説明

梱包ケース

【課題】凸凹な面によって形成された半導体装置に対して、緩衝材あるいはフィルムなどを用いることなく、衝撃等の外力から保護するができる梱包ケースを提供する。
【解決手段】梱包ケース1は、凸凹な面によって形成された半導体装置4を収納し、半導体装置4の端面を挿入できるように、梱包ケース1の底面に対して垂直に、梱包ケース1の内部に対をなして形成された仕切り溝2aおよび2bと、半導体装置4の端面を保持する保持部材3aおよび3b、とを備え、梱包ケース1の底面に設置される保持部材3aはポリエチレンフォームによって形成されており、保持部材3aおよび3bは、それぞれ梱包ケース1の底面および上蓋5に取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池等の半導体装置を梱包するための梱包ケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の生産量が増大するに伴い、半導体装置を大量に輸送することが要求されている。半導体装置を大量に輸送するためには、半導体装置の生産性を下げることなく、半導体装置を作業性よく梱包および開梱することができ、かつ輸送中に半導体装置に破損、割れ等が発生しないことが必要条件となる。しかし、半導体装置は、半導体基板上に凹凸を形成する層が設けられているため、複数個重ねて収容する場合、振動や衝撃等の外力によって割れ等が生じる場合がある。
【0003】
従来、摩擦、振動あるいは落下等の外力により変形や破損が生じやすい半導体装置のような被梱包物品を輸送する場合、その梱包方法としては次のような方法があった。
【0004】
特許文献1は、積層した複数枚の半導体装置を薄いフィルム状に形成した有機材料等で覆うことによって、半導体装置を保護・固定する方法(シュリンク方式)を示している。
【0005】
図6に基づいて、シュリンク方式による梱包方式を説明する。図6は、梱包ケースの概略構成を示す断面図である。図6に示すように、シュリンク方式の梱包では、外装箱61の中に被梱包物品の基本形状を有する空気マット62が収容されている。そして、積層した複数枚の半導体装置63が空気マット62の凹部に収められる。複数枚の半導体装置63上には、空気マット62と接していない部分を保護する第2の空気マット64が載置される。このように、積層した複数枚の半導体装置63の周囲を空気マット62・64によって囲むことにより、外部の衝撃等から半導体装置63を保護している。
【0006】
特許文献2は、成型した硬質のプラスチック等のトレーに、積層した複数枚の半導体装置(積層した複数枚の半導体装置をさらに緩衝材等で覆う場合もある)をその主面がトレー底面に対して垂直になるように収納する積層トレー方式が知られている。図7に基づいて、積層トレー方式による梱包方式を説明する。図7は、梱包ケースの概略構成を示す断面図である。図7に示すように、積層トレー方式の梱包では、積層した複数枚の半導体装置71が、その主面を外装箱72の底面に対して垂直にして収容されている。そして、二枚の板状のスペーサ73が、積層した複数枚の半導体装置71と外装箱72の間に、積層した複数枚の半導体装置71の主面とスペーサ73の主面とが対向するように挿入されている。その位置にスペーサ73を挿入することにより、積層した複数枚の半導体装置71が外装箱72の内部で動くスペースをなくしている。従って、外部から振動が与えられた場合に、積層した複数枚の半導体装置71が勢いよく外装箱72の側面にぶつかることもなく、その結果、積層した複数枚の半導体装置71を外部からの衝撃・振動等から保護することができる。
【0007】
特許文献3は、積層した複数枚の半導体装置を緩衝材で覆い、個装ケースに収納する方法(個装ケース収納方式)を示している。個装ケース収納方式は、変形や破損が発生しやすい被梱包物品を複数枚積層して梱包する場合に、被梱包物品より大きい平面サイズを有する剛性のある平板を準備し、その平板上に複数枚の被梱包物品を積層し、これを収納袋内に収納して真空パッキングする方法である。
【0008】
あるいは、変形や破損が発生しやすい半導体装置のような被梱包物品を輸送する梱包方法として、成型した硬質プラスチック等のトレーに半導体装置を1枚ずつ収納する枚葉トレー方式が知られている。
【0009】
このように、半導体装置の梱包方式には様々な種類があり、これらの方法を組み合わせた梱包方法等も知られている。
【0010】
