説明

格子付き扉

【課題】閉鎖時の遮音性や光漏れ防止性能の高い、閉鎖状態と開放状態を切り替えることができる格子付き扉を提供する。
【解決手段】複数の格子4で構成された格子戸の、それぞれの格子4が隣接する格子どうしを近接及び離間可能に連結子6で連結されているため、格子付き扉の閉鎖状態と開放状態の切り替えにおいて、第1格子戸2及び第2格子戸3の格子をそれぞれ近接させて格子どうしを連続させ、第1格子戸2及び第2格子戸3をスリットのない扉としたうえで、引き違い状態に配置することで閉鎖状態にすることができる。また、第1格子戸2及び第2格子戸3の格子をそれぞれ離間させ、第1格子戸2及び第2格子戸3をスリットのある扉としたうえで、第1格子戸と第2格子戸の格子同士を相対して配置することで開放状態にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、閉鎖状態と開放状態に切り替え可能な格子付きの扉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より無双窓といわれる、スリットの入った格子戸を2枚平行に重ね合わせ、格子戸の位置を調整することによって、スリットどうしをずらして配置したり、スリットどうしを一致させて配置することで、閉鎖状態と開放状態を切り替えて利用することが行われていた。閉鎖状態と開放状態を切り替えることで、閉鎖状態では、視線の遮りを、開放状態では、通風や採光を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−138081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、近年プライバシーが重視され、閉鎖時の遮音性や光漏れなどについて、十分な性能が求められるようになっているが、従来のスリットの入った2枚の格子戸を、それぞれスリット位置をずらして配置したのでは、格子戸どうしの召し合わせ箇所が多く、また召し合わせ部の密閉性の確保が難しく、低遮音性や光漏れなどの原因となっていた。
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑み、閉鎖時の遮音性や光漏れ防止性能の高い、閉鎖状態と開放状態を切り替えることができる格子付き扉を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題は、それぞれ平行に配置される第1格子戸と第2格子戸からなる引き違い式の格子付き扉であって、
第1格子戸及び第2格子戸はそれぞれ複数の格子で構成され、
該各格子は隣接する格子どうしを近接及び離間可能に連結子で連結されており、
第1格子戸及び第2格子戸のそれぞれの格子どうしが近接し、第1格子戸及び第2格子戸により開口部を閉鎖する閉鎖状態と、第1格子戸と第2格子戸のそれぞれの格子が離間し、第1格子戸と第2格子戸の格子同士を相対して配置し、開口部にスリットを形成する開放状態とに切り替え可能であることを特徴とする格子付き扉により解決される。
【0007】
この格子付き扉では、この格子付きの扉は、複数の格子で構成された格子戸の、それぞれの格子が隣接する格子どうしを近接及び離間可能に連結子で連結されているため、格子付き扉の閉鎖状態と開放状態の切り替えにおいて、第1格子戸及び第2格子戸の格子をそれぞれ近接させて格子どうしを連続させ、第1格子戸及び第2格子戸をスリットのない扉としたうえで、引き違い状態に配置することで閉鎖状態にすることができる。また、第1格子戸及び第2格子戸の格子をそれぞれ離間させ、第1格子戸及び第2格子戸をスリットのある扉としたうえで、第1格子戸と第2格子戸の格子同士を相対して配置することで開放状態にすることができる。
【0008】
このため、開放状態においては、通常の無双窓と同じ、平行に配置されたスリットのある格子戸がスリットの位置を同じにした開放状態となるのに対し、閉鎖状態においては、スリットのない扉を引き違い扉として開口部を閉じた状態となるので、無双窓のように、平行に配置された格子戸のスリットどうしが交互に配置され召し合わせ部を設けることなく、閉鎖状態を実現することができるので、召し合わせ部を有するがために生じる遮音性能の低下や光漏れを防止することができ、遮音性や光漏れを防止する閉鎖状態を実現することができる。
