説明

桑の葉微粉末による染色絹糸の作成方法

【課題】 生桑葉を、低温で短時間の乾燥・粉砕を行い、有効成分を有効量にて葉中に保持させながらこれを桑葉粉末として取り出し、これを絹糸染色釜に入れ、染色加工し、その後、媒染料を添加加工して絹繊維にこの有効成分を有効量にて含有させる今までにない染色絹糸の作成方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 桑の葉を使用して絹糸に染色加工した場合、紅いろ色調に染着されることが一般である。本発明は特開2002−171918号に出願された桑葉粉末の特性を生かし、これを絹糸繊維の染色にも利用することにより、従来の方法では達成出来なかった生桑葉の低温での短時間の乾燥・粉砕を可能とすることによって、絹の有効成分を熱分解せず、染色処理後の桑葉中に有効な量で優れた色素を残留させることもでき、深みのあるグリーン色の染色機能のある新しい絹生地糸を提供させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に低温での短時間での乾燥、微粉末に粉砕して、健康食品等を提供出来る生桑の葉の有効成分を、有効量にて成分を維持しながら炭酸カリウムを添加して染色物を加え、染色を繰り返し、その後に媒染剤を使用し空気酸化後水洗させることにより、桑葉粉末健康食品ではなく、絹染色に染色工程用材として媒染剤と共に提供し、今日の丹後絹縮緬織物よりもより高品位の丹後絹縮緬織物糸に移行させるその作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の桑葉粉末の形成方法としては、生桑葉を、低温での短時間の乾燥・粉砕を可能とすることにより、有効成分を有効量にて葉中に保持しながら桑葉粉末を製造する方法があり、この方法により得られる桑葉粉末、及びこの桑葉粉末を含有する蚕飼育用人工飼料及び健康食品に提供し使用させる特許がすでに特願2000−367167号にて出願されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この従来の発明は特許請求の範囲に、桑葉粉末として取り出す桑粉末の製造方法において、最終製品としての桑葉粉末の内部温度を90度Cを超えない温度にて生じる上昇熱風の複合旋回流により乾燥させる桑葉粉末であると明示され、しかも、桑葉製造方法並びに乾燥された桑葉粉末を含有する蚕飼育用人工飼料、並びに乾燥された桑葉粉末を含有する健康食品であると明示されている。
【0004】
かかる従来の発明の方法により得られる桑葉粉末は、100μm以下の桑葉粒子のものが全体の80%以上を占めるように粉砕し、乾燥し、粉砕及び乾燥される桑葉粉末の内部温度が90℃を超えない温度以下と遵守するものであり、しかもこの発明の桑葉粉末は、100グラム中の総アスコルビン酸含有量が400mg以上のものでもある。
【0005】
この様にして粉砕・乾燥装置に桑葉を滞留時間約8秒間の粉砕・乾燥条件にて導入し、桑葉粉末より得られた粉末結果は、鮮やかな緑色、即ちグリーンを呈し、水分含有量2.1重量%、平均粒径約18.7μmにて取得でき、しかも粒径100μm以下が桑葉粉末全体の約90%を占める粒径分布を含有する健康食品を得ることができる(特許文献1参照。)。
【0006】
【技術文献1】
特開2002−171918号公報 (特許請求の範囲、課題を解決するための手段、0017項目、)
【0007】
次に絹の糸に媒染剤を用いて染色処理を行う方法として、特開平05−311582号公報があり、予め絹にタンニン酸を含む前処理液と接触させてタンニン酸処理をした後、必要に応じて吐酒石による固着処理を行い、ついで草木灰などの媒染剤を含む媒染液と接触させてタンニン酸の固着と媒染とを行ってから、媒染後の繊維製品を紅花の抽出物を含む染液と接触させて染色反応させる方法が示されている。
即ち、タンニン酸処理を行ってから媒染処理しその後に染色処理(紅色染色)を行っている。
【0008】
またこの出願にはタンニン酸処理後に媒染剤を含む媒染液と接触反応させてタンニン酸の固着と媒染とを行う。と明示され、この工程を経ないと次工程である染色工程における染着性及び染着堅牢度が不足するようになると表示されている。
【0009】
ここで使用する媒染剤として、ツバキ灰、サワフタキ灰、ヒサカキ灰、クヌギ灰、アカサ灰、草木灰(木炭や薬灰)を用いることが好ましいと示され、これらの草木灰はアルミニウムイオンのほか、染色に有用な他の金属イオンやアルカリ物質を含んでいると示されている。
