説明

核酸の検出方法

本明細書には、マイクロRNAを含む標的核酸を検出、増幅および標識するための方法ならびに組成物が記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、マイクロRNAを含む核酸分子を検出、増幅および標識するための方法ならびに組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の核酸配列の同定および定量は、過去20年以上に渡って分子生物学の重要な分野である。発現プロファイルは、特定の核酸配列の同定および定量の分野において現在詳細に研究されている。特定の核酸およびその産物を同定、定量する能力は、個別化された医療および薬物耐性の評価といった広範囲の領域を進歩させた。
【0003】
特定の核酸配列を同定および定量するための種々の方法について多くのことが解明されてきたが、これらの方法は、核酸配列中の小さな変異を同定するための正確さおよび厳格さを欠くものであり、頻繁に偽陽性を生じ、これらの方法を広範囲に応用することができなかった。また、特定の一塩基多型を有する標的核酸を同定する方法は、標的核酸に類似する配列を有する核酸等の他の核酸によるバックグラウンドが高い状態でこれらの標的核酸が存在する場合には、効果的ではないことが証明されている。プローブ設計は、一度に同定可能である種々の変異性核酸の数を制限し、既知の核酸によるバックグラウンドの調節を必要とする。マイクロRNA(miRNA)等の特定の核酸変異体を検出するためのリアルタイムPCR等の方法と関連したプローブは、RTプライマーへの非特異的結合が起こり、標的配列への十分な感度を欠くため、問題が生じる場合がある。
【0004】
miRNAは、遺伝子制御に関与する約22ヌクレオチドからなる短鎖RNAオリゴヌクレオチドである。miRNAは、mRNAにターゲッティングして切断または翻訳抑制することにより遺伝子発現を調節する。疾患の発生と進行におけるmiRNAの役割は、最近になってようやく理解され始めてきた。調節解除されたmiRNAの発現は、これらに限定されないが、胚の奇形や癌といった種々の疾患の発症および進行と関連している。
【0005】
miRNAは、そのサイズが小さいため、標準的な方法では同定することが困難であった。大量のRNAを抽出しても、同定されるmiRNAの数は限定的なものであった。外見から識別可能な表現型の提示に貢献するmiRNAも同定されている。発現アレイのデータによれば、miRNAは、種々の発生段階または種々の組織で発現することが示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さらに、これらを種々の疾患の治療と診断に広範囲に利用できる可能性から、当該技術分野では、miRNAを同定、単離、定量する方法を開発する必要性がある(未だ満たされていない)。本発明は、最小量の出発物質しかないような試料等の、種々の試料由来のmiRNAを単離、定量するための効率的で高感度な方法および組成物を開示することにより、上記の必要性に取り組むものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
標的核酸の検出方法が提供される。この方法は、標的核酸を含む試料を提供すること、および前記標的核酸をプローブと接触させることを含むことができ、ここで前記標的核酸は第1の部分および第2の部分を含む。前記プローブは、前記標的核酸の第1の部分と相補的な第1の部分、および前記標的核酸の第2の部分と実質的に相補的な第2の部分を含むことができる。標的核酸へのプローブ結合レベルをコントロールと比較し、試料中に存在する標的核酸のレベルの指標とすることができる。
【0008】
1以上の他の核酸の中から標的核酸を検出する方法も提供される。この方法は、標的核酸および同胞核酸(sibling nucleic acid)を含む試料を提供することを含むことができる。ここで、前記標的核酸は第1の部分および第2の部分を含み、前記同胞核酸は第1の部分および第2の部分を含む。前記方法は、さらに前記標的核酸をプローブと接触させることを含むことができる。前記標的核酸の第1の部分と前記同胞核酸の第1の部分は、実質的に同一である。前記同胞核酸の第1の部分は、前記プローブの第1の部分と実質的に相補的である。前記同胞核酸の第2の部分は、前記プローブの第2の部分と実質的に相補的である。前記標的核酸へのプローブ結合レベルをコントロールと比較し、これを試料中に存在する標的核酸のレベルの指標とすることができる。
【0009】
試料中の複数の標的核酸を検出する方法も提供される。各標的核酸は第1の部分および第2の部分を含むことができる。この方法は、複数の標的核酸を含む試料を提供すること、および前記標的核酸を複数のプローブと接触させることを含むことができる。前記試料は、複数の同胞核酸を含むことができる。各プローブは、試料中の同胞核酸から標的核酸を区別することを可能とする。各同胞核酸は、第1の部分および第2の部分を含む。同胞核酸の第1の部分は、前記同胞核酸の第1の部分と実質的に相補的である。前記方法の各プローブは、標的核酸のうちの1つの第1の部分と相補的な第1の部分、および標的核酸のうちの1つの第2の部分に実質的に相補的な第2の部分を含むことができる。各標的核酸への各プローブの結合レベルをコントロールと比較し、これを試料中に存在する各標的核酸のレベルの指標とすることができる。
【0010】
1以上の他の同胞核酸の中から標的核酸を検出する方法も提供される。この方法は、第1の部分および第2の部分を含む標的核酸を含む試料を提供すること、およびこの試料を、第1の部分および第2の部分を含むプローブと接触させることを含むことができる。前記標的核酸の第1の部分は、変異部位を含むことができる。前記同胞核酸も、第1の部分および第2の部分を含むことができる。前記同胞核酸の第1の部分も、変異部位を含むことができる。前記標的核酸の変異部位と前記同胞核酸の変異部位との違いは、わずか1ヌクレオチドであってもよい。前記プローブの第1の部分は、前記標的核酸の変異部位と相補的であるが前記同胞核酸の変異部位とは相補的ではない検出部位を含んでいてもよい。プローブは、前記標的核酸および同胞核酸の両方の第2の部分と実質的に相補的な第2の部分に、増感部位を含むことができる。前記プローブにより、低濃度から高濃度の範囲の実質的に同一な他の同胞核酸の多様なバックグラウンド中での標的核酸を特異的に検出することを可能にすることができる。
【0011】
前記方法の標的核酸は、mRNA、miRNA、pri−mRNA、pre−mRNA、siRNA、anti−miRNA、DNAまたはcDNAであってもよい。標的核酸は、細菌、ウィルス、動物またはヒトから単離することができる。標的核酸は増幅してもよい。標的核酸の増幅は、フォワードプライマーおよびリバースプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応により行うことができる。ここで、前記フォワードプライマーは、配列番号:4168〜8334のいずれか1つからなる群から選択される配列を含むことができる。前記方法のプローブは標識を含んでいてもよく、この標識はフルオロフォアであってもよい。前記標識は、さらにクエンチャー分子を含んでいてもよい。前記フルオロフォアは、クエンチャー分子の遠位にあってもよい。前記プローブは、配列番号:8335〜20835のいずれか1つからなる群から選択される配列を含むことができる。前記方法の試料は、生体試料であってもよい。この生体試料は、血液、血液画分、羊水、尿、腹水、唾液、脳脊髄液、子宮頸管分泌物、膣分泌物、子宮内膜分泌物、消化管分泌物、気管支分泌物、痰、胸水、胸部からの分泌物、卵巣嚢胞からの分泌物、精液、株化細胞および組織試料からなる群から選択できる。
【0012】
疾患または健康状態の検出方法も提供される。この方法は、試料を提供することを含むことができ、前記試料は標的核酸および同胞核酸を有する。前記方法は、さらに標的核酸をプローブと接触させることを含むことができる。前記方法は、コントロールに対する標的核酸レベルの差を測定することを含むことができ、疾患もしくは健康状態、またはウィルスもしくは細菌の感染の有無の指標になる。前記疾患または健康状態は、癌、HIV、B型肝炎またはヒトパピローマウィルスの感染であってもよい。
【0013】
個人の遺伝子型同定方法も提供される。この方法は、試料を提供することを含むことができ、ここで前記試料は標的核酸および同胞核酸を有する。この方法は、さらに標的核酸をプローブと接触させることを含むことができる。前記方法は、また、コントロールに対する標的核酸のレベルの差を測定することを含むことができ、この差は個人の遺伝子型の指標になる。
【0014】
被験者から得られる体液試料中のマイクロRNA発現を同定する方法も提供される。この方法は、前記試料からのRNAを提供することを含むことができ、前記RNAはマイクロRNAを含む。前記方法はさらにポリアデニル化RNAの逆転写産物を生成すること、ならびにフォワードプライマー、リバースプライマーおよびプローブを含むポリメラーゼ連鎖反応により前記逆転写産物を増幅することを含むことができる。前記体液試料は、血液、血清、尿、羊水、腹水、唾液、子宮頸管分泌物、膣分泌物、子宮内膜分泌物、消化管分泌物、気管支分泌物、痰、胸水、胸部からの分泌物、卵巣嚢胞からの分泌物および精液からなる群から選択される。
【0015】
前記フォワードプライマーは、配列番号:4168〜8334のいずれか1つからなる群から選択される配列を含むことができる。前記プローブは、配列番号:8335〜20835のいずれか1つからなる群から選択される配列を含むことができる。
【0016】
バイオチップも提供される。このバイオチップは、複数のプローブを含むことができる。前記プローブは、ネガティブプローブ、ポジティブプローブ、スパイクプローブおよびテストプローブを含むことができる。ネガティブプローブは、miRNA*と実質的に相補的な核酸を含むことができる。前記核酸の配列は、配列番号:20863〜20925のいずれか1つからなる群から選択できる。ポジティブプローブは、低分子RNAと実質的に相補的な核酸を含むことができる。前記核酸の配列は、配列番号:20926〜20937のいずれか1つからなる群から選択できる。スパイクプローブは、ゲノム中の60ヌクレオチドからなるいずれの配列とも相補的ではない配列を有する核酸を含むことができ、このゲノムは、ヒト、ラット、ウィルスまたはマウスのものであってもよい。前記核酸の配列は、配列番号:20938〜20951のいずれか1つからなる群から選択できる。
【0017】
テストプローブは、40〜60個のヌクレオチドを含むことができる。テストプローブは、miRNAと実質的に相補的な核酸を含むことができる。前記核酸は、16〜29個のヌクレオチドを含むことができる。前記核酸の配列は、配列番号:1〜4167のいずれか1つからなる群から選択できる。テストプローブは、リンカーを含むことができる。リンカーは、核酸を含むことができ、この核酸の配列は、配列番号:20952〜21063のいずれか1つからなる群から選択できる。核酸の検出方法も提供することができる。生体試料も提供することができる。前記バイオチップは、前記生体試料と接触させてもよい。核酸のレベルを測定することもできる。コントロールと比較した前記核酸のレベルの差は、前記生体試料において検出される核酸の指標とすることができる。前記核酸は、pri−miRNA、pre−miRNAまたはmiRNAであってもよい。前記核酸は、フルオロフォアで標識されていてもよい。
【0018】
マイクロRNA(miRNA)の直接的かつ強力な標識方法も提供される。Luminex技術によるmiRNAの相対レベルを検出、測定する方法、およびこの検出方法をキャリブレーションする方法も提供される。Luminexにより、「溶液系バイオチップ」法が提供される。本明細書に記載される方法は、他の類似するプラットホームにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、TaqMan miRNAアッセイの説明図である。miRNAのTaqMan系リアルタイム定量には、ステム−ループ逆転写(RT)およびリアルタイムPCRの2つの工程が含まれる。ステム−ループRTプライマーは、miRNA分子の3’部分に結合し、逆転写酵素により逆転写される。次いで、RT生成物が、miRNA特異的フォワードプライマー、リバースプライマーおよび色素標識TaqManプローブを含む、従来のTaqMan PCR法により定量される。5’末端の末端付加フォワードプライマーの目的は、miRNA分子の配列組成に依存する融解温度(Tm)を上昇させることである。
【図2】図2は、Shi and Chiang(2005)の方法の略図である。全RNAを抽出後、ポリアデニル化反応が行われる。次に、特異的末端に連結したポリ(T)アダプターを用いて反応生成物を逆転写してcDNAを作製する。この段階の後、フルオロフォアとしてSYBR Greenを用いてリアルタイムPCRを行い、生成物の蓄積が定量される。
【図3】図3は、本発明により提供される検出方法の略図である。この例における標的miRNAは、ヒトlet−7aファミリーに由来する。
【図4】図4は、本発明により提供される別の検出方法の略図であり、ここでは、ポリアデニル化された標的核酸の逆転写の際にアダプターにより導入された配列とプローブとの間に塩基ミスマッチが存在する。この例における標的miRNAは、ヒトlet−7aファミリーに由来する。
【図5】図5は、標的核酸の検出方法の略図である。3つの核酸が示されており、各核酸は、第1の部分(「1」で示される)、および第2の部分(「2」で示される)を含む。標的核酸は文字Tで示され、プローブは文字Pで示され、同胞核酸は文字Sで示される。2つの核酸部分の間の直線状の矢印は、これら2つの部分の配列が同一または相補的であることを示す。2つの部分の間の破線状の矢印は、これら2つの部分の配列が実質的に同一または実質的に相補的であることを示す。標的核酸および同胞核酸の第1の部分は実質的に同一であるが、標的核酸および同胞核酸の第2の部分は同一である。プローブおよび標的核酸の第2の部分は実質的に相補的であり、プローブおよび同胞核酸の第2の部分においても同様である。プローブの第1の部分は、標的核酸の第1の部分と同一であるが同胞核酸とは実質的に相補的であるに過ぎないので、このような実質的な相補性により、プローブは同胞核酸から標的核酸を区別することができる。
【図6】図6は、5種類の異なったスパイクを、濃度を段階上昇させながら用いて測定されたLuminexアッセイの感度を示す。標識にはULS技術を用いて行い、ビーズのカップリングにはAmbion社製プローブセットを用いた。この系は、0.06 fmolのmiRNAまでを感知し、2オーダーの範囲で直線性を有することが分かる。結果は、対数スケールで表す。
【図7】図7は、異なる濃度のビオチン標識スパイクを用いて測定されたアッセイの感受性を示す。Exiqon LNAプローブセットをビーズのカップリングに用いた。この系は、0.1 fmolのmiRNAまでを感知し、試験した全範囲において、最大で10 fmolまで直線性を示すことが分かる。結果は、対数スケールで表す。
【図8】図8は、標識され、種々のLet−7ファミリーメンバーとカップリングしたビーズの混合物とハイブリダイズしたlet−7a合成miRNAを用いて試験された特異性を示す。この系の特異性は、配列間の類似性、ミスマッチの数、ミスマッチの配列における位置およびミスマッチの特性(どのヌクレオチドが変化しているか)に比例相関する。
【図9】図9は、ハイブリダイゼーション温度を上昇させながら行った図8と同様の特異性試験を示す。ハイブリダイゼーション温度を上昇させることで非特異的なlet−7c結合が著しく減少するが、特異的シグナルは僅かな影響しか受けない。
【図10】図10は、標識およびハイブリダイゼーションの再現性を示す。ヒトの胎盤RNAを2つの個別の実験で標識し、ハイブリダイズした。
【図11】図11は、100種類のmiRNAセットの発現プロファイルを示す。新鮮な組織から単離したヒト脳および胎盤RNAを標識し、LNA修飾プローブを有するカップルビーズとハイブリダイズした。脳または胎盤に特異的なmiRNAが検出され、これらを図に示す。結果は、対数スケールで表す。
【図12】図12は、100種類のmiRNAセットの発現プロファイルを示す。新鮮な組織から単離したヒト脳および胎盤RNAを標識して、Ambion プローブセット由来の非修飾プローブを有するカップルビーズとハイブリダイズした。脳または胎盤に特異的なmiRNAが検出され、これらを図に示す。結果は、対数スケールで表す。
【図13】図13は、miRNAの発現差異差次的発現を示す。ホルマリン固定してパラフィン包埋した(a)肺の正常組織および腫瘍組織、ならびに(b)膀胱の正常組織および腫瘍組織からRNAを抽出した。miRNAの発現プロファイリングは先の記載と同様に行った。差次的に発現するmiRNAは、グラフ上にマークされている。結果は、対数スケールで表す。
【図14】図14は、2種類のビオチン標識スパイクに対して行ったチラミドシグナル増幅(TSA)反応を示し、一方は濃度を上昇させ(C1)、もう一方は一定の濃度(C2)で行った。TSA有りまたはTSA無しでの両シグナルの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
表1は、全生物種由来のSanger Institute miRBase Sequence Databaseのrelease 8.2に示される全miRNAの検出に要する配列を示す。この表の欄は以下の通りである。「miRNA名」は、標的核酸であるSanger miRNAを示す。「生物種」は、そのmiRNAが発見された生物種名を示す。「MID」は、miRNAの配列番号を示す。「FD−P」は、標的核酸の増幅に用いたフォワードプライマーの配列番号を示しており、このプライマーの配列は、miRNAの最初の(miRNAの5’末端から)16ヌクレオチドおよび5’オーバーハング末端(CAGTCATTTGGG;配列番号:20839)を含む。「プローブ1」は、標的核酸、フォワードプライマーおよびリバースプライマーを含むポリメラーゼ連鎖反応で用いたプローブの配列番号を示し、このプローブの配列は、miRNAの3’末端と相補的な8個のヌクレオチド、および事前の標的miRNA逆転写時に付加されるアダプター配列と相補的な15個のヌクレオチドを含む。アダプター配列に相補的な15個のヌクレオチドは、5’−CCGTTTTTTTTTTTT−3’(配列番号:20845)である。「プローブ2」は、「プローブ1」と類似するが、miRNAの5’末端に対してヌクレオチド1つ分だけシフトした点のみにおいてプローブ1とは異なるプローブの配列番号を示す。「プローブ3」は、「プローブ2」と類似するが、miRNAの5’末端に対してヌクレオチド1つ分だけシフトした点のみにおいてプローブ2とは異なるプローブの配列番号が示されている。
【0021】
本明細書においては、標的核酸の検出方法が提供される。この方法は、標的核酸を、該標的核酸に対して少なくとも1つのミスマッチを有するプローブと接触させることを含む。このミスマッチにより、プローブが、標的核酸と実質的に同一であるがわずか1ヌクレオチドだけ標的核酸と異なるような別の核酸から標的核酸を区別することを可能とすることができる。プローブが他の実質的に同一な核酸から標的核酸を区別する能力は、プローブと他の実質的に同一な核酸との間にある少なくとも1つの付加的なミスマッチの存在に起因する場合がある。前記方法により、低濃度から高濃度に存在する実質的に同一な他の核酸の多様なバックグラウンド中で標的核酸を特異的に検出することを可能にすることができる。
【0022】
また、とりわけ診断および予後診断目的に有用であり得る方法ならびに組成物も提供される。
【0023】
本発明のその他の態様は、本発明に関する以下の記載により当業者に明らかなものとなるであろう。
【0024】
1.定義
本発明の材料および方法を開示、記載する前に、本明細書で使用する用語が特定の形態のみを記載することを目的としており、何らの制限を設けることも意図していないことが理解されるべきである。本明細書および添付する請求の範囲で使用する場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」という単数形には、他に明確に記載のない限り、複数の指示対象も含まれることに留意すべきである。本明細書における数値範囲の記載については、各数値間にある各数値も同様の正確さを有することは明確に意図されている。例えば、6〜9の範囲であれば、6および9に加えて、7および8の数値も意図されており、6.0〜7.0の範囲であれば、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9および7.0の数値も明確に意図される。
【0025】
a.動物
本明細書で用いられる「動物」は、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、ならびにマウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ネコ、イヌ、ウシ、類人猿およびヒト等の哺乳類を意味する場合がある。
【0026】
b.anti−miRNA
本明細書で用いられる「anti−RNA」とは、例えばpri−miRNA、pre−miRNA、miRNAもしくはmiRNA*に結合すること(例えば、アンチセンスまたはRNAサイレンシング)、または標的結合部位に結合することにより、miRNAまたはmiRNA*の活性を阻害することができるRNAである。anti−miRNAは、合計5〜100個または10〜60個のヌクレオチドを含むことができる。また、anti−miRNAは、少なくとも合計5〜40個のヌクレオチドを含むことができる。anti−miRNAの配列は、(a)miRNAに結合してその活性を抑制する目的で、miRNAの5’側に実質的に相補的な少なくとも5個のヌクレオチド、およびmiRNAの5’末端の標的部位の隣接領域と実質的に同一な少なくとも5〜12個のヌクレオチド、または(b)miRNAが標的に結合する能力を阻害する目的で、miRNAの3’側と実質的に同一な少なくとも5〜12個のヌクレオチド、およびmiRNAの3’末端の標的部位の隣接領域と実質的に相補的な少なくとも5個のヌクレオチドを含むことができる。
【0027】
anti−miRNAの配列は、その内容が本明細書に組み込まれている米国特許出願第11/384,049号、第11/418,870号または第11/429,720号に開示されるanti−miRNAの配列、またはその変異体を含むことができる。
【0028】
c.付着
本明細書で用いられる、プローブまたは固相担体に関する「付着」または「固定化」は、プローブと固相担体との間の結合が、結合、洗浄、解析および除去の条件下で十分に安定であることを意味する場合がある。前記結合は、共有結合でも非共有結合でもよい。共有結合は、プローブと固相担体との間に直接形成されてもよく、架橋剤または固相担体もしくはプローブのいずれか、またはその両方の分子上に特定の反応基を含ませることにより形成することができる。非共有結合は、静電的相互作用、親水性相互作用および疎水性相互作用の1種以上であってもよい。非共有結合には、ストレプトアビジン等の分子の担体への共有結合、およびビオチン標識プローブのストレプトアビジンへの非共有的結合が含まれる。固定化には、共有結合相互作用と非共有結合相互作用との組合せも含むことができる。
【0029】
d.生体試料
本明細書で用いられる「生体試料」とは、核酸を含む生体組織または体液の試料を意味する場合がある。このような試料には、これらに限定されないが、動物から単離された組織または体液が含まれる。生体試料は、生検試料および剖検試料等の組織切片、組織学的目的で採取された冷凍切片、毛髪および皮膚も含むことができる。生体試料には、動物組織もしくは患者組織由来の外植片、ならびに初代培養細胞および/または形質転換培養細胞も含まれる。生体試料は、血液、血液画分、血漿、血清、尿、胸水、粘液、腹水、羊水、大便、涙、唾液、脳脊髄液、子宮頸管分泌物、膣分泌物、子宮内膜分泌物、消化管分泌物、気管支分泌物、痰、卵巣嚢胞からの分泌物、精液、胸部からの分泌物、株化細胞または組織試料であってもよい。生体試料は、動物から細胞試料を取り出すことにより提供される得るが、既に単離された(例えば、別の人物により、別の時間に、および/または別の目的で単離された)細胞を用いること、または本明細書に記載する方法をin vivoで行うことによっても得ることができる。処置された、または転帰歴を有する組織等の保存用組織(例えば、ホルマリン固定されてパラフィン包埋された(FFPE)組織)を用いることもできる。
【0030】
e.相補
本明細書で用いられる、核酸に関する「相補」または「相補的」とは、ヌクレオチド間または核酸分子のヌクレオチド類似体間でのWatson−Crick塩基対(例えば、A−T/UおよびC−G)またはHoogsteenの塩基対を意味する場合がある。
【0031】
f.検出
「検出」とは、試料中のある成分の存在を検出することを意味する場合がある。また、検出とは、ある成分が存在しないことを検出することを意味する場合もある。また、検出とは、ある成分のレベルを、定量的または定性的に測定することを意味する場合もある。
【0032】
g.差次的発現
「差次的発現」とは、細胞内および組織内、ならびに細胞間および組織間における、時間的遺伝子発現パターンおよび/または細胞内遺伝子発現パターンの定性的差異または定量的差異を意味する場合がある。したがって、差次的に発現する遺伝子は、例えば正常組織対疾患組織の比較で、活性化または不活性化のようにその発現が定性的に異なりうる。遺伝子は、他の状態と比べて、ある状態において発現がオンまたはオフになることができ、2以上の状態を比較することが可能となる。定性的に制御された遺伝子は、ある状態または細胞種の範囲内で発現パターンを示すことができ、これは標準的技術により検出することができる。ある遺伝子は、ある状態またはある細胞種で発現するが、両方では発現されない場合がある。また、例えば、発現増加して転写産物量が増大したり、発現減少して転写産物量が減少したりするように発現調節されて、発現の差異が定量性を示す場合もある。発現の差異の程度は、発現アレイ、定量的逆転写酵素PCR、ノーザン解析、リアルタイムPCR、およびRNase保護等の標準的な評価技術により定量できる程度であればよい。
【0033】
h.遺伝子
本明細書で用いられる「遺伝子」とは、転写制御配列および/または翻訳制御配列、および/または翻訳領域、および/または非翻訳配列(例えば、イントロン、5’および3’非翻訳配列)を含む天然遺伝子(例えば、ゲノム)または合成遺伝子であってもよい。遺伝子の翻訳領域は、アミノ酸配列またはtRNA、rRNA、触媒RNA(catalytic RNA)、siRNA、miRNA、アンチセンスRNA等の機能的RNAをコードするヌクレオチド配列であってもよい。遺伝子は、任意に5’もしくは3’非翻訳配列を連結した形で含む、翻訳領域(例えば、エクソンやmiRNA)に相当するmRNAまたはcDNAであってもよい。遺伝子は、in vitroで生成され、翻訳領域および/またはこれに連結した5’もしくは3’非翻訳配列の全部または一部を含む、増幅された核酸分子であってもよい。
【0034】
i.グルーブバインダー/マイナーグルーブバインダー(MGB)
「グルーブバインダー(groove binder)」および/または「マイナーグルーブバインダー(minor groove binder)」は互換性を持って使用することができ、二本鎖DNAの副溝に、通常は配列特異的に適合する低分子を指す。マイナーグルーブバインダーは、半月状の形状をとることができる長く平らな分子であってもよく、しばしば水分子と置換して、二重螺旋の副溝にちょうど適合する。マイナーグルーブバインダー分子は、通常、フラン環、ベンゼン環またはピロール環等のねじれの無い結合により連結された複数の芳香族環を含むことができる。マイナーグルーブバインダーは、ネトロプシン、ジスタマイシン、ベレニル(berenil)、ペンタミジン、およびその他の芳香族ジアミジン等の抗生物質、Hoechst 33258、SN 6999、クロモマイシンおよびミトラマイシン等のオーレオリン系抗腫瘍薬、CC−1065、ジヒドロシクロピロロインドールトリペプチド(DPI3)、1,2−ジヒドロ−(3H)−ピロロ[3,2−e]インドール−7−カルボキシレート(CDPI3)、ならびにその内容が参照により本明細書に組み込まれているNucleic Acids in Chemistry and Biology, 2d ed., Blackburn and Gait, eds., Oxford University Press, 1996およびPCT国際公開公報03/078450に記載されるような関連化合物および類似体であってもよい。マイナーグルーブバインダーは、プライマー、プローブ、ハイブリダイゼーションタグ相補体、またはこれらの組合せの成分であってもよい。マイナーグルーブバインダーは、結合するプライマーまたはプローブのTmを上昇させるので、これらのプライマーおよびプローブを高温でも効果的にハイブリダイズさせることができる。
【0035】
j.同一性
本明細書において、二以上の核酸またはポリペプチド配列の関係における「同一」または「同一性」は、これらの配列が、特定の領域において同一である残基を特定の割合で有することを意味する場合がある。この割合は、2つの配列を最適な状態でアライメントし、特定の領域における2つの配列を比較して、両配列間で同一の残基が存在する位置の数を決定して一致する位置の数を得て、一致した位置の数をその特定の領域中の位置の合計数で割って、得られた値に100を掛けることで配列同一性の割合を得ることができる。2つの配列が異なる長さであるかまたはアライメントによって1以上の突出末端が生じて、比較される特定領域にたった1つの配列のみが含まれる場合は、前記1つの配列の残基は、計算では分母には含められるが分子には含められない。DNAとRNAを比較する場合、チミン(T)とウラシル(U)とは等価なものとして考慮されることができる。同一性は、手作業、またはBLASTもしくはBLAST 2.0等のコンピューターによる配列アルゴリズムを使用することにより決定することができる。
【0036】
k.標識
本明細書で用いられる「標識」とは、分光学的手段、光化学的手段、生化学的手段、免疫化学的手段、化学的手段または他の物理学的手段により検出可能な組成物を意味する場合がある。例えば、有用な標識には、32P、蛍光色素、高電子密度試薬、酵素(例えば、ELISAで通常用いられるようなもの)、ビオチン、ジゴキシゲニンまたはハプテン、およびその他の検出可能な物質が挙げられる。標識は、その内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第6,541,618号に記載されるようなフルオロフォアであってもよい。標識は、その内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第6,541,618号に記載されるような、別の標識の近傍に存在する場合に他の標識の検出可能なシグナル量を低下させるクエンチャー分子であってもよい。標識は、核酸およびタンパク質にいずれの位置で挿入されてもよい。
【0037】
l.miRNA
本明細書で用いられる「miRNA」は、mRNA配列を阻害可能なRNA配列を意味する場合がある。miRNAは、miRNA*またはその変異体を含むことができる。miRNA配列は、13〜33個、18〜24個または21〜23個のヌクレオチドを含むことができる。miRNAは、少なくとも合計5〜40個のヌクレオチドを含むことができる。miRNAの配列は、pre−miRNAの最初の13〜33個のヌクレオチドであってもよい。miRNAの配列は、pre−miRNAの最後の13〜33個のヌクレオチドであってもよい。miRNAの配列は、その内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願第11/384,049号、第11/418,870号または第11/429,720号に開示されるmiRNAの配列またはその変異体を含むことができる。
【0038】
m.核酸
本明細書で用いられる「核酸」、「オリゴヌクレオチド」または「ポリヌクレオチド」は、相互に共有結合で連結された少なくとも2つのヌクレオチドを意味する場合がある。一本鎖の記載により、相補鎖の配列も定義されることになる。したがって、核酸には、記載された一本鎖の相補鎖も含まれる。核酸の多くの変異体を、任意の核酸と同一の目的に用いることができる。したがって、核酸には、実質的に同一な核酸およびこれに相補的な核酸も含むことができる。一本鎖からはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で標的配列とハイブリダイズすることができるプローブが提供される。したがって、核酸には、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするプローブも含まれる。
【0039】
核酸は、一本鎖であっても二本鎖であってもよく、二本鎖配列の部分および一本鎖配列の部分の両方を含んでいるものであってもよい。核酸は、ゲノムDNAおよびcDNAの両方のDNA、RNAであってもよく、核酸がデオキシリボヌクレオチドとリボヌクレオチドの組合せ、ならびにウラシル、アデニン、チミン、シトシン、グアニン、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、イソシトシンおよびイソグアニン等の塩基の組合せを含むハイブリッドであってもよい。核酸は、一本鎖として合成してもよく、合成遺伝子を用いて細胞内(in vitroまたはin vivoで)で発現させてもよい。核酸は、化学合成法または組換え法により得ることができる。
【0040】
核酸は、その内容が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許出願第11/429,720号、第11/384,049号、第11/418,870号、第11/429,720号、国際公開公報PCT/IB05/02352およびPCT/IB2005/002702に記載されているようなmRNA、tRNA、shRNA、siRNAもしくはPiwi−相互作用RNA、pri−miRNA、pre−miRNA、miRNA、またはanti−miRNAであってもよい。
【0041】
核酸は、一般的にホスホジエステル結合を含むが、核酸には、例えば、ホスホロアミデート結合、ホスホロチオエート結合、ホスホロジチオエート結合またはO−メチルホスホロアミダイト結合等の少なくとも1つの異なる結合、ならびにペプチド核酸骨格および結合を有する核酸類似体が含むことができる。他の類似体核酸には、その内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5,235,033号および第5,034,506号に記載されるような、陽性骨格(positive backbones)、非イオン性骨格(non−ionic backbones)および非リボース骨格(non−ribose backbones)を有する核酸が含まれる。1以上の非天然ヌクレオチドまたは修飾ヌクレオチドを含む核酸も、核酸の1つの定義に含まれる。修飾ヌクレオチド類似体は、例えば、核酸分子の5’末端および/または3’末端に位置することができる。ヌクレオチド類似体の典型的な例は、糖修飾リボヌクレオチドまたは骨格修飾リボヌクレオチドから選択できる。しかし、核酸塩基修飾リボヌクレオチド、すなわち、天然核酸塩基の代わりに、例えば、5−(2−アミノ)プロピルウリジン、5−ブロモウリジン等の5位が修飾されたウリジンまたはシチジン;8−ブロモグアノシン等の8位が修飾されたアデノシンおよびグアノシン;7−デアザアデノシン等のデアザヌクレオチド;N6−メチルアデノシン等のO−アルキル化ヌクレオチドおよびN−アルキル化ヌクレオチド等の非天然核酸塩基を含む核酸塩基修飾リボヌクレオチドが適切であることに留意すべきである。2’−OH基は、H、OR、R、ハロ、SH、SR、NH2、NHR、NR2またはCNから選択される基で置換されてもよく、ここで、Rは、炭素数1〜6のアルキル、アルケニルまたはアルキニルであり、ハロは、F、Cl、BrまたはIである。修飾ヌクレオチドは、例えば、その内容が参照により本明細書に組み込まれているKrutzfeldt et al., Nature(Oct.30.2005)、Soutschek et al., Nature 432:173−178(2004)および米国特許公開公報第20050107325号に記載されるような、ヒドロキシプロリノール結合によりコレステロールと共有結合したヌクレオチドも含むことができる。修飾ヌクレオチドおよび修飾核酸には、その内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許公開公報第20020115080号に記載されるような、ロックド核酸(locked nucleic acids)(LNA)を含むことができる。更なる修飾ヌクレオチドおよび修飾核酸については、その内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許公開公報第20050182005号記載されている。リボース−リン酸骨格の修飾は、例えば、生理学的環境下におけるこれらの分子の安定性および半減期を増加させるため、細胞膜間での分散を促進するため、またはバイオチップ上のプローブとするため、といった種々の理由により行うことができる。天然核酸と類似体との混合物を作製すること;もしくは、種々の核酸類似体の混合物、および天然核酸と類似体の混合物を作製することができる。
【0042】
核酸は、10〜30,000個のヌクレオチド、10〜25,000個のヌクレオチド、10〜20,000個のヌクレオチド、10〜10,000個のヌクレオチド、10〜5,000個のヌクレオチド、10〜2,500個のヌクレオチド、10〜1,000個のヌクレオチド、10〜250個のヌクレオチド、10〜100個のヌクレオチド、および10〜50個のヌクレオチドの長さを有していてもよい。核酸は、少なくとも10、11、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25〜40、40〜70、80〜125、125〜175、175〜200または200〜250個のヌクレオチドの長さを有していてもよい。
【0043】
n.pre−mRNA
本明細書で用いられる「pre−mRNA」とは、miRNAおよびmiRNA*を含むmRNA配列を意味する場合がある。pre−miRNA配列は、45〜90個、60〜80個または60〜70個のヌクレオチドから構成することができる。pre−miRNAの配列は、pri−miRNAの5’末端および3’末端から0〜160個のヌクレオチドを除いたpri−miRNAの配列であってもよい。pre−miRNAの配列は、その内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願第11/384,049号、第11/418,870号または第11/429,720号に開示されるpre−miRNAの配列の配列またはその変異体を含むことができる。
【0044】
o.pri−mRNA
本明細書で用いられる「pri−mRNA」は、pre−miRNA、miRNAおよびmiRNA*を含むmRNA配列を意味する。pri−miRNAの配列は、その変異体を含むことができる。pri−miRNAの配列は、その内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願第11/384,049号、第11/418,870号または第11/429,720号に開示されるpri−miRNA配列またはその変異体を含むことができる。pri−miRNA配列は、45〜30,000個、50〜25,000個、100〜20,000個、1,000〜1,500個または80〜100個のヌクレオチドから構成されることができる。
【0045】
pri−miRNAは、ヘアピン構造を形成することができる。ヘアピンは、実質的に相補的な第1核酸配列および第2の核酸配列を含むことができる。第1および第2の核酸配列は、37〜50個のヌクレオチドであってもよい。第1および第2の核酸配列は、8〜12個のヌクレオチドからなる第3の配列により分離されていてもよい。ヘアピン構造は、その内容が参照により本明細書に組み込まれているHofacker et al., Monatsheftef. Chemie 125: 167−188(1994)に記載される、初期状態のパラメーターでのViennaアルゴリズムで計算される−25 Kcal/モル未満の自由エネルギーを有していてもよい。ヘアピンは、4〜20、8〜12または10個のヌクレオチドの末端ループを含むことができる。pri−miRNAは、少なくとも19%のアデノシンヌクレオチド、少なくとも16%のシトシンヌクレオチド、少なくとも23%のチミンヌクレオチド、および少なくとも19%のグアニンヌクレオチドを含むことができる。
【0046】
p.ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件
本明細書で用いられる「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは、第1の核酸配列(例えば、プローブ)が、第2の核酸配列(例えば、標的)に対して、例えば核酸の複合混合物の状態でハイブリダイズする条件を意味する場合がある。ストリンジェントな条件とは、配列に依存しており、状況に応じて異なるものである。ストリンジェント条件は、所定のイオン強度pHにおける特定の配列の熱融解点(Tm)よりも約5〜10℃低い温度になるよう選択することができる。Tmは、標的に相補的なプローブのうち50%が、平衡状態(標的配列が過剰量に存在する場合、Tmでは、50%のプローブが平衡状態を保っている)で標的配列にハイブリダイズする温度(所定のイオン強度、pHおよび核酸濃度の下)であってもよい。ストリンジェントな状態は、pH 7.0〜8.3において塩濃度がナトリウムイオン約1.0 M未満、例えば約0.01〜1.0 Mのナトリウムイオン濃度(または他の塩)であり、温度が、短いプローブ(例えば、約10〜50個のヌクレオチド)では少なくとも約30℃、長いプローブ(例えば、約50個のヌクレオチドを超える長さ)では少なくとも約60℃である条件であってもよい。ストリンジェントな条件は、ホルムアミド等の不安定化剤の添加により得ることができる。選択的または特異的なハイブリダイゼーションの場合、陽性のシグナルは、バックグラウンドのハイブリダイゼーションに対して、少なくとも2〜10倍の強さであってもよい。典型的なストリンジェント条件には、以下が含まれる:50% ホルムアミド、5×SSC、および1% SDS、42℃でのインキュベーション、または、5x SSC、1% SDS、65℃でのインキュベーション、ならびに0.2×SSCおよび0.1% SDS中で65℃での洗浄。
【0047】
q.実質的に相補的
本明細書で用いられる「実質的に相補的」とは、第1の配列が、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20〜40、40〜60、60〜100個またはこれを超えるヌクレオチドからなる領域において、第2の配列の相補鎖と少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%または99%の同一性を有するか、または、2つの配列がストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズすることを意味する場合がある。
【0048】
r.実質的に同一
本明細書で用いられる「実質的に同一」とは、第1の配列と第2の配列が、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20〜40、40〜60、60〜100個もしくはこれを超えるヌクレオチドまたはアミノ酸からなる領域において、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%または99%の同一性を有するか、または、核酸の場合、第1の配列が、第2の配列の相補鎖と実質的に相補的であるかどうかを意味する場合がある。
【0049】
s.標的核酸
本明細書で用いられる「標的核酸」とは、別の核酸により結合すうることができる酸またはその変異体を意味する場合がある。標的核酸は、DNA配列であってもよい。標的核酸は、RNAであってもよい。標的核酸は、mRNA、tRNA、shRNA、siRNAもしくはPiwi−相互作用RNA、pri−miRNA、pre−miRNA、miRNA、またはanti−miRNAを含むことができる。標的核酸は、標的miRNA結合部位またはその変異体を含むことができる。1以上のプローブが標的核酸に結合してもよい。標的結合部位は、5〜100個または10〜60個のヌクレオチドを含むことができる。標的結合部位は、合計で5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30〜40、40〜50、50〜60、61、62または63個のヌクレオチドを含むことができる。標的部位の配列は、その内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願第11/384,049号、第11/418,870号または第11/429,720号に開示される標的miRNA結合部位の配列のうち少なくとも5ヌクレオチドを含むことができる。
【0050】
t.変異体
本明細書で用いられる「変異体」とは、核酸に関するものであり、(i)基準となるヌクレオチド配列の一部;(ii)基準となるヌクレオチド配列の相補体またはその一部の相補体;(iii)基準となる核酸またはその相補体に実質的に同一な核酸;または(iv)基準となる核酸、その相補体、またはこれらと実質的に同一な配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸を意味する場合がある。
【0051】
2.プローブ
本明細書においてはプローブも提供される。プローブは、核酸を含むことができる。プローブは、8〜500、10〜100または20〜60ヌクレオチドの長さを有していてもよい。プローブは、少なくとも8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280または300ヌクレオチドの長さを有していてもよい。プローブは、18〜25個のヌクレオチドからなる核酸を含むことができる。
【0052】
プローブは、1種以上の化学結合、通常は、水素結合形成を介した相補的な塩基対形成を介して相補的配列の標的核酸に結合可能なものであってもよい。プローブは、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーによっては、プローブ配列と完全な相補性を欠く標的配列に結合することができる。プローブは、一本鎖であっても、部分的に一本鎖および部分的に二本鎖であってもよい。プローブの鎖の数(strandedness)は、標的配列の構造、組成および特性により決定される。プローブは、直接的に標識されていても間接的に標識されていてもよい。
【0053】
a.リンカー配列
プローブは、さらにリンカーを含むことができる。リンカーは、長さ10〜60ヌクレオチドであってもよい。リンカーは、長さ20〜27ヌクレオチドであってもよい。リンカーは、プローブが合計で長さ45〜60ヌクレオチドとなるのに十分な長さを有していてもよい。リンカーは、安定な二次構造を形成できなくてもよく、それ自体でフォールディングできなくてもよく、またはプローブに含まれる核酸の非リンカー部分でフォールディングできなくてもよい。リンカーの配列は、プローブの非リンカー核酸が由来する動物のゲノム中に存在していなくてもよい。リンカーは、表2に示す配列(配列番号:20952〜21063)から選択できる。
表2 リンカー配列
【表1】

