説明

核酸増幅方法、核酸増幅用試薬キット、一塩基多型検出方法、及び、一塩基多型検出用試薬キット

PCR反応において副産物の増幅を抑制することができる核酸増幅方法、それに用いる核酸増幅用試薬キット、PCR反応において副産物の増幅を抑制することを利用して一塩基多型を検出する一塩基多型検出方法、及び、それに用いる一塩基多型検出用試薬キットを提供することを目的とする。PCRにより核酸を増幅させる核酸増幅方法は、反応液中に、サーマス・サーモフィルス(Thermusthermophilus)に由来するRecAタンパク質及びこのRecAタンパク質を改変したタンパク質であってこのRecAタンパク質と類似する機能を有するRecA改変タンパク質の少なくともいずれかを含む相同的組換えタンパク質を混合して、PCRを行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、PCRにより核酸を増幅させる核酸増幅方法、PCRにより核酸を増幅させるための核酸増幅用試薬キット、PCRにより一塩基多型を検出するための一塩基多型検出方法、及び、PCRにより一塩基多型を検出するための一塩基多型検出用試薬キットに関するものである。
【背景技術】
従来より、PCRにより核酸を増幅させる核酸増幅方法が知られている。即ち、反応液中に、鋳型DNA、プライマーDNA、DNAポリメラーゼ等を混合して、鋳型DNAのうち、2種類のプライマーDNAによって挟まれた領域を特異的に増幅させ、特定の核酸を得るものである。
このような核酸増幅方法には、大腸菌(E.coli)等のRecAタンパク質を用いる方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】 特許第3010738号公報(第1−4頁)
しかしながら、PCR反応を行うと、所望の核酸(正しい特異的なPCR産物)だけでなく、副産物(非特異的なPCR産物)も増幅される場合がある。さらに、このような場合において、PCRの条件を適宜変更しても、上記のような従来の方法では、なお副産物が増幅されることも少なくない。
本発明はかかる現状に鑑みてなされたものであって、PCR反応において副産物の増幅を抑制しつつ所望の核酸を増幅することができる核酸増幅方法、PCR反応において副産物の増幅を抑制しつつ所望の核酸を増幅することができる核酸増幅用試薬キット、PCR反応において副産物の増幅を抑制しつつ所望の核酸を増幅することができることを利用して一塩基多型を検出する一塩基多型検出方法、及び、PCR反応において副産物の増幅を抑制しつつ所望の核酸を増幅することができることを利用して一塩基多型を検出するための一塩基多型検出用試薬キットを提供することを目的とする。
【発明の開示】
前記目的を達成するための解決手段は、PCRにより核酸を増幅させる核酸増幅方法であって、反応液中に、サーマス・サーモフィルス(Thermusthermophilus)に由来するRecAタンパク質及びこのRecAタンパク質を改変したタンパク質であってこのRecAタンパク質と類似する機能を有するRecA改変タンパク質の少なくともいずれかを含む相同的組換えタンパク質を混合して、PCRを行うことを特徴とする核酸増幅方法である。
本発明によれば、反応液中に、サーマス・サーモフィルス(Thermusthermophilus)に由来するRecAタンパク質等の相同組み換えタンパク質を混合して、PCRを行い、所望の核酸を増幅させる。
このようにPCRを行えば、所望の核酸(正しい特異的なPCR産物)の収量を減少させることなく、副産物(非特異的なPCR産物)の増幅を低く抑えることができる。即ち、上記の相同組み換えタンパク質が存在することにより、プライマーDNAが鋳型DNAの非特異的な領域に結合してプライマー伸長反応を起こすことが抑制されるため、非特異的なPCR産物の増幅を抑制することができる。より具体的には、本発明によれば、PCRの条件を適宜変更することにより、プライマーDNAと鋳型DNAとの塩基のミスマッチが3塩基以内の場合においてのみ、特異的に核酸を増幅させるようにすることができる。さらには、PCRの条件を適宜変更することにより、プライマーDNAと鋳型DNAとの塩基のミスマッチが2塩基以内の場合においてのみ、特異的に核酸を増幅させるようにすることができる。またさらには、PCRの条件を適宜変更することにより、プライマーDNAと鋳型DNAとの塩基のミスマッチが1塩基の場合においてのみ、特異的に核酸を増幅させるようにすることも可能である。
また、本発明の核酸増幅方法によれば、反応液中に加えるプライマーDNAの濃度を低く抑えても、十分な量の核酸を増幅させることができ、しかも、プライマーDNAの濃度を低くすることにより、副産物の増幅を抑えつつ、所望の核酸だけをより特異的に増幅させることが可能となる。
また、この核酸増幅方法は、上記のように特異性が高いため、アニーリング温度等、プライマー伸長反応の温度条件を変えても、所望の核酸を特異的に増幅させることができる。即ち、従来の核酸増幅方法では、アニーリング温度等、プライマー伸長反応の温度を低く設定すると、目的とする核酸だけでなく、副産物も多量に増幅されることとなるが、本発明によれば、目的とする核酸をより特異的に増幅させることが可能となる。
また、この核酸増幅方法では、反応液中に加えるDNAポリメラーゼの添加量を低く抑えても、従来の方法に比して、十分な量の核酸を増幅させることができる。
このように、本発明の核酸増幅方法では、所望の核酸をより特異的に増幅することができる。
ここで、上記の相同組み換えタンパク質は、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)のRecAタンパク質(本明細書では、T.th.RecAタンパク質とも言う。)、及び、T.th.RecAタンパク質を改変したものであってT.th.RecAタンパク質と類似する機能を有するRecA改変タンパク質(T.th.RecA改変タンパク質)、の少なくともいずれかを含むものであれば、いかなるものを用いてもよい。T.th.RecA改変タンパク質としては、例えば、T.th.RecAタンパク質をコードする遺伝子から、部位特異的変位誘発等により作出された遺伝子の産物であって、1または数個のアミノ酸が欠損、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、T.th.RecAタンパク質と類似する機能を有するものが挙げられる。また、T.th.RecAタンパク質のタンパク質断片であって、T.th.RecAタンパク質と類似する機能を有するもの(T.th.RecAフラグメント)などであってよい。
なお、上記の相同組み換えタンパク質は、プライマーDNA 1μgあたり、0.1μg〜100μgの範囲で混合するのが好ましく、更には1μg〜10μgの範囲で混合するのが好ましい。このような範囲でPCRを行えば、より効率よく特異的に、所望の核酸の増幅させることができるからである。
以下に、PCR反応で用いられる種々の試薬について説明する。
鋳型DNAは、直鎖状で有れば、いかなるものを用いてもよい。即ち、いかなる塩基配列からなるものであってもよく、また、それらの鎖長に上限は存在しない。従って、例えば、3000Mbpといわれるヒトゲノムの全長を持つような巨大なDNAであっても構わない。勿論、その由来は問われない。従って、ウィルスや微生物、動植物のゲノム由来のDNAやそれらを改変したDNAであっても、微生物等のもつプラスミド等やプラスミド等に異種のDNA断片を挿入したキメラDNA等であっても、あるいは、人工的に合成したオリゴヌクレオチドなどであっても構わない。また、鋳型DNAとしては、2本鎖DNAでも1本鎖DNAでも利用することができる。さらに、RNAを逆転写することで得られるcDNAを鋳型DNAとして利用することもできる。
プライマーDNAは、鋳型DNAのうち増幅すべき配列(領域)の両端に位置する相当数の配列と実質的に相補的であれば、いかなる塩基配列からなるものであってもよく、その由来も問われない。実質的に相補的な程度は、鋳型DNAに対する塩基のミスマッチが3塩基以内であるのが好ましく、さらには、塩基のミスマッチが2塩基以内、またさらには、塩基のミスマッチが1塩基以内、特に、100%の相補性を有するのが好ましい。前述したように、T.th.RecAタンパク質等の相同組み換えタンパク質が存在することにより、プライマーDNAが鋳型DNAの非特異的な領域に結合してプライマー伸長反応を起こすことが抑制されるため、プライマーDNAの相補性が低いと、所望の核酸が増幅されにくくなるからである。
なお、プライマーDNAは、各々のプライマーDNAあたり、最終濃度で0.01μM〜10μMの範囲で混合するのが好ましく、さらには、0.1μM〜1μMの範囲で混合するのが特に好ましい。このような範囲でPCRを行えば、より効率よく特異的に、所望の核酸の増幅させることができるからである。また、プライマーDNAの濃度を従来よりも低くすることにより、副産物の増幅を抑えつつ、所望の核酸だけをより特異的に増幅させることができる。
DNAポリメラーゼは、PCRにおいてDNA鎖を変性させる際の高温に短時間加熱されても永久的には不活性化されず、しかも、高温における活性を有するものが好適である。例えば、サーモコッカス・リトラリス(Thermococcuslitoralis)、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillusstearothermophilus)、メタノサーマス・フェルビドゥス(Methanothermusfervidus)、サーマス・アクアティクス(Thermusaquaticus)、T.フラブス(T.flavus)、T.ラクテウス(T.lacteus)、T.ルベンス(T.rubens)、T.ルバー(T.ruber)及びT.サーモフィルス(T.thermophilus)などの高熱菌由来のDNAポリメラーゼや、デスルフロコッカス・モビリス(Desulfurococcusmobilis)、メタノバクテリウム・サーモオートトロフィルクム(Methanobacteriumthermoautotrophilcum)、スルホロブス・ソルファタリクス(Sulfolobussolfataricus)、S.アシドカルダリウス(S.acidocaldarius)及びサーモプラスマ・アシドフィルム(Thermoplasmaacidophilum)などの高熱性古細菌由来のDNAポリメラーゼなどが挙げられる。このうち、入手容易性等の理由から、サーマス・アクアティクス(Thermusaquaticus)由来のDNAポリメラーゼ(Taq DNAポリメラーゼ)や、サーマス・サーモフィルス(Thermusthermophilus)由来のDNAポリメラーゼ(T.th.DNAポリメラーゼ)、サーモコッカス・リトラリス(Thermococcuslitoralis)由来のDNAポリメラーゼを利用するのが好ましい。
なお、例えば、Taq DNAポリメラーゼを使用する場合には、100μlあたり、0.05unit〜50unitの範囲で混合するのが好ましく、さらには、0.5unit〜5unitの範囲で混合するのが特に好ましい。このような範囲でPCRを行えば、より効率よく特異的に、所望の核酸の増幅させることができるからである。また、DNAポリメラーゼの添加量を低く抑えても、従来の方法に比して、十分な量の核酸を増幅させることができる。
さらに、上記のDNAポリメラーゼによる核酸増幅工程前の活性を阻害するために、DNAポリメラーゼに特異的な抗体を反応液に混合するようにしてもよい。この抗体には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え法により製造された抗体、化学的または組換え法により製造された抗体フラグメント(例えば、Fabフラグメント)が挙げられる。このうち、モノクローナル抗体を用いるのが特に好ましい。例えば、Taq DNAポリメラーゼに対する公知のモノクローナル抗体を用いれば、約20℃〜40℃の温度においてTaq DNAポリメラーゼの酵素活性を阻害することができると共に、PCRの熱的サイクルにおける高温によって不活性化される。
また、PCRは、一般に、4種類のdNTP、即ち、dATP、dCTP、dGTP及びdTTPの存在化において行う。
さらに、PCRは、一般に、適当な緩衝剤を含む反応液中で行われる。効率よく核酸を増幅させるためである。緩衝液は、使用する相同組み換えタンパク質やDNAポリメラーゼ等により、反応の最適条件を得るため適宜変更することできる。例えば、pHを適当に調整したトリス系の緩衝液に、塩化カリウムや塩化マグネシウムを加えた緩衝液を利用することができる。
また、PCR反応液には、5%〜10%のDMSOと1%〜2%のベタインを添加してもよい。鋳型DNAの二字構造により目的とする産物が増幅されにくい問題を最小限に留める効果を有するものである。このような変性剤に対し、大膓菌由来のRecAタンパク質等は耐性を有しないが、サーマス・サーモフィルスに由来するRecAタンパク質等は耐性を有するので、本発明において使用することが可能である。
また、PCR反応液には、サーマス・サーモフィルス(Thermusthermophilus)に由来するRecAタンパク質等の相同組み換えタンパク質に対する抗体を加えてもよい。
また、他の解決手段は、PCRにより核酸を増幅させる核酸増幅方法であって、反応液中に、鋳型DNAに対する塩基のミスマッチが3塩基以内のプライマーDNAについてのみプライマー伸長反応が起こるRecAタンパク質またはこのRecAタンパク質を改変したタンパク質であってこのRecAタンパク質と類似する機能を有するRecA改変タンパク質の少なくともいずれかを含む相同的組換えタンパク質を混合して、PCRを行うことを特徴とする核酸増幅方法である。
本発明によれば、反応液中に、鋳型DNAに対する塩基のミスマッチが3塩基以内のプライマーDNAについてのみプライマー伸長反応が起こるRecAタンパク質等の相同組み換えタンパク質を混合して、PCRを行い、所望の核酸を増幅させる。
このようにPCRを行えば、所望の核酸の収量を減少させることなく、副産物の増幅を低く抑えることができる。即ち、上記の相同組み換えタンパク質が存在することにより、プライマーDNAが鋳型DNAの非特異的な領域に結合してプライマー伸長反応を起こすことが抑制されるため、非特異的なPCR産物の増幅を抑制することができる。
また、この核酸増幅方法によれば、反応液中に加えるプライマーDNAの濃度を低く抑えても、十分な量の核酸を増幅させることができ、しかも、プライマーDNAの濃度を低くすることにより、副産物の増幅を抑えつつ、所望の核酸だけをより特異的に増幅させることが可能となる。
また、この核酸増幅方法は、上記のように特異性が高いため、アニーリング温度等、プライマー伸長反応の温度条件を変えても、所望の核酸を特異的に増幅させることができる。即ち、従来の核酸増幅方法では、アニーリング温度等、プライマー伸長反応の温度を低く設定すると、目的とする核酸だけでなく、副産物も多量に増幅されることとなるが、本発明によれば、目的とする核酸をより特異的に増幅させることが可能となる。
また、この核酸増幅方法では、反応液中に加えるDNAポリメラーゼの添加量を低く抑えても、従来の方法に比して、十分な量の核酸を増幅させることができる。
このように、本発明の核酸増幅方法では、所望の核酸をより特異的に増幅することができる。
さらに、上記のいずれかに記載の核酸増幅方法であって、前記反応液中に、ATP−γSを加えて、PCRを行うことを特徴とする核酸増幅方法とすると良い。
本発明によれば、反応液中に、前述の相同組換えタンパク質を混合した上、さらに、ATP−γSも加えて、PCRを行う。
このようにPCRを行えば、所望の核酸をさらに特異的に増幅することができる。なお、ATP−γSを加えた場合と同様に、ATPを加えても、PCRの特異性が増すと推測される。しかし、ATPは、上記の相同組み換えタンパク質によりADPに分解され、ADPは、上記の相同組み換えタンパク質がプライマーDNA等に結合するのを阻害する。このため、ATPを加えても、PCRの特異性が上がりにくい。従って、本発明のように、ADPに分解されないATP−γSを反応液に加えるのが良い。
なお、PCR反応液を調製する際には、T.th.RecAタンパク質を反応液に加えた状態で、dNTPを加える前に、ATP−γSを加えるのが好ましい。このようにすることで、より効率よく所望の核酸を特異的に増幅することができる。その理由としては、先にdNTPを加えると、dNTPがT.th.RecAタンパク質が結合し、後から加えたATP−γSがT.th.RecAタンパク質に結合しにくくなるためであると考えられる。
ここで、ATP−γSの濃度は、目的に応じて適宜変更すればよいが、通常、0.01mM〜10mM、好ましくは、0.1mM〜1mMとするのが良い。
さらに、上記のいずれかに記載の核酸増幅方法であって、鋳型DNAが阻止的または抑制的2次構造の区域を有することを特徴とする核酸増幅方法とすると良い。
本発明によれば、鋳型DNAが阻止的または抑制的二次構造の区域を有する。即ち、鋳型DNAは、一般的なPCRを行った場合に、核酸の増幅が阻止または抑制される2次構造をなす区域を有する。従って、従来のPCRでは、このような区域を有する所望の核酸を、効率よく特異的に増幅させることは困難であった。
これに対し、本発明では、前述の相同組換えタンパク質を混合してPCRを行うので、鋳型DNAにこのような阻止的または抑制的2次構造の区域がある場合であっても、所望の核酸を効率よく特異的に増幅させることができる。その理由は、相同組み換えタンパク質が、鋳型DNAに結合することにより、阻止的または抑制的2次構造が解かれるためであると考えられる。
さらに、上記のいずれかに記載の核酸増幅方法であって、前記反応液中に、KClを加えて、PCRを行うことを特徴とする核酸増幅方法とすると良い。
本発明によれば、反応液中にKClを加えて、PCRを行う。このようにPCRを行えば、所望の核酸をさらに特異的に増幅することができる。
ここで、KClの濃度は、目的に応じて適宜変更すればよいが、通常、1mM〜1000mM、好ましくは、10mM〜100mMとするのが良い。
さらに、上記のいずれかに記載の核酸増幅方法であって、前記反応液中に、Mg2+を加えて、PCRを行うことを特徴とする核酸増幅方法とすると良い。
本発明によれば、反応液中にMg2+を加えて、PCRを行う。このようにPCRを行えば、所望の核酸をさらに特異的に増幅することができる。Mg2+を加えることで、上述した相同組み換えタンパク質のDNAに対する親和性が向上するためであると考えられる。
ここで、Mg2+の濃度は、目的に応じて適宜変更すればよいが、通常、0.1mM〜100mM、好ましくは、3mM〜10mMとするのが良い。
さらに、上記のいずれかに記載の核酸増幅方法であって、前記反応液中に、複数セットのプライマーDNAを加えて、PCRを行うことを特徴とする核酸増幅方法とすると良い。
本発明によれば、反応液中に複数セットのプライマーDNAを加えて、PCRを行う。
従来の核酸増幅方法では、プライマーDNAの濃度をある程度高くしないと所望の核酸を増幅することが難しかったため、複数セットのプライマーDNAを加えることが困難であった。
これに対し、本発明では、上述した相同組み換えタンパク質を加えることにより、各プライマーDNAの濃度を低くしても、副産物の増幅を抑えつつ、所望の核酸だけをより特異的に増幅させることができる。従って、複数セットのプライマーDNAを混合することができ、しかも、このようにしてPCRを行っても、副産物の増幅を抑えつつ、各プライマーセットに対応した所望の核酸だけをより特異的に増幅させることができる。
また、他の解決手段は、PCRにより核酸を増幅させるための核酸増幅用試薬キットであって、DNAポリメラーゼと、4種類のdNTPと、緩衝液と、サーマス・サーモフィルス(Thermusthermophilus)のRecAタンパク質及びこのRecAタンパク質を改変したタンパク質であってこのRecAタンパク質と類似する機能を有するRecA改変タンパク質の少なくともいずれかを含む相同的組換えタンパク質と、を備えることを特徴とする核酸増幅用試薬キットである。
本発明の核酸増幅用試薬キットは、DNAポリメラーゼと、4種類のdNTPと、緩衝液と、T.th.RecAタンパク質等の相同的組換えタンパク質とを備える。
このようなキットを利用すれば、DNAポリメラーゼ、4種類のdNTP、緩衝液、及び、T.th.RecAタンパク質等の相同的組換えタンパク質を反応液に加え、さらに、目的に応じた鋳型DNAとプライマーDNAを用意して反応液に加えるだけで、容易にPCRを行うことができる。しかも、上記の相同組み換えタンパク質により、プライマーDNAが鋳型DNAの非特異的な領域に結合してプライマー伸長反応を起こすことが抑制されるため、非特異的なPCR産物の増幅を抑制することができる。従って、本キットを利用すれば、所望の核酸をより特異的に増幅させることができる。
なお、本発明に記載されているDNAポリメラーゼ、4種類のdNTP、緩衝液、及び、T.th.RecAタンパク質等の相同的組換えタンパク質は、前述したものと同様である。
ここで、本発明の核酸増幅用試薬キットは、DNAポリメラーゼと、4種類のdNTPと、緩衝液と、T.th.RecAタンパク質等の相同的組換えタンパク質とを備えていればよい。従って、これらのものが各々別個の容器等に分けられていても、あるいは、これらのうち2以上のものが予め混合されていてもよい。以下に述べるATP−γS、KCl、Mg2+についても同様である。
さらに、上記の核酸増幅用試薬キットであって、ATP−γSを備えることを特徴とする核酸増幅用試薬キットとするのが好ましい。
このようなキットを利用して、さらにATP−γを加えてPCR反応を行えば、所望の核酸をさらに特異的に増幅することができる。
さらに、上記のいずれかに記載の核酸増幅用試薬キットであって、KClを備えることを特徴とする核酸増幅用試薬キットとすると良い。
このようなキットを利用して、PCR反応を行えば、所望の核酸をさらに特異的に増幅することができる。
さらに、上記のいずれかに記載の核酸増幅用試薬キットであって、Mg2+を備えることを特徴とする核酸増幅用試薬キットとすると良い。
このようなキットを利用して、PCR反応を行えば、所望の核酸をさらに特異的に増幅することができる。
また、他の解決手段は、一塩基多型を検出するための一塩基多型検出方法であって、鋳型DNAのうち一塩基多型をなす塩基を含む配列に対応したプライマーDNAを用い、反応液に、サーマス・サーモフィルス(Thermusthermophilus)のRecAタンパク質及びこのRecAタンパク質を改変したタンパク質であってこのRecAタンパク質と類似する機能を有するRecA改変タンパク質の少なくともいずれかを含む相同的組換えタンパク質を混合して、PCRを行い、所望の核酸の増幅により一塩基多型を検出することを特徴とする一塩基多型検出方法である。
本発明によれば、プライマーDNAの1つには、鋳型DNAのうち一塩基多型をなす塩基を含む配列に対応したプライマーDNAを用いる。そして、反応液中に、T.th.RecAタンパク質等の相同組み換えタンパク質を混合して、PCRを行う。このようにPCRを行えば、鋳型DNAと一塩基多型をなす塩基を含む配列に対応したプライマーDNAとが完全に相補的である場合に、所望の核酸を増幅させるようにすることができる。一方、鋳型DNAと一塩基多型をなす塩基を含む配列に対応したプライマーDNAとが完全には相補的ではない場合、即ち、一塩基多型をなす塩基がプライマーDNAと相補的でない場合に、所望の核酸が増幅しない、または、抑制されるようにすることができる。このため、PCRによる所望の核酸の増幅により、一塩基多型を検出することが可能である。
さらに、上記の一塩基多型検出方法であって、前記反応液中に、ATP−γSを加えて、PCRを行うことを特徴とする一塩基多型検出方法とするのが好ましい。
本発明によれば、反応液中に、前述の相同組換えタンパク質を混合した上、さらに、ATP−γSも加えて、PCRを行う。このようにPCRを行えば、所望の核酸をさらに特異的に増幅することができるため、一塩基多型をより確実に検出することが可能となる。
さらに、上記のいずれかに記載の一塩基多型検出方法であって、前記反応液中に、KClを加えて、PCRを行うことを特徴とする一塩基多型検出方法とすると良い。
このようにPCRを行えば、所望の核酸をさらに特異的に増幅することができるため、一塩基多型をより確実に検出することが可能となる。
さらに、上記のいずれかに記載の一塩基多型検出方法であって、前記反応液中に、Mg2+を加えて、PCRを行うことを特徴とする一塩基多型検出方法とすると良い。
このようにPCRを行えば、所望の核酸をさらに特異的に増幅することができるため、一塩基多型をより確実に検出することが可能となる。
また、他の解決手段は、一塩基多型を検出するための一塩基多型検出用試薬キットであって、DNAポリメラーゼと、4種類のdNTPと、緩衝液と、サーマス・サーモフィルス(Thermusthermophilus)のRecAタンパク質及びこのRecAタンパク質を改変したタンパク質であってこのRecAタンパク質と類似する機能を有するRecA改変タンパク質の少なくともいずれかを含む相同的組換えタンパク質と、を備えることを特徴とする一塩基多型検出用試薬キットである。
本発明の一塩基多型検出用試薬キットは、DNAポリメラーゼと、4種類のdNTPと、緩衝液と、T.th.RecAタンパク質等の相同的組換えタンパク質とを備える。
このようなキットを利用すれば、DNAポリメラーゼ、4種類のdNTP、緩衝液、及び、T.th.RecAタンパク質等の相同的組換えタンパク質を反応液に加え、さらに、目的に応じた鋳型DNAと、この鋳型DNAのうち一塩基多型をなす塩基を含む配列に対応したプライマーDNA含むプライマーDNAを用意して反応液に加えるだけで、容易にPCRを行うことができる。そして、このようにPCRを行えば、鋳型DNAと一塩基多型をなす塩基を含む配列に対応したプライマーDNAとが完全に相補的である場合に、所望の核酸を増幅させるようにすることができる。一方、鋳型DNAと一塩基多型をなす塩基を含む配列に対応したプライマーDNAとが完全には相補的ではない場合、即ち、一塩基多型をなす塩基がプライマーDNAと相補的でない場合に、所望の核酸が増幅しない、または、抑制されるようにすることができる。このため、PCRによる所望の核酸の増幅により、一塩基多型を検出することが可能となる。
よって、本発明の一塩基多型検出用試薬キットを用いれば、容易に一塩基多型を検出することができる。
なお、本発明に記載されているDNAポリメラーゼ、4種類のdNTP、緩衝液、及び、T.th.RecAタンパク質等の相同的組換えタンパク質は、前述したものと同様である。
ここで、本発明の一塩基多型検出用試薬キットは、DNAポリメラーゼと、4種類のdNTPと、緩衝液と、T.th.RecAタンパク質等の相同的組換えタンパク質とを備えていればよい。従って、これらのものが各々別個の容器等に分けられていても、あるいは、これらのうち2以上のものが予め混合されていてもよい。以下に述べるATP−γS、KCl、Mg2+についても同様である。
さらに、上記の一塩基多型検出用試薬キットであって、ATP−γSを備えることを特徴とする一塩基多型検出用試薬キットとするのが好ましい。
このようなキットを利用して、さらにATP−γを加えてPCR反応を行えば、さらに精度良く一塩基多型を検出することができる。
さらに、上記のいずれかに記載の一塩基多型検出用試薬キットであって、KClを備えることを特徴とする一塩基多型検出用試薬キットとすると良い。
このようなキットを利用してPCR反応を行えば、さらに精度良く一塩基多型を検出することができる。
さらに、上記のいずれかに記載の一塩基多型検出用試薬キットであって、Mg2+を備えることを特徴とする一塩基多型検出用試薬キットとすると良い。
このようなキットを利用してPCR反応を行えば、さらに精度良く一塩基多型を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、実施例1に関し、鋳型DNAと各プライマーDNAとの関係について示す説明図である。
第2図は、実施例1に関し、PCR反応物についての電気泳動の結果を示す図面に代わる写真である。(A)はプライマーDNAの濃度を0.06μMにしてPCR反応を行った場合を示す写真であり、(B)はプライマーDNAの濃度を0.20μMにしてPCR反応を行った場合を示す写真である。
第3図は、実施例2に関し、鋳型DNAと各プライマーDNAとの関係について示す説明図である。
第4図は、実施例2に関し、PCR反応物についての電気泳動の結果を示す図面に代わる写真である。
第5図は、実施例3に関し、鋳型DNAと各プライマーDNAとの関係について示す説明図である。
第6図は、実施例3に関し、鋳型DNAと各プライマーDNAとの関係について示す説明図である。
第7図は、実施例3に関し、PCR反応物についての電気泳動の結果を示す図面に代わる写真である。(A)はプライマーDNAの濃度を変えてPCR反応を行った場合を示す写真であり、(B)は別のプライマーDNAを用いてプライマーDNAの濃度を変えてPCR反応を行った場合を示す写真である。
第8図は、実施例3に関し、PCR反応物についての電気泳動の結果を示す図面に代わる写真である。(A)は別のプライマーDNAを用いてプライマーDNAの濃度を変えてPCR反応を行った場合を示す写真であり、(B)は別のプライマーDNAを用いてプライマーDNAの濃度を変えてPCR反応を行った場合を示す写真である。
第9図は、実施例4に関し、鋳型DNAと各プライマーDNAとの関係について示す説明図である。
第10図は、実施例4に関し、PCR反応物についての電気泳動の結果を示す図面に代わる写真である。
第11図は、実施例5に関し、鋳型DNAと各プライマーDNAとの関係について示す説明図である。
第12図は、実施例5に関し、鋳型DNAと各プライマーDNAとの関係について示す説明図である。
第13図は、実施例5に関し、PCR反応物についての電気泳動の結果を示す図面に代わる写真である。(A)はアニーリング温度60℃でPCR反応を行った場合を示す写真であり、(B)はアニーリング温度55℃でPCR反応を行った場合を示す写真である。
第14図は、実施例5に関し、PCR反応物についての電気泳動の結果を示す図面に代わる写真である。(A)はアニーリング温度50℃でPCR反応を行った場合を示す写真であり、(B)はアニーリング温度45℃でPCR反応を行った場合を示す写真である。
第15図は、実施例6に関し、鋳型DNAと各プライマーDNAとの関係について示す説明図である。
第16図は、実施例6に関し、PCR反応物についての電気泳動の結果を示す図面に代わる写真である。(A)はオリゴヌクレオチド37〜44のいずれかを用いてPCR反応を行った場合を示す写真であり、(B)はオリゴヌクレオチド54〜58のいずれかを用いてPCR反応を行った場合を示す写真である。
第17図は、実施例7に関し、PCR反応物についての電気泳動の結果を示す図面に代わる写真である。(A)は最初からプライマーDNAを添加してPCR反応を行った場合を示す写真であり、(B)は1サイクル後にプライマーDNAを添加してPCR反応を行った場合を示す写真である。
第18図は、実施例7に関し、PCR反応物についての電気泳動の結果を示す図面に代わる写真である。(A)は3サイクル後にプライマーDNAを添加してPCR反応を行った場合を示す写真であり、(B)は6サイクル後にプライマーDNAを添加してPCR反応を行った場合を示す写真である。
第19図は、実施例7に関し、PCR反応物についての電気泳動の結果を示す図面に代わる写真である。(A)は10サイクル後にプライマーDNAを添加してPCR反応を行った場合を示す写真であり、(B)は15サイクル後にプライマーDNAを添加してPCR反応を行った場合を示す写真である。
第20図は、実施例8に関し、PCR反応物についての電気泳動の結果を示す図面に代わる写真である。(A)は初期温度70℃の下でPCR反応を行った場合を示す写真であり、(B)は初期温度80℃の下でPCR反応を行った場合を示す写真である。
第21図は、実施例9に関し、鋳型DNAと各プライマーDNAとの関係について示す説明図である。
第22図は、実施例9に関し、PCR反応物についての電気泳動の結果を示す図面に代わる写真である。(A)はATP−γSの非存在下でPCR反応を行った場合を示す写真であり、(B)はATP−γSの存在下でPCR反応を行った場合を示す写真である。
第23図は、実施例10に関し、鋳型DNAと各プライマーDNAとの関係について示す説明図である。
第24図は、実施例10に関し、鋳型DNAと各プライマーDNAとの関係について示す説明図である。
第25図は、実施例10に関し、PCR反応物についての電気泳動の結果を示す図面に代わる写真である。(A)はT.th.RecAタンパク質の非存在下でPCR反応を行った場合を示す写真であり、(B)はT.th.RecAタンパク質の存在下でPCR反応を行った場合を示す写真であり、(C)はT.th.SSBタンパク質の存在下でPCR反応を行った場合を示す写真である。
第26図は、実施例11に関し、鋳型DNAと各プライマーDNAとの関係について示す説明図である。
第27図は、実施例11に関し、PCR反応物についての電気泳動の結果を示す図面に代わる写真である。
第28図は、実施例12に関し、鋳型DNAと各プライマーDNAとの関係について示す説明図である。
第29図は、実施例12に関し、PCR反応物についての電気泳動の結果を示す図面に代わる写真である。
第30図は、実施例13に関し、鋳型DNAと各プライマーDNAとの関係について示す説明図である。
第31図は、実施例13に関し、PCR反応物についての電気泳動の結果を示す図面に代わる写真である。
第32図は、実施例14に関し、鋳型DNAと各プライマーDNAとの関係について示す説明図である。
第33図は、実施例14に関し、PCR反応物についての電気泳動の結果を示す図面に代わる写真である。
第34図は、実施例15に関し、鋳型DNAと各プライマーDNAとの関係について示す説明図である。
第35図は、実施例15に関し、PCR反応物についての電気泳動の結果を示す図面に代わる写真である。
第36図は、実施例16に関し、鋳型DNAと各プライマーDNAとの関係について示す説明図である。
第37図は、実施例16に関し、PCR反応物についての電気泳動の結果を示す図面に代わる写真である。
第38図は、実施例17に関し、鋳型DNAと各プライマーDNAとの関係について示す説明図である。
第39図は、実施例17に関し、鋳型DNAと各プライマーDNAとの関係について示す説明図である。
第40図は、実施例17に関し、PCR反応物についての電気泳動の結果を示す図面に代わる写真である。
第41図は、実施例18に関し、鋳型DNAと各プライマーDNAとの関係について示す説明図である。
第42図は、実施例18に関し、PCR反応物についての電気泳動の結果を示す図面に代わる写真である。
第43図は、実施例19に関し、鋳型DNAと各プライマーDNAとの関係について示す説明図である。
第44図は、実施例19に関し、鋳型DNAと各プライマーDNAとの関係について示す説明図である。
第45図は、実施例19に関し、鋳型DNAと各プライマーDNAとの関係について示す説明図である。
第46図は、実施例19に関し、鋳型DNAと各プライマーDNAとの関係について示す説明図である。
第47図は、実施例19に関し、PCR反応物についての電気泳動の結果を示す図面に代わる写真である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の実施例を、図を参照しつつ説明する。
【実施例1】
第1図に示すように、鋳型DNAとしてヒトゲノムDNA(Promega)を用意した。また、プライマーDNAとして16種類のオリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチド1〜16)を用意した。これらのプライマーDNAは、Homosapiens PAC clone RP5−852P6 from 7p11.2−p21,complete sequence.(ACCESSION AC006454)を参考にして設計した。なお、ACCESSIONナンバーは、Gene Bankのアクセスナンバーを示している(以下同様)。各プライマーDNAは、任意のプライマー設計の可能性を示すため、それぞれ位置をずらして設計してある。また、各プライマーDNAは、鋳型DNAと100%相補的な20merの塩基配列からなる。なお、各プライマーDNAは、鋳型DNAの塩基配列に基づいて公知の手法により合成すればよい。


