説明

核酸分析方法、核酸分析用セル、および核酸分析装置

単一サンプル内の複数種類のターゲットに対し、その増幅と個々の検出を同時に行うことにより、簡便・安価で、高精度の遺伝子発現解析方法を提供する。チップ内に温度条件を個別に制御可能な区画を複数設
け、それらの区画を、核酸増幅用、及び検出用に利用することにより、単一チップ内で増幅と検出を同時行う。また、増幅区画及び検出区画は複数あり、かつ全て独立に温度条件を決定できるため、単一サンプル内の複数種類の目的物を、一括で増幅及び検出することが可能である。増幅と検出が同時に行えるため、利用が簡便であり、コスト低減にも寄与する。また、複数の目的物がある場合、サンプルを小分けする必要がないため、検出感度が高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、DNA,mRNAなどの核酸(ポリヌクレオチド)の分析方法、核酸分析用セル、および核酸分析装置に関する。
【背景技術】
サンプル中に存在するDNA或いはmRNAの種類を測定する技術として、DNAチップが知られている。DNAチップは、遺伝子などの関心のある核酸(標的核酸)をハイブリダイゼーション(相補鎖結合)により相補的に結合(捕捉),合成するために、種々の一本鎖のオリゴヌクレオチドプローブを、基板上に高密度に整列固定してなる。代表的なものとしては、アフィメトリックス社(米国)のDNAチップのように、フォトリソグラフィ技術を用いて半導体チップ上に標的核酸を捕捉するためにオリゴヌクレオチドプローブを高密度に整列固定するものが周知である。また、関心のあるmRNAの発現量を定量計測する技術として、リアルタイムPCR法、及びTaqManプローブ法などが周知である。
さらに、従来の生化学反応装置では、特開平5−317030号公報に開示されるように、二次元平面上に配列された多数の孔(チャンバ)を持つ生化学反応装置(マイクロマルチチャンバ)において、各々のチャンバに温度調節機能を組み込んで、チャンバごとに温度を独立して制御可能にした技術が開示されている。
また、同公報には、このようなマイクロマルチチャンバを用いてPCR(polymerase chain reaction:PCR法)による核酸増幅反応を行う技術が記載されている。この技術は、それぞれのチャンバに微少容量の種々のPCR用の反応液(生化学的試料)を与え、チャンバ毎に反応液に応じた温度サイクル制御を行うことにより、同時の多種,多数のPCRを可能にしている。チャンバ母材は、例えばシリコンが用いられ、異方性エッチングによってチャンバとなる孔が掘られ、チャンバ内に温度調節手段として、半導体ペルティエ素子を形成している。
一方、特開2000−342264号公報、特開2001−235469号公報、特開2001−235474号公報においては、核酸検出用チップにおいて、一つの基板上に複数の独立した温度条件を設定することが可能な区域(区画)を設ける技術が開示されている。この従来技術は、DNA,mRNA等の核酸(ポリヌクレオチド)をハイブリダイゼーションにより検出(捕捉)することを目的としている。また、独立した温度制御が可能な複数の区画については、区画ごとに異なるオリゴヌクレオチドプローブ(核酸検出用プローブ)が固定されること、標的核酸を含む試料溶液の種類は各区画に共通の試料であり、その試料が基板上(チップ表面)に添加されること、各区画は各核酸検出用プローブのハイブリダイゼーションに適した温度に設定されることが述べられている。
上記したように、従来の技術には、種々の一本鎖のオリゴヌクレオチドプローブを、基板上に高密度に整列固定するDNAチップや、多種,多数の試料を、一つの基板上の複数のチャンバで個別に温度制御して核酸増幅する技術や、一つの基板上で種別ごとの核酸検出用プローブ(オリゴヌクレオチドプローブ)を、独立して温度制御が可能な区画に固定する技術が開示されている。これらの技術では、DNA,mRNAなどの関心のある核酸(標的核酸)を専ら増幅或いは検出するために用いるものとして開示されている。しかしながら、多種,多数の核酸を同時に増幅・検出可能にする技術については開示されていない。
ところで、遺伝子発現が創薬分野などで重要となるに従い、10〜20ないし100種類の限定した関心のある遺伝子に関して、その発現量を定量評価することが求められている。従来の技術では、発現の増減などは、DNAチップを用いることにより評価することが可能であったが、定量性に乏しく、また標的核酸の増幅手順を外部で行うため、煩雑である問題があった。また、核酸の増幅においては、最適な温度制御に種類差が存在するため、一度に増幅が可能な種類数も限られていた。
一方、発現量の定量評価を行う技術であるリアルタイムPCRやTaqMan法は、増幅と同時に検出が行えるため、検出の精度が良く、簡便である。しかし、1チューブで1種類の遺伝子しか検討できないため、関心のある遺伝子が複数ある場合は、その分リアクションが増加し、コストと煩雑さが激増する。さらに、測定サンプルを分注により小分けする必要があり、1リアクションあたりのサンプル量が減少してしまう。一般に、遺伝子発現で検討を行うサンプルは、微量であることがほとんどであり、小分けによる検出能の低下は、大きな問題である。
