説明

核酸付随分子及び修飾の局在化方法

【課題】本発明は、サンプル核酸と付随した少なくとも一つの分子又はサンプル核酸中の所望の部位の局在化方法に関し、次の工程を具備する−該分子又は該所望の部位に特異的な結合を示す少なくとも一つの結合部分及び少なくとも一つのレポーター核酸を具備する少なくとも一つのレポーター複合体を、前記サンプル核酸に接触させること、−該サンプル核酸を断片化すること、−該レポーター複合体核酸を該サンプル核酸に酵素的にライゲーティングさせること、及び、−ハイブリッドライゲーション産物を検出すること。また本発明は、該方法により作られたライブラリ並びにそのようなライブラリのマイクロアレイにも関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
基本的に、核酸の生物学的機能は全て、特異的な位置における他の分子との直接又は間接的な相互作用によって、及び、核酸が供されることのできる修飾によって、現実化され制御される。そのような相互作用及び修飾の複雑さは、特に高等生物で顕著である。発達した多細胞性真核生物内の細胞は、例えば、ある遺伝子を発現し、他を沈黙させる組織特異的染色質構築物を構築する。
【0002】
過去30年間に、染色質のヌクレオソームモデルが出現したことにより、その構造及びその種々の後成的な状態がどのように制御過程に貢献するかの解明においてかなりの進歩があった。一つの例は、広く受け入れられた「ヒストンコード」の概念によって与えられ、ここで、ある染色質領域の特徴的な質は、遺伝的な情報(発現、阻止又は増殖、分化)の明確な解釈をもたらす異なる後成的な状態の構築を可能にする、修飾されたヌクレオソームの局所的な濃度に依存する。
【0003】
同じ領域に生じる異なる修飾の組合せの効果によって、さらなるレベルの複雑さが加えられる。明らかになった証拠は、例えば、異なるヌクレオソームの翻訳後修飾が同時に存在することが、特異的な因子を特定の領域に補充する(recruit)ために要求されることができるということを示す。
【0004】
この展望から、それらの相互作用及び修飾の感度の良い正確なマッピングは、配列特異的及びゲノムワイドレベルの双方において、ポストゲノム時代における主要な挑戦の一つを構成する。
【0005】
該分野における前進の多くは、当然、分子生物学の新しいツールによるものである;特に、ある技術、染色質免疫沈降又はChIPアッセイ(例えばDas, P.M. et al, BioTechniques, vol 37, No. 6, 2004, 961-969を参照されたい)が、インビボでのタンパク質−DNA相互作用の研究に大変革を起こした。
【0006】
ChIPアッセイは、定義された遺伝子領域で、特異的なタンパク質の会合、又はそれらの改変されたアイソフォームの分析のための方法に広く用いられる。分析されるタンパク質に依存して、基本的に開始する染色質の調製のみ異なる、ChIPアッセイの二つの主要な変異形がある。
第一は、核の小球菌ヌクレアーゼ消化によって調製された天然の染色質(それ故NChIPと呼称される)を使用する。このアプローチは、主に、ヒストン及びそれらの改変形態、又は極めて強いDNA結合因子に適している。その他の全ての場合は、第2アプローチが好ましく、ここでは染色質は、通常ホルムアルデヒドを用いて架橋され、次いで、超音波処理で断片化される(それ故XChIPと呼称される)。何れの場合も、最終的な免疫沈降は、PCR増幅によって分析される。最近、二つの新しい技術が開発され(ChIC、染色質免疫切断、及びChEC、染色質内因性切断)、ここでは、抗体が小球菌ヌクレアーゼと共役し、特異的因子の特定の領域との相互作用が高感受性部位の存在によって明らかにされる。
【0007】
ChIP、ChIC及びChECアッセイには幾つかの欠点がある。
マイクログラムのDNA (染色質)が各アッセイに必要であり、希少な生物学的サンプル(生検、初期胚性段階など)が調査される場合に、又は、同じ分析が二以上の因子について行われることが必要である場合に、厳しい制限となる。
同じサンプル(試験チューブ)中で、二以上の因子を評価することは不可能である。当然別々に行われるが、それにより二倍量の開始物質を必要とする。
二以上の因子が同じ領域に同時に位置した場合に評価が困難であり、また、二以上の経時的な免疫沈降を必要とするために、サンプルの量が制限される場合には現実的に不可能である。これは、異なる因子/修飾の組合せの効果の研究においては重大な制限である。
【0008】
