説明

桁端部間の弾性ヒンジ支承装置

【課題】耐久性の向上を図れる桁端部間の弾性ヒンジ支承装置を提供すること。
【解決手段】橋軸方向に張り出す桁端部間のヒンジ支承装置であって、一方の桁端部1に他方の桁端部2に向かって張り出す雌型受け金具3が設けられ、前記他方の桁端部2に前記一方の桁端部1に向かって張り出す雄型差込金具5が設けられ、雌型受け金具3と雄型差込金具5との間で弾性的に荷重を伝達するために、雌型受け金具3と雄型差込金具5との間に弾性支承を介在させた弾性ヒンジ支承装置。また、雌型受け金具3と雄型差込金具5との間に介在されている弾性支承6に、上下方向の予備圧縮力が付与されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有ヒンジラーメン構造の新設または既存の橋梁を連結させるための橋梁用張出し桁端部間の弾性ヒンジ支承装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数径間または多径間橋梁形式において、経済性や構造設計の単純化などの条件により有ヒンジラーメン形式としている施工例が知られている。
【0003】
この種の既存橋梁の構造は、図16に示すように、橋脚40の上部左右に橋桁1aを張出したものを一つのユニットとして、その径間中央にて反対側から張出された他のユニットの橋桁2aとをヒンジ支承部41によって連結している。(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
前記のヒンジ支承として、桁端部間で鋼材相互の摩擦接触により鉛直荷重を伝達させるようにした施工例も知られている。
【特許文献1】特開平9−59928号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のヒンジ支承として、桁端部間で鋼材のみの係合により鉛直荷重を伝達させるようにした場合は、桁端部間で鋼材相互の摩擦係合となるため、耐久性が低くなる恐れがあるという問題があった。
本発明は前記の課題を有利に解消することができ、ヒンジ支承の耐久性の向上を図ることが可能な桁端部間の弾性ヒンジ支承装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を有利に解決するために、第1発明の桁端部間の弾性ヒンジ支承装置では、橋軸方向に張り出す桁端部間のヒンジ支承装置であって、一方の桁端部に他方の桁端部に向かって張り出す雌型受け金具が設けられ、前記他方の桁端部に前記一方の桁端部に向かって張り出す雄型差込金具が設けられ、雌型受け金具と雄型差込金具との間で弾性的に荷重を伝達するために、雌型受け金具と雄型差込金具との間に弾性支承を介在させたことを特徴とする。
また、第2発明では、第1発明の桁端部間の弾性ヒンジ支承装置において、雌型受け金具と雄型差込金具との間に介在されている弾性支承には、上下方向の予備圧縮力が付与されていることを特徴とする。
また、第3発明では、第1または第2発明の桁端部間の弾性ヒンジ支承装置において、雌型受け金具内に雄型差込金具の支持アームが挿入配置され、前記支持アームの上面に上部の弾性支承の下面が相対的にスライド可能に当接され、前記支持アームの下面に下部の弾性支承の上面が相対的にスライド可能に当接され、各弾性支承の一端側は前記雌型受け金具に位置保持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
第1発明によると、雌型受け金具と雄型差込金具との間で弾性的に荷重を伝達するために、雌型受け金具と雄型差込金具との間に弾性支承を介在させているので、一方の桁端部に輪荷重(自動車荷重)による鉛直荷重が作用した場合、弾性的に緩衝して他方の桁端部に鉛直荷重を伝達することができ、また、弾性的に緩衝して鉛直荷重を伝達する弾性ヒンジ支承であるため、金属板相互の摩擦が生じないと共に弾性体により緩衝支持され、過度な応力集中が作用しないので、弾性ヒンジ支承部の耐久性を向上させることができ、さらに、桁端部間に段差が生じないので、車両の走行性を向上させることができる。
