン(ウシの膵臓)(100mg;#I1882);トランスフェリン(ヒト)(10mg;#T5391);d−ビオチン(500mg;#B4639);アデニン(5g;#A3159);T3(#T6397又は#T5516)。
【0060】
T−培地(500ml)を以下の通りに調製した:1リットルあたり3.7gの重亜硫酸ナトリウムを添加し7.2〜7.4の間までpHを調整することによってDMEM原液を調製した。400mlのDMEM原液に対して以下の試薬を添加した:100mlのF−12K;250μlのインシュリン(10mg/ml);1.0mlのT3(500×;トリ−ヨードチロニン;6.825ng/ml);1.0mlのトランスフェリン(500×;2.5mg/ml);1.0mlのビオチン(500×;0.122mg/ml);4.0mlのアデニン(125×;3.125mg/ml);5.5mlのペニシリン/ストレプトマイシン(100×;5000μg/ml);及び5.5mlのグルタミン(100×;200mM)。無菌ろ過の後、50mlのウシ胎児血清を添加して10%を得た。
【0061】
表1は、以下に説明する実験において使用される細胞系及び成長条件を列記している。
【0062】
【表1】

【0063】
全血由来のT細胞及びCD34細胞の精製
シドニー(Sydney)のロイヤルノースショア病院(Royal North Shore Hospital)において白血球搬出治療を受けている患者から試料を入手した。試料は予め倫理委員会の承認を得て入手した。Ficoll Paque plus(アマシャム・バイオサイエンス(Amersham Biosciences)#17−1440−03;ニュージャージー州ピスカタウェイ(Piscataway))を用いてメーカーの使用説明書に従って白血球を濃縮した。T細胞及びCD34細胞を白血球集団からCELLectionCD2 Dynabeadsと(Dynal#116.03;Lake Success)及びDynal CD34始原細胞選択システム(Dynal#113.01)を用いそれぞれメーカーの使用説明書に従って単離した。
【0064】
以下の機器を使用した。PCR機は、Thermal Hybaid PX2(シドニー、オーストラリア)であり、Gel Documentation SystemはKodak UVItecEDAS290(ニューヨーク州ロチェスタ(Rochester))であり、マイクロフュージは、エッペンドルフ5415−D(ブリンクマン・インストルメンツ(Brinkman Instruments;ニューヨーク州ウェストバリー(Westbury))であった。
【0065】
DNA増幅
各プライマ6ng/μl、Promega PCRマスターミックスを用いて重亜硫酸塩処理済みゲノムDNA2μlを含む25μlの反応混合物内で、PCR増幅を実施した。重亜硫酸塩処理されたDNAからのGSTP1の増幅のために用いられたストランド特異的ネステッドプライマは、GST−9(967−993)TTTGTTGTTTGTTTATTTTTTAGGTTT(配列番号1);(F)GST−10(1307−1332)AACCTAATACTACCAATTAACCCCAT(配列番号2)(R);GST−11(999−1027)GGGATTTGGGAAAGAGGGAAAGGTTTTTT(配列番号3)(F);GST−12(1281−1306)ACTAAAAACTCTAAAAACCCCATCCC(配列番号4)(R)である。プライマの場所は、GSTP1配列(受入番号;M24485;ゲンバンク(GenBank)引用、モロウ(Morrow)ら、遺伝子(Gene)75:3−11(1989))に従って記されている。
【0066】
RNA精製
Du145細胞を、上述の条件下でT75組織培養フラスコ内の90%の集密度になるまで成長させた。培地を廃棄し、3mlのトリゾール(Trizol)(インビトロジェン(Invitrogen)カタログ#15596−026)を添加し、試料を以下の通りに加工した:
I.試料を充分に混合し5分間室温に放置して、核タンパク複合体を解離した。
II.その後試料を4℃で10分間12,000×gで回転させて高分子量DNA及びその他の汚染物質を除去した。
III.上清を清潔な管の中へと取出し、100%クロロホルムを100μl添加し、試料を手で15秒間勢いよく混合し、次に2〜3分間室温でインキュベートした。
IV.相分離させるため4℃で10分間12,000×gで試料を回転させた。
V.ピペットの先端が必ず界面から離れたところにとどまるようにしながら清潔な管の中に上部水相を取出し、20mg/mlのグリコーゲン1μlを添加し、試料をボルテックスに付した。
VI.同体積の100%(0.25ml)を添加し、管をボルテックスに付し、次に10分間室温に放置した。
VII.試料を次に10分間4℃で12,000×gで回転させてRNAをペレット化した。
VIII.上清を除去し、ペレットを0.75mlの80%エタノールで洗浄し、cDNA合成反応の阻害物質を除去し、短時間ボルテックスに付し、次に4℃で5分間7,500×gで回転させてRNAをペレット化した。
IX.工程VIIIをさらに一回繰り返した。
X.10秒間マイクロフュージ内でペレットを回転させ、残留エタノールを除去し、直ちにRNアーゼを含まない水25μlの中にペレットを再度懸濁させた。
注)ペレットが乾燥しきっていた場合、RNAを再懸濁させるのは非常にむずかしく、260/280比は1.6未満となる。