【発明の開示】
本発明の目的は、関心のある遺伝子などの核酸(標的核酸)が10〜20ないし100種類程度存在する場合であっても、それらの標的核酸(DNA,mRNAなど)を同時に増幅し、一括で定量検定することが可能となる核酸分析方法の提供に関する。
本発明は、基本的には、次のように構成する。試料,試薬などの溶液を収容するためのスペース(反応層)を形成する少なくとも一面に、核酸を増幅により生成するための区画(核酸増幅用区画)と、生成された増幅核酸を乖離後にハイブリダイゼーションにより特異的に捕捉するための区画(核酸検出用区画)とを、互いに独立した温度制御が可能になるよう形成する。そして、核酸増幅用区画では、核酸増幅のための温度サイクル制御を、核酸検出用区画では、特異的な捕捉に適した設定温度制御を行うことにより、単一の反応層にて核酸の増幅と検出を行う。
各区画は、温度センサーとヒーターのセットを個々に有し、それぞれ独立に制御することが可能である。
核酸増幅用区画は、核酸増幅用のプローブを備え、かつ少なくとも1以上形成される。例えば、標的核酸がmRNAである場合には、核酸増幅用区画の表面には、mRNAの末端の特徴的配列であるポリA配列と相補的な、ポリT配列のプローブが固定されている。
核酸検出用区画は、複数形成され、各核酸検出用区画には、2種以上の関心のある標的核酸をハイブリダイゼーションにより捕捉可能にするために2種以上の検出用プローブ(オリゴヌクレオチドプローブ)が種別ごとに各核酸検出用区画に固定される。
それぞれの核酸検出用区画では、核酸検出用プローブとそれに相補的に結合するポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーションの熱安定性を保証するために、核酸検出プローブの種別ごとにハイブリダイゼーション温度が設定される。核酸検出には標識化プライマーを用いた増幅物を利用する。
さらに、核酸検出において、チップ上部の板に励起レーザーを入射し、その励起光の界面しみだし現象であるエバネッセント光を利用する装置も提案する。
以下、上記およびその他の本発明の新規な特徴と効果について、図面を参酌して説明する。なお、図面はもっぱら解説のためのものであって、この発明の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の第1の実施例に用いる核酸増幅・検出セル(例えば遺伝子発現解析用検出セル)におけるチップ(基板)の上面図。第2図は、第1実施例のチップに配設される温度制御可能な区画の一つを取り出して示す詳細構造図。第3図は、第2図の温度制御可能な区画を等価回路で示した図。第4図は、第2図に示す区画の温度制御系を示す基本回路図。第5図は、第2図の区画に設けられる温度検出用ダイオードの温度特性例を示す図。第6図は、本発明の温度制御を行うシステムの全体構成図。第7図は、本発明の第1の実施例に係る核酸増幅・検出セル(例えば遺伝子発現解析用検出セル)の断面図。第8図は、本発明の第1の実施例に用いる核酸増幅・検出セルと検出システムの概略図。第9図は、本発明の第1の実施例における検出手順のフローを示す図。第10図は、本発明の第1の実施例における検出手順の温度条件を示す図。第11図は、本発明の第1の実施例おける核酸増幅・検出方法を説明する図で、初期状態を示している。第12図は、本発明の第1の実施例おける核酸増幅・検出方法を説明する図で、増幅用のポリTプローブに、mRNAがハイブリダイズ状態を示している。第13図は、本発明の第1の実施例おける核酸増幅・検出方法を説明する図で、逆転写反応(RT反応)によりmRNAの相補鎖伸張物が合成されている状態を示している。第14図は、本発明の第1の実施例おける核酸増幅・検出方法を説明する図で、mRNAの相補鎖伸張物の1本鎖の状態を示している。第15図は、本発明の第1の実施例おける核酸増幅・検出方法を説明する図であり、mRNAの相補鎖伸張物の1本鎖に増幅用プライマーがハイブリダイズしている状態を示している。第16図は、本発明の第1の実施例おける核酸増幅・検出方法を説明する図であり、増幅用プライマーの伸張により、蛍光標識化した検出用増幅物が合成されている状態を示している。第17図は、本発明の第1の実施例おける核酸増幅・検出方法を説明する図であり、蛍光標識化した検出用増幅物が、検出区画のプローブに特異的にハイブリダイズしている状態を示している。第18図は、本発明の第2の実施例に用いる核酸増幅・検出セル(例えば遺伝子発現解析用検出セル)の模式図(断面図)。第19図は、本発明の第2の実施例のセルに、エバネッセント光による励起を利用する例を示す模式図。第20図は、本発明の第3の実施例に用いる核酸増幅・検出用チップの初期状態において、核酸増幅用区画には、標的核酸(目的遺伝子)に特異的なリバースプライマーが固定されている例を示す鳥瞰図。第21図は、本発明の第3の実施例において、核酸増幅用プライマー(リバースプライマー)にmRNAがハイブリダイズし、相補鎖伸張合成が行われる例を示す鳥瞰図。第22図は、本発明の第3の実施例において、リバースプライマーの伸張した部分に、蛍光標識付フォワードプライマーがハイブリダイズしている例を示す鳥瞰図。第23図は、本発明の第3の実施例において、蛍光標識付フォワードプライマーが伸張されて、蛍光標識化した検出用増幅物となる例を示す図。第24図は、本発明の第5実施例に係るに用いる核酸増幅・検出セル(例えば遺伝子発現解析用検出セル)におけるチップ(基板)の上面図。
