説明

【構成】 桝10は、点検口24を有する桝本体12、点検口24に取り付けられる蓋14、および蓋14を押えるための押え部材16を含み、床(100)下などに設置されて、住設機器からの排水を流す排水枝管(102)と排水を外部に排出する排水主管(106)とを繋ぐ。蓋14には、シール部材68が装着されており、蓋14は、点検口24に対して水密的および気密的に取り付けられる。また、押え部材16は、バヨネット結合などを利用して桝本体12に取り付けられ、桝本体12と協働して蓋14を押えて、蓋14が桝本体12から不用意に外れることを防止する。
【効果】 蓋を取り外す際に、シール部材を周方向に回転させる必要がないので、シール部材が固着した場合でも容易に蓋を取り外すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は桝に関し、特にたとえば、点検口を有する桝本体と、点検口にシール部材を介して着脱可能に装着される蓋とを有する、桝に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の桝の一例が特許文献1に開示される。特許文献1の技術は、桝本体の内部に仕切体を設けた合成樹脂製集合桝である。桝本体上部に形成される蓋用勘合口には、リップ状パッキン(シール部材)によって完全密封した状態で、蓋が着脱自在に装着されている。また、この蓋の装着には、桝本体の上縁に突設した係止鉤と蓋に形成したフランジとのバヨネット結合を利用している。
【特許文献1】特許第3791770号公報 [E03F 5/10]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
桝本体に蓋を装着するときには、桝内の臭気などが外部に漏れないように、Oリング等のシール部材が用いられる。また、桝内の圧力が上昇したとき等に、不用意に蓋が外れないようにする必要があるため、桝本体に蓋を単に嵌め込むだけでなく、バヨネット結合またはねじ結合などのような、蓋を回して固定する方法が採用されることが多い。
【0004】
シール部材は、通常、滑材が塗布される等してその摩擦抵抗を下げてあるが、時間が経過すると滑材が乾燥して機能しなくなり、シール部材が圧縮されて固着してしまうことがある。特許文献1の技術では、蓋自体を回して、つまりシール部材を周方向に回転させて、蓋を取り外す必要があるため、シール部材が固着状態になった場合には、蓋を取り外すことが大変困難となる。広い空間に設置される桝においては、回し治具を使って蓋を回すことも考えられるが、床下などの狭隘な場所に桝を設置した場合には、回し治具は使えない。また、床下などで回し治具を使うためには、床に点検口を設け、その下に桝を設置しなければならないという制約が生じる。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、桝を提供することである。
【0006】
この発明の他の目的は、シール部材が固着状態になっても、蓋を容易に取り外すことができる、桝を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明などは、本発明の理解を助けるために後述する実施の形態との対応関係を示したものであって、この発明を何ら限定するものではない。
【0008】
第1の発明は、点検口を有する桝本体と、点検口にシール部材を介して着脱可能に装着される蓋とを有する桝において、桝本体と協働して蓋を押える押え部材を備えることを特徴とする、桝である。
【0009】
第1の発明では、桝(10)は、たとえば、戸建住宅などの床(100)下などに設置されて、住設機器からの排水を流す排水枝管(102)と排水を外部に排出する排水主管(106)とを繋ぐ。桝は、点検口(24)を有する桝本体(12)を含み、点検口には、シール部材(68)を介して、蓋(14)が気密的および水密的に装着される。押え部材(16)は、たとえば、バヨネット結合を利用して桝本体に取り付けられ、桝本体と協働して蓋を押える。押え部材が蓋を押えるので、蓋が桝本体から不用意に外れることを防止するために、バヨネット結合などの蓋を回して固定する方法を用いる必要がなくなり、蓋は、たとえば点検口に単に嵌め込まれるだけでよくなる。