第2発明によると、弾性支承には上下方向の予備圧縮力が付与されているので、桁端部に弾性支承の予備圧縮力よりも小さい車両の輪荷重が作用しても、これにより桁端部間で上下方向の段差が生じることはなく、車両の走行性を向上させることができる。
第3発明によると、雄型差込金具側の桁端部に輪荷重による鉛直荷重が作用した場合、下部の弾性支承を介して雄型差込金具側の桁端部に弾性的に緩衝して鉛直荷重を伝達することができ、また、雌型受け金具側の桁端部に輪荷重による鉛直荷重が作用した場合、上部の弾性支承を介して雄型差込金具側の桁端部に弾性的に緩衝して鉛直荷重を伝達することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0009】
図1〜図4は本発明の一実施形態の桁端部間の弾性ヒンジ支承装置を示すものであって、一方の桁端部1に他方の桁端部2に向かって張り出す鋼製の雌型受け金具3が設けられ、前記他方の桁端部2に前記一方の桁端部1に向かって張り出す支持アーム4を備えた鋼製の雄型差込金具5が設けられ、雌型受け金具3と雄型差込金具5との間で弾性的に荷重を伝達するために、雌型受け金具3と雄型差込金具5との間に弾性支承6を介在させている。
【0010】
前記雌型受け金具3の構造について説明すると、図示の形態では、一方の桁端部となる橋軸方向の端部横桁62の橋軸方向(左右方向)の両側に、それぞれアンカープレート16および雌側縦鋼板8を配置して、端部横桁62に挿通されるように配置される小径雄ねじ軸部付きアンカーボルト7およびこれに装着されるナットにより、端部横桁62を挟むようにアンカープレート16および雌側縦鋼板8を固定している。更に説明すると、一方の桁端部1(図示の場合は、橋軸方向の端部横桁62または図示省略の主桁端部)に固定されるアンカープレート16に小径雄ねじ軸部付きアンカーボルト7が連結され、前記一方の桁端部1に固定されるベースとなる雌側縦鋼板8に、前記アンカーボルト7の他端側が連結されている。前記雌側縦鋼板8に、複数の段付き透孔8aが設けられ、他方の桁端部2に向かって張り出す上部弾性支承保持部9および下部弾性支承保持部10を備えた雌型受け金具本体11の基端部に複数の雌ねじ孔11aが設けられ、前記雌側縦鋼板8の段付透孔8aに挿通されると共に前記雌型受け金具本体11の雌ねじ孔にねじ込まれたボルト8bにより、前記雌型受け金具本体11は雌側縦鋼板8に固定され、また、雌型受け金具本体11の基端部と雌側縦鋼板8とに設けられた凹部11b,8cには、これらの凹部に渡って短円柱状の鋼製のせん断キー12が嵌合され、雌型受け金具本体11の基端部と雌側縦鋼板8とは、前記ボルト8bにより一体化され、または前記ボルト8bとせん断キー12とにより一体化され、鉛直荷重を伝達可能にされている。
【0011】
前記の雌型受け金具本体11の上部には、他方の桁端部に向かって張り出す水平な上部弾性支承保持部9が一体に設けられ、また、下部には、他方の桁端部に向かって張り出す水平な下部弾性支承保持部10が、前記上部弾性支承保持部9に間隔をおいて平行に一体に設けられている。
【0012】
前記の上部弾性支承保持部9には、上部の弾性支承6がボルトにより直接取り付けられてはいなく、予備圧縮プレート13を介して上部の弾性支承6が配置され、上部の弾性支承6の左右方向の位置および前後方向の位置が、後記の長尺ボルト14または短尺ボルト15により位置保持されるように構成されている。
また、前記の下部弾性支承保持部10には、下部の弾性支承6がボルトにより取り付けられて、下部の弾性支承6の位置が、保持されるように構成されている。
【0013】
前記の上部弾性支承保持部9には、橋軸方向(左右方向)に間隔をおくと共に前後方向に間隔をおいて複数の雌ねじ孔17が設けられ、その雌ねじ孔17に装着される軸部の長い長尺ボルト14(図15参照)により、予備圧縮プレート13を介して上部の弾性支承6に予備圧縮力を導入可能にされ、上部弾性支承保持部9と、予備圧縮プレート13との間に、予備圧縮後に調整プレート18を介在させた状態で、長尺ボルト14から短尺ボルト15に置き換えられて、予備圧縮プレート13の取付け、調整プレート18の橋軸方向の移動を防止している。