また、相同組み換えタンパク質としてサーマス・サーモフィルス(Thermusthermophilus)のRecAタンパク質を用意し、DNAポリメラーゼとしてサーマス・アクアティクス(Thermus aquaticus)由来のDNAポリメラーゼ(TaKaRa Taq(タカラバイオ))を用意した。また、4種類のdNTP、即ち、dATP、dCTP、dGTP及びdTTPを用意し、緩衝剤としてpHを調整したトリス系の緩衝液に、塩化カリウムや塩化マグネシウムを加えた緩衝液を用意した。
なお、DNAポリメラーゼと、4種類のdNTPと、緩衝液と、T.th.RecAタンパク質等の相同組換えタンパク質とは、核酸増幅用試薬キットとして用意しておくのが便利である。このようなキットを利用すれば、DNAポリメラーゼ、4種類のdNTP、緩衝液、及び、T.th.RecAタンパク質等の相同的組換えタンパク質を反応液に加え、さらに、目的に応じた鋳型DNAとプライマーDNAを用意して反応液に加えるだけで、容易にPCRを行うことができるからである。
次に、PCR反応により核酸を増幅させた。具体的には、10μlのPCR反応液中に、0.06μM(最終濃度)の2種類のオリゴヌクレオチドと、40ngのヒトゲノムDNAと、1.0unitのTaKaRa Taqと、0.2mMのdNTP混合液と、1.2μgのT.th.RecAタンパク質を、10mMのTris−HCl Buffer(pH8.3)、50mMのKCl、1.5mMのMgClに混合した。そして、PCR反応を、1サイクル(70℃,10分間、94℃,1分間)、30サイクル(94℃,30秒間、60℃,30秒間、68℃,1分間)、1サイクル(68℃,7分間、4℃,1分間)で行った。
次に、反応液について1%のアガロースゲルで電気泳動を行い、アガロースゲルをエチジウムブロミドの溶液に浸してゲル中のDNAを染色し、その後、染色されたDNAを写真に記録した。その結果を第2図に示す。
レーン1は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド1とオリゴヌクレオチド2を加えたものである。
レーン2は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド3とオリゴヌクレオチド4を加えたものである。
レーン3は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド5とオリゴヌクレオチド6を加えたものである。
レーン4は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド7とオリゴヌクレオチド8を加えたものである。
レーン5は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド9とオリゴヌクレオチド10を加えたものである。
レーン6は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド11とオリゴヌクレオチド12を加えたものである。
レーン7は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド13とオリゴヌクレオチド14を加えたものである。
レーン8は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド15とオリゴヌクレオチド16を加えたものである。
レーン9は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン1と同じPCR反応を行ったものである。
レーン10は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン2と同じPCR反応を行ったものである。
レーン11は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン3と同じPCR反応を行ったものである。
レーン12は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン4と同じPCR反応を行ったものである。
レーン13は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン5と同じPCR反応を行ったものである。
レーン14は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン6と同じPCR反応を行ったものである。
レーン15は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン7と同じPCR反応を行ったものである。
レーン16は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン8と同じPCR反応を行ったものである。
レーン17は、プライマーDNAの濃度をそれぞれ0.20μM(最終濃度)に増やして、レーン1と同じPCR反応を行ったものである。
レーン18は、プライマーDNAの濃度をそれぞれ0.20μM(最終濃度)に増やして、レーン2と同じPCR反応を行ったものである。
レーン19は、プライマーDNAの濃度をそれぞれ0.20μM(最終濃度)に増やして、レーン3と同じPCR反応を行ったものである。
レーン20は、プライマーDNAの濃度をそれぞれ0.20μM(最終濃度)に増やして、レーン4と同じPCR反応を行ったものである。
レーン21は、プライマーDNAの濃度をそれぞれ0.20μM(最終濃度)に増やして、レーン5と同じPCR反応を行ったものである。
レーン22は、プライマーDNAの濃度をそれぞれ0.20μM(最終濃度)に増やして、レーン6と同じPCR反応を行ったものである。
レーン23は、プライマーDNAの濃度をそれぞれ0.20μM(最終濃度)に増やして、レーン7と同じPCR反応を行ったものである。
レーン24は、プライマーDNAの濃度をそれぞれ0.20μM(最終濃度)に増やして、レーン8と同じPCR反応を行ったものである。
レーン25は、プライマーDNAの濃度をそれぞれ0.20μM(最終濃度)に増やして、レーン9と同じPCR反応を行ったものである。
レーン26は、プライマーDNAの濃度をそれぞれ0.20μM(最終濃度)に増やして、レーン10と同じPCR反応を行ったものである。
レーン27は、プライマーDNAの濃度をそれぞれ0.20μM(最終濃度)に増やして、レーン11と同じPCR反応を行ったものである。
レーン28は、プライマーDNAの濃度をそれぞれ0.20μM(最終濃度)に増やして、レーン12と同じPCR反応を行ったものである。
レーン29は、プライマーDNAの濃度をそれぞれ0.20μM(最終濃度)に増やして、レーン13と同じPCR反応を行ったものである。
レーン30は、プライマーDNAの濃度をそれぞれ0.20μM(最終濃度)に増やして、レーン14と同じPCR反応を行ったものである。
レーン31は、プライマーDNAの濃度をそれぞれ0.20μM(最終濃度)に増やして、レーン15と同じPCR反応を行ったものである。
レーン32は、プライマーDNAの濃度をそれぞれ0.20μM(最終濃度)に増やして、レーン16と同じPCR反応を行ったものである。
第2図(A)の結果から明らかなように、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行ったレーン1〜レーン8では、所望の核酸(正しい特異的なPCR産物)の増幅が検出された一方、副産物(非特異的なPCR産物)の増幅はほとんど検出されなかった。
これに対し、T.th.RecAタンパク質を加えずにPCR反応を行ったレーン9〜レーン16では、所望の核酸のみならず副産物も多量に検出された。また、所望の核酸の増幅がほとんど検出されないものもあった(レーン15,16等)。この理由としては、鋳型DNAのうち増幅されるべき領域が、阻止的または抑制的2次構造を有するためと考えられる。
また、第2図(B)の結果から明らかなように、プライマーDNAの濃度を増加させ、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行ったレーン17〜レーン24でも、所望のDNAの増幅が検出された。しかし、レーン1〜レーン8の結果に比べると、副産物が若干検出されたものも多い。
一方、プライマーDNAの濃度を増加させ、T.th.RecAタンパク質を加えずにPCR反応を行ったレーン25〜レーン32では、対応するレーン9〜レーン16の結果に比べ、副産物がさらに多量に検出された。
これらのことから、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行えば、所望の核酸の収量を減少させることなく、副産物の増幅を低く抑えることができる。即ち、T.th.RecAタンパク質が存在することにより、プライマーDNAが鋳型DNAの非特異的な領域に結合してプライマー伸長反応を起こすことが抑制されるため、非特異的なPCR産物の増幅を抑制することができる。
また、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行えば、鋳型DNAに阻止的または抑制的2次構造を有する場合であっても、所望の核酸を効率よく特異的に増幅させることができる。相同組み換えタンパク質が、鋳型DNAに結合することにより、阻止的または抑制的2次構造が解かれるためと考えられる。
また、反応液中に加えるプライマーDNAの濃度(0.06μM)を低く抑えても、十分な量の核酸を増幅させることができ、しかも、プライマーDNAの濃度を低くすることにより、副産物の増幅を抑えつつ、所望の核酸だけをより特異的に増幅させることが可能となる。
【実施例2】
次いで、第2の実施例について説明する。なお、上記実施例1と同様な部分の説明は、省略または簡略化する。
本実施例では、第3図に示すように、鋳型DNAとしてヒトゲノムDNAを、プライマーDNAとして12種類のオリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチド17〜28)を用意した。これらのプライマーDNAは、Homo sapiens BAC clone RP11−16P10 from 7,complete sequence.(ACCESSION AC093734 AC011786)を参考にして設計した。各プライマーDNAは、任意のプライマー設計の可能性を示すため、それぞれ位置をずらして設計してある。なお、各プライマーDNAは、鋳型DNAと100%相補的な20merの塩基配列からなる。