XI.このときOD260/280/310が記録される。
XII.精製したRNAを次に必要となるまで−70℃で貯蔵する。
【0067】
cDNA合成
メーカーの使用説明書によって推奨されるように100ngのランダムヒーマー(インビトロジェン(Invitrogen)カタログ#48910−011)と共にスーパースクリプトIII(インビトロジェン(Invitrogen)カタログ#18080−044)を用いてcDNA合成を実施した。
【0068】
RNA増幅
各プライマ6ng/μl、プロメガ(Promega)PCRマスターミックスを用いて、重亜硫酸塩処理済み逆転写済みゲノムRNA2μlを含む反応混合物25μlの中でPCR増幅を実施した。重亜硫酸塩処理されたRNAからのアクチンの増幅のために使用されるストランド特異的プライマは、アクチンBS−3A(2076−2097)
TTAATATTTTAGTTATGTATGTTGT 配列番号5);アクチンBS4(2720−2744)
CTTCATTATACTAAATACCAAA(配列番号6)であった。
【0069】
増幅されたRNAが野生型RNAのものではなく重亜硫酸塩変換されたRNAに由来するものであることを確実にするため、野生型アクチンRNAに対する対照プライマも同様に含まれていた。以下の野生型プライマが合成された:アクチン野生型3A(2076−2097)
TCAACACCCCAGCCATGTACGTTGC(配列番号7);アクチン野生型4(2720−2744)
GATCTTCATTGTGCTGGGTGCC(配列番号8)。プライマの場所は、ヒトベータ−アクチン遺伝子配列(受入番号;M10277)に従って示されている。
【0070】
核酸分離
50mlのアガロースにつき1滴の臭化エチジウム(CLP#5450)を含有する1%のTAE中で、1%又は2%のアガロースゲルを調製した。問題のDNA及びRNA試料(ゲノム又はPCR由来)を1/5体積の5×アガロースローディングバッファと混合し、水中水平電気泳動タンクを用いてX1 TAE内で125mAで電気泳動させた。
【0071】
DNAの従来型重亜硫酸塩処理
(本明細書に参照により援用されているクラーク(Clark)ら、(1994)Nucleic Acids Res.22:2990−2997)(極端に低いDNA収量を結果としてもたらす先行技術の方法)。
【0072】
ゲノムDNA(2μg)を、少なくとも20μlの最終体積で60分間EcoR1で消化した。この消化物に対し、3MのNaOH(50mlの水中に6gのNaOH:作りたてのもの)2.2μlを添加し、15分間37℃でインキュベートした。208μl体積の2Mのメタ重亜硫酸塩(20mlの水中の7.6gのメタ重亜硫酸塩及びpH5.0になるまでの416μlの10M NaOH)を添加し、続いて12μlの10mMキノン(0.55gのハイドロキノンが、1/10希釈の100mMを提供する)を添加した。反応混合物を鉱油200μlで覆い、一晩50〜55℃でインキュベートした。インキュベーションが終った時点で鉱油を除去し、1μgの酵母tRNA(シグマ(Sigma)R−8508)を添加した。
【0073】
メーカーの使用説明書に従い、ウィザード(Wizard)DNA浄化システム(プロメガ(Promega)#A7280)を用いて、DNA脱塩を実施した。短時間で、1mlの樹脂を試料に添加し、試料をボルテックスに付した。試料を、2.5ml入り注射器に取付けたカラムに適用し、注射器を通して穏やかに押した。カラムを2mlの80%イソプロパノールで洗浄し、次にマイクロフュージ内で14,000rpmで20秒間回転させた。50μlの水をカラムに適用し、試料を室温で1分間放置した。カラム材料をきれいな1.5ml入り遠心分離用チューブに適用し、マイクロフュージ内で14,000rpmで20秒間回転させた。DNAを、直ちに脱スルホン化可能な状態で溶出された体積の形で回収した。
【0074】
ウラシルから硫酸塩基を除去するため、5.5μlの3MのNaOHを溶出したDNAに添加し、混合物を15分間37℃でインキュベートした。アルカリを中和するため、33.5μlの体積のNHOAC(pH7.0)を添加した。100%エタノール330μlを添加し、反応混合物を60分間−20℃でインキュベートした。試料を14,000rpmで15分間回転させ、エタノールを廃棄した。ペレットを空気乾燥させ、10μlのT/E(pH8.0)中で再懸濁させた。
【0075】
核酸のHGS重亜硫酸塩処理
本発明に従った重亜硫酸塩処理の有効性を実証するプロトコル例が以下に記されている。該プロトコルは、うまく処理済み核酸の全てを実質的に維持する結果となった。本発明のこの方法は、同様に本書にHGS重亜硫酸塩方法として言及されている。試料又は試薬の体積又は量は変動し得るということがわかるだろう。
【0076】
DNA変性
望まれる場合適切な制限酵素で予備消化され得るDNA2μgに対して、20μlの最終体積で3MのNaOH(水50ml中6gで作りたてのもの)2μl(1/10体積)を添加した。重亜硫酸塩試薬が好ましくは一本鎖分子と反応することから、この工程は、二本鎖DNA分子を一本鎖形態に変性させる。混合物を15分間37℃でインキュベートさせた。変性の効率を改善するためには、室温より高い温度でのインキュベーションを使用することができる。
【0077】
RNA変性