XChIPアッセイは、比較的分解能が低い。これは、定義された平均サイズを有する断片の主要な集団を結果として生じるが、しかし、該平均と比較してより大きいか小さいサイズの断片の著しい程度の亜集団を伴う、現在のXChIPプロトコールで用いられる超音波処理工程の結果である。結果として、わずか数百塩基対で分けられる二つの部位を通常のChIPを用いて識別することは、不可能ではないにしても極めて困難である。
【0009】
Dekker, J.ら(Science, vol 295, 2002, 1306-1309)は、3C-方法論(Chromosome Conformation Capture)を開示しており、ここでは無処置の核を単離し、接触しているタンパク質とDNAを架橋させる、ホルムアルデヒド固定に供する。DNAはEcoRIで消化され、架橋された断片はライゲートされ、PCRによって増幅される。この方法は、従って、DNA−DNA相互作用を媒介するタンパク質の研究のみに適している。
【0010】
特異的なタンパク質−タンパク質又はタンパク質−DNAの相互作用及びPCRに関するさらなる技術は、免疫PCR(Niemeyer, C.M. et al, TRENDS Biotechnol, vol 23, No 4, 2005, 208-216)及び抗体に基づく近接ライゲーション(antibody-based proximity ligation)(Gullberg, M. et al, PNAS, vol 101, No 22, 2004, 8420-8424)である。
【0011】
従って、インビボ及びインビトロでの、タンパク質−核相互作用及び修飾の、感度のよい高処理量分析のために改良された方法が必要である。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、第1の側面において、サンプル核酸と付随した少なくとも一つの分子又はサンプル核酸中の所望の部位の局在化方法に関し、以下の工程を含む
―該分子又は該所望の部位に特異的な結合を示す少なくとも一つの結合部分及び少なくとも一つのレポーター核酸を含む少なくとも一つのレポーター複合体を、前記サンプル核酸に接触させること、
―前記サンプル核酸を断片化すること、
―前記レポーター複合体核酸を前記サンプル核酸に酵素的にライゲーティングさせること、及び、
―前記ハイブリッドライゲーション産物を検出すること。
【0013】
第2の側面において、本発明は、サンプル核酸からの所望の断片のライブラリを作成する方法に関し、以下の工程を含む
―核酸結合因子又は前記サンプル核酸中の所望の部分に特異的な結合を示す少なくとも一つの結合部分、及び少なくとも一つのレポーター核酸を含む少なくとも一つのレポーター複合体を、前記サンプル核酸と接触させること、
―前記サンプル核酸を断片化させること、
―前記レポーター核酸を前記サンプル核酸と酵素的にライゲーティングすること、
―前記ライゲートされたレポーター/サンプル核酸を増幅すること。
【0014】
この側面はさらに、該方法によって得られたか得られるライブラリ及びそのようなライブラリをその上に固定化されて有する固体担体を含む。
【0015】
第3の側面において、本発明は、レポーター複合体、リガーゼ、バッファー及び説明書のような、第1及び第2の側面に従った方法を行うための手段を具備するキットに関する。
【発明の詳細な説明】
【0016】
本発明は、現存の方法の欠点を持たない、例えば染色質付随因子のような結合タンパク質又は核酸上の結合部位の検出及び局在化に関する。これは、幾つかの工程によって達成される。第1の工程は、レポーター複合体の構築である。このレポーター複合体は、前記分子に特異的な結合親和性を有するか、又は局在化又は分析される結合部位を有する、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、核酸又は他の任意の分子である一つの部分(レポーター複合体結合部分)及び核酸である一つの部分(レポーター複合体核酸)を備える。
【0017】
該レポーター複合体結合部分は、タンパク質又は所望の部位に結合するその能力について選択される。核酸に結合するタンパク質が研究される場合、そのレポーター複合体結合部分は、前記タンパク質に結合する抗体、或いは、関連する結合性質を有する抗体断片、又は前記タンパク質に対する一次抗体を認識する二次抗体であってよい。核酸上の結合部位が研究される場合は、該レポーター複合体結合部分は、タンパク質であるか、又はそれらの断片であってよく、これは結合部位に正常に結合するか、又は結合すると思われる。該レポーター複合体は、所望の部位に結合する可能性を増大させるために二以上の結合部位を含んでよい。
【0018】
