説明

格納ケース

【課題】収納物の詰替え(交換)に際し第1ケースと第2ケースとの接合強度が低下することがなく、且つ再利用回数を容易に知ることができる格納ケースを提供する。
【解決手段】本体ケース12は、前記各接合箇所31に接合用の複数のかしめピン32を有し、蓋ケース13は、各接合箇所21に複数のかしめピン32が貫通する接合用の複数の接合孔22を有し、内容物Tを収納して本体ケース12と蓋ケース13とを接合した後、各接合箇所31の任意の1のかしめピン32の貫通端部32aを不可逆的に変形させることで組み立てられ、且つ貫通端部32aを破壊することで分解されるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2分割構造の格納ケースにあって、印刷テープや印刷インクなどの消耗品が詰替え可能に収納される格納ケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、省資源化が広く求められている中で、消耗品の格納ケース(例えば、テープカートリッジやインクカートリッジのカートリッジケース)の再利用が求められている。そのため、従来、再利用を前提とした格納ケースとして、例えば、印刷用テープを収納したテープカートリッジのカートリッジケースが知られている(例えば、特許文献1参照)。
このカートリッジケースは、第1ケース(上ケース)および第2ケース(下ケース)による2分割構造のものであり、第1ケースは、離間するように配設した複数の接合箇所にそれぞれ圧入突起を有し、第2ケースは、複数の接合箇所にそれぞれ圧入突起に対応する圧入孔を有している。第1ケースの複数箇所の圧入突起を、第2ケースの複数箇所の圧入孔に圧入することで、第1ケースと第2ケースとが接合される。一方、押圧ピンを有する分解治具を用いて、各圧入孔から各圧入突起を押し出すことで、第1ケースと第2ケースとが分解され、印刷用テープやインクリボン等の詰替えを可能にしている。そして、収納物を詰め替えた後、再度圧入突起を圧入孔に圧入することで、カートリッジケースがリユース(再利用)される。
【特許文献1】特開2002−53249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような従来のカートリッジケースでは、リユースを繰り返すと圧入孔に対し圧入突起が弛んできてしまい、再利用に耐え得る接合強度が得られなくなるという問題があった。また、ICを搭載するかマーキングを行なわないかぎり、再利用の回数を知ることができず、数回の再利用の後、寿命を考慮して再利用か廃棄かを熟練者が外観等で判断するしかなかった。
【0004】
本発明は、収納物の詰替え(交換)に際し第1ケースと第2ケースとの接合強度が低下することがなく、且つ再利用回数を容易に知ることができる格納ケースを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の格納ケースは、複数の接合箇所により相互に接合される第1ケースおよび第2ケースから成り、内部に収納する収納物を詰替え可能に構成した格納ケースであって、第1ケースは、各接合箇所に接合用の複数の接合突起を有し、第2ケースは、各接合箇所に上記複数の接合突起が貫通する接合用の複数の接合孔を有し、上記内容物を収納して第1ケースと第2ケースとを接合した後、各接合箇所の任意の1の接合突起の貫通端部を不可逆的に変形させることで組み立てられ、且つ変形させた貫通端部を破壊することで分解されることを特徴とする。
【0006】
この構成によれば、第1ケースと第2ケースとの初期接合および再利用接合を行なうときに、各接合箇所の複数の接合突起および複数の接合孔をそれぞれ1つずつ使用(接合に使用)するため、第1ケースと第2ケースとの接合は常に良好に維持され、再利用の繰り返しにより接合強度が低下することがない。また、各接合箇所における使用済みの接合突起の個数により、再利用された回数を容易に知ることができる。なお、貫通端部を不可逆的に変形には、熱かしめの他、曲げ、捻り、潰し等の形態が考えられる。
【0007】
この場合、上記収納物の詰め替えに伴うリユース回数をnとしたときに、各接合箇所における複数の接合突起の個数がn+1に対応していることが好ましい。
【0008】
この構成によれば、予め寿命を考慮して接合突起の個数を決めておけば、再利用の際に使用できる接合突起がなくなったところで、これを廃棄することになり、外観上では判断不能な寿命要素があっても、再利用か廃棄かの判断を適切に行うことができる。
【0009】
この場合、第2ケースの各接合箇所は、貫通端部の突出寸法に対応して窪入形成されていることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、使用していない接合突起の貫通端部が、第2ケースの外面から突出することがないため、この貫通端部が損傷を受け難く、且つこの貫通端部が、格納ケースを取扱う際(ハンドリング)に邪魔になることがない。
