説明

核酸増幅用プライマー及びこれを用いた大腸癌の検査方法

本発明は、遺伝子中のCpG領域、特にhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域中のCpG領域のメチル化の有無を簡便に識別できる方法、この方法に用いるためのプライマー、プライマーセット検査用試薬及び検査用試薬キットを提供する。 本発明の方法は、hMLH1遺伝子のような解析対象遺伝子(DNA)中のいずれかのCpG領域のメチル化されたシトシンを特異的に認識するプライマーと、前記メチル化の有無によらず目的遺伝子中のいずれかの領域に結合し、前記いずれかのCpG領域の存在する領域で核酸増幅により増幅産物を形成するプライマーの少なくとも2種のプライマーを、これらの2種のプライマーと一緒になって前記CpG領域を含む領域を増幅することができる別のメチル化非特異的プライマーとともに用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子のCpG領域のメチル化の検出方法及びそれを利用した方法、これらの方法に使用するためのプライマー、プライマーセット、検査用試薬及び検査用試薬キットに関する。特に、本発明は、大腸癌の臨床検査の分野において、散発性大腸癌と遺伝性非腺腫性大腸癌とを識別(スクリーニング)する方法、これに用いるためのプライマー、プライマーセット、検査用試薬及び検査用試薬キットに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの大腸癌は、散発性(非遺伝性)大腸癌と遺伝性大腸癌の2種類に大別される。そして、遺伝性大腸癌には、家族性腺腫性大腸癌(以下適宜「FAP」という。)と遺伝性非腺腫性大腸癌(以下「HNPCC」という。)の2種類が存在する。
【0003】
FAPはAPC遺伝子の異常によるものであることが分かっており、多量のポリープを産生するという形質的特徴により診断は比較的容易である。
【0004】
一方、HNPCCはFAPのような形質的特徴を示さないため、その診断は困難であった。これまでは、HNPCCの診断は、専ら家族歴を追跡することにより行われていたが、依然として信頼できる診断基準(diagnostic criteria)が確立されていない。
【0005】
1993年にHNPCCの原因が、DNAミスマッチ修復タンパク質(mismatch repair protein;MMR proteins)をコードする遺伝子群(MMR genes;以下適宜「MMR遺伝子」という。)に変異が起こって、その遺伝子修復タンパク質が機能しなくなり、その結果、ヒトの遺伝子修復機構が機能しなくなることであることが分かった。具体的には、HNPCCの病理検体においては、hMLH1、hMSH2、hMSH6、hPMS1、hPMS2の5種のMMRタンパク質をコードするMMR遺伝子のいずれか1つ以上に生殖細胞変異が認められ、通常は、前3種のタンパク質をコードする遺伝子のいずれか1つ以上に変異が認められる。このうち、hMSH2をコードする遺伝子(以下適宜「hMSH2遺伝子」という。)とhMLH1をコードする遺伝子(以下適宜「hMLH1遺伝子」という。)の2つの遺伝子の変異が主因であることが明らかになった。
【0006】
また、免疫染色によるタンパク発現の検査において、この3種のうちhMSH2とhMSH6のタンパク質発現が陰性である場合は、まず、間違いなくHNPCCであることが分かっている。
【0007】
一方、hMLH1タンパク質の異常は、HNPCCのみでなく、散発性(非遺伝性)大腸癌の場合にも認められ、この両者をhMLH1タンパク質の免疫染色によって識別することは困難である。もし識別するとするならば、hMLH1タンパク質の免疫染色のみでなく、hMLH1タンパク質をコードする遺伝子領域すべてをシーケンスするといった、hMLH1遺伝子の突然変異の確認を行わなければならない。しかし、現在のところ、HNPCCと臨床診断された患者のうち、遺伝子突然変異解析で遺伝子突然変異を検出できるのは約50%程度であり、残りについては原因の変異が検出できない。また、この検出法には高い検出費用もかかる。HNPCCは遺伝性疾患であり、その診断には社会的・倫理的・法的に注意を必要とする。そのため、効率良く、低コストで、かつ、精度の高い検出方法が求められている。
【0008】
近年、hMLH1遺伝子等のMMR遺伝子の変異は、DNA中のマイクロサテライト(microsatellite)反復配列の異常と関連していることが分かってきた。即ち、ある種の癌細胞においてはCAの繰り返し配列等に代表されるマイクロサテライトの反復回数が、正常細胞のそれに比べて多くなったり、少なくなったりしている。こうしたDNA内の塩基配列の異常をマイクロサテライト不安定性(microsatellite instability,MSI+,MSI−H)と呼ぶ。一方、マイクロサテライト反復配列の異常を示さないことをマイクロサテライト安定性(microsatellite stability,MSS,MSI−,MSI−L)という。
【0009】
このMSI+はHNPCCに認められる特徴である。一方、HNPCCとは関係のない散発性の大腸癌、胃癌などの多くの腫瘍でMSI+の性質を示す例が12〜30%の頻度で存在することが明らかになった(以下においてMSI+を示す散発性大腸癌を適宜「散発性MSI+大腸癌」という)。これら非遺伝性のMSI+腫瘍においては、hMLH1やhMSH2遺伝子の突然変異の頻度が非常に低く、別の機序が考えられたが、近年、これらの腫瘍では75〜90%以上の頻度でhMLH1遺伝子のプロモーター領域にメチル化が起こり、hMLH1タンパク質の発現が消失していることが明らかになった。
【0010】
また、散発性MSI+大腸癌細胞株においては、hMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域内にある、hMLH1を発現させるタンパク質であるCBP結合因子(CBP binding factor)であるCCAAT boxの上流のCpG領域のメチル化が多く見られることが分かった。一方、HNPCCの細胞株においては、この領域のメチル化は、低い割合で起こっていることも分かってきた。
【0011】
さらに、大腸癌の約10〜20%を占めるCIMP(CpG Island Methylator Phenotype)癌においては、hMLH1をコードする遺伝子を含む特定の遺伝子又は遺伝子座(例えば、MINT2、MINT31、及びp16)において高頻度のメチル化が観察されることもわかっている。
【0012】
また、hMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域内にあるCpG領域の部位によっては正常細胞にもメチル化が存在することも分かってきた。
【0013】
一般に、遺伝子のメチル化を検出する方法としては、MSP法(WO97/46705、特表2000−511776)、MCA法(WO00/26401、特表2002−533061)、COBRA法などが存在する。しかし、MCA法は、メチル化感受性制限酵素で切断し、末端にリンカーを付加した遺伝子断片をランダムに増幅するものであり、「未知の」メチル化されている遺伝子を探索する目的に適しているが、特定の解析対象遺伝子について行うには不向きである。また、COBRA法は、制限酵素による切断の工程を必要とし、手間及びコストがかかり、使用する制限酵素の認識部位のみしか調べることができず、そのため、メチル化の有無を検討したいCpG領域を必ずしも解析できないという欠点を持つ。MSP法は、制限酵素を用いないが、メチル化の解析を行う遺伝子領域ひとつにつき、メチル化特異的プライマーのみを用いたPCRと非メチル化特異的プライマーのみを用いたPCRという2回のPCRを必要とする。また、そのメチル化の有無の判定は、そのPCR産物の有無によって行うため、PCR自体のエラーを確認できないという欠点を持つ。
【発明の開示】
【0014】
本発明者らは、そこで、hMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域のCpG領域のメチル化の有無、特にCCAAT box上流のCpG領域のメチル化の有無を簡便に検出できる方法があれば、そのメチル化を検出することにより、散発性MSI+大腸癌を識別することが可能と考え、また、散発性MSI+大腸癌を除外することによりHNPCCを効率よく識別することが可能と考えた。
【0015】
そこで、本発明の目的は、制限酵素による切断の工程を必要とせず、遺伝子のメチル化状態、特にhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域中のCpG領域のメチル化の有無を簡便に識別できる方法を提供することである。さらに、この検査方法に用いるためのプライマー、プライマーセット、検査用試薬及び検査用試薬キットを提供することである。
【0016】
かかる実情において、本発明者らは、hMLH1をコードする遺伝子(DNA)のプロモーター領域中のいずれかのCpG領域のメチル化されたシトシンを特異的に認識するプライマーと、前記メチル化の有無によらずhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域中のいずれかの領域(前記いずれかのCpG領域以外の領域が好ましい。)に結合し、前記いずれかのCpG領域の存在する領域で核酸増幅によりオリゴヌクレオチドを形成するプライマーの少なくとも2種のプライマーとを用いれば、前記CpG領域のメチル化の有無を識別でき、これにより、MSI+大腸癌であるか、MSI−大腸癌であるかを精度よく識別することができることを見出した。そして、この検出方法は、他のHNPCCの遺伝子診断よりも簡便で、かつ、低コストである。
【0017】
また、検出原理は基本的にあらゆる遺伝子に適応可能であって、メチル化状態を調べたい解析対象遺伝子は、何であってもよい。さらに、本発明の方法は、他の一般的な遺伝子のメチル化状態検出方法と異なり、制限酵素での切断の工程を含まないので、それらの方法と比較しても迅速・簡便であり、臨床検査において特に有利である。即ち、本発明の方法によれば、従来の検出技術の欠点をすべて補うことが可能であり、核酸増幅は1回のみでよく、メチル化の有無を検討したい任意のCpG領域の検討が可能であり、増幅過程自体のエラーはメチル化非特異的プライマーによるPCR産物によって確認することが可能である。COBRA法のように制限酵素を用いないため、手間及びコストもかからない。また、MSP法よりも核酸増幅の回数が少なく、増幅過程自体のエラーの確認も可能なため、簡便かつ確実である。
【0018】
また、この方法に、マイクロサテライト反復配列分析(以下適宜「MSI分析」という。)を組み合わせることにより、散発性MSI+大腸癌であるか、HNPCCであるかをより精度よく識別することができることを見出した。
【0019】
その上にまた、DNAミスマッチ修復タンパク質の免疫染色分析(immunohistochemical analysis;以下適宜「IHC」という。)を組み合わせることにより、散発性MSI+大腸癌であるか、HNPCCであるかを精度よく識別することができることを見出した。
【0020】
また、前記プライマーを用いた検査用試薬及び検査用試薬キットと合わせて本発明を完成した。
【0021】
即ち、(1)本発明の第1の態様は、以下の1)〜10)のいずれか1に記載のオリゴヌクレオチドのうち少なくとも1つを選択する核酸増幅用プライマーである:
1)配列番号1で表されるhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
2)配列番号1で表されるhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
3)配列番号1で表されるhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン及びCpG領域以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
4)配列番号1で表されるhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン及びCpG領域以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
5)配列番号2〜7に表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