核酸は、サンプル核酸を検出するための手段として役立つように設計される。これは、従って、サンプル核酸にライゲートされることができる末端を有する。検出がPCRによって行われる場合に、該レポーター複合体核酸は、PCRプライマーを収容するのに十分な長さである。該レポーター複合体核酸は、施用に依存して、DNA又はRNA及び二重鎖又は一本鎖であることができる。該レポーター核酸の長さも施用に依存する。サンプル核酸断片が200〜300塩基又は塩基対である場合、該レポーター複合体核酸は好ましくは50-150塩基又は塩基対である。サンプル核酸断片がより長い場合、レポーター複合体核酸もより長いことが必要である。現在の熟考された態様において、約1000又は2000塩基又は塩基対までのレポーター複合体核酸が有用であり得る。レポーター複合体核酸の該所望の部位における局所的な濃度を上昇させるために、レポーター複合体は多くの核酸分子を含んでよい。
【0019】
レポーター複合体核酸は、レポーター複合体結合部分に付加される。それは、例えば共有結合、ストレプトアビジン−ビオチン相互作用又は該複合体をそれが用いられる条件下で安定化させる他の適切な任意の方法のような多くの任意の方法で付加され得る。
【0020】
該サンプル核酸を含むサンプルは、好ましくは、分析の前に精製される。これは、細胞から核を単離し、溶解バッファー中に溶解し、短い超音波処理をし、続いて、制限酵素による消化を促進するためのバッファーに交換することによって行われる。
【0021】
サンプル核酸は、都合のよいサイズに断片化される。これは、例えば、超音波処理、適切な制限酵素による消化によって行われることができ、或いは、該サンプル核酸がRNAの場合には、ssDNAオリゴヌクレオチドのアニーリング、及び、RnaseHのような、DNA/RNA-ハイブリッドを切断する酵素によって行われる。
【0022】
制限酵素が用いられる場合、制限酵素の選択は、アッセイの所望の分解能に基づいて行われる。高分解能が望まれる場合、平均250塩基対の断片を産する高頻度カッター(frequent cutter)(4-カッター)を使用することが好ましい。より大きい領域が分析される場合は、6-カッター又は8-カッターも使用することができる。サンプル核酸を消化できる制限酵素の選択するために、例えばヒストンのような異なるタンパク質との結合についても注意されねばならない。超音波処理による断片化は、所望の平均断片長を産するために適応され得る。断片化のためにRnaseHを用いた場合、その平均サイズは、サンプル中である頻度で結合するssDNA-オリゴヌクレオチドを設計することによって調整することができる。また、ssDNA-オリゴヌクレオチドは、所望の特異的な配列に隣接して設計され得る。
【0023】
レポーター複合体は、適切なバッファー中でサンプル核酸に接触させられ、所望の部位に結合可能にされる。
【0024】
次いで、レポーター複合体とサンプル核酸の末端が結合される。これは、ランダム断片での、該サンプルとレポーター複合体核酸の分子内ライゲーションに有利な十分に希釈された条件下で行われる。該核酸がdsDNAである場合、T4リガーゼを該核酸のライゲートに用いることができる。該核酸がssDNA又はRNAである場合、RNAリガーゼが好ましい。しかしながら、該核酸をライゲートできる任意の適切なリガーゼを用いることができる。
【0025】
断片化及びライゲーションは、同時に行われることもできる。この場合、該レポーター複合体核酸は、そのライゲート産物がかつてそれが成していた形に再消化されないように改変される。或いは、該レポーター複合体核酸のサンプル核酸に対するライゲーションは、該サンプル核酸の断片化のために用いられる酵素が認識できないDNA部位を生じさせる。
【0026】
次いで、ライゲーション産物が検出される。これは、多くの方法によって行われることができる。現在、PCR方法が好ましく、ここにおいてプライマーがレポーター複合体核酸及び/又はサンプル核酸とアニールされ、そしてPCRが行われる。続いて、例えばシークエンシング又は相補的プローブへのハイブリダイゼーションによって、そのような増幅断片は分析される。このPCR工程は、qPCR、RCAのような他の幾つかの増幅方法と交換可能である。増幅された断片は、ライブラリとしても用いられ得る。
【0027】
さらに、以下の実施例において、より具体的に態様を記載する。それらの実施例は、上記の及び請求の範囲で定義された一般的な方法の説明のためにのみ提供される。
【実施例】
【0028】
実施例A:タンパク質因子又は因子の翻訳後修飾の分析
この実施例は、抗体であるレポーター複合体結合部分によって説明されるが、しかし、抗体断片、結合因子又はそのような因子の断片又は所望の結合性質又は調査される結合性質を有する他のタンパク質/ポリペプチド/ペプチド又は核酸のような、他のレポーター複合体結合部分にも等しく適用可能である。
