説明

核酸配列決定における適応試薬制御のためのシステムおよび方法

a)第1の濃度の酵素試薬を、反応基質を含む反応環境中に導入するステップであって、酵素試薬および反応基質は、配列決定プロセスの構成部分である、ステップと、b)反応環境中の第1の濃度の酵素試薬の活性レベルを測定するステップであって、活性レベルは、酵素試薬と反応基質との間の反応の測定可能な生成物を含む、ステップと、c)第1の濃度の測定した活性レベルを使用して、最適濃度を特定するステップと、d)酵素試薬の最適濃度を使用して、反応環境中で配列決定プロセスを実行するステップであって、配列決定プロセスは、反復する一連の配列決定反応を含む、ステップと、を含む、適応試薬制御のための方法の一実施形態を記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この出願は、2007年6月28日に出願された表題「System and Method for Adaptive Reagent Control in Nucleic Acid Sequencing」の米国仮特許出願第60/946,743号(これは、全ての目的のために、その全体が参考として本明細書に援用される)に関し、それからの優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、分子生物学および1つ以上の適応試薬制御方法および要素の分野に関する。より具体的には、本発明は、性能を最適化し、該試薬およびプロセスの効率を高めるように、核酸配列決定プロセスで採用される1つ以上の酵素試薬の活性を測定し、かつ濃度を動的に調整するステップに関する。さらに、本発明は、試薬濃度の自動測定および変調を可能にする器具類に関する。
【背景技術】
【0003】
例えば、ターミネーションおよびサイズ分離手法を採用する、一般に当業者にとって既知であるサンガーの配列決定法と称されるものに基づいた手法等の、ここに記載されている発明との使用に適する、多数の「配列決定」法が存在する。別の種類の有力な配列決定法には、「合成による配列決定」法(Sequencing−by−synthesis:SBS)と称されるものが挙げられる。SBS法は、概して、核酸試料中の1つ以上の分子の同一性または核酸組成を特定するために採用される。SBS法は、従来採用されている配列決定法を超える、多数の望ましい利点を提供する。例えば、SBSの実施形態は、従来の手法と比較して、大量の高品質な情報を低コストで生成する、高スループットの配列決定法と称されるものを実行するのを可能にする。さらなる利点には、大規模並列様式で、複数の鋳型分子から配列情報を同時に発生させることが挙げられる。換言すれば、1つ以上のサンプルに由来する複数の核酸分子が、単一のプロセスで同時に配列決定される。
【0004】
SBS法の代表的な実施形態は、そのヌクレオチドの配列組成が特定される鋳型核酸分子と相補的な、ポリヌクレオチド分子の単鎖を段階的に合成するステップを含む。例えば、SBS法は、一般的に、単一の核酸(または、ヌクレオチドとも称される)種を、対応する配列位置において、鋳型分子の核酸種と相補的な新生ポリヌクレオチド分子に添加することによって行われる。新生分子への核酸種の添加は、概して、蛍光共鳴エネルギー移動染色(FRET)を含む、可逆的ターミネーターまたはエネルギー移動標識を採用するもの等の、ピロ配列決定または蛍光検出法と称されるものが挙げられるが、これに限定されない、様々な方法を使用して検出される。一般的に、プロセスは、完了する(すなわち、全ての配列位置が表される)まで、または鋳型と相補的な望ましい配列長が合成されるまで、繰り返される。
【0005】
さらに、上述のように、多数のSBSの実施形態は、大規模並列様態で、配列決定動作を実行するのを可能にする。例えば、SBS法のいくつかの実施形態は、調製および/または配列決定法に関連する1つ以上のステップまたは動作を自動化する器具類を使用して実行される。いくつかの器具は、ウェルまたはマイクロ反応器のそれぞれで同時に反応を行う能力を提供する、ウェルを伴うプレートまたは他のタイプのマイクロ反応器の構成等の、要素を採用する。SBS法、および大規模並列配列決定のためのシステムおよび方法のさらなる実施例は、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7および特許文献8に記載されており、全ての目的に対して参照することによりその全体が本願明細書に組み込まれ、また、米国特許出願第11/195,254号にも記載されており、全ての目的に対して参照することによりその全体が本願明細書に組み込まれる。
【0006】
代表的なSBSの実施形態は、例えば、酵素プロセスステップに関連する触媒活性レベルの変動等の、プロセスステップまたは構成要素で採用される種々の要素に関連するパラメータの差異に敏感であることを認識されるであろう。したがって、概して、SBSの実施形態には、1つ以上のプロセスステップまたは構成要素の効率を改善する戦略または方法を採用することが望ましい。例えば、概して、以前の伸長サイクルで採用される特定のヌクレオチド種の全ての分子は、次のサイクルで異なるヌクレオチド種を伴う以降の伸長反応を開始する前に、除去および/または不活性化されるべきであると認識されたい。以前のサイクルからのヌクレオチド種の残存物が、異なるヌクレオチド種の現在のサイクルに残存している場合、残存ヌクレオチド種分子の一部が、新生分子内に組み込まれる可能性が高い。残存ヌクレオチド種分子の組み込みは、現サイクルのヌクレオチド種の組み込みとして、誤って翻訳される。本実施例では、意図しないヌクレオチド種分子の組み込みは、以下に詳述する持ち越し(carry forward)効果と称されるものを促進し得る。したがって、残存ヌクレオチド種分子、および他の望ましくない反応生成物または試薬の完全な除去または不活性化を確実にするように、1つ以上の方法を採用することが好都合である。
【0007】
特に効率的で、SBS法との使用に適する1つの方法は、「アピラーゼ」と称されるもので反応容器または基質領域を洗浄することである。当業者は、アピラーゼが、ヌクレオシド三リン酸塩、二リン酸塩、ATP、およびPPi(ピロリン酸塩)の分解を含む、多数の資質を有する酵素であると認識されるであろう。SBSの実施形態におけるアピラーゼの使用は、実質的に、単純な洗浄だけの場合を超えて、過剰および不要なヌクレオチド種、試薬、および反応生成物の除去を改善する。例えば、アピラーゼは、配列決定反応混合物内のあらゆる残存する非組み込みヌクレオチド種分子の分解を容易にするように、各反応サイクルの終了時に、1つ以上の反応領域を備える固体支持体の表面で「洗浄」されてもよく、または表面を「流され」てもよい。アピラーゼはさらに、以前のサイクルで生成されるATPを分解し、したがって、その前のサイクルの反応から生成される光を「消す」のに採用されてもよい。
【0008】
異なるヌクレオチド種を伴う次の反応サイクルは、残存するアピラーゼおよび反応生成物を除去する短時間の洗浄ステップの後に開始されてもよい。いくつかの実施形態において、アピラーゼは、固体またはモバイル固体支持体に結合されてもよい。アピラーゼの使用のさらなる実施例およびそのような使用によって与えられる利点は、特許文献8、名称「Method of amplifying and sequencing nucleic acids」に記載されており、全ての目的に対して参照することにより本願明細書にその全てが組み込まれる。
【0009】
代表的な実施形態では、望ましくない効果を回避するために、適切な濃度のアピラーゼを採用することが極めて重要である。例えば、アピラーゼの濃度が高すぎる場合、その結果は、以降のサイクルにおける望ましいヌクレオチド種の分解を含み得る。換言すれば、濃度が高いために、未反応のアピラーゼが、反応サイクルの開始時に依然として存在し得、その結果、そのフローで導入されるヌクレオチド種分子を分解してしまう。このような過剰なアピラーゼ活性は、「不完全伸長(incomplete extension)」効果と称されるものを促進する。これに対して、アピラーゼの濃度または活性が低すぎる場合、その結果は、以前のサイクルからの一部の、または幾らかの割合のヌクレオチド種を、現在のサイクルに含み得る。上述のように、アピラーゼ活性が低い、または無ければ、「持ち越し」効果と称されるものを促進する。したがって、本実施例では、概して、濃度を変調して反応時に最適なレベルの活性を提供し得るように、アピラーゼ活性を測定することが望ましい。
【0010】
上述のように、持ち越しおよび不完全伸長効果は、最適でないアピラーゼ濃度または活性の結果となり得、また、2つの重要な誤差原因が考慮される。例えば、試料からの各増幅集団(すなわち、核酸分子鋳型から増幅される実質的に同一のコピーの集団)内の鋳型核酸分子の小画分は、集団内の残りの鋳型核酸分子との位相同期性を失うか、それが異なるものとなる(すなわち、鋳型分子の画分に関連する反応は、集団に対する配列決定反応の実行において、他の鋳型分子の問い合わせ配列(interrogated sequence)位置に先行するか、または後ろになる)。本実施例では、ある位置による配列の伸長反応のために、1つ以上のヌクレオチド種を1つ以上の新生分子内に適切に組み込む反応の不全によって、以降の各反応は、集団の残りの配列位置を伴う後方かつ位相が異なる配列位置において生じることになる。この効果は、本願明細書において、「不完全伸長」(IE)と称される。これに対して、集団の残りの配列位置を伴う前方かつ位相が異なる配列位置での1つ以上の1つ以上のヌクレオチド種の組み込みによる、不適切な新生分子の伸長は、本願明細書において、「持ち越し」(CF)と称される。CFとIEとを組み合わせた効果は、本願明細書において、CAFIEと称される。位相同期性の誤差および補正方法は、2007年2月15日に出願されたPCT出願第US2007/004187号、名称「System and Method for Correcting Primer Extension Errors in Nucleic Acid Sequence Data」、に詳述されており、全ての目的に対して参照することにより本願明細書にその全てが組み込まれる。
【0011】
したがって、SBS法およびプロセスにおいて、アピラーゼおよび他の重要な試薬の濃度を測定および変調する方法を採用することが、極めて好都合である。それは、種々の器具を使用して実行される、自動化された実施形態において特に有用であり、酵素または試薬の濃度または有効性を動的に測定できることがさらに望ましく、該酵素または試薬の濃度は、システムの必要性と測定とを適応させるように適応的に修正されてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第6,274,320号明細書
【特許文献2】米国特許第6,258,568号明細書
【特許文献3】米国特許第6,210,891号明細書
【特許文献4】米国特許第7,211,390号明細書
【特許文献5】米国特許第7,244,559号明細書
【特許文献6】米国特許第7,264,929号明細書
【特許文献7】米国特許第7,335,762号明細書
【特許文献8】米国特許第7,323,305号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の実施形態は、核酸の配列決定に関する。より具体的には、本発明の実施形態は、核酸の配列決定中に、SBSによって得られるデータの誤差を訂正するための方法および装置に関する。
【0014】
a)第1の濃度の酵素試薬を、反応基質を含む反応環境中に導入するステップであって、酵素試薬および反応基質は、配列決定プロセスの構成部分である、ステップと、b)反応環境中の第1の濃度の酵素試薬の活性レベルを測定するステップであって、活性レベルは、酵素試薬と反応基質との間の反応の測定可能な生成物を含む、ステップと、c)第1の濃度の測定した活性レベルを使用して、最適濃度を特定するステップと、d)酵素試薬の最適濃度を使用して、反応環境中で配列決定プロセスを実行するステップであって、配列決定プロセスは、反復する一連の配列決定反応を含む、ステップと、を含む、適応試薬制御のための方法の一実施形態を記載する。
【0015】
いくつかの実装において、該方法はまた、ステップd)の前に、第1の濃度として最適濃度を使用して、ステップa)およびb)を繰り返すステップと、測定した活性レベルを使用して、酵素試薬の最適濃度を検証するステップと、を含む。加えて、該方法はまた、第2の濃度および第3の濃度の酵素試薬を、反応基質を含む反応環境中に導入するステップと、反応環境中の第2および第3の濃度の酵素試薬の活性レベルを測定するステップと、第1、第2、および第3の濃度の測定した活性レベルを使用して、最適濃度を特定するステップと、を含んでもよい。