【表2】

【表3】

【0054】
b.テストプローブ
プローブは、テストプローブであってもよい。テストプローブは、miRNA、miRNA*、pre−miRNAまたはpri−miRNAに相補的な核酸配列を含むことができる。テストプローブの配列は、表3に示す配列(配列番号:1〜4167)から選択できる。
【0055】
c.ネガティブプローブ
プローブは、ネガティブプローブであってもよい。ネガティブプローブは、生体試料中に存在しない核酸配列を含んでいてもよい。ネガティブプローブは、miRNA*に相補的であってもよい。ネガティブプローブの配列は、表4に示す配列(配列番号:20863〜20925)から選択できる。
表4 ネガティブコントロールプローブ
【表4】

【表5】

【0056】
d.ポジティブプローブ
プローブは、ポジティブプローブであってもよい。ポジティブプローブは、低分子RNAに相補的であってもよい。低分子RNAは、哺乳動物細胞等の動物細胞内に存在していてもよい。低分子RNAは、200ヌクレオチド未満の長さを有する。低分子RNAは、リボソームRNAでもよい。核酸の配列は、表5の配列(配列番号:20926〜20937)から選択できる。
表5 ポジティブコントロールプローブ
【表6】

【0057】
e.スパイクプローブ
プローブは、スパイクプローブであってもよい。スパイクプローブは、ゲノム中の20〜100個の連続するヌクレオチド(例えば、60個)に相補的ではない配列を含むことができる。前記ゲノムは、動物ゲノムであってもウィルスゲノムであってもよい。動物は、ヒト、マウスまたはラットであってもよい。スパイクプローブの配列は、表6に挙げられいる配列(配列番号:20938〜20951)から選択できる。
表6 スパイクプローブ
【表7】