【0014】
上部弾性支承保持部9の巾方向中央部には、前後方向に間隔をおいて、外枠取付け用雌ねじ孔19(図8参照)が設けられ、前記外枠取付け用雌ねじ孔19にねじ込まれるボルト20(図3参照)により、側部補強縦鋼板51(後記する)に設けられるボルト頭部より若干の間隔をおいてその外側に側部枠材22が位置するように外枠21が組立配置され、その外枠21の上部が上部弾性支承保持部9に固定され、前記の外枠21における側部枠材22により、前記の調整プレート18の橋軸直角方向の抜け出しを防止するようにしている。前記の調整プレート18は、上部弾性支承保持部9と予備圧縮プレート13に圧着されているため、摩擦により位置保持され、橋軸直角方向に抜け出す恐れはほとんどない。
【0015】
下部弾性支承保持部10には、橋軸方向に間隔をおくと共に前後方向に間隔をおいて、下面側が拡径している複数の段付き透孔23(図8参照)が設けられ、橋軸方向の段付き透孔23間において下面側に開口する外枠取付け用雌ねじ孔19が前後方向に間隔をおいて設けられ、その外枠取付け用雌ねじ孔19にねじ込まれるボルト20(図3下部参照)により、外枠21の下部が、下部弾性支承保持部10に取付けられている。
【0016】
下部弾性支承保持部10における段付き透孔23に挿通されると共に下部の弾性支承6における取り付け用鋼板24の雌ねじ孔24a(図9参照)にねじ込まれるボルト25a(図3参照)により、下部の弾性支承6は、下部弾性支承保持部10に固定されている。
【0017】
前記の雌型受け金具3は、雌型受け金具本体11と雌側縦鋼板8と予備せん断プレート13と、上部および下部の弾性支承6と短尺ボルト14などにより構成されている。
【0018】
前記の外枠21は、アングル材等により製作され、矩形端板を備えた上部枠材25と各側部枠材22と、下部枠材26とをボルト・ナット27により矩形枠状に形成され、上部枠材25が上部弾性支承保持部9の上面側に、下部枠材26が下部弾性支承保持部10の下面側に配置されてボルト20により固定されている。
【0019】
前記の外枠における各側部枠材22により、前記の調整プレート18の橋軸直角方向の抜け出しを防止するようにしている。また、図1〜4に2点鎖線で示すように、各側部枠材22に一片29a側がボルト・ナット28により着脱可能に固定される複数の仮固定金具(アングル材)29の他片29bを、雄型差込金具5における側部縦板30にボルト31により着脱可能に固定することにより、雌型受け金具3と雄型差込金具5を位置決めした状態で保持しておくことができ、装置全体の搬送設置作業を容易にしている。前記の仮固定金具29およびこれを固定しているボルト・ナット28あるいはボルト31は、装置全体を、一方のコンクリート製桁端部1および他方の桁端部2に埋め込み固定した後に取り外され、弾性支承6による弾性ヒンジ支承機能を発揮するようにされる。
前記の一片29aにボルト挿通用孔29cが設けられ、他片29bにボルト挿通用長孔29dが設けられて、誤差を吸収して容易に取付け可能にしている。
【0020】
前記の弾性ヒンジ支承とされた場合に、前記弾性支承6には上下方向に予め、設計上想定される活荷重に相当する予備圧縮が付与されているので、桁端部間を走行する車両荷重(輪荷重)が作用しても、弾性的に緩衝支持(支承)しながら、桁端部間において、荷重を分担支承することが可能であると共に、弾性支承6と支持アーム4との間での橋軸方向の相対的なスライド(滑り移動)を可能としているので、張出し桁1a,2aの温度変化による伸縮を許容している。
【0021】