【0029】
該レポーター複合体核酸はdsDNAである。
【0030】
実施例A1:特異的ゲノム部位における、因子(又はそのアイソフォームの一つ)の相互作用又は修飾の局在化(図1)
この場合、該アッセイは、自然の又は架橋結合された染色質テンプレートを用いてインビボで、又は所望の因子が加えられた裸のゲノムDNAテンプレートを用いてインビトロで、行うことができる。
【0031】
図1に示されたように、該アッセイは、例えば適切な制限酵素によるゲノムテンプレートの断片化、及びゲノムテンプレート上で制限酵素によって生成されたものと適合する末端を備えたレポーター複合体の添加によって行われる。その後、該ライゲーション産物は、該レポーター複合体核酸中の一つのプライマーと調査下の配列中の他のプライマーとで増幅される。
【0032】
実施例A2:特定の因子のゲノム全体にわたる局在化の分析(図2A及び2B)
該レポーター複合体は多価である(結果的に、レポーター複合体当たり二以上の核酸を備える)。これは、該断片の両端におけるレポーター複合体の結合を介して、制限酵素によって生成された制限断片の捕捉を可能にする。該アッセイは図1の様に行われるが、ライゲーション産物の最終的な増幅が、双方共にレポーター複合体核酸とハイブリダイズするプライマーで行われるという相違を有する(図2A)。
【0033】
これは、調査下の因子のゲノムワイドな局在化を代表する断片のライブラリを産生することになる。このライブラリは、続いて、ゲノムワイドな適用範囲を有するマイクロアレイにハイブリダイズされ、他の因子に対するレポーター複合体により作成されたものと比較されるか又はハイブリダイズされる。
【0034】
この実施例の変形は、レポーター複合体核酸がインビトロ転写に適したプロモーター(T7プロモーターのような)を含むように設計されるというものである。調査下のゲノムワイドな局在化を代表する断片のライブラリーは、従って、インビトロ転写によって得られる(図2B)。
【0035】
実施例A3:特異的ゲノム領域での二つの因子の共存(図3)
先に議論したように、染色質付随因子の研究のための現存する方法の一つの限界は、第1の工程の比較的低い回収率のために、逐次の沈殿を行うことが難しいことである。
【0036】
これは、本発明に従うアッセイにおける場合ではない。レポーター複合体結合部分に結合したレポーター複合体核酸を有することの一つの利点は、二以上の異なる結合部分が結合され得ること、即ち、特異的核酸を有するそれぞれが、異なりうる特異的な二重のライゲーション産物の検出を可能にすることである。従って、その利点は、全ての異なる組合せが、同じ試験チューブ内の同じ実験で評価できるという事実に存する。
【0037】
図3に示した例の考察:因子Aに対するレポーター複合体及び因子Bに対するレポーター複合体は、該サンプルに一緒に加えられる。二つのレポーター複合体は、それらの核酸配列が異なっており、因子Aに特異的なレポーター複合体は二つのプライマー部位A1及びA2を含むレポーター複合体核酸を有し、因子Bに特異的なレポーター複合体は同様に、プライマー部位B1及びB2を有する。該アッセイは、先の実施例に記載したように行われる。
【0038】
このライゲーションの人工産物は、同じレポーター複合体核酸が該サンプル核酸の両端にライゲートすることができ、産物A2A1-DNA-B1B2(所望の)を与えるが、しかし望ましくないA2A1-DNA-A1A2及びB2B1-DNA-B1B2をも与える。それ故、第1回目の増幅は、第1のレポーター複合体中でB1(又はB2)とアニールするビオチン標識化したプライマー及び第2のレポーター複合体中でA2とアニールする非修飾プライマーを用いて行われる。この第1回の増幅の産物は、ビオチン結合タンパク質を介して親和性精製され、溶出され、分析下でゲノム領域にアニーリングする第1のプライマー及び因子Aに対するレポーター複合体中のA1にアニーリングする第2のプライマーを用いた第2回目の増幅に供される。
【0039】
この実施例の変形は、レポーター複合体核酸A及びBが、該産物A2A1-DNA-B1B2、A2A1-DNA-A1A2及びB2B1-DNA-B1B2のサイズが著しく異なるように設計されるというものである。これは例えば、A1及びA2をB1及びB2よりも著しく短くし、B1/B2-末端におけるプライマー配列を、レポーター複合体結合部分に最も近く配置することによって行うことができる。これは、A2A1-DNA-A1A2-産物を短くし、A2A1-DNA-B1B2を中間にし、B2B1-DNA-B1B2を長くする。ビオチン親和性精製工程は、従って、サイズに依存した精製によって、例えばゲル電気泳動によって交換される。