【0016】
また、反復する一連の配列決定反応を含む配列決定プロセスを実行するための反応環境を含む、フローセルと、第1の濃度の酵素試薬を、反応基質を含む反応環境中に導入する、弁であって、酵素試薬および反応基質は、配列決定プロセスの構成部分である、弁と、反応環境中の第1の濃度の酵素試薬の活性レベルを測定する、検出器であって、活性レベルは、酵素試薬と反応基質との間の反応の測定可能な生成物を含む、検出器と、を備え、該弁は、測定した活性レベルに応じて、最適濃度の酵素試薬を反応環境中に提供する、核酸配列決定システムを記載する。
【0017】
いくつかの実装において、該システムは、その上に記憶された実行可能コードを有するコンピュータをさらに備え、該実行可能コードは、第1の濃度の酵素試薬および反応基質を、反応環境中に導入するように、弁の指示制御を提供するステップと、検出器から、第1の濃度の測定した活性レベルを受信するステップと、第1の濃度の測定した活性レベルを使用して、最適濃度を特定するステップと、最適濃度を提供するように、弁の指示制御を提供するステップと、を含む。
【0018】
上述の実施形態および実装は、必ずしも互いに包括的または排他的なものではなく、同じ、または異なる実施形態または実装に関連して提示されているかどうかに関わらず、矛盾の無いその他の可能なあらゆる様態で組み合わされてもよい。一実施形態または実装の説明は、他の実施形態および/または実装に対して限定することを意図したものではない。また、本願明細書の他の部分に記載されているあらゆる1つ以上の機能、ステップ、動作、または手法は、代替的な実装において、発明の開示に記載されているあらゆる1つ以上の機能、ステップ、動作、または手法と組み合わされてもよい。したがって、上述の実施例および実装は、限定するものではなく、むしろ例示的なものである。
【0019】
上述の、およびさらなる特徴は、添付図面を参照しながら以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。図中、同じ構造、要素、または方法ステップは、同じ参照番号で示され、参照番号の最左端の数字は、その参照要素が最初に現れた図面の番号を示す(例えば、要素160は、図1に最初に現れている)。しかしながら、これらの規則の全ては、限定するものではなく、むしろ代表的または例示的なものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、コンピュータ制御の下で反応基質を処理するための光学および流体サブシステムを備える、配列決定器具の一実施形態の機能ブロック図である。
【図2】図2は、反応基質を処理するための、図1の光学および流体サブシステムの一実施形態の機能ブロック図である。
【図3】図3は、酵素試薬の複数の試料の活性レベルにおける測定した変動の簡略化されたグラフ図である。
【図4】図4Aおよび4Bは、誤差を伴わない配列決定の実行と、導入誤差を伴う配列決定の実行との間の差異を示す、試験分子を使用した、酵素活性の試験の一実施形態の簡略化されたグラフ図である。
【図5】図5は、測定した信号と酵素試薬の濃度との関係の一実施形態の簡略化されたグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に詳述するように、ここに記載されている発明の一実施形態は、配列決定反応で採用される、試薬濃度の適応制御のためのシステムおよび方法を含む。さらに、本発明は、試薬活性が配列決定プロセスの最適範囲内にあるように、配列決定プロセスの前および/またはプロセス中に試薬の濃度または活性を動的に測定するステップと、濃度を変調するステップと、を含む。
【0022】
a.全般
「フローグラム」および「ピログラム」という用語は、本願明細書において代替可能に使用されてもよく、概して、SBS法によって生成される配列データのグラフ図を指す。
【0023】
さらに、「読み取り」または「配列読み取り」という用語は、本願明細書で使用する場合、概して、単一の核酸鋳型分子、または複数の実質的に同一の鋳型核酸分子のコピーの集団から得られる、配列データ全体を指す。
【0024】
「実行」または「配列決定の実行」という用語は、本願明細書で使用する場合、概して、1つ以上の鋳型核酸分子の配列決定動作において実行される一連の配列決定反応を指す。
【0025】
「フロー」という用語は、本願明細書で使用する場合、概して、鋳型核酸分子を含む環境への溶液の添加の連続的な、または繰り返しサイクルを指し、該溶液は、新生分子に添加するためのヌクレオチド種、またはヌクレオチド種の以前のフローサイクルからの持ち越しまたはノイズ効果を低減するために採用されてもよいバッファまたは酵素等の他の試薬を含んでもよい。
【0026】
「フローサイクル」という用語は、本願明細書で使用する場合、概して、連続する一連のフローを指し、サイクル中に一度ヌクレオチド種がフローする(すなわち、フローサイクルは、T、A、C、Gの順序でのヌクレオチド種の逐次添加を含んでもよいが、他の配列の組み合わせも定義の一部とみなされる)。一般的に、フローサイクルは、サイクルからサイクルまで、同じ順序のフローを有する繰り返しサイクルである。
【0027】
「読み取り長さ」という用語は、本願明細書で使用する場合、概して、確実に配列決定され得る鋳型分子長の上限を指す。鋳型核酸分子中のGC含量の程度が挙げられるが、これに限定されない、システムおよび/またはプロセスの読み取り長さに寄与する、数多くの要因が存在する。
【0028】
「試験断片」または「TF」という用語は、本願明細書で使用する場合、概して、品質管理、較正、または他の関連する目的に採用されてもよい、配列組成が既知である核酸要素を指す。
【0029】
「新生分子」とは、概して、鋳型分子中の対応するヌクレオチド種と相補的であるヌクレオチド種の組み込みにより、テンプレート依存のDNAポリメラーゼによって伸長されているDNA鎖を指す。
【0030】
「鋳型核酸」、「鋳型分子」、「標的核酸」、または「標的分子」という用語は、概して、配列データまたは情報が生成される配列決定反応の対象である核酸分子を指す。
【0031】
「ヌクレオチド種」という用語は、本願明細書で使用する場合、概して、一般的に新生核酸分子中に組み込まれる、リン体(アデニン、グアニン)およびピリミジン(シトシン、ウラシル、チミン)を含む、核酸モノマーの同一性を指す。
【0032】
「モノマーの繰り返し」または「ホモポリマー」という用語は、本願明細書で使用する場合、概して、同じヌクレオチド種を含む2つ以上の配列位置(すなわち繰り返しヌクレオチド種)を指す。
【0033】
「均一な伸長」という用語は、本願明細書で使用する場合、概して、伸長反応の関係または段階を指し、実質的に同一の鋳型分子の集団の各部分が、反応時に同じ伸長ステップを均一的に実行している。
【0034】
「完了効率(completion efficiency)」という用語は、本願明細書で使用する場合、概して、所与のフロー中に適切に伸長される新生分子の割合を指す。
【0035】
「不完全伸長率」という用語は、本願明細書で使用する場合、概して、新生分子の全数に対する、適切に伸長されなかった新生分子の数の割合を指す。
【0036】
「ゲノムライブラリ」または「ショットガンライブラリ」という用語は、本願明細書で使用する場合、概して、有機体のゲノム全体(すなわち、ゲノムの全ての領域)または個々に由来する、および/またはこれを表す一群の分子を指す。
【0037】
「アンプリコン」という用語は、本願明細書で使用する場合、概して、ポリメラーゼ連鎖反応またはリガーゼ連鎖反応法から生成されるもの等の、選択された増幅産物を指す。
【0038】
「キーパス(keypass)」または「キーパスマッピング」という用語は、本願明細書で使用する場合、概して、鋳型分子から生成される配列データのための品質管理基準として採用される既知の配列組成を含む、既知の位置にある(すなわち一般的に、結紮されたアダプタ要素内に含まれる)鋳型核酸分子に関連する核酸の「重要な要素」を指す。配列データは、適切な場所における重要な要素に関連する既知の配列組成を含む場合に、品質管理に合格する。
【0039】
「平滑末端」または「平滑末端化された」という用語は、本願明細書で使用する場合、概して、一対の相補的なヌクレオチド塩基種によって成端する末端を伴う、線状二重鎖核酸分子を指し、一対の平滑末端が、常に互いに結紮に適応する。
【0040】
試料調製および処理、配列データの生成、および配列データの分析に関連するシステムおよび方法のいくつかの例示的実施形態を、一般に以下に説明するが、そのうちのいくつか、または全ては、ここに記載されている発明の実施形態との使用に適する。より具体的には、鋳型核酸分子の調整、鋳型分子の増幅、標的特異的なアンプリコン、鋳型分子の増幅、標的特異的なアンプリコンおよび/またはゲノムライブラリの生成、配列決定法および器具類、およびコンピュータシステムのためのシステムおよび方法の例示的実施形態を説明する。
【0041】
代表的な実施形態において、実験的または診断的な試料に由来する核酸分子は、調整しなければならず、また、それを未処理の形態から、高スループットの配列決定に適する鋳型分子に調製および処理されなければならない。処理方法は、種々の特性を備える鋳型分子をもたらすアプリケーションによって異なってもよい。例えば、高スループットの配列決定のいくつかの実施形態では、少なくとも特定の配列決定法が配列データを正確に生成することができる長さである、配列または読み取り長さを伴う鋳型分子を生成することが好ましい。本実施例では、長さの範囲には、約25〜30塩基対、約50〜100塩基対、約200〜300塩基対、または約350〜500塩基対、あるいは特定の配列決定アプリケーションに適する他の長さが挙げられる。いくつかの実施形態において、ゲノム試料等の試料からの核酸は、当業者にとって既知である多数の方法を使用して断片化される。好適な実施形態において、方法は、核酸をランダムに断片化する(すなわち、特定の配列または領域のために選択する)ものであり、噴霧化または超音波処理方法と称されるものが挙げられる。しかしながら、制限エンドヌクレアーゼを使用した消化等の、他の断片化法が、断片化する目的に採用されてもよいと認識されるであろう。また、本実施例において、いくつかの処理方法は、望ましい長さの核酸断片を選択的に単離させるように、当技術分野において既知であるサイズ選択法を採用してもよい。
【0042】
また、いくつかの実施形態では、追加的な機能要素を各鋳型核酸分子と関連付けることが好ましい。要素は、増幅および/または配列決定法のためのプライマー配列、品質管理要素、起源または患者の試料等との種々の関連をコード化する固有の識別子、または他の機能要素が挙げられるが、これに限定されない、種々の機能に採用されてもよい。例えば、いくつかの実施形態は、増幅および/または配列決定に採用されるプライマー配列と相補的な配列組成を含む、プライミング配列要素または領域を関連付けてもよい。さらに、「鎖選択」と称されるもの、および固相基質への核酸分子の固定化には、同じ要素が採用されてもよい。本実施例では、2組のプライミング配列領域(以下、プライミング配列Aおよびプライミング配列Bと称する)が、鎖の選択に採用されてもよく、プライミング配列Aの1つのコピーおよびプライミング配列Bの1つのコピーを有する単鎖だけが選択されて、調整試料として含まれる。同じプライミング配列領域が、増幅および固定化のための方法に採用されてもよく、例えば、プライミング配列Bが固体基質上に固定化されてもよく、増幅生成物がそこから伸長される。
【0043】
断片化、鎖選択、および機能要素およびアダプタの添加のための試料処理のさらなる実施例は、2004年1月28日に出願された米国特許出願第10/767,894号、名称「Method for preparing single−stranded DNA libraries」、2008年2月27日に出願された米国暫定特許出願第61/031,779号、名称「System and Method for Improved Processing of Nucleic Acids for Production of Sequencable Libraries」、および2008年5月29日に出願された代理人整理番号第21465−529001US号、名称「System and Method for Identification of Individual Samples from a Multiplex Mixture」に記載されており、全ての目的に対して参照することにより本願明細書にその全てが組み込まれる。
【0044】