【0058】
3.バイオチップ
バイオチップも提供される。バイオチップは、本明細書に記載する1つのプローブまたは複数のプローブが付着した固相担体を含むことができる。プローブは、ストリンジェントな条件下で標的配列にハイブリダイズ可能である。プローブは、担体上の空間的に定められた位置に付着することができる。標的配列1つ当たり、オーバーラップするプローブ、または特定の標的配列の別の部分に対するプローブ等の1以上のプローブを用いてもよい。プローブは、単一の疾患と関連する標的配列にハイブリダイズ可能なものであってもよい。バイオチップは、ネガティブプローブ、ポジティブプローブ、スパイクプローブ、テストプローブ、またはこれらの組合せを含むことができる。
【0059】
プローブは、当業者に理解されるように、多様な方法でバイオチップに付着できる。プローブは、最初に合成してその後にバイオチップに付着させることも、バイオチップ上で直接合成することもできる。
【0060】
固相担体は、プローブの付着もしくは会合に適した個別の特定部位を含むように修飾することができ、少なくとも1種類の検出方法に適した材料である。担体の典型的な例には、ガラス、修飾ガラスもしくは機能化ガラス、プラスチック(アクリル、ポリスチレン、スチレンおよび他の材料の共重合体、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、テフロン(登録商標)J等を含む)、多糖類、ナイロンもしくはニトロセルロース、樹脂、例えば、シリコーンおよび修飾シリコーン、カーボン、金属、無機ガラスならびにプラスチック等のシリカもしくはシリカ系素材が含まれる。担体は、はっきりと蛍光を発していなくとも、光学的に検出できるものでもよい。
【0061】
担体は、平坦であってもよいが、他の構成を有する担体を用いることもできる。例えば、プローブは、試料容量を最小化するための流動試料解析用にチューブの内側表面上に配置することができる。同様に、担体は、特定のプラスチックで作られた独立気泡フォームを含む軟質フォームのように柔軟性を有するものでもよい。
【0062】
バイオチップおよびプローブは、これら二者を付着させるために化学官能基で誘導体化することができる。例えば、バイオチップまたはプローブは、これらに限定されないが、アルデヒド基、アミン基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、オキソ基またはチオール基等の化学官能基で誘導体化することができる。これらの官能基を用いることにより、プローブ上の官能基を用いて、直接的にまたはリンカーを用いて間接的にプローブを付着させることができる。5’末端、3’末端または内部のヌクレオチドのいずれかを介して固相担体にプローブを付着させることができる。プローブは、5’アミノ修飾剤C12または3’末端アミノ修飾剤C6等の官能基を含むことができる。
【0063】
固相担体に非共有結合によりプローブを付着させることもできる。例えば、ビオチン標識オリゴヌクレオチドを作製し、これをストレプトアビジンでコーティングした表面に共有結合により結合させることで、結合を形成することもできる。または、プローブは、光重合やフォトリソグラフィー等の技術を用いて表面上で合成することもできる。
【0064】
4.標的核酸の検出方法
本明細書においては、標的核酸の検出方法も提供される。図5は、この方法の略図である。この方法は、あるプローブ(以下、「プローブ」)を用いて、実質的に同一な核酸(以下、「同胞核酸」)からある標的核酸(以下、「標的核酸」)を特異的に検出および区別することを含むことができる。同胞核酸は、部位(以下、「変異部位」)において標的核酸と異なっていてもよく、前記部位はわずか1個のヌクレオチドを含むものでもよい。
【0065】
プローブ、標的核酸および同胞核酸のそれぞれは、第1の部分および第2の部分を含むことができる。標的核酸、同胞核酸およびプローブの第1の部分は全て、それぞれの核酸の5’末端側に位置していてもよく、または全て、それぞれの核酸の3’末端側に位置していてもよい。反対に、標的核酸、同胞核酸およびプローブの第2の部分は全て、それぞれの核酸の3’末端側に位置していてもよく、または全て、それぞれの核酸の5’末端側に位置していてもよい。本明細書に提供される方法は、プローブの前記2つの部分と標的核酸の対応する前記2つの部分との間、およびプローブの前記2つの部分と同胞核酸の対応する前記2つの部分との間のハイブリダイゼーションの強度に基づいている。
【0066】
a.標的核酸および同胞核酸
標的核酸の第1の部分は、同胞核酸の第1の部分と配列が実質的に同一であり、変異部位においてわずか1ヌクレオチドだけ異なっていてもよい。標的核酸の第2の部分は、同胞核酸の第2の部分と配列が同一であってもよい。
【0067】
b.プローブと標的核酸の間の相互作用
プローブの第1の部分および標的核酸の第1の部分は相補的であってもよい。プローブの第2の部分および標的核酸の第2の部分も実質的に相補的であってもよい。
【0068】
c.プローブと同胞核酸の間の相互作用
プローブの第1の部分および同胞核酸の第1の部分は、実質的に相補的であってもよい。プローブの第2の部分および同胞核酸の第2の部分は実質的に相補的であってもよい。
【0069】
d.プローブを使用した同胞核酸からの標的核酸の区別
理論に束縛されるわけではないが、プローブの第2の部分と同胞核酸の第2の部分との間の実質的な相補性により、プローブの第1の部分と同胞核酸の第1の部分との間のミスマッチに対するプローブの感度が増加し、全体としてプローブと同胞核酸との間のハイブリダイゼーション効率が悪くなるという効果を生じることができる。反対に、プローブの第2の部分と標的核酸の第2の部分との間の実質的な相補性により、プローブの第1の部分は、相補的な標的核酸の第1の部分に、より効率的に結合できるようになる。プローブおよび同胞核酸の第1の部分間および第2の部分間の実質的な相補性により、プローブと標的核酸との間のハイブリダイゼーションと比べてプローブと同胞核酸との間のハイブリダイゼーションは全体としてより弱いものになりうる。したがって、プローブは、標的核酸(その第1の部分はプローブの第1の部分に相補的である)を特異的に検出することができ、同胞核酸から標的核酸を区別することができる。本明細書に記載する方法により、低濃度から高濃度の範囲の実質的に同一な別の核酸の多様なバックグラウンド中で標的核酸を特異的に検出することを可能にすることができる。
【0070】
e.標的核酸
本明細書においては、試料中の、第1の部分および第2の部分を含む標的核酸を検出する方法が提供される。標的核酸は、アダプター配列を含むことができる。アダプター配列は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応において、核酸の検出および増幅に用いられることが当該技術分野においてよく知られている。
【0071】
f.同胞核酸
本明細書においては、標的核酸を同胞核酸から区別する、標的核酸の検出方法が提供される。同胞核酸は、第1の部分および第2の部分を含むことができる。同胞核酸の第2の部分は、標的核酸の第2の部分と同一であってもよい。同胞核酸の第1の部分は、標的核酸の第1の部分と実質的に同一であってもよい。同胞核酸の第1の部分は、変異部位を含むことができる。
【0072】
g.変異部位
標的核酸の第1部位は、変異部位を含むことができる。同胞核酸の第1の部分も、変異部位を含むことができる。変異部分は、標的核酸と同胞核酸との間で異なっていてもよい。変異部位は、実質的に同一な同胞核酸間で異なっていてもよい。変異部位は、たった1つのヌクレオチドから構成されていてもよい。標的核酸の変異部位と、その核酸の変異部位との違いは、わずか1ヌクレオチドだけであってもよい。
【0073】
(1)遺伝子ファミリー
標的核酸と同胞核酸は、同一の遺伝子ファミリーのメンバーであってもよい。遺伝子ファミリーは、複数の遺伝子を含むことができる。これらの遺伝子は、進化学的に関連していてもよい(すなわち、祖先遺伝子を共通している)。これらの遺伝子は共通の配列モチーフおよび構造を有していてもよい。これらの遺伝子は、配列が実質的に同一であってもよい。これらの配列は、遺伝子ファミリーの遺伝子間で異なっている変異部位を含むことができる。
【0074】
これらの遺伝子は、リボザイム、rRNA、tRNAまたはmiRNAをコードするRNA遺伝子であってもよい。例えば、miRNAであるLet−7aをコードするヒト遺伝子とLet−7cをコードするヒト遺伝子とは、配列上1ヌクレオチド異なっている。
【0075】
遺伝子ファミリーは、そのアミノ酸配列が、少なくとも20個のアミノ酸からなる比較対象に対して少なくとも25%の配列同一性を有する、少なくとも1つのポリペプチドドメインをコードする遺伝子の集合体であってもよい。このようなドメインは、遺伝子重複または進化の結果として共通祖先を介して関連している場合がある。当該技術分野では多くのポリペプチドドメインが知られており、例えば、EGFドメイン、イムノグロブリンドメイン、III型フィブロネクチンドメイン、カドヘリン様ドメイン、デスエフェクタードメイン(death effector domain)(DED)等が含まれる。
【0076】
遺伝子ファミリーは、少なくとも1つの高度に保存された領域を共有するポリペプチドをコードしていてもよい。ポリペプチドが、5個のアミノ酸からなる比較対象に対して少なくとも60%の配列同一性を有する場合、または10個のアミノ酸からなる比較対象に対して少なくとも50%の配列同一性を有する場合には、2つのポリペプチドは「高度に保存された領域」を共有することになる。
【0077】
(2)多型
変異部位は、多型を含んでいてもよい。本明細書で用いられる「多型」とは、ある集団における2以上の遺伝学的に決定された選択的配列またはアレルの発生を意味する場合がある。多型は、1つのヌクレオチド(すなわち、1塩基多型またはSNP)を含むことができ、このヌクレオチドは、A、C、G、TまたはUであってもよい。多型は、小規模な挿入または欠失を含むことができる。多型は、疾患もしくは健康状態と関連しているか、またはこれらの原因となる場合がある。多型は、薬物治療等の薬剤に対する個人の応答性と関連している場合もある。多型は、遺伝子のコーディング領域もしくは非コーディング領域に認められる場合もあり、遺伝子の間の遺伝子間領域に認められる場合もある。多型は、突然変異である場合もある。突然変異は、非同義変異(すなわち、サイレント変異)であってもよく、同義変異(例えば、ミスセンス、非センスまたはノンセンス変異)であってもよい。突然変異は、遺伝子のスプライシングまたは制御に変化をもたらす場合もある。
【0078】
多型マーカーまたは多型部位は、多様性が生じる部位である。マーカーは、少なくとも2種類のアレルを有していてもよく、それぞれは、1%を超える頻度で発生していてもよく、任意の集団では、10%または20%を超える頻度で発生していてもよい。多型は、1以上の塩基の変化、挿入、反復または欠失を含んでいてもよい。多型遺伝子座は、たった1つの塩基対からなる場合もある。多型マーカーは、制限酵素断片長多型、タンデム反復数(VNTR)、超可変領域、ミニサテライト、ジヌクレオチド反復、トリヌクレオチド反復、テトラヌクレオチド反復、単純配列反復およびAlu等の挿入因子が含むことができる。最初に同定されたアレル型は、参照型として任意に命名され、その他のアレル型は、選択的アレルまたは変異アレルとして命名される。任意の集団で最も高頻度に見られるアレル型は、野生型とも呼ばれる。2倍体生物は、ホモ接合またはヘテロ接合のアレル型である。2対立遺伝子多型(diallelic polymorphism)は2種類の形態を有する。3対立遺伝子多型(triallelic polymorphism)は3種類の形態を有する。1塩基多型(SNPs)も多型に含むことができる。
【0079】
1塩基多型(SNPs)とは、ヒトの集団において2つの選択的塩基が認識できる頻度(1%超)で生じる位置を言い、これはヒトの遺伝子に最も頻繁に見られる変異型である。この部位には、そのアレルの高度保存配列(例えば、その集団の1/100未満または1/1000未満のメンバーにおいて変異が見られる配列)が、先または後に続いていてもよい。1塩基多型は、多型部位において1つのヌクレオチドが別のヌクレオチドに置換されることにより生じる場合がある。塩基転移は、あるプリンが別のプリンに置き換わるか、またはあるピリミジンが別のピリミジンに置き換わることである。塩基転換は、プリンがピリミジンに置き換わること、またはこの逆の場合もある。1塩基多型は、標準アレルに対してヌクレオチドが欠失していることまたはヌクレオチドが挿入されていることにより生じてもよい。
【0080】
h.プローブ
本明細書においては、プローブが標的核酸を特異的に検出する標的核酸の検出方法が提供される。プローブは、第1の部分および第2の部分を含むことができる。プローブの第1の部分は、標的核酸の第1の部分に相補的であってもよい。プローブの第2の部分は、標的核酸の第2の部分と実質的に相補的であってもよい。プローブは、標的核酸と相補的なヌクレオチドを、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100個含むことができる。プローブは、同胞核酸にも実質的に相補的であってもよい。プローブは、同胞核酸と相補的なヌクレオチドを、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100個含むことができる。
【0081】
プローブは、68〜70℃の融解温度を有することができる。プローブは、増幅反応で用いることができる。その反応は、PCRであってもよい。PCR反応には、フォワードプライマー、リバースプライマーおよびプローブを含むことができる。PCR反応には、プローブおよび標的核酸に結合するリバースプライマーを複合体で含むことができ、プローブの5’末端は、リバースプライマーの3’末端に対して、5、6、7、8、9、10または11ヌクレオチド分上流に位置していてもよい。
【0082】
プローブは、標識を含むことができる。プローブは、2つ以上の核酸を含んでいてもよい。プローブは、マイナーグルーブバインダーを含んでいてもよい。
【0083】
(1)検出部位
プローブの第1の部分は、検出部位を含むことができる。検出部位は1個のヌクレオチドを含んでいてもよい。検出部位は、複数のヌクレオチドを含んでいてもよい。検出部位は、標的核酸の変異部位に相補的であってもよい。検出部位は、同胞核酸の変異部位に非相補的であってもよい。検出部位は、プローブの5’末端または3’末端に位置していてもよい。例えば、検出部位は、プローブの5’末端から2、3、4、5、6、7または8塩基離れていてもよく、または検出部位は、プローブの3’末端から2、3、4、5、6、7または8塩基離れていてもよい。検出部位は、標的核酸に相補的な、8〜10個のヌクレオチドであってもよい。
【0084】
(2)増感部位
プローブの第2の部分は、増感部位を含むことができる。増感部位は、標的核酸に対して非相補的であってもよい。増感部位は、同胞核酸に対して非相補的であってもよい。増感部位は、検出部位から離れた位置にあってもよい。増感部位は、プローブと同胞核酸の第1の部分との間の付加的なミスマッチに対してプローブを増感し、プローブと同胞核酸との間のハイブリダイゼーション効率が悪くなるという全体的効果を生じることができる。反対に、プローブと標的核酸との間のより効率的なハイブリダイゼーションという全体的効果のために、プローブの増感部位によってプローブの第1の部分を相補的な標的核酸の第1の部分に効率的に結合させうる。増感部位は、5’末端、3’末端またはプローブの両末端間等のいずれかの部位であって、検出部位から離れたいずれの部位に存在することができる。増感部位は、1個のヌクレオチドを含んでいてもよい。増感部位は、複数のヌクレオチドを含んでいてもよい。増感部位は、1〜20個のヌクレオチドを含むことができる。増感部位は、ポリ(A)結合領域を含んでいていてもよい。ポリ(A)結合領域は、cDNAのポリ(A)に相補的であってもよい。
【0085】
i.バックグラウンド核酸
本明細書においては、標的核酸を特異的に検出し、バックグラウンド核酸から標的核酸を区別する方法も提供される。バックグラウンド核酸は、複数の核酸を含むことができる。バックグラウンド核酸は、同胞核酸を含むことができる。バックグラウンド核酸は、多様な非標的核酸および非同胞核酸を含むことができる。バックグラウンド核酸は、標的核酸と同一でなくても、実質的に同一でなくてもよい。
【0086】
5.標的核酸の作製方法
本明細書においては、標的核酸の作製方法も提供される。標的核酸は、標的核酸の第2の部分に位置するアダプター配列を含むことができる。アダプター配列を用いることで、標的核酸の第2の部分とプローブの第2の部分との間に非相補性を生じさせることができる。アダプター配列は、増感部位に非相補的な配列を含んでいてもよい。
【0087】
アダプター配列は、12〜30個のヌクレオチドを含むことができる。アダプター配列は、合成配列を含むことができる。アダプター配列は、標的核酸が単離される動物のゲノムに含まれるいかなる配列とも非同一な配列も含むことができる。アダプター配列は、標的核酸にライゲーションされていてもよい。アダプター配列は、PCRにより標的核酸に付加してもよい。PCRは、アダプター配列と相補的な配列を含むアダプタープライマーを含んでいてもよい。アダプター配列は、ポリ(A)配列を含んでいてもよい。
【0088】
a.RNAからの標的核酸の作製方法
(1)RNA抽出/ポリアデニル化
標的核酸は、RNAであってもよい。RNAの標的配列を単離および増幅する方法には、全RNAの抽出、ポリアデニル化反応および逆転写(RT)反応が含まれる。標的RNAは、mRNA、tRNA、shRNA、siRNA、Piwi−相互作用RNA、pri−miRNA、pre−miRNA、miRNA、またはanti−miRNAであってもよい。RNAは、ポリアデニル化されていてもよい。ポリアデニル化は、ポリ(A)ポリメラーゼにより行うことができる。ポリアデニル化は、ポリ(A)末端付加キットを用いて行うこともできる。ポリアデニル化は、その内容が参照により本明細書に組み込まれているShi and Chiang(Biotechniques, 2005;39(4):519−25の方法により行うこともできる。ポリアデニル化により、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240または250個のアデノシンを標的に付加することができる。
【0089】
(2)逆転写
cDNAの標的配列は、標的RNAの逆転写により作製することがきる。cDNAの作製方法は、ポリアデニル化RNA、または、アダプター配列がライゲーションされたRNAの逆転写であってもよい。cDNAは、その内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願第11/384,049号に概説される方法により合成することができる。
【0090】
(a)RNAにライゲーションされたアダプター配列を用いた逆転写
逆転写の前に、RNAをアダプター配列にライゲーションすることができる。ライゲーション反応は、T4 RNAリガーゼにより行い、アダプター配列をRNAの3’末端にライゲーションすることができる。次いで、アダプター配列の3’末端に相補的な配列を含むプライマーを用いて逆転写(RT)反応を行うことができる。
【0091】
(b)RNAにライゲーションされたポリアデニル化配列を用いた逆転写
5’アダプター配列を含むポリ(T)プライマーを用いた逆転写(RT)反応において、ポリアデニル化RNAを用いることができる。ポリ(T)配列は、8、9、10、11、12、13または14個の連続したチミンを含むことができる。逆転写プライマーは、以下の配列のうち1つを含んでいてもよい:
5’GCGAGCACAGAATTAATACGACTCACTACCCGTTTTTTTTTTTTVN 3’
5’−GCGAGCACAGAATTAATACGACTCACTACGCGTTTTTTTTTTTTVN−3’
5’−GCGAGCACAGAATTAATACGACTCACTATAGGTTTTTTTTTTTTVN−3’
ここで、VはA、CおよびGの混合物、Nは4種類のヌクレオチド全ての混合物である。
【0092】
(3)RNAのRT−PCR
RNAの逆転写産物は、標的核酸および5’末端配列に相補的な少なくとも15個の核酸を含む特異的なフォワードプライマー;アダプター配列の3’末端に相補的なリバースプライマー;ならびに標的核酸と相補的な少なくとも8個の核酸を含むプローブを用いたリアルタイムPCRにより増幅することができる。プローブは、アダプター配列の5’末端と部分的に相補的であってもよい。
【0093】
b.標的核酸のPCR
標的核酸の増幅方法も本明細書に記載される。増幅は、PCRを含む方法により行うことができる。PCR反応の第1サイクルは、56℃、57℃、58℃、59℃または60℃のアニーリング温度を有していてもよい。第1サイクルは、1〜10サイクルを含んでいてもよい。PCR反応の残りのサイクルは、60℃で行われてもよい。残りのサイクルは、2〜40サイクルを含んでいてもよい。アニーリング温度により、PCRの感度をより高めることもできる。PCRは、より高いストリンジェンシーを有するPCR用鋳型として機能できる、より長い生成物を生成することができる。
【0094】
(1)フォワードプライマー
PCR反応は、フォワードプライマーを含むことができる。フォワードプライマーは、標的核酸と同一な15、16、17、18、19、20または21個のヌクレオチドを含むことができる。
【0095】
フォワードプライマーの3’末端は、標的核酸と同胞核酸との間の配列の差異に感受性があってもよい。
【0096】
フォワードプライマーは、5’オーバーハング末端を含んでいてもよい。前記5’末端は、フォワードプライマーの融解温度を上昇させることができる。前記5’末端の配列は、標的核酸が単離された動物のゲノムと同一でない配列を含むことができる。前記5’末端の配列は、合成されたものであってもよい。前記5’末端は、8、9、10、11、12、13、14、15または16個のヌクレオチドを含むことができる。5’オーバーハング末端は、5’−ACACTCCAGCTGGG−3’の配列を含んでいてもよい。5’オーバーハング末端は、5’−CAGTCATTTGGG−3’の配列を含んでいてもよい。フォワードプライマーは、表7の「FD−P」欄に含まれる配列番号に示される配列に対応する配列を含むことができる。
【0097】
(2)リバースプライマー
PCR反応は、リバースプライマーを含むことができる。リバースプライマーは、標的核酸に相補的なものであってもよい。リバースプライマーは、アダプター配列と相補的な配列を含んでいてもよい。アダプター配列に相補的な配列は、12〜24個のヌクレオチドを含むことができる。リバースプライマーは、5’−GCGAGCACAGAATTAATACGAC−3’の配列を含んでいてもよい。
【0098】
6.疾患および健康状態の発現解析
本明細書においては、疾患または病的状態と関連する標的核酸の同定方法が提供される。標的核酸は、変異部位を含んでいてもよい。変異部位は、疾患、病的状態または体質と関連するものであってもよい。体質は、色、身長、大きさまたは素因等のいずれの同定可能な状態であってもよい。前記方法は、標的核酸をプローブと接触させることを含むことができる。コントロールと比較した、標的核酸へのプローブ結合レベルは、疾患、病的状態または体質の指標とすることができる。
【0099】
例えば、コントロールと比較した標的核酸のレベル(または発現レベル)の検出により、高解像で高感度なデータセットを得ることができ、このデータは、診断、予後診断、治療、薬物開発、遺伝薬理学、バイオセンサー開発および他の関連分野において用いることができる。
【0100】
前記方法により得られる発現プロファイルは、多くの標的核酸と関連した、試料の状態の「フィンガープリント」とすることができる。2つの状態において特定の標的配列が同様に発現していても、同時に数多くの標的核酸を評価することにより、その細胞の状態に特徴的な遺伝子発現プロファイルを得ることができる。すなわち、正常な組織を疾患組織から区別することができる。既知の異なる疾患状態における組織の発現プロファイルを比較することにより、これら各段階と関連する標的核酸に関する情報を得ることができる。次に、診断を行うかまたは確認することにより、組織試料が正常組織の発現プロファイルまたは疾患組織の発現プロファイルを有するかを判断することができる。これにより、関連した状態の分子診断が可能になる。
【0101】
疾患関連標的核酸の発現レベルは、多くの意味で情報となる。例えば、コントロールとの比較における疾患関連標的核酸の差次的発現は、患者がその疾患を患っているという診断に利用することができる。疾患関連標的核酸の発現レベルは、患者の治療状態および疾患状態をモニターするために利用することもできる。さらに、疾患関連標的核酸の発現レベルに基づき、疾患と関連して、特定の発現プロファイルを変化させたり発現プロファイルを抑制したりする薬物候補のスクリーニングを行うことができる。
【0102】
標的核酸を含む試料を、該標的核酸と十分に相補的なプローブと接触させてコントロールレベルを上回るプローブへのハイブリダイゼーションを検出することにより、標的核酸を検出し標的核酸のレベルを測定することができる。
【0103】