【0040】
この実施例の第2の変形は、二つのレポーター複合体核酸の一つがインビトロ転写のために適したプロモーターを備えているというものである。この場合、二重のライゲーション産物は、第1のレポーター複合体核酸からインビトロで転写される。続いて該転写物は第2のレポーター複合体核酸及び調査下のDNA配列に特異的なプライマーで逆転写される。
【0041】
二より多い異なるレポーター複合体が同じサンプルに加えられた場合に、異なる共存組合せ及び得られた二重ライゲーション産物が同じ実験で評価できることは明らかである。
【0042】
実施例A4:二つの因子が共存するゲノムのライブラリの作成
二つの異なるレポーター複合体から生成され、実施例A3で記載された、二重のライゲーション産物は、増幅のためのテンプレートを提供することができ、二つの因子のゲノムワイドな(genome wide)共存を代表する断片のライブラリを生成することができる。
【0043】
図4を参照すると、ライゲーション産物は、B2をアニーリングする一つのビオチン標識化プライマー及びA2においてアニーリングする非修飾プライマーを用いた第1回目の増幅に供される。増幅産物は、ビオチン結合担体で親和性精製され、溶出され、A1においてアニーリングするビオチン標識化プライマー及びB1中でアニーリングする非修飾プライマーを用いた第2回目の増幅に供される。最終増幅産物の親和性精製により、共存ライブラリが提供される。
【0044】
この実施例の変形は、二つの複合体の一つにおける二つのレポーター複合体核酸の一つが、インビトロ転写のために適したプロモーターを備えているというものである。この場合、二重のライゲーション産物は、第1のレポーター複合体核酸からインビトロで転写される。続いて、該転写物は、レポーター複合体核酸A及びBに特異的なプライマーで逆転写される。
【0045】
単一チューブ方法
実施例A1−A4に記載されたアッセイは、以下の方法に従って、単一の試験チューブ内での最小の取り扱いで行われることができる:
・細胞溶解及び遠心分離による核の回収
・適切な制限/ライゲーションのバッファー中での再懸濁
・非架橋タンパク質の除去
・短い超音波処理/ボルテックスによる、染色質の放出
・制限−免疫ライゲーション反応(この工程において、制限酵素、リガーゼ及びレポーター複合体は、該サンプルに同時に加えられる)
・脱架橋(De-crosslinking)及びDNA精製
・免疫ライゲートされた物質の分析。
【0046】
実施例A3に記載された部位特異的アプローチの場合のように、幾つかの異なるレポーター複合体の同時添加は、分析される因子の異なる組合せ全てについての共存ライブラリ(対で)の作成を可能にする。
【0047】
実施例A1−A4の要約
A1からA4に記載された実施例から、以下の情報が一つの実験での同じ試験チューブから得ることができるという結果になった:
−特定の因子が特異的ゲノム位置と相互作用するかどうか;第2の因子が同じ又はもう一つのゲノム位置と相互作用するかどうか;第3の因子が同じ又は異なる位置と相互作用するかどうかなど
−特異的因子のゲノムワイドな分布;第2の因子のゲノムワイドな分布;第3の因子のゲノムワイドな分布など
−因子対が特異的ゲノム部位において共存しているかどうか;それらの分析されるもの全てのうちの何れの因子対が、特異的ゲノム部位において共存しているか
−因子対のゲノムワイドな共存の程度;分析される因子の全てのゲノムワイドな共存の程度。
【0048】
実施例A5:インビボUVフォトフットプリント法のための末端転移酵素依存性PCRにおけるレポーター複合体の使用
実施例A1に記載したような(他の現在の方法の場合のような)レポーター複合体の使用は高い分解能を示すにも関わらず、因子が結合する正確な配列を同定できない。単一のヌクレオチド分解能のそのようなレベルは、ChIPアッセイとDNAインビボフットプリント法(Kang, S.H, et al, Nucleic Acids Res, vol 10, No 10, 2003, e44)を組合せてのみインビボで達成される。それらの方法が、ChIPアッセイについて既に記載した全ての制限を被っていることは明らかである。
【0049】
レポーター複合体の使用は、所望の特定の因子によって結合されるゲノムの断片においてフットプリント法薬剤によって生成される破壊を明らかにするために容易に適応されることができる。
【0050】