前記の予備圧縮は、雌型受け金具3に予備圧縮プレート13および弾性支承6を取付け、雌型受け金具3における上下の弾性支承6間に、雄型差込金具5の支持アーム4を差し込みセットした状態で、長尺ボルト14により前記予備圧縮プレート13を押圧するようにして行われ、調整プレート18を介在させた後、短尺ボルト15に置き換えられる。短尺ボルト15に置き換えることにより、前記予備圧縮プレート13を押圧することはなく、調整プレート18の橋軸方向のずれを防止している。調整プレート18の橋軸方向の幅寸法は、橋軸方向に間隔をおく短尺ボルト15間の幅寸法よりも若干狭い幅寸法とされている。
【0022】
さらに、本発明の桁端部間の弾性ヒンジ支承装置において使用される主要な部品との関係説明する。
【0023】
図7は、前記の予備圧縮プレート13を示すものであって、上面における橋軸方向の両端部に、前後方向に間隔をおいて複数の予備圧縮ボルト(長尺ボルト14)または位置決め用ボルト(短尺ボルト14)軸部係合用の凹部32が設けられ、また、前記橋軸方向の各凹部列間において、橋軸方向に間隔をおくと共に前後方向に間隔をおいて複数の段付き透孔33が設けられている。前記の段付き透孔33は弾性支承6をボルト34(図3参照)により取り付けるための透孔であり、弾性支承6を取り付けた状態の予備圧縮プレート13が、前記の上部弾性支承保持部9の下側に配置された状態で、短尺ボルト15(または長尺ボルト14)により位置決めされる。
【0024】
前記の上部の弾性支承6と、下部の弾性支承6としては、図9に示すような構造であり、ゴムのような弾性層35と耐圧補強鋼板36を交互に積層すると共に、上下方向の一端側に取付け用鋼板24を、他端側に滑り板固定用鋼板37を一体に加硫成型したものであり、滑り板38としては、テフロン(登録商標)(四フッ化エチレン)板を固定している。前記の滑り板38が、雄型差込金具5における支持アーム4に固定されるステンレス板などの滑り支承板39に当接して、橋軸方向の滑り移動を可能にしている。
【0025】
次に、前記の鋼製の雄型差込金具5の構造について、図1〜4および図5を参照しながら説明すると、図示の形態では、他方の桁端部となる橋軸方向の端部横桁62の橋軸方向(左右方向)の両側に、それぞれアンカープレート16および雄側縦鋼板42を配置して、端部横桁62に挿通されるように配置される小径雄ねじ軸部付きアンカーボルト7およびこれに装着されるナットにより端部横桁62を挟むようにアンカープレート16および雄側縦鋼板42を固定している。更に説明すると、他方の桁端部2(図示の場合は、橋軸方向の端部横桁62(または図示省略の主桁端部))に固定されるアンカープレート16に小径雄ねじ軸部付きアンカーボルト7が連結され、他方の桁端部2に固定されるベースとなる雄側縦鋼板42に前記アンカーボルト7の他端側がこれに装着されるナットにより連結されている。前記雄側縦鋼板42に、一方の桁端部1に向かって水平に張り出す差込用の平板状の支持アーム4を上下方向の中間部に一体に有する基部縦鋼板43を備えた断面倒T字状の雄型差込金具本体44における前記の基部縦鋼板43が、その基部縦鋼板43の4隅部に設けられたボルト挿通孔45に挿通されると共に雄側縦鋼板42の雌ねじ孔46にねじ込まれた複数のボルト47により一体に固定され、基部縦鋼板43の背面部に設けられた凹部43aと雄側縦鋼板42の表面に設けられた凹部42aには、短円柱状の鋼製せん断キー48が嵌合され、前記ボルト47またはせん断キー48により一体化され、鉛直荷重を伝達可能にされている。
【0026】
前記の支持アーム4は、基部縦鋼板43の上下方向の中央よりも、雌型受け金具3側に設けられる予備圧縮プレート13の板厚寸法程度、予め基部縦鋼板43に対して下方に偏心した位置に設けられ、雌型受け金具3の横中心軸線と雄型差込金具5における支持アーム4の中央を通る横中心軸線とが上下にずれていても、雌型受け金具3の雌側縦鋼板8の上下端のレベルと雄型差込金具5の雄側縦鋼板42の上下端のレベルとは一致するように構成され、アンカーボルト7の設置位置が同じレベルとなるようにされている。
【0027】
雄型差込金具本体44における支持アーム4の前後両面には、複数の雌ねじ孔49が左右方向に間隔をおいて設けられていると共にせん断キー装着用凹部50が設けられ、また、基部縦鋼板43の前後両面には、上下方向に間隔をおいて複数の雌ねじ孔49およびせん断キー装着用凹部50が交互に設けられている。