6)配列番号1で表されるhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域の配列の相補鎖におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
7)配列番号1で表されるhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域の配列の相補鎖におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
8)配列番号1で表されるhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域の配列の相補鎖におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン及びCpG領域以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
9)配列番号1で表されるhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域の配列の相補鎖におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン及びCpG領域以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;及び
10)前記1)から9)のいずれか1に記載のオリゴヌクレオチドの塩基配列中の1ないし複数個の塩基が置換、欠失、挿入若しくは付加といった変異された塩基配列からなり、CpG領域のシトシンのメチル化を検出可能なプライマー機能を有するオリゴヌクレオチド。
【0022】
(2)本発明の第2の態様は、以下の1)〜10)のいずれか1に記載のオリゴヌクレオチドのうち2つ以上を選択する核酸増幅用プライマーセットである:
1)配列番号1で表されるhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
2)配列番号1で表されるhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
3)配列番号1で表されるhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン及びCpG領域以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
4)配列番号1で表されるhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン及びCpG領域以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
5)配列番号2〜7に表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
6)配列番号1で表されるhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域の配列の相補鎖におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
7)配列番号1で表されるhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域の配列の相補鎖におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
8)配列番号1で表されるhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域の配列の相補鎖におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン及びCpG領域以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
9)配列番号1で表されるhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域の配列の相補鎖におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン及びCpG領域以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
10)前記1)から9)のいずれか1に記載のオリゴヌクレオチドのうち1又は複数のオリゴヌクレオチドについて、1ないし複数個の塩基が置換、欠失、挿入若しくは付加といった変異された塩基配列を含み、CpG領域のシトシンのメチル化を検出可能なプライマー機能を有するオリゴヌクレオチド。
【0023】
(3)本発明の第3の態様は、組織中のhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域の中にある5’領域又はCCAAT領域におけるCpG領域におけるシトシンのメチル化の有無を識別するために用いられるプライマーセットであって、少なくとも1つのメチル化シトシン非特異的プライマーの融解温度が、メチル化シトシン特異的プライマーの融解温度より1〜5℃高いことを特徴とする前記(2)記載の核酸増幅用プライマーセットである。
【0024】
(4)本発明の第4の態様は、組織中のhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域の中にあるCCAAT領域におけるCpG領域におけるシトシンのメチル化の有無を識別するために用いられるプライマーセットであって、プライマー同士のGC含有率の差が20%以内であることを特徴とする前記の(2)又は(3)記載の核酸増幅用プライマーセットである。
【0025】
(5)本発明の第5の態様は、配列番号3に記載のオリゴヌクレオチド及び配列番号4に記載のオリゴヌクレオチドを選択することを特徴とする前記(2)又は(3)記載の核酸増幅用プライマーセットである。
(6)本発明の第6の態様は、配列番号2に記載のオリゴヌクレオチド及び配列番号4に記載のオリゴヌクレオチドを選択することを特徴とする前記(2)又は(3)記載の核酸増幅用プライマーセットである。
【0026】
(7)本発明の第7の態様は、配列番号6に記載のオリゴヌクレオチド及び配列番号7に記載のオリゴヌクレオチドを選択することを特徴とする前記(2)から(4)のいずれか1項記載の核酸増幅用プライマーセットである。
(8)本発明の第8の態様は、配列番号5に記載のオリゴヌクレオチド及び配列番号7に記載のオリゴヌクレオチドを選択することを特徴とする前記(2)から(4)のいずれか1項記載の核酸増幅用プライマーセットである。
【0027】
(9)本発明の第9の態様は、前記(1)記載の核酸増幅用プライマーを使用し、hMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域におけるCpG領域のシトシンのメチル化の有無を検査することを特徴とする散発性大腸癌と遺伝性非腺腫大腸癌の識別方法である。
(10)本発明の第10の態様は、組織中のhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域の中にある5’領域又はCCAAT領域におけるCpG領域におけるシトシンのメチル化の有無を指標とすることを特徴とする散発性大腸癌と遺伝性非腺腫大腸癌の識別方法である。
【0028】
(11)本発明の第11の態様は、前記シトシンのメチル化の有無の検査を核酸増幅方法により行う前記(9)又は(10)に記載の識別方法である。
(12)本発明の第12の態様は、マイクロサテライト反復配列分析を組み合わせたことを特徴とする前記(9)から(11)のいずれか1項に記載の識別方法である。
(13)本発明の第13の態様は、DNAミスマッチ修復タンパク質の免疫染色分析を組み合わせたことを特徴とする前記(9)から(12)のいずれか1項に記載の識別方法である。
【0029】
(14)本発明の第14の態様は、前記(1)記載のプライマーを含む検査用試薬である。
(15)本発明の第15の態様は、前記(1)記載のプライマーを含む検査用試薬キットである。
【0030】
(16)本発明の第16の態様は、以下の1)〜9)のいずれか1に記載のオリゴヌクレオチドのうち少なくとも1つを選択する核酸増幅用プライマーであって、解析対象遺伝子のCpG領域中のシトシンのメチル化の有無を検出するためのプライマーである:
1)前記解析対象遺伝子におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
2)前記解析対象遺伝子におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
3)前記解析対象遺伝子におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン及びCpG領域以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
4)前記解析対象遺伝子におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン及びCpG領域以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
5)前記解析対象遺伝子の配列の相補鎖におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
6)前記解析対象遺伝子の配列の相補鎖におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
7)前記解析対象遺伝子の配列の相補鎖におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン及びCpG領域以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
8)前記解析対象遺伝子の配列の相補鎖におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン及びCpG領域以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;及び
9)前記1)から8)のいずれか1に記載のオリゴヌクレオチドの塩基配列中の1ないし複数個の塩基が置換、欠失、挿入若しくは付加といった変異された塩基配列からなり、CpG領域のシトシンのメチル化を検出可能なプライマー機能を有するオリゴヌクレオチド。
【0031】
(17)本発明の第17の態様は、前記(16)記載のプライマーを少なくとも3つ含む解析対象遺伝子中のCpG領域のメチル化の有無を検出するための核酸増幅用プライマーセットであって、この少なくとも3つのプライマーが、
a)前記解析対象遺伝子中の少なくとも1つの検出対象CpG領域を含む部分が増幅されるように選択され、かつCpG領域中のシトシンが前記修飾剤による修飾の後にシトシンのままであっても、ウラシル又はチミンに転換されても、前記解析対象遺伝子に結合する、1対のメチル化非特異的プライマー、及び
b)前記検出対象CpG領域中のシトシンが前記修飾剤による修飾の後にシトシンである場合にのみ前記解析対象遺伝子に結合し、前記検出対象CpG領域中のシトシンが前記修飾剤による修飾の後にウラシル又はチミンに変換されれば前記解析対象遺伝子に結合しない、少なくとも1つのメチル化シトシン特異的プライマー
である、プライマーセットである。
【0032】
(18)本発明の第18の態様は、解析対象遺伝子のCpG領域中のシトシンのメチル化を検出する方法であって、
(1)試料由来の核酸を修飾剤によって修飾し、
(2)前記核酸を鋳型として、以下のプライマー:
a)前記解析対象遺伝子中の少なくとも1つの検出対象CpG領域を含む部分が増幅されるように選択され、かつCpG領域中のシトシンが前記修飾剤による修飾の後にシトシンのままであっても、ウラシル又はチミンに転換されても、前記解析対象遺伝子に結合する、1対のメチル化非特異的プライマー、及び
b)前記検出対象CpG領域中のシトシンが前記修飾剤による修飾の後にシトシンである場合にのみ前記解析対象遺伝子に結合し、前記検出対象CpG領域中のシトシンが前記修飾剤による修飾の後にウラシル又はチミンに変換されれば前記解析対象遺伝子に結合しない、少なくとも1つのメチル化シトシン特異的プライマー
を用いて前記解析対象遺伝子核酸を増幅し、
(3)前記増幅産物を検出する
工程を含むことを特徴とする方法である。
【0033】