【0010】
第1の発明によれば、蓋を外す際に、蓋を周方向に回転させる必要が無いので、シール部材が固着状態になっても蓋を容易に取り外すことができる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明に従属し、蓋は桝本体内と外気とを連通する通気孔を有し、押え部材は通気孔を所定の空間を隔てて覆う。
【0012】
第2の発明では、蓋(14)は、桝本体(12)内と外気とを連通する通気孔(116)を有する。たとえば、蓋の内部には一方通気弁(110)が設けられ、桝本体内で負圧が発生したときには、通気孔を通って空気が流入する。押え部材(16)は、所定の空間(126,128)を隔てて通気孔を覆う。これによって、通気孔周囲の蓋上面には、埃などの異物が堆積し難くなる。このため、通気孔から空気を流入するときに、それと同時に埃などを吸引することが無くなり、一方通気弁のシール性等を確保することができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、シール部材が固着状態になっても、桝本体の点検口から蓋を容易に取り外すことができる。
【0014】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1および図2を参照して、この発明の一実施例である桝10は、戸建住宅などの床100下に配置されて、トイレや風呂などの住設機器から排出された生活排水を流す複数の排水枝管102と、基礎104を貫通して生活排水を外部に排出する排水主管106とを繋ぐ合流桝である。桝10は、塩化ビニル等の合成樹脂によって形成され、桝本体12、蓋14、および蓋14を押えるための押え部材16を含む。
【0016】
図3に示すように、桝本体12は、射出成形などによって形成され、略円筒形状の側壁部20を含む。側壁部20の内径は、たとえば155mmである。側壁部20の上端22は開口しており、その上端開口が点検口24として利用される。この点検口24には、詳細は後述する蓋14が着脱自在に装着される。また、側壁部20の上端22には、外側に向かって突出する4つの第1爪部26が形成される。
【0017】
また、側壁部20は、一方が内側に向かって凹んでおり、そこに段差部28が形成される。段差部28の両側端上部のそれぞれは段差状になっており、そこに第1支持部30が形成され、その第1支持部30の水平面同士を結ぶように、円弧状に突出する第2支持部32が形成される。
【0018】
側壁部20の段差部28側を除く3方側のそれぞれには、外方に向かって突出するように、流入部34が設けられる。流入部34は、排水枝管102からの排水が流入する流入口であると共に、排水枝管102と接着接合などによって接続される接続部でもある。この実施例では、3つの流入部34が設けられ、3つの排水枝管102からの排水が流入(合流)可能となっている。流入部34は、受口構造を有する円筒形状に形成され、その内径はたとえば90mmである。
【0019】
また、側壁部20の下部には、テーパ状の底壁部36(図2参照)が形成され、底壁部36の上面、すなわち桝本体12の底面は中心方向に向かって下り勾配となる。この底壁部36の中心部に、円筒形状の流出部38が下方に延びて形成される。流出部38は、排水主管106へと排水を流出する流出口であると共に、排水主管106と接着接合などによって接続される接続部でもある。流出部38の外径は、たとえば106mmであり、その高さは、たとえば40mmである。
【0020】
また、桝本体12の内部には、図4に示すような仕切体40が着脱自在に設けられてもよい。ただし、必ずしも桝本体12内に仕切体40を設ける必要はなく、仕切体40を設けない場合もあるので、その構成については後述する。
【0021】
桝本体12の点検口24には、蓋14が着脱自在に装着される。図5に示すように、蓋14は、射出成形などによって形成され、円板状の天頂部60を含む。天頂部60の外径は、桝本体12の側壁部20の外径と同じ或いはほぼ同じ大きさを有し、蓋14を桝本体12の点検口24に取り付けたときには、桝本体12の側壁部20の上端22と、天頂部60の下面周縁部とが当接する。また、天頂部60の上面には、2つの凹部62が形成される。この凹部62は、蓋14を着脱するときに作業者の指が入れられる把持部として利用される。