1μlのRNアーゼ阻害物質(RNアーゼOUTインビトロジェン(Invitrogen)カタログ#10777−01940U/μl)を含有する20μlの合計体積で2μgのRNAを再懸濁させた。この溶液を次に2分間50℃で加熱し、その後氷上でスナップ冷蔵した(任意)。重亜硫酸塩試薬は好ましくは一本鎖分子と反応することから、この工程はRNA分子を基本的に二次構造の無い形態に変性させる。
【0078】
DNAの重亜硫酸塩処理
インキュベーションの後、連続して208μlの2Mのメタ重亜硫酸ナトリウム(20mlの水中に7.6g及び416mlの10NのNaOH;BDH AnalaR#10356.4Dで作りたてのもの)及び12μlの10mMのキノール(50mlの水中に0.055g、BDH AnalaR#103122Eで作りたてのもの)を添加した。キノールは還元剤であり、試薬の酸化を低減させるのを助ける。例えばジチオトレイトール(DTT)、メルカプトエタノール、キノン(ハイドロキノン)又はその他の適切な還元剤といったその他の還元剤も同様に使用可能である。200μlの鉱油で試料を覆った。鉱油で覆うことで、試薬の蒸発及び酸化が防がれるが、これは不可欠ではない。次に、試料を55℃で一晩インキュベートした。
【0079】
代替的には、試料を以下の通りにサーマルサイクラ内で循環させることが可能である。すなわち;工程1、55℃/2時間、PCR機内で循環;工程2、95℃/2分間といった通りに一晩又は約4時間インキュベートする。工程1は約37℃〜約90℃の任意の温度で実施され得、5分〜8時間まで長さが変動し得る。工程2は、約70℃〜約99℃の任意の温度で実施され得、長さは約1秒から60分以上に変動し得る。
【0080】
メタ重亜硫酸ナトリウムでの処理の後、油を除去し、DNA濃度が低かった場合には、1μlのtRNA(20mg/ml)又は2μlのグリコーゲンを添加した。これらの添加剤は任意であり、特にDNAが低濃度で存在する場合、標的DNAと共沈させることによって得られるDNAの収量を改善するために使用可能である。核酸のさらに効率の良い沈殿のための担体としての添加剤の使用は、核酸量が0.5μg未満である場合に一般に望まれる。
【0081】
イソプロパノール浄化処理は以下のとおりに実施した。すなわち、試料に800μlの水を添加し、混合し、次に1mlのイソプロパノールを添加した。水又は緩衝液は、反応答器内の重亜硫酸塩の濃度を、問題の標的核酸と共に塩が沈殿することになるレベルまで低減させる。本書で開示されているように、塩濃度が所望の範囲より低く希釈されるかぎりにおいて、希釈は一般に約1/4〜1/1000である。
【0082】
試料を再度混合し、最低5分間4℃で放置した。試料を10〜15分間マイクロフュージ内で回転させ、ペレットを2回80%のETOHで洗浄し、毎回ボルテックスに付した。この洗浄処理により、核酸と共に沈殿したあらゆる残留塩が除去される。
【0083】
ペレットを乾燥させ、50μlといった適切な体積のT/E(10mMのトリス/0.1mMのEDTA)pH7.0〜12.5の中で再懸濁させた。pH10.5の緩衝液が特に有効であることが発見された。核酸を懸濁させるため必要に応じて1分〜96時間、37℃〜95℃で試料をインキュベートした。
【0084】
上述の方法の前には、単数又は複数の制限酵素での消化が先行し得る。以下で記述する通り、2つの独立した制限酵素消化物が同じDNA試料で構成される。消化用に選択される酵素は、増幅すべき配列に左右される。例えば、37℃で1時間、20μlの体積のEcoRI中で2μgのゲノムDNAを消化させる。この工程は、ゲノムDNAよりも重亜硫酸塩変換にさらに敏感に反応するさらに小さなフラグメントへとゲノムDNAを消化させるために使用される。DNAをより小さいサイズのフラグメントへとせん断するために、音波処理又は物理的力を使用することもできる。音波処理の強度及び音波処理の長さは、DNAフラグメントの所望のサイズに基づいて選択させる。例えば、上述の通り、HindIIIで2μgのゲノムDNAを消化させることによって、別の消化反応が実施される。前処理消化のためには、これらの又はその他の適切な制限酵素を選択することができる。消化されたDNAは、上述の通り、メタ重亜硫酸塩で処理される。
【0085】
RNAの重亜硫酸塩処理
インキュベーションの後、208μlの2Mのメタ重亜硫酸ナトリウム(20mlの水中7.6gと416mlの10NのNaOH;BDH AnalaR#10356.4Dで作りたてのもの)を添加した。試料を200μlの鉱油で覆った。鉱油で覆うことで、試薬の蒸発及び酸化が防がれるが、これは不可欠ではない。次に、試料を37℃〜55℃で3時間〜一晩インキュベートした。代替的には、試料を以下の通りにサーマルサイクラ内で循環させることが可能である。すなわち;工程1、55℃/2時間、PCR機内で循環;工程2、70℃/30秒間といった通りに一晩又は約4時間インキュベートする。工程1は約37℃〜約90℃の任意の温度で実施され得、5分〜8時間まで長さが変動し得る。工程2は、約60℃〜約99℃の任意の温度で実施され得、長さは約1秒から60分以上に変動し得る。
【0086】
メタ重亜硫酸ナトリウムでの処理の後、油を除去し、RNA濃度が低かった場合には、1μlのグリコーゲンを添加した。この添加剤は任意であり、特にRNAが低濃度で存在する場合、標的RNAと共沈させることによって得られるRNAの収量を改善するために使用可能である。核酸のさらに効率の良い沈殿のための担体としての添加剤の使用は、核酸量が0.5μg未満である場合に一般に望まれる。