(19)本発明の第19の態様は、前記メチル化シトシン特異的プライマー及び前記メチル化シトシン非特異的プライマーが、それぞれ以下の1)〜9)のいずれか1に記載のオリゴヌクレオチドのうち少なくとも1つを選択するプライマーである、前記(18)記載の方法である:
1)前記解析対象遺伝子におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
2)前記解析対象遺伝子におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
3)前記解析対象遺伝子におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン及びCpG領域以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
4)前記解析対象遺伝子におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン及びCpG領域以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
5)前記解析対象遺伝子の配列の相補鎖におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
6)前記解析対象遺伝子の配列の相補鎖におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
7)前記解析対象遺伝子の配列の相補鎖におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン及びCpG領域以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
8)前記解析対象遺伝子の配列の相補鎖におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン及びCpG領域以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;及び
9)前記1)から8)のいずれか1に記載のオリゴヌクレオチドの塩基配列中の1ないし複数個の塩基が置換、欠失、挿入若しくは付加といった変異された塩基配列からなり、CpG領域のシトシンのメチル化を検出可能なプライマー機能を有するオリゴヌクレオチド。
【0034】
(20)本発明の第20の態様は、前記解析対象遺伝子が、hMLH1、hMSH2、hMSH6、hPMS1、hPMS2を含むDNAミスマッチ修復タンパク質をコードする遺伝子群及びその他の大腸癌関連遺伝子群から選択される、前記(18)記載の方法である。
【0035】
(21)本発明の第21の態様は、前記解析対象遺伝子における検出対象CpG領域におけるシトシンのメチルの有無を、試料の由来する個体における大腸癌の存在又は分類と関連づけるための、前記(18)記載の方法である。
【0036】
(22)本発明の第22の態様は、前記検出対象CpG領域が2ヵ所以上であり、前記b)のメチル化シトシン特異的プライマーを2種類以上用いる、前記(18)記載の方法である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
[図1]は、hMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域においてメチル化されたシトシンの有無を示す塩基配列の例である。
[図2]は、本発明の検査方法の概要を示す模式図である。
[図3]は、hMLH1の免疫染色の実施例である。
[図4]は、本発明の実施に係る核酸増幅の産物の例を示す写真図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、hMLH1遺伝子を解析対象遺伝子とした場合について詳細に説明するが、本発明は任意の遺伝子に対して適用可能であり、本発明における解析対象遺伝子はhMLH1遺伝子に限定されない。
(検出原理)
核酸を修飾剤によって修飾すると、メチル化されている塩基は修飾されない。
【0039】
例えば、hMLH1をコードする遺伝子(一本鎖DNA)のプロモーター領域中のCpG領域においては、メチル化されたシトシンは重亜硫酸修飾によって脱アミノ化されにくく、シトシンのままで存在するとされる。一方、メチル化されていないシトシンは、そのすべて又はその殆んどが重亜硫酸修飾によって一旦ウラシルに転換され、この転換されたウラシルは、これを含む一本鎖DNAを増幅すると、チミンとして複製される。
【0040】
そこで、基本的に、いずれかのCpG領域中のシトシンが重亜硫酸修飾の後にシトシンである場合にのみ前記hMLH1をコードする遺伝子に結合し、前記いずれかのCpG領域CpG領域中のシトシンが重亜硫酸修飾の後にウラシルに変換されれば前記hMLH1をコードする遺伝子に結合しなくなるプライマー(メチル化シトシン特異的プライマー、以下適宜「メチル化特異的プライマー」という。)と、前記いずれかのCpG領域CpG領域中のシトシンが重亜硫酸修飾の後にシトシンのままであっても、ウラシル(遺伝子増幅により増幅されたオリゴヌクレオチドにおいては、このウラシルの部位(位置)にはチミンが置かれる。)に転換されても、前記hMLH1をコードする遺伝子に結合し、前記シトシンの存在するCpG領域を含む領域で核酸増幅によりオリゴヌクレオチドを形成するプライマー(メチル化シトシン非特異的プライマー、以下適宜「メチル化非特異的プライマー」という。)との少なくとも2種を、これらの両方の各々と対になって前記CpG領域を含む領域を増幅し得る別のメチル化非特異的プライマーとともに用いて、核酸増幅方法にて増幅した産物を検出すると、前記メチル化されたシトシンを含む遺伝子に対しては、メチル化特異的プライマーとメチル化非特異的プライマー由来の2種の増幅産物が検出されるが、メチル化されていないシトシンのみを含む遺伝子に対しては、メチル化非特異的プライマー由来の1種の増幅産物のみが検出される。よって、検出される増幅産物の違いに基づいて、前記CpG領域のメチル化の有無を識別することができる。
【0041】
本発明においては、メチル化特異的プライマーであれ、メチル化非特異的プライマーであれ、プライマーが少なくとも1つのCpG領域(そのCpG領域中にメチル化シトシンが存在する)を含むオリゴヌクレオチドを選択する。ここで、「プライマーが少なくとも1つのCpG領域を含むオリゴヌクレオチドを選択する」とは、そのプライマーが核酸中の前記少なくとも1つのCpG領域を含むオリゴヌクレオチドの領域に結合し、前記少なくとも1つのCpG領域を含むオリゴヌクレオチドを含む核酸を鋳型として、核酸増幅により前記CpG領域に対応する領域(一般には前記CpG領域に対して相補的である。)を含む核酸を形成することをいう。したがって、プライマーと、そのプライマーが選択する(即ち結合する)オリゴヌクレオチドとは、基本的に互いに相補的な配列を有する。
【0042】
本発明においては、メチル化特異的プライマーは、検出しようとするメチル化シトシンの存在するCpG領域に結合するように設計される。一方、メチル化非特異的プライマーは、前記メチル化シトシンの存在するCpG領域に結合しないように設計されるが、前記メチル化シトシンの存在するCpG領域に結合するものとなってもよい。
【0043】
本発明においては、配列番号1で表されるhMLH1をコードする遺伝子(一本鎖DNA)のプロモーター領域中で、塩基番号1031から1216の間の領域(以下、この領域を適宜「5’領域」若しくは「5’region」という。)のCpG領域のシトシンのメチル化の有無を識別できるプライマーセットと、塩基番号1369から1600の間の領域(以下この領域を適宜「CCAAT領域」若しくは「CCAAT region」という。)のCpG領域のシトシンのメチル化の有無を識別できるプライマーセットが見出された。特に、CCAAT領域のシトシンのメチル化はhMLH1の発現に深く関与している可能性があるので、後者のプライマーセットは、HNPCCの診断において重要であると考えられる。
【0044】
図1に、散発性大腸癌と診断された試料とHNPCCと診断された試料についてCCAAT領域において重亜硫酸処理をして核酸増幅した部分の塩基配列を示す。図中、CCAAT boxの上流の矢印で示される位置の塩基は、散発性MSI+大腸癌の試料では、いずれもシトシンとして検出されているのに対して、HNPCCの試料では、いずれもチミンとして検出されている。即ち、散発性大腸癌の試料では、いずれもこの部位のシトシンがメチル化されているため、重亜硫酸処理の後もシトシンのまま存在し、シトシンとして検出されるのに対して、HNPCCの試料では、いずれもこの部位のシトシンがメチル化されていないため、重亜硫酸処理の後に一旦ウラシルに転換され、核酸増幅の後にチミンとして検出されている。
(プライマーとプライマー用のオリゴヌクレオチド)
本発明においては、メチル化特異的プライマーは、メチル化解析の対象となるhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域のCpG領域中のシトシンに対応する部位のみがシトシンに対応した塩基であり、前記プロモーター領域中のそれ以外のシトシンに対応する部位は、ウラシル若しくはチミンに対応するように設計される。メチル化特異的プライマーは、擬陽性を低減させるためには、好ましくは2ヵ所以上のCpG領域を含むように設計する。一方、メチル化非特異的プライマーは、hMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域のCpG領域のシトシンがウラシル若しくはチミンに転換された配列、シトシンのままの配列の双方に対応するように設計される。
【0045】
一般に、メチル化特異的PCRでは、プライマー配列と重亜硫酸修飾後のDNA配列とが完全に相補的にアニーリングしたときにのみDNAの増幅が起こり、プライマー配列と重亜硫酸修飾後のDNA配列との間に1塩基以上のミスマッチが存在するときにはDNAの増幅がおこらないようにプライマー及びPCRの反応系を設計する。このことによって、メチル化特異的PCRでは、1塩基のメチル化の有無も識別することができる。
【0046】
本発明においてプライマーとして使用されるオリゴヌクレオチドは、各種の核酸合成反応において必要な特異性を維持しながら相補鎖との塩基対結合を行うことができる。
【0047】
具体的には、プライマーは、以下の1)〜10)のいずれか1に記載のオリゴヌクレオチドのうち少なくとも1つを選択する核酸増幅用プライマーである。
1)配列番号1で表されるhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列からなるオリゴヌクレオチド。このオリゴヌクレオチドは、例えば、生体試料から採取した遺伝子の2本鎖DNAのうちの重亜硫酸修飾後による1本鎖DNA由来のものである。メチル化特異的プライマーはこのオリゴヌクレオチドを選択し得るが、このオリゴヌクレオチドを選択するプライマーは、メチル化特異的プライマーに限られず、メチル化非特異的プライマーであってもよい。
2)配列番号1で表されるhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチド。このオリゴヌクレオチドは、1)で表されるオリゴヌクレオチドを含む核酸を鋳型として、核酸増幅したときに形成される増幅物の有する塩基配列の一部と同じ塩基配列を有する。前記増幅物は、核酸増幅の次の段階で鋳型として用いられる。メチル化特異的プライマーはこのオリゴヌクレオチドを選択し得るが、このオリゴヌクレオチドを選択するプライマーは、メチル化特異的プライマーに限られず、メチル化非特異的プライマーであってもよい。
3)配列番号1で表されるhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン及びCpG領域以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列からなるオリゴヌクレオチド。このオリゴヌクレオチドは、生体試料から採取した遺伝子の2本鎖DNAのうちの重亜硫酸修飾後による1本鎖DNA由来のものである。このオリゴヌクレオチドを選択するプライマーはメチル化非特異的プライマーとされる。
4)配列番号1で表されるhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン及びCpG領域以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチド。このオリゴヌクレオチドは、3)で表されるオリゴヌクレオチドを含む核酸を鋳型として、核酸増幅したときに形成される増幅物の有する塩基配列の一部と同じ塩基配列を有する。前記増幅物は、核酸増幅の次の段階で鋳型として用いられる。このオリゴヌクレオチドを選択するプライマーはメチル化非特異的プライマーとされる。