【発明を実施するための最良の形態】
(第1の実施例)
本発明の第1の実施例として、遺伝子発現解析を実施した例を以下に示す。
図1は、本実施例に用いる核酸増幅・検出セル(例えば遺伝子発現解析用検出セル)におけるチップ(基板)の上面図である。
本実施例におけるチップ(基板)11は、例えば試料,試薬などの溶液を収容するスペース(以下、「反応層」と称する)12を有し、また、その溶液などの導入口13−1及び排出口13−2を有する。
チップ11における反応層12の一面には、複数の区画14および15−1〜15−8が形成されている。それぞれの区画には、独立して作動する温度センサーとヒーターの組みが設けられている。温度センサーおよびヒーターの一例については、図2によって後述する。
複数の区画のうち、あるものは、核酸増幅用区画として機能し、あるものは核酸検出用として機能する。図1では、チップ11において、区画14が核酸増幅用区画であり、区画15−1〜15−8が核酸検出用区画である。本実施例では、核酸増幅用区画14の両側或いは周囲に複数の核酸検出用区画15−1〜15−8を配設することによって、核酸検出用区画15−1〜15−8のすべてが、核酸増幅用区画14に対して等しい距離で配置されている。なお、図1では、核酸増幅用区画14は、一つ、核酸検出用区画15は8つものを例示しているが、実際は、この数に限定されるものではなく、また、核酸検出用区画については、数十、数百のオーダとなる。
図2は、図1で示した区画のうち、1つの区画の構造を説明する図である。各区画は、全て同様の構造を有する。各区画は、半導体製造技術を用いて作製される。
温度を検出する温度センサーは、P型拡散層21とN型拡散層22の接合で形成されたダイオードであり、その抵抗値の温度依存性を用いてセンサーとして利用する。また、このダイオードは、P型拡散層23を保護層として用い、ダイオード部分の電位を制御している。区画全体のチップ基板24はN型基板を用いており、その電位はN型拡散層25により決められる。
チップ24の電位即ちN型拡散層25の電位を、ダイオードのP型拡散層21の電位と等しくすることによって、保護層23とチップ基板24とがPN接合であっても、温度センサーから保護層23外部にセンサー電流が流出することを防ぐことが可能となる。また、チップ基板24側からみれば、チップ基板24と保護層23は、NP接合となるので、保護層の外部から温度センサーにノイズ電流が流入することを防止できる。
本実施例では、ヒーターはN拡散層26で形成されている。N型拡散層26は、P型拡散層の保護層27で囲まれている。保護層27の電位は、P型拡散層28で決まる。
N型拡散層26の一端を保護層27と同電位(−)とし、他端を正極(+)とすると、N型拡散層26と保護層27はNP接合となるため、ヒーター電流が保護層へリークしない。そのため、N型拡散層26は、電熱線の構造と等価となる。このヒーター26に流れる電流を制御することにより、加熱を制御することができる。センサーと回路の接続は、正極側をS(+)、負極側をS(−)と表す。また、ヒーターと回路の接続は、正極側をR(+)、負極側をR(−)と表す。これらの構造を、等価回路で表すと、図3となる。温度センサーは、ダイオード31であり、ヒーターは32で表される。
区画の温度を制御する基本回路の概略およびチップ上の区画との接続を図4に示す。これは、1つの区画について、温度を検出し、加熱を制御する回路の1例である。
温度センサーのダイオード31には、定電流回路が接続する。この回路は、抵抗41が、ダイオードの抵抗値が無視できる程大きい場合、抵抗41で決まるほぼ一定の電流が流れる定電流回路となる。ダイオード31における電圧降下は、電圧計42で測定し、その値は制御部43に送られる。
制御部43は、予め設定された電圧値(設定値Vs)と、電圧計42における測定値(Vx)を比較し、Vs<Vxの場合はゲート44をON、Vs>Vxの場合はゲート44をOFFとする制御を行う。ヒーター側回路は、ゲートON時に両端に電圧45が印加され、OFF時には電圧印加が切れる。この基本回路を用いる制御について、以下に説明する。
ダイオード31両端の電圧降下とチップの区画温度との関係(1例)を、図5に示した。以下、この例を用いて説明する。図5に示すとおり、チップの温度(T[摂氏度])と電圧降下(Vx[mV])は、直線性を示し、その傾きは、本例では約−2mV/度である。そのため、以下の近似式(1)で示される。
Vx=−2T+560 …(1)
つまりチップの区画温度が1度上昇すると、電圧降下が約2mV減少する。予め、この関係式を測定しておくことにより、電圧降下からチップ温度を計算することが可能となる。なお、傾きの値は、測定条件等により異なる。また、本特許では説明しないが、ダイオードの抵抗値の温度依存性を、定電圧条件や、その他の条件を用いて関係式を求めることも可能であることは言うまでもない。
図5で示した通り、本例では、温度上昇は、電圧降下の低下で観測される。そこで、チップ内における任意の区画の温度を、以下の通りに制御することが可能である。