標的核酸は、試験対象の標的核酸をナイロンメンブラン等の固相担体上に固相化し、標識プローブを試料にハイブリダイズさせることにより検出することができる。標的核酸は、標識プローブを固相担体に固相化し、標識標的核酸を含む試料をハイブリダイズさせることにより検出できる。洗浄により非特異的にハイブリダイズしたものを除去した後、標識を検出することができる。
【0104】
その内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願第11/384,049号に記載される方法によれば、生体試料中においても標的核酸を検出することができる。
【0105】
また、標的核酸は、透過化処理した細胞または組織試料を標識プローブと接触させて標的核酸とハイブリダイゼーションすることにより、in situで検出することができる。洗浄により非特異的に結合したプローブを除去して、標識を検出することができる。
【0106】
これらのアッセイは、その内容がそれぞれ参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5,681,702号;5,597,909号;5,545,730号;5,594,117号;5,591,584号;5,571,670号;5,580,731号;5,571,670号;5,591,584号;5,624,802号;5,635,352号;5,594,118号;5,359,100号;5,124,246号;および5,681,697号に概説されているように、複数のプローブの使用を含む、直接ハイブリダイゼーションアッセイであっても、サンドイッチアッセイを含んでいてもよい。
【0107】
上記に概説されているような、高度、中程度、低度のストリンジェンシーを有する条件を含む、種々のハイブリダイゼーション条件を用いることができる。アッセイは、プローブがターゲットのみにハイブリダイゼーションできるストリンジェント条件下で行うことができる。ストリンジェンシーは、これらに限定されないが、温度、ホルムアミド濃度、塩濃度、カオトロピック塩濃度、pHまたは有機溶媒濃度等の熱力学的変数である工程パラメーターを変化させることで調節することができる。
【0108】
ハイブリダイゼーション反応は、種々の方法により行うことができる。反応成分は、同時に加えても、異なる順序で連続的に添加してもよい。さらに、反応は、種々の試薬を含むことができる。これらには、塩、バッファー、アルブミン等の中性タンパク質、界面活性剤等が含まれ、これらを用いることで至適なハイブリダイゼーションおよび検出が容易となり、ならびに/または非特異的相互作用もしくはバックグラウンド相互作用を減少させることができる。試料の調製方法および標的の純度に応じて、プロテアーゼ阻害剤、ヌクレアーゼ阻害剤および抗菌剤等の、アッセイの効率を改善する他の試薬を適宜用いることができる。
【0109】
a.診断
診断方法も提供される。前記方法は、生体試料中の疾患関連標的核酸の差次的発現レベルを検出することを含むことができる。この試料は、患者に由来していてもよい。患者における疾患状態の診断により、予後診断と治療戦略の選択が可能になる。さらに、一時的に発現する疾患関連標的核酸を測定することにより、細胞の発生段階を分類することができる。
【0110】
標識プローブの組織アレイへのin situ ハイブリダイゼーションを行うこともできる。個人の試料とスタンダードのフィンガープリントを比較した場合、当業者は、この知見に基づいて、診断、予後診断または予測を行うことができる。また、診断の指標となる遺伝子は、予後診断の指標となる遺伝子と異なる場合があることも理解されるべきである。さらに、細胞の状態の分子プロファイリングにより、応答状態または不応答状態を区別したり、結果を予測したりできる。例えば、診断方法は、生体試料中の癌関連標的核酸の差次的レベルを検出することを含むことができる。癌関連標的核酸の供給源は、未制御細胞増殖を特徴とする癌細胞であってもよい。癌細胞の例は、乳癌、大腸癌、肺癌、前立腺癌、肝細胞癌、胃癌、膵癌、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、尿道癌、甲状腺癌、腎癌、癌腫、黒色腫および脳腫瘍由来の細胞を含むことができる。
【0111】
b.遺伝子型同定
本明細書においては、本明細書に記載するプローブを用いてSNP等の多型を検出する遺伝子型同定方法も提供される。本明細書で用いられる「遺伝子型同定」とは、個人がゲノム中の1以上の位置に保持する遺伝子情報を決定することを意味する場合がある。例えば、遺伝子型同定には、個人が保持するいずれのアレルもしくはアリル群が単一のSNPに相当するのかを決定すること、または個人が保持するいずれのアレルもしくはアリル群が複数のSNPに相当するのかを決定することを含むことができる。遺伝子型は、個人において存在する、1以上の多型部位での対立遺伝子のアイデンティティーである場合がある。
【0112】
(1)ヒトの疾患と健康状態
遺伝子型同定は、疾患または健康状態に対するヒトの素因の測定のために行ってもよい。例えば、遺伝子型同定は、その内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願第7,127,355号に記載されるように用いることもできる。また、遺伝子型同定は、薬物治療または他の治療に対する個人の応答性を予測するために用いることもできる。
【0113】
(2)ウィルスRNA
遺伝子型同定は、例えば、HIV、B型肝炎ウィルスまたはヒトパピローマウィルス等のウィルスゲノム中の変異の存在を検出するために行ってもよい。このような遺伝子型同定の例は、その内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第6,797,464号および同第6,653,081号ならびに米国特許公開公報第20050112554号および同第2005014379号に見出される。
【0114】
(3)病原性微生物
遺伝子型同定は、細菌の抗生物質耐性等の、細菌の種類および変異を検出するために行ってもよい。例えば、遺伝子型同定は、その内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第6,913,753号に記載されるようなものであってもよい。
【0115】
7.薬物スクリーニング
治療薬のスクリーニング方法も提供される。前記方法は、疾患関連核酸を発現可能な病的細胞を候補治療薬と接触させること、および疾患関連標的核酸の発現プロファイルに対する薬物候補の効果を評価することを含むことができる。差次的に発現する標的核酸が同定されたら、種々のアッセイを実行することできる。試験化合物は、疾患関連核酸の遺伝子発現を調節する能力に関してスクリーニングすることができる。調節には、遺伝子発現の上昇および抑制の両方が含まれる。
【0116】
試験化合物または候補薬物は、タンパク質、オリゴペプチド、低分子量有機分子、多糖、ポリヌクレオチド等の、疾患表現型または疾患関連核酸の発現を直接的または間接的に変化させる能力について試験されるいずれの分子でもよい。候補薬物には、例えば、100ダルトン超および約500、1,000、1,500、2,000または2,500ダルトン未満の分子量を有する低分子量有機分子等、数多くの化学的分類が含まれる。候補化合物は、タンパク質との構造的相互作用、特に、水素結合に必要な官能基を含んでいてもよく、通常は、少なくともアミン基、カルボニル基、ヒドロキシル基またはカルボキシル基、好ましくは、少なくとも2つのこれら化学官能基を含んでいてもよい。候補薬剤は、1以上の上記官能基で置換された、環式炭素構造もしくは複素環構造および/または芳香族構造もしくは多環芳香族構造を含んでいてもよい。候補薬剤は、ペプチド、糖類、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、これらの誘導体、構造類似体または組み合わせ等の生体分子においても見出される。
【0117】
疾患関連核酸に結合する能力またはその活性を修飾する能力に関して、潜在修飾薬のコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングしてもよい。コンビナトリアルライブラリーは、試薬等の多数の化学構成要素を組み合わせることによる、化学合成または生物学的合成のいずれかにより作製される多様な化学物質の集合体であってもよい。
【0118】
コンビナトリアル化学ライブラリーの調製とスクリーニングについては、当業者によく知られている。このようなコンビナトリアル化学ライブラリーには、これらに限定されないが、ペプチドをコードするペプチドライブラリー;ベンゾジアゼピン;ヒダントイン、ベンゾジアゼピンおよびジペプチド等のダイバーソマー(diversomer);ビニル性ポリペプチド;低分子化合物ライブラリーの類似有機合成物;オリゴカルバミン酸;および/またはペプチジルホスホン酸、核酸ライブラリー、ペプチド核酸ライブラリー、抗体ライブラリー、炭水化物ライブラリーならびに低分子量有機分子ライブラリー等が含まれる。
【0119】
8.遺伝子サイレンシング
細胞、組織または器官内の標的遺伝子の発現を低下させる方法も提供される。標的遺伝子の発現は、本明細書に記載する標的mRNAの1以上の結合部位に実質的に相補的な配列を含む核酸を発現させることによって減少させることができる。核酸は、miRNAまたはその変異体であってもよい。核酸は、プロセッシングを受けてmiRNAを生じることができる、pri−miRNA、pre−miRNAまたはその変異体であってもよい。発現miRNAは、標的mRNA上の実質的に相補的な結合部位にハイブリダイズし、これによってRISC介在性の遺伝子サイレンシングを活性化することができる。miRNAの過剰発現を用いた研究の例としては、その内容が参照により本明細書に組み込まれているYekta et al 2004, Science 304−594が挙げられる。当業者であれば、その内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第6,506,559号および第6,573,099号に記載されるRNAi法等の当該技術分野でよく知られるアンチセンス法により標的遺伝子の発現を阻害したり、miRNAの活性を阻害したりするために本明細書に記載する核酸を用いることもできることを理解するであろう。
【0120】
遺伝子サイレンシングの標的は、第2のタンパク質のサイレンシングを起こすようなタンパク質であってもよい。標的遺伝子の発現を抑制することにより、第2のタンパク質の発現を上昇させることができる。miRNA発現の効果的な抑制の例には、その内容が参照により本明細書に組み込まれているEsau et al 2004 JBC 275−52361;およびCheng et al 2005 Nucleic Acids Res. 33−1290に記載される研究が挙げられる。
【0121】
9.遺伝子亢進
細胞、組織または器官内の標的遺伝子の発現を増加させる方法も提供される。標的遺伝子の発現は、本明細書に記載するpri−miRNA、pre−miRNA、miRNAまたはその変異体に実質的に相補的な配列を含む核酸を発現させることによって増加させることができる。核酸は、anti−miRNAであってもよい。anti−miRNAは、pri−miRNA、pre−miRNAまたはmiRNAとハイブリダイズし、それによってその遺伝子抑制活性を低下させることができる。標的遺伝子中の結合部位の一部に実質的に相補的な核酸を、核酸の結合部位への結合がmiRNAの結合を阻害するように発現させることによって、標的核酸の発現を増加させることもできる。
【0122】
10.治療薬
発生障害に関連した疾患または障害の調節方法も提供される。この疾患または障害は、前立腺癌や肝癌等の癌であってもよい。一般的に、本明細書に記載する核酸分子は、前記核酸分子と少なくとも部分的に相補的な遺伝子の発現の調節剤として用いることができる。さらに、miRNA分子は、治療薬のスクリーニング方法における標的となってもよく、例えば、miRNA分子の阻害または活性化が、増殖またはアポトーシス等の細胞分化プロセスを調節してもよい。さらにまた、癌遺伝子、多剤耐性遺伝子または別の治療標的遺伝子等の標的特異性を改変するために、既存のmiRNA分子を配列改変miRNA分子の製造の出発物質として用いることもできる。さらにまた、プロセッシングされて治療関連標的に対する二本鎖siRNAを生じるよう、miRNA分子を修飾することができる。さらにまた、miRNA分子を、組織の再プログラム方法に用いることも可能であり、例えば、miRNA分子の発現によって、分化した株化細胞を異なる種類の細胞または幹細胞に形質転換させることもできる。
【0123】
11.Luminex検出法
標的核酸またはmiRNAの検出方法には、本明細書において議論される多数の工程が含まれる。全RNAを組織から抽出する。短鎖RNA画分をYM100カラムを用いて濃縮する。低分子RNA画分は、種々の方法(例えば、ビオチン標識)により標識することができる。これと並行して、miRNAアンチセンスDNA、またはアミン修飾ロックド核酸(LNA)プローブを、EDCを用いてカルボキシル化した色コードLuminexマイクロスフェア(carboxylated color−coded Luminex microsphere)(ビーズ)に結合させることによって、各混合物が100種類のmiRNAプローブを含み、各プローブが異なる特異的な分光的特徴もしくは色を有するビーズとカップリングしたカップリングビーズ混合物を作製することができる。ビーズは、Luminexアナライザーで差次的に検出可能な、別個の100種類のセットとして調製することができる。次いで、標識miRNAはプローブ結合色素ビーズの混合物とハイブリダイズしてもよい。ハイブリダイズしたmiRNA結合ビーズ混合物はストレプトアビジン−R−フィコエリトリン色素で処理してもよい。反応は、Luminexアナライザーを用いて分析することできる。レーザーにより、各マイクロスフェア粒子ならびにmiRNAに結合したレポーター色素を同定する内部色素が励起される。各ビーズ上の色素の中間強度は、組織内の特定のRNAの発現に比例し得る。
【0124】
miRNAもしくはプローブまたは標的核酸は、以下のようにラベルすることができる:
【0125】
12.直接標識:
a.化学標識
例には、miRNAのビオチン標識にPerkinElmer Micromax キットの一部を用いたULS技術が含まれる。この方法により、miRNAはその長さに沿ってビオチン標識される。この方法は、再現性を有し、強力であることがわかる。
【0126】
b.Kreatech化学標識キット
この方法では、PerkinElmerと類似する技術でmiRNAもしくはプローブまたは標的核酸がビオチン標識されるが、感度がある程度低いことが示された。
【0127】
c.酵素末端標識
例には、ジヌクレオチドのビオチン系物質(pCU−bio)とのライゲーションが含まれる。
【0128】
13.シグナル増幅
a.TSA
チラミドシグナル増幅(TSA)により、ストレプトアビジン−ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)複合体が結合した1つのビオチンから、その場でビオチンの数が増幅される。チラミドビオチン基質は、HRPにより加工され、その場で沈殿する不溶性ビオチンを生じ、適切なマイクロスフェア上にビオチンのクラスターを作り出す。
【0129】
b.Genisphere
当該方法は、大量のビオチン分子が結合した分岐DNAの3DNAシステムを利用するものであり、少量の出発物質しか入手できない場合のmiRNA検出に有用である。
【0130】
14.転写:
a.直接転写
当該方法では、RNAの直線増幅のための、ビオチン標識された転写産物が作り出される。当該方法では、標的核酸からビオチン標識された転写産物を作り出すことができる。
【0131】
b.SenseAmp plus
当該方法は、Genisphereキットを用いたmiRNA増幅を利用する。本明細書には複数の態様が記載されており、以下の非限定的な実施例により例示されている。
【0132】
15.可能な用途
Luminex技術を用いた低分子RNA検査は、迅速で信頼性の高い技術であり、一度に多数の試料に対してハイスループット様式で適用できる。このシステムは、感度と特異性が高く、したがって、基礎生物学研究、診断および治療のための、miRNAまたは標的核酸の広範囲な検証およびプロファイリングに適用することができる。この技術は再現性が高いため、信頼性の高いものとなっている。
【0133】
本明細書において提供される方法は、細胞において新規に予測されたmiRNAを確認するために用いることができる。また、他の短鎖RNAの検証および発現プロファイリングに用いることもできる。また、治療または研究用途において、細胞における導入siRNA(阻害性RNA)の発現の発現レベルを検証するためにも用いることができる。また、癌細胞および正常細胞におけるmiRNAの差異の発見、体液および生検に含まれる癌細胞の早期検出、癌の段階の予後診断、潜在的な生存率および治療に対する応答性の予測、適切な抗癌治療の決定または治療化合物候補のスクリーニングのために転移癌の組織由来を決定するための細胞、組織および体液中のmiRNAの発現検査に用いることができる。また、組織の発生および分化を研究するための、胚由来試料におけるmiRNAプロファイリングに用いることもできる。
【0134】
16.キット
キットも提供され、このキットは、本明細書に記載する核酸の他に、以下に記載するもののいずれかもしくは全てを含むことができる:アッセイ用試薬、バッファー、プローブおよび/またはプライマー、ならびに滅菌生理食塩水または他の医薬的に許容可能なエマルジョンおよび懸濁基剤。これに加え、キットは、本明細書に記載される方法を実施するための指示(例えば、プロトコル)を含む説明書を含むことができる。
【0135】
例えば、キットは、標的核酸配列の増幅、検出、同定または定量用のキットであってもよい。キットは、ポリ(T)プライマー、フォワードプライマー、リバースプライマーおよびプローブを含むことができる。
【実施例】
【0136】
実施例1
標的核酸の作製方法
以下に、miRNAから標的核酸を作製する方法を記載する。培養CHO細胞から全RNAを単離・抽出した。ポリアデニル化によりアダプター配列を作製するか、または逆転写前にアダプター配列をアダプター配列にライゲーションした。次いで、T4 RNAリガーゼによりライゲーション反応を行い、RNAの3’末端にアダプター配列をライゲーションした。
【0137】
アダプター配列の3’末端に相補的な配列を含むプライマーを用いて逆転写(RT)反応を行った。逆転写プライマー(オリゴdTプライマー)を、以下の配列の1つから選択した:
5’−GCGAGCACAGAATTAATACGACTCACTACCCGTTTTTTTTTTTTVN−3’(配列番号:2083
5’−GCGAGCACAGAATTAATACGACTCACTATCGGTTTTTTTTTTTTVN−3’(配列番号:2083
5’−GCGAGCACAGAATTAATACGACTCACTACCCGTTTTTTTTTTVN−3’(配列番号:20853)
5’−GCGAGCACAGAATTAATACGACTCACTATCCGTTTTTTTTTTTTVN−3’(配列番号:2085
5’−GCGAGCACAGAATTAATACGACTCACTATCCCTTTTTTTTTTTTVN−3’(配列番号:2085
5’−GCGAGCACAGAATTAATACGACTCACTATCCGTTTTTATTTTTTVN−3’(配列番号:2085
5’−GCGAGCACAGAATTAATACGACTCACTATAGGTTTTTTTTTTTTVN−3’(配列番号:2085
5’−GCGAGCACAGAATTAATACGACTCACTATCCGATTTTTTTTTTTVN−3’(配列番号:2085
ここで、VはA、CおよびGの混合物であり、Nは4種類のヌクレオチド全ての混合物である。RNAの逆転写産物は、標的核酸および5’末端配列に相補的である特異的フォワードプライマーを用いたリアルタイムPCR反応により増幅した。フォワードプライマーは、配列5’−CAGTCATTTGGG−3’(配列番号:20839)または表7の「FD−P」欄に含まれる配列番号に対応する配列から選択した。
【0138】
リバースプライマーもアダプター配列の5’末端に相補的な配列から選択した。リバースプライマーは、5’−GCGAGCACAGAATTAATACGAC−3’(配列番号:20859)であった。プローブは、アダプター配列の3’末端と部分的に相補的であった。
【0139】
次に、PCRを行った。PCR反応の第1サイクルのアニーリング温度は58℃であった。第1サイクルは、5サイクルである。PCR反応の残りのサイクルは、60℃であった。残りのサイクルは、35サイクルであった。標的核酸は、5’−TGAGGTAGTAGGTTGTATAGTT−3’(配列番号:20840)の配列を用いて、上記の方法により作製した。
【0140】
実施例2
標的核酸検出用プローブ
ここでは、標的核酸検出用プローブについて記載する。5’−CCGTTTTTTTTTTTT−3’(配列番号:20845)の配列を用いてポリアデニル化cDNAに対するプローブを作製した。この配列には、標的結合領域に相補的な配列が連結されており、これによってプローブが標的核酸のアダプター配列の3’末端に部分的に相補的であることが確実となる。合成された標的結合領域には、3種類の変異があり、各変異は、標的核酸に対して1ヌクレオチドだけシフトしている。
【0141】
配列5’−TGAGGTAGTAGGTTGTATAGTT−3’(配列番号:20840)を含む標的核酸に結合可能な3種類の変異を用いたが、これらは以下の配列を含んでいる:
プローブ_v1
5’−CCGTTTTTTTTTTTTAACTATAC−3’(配列番号:20846)
プローブ_v2
5’−CCGTTTTTTTTTTTTACTATACA−3’(配列番号:20847)
プローブ_v3
5’−CCGTTTTTTTTTTTTCTATACAA−3’(配列番号:20848)
【0142】
標的結合領域の配列は、3’末端に「A」を有していてはいけない。例えば、配列5’−TGATTGGTACGTCTGTGGGTAGA−3’(配列番号:20849)を含む標的核酸に結合可能なプローブの3種類の変異は、以下の配列を含む:
プローブ_v1
5’−CCGTTTTTTTTTTTTCTACCCAC−3’(配列番号:20850)
プローブ_v2
5’−CCGTTTTTTTTTTTTACCCACAG−3’(配列番号:20851)
プローブ_v3
5’−CCGTTTTTTTTTTTTCCCACAGA−3’(配列番号:20852)
【0143】
プローブは、表7の「プローブ1」、「プローブ2」または「プローブ3」の欄に含まれる配列番号の配列に相当する配列を用いて設計することも可能である。
【0144】
実施例3
1ヌクレオチドの違いの検出:let−7a対let−7d
実施例1に記載する方法により、1ヌクレオチドだけ異なるヒトLet−7ファミリーのメンバーであるmiRNAを検出した。このファミリーの2つのメンバーの配列は、以下の通りである:
hsa−Let−7a 5’−UGAGGUAGUAGGUUGUAUAGUU−3’(配列番号:20840)
hsa−Let−7c 5’−UGAGGUAGUAGGUUGUAUGUU−3’(配列番号:20841)
hsa−Let−7d 5’−GAGGUAGUAGGUUGAUAGU−3’(配列番号:20842)
【0145】
(i)上記に記載した逆転写プライマーのアダプター配列とミスマッチを有さない(すなわち、0ミスマッチ)5’−CCG配列、および(ii)Let−7aの3’末端と完全にマッチする配列、を有するマイナーグルーブバインダー(MGB)プローブをリアルタイムPCRで用いた(図3)。リアルタイムPCRの際に0ミスマッチプローブを定量することにより、Let−7aのmiRNAが、Let−7cから区別できないことが分かった。これは、3.50E-05ng/μlの濃度でLet−7aおよびLet−7cにおいて、それぞれ23.43および23.73の同程度のサイクル域値(CT)が観察されたことによっても示された(表7)。
【0146】
しかしながら、アダプター配列と1つのミスマッチを有するLet−7a特異的MGBプローブを用いることにより(図4)、対応するCTの差異で示されるように、リアルタイムPCRでLet−7aとLet−7cとを区別することが可能であった(表7)。1つのミスマッチを有するLet−7a特異的プローブにより検出されたLet−7aおよびLet−7cのCTは、3.50E-05ng/μlの濃度で、40サイクルの後に、それぞれ28.3および検出不能値(ND)であった。
【0147】
非常に類似性の高いmiRNA(Let−7a、Let−7cおよびLet−7d)を混合した場合でさえも、高い特異性は残っていた。表8Aに示すように、混合物中で検出されたCTは、各miRNAについて個別に検出されたCTとほぼ一致していた。
【0148】
上記の方法は、アダプター配列に対して2つの5’ミスマッチを有するLet−7a特異的MGBプローブを用いて試験した場合にも成功した。表7に示すように、2つのミスマッチを有するLet−7a特異的プローブにより、3.50E-04ng/μlの濃度においてLet−7aおよびLet−7cの差次的検出が可能であったが、1つのミスマッチを有するLet−7a特異的プローブの場合と比べてCTが上昇していた。
表7 Let−7aプローブによるLet−7ファミリーメンバーの検出
【表8】