【0087】
イソプロパノール浄化処理は以下のとおりに実施した。すなわち、試料に800μlの水を添加し、混合し、次に1mlのイソプロパノールを添加した。水又は緩衝液は、反応答器内の重亜硫酸塩塩の濃度を、問題の標的核酸と共に塩が沈殿することになるレベルまで低減させる。本書で開示されているように、塩濃度が所望の範囲より低く希釈されるかぎりにおいて、希釈は一般に約1/4〜1/1000である。
【0088】
試料を再度混合し、15分間室温に放置した。試料を10〜15分間マイクロフュージ内で回転させ、ペレットを2回80%のETOHで洗浄し、各洗浄の間でボルテックスに付した。この洗浄処理により、核酸と共に沈殿したあらゆる残留塩が除去される。
【0089】
ペレットを乾燥させ、50 lといった適切な体積のT/E(10mMのトリス/0.1mMのEDTA)pH7.0〜12.5の中で再懸濁させた。pH10.5の緩衝液が特に有効であることが発見された。核酸を懸濁させるため必要に応じて1分〜96時間、37℃〜95℃で試料をインキュベートした。
【0090】
RNAを小さなサイズのフラグメントへとせん断するために、音波処理又は物理的力を使用することもできる。音波処理の強度及びその長さは、RNAフラグメントのサイズに基づいて選択される。
【0091】
結果
LNCaP細胞のDNA分析及びPCR増幅の感度
標準的条件の下で90%の集密度に至るまでLNCaP細胞の培養を成長させた。細胞をトリプシン処理し、洗浄し、次に血球計算板を用いて計数した。その後、表2に示されているとおりの概略数の細胞を含有するよう細胞を希釈した。その後、メーカーの使用説明書に記述されているようにマスターピュアDNA精製キット(Master Pure DNA Purification Kit)(エピセンター(Epicenter)#MCD85201;ウイスコンシン州マジソン(Madison))を用いて細胞を溶解させ、次に上述の2つのスルホン化方法を用いてDNAを修飾した。
【0092】
細胞数を正確に決定した後、培養を、pH8.0の25μlのT/E中、100、1000、10000及び100,000といった細胞数で1.5ml入りのエッペンドルフ(Eppendorf)遠心分離用チューブへとデュプリケートで分割した。その後、メーカーの使用説明書で記述されている通りにメーカーの使用説明書マスターピュアDNA精製キット(Master Pure DNA Purification Kit)(エピセンター(Epicenter)#MCD85201)により記述されている通りに、細胞について細胞溶解を実施した。
【0093】
DNAをpH8.0のT/E10μlの中に再懸濁させた。その後DNAを、最終体積20μlで37℃で1時間、メーカーの使用説明書に従って1単位のEcoR1(ロッシュ(Roche)#87930626 10単位/μl)で消化した。
【0094】
DNAの従来の重亜硫酸塩処理(クラーク(Clark)ら、1994)を1つのデュプリケートセットについて実施し、その間もう一方のセットについて、DNAのHGS重亜硫酸塩処理を実施した。処理後、DNAをpH8.0のT/E5μl中で再懸濁させた。
【0095】
最終的再懸濁済み試料体積の5分の1体積である、1μlの処理済みDNAについてPCR増幅を実施した。各プライマ6ng/μl、プロメガ(Promega)PCRマスターミックスを用いて、重亜硫酸塩処理済みゲノムDNA1μlを含む25μlの反応混合物内でPCR増幅を実施した。重亜硫酸塩処理済みDNAからのGSTP1の増幅のために用いられるストランド特異的ネステッドプライマは、GST−9(967−993)
TTTGTTGTTTGTTTATTTTTTAGGTTT(配列番号1)(F)GST−10(1307−1332)
AACCTAATACTACCAATTAACCCCAT(配列番号2)第1ラウンド増幅条件である。
【0096】
第1ラウンドの増幅1μlを、プライマ(R)GST−11(999−1027)GGGATTTGGGAAAGAGGGAAAGGTTTTTT(配列番号3)(F)GST−12(1281−1306)ACTAAAAACTCTAAAAACCCCATCCC(配列番号4)(R)を含む第2ラウンドの増幅反応混合物に移した。プライマの場所は、GSTP1配列(受入番号:M24485)に従って示されている。PCR産物の試料を、クラーク(Clark)ら、に記述された条件下でサーモハイバイド(ThermoHybaid)PX2サーマルサイクラの中で増幅させた。
【0097】
アガロース50mlあたり1滴の臭化エチジラム(CLP#5450)を含む1%のTAEの中でアガロースゲル(2%)を調製した。PCR由来の産物5μlを1μlの5×アガロースローディングバッファと混合し、水中水平電気泳動タンクを用いてX1のTAEで125mAで電気泳動に付した。マーカーは低100〜1000bpタイプであった。コダック(Kodak)UVIdocEDAS290システムを用いてUV照射下でゲルを視覚化した。
【0098】
表2は、本発明のHGS方法とクラーク(Clark)らの従来の方法の間のPCR増幅の感度の比較を示す。
【0099】
【表2】

【0100】
重亜硫酸塩処理済みゲノミックDNAの分解に対するpHの効果