半導体装置の代表例である結晶シリコン太陽電池セル80について、図8に基づいて説明する。図8は、梱包ケースに収容される結晶シリコン太陽電池セル80の構成を示す断面図である。結晶シリコン太陽電池セル80は、受光面電極81と、半導体基板82と、裏面コンタクト用電極83と、受光面電極81が埋め込まれた表面層84と、裏面コンタクト用電極83が埋め込まれた裏面層85と、を備える。受光面電極81は、半導体基板82の上面(太陽光を受光する側の面)に形成された表面層84に埋め込まれ、受光面電極81の一部は表面層84の上面から突出している。裏面コンタクト用電極83は半導体基板82の下面に形成された裏面層85に埋め込まれ、裏面コンタクト用電極83の一部は裏面層85の下面から突出している。従って、結晶シリコン太陽電池セル80は表裏面とも平滑ではなく、凸凹な面によって形成されている。
【特許文献1】特開2003−34363号公報(2003年2月4日公開)
【特許文献2】特開2005−243971号公報(平成17年9月8日(2005.9.8))
【特許文献3】特開2004−269026号公報(2004年9月30日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記従来の構成では、梱包時または輸送時に半導体装置が破損してしまうという問題が生じていた。
【0012】
具体的には、近年の半導体装置の薄型化に伴い、半導体装置の半導体基板厚さはより薄くなっており、そのため半導体装置の半導体基板に反りが発生しやすくなり、また半導体装置は応力に対してより脆弱となっている。このため、振動や衝撃、落下等の外力によって半導体装置に割れ等の破損が発生する頻度が多くなっている。
【0013】
特に、電極等の部品を平板状の半導体基板表面に備える太陽電池セルのような半導体装置の場合、表面が凹凸のある構造であるため、複数枚積層して梱包することにより外部からの振動、衝撃等に対し半導体装置に割れが生じやすくなっている。また、半導体装置の厚さに僅かなバラツキがあっても、その半導体装置を積層することによって積層厚さに大きな差が生じ、積層物と梱包ケースの大きさにミスマッチが生じ、それによって半導体装置に負荷がかかり割れが生じやすくなるという問題があった。図9(a)〜(c)に示す積層トレー方式の梱包ケースを例にその問題を説明する。積層物と梱包ケースの大きさにミスマッチが生じると、例えば、厚みのある積層物が梱包された場合(図9(a))、積層物は梱包ケースの中で動くスペースがない。従って、積層物は外部から受ける衝撃によって動くことがなく、梱包ケース(あるいはスペーサ)との衝突による割れが生じにくい。あるいは、通常の厚みを有した積層物が梱包された場合(図9(b))、積層物と梱包ケースの間に挿入されたスペーサが積層物の動きを抑制し、積層物は外部から受ける衝撃によって動くことがなく、梱包ケース(あるいはスペーサ)との衝突による割れが生じにくい。しかし、薄い厚みの積層物が梱包された場合(図9(c))、積層物とスペーサの間に隙間が生じ、積層物は、外部から受ける衝撃によって勢いよく梱包ケース(あるいはスペーサ)とぶつかってしまい、その結果、積層物に割れが生じやすくなる。
【0014】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、半導体基板上に凹凸層が形成された半導体装置を振動および衝撃等の外力から保護することにより、梱包作業及び輸送時における半導体装置の破損を抑制することができる梱包ケースを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る梱包ケースは、上記課題を解決するために、凸凹な面によって形成された半導体装置を収納する梱包ケースにおいて、該半導体装置の端面を挿入できるように、該梱包ケースの底面に対して垂直に、該梱包ケースの内部に対をなして形成された仕切り溝と、該半導体装置の端面を保持する保持部材、とを備え、該梱包ケースの底面に設置される該保持部材はポリエチレンフォームによって形成されていることを特徴としている。
【0016】
前記の構成によれば、凸凹な面によって形成された半導体装置の端面が前記仕切り溝に挿入・収納され、さらに保持部材が半導体装置の他の端面を保持し、また、前記梱包ケースの底面に配置された前記保持部材は、衝撃を低減するための高い緩衝力に優れ、かつ前記半導体装置による常時荷重に対し体積収縮をおこさないポリエチレンフォームによって形成されていることにより、振動および衝撃等の外力から半導体装置をより好適に保護することができるという効果を奏する。
【0017】
本発明に係わる梱包ケースは、前記保持部材が前記梱包ケースの底面および上蓋に設置されることが好ましい。
【0018】