【0022】
さらに、天頂部60の下面には、短円筒形状の嵌合部64が形成される。嵌合部64は、点検口24に嵌め込まれる部位であり、蓋14を桝本体12の点検口24に取り付けたときには、嵌合部64の外面が桝本体12の側壁部20の内面に沿う。また、嵌合部64の外面には、周方向に延びる溝66が形成され、その溝66にシール部材68が装着される。嵌合部64の外径は、シール部材68を装着した状態で点検口24に嵌め込むことができるように、桝本体12の側壁部20の内径よりもやや小さく設定される。
【0023】
シール部材68は、スチレンブタジエンゴム(SBR)およびエチレンプロピレンゴム(EPDM)等のゴムによって形成される、Oリング等の円環状のパッキンである。図5には、略円形断面のシール部材68を示してあるが、シール部材68としては、矩形断面および異形断面などの適宜な断面形状を有するものを用いることができる。このシール部材68によって、嵌合部64と、点検口24(つまり桝本体12の側壁部20の上端部分)との間の気密性および水密性が保たれる。
【0024】
また、図6に示すように、押え部材16は、射出成形などによって形成され、桝本体12と協働して蓋14を押え、蓋14が桝本体12から不用意に外れることを防止する。ここで、協働とは、2つ以上の部材が協力して機能を果たすことをいう。
【0025】
押え部材16は、ドーナツ板状に形成される上壁部70、および上壁部70の下面周縁部から下方向に延びるように形成される、短円筒形状の側壁部72を含む。押え部材16の側壁部72の外面には、上下方向に延び、周方向に所定の間隔で並ぶ複数のリブ74が形成される。このリブ74よって、押え部材16の剛性が高められる。また、作業者はリブ74に指をかけることができるので、押え部材16を周方向に回転させ易くなる。
【0026】
また、押え部材16の側壁部72の内面には、桝本体12の4つの第1爪部26と対応する位置に、内側に向かって突出する4つの第2爪部76が形成される。第2爪部76は、側壁部72の内面下端に沿って周方向に延びる横部78と、横部78の一方端から上方に向かって延びる縦部80とを含み、横部78と縦部80とによってL字状に形成される。
【0027】
桝本体12に押え部材16を取り付けるときには、先に桝本体12の点検口24に蓋14を装着しておき、その蓋14の上から押え部材16を取り付ける。具体的には、押え部材16の側壁部72内に、蓋14および桝本体12の側壁部20の上端部分を差し込む。そして、押え部材16を周方向に回転させて、押え部材16の上壁部70と第2爪部76の横部78との間に、桝本体12の第1爪部26を挿入することによって、桝本体12に押え部材16を固定する。つまり、押え部材16の取り付けには、差し込んで回転させることによって固定する、バヨネット結合が利用される。なお、第2爪部76の縦部80は、ストッパとして利用される。
【0028】
桝本体12に押え部材16を取り付けると、図7に示すように、押え部材16の第2爪部76の横部78上面は、桝本体12の第1爪部26下面と当接し、蓋14の天頂部60上面は、押え部材16の上壁部70下面と当接する。押え部材16は、第2爪部76と第1爪部26との当接によって上方への動きが規制されるので、その押え部材16によって押えられる蓋14は、しっかりと固定される。つまり、桝本体12と押え部材16とが協働して、蓋14をしっかりと押えている。
【0029】
蓋14の嵌合部64は、点検口24に嵌め込まれているだけであるので、これだけでは、桝本体12内の圧力が上昇したとき等に、蓋14が点検口24から外れてしまう可能性がある。しかし、上述のように、押え部材16によって蓋14を押えることにより、不用意に蓋14が桝本体12から外れてしまうことが防止される。言い換えると、蓋14は、押え部材16によってしっかりと押えられているので、不用意に蓋14が点検口24から外れてしまうことを考慮して、バヨネット結合などのような蓋14を回して固定する方法を採用する必要はなく、蓋14は、点検口24に単に嵌め込まれた状態で装着されるだけでよい。
【0030】