【0011】
この場合、各接合突起は、第1ケースと一体に形成されたかしめピンで構成され、熱かしめにより不可逆的に変形することを特徴とすることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、第1ケースと第2ケースとを簡単且つ強固に接合することができると共に、貫通端部の不可逆的変形および破壊を容易に行うことができる。
【0013】
この場合、上記収納物は、印刷テープもしくは印刷インクであることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、収納物が、印刷テープや印刷インクである場合において、上記した効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態に係るカートリッジケース(格納ケース)を適用したテープカートリッジについて説明する。このテープカートリッジは、テープ印刷装置に着脱自在に装着され、テープ印刷装置に印刷テープ(収納物)を供給する。
【0016】
図1および図2で示すように、テープカートリッジ1は、本体ケース(第1ケース)12と蓋ケース(第2ケース)13とから成るカートリッジケース11に、消耗品である印刷テープTおよび図外のインクリボン等を収容して、構成されている。本体ケース12の周縁部には、相互に離間するように複数箇所(同図では、2箇所のみ図示)に本体側接合部31が設けられ、またこれに対応して、蓋ケース13の周縁部には、相互に離間するように複数箇所(同図では、2箇所のみ図示)に蓋側接合部21が設けられている。本体ケース12と蓋ケース13とは、この複数箇所の本体側接合部31と複数箇所の蓋側接合部21とを相互に接合することにより、組み立てられている。
【0017】
本体ケース12の各本体側接合部31には、4本のかしめピン(接合突起)32が立設されている。4本のかしめピン32は横並びに等間隔で配設され、本体ケース12と一体に成形されている。各かしめピン32は、蓋ケース13の上壁13aを貫通し上壁13aの上面から所定の寸法突出する長さに形成され、この突出した貫通端部32aが、いわゆるかしめ代となっている。また、本体ケース12には、印刷テープTを装着するコア部14の他、インクリボンの装着部や各種のガイド突起等(図示省略)が一体に形成されている。なお、4本のかしめピン32は、本体ケース12の側壁端面に形成することも可能である。また、本実施形態においては、複数のかしめピン32を横並びに配設しているが、これらのかしめピン32を集約的に配設してもよい。
【0018】
蓋ケース13の各蓋側接合部21には、上記の4本のかしめピン32に対応する4つの接合孔22が形成されおり、4つの接合孔22は横並びに等間隔で配設されている。各接合孔22に対し対応する各かしめピン32は、所定の寸法公差を持って挿通されるようになっている。また、蓋ケース13の各蓋側接合部21は、上記かしめピン32の貫通端部32aの略突出寸法分、窪入形成されている。具体的には、蓋ケース13の上壁13aの周縁部に位置する蓋側接合部21の部分は、他の部分に対し貫通端部32aの略突出寸法分、窪入形成されている。これにより、使用しないかしめピン32が蓋ケース13の上壁13aから突出しないような構成にされている。
このように構成された本体ケース12と蓋ケース13とは、各かしめピン32を各接合孔22に挿入して突き合せた後、各本体側接合部31において任意の1つのかしめピンを熱かしめすることにより、強固に接合される。
【0019】
次に、このテープカートリッジ1の本体ケース12および蓋ケース13の接合(組立)および分離(分解)、またリユース時の再接合の手順について説明する。なお、ここで言うリユースとは、テープカートリッジ1の印刷テープT(インクリボン)が消費された際に、カートリッジケース11を分離し、印刷テープT等の消耗品を詰め替えた後、カートリッジケース11を再接合して使用することであり、カートリッジケース11を再利用するものである。
【0020】
図1(b)ないし図2に示すように、初期の組立てでは、先ず本体ケース12に印刷テープTやインクリボンをセットした後、本体ケース12のかしめピン32が蓋ケース13の接合孔22にそれぞれ挿入されるように、蓋ケース13を本体ケース12に装着する。この状態では、蓋ケース13の下端は本体ケース12の上端に突き当てられ、各接合孔22に挿通した全かしめピン32の貫通端部32aは、蓋ケース13の上壁13aから突出した状態となる。
【0021】
ここで、各本体側接合部31の1本のかしめピン32(図示左端)を対象とし、ヒータヘッド等によりその貫通端部32aの熱かしめを行なう。これにより、図1(b)に示すように蓋ケース13と本体ケース12とが接合され、テープカートリッジ1の組立てが完了する。なお、この接合により、落下衝撃や故意に力を加えても、蓋ケース13と本体ケース12とは分離することがない。