実質的に同一のコピーの集団を生成するように、鋳型核酸分子の増幅を実行するためのシステムおよび方法の種々の実施例を記載する。SBSのいくつかの実施形態において、1つ以上のヌクレオチド種が、鋳型分子のコピーに関連する各新生分子内に組み込まれる時に、より強い信号を生成するように、各核酸要素の多数のコピーを生成することが望ましいことが、当業者に明らかになるであろう。例えば、細菌ベクター、「ローリングサークル」増幅(米国特許第6,274,320号および第7,211,390号に記載されており、参照することにより組み込まれる)、およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法と称されるものを使用した増幅等の、核酸分子のコピーを生成するための、当技術分野において既知の、多数の手法が存在し、該手法のそれぞれは、ここに記載されている発明との使用に適用することができる。特に高いスループットアプリケーションに適する1つのPCR法には、エマルジョンPCR法と称される(emPCRTM法とも称される)ものが挙げられる。
【0045】
エマルジョンPCR法の代表的な実施形態は、反応がその中で生じ得る水滴を作り出す、2つの不混和性物質の安定したエマルジョンを作り出すステップを含む。より具体的には、PCR法での使用に適するエマルジョンの水滴は、油に基づく流体等の別の流体中で、分散相と称され得るものに懸濁または分散される、水に基づく流体等の第1の流体を含んでもよい。さらに、いくつかのエマルジョンの実施形態は、PCR等の特定の処理法に特に有用となり得る、エマルジョンを安定させるように作用する界面活性剤を採用してもよい。界面活性剤のいくつかの実施形態は、ソルビタンモノオレエート(SpanTM80とも称される)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(TweenTM80とも称される)等、または、いくつかの実施形態では、ジメチコンコポリオール(Abil(登録商標)EM90とも称される)、ポリシロキサン、ポリアルキルポリエーテルコポリマー、ポリグリセリンエステル、ポロキサマ、およびPVP/ヘキサデカンコポリマー(Unimer U−151とも称される)等、あるいは、いくつかの好適な実施形態では、シクロペンタシロキサン中の高分子量のシリコーンポリエーテル(Dow Corningから入手できる、DC5225Cとも称される)等の、非イオン性界面活性剤を含んでもよい。
【0046】
エマルジョンの液滴はまた、コンパートメント、マイクロカプセル、マイクロ反応器、微小環境と称されてもよく、または関連する技術において一般に使用されている他の名称であってもよい。水滴は、エマルジョンの構成要素または組成、その中に含まれる含量、および採用される手法の構成によって、サイズが異なり得る。記載されているエマルジョンは、その中でPCR等の化学反応が実行されてもよい、微小環境を作り出す。望ましいPCR反応を実行するのに必要な鋳型核酸および全ての試薬は、カプセル化されて、エマルジョンの液滴中で化学的に分離されていてもよい。いくつかの実施形態では、上述した液滴の安定性をさらに促進させるように、さらなる界面活性剤または他の安定化剤が採用されてもよい。PCR法の代表的なサーモサイクリング動作は、カプセル化された核酸鋳型を増幅するように、液滴を使用して実行されてもよく、その結果、多数の実質的に同一の鋳型核酸のコピーを含む集団が生成される。いくつかの実施形態において、液滴中の集団は、「クローン的に分離された」、「コンパートメント化された」、「隔離された」、「カプセル化された」、または「局所化された」集団と称され得る。また、本実施例では、記載されている液滴のいくつかまたは全ては、鋳型の付着のためのビーズ、または他のタイプの核酸、試薬、標識、あるいは関心の他の分子等の、固体基質をさらにカプセル化してもよい。
【0047】
ここに記載されている発明を伴う有用なエマルジョンの実施形態は、記載されている化学反応を大規模な並列方法で実行するのを可能にする、超高密度のマイクロカプセルを含んでもよい。増幅のために採用されるエマルジョン、および配列決定アプリケーションに対するそれらの使用のさらなる実施例は、米国特許出願第10/861,930号、第10/866,392号、第10/767,899号、第11/045,678号に記載されており、それぞれ、全ての目的に対して参照することによりその全体が本願明細書に組み込まれる。
【0048】
また、配列決定のために標的特異的なアンプリコンを生成するための例示的な一実施形態は、標的核酸を含む試料からの選択された単一または複数の標的領域を増幅するように、複数組の核酸プライマーを使用するステップを含むことが記載されている。さらに、試料は、配列変異体を含むことが既知である、または推測される核酸分子の集団を含んでもよく、プライマーは、試料中の配列変異体の分布に対する洞察を増幅および提供するのに採用されてもよい。
【0049】
例えば、特定の増幅および配列決定によって配列変異体を識別し、核酸試料中の複数の対立遺伝子を配列決定するための方法が実行されてもよい。核酸は、最初に、関心の領域を囲む領域、または核酸集団に共通のセグメントを増幅するように設計されている、一対のPCRプライマーによって増幅を受ける。PCR反応の生成物(アンプリコン)のそれぞれは、その後、上述したエマルジョンに基づく容器等の、別個の反応容器中で個々にさらに増幅される。それぞれがアンプリコンの第1の集団の1つの部分に由来する、結果として生じるアンプリコン(本願明細書では、第2のアンプリコンと称される)は、配列決定され、異なるエマルジョンPCRアンプリコンからの一群の配列は、対立遺伝子頻度の特定に使用される。
【0050】
記載されている標的特異的な増幅および配列決定法のいくつかの利点には、感度のレベルが、以前に達成されていたものよりも高いことが挙げられる。さらに、例えば、454Life Science Corporationによって提供される、PicoTiterPlate(登録商標)と称される、一連のプレートを採用する実施形態のように、実施形態は、高スループットの配列決定器具類を採用しており、記載されている方法は、100,000を超える、または300,000を超える、実行または実験1回あたり1つの対立遺伝子の異なるコピーの配列決定に採用することができる。また、記載されている方法は、1%未満の対立遺伝子変異体を表し得る、低存在度の対立遺伝子の検出感度を提供する。本方法の別の利点には、分析される領域の配列を含むデータを生成することが挙げられる。重要なことに、分析されている遺伝子座の配列の予備的知識を持つ必要が無い。
【0051】
配列決定のための標的特異的なアンプリコンのさらなる実施例は、2005年4月12日に出願された米国特許出願第11/104,781号、名称「Methods for determining sequence variants using ultra−deep sequencing」に記載されており、それぞれ、全ての目的に対して参照することにより本願明細書にその全てが組み込まれる。
【0052】
さらに、配列決定の実施形態には、サンガー法、ポロニー配列決定法と称されるものを含む、概して、ハイブリッド化による配列決定(Sequencing by Hybridization:SBH)または組み込みによる配列決定(Sequencing by Incorporation:SBI)と称される手法、ナノ細孔、導波路、および他の単一分子検出法、または可逆的ターミネーター法が挙げられる。上述のように、好適な手法には、合成による配列決定法が挙げられる。例えば、いくつかのSBSの実施形態は、実質的に同一の核酸鋳型のコピーの集団を配列決定し、一般的に、試料鋳型分子、または鋳型分子に付着させた1つ以上のアダプタの所定の相補的な位置にアニール化するように設計された、1つ以上のオリゴヌクレオチドプライマーを採用する。プライマー/鋳型複合体は、核酸ポリメラーゼ酵素の存在下で、ヌクレオチド種を伴って表される。ヌクレオチド種が、オリゴヌクレオチドプライマーの3′末端に直接的に隣接する試料鋳型分子上の配列位置に対応する核酸種と相補的である場合、ポリメラーゼは、ヌクレオチド種を伴うプライマーを伸長する。代替として、いくつかの実施形態において、プライマー/鋳型複合体は、関心の複数のヌクレオチド種(一般的にA、G、C、およびT)を伴って同時に表され、オリゴヌクレオチドプライマーの3′末端に直接的に隣接する試料鋳型分子上の対応する配列位置において相補的であるヌクレオチド種が組み込まれる。記載されている実施形態のうちのいずれかにおいて、ヌクレオチド種は、さらなる伸長を防ぐように(3′−O位置等において)化学的に遮断されてもよく、また、次回の合成前に遮断解除する必要がある。また、新生分子の末端にヌクレオチド種を添加するプロセスは、プライマーの末端への添加について上述したものと実質的に同じである。
【0053】
上述のように、ヌクレオチド種の組み込みは、当技術分野において既知である様々な方法によって、例えばピロリン酸塩(PPi)の放出を検出することによって(実施例は、米国特許第6,210,891号、第6,258,568号、および第6,828,100に記載されており、それぞれ、全ての目的に対して参照することにより本願明細書にその全てが組み込まれる)、またはヌクレオチドに結合される検出可能な標識を介して、検出することができる。検出可能な標識のいくつかの実施例には、質量タグ、および蛍光または化学発光標識が挙げられるが、これに限定されない。代表的な実施形態において、組み込まれていないヌクレオチドは、例えば洗浄によって除去される。さらに、いくつかの実施形態において、組み込まれていないヌクレオチドは、例えば、本願明細書に記載されているアピラーゼ酵素を使用した分解等の、酵素分解を受けてもよい。検出可能な標識が使用される実施形態において、該標識は、一般的に、以下の合成サイクルの前に、(例えば、化学開裂または光脱色によって)不活性化されなければならない。次いで、鋳型/ポリメラーゼ複合体中の次の配列位置を、上述のように、別のヌクレオチド種、または関心の複数のヌクレオチド種について問い合わせることができる。ヌクレオチドの追加、伸長、信号獲得、および洗浄のサイクルを繰り返すことで、鋳型鎖のヌクレオチド配列の決定がもたらされる。本実施例を継続すると、多数の実質的に同一の鋳型分子(10、10、10、10、または10個の分子)またはその集団は、信頼性のある検出に対して十分に強い信号を達成するために、一般的に、いずれか1つの配列決定反応で同時に分析される。
【0054】
加えて、いくつかの実施形態では、「対になった末端の」配列決定戦略と称され得るものを採用することによって、配列決定プロセスの読み取り長さの能力および品質を改善するのに好都合となり得る。例えば、配列決定法のいくつかの実施形態は、高品質で信頼性のある読み取りが生成され得る、分子の全長に対する制限を有する。換言すれば、信頼性のある読み取り長さに対する配列位置の総数は、採用される配列決定の実施形態に応じて、25、50、100、または150塩基を超えない場合がある。対になった末端の配列決定戦略は、リンカー配列によって中央に結合される各末端に元の鋳型核酸分子の断片を含む、分子の各末端(「タグ」末端と称されることもある)を別々に配列決定することによって、信頼性のある読み取り長さを拡張する。鋳型断片の元の位置関係は既知であり、したがって、配列読み取りからのデータは、より長い高品質の読み取り長さを有する、単一読み取りに再び組み合わせられてもよい。対になった末端の配列決定の実施形態のさらなる実施例は、2006年6月6日に出願された米国特許出願第11/448,462号、名称「Paired end sequencing」、および2008年2月5日に出願された米国暫定特許出願第61/026,319号、名称「Paired end sequencing」に記載されており、それぞれ、全ての目的に対して参照することにより本願明細書にその全てが組み込まれる。
【0055】
SBS装置のいくつかの実施例は、上述した方法のうちのいくつか、または全てを実装してもよく、電荷結合デバイス(すなわちCCDカメラ)等の検出デバイス、マイクロ流体チャンバまたはフローセル、反応基質、および/またはポンプおよびフロー弁のうちの1つ以上を含んでもよい。ピロリン酸塩に基づく配列決定の実施例を利用することで、装置の実施形態は、本質的に低レベルの暗騒音を生成する、化学発光検出戦略を採用してもよい。
【0056】