また、桝10の点検作業や掃除などを行うために、桝本体12から蓋14を取り外すときには、先ず、押え部材16を逆回転させて取り外し、その後、天頂部60に形成される凹部62を利用して、蓋14を取り外す。
【0031】
上述のように、シール部材68は、周方向に延びるように蓋14の嵌合部64に装着されるため、シール部材68が固着状態になっている場合、蓋14自体を周方向に回転させるためには、大きな力が必要となる。しかし、この実施例では、蓋14の嵌合部64が点検口24に嵌め込まれているだけであり、蓋14を取り外す際には、蓋14を周方向に回転させる必要が無い。
【0032】
したがって、この実施例によれば、シール部材68が固着状態になっていても、蓋14を取り外すための回し治具などを用いることなく、小さな力で容易に蓋14を取り外すことができる。このため、作業者が床100下に入り、そこで蓋14を取り外して点検作業や清掃を行うことが容易となり、桝10の維持管理性が向上する。また、床100に設けた点検口の下に桝10を設置しなければならないという制約がないので、桝10を基礎104の壁近くなどの適宜な場所に配置でき、床100下の空間をその他の用途に有効利用できる。
【0033】
なお、押え部材16の形状は、図6に示すものに限定されず、適宜な形状を採用することができる。たとえば、上壁部70を円板状に形成してもよい。また、たとえば、押え部材16の側壁部72を短円筒形状に形成するのではなく、第2爪部76を形成する位置のみ、つまり桝本体12の第1爪部26に対応する位置のみに、円弧状の側壁部72を分散させて形成するようにしてもよい。
【0034】
また、押え部材16の取り付けには、バヨネット結合を利用したが、これに限定されない。たとえば、桝本体12の外面上部にネジ山を形成し、押え部材16の側壁部72の内面にそのネジ山と螺合するネジ溝を形成するというように、ネジ結合を利用して押え部材16を桝本体12に取り付けてもよい。
【0035】
さらに、押え部材16は、必ずしも周方向に回転して桝本体12に取り付けられることによって蓋14を押える必要はなく、適宜な方法で蓋14を押えることができる。たとえば、図8に示すように、桝本体12には、その上端22から外方に向かって突出する第1係止部90を形成し、蓋14には、第1係止部90と対応する位置に、その天頂部60の側面から外方に向かって突出する第2係止部92を形成する。そして、蓋14を点検口24に装着するときには、第1係止部90と第2係止部92との位置を合わせるようにし、そこに枠状に形成した押え部材16を嵌め込むことによっても、蓋14を押えることができる。この場合には、押え部材16と桝本体12の第1係止部90とが協働して、蓋14が桝本体12の点検口24から外れないように押えている。
【0036】
また、たとえば、蓋14の天板部60の側面に、ヒンジ機構を利用して回動可能に取り付けた押え部材16を、桝本体12の外面上部に形成した係止部に係止することによって、蓋14が桝本体12から外れないように押えることもできる。
【0037】
ただし、ヒンジ機構を利用する場合には、構造が複雑となり、桝10の製作コストが上昇してしまう懸念がある。また、図8に示す押え部材16を用いる場合には、第1係止部90と第2係止部92との位置を正確に合わせる必要があり、床100下などの狭隘な場所においては取り付けが難しくなる懸念がある。したがって、押え部材16には、取り付けが容易なバヨネット結合またはネジ結合を利用したものを用いることが望ましい。
【0038】
また、蓋14の形状も、図5に示すものに限定されず、適宜な形状を採用することができる。
【0039】
たとえば、図5に示す蓋14では、天頂部60の上面に、指を入れるための凹部62を形成するようにしたが、凹部62代わりに、天頂部60の上面に取っ手を形成し、その取っ手を掴んで、蓋14を点検口24から取り外すようにすることもできる。
【0040】
また、凹部62代わりに、或いは凹部62と共に、たとえば、天頂部60の側面下端に、その一部を切り欠くようにして形成される切欠部を設けてもよい。この場合には、切欠部、つまり蓋14と桝本体12との間にドライバ等の治具を差し込み、てこの原理を利用して、蓋14を点検口24から取り外すようにすればよい。これによって、より簡単に蓋14を取り外すことができる。なお、この場合の治具は、桝本体12の側方から差し込んで蓋14を持ち上げるだけであるので、高さ方向に制限のある床100下においても使用可能である。また、このような切欠部は、桝本体12の側壁部20の上端22に形成してもよい。