【0149】
表8Aには、アダプター配列と比べて1つのミスマッチを有するLet−7c特異的プローブが、Let−7aまたはLet−7dのCTと比べて低いCTでLet−7cを検出することが示されており、したがって、Let−7cと他のファミリーメンバーとを区別する能力が実証されている。同様に、1つのミスマッチを有するLet−7d特異的プローブは、Let−7aまたはLet−7cのCTと比べて低いCTでLet−7dを検出した。
表8A Let−7ファミリプローブによるLet−7ファミリーメンバーの検出
【表9】

【0150】
上記の方法は、表2Bに示す種々の部位においてcDNAアダプター配列とのミスマッチを含むオリゴdTプライマー(配列番号:20853〜20856)を用いた試験でも成功した。
【0151】
表7および表8A、Bに記載される結果は、本明細書で記載するプローブまたはオリゴdTプライマーを用いたリアルタイムPCRにより、配列においてたった1つのヌクレオチドだけ異なる標的核酸を差次的に検出可能であることを示している。
表8 異なる位置にミスマッチを含むオリゴdTプライマーを用いたLet−7ファミリーメンバーの検出
【表10】

【表11】

【0152】
実施例 1ヌクレオチドの違いの検出:miR−99a対miR−100
実施例1および2に記載の方法と同様の方法によりリアルタイムPCRを用いてmiRNAであるmiR−99aとmiR−100との間の1ヌクレオチドの違いも検出した。miRNAの配列は以下の通りである:
miR−99a:5’−AACCCGUAGAUCCGAUCUUGUG−3’(配列番号:20843)
miR−100:5’−AACCCGUAGAUCCGAACUUGUG−3’(配列番号:20844)
【0153】
表9に示すように、cDNAアダプター配列に対して1つのミスマッチを有するが、miR−99aに対してはミスマッチを有していないプローブは、同一のRNA濃度で、miR−100と比べて約9サイクル低いCTでmiR−99を認識した。
【0154】
反対に、cDNAアダプター配列に対して1つのミスマッチを有するが、miR−100に対してはミスマッチを有していないプローブは、miR−99に対して検出されたCTと比べて約5サイクル低いCTでmiR−100を認識した。本発明の方法の高い特異性は、非常に類似度の高いmiRNAを混合した場合でも維持される(表9)。
表9 hsa−miR−99aおよびhsa−miR−100の検出
【表12】

【0155】
実施例5
標的核酸の検出感度
リアルタイムPCRの感度を試験した。miR−122a特異的プローブを用いて実施例1および2に記載する方法により、リアルタイム逆転写PCRにより、異なるRNA供給源(脳、肝臓、およびHeLa細胞またはこれらの混合物)から肝臓に特異的なmiRNAであるhsa−miR−122aを増幅した。逆転写反応1回あたりのRNAの初期量は、0.5ngの全RNAであった。脳の全RNAの量は増加したが、肝臓の全RNA量は減少した(表10に挙げられる比率に従って)。
【0156】
表10に示すように、肝臓特異的miRNAの発現を検出した。肝臓以外(脳、HeLa)のRNA供給源からはシグナルは検出されなかったが、肝臓RNAからは検出された。さらに、肝臓RNAの量を半分に減らした場合、関連分子数が少なくなるまで(約20分子未満)、CTが1上昇した。さらに、僅かに0.03125%のRNAプールしか肝臓から得られない場合であっても、99.96875%の無関係なRNAのバックグラウンド中でmiR−122aが検出された。このような感度は、他の既知の方法では達成されていない。
表10 異なる供給源に由来するRNA中のmiR−122aの検出
【表13】

【0157】
実施例6
多様なRNAバックグラウンド中の合成miR124aの検出
特定標的核酸の検出を、低濃度の標的ヌクレオチド配列が高濃度の核酸バックグラウンド中に存在する場合において行うことにより、実施例1および2に記載する方法の感度を試験した。バックグラウンドであるHeLa細胞由来の全RNA 0.05ngに対して少量の合成miR−124aを、miR−124a標的核酸配列の最終濃度が2.35×10-6 fmol〜1.16×10-9 fmolとなるように添加した。各濃度につき、5つの重複する系で試験を行った。平均CTおよび標準偏差を計算した。表11は、HeLa細胞由来のバックグラウンドRNAが、47.61CTのシグナルを与えたことを示す。高濃度においては、合成124a−RNAの量が半分に減少した場合、CTは約1増加した。バックグラウンドシグナルを超えるシグナルを与えた合成124a−RNAの最少量は、1.86×10-8 fmolである。
表11 多様なRNAバックグラウンド中の合成miR−124aの検出
【表14】

【0158】
実施例7
ヒト血清中の異なるmiRNA標的配列の検出
次いで、実施例1および2に記載する方法を、ヒト血清中の多くのmiRNA標的配列の検出に応用した。LSバッファー(Promega社)をMirvanaキット(Ambion社)と組み合わせて用いて、3名の個人の血清試料から全RNAを抽出した。RNA精製のために、対象番号5および7から300μlの容量の血清を得て、対象番号6からは150μlの血清を得た。上記に記載する方法による各PCR反応およびハイブリダイゼーション反応には、合計で10%の精製RNAを用いた。miR標的配列に特異的なプローブを、以下の表12に示した。表12は、miR−21、hsa−miR−142−3pおよびLet−7d等の異なるマイクロRNAが、血清試料中で特異的に検出可能であったことを示す。表12からは、ヒト血清等の生体液から種々のmiRNA標的配列を、抽出、単離および検出することが可能なことが示唆される。
表12 ヒト血清中の異なるマイクロRNA標的配列の検出
【表15】

【0159】
実施例8
ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織中の異なるmiRNA標的配列の検出
膀胱、前立腺および大腸転移を有する肝臓由来のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織からRNAを単離した。
【0160】
1mlのキシレン(Biolab社)を1〜2mgの組織に添加し、57℃で5分間インキュベートし、10,000gで2分間遠心した。上清を取り除き、1mlのエタノール(100%)(Biolab社)を添加した。10,000gで10分間遠心した後、上清を捨て、前記洗浄工程を繰り返した。10〜15分間風乾した後、500μlのバッファーB(NaCl 10mM、Tris pH7.6、500mM、EDTA 20mM、SDS 1%)および5μlのプロテイナーゼK(50mg/ml)(Sigma社)を添加した。45℃で16時間インキュベーションを行った後、100℃で7分間のプロテイナーゼKの失活を行った。酸性フェノールクロロホルム(1:1)(Sigma社)で抽出を行った後、最大速度にて4℃で10分間遠心分離を行い、上相を新しいチューブに移して、3倍量の100%エタノール、0.1倍量のNaOAc(BioLab社)および8μlのグリコーゲン(Ambion社)を添加して−20℃で一晩静置した。
【0161】
最大速度にて4℃で40分間遠心分離を行い、1mlのエタノール(85%)で洗浄して乾燥させた後、RNAを45μlのDDWに再懸濁した。
【0162】
RNA濃度を測定し、その濃度に応じてDNase Turbo(Ambion社)を添加した(RNA 10μgあたりDNase 1μl)。室温で30分間インキュベーションを行い、酸性フェノールクロロホルムで抽出して沈殿させた後、RNAを45μlのDDWに再懸濁した。再度RNA濃度を測定し、その濃度に応じてDNase Turbo(Ambion社)を添加した(RNA 10μgあたりDNase 1μl)。室温で30分間インキュベーションを行い、酸性フェノールクロロホルムで抽出して沈殿させた後、RNAを20μlのDDWに再懸濁した。
【0163】
上記に記載する方法による各PCR反応およびハイブリダイゼーション反応には、合計で10%の精製RNAを用いた。miR標的配列に特異的なプローブを、以下の表13に示す。表13は、FFPE試料中でも異なるマイクロRNAが特異的に検出可能であったことを示す。表13は、FFPE組織から種々のマイクロRNA標的配列を、抽出、単離および検出することが可能であることを示す。
表13 (FFPE)組織中の異なるマイクロRNA標的配列の検出
【表16】

【0164】
実施例9
羊水中の異なるmiRNA標的配列の検出
帝王切開手術中に20mlの羊水(非胎便性)を2本の15ml試験管に回収した。4℃、1000gで10分間遠心分離を行って細胞を回収した。上清を回収してエッペンドルフチューブに400μlの容量で分注し、−80℃で冷凍した。細胞ペレットをPBSで再懸濁し、同様の条件で再度遠心分離した。次いでペレットを0.5mlのバッファーA(Biological Industries社のEZ−RNA IIキットに付属)に再懸濁し、エッペンドルフチューブに移して−80℃で保存した。
【0165】
EZ−RNA IIキット(Biological Industries 社、イスラエル)を製造元のプロトコルに従って用いて羊膜細胞画分からRNAを回収した。
【0166】
羊水上清のRNAは、以下のように抽出した:
【0167】
100μlの試料を、予め加熱した0.8mlの抽出用溶液(NaCl、0.1M;Tris HCl pH8、10mM;DTT、40mM;EDTA pH8、10mM;SDS 70mM;プロテイナーゼK、0.65mg/ml)中で56℃、1時間インキュベーションを行った。コントロールとしてスパイクを添加した。
【0168】
3M NaOAc 90μlおよび酸性フェノール:クロロホルム 1mlを添加した。2層に分離するまで4℃でのインキュベーションを行った(少なくとも20分間)。16,000gにて室温で20分間遠心分離を行った。水相(約1ml)を新しいチューブに移した。8μlのグリコーゲンおよび3倍量のETOHを添加して、−20℃で一晩沈殿させた。最大速度にて4℃で40分間遠心分離を行った。
【0169】
ペレットを85%ETOHで洗浄して65℃で乾燥させ、43μlのDDWに再懸濁した。2μlのTurbo DNase(Ambion社)および5μlのバッファーを添加し、37℃で1時間インキュベーションを行った。
【0170】
酸性フェノール:クロロホルムで抽出を行った後、ペレットを20μlのDDWに再懸濁した。
【0171】
実施例1および2に記載する方法による各PCR反応およびハイブリダイゼーション反応には、100μlの羊水から単離したRNAを用いた。
【0172】
表14は、6名の個人から得た羊水試料中においても異なるマイクロRNAが特異的に検出可能であったことを示す。表14には、羊水試料から種々のマイクロRNA標的配列を抽出、単離および検出することが可能なことが初めて示されている。
表14 羊水中の異なるマイクロRNA標的配列の検出
【表17】

【0173】
実施例10
ヒトの尿中の異なるmiRNA標的配列の検出
尿(500μl)からのmiRNA抽出に用いたプロトコルは、実施例9に記載されたものと同様である。表15は、ヒトの尿試料中においても異なるマイクロRNAが特異的に検出可能であったことを示す。表15には、ヒトの尿から種々のマイクロRNA標的配列を抽出、単離および検出することが可能なことが初めて示されている。
表15 ヒトの尿中の異なるマイクロRNA標的配列の検出
【表18】

【0174】
実施例11
唾液、胸水および胸部分泌物中の異なるmiRNA標的配列の検出
唾液、胸水および胸部分泌物からのmiRNA抽出に用いたプロトコルは、実施例9に記載されたものと同様であるが、僅かに変更を加えた。抽出される唾液RNAの純度を高めるため、プロテイナーゼKとのインキュベーションを3時間に延長し、RNAは、−80℃で一晩沈殿させた。
【0175】
表16A−Bは、ヒトの唾液、胸水および胸部分泌物中においても異なるマイクロRNAを特異的に検出可能であったことを示す。表16には、ヒトの唾液、胸水および胸部分泌物から種々のマイクロRNA標的配列を抽出、単離および検出することが可能なことが初めて示されている。
表16 ヒトの唾液中の異なるマイクロRNA標的配列の検出
【表19】

表16B 胸水および胸部分泌物中の異なるマイクロRNA標的配列の検出
【表20】

【0176】
実施例12
標的核酸の検出のためのeclipseプローブの使用
MGB eclipseプローブは、マイナーバインダー部分を含んでおり、これによって短いプローブを非常に高い特異性で用いることが可能になる。これらは5’末端にマイナーグルーブバインダーおよびフルオロフォア(またはクエンチャー)を有し、3’末端にクエンチャー(またはフルオロフォア)を有する短い直鎖状プローブであり、実施例3で用いたMGB分子(TaqMan MGBプローブ)とは反対の方向性を有する。マイナーグルーブバインダーにより、Taqポリメラーゼがプローブを切断するエキソヌクレアーゼ活性を阻害することができる。
【0177】
先のMGBプローブを用いたのと同様の条件での定量的リアルタイムPCR反応においてeclipseMGB分子を用いた。PCR用オリゴdTプライマーおよびプローブの配列を以下に示す。
プローブLet7A21:CCGTTTTTTTTTAACTATC(配列番号:20860)
プローブLet7C21:CCGTTTTTTTTTTAACCATAC(配列番号:20861)
eclipse反応に用いたRTプライマー配列:
RT10:GCGAGCACAGAATTAATACGACTCACTATCGGTTTTTTTTTTVN(配列番号:20862)
【0178】
アダプター配列と1つのミスマッチを有するLet−7aまたはLet−7cに特異的なeclipse MGBプローブを用いることにより、それらに対応するCTの差異に示されるように、リアルタイムPCRによってLet−7aとLet−7cとを区別することが可能になった(表17)。
表17 eclipse MGBプローブによるLet−7ファミリーメンバーの検出
【表21】