【0022】
次に、図3(a)を参照して、消耗品の詰替え時における蓋ケース13と本体ケース12との分離(分解)作業について説明する。先ず、接合によって熱かしめしたかしめピン32のかしめ部分(貫通端部32a)を破壊する。これは、例えば治具により蓋ケース13を支持しておいて、押圧ピンを上側からかしめ部分に突き当て、かしめピン32を下方に抜くようにする(かしめ部分の周縁部がリング状に破損する)。或いは、カッタ等でかしめ部分をえぐるように破断する。これにより、本体ケース12から蓋ケース13が、簡単に分離される。ここで、消耗品を本体ケース12から取り出す。初期の組立て時と同様に、本体ケース12に新しい印刷テープTやインクリボンをセットする(図2参照)。
【0023】
次に、図3(b)を参照してリユース時の再接合作業について説明する。先ず、初期の組立て時と同様に、本体ケース12に新しい印刷テープTやインクリボンをセットする(図2参照)。次に、蓋ケース13を本体ケース12に装着させる。ここで、各本体側接合部31の、破壊したかしめピン32以外のかしめピン32の1本(左端から2番目)に対し熱かしめを行なう。これにより、カートリッジケース11が再接合され、テープカートリッジ1の第1回目のリユースが完了する。
【0024】
以上のように再接合作業を繰り返すことにより、テープカートリッジ1に対し複数回のリユースが行なわれるが、結果的には各本体側接合部31の複数本のかしめピン32が全て破壊されたところで、カートリッジケース11は廃棄となる。その際、破壊されたかしめピン32の数がリユースの回数となるため、破壊されたかしめピン32を数えることで、今までのリユースの回数を知ることができる。また、予めカートリッジケース11の寿命を考慮し、かしめピン32の数でリユース回数を規制することができる。すなわち、設計上のリユース回数をnとした時に、各本体接合部31におけるかしめピン32の数がn+1に対応するようにすればよい。したがって、本実施形態においては、各本体側接合部31のかしめピン32の数は4本としているが、製造する際にかしめピン32の本数を調整することになる。
【0025】
次に、図4を参照して、本発明の第2実施形態に係るカートリッジケース(収納ケース)を用いたインクカートリッジについて説明する。このインクカートリッジは、インクジェットプリンタ等の印刷装置に着脱自在に装着され、印刷装置に対して印刷用のインクを供給する。なお、インクカートリッジにおけるリユースは、インク吸収材およびフィルタの交換と、インクタンクの洗浄およびインクの詰替えが、主たるものとなる。
【0026】
インクカートリッジ50は、本体ケース(第1ケース)62と蓋ケース(第2ケース)63とから成るカートリッジケース51に、消耗品であるインクA、インク吸収材BおよびフィルタCを収容して、構成されている。本体ケース62のフランジ部62aには、相互に離間するように複数箇所(同図では、2箇所のみ図示)に本体側接合部81が設けられ、またこれに対応して、蓋ケース63のフランジ部63aには、相互に離間するように複数箇所(同図では、2箇所のみ図示)に蓋側接合部71が設けられている。本体ケース62と蓋ケース63とは、この複数箇所の本体側接合部81と複数箇所の蓋側接合部71とを相互に接合することにより、組み立てられている。
【0027】
本体ケース12の各本体側接合部81には、4本のかしめピン(接合突起)32が立設されており、またこれらかしめピン32の外側に位置して、フランジ部62aに沿って環状に形成されたシールパッキン82が装着されている。4本のかしめピン32は横並びに等間隔で配設され、本体ケース62と一体に成形されている。各かしめピン32は、蓋ケース63のフランジ部63aを貫通しフランジ部63aの上面から所定の寸法突出する長さに形成され、この突出した貫通端部32aが、いわゆるかしめ代となっている。また、本体ケース12の下部には、下外方に突出するインク供給口83と、上内方に突出するフィルタ装着部84と、が一体に形成されている。
【0028】
蓋ケース63の各蓋側接合部71には、上記の4本のかしめピン32に対応する4つの接合孔22が形成されおり、4つの接合孔22は横並びに等間隔で配設されている。各接合孔22に対し対応する各かしめピン32は、所定の寸法公差を持って挿通されるようになっている。また、蓋ケース63の各蓋側接合部71は、上記かしめピン32の貫通端部32aの略突出寸法分、窪入形成されている。具体的には、蓋ケース63のフランジ部63aに位置する蓋側接合部71の部分は、他の部分に対し貫通端部32aの略突出寸法分、窪入形成されている。これにより、使用しないかしめピン32が蓋ケース63のフランジ部63aから突出しないような構成にされている。そして、本体ケース62と蓋ケース63とは、各かしめピン32を各接合孔22に挿入して突き合せた後、各本体側接合部81において任意の1つのかしめピン32を熱かしめすることにより、接合される。