【0041】
また、上述の実施例では、桝本体12の側壁部20の上端22と、蓋14の天頂部62の下面周縁部とを当接させる、つまり天頂部62が桝本体12の上端22より上の位置にくるようにしたが、これに限定されない。たとえば、天頂部62自体も点検口24内に嵌め込まれるようにしてもよく、さらには天頂部62が嵌合部64を兼ねるようにしてもよい。この場合には、蓋14を桝本体12に取り付けたときに、側壁部20の上端22と天頂部60の上面とが面一になるようにするとよい。
【0042】
また、蓋14には、嵌合部64を必ずしも形成する必要は無く、天頂部60のみによって形成される蓋14を用いてもよい。たとえば、天頂部60の下面周縁部に溝66を形成し、その溝66にシール部材68を装着する。そして、シール部材68を桝本体12の側壁部20の上端22に当接させるようにして、点検口24に蓋14を取り付けるようにするとよい。なお、この場合には、押え部材16は、蓋14を下方向に押えるだけでなく、横方向の蓋14のずれも防止できるように形成するとよい。たとえば、押え部材16の側壁部72内面に、内方に向かって突出する突出部を設けて、その突出部の端を蓋14の天頂部60の側面に当接させ、蓋14の横方向のずれを防止するとよい。このようにすれば、蓋14を単に点検口24に乗せるだけであっても、押え部材16が蓋14を押えるので、蓋14が桝本体12から不用意に外れてしまうことが防止でき、かつ、桝10の点検時などには蓋14を容易に取り外すことができる。
【0043】
また、蓋14の嵌合部64を点検口24に嵌め込む代わりに、点検口24(つまり桝本体12の側壁部20上端部分)を嵌合部64内に嵌め込むようにしてもよい。この場合には、たとえば、蓋14の天頂部60の下面周縁部から下方に突出するように、桝本体12の側壁部20の外径に相当する内径を有する短円筒形状の嵌合部64を形成し、この嵌合部64内面に、溝66を形成してシール部材68を装着するとよい。また、桝本体12の側壁部20外面には、蓋14の嵌合部64下端より低い位置に第1爪部26を形成し、その第1爪部26と押え部材16の受部78とを利用して押え部材16を桝本体12に取り付け、蓋14を押えるとよい。
【0044】
また、上述したように、桝本体12の内部には、仕切体40が着脱自在に設けられてもよい。図4を参照して、仕切体40は、射出成形などによって形成され、当接板42および仕切板44を備える。
【0045】
当接板42は、桝本体12の段差部28と対向するように形成される板状体であって、その両側部上部は、段差部28の両側端と沿う。また、当接板42の上端には、外側に向かって突出する第1当接部46が形成される。この第1当接部46は、段差部28の段差状の第1支持部30に沿う形状に形成され、桝本体12に仕切体40を取り付けたときには、第1当接部46と第1支持部30とが当接する(図2参照)。
【0046】
仕切板44は、各流入部34の間を区画するものであり、各流入部34に対向する位置のそれぞれに形成される。具体的には、仕切板44は、流入部34に対向する主面44aを有し、主面44aの下端中央から上方および両側方に向かうに伴い、流入部34に向かって湾曲する板状体に形成される。つまり、仕切板44は、流入部34の桝本体12中心側の開口部48(図3参照)を庇状に覆い、仕切板44の側面上部50は、開口部48の上側半周に亘って、桝本体12の側壁部20の内面に沿う。また、仕切板44の側面下部52は、下端に向かうに伴い内側に向かって放物線を描くように湾曲する。つまり、仕切板44の側面下部52と桝本体12の側壁部20の内面とは離れており、その間には空間が形成される。この空間は、仕切板44によって区画される排水の通路同士を、桝本体12の周方向に連通する。
【0047】