末端転移依存性PCR(TDPCR)は、例えば、レポーター複合体の使用と組合せられることのできるインビボフットプリント法(Komura, J. and Riggs, A.D., Nucleic Acids res, vol 26, No 7, 1998, 1807-1811)に感度の高い方法である。本発明の態様において、プライマー伸長の第1の工程は、レポーター複合体核酸から、ビオチン標識化プライマーを用いて行われる。増幅物質は、次いで、ストレプトアビジンビーズを介して単離される。該物質は連続的に他のプライマー伸長に供されるが、この時は、所望のゲノム領域中に伸長する入れ子状態の(nested)プライマーによる。続いての工程は、通常のTDPCRにおいて使用されるものである。
【0051】
実施例B:DNAの共有結合的修飾の分析
DNA分子は、異なる修飾(例えば塩基のメチル化)に供される。それらの修飾は、多くの異なる生物学的なプロセスにおける役割(遺伝子制御、組換え、修復など)を果たしている。この態様において、レポーター複合体結合部分は、DNAの共有結合的な修飾に対して方向付けられ、該核酸はdsDNAである。
【0052】
実施例B1:与えられた遺伝子座におけるCpGメチル化状態の分析
レポーター複合体は、5−メチルシトシンに結合するように設計され、それ故、精製された裸のDNAに加えられる。該方法は、その他の点では、消化及びライゲーションの時間及び内在性DNA部位からの一つのプライマー及び外来性レポーター複合体核酸からのもう一つを用いた最終的なPCR評価を含めて、実施例A1と同じである。
【0053】
実施例B2:ゲノムワイドスケールでのCpGメチル化の分析
分析は、A1−A4のように行われるが、そのレポーター複合体結合部分は5−メチルシトシンに結合するよう設計される。
【0054】
実施例C:ターゲティングDNA修飾におけるレポーター複合体の利用:レポーター複合体ライゲートサンプルのメチル化分析
実施例C1:A1におけるように生成されたサンプルのメチル化分析
実施例A1で記載されたようなライゲーション工程の後、サンプルを再濃縮し、亜硫酸水素塩突然変異誘発に供する。最後に、それは、レポーター複合体核酸においてアニーリングする一つのプライマー及び分析された特異的ゲノム領域でアニーリングする第2のプライマーによって増幅される。続く工程は、通常の亜硫酸水素塩シークエンシングのものである。実施例A1におけるように、該分析は、同じ試験チューブ中で異なるレポーター複合体によって生成されたサンプルに拡張されることができる。
【0055】
実施例C2:A3におけるように生成されたサンプルのメチル化分析
実施例A3に記載されたライゲーション工程の後、サンプルを再濃縮し、亜硫酸水素塩突然変異誘発に供する。続く工程は、A3に記載されたものと同様であり、第2の増幅の産物は、通常の亜硫酸水素塩シークエンシングにおけるように処理される。実施例A3におけるように、2より多い異なるレポーター複合体が同じサンプルに加えられるとき、異なる共存組合せが、同じ試験チューブ中でメチル化について分析されることができる。
【0056】
実施例D:レポーター複合体核酸は、ssDNAオリゴヌクレオチドである。該サンプル核酸はRNAである
タンパク質−DNA相互作用についてと同じ方法において、該方法は、タンパク質−RNA相互作用又はRNA修飾又は間接的なDNA/RNA相互作用の研究に適応されることができる。レポーター複合体核酸は、ssDNAであろう。ライゲーションは、RNAリガーゼによって行われる。
【0057】
実施例D1:特異的なRNAへの因子の付随の検出
レポーター複合体は、例えば、超音波処理又は標的化されるRNA断片の両端においてアニーリングする戦略的に設計されたDNAオリゴヌクレオチドの添加を通したRnaseHによる選択的消化によって、都合のよい平均サイズに断片化された、架橋されたRNA調製物に加えられる(ここで、タンパク質及び核酸は、ホルムアルデヒド、UV光又は任意の他の方法によって架橋されている)。
【0058】
ライゲーションは、希釈された条件下で、T4RNAリガーゼのようなRNAリガーゼによって行われる。ライゲートされた物質は、精製されて逆転写によって増幅される。得られたcDNAは、レポーター複合体核酸においてアニーリングするプライマーから及び調査下のサンプルRNAにおいてアニーリングする第2のプライマーから増幅される。
【0059】
実施例D2:トランスクリプトームレベルでの、因子の相互作用の調査のためのライブラリの生成
この実施例は図4で説明される。
【0060】
総RNAの一部又は全部が、所望の平均サイズに断片化される。該レポーター複合体が加えられて、RNAリガーゼによるライゲーション反応に供される。該レポーター複合体核酸がレポーター複合体結合部分に接合されるその末端の一つを有しているために、該レポーター複合体核酸の一つの末端のみが、RNAリガーゼによって操作されるライゲーション反応に利用することができる。
