説明

核酸コーティング粒子

粒子介在送達装置からの送達に好適な粒子が提供される。その粒子は、核酸凝縮剤および金属イオンキレート剤の存在下に不活性金属キャリア粒子上に核酸を沈殿させることによって得られる。その粒子の製造方法ならびに核酸免疫感作および遺伝子治療の方法を含めた前記粒子を用いる治療方法についても記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無針機器による粒子介在の核酸送達に好適な核酸コーティング粒子に関する。詳細には本発明は、哺乳動物組織への核酸分子のin vivoおよびex vivo送達における粒子の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子療法および核酸免疫感作は、後天性疾患および遺伝疾患の両方の治療および予防における有望な手法である。これらの技術は、被験者に所望の核酸を転移させ、後にin vivoで発現させるものである。転移は、ex vivoで被験者の細胞または組織をトランスフェクションし、形質転換物を宿主に再導入することで行うことができる。あるいは、核酸を被投与者にin vivoで直接投与することができる。しかしながらin vivo送達法は、核酸が被投与者の細胞に進入して、その核酸を発現できるようにしなければならない。
【0003】
その文脈で、遺伝子送達のために多くの方法が開発されてきた。それらの方法のうちで、核酸の経皮送達が経口送達法や非経口送達法に勝る多くの利点を提供する。特に、経皮送達は、従来の投与システムに対する安全で簡便な非侵襲的代替手段を提供するものであり、経口送達に関連する主要な問題(例:吸収速度の変動、胃での分解および代謝、肝臓一次通過効果、消化管刺激および/または苦いまたは不快な薬剤の味)または非経口送達に関連する主要な問題(例:針の痛み、処置を受ける個体への感染導入の危険性、偶発的な針刺しによって生じる医療関係者の汚染または感染の危険性ならびに使用済み針の廃棄)を簡便に回避するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、核酸の経皮送達には多くの固有の問題もある。無傷の皮膚からの受動的送達では、分子が多くの構造的に異なる組織を通過して輸送される必要がある。その組織には、角質層(主要な障壁)、生存する表皮、真皮乳頭層または血液またはリンパ系に進入するための毛細管壁などがあり得る。従って経皮送達システムは、各種類の組織が提供する多様な抵抗を克服できるものでなければならない。
【0005】
従って、受動的経皮送達に対する多くの代替法が開発されてきた。それらの代替法には、皮膚透過促進剤または「浸透促進剤」を用いる皮膚透過性の向上、ならびにイオン泳動、エレクトロポレーションまたは超音波の使用などの非化学的な形態などがある。しかしながら、これらの代替技術は、皮膚刺激または感作などのそれら自体の副作用を生じる場合が多い。
【0006】
最近、核酸の経皮送達に好適な粒子介在法が開発されている。対象の核酸を有する粒子を加速して高速とし、粒子加速装置を用いて標的組織に撃ち込む。in vivoでは、粒子を被投与者の細胞に直接撃ち込んで、パッセンジャー核酸の細胞取り込みを行う必要性をなくすことができる。
【0007】
粒子介在の送達に好適な各種粒子加速装置が、当業者では知られている。既存の装置は、爆発、電気またはガスの放出を用いて、コーティングキャリア粒子を標的細胞に向けて加速する。例えばバイオリスティック(Biolistic;登録商標)装置は、DNAコーティング微小金ビーズを表皮の細胞に直接送達する(Yang et al (1990) PNAS USA 87:9568-9572)。粒子は、ベルハウス(Bellhouse)らへの米国特許第5630796号(「パウダージェクト(PowderJect(登録商標))無針注射器」)に記載のものなどの無針注射器を用いて送達させることもできる。
【0008】
粒子介在装置は、核酸の安全かつ容易な送達ができるようにするためのものである。しかしながら、粒子の物理的な特性に手を加えて、粒子が通常は非常に高速で撃ち込まれる無針投与の要求を満足させる必要がある。粒子は、例えば注射器の気体ジェットまたは皮膚もしくは粘膜組織との弾道衝撃の作用に耐えることができるような構造的完全性を有する必要がある。組織を貫通するだけの運動量を粒子に得させることができる密度をその粒子が有することも重要である。しかしながら核酸送達の場合には、その粒子は細胞径より小さいことで、細胞を破壊することなく細胞膜を貫通できるものでなければならない。そして核酸自体は、保存時の分解を受けやすい。従って、粒子と組み合わせる場合には、核酸を安定な条件に維持する必要がある。しかしながら核酸と粒子との組合せは、標的細胞への送達後における核酸の有効な発現を可能するものでもなければならない。核酸が抗原をコードする場合、粒子との組合せを行う手段は、被験者での抗原の免疫原性も可能とすべきである。
【0009】
ある方法によれば、粒子介在送達に好適な粒子は、核酸分子を不活性金属キャリア粒子上にコーティングすることで形成することができる。キャリア粒子は、タングステンまたは金などの好適な密度および径を有する材料から選択される。DNAまたはRNAの金またはタングステン粒子上へのコーティングまたは沈殿に関しては、多くの方法が知られている。それらの方法は通常、所定量の金またはタングステンをプラスミドDNA、CaC12およびスペルミジンと組み合わせるものである。コーティング法中には、得られた溶液を絶えず渦撹拌して、反応混合物の均一性を確保する。核酸を沈殿させた後、コーティング粒子を、好適な膜に移動させて使用前に乾燥させたり、サンプルモジュールまたはカセットの表面にコーティングしたり、あるいは特定の粒子介在送達装置で使用される送達カセットに装填することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
キャリア粒子に付着した核酸の安定性を至適化することで粒子の保管寿命および標的細胞に無傷で送達される核酸の量を高め、しかも標的細胞への送達時における核酸の発現および生理活性も至適化するために、新たな製剤を開発した。具体的には、核酸凝縮剤および金属イオンキレート剤の存在下に核酸を不活性金属キャリア粒子に安定に付着させることができることを見出した。
【0011】
そうして、アルカリ性pHではなく中性pHでキャリア粒子上に核酸を沈殿させて、核酸の完全性を保存しやすくすることができる。さらに粒子を、核酸を損失することなく水溶液またはアルコール溶液で洗って、安定性強化剤を組み込みやすくすることができる。キレート剤の化学作用とともに核酸を凝縮することで、核酸を物理的損傷および化学的損傷、例えばフリーラジカルによる酸化またはエンドヌクレアーゼによる消化から保護する。本発明の粒子は、有効な粒子介在送達によって細胞に送達することができる。核酸粒子組み込みが安定であるにもかかわらず、標的細胞では核酸の効率的な発現があることが明らかになっている。さらに、抗原をコードする核酸のさらなる効力が示されている。
【0012】
従って本発明は、粒子介在送達装置からの送達に好適な粒子であって、核酸凝縮剤および金属イオンキレート剤の存在下に不活性金属キャリア粒子上に核酸を沈殿させることで得ることができる粒子を提供する。
【0013】
前記粒子製剤は、1以上の糖および/または塩を粒子製造において用いることで、ないしは粒子をエタノールまたはビタミンA、CまたはEなどの酸化防止剤で処理することでさらに向上させることができる。
【0014】
本発明はまた、
−粒子介在送達装置からの送達に好適な粒子の製造方法において、
(i)核酸凝縮剤および金属イオンキレート剤の存在下に不活性金属キャリア粒子上に核酸を沈殿させる段階;および
(ii)得られた粒子を回収する段階
を有することを特徴とする方法;
−核酸免疫感作方法において、
(a)粒子介在送達装置からの送達に好適な粒子であって、核酸凝縮剤および金属イオンキレート剤の存在下に不活性金属キャリア粒子上に抗原をコードする核酸を沈殿させることで得ることができる粒子を提供する段階;および
(b)有効量の前記粒子を被験者に投与する段階
を有することを特徴とする方法;
−遺伝子治療方法において、
(a)粒子介在送達装置からの送達に好適な粒子であって、核酸凝縮剤および金属イオンキレート剤の存在下に不活性金属キャリア粒子上に治療用ポリペプチドをコードする核酸を沈殿させることで得ることができる粒子を提供する段階;および
(b)有効量の前記粒子を被験者に投与する段階
を有することを特徴とする方法;
−粒子介在送達装置からの送達に好適な粒子において、表面に核酸、金属イオンキレート剤ならびに
(i)核酸凝縮剤;
(ii)1以上の二糖類および/または三糖類;および
(iii)1以上の塩
のうちの1以上を有する不活性金属キャリア粒子を含むことを特徴とする粒子も提供する。
【0015】
本発明はまた、本発明の粒子が入った粒子介在送達装置用の投与容器、ならびに本発明の粒子を装填した粒子介在送達装置も提供する。
【0016】
本発明のこれらおよび他の目的、態様、実施形態および利点は、本明細書における開示内容を考慮することで当業者には容易に明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を詳細に説明する前に、理解しておくべき点として、本発明は特に例示されている分子または方法パラメーターに限定されるものではなく、当然のことながらそれらは様々に変更し得る。さらに理解しておくべき点として、本発明で用いる用語は、専ら本発明の特定の実施形態を説明することを目的としたものであり、限定的なものではない。さらに、本発明の実施は、別段の断りがない限り、ウイルス学、微生物学、分子生物学、組換えDNA技術および免疫学の通常の方法(それらのすべては当技術分野の通常の技量の範囲内である)を用いる。そのような技術は文献で詳細に説明されている(例えば、Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd Edition, 1989); DNA Cloning: A Practical Approach, vol. I & II (D. Glover, ed.); Oligonucleotide Synthesis (N. Gait, ed., 1984); A Practical Guide to Molecular Cloning (1984);およびFundamental Virology, 2nd Edition, vol. I & II (B.N. FieldsおよびD.M. Knipe, eds参照)。
【0018】
本明細書に引用されているすべての刊行物、特許および特許出願は、前記のものも後述のものも含めて、参照により全体が本明細書に組み込まれるものとする。
【0019】
本明細書および添付の特許請求の範囲において用いられている単数表現は、内容から特に明示されない限り、複数物に対する言及を含むことに留意すべきである。
【0020】
別段の定義がない限り、本明細書で用いるすべての科学技術用語は、本発明に関連する当業者に一般に理解されているのと同じ意味を有する。本発明の実施においては、本明細書に記載のものと類似または等価な多数の方法および材料を使用することが可能であり、本明細書には好ましい材料および方法が記載されている。
【0021】
A.定義
本発明を説明するにおいて、下記の用語を用いるが、それらは下記に示した定義を有するものである。
【0022】
「核酸分子」および「ポリヌクレオチド」という用語は、本明細書においては互換的に用いられ、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドまたはそれらの類似体を含む任意の長さのヌクレオチドの重合形態を意味する。ポリヌクレオチドは、何らかの三次元構造を有することが可能であり、既知または未知の機能を発揮しうる。ポリヌクレオチドの具体例には、遺伝子、遺伝子断片、エキソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、転移RNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分枝ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブ、およびプライマーなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
ポリヌクレオチドは代表的には、4種類のヌクレオチド塩基、すなわち、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)およびチミン(T)(ポリヌクレオチドがRNAの場合には、チミン(T)の代わりにウラシル(U)となる)の特定の配列から構成される。したがって、核酸配列という用語は、ポリヌクレオチド分子のアルファベット表示である。このアルファベット表示は、中央処理装置を有するコンピューター中のデータベースに入力して、機能ゲノミクスおよびホモロジー検索のようなバイオインフォマティックスの応用に用いることができる。
【0024】
特定の抗原を「コード」する核酸配列は、適当な調節配列の制御下に配置された場合にin vivoで転写され(DNAの場合)、ポリペプチドへと翻訳される(mRNAの場合)核酸分子である。このコード配列の境界は、5′(アミノ)末端の開始コドンおよび3′(カルボキシ)末端の翻訳終結コドンにより定められる。本発明に関して、そのような核酸配列は、ウイルス由来のcDNA、原核または真核生物mRNA、ウイルスまたは原核生物DNAまたはRNA由来のゲノム配列、および更には合成DNA配列を含むが、これらに限定されるものではない。転写終結配列はコード配列の3′側に位置し得る。
【0025】
「ベクター」は、核酸配列を標的細胞に導入できるものである(例えば、ウイルスベクター、非ウイルスベクター、粒子状キャリアおよびリポソーム)。代表的には、「ベクター構築物」、「発現ベクター」および「遺伝子導入ベクター」は、対象となる遺伝子の発現を導きうるおよび遺伝子配列を標的細胞に導入しうる核酸構築物を意味する。したがって、この用語は、クローニングおよび発現ビヒクルを含む。「プラスミド」は、染色体外遺伝因子の形態のベクターである。
【0026】
「プロモーター」は、ポリペプチドコード化ポリヌクレオチドの転写を開始させ調節するヌクレオチド配列である。プロモーターは、誘導性プロモーター(この場合、機能しうる形でプロモーターに連結されたポリヌクレオチド配列の発現が、アナライト、補因子、調節タンパク質などにより誘導される)、抑制性プロモーター(この場合、プロモーターに機能しうる形で連結されたポリヌクレオチド配列の発現が、アナライト、補因子、調節タンパク質などにより抑制される)および構成性プロモーターを含みうる。「プロモーター」または「制御要素」なる語は、完全長プロモーター領域およびこれらの領域の機能的(例えば、転写または翻訳を制御する)セグメントを含むものとする。
【0027】
「機能しうる形で連結(された)」は、そのように記載された成分がそれらの通常の機能を発揮するように配置されている要素の配置を指す。したがって、核酸配列に機能しうる形で連結された所定のプロモーターは、適当な酵素が存在する場合にはその配列の発現を引き起こしうる。プロモーターは、それがその配列の発現を指令するように機能する限り、その配列と連続している必要はない。したがって、例えば、翻訳されないが転写はされる介在配列がプロモーター配列と核酸配列との間に存在することが可能であり、そのプロモーター配列はなおも、そのコード配列に「機能しうる形で連結」されているとみなすことができる。
【0028】
「組換え体」は、本明細書においては、ゲノム、cDNA、半合成または合成起源の核酸分子(ポリヌクレオチド)のうち、その起源または操作により、それが天然で会合しているポリヌクレオチドの全部または一部と会合していないもの、および/または、それが天然で結合している以外のポリヌクレオチドに結合しているものを示すために用いられる。単一の組換え核酸分子中に含有される2つの核酸配列は、それらが天然で通常互いに会合していない場合には、互いに対して「異種」である。
【0029】