また、仕切体40は、その外面が仕切板44の側面上部50と同一面となる壁部54を備える。この壁部54は、当接板42と一体となって略円筒形に形成され、壁部54の外面は側壁部20の内面に沿う。壁部54の上端には、その全周に亘って、第1当接部46と一体となって外側に向かって突出する第2当接部56が形成される。桝本体12に仕切体40を取り付けたときには、第2当接部56と第2支持部32とが当接し、第1当接部46および第2当接部56の上面は、段差部28の上面と同一面を形成する。
【0048】
また、蓋14を桝本体12の点検口24に取り付けると、蓋14の嵌合部64の下端と、第1当接部46、第2当接部56および段差部28の上面とが当接する。したがって、仕切体40は、桝本体12と蓋14とによって挟まれる状態となり(図7参照)、しっかりと固定されるので、排水が仕切体40にぶつかる等しても、仕切体40はがたつかない。
【0049】
このような仕切体40を用いると、流入部34から流入する排水を案内して、排水の流れ方向を下向きにスムーズに変化させることができるので、他の流入部34への排水の逆流を防止できる。また、一度に多量の排水が桝本体12内に流入した場合には、排水は、下方向に流れて流出部38から流出すると共に、仕切板44の側面下部52と側壁部20との間の空間を通って周方向(横方向)にも流れる。つまり、各流入部34に対応する仕切板44によって区画された排水の通路だけでなく、他の流入部34に対応する排水の通路を利用して排水を排出することができので、桝本体12内での満水状態の発生を防止できる。したがって、仕切板44によって区画された部位における排水の通路を確保して満水状態を防止するために、桝本体12の管径を大きくとる必要がなく、桝10を小型化できる。
【0050】
また、図9に示すように、一方通気弁110を備える蓋14を用いることもできる。以下には、図9に示す実施例について説明するが、図1に示す実施例と重複する説明は、省略または簡略化して行う。
【0051】
図10に示すように、蓋14は、有頂円筒状の内筒部112、および内筒部112の外面に形成される鍔部114を備える。この鍔部114の下面周縁部は、桝本体12の側壁部20の上端22と当接する。また、内筒部112には、鍔部114よりも高い位置に、桝本体12内と外気とを連通するための通気孔116が形成される。さらに、鍔部114の下面には、円筒形状の嵌合部118が形成される。嵌合部118の外面は、桝本体12の側壁部20の内面に沿い、嵌合部118の外面に装着されるシール部材120によって、桝本体12の側壁部20と嵌合部118との間の気密性および水密性が保たれる。
【0052】
また、内筒部112の内部には、バヨネット結合またはネジ結合などを利用して、一方通気弁110が取り付けられる。一方通気弁110は、通常時には閉じており、外部への排水の漏れ、および桝10内の悪臭の漏れを確実に防止する。一方、桝本体12内で負圧が発生したときには、通気孔116と桝本体12内とを連通させて、外気を桝本体12内に取り込み、桝本体12内を大気圧に保つ。
【0053】
図11に示すように、押え部材16は、ドーナツ板状に形成される上壁部70を備え、その中央に形成される円形の孔122の径は、蓋14の内筒部112の外径とほぼ同じ大きさに設定される。押え部材16を桝本体12に取り付けるときには、この孔122に蓋14の内筒部112が挿通され、孔122の縁と内筒部112の外面とは当接する。また、上壁部70の下面周縁部には、下方向に延びる短円筒形状の側壁部72が形成される。この側壁部72の内面には、桝本体12の4つの第1爪部26と対応する位置に、内側に向かって突出する4つの第2爪部76が形成される。第2爪部76は、側壁部72の内面下端に沿って周方向に延びる横部78と、横部78の一方端から上方に向かって延びる縦部80とを含み、L字形に形成される。
【0054】
また、上壁部70の下面には、嵩上部124が形成される。嵩上部124は、第2爪部76の縦部80上端と一体となって、内側に向かって延びるように形成される。図9を参照して、嵩上部124の下面は、蓋14の鍔部114上面と当接し、これによって、押え部材16の上壁部70下面と蓋14の鍔部114上面との間に空間126が形成される。この空間の高さ、つまり嵩上部124の高さは、蓋14の通気孔116の高さとほぼ同じ、或いは通気孔116の高さより大きく設定され、押え部材16の上壁部70は、通気孔116の上方を覆う。また、桝本体12の側壁部20外面および押え部材16の側壁部72内面には、第1爪部26および第2爪部76が形成されるので、桝本体12の側壁部20外面と押え部材16の側壁部72内面との間にも空間128が形成され、通気孔116は、空間126および空間128を介して外部と連通する。
