説明

桟橋構築方法

【課題】ダム湖のような水深が深い場所に杭式桟橋を構築又は解体する場合において、潜水作業を最小限として作業効率を向上させ、工期の短縮と施工コストの削減を達成する。
【解決手段】互いに平行に延びる複数本の管と、隣り合う管同士を管長さ方向に対して斜め方向及び直角方向に連結する連結材とからなるトラス部材を地組する地組工程と、桟橋完成部分から所定距離離れた桟橋を延長すべき位置に、トラス部材を管の長さ方向が上下方向となるようにクレーンにより吊り下げ、地面より上方に浮かせた所定高さ位置に配置するトラス部材配置工程と、所定高さ位置に配置されたトラス部材の管内に管状の支持杭を挿入して地面に打設する支持杭打設工程と、打設された支持杭に対してトラス部材の管を固定する管固定工程と、桟橋完成部分を支持する杭と前記支持杭に固定された管とを梁により連結する連結工程と、を備えている桟橋構築方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水上の桟橋構築作業において潜水作業を最小限とすることができ、作業効率を向上させることが可能な桟橋構築方法及び構築された桟橋の解体方法に関する。
【背景技術】
【0002】
杭の上に床版を載せた構造の杭式桟橋(例えば、下記特許文献1参照)においては、杭自体が強度が要求される橋脚となる。そのため、杭の長さが長くなると隣り合う杭の間を梁により連結して補強することが必要となる。
通常、梁による杭間の連結は、杭を地面に打設した後、打設した杭に梁を溶接することにより行われている。
そのため、杭式桟橋の梁が水中に位置する場合、梁による杭の連結作業(梁を杭に溶接する作業)は、作業者が潜水して行わなければならない。
【0003】
しかしながら、例えばダム湖等の水深が約30〜40mもあるような場所に杭式桟橋を構築する場合には、溶接を行うために作業者は水中深くまで潜水しなければならず、潜水できる時間が短くなる上に視界が非常に悪くなる。これにより、作業効率が著しく低下し、工期が長くなり、施工コストが増大するという問題があった。また、構築されている桟橋を解体する場合においても同様の問題が存在していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3043320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記したような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、ダム湖のような水深が深い場所に杭式桟橋を構築又は解体する場合において、潜水作業を最小限として作業効率を向上させることができ、工期の短縮と施工コストの削減を達成することが可能である桟橋構築方法及び構築された桟橋の解体方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、互いに平行に延びる複数本の管と、隣り合う管同士を管長さ方向に対して斜め方向及び直角方向に連結する連結材とからなるトラス部材を地組する地組工程と、桟橋完成部分から所定距離離れた桟橋を延長すべき位置に、前記トラス部材を前記管の長さ方向が上下方向となるようにクレーンにより吊り下げ、地面より上方に浮かせた所定高さ位置に配置するトラス部材配置工程と、前記所定高さ位置に配置されたトラス部材の管内に管状の支持杭を挿入して地面に打設する支持杭打設工程と、前記打設された支持杭に対して前記トラス部材の管を固定する管固定工程と、前記桟橋完成部分を支持する杭と前記支持杭に固定された管とを梁により連結する連結工程と、を備えていることを特徴とする桟橋構築方法に関する。
【0007】
請求項2に係る発明は、前記桟橋を延長すべき位置近傍の水面上に、複数隻の台船を所定間隔をあけて配置する台船配置工程を備えており、前記トラス部材配置工程において、前記複数隻の台船の間に前記トラス部材を配置することを特徴とする請求項1記載の桟橋構築方法に関する。
【0008】
請求項3に係る発明は、前記トラス部材配置工程において、前記複数隻の台船の間に上下二段の導材を掛け渡し、前記上下二段の導材を前記トラス部材に貫通させることを特徴とする請求項2記載の桟橋構築方法に関する。
【0009】
請求項4に係る発明は、前記地組工程が、前記管と前記連結材とを連結して複数の単位トラス部材を製作する第一工程と、前記複数の単位トラス部材を、前記管同士を長さ方向に連結して前記トラス部材を製作する第二工程とからなり、前記第一工程は、工場にて製作された前記連結材を、前記桟橋完成部分上もしくは前記桟橋を延長すべき位置近傍の水面上に配置した台船上にて前記管と連結することによって前記単位トラス部材を製作し、前記第二工程は、前記複数の単位トラス部材の前記管同士を、前記複数隻の台船間において立設した状態で、長さ方向に連結することにより前記トラス部材を製作することを特徴とする請求項2又は3記載の桟橋構築方法に関する。