前記の構成によれば、前記保持部材が、前記梱包ケースの底面および上蓋から前記半導体装置の端面を保持することにより、振動および衝撃等の外力から半導体装置をより好適に保護することができるというさらなる効果を奏する。
【0019】
本発明に係わる梱包ケースは、前記ポリエチレンフォームの圧縮応力が45〜180kPa、永久圧縮歪が10%以下であることが好ましい。
【0020】
前記の構成によれば、この条件における前記ポリエチレンフォームは、特に衝撃を低減するための高い緩衝力に優れ、かつ、前記半導体装置による常時荷重に対し、体積収縮をおこさないため、半導体装置をより好適に保護することができるというさらなる効果を奏する。
【0021】
本発明に係わる梱包ケースは、前記半導体装置が太陽電池セルであることが好ましい。
【0022】
前記の構成によれば、太陽電池セルは、とくに表面が凹凸のある構造を有しており、複数枚積層して梱包することにより外部からの振動、衝撃等に対し半導体装置に割れが生じやすく、従って前記梱包ケースを用いてより好適に保護することができるというさらなる効果を奏する。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る梱包ケースは、以上のように、凸凹な面によって形成された半導体装置を収納する梱包ケースにおいて、該半導体装置の端面を挿入できるように、該梱包ケースの底面に対して垂直に、該梱包ケースの内部に対をなして形成された仕切り溝と、該半導体装置の端面を保持する保持部材、とを備え、該梱包ケースの底面に設置される該保持部材はポリエチレンフォームによって形成されていることを特徴としているため、振動および衝撃等の外力から半導体装置を保護し、梱包作業および輸送時における半導体装置の破損を抑制することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の実施の形態について図面を参照し説明する。
【0025】
本実施の形態に係る梱包ケースは、図1ないし図3によって説明される。すなわち、図1ないし図3は、それぞれ、本実施の形態に係る梱包ケース1の平面断面図、正面断面図、側面断面図を示す。
【0026】
本実施の形態に係る梱包ケース1を図1ないし図3に基づいて説明する。梱包ケース1は、仕切り溝2a、2bおよび2cと、側面6aおよび6bと、保持部材3aと、保持部材3bを有する上蓋5と、を備える。側面6aは、梱包ケース1の一側面を構成している。側面6bは、梱包ケース1の内部に、側面6aと平行に配設されている。仕切り溝2aは、側面6a上に、かつ梱包ケース1の内側に形成されている。仕切り溝2bは、側面6b上に、かつ側面6aに対向する面上に形成されている。仕切り溝2cは、側面6b上に、かつ仕切り溝6bと反対側の面上に形成されている。そして、仕切り溝2aないし2cは、梱包ケース1の底面に対して垂直に、側面6aおよび6bの上端から下端まで形成されている。また、仕切り溝2aおよび2bは、側面6aおよび6b上の相対する位置に、一対の関係を保ちつつ、所定の間隔をもって複数形成されている。仕切り溝2cは、仕切り溝2bと表裏対称に、側面6b上に形成されている。
【0027】
梱包ケース1の底面には細長い板状の保持部材3aが設置されている。本実施の形態では、図1に示すように、保持部材3aは、側面6aと側面6bとの間に2箇所設けられている。さらに、仕切り溝2cと対向する位置に配設された図示しない側面と側面6bとの間には、2つの保持部材3a(1つは図示せず)が設けられている。そして、側面6aおよび6bの間に設置された保持部材3aは、側面6aおよび6bからほぼ等しい距離に、側面6aおよび6bに対して垂直に、側面6aが隣接する梱包ケース1の一方の側面から他方の側面に至るまで取り付けられている。仕切り溝2cと対向する位置に配設された図示しない側面と側面6bとの間の保持部材3aも、同様に取り付けられている。
【0028】
梱包ケース1には、図2および図3に示すように、保持部材3bを有する上蓋5が取り付けられている。本実施の形態においては、保持部材3bは、梱包ケース1の底面に設置された保持部材3aに対応する位置に、側面6aおよび6bと垂直に、そして側面6aおよび6bからほぼ等しい距離に2箇所設置されている。
【0029】