【0028】
前記の支持アーム4および基部縦鋼板43の前後両面には、台形状鋼板からなる側部補強縦鋼板51がボルト52およびせん断キー53により、一体に組み立て固定されて支持アーム4および基部縦鋼板43を補強している。前記の側部補強縦鋼板51の内側の上下方向の中間部に、左右方向に間隔をおいて複数のボルト挿通孔54を有すると共にこれらのボルト挿通孔間においてせん断キー装着用凹部55を有し、また、かつ側部補強縦鋼板51の基端側の内側には、上下方向に間隔をおいて複数のボルト挿通孔54と、せん断キー装着用凹部55が交互に設けられており、支持アーム4および基部縦鋼板43の凹部50と、側部補強縦鋼板51の凹部55とに渡って鋼製円柱状のせん断キー53が嵌合装着され、側部補強縦鋼板51のボルト挿通孔54に挿通されると共に支持アーム4または基部縦鋼板43に設けた雌ねじ孔49にねじ込まれたボルト52により、および前記せん断キー53により、側部補強縦鋼板51は、支持アーム4および基部縦鋼板43に一体に固定されている。
【0029】
前記の各側部補強縦鋼板51は、雌型受け金具3における上部弾性支承保持部9と下部支承保持部10における橋軸直角方向の前面側または後面側に、僅かな間隙を介して近接して配置される。
【0030】
また、前記の側部補強縦鋼板51の外側面には、上下方向に間隔をおいて複数の雌ねじ孔56が設けられ、ボルト31により仮固定金具(仮固定用アングル材)29を着脱可能にされ、また、仮固定金具29を取り外した後には、前記の取り外したボルト31を後埋め用として装着可能にされている。
前記の雄型差込金具5は、雄型差込金具本体44と側部補強縦鋼板51と雄側縦鋼板42とこれらを連結して一体化するボルト等により構成されている。
【0031】
前記の雌型受け金具3と雄型差込金具5の組立セットは、工場において行われ、仮固定金具29を装着した状態まで組立てるか、アンカーボルト7およびアンカープレート16を含む状態まで組み立てる。
【0032】
前記の雌型受け金具3に雄型差込金具5の組立にあたっては、雌型受け金具3と雄型差込金具5のベース部を適宜の可動式保持手段(図示を省略した)により保持した状態で、下部弾性支承保持部10に弾性支承6を下側からボルト25により取付け、雄型差込金具5における支持アーム4上に予備圧縮プレート13を固定した上部の弾性支承6を載置した状態の支持アーム4を、上部弾性支承保持部9の下側の所定の位置に配置し、この状態で、長尺ボルト14により上部の弾性支承6を押圧することにより、相対的に雌型受け金具3を浮き上がるように下部の弾性支承6を支持アーム4の下面に押圧することにより、上部の弾性支承6および下部の弾性支承6の両方に同時に予備圧縮を付与することができる。
【0033】
このようにした状態で外枠21を取付け、また外枠21と側部補強縦鋼板51とを仮固定金具29およびボルト・ナット28およびボルト31により、仮固定し、雌型受け金具3と雄型差込金具5の相対的な位置ずれを防止し、搬送可能な状態にした状態で、可動式保持手段から雌型受け金具3および雄型差込金具5の組立体のセット(図13および図14参照)を取り外す。
【0034】
この状態で、現場搬送して、アンカープレート16を取り付けるようにしてもよく、後記するように、アンカープレート16までを工場で組立セットするようにしてもよい。
【0035】
なお、雌型受け金具3または雄型差込金具5あるいは外枠21等に、吊り金具用雌ねじ孔あるいは吊り金具(図示を省略した)を付属させておく。
【0036】
前記の雌型受け金具3および雄型差込金具5の組立体に、両端部に小径雄ねじ軸部60を備えた段付きアンカーボルト7をそれぞれの4隅部の透孔59に小径雄ねじ軸部60を挿通するように配置して、それらのアンカーボルト7の一端側をナット57およびロックナット58により固定し、また、アンカーボルト7の外端側にアンカープレート16を配置して、アンカーボルト7の外端部にナット57およびロックナット58を装着してアンカープレート16を固定する。