【0179】
実施例13
miRNAの予測
miRNAを予測するため、その内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願第60/522,459、第10/709,577号および第10/709,572号に記載される方法と同様の計算論的アプローチを用いて、全ヒトゲノムに渡って潜在的なmiRNAコーディング遺伝子を調査した。つまり、全ヒトゲノムの非タンパク質コーディング領域を、ヘアピン構造に基づいて調査した。予測上のヘアピンおよび潜在的なmiRNAについて、熱力学的安定性、構造上の特徴および前後関係の特徴に基づいてスコアリングした。アルゴリズムは、既に有効性が実証されているサンガーデータベースにあるmiRNAを用いてキャリブレーションした。その内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願第11/429,720号の表1には、コンピューターによるスクリーニングで予測された各ヘアピン(「HID」)が記載されている。また、米国特許出願第11/429,720号の表1には、各ヘアピンのゲノム上の位置(「ヘアピン位置」)が列挙されている。ゲノム上の位置のフォーマットは、<chr_id><strand><start position>という連結である。例えば、19+135460000は、19番染色体の+鎖、開始位置135460000を指す。23〜25番染色体は、それぞれ、X染色体、Y染色体およびミトコンドリアDNAを指す。染色体上の位置は、NCBI Build35 バージョン1(35.1)に基づいてInternational Human Genome Sequencing Consortiumで作製された、UCSC(http://genome.ucsc.edu)によるヒトゲノムのhg17アセンブリーに基づいている。
【0180】
米国特許出願第11/429,720号の表1には、そのヘアピンが、進化を通じて保存されているかどうか(「C」)も記載されている。ヘアピンは、phastConsデータを用いて、保存(「Y」)または非保存(「N」)として同定した。phastConsデータは、チンパンジー、マウス、ラット、イヌ、ニワトリ、カエルおよびゼブラフィッシュのゲノムに対するヒトゲノム中での各ヌクレオチドの進化上の保存の尺度であり、BlastZによる各々の種におけるベスト・イン・ゲノム・ペアワイズ・アライメント(best−in−genome pair wise alignment)を用いたphylo−HMMおよび、これに続く8種類のゲノムのmultiZアライメントに基づいている(Siepel et al,J. Comput.Biol 11,413−428,2004 and Schwartz et al.,Genome Res.13,103−107,2003)。ヘアピンステム中のいずれかの15ヌクレオチド配列において、7種類の種に対する平均phastCons保存スコアが、少なくとも0.9であれば、そのヘアピンは保存されているものとして記載される(Berezikov,E.et al.Phylogenetic Shadowing and Computational Identification of Human microRNA Genes.Cell 120,21−24,2005)。米国特許出願第11/429,720号の表1には、各ヘアピンについてのゲノムタイプ(「T」)も、遺伝子間(「G」)、イントロン(「I」)またはエクソン(「E」)として記載されている。米国特許出願第11/429,720号の表1には、予測されたそれぞれのmiRNAおよびmiRNA*の配列番号(「MID」)も記載されている。米国特許出願第11/429,720号の表1には、各ヘアピンの予測スコアグレード(「P」)が、Hofacker et al(Monatshefte f.Chemie 125:167−188,1994.)に記載されるように、0〜1のスコア(1:ヘアピンの信頼性が最も高い)で記載されている。グレードがゼロまたはない場合、そのグレードは、p値が<0.05である、より低い値のPalGradeに変換される。米国特許出願第11/429,720号の表1には、各Pスコアの値についてバックグラウンドのヘアピンを差し引いて計算したp値(「Pval」)も記載されている。米国特許出願第11/429,720号の表1に示すように、Pvalが>0.05となる場合はほとんど認められない。これらの各ケースにおいて、ヘアピンは高度に保存されているかまたは確認されている(F=Y)。米国特許出願第11/429,720号の表1には、miRNAが発現解析により確認されたかどうか(「E」)も記載されている:この欄は、故意に開けたままにした。米国特許出願第11/429,720号の表1には、miRNAが配列決定により確認されたかどうか(「S」)(Y=はい、N=いいえ)も記載されている。予想されるmiRNAと配列決定したmiRNAとの間に配列の差異が認められる場合、配列決定した配列を予想配列とする。miRNAを配列決定できないまたはmiRNAの発現を検出できないことは、必ずしもmiRNAが存在しないことを意味しているのではないことに留意すべきである。このような非検出miRNAは、試験対象ではなかった組織中で発現している可能性がある。これに加え、このよう非検出miRNAは、試験対象組織中でも、試験細胞とは異なる段階または異なる条件下で発現している可能性がある。米国特許出願第11/429,720号の表1には、少なくとも1種類の疾患において、miRNAが差次的発現を示したかどうか(「D」)(Y=はい、N=いいえ)も記載されており、このことは、その内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願第11/429,720号の表2に詳細に示されている。米国特許出願第11/429,720号の表1には、ヒトもしくはマウスで検出されたかまたはヒトで予測されたようにSanger DB Release 8(2005年2月)(http://nar.oupjournals.org/)にmiRNAが存在していたかどうか(「F」)(Y=はい、N=いいえ)も記載されている。上記で議論したように、サンガーデータベースに記載されるmiRNAは、予測アルゴリズムの要素およびアウトプット用のコントロールである。米国特許出願第11/429,720号の表1には、お互いが5000ヌクレオチド以内に存在するヘアピンの遺伝子位置クラスター(「LC」)も記載されている。同一のLCを有する各miRNAは、同一の遺伝子クラスターを共通して有している。米国特許出願第11/429,720号の表1には、正確にマッチする2〜7個のシードによりmiRNAをグループ分けするシードクラスター(seed cluster)(「SC」)も記載されている。同一のSCを有する各miRNAは、同一のシードを有する。5〜6ヌクレオチドのシード長であってもmiRNA活性に十分であるという議論については、Lewis et al.,Cell,120;15−20(2005)を参照されたい。
【0181】
実施例14
標的遺伝子の予測
次に、実施例13のコンピューターによるスクリーニングで予測されたmiRNAを用い、その内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願第60/522,459、第10/709,577号および第10/709,572号に記載される方法と類似する2種類の計算論的アプローチをmiRNAの予測に用いて、標的遺伝子とその結合部位を予測した。
【0182】
その内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願第11/429,720号の表4には、コンピューターによるスクリーニングで予測された各miRNA(「MID」)およびそのヘアピン(HID)の標的遺伝子が記載されている。標的遺伝子の名称は、NCBI Reference Sequence release 16(http://www.ncbi.nlm.nih.gov;Pruitt et al.,Nucleic Acids Res,33(1):D501−D504,2005;Pruitt et al.,Trends Genet.,16(1):44−47,2000;およびTatusova et al.,Bioinformatics,15(7−8):536−43,1999)に基づく。標的遺伝子は、UTR上のシードの下流に「A」を有する7ヌクレオチドのmiRNAシード(2〜8番目の位置)に完全に相補的にマッチすることおよび/またはシードの上流のヌクレオチド(全部で8ヌクレオチド)が完全にマッチすることに基づいて同定した。標的遺伝子の同定に関する議論については、Lewis et al.,Cell,120:15−20,(2005)を参照されたい。miRNAによるUTRへの結合に十分なシードの議論については、Lim au et al.,(Nature 2005)およびBrenneck et al,(PLoS Biol 2005)を参照されたい。次に、少なくとも30個のヌクレオチドからなるUTRを含む標的遺伝子のみを含ませることでフィルターを掛けた標的遺伝子のデータセットを用いることで結合部位を予測した。一つの遺伝子について複数の転写産物が存在した場合には、結合部位スクリーニングでは、最長の転写産物のみを考慮にした。合計で16,656種類の転写産物がデータセットに含まれた。米国特許出願第11/429,720号の表4には、各miRNA(MID)から予測された各標的遺伝子の予測結合部位の配列番号が記載されている。結合部位の配列には、結合部位の5’および3’側の20個のヌクレオチドが含まれる。結合部位が2つのエクソンを含む場合、この配列は、両末端はスプライシングされたmRNA上に位置するが、結合部位の5’および3’側の20個のヌクレオチドが含まれる。その内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願第11/429,720号の表5には、標的遺伝子によるmiRNA(「MID」)/ヘアピン(「HID」)と疾患との関係が示されている。疾患名はOMIMに基づく。前記ヘアピンが位置している宿主遺伝子を疾患と合理的に関連付けることの議論については、Baskerville and Bartel,RNA,11:241−247(2005)およびRodriguez et al.,Genome Res.,14:1902−1910(2004)を参照されたい。米国特許出願第11/429,720号の表5には、疾患と関連するmiRNA標的遺伝子の数(「N」)が示されている。また、米国特許出願第11/429,720号の表5には、疾患と関連する遺伝子の総数(「T」)も示されており、この総数は、miRNAに対する結合部位を有すると予測された遺伝子に基づく。米国特許出願第11/429,720号の表5には、Tに対するNのパーセンテージ(「P」)と超幾何学的解析によるp値(「Pval」)も示されている。その内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願第11/429,720号の表8には、その内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願第11/429,720号の表5および米国特許出願第11/429,720号の表9〜11に記載される疾患の疾患コードが示されている。超幾何学的解析については、Schaum’s Outline of Elements of Statistics II:Inferential Statisticsを参照されたい。米国特許出願第11/429,720号の表9には、標的配列(「遺伝子名」)と疾患(「疾患コード」)との関係が示されている。米国特許出願第11/429,720号の表10には、miRNA(「MID」)/ヘアピン(「HID」)、既知のSNPsと疾患との関係が示されている。SNPは、ヘアピンの配列中に同定されたものである。これらヘアピンのmiRNAについては、米国特許出願第11/429,720号の表4に記載されるそれらの全ての標的遺伝子をまとめた。これらの遺伝子については、OMIMに記載される疾患と関連性を有するかどうかを検討した。米国特許出願第11/429,720号の表9に記載される各miRNAの関連疾患の数字コードは、米国特許出願第11/429,720号の表10に示されている。疾患コードは、米国特許出願第11/429,720号の表8に基づく。標的遺伝子が、米国特許出願第11/429,720号の表9に示す疾患と関連性を有しない場合、SNPデータは示されない。各SNP(「SNP_Id」)は、NCBI Human Genome Build 35.1に基づくNCBIデータベースdbSNP BUILD 124によって同定している。各SNPのゲノム上の位置(「SNP_location」)は、連結式「<chr_id>:<start position>」により提供される。例えば、「19:135460569」は、19番染色体、+鎖、開始位置135460569を意味する。変異は、SNPとみなされるが、数多くの変異が数個のヌクレオチドの範囲にわたる(例えば、小規模な挿入、欠失、マイクロサテライト等)。SNPと疾患との関連性の議論については、Swibertus(Blood 1996)およびFrittitta(Diabetes 2001)を参照されたい。米国特許出願第11/429,720号の表11には、miRNA(「MID」)、ヘアピン(「HID」)、SNP同定番号(「SNP_Id」)、SNPの位置(「SNP_location」)、遺伝子および疾患の関連性が示されている。SNPの同定と位置決定については、米国特許出願第11/429,720号の表10の記載に従って定義される。記載されているSNPは、OMIMデータベース中の疾患と関連することが判明したmiRNA標的遺伝子中に位置するもののみである。「遺伝子」には、SNPが位置している遺伝子の名称が示されている。
【0183】
実施例15
miRNAの差次的発現
1.配列決定
ヘアピン(「HID」)を確認するため、その内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願第60/522,459号、第10/709,577号および第10/709,572号に記載される方法と同様の配列決定法により多数のmiRNAを評価した。その内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願第11/429,720号の表3には、示されている組織(「組織」)における、miRNA(「MID」)の配列決定により確認されたヘアピン(「HID」)が示されている。その内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願第11/429,720号の表6には、組織の数字コードが示されている。
【0184】
2.差次的発現
実施例13で予測されたヘアピンおよびmiRNAの確認を行うため、その内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願第60/522,459号、第10/709,577号および第10/709,572号に記載される方法と同様のハイスループットマイクロアレイを用いて、種々の組織における発現(対コントロール)の検出を行った。マイクロアレイ画像の解析には、Feature Extractionソフトウェア(バージョン7.1.1、Agilent社)を用いた。次いで、上記に記載する方法と同様の方法を用いて種々の疾患組織におけるmiRNAの差次的発現を解析した。米国特許出願第11/429,720号の表2には、示されている疾患について、正常組織との比較における疾患関連発現(「R」)の比率が示されている。これら疾患の疾患コードが、米国特許出願第11/429,720号の表7に示されている。米国特許出願第11/429,720号の表2には、正規化したシグナルの統計解析(「RPval」)が示されている。各プローブのシグナルは、その中央値の強度として設定した。シグナルは、バックグラウンドレベル400から飽和レベル66,000の範囲である。2チャンネルのハイブリダイゼーションを行い、Cy3シグナルをCy5シグナルと比較し、ここで、蛍光を入れ替えてチップを行い(fluor reversed chip)(正常対疾患)、プローブシグナルはその平均シグナルに設定した。最初に対数変換(log2)を行い、その後に二次多項式グラフを適用した。正規化の後、各miRNAおよび疾患についてt検定を行った。p値は、重複実験における同程度またはこれを超えるシグナル比の出現率に基づいて評価した。米国特許出願第11/429,720号の表2にはp値が<0.05のmiRNAが示されている。米国特許出願第11/429,720号の表2には、各解析に用いた試料の総数(「N」)が示されている。米国特許出願第11/429,720号の表2に示す差次的発現の解析は、多数のmiRNAの発現が、疾患組織において有意に変化することを示す。
【0185】
実施例16
バイオチップ
1.プローブプリンティング
表7に記載する配列(配列番号:1〜4167)を有する乾燥マイクロRNA核酸プローブを3×塩化ナトリウム−クエン酸ナトリウムバッファー(SSC)+0.001%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)または2×SSC+0.0035%SDS中に核酸の最終濃度が20μMまたは10μMになるように溶解した。次いで、Genomic Solutions(登録商標) BioRobotics MicroGrid II をMicroGridの製造元の指示に従って用いてSchott Nexterion(登録商標) Slide Eコートされたマイクロアレイスライド上にプローブをスポット(すなわち、プリント)した。プローブをスポットした後、マイクロアレイスライドの製造元の指示に従って、バイオチップに処理を施した。つまり、湿潤箱中で、42℃で0.5×SSCを用いてバイオチップを再水和し、直ちに130℃のヒートブロック上で3秒間乾燥させ、ブロッキングバッファー(1M Tris pH9、50mM エタノールアミン、0.1% SDS)中に浸し、頻繁に混合しながら50℃で20分間インキュベートした。次いで、バイオチップを、ヌクレアーゼフリーの水で1分間、2回リンスした。最後にバイオチップを遠心分離によって乾燥させた。
【0186】
2.生体試料の調製
新鮮な組織、株化細胞、ホルマリン固定パラフィン包埋RNA、および(サイズに応じてRNAを分離するカラム/ゲルを用いた後)低分子RNA分子が濃縮された分画化RNA由来の全RNAを、バイオチップにハイブリダイズしたRNAの検出を可能にする蛍光色素で標識した。RNAは、1分子当たり1種類のフルオロフォアで標識し、異なる低分子RNA分子間で標識は均一なものであった。フルオロフォアは、試料中のマイクロRNAの3’末端にRNAリガーゼによって酵素的に結合させた。次いで、以下の試薬を混合した:最大で3.5μLのRNA、スパイク 1μL、10×ライゲーションバッファー(NEB社)1μLまたはRNAリガーゼバッファー(Amersham社)p−CU−Cy3/Cy5* 1μL、DMSO 1.5μL、RNAsine 1μL、T4 RNAリガーゼ(NEB社)1μLまたはRNAリガーゼ(Amersham社)、最終容量(10μL)までDDWで希釈。*5’ホスフェート−rCrU−3−Cy3;5’ホスフェート−rCr−U−3−Cy5(r=リボ核酸ヌクレオチド)。前記の混合物を、ヒートブロック上で、40℃で1時間、次いで37℃で1時間インキュベートするか、または0℃で2〜16時間、あるいは16℃で2〜16時間(少量のRNAの場合)インキュベートした。
【0187】
3.バイオチップのハイブリダイゼーション
標識RNAを以下のようにしてバイオチップにハイブリダイズさせた。Ambion社(登録商標)の3×miRNAハイブリダイゼーションバッファーを、少なくとも5分間、70℃に予備加熱した。プリントしたバイオチップ上に清浄なカバースリップを置いた。ハイブリダイゼーションバッファーを標識RNA(RNA−Cy3標識およびRNA−Cy5標識)と混合して1×バッファーの最終濃度にし、次いで、この混合物(30μl)をバイオチップ上に注いでプローブを覆った。もしくは、1×バッファーの最終濃度にあるバッファーおよび前記混合物(110μl)をAgilentチャンバーベースが付いたAgilentガスケットスライド上に注いだ。バイオチップを3分間、95℃に加熱し、次いで、室温で最大速度にて1分間遠心分離することにより室温まで冷却した。最後に、ウォーターバスまたはAgilentオーブンにおいて、バイオチップを42℃で12〜16時間または48時間(低量のRNAの場合)標識RNA混合物とハイブリダイズした。ハイブリダイゼーションの後、バイオチップをバッファーA(1×SSC、0.2%SDS)で室温にて約30秒間洗浄し、バッファーB(0.1×SSC)で室温にて30秒間で2回洗浄し、次いで、遠心分離により乾燥させた。
【0188】
4.バイオチップのスキャニングおよび解析
100%の出力または100%の後に10%の出力で10μmまたは5μmの解像度が可能なAgilent Microarray Scanner Bundle G2565BAを用いてバイオチップをスキャンした。データは、SpotReaderソフトウェアまたはFeature extractionソフトウェアを用いて解析した。
【0189】
実施例17
LuminexマイクロスフェアへのDNAプローブのハイスループットカップリング
5.Luminexカップルビーズの調製
カルボキシル化Luminexマイクロスフェア(Luminex xMap technology社;カタログ番号 L100−C(101−200)−01)またはビーズを、EDC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド−HCl;Pierce社、製品番号77149)を用いてアミノ修飾したDNAプローブにカップリングする。mirVana miRNAプローブセット(Ambion社;カタログ番号1564)由来の、標的miRNAの逆相補体であるDNAプローブを用いる。プローブは、42〜46ヌクレオチド(nt)長であり、そのうち18〜24ntが特異的なmiRNAを標的にする。
【0190】
カップリング反応は、1.5mlチューブ内で行い、界面活性剤に対して耐性を有する96ウェルフィルタープレート(Multiscreen Solvinert;Millipore社;カタログ番号MSRLN0410)を用いて洗浄した。各DNAプローブの、独自の分光的特徴を有する特定の種類のビーズとのカップリング様式を特定する「結合表」を準備する。カップルビーズ混合物に含まれる各プローブは、したがって、その分光的特徴によって一意的に同定することができる。プローブは、最終濃度0.1mMになるようDDWに再懸濁する。
【0191】
ボルテックス撹拌および20秒間の超音波処理によってビーズを再懸濁する。各反応には200μl(2.5x106個のビーズ)を用いる。最大速度で2分間ビーズを遠心分離する。上清を取り除き、ビーズを25μlのMESバッファー(0.1M、pH4.5)に再懸濁し、再度ボルテックス撹拌および超音波処理を行う。
【0192】
ビーズに1μlのプローブ溶液を添加し、この懸濁液をボルテックス撹拌によって混和する。各反応混合物に、新たに懸濁したEDC(DDW中に10mg/ml、事前に室温に温める)を1.5μl添加し、この混合物をボルテックス撹拌する。次に、この反応系を、暗室にて室温にて30分間インキュベートする。再度、1.5μlの新しいEDCを添加してボルテックス撹拌し、その後、さらに30分間インキュベーションを行う。100μlの水でSolvinertフィルタープレートを事前に湿らせる。次に、カップリング反応物をチューブからフィルタープレートに移してバキューム吸引する。150μlの0.02% Tween−20をカップリング反応物に添加して、2回バキューム吸引する。次に、150μlの0.1%SDSを用いて2回連続した洗浄を行う。カップルビーズを50μlのTEに再懸濁して十分混合する。最後に、カップルビーズ混合物を1.5mlチューブに移し、4℃で保存する。
【0193】
カップルビーズ混合物を等量で混合して、100種類のプローブのそれぞれが独自の分光的特徴を有する異なる種類のビーズ(すなわち、100種類のビーズ)と結合した100種類からなるセットを調製する。Luminexを用いて、カップルビーズ混合物セットについてそれぞれのカップルビーズの割合を観察する。1.5×TMACハイブリダイゼーションバッファーを用いて、各カップルビーズについて、1反応系(33μl)当たり1500個のビーズの最終濃度となるように混合物を希釈する。
【0194】
6.RNA抽出および品質管理
パラフィン包埋組織もしくは凍結組織または体液(例えば、血液、尿、痰等)からRNAを単離する。抽出工程を最適化して、短鎖RNAも確実に回収できるようにする。最終段階では、RNAを、RNaseフリーの滅菌蒸留脱イオン水(DDW)で希釈する。
【0195】
RNAの品質については、NanoDrop分光光度計(NanoDrop Technologies社、ND−1000)でRNA濃度を測定することで評価する。残留塩および有機溶媒、ならびに残留タンパク質は、それぞれ260/230nmおよび260/280nmの波長比を測定することで評価する。さらなる品質評価および分解は、アガロース(1.2%)ゲルおよび尿素変性アクリルアミド(13%)ゲルを用いて行う。
【0196】
7.低分子RNA画分の濃縮
5μgのRNAを50〜150μlのDDWに希釈する。RNAをYM100カラム上にアプライする。カラムを14,000×Gにて4℃で25分間遠心分離する(Microcon YM100フィルター装置;Millipore社;Amicon;カタログ番号42413)。次に、流出液を、8μlの(50mg/ml)グリコーゲン、10%容量の3M NaOAc(pH5.2)および3〜4倍量の100%冷却EtOHを用いて、80℃で1時間、沈殿させる。次に、チューブを最大速度にて4℃で40分間遠心分離する。上清を捨て、ペレットを85%冷却EtOHで洗浄する。ペレットを乾燥させ、DDWに再懸濁する。5〜10%の回収率が期待される。
【0197】
8.ULS技術を用いたmiRNAの化学標識
5μgの全RNAから単離した濃縮低分子RNAを、MicroMax標識検出キット(Perkin−Elmer社;カタログ番号MP5545)を用いてビオチン標識する。「ネイキッド(naked)」スパイク(非ヒト配列を有するコントロールRNA分子、22nt長)を、標識工程のコントロールとして添加する(1反応系当たり5〜20fmol)。0.5μlのASAPビオチン試薬および2.5μlのASAP標識バッファーを添加する。最終容量が10μlになるようDDWを添加する。
【0198】
反応系を十分に混合し、温度制御装置(PCR装置)内で、85℃で30分間インキュベートし、その後4℃で5分間冷却する。KREApure 反応洗浄カラムを事前に20分間、室温に温める。事前に、カラムを、2mlのマイクロチューブ内で、最大速度で1分間遠心分離し、新しい1.5mlチューブに移す。次にカラムの上部に標識反応物を添加し、最大速度で再度1分間遠心分離する。流出液を回収し、ハイブリダイゼーションに用いるか、または−20℃で保存する。
【0199】
9.RNAハイブリダイゼーション
各ハイブリダイゼーション反応系には、以下が含まれる:MicroMax−標識miRNAs;ハイブリダイゼーションコントロールとして1〜5fmolの事前にビオチン標識されたスパイク(非ヒト配列を有するコントロールRNA分子、22nt長、5’側にビオチンを含む);および、miRNAプローブ核酸にカップルしたLuminexマイクロスフェアの混合物(すなわち、カップルビーズの混合物)。
【0200】
まず、RNAをTE(Tris−EDTAバッファー pH8.0;Sigma社、T−9285)で、最終容量が17μlになるよう希釈する。次に、ボルテックス撹拌および20秒間の超音波処理によってカップルビーズの混合物を再懸濁する。1反応系当たり1500個のカップルビーズを用いたRNAに33μlの混合物を添加する。バッファーとカップルビーズのみを含む(すなわち、RNAを含まない)チューブをバックグラウンドとして用いる。反応系を混合し、85℃で5分間変性し、次いで50℃で一晩ハイブリダイズする。ハイブリダイゼーション温度を55℃まで上昇させて特異性を高めることもできるが、全体のシグナルを低下させる恐れがある。
【0201】
10.Luminexによる測定
ハイブリダイゼーション反応物を、マルチスクリーン96ウェルフィルタープレート(Millipore社;カタログ番号MABVN1210)に移す。バキューム吸引を行い、各ウェルに×1 TMACハイブリダイゼーションバッファーに希釈した20μg/mlのストレプトアビジン−R−フィコエリスリン(PhycoLink社;Prozyme;カタログ番号PJ315)を75μl添加する。懸濁液を完全に混和して96ウェルプレート(Thermowell96ウェルプレート、ポリカーボネート製;Costar社、6511)に移す。
【0202】
50℃に10分間予熱したLuminex xMAPリーダーにプレートを設置し、この装置で解析を行う。二重レーザーによりビーズが識別され結合している物質の量が検出される。Luminexの仕様を以下のように設定する:試料容量:50μl;試料タイムアウト:100秒;二重判別ゲート:7,500〜20,000。
【0203】
実施例18
LuminexマイクロスフェアへのLNAプローブのハイスループットカップリング
mirVana miRNAプローブセットを用いる代わりにExiqon LNA miRNAプローブセットを用いる以外は、前述の実施例17の1〜6項と同様に行う。LNAプローブを用いる場合、カップルビーズ混合物へのハイブリダイゼーションは、65℃〜75℃の温度で行われる。
【0204】
実施例19
DNAカップルビーズプローブの感度
検出感度を評価するため、前述の実施例17(4項)に記載のように行うmiRNAビオチン標識反応の反応系に、濃度を上昇させた各種「ネイキッド」スパイク(非ヒト配列を有するコントロールRNA分子、22nt長)を添加した。
【0205】
実施例20
感度
濃度を上昇させた各種スパイクをmiRNA標識反応系に添加した。この実験ではAmbion社のプローブセットを用いた。このシステムは、0.06 fmolのmiRNAまでを感知し、2オーダーの範囲で直線性を示した。結果は、対数スケールで表す。図6参照。
【0206】
種々の濃度のビオチン標識スパイクをmiRNAハイブリダイゼーション反応系に添加した。本実験では、Exiqon LNAプローブを用いた。このシステムは、0.1 fmolのmiRNAまでを感知し、試験した全範囲(10fmolを上限)において直線性を示した。結果は、対数スケールで表す。図7参照。
【0207】
実施例21
特異性
Let−7a合成miRNAを標識し、種々のLet−7ファミリーメンバーとカップリングしたビーズの混合物とハイブリダイズさせた。この系の特異性は、配列間の類似性、ミスマッチ数、配列中のミスマッチの位置およびミスマッチの特性(すなわち、どのヌクレオチドが変化したのか)に比例相関していた。図8参照。
【0208】
ハイブリダイゼーション温度を上昇させながら同様の実験を行った。図9に示されるように、ハイブリダイゼーション温度を上昇させることで非特異的なlet−7c結合が著しく減少したが、特異的シグナルは僅かな影響しか受けなかった。
【0209】
実施例22
再現性
実施例17〜19の記載と同様にヒト胎盤を標識してハイブリダイズさせた。図10は2つの個別の実験の再現性を示す。
【0210】
実施例23
組織特異的miRNAの同定
新鮮な脳および胎盤組織由来のRNAを標識してカップル混合物にハイブリダイズさせた。100種類のmiRNAセットの発現プロファイルを図11および図12に示す。前述したように、脳または胎盤に特異的なmiRNAが検出され、これらは図に示されている。結果は、対数スケールで表す。
【0211】
図11は、LNA修飾プローブへの結合を表す。
【0212】
図12は、Ambionプローブセット由来の非修飾DNAプローブへの結合を表す。
【0213】
実施例24
癌組織でのmiRNA発現のプロファイリング
正常または腫瘍のホルマリン固定パラフィン包埋された肺組織および膀胱組織からRNAを抽出した。miRNAの発現プロファイリングは先の記載と同様に行った。差次的に発現するmiRNAは図13a、bにマークされている。結果は、対数スケールで表す。
【0214】
実施例25
その他の標識方法の詳細なプロトコル
1.直接標識法
a.Kreatech化学標識
この標識法は、Kreatech社製のULS低分子RNA標識キットにより行うことができる。
この標識プロセスは、前述のプロセス(PerkinElmer社製品の場合)と類似する。
50ngの低分子RNAに対して1μlの試薬である最適比率は維持されるべきである。好ましくは、10μlの反応容量に対して少なくとも12.5μgの低分子RNAを用いるべきである。1μlの×10バッファーを添加する。
【0215】
b.p−CU−Bioライゲーション
ビオチン系物質を用いたジヌクレオチドの酵素的末端標識。異なるライゲーション系を用いてもよい。
【表22】