「ポリペプチド」という用語は、2個以上のサブユニットアミノ酸、アミノ酸類似体または他のペプチドミメチックの化合物を意味するよう本発明においては最も広義に用いられる。そのサブユニットは、ペプチド結合または他の結合(例えば、エステル、エーテルなど)により連結されうる。本明細書で用いる「アミノ酸」という用語は、天然および/または非天然または合成アミノ酸を意味し、グリシンおよびDまたはLの両方の光学異性体、およびアミノ酸類似体およびペプチドミメチックを含む。ペプチド鎖が短い場合には、3個以上のアミノ酸のペプチドは一般には「オリゴペプチド」と称される。ペプチド鎖が長い場合には、ペプチドは代表的には「ポリペプチド」または「タンパク質」と称される。
【0030】
「抗原」は、個体において免疫学的応答を惹起しうる物質、一般には巨大分子を意味する。この用語は、個々の巨大分子または抗原性巨大分子の同質もしくは異質集団を表すために用いられうる。本明細書で用いる「抗原」は、一般には、1以上のエピトープを含有するタンパク質分子またはそれの部分を意味する。本発明に関して、抗原は、いずれか適当な起源から取得または誘導されうる。さらに、本発明に関して、「抗原」は、天然配列に対する修飾、例えば欠失、付加および置換(一般には同類的な性質のもの)などを有するタンパク質を含むが、これは、そのペプチドが十分な免疫原性を維持する場合に限られる。これらの修飾は、例えば部位特異的突然変異誘発による意図的なもの、またはその抗原をもたらす宿主の突然変異によるような偶発的なものでありうる。
【0031】
対象の抗原に対する「免疫応答」は、個体におけるその抗原に対する体液性および/または細胞性免疫応答の発生である。本発明に関して、「体液性免疫応答」は抗体分子により媒介される免疫応答を意味し、「細胞性免疫応答」はTリンパ球および/または他の白血球により媒介される免疫応答を意味する。
【0032】
「核酸免疫感作」という用語は、本明細書においては、1以上の選択された抗原をコードする核酸分子をその抗原のin vivo発現のために宿主中に導入することを意味するものとして用いられる。核酸分子は、経皮粒子送達により、被投与者に直接導入することができる。あるいは、核酸分子は、被験者から摘出された細胞中にex vivoで導入することができる。後者の場合には、対象の核酸分子を含有する細胞を被験者に再導入して、その核酸分子によってコードされる抗原に対して免疫応答を生起させることができる。そのような免疫感作で用いられる核酸分子を本明細書においては、「核酸ワクチン」と称する。
【0033】
「経皮」送達という語は、皮内(例えば、真皮または表皮内)、経皮(例えば、「経皮(percutaneous)」)および経粘膜投与、すなわち、皮膚または粘膜組織内へのまたはそれを介した物質の通過による送達を意味する(例えば、Transdermal Drug Delivery: Developmental Issues and Research Initiatives, Hadgraft and Guy (eds.), Marcel Dekker, Inc., (1989); Controlled Drug Delivery: Fundamentals and Applications, Robinson and Lee (eds.), Marcel Dekker Inc., (1987); and Transdermal Delivery of Drugs, Vols. 1-3, Kydonieus and Berner (eds.), CRC Press, (1987)を参照する。したがってこの用語は、米国特許第5630796号に記載の無針注射器からの薬剤送達ならびに米国特許第5865796号に記載の粒子介在送達を包含するものである。
【0034】
「無針注射器」とは、皮膚を貫通させるのに従来の針の助けなしに経皮的に粒子状組成物を送達する機器を意味する。本発明で用いられる無針注射器については、本明細書全体で取り扱っている。
【0035】
「個体」および「被験者」という用語は、本発明においては、脊索動物亜門(subphylum cordata)の構成員、例えばヒトおよび他の霊長類、例えば非ヒト霊長類、例えばチンパンジーおよび他の類人猿およびサル種;家畜、例えばウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギおよびウマ;家畜哺乳動物、例えばイヌおよびネコ;実験用動物、例えば齧歯類、例えばマウス、ラットおよびモルモット;鳥類、例えば家禽、野生および競技用鳥類、例えばニワトリ、シチメンチョウおよび他の家禽鳥類、アヒル、ガチョウなど(これらに限定されるものではない)を示すために互換的に用いられる。この用語は特定の年齢を示すものではない。したがって、成体および新生個体の両方が含まれるものである。前記脊椎動物のすべての免疫系は同様に機能することから、本明細書に記載の方法はこれら脊椎動物種のいずれかで使用するためのものである。
【0036】
B.一般的方法
本発明は、核酸の粒子介在の送達に関するものである。詳細には本発明は、粒子介在送達装置からの送達に好適な粒子であって、核酸凝縮剤および金属イオンキレート剤の存在下に不活性金属キャリア粒子上に核酸を堆積させる段階を有するか、一部の実施形態では本質的にその段階からなる方法によって得ることができる粒子を提供する。
【0037】
キャリア粒子は、粒子介在送達装置からの細胞内送達に好適な密度および好適な粒径を有する金属から選択される。好ましくはキャリア粒子密度は、例えば約15〜25 g/ml、約15〜23g/mlまたは約16〜20g/mlである。キャリア粒子は、約0.5〜10μm、例えば約1〜5μmの直径を有することができる。キャリア粒子が約0.5〜3μm、例えば約1〜3μmまたは0.5〜2μmの直径を有することが特に好ましい。
【0038】
金属キャリア粒子は、粒子の投与を行うex vivo細胞または被験者身体内で非反応性であるという点で不活性である。代表的には、金、タングステン、白金またはイリジウムキャリア粒子を用いる。金またはタングステン粒子が好ましい。金粒子はコロイド金粒子であることができる。金粒子は、粒径が均一であり(約1〜3μmの粒径でアルファ・ケミカルズ(Alpha Chemicals)から入手可能であるか、あるいは0.95μmを含む粒径範囲でデグッサ(Degussa, South Plainfield, NJ)から入手可能である)、毒性が低い。微結晶金(例:金粉末A1570、エンジェルハード社(Engelhard Corp., East Newark, NJ)から入手可能)は多様な粒径分布を有し、代表的には約0.1〜5μmの範囲である。しかしながら、微結晶金の応答表面領域によって、核酸によるコーティングは高効率で行われる。タングステン粒子は、平均的な大きさが直径約0.5〜2μmで容易に入手可能である。
【0039】
代表的には核酸分子は、被験者に送達するための治療上妥当なヌクレオチド配列を有する。当該粒子が核酸免疫感作または遺伝子療法での使用に好適であることが好ましい。従って前記核酸は、免疫を提供することができる配列、例えば被験者に投与した時に体液性および/または細胞性免疫応答を誘発する免疫原性配列を有することができる。あるいは前記核酸は、標的細胞ゲノムから欠失または失われたタンパク質あるいは所望の生理効果もしくは治療効果(例:抗ウィルス機能)を有する非天然タンパク質などの治療用ポリペプチドをコードする1以上の遺伝子を有することができる。前記核酸は、アンチセンスまたはリボザイム機能を有する分子をコードする配列を有することができる。遺伝障害の治療では、特定の障害で欠乏していることが知られている遺伝子に相当する機能性遺伝子を、被験者に投与することができる。好ましくは、前記核酸はDNAである。
【0040】
送達に好適な核酸には、炎症疾患、自己免疫疾患、慢性疾患および感染症(例えばAIDS、癌、神経疾患、心血管疾患、高コレステロール血症などの障害);各種の貧血症、サラセミアおよび血友病などの各種血液障害;嚢胞性線維症、ゴーシェ病、アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠乏症、肺気腫などの遺伝的欠陥の治療に用いられるものなどがある。癌およびウィルス疾患のアンチセンス療法で有用な多くのアンチセンスオリゴヌクレオチド類(例:mRNAの翻訳開始部位(AUGコドン)周囲の配列に対して相補的な短オリゴヌクレオチド)が、当業界で報告されている(例えば、Han et al (1991) Proc. Natl. Acad. Sci USA 88:4313; Uhlmann et al (1990) Chem. Rev. 90:543, Helene et al (1990) Biochim. Biophys. Acta. 1049:99; Agarwal et al (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 7079;およびHeikkila et al (1987) Nature 328:445を参照する)。本発明での使用に好適な多くのリボザイムも報告されている(例えば、Chec et al (1992) J. Biol. Chem. 267: 17479およびゴールドバーグ(Goldberg)らに対する米国特許第5225347号参照)。
【0041】
例えば固形腫瘍の治療方法では、毒性ペプチドをコードする遺伝子(すなわち、リシン、ジフテリア毒およびコブラ毒因子などの化学療法剤)、p53などの腫瘍抑制遺伝子、腫瘍遺伝子の形質転換に対してアンチセンスであるmRNA配列をコードする遺伝子、腫瘍壊死因子(TNF)および他のサイトカイン類などの抗腫瘍ペプチド、あるいは腫瘍遺伝子形質転換のトランス優性陰性突然変異体を、腫瘍部位またはその付近での発現用に投与することができる。
【0042】
同様に、抗ウィルスおよび/または 抗細菌活性を示すか、あるいは宿主の免疫系を刺激することが知られているポリペプチドをコードする核酸も投与することができる。前記核酸は、インターロイキン類、インターフェロン類およびコロニー刺激因子などの各種サイトカイン類(またはそれらの機能性断片)の一つをコードすることができる。前記核酸は、癌、アレルギー、毒性、そして真菌、ウィルス[ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)、HIV、HSV2/HSV1、インフルエンザウィルス( A、BおよびC型)、ポリオウィルス、RSVウィルス、ライノウィルス類、ロタウィルス類、A型肝炎ウィルス、ノーウォークウィルス群、腸内ウィルス類、アストロウィルス類、はしかウィルス、パル(Par)インフルエンザウィルス、おたふくかぜウィルス、水痘-帯状疱疹ウィルス、サイトメガロウィルス、エプスタインバーウィルス、アデノウィルス類、風疹ウィルス、ヒトT-細胞リンパ腫I型ウィルス(HTLV-I)、B型肝炎ウィルス(HBV)、C型肝炎ウィルス(HCV)、D型肝炎ウィルス、ポックスウィルス、マールブルグ病ウイルスおよびエボラウイルスなど];細菌[結核菌(M. tuberculosis)、クラミジア(Chlamydia)、淋菌(N. gonorrhoeae)、赤痢菌(Shigella)、サルモネラ(Salmonella)、ビブリオ・コレレ(Vibrio Cholera)、トレポネーマ・パリダム(Treponema pallidua)、シュードモナス(Pseudomonas)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、ブルセラ(Brucella)、フランシセラ・ツラレンシス(Franciscella tulorensis)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、レプトスピラ・インタロガンス(Leptospria interrogaus)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、エルシニア・ペスティス(Yersinia pestis)、ストレプトコッカス(Streptococcus)(AおよびB型)、ニューモコッカス(Pneumococcus)、メニンゴコッカス(Meningococcus)、ヘモフィルス・インフルエンゼ(Hemophilus influenza)(b型)、トキソプラズマ・ゴンヂ(Toxoplasma gondic)、カンピロバクター症(Complylobacteriosis)、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、ドノヴァン症(Donovanosis)および放線菌症(Actinomycosis)];真菌病原体[カンジダ症およびアスペルギルス症];寄生性病原体[条虫、吸虫、回虫、アメーバ症、ジアルジア症、クリプトスポリジウム、住血吸虫、ニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)、トリコモナス症および旋毛虫症]など(これらに限定されるものではない)の病原体による感染のような(それらに限定されるものではない)多くの状態の治療または予防のための抗原をコードすることができる。前記核酸はまた、多数の動物疾患、例えば、口蹄疫、コロナウイルス、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、ヘリコバクター(Helicobacter)、普通円虫(Strongylus vulgaris)、アクチノバシラス・プルロニューモニエ(Actinobacillus pleuropneumonia)、ウシウイルス性下痢ウイルス(BVDV)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、大腸菌(E. coli)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、パラ百日咳菌(Bordetella parapertussis)およびボルデテラ・ブロキセプチカ(Bordetella brochiseptica)に対する適当な免疫応答をもたらすのに使用することができる。従って1態様において、本発明の粒子はワクチンとして用いることが可能である。
【0043】
本発明はまた、アンチセンス療法で、例えば特定の相補配列をハイブリダイズすることでその配列の転写および/または翻訳を阻害することができるオリゴヌクレオチドの送達に用いることができるであろう。従って、特定の疾患の進行に必要なタンパク質をコードするDNAまたはRNAを標的とすることで、疾患プロセスを妨害することができる。アンチセンス療法ならびに特異的かつ予測可能にある種の核酸標的配列に結合することで、疾患の原因となる遺伝子の発現を阻害または調節することができる多くのオリゴヌクレオチドが、当業者には知られており、容易に入手可能である(Uhlmann et al (1990) Chem Rev. 90: 543, Neckers et al (1992) Int. Rev. Oncogenesis 3, 175; Simons et al (1992) Nature 359, 67; Bayever et al (1992) Antisense Res. Dev. 2: 109; Whitesell et al (1991) Antisense Res. Dev. 1: 343; Cook et al (1991) Anti-cancer Drug Design 6: 585; Eguchi et al (1991) Ann. Rev. Biochem. 60: 631)。従って本発明では、宿主細胞における標的配列に選択的に結合することができるアンチセンスオリゴヌクレオチドが、アンチセンス治療法用に提供される。
【0044】
代表的には前記核酸は、発現ベクターとして提供される。そのような発現ベクターは、分子生物学の分野では日常的に構築することができ、例えばプラスミドDNAならびに適切な開始剤、プロモーター、促進剤および他の要素を用いることができる。それには例えば、必要な場合があり、正しい方向で配置されるポリアデニル化シグナルによって、挿入配列の発現ができるようにすることなどがある。好適なベクターは、当業者には明らかであると考えられる。この点についてのさらなる例としては、サムブロックらの報告(Sambrook et al. 1989)を参照する。
【0045】
好適な発現ベクターは、宿主細胞によるポリヌクレオチドの発現を提供することができる制御配列、代表的にはプロモーターに機能しうる形で連結された本発明で使用されるポリヌクレオチドを含む。好ましくは前記ベクターは、遺伝子療法または核酸免疫感作.の方法での使用に好適である。前記ベクターは、ex vivoで用いて、例えば宿主細胞を形質転換し、次にそれを被験者に再導入することができる。あるいは前記ベクターは、被験者への直接送達にin vivoで用いることができる。