【0037】
前記のように、各端部横桁62を挟むようにアンカープレート16および雌側縦鋼板8または雄側縦鋼板42を固定してもよいが、アンカープレート16を含む組立体を、桁端部の凹部に配置して、前記アンカーボルト7およびアンカープレート16を埋め込むようにコンクリート61を打設するようにしてもよい。
【0038】
前記の雄型差込金具5が前記雌型受け金具3に差し込み装着された状態では、弾性支承6における弾性層35の弾性変形(上下方向の圧縮変形および橋軸方向のせん断変形)により、桁端部の撓みによる微小回転を許容するヒンジ支承となり、前記の雄型差込金具5は、あたかも主軸側として機能し、前記雌型受け金具3は前記雄型差込金具5の支持アーム4を受ける受け側として機能している。
【0039】
前記形態によると、雌型受け金具3と雄型差込金具5との間で弾性的に荷重を伝達するために、雌型受け金具3と雄型差込金具5との間に弾性支承6を介在させているので、一方の桁端部1に輪荷重による鉛直荷重が作用した場合、他方の桁端部2に弾性的に緩衝して鉛直荷重を伝達することができ、また、弾性的に緩衝して鉛直荷重を伝達するヒンジ支承であるため過度な応力集中が作用しないので、ヒンジ支承部の耐久性を向上させることができ、さらに、車両の走行性を向上させることができる。
【0040】
雌型受け金具3と雄型差込金具5との間に介在されている弾性支承6に、上下方向の予備圧縮力が付与されている。このように、弾性支承6に上下方向の予備圧縮力が付与されているので、桁端部に弾性支承6の予備圧縮力よりも小さい車両の輪荷重が作用しても、これにより桁端部間で上下方向の段差が生じることはなく、車両の走行性を向上させることができる。
【0041】
雌型受け金具3内に雄型差込金具5の支持アーム4が挿入配置され、前記支持アーム4の上面に上部の弾性支承6の下面が相対的にスライド可能に当接され、前記支持アーム4の下面に下部の弾性支承6の上面が相対的にスライド可能に当接され、各弾性支承6の一端側は前記雌型受け金具3に固定されている。
【0042】
このようにすると、雄型差込金具5側の桁端部2に輪荷重による鉛直荷重が作用した場合、下部の弾性支承6を介して雄型差込金具5側の桁端部に弾性的に緩衝して鉛直荷重を伝達することができ、また、雌型受け金具3側の桁端部1に輪荷重による鉛直荷重が作用した場合、上部の弾性支承6を介して雄型差込金具5側の桁端部に弾性的に緩衝して鉛直荷重を伝達することができる。
【0043】
前記実施形態では、上部弾性支承保持部9に予備圧縮プレート13および上部の弾性支承6を配置するようにしているが、下部弾性支承保持部10に、予備圧縮プレート13を介在させるようにして、下部の弾性支承6側を圧縮させることで、上部の弾性支承6にも予備圧縮を付与するようにしてもよい。
また、上部弾性支承保持部9および下部弾性支承保持部10の両方に、予備圧縮プレート13を配置するようにして、上下両側から予備圧縮を調整するようにしてもよい。このようにすると、施工後において上部側から調整不能な場合に、桁下側から調整することができる。
【0044】
本発明を実施する場合、予備圧縮力を導入した後において、追加の圧縮力を導入する必要のある場合には、前記の外枠21を取り外して、短尺ボルト15から長尺ボルト14に置き換え、前記長尺ボルト14により追加の圧縮力を導入すると共に、さらに調整プレートを上部弾性支承保持部9と予備圧縮プレート13との間に介在させた後、前記長尺ボルト14から、さらに短尺ボルト15に置き換え、外枠21を装着することで、追加の圧縮力を導入されたヒンジ弾性支承装置に調整することができる。
【0045】
前記実施形態では、アンカーボルト7とアンカープレート16と雌側縦鋼板8または雄側縦鋼板42とにより強固な枠形フレームが構成されているので、これらがコンクリートに埋め込み固定された状態では、本発明の桁端部間の弾性ヒンジ支承装置を強固に桁端部に固定することができる。
【0046】