例えば、ある区画を、T=摂氏50度で制御する場合を説明する。区画の温度が、所望の温度条件である摂氏50度より低い場合、センサーにおける電圧降下は、摂氏50度における電圧降下量460mVより大きい。設定値Vsを、Vs=460とすると、Vx>Vsの条件が成り立つため、ゲート44がON制御となり、本回路はVx<Vsとなるまでヒーター回路に電流が流れ、区画は加熱される。加熱により区画の温度が上昇し、Vx<Vsが達成されると、ゲートがOFFとなり、加熱が停止するため、それ以上の温度上昇は発生しない。熱拡散により、区画の温度が下がり、再度Vx>Vsとなると、ゲートは再度ONとなり、加熱が再開する。この制御により、区画の温度は摂氏50度に維持される。
本実施例では、この基本回路をチップの全ての区画に、それぞれ1回路ずつ接続し、その各設定値を独立に制御することにより、各区画の温度を独立に制御することが可能となる。すなわち、単一のチップ(基板)11に、核酸を増幅するための区画14と、増幅された核酸をハイブリダイゼーションにより特異的に捕捉するための区画15−1〜15−8とが、互いに独立して温度制御が可能なヒーターを伴って形成される。
図6は、本実施例のシステム全体を示す図である。61および62−1〜62−8は、区画14および区画15−1〜15−8に接続する基本回路の制御部を示している。コンピューター63は、システム全体を制御し、予めプログラムされた温度制御を行い、インターフェース64は、コンピューター63と全部の制御部61、62−1〜62−8を接続する。
コンピューター63には、各区画の時刻ごとの設定温度或いは、それに対応する設定電圧値が、予めプログラムされている。コンピューター63は、そのプログラムに則り、インターフェース64を介し、各基本回路の制御部61、62−1〜62−8へ、設定された温度或いはそれに対応する電圧値を、その時刻ごとの設定値Vsとして入力する。この結果、各区画はプログラムされた温度シーケンスを忠実に実現することができる。以上が本発明のチップにおける、区画の構造、並びにその区画に接続する回路およびシステムの概要である。
つぎに、チップの構造について説明する。図1において、核酸増幅用区画14には、その表面に、サンプル中の発現遺伝子(標的核酸例えばmRNA)を捕捉するポリTプローブが、配列末端5’側を区画表面側に向けて固定されている。ポリTプローブは、配列番号1で示される配列を有するオリゴヌクレオチドプローブであり、発現遺伝子が末端に有するポリA領域に、特異的にハイブリザイズする機能を有する。ここでは、配列長として20merのものを採用した。しかし、ポリTプローブとしては、長さとして8〜200merの範囲のポリTオリゴヌクレオチドを利用できる。8merより短い物では、ハイブリダイズ時の安定性に欠ける。また、200merより長い物の場合、機能としては充分であるが、製造のコストがかかる短所がある。また、ポリTオリゴの5’末端側に、T以外も並ぶ領域を任意に付加する場合もある。これは、固相表面からの距離を大きくする効果があり、ハイブリダイゼーションの効率が高まる。

核酸検出用区画15−1〜15−8は、その表面に、目的の遺伝子に対応する増幅物に、特異的に結合することが可能なオリゴヌクレオチドプローブが固定されている。このプローブは、目的の遺伝子ごとに、最適な配列のものが選択される。本実施例では、GAPDHとP53の2種類のmRNAについて、その発現量を測定することを試みた。GAPDH及びP53のmRNAを検出するプローブの配列は、それぞれ配列番号2及び配列番号3である。

これらの配列は、それぞれ、区画15−1及び区画15−5に固定されているとする。固定化の方法は、アミノシラン化処理を行ったチップ表面に対し、リンカーとして、1,4−Phenylene Diisothiocyanateを用い、3’末端をアミノ修飾した上記オリゴプローブを固定する方法が、もっとも簡便である。ここで、特に、3’側をチップ表面に固定することが重要である。これにより、このプローブにおいて、ポリメラーゼによる伸張反応が発生しない。同様の目的には、5’末端側を固定側とする場合において、プローブの3’側末端塩基を、伸張反応が発生しないように化学処理することも有効である。
これらの核酸検出用区画に、目的とする遺伝子に対応した増幅物がハイブリダイズするため、その量を検出することにより、目的遺伝子の量が決定できる。その詳細は、後述する。
本発明で用いる核酸増幅・検出セルは、図7に示すように、既述した核酸増幅用区画14及び核酸検出用区画15−1〜15−8を有するチップ11と、そのチップ11の面上に、チップ面と対向するように配置された透明なシート(上部板)72とを有し、このチップ11と上部板72とにより挟まれる空間12にサンプル(試料,試薬などの溶液)72を保有する。ここでは、チップ11と、上部板72とを合わせたものを「セル」と称する。
図1では、上部板72を外した状態でチップ11を見ているものであり、図7は、図1において、区画15−1と15−5を通る断面図である。