【0046】
前記ベクターは代表的には、複製起点、ポリヌクレオチド発現のためのプロモーターおよび適宜にプロモーターの調節因子を有するプラスミドである。前記ベクターは、1以上の選択可能なマーカー遺伝子、例えばアンピシリン耐性遺伝子を含むことができる。
【0047】
プロモーターおよび他の発現調節シグナルを、発現を予定している宿主細胞と適合性となるように選択する。誘導性、抑制性その他の制御可能なプロモーターを用いることができる。哺乳動物宿主または哺乳動物宿主細胞での発現では、真核生物およびファージ制御要素の両方を用いることができる。
【0048】
好適な哺乳動物プロモーターには、カドミウムプロモーターおよびβ-アクチンプロモーターなどの重金属に応答して誘導可能なメタロチオネインプロモーターなどがある。組織特異的プロモーターが特に好ましい。好適なウィルスプロモーターには、例えばモロニーマウス白血病ウィルス末端反復配列(MMLV LTR)、ラウス肉腫ウィルス(RSV)LTRプロモーター、SV40プロモーター、ヒトサイトメガロウィルス(hCMV)前初期(IE)プロモーター、アデノウィルス、HSVプロモーター類(HSVIEプロモーターなど)またはHPVプロモーター類、特にはHPV上流調節領域(URR)などがある。これらのプロモーターはいずれも、当業界では容易に入手可能である。
【0049】
代表的には、転写終結配列およびポリアデニル化配列も存在し、各翻訳終止コドンに対して3′に位置している。好ましくは、各コード配列に対して5′にある翻訳開始を至適化する配列も存在する。転写終結/ポリアデニル化シグナルの例には、サムブロックらの報告に記載のSV40由来のもの、ならびにウシ成長ホルモン終了配列などがある。さらに、エンハンサー要素を含めて、発現レベルを高めることができる。好適なエンハンサーの例には、SV40初期遺伝子エンハンサー(Dijkema et al (1985) EMBOJ. 4:761)、ラウス肉腫ウィルス(LTR)の末端反復配列由来のエンハンサー/プロモーター(Gorman et al (1982) Proc. Natl. Acad. Sci USA 79: 6777)およびヒトまたはマウスCMV由来の要素(Boshart et al (1985) Cell 41:521)、例えばCMVイントロンA配列に含まれる要素などがある。
【0050】
本発明で使用される核酸凝縮剤は、核酸をよりコンパクトな構造に凝縮させるような形で核酸と相互作用する。凝縮核酸は、未凝縮型のものより安定であるのが普通であり、通常はより秩序性の高い構造、例えば環状形状または棹状形状を有する。凝縮剤は代表的には、静電気的に核酸と相互作用して、それの負電荷を中和する塩基性分子である。例えば、効率的な凝縮を起こさせるには88〜90%電荷中和が必要であると報告されている(Deng H. and V.A. Bloomfield (1999) Biophys J 77:1556-61)。通常、凝縮剤は、比較的高い親和力で核酸に結合する。
【0051】
カチオン性ポリマーおよび多価カチオンなどの好適な核酸凝縮剤を用いることができる。1実施形態では、凝縮剤はカチオン性ポリマーまたはそれの生理的に許容される塩である。そのような製薬上許容される塩には、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩などの無機酸塩ならびにおよび酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などの有機酸の塩などがある。代表的にはその塩は、塩酸塩または硫酸塩である。
【0052】
好ましくは、カチオン性ポリマーはポリアミンである。使用可能なポリアミンには、プロタミン類、プトレシン、スペルミジン、スペルミン、臭化ヘキサジメトリン(ポリブレン(Polybrene;登録商標))、ポリアルギニン類およびポリリジン類、あるいはこれらの生理的に許容される塩などがある。カチオン性ポリマーは、ポリアミンを含むペプチドであることができる。
【0053】
好ましくは前記ポリアミンは、塩基性アミノ酸のカチオンポリマーである。代表的には前記塩基性アミノ酸は、リジン、アルギニンおよびヒスチジンから選択される。そのようなポリアミノ酸は、シグマ-アルドリッチ(Sigma-Aldrich)から容易に入手可能である。
【0054】
前記ポリアミノ酸は、塩基性アミノ酸のホモポリマーであることができる。例えば、ポリアルギニン、ポリリジンまたはポリヒスチジンがある。あるいは前記ポリアミノ酸は、場合により1以上の非塩基性アミノ酸も含む1以上の塩基性アミノ酸のポリマーであることができる。従ってポリアミノ酸は、1以上の塩基性アミノ酸および場合により1以上の他のアミノ酸を含むことができる。そのようなコポリマーは代表的には、大半の塩基性アミノ酸を含む。例えばコポリマー中のアミノ酸の50〜100%が塩基性であることができる。好ましくは60〜90%または70〜80%が塩基性である。1実施形態では、コポリマー中のアミノ酸の少なくとも75%、例えば少なくとも85%、95%、98%または99%が塩基性である。その塩基性アミノ酸には、リジン、ヒスチジンおよびアルギニンのうちの1以上が含まれる。コポリマーが1以上の非塩基性アミノ酸を含む場合、それらは好ましくはアスパラギン酸やグルタミン酸などの酸性アミノ酸ではない。その1以上の非塩基性アミノ酸には、脂肪族または芳香族側鎖を有するアミノ酸、例えばスレオニン、プロリン、トリプトファン、セリンまたはフェニルアラニンなどがあり得る。
【0055】
上記ポリアミンにおけるアミノ酸は、LまたはDアミノ酸であることができる。好ましくは、L-アミノ酸を用いる。
【0056】
好ましい実施形態では、ポリアミンはアルギニン(Arg)xまたはリジン(Lys)xのホモポリマーである。ポリ-Lアルギニンまたはポリ-L-リジンが好ましくは、特にはポリ-L-アルギニンである。代表的には前記ホモポリマーは、約500〜15000、例えば500〜10000、500〜5000、または500〜1000の分子量を有する。1実施形態では、上記式中のxは2〜100、例えば2〜50、2〜30または2〜20の範囲であることができる。
【0057】
小ペプチドホモポリマーが特に好ましく、例えば500〜1500(例:500〜1250または700〜1000)の範囲の分子量を有するものである。代表的には、小ペプチドでは、xは2〜10、例えば4〜8の値を有する。x=4または6であるホモポリマー、例えば(Arg)4または(Arg)6が本発明では特に有用である。
【0058】
前記凝縮剤は、プロタミン類のタンパク質の構成員、例えば硫酸プロタミンであることができる。プロタミンは、ヒストンに代わって精子DNAに結合して生じる塩基性タンパク質である。従って精子核は、プロタミン類の非常に良好な入手源であり、例えばサケ精子からのサルミン、ニシン精子からのクルペイン、マス精子からのイリジン、蝶鮫精子からのスツリンおよびサバ精子からのスコンブリンなどがある。プロタミン、硫酸プロタミン、リン酸プロタミンおよび精子核は、シグマ-アルドリッチから容易に入手可能である。
【0059】
プトレシン、スペルミジンおよびスペルミンなどの他の好適なポリアミンは、それらの生理的に許容される塩とともに、例えばシグマ-アルドリッチから容易に入手可能である。
【0060】
前記凝縮剤は、多価カチオンまたはそれの生理的に許容される塩を含むこともできる。そのような多価カチオンには、例えば塩化ヘキサミンコバルト(III)(Cohex)、塩化トリス(エチレンジアミン)コバルト(III)(Coen)および塩化コバルト(III)セパルクレート(sepulchrate)(Cosep)などがある。好適な生理塩には、カチオン性ポリマーに関して上記で挙げたものなどがある。
【0061】
核酸凝縮剤を確認するのに用いることができる多くの試験が当業界では知られている。それらは通常、変化が凝縮プロセス、例えば核酸の固体への収縮、核酸分子の電荷の中和またはエンドヌクレアーゼおよび転写因子などの作用物質がそれまで近づくことができた認識部位の不明瞭化もしくは遮断に関連するものである被験核酸分子の特性における変化を定量するものである。
【0062】
液体核酸製剤での凝縮を示すアッセイには、電子および原子間力顕微鏡検査、粒径、ゼータ電位、分光蛍光測定、臭化エチジウム排除アッセイ、ゲルシフト、円二色法および核磁気共鳴などがあるが、これらに限定されるものではない。有用な引用文献の例には、J. Mol Biol (1978) 121, 311-326; Biophysical Journal (1996), 70, 2847-2856, Nucleic Acids Res (1999) 27(8), 1943-1949; J. Amer. Chem. Soc., (1998) 120 (35), 8903-8909; J. Pharm Sci (1998) 87(6), 678-683およびInt. J. Pharm (2000) 210 (1-2), 97-107がある。
【0063】
本発明で使用されるキレート剤は、溶液から金属イオンをキレート化する。通常キレート化を起こす金属イオンには、Fe2+、Fe3+、Cr3+、Ca2+およびNa+イオンなどがある。好ましくは、その薬剤はCa2+またはNa+イオンをキレート化する。あるいは、その薬剤がFe2+またはFe3+イオンをキレート化することが好ましい。その薬剤は、一座配位または多座配位であることができる。例えば好適な薬剤には、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、6リン酸イノシトール、トリポリリン酸塩、ポリリン酸、コハク酸ナトリウム、コハク酸カリウム、コハク酸リチウム、リンゴ酸ナトリウム、リンゴ酸カリウム、リンゴ酸リチウム、デスフェラールおよびエチレンジアミン-ジ(o-ヒドロキシ-フェニル酢酸)(EDDHA)などがあるが、これらに限定されるものではない。代表的には、EDTA、DTPAまたはデスフェラールが用いられ、特にはEDTAまたはそれの塩、例えばエデト酸2ナトリウムである。
【0064】
1以上の二糖類および/または三糖類の存在下に不活性金属キャリア粒子上に核酸を堆積させることも好ましい。その1以上の糖は、核酸/金属粒子の安定性を高めるのを助ける働きをする。
【0065】
好適な糖には、ショ糖、モノラウリン酸ショ糖、トレハロース、乳糖、ラフィノースおよびマニトールなどがあるが、これらに限定されるものではない。好ましくは前記糖は、トレハロース、ショ糖、乳糖およびラフィノースから選択される。
【0066】
1実施形態では、1以上の二糖類または三糖類の混合物を用いる。例えば、上記で挙げた糖の1以上の混合物を用いることができる。ショ糖/ラフィノースの混合物が特に好ましい。代表的には前記ショ糖/ラフィノースは、重量基準で3:1の比で混合する。
【0067】
核酸は、1以上の塩の存在下でも不活性金属キャリア粒子上に堆積させることができる。その1以上の塩もやはり安定性を提供する。その塩は、本発明に従ってキレート剤として用いることができる塩にさらに追加するものである。従って、ここで言及される塩は、非キレート性の塩である。例えばその塩は、代表的にはリンゴ酸塩やコハク酸塩ではない。その塩はまた、本発明に従って核酸凝縮剤として用いることができる生理的に許容される塩にさらに追加するものである。
【0068】
ある好ましい実施形態では、前記1以上の塩は、塩化物、酢酸塩、クエン酸塩、硝酸塩、リン酸塩および硫酸塩から選択される。好適な塩には、酢酸カリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、酢酸ナトリウム、硝酸マグネシウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムおよび硫酸カリウムなどがあるが、これらに限定されるものではない。好ましくは前記塩は酢酸カリウムである。
【0069】
好ましい実施形態では、前記核酸保有粒子を、エタノールまたはビタミンA、ビタミンCまたはビタミンEなどの酸化防止剤と接触させる。代表的には、粒子を酸化防止剤で処理することで安定性が高まる。代表的な処理では、粒子の酸化防止剤による洗浄を行うことができる。
【0070】
1実施形態では、粒子製造で用いられる成分のうちの1以上が、得られる粒子に組み込まれたり、その粒子と結びついている。従って、粒子介在送達装置からの送達に好適な粒子であって、表面上に核酸、金属イオンキレート剤および
(i)核酸凝縮剤;
(ii)1以上の二糖類および/または三糖類糖;および
(iii)1以上の塩
のうちの1以上を有する不活性金属キャリア粒子を有するか場合によって本質的にそれからなる粒子が提供される。
【0071】
各粒子成分は、上記で説明した通りである。好ましくはこの粒子は、少なくとも(i)および/または(ii)を含む。
【0072】
本発明はまた、この粒子の製造方法も提供する。その方法は、
(i)核酸凝縮剤および金属イオンキレート剤の存在下に不活性金属キャリア粒子上に核酸を沈殿させる段階;および
(ii)得られた粒子を回収する段階
を有するか、一部の実施形態では本質的にそれらの段階からなるものである。
【0073】
代表的には段階(i)は、混合することによって、核酸凝縮剤および金属イオンキレート剤の存在下に不活性金属キャリア粒子と核酸とを接触させる段階を有する。その接触手順の際には混合物を渦撹拌することによって、反応混合物の均一性を確保することが好ましい。好ましくは前記核酸および核酸凝縮剤は、凝縮を行う時まで、例えばキャリア粒子およびキレート剤も存在するまで、互いに分離しておく(例えば別個の溶液で)。すでにキャリア粒子および核酸を含む混合物に凝縮剤を加えることで、核酸の早期沈殿を回避することが特に好ましい。次に、金属イオンキレート剤は凝縮剤調製物およびキャリア粒子と核酸の混合物の一方または両方に存在することができる。凝縮剤は段階的に加えることができ、例えば滴下する。
【0074】
あるいは凝縮剤およびキャリア粒子の混合物を、核酸調製物と混合することができる。
【0075】
金属粒子、核酸、核酸凝縮剤およびキレート剤については上記で説明した。
【0076】
沈殿段階での混合物は、1以上の二糖類および/または三糖類糖、例えばショ糖、モノラウリン酸ショ糖、トレハロース、乳糖、ラフィノースおよびマニトール、あるいはこれらの組合せをさらに含むことができる。好ましくはこの糖は、トレハロース、ショ糖、乳糖およびラフィノースまたはそれらの組合せから選択される。1以上の二糖類および/または三糖類の混合物を用いることができる。例えば、上記の糖の1以上の混合物を用いることができる。ショ糖:ラフィノースの混合物が特に有用であり、特には重量基準で3:1の比のものである。
【0077】
前記沈殿混合物は、1以上の塩を含むこともできる。その塩は、本発明に従ってキレート剤として用いることができる塩にさらに追加するものである。従って、ここで言及される塩は、非キレート性の塩である。例えばその塩は、代表的にはリンゴ酸塩やコハク酸塩ではない。その塩はまた、本発明に従って核酸凝縮剤として用いることができる生理的に許容される塩にさらに追加するものである。
【0078】
ある好ましい実施形態では、前記1以上の塩は、塩化物、酢酸塩、クエン酸塩、硝酸塩、リン酸塩および硫酸塩から選択される。好適な塩には、酢酸カリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、酢酸ナトリウム、硝酸マグネシウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムおよび硫酸カリウムなどがあるが、これらに限定されるものではない。代表的には前記塩はリン酸アルミニウムではない。好ましくは前記塩は酢酸カリウムである。
【0079】
前記糖および/または塩は、混合される最初の調製物、例えば凝縮剤調製物またはキャリア粒子/核酸調製物のいずれかまたは両方に存在させることができる。
【0080】
1実施形態では、所定量の核酸凝縮剤、糖および金属イオンキレート剤を含む溶液を、所定量の金属キャリア粒子、核酸、糖および金属イオンキレート剤を含む溶液に滴下する。塩は一方または両方の溶液中に存在させることができる。
【0081】