2μgのLNCaP DNAを、20μlの最終体積で37℃で1時間メーカーの使用説明書に従って2単位のEcoR1(ロッシュ(Roche)#87930626 10単位/μl)で消化させた。8つの個別の反応を準備した。
【0101】
消化物の各々について、DNAのHGS重亜硫酸塩処理を実施した。処理後、各々の個々の処理からのDNAをpH7.0、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5及び12.5のいずれかで20μlのT/E中に再懸濁させた。
【0102】
その後、以下の方法を用いて、DNAをインキュベートした。
【0103】
処理1.pH10.5の緩衝溶液中にHGS重亜硫酸塩処理済みゲノムDNAを再懸濁させ、30分間37℃に放置し、次にPCR増幅させた。
【0104】
処理2.pH10.5の緩衝溶液中にHGS重亜硫酸塩処理済みゲノムDNAを再懸濁させ、120分間37℃に放置し、次にPCR増幅させた。
【0105】
処理3.pH10.5の緩衝溶液中にHGS重亜硫酸塩処理済みゲノムDNAを再懸濁させ、30分間55℃に放置し、次にPCR増幅させた。
【0106】
アガロース50mlあたり1滴の臭化エチジラム(CLP#5450)を含む1%のTAEの中で1%のアガロースゲルを調製した。ゲノムDNAの試料10μlを1/5体積の5×アガロースローディングバッファ(2μl)と混合し、水中水平電気泳動タンクを用いてX1のTAE中125mAで電気泳動に付した。マーカーは100〜10,000の範囲であった。コダック(Kodak)UVIdocEDAS290システムを用いてUV照射下でゲルを視覚化し写真撮影した。
【0107】
試料についてのPCR分析
以下の通り、1μlの重亜硫酸塩処理済みDNA再懸濁試料DNAについて、PCR増幅を実施した。
【0108】
各プライマ6ng/μl、プロメガ(Promega)PCRマスターミックスを用いて、重亜硫酸塩処理済みゲノムDNA1μlを含む25μlの反応混合物内でPCR増幅を実施した。重亜硫酸塩処理済みDNAからのGSTP1の増幅のために用いられるストランド特異的ネステッドプライマは、GST−9(967−993)TTTGTTGTTTGTTTATTTTTTAGGTTT(F)GST−10(1307−1332)AACCTAATACTACCAATTAACCCCAT第1ラウンド増幅条件である。
【0109】
第1ラウンドの増幅1μlを、プライマ(R)GST−11(999−1027)GGGATTTGGGAAAGAGGGAAAGGTTTTTT(配列番号3);(F)GST−12(1281−1306)ACTAAAAACTCTAAAAACCCCATCCC(R)(配列番号4)を含む第2ラウンドの増幅反応混合物に移した。プライマの場所は、GSTP1配列(受入番号:M24485)に従って示されている。PCR産物の試料を、クラーク(Clark)ら、1994に記述された条件下でサーモハイバイド(ThermoHybaid)PX2サーマルサイクラの中で増幅させた。
【0110】
アガロース50mlあたり1滴の臭化エチジラム(CLP#5450)を含む1%のTAEの中でアガロースゲル(2%)を調製した。PCR由来の産物5μlを1μlの5×アガロースローディングバッファと混合し、水中水平電気泳動タンクを用いてX1のTAEで125mAで電気泳動に付した。マーカーは低100〜1000bpタイプであった。コダック(Kodak)UVIdocEDAS290システムを用いてUV照射下でゲルを視覚化した。
【0111】
結果は表3にまとめられている。表3の結果の第1の目的は、重亜硫酸塩処理済みゲノムDNA溶液のpHが低い場合には標準的PCR方法によって検出できる有意な増幅が全く無いことを実証することにある。これはおそらく、重亜硫酸塩処理済みゲノムDNAの不完全な脱スルホニル化に起因するものと思われる。
【0112】
表3の結果は、重亜硫酸塩処理済みゲノムDNAの脱スルホン化率との関係においてpHと温度の間に動的平衡が存在することを実証している。重亜硫酸塩処理済みゲノムDNAが低pH溶液中に残っている場合には、脱スルホン化率は非常に低いが、溶液の温度を上昇させることにより改善可能である。例えば、pH7.0で重亜硫酸塩処理済みゲノムDNAを有し、それを72℃で加熱し、それを48時間放置すると完全な脱スルホン化を達成することが可能であり得る。類似の要領で、pH10.5で、反応を72℃で5分以内に終了させることができる。かくして、室温から約95℃までの温度の範囲が、本発明にとって適切であり得る。7.0〜12.5までのpH範囲及び約1分から約96時間までのインキュベーション時間が適切であると思われる。pH、時間及び温度のさまざまな考えられる組合せが適切であるということがわかるだろう。
【0113】
さらに、試料が従来の方法で処理された場合には、溶液を脱塩するべくサイズ排除クロマトグラフィカラムを下へ重亜硫酸塩処理済みゲノムDNAが通過させられた時点でDNAの大量損失が存在することになる。先行技術で使用される従来のカラムは一本鎖DNA材料のために設計されておらず、大きな損失があることから、少なくとも50%以上の重亜硫酸塩処理済みゲノムDNAが喪失する確率がきわめて高い。カラム精製の無いHGS手順を使用すると、HGS手順による損失はごくわずかである。
【0114】
【表3】

【0115】