いくつかの実施形態において、配列決定のための反応基質には、それぞれが実質的に同一の鋳型分子の集団を収容することが可能な、数十万の微小ウェルを生じるように、酸エッチングされた繊維光学フェースプレートから形成される、PicoTiterPlate(登録商標)配列と称される(PTP(登録商標)プレートとも称される)ものが挙げられる。いくつかの実施形態において、実質的に同一の鋳型分子の各集団は、ビーズ等の固体基質上に配置されてもよく、それぞれ、該ウェルのうちの1つに配置されてもよい。例えば、装置は、流体試薬をPTPプレートホルダに提供するための試薬送達要素、およびPTPプレート上の各ウェルから放出される光の光子を収集するのを可能にするCCD型検出デバイスを含んでもよい。SBS型配列決定およびピロリン酸塩配列決定を実行するための装置および方法のさらなる実施例は、米国特許第7,323,305号、および米国特許出願第11/195,254号に記載されており、いずれも参照することにより組み込まれる。
【0057】
加えて、上述したemPCRTMプロセス等の、1つ以上の試料調製プロセスを自動化するシステムおよび方法が採用されてもよい。例えば、自動化されたシステムは、emPCR処理のためのエマルジョンを生成し、PCRサーモサイクリング動作を実行し、配列決定のための成功裏に調製した核酸分子の集団を濃縮するための、効率的な解決策を提供するのに採用されてもよい。自動試料調製システムの実施例は、2005年1月28日に出願された米国特許出願第11/045,678号、名称「Nucleic acid amplification with continuous flow emulsion」に記載されており、全ての目的に対して参照することにより本願明細書にその全てが組み込まれる。
【0058】
また、本発明のここに記載されている実施形態のシステムおよび方法は、コンピュータシステム上で実行するために記憶される、コンピュータ読み取り可能媒体を使用した、いくつかの設計、分析、または他の動作の実装を含んでもよい。例えば、複数の実施形態は、検出された信号を処理するように、および/またはSBSシステムおよび方法を使用して生成されるデータを分析するように以下に詳述され、処理および分析の実施形態は、コンピュータシステム上に実装することができる。
【0059】
ここに記載されている発明とともに使用するコンピュータシステムの例示的な一実施形態は、ワークステーション、パーソナルコンピュータ、サーバ、または他のあらゆる現在の、または将来のコンピュータ等の、あらゆるタイプのコンピュータプラットフォームを含んでもよい。コンピュータは、一般的に、プロセッサ、オペレーティングシステム、システムメモリ、メモリ記憶デバイス、入出力コントローラ、入出力デバイス、および表示デバイス等の、既知の構成要素を含む。当業者は、コンピュータの多数の可能な構成および構成要素が存在し、キャッシュメモリ、データバックアップユニット、および多数の他のデバイスも含み得ることを理解されるであろう。
【0060】
表示デバイスは、視覚的情報を提供する表示デバイスを含んでもよく、この情報は、一般的に、画素配列として論理的におよび/または物理的に編成されてもよい。インターフェースコントローラには、入出力インターフェースを提供するための様々な既知の、または将来のソフトウェアプログラムのいずれかを備え得るものも挙げられる。例えば、インターフェースには、1つ以上のグラフ図をユーザに提供する、概して「グラフィカルユーザインターフェース」と称される(しばしばGUIと称される)ものが挙げられる。インターフェースは、一般的に、当業者にとって既知である選択または入力手段を使用して、ユーザの入力の受け入れを可能にする。
【0061】
同じ、または代替の実施形態において、コンピュータ上のアプリケーションは、「コマンドラインインターフェース」と称される(しばしばCLIと称される)インターフェースを採用してもよい。CLIは、一般的に、アプリケーションとユーザとの間の、テキストに基づいた相互作用を提供する。一般的に、コマンドラインインターフェースは、表示デバイスを通じて、テキストラインとして出力を表し、入力を受信する。例えば、いくつかの実装は、当業者にとって既知であるUnix(登録商標) Shell、またはMicrosoft .NET framework等のオブジェクト指向型プログラムアーキテクチャを採用しているMicrosoft Windows(登録商標) Powershell等の、「シェル」と称されるものを含んでもよい。
【0062】
当業者は、インターフェースが、1つ以上のGUI、CLI、またはそれらの組み合わせを含んでもよいことを理解されるであろう。
【0063】
プロセッサには、Intel CorporationによるCentrino(登録商標)、CoreTM2、Itanium(登録商標)、またはPentium(登録商標)プロセッサ、Sun MicrosystemsによるSPARC(登録商標)プロセッサ、AMDによるAthalonTMまたはOpteronTMプロセッサ等の、市販のプロセッサが挙げられ、あるいは、現在または将来的に入手可能な他のプロセッサのうちの1つであってもよい。プロセッサのいくつかの実施形態は、マルチコアプロセッサと称されるものを含んでもよく、および/または並列処理技術をシングルまたはマルチコア構成で採用するのを可能にするものを含んでもよい。例えば、マルチコアアーキテクチャは、一般的に、2つ以上のプロセッサ「実行コア」を備える。本実施例において、各実行コアは、複数のスレッドの並列実行を可能にする、独立したプロセッサとして実行してもよい。加えて、当業者は、プロセッサが、概して32または64ビットアーキテクチャと称されるもの、または現在既知の、または将来に開発され得る他のアーキテクチャ構成で構成されてもよいことを認識されるであろう。
【0064】
プロセッサは、一般的に、オペレーティングシステムを実行するが、例えば、Microsoft CorporationからのWindows(登録商標)タイプのオペレーティングシステム(Windows(登録商標)XPまたはWindows(登録商標) Vista(登録商標)等)、Apple Computer Corp.からのMac OS Xオペレーティングシステム(Mac OS X v10.5「Leopard」または「Snow Leopard」オペレーティングシステム等)、多数のベンダまたはオープンソースと称されるものから入手できるUnix(登録商標)またはLinuxタイプのオペレーティングシステム、別の、または将来のオペレーティングシステム、またはいくつかのそれらの組み合わせであってもよい。オペレーティングシステムは、既知の様態でファームウェアおよびハードウェアとインターフェースし、様々なプログラミング言語で書き込まれ得る種々のコンピュータプログラムの機能をプロセッサが調整および実行するのを容易にする。オペレーティングシステムは、一般的に、プロセッサと連携して、コンピュータの他の構成要素の機能を調整および実行する。オペレーティングシステムは、全て既知の手法に従って、スケジューリング、入出力制御、ファイルおよびデータ管理、メモリ管理、および通信制御、および関連するサービスも提供する。
【0065】
システムメモリには、様々な既知の、または将来のメモリ記憶デバイスのうちのいずれかが挙げられる。その例には、あらゆる共通に利用できる、ランダムアクセスメモリ、レジデントハードディスクまたはテープ等の磁気媒体、読み込みおよび書き込みコンパクトディスク等の光媒体、または他のメモリ記憶デバイスが挙げられる。メモリ記憶デバイスには、コンパクトディスクドライブ、テープドライブ、取り外し可能なハードディスクドライブ、USBまたはフラッシュドライブ、またはディスケットドライブを含む、様々な既知の、または将来のデバイスのうちのいずれかが挙げられる。このようなタイプのメモリ記憶デバイスは、一般的に、それぞれ、コンパクトディスク、磁気テープ、リムーバブルハードディスク、USBまたはフラッシュドライブ、またはフロッピー(登録商標)ディスケット等の、プログラム記憶媒体(図示せず)との読み込みおよび/または書き込みを行う。これらのプログラム記憶媒体、または現在使用されている、または将来的に開発され得る他のもののうちのいずれかは、コンピュータプログラム製品とみなされてもよい。よく知られているように、これらのプログラム記憶媒体は、一般的に、コンピュータソフトウェアプログラムおよび/またはデータを記憶する。コンピュータソフトウェアプログラムは、コンピュータ制御論理とも呼ばれ、一般的に、メモリ記憶デバイスとともに使用されるシステムメモリおよび/またはプログラム記憶デバイス内に記憶される。
【0066】
いくつかの実施形態では、コンピュータプログラム製品は、その中に記憶された制御論理(プログラムコードを含む、コンピュータソフトウェアプログラム)を有する、コンピュータが使用可能な媒体を備えて記載されている。制御ロジックは、プロセッサによって実行される時に、本願明細書に記載されている機能をプロセッサに実行させる。他の実施形態において、いくつかの機能は、主に、例えばハードウェア状態機械を使用して、ハードウェア内に実装される。本願明細書に記載されている機能を実行するためのハードウェア状態機械の実装が、当業者に明らかとなろう。
【0067】
入出力コントローラには、人間または機械に関わらず、また、ローカルまたはリモートに関わらず、ユーザから情報を受け入れて処理するための様々な既知のデバイスのうちのいずれかが挙げられる。このようなデバイスには、例えば、モデムカード、無線カード、ネットワークインタフェースカード、サウンドカード、または様々な既知の入力デバイスのうちのいずれかのための他のタイプのコントローラが挙げられる。出力コントローラには、人間または機械に関わらず、また、ローカルまたはリモートに関わらず、情報をユーザに表すための、様々な既知の表示デバイスのうちのいずれかのためのコントローラが挙げられる。ここに記載されている実施形態において、コンピュータの機能要素は、システムバスを介して互いに通信する。コンピュータのいくつかの実施形態は、ネットワークまたは他のタイプのリモート通信を使用して、いくつかの機能要素と通信してもよい。
【0068】
当業者に明らかなように、器具制御および/またはデータ処理アプリケーションは、ソフトウェア内に実装された場合、システムメモリおよび/またはメモリ記憶デバイス内に取り込んで、そこから実行されてもよい。器具制御および/またはデータ処理アプリケーションの全てまたは一部はまた、読み込み専用メモリまたはメモリ記憶デバイスの同様のデバイス内に常駐してもよく、このようなデバイスは、最初に、器具制御および/またはデータ処理アプリケーションを入出力コントローラを通じて読み込む必要が無い。当業者は、器具制御および/またはデータ処理アプリケーション、またはその一部は、実行に好都合なように、既知の様態でシステムメモリ、キャッシュメモリ、またはその両方に読み込まれてもよいことを理解されるであろう。
【0069】
また、コンピュータは、システムメモリに記憶される1つ以上のライブラリーファイル、実験データファイル、およびインターネットクライアントを含んでもよい。例えば、実験データには、検出された信号値等の1つ以上の実験またはアッセイに関連するデータ、または1つ以上のSBS実験または処理に関連する他の値が挙げられる。加えて、インターネットクライアントは、ネットワークを使用して別のコンピュータ上のリモートサービスにアクセスするのを可能にするアプリケーションを含んでもよく、また、例えば、概して「ウェブブラウザ」と称されるものを備えてもよい。本実施例において、いくつかの共通に採用されるウェブブラウザには、Microsoft Corporationから入手可能なMicrosoft(登録商標)Internet Explorer7、Mozilla CorporationからのMozilla Firefox(登録商標)2、Apple Computer Corp.からのSafari1.2、または現在当技術分野において既知の、または将来的に開発される他のタイプのウェブブラウザが挙げられる。また、同じまたは他の実施形態において、インターネットクライアントは、SBSアプリケーションのためのデータ処理アプリケーション等のネットワークを介して、リモート情報へのアクセスを可能にする、特殊なソフトウェアアプリケーションを含んでもよく、またはその一要素となり得る。
【0070】
ネットワークは、当業者にとって既知である多数の各種ネットワークのうちの1つ以上を含んでもよい。例えば、ネットワークには、一般にTCP/IPプロトコルスイートと称されるものを採用して通信する、ローカルまたはワイドエリアネットワークが挙げられる。ネットワークには、一般にインターネットと称される、相互結合したコンピュータネットワークの世界的なシステムが挙げられ、または種々のイントラネットアーキテクチャも挙げられる。当業者はまた、ネットワーク化された環境内の一部のユーザが、ハードウェアおよび/またはソフトウェアシステムとの情報トラフィックを制御するように、概して「ファイアウォール」と称される(パケットフィルタまたはボーダープロテクションデバイスと称される場合もある)ものを採用するのを好む場合があることを認識されるであろう。例えば、ファイアウォールは、ハードウェアまたはソフトウェア要素、あるいはそのいくつかの組み合わせを備えてもよく、一般的に、例えばネットワーク管理者等のユーザによって導入されるセキュリティポリシーを実施するように設計される。