チップ(基板)11及び上部板72との間の層状の空間が、サンプルを収容する反応層12となり、基板17をリソグラフィにより加工することにより形成される。なお、チップ11と上部72とをシートにより形成し、その間にスペーサを介在することで反応層12を形成することも可能である。
上部板72は、厚さは、0.01mm〜1mmが最適である。材質は、ガラス、各種のプラスチックなどが利用できるが、その内部に蛍光物質をなるべく含まないことが重要である。また、厚さ1mmを越える材料を用いることも可能であるが、上部板が熱伝達物質として働いてしまうため、本発明の目的である、チップ内の温度独立性を保つことが、難しくなる。一方、0.01mm以下では、強度に問題がある。サンプルの層73は、0.05mm〜1mmが好適である。1mmを越えると、チップ内のサンプル溶液において、熱による対流が発生するため、熱の独立性が劣化する。
核酸増幅用区画14と核酸検出用区画15−1〜15−8との間及び核酸検出用区画間は、熱の独立性を保つための薄膜状の構造が重要である。これは、シリコン酸化膜を用いることが工業的に有効であるが、そのほか、プラスチックやポリイミドフィルムに代表される様な、他の有機材料フィルムを用いることも可能である。また、このチップは、平面的なため、上下方法への熱拡散効率が高い。そのため、検知温度が高い場合は、単にヒーターをoff条件とすることにより、冷却機能を設けずに、所定の温度まで下げることが可能である。
チップ表面上の核酸検出用区15−1〜15−8で捕捉した蛍光標識付き核酸増幅産物の量は、蛍光量として検出される(蛍光標識付き増幅産物の生成については後述する)。図8にその検出系を、セルに付加した状態を示す。
本実施例では、蛍光検出系は、共焦点顕微鏡と同様な構成で行う。他の検出方法に関しては、後述の実施例で説明する。
蛍光検出系は、レンズ81を用いるより、光検出器82と、励起レーザー83は、セル表面に対して共焦点関係84にあり、レーザー83で励起された反応層12中の各検出用区画における蛍光標識(蛍光量)が光検出器82により測定される。
検出器82、レーザー83、レンズ81はユニットとして一体に組み立てられており、それ全体で水平方向(図中矢印で表示)に移動して、セル表面のスキャニングを行う。
次に、本実施例のチップを用いた核酸増幅の前処理、核酸増幅および検出の操作手順と、チップ上(セル内)で生成される生成物の変遷について、図9〜図17を用いて説明する。
サンプルは、一例として体細胞より抽出した全RNAである。また、今回の標的核酸(ターゲット)は、GAPDHとP53の2種類のmRNAである。
図9は、本実施例の操作手順をまとめたものである。図10は、それぞれの手順における、核酸増幅用区画、核酸検出用区画15−1の温度制御条件をまとめたものである。
図11は、チップ11の表面を模式的に説明する鳥瞰図である。図11に示すように、チップ表面の初期状態では、核酸増幅用区画14の表面にポリTプローブ111(配列番号1)が、GAPDH用核酸検出用区画15−1にはGAPDH用プローブ112(配列番号2)が固定されている。
全RNAを含むサンプル溶液をチップ11の反応層12内に注入し、その後、図10に示す温度条件(1)に設定する。この温度条件は、増幅用区画14がハイブリダイズに適した35℃、核酸増幅用区画15−1〜15−8は、それよりもはるかに高温の75℃である。その結果、サンプル中のmRNAは、核酸増幅用区画14のポリTプローブ111とハイブリダイズして固定される。
図12は、mRNAが、核酸増幅用区画14にポリTプローブ111によって捕捉された様子を模式的に示す鳥瞰図である。ここでは、全てのmRNAが、種類を問わずに捕捉される。例えば、GAPDHのmRNA121、p53のmRNA122及びそれ以外のmRNA123が捕捉される。一方、核酸検出用区画15−1は、高温条件のため、ハイブリダイズは生じない。
次に、不要物を洗浄し、逆転写用試薬(RT試薬)を導入して、図10に示す温度条件(2)とすると、核酸増幅用区画において、逆転写が生じる。このときは、増幅用区画14の温度は、逆転写に適した温度42℃に設定される。核酸検出用区画15−1は、引き続き75℃の高温条件に維持される。
図13は、逆転写により、ポリTプローブ111が伸張された様子を示す図である。ここで、伸張したプローブは、mRNAの存在量を忠実に再現していることが肝要である。つまり、ここでは、GAPDHのmRNAによる伸張物131と、P53のmRNAによる伸張物132、及びそれ以外のmRNAによる伸張物133が存在する。
つぎに、図10の温度条件(3)とし、チップ内を洗浄すると、mRNAは全て排出され、核酸増幅用区画14内には、図14の通り、伸張したプローブ(逆転写産物)131〜133の1本鎖のみとなる。
以上の過程が標的核酸を増幅するためのリバースプローブを形成する前処理であり、この前処理では、既述のように核酸検出用区画に固定された標的核酸検出用のプローブが前処理中にハイブリダイゼーション動作を起こさない温度(例えば75℃の高温条件)に制御される。
次に、反応層12に核酸増幅試薬を導入し、温度条件を図10の(4)の温度に設定する。このときの温度条件は、増幅用区画14が60℃、検出用区画15−1が65度である。