処理1.pH10.5の緩衝溶液中にHGS重亜硫酸塩処理済みゲノムDNAを再懸濁させ、30分間37℃に放置し、次にPCR増幅させた。
【0116】
処理2.pH10.5の緩衝溶液中にHGS重亜硫酸塩処理済みゲノムDNAを再懸濁させ、120分間37℃に放置し、次にPCR増幅させた。
【0117】
処理3.pH10.5の緩衝溶液中にHGS重亜硫酸塩処理済みゲノムDNAを再懸濁させ、30分間55℃に放置し、次にPCR増幅させた。
【0118】
さまざまな細胞系及び組織の重亜硫酸塩処理
以下の細胞系及び組織試料からの1μgのDNAを、20μlの最終体積で37℃で1時間メーカーの使用説明書に従ってデュプリケートで2単位のEcoR1(ロッシュ(Roche)#87930626 10単位/μl)で消化させた:LNCaP前立腺癌細胞系DNA、MCF−7乳癌細胞系DNA、BL−13膀胱癌細胞系DNA、HepG2肝癌細胞系DNA、HeLa子宮癌細胞系DNA、患者#1から精製したT細胞及び患者#1から精製したCD34細胞。
【0119】
DNAのHGS重亜硫酸塩処理を、1セットの消化物について実施した。処理の後、個々の試料の各々からのDNAをpH10.5のT/E20μl中に再懸濁させ、2時間55℃でインキュベートした。もう一方のセットについては従来のDNA重亜硫酸塩処理(クラーク(Clark)ら、1994)を実施し、ここではDNAの修飾後pH8.0のT/E20μl中にそれを再懸濁した。
【0120】
試料についてのPCR分析
従来の及びHGSでの重亜硫酸塩処理が施されたDNAの両方1μlについてPCR増幅を実施した。6つの個々のゲノム遺伝子座を各試料について分析して、HGS及び従来の重亜硫酸塩修飾方法が表わすゲノムカバー度を決定した。
【0121】
第1ラウンドの各々の遺伝子特異的プライマ6ng/μl及びプロメガ(Promega)PCRマスターミックスを用いて、1μlの重亜硫酸塩処理済みゲノムDNAを含む25μlの反応混合物の中でPCR増幅を実施した。第1ラウンドの増幅1μlを、第2ラウンドの遺伝子特異的プライマを含む第2ラウンドの増幅反応混合物に移した。クラーク(Clark)ら、1994中に記述された条件の下でサーモハイバイド(ThermoHybaid)PX2サーマルサイクラの中でPCR産物を増幅した。
【0122】
アガロース50mlあたり1滴の臭化エチジラム(CLP#5450)を含む1%のTAEの中で2%のアガロースゲルを調製した。PCR由来の産物の5μlアリコートを1μlの5×アガロースローディングバッファと混合し、水中水平電気泳動タンクを用いてX1のTAE中125mAで電気泳動に付した。マーカーは低100〜1000bpタイプであった。コダック(Kodak)UVIdocEDAS290システムを用いてUV照射下でゲルを視覚化した。
【0123】
HGS重亜硫酸塩方法で処理されたゲノムDNAを、GSTP1遺伝子を検出するように設計されたプライマで従来のPCR技術を用いて増幅させた。先行技術の方法と本発明に従った方法の間の比較の結果は表4に記されている。
【0124】
【表4】

【0125】
表4の組織試料は以下の通りである:
a) LNCap前立腺癌細胞系DNA
b) MCF−7乳癌細胞系DNA
c) HepG2肝癌細胞系DNA
d) HeLa子宮頸癌細胞系DNA
e) 患者#1から精製されたT細胞
f) 患者#1から精製されたCD34細胞
【0126】
図1は、HGS重亜硫酸塩方法と従来の重亜硫酸塩方法(クラーク(Clark)ら、1994)の間のさまざまな組織試料からの重亜硫酸塩処理済みDNAの回収の比較を示す。ウェル#1は、2LNCaP細胞から抽出され重亜硫酸塩で処理されたDNA。ウェル#2は、20LNCaP細胞から抽出され重亜硫酸塩で処理されたDNA。ウェル#3は、200LNCaP細胞から抽出され重亜硫酸塩で処理されたDNA。ウェル#4は、2,000LNCaP細胞から抽出され重亜硫酸塩で処理されたDNA。そしてウェル#5は、20,000LNCaP細胞から抽出され重亜硫酸塩で処理されたDNA。
【0127】
図1を見るとわかるように、本発明に従った方法を用いたDNAの回収は、先行技術の方法のものよりもはるかに優れている。
【0128】
RNA結果
図2は、従来の重亜硫酸塩アプローチを用いた場合に比べた前立腺癌細胞系Du145から抽出されたRNAについてHGS重亜硫酸塩処理を用いて得られた結果を示している。
【0129】
ここでわかるように、4℃、室温及び55℃でHGS方法で処理した全ての試料中で、高分子量のRNAが観察された。23S、18S及び5SリポゾームRNAバンドは明確に見え、対照に比べた場合RNAの分解がきわめてわずかしかないこともわかる。これとは対照的に、従来の方法で処理したRNAは、完全に分解されていた。
【0130】
図3は、異なる温度のインキュベーションを用いたRNAの安定性に関する経時的実験を示している。結果から、最初の30分間のインキュベーションにおいて少量の分解が発生するがそれからほぼ定常状態に達し、その後55℃で16時間のインキュベーションの後でさえ、損失はきわめてわずかであるということがわかる。
【0131】
図4は、重亜硫酸塩で変換されたRNAと野生型RNAの両方について実施された逆転写酵素PCRを示す。ここでわかるように、野生型RNA内のバンドと同じサイズで重亜硫酸塩処理済みRNA内に強いPCR増幅シグナルが見うけられる。
【0132】