【0010】
請求項5に係る発明は、前記台船配置工程において、前記台船を前記桟橋完成部分から延出した固定材に対して固定することを特徴とする請求項2又は3記載の桟橋構築方法に関する。
【0011】
請求項6に係る発明は、前記支持杭打設工程の後に、前記支持杭内に根固め液を注入する根固め液注入工程を備えていることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の桟橋構築方法に関する。
【0012】
請求項7に係る発明は、前記支持杭打設工程において、下端にダウンザホールハンマと拡縮可能なハンマービットを有するロッドを、前記支持杭の内部に挿通して、前記ダウンザホールハンマの打撃作用と前記ハンマービットの回転掘削作用によって掘削孔を形成し、該掘削孔に前記支持杭を圧入し、前記掘削孔の形成時に排出された掘削土を、前記支持杭の上端部から排出ホースを介して台船上に配置したベッセルに収容することを特徴とする請求項2記載の桟橋構築方法に関する。
【0013】
請求項8に係る発明は、前記連結工程において、前記梁として、互いに平行に上下に間隔をおいて配置された複数本の一定長さの繋ぎ材と、上下に隣り合う2本の繋ぎ材間において、上方の繋ぎ材の右端部と下方の繋ぎ材の左端部、及び上方の繋ぎ材の左端部と下方の繋ぎ材の右端部とを夫々連結するようにクロスして設けられたブレス材とからなり、前記繋ぎ材とブレス材とは繋ぎ材の左右両端部に夫々固定された固定板を介して一体に接続されてなる梁を使用することを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載の桟橋構築方法に関する。
【0014】
請求項9に係る発明は、所定間隔で地面に打設された複数本の支持杭の間が梁により連結されている桟橋の解体方法であって、前記梁は、桟橋長さ方向に間隔をあけて打設された支持杭の間を連結する長さ方向梁と、桟橋幅方向に間隔をあけて打設された支持杭の間を連結する幅方向梁とからなり、前記幅方向梁は、互いに平行に延びる複数本の管と、隣り合う管同士を管長さ方向に対して斜め方向及び直角方向に連結する連結材とからなるトラス部材からなり、前記幅方向梁の管が、前記支持杭に対して外嵌されて固定されており、前記長さ方向梁は、前記支持杭に固定された前記幅方向梁の管同士を連結しており、前記解体方法が、前記長さ方向梁と前記支持杭との連結を解除する連結解除工程と、連結が解除された長さ方向梁をクレーンで吊り上げて撤去する長さ方向梁撤去工程と、前記幅方向梁をクレーンで吊り上げて前記管を前記支持杭から抜いて撤去する幅方向梁撤去工程と、を備えていることを特徴とする桟橋解体方法に関する。
【0015】
請求項10に係る発明は、前記長さ方向梁が、互いに平行に上下に間隔をおいて配置された複数本の一定長さの繋ぎ材と、上下に隣り合う2本の繋ぎ材間において、上方の繋ぎ材の右端部と下方の繋ぎ材の左端部、及び上方の繋ぎ材の左端部と下方の繋ぎ材の右端部とを夫々連結するようにクロスして設けられたブレス材とからなり、前記繋ぎ材とブレス材とは繋ぎ材の左右両端部に夫々固定された固定板を介して一体に接続されてなる梁であることを特徴とする請求項9記載の桟橋解体方法に関する。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明によれば、予めトラス部材を地組し、このトラス部材をクレーンにて所定高さ位置に配置した状態で、トラス部材の管内に管状の支持杭を挿入して打設し、打設した支持杭に対してトラス部材を固定することにより、打設された支持杭の間がトラス部材により連結されることとなる。そのため、支持杭の間を梁で連結するための現場作業(溶接)を省略することができる。これにより、潜水作業を最小限とすることができるため、ダム湖のような水深が深い場所に桟橋を構築する場合において、作業効率が大きく向上し、工期の短縮と施工コストの削減を達成することが可能となる。
【0017】
請求項2に係る発明によれば、桟橋を延長すべき位置近傍の水面上に複数隻の台船を所定間隔をあけて配置する台船配置工程を備えており、トラス部材配置工程において複数隻の台船の間にトラス部材を配置することにより、クレーンで吊り下げたトラス部材を容易に正確な位置に降下させて配置することができる。これにより、支持杭を正確な位置に打設することが可能となり、施工精度を向上させることができる。