段階(i)での成分の濃度は、得られる粒子での核酸の安定性に実質的に影響を与えない限りにおいて変動させることができる。金属キャリア粒子は、いずれか好適な量で、例えば0.1〜100mg/ml(例:0.1〜10mg/mlまたは1〜10mg/ml)の懸濁液で存在させることができる。好ましくは核酸濃度は、0.01〜10mg/ml、例えば0.1〜1mg/mlである。代表的には凝縮剤は、0.1〜10mg/ml、例えば0.1〜1mg/mlの濃度である。好ましくは金属イオンキレート剤濃度は、0.1mM〜1M、例えば1mM〜0.1M(例:10〜50mM)である。糖が存在する場合、それの濃度は例えば0.1mg/ml〜1g/ml、好ましくは1mg/ml〜0.1g/ml、例えば10〜50mg/mlとすることができる。塩が存在する場合、それの濃度は代表的には、0.1mM〜1M、例えば1mM〜0.1M(例:10〜50mM)である。
【0082】
本発明の方法はさらに、核酸粒子を酸化防止剤と接触させる段階を有することができる。この処理では、粒子の酸化防止剤溶液による洗浄を行う。例えば、エタノールを用いることができる。好ましくはそのエタノールは、ショ糖で飽和されている。他の好適な酸化防止剤には、ビタミンA、ビタミンCおよびビタミンEなどがある。さらにまたは別の形態として、核酸粒子を水またはイソプロパノールなどの水系またはアルコール系溶液で1回以上洗浄することができる。
【0083】
コーティングを施して適宜に洗浄した粒子を、好適な膜に移して使用前に乾燥させたり、サンプルモジュールまたはカセットの表面にコーティングしたり、あるいは特定の粒子介在送達機器で使用される送達カセットに装填することができる。好適な乾燥方法を用いることができる。好ましくは乾燥は、窒素気流下で行う。
【0084】
本発明の粒子は、単一単位用量または複数用量容器に充填することができる。そのような容器は、好適な量の粒子を封入した気密に封止された容器を有することができる。粒子は、無菌製剤として包装することができることから、気密封止容器は被験者への送達に用いるまでその製剤の無菌性が維持されるように設計することができる。その容器は好ましくは、粒子介在送達装置で直接使用できるように作る。このような容器は代表的には、カプセル、ホイルポーチパウチ、小袋、カセット等の形態を取る。粒子送達装置は、好適な用量のコーティング粒子を含む充填済み状態で提供することもできる。充填済み装置も、気密封止容器に予め入れておくことができる。
【0085】
粒子を入れる容器にはさらにラベル表示を施して、組成物を識別し、関連する投与情報を提供するようにしても良い。加えて、容器は政府機関、例えば、食品医薬品局によって規定される形態の注意書きをラベル表示することができ、その注意書きは連邦法下でのその機関による、ヒトに投与するためのそこに収容される核酸製剤の製造、使用または販売の認可を示すものである。
【0086】
粒子介在の送達に好適な粒子加速装置が当業界では公知である。現在の遺伝子銃装置は、標的細胞に向けてコーティングキャリア粒子を推進させるのに爆発性、電気的または気体放出を用いる。コーティングキャリア粒子は、可動キャリアシートに離脱可能に付着させるか、またはそれに沿って気流が通過し、その表面から粒子を持ち上げ、かつ標的に向かってそれらを推進させる表面に除去可能に付着させることができる。気体放出装置の一例が米国特許第5204253号に記載されている。爆発型装置は米国特許第4945050号に記載されている。本発明での使用に好適な電気放出装置の一例は米国特許第5120657号に記載されている。別の電気放出装置が米国特許第5149655号に記載されている。これらの特許の全ての開示は参照することによりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0087】
このコーティング粒子は、ベルハウス(Bellhouse)らへの米国特許第5630796号(「パウダージェクト(PowderJect(登録商標))無針注射器」)や国際特許公開WO94/24263、WO96/04947、WO96/12513およびWO96/20022に記載のものなどの無針注射器を用いて送達させることもでき、これら引用文献はいずれも参照によって本明細書に組み込まれる。
【0088】
米国特許第5630796号に記載のものなどの装置は、上から下へ直線的な順序で、ガスシリンダー、粒子カセットまたはパッケージおよびサイレンサー媒体と組み合わせた超音速ノズルを有するペン型装置として提供することができる。粒子は、座金型スペーサに熱融着させることで自給式ユニットを形成している2枚の破壊可能なポリマー膜によって形成されるカセットなどの好適な容器に入れて提供される。膜材料は、超音速流が開始される条件を決定する特定モードの開放および破裂圧が得られるように選択することができる。
【0089】
動作においては、前記装置を駆動して、圧縮ガスをシリンダーから装置内の膨張室に放出する。放出されたガスは粒子カセットに接触し、十分な圧力に達すると、カセット膜を突破して、粒子を超音速ノズル中に送り込んで送達に供する。ノズルは、特定のガス速度および流動パターンが得られるように設計されていることで、所定量の粒子を所定領域の標的表面に送るようになっている。サイレンサーを用いて、超音速ガス流によって生じる騒音を弱める。
【0090】
国際特許公開送達WO96/20022に記載のシステムも、粉末組成物を加速および送達するのに圧縮ガス源のエネルギーを用いる。しかしながら、粒子を加速するのにガス流ではなく衝撃波を用いるという点で、米国特許第5630796号のシステムとは区別される。より詳細には、可撓性ドームの背後で発生する衝撃波が与える瞬間的昇圧がドームの背面に衝突して、標的表面の方向への可撓性ドームの突然の反転を引き起こす。この突然の反転が、口粘膜組織などの標的組織を貫通するだけの速度、従って運動量で、粉末組成物(ドームの外側にある)を弾く。その粉末組成物は、完全なドーム反転となったところで放出される。ドームはまた、高圧ガス流を完全に封じ込める役割も果たすことから、そのガスは組織とは接触しない。この送達操作中はガスは放出されないことから、このシステムは性質上静かである。この設計は、他の密閉その他の感受性用途で用いて、例えば最小限に侵襲的な外科処置部位に粒子を送達することができる。
【0091】
本発明のコーティング粒子は、in vivoで被験者に直接、あるいはex vivoで被験者から取った細胞に送達することができ、次に形質転換した細胞を被験者に再度移植することができる。in vivo送達の場合、粒子注射は代表的には、皮下、表皮、皮内、粘膜内(例:経鼻、直腸および/または膣)、腹腔内、静脈、経口または筋肉注射で行う。好ましくは送達は、最終分化細胞に行う。しかしながら、粒子を、血液の幹細胞および皮膚線維芽細胞などの未分化または部分分化細胞に送達することもできる。最も好ましくは、送達は皮膚表皮細胞に対するものである。
【0092】
コーティング粒子は、製剤に適合する方法で、予防上および/または治療上有効な量で被験者に投与される。本発明の粒子状組成物の「治療上有効量」とは、疾患または状態の症状の治療または予防をもたらす上で十分なものであり、日常的な試験によって決定できる比較的広い範囲となる。一般的に、粒子は、1用量当たり核酸0.001〜1000μg、より好ましくは0.01〜10.0μgの量で送達される。しかしながら、正確な必要量は、治療を受ける個体の年齢および全身の状態および選択される特定のヌクレオチド配列ならびに他の要素に応じて変動する。適切な有効量は、臨床試験によって容易に決定することができる。「医師用卓上参考書」および「Goodman and Gilman′s The Pharmacological Basis of Therapeutics」は、必要量を決定する上で有用である。
【0093】
C.実験
以下に、本発明の方法を実行するための具体的な実施形態の例を示す。これら実施例は、例示のみを目的として提供されるものであって、いかなる形でも本発明の範囲を限定するものではない。使用の数字(例:量、温度など)に関しては正確さを確保するよう努力したが、当然のことながらわずかな実験的誤差および逸脱は許容されるべきである。
【0094】
実施例1
一連の実験を行って、3種類のDNA/金粒子製剤:「DSEP」(実験A)、「ポリArg」(実験B)および「改良スペルミジン」(実験C)における各種糖、キレート剤および他の賦形剤/添加剤の効果を評価した。これら各種粒子は、下記の基準のうちの1以上によって評価した。
【0095】
(i)粒子上のDNA収率を、溶離およびA260での分光分析法または蛍光分析法によって測定した。
【0096】
(ii)粒子上のDNAの物理的安定性を、ゲル分析またはHPLCによって評価した。
【0097】
(iii)粒子の凝集を、光学顕微鏡検査または運動によるゲル化によって評価した。
【0098】
(iv)粒子上のDNAの発現活性を、その遺伝子を有する粒子の細胞への導入後にCHO細胞でのルシフェラーゼレポーター遺伝子の発現を測定することで評価した。
【0099】
(v)粒子の免疫効力を、抗体が特異的に結合する抗原をコードするDNAを有する粒子でワクチン接種したマウスの血清における抗体力価を測定することで評価した。
【0100】
各製剤について、上記の基準に関して粒子を等級順に並べた。
【0101】
実験A:DSEP製剤
以下の処方に従って、粒子を製造した。
【0102】
金粒子-DNA-糖-塩-その他
被験糖は、モノラウリル酸ショ糖、マニトールトレハロース、乳糖、ラフィノースおよびモノカプリン酸ショ糖から選択した。被験塩は、酢酸カリウム、塩化カルシウム、塩化リチウム、酢酸ナトリウム、硝酸マグネシウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸アルミニウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムおよび塩化マグネシウムから選択した。
【0103】
糖および塩の各種組合せを、以下に説明するように用いた。ショ糖飽和エタノールによる洗浄の効果も評価した。
【0104】
結果を下記に示してあり、各基準に関して前記の各種糖または塩を最も有効または望ましいから最小の効果までの等級順に分けた。例えば、DNA収率についての最も等級の高い糖は相対的に高いDNA収率となる。凝集について最も等級の高い糖は相対的に低い凝集レベルとなる。
【0105】
(i)粒子上の DNA収率
糖:ショ糖〜モノラウリル酸ショ糖〜トレハロース〜乳糖〜ラフィノース>>>モノカプリン酸ショ糖(収率なし)
塩:酢酸カリウム〜塩化カルシウム〜塩化リチウム〜酢酸ナトリウム〜硝酸マグネシウム>クエン酸ナトリウム〜リン酸ナトリウム>>>リン酸アルミニウム
その他:ショ糖飽和エタノールによる洗浄によって、金粉末からDNAは除去されない。
【0106】
いずれの塩がなくても、収率は大きく低下する。
【0107】
(ii)粒子上のDNAの物理的安定性
糖:ショ糖>トレハロース>マニトール〜乳糖〜ラフィノース>モノラウリル酸ショ糖>モノカプリル酸ショ糖
塩:酢酸カリウム〜酢酸ナトリウム〜クエン酸ナトリウム〜リン酸ナトリウム>塩化ナトリウム>硫酸ナトリウム>塩化リチウム
その他:ショ糖飽和エタノールによる洗浄は安定性に寄与する。リン酸アルミニウムは沈殿を防止する。
【0108】
(iii)凝集
糖:モノカプリル酸ショ糖<ラフィノース〜乳糖〜モノラウリル酸ショ糖<ショ糖〜トレハロース
塩:酢酸カリウム〜塩化リチウム〜リン酸ナトリウム〜クエン酸ナトリウム〜塩化ナトリウム〜硫酸ナトリウム<塩化カルシウム〜塩化マグネシウム<硝酸マグネシウム。
【0109】
(iv)粒子上のDNAの発現活性
ショ糖/酢酸ナトリウム〜酢酸カリウム/ラフィノース〜ショ糖/硝酸マグネシウム〜酢酸カリウム/モノラウリル酸ショ糖。
【0110】
(v)マウス免疫効力
室温で保存したリアルタイム経過製剤について、
3ヶ月目でショ糖/酢酸ナトリウム〜スペルミジン/CaCl2核酸粒子、
1ヶ月目でラフィノース/酢酸カリウム〜モノラウリル酸ショ糖/酢酸カリウム〜スペルミジン/CaCl2核酸粒子。
【0111】
実験B:ポリArg製剤
以下の処方に従って粒子を製造した。
【0112】
金粒子-DNA-糖-キレート剤-ポリアルギニンペプチド
被験糖はトレハロース、ショ糖およびラフィノースから選択した。被験キレート剤は、EDTA、DTPAおよびデスフェラール(DFO)から選択した。被験ポリアルギニンペプチドは、13000Mwポリアルギニン、(Arg)6および(Arg)4から選択した。糖、キレート剤およびポリアルギニンの各種組合せを調べた。
【0113】
結果を下記に示してあり、最も望ましい成分から最低の望ましさおよび効果までの等級順に分けてある。
【0114】
(i)粒子上のDNA収率
被験糖:トレハロース、ショ糖、ラフィノース
キレート剤:EDTA、DTPA、デスフェラール(DFO)
その他:ポリ-Argペプチドで、13,000Mw、(Arg)6、(Arg)4のいずれか。
【0115】
上記のいずれの組合せについても、収率は理論収率の50%を超えている。
【0116】
(ii)粒子上のDNAの物理的安定性
糖:ショ糖>トレハロース>ラフィノース
キレート剤:EDTA>DTPA>デスフェラール(DFO)
その他:全てのポリ-Argペプチドが同様の安定性を与えた。
【0117】
(iii)凝集
この製剤では問題はない。
【0118】
(iv)粒子上のDNAの発現活性
トレハロース/EDTA/(Arg)4〜トレハロース/DTPA/(Arg)4
DNA、金粒子およびスペルミジンを用いて製造した粒子は、これらの製剤と同様のレベルの発現活性を示した。.
(v)マウス免疫効力
ショ糖/EDTA/(Arg)4>トレハロース/EDTA/(Arg)4〜トレハロース/DTPA/(Arg)4〜ショ糖/DTPA/(Arg)4
【0119】
DNA、CaCl2、金粒子およびスペルミジンで製造した粒子では、トレハロース/EDTA/(Arg)4粒子と同様の免疫効力となった。
【0120】
実験C:改良スペルミジン製剤
粒子を以下の処方に従って製造した。
【0121】
金粒子-DNA-スペルミジン-糖-塩-その他
被験糖は、ショ糖、トレハロースおよびラフィノースから選択した。被験塩は、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウムおよび臭化ナトリウムから選択した。
【0122】
スペルミジン濃度および特定の水/アルコール溶液による粒子の処理の効果も調べた。
【0123】
結果を下記に示してある。
【0124】
(i)粒子上のDNA収率
糖:ラフィノース>トレハロース>ショ糖
塩:MgCl2〜MgNO3〜CaCl2>硫酸ナトリウム〜硫酸カリウム〜臭化ナトリウム
その他:スペルミジン濃度およびアルコール/水%も収率に影響する。
【0125】
(ii)粒子上のDNAの物理的安定性
糖:ラフィノース>トレハロース>ショ糖
塩:MgCl2>MgNO3>CaCl2>硫酸ナトリウム〜硫酸カリウム〜臭化ナトリウム。
【0126】
(iii)凝集
この製剤では問題はない。
【0127】
実施例2:各種DNA-コーティング粒子の安定性試験
各種比率の硫酸プロタミン、EDTA、水およびトレハロース、ショ糖または乳糖のうちの一つを用いて、コーティング粒子を製造した。粒子は、表1における10種類の製剤で示したように、10種類の異なる比率によって製造した。これら各比率に従って製造した粒子の安定性を、4℃および60℃ならびに0、7および14日の時間点で調べた。
【0128】
方法
各比率について、表1に従って管AおよびBを製造した。管AおよびBの内容物を、10秒間または各溶液が十分に混和するまで高速で渦撹拌した。管Aを中等度の速度で渦撹拌しながら、5mLのピペットマン(pipetman)を用いて管Bの内容物を滴下した。管Aをさらに15秒間渦撹拌し、内容物を5分間静置した。管Aにおける上清を除去し、残ったペレットを100%イソプロパノール1mLで1回洗浄した。管の内容物を渦撹拌し、ペレット化した。イソプロパノールを除去し、ペレットを窒素気流で乾燥させて粉末とした。
【0129】
各粒子製剤3〜5mgを1.5mL微量遠心管中で秤量して、4℃または60℃でインキュベートした。各粒子製剤におけるDNAの安定性を、アガロースゲル電気泳動およびHPLCによって、0、7および14日の時間点で調べた。
【0130】
結果
これら粒子製剤は、試験を通じて同様の安定性を示した。「比率4」に従って製造した粒子(処方4、表1)を選んでさらなる作業を行った。
【0131】
表1:粒子製造における糖濃度およびEDTA濃度を至適化するのに用いた実験的DOE。表の最上段に並べた数字は、各管での糖およびEDTAの最終濃度である。表内の数字は、各成分の管に加えたμL単位数である。
【表1】