野生型プライマを用いたRT−PCRのための鋳型として重亜硫酸塩処理済みRNAが使用された場合、又は重亜硫酸塩で変換されたプライマのRT−PCRのための鋳型として野生型RNAが使用された場合、いかなるバンドも検出されなかった。このことは、重亜硫酸塩反応がほぼ100%の効率で野生型RNAを変換済みRNAへと変換したことを表わしている。
【0133】
図5は、図4で生成されたPCR産物が重亜硫酸塩処理済みゲノムRNAから誘導されたことの確認を示している。矢印は、ヒトベータ−アクチン転写物内のエクソン3及び4の間のスプライス部位を示す。
【0134】
当業者であれば、広義に記述されているような発明の精神又は範囲から逸脱することなく、特定の実施形態の中に示されている通りの発明に対し数多くの変更及び/又は修正を加えることができる、ということがわかるだろう。従って当該実施形態は、あらゆる面で制限的な意味のない例示を目的としたものとしてみなされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】HGS重亜硫酸塩方法と従来の重亜硫酸塩方法(クラーク(Clark)ら(1994)Nucleic Acids Res.、22:2990−2997)の間のさまざまな組織試料からの重亜硫酸塩処理済みDNAの回収の比較を示す。ウェル#1は、2LNCaP細胞から抽出され重亜硫酸塩で処理されたDNA。ウェル#2は、20LNCaP細胞から抽出され重亜硫酸塩で処理されたDNA。ウェル#3は、200LNCaP細胞から抽出され重亜硫酸塩で処理されたDNA。ウェル#4は、2,000LNCaP細胞から抽出され重亜硫酸塩で処理されたDNA。そしてウェル#5は、20,000LNCaP細胞から抽出され重亜硫酸塩で処理されたDNA。HGS方法は、左側(前述の通り、それぞれ1〜5と印づけされたレーン)に示され、従来の重亜硫酸塩方法は右側(上述の通りそれぞれ1〜5と印づけされたレーン)に示されている。
【図2】従来の重亜硫酸塩アプローチを用いた場合に比べた前立腺癌細胞系Du145から抽出されたRNAについてHGS重亜硫酸塩処理を用いて得られた結果を示している。レーン1:未処理対照RNA。レーン2:一晩4℃での重亜硫酸塩処理済みRNA。レーン3:一晩室温での重亜硫酸塩処理済みRNA。レーン4:一晩55℃での重亜硫酸塩処理済みRNA。レーン5:一晩室温での重亜硫酸塩処理済みRNA、複製#2。レーン6:一晩室温での重亜硫酸塩処理済みRNA、複製#3。レーン7:従来の方法(クラーク(Clark)ら、1994)を用いた一晩室温での重亜硫酸塩処理済みRNA。M=分子サイズマーカー。
【図3】異なる温度のインキュベーションを用いたRNAの安定性に関する経時的実験を示している。結果から、最初の30分間のインキュベーションにおいて少量の分解が発生するがそれからほぼ定常状態に達し、その後55℃で16時間のインキュベーションの後でさえ、損失はきわめてわずかであるということがわかる。
【図4】重亜硫酸塩で変換されたRNAと野生型RNAの両方について実施された逆転写酵素PCRを示す。ここでわかるように、野生型RNA内のバンドと同じサイズで重亜硫酸塩処理済みRNA内に強いPCR増幅シグナルが見うけられる。レーン1:重亜硫酸塩処理済みヒトベータ−アクチンRNAのエクソン3及び4を増幅するための重亜硫酸塩プライマを用いたRT−PCR増幅。レーン2:重亜硫酸塩処理済みヒトベータ−アクチンRNAのエクソン3を増幅するための重亜硫酸塩プライマを用いたRT−PCR増幅。レーン3:ヒトベータ−アクチンRNAのエクソン3及び4を増幅するための野生型プライマを用いたRT−PCR増幅。レーン4:ヒトベータ−アクチンRNAのエクソン3を増幅するための野生型プライマを用いたRT−PCR増幅。(注):野生型RNAについて重亜硫酸塩処理済み増幅プライマが使用された場合いかなるPCR増幅も観察されず、さらに重亜硫酸塩処理済みRNAについて野生型プライマが使用された場合、いかなるPCRシグナルも観察されなかった。
【図5】図4で生成されたPCR産物が重亜硫酸塩処理済みゲノムRNAから誘導されたことの確認を示している。矢印は、ヒトベータ−アクチン転写物の中のエクソン3及び4の間のスプライス部位を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸を処理する方法において、
(a)核酸試料に対し変性環境を提供する工程;
(b)重亜硫酸塩試薬と前記核酸試料を反応させ、該反応物をインキュベートして、前記核酸試料中のメチル化されたヌクレオチドは変換されず、非メチル化ヌクレオチドは別の形態に変換された、処理済み核酸試料を形成する工程;
(c)核酸沈殿工程に実質的に影響を与えないレベルまで塩濃度を低減させるために、前記処理済み核酸試料を希釈する工程;
(d)前記処理済み核酸試料から不要な試薬又は希釈剤を全て実質的に除去するために、前記希釈した処理済み核酸を沈殿させる工程;及び
(e)スルホン酸塩基を実質的に含まない核酸試料を得るために、前記処理済み核酸上に存在するスルホン酸塩基を除去するように前記沈殿した処理済み核酸の脱スルホン化を行う工程を含む、方法。
【請求項2】