前記の雄側差込金具5および雌側差込金具3は、各鋼製部材とボルトとせん断キー等により機械的に組立てられているので、容易に精度よく組み立てることができる。
【0047】
本発明を実施する場合、雌型受け金具本体11と雌側縦鋼板11を予め一体に形成するようにしてもよく、また、雌型受け金具本体11に雌側縦鋼板11を溶接により固定するようにしてもよい。
同様に、雄型差込金具5における雄側縦鋼板42と雄型差込金具本体44と側部補強縦鋼板51を、予め一体に形成するようにしてもよく、また、これらを溶接により固定して組み立てるようにしてもよい。
前記実施形態の場合は、弾性支承6が、上部弾性支承保持部9,下部弾性支承保持部10,支持アーム4,側部補強縦鋼板51などにより囲まれ、すなわち、雌型受け金具3および雄型差込金具5に囲まれ、内臓されている形態であるので、弾性支承6が他物に衝突して損傷する恐れを排除することができる。
【0048】
前記実施形態の場合は、雄型差込金具5における支持アーム4に対して、弾性支承6側を滑り移動させる形態を示したが、本発明の変形形態として、図示を省略するが、図3および図9を参照しながら説明すると、弾性支承6と支持アーム4とを横方向に移動しないように、せん断キーあるいはボルトにより一体化させるようにしてもよい。例えば、せん断キーにより一体化する場合には、雄型差込金具5における支持アーム4と、雌型受け金具33における上部および下部弾性支承保持部9,10との間隔を、短円柱状せん断キーの高さの1/2程度突出しても組立可能な寸法とし、弾性支承6における滑り板38を省略し、滑り支承板38を単なる支承板としてその中央部にせん断キー嵌合用凹部を設けると共に、支持アーム4にせん断キー嵌合用凹部を設け、せん断キーを下側の弾性支承側あるいは支持アーム4側上側に装着した状態で、組立てるようにし、短円柱状せん断キーの高さ寸法程度、より厚い寸法の調整用プレート18を挿入するようにしてもよい。
また、弾性支承6と支持アーム4とを横方向に移動しないように、ボルトにより一体化させる場合は、滑り板38を省略した滑り支承板38に、橋軸直角方向の側方に張出す張出しフランジ付き鋼板を設け、また、支持アーム4に雌ねじ孔を設け、その張り出しフランジ付き鋼板における張り出し部に設けたボルト軸部挿通孔に挿通すると共に支持アーム4の雌ねじ孔にねじ込んだボルトにより、一体化するようにしてもよい。
前記のように、弾性支承6と支持アーム4とを横方向に移動しないように、せん断キーあるいはボルトにより一体化した場合には、弾性支承6における弾性層35のせん断変形により、常時の橋桁1,3の温度変化による伸縮に対応させるようにしてもよい。また、地震時における橋桁1,3の橋軸方向の変位に対応させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の桁端部間の弾性ヒンジ支承装置を桁端部に設置した状態を示す一部縦断側面図である。
【図2】図1の一部横断平面図である。
【図3】図1の一部を拡大して示す一部切欠縦断側面図である。
【図4】図2の一部を拡大して示す一部切欠横断平面図である。
【図5】雄型差込金具本体を示すものであって、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図である。
【図6】側部縦補強鋼板を示すものであって、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図7】予備圧縮プレートを示すものであって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図8】雌型受け金具本体を示すものであって、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
【図9】弾性支承を示すものであって、(a)は平面図、(b)は一部縦断側面である。
【図10】雌型受け金具側のベースとなる雌側縦鋼板を示すものであって、(a)は背面図、(b)は平面図である。