【0061】
レポーター複合体のライゲーションの後、過剰のssDNAアダプター(レポーター複合体核酸と配列が異なる)が、該サンプルRNA断片上の利用可能な末端へのライゲートのために加えられる。二重ライゲーション産物は、次いで、レポーター複合体においてアニーリングする一つのプライマー及び該アダプターにおいてアニーリングする第2のプライマーを用いて増幅されることができる。
【0062】
実施例D3:特異的なRNA配列上の二つの因子の共存の検出
実施例D1と同様であるが、第2の因子のための第2のレポーター複合体が加えられるということが異なる。二つのレポーター複合体核酸は、抗体へのそれらの接合に関して反対の極性を有している。即ち、一つはその5’-末端でのレポーター複合体結合部分に接合し、一つはその3’-末端で接合する。これは、標的RNAの二つの末端へのそれらの結合を可能にする。
【0063】
実施例A3と類似して、一旦、二重ライゲーション産物が得られ、逆転写されれば、最初のPCR回が、レポーター複合体核酸の一つでアニーリングする一つのプライマー及び他のレポーター複合体核酸でアニーリングする第2のプライマーで行われる。最終的に、該RNA標的特異性は、RNA(現在cDNA)分子における一つのプライマー及びレポーター複合体核酸の一つにおける第2のプライマーにより、及び/又は、別々に、他のレポーター複合体核酸おける、第2回の増幅によって評価される。
【0064】
実施例D4:トランスクリプトームレベルでの二つの因子の共存のためのライブラリの生成
トランスクリプトームレベルでの二つの因子の共存のためのライブラリは、実施例D3におけるように得ることができるが、総RNAがRnaseHによって所望の平均サイズに断片化されなければならない場合、これは、実施例D2におけるように達成される。二つのレポーター複合体核酸からの最初のPCR増幅は、ライブラリを生成するのに十分である。
【0065】
実施例E:RNA修飾の研究
実施例Dにおいて説明される方法は、レポーター複合体結合部分における結合部分として、所望のRNA修飾に結合するか又はそれに結合すると思われるタンパク質(又はそれらの断片)を用いることによって、RNA修飾の研究に容易に適用され得る。サンプルRNAは、生成された裸のRNAであってよい。
【0066】
実施例F:3Dコンホメーション研究
「3C」及び「RNAトラップアッセイ」という二つの新しい技術の発達は、わずか数年前までは不可能であった分解能レベルでの染色体領域の空間的な機構の可視化を可能にした。しかしながら、それらの方法は、それらの三次元構造に関与し得るタンパク質についての情報は何らも提供しない。
【0067】
本発明のレポーター複合体の利用は、そのような複合体の内側の与えられた因子の存在を評価することによって、それらの三次元構造を構成し維持することに関与する因子科学(factorology)の予測を促進する。
【0068】
この適用は、二つ(またはそれ以上)のゲノム領域が、お互いに情報を交換し、それらの少なくとも一つが与えられた所望の因子と相互作用をする場合に、ライゲーションが、レポーター複合体核酸及び互いに情報交換する二つ(以上)の領域からの断片から成る分子を生成するという仮定に基づく(図5で説明される)。
【0069】
実施例A1、A2、A3及びA4で生成されたPCR産物は、それ故、互いに相互作用すると思われる二つの異なるゲノム配列のライゲーション産物に特異的なプライマーによる増幅のテンプレートを構成し得る。
【0070】
それらの分析は、以下のことを提供され得る:
a)レポーター複合体結合部分が単量体である
b)実施例A1、A2、A3及びA4で生成された増幅産物は、相互作用すると思われる二つの異なるゲノム配列のライゲーション産物に特異的な上記プライマーによる増幅を進行する前に、それらのテンプレートから分離される。この工程は、調査下の因子の存在に関与しない二つの相互作用するゲノム断片の間のライゲーション産物の増幅を避けるために必要である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】図1は、実施例A1に示される本発明の態様を説明する。
【図2】図2A及び2Bは、実施例A2に示される本発明の態様を説明する。
【図3】図3は、実施例A3に示される本発明の態様を説明する。
【図4】図4は、実施例D2に示される本発明の態様を説明する。