【0009】
上記の実施形態において、第1格子戸の一方の端部側の操作対象格子と、該第1格子戸の該操作対象格子と反対側の格子と同じ側にある、第2格子戸の操作対象格子とが、一方の格子の移動と連動して移動するように連結されているとよい。
【0010】
第1格子戸と第2格子戸の操作対象格子どうしが、一方の格子の移動に連動して移動するように連結されているので、第1格子戸と第2格子戸の操作対象格子のうち、いずれか一方を操作すれば、他方の格子戸も移動するため、格子付き扉の開閉において、第1格子戸と第2格子戸のそれぞれを操作する必要がなく、簡単に、格子戸付き扉の開閉を切り替えることができる。
【0011】
また、前記第1格子戸及び前記第2格子戸の操作対象格子とは反対側の格子が、それぞれ開口部の枠体に固定されているとよい。
【0012】
この場合、操作対象格子戸の操作にあわせて、第1格子戸及び第2格子戸の操作対象格子と反対側の格子が動いてしまうことがないので、格子戸の開閉操作をよりいっそう簡単に実現することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は以上のとおりであるから、閉鎖時の遮音性や光漏れ防止性能の高い、閉鎖状態と開放状態を切り替えることができる格子付き扉を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態の格子付き扉を示す斜視図である。
【図2】格子戸の格子どうしの連結状況を示す図であって、図(イ)は、格子どうしが離間している状況を示す断面図、図(ロ)は正面図、図(ハ)は、格子どうしが近接している状況を示す断面図である。
【図3】図3は、第1格子戸と第2格子戸が連結している状況を示す断面図である。
【図4】図(イ)〜(ハ)は、閉鎖状態から開放状態への切り替え状況を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1に示す本発明の実施形態の格子付き扉1は、開口部の左右の枠体である方立9,10、下側の枠体である敷居11、及び上側の枠体である図示しない鴨居で囲まれた空間に配置される引き違い式の格子付き扉である。
【0017】
第1格子戸2及び第2格子戸3は、図1及び図2に示すように、それぞれ複数の格子2a,2b,2b,2c及び格子3a,3b,3b,3cからなり、それぞれの格子は、短冊状をした格子本体部4‥と、格子本体部4‥の上部の連結機構部5‥からなる。連結機構部5‥は、内部空洞の函体からなり、それぞれの連結機構部5‥は、連結子6‥で連結されている。連結子6は、軸部6aと、軸部6aの先端部に連続し軸部6aから側方に延びる鉤部6bとからなり、軸部6aの基端側6cは、連結機構部5‥の側面に連結されている。連結機構部5‥の連結子6が取り付けられる側と反対側には、孔5aが設けられ、孔5aを介して連結子6が挿通され、鉤部6bにより、抜き取り不能で、近接及び離間可能に格子どうしが連結されている。
【0018】
格子2a,2b,2b,2c及び格子3a,3b,3b,3cどうしの間隔を調整することで、図2(イ)に示す、それぞれの格子の間隔を離す離間状態と、図2(ハ)に示す、それぞれの格子を連設する近接状態に切り替えることができる。また、一部の格子間で近接させ、一部の格子間で離間させることも可能であるし、離間させる距離を短くすることも可能である。
【0019】
第1格子戸2の格子は、方立9に固定される一方の端部側の固定格子2cと、固定格子2cと反対の端部側の移動可能な操作対象格子2aと、固定格子2c及び操作対象格子2aの中間部の移動可能な中間格子2b,2bからなる。同様に第2格子戸3の格子は、方立10に固定される一方の端部側の固定格子3cと、固定格子3cと反対の端部側の移動可能な操作対象格子3aと、固定格子3c及び操作対象格子3aの中間部の移動可能な中間格子3b,3bからなる。図1に示すように、第1格子戸2と第2格子戸3のそれぞれの固定格子2c,3cは、同じ方向側にあるのではなく、それぞれ方立9,10側の格子が固定格子となっている。同様に、第1格子戸2と第2格子戸3のそれぞれの操作対象格子2a,3aは、同じ方向側にあるのではなく、それぞれの固定格子2c,3cと反対側の格子が操作対象格子となっている。