5)配列番号2〜7に表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド。プライマーが別のプライマーを認識して結合すれば、核酸増幅に好適である。
6)配列番号1で表されるhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域の配列の相補鎖におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列からなるオリゴヌクレオチド。このオリゴヌクレオチドは、例えば、生体試料から採取した遺伝子の2本鎖DNAのうちの1)において示した1本鎖DNAに相補的に結合していた1本鎖(反対鎖)DNA由来のものである。メチル化特異的プライマーはこのオリゴヌクレオチドを選択し得るが、このオリゴヌクレオチドを選択するプライマーは、メチル化特異的プライマーに限られず、メチル化非特異的プライマーであってもよい。
7)配列番号1で表されるhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域の配列の相補鎖におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチド。このオリゴヌクレオチドは、6)で表されるオリゴヌクレオチドを鋳型として、核酸増幅したときに形成される増幅物の有する塩基配列と同じ塩基配列を有する。前記増幅物は、核酸増幅の次の段階で鋳型として用いられる。メチル化特異的プライマーはこのオリゴヌクレオチドを選択し得るが、このオリゴヌクレオチドを選択するプライマーは、メチル化特異的プライマーに限られず、メチル化非特異的プライマーであってもよい。
8)配列番号1で表されるhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域の配列の相補鎖におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン及びCpG領域以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列からなるオリゴヌクレオチド。このオリゴヌクレオチドは、例えば、生体試料から採取した遺伝子の2本鎖DNAのうちの3)において示した1本鎖DNAに相補的に結合していた1本鎖(反対鎖)DNA由来のものである。このオリゴヌクレオチドを選択するプライマーはメチル化非特異的プライマーとされる。
9)配列番号1で表されるhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域の配列の相補鎖におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン及びCpG領域以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチド。このオリゴヌクレオチドは、8)で表されるオリゴヌクレオチドを鋳型として、核酸増幅したときに形成される増幅物の有する塩基配列と同じ塩基配列を有する。前記増幅物は、核酸増幅の次の段階で鋳型として用いられる。このオリゴヌクレオチドを選択するプライマーはメチル化非特異的プライマーとされる。
10)前記1)から9)のいずれか1に記載のオリゴヌクレオチドのうち1又は複数のオリゴヌクレオチドについて、1ないし複数個の塩基が置換、欠失、挿入若しくは付加といった変異された塩基配列を含み、CpG領域のシトシンのメチル化を検出可能なプライマー機能を有するオリゴヌクレオチド。
【0048】
より具体的には、ある実施態様においては、5’領域中のCpG領域のシトシンのメチル化の有無を識別するために用いられるメチル化特異的プライマーは、5’領域中の少なくとも1つのCpG領域中のシトシン以外のシトシンをウラシル又はチミンに変換した配列を持ったオリゴヌクレオチドを選択するものである。
【0049】
詳しくは、このプライマーは、5’領域中の前記少なくとも1つのCpG領域中のシトシンは重亜硫酸修飾後もシトシンのままで存在して、5’領域中の前記少なくとも1つのCpG領域中のシトシン以外のシトシンは、重亜硫酸修飾後にウラシルに変換されても(遺伝子増幅により増幅されたオリゴヌクレオチドにおいては、このウラシルの部位にはチミンが置かれる)、変換されずにシトシンのままで存在しても、その配列をもったオリゴヌクレオチドを選択するものである。
【0050】
本実施形態においては、5’領域中のCpG領域のシトシンのメチル化の有無を識別するために用いられるメチル化特異的プライマーとしては、配列番号3で表されるオリゴヌクレオチドがある。このプライマーは、hMLH1タンパク質をコードする遺伝子の塩基配列1097から1118の部位を認識して、その遺伝子に結合する。
【0051】
5’領域中のCpG領域のシトシンのメチル化の有無を識別するために用いられるメチル化非特異的プライマーは、5’領域中におけるCpG領域以外の領域に結合するように設計されることが好ましい。もし、CpG領域を含む領域に結合するようにせざるを得ない場合には、前記CpG領域中のシトシンのメチル化の有無によらず、前記CpG領域を含む領域に結合するように設計されるものである。
【0052】
詳しくは、このメチル化非特異的プライマーは、5’領域中におけるCpG領域以外の領域に結合するように設計されることが好ましい。もし、CpG領域を含む領域に結合するようにせざるを得ない場合には、前記CpG領域中のシトシンのメチル化の有無に影響を受けないように、すなわち、CpG領域中のシトシンがウラシルに変換された場合、また、シトシンのまま変換されない場合の双方の配列を増幅するように設計されることが好ましい。具体的には、前記CpG領域中のシトシンの部位に対応するメチル化非特異的プライマーの部位に混合塩基、又はイノシン3リン酸(ITP)由来のイノシン(ヒポキサンチン)を配置した塩基配列からなるオリゴヌクレオチドがこの種のメチル化非特異的プライマーである。
【0053】
本実施形態においては、5’領域中のCpG領域のシトシンのメチル化の有無を識別するために用いられるメチル化非特異的プライマーとしては、配列番号2又は4で表されるオリゴヌクレオチドがある。配列番号2で表されるプライマーは、hMLH1タンパク質をコードする遺伝子の塩基配列1031から1055の部位を認識して、その遺伝子に結合する。また、配列番号4で表されるプライマーは、hMLH1タンパク質をコードする遺伝子の塩基配列1191から1216の部位を認識して、その遺伝子に結合する。
【0054】
上記配列番号3で表されるメチル化特異的プライマーと、配列番号2で表されるメチル化非特異的プライマーと、配列番号4で表されるメチル化非特異的プライマーとの合計3種のプライマーセットを用いれば、5’領域中のCpG領域のシトシンのメチル化の有無を識別できる。
【0055】
即ち、図2の模式図に示されるように、5’領域において、メチル化特異的プライマーである配列番号3で表される5’−MSプライマー(メチル化特異的上流プライマー)と、メチル化非特異的プライマーである配列番号2で表される5’−Sプライマー(メチル化非特異的上流プライマー)と、メチル化非特異的プライマーである配列番号4で表される5’−ASプライマー(メチル化非特異的下流プライマー)の3種のプライマーを用いて、核酸増幅法にて核酸を増幅する。そのとき、このCpG領域のシトシンがメチル化された試料においては、5’−MSプライマーも含めた3種のプライマーがすべて遺伝子に結合する。そして、5’−MSプライマーと5’−ASプライマーから核酸増幅して形成される118塩基のメチル化断片と、5’−Sプライマーと5’−ASプライマーから核酸増幅して形成される184塩基の非メチル化断片の2つのDNA断片が形成される。一方、このCpG領域のシトシンがメチル化されていない試料においては、5’−MSプライマーを除いた2種のプライマーのみが遺伝子に結合するため、結果的に、5’−Sプライマーと5’−ASプライマーから核酸増幅して形成される184塩基の非メチル化断片のみが形成される。よって、検出される増幅産物の違いに基づいて、前記CpG領域のメチル化の有無を識別することができる。
【0056】
また、別の実施態様によれば、CCAAT領域中のCpG領域のシトシンのメチル化の有無を識別するために用いられるメチル化特異的プライマーは、CCAAT領域中の少なくとも1つのCpG領域中のシトシン以外のシトシンをウラシル又はチミンに変換した配列を持ったオリゴヌクレオチドを選択する(即ち、前記オリゴヌクレオチドに結合する)ものである。
【0057】
詳しくは、このプライマーは、CCAAT領域中の前記少なくとも1つのCpG領域中のシトシンは重亜硫酸修飾後もシトシンのままで存在して、CCAAT領域中の前記少なくとも1つのCpG領域中のシトシン以外のシトシンは、重亜硫酸修飾後にウラシルに変換されても(遺伝子増幅により増幅されたオリゴヌクレオチドにおいては、このウラシルの部位にはチミンが置かれる)、変換されずにシトシンのままで存在しても、その配列をもったオリゴヌクレオチドを選択するものである。
【0058】
本実施形態においては、CCAAT領域中のCpG領域のシトシンのメチル化の有無を識別するために用いられるメチル化特異的プライマーとしては、配列番号6で表されるオリゴヌクレオチドがある。このプライマーは、hMLH1タンパク質をコードする遺伝子の塩基配列1479から1502の部位を認識して、その遺伝子に結合する。
【0059】
CCAAT領域中のCpG領域のシトシンのメチル化の有無を識別するために用いられるメチル化非特異的プライマーは、CCAAT領域中におけるCpG領域以外の領域に結合するように設計されることが好ましい。もし、CpG領域を含む領域を認識してその領域に結合するようにせざるを得ない場合には、前記CpG領域中のシトシンのメチル化の有無によらず、前記CpG領域を含む領域に結合するように設計されるものである。
【0060】
詳しくは、このメチル化非特異的プライマーは、CCAAT領域中におけるCpG領域以外の領域に結合するように設計されることが好ましい。もし、CpG領域を含む領域に結合するようにせざるを得ない場合には、前記CpG領域中のシトシンのメチル化の有無に影響を受けないように、すなわち、CpG領域中のシトシンがウラシルに変換された場合、また、シトシンのまま変換されない場合の双方の配列を増幅するように設計されることが好ましい。具体的には、前記CpG領域中のシトシンの部位に対応するメチル化非特異的プライマーの部位に混合塩基、又はイノシン3リン酸(ITP)由来のイノシン(ヒポキサンチン)を配置した塩基配列からなるオリゴヌクレオチドがこの種のメチル化非特異的プライマーである。
【0061】
本実施形態においては、CCAAT領域中のCpG領域のシトシンのメチル化の有無を識別するために用いられるメチル化非特異的プライマーとしては、配列番号5又は7で表されるオリゴヌクレオチドがある。配列番号5で表されるプライマーは、hMLH1タンパク質をコードする遺伝子の塩基配列1368から1394の部位を認識して、その遺伝子に結合する。また、配列番号7で表されるプライマーは、hMLH1タンパク質をコードする遺伝子の塩基配列1575から1600の部位を認識して、その遺伝子に結合する。
【0062】
上記配列番号6で表されるメチル化特異的プライマーと、配列番号5で表されるメチル化非特異的プライマーと、配列番号7で表されるメチル化非特異的プライマーとの合計3種のプライマーセットを用いれば、CCAAT領域中のCpG領域のシトシンのメチル化の有無を識別できる。
【0063】
即ち、図2の模式図に示されるように、CCAAT領域において、メチル化特異的プライマーである配列番号6で表されるCCAAT−MSプライマー(メチル化特異的上流プライマー)と、メチル化非特異的プライマーである配列番号5で表されるCCAAT−Sプライマー(メチル化非特異的上流プライマー)と、メチル化非特異的プライマーである配列番号7で表されるCCAAT−ASプライマー(メチル化非特異的下流プライマー)の3種のプライマーを用いて、核酸増幅法にて核酸を増幅する。そのとき、このCpG領域のシトシンがメチル化された試料においては、CCAAT−MSプライマーも含めた3種のプライマーがすべて遺伝子に結合する。そして、CCAAT−MSプライマーとCCAAT−ASプライマーから核酸増幅して形成される122塩基のメチル化断片と、CCAAT−SプライマーとCCAAT−ASプライマーから核酸増幅して形成される232塩基の非メチル化断片の2つのDNA断片が形成される。一方、このCpG領域のシトシンがメチル化されていない試料においては、CCAAT−MSプライマーを除いた2種のプライマーのみが遺伝子に結合するため、結果的に、CCAAT−SプライマーとCCAAT−ASプライマーから核酸増幅して形成される232塩基の非メチル化断片のみが形成される。よって、検出される増幅産物の違いに基づいて、前記CpG領域のメチル化の有無を識別することができる。