次に、上記実施例1のレーン1等と同様な条件でPCR反応を行った。そして、その反応液について1%のアガロースゲルで電気泳動を行い、上記実施例1と同様にして、その結果を写真に記録した。これを第4図に示す。
レーン1は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド17とオリゴヌクレオチド18を加えたものである。
レーン2は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド19とオリゴヌクレオチド20を加えたものである。
レーン3は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド21とオリゴヌクレオチド22を加えたものである。
レーン4は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド23とオリゴヌクレオチド24を加えたものである。
レーン5は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド25とオリゴヌクレオチド26を加えたものである。
レーン6は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド27とオリゴヌクレオチド28を加えたものである。
レーン7は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン1と同じPCR反応を行ったものである。
レーン8は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン2と同じPCR反応を行ったものである。
レーン9は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン3と同じPCR反応を行ったものである。
レーン10は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン4と同じPCR反応を行ったものである。
レーン11は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン5と同じPCR反応を行ったものである。
レーン12は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン6と同じPCR反応を行ったものである。
第4図の結果から明らかなように、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行ったレーン1〜レーン6では、所望の核酸(正しい特異的なPCR産物)の増幅が検出された一方、多くのレーンでは、副産物(非特異的なPCR産物)はほとんど検出されなかった。また、副産物が検出されたレーンでも、T.th.RecAタンパク質を加えずにPCR反応を行ったレーンに比べれば、副産物の生成が大幅に抑制された。
これに対し、T.th.RecAタンパク質を加えずにPCR反応を行ったレーン7〜レーン12では、所望の核酸のみならず副産物も多量に検出された。
このことから、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行えば、所望の核酸の収量を減少させることなく、副産物の増幅を低く抑えることができる。即ち、T.th.RecAタンパク質が存在することにより、プライマーDNAが鋳型DNAの非特異的な領域に結合してプライマー伸長反応を起こすことが抑制されるため、非特異的なPCR産物の増幅を抑制することができる。
また、反応液中に加えるプライマーDNAの濃度(0.06μM)を低く抑えても、十分な量の核酸を増幅させることができ、しかも、プライマーDNAの濃度を低くすることにより、副産物の増幅を抑えつつ、所望の核酸だけをより特異的に増幅させることが可能となる。
【実施例3】
次いで、第3の実施例について説明する。なお、上記各実施例のいずれかと同様な部分の説明は、省略または簡略化する。
第5図及び第6図に示すように、鋳型DNAとしてヒトゲノムDNAを、プライマーDNAとして8種類のオリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチド29〜36)を用意した。これらのプライマーDNAは、ヒトゲノムDNAのsingle copy geneについて設計した。具体的には、オリゴヌクレオチド29とオリゴヌクレオチド30は、Human DNA sequence from clone RP5−1013A22 on chromosome 20 Contains the HNF4A(hepatic nuclear factor4,alpha)gene,part of a novel gene encoding a protein similarto cellular retinaldehyde−binding protein,a RPL37A(ribosomal protein L37a)pseudogene,parts of 2novel genes,ESTs,STSs and GSSs,complete sequence.(ACCESSION AL132772)を参考にして設計した。また、オリゴヌクレオチド31とオリゴヌクレオチド32は、Homo sapiens 3q BAC RP11−529F4(Roswell Park Cancer Institute Human BAC Library)complete sequence.(ACCESSION AC080007)を参考にして設計した。また、オリゴヌクレオチド33とオリゴヌクレオチド34は、Homo sapiens genomic beta globin region(HBB@)on chromosome 11.(ACCESSIONNG_000007)を参考にして設計した。また、オリゴヌクレオチド35とオリゴヌクレオチド36は、Homo spaiens HPFH60R gene for olfactory receptor.(ACCESSION X81445 X91835)を参考にして設計した。各プライマーDNAは、鋳型DNAと100%相補的な20mer〜25merの塩基配列からなる。

次に、プライマーDNAの濃度以外は上記実施例1等と同じ条件で反応液を作成した。そして、PCR反応を、1サイクル(94℃,1分間)、30サイクル(94℃3 30秒間、60℃,30秒間、68℃,1分間)、1サイクル(68℃,7分間、4℃,1分間)で行った。その後、反応液について1%のアガロースゲルで電気泳動を行い、上記実施例1等と同様にして、その結果を写真に記録した。これを第7図及び第8図に示す。
レーン1は、プライマーDNAとして、0.3μM(最終濃度)のオリゴヌクレオチド29と0.3μM(最終濃度)のオリゴヌクレオチド30を加えたものである。
レーン2は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン1と同じPCR反応を行ったものである。
レーン3は、オリゴヌクレオチド29とオリゴヌクレオチド30の濃度をそれぞれ0.1μM(最終濃度)に減らして、レーン1と同じPCR反応を行ったものである。
レーン4は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン3と同じPCR反応を行ったものである。
レーン5は、オリゴヌクレオチド29とオリゴヌクレオチド30の濃度をそれぞれ0.03μM(最終濃度)に減らして、レーン1と同じPCR反応を行ったものである。
レーン6は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン5と同じPCR反応を行ったものである。
レーン7は、オリゴヌクレオチド29とオリゴヌクレオチド30の濃度をそれぞれ0.01μM(最終濃度)に減らして、レーン1と同じPCR反応を行ったものである。
レーン8は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン7と同じPCR反応を行ったものである。
レーン9は、オリゴヌクレオチド29とオリゴヌクレオチド30の濃度をそれぞれ0.003μM(最終濃度)に減らして、レーン1と同じPCR反応を行ったものである。
レーン10は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン9と同じPCR反応を行ったものである。
レーン11は、プライマーDNAとして、0.3μM(最終濃度)のオリゴヌクレオチド31と0.3μM(最終濃度)のオリゴヌクレオチド32を加えたものである。
レーン12は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン11と同じPCR反応を行ったものである。
レーン13は、オリゴヌクレオチド31とオリゴヌクレオチド32の濃度をそれぞれ0.1μM(最終濃度)に減らして、レーン11と同じPCR反応を行ったものである。
レーン14は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン13と同じPCR反応を行ったものである。
レーン15は、オリゴヌクレオチド31とオリゴヌクレオチド32の濃度をそれぞれ0.03μM(最終濃度)に減らして、レーン11と同じPCR反応を行ったものである。
レーン16は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン15と同じPCR反応を行ったものである。
レーン17は、オリゴヌクレオチド31とオリゴヌクレオチド32の濃度をそれぞれ0.01μM(最終濃度)に減らして、レーン11と同じPCR反応を行ったものである。
レーン18は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン17と同じPCR反応を行ったものである。
レーン19は、オリゴヌクレオチド31とオリゴヌクレオチド32の濃度をそれぞれ0.003μM(最終濃度)に減らして、レーン11と同じPCR反応を行ったものである。
レーン20は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン19と同じPCR反応を行ったものである。
レーン21は、プライマーDNAとして、0.3μM(最終濃度)のオリゴヌクレオチド33と0.3μM(最終濃度)のオリゴヌクレオチド34を加えたものである。
レーン22は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン21と同じPCR反応を行ったものである。
レーン23は、オリゴヌクレオチド33とオリゴヌクレオチド34の濃度をそれぞれ0.1μM(最終濃度)に減らして、レーン21と同じPCR反応を行ったものである。
レーン24は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン23と同じPCR反応を行ったものである。
レーン25は、オリゴヌクレオチド33とオリゴヌクレオチド34の濃度をそれぞれ0.03μM(最終濃度)に減らして、レーン21と同じPCR反応を行ったものである。
レーン26は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン25と同じPCR反応を行ったものである。
レーン27は、オリゴヌクレオチド33とオリゴヌクレオチド34の濃度を0.01μM(最終濃度)に減らして、レーン21と同じPCR反応を行ったものである。
レーン28は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン27と同じPCR反応を行ったものである。
レーン29は、オリゴヌクレオチド33とオリゴヌクレオチド34の濃度を0.003μM(最終濃度)に減らして、レーン21と同じPCR反応を行ったものである。
レーン30は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン29と同じPCR反応を行ったものである。
レーン31は、プライマーDNAとして、0.3μM(最終濃度)のオリゴヌクレオチド35と0.3μM(最終濃度)のオリゴヌクレオチド36を加えたものである。
レーン32は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン31と同じPCR反応を行ったものである。
レーン33は、オリゴヌクレオチド35とオリゴヌクレオチド36の濃度をそれぞれ0.1μM(最終濃度)に減らして、レーン31と同じPCR反応を行ったものである。
レーン34は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン33と同じPCR反応を行ったものである。
レーン35は、オリゴヌクレオチド35とオリゴヌクレオチド36の濃度をそれぞれ0.03μM(最終濃度)に減らして、レーン31と同じPCR反応を行ったものである。
レーン36は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン35と同じPCR反応を行ったものである。
レーン37は、オリゴヌクレオチド35とオリゴヌクレオチド36の濃度をそれぞれ0.01μM(最終濃度)に減らして、レーン31と同じPCR反応を行ったものである。
レーン38は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン37と同じPCR反応を行ったものである。
レーン39は、オリゴヌクレオチド35とオリゴヌクレオチド36の濃度をそれぞれ0.003μM(最終濃度)に減らして、レーン31と同じPCR反応を行ったものである。
レーン40は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン39と同じPCR反応を行ったものである。
第7図(A)の結果から明らかなように、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行ったレーン1,3,5,7,9のうち、レーン9を除くレーンでは、所望の核酸(正しい特異的なPCR産物)の増幅が検出された一方、副産物(非特異的なPCR産物)はほとんど検出されなかった。特に、プライマーDNAの濃度が低くなるほど、副産物の生成は抑制される傾向にあった。また、レーン9では、プライマーDNAの濃度が低すぎるためか、核酸の増幅がほとんど検出できなかった。また、プライマーDNAの濃度が同じであれば、T.th.RecAタンパク質を加えずにPCR反応を行ったものに比べ、所望の核酸の増幅量が多くなった。
これに対し、T.th.RecAタンパク賀を加えずにPCR反応を行ったレーン2,4,6,8,10のうち、レーン10を除くレーンでは、所望の核酸のみならず副産物も検出された。また、レーン10では、プライマーDNAの濃度が低すぎるためか、核酸の増幅がほとんど検出できなかった。
第7図(B)の結果から明らかなように、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行ったレーン11,13,15,17,19のうち、レーン19を除くレーンでは、所望の核酸の増幅が検出された一方、副産物はほとんど検出されなかった。特に、プライマーDNAの濃度が低くなるほど、副産物の生成は抑制される傾向にあった。また、レーン19では、プライマーDNAの濃度が低すぎるためか、核酸の増幅がほとんど検出できなかった。また、プライマーDNAの濃度が同じであれば、T.th.RecAタンパク質を加えずにPCR反応を行ったものに比べ、所望の核酸の増幅量が多くなった。
これに対し、T.th.RecAタンパク質を加えずにPCR反応を行ったレーン12,14,16,18,20のうち、レーン20を除くレーンでは、所望の核酸のみならず副産物も検出された。また、レーン20では、プライマーDNAの濃度が低すぎるためか、核酸の増幅がほとんど検出できなかった。
第8図(A)の結果から明らかなように、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行ったレーン21,23,25,27,29のうち、レーン29を除くレーンでは、所望の核酸の増幅が検出された一方、副産物はほとんど検出されなかった。特に、プライマーDNAの濃度が低くなるほど、副産物の生成は抑制される傾向にあった。また、レーン29では、プライマーDNAの濃度が低すぎるためか、核酸の増幅がほとんど検出できなかった。また、プライマーDNAの濃度が同じであれば、T.th.RecAタンパク質を加えずにPCR反応を行ったものに比べ、所望の核酸の増幅量が多くなる傾向にあった。
一方、T.th.RecAタンパク質を加えずにPCR反応を行ったレーン22,24,26,28,30のうち、レーン22,24,26では、所望の核酸のみならず副産物も検出された。また、レーン28,30では、プライマーDNAの濃度が低すぎるためか、核酸の増幅がほとんど検出できなかった。
第8図(B)の結果から明らかなように、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行ったレーン31,33,35,37,39のうち、レーン39を除くレーンでは、所望の核酸の増幅が検出された一方、副産物はほとんど検出されなかった。特に、プライマーDNAの濃度が低くなるほど、副産物の生成は抑制される傾向にあった。また、レーン39では、プライマーDNAの濃度が低すぎるためか、核酸の増幅がほとんど検出できなかった。また、プライマーDNAの濃度が同じであれば、T.th.RecAタンパク質を加えずにPCR反応を行ったものに比べ、所望の核酸の増幅量が多くなる傾向にあった。
一方、T.th.RecAタンパク質を加えずにPCR反応を行ったレーン32,34,36,38,40のうち、レーン40を除くレーンでは、所望の核酸のみならず副産物も検出された。また、レーン40では、プライマーDNAの濃度が低すぎるためか、核酸の増幅がほとんど検出できなかった。
これらのことから、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行えば、所望の核酸の収量を減少させることなく、副産物の増幅を低く抑えることができる。即ち、T.th.RecAタンパク質が存在することにより、プライマーDNAが鋳型DNAの非特異的な領域に結合してプライマー伸長反応を起こすことが抑制されるため、非特異的なPCR産物の増幅を抑制することができる。
また、反応液中に加えるプライマーDNAの濃度を低く抑えても、十分な量の核酸を増幅させることができ、しかも、プライマーDNAの濃度を低くすることにより、副産物の増幅を抑えつつ、所望の核酸だけをより特異的に増幅させることが可能となる。
【実施例4】
次いで、第4の実施例について説明する。なお、上記各実施例のいずれかと同様な部分の説明は、省略または簡略化する。
第9図に示すように、鋳型DNAとしてヒトゲノムDNAを用意し、プライマーDNAとして5種類のオリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチド37〜41)を用意した。これらのプライマーDNAは、Homo sapiens PAC clone RP5−1142J19 from 7q35−q36,complete sequence.(ACCESSION AC004975)を参考にして設計した。
プライマーDNAのうち、オリゴヌクレオチド37,38は、鋳型DNAと100%相補的な20merまたは21merの塩基配列からなる。一方、オリゴヌクレオチド39は、鋳型DNAと1塩基だけ異なる塩基配列からなり、それ以外の部分はオリゴヌクレオチド37と同様である。また、オリゴヌクレオチド40は、鋳型DNAに対し3塩基について異なる塩基配列からなり、それ以外の部分はオリゴヌクレオチド37と同様である。また、オリゴヌクレオチド41は、鋳型DNAに対し5塩基について異なる塩基配列からなり、それ以外の部分はオリゴヌクレオチド37と同様である。

次に、プライマーDNAの濃度をそれぞれ0.3μM(最終濃度)とし、それ以外は上記実施例3と同様にしてPCR反応により核酸を増幅させた。そして、反応液について1%のアガロースゲルで電気泳動を行い、上記実施例1等と同様にして、その結果を写真に記録した。これを第10図に示す。
レーン1は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド37とオリゴヌクレオチド38を加えたものである。
レーン2は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド39とオリゴヌクレオチド38を加えたものである。
レーン3は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド40とオリゴヌクレオチド38を加えたものである。
レーン4は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド41とオリゴヌクレオチド38を加えたものである。
レーン5は、1mM(最終濃度)のATP−γS(ロッシュ)をさらに加えて、レーン1と同じPCR反応を行ったものである。
レーン6は、1mM(最終濃度)のATP−γSをさらに加えて、レーン2と同じPCR反応を行ったものである。
レーン7は、1mM(最終濃度)のATP−γSをさらに加えて、レーン3と同じPCR反応を行ったものである。
レーン8は、1mM(最終濃度)のATP−γSをさらに加えて、レーン4と同じPCR反応を行ったものである。
第10図の結果から明らかなように、ATP−γSを加えずにPCR反応を行ったレーン1〜レーン4について見ると、レーン1〜レーン3では、所望のDNA(正しい特異的なPCR産物)の増幅が検出された一方、副産物(非特異的なPCR産物)はほとんど検出されなかった。一方、レーン4では、核酸の増幅がほとんど検出できなかった。
これに対し、ATP−γSを加えてPCR反応を行ったレーン5〜レーン8について見ると、レーン5とレーン6では、所望のDNAの増幅が検出された一方、副産物はほとんど検出されなかった。一方、レーン7とレーン8では、核酸の増幅がほとんど検出できなかった。
このことから、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行えば、所望の核酸の収量を減少させることなく、副産物の増幅を低く抑えることができる。即ち、上記の相同組み換えタンパク質が存在することにより、プライマーDNAが鋳型DNAの非特異的な領域に結合してプライマー伸長反応を起こすことが抑制されるため、非特異的なPCR産物の増幅を抑制することができる。
具体的には、ATP−γSの非存在下では、プライマーDNAと鋳型DNAとの塩基のミスマッチが3塩基以内の場合においてのみ、特異的に核酸を増幅させるようにすることができる。従って、T.th.RecAタンパク質を反応液に加えることにより、所望の核酸をより特異的に増幅することができる。
一方、ATP−γSの存在下では、プライマーDNAと鋳型DNAとの塩基のミスマッチが1塩基以内の場合においてのみ、特異的に核酸を増幅させるようにすることができる。従って、ATP−γSを反応液に加えることにより、所望の核酸をさらに特異的に増幅することができる。
なお、DNAポリメラーゼと、4種類のdNTPと、緩衝液と、T.th.RecAタンパク質等の相同組換えタンパク質とを核酸増幅用試薬キットとして用意する場合には、さらに、ATP−γSも、そのキットに加えるのが好ましい。上記の実施例4で明らかなように、ATP−γSを加えてPCR反応を行えば、さらに特異的に所望の核酸を増幅させることができるからである。
また、上記実施例4の結果より、一塩基多型を検出することが可能である。即ち、プライマーDNAの1つに、鋳型DNAのうち一塩基多型をなす塩基を含む配列に対応したプライマーDNAを用いてPCRを行えば、鋳型DNAと一塩基多型をなす塩基を含む配列に対応したプライマーDNAとが完全に相補的である場合に、所望の核酸を増幅させるようにすることができる。一方、鋳型DNAと一塩基多型をなす塩基を含む配列に対応したプライマーDNAとが完全には相補的ではない場合、即ち、一塩基多型をなす塩基がプライマーDNAと相補的でない場合に、所望の核酸が増幅しない、または、抑制されるようにすることができる。このため、PCRによる所望の核酸の増幅により、一塩基多型を検出することが可能である。
さらに、ATP−γSを加えた場合には、より特異的に核酸を増幅することができるため、所望の核酸の増幅により、より確実に一塩基多型を検出することが可能となる。
なお、DNAポリメラーゼと、4種類のdNTPと、緩衝液と、T.th.RecAタンパク質等の相同的組換えタンパク質とは、一塩基多型検出用試薬キットとして用意しておくのが便利である。このようなキットを利用すれば、DNAポリメラーゼ、4種類のdNTP、緩衝液、及び、T.th.RecAタンパク質等の相同的組換えタンパク質を反応液に加え、さらに、目的に応じた鋳型DNAとプライマーDNAを用意して反応液に加えるだけで、容易にPCRにより一塩基多型を検出することができるからである。
そしてさらに、上記キットには、ATP−γSも加えるのが好ましい。上記の実施例4で明らかなように、ATP−γSを加えてPCR反応を行えば、さらに特異的に所望の核酸を増幅させることができるため、より確実に一塩基多型を検出することが可能となるからである。
【実施例5】
次いで、第5の実施例について説明する。なお、上記各実施例のいずれかと同様な部分の説明は、省略または簡略化する。
第11図及び第12図に示すように、鋳型DNAとしてヒトゲノムDNAを、プライマーDNAとして12種類のオリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチド42〜53)を用意した。具体的には、オリゴヌクレオチド42とオリゴヌクレオチド43は、Homo sapiens PAC clone RP5−1142J19 from7q35−q36,complete sequence.(ACCESSIQN AC004975)を参考にして設計した。また、オリゴヌクレオチド44とオリゴヌクレオチド45は、Homo sapiens PAC clone RP5−852P6 from 7p11.2−p21,complete sequence.(ACCESSION AC006454)を参考にして設計した。また、オリゴヌクレオチド46とオリゴヌクレオチド47は、Homo sapiens PAC cloneRP5−912I13 from 7,complete sequence.(ACCESSION AC008060)を参考にして設計した。また、オリゴヌクレオチド48とオリゴヌクレオチド49は、Homo sapiens BAC clone RP11−16P10 from 7,complete sequence.(ACCESSION AC093734 AC011786)を参考にして設計した。また、オリゴヌクレオチド50とオリゴヌクレオチド51は、Homo sapiens BAC clone CTB−135C18 from 7q11.2−q22,complete sequence.(ACCESSION AC005164)を参考にして設計した。また、オリゴヌクレオチド52とオリゴヌクレオチド53は、Homo sapiens PAC clone RP5−852P6 from 7p11.2−p21,complete sequence.(ACCESSION AC006454)を参考にして設計した。各プライマーDNAは、鋳型DNAと100%相補的な18mer〜22merの塩基配列からなる。