【0132】
実施例3:「比率4」(処方4)に従って製造した粒子に基づくさらなる安定性試験
粒子を、実施例2と同様に、そして表1における比率4に従って製造した。ただし相対的に量を多くし(金粒子350mg)、
(a)二糖類なし(対照);または
(b)トレハロース;または
(c)ショ糖;または
(d)乳糖
のいずれかを用いた。
【0133】
粒子を4℃および60℃でインキュベートし、8週間後に粒子上のDNAの安定性をゲル電気泳動によって評価した。
【0134】
実施例4:テトラアルギニン製剤の開発
いくつかの処方を試して各種長さのポリアルギニンがDNAを金微粒子上に沈殿させる能力を有することを確認した後、実験を計画して、収率および安定性を調べることでどのポリアルギニン長さを用いるべきかを検討した。さらに、以前の処方で安定性を高めることが明らかになっている糖およびキレート剤の選択も検討した。
【0135】
結果から、4および6モノマーのポリアルギニンが分子量13000のポリマー(約80モノマー)より安定性において優れていることが明らかになった。調べた糖およびキレート剤は同等の性能を示した。トレハロースおよびショ糖はいずれも良好な糖であった。EDTAおよびDTPAは両方とも良好なキレート剤であった。DNAとの解離が相対的に早いと考えられ、さらには6量体より形成される分解生成物がすくないと考えられることから、アルギニン4量体を選択した。さらなる試験用の得られた処方は、TA101.1(DNA、ショ糖、EDTA)、TA101.2(DNA、ショ糖、DTPA)、TA101.3(DNA、トレハロース、EDTA)、TA101.4(DNA、トレハロース、DTPA)と称した。
【0136】
これら4種類の処方を長期安定性に供し、4、25および40℃で互いにそしてスペルミジン/CaCl2対照(スペルミジンおよび塩化カルシウムを用いて、DNAを金微粒子上に沈殿させた)と比較して調べた。これらの安定性を表2に示してある。これらの処方については、マウス試験およびルシフェラーゼ発現実験(DNAコードルシフェラーゼ)で生理活性も調べた。
【0137】
表2:101シリーズの崩壊速度(SC帯のもの)
【表2】