【0064】
プライマーオリゴヌクレオチドは、公知の方法により製造することができ、例えば、リン酸トリエステル法や、リン酸アミダイト法、リン酸基部位無保護法といった固相化学的合成法を用いることができる。具体的には、オリゴヌクレオチド合成装置(Applied Biosystem社製、Expedite Model 8909)等を用いて合成することができる。また、1ないし複数個の塩基を置換、欠失、挿入若しくは付加といった変異させたオリゴヌクレオチドも公知の固相化学的合成法で合成することができる。
(プライマーセット)
本発明のプライマーセットは、上述の本発明のプライマーを2つ以上、好ましくは少なくとも3つ含む。この少なくとも3つのプライマーは、
a)解析対象遺伝子中の少なくとも1つの検出対象CpG領域を含む部分が増幅されるように選択され、かつCpG領域中のシトシンが前記修飾剤による修飾の後にシトシンのままであっても、ウラシル又はチミンに転換されても、前記解析対象遺伝子に結合する、1対のメチル化非特異的プライマー、及び
b)前記検出対象CpG領域中のシトシンが前記修飾剤による修飾の後にシトシンである場合にのみ前記解析対象遺伝子に結合し、前記検出対象CpG領域中のシトシンが前記修飾剤による修飾の後にウラシル又はチミンに変換されれば前記解析対象遺伝子に結合しない、少なくとも1つのメチル化シトシン特異的プライマー
であると好都合である。
【0065】
解析対象遺伝子がhMLH1である実施態様について説明すれば、本発明で組織中のhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域の中にある5’領域又はCCAAT領域におけるCpG領域におけるシトシンのメチル化の有無を識別するために用いられる核酸増幅用プライマーセットにおいては、少なくとも1つのメチル化シトシン非特異的プライマーの融解温度を、メチル化シトシン特異的プライマーの融解温度より1〜5℃高くなるようにプライマーを設計することが好ましい。また、いずれのメチル化シトシン非特異的プライマーの融解温度も、いずれのメチル化シトシン特異的プライマーの融解温度より1〜5℃高くなるようにプライマーを設計するとより好ましい。ここに、プライマーの融解温度とは、プライマーがオリゴヌクレオチドに結合する至適温度のことをいう。このように、プライマーを設計した後、核酸増幅のアニーリング時の温度を、いずれかのメチル化シトシン非特異的プライマーの融解温度よりも低く、またメチル化シトシン特異的プライマーの融解温度より高くすれば、あるCpG領域中のシトシンが重亜硫酸修飾の後にシトシンでないにもかかわらず、メチル化特異的プライマーが鋳型のオリゴヌクレオチドと結合して、擬陽性の結果を生ずることを防止することができるからである。また、このようにプライマーを設計すればメチル化の有無を考慮しない、PCRにおけるコントロール産物(すなわち、2種類のメチル化非特異的プライマーにより合成される産物)を検出しやすくなる。
【0066】
本発明で組織中のhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域の中にあるCCAAT領域におけるCpG領域におけるシトシンのメチル化の有無を識別するために用いられる核酸増幅用プライマーセットにおいては、プライマー同士のGC含有率の差を20%以内にすることが好ましい。ここに、プライマーのGC含有率とは、プライマーの全塩基配列中グアニンとシトシンを合わせた塩基数の割合のことをいう。例えば、それぞれ100塩基からなる2つのプライマーがあり、1つ目のプライマーのGCの数が45で、もう1つのプライマーのGCの数が50であればGC含有率の差は5%であるとされる。このとき、プライマーのGC含有率は、メチル化シトシン特異的プライマーを低くするとよい。このように、プライマーを設計すれば、擬陽性の結果を生ずることを防止することができ、かつ再現性のよい結果を得やすくなるので好ましい。
(検査方法)
本発明における検査方法は、具体的には、試料の準備、DNAの抽出、DNAの修飾、プライマーを用いた遺伝子増幅、DNAの検出の過程を含む。
【0067】
(検査用試料・病理検体の準備)
本発明の検査方法に供される、ヒトの試料はhMLH1タンパク質をコードする遺伝子を含むものであればよく、特に限定されない。具体的には、生体から採取した組織の他、血液、血清、糞便、精液、唾液、脳脊髄液等が挙げられる。生体から採取した組織としては、例えば、手術により切除した大腸癌の組織や、手術前の内視鏡検査等に用いる生体検査材料等が、試料の有効利用の点で好適に用いられる。
【0068】
(DNAの抽出)
本発明の検査方法に供される、ヒトの試料は、ブレンダーを用いて組織を破砕し、次いで、フェノール・クロロフォルム法等の公知の遺伝子抽出法により、DNAを抽出し、検査用試料として用いる。
【0069】
(DNAの修飾)
前記DNAは重亜硫酸塩によって修飾される。これにより、メチル化されたシトシンは、シトシンのまま存在するが、メチル化されていないシトシンは、一旦ウラシルに転換された後、チミンとして発現することになる。本発明に使用される重亜硫酸塩は特に限定されないが、重亜硫酸ナトリウムが好適に用いられる。また、上記のような重亜硫酸塩と同等の機能を有するものを修飾剤として用いることができる。
【0070】
さらに具体的には、例えば、まず、200pgから50μgのDNAをアルカリ条件下にて変性させる。変性の条件は、PCRの測定系に適した条件であればよいが、例えば、0.2M〜0.3MのNaOH溶液中にて、37℃で5〜30分インキュベートする。次いで、ハイドロキノン溶液及びpH5.0の重亜硫酸ナトリウム溶液を終濃度がそれぞれ0.5mM及び3.1mMになるように添加し、50〜55℃にて16〜40時間インキュベートすることで、非メチル化シトシンが修飾される。さらに、段階的な透析を行うことで余剰の重亜硫酸を除去する。透析された試料は、真空オーブンによる濃縮又はエタノール沈殿の後、適当な緩衝液又は純水に溶解し、通常のPCR又はメチル化特異的PCRに用いることができる。
【0071】
(遺伝子・核酸増幅)
本発明において、遺伝子増幅方法としては、公知の方法を使用することができ、例えば、PCR法、NASBA法、LAMP法等が挙げられる。好ましくは、PCR法が用いられる。
【0072】
PCR法により増幅された産物の塩基配列を決定する方法としては、Frommer et.al.(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89,1827−1831(1992))及びClark et.al.(Nucleic Acids Research 22,2990−2997(1994))等の方法がある。
【0073】
(DNAの検出)
メチル化特異的PCRによって増幅されたDNAの検出は、例えば、一般的なアガロースゲル又はポリアクリルアミドゲル電気泳動の後、DNAの染色によって行われる。染色方法としては、銀染色による方法、エチジウムブロマイド、SYBRR Green等の蛍光性染色剤等による方法がある。また、電気泳動以外の方法として、5’エキソヌクレアーゼアッセイや蛍光共鳴エネルギー転移を利用したホモジニアス検出も可能である。
【0074】
(MSI分析)
本発明の検査方法は、まず、マイクロサテライト反復配列分析(MSI分析)を行って、マイクロサテライト不安定性(MSI+)を示す散発性MSI+大腸癌とHNPCCの検体を識別(スクリーニング)した後に用いれば、hMLH1をコードする遺伝子の変異に基づく前記MSI+が、散発性MSI+大腸癌であるか、HNPCCであるかを、より精度よく識別することできる。MSI分析は、例えば、癌細胞の遺伝子と正常細胞の遺伝子とでマイクロサテライト領域を含む領域をPCR増幅し、電気泳動によって増幅産物の鎖長を調べることにより解析できる。即ち、癌細胞の遺伝子と正常細胞の遺伝子とでは、増幅産物の鎖長が異なるので、これを基に塩基配列を決定し、マイクロサテライトが不安定である(MSI+)か、安定である(MSI−又はMSS)かを判定できる。
【0075】
(hMLH1の免疫染色)
本発明の検査方法は、前記MSI分析に加えて、hMLH1の免疫染色分析(IHC)を組み合わせることにより、前記CpG領域のメチル化の有無を識別できて、hMLH1をコードする遺伝子の変異が、散発性大腸癌であるか、HNPCCであるかをさらに精度よく識別することできる。図3に示すように、hMLH1の免疫染色分析においては、CpG領域がメチル化されていれば、hMLH1が発現されにくくなり、免疫染色において陰性となる率が高くなる。一方、CpG領域がメチル化されていなければ、hMLH1は発現されやすくなるので、免疫染色において陽性となる率が高くなる。hMLH1の免疫染色分析においては、抗体としてhMLH1のモノクローナル抗体を用い、色素としてダイアミノベンチジン(diaminobenzidine)を用いるのが好適である。
【0076】
(生体試料の判定)
本発明において、メチル化特異的PCR検査を実施すると、MSI+を示す散発性大腸癌の検体においては、5’領域とCCAAT領域の2箇所において、シトシンのメチル化が80%以上の高い割合で検出されるのに対して、MSI+を示すHNPCCの検体においては、5’領域とCCAAT領域の2箇所において、シトシンのメチル化が20%以下の低い割合で検出される。よって、hMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域におけるCpG領域のシトシンのメチル化の有無を識別することで、散発性MSI+大腸癌とHNPCCを識別することができる。
【0077】
(検査用試薬及び検査用試薬キット)
本発明はまた、組織中のhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域におけるCpG領域におけるCpGのシトシンのメチル化の有無を散発性大腸癌と遺伝性非腺腫大腸癌の判定のための指標とする検査方法に用いられる検査試薬及び検査試薬キットを含む。検査試薬としては、メチル化特異的核酸増幅用のプライマー、エキソヌクレア−ゼ、核酸検出用の標識等、本発明の方法に使用されるあらゆる試薬のいずれであってもよい。
【0078】
また、検査用試薬キットは、本発明の検査方法に使用されるあらゆる試薬のうち少なくとも2以上をキットとして使用するものであればよい。例えば、hMLH1をコードする遺伝子(DNA)のプロモーター領域中のCpG領域のメチル化特異的プライマーとメチル化非特異的プライマーセット等が例示される。その他、蛍光標識をプローブしたDNAも本キットに含めてもよい。
【実施例】
【0079】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
採取された大腸癌234症例の組織試料について、MSI分析を行い、MSI+とMSI−の2種類に大腸癌を分類した。MSI分析は、公知の手法にしたがって行った。
【0080】
MSI+、MSI−と診断された癌患者について、hMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域の5’領域中及びCCAAT領域中の2箇所のCpG領域のシトシンのメチル化の有無を調べた。具体的には以下のようにして行った。この実施例の方法の概要、即ちこの実施例において使用したプライマー及び増幅産物の関係、及び結果の判定の概略を図2に示す。
【0081】
1.試料の用意
生体試料からDNAを通常のフェノール・クロロホルム法で抽出した。生体試料より抽出したDNA 100ngに、DNA修飾キット「CpGenome(Intergen社)」を用いて重亜硫酸ナトリウムによる非メチル化シトシンの修飾を行った。
【0082】
2−A 5’領域のCpG領域のシトシンのメチル化の検出