【0018】
請求項3に係る発明によれば、トラス部材配置工程において、複数隻の台船の間に上下二段の導材を掛け渡し、上下二段の導材をトラス部材に貫通させることから、トラス部材を上下二段の導材により支持することができる。これにより、トラス材を垂直に配置することができ、地面の傾斜している場合においても支持杭を垂直に打設することが可能となる。
【0019】
請求項4に係る発明によれば、地組工程の第一工程において、工場にて製作された連結材を使用することにより、均一で高品質の連結材が得られるとともに、現場での工数を減らすことができ、作業効率を向上させることが可能となる。
また、複数の単位トラス部材の管同士を長さ方向に連結してトラス部材を製作する第二工程を、水上にて複数隻の台船間において立設した状態で行うことにより、長大なトラス部材を組み立てるための広いヤードを必要とせず、また作業を安全に行うことができる。
【0020】
請求項5に係る発明によれば、台船配置工程において、台船を桟橋完成部分から延出した固定材に対して固定することから、台船を所定位置に確実に固定することができ、トラス部材の管を正確に位置決めすることが可能となる。
【0021】
請求項6に係る発明によれば、支持杭打設工程の後に、支持杭内に根固め液を注入する注入工程を備えていることから、根固め液を確実に地面に打設された支持杭の先端まで到達させることができ、支持杭を地面に対して強固に固定することが可能となる。
【0022】
請求項7に係る発明によれば、支持杭打設工程において、下端にダウンザホールハンマと拡縮可能なハンマービットを有するロッドを、支持杭の内部に挿通して、ダウンザホールハンマの打撃作用とハンマービットの回転掘削作用によって掘削孔を形成し、該掘削孔に支持杭を圧入することから、深い水底に対しても支持杭を確実に垂直に打設することができる。加えて、掘削孔の形成時に排出された掘削土を、支持杭の上端部から排出ホースを介して台船上に配置したベッセルに収容することから、現場の水が掘削土により汚濁することが防止され、環境悪化を防止できるとともに、潜水作業時の視界が悪化することが防がれる。
【0023】
請求項8に係る発明によれば、連結工程において、予め繋ぎ材とブレス材とが一体化されている梁を使用することから、現場にて繋ぎ材とブレス材とを溶接する作業が不要となる。これにより、潜水作業を最小限とすることができるため、ダム湖のような水深が深い場所に桟橋を構築する場合において、作業効率が向上し、工期の短縮と施工コストの削減を達成することが可能となる。
【0024】
請求項9に係る発明によれば、支持杭の間を桟橋幅方向に連結する幅方向梁を効率良く撤去することができるため、構築された桟橋を短期間で撤去することが可能となる。
【0025】
請求項10に係る発明によれば、支持杭の間を桟橋長さ方向に連結する長さ方向梁を効率良く撤去することができるため、構築された桟橋を短期間で撤去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る桟橋構築方法の施工前の状態を示す図である。
【図2】(a)はトラス部材を構成する単位トラス部材を示す正面図であり、(b)は複数の単位トラス部材を連結して製作されたトラス部材を示す正面図である。
【図3】地組工程の説明図であり、(a)は第一工程、(b)は第二工程の説明図である。
【図4】台船配置工程の説明図であり、(a)は正面図、(b)は要部平面図である。
【図5】トラス部材配置工程の説明図(正面図)である。
【図6】トラス部材配置工程の説明図であり、(a)は図5の要部平面図、図6(b)は図5の要部右側面図である。
【図7】支持杭打設工程の説明図である。
【図8】根固め液注入工程の説明図である。
【図9】支持力確認工程の説明図である。
【図10】連結工程の説明図である。
【図11】上部工設置工程の説明図である。
【図12】連結工程完了後の桟橋の要部拡大図である。
【図13】本発明に係る桟橋解体方法の連結解除工程を示す説明図である。
【図14】本発明に係る桟橋解体方法の長さ方向梁撤去工程を示す説明図である。
【図15】本発明に係る桟橋解体方法の幅方向梁撤去工程の開始段階を示す説明図である。
【図16】本発明に係る桟橋解体方法の幅方向梁撤去工程の途中段階を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る桟橋構築方法及び桟橋解体方法の好適な実施形態について説明する。
先ず、桟橋構築方法について説明する。