【0020】
図3に示すように、第1格子戸2の操作対象格子2aと、第2格子戸3の操作対象格子3aとは、連結体7で連結されており、操作対象格子2aを操作することにより、操作対象格子2aの動きに連動して、操作対象格子3aも動くようになっており、また、操作対象格子3aを操作することにより、操作対象格子3aの動きに連動して、操作対象格子2aも動くようになっている。なお、第2格子戸3の中間格子3b,3b及び固定格子3cの連結機構部5‥には、連結体7を挿通するための孔11‥が穿通されている。
【0021】
連結体7は、引っ張りにも圧縮に対応し、伸びたり、座屈することなく力を伝達できるものであればよく、例えば、チェーンや座屈を拘束されたワイヤーなどが使用される。方立10内の8は、方立10内での連結体7の方向を180度折り返すことを誘導する回転体である。
【0022】
格子付き扉1の使用は次のようにして行われる。
【0023】
図4(イ)に示す格子付き扉1の閉鎖状態では、第1格子戸2及び第2格子戸3のそれぞれの格子2a,2b,2b,2c及び3a,3b,3b,3cどうしが互いの側面を接して連設し、スリットのない扉を形成するとともに、第1格子戸2及び第2格子戸3が互いに位置を異ならせた引き違い状態で、開口部を閉鎖する。
【0024】
この閉鎖状態では、第1格子戸2及び第2格子戸3を構成するそれぞれの格子が互いの側面を接して連設しており、また、第1格子戸2と第2格子戸3との召し合わせ部12が一箇所しかできないため、召し合わせ部の密閉性が確保され、遮音性が高く、光漏れが防止される閉鎖状態を実現することができる。
【0025】
特に、召し合わせ部は、第1格子戸2の操作対象格子2aと、第2格子戸3の操作対象格子3aどうしが、相対して配置されるので、より一層召し合わせ部の密閉性が確保され、遮音性が高く、光漏れが防止される閉鎖状態を実現することができる。
【0026】
この閉鎖状態から、スリットによる開放状態へは次のようにして切り替えられる。
【0027】
図4(ロ)に示すように、第2格子戸3の操作対象格子3aを、第1格子戸2が当接している方立9側へ移動させると、操作対象格子3aの移動に伴って、操作対象格子3aの連結子6が操作対象格子3aに連設する中間格子3bの連結機構部5から引き出され、連結子6の鉤部6bに連結機構部5が係合されて、隣接する操作対象格子3aの動きにあわせて、中間格子3bが引き動かされる。
【0028】
また、第2格子戸3の操作対象格子3aと、第1格子戸2の操作対象格子2aは連結体7で連結されているため、操作対象格子3aを方立9側へ移動させると、方立10内に設けられた回転体8により向きを変えられて、操作対象格子3aの動きにあわせて、操作対象格子2aは方立10方向へ移動する。
【0029】
第1格子戸2は、第2格子戸3と同様に、第1格子戸2の操作対象格子2aが、第2格子戸3が当接している方立10側へ移動すると、操作対象格子2aの移動に伴って、操作対象格子2aの連結子6が操作対象格子2aに連設する中間格子2bの連結機構部5から引き出され、連結子6の鉤部6bに連結機構部5が係合されて、隣接する操作対象格子2aの動きにあわせて、中間格子2bが引き動かされる。
【0030】
図4(ハ)に示すように、第2格子戸3の操作対象格子3aを、方立9に当接するまで移動させると、第2格子戸3を構成する格子戸3a,3b,3b,3cは、それぞれをつなぐ連結子6‥が引っ張られる形で、それぞれ間隔をあけて配置され、また、また操作対象格子3aの移動により引っ張られて、第1格子戸1の操作対象格子2aが、方立10に当接するまで移動し、第1格子戸2を構成する格子戸2a,2b,2b,2cは、それぞれをつなぐ連結子6‥が引っ張られる形で、それぞれ間隔をあけて配置される。
【0031】
また、第1格子戸2の方立9側の固定格子2c及び第2格子戸3の方立10側の固定格子3cは、それぞれ方立9,10に固定されているため、閉鎖状態から開放状態の切替え時に、固定格子2c,3cが動き出すことなく、操作対象格子2a,3aの移動にともなって、格子を均等に配置することができる。