この温度条件の下では、図15に示す動作がなされる。すなわち、核酸増幅試薬中には、5’末端に蛍光標識を有するGAPDH用のプライマー151とp53のプライマー152とがあるため、これらのプライマーが伸張した増幅用プローブの1本鎖の所定の配列にハイブリダイズすることができる。ここでは、GAPDH用のプライマー151は、GAPDHのmRNAによる伸張物131にハイブリダイズし、P53用のプライマー152は、P53のmRNAによる伸張物132にハイブリダイズする。
ここで、温度条件(5)として、増幅区画14ではサーマルサイクルとすると、増幅区画において、GAPDHとP53のそれぞれの伸張物から、リニア増幅により蛍光標識付き増幅物161、162が生成される。
図16は、それぞれの蛍光標識付き増幅物161、162が合成された様子を示している。一方、核酸検出用区画15−1及び15−5は、それぞれのプローブがハイブリダイズするために最適な温度条件に設定されている。そのため、リニア増幅された増幅物が各プローブに特異的にハイブリダイズする(図17)。この量を、増幅と並行して、リアルタイムで検出すると、増幅サイクルN回に対し、本来のmRNA量の2N倍の信号が検出できる。
本実施例では、説明を簡単にするため、2種類のmRNAの検出について説明したが、本発明ではそれ以上の複数種類のmRNAを、核酸検出用区画の数だけ同時に測定することが可能である。
以上より、本実施例によれば、1つのチップ内において、増幅と検出を並行して行うことが可能であり、1サンプル中の複数種類のmRNA発現量を、同時に、迅速で簡便に測定することが可能である。
(第2の実施例)
第2の実施例として、第1の実施例の検出性能をさらに向上させた核酸増幅・検出用セルについて、図18及び図19を用いて説明する。
図18は、チップ11とこれと対向する上部板182との間に反応層(サンプル層)73を介在させた模式図(断面図)である。チップ11には、第1の実施例と同様に核酸増幅用区画と核酸検出用区画とを配設しているが、ここでは、図の便宜上、核酸検出用区画の一つである15−1のみを誇張して表示している。
本実施例では、核酸検出用のプローブ181(第1実施例のプローブ112に相当するもの)は、核酸検出用区画のヒーター表面ではなく、それと向かい面、すなわち上部板部分(透明シート)182に固定されている。上部板182は、第1実施例の上部板72に相当するものである。換言すれば、核酸検出用区画で標的核酸を捕捉する検出用プローブ181は、温度制御可能な区画151−1…151−nなどのヒーター面と対向する面に固定されている。
すなわち、本実施例における核酸検出用区画は、基板11とシート182間の対向する面に機能を分けて形成され、基板11側の対向面には核酸検出用区画の温度サイクル制御を区画ごとに行うヒーター機能が設けられ、シート182側の対向面には、核酸検出用プローブ181が固定されて核酸検出機能が与えられている。
本実施例のセルにおいて、反応層73の厚さが1.0mm以下の条件では、区画(151−1…151−n)の温度とそれに対向する上部板182表面の温度は、ほぼ等しい。
そのため、本実施例の構造においても、プローブ固定領域の温度を、それぞれのハイブリダイゼーション条件に制御することが可能である。そのため、プローブ181にハイブリダイズした測定対象物は、上部板表面に固定される。
核酸増幅と並行に検出用プローブ181に増幅産物(増幅用プローブから乖離した蛍光標識付き増幅産物)が捕捉されている過程において、図19に示すように、上部板182には、上部板182の側方に配置したレーザー光源191から横方向に励起レーザー192が入射される。図19は、上部板182へ励起レーザー192を入射させた場合を模式的に表している。
この励起レーザーは、上部板182内を全反射しながら進行し、上部板182の外部には射出されない角度に制御してある。すると、上部板182の近傍にだけ、エバネッセント光として、励起レーザー192の漏れだしが発生する。その結果、上部板表面に存在する蛍光標識付き増幅産物193だけが励起され、サンプル層中程に浮遊する蛍光標識付き増幅産物194は、励起されない。したがって、本実施例によれば、第1の実施例の効果に加えて、反応溶液中に存在するプライマーは蛍光発光に寄与しないため、蛍光検出のバックグラウンドが著しく減少し、測定S/Nが向上する。
(第3の実施例)
次に本発明の第3実施例について、図20〜図23を用いて説明する。本実施例と第1実施例との相違点は、核酸増幅用区画14に固定されるオリゴヌクレオチドプローブの配列構造である。核酸検出用区画については変わらない。
本実施例では、核酸増幅用区画に固定するプローブとして、第1実施例のような前処理を施すことなく、目的のmRNAを相補的かつ特異的にとらえるリバースプライマーを用いる例を示す。先と実施例と同様に、標的核酸としては、GAPDHとP53の2種類のmRNAを例として説明する。これらの2種類のmRNAに、それぞれ特異的なプライマーとして、配列4〜配列7を用意する。


ここで、配列4と配列5は、GAPDHに対するフォワード及びリバースであり、配列6と配列7は、P53に対するフォワード及びリバースである。リバースプライマーは、核酸増幅用区画の表面に符号201,202に示すように固定されている。一方、フォワードプライマーは、5’末端部に蛍光標識を有する。これらを用いて、核酸増幅を行う。核酸増幅用区画における反応を、以下に説明する。