図1は本発明に係る桟橋構築方法の施工前の状態を示す図であり、本発明に係る方法は桟橋完成部分(A)から桟橋未完成部分(B)に向けて桟橋を順次延長して構築する方法である。図中、(W)は水面、(G)は地面(水底)である。
以下、本発明に係る桟橋構築方法を作業工程に沿って説明する。
【0028】
<1.地組工程>
先ず、トラス部材を地組する。
図2(a)はトラス部材を構成する単位トラス部材を示す正面図であり、(b)は複数の単位トラス部材を連結して製作されたトラス部材を示す正面図である。
単位トラス部材(1)は、互いに平行に上下方向に延びる複数本の管(2)と、隣り合う管(2)同士を管長さ方向に対して斜め方向及び直角方向に連結する連結材(3)とから構成される。管(2)の本数は、図示例では3本とされているが、2本又は4本以上であってもよい。
トラス材(4)は、複数の単位トラス部材(1)の管(2)同士を長さ方向に連結することにより構成される。連結される単位トラス部材(1)の数は、図示例では3つとされているが、構築される桟橋の高さ(橋脚となる支持杭の長さ)に応じて設定すればよく、特に限定はされない。
【0029】
管(2)としては鋼管が好適に使用される。使用される鋼管の長さは施工現場に応じて適宜設定すればよく特に限定されないが、例えば長さ約4mの鋼管を単独で或いは複数本接続して使用することができる。
連結材(3)は、互いに平行に間隔をおいて配置された複数本の繋ぎ材(31)と、隣り合う2本の繋ぎ材(31)間においてクロスして設けられたブレス材(32)とからなり、繋ぎ材(31)とブレス材(32)とは繋ぎ材の左右両端部に夫々固定された固定板(33)を介して一体に接続されている。
【0030】
地組工程では、先ず連結材(3)と管(2)とを連結して複数の単位トラス部材(1)(図2(a)参照)を製作し(第一工程)、次いで製作された複数の単位トラス部材(1)の管(2)同士を長さ方向に連結することによりトラス部材(4)(図2(b)参照)を製作する(第二工程)。
但し、本発明の地組工程で製作されるトラス部材(4)は1つの単位トラス部材(1)からなるものであってもよい。この場合、地組工程の第一工程では連結材(3)と管(2)とを長さ方向に連結して単位トラス部材(1)(図2(a)参照)を製作するが、第二工程は行われない。つまり、第一工程で製作された単位トラス部材(1)をそのままトラス部材(4)として用いる。
このように、本発明では、地組工程で製作されるトラス部材(4)を構成する単位トラス部材(1)の数は、施工現場に応じて変更することができ、1つでも2つでも3つ以上であってもよく、特に限定されない。
また、現場で必要とされる長さ(高さ)が長い場合には、1つ或いは複数の単位トラス部材からなるトラス部材(4)を、長さ方向に複数個連結して使用することも可能である。この連結は、管(2)の端部に形成したフランジ同士の溶接又はボルト止めにより行うことができる。
複数のトラス部材(4)を長さ方向に連結して使用する場合、連結される複数のトラス部材(4)の長さは同じであっても異なっていても良い。
異なる場合としては、例えば、3つの単位トラス部材(1)から構成されたトラス部材(4)と、1つの単位トラス部材(1)から構成されたトラス部材(4)とを連結して使用する例や、3つの単位トラス部材(1)から構成されたトラス部材(4)と、2つの単位トラス部材(1)から構成されたトラス部材(4)とを連結して使用する例が挙げられる。
【0031】
第一工程において使用される連結材(3)は予め工場で製作する。これにより、均一で高品質の連結材(3)が得られるとともに、現場での工数を減らすことができる。
第一工程では、予め工場で製作された連結材(3)を、管(2)に対して溶接することにより、管(2)と連結材(3)とを連結して単位トラス部材(1)を製作する。この管(2)と連結材(3)との連結は、桟橋完成部分(A)上で行うか、もしくは図3(a)に示すように、桟橋を延長すべき位置近傍の水面(W)上に配置したフロート台船(5)(以下、単に台船(5)という)上にて行う。
【0032】
第二工程では、図3(b)に示すように、複数の単位トラス部材(1)の管(2)同士を、複数隻の台船(5)間において立設した状態で、長さ方向に連結することによりトラス部材(4)を製作する。
図6(a)は複数隻の台船(5)の配置方法の一例を示す平面図である。尚、図6は、後述するトラス部材配置工程の説明図であるが、この第二工程と台船の配置等が共通しているため、図6(a)を参照して第二工程における台船の配置等を説明する。