上記1.のように用意した重亜硫酸修飾済みのDNAの一部に対してメチル化特異的PCR及びメチル化非特異的PCRを実施した。重亜硫酸修飾済みのDNA(鋳型)を、1×PCR緩衝液(15mM MgClを含む)、1.25ユニットのDNAポリメラーゼ「HotStarTaq DNA Polymerase(Qiagen社)」、各々200μMのdATP、dGTP、dTTP及びdCTP、及び2μMプライマー(後述)を含む50μLのPCR反応液に加え、5’領域のメチル化の検出のために、95℃/0.5分、54℃/0.5分、72℃/0.5分、35サイクルのPCR反応を実施した。
【0083】
本実施例においては、hMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域の5’領域のCpG領域のシトシンのメチル化を検出するためのメチル化特異的なプライマーとしては、配列番号1で表されるhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域の5’領域のCpG領域以外にあるシトシン以外のすべてのシトシンをチミン又はウラシルに変換した配列及びその相補鎖から、下記のオリゴヌクレオチドを選択した(以下、塩基番号は配列番号1中の対応する塩基の番号を表す)。
【0084】
メチル化特異的上流プライマー(5’−MSプライマー)
(塩基番号1097−1118)(配列番号3)
5’−CGTTCGTCGTTCGTTCGTTATATATC−3’
また、hMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域の5’領域のCpG領域のシトシンのメチル化を検出するためのメチル化非特異的なプライマーとしては、配列番号1で表されるhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域の5’領域のCpG領域にあるすべてのシトシンをチミン又はウラシルに変換した配列及びその相補鎖から、下記のオリゴヌクレオチドを選択した。
【0085】
メチル化非特異的上流プライマー(5’−Sプライマー)
(塩基番号1031−1055)(配列番号2)
5’−TTTTTTTTAGGAGTGAAGGAGGTTA−3’
メチル化非特異的下流プライマー(5’−ASプライマー)
(塩基番号1191−1216)(配列番号4)
5’−CRATAAAACCCTATACCTAATCTATC−3’
なお、配列番号4中の2番目のRは、アデニンA又はグアニンG(つまりプリン)を表す。
【0086】
例えば、5’−Sプライマー及び5’−ASプライマーのペアによりhMLH1をコードする遺伝子の5’領域のDNAが増幅され、図2に示される184塩基のDNA断片(「No−specific fragment」)が検出されるが、5’−MSプライマー及び5’−ASプライマーのペアによりhMLH1をコードする遺伝子の5’領域のDNAが増幅されず、図2に示される118塩基のDNA断片(「Methylated fragment」)が検出されない場合には、前記プライマーで増幅される領域中にメチル化されたシトシンが存在しないか、存在しても検出限界を下回るほど微量であり、メチル化は陰性と判断した。
【0087】
一方、5’−Sプライマー及び5’−ASプライマーのペアによりhMLH1をコードする遺伝子の5’領域のDNAが増幅され、図2に示される184塩基のDNA断片が検出され、5’−MSプライマー及び5’−ASプライマーのペアによりhMLH1をコードする遺伝子の5’領域のDNAも増幅され、図2に示される118塩基のDNA断片も検出される場合には、前記プライマーで増幅される領域中にメチル化されたシトシンとメチル化されていないシトシンが共存していると考えられ、この場合、メチル化は陽性と判断した。
【0088】
2−B CCAAT領域のCpG領域のシトシンのメチル化の検出
上記1.のように用意した重亜硫酸修飾済みのDNAの一部に対してメチル化特異的PCR及びメチル化非特異的PCRを実施した。重亜硫酸修飾済みのDNA(鋳型)を、1×PCR緩衝液(15mM MgClを含む)、1.25ユニットのDNAポリメラーゼ「HotStarTaq DNA Polymerase(Qiagen社)」、各々200μMのdATP、dGTP、dTTP及びdCTP、及び2μMプライマー(後述)を含む50μLのPCR反応液に加え、CCAAT領域のメチル化の検出のために、95℃/0.5分、58℃/0.5分、72℃/0.5分、35サイクルのPCR反応を実施した。
【0089】
本実施例においては、hMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域のCCAAT領域のCpG領域のシトシンのメチル化を検出するためのメチル化特異的なプライマーとしては、配列番号1で表されるhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域のCCAAT領域のCpG領域以外にあるシトシン以外のすべてのシトシンをチミン又はウラシルに変換した配列及びその相補鎖から、下記のオリゴヌクレオチドをプライマーとして選択した。
【0090】
メチル化特異的上流プライマー(CCAAT−MSプライマー)
(塩基番号1479−1502)(配列番号6)
5’−YGTATTTTTCGAGTTTTTAAAAAC−3’
なお、配列番号6中の1番目のYはシトシンC又はチミンT(つまりピリミジン)を表す。
【0091】
また、hMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域のCCAAT領域のCpG領域のシトシンのメチル化を検出するためのメチル化非特異的なプライマーとしては、配列番号1で表されるhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域のCCAAT領域のCpG領域にあるすべてのシトシンをチミン又はウラシルに変換した配列及びその相補鎖から、下記のオリゴヌクレオチドを選択した。
【0092】
メチル化非特異的上流プライマー(CCAAT−Sプライマー)
(塩基番号1369−1394)(配列番号5)
5’−GAGGAGGAGTTTGAGAAGIGTTAAGT−3’
メチル化非特異的下流プライマー(CCAAT−ASプライマー)
(塩基番号1575−1600)(配列番号7)
5’−TAAATCTCTTCITCCCTCCCTAAAAC−3’
なお、配列番号7中の12番目のIはイノシン3リン酸(ITP)由来のイノシン(ヒポキサンチン)である。
【0093】
例えば、CCAAT−Sプライマー及びCCAAT−ASプライマーのペアによりhMLH1をコードする遺伝子のCCAAT領域のDNAが増幅され、図2に示される232塩基のDNA断片(「No−specific fragment」)が検出されるが、CCAAT−MSプライマー及びCCAAT−ASプライマーのペアによりhMLH1をコードする遺伝子のCCAAT領域のDNAが増幅されず、図2に示される122塩基のDNA断片(「Methylated fragment」)が検出されない場合には、前記プライマーで増幅される領域中にメチル化されたシトシンが存在しないか、存在しても検出限界を下回るほど微量であり、メチル化は陰性と判断した。
【0094】
一方、CCAAT−Sプライマー及びCCAAT−ASプライマーのペアによりhMLH1をコードする遺伝子のCCAAT領域のDNAが増幅され、図2に示される232塩基のDNA断片が検出され、CCAAT−MSプライマー及びCCAAT−ASプライマーのペアによりhMLH1をコードする遺伝子のCCAAT領域のDNAも増幅され、図2に示される122塩基のDNA断片も検出される場合には、前記プライマーで増幅される領域中にメチル化されたシトシンとメチル化されていないシトシンが共存していると考えられ、この場合、メチル化は陽性と判断した。
【0095】
3.hMLH1タンパクの免疫染色法
免疫染色は、合計75例の試料について行った。
【0096】
定法にしたがってホルマリン固定し、パラフィンに包埋した組織試料に、Tyramide Signal Amplification Biotin System(Perkin Elmer,Boston,MA)を使用した。
【0097】
4.遺伝子修復タンパク質遺伝子の変異分析(mutation analysis)
hMLH1、hMSH2、hPMS1、hPMS2、及びhMSH6の5個の遺伝子変異分析は、MSI+と診断された35例の試料についてダイレクトシーケンス法及び免疫染色法によって行った。
【0098】
5.結果
上記の手法により、234症例の大腸癌全体に対して検討を行った。MSI分析の結果、234症例の大腸癌は、35例のMSI+癌(HNPCCを含む)及び199例のMSI−癌に分類された。すなわち、35例のMSI+癌(HNPCCを含む)及び199例のMSI−癌の生体試料についてhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域の5’領域とCCAAT領域のCpG領域のシトシンのメチル化及び非メチル化を調べた。
【0099】
その結果を表1に示す。
【0100】
【表1】

5’領域及びCCAAT領域のメチル化は有為に(フィッシャーの正確検定p<0.0001)MSI+癌に認められた。一方、5’領域のメチル化がMSI−癌においても認められたのに対し、CCAAT領域のメチル化はMSI−癌においては一切認められなかった。
【0101】
また、この5’領域及びCCAAT領域のメチル化検出検査におけるMSI+癌のMSI−癌に対する感度及び特異度、陽性尤度比及び陰性尤度比も併せて表1に示す。5’領域及びCCAAT領域のメチル化陽性の場合は共に感度は50%から60%である。これは後述するようにMSI+癌にHNPCC及び散発性MSI+癌が含まれるためである。一方、特異度は、5’領域のメチル化検出では85.9%であるのに対し、CCAAT領域のメチル化検出では100%であった。
【0102】
このことよりCCAAT領域のメチル化検出検査を行うことは、MSI+癌を見逃す(false−negative)可能性が5’領域のメチル化検出よりもやや高いが、特異度が極めて高いため、誤診(false−positive)を避けることが可能であると考えられる。逆に、5’領域のメチル化検出検査を行うことは、false−negativeの可能性がCCAAT領域のメチル化検出よりもやや低いが、特異度がやや劣るため、わずかながらfalse−positiveが生じる可能性を有すると考えられる。いずれの検査も、MSI+癌の発見に有用であることが明らかになった。
【0103】
また、hMLH1タンパクの免疫染色(IHC)との関係を表2に示す。図3に、hMLH1タンパクの免疫染色(IHC)の陽性例及び陰性例を示す。
【0104】
【表2】

免疫染色は合計75症例に対して行われた。5’領域及びCCAAT領域のメチル化はhMLH1タンパク発現との間に強い相関関係を示した(フィッシャーの正確検定p<0.0001)。しかし、5’領域にメチル化を認めた症例25例のうち6症例にhMLH1免疫染色陽性が認められたのに対し、CCAAT領域にメチル化を認めた症例18症例はすべて陰性であった。なお、この免疫染色陰性症例の中にはhMLH1遺伝子に突然変異を持つHNPCC症例も含まれている。このため、5’領域にメチル化を認めない、かつ、hMLH1免疫染色陰性例6症例のうち2症例にhMLH1遺伝子に突然変異を認めた。また、同様にCCAAT領域にメチル化を認めない、かつ、hMLH1免疫染色陰性例7症例のうち、2症例にhMLH1遺伝子に突然変異を認めた(後出の表3、表4参照)。
【0105】
次に、MSI+と診断された35症例に対して検討を行った。MSI+と診断された35症例のうち、散発性大腸癌と診断された19症例と、家族歴の追跡等によりHNPCCと診断された16症例に対して、上記と同様の解析を行った。結果を表3及び表4の左側の欄にそれぞれ示す。
【0106】
【表3】

散発性大腸癌19症例の解析
【0107】
【表4】

HNPCC16症例の解析
表3及び表4において、「M」=メチル化検出、「U」=メチル化検出せず、「n」=陰性、「p」=陽性を表す。
【0108】
表3に示す散発性MSI+大腸癌の19症例においては、5’領域のシトシンのメチル化(「M」)が18症例で見られ、CCAAT領域のシトシンのメチル化(「M」)が16症例で見られた。一方、表4に示すHNPCCの16症例においては、5’領域のシトシンのメチル化は3症例でしか見られず、CCAAT領域のシトシンのメチル化(「M」)も2症例でしか見られなかった。このことから、散発性MSI+大腸癌と5’領域及びCCAAT領域のシトシンのメチル化(「M」)との間には有為な相関関係が認められた(フィッシャーの正確検定p<0.0001)。一方、HNPCCと5’領域及びCCAAT領域のシトシンの非メチル化(「U」)との間にも有為な相関関係が認められることが分かった(フィッシャーの正確検定p<0.0001)。