図20は、チップ内部の鳥瞰図である。チップ11の反応層にサンプルとして、全RNAを注入すると、そのうち、固定されているリバースプライマー201及びプライマー202に特異的な物、即ちGAPDH及びP53のみ、対応するリバースプライマーにハイブリダイズする(図21)。伸張反応により、リバースプライマー211、212は伸張し、mRNAと相補的な配列となる。この核酸増幅におけるサーマルサイクルにより、乖離したmRNAは別のリバースプライマーに再びハイブリダイズする。一方、フリーのフォワードプライマーは、伸張したリバースプライマーと相補的に結合し(ハイブリダイズ)し、伸張する(図22)。
以上を繰り返すと、固定している伸張リバースプライマーと、伸張したフリーなフォワードプライマー(蛍光標識付き)が、初期のmRNA量の2のN乗倍で生成される(図23)。伸張したフリーなフォワードプライマーは、核酸検出用区画のプライマーと相補的配列であるため、第1及び第2の実施例と同様に、検出区画において検出される。本方法は、増幅率が著しく大きいため、微量のターゲットも検出することが可能である。
なお、本実施例は、2種類のプライマーセットの温度サイクルを、それぞれ最適な条件とする必要がある。そのため、アニーリング温度を配列ごとに、個別に設定する方が精度が良い。その場合、核酸増幅用区画を複数個準備すれば、チップ内で複数種類の温度サイクルを同時に実現することが可能である。即ち、GAPDHに対する核酸増幅用区画と、P53に対する核酸増幅用区画を、それぞれ別々に設ける。本実施例では、それぞれのリバースプライマーが、区画表面に固定されているため、それぞれの増幅反応は、対応する区画内でのみ発生させることが可能である。
(第4の実施例)
以上の各実施例では、核酸の増幅と検出を同時に行っていた。そのため、第1の実施例のように、サンプル中にフリーのプライマーが存在するため、バックグラウンドが高くなる場合がある。この場合、増幅と同時の検出は、信号量の概算評価とし、精密の評価に際しては、フリー成分を洗浄する行程を行うことが、精度向上に有効である。
(第5実施例)
図24は、核酸増幅用区画として、241−1及び241−2の2個が1反応層内に設けられている実施例である。その他の構成は、第1実施例〜第4実施例のいずれかの構成が採用される。242−1〜242−nは核酸検出用区画である。
核酸増幅の温度サイクルは、仕様する核酸増幅用のプライマーの配列により、最適条件が異なる。第一の実施例では、図10に示したとおり、温度サイクルとして(95℃:5秒→55℃:15秒→72℃:15秒)を利用した。しかし、プライマーのGC率が大きい場合は、偽ハイブリダイズによる偽物合成があるため、プライマーのハイブリ温度を55℃よりも、5度高い60℃とすることが有効な場合もある。また、生成物の塩基長が長い場合は、伸張合成時間である15秒を、さらに長くする必要もある。本発明の目的である核酸解析の精度向上のためには、これらの温度サイクルを、ターゲットとする核酸ごとに最適化することが有効である。その実現には、反応層内に核酸増幅用区画を複数設け、異なる温度サイクルで制御する必要があり、図24の構成が有効である。
上記各実施例によれば、単一サンプル内の複数種類のターゲットに対し、その増幅と個々の検出を同時に行うことにより、簡便・安価で、高精度の遺伝子発現解析方法を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
本発明によれば、例えば、関心のある核酸(例えば遺伝子)が10〜20ないし100種類程度存在する場合に、それらの遺伝子を同時に増幅し、一括で定量検定できる。また、単一反応層内で行うため、サンプルの小分けによる微量化の問題が生じず、従来より高感度の検出が可能となる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】

【図22】

【図23】

【図24】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料,試薬などの溶液を収容するためのスペース(以下、「反応層」と称する)を形成する少なくとも一面に、核酸を増幅により生成するための区画(以下、「核酸増幅用区画」と称する)と、生成された増幅核酸を乖離後にハイブリダイゼーションにより特異的に捕捉するための区画(以下、「核酸検出用区画」と称する)とを、互いに独立した温度制御が可能になるよう形成し、前記核酸増幅用区画では、核酸増幅のための温度サイクル制御を、前記核酸検出用区画では、特異的な捕捉に適した設定温度制御を行うことにより、単一の反応層にて核酸の増幅と検出を行う核酸分析方法。
【請求項2】
請求項1であって、前記反応層で核酸の増幅と検出とを並行させる核酸分析方法。
【請求項3】
請求項1であって、前記核酸増幅用区画は、少なくとも1以上形成され、それぞれの核酸増幅用区画に核酸増幅用のプローブを備え、
前記核酸検出用区画は、複数形成され、各核酸検出用区画には、種別ごとの関心のある標的核酸をハイブリダイゼーションにより捕捉可能にするための核酸検出用プローブが固定され、