30℃で2時間インキュベーションを行い、続いて、80℃で3分間失活させ、一晩沈殿させる:容量を150μlに増加させ、グリコーゲン 8μl、NaOAc 15μl、100%EtOH 550μlを添加する。
5μlのDDWに再懸濁する。Luminexの前にTE 12μlを添加する(最終容量:17μl)。
【0216】
実施例26
シグナル増幅法
1.TSA(チラミドシグナル増幅法)のプロトコル
開始前に:
1.ビオチン化チラミドを0.3mlのDMSOに再懸濁する−ストック溶液(4℃で6ヶ月間安定)。
2.×1増幅バッファーを用いてストック溶液を1:50に希釈する(ワーキング溶液)。
3.TNT洗浄バッファー:0.1M Tris−HCl(pH7.5)、0.15M NaCl、0.05% Tween−20、を調製する。
4.TNBブロッキングバッファー:0.1M Tris−HCl(pH=7.5)、0.15M NaCl、0.5%ブロッキング試薬、を調製する。
完全に溶解させるため撹拌して加熱する(60℃を超えないようにする)。
溶液をろ過、分注して4℃で保存する。
【0217】
工程:
1.前述のようにマイクロスフェアへのカップリング、miRNA化学標識およびハイブリダイゼーションを行う
2.試料を遠心分離してハイブリダイゼーション反応物を洗浄
3.100μlのTNBブロッキングバッファーに再懸濁
4.室温で30分間インキュベート
5.遠心分離
6.TNBで1:100に希釈した100μlのSA−HRPに再懸濁
7.室温で30分間インキュベート
8.Milliporeフィルタープレート上へロード
9.TNTバッファーで3回洗浄(バキューム吸引および懸濁を3回)。
10.100μlのビオチン化チラミドワーキング溶液(×1増幅バッファーを用いてストック溶液を1:50に希釈−ワーキング溶液)を添加
11.ピぺッティングにより混合
12.室温で10分間インキュベート
13.TNTで3回洗浄(10と同様)
14.20μg/mlのSAPE 75μlをTMACに添加
15.50℃で10分間インキュベート
16.Luminexで測定
図14は、TSA反応によりビオチン標識スパイクが増幅される様子を示す。
【0218】
2.Genisphereによるシグナル増幅
LuminexプラットホームへのGenisphereシグナル増幅キットの使用プロトコル。(Genisphere社から提供されるプロトコル)
1.全RNAをYM−100カラム上に注ぎmiRNA画分を濃縮する。
a.マイクロRNAへのポリ(A)末端の付加:
2.
a.miRNAの濃縮画分にネイキッドスパイクを添加する。
b.濃縮マイクロRNAおよびスパイクの容量をヌクレアーゼフリー水(バイアル10)で15.5μlに調整する。アレイの品質にもよるが、品質データを得るには50ng〜500ngの濃縮マイクロRNAが必要となる。
c.以下の式に従って、ATP(バイアル4)を1mM Tris pH8.0で希釈する:
【数1】

3.マイクロRNA 15.5μlに以下の成分を添加して容量を25μlにする:
a.5μlの5×miRNA反応バッファー(バイアル2)
b.2.5μlのMnCl2(バイアル3)
c.1μlの希釈ATP(工程2で希釈したバイアル4)
d.1μlのPAP酵素(バイアル5)
4.緩やかに混和して遠心分離する。
5.37℃のヒートブロックで15分間インキュベート。
【0219】
b.末端付加マイクロRNAへの「cplCap03」捕捉配列のライゲーション
6.25μlの末端付加マイクロRNAを短時間遠心分離する。
7.室温で以下の成分を加えて容量を36μlにする:
a.6μlの6×「cplCap03」ライゲーションミックス(バイアル9)
b.2μlのT4 DNAリガーゼ(バイアル8)
c.3μlのヌクレアーゼフリー水(バイアル10)
8.緩やかに混和して遠心分離する。
9.室温(20〜28℃)で30分間インキュベート。
10.4μlの0.5M EDTA pH8を添加して反応を停止させる。短時間ボルテックス撹拌して遠心分離する。
11.60μlの1×TEバッファーを添加して最終容量を100μlにする。短時間ボルテックス撹拌して遠心分離する。これがタグ化マイクロRNAである。
【0220】
c.タグ化マイクロRNAの精製
12.以下のように、MinElute PCR精製キット(Qiagen社、カタログ番号28006)を用いて、100μlのタグ化マイクロRNAを精製する。
a.500μlのバッファーPBを100μlの試料に添加してボルテックス撹拌する。短時間、遠心分離する。
b.混合物をMinEluteカラムにアプライし、通常の卓上マイクロ遠心器にて10〜14,000×g(約13,000rpm)で1分間遠心分離を行う。
c.流出液を捨てる。MinEluteカラムを同一の回収用チューブにセットする。
d.MinEluteカラムに750μlのバッファーPEを加え、1分間遠心分離する。
e.流出液を捨てる。MinEluteカラムを同一の回収用チューブにセットする。
f.2分間遠心して残留PEバッファーを除去する。
g.MinEluteカラムを、清浄な、ラベルを付した1.5mLマイクロ遠心チューブにセットする。
h.10μlのバッファーEBをカラムメンブランの中央部分に加える。室温で2分間インキュベーションを行う。2分間遠心分離する。カラムを捨てて10μlの流出液を保存する。これがタグ化マイクロRNAである。
【0221】
d.Luminexビーズ結合、およびタグ化LMW RNAを用いた検出アッセイ
1.適切なLuminexカップルビーズセット(ミックス)を選択する。
2.カップルビーズを10〜20秒間ボルテックス撹拌する。
3.ホルムアミド含有または不含の1.5×TMAC(4.5M TMAC)で、1回の反応当たり1500個のLuminexビーズ(ビーズ1種類当たり)を含むようにLuminexカップルビーズのストックを希釈することによりワーキングLuminexビーズ混合物を調製する。(留意事項:各反応には、合計で33μlのワーキングLuminexビーズ混合物が必要。)10〜30%のホルムアミドをTMAC溶液に添加して、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを高めることもできる。TMACバッファー中でビーズをボルテックス撹拌する。
4.33μlのLuminexビーズ混合物(上記の工程3で調製)をヌクレアーゼフリーのキャップ付き0.2mLストリップPCRチューブ(ISC Bioexpress社、カタログ番号T−3034−1)に添加する。
5.各チューブに、適切なバイオスパイク(bio−spike)を含む1×TE pH8.0で希釈したタグ化LMW RNA(上記プロトコルで調製)を17μl添加する。20〜150ng当量(タグ化プロセス前に測定)のLMW RNAを添加する。300rpmで振とうしながら50℃(プローブがLNAの場合は65℃)で16時間インキュベートする。
6.各チューブから全反応物を、(1×PBSで)事前に湿らせたMultiscreen−BVフィルタープレート(Millipore社、カタログ番号MABVN1210)に移す。
7.バキューム装置を用いて、1×TMAC(50℃に予熱)でビーズ(フィルタープレート中で)を1回洗浄する。
8.Genisphereの結合バッファーIで1.0ng/μLに希釈したビオチン標識Cap03デンドリマーを50μL添加する。300rpmで振とうしながら37℃で2時間インキュベートする。
9.ビーズを50℃に予熱した1×TMACで1回洗浄する。
10.1×PBSで20ng/μLに希釈したSA−PE(ProZyme社)を50μL添加する。300rpmで振とうしながら37℃で30分間インキュベーションを行う。
11.ビーズを1×PBSで1回洗浄する。
12.75μLの1×PBSを各ウェルに添加し、ウェルの内容物を別のマイクロタイタープレートに移す。
13.低RP1キャリブレーションで調製したLuminex 100で解析を行う。
【0222】
任意事項:
抗PEビオチン(デンドリマー)試薬
miRNAのLuminexアッセイの感度をさらに向上させるため、上記デンドリマー試薬を用いたところ、我々の手法では、多重ビーズアッセイ(6〜12重)1回当たりに僅か1〜3ngのLMW RNA(50〜150ngの全RNAに相当)を用いても成功した。抗PEデンドリマー試薬を用いる追加工程はかなり単純であり、本発明のmiRNA Luminexプロトコルの最後(本プロトコルの工程11の後)に付け加えられる。
工程12.所望の各ビーズ反応(マイクロタイターウェル)用に、5.5μLの抗PEビオチン(デンドリマー)試薬を49.5μLの結合バッファーIに添加することにより抗PEビオチンデンドリマーを結合バッファーIで希釈する。
フィルターマイクロタイタープレート中の各ビーズ反応系に、希釈した抗PEビオチンデンドリマー50μLを添加し、300rpmで振とうしながら室温で60分間インキュベートする。
工程13.ビーズを1×PBSで1回洗浄する。
工程14.50×SA−PEを1×PBSで希釈する。各ウェルに50μLの希釈SA−PEを添加し、プレートを5秒間ボルテックス撹拌する。300rpmで振とうしながら37℃で30分間インキュベーションを行う。
工程15.ビーズを1×PBSで1回洗浄する。
工程16.150μLの1×PBSを各ウェルに加える。ピぺッティングによりビーズを5〜6回混和し、次にウェルの内容物を別のマイクロタイタープレートに移す。
工程17.Luminex装置で解析を行う。
【0223】
実施例27
転写方法
1.直接転写
この可能性を用いる場合は、miRNAのセンスプローブセットがマイクロスフェアにカップリングされていなければならない。
直接転写標識法には、RNA:DNAハイブリッドアダプターのライゲーションおよびビオチン標識ヌクレオチドを用いた転写が含まれる。
1.以下の反応混合物を調製する:
【表23】

2.37℃で40分間インキュベート
3.0.5〜2倍量(12.5μl)のローディングミックス(SB尿素)を添加して反応を停止し、二相アクリルアミド尿素ゲル(すなわち、上相が6%、下相が13%)で電気泳動する。
4.200V、80mAで約55分間泳動する。RNAマーカーに基づき、遊離のアダプターと低分子RNAの間のゲル部分を切り出す。
5.midi GeBAflex(カットオフ値:3500)を用いて、120V、40分間、次いで120秒間逆方向に電流を流すことによってRNAを0.8mlのDDWに溶出した。
6.400μlのRNAに、8μlのグリコーゲン(5mg/ml)、1/10倍量のNaoAcおよび3〜4倍量の冷却100%エタノールを添加してRNAを沈殿させる。−20℃で一晩保存する。
7.最大速度で40分間遠心分離し、85%エタノールで洗浄する。3μlに再懸濁する。(2本のチューブを用いる場合、一本目を65℃で3分間再懸濁して、2本目に移し、最初のチューブを2μlで洗浄して、一つにまとめる)。
8.アニーリングプライマーを添加する。20p/μlのストックから1μlのプローブ19578176 RT−DT− T7 avrll−short。段階的アニーリングを行う。
【0224】
T7− MEGAshortscriptキットを用いて転写産物を調製する。
1.T7 10×反応バッファーおよびリボヌクレオチド溶液を室温で融解させる。T7酵素ミックスを氷上で保存する。室温で反応系を調製する。
2.反応ミックスを以下のように調製する:
【表24】

3.反応系を37℃で一晩インキュベートする。
4.短時間遠心分離する。
5.鋳型DNAを除去:
1μlのDNase Lを添加して十分に混合し、37℃で15分間インキュベートする。
6.酸性フェノール:クロロホルム抽出
125μlのヌクレアーゼフリー水、15μlの3M酢酸ナトリウムおよび150μlの酸性フェノール:クロロホルムを添加する。十分に混合する。最大速度で10分間遠心分離する。
7.RNAの沈殿:
新しいチューブ内で最上相を8μlのグリコーゲン(5mg/ml)、3.6倍量のエタノール(550μl)と混合する。−20℃で一晩(または−80℃で2時間)保存する。最大速度で40分間遠心し、85%エタノールで洗浄して25μlに再懸濁する。
8.濃度:
濃度を測定する。
9.遊離ヌクレオチドの精製:
転写産物をG−25カラムにローディングする。
10.ハイブリダイゼーションコントロール用にbio−RNAスパイクを添加する:
C−lin4−bio−AS−RNA 5f
C−mir2−bio−AS−RNA 1f
【0225】
Luminexカップルミックスを用いたハイブリダイゼーションには以下を用いる:
1.5μgの転写産物、または
2.0.5μgの精製転写産物。
【0226】
実施例28
SenseAmp Plus(商標)− Genisphereを用いたマイクロRNAの増幅
1.手順(全RNAから始める場合)
a.マイクロRNAの濃縮:
Microcon YM−100カラム(Millipore社、カタログ番号42413)および通常の卓上マイクロ遠心機。
10mMのTris−HCl、pH 8.0で全RNA試料を100μlに希釈する。
希釈した全RNA100μlを試料リザーバーに添加する。ピペットチップがメンブランに触れないように留意する。チューブのキャップをしっかりと締めて13,000gで6分間遠心する。
流出液(約95μl)を回収する。この流出液が、80〜100塩基長未満の平均サイズを有する目的のLMW RNAである。
濃縮:
Microcon YM−3カラム(Millipore社、カタログ番号42404)および通常の卓上マイクロ遠心機。
上記の工程3で得たLMW RNA(YM−100の約95μlの流出液)をYM−3試料リザーバーに添加する。ピペットチップがメンブランに触れないように留意する。チューブのキャップをしっかりと締めて13,000gで30分間遠心する。
流出液の容量を確認し、流出液の容量がローディング時の容量(約95μl)より6〜8μl少ない容量と等しくなるか、または下部のリザーバーに追加した液体がたまらなくなるまで遠心分離を続ける。例えば、95μlをYM−3にローディングした場合、流出液は、87〜89μlとなる。
10μlの10mM Tris−HCl、pH 8.0を試料リザーバーに添加して、側面を軽く叩いて穏やかに混和する。
慎重に試料リザーバーを新しい回収チューブに逆さに入れる。13,000gで3分間遠心して濃縮されたLMW RNAを回収する。以下の章のマイクロRNAのポリ(A)末端付加に進む。
【0227】
b.マイクロRNAのポリ(A)末端付加
ヌクレアーゼフリー水(バイアル10)で容量を18mlに調整する。
以下の式に従って、ATP(バイアル14)を1 mM Tris、pH 8.0で希釈する。
【数2】