【0071】
b.ここに記載されている発明の実施形態
上述のように、ここに記載されている発明は、1つ以上の酵素試薬に関連する活性レベルを測定するための方法、および実質的に最適な試薬の活性レベルを提供するように、測定した酵素試薬のうちの1つ以上の濃度を動的に調整するための方法を含む。より具体的には、ここに記載されている発明は、持ち越しに起因する配列データ内の導入誤差、および特定のプロセスステップにおいて望ましくないレベルのヌクレオチド種によって、および配列決定プロセスからの検出可能な信号出力の程度を変調することによって生じる不完全伸長効果を低減するのに採用されてもよい。
【0072】
ここに記載されている発明のいくつかの実施形態は、複数の配列決定器具間および/または配列決定の実行間の信号出力を較正するための手段として採用されてもよい。また、極端に高い、または低い信号変動、および「信号流出」効果(すなわち、1つのフローからの信号は非常に高いため、信号が残って次のフローに、またはいくつかの場合では、同じ、または以降のフロー中に、隣接するウェルまたは反応部位内に漏れる)が低減され得る。いくつかの実施形態において、信号変動および/または流出の較正および低減により、フロー時間をより短くすることができ、フローを通じてより頻繁かつ効率的なサイクルがもたらされる(すなわち、フローサイクルが短くなる)。例えば、概して、出力が器具と配列決定の実行との間でより類似し、データの品質および信頼性を高めるように、各組み込み現象のための信号出力が許容範囲内にあることが望ましい。
【0073】
一般的に、測定および調整するための1つ以上のプロセスステップを自動化する、1つ以上の器具要素が採用されてもよい。例えば、配列決定法の実施形態は、プロセスステップのいくつかまたは全てを自動化して実行するように、器具類を使用して実行されてもよい。図1は、光学サブシステム110と、流体サブシステム120と、を備える、配列決定器具100の具体例を提供している。配列決定および適応制御プロセスを実行するのに採用される配列決定器具100の実施形態は、流体サブシステム120内に種々の流体構成要素、光学サブシステム110内に種々の光学的要素、および図1または2には示されていないが、いくつかの機能のローカル制御のためのマイクロプロセッサおよび/またはマイクロコントローラ構成要素を含んでもよいさらなる構成要素を含んでもよい。さらに、図1に示されているように、配列決定器具100は、例えばシステムソフトウェアを実行してもよいコンピュータ130等の1つ以上の外部コンピュータ構成要素に、または1つ以上の構成要素および/またはいくつかのデータ分析機能の指示制御を提供し得るアプリケーション135等のファームウェアに動作可能にリンクされてもよい。本実施例では、配列決定器具100および/またはコンピュータ130は、一般に上述した実施形態の構成要素および特性のうちのいくつかまたは全てを含んでもよい。
【0074】
流体サブシステム120の実施形態は、それぞれが、配列決定反応手順を伴って生じるようなプロセスステップで使用できる大量の試薬または流体を収容し得る、流体リザーバ201、流体リザーバ203、流体リザーバ205、流体リザーバ207、および流体リザーバ209等の、種々の構成要素を含んでもよい。例えば、リザーバ201〜209には、個々のヌクレオチド種(すなわちA、C、G、T、またはU)、アピラーゼ、スルフリラーゼ、ルシフェラーゼ、PPiアーゼまたは他の酵素等の特定の酵素、ATPまたはPPiを含み得る試験または較正流体、基質、酵素エンハンサまたは阻害剤、対イオン(すなわち、Ca2+またはMg2+)および/または好適なpHの水および/または漂白剤、ヨウ素、または他の消毒液の希釈物を含み得るバッファまたは洗浄液、または配列決定プロセスで、またはその調製に使用可能な他の流体等の、大量の試薬を収容する瓶、フラスコ、管、キュベット、または他の液密レセプタクルが挙げられる。流体サブシステム120の実施形態はまた、再利用に望ましくない、使用済みの、または消費された流体の再回収および貯蔵のための、1つ以上の廃棄物リザーバ240を含んでもよい。リザーバ240の複数の実施形態は、不適応である、組み合わせると危険である、または概して、分けた状態を保つことが好ましい流体に採用されてもよいことを認識されるであろう。
【0075】
さらにリザーバ201〜209のそれぞれは、多重ポート弁200と流体連通してもよい。多重ポート弁は、概して、当業者には既知であり、Indianapolice,IndianaのSMC Corporation等の供給業者から入手することができる。図2の実施例において、多重ポート弁200は、指定された量の流体をリザーバ201〜209からフローセル250まで移動させることが選択的にできるように、開閉を行うことを可能にする。開閉の期間は、「パルス幅」と称されてもよく、概して、弁が開放に費やす時間の単位として測定される(すなわち、ミリ秒または他の同様の尺度で測定され得る)。場合によっては、1つの流体の導入に関連するパルス幅は、別の流体の導入と同時に生じ得、2つの流体は互いに混合してもよい。さらに、多重ポート弁200は、リザーバ201〜209のうちの1つ以上からの流量を同時に調整するのを可能にする。本実施例では、調整可能な流量またはパルス幅タイミングが、試薬の濃度および希釈の正確な制御を可能にする。例えば、試薬の10倍希釈を制御するための1つの可能な方法は、プロセスステップに関連する全ての試薬が、フローセル250を通じてフローできるようにする時間の1/10に等しいパルス幅を伴って、リザーバ201〜209のうちの1つからのフローを開放することによって達成されてもよい。いくつかの実施形態において、弁200は、より良好な希釈の均質性を提供するように、間隔(すなわち、より短いパルス幅を伴う開放対閉鎖の間隔)をおいて「パルスされる」。
【0076】
いくつかの代替の実施形態は、弁200が開放される程度を変調することによって、弁200を通じた流量を制御するステップを含んでもよい。換言すれば、弁200は、わずかな部分的開放から完全な開放までの範囲を通じて開放されてもよく、流量は、開放の程度に依存する。リザーバ201〜209内の1つ以上の試薬の濃度が正確に知られていることが望ましくなり得ることを認識されるであろう。さらに、リザーバ201〜209内の試薬の濃度が、配列決定プロセスに望ましい濃度よりも高いことが望ましく、場合によっては、大幅に高いことが望ましく、したがって、希釈および最終濃度の容易な管理を行えるようにすることが望ましい場合がある。
【0077】
当業者は、流体サブシステム120が例示的なものであり、他の構成要素が代表的な流体サブシステム内に含まれ得ることも認識されるであろう。例えば、いくつかの実施形態は、リザーバ内の流体容量、および/または正確なあるいは予想される流体がリザーバ201〜209内に存在する、もしくは弁200を通じてフローするのを検出可能にするセンサを含んでもよい。センサには、導電率センサ、光センサ(すなわち、光学密度)、音響センサ(すなわち、超音波密度)、またはpHセンサ等の、1つ以上のセンサの組み合わせが挙げられる。サブシステムの実施形態におけるいくつかの代表的な流体構成要素には、弁、管、ポンプ(すなわち、蠕動ポンプ)、加熱/冷却要素(すなわち、放熱板)、または従来技術において共通に採用される他の要素も挙げられる。
【0078】
また、図2には、フローセル250と、反応基質105と、検出器260と、を含む、光学サブシステム110に関連する構成要素も示されている。例えば、フローセル250は、いくつかの実施形態において、実質的に同一の鋳型核酸分子の多数の集団を収容するPTPプレートのウェルを含む、反応環境基質105の第1の表面と流体連通する。したがって、フローセル250に導入される流体は、基質105および鋳型核酸分子と接触する。また、いくつかの実施形態では、試薬の効率的な導入および基質105からの除去のために、「対流」フローと称されるものがフローセル250内に確立されてもよい。配列決定の実施形態における対流フローの実施例およびその利点は、米国特許出願第10/191,438号、第11/016,942号、第11/217,194号に記載されており、それぞれ、全ての目的に対して参照することによりその全体が本願明細書に組み込まれる。加えて、上述のように、検出器260は、CCDカメラ、光電子増倍管(PMT)、または当業者にとって既知である他の光検出デバイスの一実施形態を含んでもよい。好ましくは、検出器260は、配列決定反応から生成される光が検出器260に伝送されるように、反応基質105の表面と光通信する。いくつかの実施形態において、フローセル250および反応環境基質105は、同じ要素であり、フローセル250が基質105としての役割を果たす1つ以上の内表面を含んでもよいことも認識されるであろう。
【0079】
上述のように、ここに記載されている発明の実施形態は、反応環境に送達される1つ以上の酵素試薬の濃度を動的に制御するが、例えば、濃度、および多重ポート弁200を介した反応環境基質105への送達の制御が挙げられる。例えば、コンピュータ130は、動的な濃度調整の指示制御を提供するシステムメモリでの実行のために記憶される、アプリケーション135を含んでもよい。いくつかの実施形態において、アプリケーション135はまた、濃度調整を計算するための入力を受信し、実装する望ましい調整を判断し、また、指示制御を、弁200のタイミング制御のためのマイクロコントローラ要素等の、配列決定器具100の1つ以上の要素に提供する。本実施例では、アプリケーション135は、1つ以上の酵素試薬の初期濃度値で配列決定プロセスを開始し、所定の時間間隔で(すなわち、予め定義された希釈プロファイルのための開ループ型機構を採用してもよい)、または試薬の濃度が配列決定の実行中に連続的または定期的に測定され得る、測定した変化に応じて(すなわち、測定した試薬活性のための閉ループ型のフィードバック制御機構を採用してもよい)、濃度を調整してもよい。
【0080】
当業者は、酵素試薬の種々の実施形態の有効性または活性は、ロットごとの変動、製造業者間の変動、経時的な分解(すなわち、貯蔵寿命)、環境効果(すなわち、温度、湿度等)、および既知または未知の他の効果等の、様々な理由によって変動し得ることを認識されるであろう。したがって、概して、少なくとも部分的にその活性レベルに基づいて、反応時の酵素試薬の濃度を調整することは好都合である。当業者は、酵素活性は、概して、酵素単位(U)で測定され、1Uは、1分間に1マイクロモルの基質の変換を触媒する酵素の量に相当することを認識されるであろう。時折酵素活性に採用される別の単位は、1カタールと称される。また、温度およびpH等の特定の環境条件が酵素の触媒率に影響を及ぼし、概して、配列決定プロセスにおいて酵素を測定および採用する時に、そのような条件の定量化および/または制御が望ましいことも認識されるであろう。重要なことに、酵素試薬の「濃度」という用語は、本願明細書で使用する場合、容量単位あたりの酵素試薬の活性レベルを指す(概して、測定単位には、U/mlが挙げられる)。
【0081】
一般に上述したように、いくつかの酵素は、経時的に触媒活性レベルを減少させ、場合によっては、触媒活性の相当な損失をもたらす。このような活性の損失率は、貯蔵条件および酵素の種類を含む複数の要因に依存し、直接的に測定しなければ、変化率を予測することは極めて困難なものとなり得る。さらに、一部の配列決定プロセスは、実行を完了するのに時間を延長する必要が生じ得、例えばアピラーゼ等のいくつかの試薬は、時間の延長とともに特に問題を含む可能性があるいくつかの環境条件に特に敏感になり得る。いくつかの実施形態において、ユーザ101は、触媒活性の損失に気付かない場合があり、本願明細書に記載されている適応制御によって、実験全体の壊滅的な損失を含み得る結果が回避される場合がある。
【0082】
図3は、全ての試料について同じである推定濃度を有するアピラーゼ酵素の異なる試料の活性における測定した変動の具体例を提供している。パルス幅(すなわち、容量)は、測定した試料のそれぞれについて同じであったが、それぞれが、異なるレベルの検出した相対信号、したがって活性を有するように測定された。本実施例では、酵素試料305A、305B、および305Cのそれぞれの「測定した相対信号」は、以下に述べる振幅測定法を使用し、各試料中の酵素の活性レベルと相関させて測定した。重要なことに、試験を行った13の異なる試料の中で、活性レベルに相当な変動があり、したがって、配列決定プロセスに対する各酵素試料の効果は、部分的に、活性レベルに依存することは明確である。