図6(a)では6隻の台船(5)が互いに接続されており、右側の2隻と左側の4隻との間に間隔(D)があけられている。右側の台船及び左側の台船の上には夫々前後一対の受け台(8)が設置されている。これにより、前後一対の受け台(8)が左右に間隔をあけて合計4つ配置される。尚、前後方向とは図6(a)の上下方向、左右方向とは図6(a)の左右方向を指す。
【0033】
先ず、桟橋完成部分(A)上もしくは台船(5)上で製作された単位トラス部材(1)の1つ(第一単位トラス部材と称す)をクレーンにより吊り下げて、長さ方向を上下方向に向けた管(2)の上端部付近を受け台(8)に固定する(第一段階)。この固定は、左右の受け台(8)間に導材(7)を掛け渡し、この導材(7)をトラス材(4)に貫通させることにより行う。受け台(8)は前後一対設けられているため、導材(7)も前後一対掛け渡され、トラス部材(4)は前方及び後方において導材(7)に貫通される。
次いで、別の単位トラス部材(第二単位トラス部材と称す)をクレーンにより吊り下げて、当該第二単位トラス部材の管(2)の下端部を受け台(8)に固定されている第一単位トラス部材の上端部と連結するとともに、連結により得られた第一単位トラス部材と第二単位トラス部材との連結体をそのまま下降させて第二単位トラス部材の管(2)の上端部付近を導材(7)により受け台(8)に固定する(第二段階)。
最後に、更に別の単位トラス部材(第三単位トラス部材と称す)をクレーンにより吊り下げて、当該第三単位トラス部材の管(2)の下端部と受け台(8)に固定されている第二単位トラス部材の上端部とを連結する(第三段階)。図3(b)はこの第三段階の連結直前の状態を示している。
尚、管(2)同士の連結は、管(2)の端部に形成したフランジ同士の溶接又はボルト止めにより行うことができる。
【0034】
上記したように、複数の単位トラス部材(1)の管(2)同士を長さ方向に連結してトラス部材(4)を製作する第二工程を、水上にて複数隻の台船(5)間において立設した状態で行うことにより(図3(b)参照)、長大なトラス部材(4)を組み立てるための広いヤードを必要とせず、また作業を安全に行うことができる。
【0035】
<2.台船配置工程>
図4に示すように、桟橋を延長すべき位置近傍の水面(W)上に複数隻の台船(5)を配置し、複数隻の台船(5)上に夫々受け部材(8)を立設する。
台船(5)が6隻である場合、図4(b)の平面図に示すように配置される。6隻の台船(5)は互いに接続され、右側の2隻と左側の4隻との間に間隔(D)があけられている。右側の台船及び左側の台船の上には夫々前後一対の受け台(8)が設置されている。これにより、4つの受け台(8)が前後及び左右に間隔をあけて配置される。
【0036】
桟橋完成部分(A)から水平方向(左右方向)に固定材(9)が延出される。固定材(9)としては、例えばH型鋼が使用される。
固定材(9)は、桟橋完成部分(A)に近い側の台船(5)上の受け部材(8)に固定される。これにより、台船(5)は、受け部材(8)を介して桟橋完成部分(A)から延出した固定材(9)に対して固定される。
【0037】
<3.トラス部材配置工程>
上記した地組工程により得られたトラス部材(4)を、図5に示すように、桟橋完成部分(A)から所定距離離れた桟橋を延長すべき位置に、管(2)の長さ方向が上下方向となるようにクレーンにより吊り下げ、地面より上方に浮かせた所定高さ位置に配置する。
図6(a)は図5の要部平面図、図6(b)は図5の要部右側面図である。尚、図5の右上には、吊り下げたトラス部材(4)の最上部のトラス部材単体を正面から見た図を描いている。図6(b)の右下には、同図の円内拡大図を描いている。
トラス部材配置工程では、クレーンにより吊り下げたトラス部材(4)を、上記した台船配置工程において配置された左右の台船(5)の間に下降させる。そして、左右に間隔をあけて配置された受け部材(8)間に夫々上下二段の導材(7)を掛け渡し、これらの導材(7)をトラス部材(4)に貫通させる。尚、受け部材(8)は、左右の台船(5)の夫々に前後一対設けられているため、導材(7)は前後上下の合計4本となり、4本の導材(7)がトラス材(4)を貫通することとなる。上下二段の導材(7)は受け部材(8)に固定される。
導材(7)が、前後一対及び上下二段に構成されていることにより、トラス部材(4)は傾くことなく垂直方向に配置されることとなる。
【0038】
台船(5)上にはポンプ(10)が設置されており、ポンプ(10)を駆動することにより台船(5)内に水を入れることができる。台船(5)内の水量を調整することにより、台船(5)の水平を維持する。