【図5】図5は、実施例Fに示される本発明の態様を説明する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル核酸と付随した分子又はサンプル核酸中の所望の部位の局在化方法であって、以下の工程を含む方法:
−該分子又は該所望の部位に特異的な結合を示す少なくとも一つの結合部分及び少なくとも一つのレポーター核酸を含むレポーター複合体を、前記サンプル核酸に接触させること、
−前記サンプル核酸を断片化すること、
−前記レポーター複合体核酸を前記サンプル核酸に酵素的にライゲーティングさせること、及び、
−前記ハイブリッドライゲーション産物を検出すること。
【請求項2】
サンプル核酸と付随した少なくとも二つの分子及び/又はサンプル核酸中の所望の部位の共局在化(co-localization)方法であって、以下の工程を含む方法:
−前記分子の一つ又は所望の部位に特異的な結合を示す少なくとも一つの結合部分及び少なくとも一つのレポーター核酸をそれぞれ含む少なくとも二つのレポーター複合体を、前記サンプル核酸に接触させること、
−該サンプル核酸を断片化すること、
−該レポーター複合体核酸を該サンプル核酸に酵素的にライゲーティングさせること、及び、
−該ハイブリッドライゲーション産物を検出すること。
【請求項3】
前記断片化が超音波処理によって又は少なくとも一つの制限酵素又はRnaseHによる消化によって行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ハイブリッドライゲーション産物の検出が、PCR、RCA、円形化可能(circularizable)プローブの増幅、インビトロ転写、標識相補性シークエンスプローブによるハイブリダイゼーション又は増幅核酸の配列分析によって行われる、請求項1〜3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
サンプル核酸からの所望の断片のライブラリを作成する方法であって、以下の工程を含む方法:
−核酸結合因子又は前記サンプル核酸中の所望の部位に特異的な結合を示す少なくとも一つの結合部分、及び少なくとも一つのレポーター核酸を含む少なくとも一つのレポーター複合体を、前記サンプル核酸と接触させること、
−前記サンプル核酸を断片化させること、
−前記レポーター核酸を前記サンプル核酸に酵素的にライゲーティングさせること、
−前記ライゲートされたレポーター/サンプル核酸を増幅すること。
【請求項6】
前記断片化が、超音波処理によって又は少なくとも一つの制限酵素又はRnaseHによる消化によって行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項7】
前記レポーター複合体結合部分がタンパク質である、請求項1〜6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
請求項5に記載の方法によって得られるライブラリ。
【請求項9】
固体担体、好ましくはマイクロアレイに固定化された、請求項8に記載のライブラリ。
【請求項10】
固体担体であって、その上に固定化された、請求項7に記載された少なくとも一つのライブラリを有する固体担体。
【請求項11】
請求項9に記載の固体担体であって、請求項7に記載のライブラリを含む各マイクロドットを備えるマイクロアレイの形態である固体担体。
【請求項12】
請求項1〜6の何れか一項に記載の方法を行うためのキットであって、
−分子又は所望の部位に特異的結合を示すタンパク質部分及び少なくとも一つのレポーター核酸を含む少なくとも一つのレポーター複合体、
−少なくとも一つのリガーゼ、及び
−請求項1〜5の何れか一項に記載の方法を行うための説明書
を具備するキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−500033(P2009−500033A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520222(P2008−520222)
【出願日】平成18年7月3日(2006.7.3)
【国際出願番号】PCT/SE2006/050239
【国際公開番号】WO2007/004982
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(508006713)フォルスカルパテント・アイ・ウプサラ・エービー (1)
【氏名又は名称原語表記】FORSKARPATENT I UPPSALA AB
【住所又は居所原語表記】Uppsala Science Park,Glunten,S−751 83 Uppsala,Sweden
【Fターム(参考)】