例えば、2000ngのmiRNAから開始する場合、ATP希釈率=250000÷2000ng=125となる。
1mlのATP(バイアル14)を125mlの1mM Tris、pH 8.0に添加してATPを1:125に希釈する。
以下の成分を18mlのマイクロRNAに添加して容量を25mlにする:
2.5mlの10×反応バッファー(バイアル6)
2.5mlの25mM MnCl2(バイアル17)
1mlの希釈ATP(工程2で調製したバイアル14の希釈物)
1mlのPAP酵素(バイアル16)
穏やかに混和して遠心分離する。
37℃のヒートブロックで15分間インキュベートする。
【0228】
末端付加したマイクロRNAの逆転写
25mlの末端付加マイクロRNAを短時間遠心分離して氷上に静置する。
1mlのSenseAmp dTプライマー(バイアル1)を9mlの0.1×TEに添加してSenseAmp dTプライマーを1:10に希釈する。ボルテックス撹拌して短時間遠心分離する。
氷上にて、2mlの1:10希釈したSenseAmp dTプライマー(工程2で調製したバイアル1希釈物)を添加する。
穏やかに混和して、遠心分離する。
65℃で10分間インキュベーションを行った後、直ちに氷上に移して2分間静置する。
氷上にて以下の成分を加えて容量を50mlにする:
10mlの5×ファーストストランドバッファー(または逆転写酵素と共に提供される同等のバッファー)
5mlの0.1M DTT(逆転写酵素と共に提供される場合:提供されていない場合には、ヌクレアーゼフリー水を用いる)
2.5mlのdNTPミックス(バイアル3)
1mlのSuperase−in(商標)RNase阻害剤(バイアル4)
2mlのSuperScript II逆転写酵素、200ユニット(または同等の逆転写酵素)2.5mlのヌクレアーゼフリー水(バイアル10)
穏やかに混和し(ボルテックス撹拌はしない)、42℃で1時間インキュベートする。
8.75mlの0.5M NaOH/50mM EDTAを添加して反応を停止させる。短時間ボルテックス撹拌を行って遠心分離する。
留意事項:反応系は、褐色に変化する場合があるが、これは正常なことである。
65℃で30分間インキュベートしてmiRNAを分解する。
留意事項:反応系は、褐色から無色に変化する場合があるが、これは正常なことである。
12.5mlの1M Tris、pH 8.0で反応系を中和する。これがcDNAである。短時間ボルテックス撹拌して遠心分離する。28.75mlの1×TEバッファーを添加して試料量を100mlにする。
【0229】
c.cDNAの精製および濃縮
Microcon YM−100カラム(Millipore社、カタログ番号42413)と通常の卓上マイクロ遠心機を用いて100μlのcDNAを精製する。
100μlのcDNAを試料リザーバーに添加する。ピペットチップがメンブランに触れないように留意する。チューブのキャップをしっかりと締めて13,000gで6分間遠心する。
メンブランに触れることなく、200μlの1×TEバッファーを試料リザーバーに添加する。ピぺッティングを5回行って穏やかに混和する。チューブのキャップをしっかりと締めて13,000gで6分間遠心する。
慎重に試料リザーバーを回収用チューブから取り外す。流出液を捨てる。YM−100カラムを同一の回収用チューブに設置する。
メンブランに触れることなく、200μlの1×TEバッファーを試料リザーバーに添加する。ピぺッティングを5回行って穏やかに混和する。チューブのキャップをしっかりと締めて13,000gで6分間遠心する。
慎重に試料リザーバーを回収用チューブから取り外す。回収用チューブを捨てる。
メンブランに触れることなく、5μlの1mM Tris(pH 8.0)を試料リザーバーに添加する。リザーバーの側面を軽く叩いて混和する。
慎重に試料リザーバーを新たな回収用チューブに逆さにセットする。13,000gで3分間遠心する。
チューブの底に回収されたcDNAの容量(5〜10μl)を記録する。ヌクレアーゼフリー水(バイアル10)でcDNAの容量を10μlにする。
【0230】
第一鎖cDNAの末端付加
精製したcDNA(10ml)を80℃に10分間加熱する。直ちに氷上に1〜2分間静置する。短時間遠心分離を行い、氷上に戻す。
各反応系に、氷上で別のチューブにマスターミックス(10ml)を調製する:
2mlの10×反応バッファー(バイアル6)
2mlのヌクレアーゼフリー水(バイアル10)
4mlの10mM dTTP(バイアル5)
2mlのTdT酵素(バイアル7)
マスターミックスとcDNAを混合して20mlの容量にする。緩やかに混和して遠心分離する。37℃のヒートブロックで3分間インキュベートする。3分間を超えないように留意する。
80℃に10分間加熱して反応を停止させる。短時間、遠心分離を行って1〜2分間室温に冷却する。
【0231】
d.T7プロモーター合成
末端付加したcDNAに2mlのSenseAmp T7鋳型オリゴ(バイアル8)を添加して容量を22mlにする。短時間ボルテックス撹拌して遠心分離する。
37℃で10分間インキュベートして鎖をアニーリングする。
各反応系に以下の成分を添加して容量を25mlにする:
1mlの10×反応バッファー(バイアル6)
1mlのdNTPミックス(バイアル3)
1mlのKlenow酵素(バイアル9)
穏やかに混和して遠心分離する。室温で30分間インキュベートする。
65℃で10分間加熱して反応を停止させる。氷上に静置する。
プロモーター修飾cDNAの半分の量(12.5ml)を用いてin vitro転写反応に進む。
後日使用するため、または並行しておこなう増幅反応で使用するために残りの修飾cDNAを−20℃で保存する。
【0232】
e.in vitro転写
12.5mlのcDNAを37℃で10分間インキュベートして、鎖を再度アニーリングさせる。
T7ヌクレオチドミックス(バイアル11)および10×T7反応バッファー(バイアル12)を室温で融解させ、使用時まで室温で保存する。10×T7反応バッファー(バイアル12)を十分にボルテックス撹拌してバッファー成分の沈殿を防ぐ。
各反応系に、室温にて12.5mlのcDNAに対して以下の成分を加え、最終容量を25mlにする:
8.0mlのT7ヌクレオチドミックス(バイアル11)
2.5mlの10×T7反応バッファー(バイアル12)
2.0mlのT7酵素ミックス(バイアル13)
緩やかに混和して遠心分離する。サーマルサイクラー(加熱蓋付き)中で、37℃で4〜16時間インキュベートする。または、反応系を37℃のヒートブロック内で5分間静置して、次に、37℃のエアハイブリダイゼーションオーブンに移して4〜16時間静置する。この工程においては反応系の蒸発と濃縮を回避することが不可欠である。
【0233】
f.センスRNAの精製
Qiagen社のRNAクリーンアッププロトコルに従ってRNeasy MinEluteキット(Qiagen社、カタログ番号74204)を用いてセンスRNAを精製する。溶出には、14mlのヌクレアーゼフリー水を添加して2分間インキュベートし、次いで遠心する。回収される容量は12ml前後となる。
【0234】
g.センスRNAの定量
RiboGreen RNA定量キット(Molecular Probes社、カタログ番号R−11490)を用いてセンスRNAの濃度を測定する。このキットに提供されるリボソームRNAスタンダードを用いて検量線を作成する。1μlの精製センスRNAを用いて定量を行う。確実に適切な参照用「ブランク」試料を用いることで不正確な濃度測定を回避する。
【0235】
実施例29
EDCを用いた、プローブのビーズへのハイスルーブットカップリング
バッファー:MESバッファー、0.1M(pH=4.5)、Tween−20、0.02% SDS、0.1% TE(pH=8.0)
1.カップリングプロトコル
カップリングは、EDCを用いてカルボキシル化ビーズとアミン修飾プローブとの間で行う。
カップリングはチューブ内で行い、界面活性剤に対する耐性を有する96マルチウェルフィルタープレート(Millipore社、Solvinert)を用いて洗浄する。
1.全てのプローブをDDWに再懸濁して最終濃度を1mMにする。
2.DDWを用いて全てのプローブについて1:10希釈液(0.1mM)を調製する。
3.分取したEDC粉末は室温になっていなければならない。
4.行うべきカップリング反応の結合表を作成する。
5.符号を付したチューブのセットを用意する。
6.もとのチューブ内でボルテックス撹拌および約20秒間の超音波処理によりビーズを再懸濁する。
7.それぞれの種類のビーズから200μl(2.5×106個のビーズ)を、符号を付した新しいチューブに移す。
8.最大速度で2分間遠心分離する。
9.上清を取り除き、25μlのMES(pH=4.5)に再懸濁する。ボルテックス撹拌し、20秒間超音波処理する。
10.1μlの希釈プローブをビーズに添加する。適切なビーズ/プローブの結合を知るために、先に作成した表を用いる。
11.ボルテックス撹拌で混和する。
12.10mgの分取物を1mlのDDWに懸濁して、濃度10mg/mlのEDCを調製する。
13.各カップル反応系に1.5μlのEDCを添加してボルテックス撹拌する。
14.暗室にて室温で30分間インキュベートする。
15.新たなEDC懸濁液の分取物を調製する。
16.各反応系に再度新たなEDCを1.5μl添加してボルテックス撹拌する。
17.暗室にて室温で30分間インキュベートする。
18.Solvinertフィルタープレート(Millipore社)を100μlの水で事前に湿らせる。
19.事前に作成した表に従ってカップル反応系の内容物をチューブからフィルタープレートに移す。
20.カップル反応系に150μlの0.02% Tween−20を添加する。

21.プレートをバキューム装置上に静置してバキューム吸引を行う。
22.再度カップル反応系に150μlの0.02% Tween−20を添加する。
23.再度バキューム吸引を行う。
24.150μlの0.1% SDSを添加してバキューム吸引を行う。
25.150μlの0.1% SDSを再度添加して、再度バキューム吸引を行う。
26.カップルビーズを50μlのTE(pH=8.0)に再懸濁し、ピぺッティングにより混和する。
27.カップルビーズを新しい96ウェルプレート(フィルター無し)または新たなチューブに移して4℃で保存する。
【0236】
2.miRNAの化学標識−MicroMax ASAP(正確、高感度および厳密)標識キット
工程
1.YM−100により5μgの全RNAから低分子RNAを単離する。
2.ネイキッドスパイクセットを添加する。
3.0.5μlのASAPビオチン試薬を添加する。
4.2.5μlのASAP標識バッファーを添加する。
5.最終容量が10μlになるようDDWを添加する。
6.ピぺッティングで混合する。
7.85℃で30分間インキュベートする。
8.4℃で5分間冷却する(PCR装置を使用)。
9.Kreapureカラムを用いた標識miRNAの精製:
a.カラムを室温にする(20分間)
b.樹脂を底部に集めるように振る
c.底を折り、2mlのマイクロチューブに設置する。
d.キャップを緩め、14,000rpmで1分間の事前遠心を行う。
e.カラムを新しいマイクロチューブに設置する。
f.樹脂の上部に標識反応物をアプライする。
g.14,000で1分間遠心分離する。
h.流出液を回収し、−20℃で保存するかまたはハイブリダイゼーションに用いる。
【0237】
3.Luminexハイブリダイゼーションプロトコル
17μlの被標識物質
標識RNA +33μlの混合ビーズ
2μlのBio−スパイク (×1.5 TMAC中)。ビーズ1500個/反応
×1 TEで容量を17μlにする。
1.ボルテックス撹拌および約20秒間の超音波処理によりマイクロスフェアを再懸濁する。
2.各試料ウェルまたはバックグラウンドウェルに33μLのワーキングマイクロスフェアミックスを添加する。反応は、0.5mlチューブ内で行う。
3.各バックグラウンドウェルに17μLのTE、pH 8を添加する。
4.各試料ウェルに標識および事前にビオチン標識したスパイクを含む検査物質を添加し、TE pH8.0を添加して最終容量を17μlにする。
5.数回ピぺッティングして反応ウェルを緩やかに混和する。
6.チューブを85℃のPCR−100装置(プログラム可能な温度制御装置)に5分間静置して、試料中の二次構造を変性させる。反応チューブを50℃(ハイブリダイゼーション温度)で一晩インキュベートする。
7.試料を96ウェルフィルタープレートに移す。バキューム吸引を行う。
8.ストレプトアビジン−R−フィコエリトリン試料(PhycoLink−SteptAvidin、カタログ番号PJ315)を1×TMACハイブリダイゼーションバッファーで20μg/mlに希釈することで新たにレポーターミックスを調製する。
9.各ウェルに75μlのレポーターミックスを添加して、ピぺッティングを数回行って緩やかに混和し、PCRプレートに移す。
10.Luminex装置内で試料プレートをハイブリダイゼーション温度の50℃に10分間戻す。
11.装置のマニュアルに従って、Luminexアナライザーで、ハイブリダイゼーション温度において50μlを分析する。
【0238】
参考文献
1. Chen C, Ridzon DA, Broomer AJ, Zhou Z, Lee DH, Nguyen JT, Barbisin M, Xu NL, Mahuvakar VR, Andersen MR, Lao KQ, Livak KJ, Guegler KJ. Real−time quantification of microRNAs by stem−loop RT−PCR. Nucleic Acids Res. 2005 Nov 27; 33(20):e179.
2. Fu HJ, Zhu J, Yang M, Zhang ZY, Tie Y, Jiang H, Sun ZX, Zheng XF. A novel method to monitor the expression of microRNAs. Mol Biotechnol. 2006 Mar; 32(3): 197−204.
3. Shi R, Chiang VL. Facile means for quantifying microRNA expression by real−time PCR. Biotechniques. 2005 Oct; 39(4):519−25.
4. Tang F, Hajkova P, Barton SC, Lao K, Surani MA. MicroRNA expression profiling of single whole embryonic stem cells. Nucleic Acids Res. 2006 Jan 24;34(2):e9.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部分および第2の部分を含む標的核酸の検出方法であって、
(a)標的核酸を含む試料を提供すること;および
(b)前記標的核酸をプローブと接触させることを含み、
ここで、前記プローブは前記標的核酸の第1の部分と相補的な第1の部分を含み、前記プローブは前記標的核酸の第2の部分と実質的に相補的な第2の部分を含むものであり、
コントロールと比較した前記標的核酸へのプローブ結合レベルが前記試料中に存在する標的核酸のレベルの指標となる
当該検出方法。
【請求項2】
前記試料が第1の部分および第2の部分を含む同胞核酸(sibling nucleic acid)をさらに含み、
前記標的核酸の第1の部分および前記同胞核酸の第1の部分は実質的に同一であり、
前記同胞核酸の第1の部分は前記プローブの第1の部分と実質的に相補的であり、
前記同胞核酸の第2の部分は前記プローブの第2の部分と実質的に相補的である
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記標的核酸がRNAである請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記RNAがmiRNAである請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記標的核酸がcDNAである請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記標的核酸が増幅される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
フォワードプライマーおよびリバースプライマーを含むポリメラーゼ連鎖反応により増幅が行われる請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記フォワードプライマーが配列番号:4168〜8334のいずれか1つからなる群から選択される配列を含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記プローブが標識を含む請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記標識がフルオロフォアを含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記標識がさらにクエンチャー分子を含み、前記フルオロフォアがプローブ上の前記クエンチャー分子の遠位に存在する請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記プローブが配列番号:8335〜20835のいずれか1つからなる群から選択される配列を含む請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記試料が生体試料である請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記生体試料が、血液、血液画分、尿、腹水、唾液、脳脊髄液、子宮頸管分泌物、膣分泌物、子宮内膜分泌物、消化管分泌物、気管支分泌物、痰、胸水、羊水、胸部からの分泌物、卵巣嚢胞からの分泌物、精液、株化細胞および組織試料からなる群から選択される請求項13に記載の方法。
【請求項15】
疾患または健康状態の検出方法であって、
(a)標的核酸を含む試料を提供すること;および
(b)請求項1に記載の方法により前記試料中の前記標的核酸のレベルを測定することを含み、
コントロールと比較した前記標的核酸のレベルの差異が疾患または健康状態の指標である
当該検出方法。
【請求項16】
前記試料が生体試料を含み、該生体試料が血液、血液画分、尿、羊水、腹水、唾液、脳脊髄液、子宮頸管分泌物、膣分泌物、子宮内膜分泌物、消化管分泌物、気管支分泌物、痰、胸水、胸部からの分泌物、卵巣嚢胞からの分泌物、精液、株化細胞および組織試料からなる群から選択される請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記疾病が癌である請求項15に記載の方法。
【請求項18】
複数の標的核酸の検出方法であって、
各標的核酸が第1の部分および第2の部分を含み、
(a)複数の標的核酸を含む試料を提供すること;および
(b)前記標的核酸を複数のプローブと接触させることを含み、
各プローブが前記標的核酸のうちの1つの第1の部分と相補的な第1の部分を含み、各プローブが前記標的核酸のうちの1つの第2の部分と実質的に相補的な第2の部分を含むものであり、
コントロールと比較した各標的核酸への各プローブの結合レベルが前記試料中に存在する各標的核酸のレベルの指標となる
当該検出方法。
【請求項19】
前記試料がさらに複数の同胞核酸を含み、各同胞核酸が第1の部分および第2の部分を含み、前記プローブの第1の部分が前記同胞核酸の第1の部分と実質的に相補的である請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記試料が個人から単離されたDNAであり、前記試料中に存在する各標的核酸のレベルが前記個人の遺伝子型の指標となる請求項18に記載の方法を含む遺伝子型同定方法。
【請求項21】
被験者から得られる体液試料中のマイクロRNA発現同定方法であって、
(a)試料からマイクロRNAを含むRNAを提供すること;
(b)ポリアデニル化RNAの逆転写産物を生成すること;および
(c)フォワードプライマー、リバースプライマーおよびプローブを含むポリメラーゼ連鎖反応により工程(c)の逆転写産物を増幅すること
を含む当該同定方法。
【請求項22】
前記体液試料が、血液、血清、尿、羊水、腹水、唾液、子宮頸管分泌物、膣分泌物、滲出液、子宮内膜分泌物、消化管分泌物、気管支分泌物、痰、胸水、胸部からの分泌物、卵巣嚢胞からの分泌物および精液からなる群から選択される請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記プローブがさらにマイナーグルーブバインダー(minor groove binder)を含む請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記フォワードプライマーが配列番号:4168〜8334のいずれか1つからなる群から選択される配列を含む請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記プローブが配列番号:8335〜20835のいずれか1つからなる群から選択される配列を含む請求項21に記載の方法。
【請求項26】
(a)複数のネガティブプローブ;
(b)複数のポジティブプローブ;
(c)複数のスパイクプローブ;および
(d)複数のテストプローブ
を含むバイオチップ。
【請求項27】
ネガティブプローブがmiRNA*と実質的に相補的な核酸を含む請求項26に記載のバイオチップ。
【請求項28】
前記核酸の配列が配列番号:20863〜20925のいずれか1つからなる群から選択される請求項27に記載のバイオチップ。
【請求項29】
ポジティブプローブが低分子RNAと実質的に相補的な核酸を含む、請求項26に記載のバイオチップ。
【請求項30】
前記核酸の配列が配列番号:20926〜20937のいずれか1つからなる群から選択される請求項29に記載のバイオチップ。
【請求項31】
スパイクプローブがゲノム中の60個のヌクレオチドからなるいずれの配列とも相補的ではない配列を有する核酸を含む請求項26に記載のバイオチップ。
【請求項32】
前記ゲノムがヒト、ラット、ウィルスおよびマウスからなる群から選択される請求項31に記載のバイオチップ。
【請求項33】
前記核酸の配列が配列番号:20938〜20951のいずれか1つからなる群から選択される請求項31に記載のバイオチップ。
【請求項34】
テストプローブが、
(a)miRNAと実質的に相補的な核酸;および
(b)リンカーを含み、前記テストプローブが40〜60個のヌクレオチド
を含む請求項26に記載のバイオチップ。
【請求項35】
前記核酸が16〜29個のヌクレオチドを含む請求項34に記載のバイオチップ。
【請求項36】
前記核酸の配列が配列番号:1〜4167のいずれか1つからなる群から選択される請求項35に記載のバイオチップ。
【請求項37】
前記リンカーが配列番号:20952〜21063のいずれか1つからなる群から選択される核酸を含む請求項34に記載のバイオチップ。
【請求項38】
核酸の検出方法であって、
(a)生体試料を提供すること;
(b)請求項26に記載のバイオチップを前記生体試料と接触させること;および
(c)核酸の濃度を測定することを含み、
コントロールと比較した前記核酸のレベルの差異が前記生体試料中で検出される核酸の指標となる
当該検出方法。
【請求項39】
前記核酸がpri−miRNA、pre−miRNAおよびmiRNAからなる群から選択される請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記生体試料がフルオロフォアで標識された核酸を含む請求項38に記載の方法。
【請求項41】
標的核酸集団の発現レベルの溶液系測定方法であって、
(a)各標的特異的ビーズセットが個別に検出可能なものであり個別ビーズセットと呼ばれる個別の標的核酸に対応する捕捉プローブを含む、標的特異的ビーズセット集団を溶液中に提供すること;
(b)各標的核酸が、対応する個別の標的特異的ビーズセットに特異的に結合しうる対応する検出可能な標的分子へと変換されている、前記標的特異的ビーズセット集団を検出可能な標的分子の集団を含む可能性のある分子集団と溶液中でハイブリダイズさせること;および
(c)標的特異的ビーズにハイブリダイズした検出可能な標的分子を溶液中でスクリーニングして前記標的核酸集団の発現レベルを測定することを含み、
前記スクリーニングがLuminexアナライザーを用いて行われる
当該測定方法。
【請求項42】
前記標的特異的ビーズセット集団が、対応する標的核酸セットに結合可能な個別ビーズセットを少なくとも1つ含む請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記標的特異的ビーズの集団が、対応する標的核酸セットに結合可能な個別ビーズセットを少なくとも100個含む請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記標的核酸集団がmRNAの集団である請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記標的核酸がmiRNAの集団である請求項41に記載の方法。
【請求項46】
前記miRNAが疾患と関連しており、コントロールと比較した前記miRNAの発現レベルが疾患関連性の指標となる請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記標的特異的ビーズセットが、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドを用いてカルボキシル化Luminexマイクロスフェア(microsphere)に結合したアミン修飾捕捉プローブを含む請求項41に記載の方法。
【請求項48】
前記捕捉プローブがDNAまたはLNAである請求項41記載の方法。
【請求項49】
各標的核酸が、
(a)miRNAに少なくとも1つのアダプターを付加して、アダプター−miRNA分子を生成する工程;および
(b)前記アダプター−miRNA分子を検出可能なように標識して前記標的核酸に対応する検出可能な標的分子を生成する工程を含む工程
により、対応する検出可能な標的分子へと変換されたmiRNAである請求項41に記載の方法。
【請求項50】
前記アダプターがビオチンである請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記アダプターが直接化学標識法または酵素末端標識法から選択される1つの方法により付加される請求項49に記載の方法。
【請求項52】
前記アダプター−miRNA分子の検出がチラミドシグナル増幅または3DNAシステムから選択される1つの方法により増幅される請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記アダプターがストレプトアビジン−R−フィコエリトリンを用いて検出可能に標識される請求項50に記載の方法。
【請求項54】
前記標的核酸に対応する前記検出可能な標的分子が前記標的核酸の転写により生成され、前記転写が前記アダプターを取り込む請求項49に記載の方法。
【請求項55】
前記アダプターがビオチンである請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記アダプター−miRNA分子がチラミドシグナル増幅または3DNAシステムから選択される1つの方法により検出可能に標識される請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記アダプターがストレプトアビジン−R−フィコエリトリンを用いて検出可能に標識される請求項55に記載の方法。
【請求項58】
標的核酸集団の発現レベルを溶液中で測定するためのキットであって、
(a)各標的特異的ビーズセットが個別に検出可能であり、対象となる個別の標的核酸に対応する捕捉プローブに結合可能なものである、検出可能なビーズセット集団;
(b)対象となる標的核酸を、対応する個別の標的特異的ビーズセットに特異的に結合することになる対応する標的分子に変換するための成分;および
(c)請求項41に記載の方法を行うための説明書
を含む当該キット。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−500867(P2010−500867A)
【公表日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517484(P2009−517484)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【国際出願番号】PCT/IB2007/003732
【国際公開番号】WO2008/029295
【国際公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(506381876)ロゼッタ ジノミクス リミテッド (3)
【Fターム(参考)】