次に、上記実施例4と同様な条件でPCR反応を行い、核酸を増幅させた。そして、反応液について1%のアガロースグルで電気泳動を行い、上記実施例1等と同様にして、その結果を写真に記録した。これを第13図及び第14図に示す。
なお、このPCRの温度条件、即ち、1サイクル(94℃,1分間)、30サイクル(94℃,30秒間、60℃,30秒間、68℃,1分間)、1サイクル(68℃,7分間、4℃,1分間)を温度条件1とする。アニーリング温度は60℃である。
レーン1は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド42とオリゴヌクレオチド43を加えたものである。
レーン2は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド44とオリゴヌクレオチド45を加えたものである。
レーン3は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド46とオリゴヌクレオチド47を加えたものである。
レーン4は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド48とオリゴヌクレオチド49を加えたものである。
レーン5は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド50とオリゴヌクレオチド51を加えたものである。
レーン6は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド52とオリゴヌクレオチド53を加えたものである。
レーン7は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン1と同じPCR反応を行ったものである。
レーン8は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン2と同じPCR反応を行ったものである。
レーン9は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン3と同じPCR反応を行ったものである。
レーン10は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン4と同じPCR反応を行ったものである。
レーン11は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン5と同じPCR反応を行ったものである。
レーン12は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン6と同じPCR反応を行ったものである。
レーン13〜レーン24は、PCRの温度条件を、1サイクル(94℃,1分間)、30サイクル(94℃,30秒間、55℃,30秒間、68℃,1分間)、1サイクル(68℃,7分間、4℃,1分間)とした。これを温度条件2とする。アニーリング温度は55℃である。
レーン13は、上記温度条件2の下で、それ以外はレーン1と同じPCR反応を行ったものである。
レーン14は、上記温度条件2の下で、それ以外はレーン2と同じPCR反応を行ったものである。
レーン15は、上記温度条件2の下で、それ以外はレーン3と同じPCR反応を行ったものである。
レーン16は、上記温度条件2の下で、それ以外はレーン4と同じPCR反応を行ったものである。
レーン17は、上記温度条件2の下で、それ以外はレーン5と同じPCR反応を行ったものである。
レーン18は、上記温度条件2の下で、それ以外はレーン6と同じPCR反応を行ったものである。
レーン19は、上記温度条件2の下で、それ以外はレーン7と同じPCR反応を行ったものである。
レーン20は、上記温度条件2の下で、それ以外はレーン8と同じPCR反応を行ったものである。
レーン21は、上記温度条件2の下で、それ以外はレーン9と同じPCR反応を行ったものである。
レーン22は、上記温度条件2の下で、それ以外はレーン10と同じPCR反応を行ったものである。
レーン23は、上記温度条件2の下で、それ以外はレーン11と同じPCR反応を行ったものである。
レーン24は、上記温度条件2の下で、それ以外はレーン12と同じPCR反応を行ったものである。
レーン25〜レーン36は、PCRの温度条件を、1サイクル(94℃,1分間)、30サイクル(94℃,30秒間、50℃,30秒間、68℃,1分間)、1サイクル(68℃,7分間、4℃,1分間)とした。これを温度条件3とする。アニーリング温度は50℃である。
レーン25は、上記温度条件3の下で、それ以外はレーン1と同じPCR反応を行ったものである。
レーン26は、上記温度条件3の下で、それ以外はレーン2と同じPCR反応を行ったものである。
レーン27は、上記温度条件3の下で、それ以外はレーン3と同じPCR反応を行ったものである。
レーン28は、上記温度条件3の下で、それ以外はレーン4と同じPCR反応を行ったものである。
レーン29は、上記温度条件3の下で、それ以外はレーン5と同じPCR反応を行ったものである。
レーン30は、上記温度条件3の下で、それ以外はレーン6と同じPCR反応を行ったものである。
レーン31は、上記温度条件3の下で、それ以外はレーン7と同じPCR反応を行ったものである。
レーン32は、上記温度条件3の下で、それ以外はレーン8と同じPCR反応を行ったものである。
レーン33は、上記温度条件3の下で、それ以外はレーン9と同じPCR反応を行ったものである。
レーン34は、上記温度条件3の下で、それ以外はレーン10と同じPCR反応を行ったものである。
レーン35は、上記温度条件3の下で、それ以外はレーン11と同じPCR反応を行ったものである。
レーン36は、上記温度条件3の下で、それ以外はレーン12と同じPCR反応を行ったものである。
レーン37〜レーン48は、PCRの温度条件を、1サイクル(94℃,1分間)、30サイクル(94℃,30秒間、45℃,30秒間、68℃,1分間)、1サイクル(68℃,7分間、4℃,1分間)とした。これを温度条件4とする。アニーリング温度は45℃である。
レーン37は、上記温度条件4の下で、それ以外はレーン1と同じPCR反応を行ったものである。
レーン38は、上記温度条件4の下で、それ以外はレーン2と同じPCR反応を行ったものである。
レーン39は、上記温度条件4の下で、それ以外はレーン3と同じPCR反応を行ったものである。
レーン40は、上記温度条件4の下で、それ以外はレーン4と同じPCR反応を行ったものである。
レーン41は、上記温度条件4の下で、それ以外はレーン5と同じPCR反応を行ったものである。
レーン42は、上記温度条件4の下で、それ以外はレーン6と同じPCR反応を行ったものである。
レーン43は、上記温度条件4の下で、それ以外はレーン7と同じPCR反応を行ったものである。
レーン44は、上記温度条件4の下で、それ以外はレーン8と同じPCR反応を行ったものである。
レーン45は、上記温度条件4の下で、それ以外はレーン9と同じPCR反応を行ったものである。
レーン46は、上記温度条件4の下で、それ以外はレーン10と同じPCR反応を行ったものである。
レーン47は、上記温度条件4の下で、それ以外はレーン11と同じPCR反応を行ったものである。
レーン48は、上記温度条件4の下で、それ以外はレーン12と同じPCR反応を行ったものである。
第13図(A)の結果から明らかなように、アニーリング温度が60℃の場合、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行ったレーン1〜レーン6では、所望の核酸(正しい特異的なPCR産物)の増幅が検出された一方、副産物(非特異的なPCR産物)はほとんど検出されなかった。
これに対し、T.th.RecAタンパク質を加えずにPCR反応を行ったレーン7〜レーン12のうち、一部のレーンでは、所望の核酸のみならず副産物も若干検出された。また、一部のレーンでは、核酸の増幅がほとんど検出できなかった。これは、鋳型DNAの増幅領域に阻止的または抑制的2次構造を有するためと考えられる。
また、第13図(B)の結果から明らかなように、アニーリング温度が55℃の場合でも、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行ったレーン13〜レーン18では、所望の核酸の増幅が検出された一方、副産物はほとんど検出されなかった。
これに対し、T.th.RecAタンパク質を加えずにPCR反応を行ったレーン19〜レーン24のうち、一部のレーンでは、所望の核酸のみならず副産物も若干検出された。また、一部のレーンでは、核酸の増幅がほとんど検出できなかった。これは、鋳型DNAの増幅領域に阻止的または抑制的2次構造を有するためと考えられる。
第14図(A)の結果から明らかなように、アニーリング温度が50℃の場合、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行ったレーン25〜レーン30のうち、一部のレーンでは、所望の核酸の増幅が検出された一方、副産物はほとんど検出されなかった。また、一部のレーンでは、所望の核酸の増幅のみならず副産物も検出された。但し、T.th.RecAタンパク質を加えずにPCR反応を行ったものと比べると、副産物の増幅量は少なかった。
これに対し、T.th.RecAタンパク質を加えずにPCR反応を行ったレーン31〜レーン36のうち、一部のレーンでは、所望の核酸のみならず副産物も多量に検出された。また、一部のレーンでは、核酸の増幅がほとんど検出できなかった。これは、鋳型DNAの増幅領域に阻止的または抑制的2次構造を有するためと考えられる。
また、第14図(B)の結果から明らかなように、アニーリング温度が45℃の場合、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行ったレーン37〜レーン42では、所望の核酸の増幅が見られたが、副産物も検出された。但し、T.th.RecAタンパク質を加えずにPCR反応を行ったものと比べると、副産物の増幅量は少なかった。
これに対し、T.th.RecAタンパク質を加えずにPCR反応を行ったレーン43〜レーン48のうち、一部のレーンでは、所望の核酸のみならず副産物も多量に検出された。また、一部のレーンでは、核酸の増幅がほとんど検出できなかった。これは、鋳型DNAの増幅領域に阻止的または抑制的2次構造を有するためと考えられる。
これらのことから、T.th.RecAタンパク質を加えてPCRを行えば、所望の核酸の収量を減少させることなく、副産物の増幅を低く抑えることができる。即ち、上記の相同組み換えタンパク質が存在することにより、プライマーDNAが鋳型DNAの非特異的な領域に結合してプライマー伸長反応を起こすことが抑制されるため、非特異的なPCR産物の増幅を抑制することができる。
また、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行えば、鋳型DNAに阻止的または抑制的2次構造を有する場合であっても、所望の核酸を効率よく特異的に増幅させることができる。相同組み換えタンパク質が、鋳型DNAに結合することにより、阻止的または抑制的2次構造が解かれるためと考えられる。
また、PCRの特異性が高いため、プライマー伸長反応の温度条件(アニーリング温度)を変えても、所望の核酸を特異的に増幅させることができる。即ち、T.th.RecAタンパク質を加えずにPCR反応を行った場合には、プライマー伸長反応の温度(アニーリング温度)を低く設定すると、目的とする核酸だけでなく、副産物も多量に増幅されることとなるが、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行えば、目的とする核酸をより特異的に増幅させることが可能となる。
【実施例6】
次いで、第6の実施例について説明する。なお、上記各実施例のいずれかと同様な部分の説明は、省略または簡略化する。
鋳型DNAとしてヒトゲノムDNAを用意し、プライマーDNAとして、上記実施例4と同様な5種類のオリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチド37〜41)(第9図参照)と、第15図に示すように5種類のオリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチド54〜58)を用意した。
第15図に示すように、後者の5種類のプライマーDNAは、Homo sapiens BAC clone CTB−135C18 from 7q11.2−q22,complete sequence.(ACCESSION AC005164)を参考にして設計した。これらのプライマーDNAのうち、オリゴヌクレオチド54とオリゴヌクレオチド55は、鋳型DNAと100%相補的な22merの塩基配列からなる。一方、オリゴヌクレオチド56は、鋳型DNAと1塩基だけ異なる塩基配列からなり、それ以外の部分はオリゴヌクレオチド54と同様である。また、オリゴヌクレオチド57は、鋳型DNAに対し3塩基について異なる塩基配列からなり、それ以外の部分はオリゴヌクレオチド54と同様である。また、オリゴヌクレオチド58は、鋳型DNAに対し5塩基について異なる塩基配列からなり、それ以外の部分はオリゴヌクレオチド54と同様である。