【0083】
また、当業者は、酵素試薬の測定した活性は、例えば基質、エンハンサ、または阻害剤を含み得る当該の酵素試薬と相互作用する、1つ以上の他の試薬の濃度に、少なくとも部分的に、依存し得ることも認識されるであろう。例えば、ヌクレオチド種を不活性化するのに採用されるアピラーゼの望ましい濃度は、フローセル250および/または反応基質105の反応環境中の該ヌクレオチド種の濃度に部分的に依存する。換言すれば、ヌクレオチド種の濃度が高い、または低い場合、アピラーゼの望ましい活性に関連する濃度も、同じように高く、または低くなければならない。また、いくつかの実施形態において、反応環境は、拡散またはフロー特性を低減する複雑さを含んでもよい。そのような場合、このような複雑さを補うためにアピラーゼ濃度を調整することが望ましくなり得る。
【0084】
上述のように、ここに記載されている発明の実施形態は、配列決定プロセスの一部として1つ以上の酵素試薬の活性を測定するステップを含む。例えば、本発明のいくつかの実施形態は、酵素の活性レベルを測定し、それに応じて酵素濃度を調整するように、酵素試薬を使用して1つ以上の試験反応を実行することによって、および反応の結果を測定することによって、配列決定プロセスに採用される1つ以上の酵素試薬の活性を測定する。当業者は、酵素活性を測定するための方法が、酵素の種および他の要因に少なくとも部分的に依存することを認識されるであろう。また、測定は、酵素試薬によって異なり、場合によっては、測定方法は、酵素試薬と相互作用する多数の試薬の存在下で、酵素試薬の活性の指示を提供してもよい。いくつかの実施形態では、多数の相互作用試薬のうちの1つ以上の濃度または環境条件を変調することによって、酵素試薬の活性を制御することが好ましくなり得る。例えば、アピラーゼの活性レベルは、pHを使用して調整されてもよく、最適なアピラーゼ活性には、約6.5のpHが好ましい。したがって、アピラーゼの活性は、より高い、またはより低いpHを使用することによって下げられてもよく、差異の程度は、低減される活性の程度に関連する。他の酵素に最適である配列決定プロセスまたはステップで、pHレベルを使用することが望ましくなり得ることも認識されるであろう。本実施例では、ポリメラーゼ酵素の性能に最適である、約7.8のpHが、配列決定プロセスに採用されてもよい。そのような場合、概して、配列決定プロセスの好適なpHを使用して、アピラーゼ活性を測定および調整することが好ましい。
【0085】
代替として、配列決定システム100によって実装される配列決定プロセスのいくつかの実施形態において、異なる酵素の最適な範囲に適するように、環境条件を修正することが可能である。例えば、過剰なヌクレオチド種およびATPを除去する洗浄ステップにアピラーゼが含まれた時の、処理ステップの逐次的な性質のため、アピラーゼ活性のレベルを最適化するpHを伴うアピラーゼとともに、バッファが採用されてもよい。その後、ポリメラーゼ酵素を使用した、次のヌクレオチド組み込みステップ中に、ポリメラーゼ活性を最適化するために、ポリメラーゼに最適なpH条件を伴う異なるバッファが採用されてもよい。加えて、各最適化バッファは、アピラーゼのバッファについてはCa2+、ポリメラーゼのバッファについてはMg2+等の、各酵素の好適な対イオンを含んでもよい。
【0086】
アピラーゼのための測定法の一実施形態は、次善のアピラーゼ濃度によって導入される誤差を誇張するように設計された特別な試験分子を採用する、「位相測定」と称され得る。より具体的には、上述した低アピラーゼ濃度の持ち越し効果は、配列決定器具100によって容易に測定され、さらに酵素の相対触媒活性と容易に相関される。例えば、試験分子は、GCGCCCCCCCC(配列番号1)を含む、ヌクレオチド種の配列組成を含んでもよい。重要なことに、試験分子は、最少数のフローサイクルで測定可能な誤差を生成する、配列組成を含む。本実施例では、試験分子の正確な配列が分かっていて、CおよびGヌクレオチド種だけを含んでいるので、CおよびGヌクレオチド種のフローを導入するだけの特別な配列決定が採用されてもよい。ヌクレオチド種を2つだけ使用することは、試薬の使用量を節約し、また、反応環境中に存在し得るAまたはTヌクレオチド種で始まる試料分子との反応を回避する。例えば、あらゆる実質的に同一の鋳型分子に関連するアダプタ要素は、最初の配列位置に、またはいくつかの実施形態では、最初のいくつかの配列位置(すなわち、2〜10の配列位置の範囲を含んでもよい)に、AまたはTヌクレオチド種を含んでもよい。したがって、GおよびCヌクレオチド種組成を伴う試験分子の使用は、配列データを損なわずに、鋳型分子の存在下で採用されてもよい。さらに、アピラーゼ濃度は、必要に応じて濃度を逐次に増減するように基線を提供する、誇張された効果を生成するように、試験プロトコル時に修正されてもよい。例えば、アピラーゼ濃度は、繰越誤差(carry forward error)の導入を結果として生じる配列データ内に生成するように、「通常」の10分の1、または一般的に配列決定プロセスで採用される最適な濃度となり得るパルス幅を使用して採用される。重要なことに、アピラーゼの濃度が標準濃度よりも低くなり得る場合であっても、比較的容易に、システム中のアピラーゼの触媒活性が特定され、また、配列決定の実行時に使用する望ましい濃度を達成するためのアピラーゼの希釈度が計算される。
【0087】
本実施例の試験分子から生成されることが予想される、いかなる繰越誤差の導入も伴わない例示的なフローグラムを図4Aに示すが、信号レベル407は、種のフロー405中の試験分子の配列組成と正確に相関する。換言すれば、信号レベル407の1.0という値は、試験分子中に単一のヌクレオチド種を含む、最初の3つの配列位置の配列組成の代表例である。8.0という値は、試験分子中の次の配列位置の8つのホモポリマーの実行の代表例である。
【0088】
上述したものから実施例を続けると、低アピラーゼ濃度を使用して、反応基質の単純な洗浄が、以前の実行から全てのヌクレオチド種を除去するには不十分であると仮定すると、試験分子から生成される配列データは、測定可能な繰越誤差を生成する。図4Bは、試験分子に対する種のフロー405の繰越誤差の可能な効果の一実施例を示している。濃い破線は、それぞれの種のフロー405の、繰越誤差を伴う信号レベル407を表す。例えば、低アピラーゼ濃度では、Cヌクレオチド種の2回目のフロー中に反応環境中に存在する、1回目のフローからの残存物である残留Gヌクレオチド種が存在し、両方の導入された種から光を生成する両方のヌクレオチド種の導入(すなわち、試験分子の2番目のCおよび3番目のGの配列位置、およびおそらくは4番目〜8番目のCの位置での導入)、および検出信号レベルの測定可能な増加をもたらす。測定可能な増加は、2回目のフロー中に存在する残留Gヌクレオチド種の量を示し、アピラーゼの活性レベル(すなわち、Gヌクレオチド分子の全てが分解しなかった低い濃度)と相関する。効果は、3回目のフローに対してさらに誇張され、3回目のフロー中に、反応環境中に2回目のフローからの残留Cヌクレオチド種が存在し、同様に測定可能な持ち越し効果をもたらす。最後に、C種の4回目のフローは、必要に応じて採用されてもよく、以前のフローからのCヌクレオチド種の前伸長を表す、持ち越し効果からの測定可能な信号の低減を示す。換言すれば、以前のフローサイクル時の持ち越し伸長のため、4回目のフロー中に、Cヌクレオチド種のフローを伴う位相(または位相同期性)中の試験分子が少なくなり、したがって、導入現象が少なくなり、繰越誤差が存在しなかった場合に予想されるよりも少ない検出信号をもたらす。本実施例において、検出信号値は、それでも以前のフローよりも鮮明であり、試験分子を含むウェルの識別に有用なものとなり得ると認識されるであろう。
【0089】
アピラーゼ活性を測定するための別の手法は、本願明細書では「振幅測定」と称される。振幅測定は、いかなる特別な試験分子も必要としないので、位相測定法を上回るいくつかの利点を有し、代わりに、振幅測定は、配列決定プロセス内の他のステップに影響を及ぼさない反応基質としてATPを採用してもよい。さらに、振幅測定法は、単純なフローアルゴリズムおよび信号処理方法を採用する(アプリケーション135は、ウェル発見アルゴリズムを実装する必要が無い)。加えて、振幅測定は、位相誤差のリスクを導入すること無く(すなわち、鋳型核酸分子に関連する新生鎖中に組み込むことができる、dNTP種を測定中に添加することによって)、頻繁な測定により適するものとなり得、また、他の背景誤差源に敏感ではなくなる。
【0090】
上述のように、振幅測定のいくつかの実施形態は、アデノシン三リン酸基質(一般にATPと称される)を、ピロリン酸塩配列決定プロセスにおいて機能的に不活性にするアデノシン二リン酸(一般にADPと称される)に変換するという、アピラーゼの特性を採用する。ATPは、概して、エネルギー移動のための細胞代謝に重要なものとして認識され、1つの反応生成物として光を生成するルシフェラーゼ酵素によるルシフェリンの触媒作用のための基本的な反応基質である。また、ルシフェリンおよびルシフェラーゼは、一般的に、ヌクレオチド種が組み込まれる時に最終的に光を生成させるピロ配列決定法に使用されることも認識されるであろう。ATPを加水分解/分解する能力に対するアピラーゼ活性の効率は、システム100の光検出能力を使用して光出力を測定することによって、ルシフェリンおよびルシフェラーゼの存在下で容易に測定され得る。他のヌクレオチド三リン酸塩(すなわち、CTP、GTP、またはTTP)、リボヌクレオチド、またはデオキシヌクレオチド(デオキシヌクレオチド三リン酸塩、dNTP等)を含む他の反応基質も、いくつかの実施形態において、ATPに代わるものとして採用されてもよい。しかしながら、位相測定法に関して上述した、ポリメラーゼによる新生鎖内へのdNTPの組み込みのリスクが存在し、いくつかの用途には理想的ではない場合もあるものと認識されるであろう。
【0091】
振幅測定を採用する配列決定プロセスのいくつかの実施形態では、配列決定反応で採用されるdNTP種ごとのアピラーゼ活性を特定することが好都合となり得る。本説明の他の場所で述べられているように、アピラーゼは、洗浄段階中にATPおよびdNTP種の両方を分解するのに採用されてもよく、アピラーゼ活性は、異なるdNTP種によって変動し得る。例えば、限界濃度で存在するATPによる過剰な濃度を伴う各dNTP種の試験を別々に行う測定法が採用されてもよい。したがって、dNTPは、アピラーゼを含むATPのための競合物として作用し、アピラーゼが各ヌクレオチド種を分解する効率を特定することができる。次いで、各ヌクレオチド種のためのアピラーゼの最適濃度が、それぞれのヌクレオチド種とともに各フローの後に採用されてもよい。
【0092】
振幅測定の第1の実施形態は、ある濃度のアピラーゼおよびある濃度のATP反応基質を反応環境中に同時に導入するステップと、反応性生物として光の出力を測定するステップと、測定した出力を酵素の活性レベルと相関するステップと、を含む。上述の実施形態において、アピラーゼ活性は、反応環境中のATP基質の濃度に依存せず、反応は、ATPの「一次」反応におけるものである。しかしながら、それでも既知のATP濃度を使用することは、概して好都合である。器具100のいくつかの実施形態において、ルシフェリン、ルシフェラーゼ、およびスルフリラーゼ酵素は、配列決定プロセスに要求されるものを超える過剰な濃度の反応環境中に存在し、過剰な濃度は、他の相互作用またはプロセスに対していかなる悪影響も及ぼさない。実際に、過剰な濃度のルシフェリン、ルシフェラーゼ、およびスルフリラーゼは、ルシフェラーゼまたはスルフリラーゼ酵素の可能な低触媒活性効果を打ち消すのに有用なものとなり得る(本発明の方法はまた、以下に詳述するように、ルシフェラーゼおよび/またはスルフリラーゼ活性の測定に採用されてもよい)。したがって、ATP反応基質は、阻害効果の無い状態で反応環境中に導入される時に、ルシフェリンおよびルシフェラーゼと反応し、光の生成がもたらされる。同時に、アピラーゼは、ATPをADPに変換することによって、光生成効果を抑制するように作用する。したがって、ATPの添加から生成される光の量は、アピラーゼ活性およびADPにATPを変換する効率を示す。例えば、多重ポート弁200は、アピラーゼおよびATPの望ましい濃度を測定し、これらをフローセル250に導入してもよい。本実施例では、アピラーゼおよびATP試薬は、複合流体として並行して、または相異なる流体として順次に(すなわち、アピラーゼが最初に添加され、ATPが2番目に添加される、またはこの逆の順序で)、フローセル250中に導入されてもよい。本実施例を続けると、アピラーゼは、フローセル250への導入に応じて、ATPをADPに変換するように即座に作用し得、測定可能な活性率は、ATPがシフェラーゼ酵素と接触した時に生成される光から導出され得る。