【0138】
これらの活性実験は、101シリーズがいずれも活性で、発現性で、しかもスペルミジン/CaCl2とほぼ同等であることを示していた。処方TA101.1およびTA101.3の安定性の方がTA101.2およびTA101.4より良好であった。それは、キレート剤EDTAの方がDTPAより安定化が大きいことを示しているが、これらの粉末に製剤するとトレハロース(3および4)とショ糖(1および2)の間にほとんど差はなかった。101シリーズのテトラアルギニン処方の処方組成を表3に示してある。
【0139】
表3:101シリーズ組成
【表3】

【0140】
次に、トレハロースおよびEDTAの飽和レベルを製剤環境として用いる2つの実験を行った。それらとともに、複数のエタノールレベルについてもスクリーニングを行った。それらの製剤では、ほぼ飽和した溶液は、金の上により安定に沈殿できるであろうという考えを利用したものである。その処方は、エタノールのパーセントを変えることによって、各種の水分レベルおよび密度で行うことができた。その環境で行った処方は、101シリーズの処方より安定であるように思われた。
【0141】
そして、エタノール、EDTA、トレハロースおよびテトラアルギニンレベルの至適化を扱うよう計画された実験を行った。この実験は、指定の範囲で5段階レベルにわたり、4種類の成分(テトラアルギニン、EtOH、EDTA、トレハロース)を変動させる計画下で行った。10%ルシフェラーゼコードDNAを含むDNA混合物を利用した。それによって、一つの実験で安定性と活性の両方についての試験が可能となった。結果を検討し、実験範囲全体にわたって安定性および発現結果を予測する経験的二次方程式にデータをモデル化することで、至適な処方を選択した。さらなる試験用に得られた処方を、TA201.2、TA201.5、TA201.11およびTA201.15と称した。
【0142】
これら4種類の処方の組成を表4に示してある。これらの組成は、製剤環境の組成である。すなわち最終粉末の組成ではない。表3には、これらの処方がエタノールを高パーセントの溶媒として用いていることが示されている。201.5と201.11との間の主要な違いはトレハロースレベルであるが、テトラアルギニンレベルも201.5では3倍である。201.2と201.15との間の唯一の違いは、201.15ではEDTAが存在することである。
【0143】
処方TA201.5は、発現および安定性の基準が同時に至適化された場合の至適化ソフトウェアによる至適処方である。TA201.11は、安定性のみが至適化された場合の至適処方である。他のものは比較のために示してある。TA201.2は最も発現性の高い処方であり、活性実験で高いバー(bar)を設けるために、さらなる試験に含める。TA201.15は、この実験での中心点であり、複数回製剤した。従ってこの処方は、最も多く繰り返された安定性および活性データを有しており、処方をさらに調べた場合に傾向が繰り返されているか否かを確認する上での基準となった。
【0144】
表4:201シリーズ組成
【表4】

【0145】
処方TA201.5、TA201.15およびTA201.11は非常に安定であった。実際、25℃崩壊速度測定値は、6ヶ月間のエージング後には得られなかった。この温度は、処方が保管中に曝露されると考えられる実際の条件に最も近いものである。TA201.5の安定性を、それより高温で調べた。比較的高温での相対崩壊速度を比較することで、それより低温では比較的安定であることがわかる。表5には、各種温度での処方の安定性を示してある。
【0146】
表5:各種温度でのTA群の安定性
【表5】

【0147】
処方TA201.5およびTA201.11の物理的皮膚毒性を評価した。有害反応は認められなかった。処方中のDNAがコードするタンパク質の活性を調べた。ルシフェラーゼコードDNAを用いた時は、ルシフェラーゼ発現が認められた。表6には、B型肝炎核抗原(Cag)およびB型肝炎表面抗原(Sag)をコードするDNAを用いた動物実験の結果を示してある。
【0148】
表6:動物実験のまとめ
【表6】