【0032】
そして、開放状態では、一方の方立9側からもう一方の方立10側まで、第1格子戸2及び第2格子戸3の格子が、それぞれの格子が相対する形で配置されるため、開口部にスリットを形成することができ、通風や採光を確保することができる。
【0033】
一方、開放状態から閉鎖状態への切り替えは、上記とは逆に、第1格子戸の操作対象格子2aを操作し、第1格子戸2が当接している方立9側に移動することで、閉鎖状態にすることができる。
【0034】
以上に、本発明の実施形態を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、発明思想を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。例えば、上記の実施形態では、格子戸を構成する格子が4体の場合について示したが、格子の数に制限はなく、4体より多くてもよく、また少なくてもよい。
【0035】
また、上記実施形態では、格子どうしを連結する連結子、および第1格子戸と第2格子戸を連結する連結体を収納する連結機構部を格子戸の上端部に設けた場合について示したが、連結機構部の位置に制限はなく、格子戸の高さ方向中間部であってもよいし、下端部であってもよいし、また、格子の上端に設け、鴨居の中に隠すようにしてもよい。
【0036】
また、上記の実施形態では、召し合わせ部は、第1格子戸の操作対象格子と、第2格子戸の操作対象格子どうしが、相対して配置される場合について、示したが、それぞれの操作対象格子どうしが相対せず、端部を接して配置されてもよい。さらに、召し合わせ部の密閉性を高めるために、格子の召し合わせ部に密閉のためのパッキン等を設けてもよいのはいうまでもない。
【0037】
さらに、連結子について、本実施形態については、格子の幅と略同じ寸法の連結子としたが、連結子の軸部が多段的に伸縮でき、連結子の長さを調整することで、格子の幅と各格子間の間隔を異ならせるようになっていてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1・・・格子付き扉
2・・・第1格子戸
2a・・・操作対象格子
2b・・・中間格子
2c・・・固定格子
3・・・第2格子戸
3a・・・操作対象格子
3b・・・中間格子
3c・・・固定格子
4・・・ 格子
5・・・連結機構部
6・・・連結子
7・・・連結体
8・・・回転体
9,10・・・方立
11・・・敷居

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ平行に配置される第1格子戸と第2格子戸からなる引き戸型の格子付き扉であって、
第1格子戸及び第2格子戸はそれぞれ複数の格子で構成され、
該各格子は隣接する格子どうしを近接及び離間可能に連結子で連結されており、
第1格子戸及び第2格子戸のそれぞれの格子どうしが近接し、第1格子戸及び第2格子戸により開口部を遮蔽する閉鎖状態と、第1格子戸と第2格子戸のそれぞれの格子が離間し、第1格子戸と第2格子戸の格子同士を相対して配置し、開口部にスリットを形成する開放状態とに切り替え可能であることを特徴とする格子付き扉。
【請求項2】
第1格子戸の一方の端部側の操作対象格子と、該第1格子戸の操作対象格子と反対側の格子と同じ側にある、第2格子戸の操作対象格子とが、一方の格子の移動と連動して移動するように連結されている請求項2に記載の格子付き扉。
【請求項3】
前記第1格子戸及び前記第2格子戸の操作対象格子とは反対側の格子が、それぞれ開口部の枠体に固定されている請求項2に記載の格子付き扉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−222835(P2010−222835A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71069(P2009−71069)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】