トラス部材(4)の高さ位置設定は、導材(7)に予め目印を付けておき、この目印の高さまでトラス部材(4)を下降させることにより行う。高さ位置は、管(2)の上部が受け部材(8)の上端部より僅かに高く突出するように設定する。
【0039】
<4.支持杭打設工程>
図7に示すように、上記したトラス部材固定工程により前記所定高さ位置に固定されたトラス部材(4)の管(2)内に、管状の支持杭(11)を挿入して地面(水底)(G)に打設する。支持杭(11)としては、鋼管杭が好適に使用される。
支持杭打設工程では、下端にダウンザホールハンマ(12)と拡縮可能なハンマービット(13)を有するロッド(14)を、支持杭(11)の内部に挿通する。そして、ダウンザホールハンマ(12)の打撃作用とハンマービット(13)の回転掘削作用によって地面(G)に掘削孔を形成する。
掘削孔の形成時に排出された掘削土は、高圧エアを供給することにより支持杭(11)とロッド(14)の隙間を通って上昇し、支持杭(11)の上端部から排出ホース(15)を介して台船(5)上に配置したベッセル(16)に収容される。これにより、水の汚濁が防止される。また、ベッセル(16)に収容された岩塊を検証することにより、掘削孔が予定深度(支持層)に達したか否かを確認することができる。
掘削孔が予定深度に達したら、油圧式掘進機(29)により支持杭(11)を圧入し、その後、クレーンによりロッド(14)を引き上げることにより支持杭(11)の打設が完了する。
【0040】
<5.根固め液注入工程>
支持杭(11)の打設完了後、図8に示すように、支持杭(11)内にトレミー管(17)を挿入して、モルタルバケット(6)からトレミー管(17)を通して根固め液を注入する。根固め液が硬化することにより、支持杭(11)の下端部が地面(G)の支持層と一体化して強固に固定される。尚、図8ではトラス材(4)は省略している。
【0041】
<6.支持力確認工程>
根固め液が硬化した後、図9に示すように、クレーンにより吊り下げたモンケン(18)を支持杭(11)の上端部に落下させる。台船(5)上で作業員(S)が落下時のリバウンドを記録することにより、支持杭(11)の支持力を確認する。
【0042】
<7.管固定工程>
支持力確認後、打設された支持杭(11)に対してトラス部材(4)の管(2)を固定する。
支持杭(11)に対する管(2)の固定は、ボルト(19)止めにより行う(図12参照)。これにより、支持杭(11)に対してトラス材(4)が固定される。尚、このボルト止め作業は水面下での潜水作業となるが、管(2)と連結材(3)とが予め一体化されたトラス部材(4)を使用することによって、従来に比べて潜水作業を大幅に減らすことができる。
【0043】
<8.連結工程>
台船(5)を使用して支持杭(11)及び管(2)の上端部に天蓋(24)及び受桁(25)を取り付け、導材(7)と共に台船(5)を撤去した後、桟橋完成部分(A)を支持する杭(A1)と、支持杭(11)に固定された管(2)とを梁(20)により連結する(図10参照)。
梁(20)は、図10右上に示すように、互いに平行に上下に間隔をおいて配置された複数本(図示例では4本)の一定長さの繋ぎ材(21)と、上下に隣り合う2本の繋ぎ材(21)間において、上方の繋ぎ材の右端部と下方の繋ぎ材の左端部、及び上方の繋ぎ材の左端部と下方の繋ぎ材の右端部とを夫々連結するようにクロスして設けられたブレス材(22)とからなり、繋ぎ材(21)とブレス材(22)とは繋ぎ材の左右両端部に夫々固定された固定板(23)を介して一体に接続されている。
尚、繋ぎ材(21)として油圧シリンダ等からなる伸縮可能な部材を使用することもできる。この場合、ブレス材(22)の交差部分は接合しない。
梁(20)は、桟橋完成部分(A)上もしくは台船(5)上で製作する。
【0044】
製作した梁(20)をクレーンにより吊り下げ、固定板(23)を桟橋完成部分(A)の杭(A1)及び支持杭(11)に固定された管(2)に対して溶接する。これにより、杭(A1)と支持杭(11)が梁(20)により連結される。この溶接作業は作業員(S)が潜水して行う必要があるが、予め水上で繋ぎ材(21)とブレス材(22)と固定板(23)とを一体化した梁(20)を使用することにより、潜水作業を最小限とすることができ、作業効率が大幅に向上する。
【0045】
<9.上部工設置工程>
最後に、図11に示すように、受桁(25)の上部に、主桁(26)、覆工板・地覆(27)、手摺(28)を取り付ける。
【0046】
以上の工程により、桟橋完成部分(A)が延長される。