【0029】
また、蓋ケース63には、その中央部にインク注入口72が貫通形成されると共に、上面にインク注入口72に連なる蛇行状の通気溝73が形成されている。さらに、蓋ケース63の下面には、インク吸収材Bを不動に保持すると共にインク吸収材Bが蓋ケース63の内面に接触しないように軽く押圧する2つのリム部75が、一体に形成されている。なお、インクAは、インク吸収材Bに吸収された状態で、カートリッジケース51内に収容されている。
【0030】
この場合も、第1実施形態と同様に、初期の組立てでは、本体ケース62のかしめピン32が蓋ケース63の接合孔22にそれぞれ挿入されるように、蓋ケース63を本体ケース62に装着し、各本体側接合部81の1本のかしめピン32を熱かしめして、インクカートリッジ50の組立てを行う。また、消耗品の詰替え時の分解では、熱かしめしたかしめピン32のかしめ部分(貫通端部32a)を破壊し、本体ケース62から蓋ケース63を分離する。そして、リユース時には、破壊したかしめピン32以外のかしめピン32の1本を熱かしめして、カートリッジケース51が再接合する。
【0031】
以上のように再接合作業を繰り返すことにより、テープカートリッジ1に対し複数回のリユースが行なわれる。そして、複数本のかしめピン32が全て破壊されたところで、カートリッジケース51は廃棄となる。この場合も、設計上のリユース回数をnとした時に、各本体側接合部81におけるかしめピン32の数がn+1に対応するようにすればよい。
【0032】
以上のように本実施形態によれば、収納物を交換し再利用したとしても初回時の接合強度を継続して維持することが可能であると同時に、今までに格納ケースが再利用された回数を容易に知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態に係るテープカートリッジの蓋ケース開放時の上面図および断面図である。
【図2】実施形態に係るテープカートリッジの接合時における断面図である。
【図3】実施形態に係るテープカートリッジの分離時における断面図および再接合時における断面図である。
【図4】第2実施形態に係るインクカートリッジの上面図および断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1:テープカートリッジ、50:インクカートリッジ、11,51:カートリッジケース、 12,62:本体ケース、 13,63:蓋ケース、 21,71:蓋側接合部、31,81:本体側接合部、22:接合孔、 32:かしめピン、 T:印刷テープ、A:インク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の接合箇所により相互に接合される第1ケースおよび第2ケースから成り、内部に収納する収納物を詰替え可能に構成した格納ケースであって、
前記第1ケースは、前記各接合箇所に接合用の複数の接合突起を有し、
前記第2ケースは、前記各接合箇所に前記複数の接合突起が貫通する接合用の複数の接合孔を有し、
前記内容物を収納して前記第1ケースと第2ケースとを接合した後、前記各接合箇所の任意の1の前記接合突起の貫通端部を不可逆的に変形させることで組み立てられ、且つ変形させた前記貫通端部を破壊することで分解されることを特徴とする格納ケース。
【請求項2】
前記収納物の詰替えに伴うリユース回数をnとしたときに、前記各接合箇所における複数の接合突起の個数がn+1に対応していることを特徴とする請求項1に記載の格納ケース。
【請求項3】
前記第2ケースの各接合箇所は、前記貫通端部の突出寸法に対応して窪入形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の格納ケース。
【請求項4】
前記各接合突起は、前記第1ケースと一体に形成されたかしめピンで構成され、熱かしめにより不可逆的に変形することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の格納ケース。
【請求項5】
前記収納物が印刷用テープであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の格納ケース。
【請求項6】
前記収納物が印刷用インクであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の格納ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−253538(P2007−253538A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−83251(P2006−83251)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】