【図11】雄型差込金具側のベースとなる雄側縦鋼板を示すもであって、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図12】仮固定金具を示すものであって、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【図13】雌型受け金具と雄型差込金具と外枠との組立体を示す側面図である。
【図14】図13に示す組立体の平面図である。
【図15】弾性支承に予備圧縮を付与する場合に使用する長尺ボルトと短尺ボルトとの関係を示す拡大説明図である。
【図16】既存橋梁の構造の一例を示す概略側面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 一方の桁端部
1a 一方の橋桁
2 他方の桁端部
2a 他方の橋桁
3 雌型受け金具
4 支持アーム
5 雄型差込金具
6 弾性支承
7 アンカーボルト
8 雌側縦鋼板
8a 段付き透孔
8b ボルト
8c 凹部
9 上部弾性支承保持部
10 下部弾性支承保持部
11 雌型受け金具本体
11a 雌ねじ孔
11b 凹部
12 せん断キー
13 予備圧縮プレート
14 長ボルト
15 短ボルト
16 アンカープレート
17 雌ねじ孔
18 調整プレート
19 外枠取付け用雌ねじ孔
20 ボルト
21 外枠
22 側部枠材
23 段付き透孔
24 取り付け用鋼板
24a 雌ねじ孔
25 上部枠材
25a ボルト
26 下部枠材
27 ボルト・ナット
28 ボルト・ナット
29 仮固定金具
29a 一片
29b 他片
29c ボルト挿通用孔
29d ボルト挿通用長孔
30 側部縦板
31 ボルト
32 凹部
33 段付き透孔
34 ボルト
35 弾性層
36 耐圧補強鋼板
37 滑り板固定用鋼板
38 滑り板
39 滑り支承板
40 橋脚
41 ヒンジ支承部
42 雄側縦鋼板
42a 凹部
43 基部縦鋼板
43a 凹部
44 雄型差込金具本体
45 ボルト挿通孔
46 雌ねじ孔
47 ボルト
48 せん断キー
49 雌ねじ孔
50 凹部
51 側部補強縦鋼板
52 ボルト
53 せん断キー
54 ボルト挿通孔
55 凹部
56 雌ねじ孔
57 ナット
58 ロックナット
59 透孔
60 小径雄ねじ軸部
61 コンクリート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋軸方向に張り出す桁端部間のヒンジ支承装置であって、一方の桁端部に他方の桁端部に向かって張り出す雌型受け金具が設けられ、前記他方の桁端部に前記一方の桁端部に向かって張り出す雄型差込金具が設けられ、雌型受け金具と雄型差込金具との間で弾性的に荷重を伝達するために、雌型受け金具と雄型差込金具との間に弾性支承を介在させたことを特徴とする桁端部間の弾性ヒンジ支承装置。
【請求項2】
雌型受け金具と雄型差込金具との間に介在されている弾性支承には、上下方向の予備圧縮力が付与されていることを特徴とする請求項1に記載の桁端部間の弾性ヒンジ支承装置。
【請求項3】
雌型受け金具内に雄型差込金具の支持アームが挿入配置され、前記支持アームの上面に上部の弾性支承の下面が相対的にスライド可能に当接され、前記支持アームの下面に下部の弾性支承の上面が相対的にスライド可能に当接され、各弾性支承の一端側は前記雌型受け金具に位置保持されていることを特徴とする請求項1または2に記載の桁端部間の弾性ヒンジ支承装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−75253(P2008−75253A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−252321(P2006−252321)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(503121088)株式会社ビービーエム (18)
【出願人】(000107044)ショーボンド建設株式会社 (71)
【Fターム(参考)】