桟橋完成部分(A)を更に所要長さにわたって延長する場合には、地組工程により地組された別のトラス部材を使用して、上述した台船配置工程、トラス部材配置工程、支持杭打設工程、根固め液注入工程、支持力確認工程、管固定工程、連結工程、上部工設置工程を必要回数だけ繰り返して実施する。
これにより、所要長さの桟橋を構築することができる。
【0047】
次に、上記した桟橋構築方法にて構築された桟橋を解体する際に使用される、本発明に係る桟橋解体方法について説明する。
以下、本発明に係る桟橋解体方法を作業工程に沿って説明する。
【0048】
<10.上部工撤去工程>
先ず、上述した上部工設置工程にて設置された受桁(25)、主桁(26)、覆工板・地覆(27)、手摺(28)(図11参照)を撤去する(撤去時の図示略)。
【0049】
<11.連結解除工程>
次に、桟橋長さ方向に間隔をあけて打設された支持杭の間を連結する長さ方向梁である梁(20)と、支持杭(11)に固定された管(2)との連結を解除する。
連結の解除は、梁(20)の固定板(23)と管(2)とが溶接されているので、この溶接部分を作業員(S)が切断することにより行う。
【0050】
<12.長さ方向梁撤去工程>
次に、連結が解除された梁(20)をクレーンで吊り上げて撤去する。
撤去された梁(20)は、桟橋上で各部材(繋ぎ材(21)とブレス材(22)と固定板(23))に分解する。
【0051】
<13.幅方向梁撤去工程>
最後に、天蓋(24)を取り外して、トラス部材(4)からなる幅方向梁をクレーンで吊り上げて撤去する。
この幅方向梁撤去工程では、先ず支持杭(11)とトラス部材(4)の管(2)を固定するボルト(19)(図12参照)を取り外す。次いで、クレーンによりトラス部材(4)を吊り上げて、トラス部材(4)の管(2)を支持杭(11)から抜き取る。これにより、幅方向梁(トラス部材(4))が撤去される。
この幅方向梁撤去工程において、施工現場によっては、トラス部材(4)の長さがクレーンで吊り上げられる最大長さ(高さ)を超えている場合がある。この場合、クレーンで吊り上げられる最大長さ(高さ)に達した時点で、一旦トラス部材(4)を導材を利用して未解体部分の桟橋に固定し、トラス部材(4)の管(2)同士の接合(ボルト接合等)を解除する。そして、接合が解除された上方部分のトラス部材をクレーンで吊り上げて撤去した後、導材による固定を解除してから下方部分のトラス部材をクレーンにより吊り上げて撤去すればよい。
撤去された幅方向梁(トラス部材(4))は、桟橋上で各部材(管(2)と連結材(3))に分解する。
【0052】
以上の工程を、上記桟橋構築方法による構築時とは逆方向に、桟橋の長さ方向に沿って繰り返し行うことにより、桟橋全体を解体することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明に係る桟橋構築方法及び桟橋解体方法は、様々な場所における杭式桟橋構築及び桟橋解体に幅広く利用することができ、特にダム湖等の水深が深い場所における桟橋構築及び桟橋解体のために好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 単位トラス部材
2 管
3 連結材
4 トラス材
5 台船
7 導材
9 固定材
11 支持杭
12 ダウンザホールハンマ
13 ハンマービット
14 ロッド
15 排出ホース
16 ベッセル
20 梁
21 繋ぎ材
22 ブレス材
23 固定板
A 桟橋完成部分
B 桟橋未完成部分
W 水面
G 地面(水底)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行に延びる複数本の管と、隣り合う管同士を管長さ方向に対して斜め方向及び直角方向に連結する連結材とからなるトラス部材を地組する地組工程と、
桟橋完成部分から所定距離離れた桟橋を延長すべき位置に、前記トラス部材を前記管の長さ方向が上下方向となるようにクレーンにより吊り下げ、地面より上方に浮かせた所定高さ位置に配置するトラス部材配置工程と、
前記所定高さ位置に配置されたトラス部材の管内に管状の支持杭を挿入して地面に打設する支持杭打設工程と、
前記打設された支持杭に対して前記トラス部材の管を固定する管固定工程と、
前記桟橋完成部分を支持する杭と前記支持杭に固定された管とを梁により連結する連結工程と、
を備えていることを特徴とする桟橋構築方法。
【請求項2】
前記桟橋を延長すべき位置近傍の水面上に、複数隻の台船を所定間隔をあけて配置する台船配置工程を備えており、
前記トラス部材配置工程において、前記複数隻の台船の間に前記トラス部材を配置することを特徴とする請求項1記載の桟橋構築方法。
【請求項3】