【0093】
図5は、ATP反応基質を含む異なるアピラーゼ濃度の反応環境中への導入から検出される相対信号間の関係の具体例を提供している。図5には、設定点信号レベル505、および配列決定プロセスでの使用に望ましいレベルを示す酵素濃度515も示されている。重要なことに、検出相対信号とアピラーゼ濃度との関係は直線であり、それによって、望ましい活性レベルを伴う濃度を達成するアピラーゼストック溶液に対する容易な特定および調整を可能にする。例えば、線形関係を示すように、測定したデータ点510を通って回帰直線が引かれてもよい。また、本実施例において、酵素濃度515の最適濃度は、0.95U/mlの値を含む。
【0094】
振幅測定の第2の実施形態は、ある濃度のアピラーゼおよびある濃度のPPi反応基質を、同時に、または逐次的に反応環境に導入するステップを含んでもよい。スルフリラーゼはATPを反応生成物として生成するPPiを触媒し、したがって、アピラーゼ酵素の活性は、上述のように測定されてもよい。PPiを試験または反応基質として使用することの1つの可能な欠点は、器具100、および過剰なPPiを分解するように、PPiアーゼを採用する(すなわち、フローに採用されてもよい、および/または反応環境中で固相ビーズ基質上に固定されてもよい)方法の実施形態で経験されるであろう。したがって、PPiアーゼ活性は、アピラーゼ活性の測定を中断させてもよい。しかしながら、PPiアーゼ活性の測定は、ここに記載されている実施形態を使用して(すなわち、PPiおよびPPiアーゼ活性の基線推定を確立するように、ある期間、アピラーゼの非存在下でPPiアーゼを伴うPPiを競合物としてフローすることによって)行われてもよい。さらに、PPiフローによって生成されるATPは、それが生成部位に存在し、また、弁200を通じて導入される時と同程度に偏在して分布されないので、領域特異的なものとなり得る。配列決定プロセスにPPiアーゼを採用する実施形態の実施例は、2008年2月6日に出願された米国暫定特許出願第61/026,547号、名称「System and Method for Improved Signal Detection in Nucleic Acid Sequencing」に記載されており、全ての目的に対して参照することにより本願明細書にその全てが組み込まれる。
【0095】
ルシフェラーゼおよびスルフリラーゼ等の他の酵素試薬の濃度の測定および適応制御のための実施形態はまた、競合反応基質を使用して実行されてもよいことも認識されるであろう。例えば、信号出力の変動は、ルシフェリン、ルシフェラーゼ、またはスルフリラーゼの活性または濃度レベル(局所化された領域が、高いまたは低い濃度を有し得る空間的効果も含み得る)、および鋳型分子の濃度および分布に、少なくとも部分的に起因し得る。本実施例では、配列決定器具100のいくつかの実施形態は、同じく1つ以上のビーズ上に配置されてもよい実質的に同一の鋳型分子の集団を伴う反応ウェル中に配置されるビーズに結合される、ルシフェラーゼおよびスルフリラーゼ酵素を採用してもよい。ビーズの配設は、「層状化効果」と称されるものをもたらし得る。層状化効果という用語は、本願明細書で使用する場合、概して、反応環境中で対象材料を分布させるのに使用されるプロセスの結果となり得る、基質、試薬、標的等の局所化された分布における差異を指す。結果は、互いに関連する、または鋳型分子の集団またはそのいくつかの組み合わせに関連する酵素のうちの1つ以上の濃度における局所化した分散を含み得る。
【0096】
特定の酵素試薬のためのパルス幅の修正に加えて、システム利得および較正を制御するための一実施形態は、酵素の活性レベルを変調する「阻害剤」として既知であるものを採用するステップを含む。「阻害剤」という用語は、本願明細書で使用する場合、概して、1つの分子、阻害剤が、他の活性における負の影響力を及ぼす、相互作用する分子の関係を指す。ここに記載されている発明では、ヌクレオチド種の組み込みおよびPPiの放出に応じて光の生成をもたらす反応のカスケードで重要な、スルフリラーゼおよびルシフェラーゼ酵素の活性を変調することが望まれ得る。例えば、CAPMBT等のルシフェラーゼ酵素の阻害剤は、多重ポート弁200を介して、フローセル250および反応基質105の反応環境中に導入されてもよい。いくつかの実施形態において、阻害剤は、1つ以上の組み込み現象からの測定した光出力に応じて、アプリケーション135の制御下で添加される。光出力は、キー配列または上述した試験分子を含み得る既知の組成を有する配列からの出力を測定する等の、多数の方法で測定されてもよい。さらに、光出力は、上述のようにATPまたはPPiのフローから測定されてもよく、配列決定の実行中に生じ得る「信号減衰」または「信号垂下」と称され得るものを測定するのに有用なものにもなり得る。アプリケーション135の制御下の多重ポート弁200は、望ましい酵素活性レベルに到達するように、適切な濃度の阻害剤を添加してもよい。いくつかの実施形態において、プロセスは反復されてもよく、以降の回の測定および較正は、望ましい結果が達成されるまで実行されてもよい。
【0097】
システム利得および較正を制御するための別の実施形態は、1つ以上の「基質」試薬を変調するステップを含み、利用できる基質の量または濃度の増加は、信号出力の増加をもたらす。例えば、上述したようなATPまたはPPiのフローからの光出力は、D−ルシフェリンおよび/またはAPSを含む基質に関連する活性を変調するのに採用されてもよい。システム利得について上述したように、多重ポート弁200は、アプリケーション135の制御下で、望ましい活性レベルに到達するように、適切な濃度の阻害剤を添加してもよい。さらに別の実施形態は、上述した酵素、阻害剤、または基質の一部または全てを、いくつかの組み合わせで変調するステップを含んでもよい。
【0098】
さらなる実施形態は、pH等の環境条件を使用した、酵素の活性レベルの変調を含んでもよい。多数の酵素について、酵素活性のレベルは、酵素の活性に最適なpHレベルと比較して、反応環境中のpHレベルの関係に少なくとも部分的に依存し得る。異なる酵素の活性レベルは、一般的に、それらの最適な条件に関して互いに異なり得ること、および、次善となり得るが、より高い濃度または量の使用を補い得る条件で、1つ以上の酵素を採用するのに好都合となり得ることに留意することが重要である。例えば、アピラーゼ活性の最適なpHは、6.5の値を含み得、ポリメラーゼの最適なpHは7.8の値を含み得る。
【0099】
上述のように、ここに記載されている発明の要素は、核酸配列決定プロセスにおける1つ以上の酵素試薬の適応制御に関する。概して、本発明の実施形態は、配列決定の実行中に一定間隔で、配列決定の実行中に一貫した監視で、またはそのいくつかの組み合わせで、配列決定の実行の開始前に、またはそれと同時に、1つ以上の酵素試薬の活性を測定するステップを含む。いくつかの実施形態では、統計的有意性の測定を可能にするように複数の測定を行うこと、および、測定時および/または較正時の誤差、およびシステム内の条件に対する一時的な変更を制御することが、非常に望ましくなり得る。複数の測定を行うことは、より正確に調整された、最終的な濃度の酵素試薬に到達するように、統計的有意性の尺度を特定するのに有用である。例えば、測定プロセスは、3つの異なるアピラーゼ容量(パルス幅によって特定される)でのATP反応基質を含むアピラーゼの一連のフローと、各フローについて測定した光の信号出力と、を含んでもよい。ATPの濃度は、正確である必要は無いが、約0.875μMの濃度を含み得る。本実施例では、この一連のフローは、83ms(約0.0079u/mlの予想濃度)、138ms(約0.0131u/mlの予想濃度)および201ms(約0.019u/mlの予想濃度)を含む、3つのパルス幅のそれぞれでのアピラーゼの3つのフローを含む。各パルス幅でのフローから測定した相対信号は、平均化され、平均化した点を通じて回帰直線がプロットされ、補正因子の特定に採用される。アピラーゼ濃度を調整した後に、プロセスは、該調整が正確であることを検証するように、調整した濃度で繰り返されてもよい。
【0100】
上述のように、測定ステップの後に、試薬、またはエンハンサ、阻害剤、または該試薬と相互作用する基質の濃度または希釈を使用して、1つ以上の酵素試薬の活性が変調される。変調は、反応環境中の酵素試薬の濃度を変調する「開ループ」または「閉ループ」戦略を使用して、または反応環境中の1つ以上のパラメータまたは条件(すなわち、温度、流量、pH等)の操作を介して行われてもよい。「開ループ」という用語は、本願明細書で使用する場合、概して、フィードバックに対応しない、固定された所定の設定を指す。「閉ループ」という用語は、本願明細書で使用する場合、概して、変調の量が測定したパラメータに応じて修正される、フィードバック制御のシステムを指す。開および閉ループ変調の戦略は、それぞれが利点を種々の実施形態に提供し得る。例えば、2つの全般的なカテゴリに分類される実施形態は、信号減衰補償およびアピラーゼ補償と称され得るものを含む。
【0101】
例えば、信号減衰に対する補正または補償を印加する開ループ変調戦略を実施形態に採用する利点には、阻害剤の濃度の低減を通じて光の生成を高めることによって信号出力能力が高められること、および/または上述のように基質濃度が高められることが挙げられる。さらに、アピラーゼ活性に対する補正または補償を印加する開ループ変調戦略を実施形態に採用する利点には、触媒活性の分解、または位相同期性誤差の蓄積に対処するための、濃度の増加が挙げられる。また、利点には、ポリメラーゼまたはポリメラーゼ活性の損失に対処するように、濃度が減少されることが挙げられる。本実施例では、どちらの実施形態も、あるレベルの安定性および/または予測性を含み、配列決定の実行期間内で、顕著な、または予測不可能な変化が生じる可能性が低いので、開ループ戦略が好都合である。さらに、該利点は、データ品質および比較性に及ぶが、それは、配列決定の実行中のデータの一貫性に望ましい。
【0102】
本実施例を続けると、信号減衰およびアピラーゼに対する補正または補償を印加する閉ループ変調戦略を実施形態に採用する利点には、より高い品質でより信頼性のあるデータを生成するための、より細密な調整が挙げられる。また、閉ループ変調戦略は、予測性および/または安定性のレベルが望ましい閾値と比較して低い実施形態に好適なものとなり得る。
【0103】
また、上述のように、1つ以上の酵素の触媒活性レベルは、反応環境中の条件に少なくとも部分的に依存し得る。例えば、アピラーゼの分解率は、温度に依存し得、温度が上昇するにつれて分解率が増加する。結果は、繰越誤差の増加をもたらす、アピラーゼ濃度の予測外の低下を含み得る。代替として、温度が下がるにつれて、分解率が低下し、過剰な濃度のアピラーゼを蓄積できるようになり得、不完全伸長誤差の増加をもたらす。本実施例では、温度は、器具100で測定されてもよく、望ましいパラメータ内に性能を維持するように、アプリケーション135の制御の下で変調されてもよい。温度はまた、上述のように他の活性効果を補うように、変調をアピラーゼ活性に印加するために採用されてもよい。
【実施例】
【0104】
実施例1−適応アピラーゼプロセスの検証
アピラーゼ活性を測定するためのプロセスの検証、所定のアピラーゼ活性の達成に必要なパルス幅補正因子の決定、および補正因子によるアピラーゼの調整。
【0105】
アピラーゼ活性の意味:ウェルの酵素活性で測定される、アピラーゼが分解することができるATPの量;
補正因子の意味:所定のアピラーゼ活性をATPだけによって生成される信号によって正規化されるアピラーゼの濃度を伴うATPのパルスによって生成される信号;
設定点の意味:望ましい所定の相対信号。これは、補正因子が、測定するアピラーゼのパルス幅を補正すべきであるという相対信号である。
【0106】
アピラーゼ活性を測定するフローを実行するスクリプトを書き込んだ。補正因子の計算を実行し、次いで、補正因子の精度を特定するように、公称アピラーゼ活性測定フローに印加した。標準的なスクリプトにおいて、補正因子を、洗浄カーネル中のアピラーゼパルスに印加した。該スクリプトを、「測定−調整−再測定」スクリプトと称した。該スクリプトは、アピラーゼ測定フロー、アピラーゼパルス幅の調整、および調整したパルスで3回、アピラーゼ活性の再測定を実行した。これらの3つ測定の平均を、調整要因の精度を特定するメトリックとみなした。
【0107】
以下の試験を行った。
【0108】
【表1】