前記試料中の前記出発核酸の約50%以上が維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記試料中の前記出発核酸の約75%以上が維持される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記試料中の前記出発核酸の約95%以上が維持される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
(f)前記処理済み核酸試料を加工又は分析する工程、
をさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記試料がDNAを含む、前記試料がRNAを含む、又は前記試料がDNA及びRNAの両方の組合せを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記試料が、組織、器官、細胞、微生物、生体試料又は環境試料から調製される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
反応容器の中で実施される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記反応容器が、チューブ、プレート、キャピラリー、ウェル、遠心分離用チューブ、マイクロフュージ管、スライド、カバースリップ及び表面からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記重亜硫酸塩試薬がメタ重亜硫酸ナトリウムである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記変性環境が、アルカリを添加することによって試料に提供される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記アルカリが、NaOH、KOH又はヒドロキシル基を提供するあらゆる化合物又は作用物質である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記変性環境が、加熱することにより前記試料に提供される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記加熱が約95℃までである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記加熱が50℃〜70℃である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記提供工程(a)が、前記重亜硫酸塩反応を増強可能な添加剤の存在下で実施される、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記添加剤が、キノール、尿素、メトキシアミン及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記反応工程(b)の結果として、メチル化シトシンは変換されず、非メチル化シトシンがウラシルに変換される、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記希釈工程(c)が、約0.5M未満まで塩濃度を低減させるように水を用いて行われる、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記沈殿がアルコール沈殿剤を用いて行われる、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記アルコール沈殿剤がイソプロパノール、エタノール、ブタノール、メタノール及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記アルコールがイソプロパノールである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記脱スルホン化工程(d)が、緩衝液又はアルカリ試薬で約pH12.5まで前記沈殿した処理済み核酸を調整することによって行われる、請求項1〜22のいずれかに1項に記載の方法。
【請求項24】
前記pHが約10.5に調整される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
試薬を収容した容器及び前記試薬を使用するための説明書を含む、請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法を実施するためのキット。
【請求項26】
前記試薬が、希釈剤、重亜硫酸塩試薬及びアルカリを含む、請求項25に記載のキット。
【請求項27】
前記重亜硫酸塩試薬がメタ重亜硫酸ナトリウムである、請求項26に記載のキット。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−524992(P2006−524992A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504025(P2006−504025)
【出願日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【国際出願番号】PCT/AU2004/000549
【国際公開番号】WO2004/096825
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(505188906)ヒューマン ジェネティック シグネチャーズ ピーティーワイ リミテッド (15)
【Fターム(参考)】