【0109】
また、表3における散発性MSI+大腸癌の症例No.1からNo.7までの7例の5’領域及びCCAAT領域の核酸増幅の産物を図4(a)に示す。これは、散発性MSI+大腸癌の症例No.1からNo.7までの7例がすべて、5’領域及びCCAAT領域においてメチル化されたシトシンを有したことを示すものである。なお、図4(a)において、「5’region」及び「CCAAT box」の各々について、最上段の「1」〜「7」はぞれぞれ表3における症例No.を示し、その下の段の「T」は腫瘍部分から抽出されたDNAを、「N」はその正常粘膜部分から抽出されたDNAより得られた解析結果を示す。右端の「M」はメチル化DNAのコントロールを、「U」は非メチル化DNAのコントロールを示す。写真の下の「M」は、メチル化シトシンが検出されたことを示す。
【0110】
また、表4におけるHNPCC大腸癌の症例No.3からNo.9までの7例の5’領域及びCCAAT領域の核酸増幅の産物を図4(b)に示す。これは、HNPCC大腸癌の症例No.4と5の2例の5’領域、及びNo.4の1例のCCAAT領域においてメチル化されたシトシンを有したことを示すものである。図4(b)中の記号については上記と同様である。
【0111】
また、上記35症例について、遺伝子修復(MMR)タンパク質であるhMLH1、hMSH2、hPMS1、hPMS2、及びhMSH6の5個について、遺伝子の変異分析(mutation analysis)及びタンパク質の免疫染色分析(IHC)を行った。表3の中央(「Mutation Analysis」の欄及び「IHC of MMR」の欄)に示すように、散発性MSI+大腸癌の19症例においては、遺伝子の変異及びhMLH1以外の遺伝子修復タンパク質の消失を示すデータは現れなかった(空欄は変異又はタンパク質の消失が検出されなかったことを示す)。一方、表4に示すように、HNPCCの16症例においては、比較的多くの症例において、遺伝子の変異とそれによる遺伝子修復タンパク質の消失が見られた。
【0112】
さらに、上記35症例について、大腸癌と関連する他の6種の遺伝子又は遺伝子座、即ち、MINT2、p16、MINT31、CACNA1G、MINT1、p14をコードする遺伝子又は遺伝子座のメチル化の状態を調べた。表3の右側(「Methylation」)の欄に示すように、散発性MSI+大腸癌の19症例においては、どの遺伝子又は遺伝子座においても高い割合でメチル化(「M」)が検出された(表中、「U」は非メチル化を示す)。一方、表4に示すように、HNPCCの16症例においては、どの遺伝子又は遺伝子座においてもメチル化の検出された割合は低かった。
【0113】
この35症例の検査結果のもとに、MSI+大腸癌症例に対してhMLH1をコードする遺伝子の5’領域及びCCAAT領域のメチル化の検出検査におけるMSI+癌のHNPCCに対する感度及び特異度、陽性尤度比及び陰性尤度比を求めた。結果を表5の上2段に示す。
【0114】
【表5】

表5に示すように、MSI+大腸癌において、散発性MSI+大腸癌を見逃さずに検出する場合は、5’領域のメチル化検出検査の方がCCAAT領域のメチル化の検出検査よりも優れていることが感度より示された。一方、散発性MSI+大腸癌を誤診せずに検出する場合は、CCAAT領域のメチル化の検出検査の方が5’領域のメチル化検出検査よりも優れていることが特異度より示された。
【0115】
以上から、目的に応じていずれか一方の検査でも充分有用であるが、双方の検査を行うことにより、MSI+大腸癌患者から散発性MSI+大腸癌患者を精度よく検出することが可能であり、そしてこのMSI+大腸癌患者から散発性MSI+大腸癌患者を識別することによりHNPCC患者を精度よく識別できることが確認された。
【0116】
また、遺伝子修復タンパク質であるhMLH1、hMSH2、hPMS1、hPMS2、及びhMSH6の5個についての免疫染色分析(MMR IHC)において、どれかに陰性(−)を示す症例において、hMLH1をコードする遺伝子の5’領域及びCCAAT領域のメチル化の検出検査におけるMSI+癌のHNPCCに対する感度及び特異度、陽性尤度比及び陰性尤度比を求めた。結果を表5の下2段に示す。
【0117】
表5に示すように、MMR IHC(−)大腸癌において、散発性MSI+大腸癌を見逃さずに検出する場合は、5’領域のメチル化検出検査の方がCCAAT領域のメチル化の検出検査よりも優れていることが感度より示された。一方、散発性MSI+大腸癌を誤診せずに検出する場合は、CCAAT領域のメチル化の検出検査の方が5’領域のメチル化検出検査よりも優れていることが特異度より示された。
【0118】
以上から、遺伝子修復タンパク質であるhMLH1、hMSH2、hPMS1、hPMS2、及びhMSH6の5個の免疫染色分析(MMR IHC)を行った際においても、5’領域及びCCAAT領域のメチル化検出検査を行うことによって、MSI+大腸癌患者から散発性MSI+大腸癌患者を精度よく検出することが可能であり、そしてこのMSI+大腸癌患者から散発性MSI+大腸癌患者を識別することによりHNPCC患者を精度よく識別できることが確認された。
2−C 他の遺伝子のメチル化状態の検出
さらに、MSI+大腸癌症例に対してMINT2、p16、MINT31、CACNA1G、MINT1、p14をコードする遺伝子座及び遺伝子のメチル化の検出感度及び特異度、陽性尤度比及び陰性尤度比を求めた。結果を表6に示す。
【0119】
この例においても散発性MSI+大腸癌患者のHNPCC患者に対するMINT2、p16、MINT31、CACNA1G、MINT1、p14をコードする遺伝子座及び遺伝子のメチル化の検出感度及び特異度は高いことが分かった。
【0120】
【表6】

上記の各実施例に於ける陽性尤度比及び陰性尤度比であるが、陽性尤度比は、感度/(100%−特異度)で算出され、陰性尤度比は(100%−感度)/特異度で算出される。例えばある疾患を検出する検査方法を行うとした場合、その検査前におけるその疾患である可能性(検査前確率)があるとすると、尤度比により、その検査を行った後のその疾患である可能性(検査後確率)を求めることが可能である。よって、陽性尤度比の数値は大きければ大きい程、陰性尤度比の数値は小さければ小さい程、その検査を行った後の診断に誤りがなくなる。上記の各実施例における陽性尤度比はすべて比較的高い値を示し、陰性尤度比はすべて比較的低い値を示した。
【0121】
このように、本実施例によれば、MSI+という表現型を持つ、又はMMR IHC(−)が認められる大腸癌の検体に対し、hMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域の5’領域とCCAAT領域のCpG領域のシトシンのメチル化の検出を行うことにより、散発性MSI+大腸癌を精度よく識別することによって、MSI+という表現型を持つ、又はMMR IHC(−)が認められる大腸癌症例から散発性MSI+大腸癌を除外することにより、HNPCC症例を精度よく識別することができることが確認された。
【0122】
以上説明したように、本発明に係る核酸増幅用プライマー及びこれを用いた遺伝子のメチル化検出方法によれば、解析対象遺伝子中のCpG領域のメチル化の有無を簡便・迅速に検出することができる。特に、大腸癌の検査方法としての態様においては、hMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域中のCpG領域のメチル化の有無を簡便に識別でき、それに基づいて、hMLH1タンパク質の失活がメチル化によるものなのかどうかを判定することが可能である。この判定を行うことにより、散発性MSI+大腸癌であるか、HNPCCであるかを精度よく識別することができる。
【0123】
この出願は、平成15年8月29日出願の日本特許出願、特願2003−209838に基づくものであり、特願2003−209838の明細書及び特許請求の範囲に記載された内容は、すべてこの出願明細書に包含される。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の1)〜10)のいずれか1に記載のオリゴヌクレオチドのうち少なくとも1つを選択する核酸増幅用プライマー:
1)配列番号1で表されるhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
2)配列番号1で表されるhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
3)配列番号1で表されるhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン及びCpG領域以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
4)配列番号1で表されるhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン及びCpG領域以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
5)配列番号2〜7に表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
6)配列番号1で表されるhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域の配列の相補鎖におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
7)配列番号1で表されるhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域の配列の相補鎖におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
8)配列番号1で表されるhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域の配列の相補鎖におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン及びCpG領域以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
9)配列番号1で表されるhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域の配列の相補鎖におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン及びCpG領域以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;及び
10)前記1)から9)のいずれか1に記載のオリゴヌクレオチドの塩基配列中の1ないし複数個の塩基が置換、欠失、挿入若しくは付加といった変異された塩基配列からなり、CpG領域のシトシンのメチル化を検出可能なプライマー機能を有するオリゴヌクレオチド。
【請求項2】
以下の1)〜10)のいずれか1に記載のオリゴヌクレオチドのうち2つ以上を選択する核酸増幅用プライマーセット:
1)配列番号1で表されるhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
2)配列番号1で表されるhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
3)配列番号1で表されるhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン及びCpG領域以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
4)配列番号1で表されるhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン及びCpG領域以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
5)配列番号2〜7に表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
6)配列番号1で表されるhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域の配列の相補鎖におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