前記トラス部材配置工程において、前記複数隻の台船の間に上下二段の導材を掛け渡し、前記上下二段の導材を前記トラス部材に貫通させることを特徴とする請求項2記載の桟橋構築方法。
【請求項4】
前記地組工程が、
前記管と前記連結材とを連結して複数の単位トラス部材を製作する第一工程と、
前記複数の単位トラス部材を、前記管同士を長さ方向に連結して前記トラス部材を製作する第二工程とからなり、
前記第一工程は、工場にて製作された前記連結材を、前記桟橋完成部分上もしくは前記桟橋を延長すべき位置近傍の水面上に配置した台船上にて前記管と連結することによって前記単位トラス部材を製作し、
前記第二工程は、前記複数の単位トラス部材の前記管同士を、前記複数隻の台船間において立設した状態で、長さ方向に連結することにより前記トラス部材を製作する
ことを特徴とする請求項2又は3記載の桟橋構築方法。
【請求項5】
前記台船配置工程において、前記台船を前記桟橋完成部分から延出した固定材に対して固定することを特徴とする請求項2又は3記載の桟橋構築方法。
【請求項6】
前記支持杭打設工程の後に、前記支持杭内に根固め液を注入する根固め液注入工程を備えていることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の桟橋構築方法。
【請求項7】
前記支持杭打設工程において、
下端にダウンザホールハンマと拡縮可能なハンマービットを有するロッドを、前記支持杭の内部に挿通して、前記ダウンザホールハンマの打撃作用と前記ハンマービットの回転掘削作用によって掘削孔を形成し、該掘削孔に前記支持杭を圧入し、
前記掘削孔の形成時に排出された掘削土を、前記支持杭の上端部から排出ホースを介して台船上に配置したベッセルに収容することを特徴とする請求項2又は3記載の桟橋構築方法。
【請求項8】
前記連結工程において、前記梁として、
互いに平行に上下に間隔をおいて配置された複数本の一定長さの繋ぎ材と、
上下に隣り合う2本の繋ぎ材間において、上方の繋ぎ材の右端部と下方の繋ぎ材の左端部、及び上方の繋ぎ材の左端部と下方の繋ぎ材の右端部とを夫々連結するようにクロスして設けられたブレス材とからなり、
前記繋ぎ材とブレス材とは繋ぎ材の左右両端部に夫々固定された固定板を介して一体に接続されてなる梁を使用する
ことを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載の桟橋構築方法。
【請求項9】
所定間隔で地面に打設された複数本の支持杭の間が梁により連結されている桟橋の解体方法であって、
前記梁は、桟橋長さ方向に間隔をあけて打設された支持杭の間を連結する長さ方向梁と、桟橋幅方向に間隔をあけて打設された支持杭の間を連結する幅方向梁とからなり、
前記幅方向梁は、互いに平行に延びる複数本の管と、隣り合う管同士を管長さ方向に対して斜め方向及び直角方向に連結する連結材とからなるトラス部材からなり、
前記幅方向梁の管が、前記支持杭に対して外嵌されて固定されており、
前記長さ方向梁は、前記支持杭に固定された前記幅方向梁の管同士を連結しており、
前記解体方法が、
前記長さ方向梁と前記支持杭に固定された管との連結を解除する連結解除工程と、
連結が解除された長さ方向梁をクレーンで吊り上げて撤去する長さ方向梁撤去工程と、
前記幅方向梁をクレーンで吊り上げて前記管を前記支持杭から抜いて撤去する幅方向梁撤去工程と、
を備えていることを特徴とする桟橋解体方法。
【請求項10】
前記長さ方向梁が、
互いに平行に上下に間隔をおいて配置された複数本の一定長さの繋ぎ材と、
上下に隣り合う2本の繋ぎ材間において、上方の繋ぎ材の右端部と下方の繋ぎ材の左端部、及び上方の繋ぎ材の左端部と下方の繋ぎ材の右端部とを夫々連結するようにクロスして設けられたブレス材とからなり、
前記繋ぎ材とブレス材とは繋ぎ材の左右両端部に夫々固定された固定板を介して一体に接続されてなる梁である
ことを特徴とする請求項9記載の桟橋解体方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−112191(P2012−112191A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263014(P2010−263014)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【特許番号】特許第4807809号(P4807809)
【特許公報発行日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(596109273)株式会社高知丸高 (17)
【Fターム(参考)】