【0010】
これらの草木灰と共にあるいは上記の草木灰に代えて酢酸アルミニウム等など、また上記の草木灰に代えて木酢酸鉄等の鉄塩、酢酸銅等の銅塩なども用いることができると表示されている。しかしこの出願はタンニン酸処理および媒染後は、繊維製品を紅花の抽出物を含む染液と接触させることにより染色されると明示されている。従って今回出願される本発明はタンニン酸処理も行われず、染色が先に続けて行われてから媒染料が数回に分けて投入され、その染色物は途中一度上げて空気酸化する本発明の染色工程を行うため、この特開平05−311582号出願とは類似していない。
【0011】
特開平06−173176号公報には、絹にタンニン酸又はカチオン化剤を含む前処理液と接触させてカチオン化処理後、更にタンニン酸処理することもでき、ついで茶の抽出物を含む染液と接触させて染色反応させる方法も示されている。
即ち、染色反応の前に、媒染剤を含む媒染液と接触させて媒染処理をすることも出来、また媒染反応及び染色反応を同時に行うことも出来ることが明示されている。ただし、この発明には酢酸銅は媒染後に染色と明記されており、媒染時に媒染料として用いられるものではない。
【0012】
特開2001−295184号公報には、カチオン化処理剤の使用明記はなく、絹にタンニン酸を含む前処理液と接触させて前処理し、ついで茶の抽出物を含む染液と接触させて染色反応させる方法であることが示されている。
即ち、染色反応の前に、媒染剤を含む媒染液と接触させて媒染処理をすることも出来、また媒染反応及び染色反応を同時に行うことも出来ることが明示されている。ただし、この発明にも酢酸銅は媒染後に染色と明記されており、媒染時に媒染料として用いられるものではない。
【0013】
【技術文献2】
特開平05−311582号公報(要約書項目、0025〜0028項目、)
【技術文献3】
特開平06−173176号公報(要約書項目、表2〜表4、)
【技術文献4】
特開2001−295184号公報(要約書項目、表3〜表5、)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
このように従来から採用されている、あるいは提案されている絹の染色方法において、被染物である絹にカチオン基を用いる場合、カチオン基を導入する工程が複雑で、工業性などの点で問題があると言われ、その解決が強く望まれている。
本発明に明示される桑の葉微粉末の染色による絹繊維は、生桑葉を低温での短時間の乾燥・粉砕し、有効成分を有効量にて葉中に保持させながら、桑葉粉末の内部温度が90℃を超えない温度にて乾燥させ、生桑葉を対流時間30秒以内で粒径100μm以下の桑葉粒子全体の約80%以上を占めるように粉砕し乾燥させた粒径分布を含有する健康食品を得ることができると明示されている形態にて形成される乾燥桑葉粉末を採用し、この方法により得られる大切な桑葉粉末の使用効能を、桑葉粉末を含有する蚕飼育用人工飼料および健康食品に提供だけではなく、本発明は生絹糸の染色工程にもこの方法を提供できるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は上記目的を達成するために、まず特開2002−171918号公報の実施例1に記載される生桑葉(水分含有量約70%、品質;みなみさかり)を予め数センチ幅の短冊形に切断し、粉砕・乾燥させる。得られる桑葉粉末は、鮮やかなグリーン色素を呈し、操作滞留時間約8秒間にて、水分含有量2.1重量%、平均粒径20ミクロンの特開2002−171918号実施例1記載の桑の葉微粉末を作用構築させ、本発明の染色工程において使用する。
【0016】
次に、使用する桑の葉微粉末に炭酸カリウムを添加し、染色作用を続け、常温で媒染料、即ち酢酸アルミニュウム・酢酸銅・木酢酸鉄を入れ、空気酸化後数回水洗し、桑の葉微粉末染色工程によって構成される絹糸繊維を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の最大の効果は、使用される桑葉粉末は、従来法に比べ、低温かつ短時間で粉砕・乾燥されるため、ビタミン類や電解質を初めとする有効成分を有効量にて絹糸に含有させることができ、この本発明の含有された有効成分を衣類の絹糸にて構成させた場合には、桑葉粉末が発揮する優しい効果を衣類を着た身体に体験させることができる。