【0149】
これらのデータは、処方TA201.5が2μgのDNA用量でキャリア粒子負荷量1mgでのND5.5トランスフェクション動物についての抗体ELISAおよびELISPOT応答アッセイに関して、スペルミジン/CaCl2と同等であったことを明瞭に示している。その処方は、ELISPOTデータ(マン-ホイットニー基準による)に関して、常に高いか同等のスペルミジン/CaCl2成績を示した。
【0150】
処方TA201.5の最終組成を測定した。表7には、TA201.5粉末から測定した総組成範囲を示してある。
【0151】
表7:TA201.5最終総組成および範囲
【表7】

【0152】
表8には、テトラアルギニン製剤の製造に用いた材料を示してある。
【0153】
表8:材料
【表8】

【0154】
下記の手順を用いて、金粉末35mgのスケールでTA201.5の製剤を行った。
【0155】
装置
天秤
渦撹拌器
超音波処理器
遠心器
2mlエッペンドルフ管
1mlおよび200μlピペットマン
空気流。
【0156】
試薬の準備
11.3mg/mlテトラアルギニン(ロット番号523352):重量0.8〜1.0mgテトラアルギニン。秤量mg当たりH2O 88.5μlを加える。それは異なる内容物のロットについては変わる。
【0157】
トレハロース溶液:トレハロース(材料リストで示した供給者)少なくとも30mgを秤量する。秤量30mg当たりH2O 120μlを加えるか、トレハロースの4倍量の水(1mg/μlであることから質量またはμlで)を加える。
【0158】
500mMNa2EDTA:これは、シグマ(Sigma)から溶液で注文することができる(カタログ番号については材料リストを参照する)。
【0159】
手順
管B:管Bを準備してから、エタノールおよびDNAを管Aに加える。キレート剤溶液、糖溶液、EtOHおよびテトラアルギニン溶液を加える。10秒間高渦撹拌する。
【0160】
管A:この管に金を秤取する。キレート剤溶液および糖溶液を加える。30秒間超音波処理し、1分間高渦撹拌する。渦撹拌しながらEtOHを滴下する。DNA溶液を加える。DNAを加えた後、下記のよう管Bを管Aに加える。
【0161】
製剤段階:中等度の速度で管Aを渦撹拌しながら(溶液全体に金が確実に混合されているようにする)、管Bの内容物を滴下する。管Bのものを全量管Aに加えた後、最終テトラアルギニン製剤の入った管Aを1分間高渦撹拌する。製剤を5分間沈降させる。渦撹拌を行い、次に10秒間遠心を行う。上清をピペットで取り、それを分析用に保存する。ペレットをエチルアルコール250μLで洗浄する。30秒間渦撹拌し、3秒間超音波処理する。ペレットを10秒間遠心沈降させ、エチルアルコールを抜き取る。ペレットを再度エチルアルコール250μlで洗浄する。30秒間渦撹拌し、3秒間超音波処理する。ペレットを10秒間遠心沈降させ、エチルアルコールを抜き取る。流量0.5リットル/分の空気流で2時間粉末を乾燥させる。
【0162】

【0163】
管Aおよび管B
・渦撹拌しながら管Aに管Bを滴下する。
【0164】
・1分間渦撹拌する。
【0165】
・5分間沈降させる。
【0166】
・10秒間遠心し、上清を除去する。
【0167】
・エチルアルコール250μlで洗浄し、30秒間渦撹拌し、3秒間超音波処理し、10秒間遠心し、除去する。
【0168】
・エチルアルコール250μlで洗浄し、30秒間渦撹拌し、3秒間超音波処理し、10秒間遠心し、除去する。
【0169】
・空気下または窒素下に2時間乾燥させる。
【0170】
処方TA201.5の開発全体を通じて、以前では製剤手順は、最初に各成分の個々の原液を作り、次にそれを一定の順序で製剤管に加えるというものであった。しかしながら、処方のクリーンルーム製造では、無菌濾過段階が必要であると考えられる。「マスター混合」実験を行って、その必要性を扱った(NB2334-80)。この戦略は、全ての水系成分のマスター混合物を管A(マスターA)および管B(マスターB)で用いるものであった。これらの混合物を注射器濾過して滅菌し、濾過物を製剤管に入れた。マスター混合実験では、安定性および総組成に関してマスター混合手順と標準的手順によって作った粉末を互いに比較した。
【0171】
表9:マスター混合実験での最終組成物
【表9】

【0172】
表10:マスターと通常の安定性比較
【表10】

【0173】
これら2つの手順によって同じ最終生成物が得られたことから、このマスター混合戦略は問題がないと考えられ、その後TA201.5粉末の粉末製剤に用いることができると考えられる。さらに別のプロセス実験を行って、どのプロセスが必須であるかを決定した。
【0174】
実験:同じ原液から、70mgのスケールで処方1〜9を行った。製剤比でEDTA、トレハロースおよびDNA溶液を混合することで、管A用のマスター混合を行って、注射器濾過した。製剤比でEDTA、トレハロースおよびテトラアルギニン溶液を混合することで、管B用のマスター混合を行って、注射器濾過した。処方1を、以下のプロセスによって行った。
【0175】
試薬の準備(10については、70mg製剤)
DNA:プラスミドおよびルシフェラーゼコードDNAの原液を1mg/mlで提供した。9SC1 8:1ルシフェラーゼ容量比で2種類のDNA溶液を混合する。
【0176】
SC18 1500μl+ルシフェラーゼDNA 166.7μl。
【0177】
11.3mg/mlテトラアルギニン::テトラアルギニン約20mgを秤量する。秤取量1mg当たり88.5μlのH2Oを加える。
【0178】
トレハロース溶液:トレハロース少なくとも700mgを秤量する。秤取量35mg当たり140μlのH2Oまたはトレハロースの4倍量の水(1mg/μlであることから質量またはμlで)を加える。
【0179】
500mMEDTA:これは、シグマから溶液で注文可能である(カタログ番号E-7889)。
【0180】
マスターA容量比:トレハロース 1500μl、EDTA 562.5μl、DNA 1500μl(1mg/ml)
マスターAを注射器濾過する。
【0181】
マスターB容量比:トレハロース 1500μl、EDTA 562.5μl、テトラアルギニン 1500μl
マスターBを注射器濾過する。
【0182】

【0183】
管Aおよび管B
渦撹拌しながら管Bを管Aに滴下する。
【0184】
Bを全量加えた後、1分間高渦撹拌する。
【0185】
5分間沈降させる。
【0186】
5秒間渦撹拌し、10秒間遠心し、*上清を除去する。
【0187】
EtOH500μlで洗浄し、30秒間渦撹拌し、3秒間超音波処理し、10秒間遠心し、*除去する。
【0188】
最後の段階を1回繰り返す。
【0189】
空気下に0.5L/分で1時間ペレットを乾燥させる。
【0190】
このプロセスは対照製剤である。以下の表は、粉末2〜9のプロセス変更点を示している。
【0191】

【0192】
残りの製剤は、添加の順序を変えてこの製剤についての1マスター混合部の可能性を評価する処方であった。そのプロセスは対照と同様であった。
【0193】
マスター混合容量比:トレハロース 400μl、EDTA 150μlおよびテトラアルギニン 200μl
マスター混合物を注射器濾過する。
【0194】
処方10
金70mg
マスター混合物525μl
渦撹拌しながらEtOH 735μlを滴下
30秒間超音波処理し、10秒間渦撹拌する。
【0195】
渦撹拌しながらDNA 140μlをゆっくり滴下する(滴下間で5秒間の休止を設ける)。
【0196】
Bを全量加えた後、1分間高渦撹拌する。
【0197】
5分間沈降させる。
【0198】
5秒間渦撹拌し、10秒間遠心し、*上清を除去する。
【0199】
EtOH 500μlで洗浄し、30秒間渦撹拌し、3秒間超音波処理し、10秒間遠心し、*除去する。
【0200】
最後の段階を1回繰り返す。
【0201】
空気下に0.5L/分で1時間ペレットを乾燥させる。
【0202】
*遠心後のペレットからの液体の除去は1000μlピペットで行って、ほとんどの液体を除去し、その後に200μlピペットで残りの液体を除去する。粉末上に残るのはできるだけ少なくする。
【0203】
いずれの粉末についても、総組成、安定性、CHO細胞でのルシフェラーゼ発現およびゲルショットに関して分析を行った。
【0204】
表11:プロセス堅牢性実験の組成
【表11】