次に、上記実施例4等と同様な条件でPCR反応を行い、核酸を増幅させた。そして、反応液について1%のアガロースゲルで電気泳動を行い、上記実施例1等と同様にして、その結果を写真に記録した。これを第16図に示す。
レーン5は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド37とオリゴヌクレオチド38を加えたものである。
レーン6は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド39とオリゴヌクレオチド38を加えたものである。
レーン7は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド40とオリゴヌクレオチド38を加えたものである。
レーン8は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド41とオリゴヌクレオチド38を加えたものである。
レーン9は、1mM(最終濃度)のATP−γSをさらに加えて、レーン5と同じPCR反応を行ったものである。
レーン10は、1mM(最終濃度)のATP−γSをさらに加えて、レーン6と同じPCR反応を行ったものである。
レーン11は、1mM(最終濃度)のATP−γSをさらに加えて、レーン7と同じPCR反応を行ったものである。
レーン12は、1mM(最終濃度)のATP−γSをさらに加えて、レーン8と同じPCR反応を行ったものである。
レーン1は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、かつ、1mM(最終濃度)のATP−γSを加えて、それ以外はレーン5と同じPCR反応を行ったものである。
レーン2は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、かつ、1mM(最終濃度)のATP−γSを加えて、それ以外はレーン6と同じPCR反応を行ったものである。
レーン3は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、かつ、1mM(最終濃度)のATP−γSを加えて、それ以外はレーン7と同じPCR反応を行ったものである。
レーン4は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、かつ、1mM(最終濃度)のATP−γSを加えて、それ以外はレーン8と同じPCR反応を行ったものである。
レーン17は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド54とオリゴヌクレオチド55を加えたものである。
レーン18は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド56とオリゴヌクレオチド55を加えたものである。
レーン19は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド57とオリゴヌクレオチド55を加えたものである。
レーン20は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド58とオリゴヌクレオチド55を加えたものである。
レーン21は、1mM(最終濃度)のATP−γSをさらに加えて、レーン17と同じPCR反応を行ったものである。
レーン22は、1mM(最終濃度)のATP−γSをさらに加えて、レーン18と同じPCR反応を行ったものである。
レーン23は、1mM(最終濃度)のATP−γSをさらに加えて、レーン19と同じPCR反応を行ったものである。
レーン24は、1mM(最終濃度)のATP−γSをさらに加えて、レーン20と同じPCR反応を行ったものである。
レーン13は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、かつ、1mM(最終濃度)のATP−γSを加えて、それ以外はレーン17と同じPCR反応を行ったものである。
レーン14は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、かつ、1mM(最終濃度)のATP−γSを加えて、それ以外はレーン18と同じPCR反応を行ったものである。
レーン15は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、かつ、1mM(最終濃度)のATP−γSを加えて、それ以外はレーン19と同じPCR反応を行ったものである。
レーン16は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、かつ、1mM(最終濃度)のATP−γSを加えて、それ以外はレーン20と同じPCR反応を行ったものである。
第16図(A)の結果から明らかなように、T.th.RecAタンパク質を加え、かつ、ATP−γSを加えずにPCR反応を行ったレーン5〜レーン8について見ると、所望のDNA(正しい特異的なPCR産物)の増幅が検出された一方、副産物(非特異的なPCR産物)はほとんど検出されなかった。また、レーン5及びレーン6に比べ、レーン7では所望の核酸の増幅が少なく、さらに、レーン8では所望の核酸の増幅が少なかった。
これに対し、T.th.RecAタンパク質を加え、かつ、ATP−γSも加えてPCR反応を行ったレーン9〜レーン12について見ると、レーン9〜レーン11では、所望のDNAの増幅が検出された一方、副産物はほとんど検出されなかった。一方、レーン12では、核酸の増幅が検出できなかった。また、レーン9及びレーン10に比べ、レーン11では、所望の核酸の増幅が少なかった。さらに、このレーン11は、上記レーン7と比べても、所望の核酸の増幅が少なかった。
他方、T.th.RecAタンパク質を加えずに、ATP−γSを加えてPCR反応を行ったレーン1〜レーン4について見ると、所望のDNAの増幅のみならず副産物も多量に増幅された。
また、第16図(B)の結果から明らかなように、T.th.RecAタンパク質を加え、かつ、ATP−γSを加えずにPCR反応を行ったレーン17〜レーン20について見ると、レーン17〜レーン19では、所望のDNAの増幅が検出された一方、副産物はほとんど検出されなかった。一方、レーン20では、核酸の増幅がほとんど検出できなかった。また、レーン17及びレーン18に比べ、レーン19では、所望の核酸の増幅が少なかった。
これに対し、T.th.RecAタンパク質を加え、かつ、ATP−γSも加えてPCR反応を行ったレーン21〜レーン24について見ると、レーン21では、所望のDNAの増幅が検出された一方、副産物はほとんど検出されなかった。一方、レーン22〜レーン24では、核酸の増幅がほとんど検出できなかった。
他方、T.th.RecAタンパク質を加えずに、ATP−γSを加えてPCR反応を行ったレーン13〜レーン16について見ると、所望のDNAの増幅のみならず副産物も多量に増幅された。
これらのことから、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行えば、所望の核酸の収量を減少させることなく、副産物の増幅を低く抑えることができる。即ち、上記の相同組み換えタンパク質が存在することにより、プライマーDNAが鋳型DNAの非特異的な領域に結合してプライマー伸長反応を起こすことが抑制されるため、非特異的なPCR産物の増幅を抑制することができる。
具体的には、ATP−γSの非存在下では、プライマーDNAと鋳型DNAとの塩基のミスマッチが3塩基以内の場合においてのみ、特異的に核酸を増幅させるようにすることができる。従って、T.th.RecAタンパク質を反応液に加えることにより、所望の核酸をより特異的に増幅することができる。
一方、ATP−γSの存在下では、プライマーDNAと鋳型DNAとの塩基のミスマッチが1塩基以内の場合においてのみ、特異的に核酸を増幅させるようにすることができる。従って、ATP−γSを反応液に加えることにより、所望の核酸をさらに特異的に増幅することができる。
また、ATP−γSは、T.th.RecAタンパク質を加えたときには、PCRの特異性を向上させることができるが、T.th.RecAタンパク質の非存在下、即ち、ATP−γSだけでは、PCRの特異性を向上させることができないと言える。
また、本実施例の結果より、一塩基多型を検出することが可能である。即ち、プライマーDNAの1つに、鋳型DNAのうち一塩基多型をなす塩基を含む配列に対応したプライマーDNAを用いてPCRを行えば、鋳型DNAと一塩基多型をなす塩基を含む配列に対応したプライマーDNAとが完全に相補的である場合に、所望の核酸を増幅させるようにすることができる。一方、鋳型DNAと一塩基多型をなす塩基を含む配列に対応したプライマーDNAとが完全には相補的ではない場合、即ち、一塩基多型をなす塩基がプライマーDNAと相補的でない場合に、所望の核酸が増幅しない、または、抑制されるようにすることができる。このため、PCRによる所望の核酸の増幅により、一塩基多型を検出することが可能である。
さらに、ATP−γSを加えた場合には、より特異的に核酸を増幅することができるため、所望の核酸の増幅により、より確実に一塩基多型を検出することが可能となる。
【実施例7】
次いで、第7の実施例について説明する。なお、上記各実施例のいずれかと同様な部分の説明は、省略または簡略化する。
鋳型DNAとしてヒトゲノムDNAを、プライマーDNAとして上記実施例4で用いたオリゴヌクレオチドの一部(オリゴヌクレオチド38〜40)を用意した(第9図参照)。
次に、上記実施例4等と同様な条件でPCR反応を行い、核酸を増幅させた。そして、反応液について1%のアガロースゲルで電気泳動を行い、上記実施例1等と同様にして、その結果を写真に記録した。これを第17図〜第19図に示す。
レーン1は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド39とオリゴヌクレオチド38を加えたものである。
レーン2は、T.th.RecAタンパク質の代わりに大腸菌(E.coli)のRecAタンパク質を加えて、それ以外はレーン1と同じPCR反応を行ったものである。
レーン3は、T.th.RecAタンパク質の代わりにT.th.のSSBタンパク質を加えて、それ以外はレーン1と同じPCR反応を行ったものである。
レーン4は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、それ以外はレーン1と同じPCR反応を行ったものである。
レーン5は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド40とオリゴヌクレオチド38を加えたものである。
レーン6は、T.th.RecAタンパク質の代わりにE.coli RecAタンパク質を加えて、それ以外はレーン5と同じPCR反応を行ったものである。
レーン7は、T.th.RecAタンパク質の代わりにT.th.のSSBタンパク質を加えて、それ以外はレーン5と同じPCR反応を行ったものである。
レーン8は、T.th.ReeAタンパク質を加えないで、それ以外はレーン5と同じPCR反応を行ったものである。
レーン9は、プライマー伸長反応の1サイクル終了後にはじめてプライマーDNAを加え、その後さらにプライマー伸長反応を30サイクルを行ったものであり、それ以外はレーン1と同じPCR反応を行ったものである。
レーン10は、プライマー伸長反応の1サイクル終了後にはじめてプライマーDNAを加え、その後さらにプライマー伸長反応を30サイクルを行ったものであり、それ以外はレーン2と同じPCR反応を行ったものである。
レーン11は、プライマー伸長反応の1サイクル終了後にはじめてプライマーDNAを加え、その後さらにプライマー伸長反応を30サイクルを行ったものであり、それ以外はレーン3と同じPCR反応を行ったものである。
レーン12は、プライマー伸長反応の1サイクル終了後にはじめてプライマーDNAを加え、その後さらにプライマー伸長反応を30サイクルを行ったものであり、それ以外はレーン4と同じPCR反応を行ったものである。
レーン13は、プライマー伸長反応の1サイクル終了後にはじめてプライマーDNAを加え、その後さらにプライマー伸長反応を30サイクルを行ったものであり、それ以外はレーン5と同じPCR反応を行ったものである。
レーン14は、プライマー伸長反応の1サイクル終了後にはじめてプライマーDNAを加え、その後さらにプライマー伸長反応を30サイクルを行ったものであり、それ以外はレーン6と同じPCR反応を行ったものである。
レーン15は、プライマー伸長反応の1サイクル終了後にはじめてプライマーDNAを加え、その後さらにプライマー伸長反応を30サイクルを行ったものであり、それ以外はレーン7と同じPCR反応を行ったものである。
レーン16は、プライマー伸長反応の1サイクル終了後にはじめてプライマーDNAを加え、その後さらにプライマー伸長反応を30サイクルを行ったものであり、それ以外はレーン8と同じPCR反応を行ったものである。
レーン17は、プライマー伸長反応の3サイクル終了後にはじめてプライマーDNAを加え、その後さらにプライマー伸長反応を30サイクルを行ったものであり、それ以外はレーン1と同じPCR反応を行ったものである。
レーン18は、プライマー伸長反応の3サイクル終了後にはじめてプライマーDNAを加え、その後さらにプライマー伸長反応を30サイクルを行ったものであり、それ以外はレーン2と同じPCR反応を行ったものである。
レーン19は、プライマー伸長反応の3サイクル終了後にはじめてプライマーDNAを加え、その後さらにプライマー伸長反応を30サイクルを行ったものであり、それ以外はレーン3と同じPCR反応を行ったものである。
レーン20は、プライマー伸長反応の3サイクル終了後にはじめてプライマーDNAを加え、その後さらにプライマー伸長反応を30サイクルを行ったものであり、それ以外はレーン4と同じPCR反応を行ったものである。
レーン21は、プライマー伸長反応の3サイクル終了後にはじめてプライマーDNAを加え、その後さらにプライマー伸長反応を30サイクルを行ったものであり、それ以外はレーン5と同じPCR反応を行ったものである。
レーン22は、プライマー伸長反応の3サイクル終了後にはじめてプライマーDNAを加え、その後さらにプライマー伸長反応を30サイクルを行ったものであり、それ以外はレーン6と同じPCR反応を行ったものである。
レーン23は、プライマー伸長反応の3サイクル終了後にはじめてプライマーDNAを加え、その後さらにプライマー伸長反応を30サイクルを行ったものであり、それ以外はレーン7と同じPCR反応を行ったものである。
レーン24は、プライマー伸長反応の3サイクル終了後にはじめてプライマーDNAを加え、その後さらにプライマー伸長反応を30サイクルを行ったものであり、それ以外はレーン8と同じPCR反応を行ったものである。
レーン25は、プライマー伸長反応の6サイクル終了後にはじめてプライマーDNAを加え、その後さらにプライマー伸長反応を30サイクルを行ったものであり、それ以外はレーン1と同じPCR反応を行ったものである。
レーン26は、プライマー伸長反応の6サイクル終了後にはじめてプライマーDNAを加え、その後さらにプライマー伸長反応を30サイクルを行ったものであり、それ以外はレーン2と同じPCR反応を行ったものである。
レーン27は、プライマー伸長反応の6サイクル終了後にはじめてプライマーDNAを加え、その後さらにプライマー伸長反応を30サイクルを行ったものであり、それ以外はレーン3と同じPCR反応を行ったものである。
レーン28は、プライマー伸長反応の6サイクル終了後にはじめてプライマーDNAを加え、その後さらにプライマー伸長反応を30サイクルを行ったものであり、それ以外はレーン4と同じPCR反応を行ったものである。
レーン29は、プライマー伸長反応の6サイクル終了後にはじめてプライマーDNAを加え、その後さらにプライマー伸長反応を30サイクルを行ったものであり、それ以外はレーン5と同じPCR反応を行ったものである。
レーン30は、プライマー伸長反応の6サイクル終了後にはじめてプライマーDNAを加え、その後さらにプライマー伸長反応を30サイクルを行ったものであり、それ以外はレーン6と同じPCR反応を行ったものである。
レーン31は、プライマー伸長反応の6サイクル終了後にはじめてプライマーDNAを加え、その後さらにプライマー伸長反応を30サイクルを行ったものであり、それ以外はレーン7と同じPCR反応を行ったものである。
レーン32は、プライマー伸長反応の6サイクル終了後にはじめてプライマーDNAを加え、その後さらにプライマー伸長反応を30サイクルを行ったものであり、それ以外はレーン8と同じPCR反応を行ったものである。
レーン33は、プライマー伸長反応の10サイクル終了後にはじめてプライマーDNAを加え、その後さらにプライマー伸長反応を30サイクルを行ったものであり、それ以外はレーン1と同じPCR反応を行ったものである。
レーン34は、プライマー伸長反応の10サイクル終了後にはじめてプライマーDNAを加え、その後さらにプライマー伸長反応を30サイクルを行ったものであり、それ以外はレーン2と同じPCR反応を行ったものである。
レーン35は、プライマー伸長反応の10サイクル終了後にはじめてプライマーDNAを加え、その後さらにプライマー伸長反応を30サイクルを行ったものであり、それ以外はレーン3と同じPCR反応を行ったものである。
レーン36は、プライマー伸長反応の10サイクル終了後にはじめてプライマーDNAを加え、その後さらにプライマー伸長反応を30サイクルを行ったものであり、それ以外はレーン4と同じPCR反応を行ったものである。
レーン37は、プライマー伸長反応の10サイクル終了後にはじめてプライマーDNAを加え、その後さらにプライマー伸長反応を30サイクルを行ったものであり、それ以外はレーン5と同じPCR反応を行ったものである。
レーン38は、プライマー伸長反応の10サイクル終了後にはじめてプライマーDNAを加え、その後さらにプライマー伸長反応を30サイクルを行ったものであり、それ以外はレーン6と同じPCR反応を行ったものである。
レーン39は、プライマー伸長反応の10サイクル終了後にはじめてプライマーDNAを加え、その後さらにプライマー伸長反応を30サイクルを行ったものであり、それ以外はレーン7と同じPCR反応を行ったものである。
レーン40は、プライマー伸長反応の10サイクル終了後にはじめてプライマーDNAを加え、その後さらにプライマー伸長反応を30サイクルを行ったものであり、それ以外はレーン8と同じPCR反応を行ったものである。
レーン41は、プライマー伸長反応の15サイクル終了後にはじめてプライマーDNAを加え、その後さらにプライマー伸長反応を30サイクルを行ったものであり、それ以外はレーン1と同じPCR反応を行ったものである。
レーン42は、プライマー伸長反応の15サイクル終了後にはじめてプライマーDNAを加え、その後さらにプライマー伸長反応を30サイクルを行ったものであり、それ以外はレーン2と同じPCR反応を行ったものである。
レーン43は、プライマー伸長反応の15サイクル終了後にはじめてプライマーDNAを加え、その後さらにプライマー伸長反応を30サイクルを行ったものであり、それ以外はレーン3と同じPCR反応を行ったものである。
レーン44は、プライマー伸長反応の15サイクル終了後にはじめてプライマーDNAを加え、その後さらにプライマー伸長反応を30サイクルを行ったものであり、それ以外はレーン4と同じPCR反応を行ったものである。
レーン45は、プライマー伸長反応の15サイクル終了後にはじめてプライマーDNAを加え、その後さらにプライマー伸長反応を30サイクルを行ったものであり、それ以外はレーン5と同じPCR反応を行ったものである。
レーン46は、プライマー伸長反応の15サイクル終了後にはじめてプライマーDNAを加え、その後さらにプライマー伸長反応を30サイクルを行ったものであり、それ以外はレーン6と同じPCR反応を行ったものである。
レーン47は、プライマー伸長反応の15サイクル終了後にはじめてプライマーDNAを加え、その後さらにプライマー伸長反応を30サイクルを行ったものであり、それ以外はレーン7と同じPCR反応を行ったものである。
レーン48は、プライマー伸長反応の15サイクル終了後にはじめてプライマーDNAを加え、その後さらにプライマー伸長反応を30サイクルを行ったものであり、それ以外はレーン8と同じPCR反応を行ったものである。
第17図(A)の結果から明らかなように、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行ったレーン1では、所望のDNA(正しい特異的なPCR産物)の増幅が検出された一方、副産物(非特異的なPCR産物)はほとんど検出されなかった。これに対し、レーン2では、所望のDNAの増幅は見られたが、副産物の増幅も若干見られた。また、レーン3では、核酸の増幅がほとんど検出できなかった。また、レーン4では、所望のDNAの増幅は見られたが、副産物も多量に増幅された。
同様に、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行ったレーン5では、所望のDNAの増幅が検出された一方、副産物はほとんど検出されなかった。これに対し、レーン6では、所望のDNAの増幅は見られたが、副産物の増幅も見られた。また、レーン7では、核酸の増幅がほとんど検出できなかった。また、レーン8では、所望のDNAの増幅は見られたが、副産物も多量に増幅された。
また、第17図(B)の結果から明らかなように、プライマー伸長反応の1サイクル終了後にプライマーDNAを加えた場合であっても、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行ったレーン9では、所望のDNAの増幅が検出された一方、副産物はほとんど検出されなかった。これに対し、レーン10では、所望のDNAの増幅は見られたが、副産物の増幅も見られた。また、レーン11では、核酸の増幅が僅かに検出された。また、レーン12では、所望のDNAの増幅は見られたが、副産物も多最に増幅された。
同様に、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行ったレーン13では、所望のDNAの増幅が検出された一方、副産物はほとんど検出されなかった。これに対し、レーン14では、所望のDNAの増幅は見られたが、副産物の増幅も見られた。また、レーン15では、核酸の増幅がほとんど検出できなかった。また、レーン16では、所望のDNAの増幅は見られたが、副産物も多量に増幅された。
また、第18図(A)の結果から明らかなように、プライマー伸長反応の3サイクル終了後にプライマーDNAを加えた場合であっても、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行ったレーン17では、所望のDNAの増幅が検出された一方、副産物はほとんど検出されなかった。これに対し、レーン18では、所望のDNAの増幅は見られたが、副産物の増幅も見られた。また、レーン19では、所望の核酸の増幅が僅かに検出できた。また、レーン20では、所望のDNAの増幅は見られたが、副産物も多量に増幅された。
一方、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行ったレーン21では、所望のDNAの増幅が検出された一方、副産物はほとんど検出されなかった。これに対し、レーン22では、所望のDNAの増幅は見られたが、副産物の増幅も僅かに見られた。また、レーン23では、核酸の増幅がほとんど検出できなかった。また、レーン24では、所望のDNAの増幅は見られたが、副産物も多量に増幅された。
また、第18図(B)の結果から明らかなように、プライマー伸長反応の6サイクル終了後にプライマーDNAを加えた場合であっても、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行ったレーン25では、所望のDNAの増幅が検出された一方、副産物はほとんど検出されなかった。これに対し、レーン26では、所望のDNAの増幅は見られたが、副産物の増幅も見られた。また、レーン27では、所望の核酸の増幅が見られたが、副産物はほとんど検出されなかった。また、レーン28では、所望のDNAの増幅は見られたが、副産物も多量に増幅された。
一方、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行ったレーン29では、所望のDNAの増幅が検出された一方、副産物はほとんど検出されなかった。これに対し、レーン30では、所望のDNAの増幅は見られたが、副産物の増幅も見られた。また、レーン31では、所望の核酸の増幅が見られたが、副産物はほとんど検出されなかった。また、レーン32では、所望のDNAの増幅は見られたが、副産物も多量に増幅された。
また、第19図(A)の結果から明らかなように、プライマー伸長反応の10サイクル終了後にプライマーDNAを加えた場合であっても、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行ったレーン33では、所望のDNAの増幅が検出された一方、副産物はほとんど検出されなかった。これに対し、レーン34では、所望のDNAの増幅は見られたが、副産物の増幅も若干見られた。また、レーン35では、所望の核酸の増幅が見られたが、副産物はほとんど検出されなかった。また、レーン36では、所望のDNAの増幅は見られたが、副産物も多量に増幅された。
一方、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行ったレーン37では、所望のDNAの増幅が検出された一方、副産物はほとんど検出されなかった。これに対し、レーン38では、所望のDNAの増幅は見られたが、副産物の増幅も見られた。また、レーン39では、所望の核酸の増幅が見られたが、副産物はほとんど検出されなかった。また、レーン40では、所望のDNAの増幅は見られたが、副産物も多量に増幅された。
また、第19図(B)の結果から明らかなように、プライマー伸長反応の15サイクル終了後にプライマーDNAを加えた場合であっても、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行ったレーン41では、所望のDNAの増幅が検出された一方、副産物はほとんど検出されなかった。これに対し、レーン42では、所望のDNAの増幅は見られたが、副産物の増幅も若干見られた。また、レーン43では、所望の核酸の増幅が見られたが、副産物はほとんど検出されなかった。また、レーン44では、所望のDNAの増幅は見られたが、副産物も多量に増幅された。
一方、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行ったレーン45では、所望のDNAの増幅が検出された一方、副産物はほとんど検出されなかった。これに対し、レーン46では、所望のDNAの増幅は見られたが、副産物の増幅も若干見られた。また、レーン47では、所望の核酸の増幅が見られたが、副産物はほとんど検出されなかった。また、レーン48では、所望のDNAの増幅は見られたが、副産物も多量に増幅された。
まず、第17図(A)の結果より、T.th.RecAタンパク質を加えてPCRを行えば、所望の核酸の収量を減少させることなく、副産物の増幅を低く抑えることができる。即ち、上記の相同組み換えタンパク質が存在することにより、プライマーDNAが鋳型DNAの非特異的な領域に結合してプライマー伸長反応を起こすことが抑制されるため、非特異的なPCR産物の増幅を抑制することができる。
一方、E.coli RecAタンパク質を加えてPCRを行った場合には、これを加えない場合よりは、PCRの特異性が向上するものの、副産物が若干生成されることにより、T.th.RecAタンパク質を加える場合ほどPCRの特異性は向上しない。
なお、E.coli RecAタンパク質はPCRサイクル中にかかる熱によって変性しやすい。このため、E.coli RecAタンパク質の効果が減少しやすいと考えられる。また、E.coli RecAタンパク質が変性した(1本鎖の)鋳型DNAに結合した状態で熱変性を起こすと、E.coli RecAタンパク質が鋳型DNAから離れなくなる。その結果、PCR反応を阻害することになる。なお、E.coliのSSBタンパク質を加えた場合も、これと同様な現象でPCR反応が阻害されると考えられる。
他方、T.th.のSSBタンパク質を加えてPCRを行っても、所望の核酸は増幅されない。
次に、第17図(B)、第18図及び第19図の結果より、プライマー伸長反応を繰り返した後にプライマーDNAを加えても、即ち、プライマーDNAを加える前に反応液が繰り返し高温状態に置かれても、T.th.RecAタンパク質を加えてPCRを行ったときに、PCRの特異性が劣ることがない。従って、T.th.RecAタンパク質は、高温においても不活性化せず安定であると考えられる。
【実施例8】
次いで、第8の実施例について説明する。なお、上記各実施例のいずれかと同様な部分の説明は、省略または簡略化する。
鋳型DNAとしてヒトゲノムDNAを用意し、プライマーDNAとして上記実施例4と同様に5種類のオリゴヌクレオチド37〜41を用意した(第9図参照)。
次に、プライマーDNAの濃度をそれぞれ0.3μMし、それ以外は上記実施例1と同様にしてPCR反応により核酸を増幅させた。なお、このPCRの温度条件、即ち、1サイクル(70℃,10分間、94℃,1分間)、30サイクル(94℃,30秒間、60℃,30秒間、68℃,1分間)、1サイクル(68℃,7分間、4℃,1分間)を温度条件5とする。1サイクル目の最初の温度(初期温度)は70℃である。そして、反応液について1%のアガロースゲルで電気泳動を行い、上記実施例1等と同様にして、その結果を写真に記録した。これを第20図に示す。
レーン5は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド37とオリゴヌクレオチド38を加えたものである。
レーン6は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド39とオリゴヌクレオチド38を加えたものである。
レーン7は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド40とオリゴヌクレオチド38を加えたものである。
レーン8は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド41とオリゴヌクレオチド38を加えたものである。
レーン1は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、それ以外はレーン5と同じPCR反応を行ったものである。
レーン2は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、それ以外はレーン6と同じPCR反応を行ったものである。
レーン3は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、それ以外はレーン7と同じPCR反応を行ったものである。
レーン4は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、それ以外はレーン8と同じPCR反応を行ったものである。
レーン9は、T.th.RecAタンパク質の代わりにE.coli RecAタンパク質を加えて、それ以外はレーン5と同じPCR反応を行ったものである。
レーン10は、T.th.RecAタンパク質の代わりにE.coli RecAタンパク質を加えて、それ以外はレーン6と同じPCR反応を行ったものである。
レーン11は、T.th.RecAタンパク質の代わりにE.coli RecAタンパク質を加えて、それ以外はレーン7と同じPCR反応を行ったものである。
レーン12は、T.th.RecAタンパク質の代わりにE.coli RecAタンパク質を加えて、それ以外はレーン8と同じPCR反応を行ったものである。
レーン13〜レーン24は、PCRの温度条件を、1サイクル(80℃,10分間、94℃,1分間)、30サイクル(94℃,30秒間、60℃,30秒間、68℃,1分間)、1サイクル(68℃,7分間、4℃,1分間)とした。これを温度条件6とする。1サイクル目の最初の温度(初期温度)は80℃である。
レーン13は、上記温度条件6の下で、それ以外はレーン1と同じPCR反応を行ったものである。
レーン14は、上記温度条件6の下で、それ以外はレーン2と同じPCR反応を行ったものである。
レーン15は、上記温度条件6の下で、それ以外はレーン3と同じPCR反応を行ったものである。
レーン16は、上記温度条件6の下で、それ以外はレーン4と同じPCR反応を行ったものである。
レーン17は、上記温度条件6の下で、それ以外はレーン5と同じPCR反応を行ったものである。
レーン18は、上記温度条件6の下で、それ以外はレーン6と同じPCR反応を行ったものである。
レーン19は、上記温度条件6の下で、それ以外はレーン7と同じPCR反応を行ったものである。
レーン20は、上記温度条件6の下で、それ以外はレーン8と同じPCR反応を行ったものである。
レーン21は、上記温度条件6の下で、それ以外はレーン9と同じPCR反応を行ったものである。
レーン22は、上記温度条件6の下で、それ以外はレーン10と同じPCR反応を行ったものである。
レーン23は、上記温度条件6の下で、それ以外はレーン11と同じPCR反応を行ったものである。
レーン24は、上記温度条件6の下で、それ以外はレーン12と同じPCR反応を行ったものである。
第20図(A)の結果から明らかなように、初期温度が70℃の場合、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行ったレーン5〜レーン8のうち、レーン5〜レーン7では、所望のDNA(正しい特異的なPCR産物)の増幅が検出された一方、副産物(非特異的なPCR産物)はほとんど検出されなかった。これに対し、レーン8では、核酸の増幅がほとんど検出されなかった。
これに対し、E.coli RecAタンパク質を加えてPCR反応を行ったレーン9〜レーン12のうち、レーン9〜レーン11では、所望のDNAの増幅が見られたが、副産物も若干検出された。また、レーン12では、核酸の増幅がほとんど検出されなかった。
他方、RecAタンパク質を加えずにPCR反応を行ったレーン1〜レーン4では、所望のDNAの増幅が見られたが、それ以外に副産物も多量に検出された。
なお、初期温度が70℃の場合、E.coli RecAタンパク質を加えてPCR反応を行った場合には、初期温度をかけない場合に比べ、副産物が多く検出された。従って、E.coli RecAタンパク質は、70℃で不活性化しやすいと考えれる。
一方、初期温度70℃をかけ、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行っても、初期温度をかけない場合と同様に、副産物はほとんど検出されなかった。従って、T.th.RecAタンパク質は、70℃でも不活性化しにくいと考えれる。
第20図(B)の結果から明らかなように、初期温度が80℃の場合、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行ったレーン17〜レーン20のうち、レーン17〜レーン19では、所望のDNAの増幅が見られたが、副産物が若干検出された。また、レーン20では、核酸の増幅がほとんど検出されなかった。
これに対し、E.coli RecAタンパク質を加えてPCR反応を行ったレーン21〜レーン24のうち、レーン21〜レーン23では、所望のDNAの増幅が見られたが、副産物も検出された。この副産物の量は、T.th.RecAタンパク質を加えた場合に比べて多かった。また、レーン24では、核酸の増幅がほとんど検出されなかった。
他方、RecAタンパク質を加えずにPCR反応を行ったレーン13〜レーン16では、所望のDNAの増幅が見られたが、それ以外に副産物も多量に検出された。
まず、第20図(A)の結果より、T.th.RecAタンパク質を加えてPCRを行えば、所望の核酸の収量を減少させることなく、副産物の増幅を低く抑えることができる。即ち、上記の相同組み換えタンパク質が存在することにより、プライマーDNAが鋳型DNAの非特異的な領域に結合してプライマー伸長反応を起こすことが抑制されるため、非特異的なPCR産物の増幅を抑制することができる。
一方、E.coli RecAタンパク質を加えてPCRを行った場合には、これを加えない場合よりは、PCRの特異性が向上するものの、副産物が若干生成されることにより、T.th.RecAタンパク質を加える場合ほどPCRの特異性は向上しない。
次に、第20図(B)の結果より、初期温度を80℃に上げると、T.th.RecAタンパク質を加えてPCRを行っても、PCRの特異性が若干低下する。従って、初期温度を80℃に上げることにより、T.th.RecAタンパク質の一部が不活性化するものと考えられる。
【実施例9】
次いで、第9の実施例について説明する。なお、上記各実施例のいずれかと同様な部分の説明は、省略または簡略化する。
第21図に示すように、鋳型DNAとしてヒトゲノムDNAを、プライマーDNAとして5種類のオリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチド59〜63)を用意した。これらのプライマーDNAは、Homo sapiens BAC clone CTB−135C18 from 7q11.2−q22,complete sequence.(ACCESSION AC005164)を参考にして設計した。
プライマーDNAのうち、オリゴヌクレオチド60とオリゴヌクレオチド61は、鋳型DNAと100%相補的な22merの塩基配列からなる。一方、オリゴヌクレオチド59は、オリゴヌクレオチド61のうち一の塩基をCからAに変えたものであり、オリゴヌクレオチド62は、オリゴヌクレオチド61のうち一の塩基をCからGに変えたものであり、オリゴヌクレオチド63は、オリゴヌクレオチド61のうち一の塩基をCからTに変えたものである。