【0055】
このように押え部材16を形成することによって、押え部材16の上壁部70が蓋14の鍔部114を覆うので、蓋14の鍔部114上面に埃などの異物が堆積し難くなり、一方通気弁110が開いて外気を桝本体12内に取り込むときに、通気孔116から埃などが吸引されることを防止できる。したがって、埃などが一方通気弁110に付着してそのシール性等が低下することを防止できる。
【0056】
ただし、押え部材16の嵩上部124は必ずしも形成する必要はなく、通気孔116は、空間126,128を介さずに直接外部と連通するようにしてもよい。たとえば、上壁部70の孔122の径を内筒部112の外径よりも大きく設定して、上壁部70の孔122の縁と内筒部112外面との間に隙間を形成するようにしてもよいし、通気孔116を上壁部70上面より高い位置に形成するようにしてもよい。
【0057】
なお、上述の各実施例では、図3に示すような桝本体12を用いたが、桝本体12の形状および構成は、これに限定されず、適宜な形状および構成を有する桝本体12を用いることができる。たとえば、桝本体12は、必ずしも複数の流入部34を有する必要は無く、1つの流入部34を有するだけでもよい。また、たとえば、流出部38を側壁部20に設け、排水を側方から排出することもできる。
【0058】
また、上述の各実施例では、シール部材68を蓋14に装着するようにしたが、桝本体12にシール部材68を装着することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】この発明の一実施例の桝によって排水枝管と排水主管とを接続した様子を示す断面図である。
【図2】図1の桝を示す断面図である。
【図3】図1の桝が備える桝本体を示す斜視図である。
【図4】図1の桝が備える仕切体を示す斜視図である。
【図5】図1の桝が備える蓋を示す断面図である。
【図6】図1の桝が備える押え部材を示す斜視図であり、(A)は上方から見た様子を示し、(B)は下方から見た様子を示す。
【図7】図1の桝において、押え部材が桝本体と協働して蓋を押える様子を示す断面図である。
【図8】この発明の他の実施例の桝を示す、(A)は押え部材が桝本体と協働して蓋を押える様子を示す斜視図であり、(B)はその断面図である。
【図9】この発明のさらに他の実施例の桝を示す断面図である。
【図10】図9の桝が備える蓋を示す、(A)は斜視図であり、(B)はその断面図である。
【図11】図9の桝が備える押え部材を示す斜視図であり、(A)は上方から見た様子を示し、(B)は下方から見た様子を示す。
【符号の説明】
【0060】
10 …桝
12 …桝本体
14 …蓋
16 …押え部材
24 …点検口
26 …第1爪部
40 …仕切体
64,118 …嵌合部
68 …シール部材
76 …第2爪部
116 …通気孔
126,128 …空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
点検口を有する桝本体と、前記点検口にシール部材を介して着脱可能に装着される蓋とを有する桝において、
前記桝本体と協働して前記蓋を押える押え部材を備えることを特徴とする、桝。
【請求項2】
前記蓋は、前記桝本体内と外気とを連通する通気孔を有し、
前記押え部材は、前記通気孔を所定の空間を隔てて覆う、請求項1記載の桝。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−133130(P2009−133130A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−310680(P2007−310680)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(505142964)クボタシーアイ株式会社 (192)
【Fターム(参考)】