アピラーゼパルスから相対信号への代表的な変換は、0.002cnt/ms以下であることに留意されたい。138msの測定パルスを発明者らの公称濃度として使用すると、再測定した値内のx%の相対誤差から、アピラーゼ濃度の相対誤差への変換は、0.79の設定点の場合、(x/100×0.79)/(0.002×138)である。例えば、1.48%(試験1)の相対信号内の相対誤差は、4.24%のアピラーゼ濃度の誤差を示す。
【0109】
試験1の結果を以下に示す。プロセスは、アピラーゼ測定および補正因子を計算するのに使用される領域である、ATPだけの画像から関心の領域を特定するアルゴリズムの能力を検証した。
【0110】
アルゴリズムは、各ロードしたレーンの中心および幅を特定し、関心の内側領域を選択する。「測定−調整−再測定」サイクルは、6回実行され、6回の再測定カーネルのそれぞれが3回の反復を含む。これら3回の測定ステップ平均は、関心のメトリックとした。
【0111】
aaLog.txtは、器具によって生成され、実行ディレクトリ内に含まれる適応アピラーゼの結果の要約である。このログは、上述の情報および第1の「測定−調整−再測定」サイクルのデータを要約するものであり、明確にするためコメントが入力されている。
【0112】
【化1】

【0113】
【化2】

4回の試験(合計の「再測定」値は24)を通じて、90%の信頼度で、アルゴリズムは、その時の設定点の5%の範囲内、少なくとも78%で相対信号を生成するように、パルス幅を補正した(成功:22)。2つの外れ値を除去した場合は、その時の5%の範囲内、少なくとも89%となる(成功:24)。また、マイクロコントローラは、計算したパルス幅の0.5msの範囲内で、アピラーゼのパルス幅を制御できることも検証された。
【0114】
本発明の種々の実施形態および実装を説明したが、上述のものは例証のみを意図しており、制限をするものではないことは、当業者には明らかである。例示の実施形態の種々の機能要素の間で機能を分配するための、他の多数のスキームが可能である。いかなる要素の機能も、代替の実施形態において種々の方法で行われてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
適応試薬制御のための方法であって、
a)第1の濃度の酵素試薬を、反応基質を含む反応環境中に導入するステップであって、前記酵素試薬および反応基質は、配列決定プロセスの構成部分である、ステップと、
b)前記反応環境中の前記第1の濃度の前記酵素試薬の活性レベルを測定するステップであって、前記活性レベルは、前記酵素試薬と前記反応基質との間の反応の測定可能な生成物を含む、ステップと、
c)前記第1の濃度の前記測定した活性レベルを使用して、最適濃度を特定するステップと、
d)前記酵素試薬の前記最適濃度を使用して、前記反応環境中で前記配列決定プロセスを実行するステップであって、前記配列決定プロセスは、反復する一連の配列決定反応を含む、ステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
ステップd)の前に、前記第1の濃度として前記最適濃度を使用して、ステップa)およびb)を繰り返すステップと、
前記測定した活性レベルを使用して、前記酵素試薬の前記最適濃度を検証するステップと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第2の濃度および第3の濃度の前記酵素試薬を、前記反応基質を含む前記反応環境中に導入するステップと、
前記反応環境中の前記第2および第3の濃度の前記酵素試薬の活性レベルを測定するステップと、
前記第1、第2、および第3の濃度の前記測定した活性レベルを使用して、前記最適濃度を特定するステップと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1、第2、および第3の濃度のそれぞれについて、前記活性レベルを2回以上測定するステップであって、前記最適濃度は、前記第1、第2、および第3の濃度のそれぞれにおける前記2つ以上の測定した活性レベルの平均を使用して特定される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
e)前記配列決定プロセス中に、ステップa)〜c)を1回以上繰り返すステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記酵素試薬は、アピラーゼを含み、前記反応基質は、ATPを含み、前記ATPは、前記アピラーゼを含む前記反応環境中に導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記反復する一連の配列決定反応は、鋳型核酸を用いて実行され、前記最適濃度の前記アピラーゼは、後続反復時に生成される前記鋳型核酸の配列組成中の導入誤差を低減するように、配列決定反応の後続反復の前に前記反応環境中に導入される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記導入誤差は、前記反応環境中の前記アピラーゼの濃度が前記最適濃度よりも低い時に、繰越誤差を含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記導入誤差は、前記反応環境中の前記アピラーゼの濃度が前記最適濃度よりも高い時に、不完全伸長誤差を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記導入誤差は、前記反応環境中の前記アピラーゼの濃度が前記最適濃度よりも高い時に、前記配列決定反応からの少量の反応生成物を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記酵素試薬は、PPiアーゼを含み、前記反応物質は、PPiを含み、前記PPiは、前記PPiアーゼを含む前記反応環境中に導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記酵素試薬は、アピラーゼを含み、前記反応基質は、PPiを含み、前記PPiは、前記アピラーゼを含む前記反応環境中に導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記酵素試薬は、環境条件に敏感であり、前記環境条件は、前記酵素試薬の前記活性レベルを変化させる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記環境条件は、pHまたは温度を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記測定可能な生成物は、前記反応から放出される光を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記配列決定反応は、前記反応基質を含む、複数の反応生成物を生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記酵素試薬は、前記反応基質を分解する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記反応環境は、フローセルを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記反応環境は、プレートのウェルを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記プレートは、前記ウェルの配列を備える光ファイバフェースプレートを備える、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
核酸配列決定システムであって、
反復する一連の配列決定反応を含む配列決定プロセスを実行するための反応環境を備える、フローセルと、
第1の濃度の酵素試薬を、反応基質を含む反応環境中に導入する、弁であって、前記酵素試薬および反応基質は、前記配列決定プロセスの構成部分である、弁と、
前記反応環境中の前記第1の濃度の前記酵素試薬の活性レベルを測定する、検出器であって、前記活性レベルは、前記酵素試薬と前記反応基質との間の反応の測定可能な生成物を含む、検出器と、
を備え、前記測定した活性レベルに応じて、前記弁は、最適濃度の前記酵素試薬を前記反応環境中に提供する、
システム。
【請求項22】
その上に記憶された実行可能コードを有するコンピュータをさらに備え、前記実行可能コードは、
前記第1の濃度の前記酵素試薬および前記反応基質を、前記反応環境中に導入するように、前記弁の指示制御を提供するステップと、
前記検出器から、前記第1の濃度の前記測定した活性レベルを受信するステップと、
前記第1の濃度の前記測定した活性レベルを使用して、最適濃度を特定するステップと、
前記最適濃度を提供するように、前記弁に対して指示制御を提供するステップと、
を実行する、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記指示制御は、前記弁のタイミング機能を制御するマイクロコントローラに提供される、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記弁の前記タイミング機能は、パルス幅の制御を含む、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記弁は、多重ポート弁である、請求項21に記載のシステム。
【請求項26】
前記酵素試薬のストック溶液を含む第1の流体リザーバと、前記反応基質のストック溶液を含む第2の流体リザーバと、をさらに備え、前記弁は、前記第1および第2の流体リザーバを介して、前記第1の濃度の前記酵素試薬および前記反応基質を、前記反応環境中に導入する、請求項21に記載のシステム。
【請求項27】
前記弁は、前記第1の流体リザーバを介して、前記最適濃度を導入する、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記検出器は、CCD検出器である、請求項21に記載のシステム。
【請求項29】
前記酵素試薬は、アピラーゼを含み、前記反応基質は、ATPを含み、前記ATPは、前記アピラーゼを含む前記反応環境中に導入される、請求項21に記載のシステム。
【請求項30】
前記弁は、第1の反復後の配列決定反応の各後続反復時に、前記最適濃度の前記アピラーゼを提供して、前記後続反復時に生成される配列組成中の導入誤差を低減する、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
前記導入誤差は、前記反応環境中の前記アピラーゼの濃度が前記最適濃度よりも低い時に、繰越誤差を含む、請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
前記導入誤差は、前記反応環境中の前記アピラーゼの濃度が前記最適濃度よりも高い時に、不完全伸長誤差を含む、請求項30に記載のシステム。
【請求項33】
前記導入誤差は、前記反応環境中の前記アピラーゼの濃度が前記最適濃度よりも高い時に、前記配列決定反応からの少量の反応生成物を含む、請求項30に記載のシステム。
【請求項34】
前記酵素試薬は、環境条件に敏感であり、前記環境条件は、前記酵素試薬の前記活性レベルを変化させる、請求項21に記載のシステム。
【請求項35】
前記環境条件は、pHまたは温度を含む、請求項34に記載のシステム。
【請求項36】
前記測定可能な生成物は、前記反応から放出される光を含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項37】
前記配列決定反応は、前記反応基質を含む、複数の反応生成物を生成する、請求項21に記載のシステム。
【請求項38】
前記酵素試薬は、前記反応基質を分解する、請求項21に記載のシステム。
【請求項39】
前記反応環境は、プレートのウェルを備える、請求項21に記載のシステム。
【請求項40】
前記プレートは、前記ウェルの配列を備える光ファイバフェースプレートを備える、請求項39に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−531664(P2010−531664A)
【公表日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−514841(P2010−514841)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【国際出願番号】PCT/US2008/008097
【国際公開番号】WO2009/005753
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(507331232)454 ライフ サイエンシーズ コーポレイション (11)
【Fターム(参考)】