【0205】
表12:プロセス堅牢性実験の60℃での安定性
【表12】

【0206】
速度および半減期は、互いに非常に近い値であった。それは、この製剤プロセスが安定性に関して堅牢であることを示している。処方5および7は、他のものより若干良好な安定性を有していたが、処方9および10は明瞭な安定性上の利点を有していた(3倍)。処方9は洗浄を行わず(従ってプロセスには適さない)、処方10は添加順序を変えて行った。
【0207】
発現データは、この処方が非常に類似していることを示していた(300〜400Kカウント/秒)。新鮮なスペルミジン/CaCl2処方の方が発現性が高かったが(あるいは細胞分析時にはより多くの発現材料を有していた)、放出量も相対的に高く測定された。処方10および7は、他のテトラアルギニン処方と比較して、ややルシフェラーゼ発現において有利であった(450〜600Kカウント/秒)。全体的に、これらの実験によって、このプロセスが非常に堅牢であることが明らかになった。
【0208】
堅牢性の別の側面は、処方を行うのに使用される添加順序およびプロセスを変えることの効果である。あるそのような実験(NB2251-124)では、全く同じ材料(量および濃度が同じ)を用いて処方を行う異なる方法を検討した。この実験は、異なる順序で成分を沈殿させるよう設計された処方の安定性のみを見るものであった。安定剤の前、同時または後に、DNAを金に直接沈殿させることができたことから、それは恐らくかなりの効果を有するものと考えられる。
【0209】
製剤プロセス
1.管AおよびBアプローチ。管AおよびBは、AがDNAを有し、Bがテトラアルギニンを有する以外は同じ組成を有する。いずれも十分に混合してから、BをAに滴下する。
【0210】
2.別の管AおよびBアプローチ。その際、管A(金を使用)では、エタノールを加えてからDNA溶液を加えることで、DNA添加の前に過剰量の糖で金を前コーティングした。次に、DNAを管Aに加え、直ちに管Bを管Aに加えた。
【0211】
3.このアプローチは、DNAと安定剤を同時に沈殿させるよう設計したものである。DNAおよびエタノール以外、全ての成分を1本の管に加えた。次に、DNAおよびエタノールを互いに混合し、加えた。
【0212】
4.この方法では、エタノール添加の前にDNAを沈殿させた。DNA、テトラアルギニンおよびエタノール以外、全ての成分を1本の管に加えた。これら最後の成分の添加順序は、それぞれDNA、テトラアルギニンおよびエタノールであった。
【0213】
5.このプロセスは、テトラアルギニンをDNAより前に加えた以外は4と同じであった。エタノールはやはり最後であった。
【0214】
これらの製剤を4℃および60℃のインキュベータに入れ、製剤後2週間分析した。アガロースゲル電気泳動では、これらの粉末間に目立った差はなかった。ただし、粉末4および5(エタノールが最後、エタノールの前にDNA:ARG4錯形成)が若干安定性が高かった。
【0215】
以上、粒子介在送達装置からの送達に好適な新規な核酸コーティング粒子、その粒子の製造方法ならびにその粒子を用いた遺伝子治療および核酸免疫感作の方法について説明した。本発明の好ましい実施形態についてやや詳細に説明したが、添付の特許請求の範囲で定義の本発明の精神および範囲から逸脱しない限りにおいて、明らかな変更を行うことが可能であることは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子介在送達装置からの送達に好適な粒子において、核酸凝縮剤および金属イオンキレート剤の存在下に不活性金属キャリア粒子上に核酸を沈殿させることで得られることを特徴とする粒子。
【請求項2】
前記不活性金属キャリア粒子が金、タングステン、白金およびイリジウム粒子からなる群から選択される請求項1に記載の粒子。
【請求項3】
前記不活性金属キャリア粒子が直径約1〜3μmを有する金粒子である請求項2に記載の粒子。
【請求項4】
前記核酸が抗原をコードする請求項1〜3のいずれかに記載の粒子。
【請求項5】
前記抗原がウィルス抗原、細菌抗原および真菌抗原からなる群から選択される請求項4に記載の粒子。
【請求項6】
前記核酸が治療用ポリペプチドをコードする請求項1〜3のいずれかに記載の粒子。
【請求項7】
前記核酸がDNAである請求項1〜6のいずれかに記載の粒子。
【請求項8】
前記核酸凝縮剤がカチオン性ポリマーである請求項1〜7のいずれかに記載の粒子。
【請求項9】
前記核酸凝縮剤がポリアミンである請求項8に記載の粒子。
【請求項10】
前記ポリアミンが、プロタミン類、スペルミジン、スペルミン、プトレシンおよびそれらの生理的に許容される塩からなる群から選択される請求項9に記載の粒子。
【請求項11】
前記ポリアミンがポリアルギニンまたはポリリジンである請求項9に記載の粒子。
【請求項12】
前記ポリアルギニンが(Arg)4または(Arg)6であり請求項11に記載の粒子。
【請求項13】
前記金属イオンキレート剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、イノシトール六リン酸、トリポリリン酸塩、ポリリン酸、コハク酸ナトリウム、コハク酸カリウム、コハク酸リチウム、リンゴ酸ナトリウム、リンゴ酸カリウム、リンゴ酸リチウム、デスフェラールおよびエチレンジアミン-ジ(o-ヒドロキシ-フェニル酢酸)(EDDHA)からなる群から選択される請求項1〜12のいずれかに記載の粒子。
【請求項14】
1以上の二糖類および/または三糖類の存在下に沈殿を行う請求項1〜13のいずれかに記載の粒子。
【請求項15】
前記1以上の糖が、トレハロース、ショ糖、乳糖およびラフィノースからなる群から選択される請求項14に記載の粒子。
【請求項16】
前記1以上の糖がショ糖およびラフィノースの混合物である請求項15に記載の粒子。
【請求項17】
1以上の塩の存在下に沈殿を行う請求項1〜16のいずれかに記載の粒子。
【請求項18】
前記1以上の塩が、酢酸カリウム、塩化カルシウム、塩化リチウム、酢酸ナトリウム、硝酸マグネシウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウムおよび塩化マグネシウムからなる群から選択される請求項17に記載の粒子。
【請求項19】
得られた粒子を酸化防止剤と接触させる請求項1〜18のいずれかに記載の粒子。
【請求項20】
前記酸化防止剤が、エタノール、ビタミンA、ビタミンCおよびビタミンEからなる群から選択される請求項19に記載の粒子。
【請求項21】
ポリアルギニン、EDTAおよびショ糖の存在下に金キャリア粒子上にDNAを沈殿させることで得られた請求項1に記載の粒子。
【請求項22】
粒子介在送達装置用の投与容器において、核酸凝縮剤および金属イオンキレート剤の存在下に不活性金属キャリア粒子上に核酸を沈殿させることで得ることができる粒子を含むことを特徴とする容器。
【請求項23】
核酸凝縮剤および金属イオンキレート剤の存在下に不活性金属キャリア粒子上に核酸を沈殿させることで得ることができる粒子を装填した粒子介在送達装置。
【請求項24】
無針注射器である請求項23に記載の粒子介在送達装置。
【請求項25】
粒子介在送達装置からの送達に好適な粒子の製造方法において、
(i)核酸凝縮剤および金属イオンキレート剤の存在下に不活性金属キャリア粒子上に核酸を沈殿させる段階;ならびに
(ii)得られた粒子を回収する段階
を有することを特徴とする方法。
【請求項26】
段階(i)で、前記不活性金属キャリア粒子および前記核酸を含む混合物に前記核酸凝縮剤を加える請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記不活性金属キャリア粒子が金、タングステン、白金およびイリジウム粒子からなる群から選択される請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
前記不活性金属キャリア粒子が直径約1〜3μmを有する金粒子である請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記核酸が抗原をコードする請求項25〜28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記抗原がウィルス抗原、細菌抗原および真菌抗原からなる群から選択される請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記核酸が治療用ポリペプチドをコードする請求項25〜28のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記核酸がDNAである請求項25〜31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記核酸凝縮剤がカチオン性ポリマーである請求項25〜32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
前記核酸凝縮剤がポリアミンである請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記ポリアミンが、プロタミン類、スペルミジン、スペルミン、プトレシンおよびそれらの生理的に許容される塩からなる群から選択される請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記ポリアミンがポリアルギニンまたはポリリジンである請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記ポリアルギニンが(Arg)4または(Arg)6であり請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記金属イオンキレート剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、イノシトール六リン酸、トリポリリン酸塩、ポリリン酸、コハク酸ナトリウム、コハク酸カリウム、コハク酸リチウム、リンゴ酸ナトリウム、リンゴ酸カリウム、リンゴ酸リチウム、デスフェラールおよびエチレンジアミン-ジ(o-ヒドロキシ-フェニル酢酸)(EDDHA)からなる群から選択される請求項25〜37のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
段階(i)をさらに1以上の二糖類および/または三糖類の存在下で行う請求項25〜38のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
前記1以上の糖が、トレハロース、ショ糖、乳糖およびラフィノースからなる群から選択される請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記1以上の糖がショ糖およびラフィノースの混合物である請求項40に記載の方法。
【請求項42】
段階(i)をさらに1以上の塩の存在下に行う請求項25〜41のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
前記1以上の塩が、酢酸カリウム、塩化カルシウム、塩化リチウム、酢酸ナトリウム、硝酸マグネシウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウムおよび塩化マグネシウムからなる群から選択される請求項42に記載の方法。
【請求項44】
段階(i)から得られた粒子を酸化防止剤と接触させる請求項25〜43のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
前記酸化防止剤が、エタノール、ビタミンA、ビタミンCおよびビタミンEからなる群から選択される請求項44に記載の方法。
【請求項46】
(i)ポリアルギニン、EDTAおよびショ糖の存在下に不活性金粒子上にDNAを沈殿させる段階;および
(ii)得られた粒子を回収する段階
を有する請求項25に記載の方法。
【請求項47】
核酸免疫感作方法において、
(a)粒子介在送達装置からの送達に好適な粒子であって、核酸凝縮剤および金属イオンキレート剤の存在下に不活性金属キャリア粒子上に抗原をコードする核酸を沈殿させることで得ることができる粒子を提供する段階;ならびに
(b)有効量の前記粒子を被験者に投与する段階
を有することを特徴とする方法。
【請求項48】
遺伝子治療方法において、
(a)粒子介在送達装置からの送達に好適な粒子であって、核酸凝縮剤および金属イオンキレート剤の存在下に不活性金属キャリア粒子上に治療用ポリペプチドをコードする核酸を沈殿させることで得ることができる粒子を提供する段階;ならびに
(b)有効量の前記粒子を被験者に投与する段階
を有することを特徴とする方法。
【請求項49】
前記不活性金属キャリア粒子が金、タングステン、白金およびイリジウム粒子からなる群から選択される請求項47または48に記載の方法。
【請求項50】
前記不活性金属キャリア粒子が直径約1〜3μmを有する金粒子である請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記核酸がDNAである請求項47〜50のいずれかに記載の方法。
【請求項52】
前記核酸凝縮剤がカチオン性ポリマーである請求項47〜51のいずれかに記載の方法。
【請求項53】
前記核酸凝縮剤がポリアミンである請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記ポリアミンが、プロタミン類、スペルミジン、スペルミン、プトレシンおよびそれらの生理的に許容される塩からなる群から選択される請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記ポリアミンがポリアルギニンまたはポリリジンである請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記ポリアルギニンが(Arg)4または(Arg)6であり請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記金属イオンキレート剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、イノシトール六リン酸、トリポリリン酸塩、ポリリン酸、コハク酸ナトリウム、コハク酸カリウム、コハク酸リチウム、リンゴ酸ナトリウム、リンゴ酸カリウム、リンゴ酸リチウム、デスフェラールおよびエチレンジアミン-ジ(o-ヒドロキシ-フェニル酢酸)(EDDHA)からなる群から選択される請求項47〜56のいずれかに記載の方法。
【請求項58】
沈殿を1以上の二糖類および/または三糖類の存在下で行う請求項47〜57のいずれかに記載の方法。
【請求項59】
前記1以上の糖が、トレハロース、ショ糖、乳糖およびラフィノースからなる群から選択される請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記1以上の糖がショ糖およびラフィノースの混合物である請求項59に記載の方法。
【請求項61】
沈殿を1以上の塩の存在下に行う請求項47〜60のいずれかに記載の方法。
【請求項62】
前記1以上の塩が、酢酸カリウム、塩化カルシウム、塩化リチウム、酢酸ナトリウム、硝酸マグネシウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウムおよび塩化マグネシウムからなる群から選択される請求項61に記載の方法。
【請求項63】
得られた粒子を酸化防止剤と接触させる請求項47〜62のいずれかに記載の方法。
【請求項64】
前記酸化防止剤が、エタノール、ビタミンA、ビタミンCおよびビタミンEからなる群から選択される請求項63に記載の方法。
【請求項65】
(a)粒子介在送達装置からの送達に好適な粒子であって、ポリアルギニン、EDTAおよびショ糖の存在下に金粒子上に抗原をコードするDNAを沈殿させることで得られた粒子を提供する段階;および
(b)有効量の前記粒子を被験者に投与する段階
を有する請求項47に記載の方法。
【請求項66】
(a)粒子介在送達装置からの送達に好適な粒子であって、ポリアルギニン、EDTAおよびショ糖の存在下に金粒子上に治療用ポリペプチドをコードするDNAを沈殿させることで得られた粒子を提供する段階;および
(b)有効量の前記粒子を被験者に投与する段階
を有する請求項48に記載の方法。
【請求項67】
粒子介在送達装置からの送達に好適な粒子において、表面に核酸、金属イオンキレート剤ならびに
(i)核酸凝縮剤;
(ii)1以上の二糖類および/または三糖類;および
(iii)1以上の塩
のうちの1以上を有する不活性金属キャリア粒子を含むことを特徴とする粒子。

【公表番号】特表2006−503063(P2006−503063A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−539249(P2004−539249)
【出願日】平成15年9月29日(2003.9.29)
【国際出願番号】PCT/GB2003/004202
【国際公開番号】WO2004/028560
【国際公開日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【出願人】(399042269)パウダージェクト リサーチ リミテッド (8)
【Fターム(参考)】