7)配列番号1で表されるhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域の配列の相補鎖におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
8)配列番号1で表されるhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域の配列の相補鎖におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン及びCpG領域以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
9)配列番号1で表されるhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域の配列の相補鎖におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン及びCpG領域以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
10)前記1)から9)のいずれか1に記載のオリゴヌクレオチドのうち1又は複数のオリゴヌクレオチドについて、1ないし複数個の塩基が置換、欠失、挿入若しくは付加といった変異された塩基配列を含み、CpG領域のシトシンのメチル化を検出可能なプライマー機能を有するオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
組織中のhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域の中にある5’領域又はCCAAT領域におけるCpG領域におけるシトシンのメチル化の有無を識別するために用いられるプライマーセットであって、少なくとも1つのメチル化シトシン非特異的プライマーの融解温度が、メチル化シトシン特異的プライマーの融解温度より1〜5℃高いことを特徴とする請求の範囲2記載の核酸増幅用プライマーセット。
【請求項4】
組織中のhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域の中にあるCCAAT領域におけるCpG領域におけるシトシンのメチル化の有無を識別するために用いられるプライマーセットであって、プライマー同士のGC含有率の差が20%以内であることを特徴とする請求の範囲2又は3記載の核酸増幅用プライマーセット。
【請求項5】
配列番号3に記載のオリゴヌクレオチド及び配列番号4に記載のオリゴヌクレオチドを選択することを特徴とする請求の範囲2又は3記載の核酸増幅用プライマーセット。
【請求項6】
配列番号2に記載のオリゴヌクレオチド及び配列番号4に記載のオリゴヌクレオチドを選択することを特徴とする請求の範囲2又は3記載の核酸増幅用プライマーセット。
【請求項7】
配列番号6に記載のオリゴヌクレオチド及び配列番号7に記載のオリゴヌクレオチドを選択することを特徴とする請求の範囲2から4のいずれか1項記載の核酸増幅用プライマーセット。
【請求項8】
配列番号5に記載のオリゴヌクレオチド及び配列番号7に記載のオリゴヌクレオチドを選択することを特徴とする請求の範囲2から4のいずれか1項記載の核酸増幅用プライマーセット。
【請求項9】
請求の範囲1記載の核酸増幅用プライマーを使用し、hMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域におけるCpG領域のシトシンのメチル化の有無を検査することを特徴とする散発性大腸癌と遺伝性非腺腫大腸癌の識別方法。
【請求項10】
組織中のhMLH1をコードする遺伝子のプロモーター領域の中にある5’領域又はCCAAT領域におけるCpG領域におけるシトシンのメチル化の有無を指標とすることを特徴とする散発性大腸癌と遺伝性非腺腫大腸癌の識別方法。
【請求項11】
前記シトシンのメチル化の有無の検査を核酸増幅方法により行う請求の範囲9又は10に記載の識別方法。
【請求項12】
マイクロサテライト反復配列分析を組み合わせたことを特徴とする請求の範囲9から11のいずれか1項に記載の識別方法。
【請求項13】
DNAミスマッチ修復タンパク質の免疫染色分析を組み合わせたことを特徴とする請求の範囲9から12のいずれか1項に記載の識別方法。
【請求項14】
請求の範囲1記載のプライマーを含む検査用試薬。
【請求項15】
請求の範囲1記載のプライマーを含む検査用試薬キット。
【請求項16】
以下の1)〜9)のいずれか1に記載のオリゴヌクレオチドのうち少なくとも1つを選択する核酸増幅用プライマーであって、解析対象遺伝子のCpG領域中のシトシンのメチル化の有無を検出するためのプライマー:
1)前記解析対象遺伝子におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
2)前記解析対象遺伝子におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
3)前記解析対象遺伝子におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン及びCpG領域以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
4)前記解析対象遺伝子におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン及びCpG領域以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
5)前記解析対象遺伝子の配列の相補鎖におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
6)前記解析対象遺伝子の配列の相補鎖におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
7)前記解析対象遺伝子の配列の相補鎖におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン及びCpG領域以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
8)前記解析対象遺伝子の配列の相補鎖におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン及びCpG領域以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;及び
9)前記1)から8)のいずれか1に記載のオリゴヌクレオチドの塩基配列中の1ないし複数個の塩基が置換、欠失、挿入若しくは付加といった変異された塩基配列からなり、CpG領域のシトシンのメチル化を検出可能なプライマー機能を有するオリゴヌクレオチド。
【請求項17】
請求の範囲16記載のプライマーを少なくとも3つ含む解析対象遺伝子中のCpG領域のメチル化の有無を検出するための核酸増幅用プライマーセットであって、この少なくとも3つのプライマーが、
a)前記解析対象遺伝子中の少なくとも1つの検出対象CpG領域を含む部分が増幅されるように選択され、かつCpG領域中のシトシンが前記修飾剤による修飾の後にシトシンのままであっても、ウラシル又はチミンに転換されても、前記解析対象遺伝子に結合する、1対のメチル化非特異的プライマー、及び
b)前記検出対象CpG領域中のシトシンが前記修飾剤による修飾の後にシトシンである場合にのみ前記解析対象遺伝子に結合し、前記検出対象CpG領域中のシトシンが前記修飾剤による修飾の後にウラシル又はチミンに変換されれば前記解析対象遺伝子に結合しない、少なくとも1つのメチル化シトシン特異的プライマー
である、プライマーセット。
【請求項18】
解析対象遺伝子のCpG領域中のシトシンのメチル化を検出する方法であって、
(1)試料由来の核酸を修飾剤によって修飾し、
(2)前記核酸を鋳型として、以下のプライマー:
a)前記解析対象遺伝子中の少なくとも1つの検出対象CpG領域を含む部分が増幅されるように選択され、かつCpG領域中のシトシンが前記修飾剤による修飾の後にシトシンのままであっても、ウラシル又はチミンに転換されても、前記解析対象遺伝子に結合する、1対のメチル化非特異的プライマー、及び
b)前記検出対象CpG領域中のシトシンが前記修飾剤による修飾の後にシトシンである場合にのみ前記解析対象遺伝子に結合し、前記検出対象CpG領域中のシトシンが前記修飾剤による修飾の後にウラシル又はチミンに変換されれば前記解析対象遺伝子に結合しない、少なくとも1つのメチル化シトシン特異的プライマー
を用いて前記解析対象遺伝子核酸を増幅し、
(3)前記増幅産物を検出する
工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
前記メチル化シトシン特異的プライマー及び前記メチル化シトシン非特異的プライマーが、それぞれ以下の1)〜9)のいずれか1に記載のオリゴヌクレオチドのうち少なくとも1つを選択するプライマーである、請求の範囲18記載の方法:
1)前記解析対象遺伝子におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
2)前記解析対象遺伝子におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
3)前記解析対象遺伝子におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン及びCpG領域以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
4)前記解析対象遺伝子におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン及びCpG領域以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
5)前記解析対象遺伝子の配列の相補鎖におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
6)前記解析対象遺伝子の配列の相補鎖におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
7)前記解析対象遺伝子の配列の相補鎖におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン及びCpG領域以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;
8)前記解析対象遺伝子の配列の相補鎖におけるCpG領域を1以上含み、前記CpG領域中に存在するシトシン及びCpG領域以外のシトシンがチミン又はウラシルに変換された塩基配列に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチド;及び
9)前記1)から8)のいずれか1に記載のオリゴヌクレオチドの塩基配列中の1ないし複数個の塩基が置換、欠失、挿入若しくは付加といった変異された塩基配列からなり、CpG領域のシトシンのメチル化を検出可能なプライマー機能を有するオリゴヌクレオチド。
【請求項20】
前記解析対象遺伝子が、hMLH1、hMSH2、hMSH6、hPMS1、hPMS2を含むDNAミスマッチ修復タンパク質をコードする遺伝子群及びその他の大腸癌関連遺伝子群から選択される、請求の範囲18記載の方法。
【請求項21】
前記解析対象遺伝子における検出対象CpG領域におけるシトシンのメチルの有無を、試料の由来する個体における大腸癌の存在又は分類と関連づけるための、請求の範囲18記載の方法。
【請求項22】
前記検出対象CpG領域が2ヵ所以上であり、前記b)のメチル化シトシン特異的プライマーを2種類以上用いる、請求の範囲18記載の方法。

【国際公開番号】WO2005/021743
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【発行日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513451(P2005−513451)
【国際出願番号】PCT/JP2004/012256
【国際出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(502083440)
【出願人】(504305212)
【出願人】(599173516)
【Fターム(参考)】