また、本発明の絹糸にて着物を構成した場合には、着物の臭いがいやし系にて構成され、今までにない丹後縮緬織物効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
発明を実施するため本発明に使用する特開2002−171918号桑葉粉末の使用形態としては、桑の葉は桑葉粉末100グラム中の総アスコルビン酸含有量が400mg以上であることを特徴とし、ここで使用されるアスコルビン酸は、人および動物の生体機能にも有効な成分であり、酸化および熱分解し易い物質でもある。そのためアスコルビン酸を粉砕して乾燥させ、桑葉粉末にこのような有効量にて残存させることが本発明を実施するための本発明の最良の形態である。
【実施例】
【0019】
本発明で実施する絹繊維糸に対する桑の葉(微粉末)染色工程を下記に箇条的に示す。
【0020】
▲1▼ まず、染色すべき絹糸を、50〜60℃の湯で10分間ほど操り、不純物を、洗い落とす。
▲2▼ 染色釜に70℃程度のお湯をはり、桑の葉(微粉末)を攪拌しながら、例えば染糸の量2640グラムに対して微粉末を50グラムの割合に入れる。
次に、これを徐々に昇温して沸騰させ、炭酸カリウムを添加してpH9−9.5に保ち20分程煮出させる。
【0021】
▲3▼ ▲2▼に染色物をいれ、繰りながら10分間ほど煮染め後、温度が70℃になるまで染色を続ける。
▲4▼ 染色物を染浴よりあげて常温になるまで空繰りする。
【0022】
▲5▼ 次に、新たな染色釜に常温で媒染料を入れ、20分間▲4▼を染める。
媒染料は、数回に分けていれる。染色物は、途中一度上げて空気酸化する。
【0023】
▲6▼ 水洗後、▲3▼の液を昇温させ媒染料に使用している酢酸類とは全く異なる別の酢酸を加えてpH6に保ち▲5▼を操りながら70℃程度に下げる。
▲7▼ 空気酸化後、数回水洗する。
【0024】
これにより、深みのあるグリーン色のある染色絹生地糸が得られ、得られた染色糸は染着性が良好で、染色堅牢度も高い桑の葉(微粉末)染色絹糸を得ることができる。
【0025】
上記使用媒染料は 酢酸アルミニュウム 2%owf
酢酸銅 2%owf
木酢酸鉄 1%owf
の形態にて構成されている。
なお、%owfとあるのは、被染物である繊維製品の重量に対するパーセントを意味する。
染色浴比 は 1:30 である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の産業上の利用可能性は、一般に桑の葉を使用し絹糸に染色した場合、自然感のある独特の色調(紅色)に染着されることが一般である。本発明は特開2002−171918号にて桑葉粉末を作成し、従来の出願の桑葉粉末が蚕飼育用人工飼料および健康食品に提供するだけのものである桑葉粉末を、絹糸の染色に有効に利用することにより、従来法では達成出来なかった生桑葉の低温での短時間の乾燥・粉砕を可能とすることができ、絹の有効成分を熱分解せず、染色処理後の桑葉中に有効な量で色素を残存させることで深みのあるグリーン色の染色機能のある絹生地糸を得ることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
桑葉粉末を粉砕・乾燥装置に桑葉を滞留時間約8秒間、粉砕・乾燥条件にて導入し、桑葉粉末を水分含有料2.1重量%、平均粒径約20ミクロン粉末に形成させた乾燥桑葉粉末を、温度70℃程度にして、最初炭酸カリウムを添加して染色釜にて煮染めて繰り返し染色を続け、その染色後、その染色釜に常温にて媒染料を数回入れ、空気酸化後数回水洗して桑の葉を染め上げることを特徴とする桑の葉微粉末による染色絹糸の作成方法。
【請求項2】
染め物に対する媒染料の形成量パーセントを酢酸アルミニュウム2%owf、酢酸酢2%owf、木酢酸鉄1%owfにて配分形成して使用させることを特徴とする特許請求項1記載の桑の葉微粉末による染色絹糸の作成方法。

【公開番号】特開2006−9230(P2006−9230A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−220950(P2004−220950)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(597050727)有限会社三徳 (4)
【Fターム(参考)】