前記各核酸検出用区画では、ハイブリダイゼーションの熱安定性に従い前記核酸検出用プローブの種別ごとにハイブリダイゼーション温度が設定される核酸分析方法。
【請求項4】
請求項1であって、前記核酸増幅用区画では、標的核酸を増幅するためのリバースプローブを形成する前処理が所定の設定温度制御の下で行なわれ、
前記核酸検出用区画には、標的核酸をハイブリダイゼーションにより捕捉可能にするための核酸検出用プローブが固定されており、
前記前処理中に前記核酸検出用プローブがハイブリダイゼーション動作を起こさないように前記核酸検出用区画の温度が制御される核酸分析方法。
【請求項5】
請求項1であって、前記核酸検出用区画には、前記核酸増幅用区画から乖離した蛍光標識付きの核酸増幅物を捕捉する核酸検出用プローブが固定され、この検出用プローブに捕捉された蛍光標識付き増幅物を検出する励起光としてエバネッセント光を用いる核酸分析方法。
【請求項6】
試料,試薬などの溶液を収容するためのスペース(以下、「反応層」と称する)を有し、この反応層を形成する少なくとも一面に、核酸を増幅により生成するための区画(以下、「核酸増幅用区画」と称する)と、生成された増幅核酸を乖離後にハイブリダイゼーションにより特異的に捕捉するための区画(以下、「核酸検出用区画」と称する)と、を互いに独立した温度制御が可能になるよう形成した核酸分析用セル。
【請求項7】
請求項6であって、前記核酸増幅用区画の表面には、mRNAのポリA配列と相補的な配列をなすポリT配列のプローブが固定されている核酸分析用セル。
【請求項8】
請求項6であって、前記核酸増幅用区画の表面には、関心のあるmRNAが特異的にハイブリダイズ可能な核酸増幅用プローブが固定されている核酸分析用セル。
【請求項9】
請求項6であって、前記反応層は、基板とそれに対向して配置された光透過性を有するシートとの間に形成され、前記核酸増幅用区画と前記核酸検出用区画とは少なくとも前記基板の一面の併設されている核酸分析用セル。
【請求項10】
請求項6であって、前記反応層は、基板とそれに対向して配置された光透過性を有するシートとの間に形成され、前記反応層の厚みが0.05mm〜1mm及び前記シートの厚みが0.01mm〜1mmの少なくとも一つの条件を満たしている核酸分析用セル。
【請求項11】
請求項6であって、前記反応層は、基板とそれに対向して配置された光透過性を有するシートとの間に形成され、
前記核酸増幅用区画は、前記基板の一面に形成され、
前記核酸検出用区画は、前記基板と前記シート間の対向する面に機能を分けて形成され、前記基板側の対向面には核酸検出用区画の温度サイクル制御を区画ごとに行うヒーター機能が設けられ、前記シート側の対向面には、核酸検出用プローブが固定されて核酸検出機能が与えられている核酸分析用セル。
【請求項12】
請求項6であって、前記核酸増幅用区画の両側或いは周囲に前記核酸検出用区画が複数配設される核酸分析用セル。
【請求項13】
請求項6であって、前記核酸検出用区画のすべてが、前記核酸増幅用区画と等しい距離で配置されている核酸分析用セル。
【請求項14】
試料,試薬などの溶液を収容するためのスペース(以下、「反応層」と称する)を有し、この反応層を形成する少なくとも一面に、核酸を増幅により生成するための区画(以下、「核酸増幅用区画」と称する)と、生成された増幅核酸を乖離後にハイブリダイゼーションにより特異的に捕捉するための区画(以下、「核酸検出用区画」と称する)と、を互いに独立した温度制御が可能になるよう形成してなるセルと、
前記核酸増幅用区画の核酸増幅のための温度サイクル制御を行う温度制御手段と、
前記核酸検出用区画で、ハイブリダイゼーションによる特異的な捕捉に適した設定温度制御を行う温度制御手段と、
を備える核酸分析装置。
【請求項15】
請求項14であって、前記反応層は、基板とそれに対向配置する光透過性を有するシートとの間に形成され、
前記核酸検出用区画は、前記基板と前記シートとの対向面に機能を分けて形成され、前記基板側の対向面には核酸検出用区画の温度サイクル制御を区画ごとに行うヒーター機能が設けられ、前記シート側の対向面には、核酸検出用プローブが固定されて核酸検出機能が与えられ、
前記核酸検出用プローブには、蛍光標識付きの核酸増幅産物が捕捉されるようにし、その蛍光量の検出手段として、前記シートの内面にしみ出すように設定したエバネッセント光を用いる核酸分析装置。
【請求項16】
請求項14であって、前記セルは、核酸増幅用区画を複数有し、それぞれの核酸増幅用区画で異なる温度サイクル制御を行う核酸分析装置。

【国際公開番号】WO2005/054458
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【発行日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511265(P2005−511265)
【国際出願番号】PCT/JP2003/015490
【国際出願日】平成15年12月3日(2003.12.3)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】