次に、上記実施形態4と同様な条件でPCR反応により核酸を増幅させた。そして、反応液について1%のアガロースゲルで電気泳動を行い、上記実施例1等と同様にして、その結果を写真に記録した。これを第22図に示す。
レーン1は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド59とオリゴヌクレオチド60を加えたものである。
レーン2は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド61とオリゴヌクレオチド60を加えたものである。
レーン3は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド62とオリゴヌクレオチド60を加えたものである。
レーン4は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド63とオリゴヌクレオチド60を加えたものである。
レーン5は、1mM(最終濃度)のATP−γSをさらに加えて、レーン1と同じPCR反応を行ったものである。
レーン6は、1mM(最終濃度)のATP−γSをさらに加えて、レーン2と同じPCR反応を行ったものである。
レーン7は、1mM(最終濃度)のATP−γSをさらに加えて、レーン3と同じPCR反応を行ったものである。
レーン8は、1mM(最終濃度)のATP−γSをさらに加えて、レーン4と同じPCR反応を行ったものである。
第22図の結果から明らかなように、ATP−γSを加えずにPCR反応を行ったレーン1〜レーン4について見ると、すべてのレーンについて、所望のDNA(正しい特異的なPCR産物)の増幅が検出された一方、副産物(非特異的なPCR産物)はほとんど検出されなかった。
一方、ATP−γSを加えてPCR反応を行ったレーン5〜レーン8について見ると、レーン6では、所望のDNAの増幅が検出された一方、副産物はほとんど検出されなかった。これに対し、レーン5とレーン7とレーン8では、核酸の増幅がほとんど検出できなかった。
このことから、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行えば、所望の核酸の収量を減少させることなく、副産物の増幅を低く抑えることができる。即ち、上記の相同組み換えタンパク質が存在することにより、プライマーDNAが鋳型DNAの非特異的な領域に結合してプライマー伸長反応を起こすことが抑制されるため、非特異的なPCR産物の増幅を抑制することができる。
そしてさらに、ATP−γSの存在下では、プライマーDNAと鋳型DNAが100%相補的である場合にのみ、特異的に核酸を増幅させるようにすることができる。従って、ATP−γSを反応液に加えることにより、所望の核酸をさらに特異的に増幅することができる。
また、上記の結果より、一塩基多型を検出することが可能である。即ち、プライマーDNAの1つに、鋳型DNAのうち一塩基多型をなす塩基を含む配列に対応したプライマーDNAを用いてPCRを行えば、鋳型DNAと一塩基多型をなす塩基を含む配列に対応したプライマーDNAとが完全に相補的である場合に、所望の核酸を増幅させるようにすることができる。一方、鋳型DNAと一塩基多型をなす塩基を含む配列に対応したプライマーDNAとが完全には相補的ではない場合、即ち、一塩基多型をなす塩基がプライマーDNAと相補的でない場合に、所望の核酸が増幅しない、または、抑制されるようにすることができる。このため、PCRによる所望の核酸の増幅により、一塩基多型を検出することが可能である。
【実施例10】
次いで、第10の実施例について説明する。なお、上記各実施例のいずれかと同様な部分の説明は、省略または簡略化する。
第23図に示すように、鋳型DNAとしてヒトゲノムDNAを、プライマーDNAとして5種類のオリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチド64〜68)を用意した。これらのプライマーDNAは、Homo sapiens PAC clone RP5−1142J19 from 7q35−q36,complete sequence.(ACCESSION AC004975)を参考にして設計した。
プライマーDNAのうち、オリゴヌクレオチド65とオリゴヌクレオチド68は、鋳型DNAと100%相補的な20merまたは21merの塩基配列からなる。一方、オリゴヌクレオチド64は、オリゴヌクレオチド68のうち3’末端から3塩基目の一の塩基をTからAに変えたものであり、オリゴヌクレオチド66は、オリゴヌクレオチド68のうち3’末端から3塩基目の一の塩基をTからCに変えたものであり、オリゴヌクレオチド67は、オリゴヌクレオチド68のうち3’末端から3塩基目の一の塩基をTからGに変えたものである。

またさらに、第24図に示すように、鋳型DNAとしてヒトゲノムDNAを、プライマーDNAとして5種類のオリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチド69〜73)を用意した。これらのプライマーDNAは、Homo sapiens BAC clone CTB−135C18 from 7q11.2−q22,complete sequence.(ACCESSION AC005164)を参考にして設計した。
これらのプライマーDNAのうち、オリゴヌクレオチド70とオリゴヌクレオチド71は、鋳型DNAと100%相補的な22merの塩基配列からなる。一方、オリゴヌクレオチド69は、オリゴヌクレオチド71のうち3’末端から4塩基目の一の塩基をCからAに変えたものであり、オリゴヌクレオチド72は、オリゴヌクレオチド71のうち3’末端から4塩基目の一の塩基をCからGに変えたものであり、オリゴヌクレオチド73は、オリゴヌクレオチド71のうち3’末端から4塩基目の一の塩基をCからTに変えたものである。

次に、DNAポリメラーゼとしてTaKaRa Taq(タカラバイオ)の代わりにEx Taq(タカラバイオ)を用い、さらに1mM(最終濃度)のATP−γSを加えて、それ以外は上記実施形態4等と同様な条件でPCR反応により核酸を増幅させた。なお、このEx Taqは、通常(従来)のPCRの条件下では、プライマーDNAの3’末端の塩基配列を認識しないことが知られているものである。そして、反応液について1%のアガロースゲルで電気泳動を行い、上記実施例1等と同様にして、その結果を写真に記録した。これを第25図に示す。
レーン9は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド64とオリゴヌクレオチド65を加えたものである。
レーン10は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド66とオリゴヌクレオチド65を加えたものである。
レーン11は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド67とオリゴヌクレオチド65を加えたものである。
レーン12は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド68とオリゴヌクレオチド65を加えたものである。
レーン13は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド69とオリゴヌクレオチド70を加えたものである。
レーン14は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド71とオリゴヌクレオチド70を加えたものである。
レーン15は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド72とオリゴヌクレオチド70を加えたものである。
レーン16は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド73とオリゴヌクレオチド70を加えたものである。
レーン1は、T.th.RecAタンパク質を加えずに、それ以外はレーン9と同じPCR反応を行ったものである。
レーン2は、T.th.RecAタンパク質を加えずに、それ以外はレーン10と同じPCR反応を行ったものである。
レーン3は、T.th.RecAタンパク質を加えずに、それ以外はレーン11と同じPCR反応を行ったものである。
レーン4は、T.th.RecAタンパク質を加えずに、それ以外はレーン12と同じPCR反応を行ったものである。
レーン5は、T.th.RecAタンパク質を加えずに、それ以外はレーン13と同じPCR反応を行ったものである。
レーン6は、T.th.RecAタンパク質を加えずに、それ以外はレーン14と同じPCR反応を行ったものである。
レーン7は、T.th.RecAタンパク質を加えずに、それ以外はレーン15と同じPCR反応を行ったものである。
レーン8は、T.th.RecAタンパク質を加えずに、それ以外はレーン16と同じPCR反応を行ったものである。
レーン17は、T.th.RecAタンパク質の代わりにT.th.SSBタンパク質を加えて、それ以外はレーン9と同じPCR反応を行ったものである。
レーン18は、T.th.RecAタンパク質の代わりにT.th.SSBタンパク質を加えて、それ以外はレーン10と同じPCR反応を行ったものである。
レーン19は、T.th.RecAタンパク質の代わりにT.th.SSBタンパク質を加えて、それ以外はレーン11と同じPCR反応を行ったものである。
レーン20は、T.th.RecAタンパク質の代わりにT.th.SSBタンパク質を加えて、それ以外はレーン12と同じPCR反応を行ったものである。
レーン21は、T.th.RecAタンパク質の代わりにT.th.SSBタンパク質を加えて、それ以外はレーン13と同じPCR反応を行ったものである。
レーン22は、T.th.RecAタンパク質の代わりにT.th.SSBタンパク質を加えて、それ以外はレーン14と同じPCR反応を行ったものである。
レーン23は、T.th.RecAタンパク質の代わりにT.th.SSBタンパク質を加えて、それ以外はレーン15と同じPCR反応を行ったものである。
レーン24は、T.th.RecAタンパク質の代わりにT.th.SSBタンパク質を加えて、それ以外はレーン16と同じPCR反応を行ったものである。
第25図(B)の結果から明らかなように、T.th.RecAタンパク質とATP−γSを加えた場合には、まず、レーン9〜レーン12について見ると、レーン12では、所望のDNAの増幅が検出された一方、副産物はほとんど検出されなかった。これに対し、レーン9〜レーン11では、核酸の増幅がほとんど検出できなかった。なお、写真に映っているのは、バックグラウンドであると考えられる。また、レーン13〜レーン16について見ると、レーン14では、所望のDNAの増幅が検出された一方、副産物はほとんど検出されなかった。これに対し、レーン13とレーン15とレーン16では、核酸の増幅がほとんど検出できなかった。
これらに対し、第25図(A)の結果から明らかなように、T.th.RecAタンパク質を加えない場合には、レーン1〜レーン4についてもレーン5〜レーン8についても、プライマーDNAに対応するDNAの増幅が検出され、また、副産物も検出された。
また、第25図(C)の結果から明らかなように、T.th.RecAタンパク質の代わりにT.th.SSBタンパク質を加えた場合には、レーン17〜レーン20についてもレーン21〜レーン24についても、プライマーDNAに対応するDNAの増幅が検出され、また、副産物も検出された。
これらのことから、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行えば、所望の核酸の収量を減少させることなく、副産物の増幅を低く抑えることができる。即ち、上記の相同組み換えタンパク質が存在することにより、プライマーDNAが鋳型DNAの非特異的な領域に結合してプライマー伸長反応を起こすことが抑制されるため、非特異的なPCR産物の増幅を抑制することができる。
そしてさらに、ATP−γSの存在下では、プライマーDNAと鋳型DNAが100%相補的である場合にのみ、特異的に核酸を増幅させるようにすることができる。従って、ATP−γSを反応液に加えることにより、所望の核酸をさらに特異的に増幅することができる。
また、上記の結果より、一塩基多型を検出することが可能である。即ち、プライマーDNAの1つに、鋳型DNAのうち一塩基多型をなす塩基を含む配列に対応したプライマーDNAを用いてPCRを行えば、鋳型DNAと一塩基多型をなす塩基を含む配列に対応したプライマーDNAとが完全に相補的である場合に、所望の核酸を増幅させるようにすることができる。一方、鋳型DNAと一塩基多型をなす塩基を含む配列に対応したプライマーDNAとが完全には相補的ではない場合、即ち、一塩基多型をなす塩基がプライマーDNAと相補的でない場合に、所望の核酸が増幅しない、または、抑制されるようにすることができる。このため、PCRによる所望の核酸の増幅により、一塩基多型を検出することが可能である。
【実施例11】
次いで、第11の実施例について説明する。なお、上記各実施例のいずれかと同様な部分の説明は、省略または簡略化する。
本実施例では、第26図に示すように、鋳型DNAとしてヒトゲノムDNA(Promega)を、プライマーDNAとして6種類のオリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチド74〜79)を用意した。オリゴヌクレオチド74とオリゴヌクレオチド75は、Human S100 protein beta−subunit gene,exon 1(ACCESSION M59486 J05600)を参考にして設計した。また、オリゴヌクレオチド76とオリゴヌクレオチド77は、Homo sapiens blue cone opsin gene,complete cds(ACCESSION L32835)を参考にして設計した。また、オリゴヌクレオチド78とオリゴヌクレオチド79は、Homo sapiens beta globin region(HBB@) on chromosome 11(ACCESSION NG_000007)を参考にして設計した。各プライマーDNAは、鋳型DNAと100%相補的な20〜25merの塩基配列からなる。

次に、PCR反応により核酸を増幅させた。具体的には、50μlのPCR反応液中に、各々0.5μM(最終濃度)の2種類のオリゴヌクレオチドと、200ngのヒトゲノムDNA(Promega)と、1.0unitのTaKaRa ExTaq−HS Polymerase(タカラバイオ)と、0.2mMのdNTP混合液と、1.0μgのT.th.RecAタンパク質を、1×Ex−Taq buffer(タカラバイオ)に混合した。そして、PCR反応を、1サイクル(90℃,530秒間)、30サイクル(94℃,15秒間、55℃,30秒間、72℃,1分間)、1サイクル(72℃,7分間、4℃,1分間)で行った。
次に、反応液の1μlについて1%のアガロースゲルで電気泳動を行い、アガロースゲルをエチジウムブロミドの溶液に浸してゲル中のDNAを染色し、その後、染色されたDNAを写真に記録した。その結果を第27図に示す。
レーン1は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド74とオリゴヌクレオチド75を加えたものである。
レーン2は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド76とオリゴヌクレオチド77を加えたものである。
レーン3は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド78とオリゴヌクレオチド79を加えたものである。
レーン4は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン1と同じPCR反応を行ったものである。
レーン5は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン2と同じPCR反応を行ったものである。
レーン6は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン3と同じPCR反応を行ったものである。
レーン7は、T.th.RecAタンパク質の代わりに同量の大腸菌(E.coli)のRecAタンパク質を加えて、それ以外はレーン1と同じPCR反応を行ったものである。
レーン8は、T.th.RecAタンパク質の代わりに同量の大腸菌(E.coli)のRecAタンパク質を加えて、それ以外はレーン2と同じPCR反応を行ったものである。
レーン9は、T.th.RecAタンパク質の代わりに同量の大腸菌(E.coli)のRecAタンパク質を加えて、それ以外はレーン3と同じPCR反応を行ったものである。
第27図の結果から明らかなように、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行ったレーン1〜レーン3では、所望の核酸(正しい特異的なPCR産物)の増幅が検出された一方、副産物(非特異的なPCR産物)の増幅はほとんど検出されなかった。
これに対し、T.th.RecAタンパク質を加えずにPCR反応を行ったレーン4〜レーン6では、所望の核酸のみならず副産物も多量に検出された。
また、T.th.RecAタンパク質の代わりにE.coli RecAタンパク質を加えてPCR反応を行ったレーン7〜レーン9では、所望の核酸の他、レーン4〜レーン6ほどではないが、副産物も検出された。
このことから、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行えば、所望の核酸の収量を減少させることなく、副産物の増幅を低く抑えることができる。即ち、T.th.RecAタンパク質が存在することにより、プライマーDNAが鋳型DNAの非特異的な領域に結合してプライマー伸長反応を起こすことが抑制されるため、非特異的なPCR産物の増幅を抑制することができる。
一方、E.coli RecAタンパク質を加えてPCRを行った場合には、これを加えない場合よりは、PCRの特異性が向上するものの、副産物が若干生成されることにより、T.th.RecAタンパク質を加える場合ほどPCRの特異性は向上しない。
【実施例12】
次いで、第12の実施例について説明する。なお、上記各実施例のいずれかと同様な部分の説明は、省略または簡略化する。
本実施例では、第28図に示すように、鋳型DNAとしてヒトゲノムDNA(Promega)を、プライマーDNAとして5種類のオリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチド80〜84)を用意した。これらのプライマーDNAは、Homo sapiens BAC clone CTB−135C18 from 7q11.2−q22,complete sequence(ACCESSION AC005164)及びHomo sapiens chromosome 19 clone CTD−2166J9,complete sequence(ACCESSION AC010412)を参考にして設計した。フォワード側のプライマーDNA(オリゴヌクレオチド80〜83)は、任意のプライマー設計の可能性を示すため、それぞれ位置をずらして設計してある。一方、リバース側のプライマーDNA(オリゴヌクレオチド84)は、共通のものである。各プライマーDNAは、鋳型DNAと100%相補的な22merの塩基配列からなる。

次に、上記実施例11のレーン1等と同様な条件でPCR反応を行った。そして、その反応液について1%のアガロースゲルで電気泳動を行い、上記実施例11と同様にして、その結果を写真に記録した。これを第29図に示す。
レーン1は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド80とオリゴヌクレオチド84を加えたものである。
レーン2は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド81とオリゴヌクレオチド84を加えたものである。
レーン3は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド82とオリゴヌクレオチド84を加えたものである。
レーン4は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド83とオリゴヌクレオチド84を加えたものである。
レーン5は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン1と同じPCR反応を行ったものである。
レーン6は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン2と同じPCR反応を行ったものである。
レーン7は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン3と同じPCR反応を行ったものである。
レーン8は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン4と同じPCR反応を行ったものである。
レーン9は、T.th.RecAタンパク質の代わりに同量の大腸菌(E.coli)のRecAタンパク質を加えて、それ以外はレーン1と同じPCR反応を行ったものである。
レーン10は、T.th.RecAタンパク質の代わりに同量の大腸菌(E.coli)のRecAタンパク質を加えて、それ以外はレーン2と同じPCR反応を行ったものである。
レーン11は、T.th.RecAタンパク質の代わりに同量の大腸菌(E.coli)のRecAタンパク質を加えて、それ以外はレーン3と同じPCR反応を行ったものである。
レーン12は、T.th.RecAタンパク質の代わりに同量の大腸菌(E.coli)のRecAタンパク質を加えて、それ以外はレーン4と同じPCR反応を行ったものである。
第29図の結果から明らかなように、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行ったレーン1〜レーン4では、所望の核酸(正しい特異的なPCR産物)の増幅が検出された一方、副産物(非特異的なPCR産物)の増幅はほとんど検出されなかった。
これに対し、T.th.RecAタンパク質を加えずにPCR反応を行ったレーン5〜レーン8では、所望の核酸のみならず副産物も多量に検出された。
また、T.th.RecAタンパク質の代わりにE.coli RecAタンパク質を加えてPCR反応を行ったレーン9〜レーン12では、所望の核酸の他、レーン5〜レーン8ほどではないが、副産物も検出された。
このことから、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行えば、所望の核酸の収量を減少させることなく、副産物の増幅を低く抑えることができる。即ち、T.th.RecAタンパク質が存在することにより、プライマーDNAが鋳型DNAの非特異的な領域に結合してプライマー伸長反応を起こすことが抑制されるため、非特異的なPCR産物の増幅を抑制することができる。
一方、E.coli RecAタンパク質を加えてPCRを行った場合には、これを加えない場合よりは、PCRの特異性が向上するものの、副産物が若干生成されることにより、T.th.RecAタンパク質を加える場合ほどPCRの特異性は向上しない。
【実施例13】
次いで、第13の実施例について説明する。なお、上記各実施例のいずれかと同様な部分の説明は、省略または簡略化する。
本実施例では、第30図に示すように、鋳型DNAとしてヒトゲノムDNA(Promega)を、プライマーDNAとしてオリゴヌクレオチド85とオリゴヌクレオチド86を用意した。これらのプライマーDNAは、ヒトゲノムDNAのsingle copy geneについて設計した。具体的には、Homo sapiens PAC clone RP5−1142J19 from 7q35−q36,complete sequence(ACCESSION AC004975)を参考にして設計した。各プライマーDNAは、鋳型DNAと100%相補的な20〜21merの塩基配列からなる。

次に、PCR反応により核酸を増幅させた。具体的には、50μlのPCR反応液中に、各々1.0μM(最終濃度)の2種類のオリゴヌクレオチドと、200ngのヒトゲノムDNA(Promega)と、1.0unitのTaKaRa Taq−HS(タカラバイオ)と、0.2mMのdNTP混合液と、1.0μgのT.th.RecAタンパク質を、10mMのTris−HCl Buffer(pH8.3)、50mMのKCl、1.5mMのMgClに混合した。そして、PCR反応を、1サイクル(90℃,1分間)、30サイクル(94℃,30秒間、60℃,30秒間、68℃,1分間)、1サイクル(68℃,7分間、4℃,1分間)で行った。
次に、反応液について1%のアガロースゲルで電気泳動を行い、アガロースゲルをエチジウムブロミドの溶液に浸してゲル中のDNAを染色し、その後、染色されたDNAを写真に記録した。その結果を第31図に示す。
レーン1は、上記のように、プライマーDNAの濃度をそれぞれ1.0μM(最終濃度)として、PCR反応を行ったものである。
レーン2は、プライマーDNAの濃度をそれぞれ0.3μM(最終濃度)に減らして、それ以外はレーン1と同様なPCR反応を行ったものである。
レーン3は、プライマーDNAの濃度をそれぞれ0.1μM(最終濃度)に減らして、それ以外はレーン1と同様なPCR反応を行ったものである。
レーン4は、プライマーDNAの濃度をそれぞれ0.03μM(最終濃度)に減らして、それ以外はレーン1と同様なPCR反応を行ったものである。
レーン5は、プライマーDNAの濃度をそれぞれ0.01μM(最終濃度)に減らして、それ以外はレーン1と同様なPCR反応を行ったものである。
レーン6は、プライマーDNAの濃度をそれぞれ0.003μM(最終濃度)に減らして、それ以外はレーン1と同様なPCR反応を行ったものである。
レーン7は、プライマーDNAの濃度をそれぞれ0.001μM(最終濃度)に減らして、それ以外はレーン1と同様なPCR反応を行ったものである。
レーン8は、プライマーDNAの濃度をそれぞれ0.0003μM(最終濃度)に減らして、それ以外はレーン1と同様なPCR反応を行ったものである。
レーン9は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン1と同じPCR反応を行ったものである。
レーン10は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン2と同じPCR反応を行ったものである。
レーン11は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン3と同じPCR反応を行ったものである。
レーン12は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン4と同じPCR反応を行ったものである。
レーン13は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン5と同じPCR反応を行ったものである。
レーン14は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン6と同じPCR反応を行ったものである。
レーン15は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン7と同じPCR反応を行ったものである。
レーン16は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン8と同じPCR反応を行ったものである。
第31図の結果から明らかなように、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行ったレーン1〜レーン8のうち、レーン7,8を除くレーンでは、所望の核酸(正しい特異的なPCR産物)の増幅が検出された一方、副産物(非特異的なPCR産物)はほとんど検出されなかった。また、レーン7及びレーン8では、プライマーDNAの濃度が低すぎるためか、核酸の増幅がほとんど検出できなかった。
これに対し、T.th.RecAタンパク質を加えずにPCR反応を行ったレーン9〜レーン16のうち、レーン9〜レーン12では、所望の核酸のみならず副産物も検出された。また、レーン13及びレーン14では、所望の核酸の増幅が検出された一方、副産物はほとんど検出されなかった。また、レーン15及びレーン16では、プライマーDNAの濃度が低すぎるためか、核酸の増幅がほとんど検出できなかった。
このことから、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行えば、所望の核酸の収量を減少させることなく、副産物の増幅を低く抑えることができる。即ち、T.th.RecAタンパク質が存在することにより、プライマーDNAが鋳型DNAの非特異的な領域に結合してプライマー伸長反応を起こすことが抑制されるため、非特異的なPCR産物の増幅を抑制することができる。
【実施例14】
次いで、第14の実施例について説明する。なお、上記各実施例のいずれかと同様な部分の説明は、省略または簡略化する。
本実施例では、第32図に示すように、鋳型DNAとしてヒトゲノムDNA(Promega)を、プライマーDNAとして5種類のオリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチド87〜91)を用意した。これらのプライマーDNAは、Homo sapiens BAC clone CTB−135C18 from 7q11.2−q22,complete sequence(ACCESSION AC005164)を参考にして設計した。一方のプライマーDNA(オリゴヌクレオチド87〜90)は、3’末端から3番目の塩基配列をそれぞれ異ならせてあり、オリゴヌクレオチド90が鋳型DNAと100%相補的である。他方のプライマーDNA(オリゴヌクレオチド91)は、共通のものであり、鋳型DNAと100%相補的である。各プライマーDNAは、22merの塩基配列からなる。

次に、PCR反応により核酸を増幅させた。具体的には、50μlのPCR反応液中に、各々0.3μM(最終濃度)の2種類のオリゴヌクレオチドと、200ngのヒトゲノムDNA(Promega)と、1.0unitのTaKaRa Taq−HS(タカラバイオ)と、0.2mMのdNTP混合液と、1.0μgのT.th.RecAタンパク質を、10mMのTris−HCl Buffer(pH8.3)、50mMのKCl、1.5mMのMgClに混合した。そして、PCR反応を、1サイクル(94℃,1分間)、30サイクル(94℃,30秒間、60℃,30秒間、68℃,1分間)、1サイクル(68℃,7分間、4℃,1分間)で行った。
次に、反応液について1%のアガロースゲルで電気泳動を行い、アガローヌゲルをエチジウムブロミドの溶液に浸してゲル中のDNAを染色し、その後、染色されたDNAを写真に記録した。その結果を第33図に示す。
レーン1は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド87とオリゴヌクレオチド91を加えたものである。
レーン2は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド88とオリゴヌクレオチド91を加えたものである。
レーン3は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド89とオリゴヌクレオチド91を加えたものである。
レーン4は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド90とオリゴヌクレオチド91を加えたものである。
レーン5は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン1と同じPCR反応を行ったものである。
レーン6は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン2と同じPCR反応を行ったものである。
レーン7は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン3と同じPCR反応を行ったものである。
レーン8は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン4と同じPCR反応を行ったものである。
レーン9は、T.th.RecAタンパク質の代わりに、同量のT.th.のSSBタンパク質を加えて、それ以外はレーン1と同じPCR反応を行ったものである。
レーン10は、T.th.RecAタンパク質の代わりに、同量のT.th.のSSBタンパク質を加えて、それ以外はレーン2と同じPCR反応を行ったものである。
レーン11は、T.th.RecAタンパク質の代わりに、同量のT.th.のSSBタンパク質を加えて、それ以外はレーン3と同じPCR反応を行ったものである。
レーン12は、T.th.RecAタンパク質の代わりに、同量のT.th.のSSBタンパク質を加えて、それ以外はレーン4と同じPCR反応を行ったものである。
第33図の結果から明らかなように、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行ったレーン1〜レーン4について見ると、鋳型DNAと100%相補的なプライマーDNAを用いたレーン4では、所望のDNAの増幅が強く検出された一方、副産物はほとんど検出されなかった。一方、3’末端から3番目の塩基が異なるプライマーDNAを用いたレーン1〜レーン3では、所望の核酸の増幅がほとんど検出されなかった。
これに対し、T.th.RecAタンパク質を加えずにPCR反応を行ったレーン5〜レーン8については、いずれのレーンにおいても所望のDNAの増幅が検出された。また、レーン5及びレーン6では、副産物も増幅された。
また、T.th.RecAタンパク質の代わりにT.th.のSSBタンパク質を加えてPCR反応を行ったレーン9〜レーン12についても、いずれのレーンにおいても所望のDNAの増幅が検出された。また、レーン9及びレーン10では、副産物が増幅された。
このことから、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行えば、所望の核酸の収量を減少させることなく、副産物の増幅を低く抑えることができる。即ち、上記の相同組み換えタンパク質が存在することにより、プライマーDNAが鋳型DNAの非特異的な領域に結合してプライマー伸長反応を起こすことが抑制されるため、非特異的なPCR産物の増幅を抑制することができる。具体的には、プライマーDNAと鋳型DNAとの塩基のミスマッチがない場合においてのみ、特異的に核酸を増幅させることが可能となる。一般に、プライマーDNAの3’末端近傍の塩基(特に、3’末端から3塩基以内の塩基)が鋳型DNAとミスマッチしている場合には、核酸が増幅されやすい傾向にある。しかし、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行えば、所望の核酸を特異的に増幅させることができる。
一方、RecAタンパク質と同様にDNAに結合するT.th.SSBタンパク質を加えてPCRを行っても、PCRの特異性は特に向上しない。
また、本実施例の結果より、一塩基多型を検出することが可能である。即ち、プライマーDNAの1つに、鋳型DNAのうち一塩基多型をなす塩基を含む配列に対応したプライマーDNAを用いてPCRを行えば、鋳型DNAと一塩基多型をなす塩基を含む配列に対応したプライマーDNAとが完全に相補的である場合に、所望の核酸を増幅させるようにすることができる。一方、鋳型DNAと一塩基多型をなす塩基を含む配列に対応したプライマーDNAとが完全には相補的ではない場合、即ち、一塩基多型をなす塩基がプライマーDNAと相補的でない場合に、所望の核酸が増幅しない、または、抑制されるようにすることができる。このため、PCRによる所望の核酸の増幅により、一塩基多型を検出することが可能である。
【実施例15】
次いで、第15の実施例について説明する。なお、上記各実施例のいずれかと同様な部分の説明は、省略または簡略化する。
本実施例では、第34図に示すように、鋳型DNAとしてヒトゲノムDNA(Promega)を、プライマーDNAとして5種類のオリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチド92〜96)を用意した。これらのプライマーDNAは、Homo sapiens PAC clone RP5−1142J19 from 7q35−q36,complete sequence(ACCESSION AC004975)を参考にして設計した。一方のプライマーDNA(オリゴヌクレオチド92〜95)は、3’末端から3番目の塩基配列をそれぞれ異ならせてあり、オリゴヌクレオチド93が鋳型DNAと100%相補的である。他方のプライマーDNA(オリゴヌクレオチド96)は、共通のものであり、鋳型DNAと100%相補的である。各プライマーDNAは、20〜21merの塩基配列からなる。

次に、上記実施例14のレーン1等と同様な条件でPCR反応を行った。そして、その反応液について1%のアガロースゲルで電気泳動を行い、上記実施例14と同様にして、その結果を写真に記録した。これを第35図に示す。
レーン1は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド92とオリゴヌクレオチド96を加えたものである。
レーン2は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド93とオリゴヌクレオチド96を加えたものである。
レーン3は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド94とオリゴヌクレオチド96を加えたものである。
レーン4は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド95とオリゴヌクレオチド96を加えたものである。
レーン5は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン1と同じPCR反応を行ったものである。
レーン6は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン2と同じPCR反応を行ったものである。
レーン7は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン3と同じPCR反応を行ったものである。
レーン8は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン4と同じPCR反応を行ったものである。
レーン9は、T.th.RecAタンパク質の代わりに、同量のT.th.のSSBタンパク質を加えて、それ以外はレーン1と同じPCR反応を行ったものである。
レーン10は、T.th.RecAタンパク質の代わりに、同量のT.th.のSSBタンパク質を加えて、それ以外はレーン2と同じPCR反応を行ったものである。
レーン11は、T.th.RecAタンパク質の代わりに、同量のT.th.のSSBタンパク質を加えて、それ以外はレーン3と同じPCR反応を行ったものである。
レーン12は、T.th.RecAタンパク質の代わりに、同量のT.th.のSSBタンパク質を加えて、それ以外はレーン4と同じPCR反応を行ったものである。
第35図の結果から明らかなように、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行ったレーン1〜レーン4について見ると、鋳型DNAと100%相補的なプライマーDNAを用いたレーン2では、所望のDNAの増幅が強く検出された一方、副産物はほとんど検出されなかった。一方、3’末端から3番目の塩基が異なるプライマーDNAを用いたレーン1,3,4では、所望の核酸の増幅がほとんど検出されなかった。
これに対し、T.th.RecAタンパク質を加えずにPCR反応を行ったレーン5〜レーン8については、いずれのレーンにおいても所望のDNAの増幅が検出された。また、レーン7では、副産物も増幅された。
また、T.th.RecAタンパク質の代わりにT.th.のSSBタンパク質を加えてPCR反応を行ったレーン9〜レーン12についても、いずれのレーンにおいても所望のDNAの増幅が検出された。また、レーン11では、副産物が増幅された。
このことから、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行えば、所望の核酸の収量を減少させることなく、副産物の増幅を低く抑えることができる。即ち、上記の相同組み換えタンパク質が存在することにより、プライマーDNAが鋳型DNAの非特異的な領域に結合してプライマー伸長反応を起こすことが抑制されるため、非特異的なPCR産物の増幅を抑制することができる。具体的には、プライマーDNAと鋳型DNAとの塩基のミスマッチがない場合においてのみ、特異的に核酸を増幅させることが可能となる。一般に、プライマーDNAの3’末端近傍の塩基(特に、3’末端から3塩基以内の塩基)が鋳型DNAとミスマッチしている場合には、核酸が増幅されやすい傾向にある。しかし、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行えば、所望の核酸を特異的に増幅させることができる。
一方、RecAタンパク質と同様にDNAに結合するT.th.SSBタンパク質を加えてPCRを行っても、PCRの特異性は特に向上しない。
また、本実施例の結果より、一塩基多型を検出することが可能である。即ち、プライマーDNAの1つに、鋳型DNAのうち一塩基多型をなす塩基を含む配列に対応したプライマーDNAを用いてPCRを行えば、鋳型DNAと一塩基多型をなす塩基を含む配列に対応したプライマーDNAとが完全に相補的である場合に、所望の核酸を増幅させるようにすることができる。一方、鋳型DNAと一塩基多型をなす塩基を含む配列に対応したプライマーDNAとが完全には相補的ではない場合、即ち、一塩基多型をなす塩基がプライマーDNAと相補的でない場合に、所望の核酸が増幅しない、または、抑制されるようにすることができる。このため、PCRによる所望の核酸の増幅により、一塩基多型を検出することが可能である。
【実施例16】
次いで、第16の実施例について説明する。なお、上記各実施例のいずれかと同様な部分の説明は、省略または簡略化する。
本実施例では、第36図に示すように、鋳型DNAとしてヒトゲノムDNA(Promega)を、プライマーDNAとしてオリゴヌクレオチド97とオリゴヌクレオチド98を用意した。これらのプライマーDNAは、Human chromosome 14 DNA sequence BAC C−2240H23 of library CalTech−D from chromosome 14 of Homo sapiens(Human),complete sequence(ACCESSION AL356017)を参考にして設計した。各プライマーDNAは、鋳型DNAと100%相補的な20merの塩基配列からなる。

次に、PCR反応により核酸を増幅させた。具体的には、50μlのPCR反応液中に、各々0.5μM(最終濃度)の2種類のオリゴヌクレオチドと、200ngのヒトcDNA(Invitorogen)と、1.0unitのTaKaRa ExTaq−HS polymerase(タカラバイオ)と、0.2mMのdNTP混合液と、1.0μgのT.th.RecAタンパク質を、1×ExTaq−HS専用 Buffer(タカラバイオ)に混合した。そして、PCR反応を、1サイクル(94℃,30秒間)、30サイクル(94℃,15秒間、55℃,30秒間、72℃,1分間)、1サイクル(72℃,7分間、4℃,1分間)で行った。
次に、反応液の10μlについて1%のアガロースゲルで電気泳動を行い、アガロースゲルをエチジウムブロミドの溶液に浸してゲル中のDNAを染色し、その後、染色されたDNAを写真に記録した。その結果を第37図に示す。
レーン1は、上記のように、T.th.RecAタンパク質を加えたものである。
レーン2は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン1と同じPCR反応を行ったものである。
第37図の結果から明らかなように、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行ったレーン1では、所望のDNAの増幅が検出された一方、副産物はほとんど検出されなかった。なお、下方に見えるシグナルはバックグラウンドと考えられる。
これに対し、T.th.RecAタンパク質を加えずにPCR反応を行ったレーン2では、所望のDNAの増幅が検出されなかった。これは、鋳型DNAに阻止的または抑制的2次構造の区域があるためと考えられる。
このことから、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行えば、鋳型DNAに阻止的または抑制的2次構造の区域がある場合であっても、所望の核酸を効率よく特異的に増幅させることができる。その理由は、相同組み換えタンパク質が、鋳型DNAに結合することにより、阻止的または抑制的2次構造が解かれるためであると考えられる。
【実施例17】
次いで、第17の実施例について説明する。なお、上記各実施例のいずれかと同様な部分の説明は、省略または簡略化する。
本実施例では、第38図及び第39図に示すように、鋳型DNAとしてヒトゲノムDNA(Promega)を、プライマーDNAとして12種類のオリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチド99〜110)を用意した。オリゴヌクレオチド99とオリゴヌクレオチド100は、Human DNA sequence from clone RP11−760M1 on chromosome 13,complete sequence(ACCESSION AL354815)及びHuman hepatocyte nuclear factor 4−alpha gene,exon 1(ACCESSION U72959 U72960)を参考にして設計した。また、オリゴヌクレオチド101とオリゴヌクレオチド102は、Human rhodopsin gene,complete cds(ACCESSION U49742 K02281)を参考にして設計した。また、オリゴヌクレオチド103とオリゴヌクレオチド104は、Homo sapiens beta globin region(HBB@)on chromosome 11(ACCESSION NG_000007)を参考にして設計した。オリゴヌクレオチド105とオリゴヌクレオチド106は、Homo spaiens HPFH60R gene for olfactory receptor(ACCESSION X81445 X91835)を参考にして設計した。また、オリゴヌクレオチド107とオリゴヌクレオチド108は、Human p53(TP53)gene,complete cds(ACCESSION U94788)を参考にして設計した。また、オリゴヌクレオチド109とオリゴヌクレオチド110は、Human p53(TP53)gene,complete cds(ACCESSION U94788)を参考にして設計した。各プライマーDNAは、鋳型DNAと100%相補的な20〜27merの塩基配列からなる。

次に、PCR反応により核酸を増幅させた。具体的には、50μlのPCR反応液中に、各々0.8μM(最終濃度)の2種類のオリゴヌクレオチドと、200ngのヒトゲノムDNA(Promega)と、1.0unitのTaKaRa ExTaq−HS polymerase(タカラバイオ)と、0.2mMのdNTP混合液と、1.0μgのT.th.RecAタンパク質を、1×ExTaq Buffer(タカラバイオ)に混合した。そして、PCR反応を、1サイクル(94℃,30秒間)、35サイクル(94℃,15秒間、55℃,30秒間、72℃,1分間)、1サイクル(72℃,7分間、4℃,1分間)で行った。
次に、反応液の10μlについて1.2%のアガロースゲルで電気泳動を行い、アガロースゲルをエチジウムブロミドの溶液に浸してゲル中のDNAを染色し、その後、染色されたDNAを写真に記録した。その結果を第40図に示す。
レーン7は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド99とオリゴヌクレオチド100を加えたものである。
レーン8は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド101とオリゴヌクレオチド102を加えたものである。
レーン9は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド103とオリゴヌクレオチド104を加えたものである。
レーン10は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド105とオリゴヌクレオチド106を加えたものである。
レーン11は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド107とオリゴヌクレオチド108を加えたものである。
レーン12は、プライマーDNAとして、オリゴヌクレオチド109とオリゴヌクレオチド110を加えたものである。
レーン1は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン7と同じPCR反応を行ったものである。
レーン2は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン8と同じPCR反応を行ったものである。
レーン3は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン9と同じPCR反応を行ったものである。
レーン4は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン10と同じPCR反応を行ったものである。
レーン5は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン11と同じPCR反応を行ったものである。
レーン6は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン12と同じPCR反応を行ったものである。
レーン13は、15mM KClを加えて、レーン7と同じPCR反応を行ったものである。
レーン14は、15mM KClを加えて、レーン8と同じPCR反応を行ったものである。
レーン15は、15mM KClを加えて、レーン9と同じPCR反応を行ったものである。
レーン16は、15mM KClを加えて、レーン10と同じPCR反応を行ったものである。
レーン17は、15mM KClを加えて、レーン11と同じPCR反応を行ったものである。
レーン18は、15mM KClを加えて、レーン12と同じPCR反応を行ったものである。
レーン19は、30mM KClを加えて、レーン7と同じPCR反応を行ったものである。
レーン20は、30mM KClを加えて、レーン8と同じPCR反応を行ったものである。
レーン21は、30mM KClを加えて、レーン9と同じPCR反応を行ったものである。
レーン22は、30mM KClを加えて、レーン10と同じPCR反応を行ったものである。
レーン23は、30mM KClを加えて、レーン11と同じPCR反応を行ったものである。
レーン24は、30mM KClを加えて、レーン12と同じPCR反応を行ったものである。
第40図の結果から明らかなように、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行ったレーン7〜レーン12では、所望のDNAの増幅が検出された一方、副産物はそれほど検出されなかった。
また、15mM KClを加えたレーン13〜レーン18では、レーン7〜レーン12よりも副産物の増幅が抑制された。
またさらに、30mM KClを加えたレーン19〜レーン24では、レーン13〜レーン18よりも、効果的に副産物の増幅が抑制された。
これに対し、T.th.RecAタンパク質を加えずにPCR反応を行ったレーン1〜レーン6では、所望のDNAの増幅が検出された一方、副産物も多く検出された。
このことから、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行えば、所望の核酸の収量を減少させることなく、副産物の増幅を低く抑えることができる。即ち、上記の相同組み換えタンパク質が存在することにより、プライマーDNAが鋳型DNAの非特異的な領域に結合してプライマー伸長反応を起こすことが抑制されるため、非特異的なPCR産物の増幅を抑制することができる。
特に、PCR反応液にKClを加えることにより、PCRの特異性を向上させることができる。
【実施例18】
次いで、第18の実施例について説明する。なお、上記各実施例のいずれかと同様な部分の説明は、省略または簡略化する。
本実施例では、第41図に示すように、鋳型DNAとしてヒトゲノムDNA(Promega)を、プライマーDNAとしてオリゴヌクレオチド111とオリゴヌクレオチド112を用意した。これらのプライマーDNAは、Homo sapiens beta globin region(HBB@)on chromosome 11(ACCESSION NG_000007)を参考にして設計した。各プライマーDNAは、鋳型DNAと100%相補的な21〜22merの塩基配列からなる。

次に、PCR反応により核酸を増幅させた。具体的には、50μlのPCR反応液中に、各々0.25μM(最終濃度)の2種類のオリゴヌクレオチドと、100ngのヒトゲノムDNA(Promega)と、1.25unitのTaKaRa ExTaq Polymerase(タカラバイオ)と、0.2mMのdNTP混合液と、1.0μgのT.th.RecAタンパク質を、1×ExTaq Buffer(タカラバイオ)に混合した。そして、PCR反応を、1サイクル(94℃,30秒間)、35サイクル(94℃,15秒間、55℃,30秒間、72℃,1分間)、1サイクル(72℃,7分間、4℃,1分間)で行った。
次に、反応液の10μlについて1.2%のアガロースゲルで電気泳動を行い、アガロースゲルをエチジウムブロミドの溶液に浸してゲル中のDNAを染色し、その後、染色されたDNAを写真に記録した。その結果を第42図に示す。
レーン1は、上記のように、TaKaRa ExTaq Polymeraseを1.25unitの加えてPCR反応を行ったものである。
レーン2は、TaKaRa ExTaq Polymeraseを0.63unitに減らして、それ以外はレーン1と同じPCR反応を行ったものである。
レーン3は、TaKaRa ExTaq Polymeraseを0.31unitに減らして、それ以外はレーン1と同じPCR反応を行ったものである。
レーン4は、TaKaRa ExTaq Polymeraseを0.16unitに減らして、それ以外はレーン1と同じPCR反応を行ったものである。
レーン5は、TaKaRa ExTaq Polymeraseを0.08unitに減らして、それ以外はレーン1と同じPCR反応を行ったものである。
レーン6は、TaKaRa ExTaq Polymeraseを0.04unitに減らして、それ以外はレーン1と同じPCR反応を行ったものである。
レーン7は、TaKaRa ExTaq Polymeraseを0.02unitに減らして、それ以外はレーン1と同じPCR反応を行ったものである。
レーン8は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン1と同じPCR反応を行ったものである。
レーン9は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン2と同じPCR反応を行ったものである。
レーン10は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン3と同じPCR反応を行ったものである。
レーン11は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン4と同じPCR反応を行ったものである。
レーン12は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン5と同じPCR反応を行ったものである。
レーン13は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン6と同じPCR反応を行ったものである。
レーン14は、T.th.RecAタンパク質を加えないで、レーン7と同じPCR反応を行ったものである。
第42図の結果から明らかなように、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行ったレーン1〜レーン7のうち、レーン1〜レーン5において、所望のDNAの増幅が検出された。即ち、PCR反応液にTaKaRa ExTaq Polymeraseを0.08unit以上に加えることにより、所望のDNAが増幅された。
これに対し、T.th.RecAタンパク質を加えずにPCR反応を行った場合には、レーン8〜レーン14のうち、レーン8〜レーン10のみに、所望のDNAの増幅が検出された。即ち、PCR反応液に TaKaRa ExTaq Polymeraseを0.31unit以上に加えた場合にのみ、所望のDNAが増幅された。
このことから、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応を行えば、DNAポリメラーゼの添加量を少なくしても、所望の核酸を効率よく特異的に増幅させることができる。その理由は、相同組み換えタンパク質がプライマーDNAや鋳型DNAに結合し、プライマーDNAと鋳型DNAとの結合を促進させるため、DNAポリメラーゼの添加量を少なくしても、PCR反応が効率よく進行するものと考えられる。
【実施例19】
次いで、第19の実施例について説明する。なお、上記各実施例のいずれかと同様な部分の説明は、省略または簡略化する。
本実施例では、第43図〜第46図に示すように、鋳型DNAとしてヒトゲノムDNA(Promega)を、プライマーDNAとして20種類のオリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチド113〜132)を用意した。オリゴヌクレオチド113とオリゴヌクレオチド114は、Homo sapiens 16p13.3sequence section 1 of 8(ACCESSION AE006462 AE005175)を参考にして設計した。また、オリゴヌクレオチド115とオリゴヌクレオチド116は、Homo sapiens SVMT gene for synaptic vesicle monoamine transporter,exon 16 and complete cds(ACCESSION AB044401)を参考にして設計した。また、オリゴヌクレオチド117とオリゴヌクレオチド118は、Homo spaiens HPFH60R gene for olfactory receptor(ACCESSION X81445 X91835)を参考にして設計した。オリゴヌクレオチド119とオリゴヌクレオチド120は、Human p53(TP53)gene,complete cds(ACCESSION U94788)を参考にして設計した。また、オリゴヌクレオチド121とオリゴヌクレオチド122は、Human hepatocyte nuclear factor 4−alpha gene,exon 1(ACCESSION U72959 U72960)を参考にして設計した。また、オリゴヌクレオチド123とオリゴヌクレオチド124は、Homo sapiens diacylglycerol kinase,zeta 104kDa(DGKZ),mRNA(ACCESSION NM_003646)を参考にして設計した。オリゴヌクレオチド125とオリゴヌクレオチド126は、Human rhodopsin gene,complete cds(ACCESSION U49742 K02281)を参考にして設計した。また、オリゴヌクレオチド127とオリゴヌクレオチド128は、Human DNA for CAAF1(calcium−binding protein in amniotic fluid 1),complete cds(ACCESSION D83657)を参考にして設計した。また、オリゴヌクレオチド129とオリゴヌクレオチド130は、Homo sapiens CYP21 gene,exons 1 through 10; and steroid 21−hydpoxylase(CYP21)gene,complete cds(ACCESSION M12792 M23280)を参考にして設計した。オリゴヌクレオチド131とオリゴヌクレオチド132は、Human S100 protein beta−subunit gene,exon 1(ACCESSION M59486 J05600)を参考にして設計した。各プライマーDNAは、鋳型DNAと100%相補的な20〜26merの塩基配列からなる。


次に、PCR反応により核酸を増幅させた。具体的には、50μlのPCR反応液中に、各々0.1μM(最終濃度)の20種類のオリゴヌクレオチドと、100ngのヒトゲノムDNA(Promega)と、1.25unitのTaKaRa ExTaq Polymerase(タカラバイオ)と、0.2mMのdNTP混合液と、1.0μgのT.th.RecAタンパク質を、1×ExTaq Buffer(タカラバイオ)に混合した。そして、PCR反応を、1サイクル(94℃,30秒間)、35サイクル(94℃,15秒間、55℃,30秒間、72℃,1分間)、1サイクル(72℃,7分間、4℃,1分間)で行った。
次に、反応液の10μlについて1.2%のアガロースゲルで電気泳動を行い、アガロースゲルをエチジウムブロミドの溶液に浸してゲル中のDNAを染色し、その後、染色されたDNAを写真に記録した。その結果を第47図に示す。
第47図の結果から明らかなように、各々のプライマーセットに対応した所望のDNAの増幅が検出された一方、副産物はほとんど検出されなかった。
このことから、複数種類のプライマーDNAを添加して同時にPCR反応を行っても、即ち、マルチプライマーPCRを行っても、T.th.RecAタンパク質を加えてPCR反応をさせれば、副産物の生成を抑制しつつ、所望の核酸を増幅させることができる。前述したように、T.th.RecAタンパク質を加えることにより、プライマーDNAの濃度を下げても所望の核酸が増幅できるため、このようなマルチプライマーPCRを行っても、各々のプライマーセットに対応した所望のDNAを増幅させることのできると考えられる。
以上において、本発明の実施の形態を実施例に即して説明したが、本発明は上記各実施例1〜19に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
例えば、上記各実施例では、相同組換えタンパク質としてT.th.RecAタンパク質を使用したが、前述したように、それ以外のものを使用することも可能である。即ち、T.th.RecAタンパク質を改変したものであってT.th.RecAタンパク質と類似する機能を有するRecA改変タンパク質(T.th.RecA改変タンパク質)や、T.th.RecAタンパク質とT.th.RecA改変タンパク質との混合物を用いてもよい。また、T.th.RecAフラグメントを用いることもできる。
さらに、上記以外のRecAタンパク質であっても、鋳型DNAに対する塩基のミスマッチが3塩基以内のプライマーDNAについてのみプライマー伸長反応が起こるRecAタンパク質を用いることができる。また、このようなRecAタンパク質またはこのRecAタンパク質を改変したタンパク質であってこのRecAタンパク質と類似する機能を有するRecA改変タンパク質の少なくともいずれかを含む相同的組換えタンパク質を利用することもできる。
また、鋳型DNAが阻止的または抑制的二次構造の区域を有する場合には、一般的なPCRを行ったとき、このような区域を有する所望の核酸を、効率よく特異的に増幅させることは困難である。
これに対し、本発明を適用すれば、鋳型DNAにこのような阻止的または抑制的2次構造の区域がある場合であっても、所望の核酸を効率よく特異的に増幅させることができる。その理由は、相同組み換えタンパク質が、鋳型DNAに結合することにより、阻止的または抑制的2次構造が解かれるためであると考えられる。
また、上記各実施例では、別途抽出し精製したT.th.RecAタンパク質を反応液に加えてPCRを行っている。しかしながら、T.th.RecAタンパク質等を発現可能なように形質転換した大腸菌等を用意し、これに熱処理を行ったものをT.th.RecAタンパク質等として利用することもできる。つまり、大腸菌等を熱処理して、耐熱性の高いT.th.RecAタンパク質等を残しつつ、他のタンパク質を失活させ、これをPCRに利用する方法である。
特に、大腸菌のゲノムDNAやプラスミドDNAを鋳型DNAとする場合には、T.th.RecAタンパク質等を発現する大腸菌等に熱処理を行うことで、鋳型DNAとT.th.RecAタンパク質を同時に得ることができるので、PCRを行うための作業効率を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
以上の説明から明らかなように本発明によれば、PCR反応において副産物の増幅を抑制しつつ所望の核酸を増幅することができる核酸増幅方法、PCR反応において副産物の増幅を抑制しつつ所望の核酸を増幅することができる核酸増幅用試薬キット、PCR反応において副産物の増幅を抑制しつつ所望の核酸を増幅することができることを利用して一塩基多型を検出する一塩基多型検出方法、及び、PCR反応において副産物の増幅を抑制しつつ所望の核酸を増幅することができることを利用して一塩基多型を検出するための一塩基多型検出用試薬キットを提供することができる。
【配列表】
















【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】

【図22】

【図23】

【図24】

【図25】

【図26】

【図27】

【図28】

【図29】

【図30】

【図31】

【図32】

【図33】

【図34】

【図35】

【図36】

【図37】

【図38】

【図39】

【図40】

【図41】

【図42】

【図43】

【図44】

【図45】

【図46】

【図47】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
PCRにより核酸を増幅させる核酸増幅方法であって、
反応液中に、サーマス・サーモフィルス(Thermusthermophilus)に由来するRecAタンパク質及びこのRecAタンパク質を改変したタンパク質であってこのRecAタンパク質と類似する機能を有するRecA改変タンパク質の少なくともいずれかを含む相同的組換えタンパク質を混合して、PCRを行う
ことを特徴とする核酸増幅方法。
【請求項2】
PCRにより核酸を増幅させる核酸増幅方法であって、
反応液中に、鋳型DNAに対する塩基のミスマッチが3塩基以内のプライマーDNAについてのみプライマー伸長反応が起こるRecAタンパク質またはこのRecAタンパク質を改変したタンパク質であってこのRecAタンパク質と類似する機能を有するRecA改変タンパク質の少なくともいずれかを含む相同的組換えタンパク質を混合して、PCRを行う
ことを特徴とする核酸増幅方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の核酸増幅方法であって、
前記反応液中に、ATP−γSを加えて、PCRを行う
ことを特徴とする核酸増幅方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の核酸増幅方法であって、
鋳型DNAが阻止的または抑制的2次構造の区域を有する
ことを特徴とする核酸増幅方法。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の核酸増幅方法であって、
前記反応液中に、KClを加えて、PCRを行う
ことを特徴とする核酸増幅方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の核酸増幅方法であって、
前記反応液中に、Mg2+を加えて、PCRを行う
ことを特徴とする核酸増幅方法。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の核酸増幅方法であって、
前記反応液中に、複数セットのプライマーDNAを加えて、PCRを行う
ことを特徴とする核酸増幅方法。
【請求項8】
PCRにより核酸を増幅させるための核酸増幅用試薬キットであって、
DNAポリメラーゼと、
4種類のdNTPと、
緩衝液と、
サーマス・サーモフィルス(Thermusthermophilus)のRecAタンパク質及びこのRecAタンパク質を改変したタンパク質であってこのRecAタンパク質と類似する機能を有するRecA改変タンパク質の少なくともいずれかを含む相同的組換えタンパク質と、
を備えることを特徴とする核酸増幅用試薬キット。
【請求項9】
請求項8に記載の核酸増幅用試薬キットであって、
ATP−γSを備える
ことを特徴とする核酸増幅用試薬キット。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載の核酸増幅用試薬キットであって、
KClを備える
ことを特徴とする核酸増幅用試薬キット。
【請求項11】
請求項8〜請求項10のいずれか一項に記載の核酸増幅用試薬キットであって、
Mg2+を備える
ことを特徴とする核酸増幅用試薬キット。
【請求項12】
一塩基多型を検出するための一塩基多型検出方法であって、
鋳型DNAのうち一塩基多型をなす塩基を含む配列に対応したプライマーDNAを用い、
反応液に、サーマス・サーモフィルス(Thermusthermophilus)のRecAタンパク質及びこのRecAタンパク質を改変したタンパク質であってこのRecAタンパク質と類似する機能を有するRecA改変タンパク質の少なくともいずれかを含む相同的組換えタンパク質を混合して、PCRを行い、
所望の核酸の増幅により一塩基多型を検出する
ことを特徴とする一塩基多型検出方法。
【請求項13】
請求項12に記載の一塩基多型検出方法であって、
前記反応液中に、ATP−γSを加えて、PCRを行う
ことを特徴とする一塩基多型検出方法。
【請求項14】
請求項12または請求項13に記載の一塩基多型検出方法であって、
前記反応液中に、KClを加えて、PCRを行う
ことを特徴とする一塩基多型検出方法。
【請求項15】
請求項12〜請求項14のいずれか一項に記載の一塩基多型検出方法であって、
前記反応液中に、Mg2+を加えて、PCRを行う
ことを特徴とする一塩基多型検出方法。
【請求項16】
一塩基多型を検出するための一塩基多型検出用試薬キットであって、
DNAポリメラーゼと、
4種類のdNTPと、
緩衝液と、
サーマス・サーモフィルス(Thermusthermophilus)のRecAタンパク質及びこのRecAタンパク質を改変したタンパク質であってこのRecAタンパク質と類似する機能を有するRecA改変タンパク質の少なくともいずれかを含む相同的組換えタンパク質と、
を備えることを特徴とする一塩基多型検出用試薬キット。
【請求項17】
請求項16に記載の一塩基多型検出用試薬キットであって、
ATP−γSを備える
ことを特徴とする一塩基多型検出用試薬キット。
【請求項18】
請求項16または請求項17に記載の一塩基多型検出用試薬キットであって、
KClを備える
ことを特徴とする一塩基多型検出用試薬キット。
【請求項19】
請求項16〜請求項18のいずれか一項に記載の一塩基多型検出用試薬キットであって、
Mg2+を備える
ことを特徴とする一塩基多型検出用試薬キット。

【国際公開番号】WO2004/027060
【国際公開日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【発行日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−537561(P2004−537561)
【国際出願番号】PCT/JP2003/011752
【国際出願日】平成15年9月12日(2003.9.12)
【出願人】(593043200)株式会社アイシン・コスモス研究所 (1)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【出願人】(596175810)財団法人かずさディー・エヌ・エー研究所 (40)
【Fターム(参考)】