半導体装置4の代表例である結晶シリコン太陽電池セル40について、図4に基づいて説明する。図4は、梱包ケース1に収容される半導体装置4の代表例である結晶シリコン太陽電池セル40の構成を示す断面図である。結晶シリコン太陽電池セル40は、受光面電極41と、半導体基板42と、裏面コンタクト用電極43と、受光面電極41が埋め込まれた表面層44と、裏面コンタクト用電極43が埋め込まれた裏面層45とを備える。受光面電極41は、半導体基板42の上面(太陽光を受光する側の面)に形成された表面層44に埋め込まれ、受光面電極41の一部は表面層44の上面から突出している。裏面コンタクト用電極43は、半導体基板42の下面に形成された裏面層45に埋め込まれ、裏面コンタクト用電極43の一部は裏面層45の下面から突出している。従って、結晶シリコン太陽電池セル40は表裏面とも平滑ではなく、凸凹な面によって形成されている。
【0030】
なお、半導体装置における受光面電極41あるいは裏面コンタクト用電極43としては、アルミニウム、銀などからなる金属電極、銅、銀、ハンダなどからなる配線された電極、酸化錫や酸化亜鉛などの透明導電性金属酸化物などが挙げられる。
【0031】
上記構成において、半導体装置4が梱包ケース1に収納される際の動作を、図1ないし図3に基づき説明すると、以下の通りである。
【0032】
まず、半導体装置4を複数個重ね合わせてスタック状にする。スタック状になった半導体装置4の主面を梱包ケース1の底面に対して垂直に向ける。この状態で半導体装置4を梱包ケース1に収納するが、上記説明したように、梱包ケース1の側面6aおよび6bには、仕切り溝2aおよび2bが梱包ケースの底面に対して垂直に形成されている。また、仕切り溝2aおよび2bは、側面6aおよび6b上の相対する位置に、一対の関係を保ちつつ、所定の間隔をもって複数形成されている。その一対の関係を保った仕切り溝2aおよび2bに、スタック状になった半導体装置4の両端を挿入する。
【0033】
上記説明したように、梱包ケース1の底面には、側面6aと6bの間に保持部材3aが2箇所設置されている。スタック状になった半導体装置4の下側端面が梱包ケース1の底面付近まで挿入されると、半導体装置4の下側端面は保持部材3aに接触し、保持部材3aの上に載置される。このようにして、スタック状になった半導体装置4の下側端面は保持部材3aに保持される。
【0034】
続いて、上蓋5が梱包ケース1の上面に取り付けられる。上蓋5には保持部材3bが2箇所取り付けられている。この保持部材3bが、梱包ケース1に収納されたスタック状の半導体装置4の上側端面を上方から押さえ、それにより、保持部材3bが半導体装置4の上側端面を上方から保持することになる。このとき、上記説明したように、保持部材3bと半導体装置4の上側端面は垂直になっている。
【0035】
このように、スタック状になった半導体装置4は、その主面が梱包ケース1の底面に対して垂直になった状態において、上側端面が上蓋5に取り付けられた保持部材3bに保持され、下側端面が梱包ケース1の底面に取り付けられた保持部材3aに保持され、両側端面が仕切り溝2aおよび2bに収納される。
【0036】
ここで、半導体装置4における半導体基板42の形状は特に限定されないのはいうまでもない。その形状としては、例えば、正方形、長方形、円形、楕円形等が挙げられる。より具体的には、IC、光学ピックアップ、レーザーなどの電子部品、太陽電池セル等が挙げられる。特に、太陽電池セルは、非常に割れやすい半導体基板(厚さ50〜300μm)表面に、半導体基板よりも厚くて(0.1〜1mm)硬い金属電極が形成され、表面が凹凸となっている。従って、本実施の形態に係る梱包ケース1を用いることにより、別途緩衝材やフィルムなどを用いることなく、より好適に半導体装置4を梱包することができる。
【0037】
仕切り溝2aおよび2bの幅はとくに限定されないが、半導体装置4の収容効率と半導体装置4にかかる負荷とのバランスを取るという観点から、その幅は、仕切り溝2aおよび2bに挿入するスタック状になった半導体装置の端面厚さの1.5倍以下であることが好ましい。また、作業性を良くするという観点から、仕切り溝2aおよび2bの幅は、仕切り溝2aおよび2bに挿入するスタック状になった半導体装置4の端面厚さよりも少し大きいことが好ましい。これは仕切り溝2cおよび図示しない仕切り溝についても同様である。
【0038】
なお、梱包ケース1に形成する仕切り溝は、少なくとも梱包ケース1の対向する一対の側面に形成されておればよい。しかし、図1で示すように、梱包ケース1の内部に配設された側面6bの両主面に仕切り溝2bおよび2cを形成し、側面6bを挟む右左の区画に、それぞれ半導体装置4を収納することも可能である。このように梱包ケース1内部に側面6bのような側面を配設することにより、梱包ケース1に半導体装置4の収納スペースを複数区画設けることが可能である。
【0039】
梱包ケース1の底面に設置された保持部材3aは、ポリエチレンフォームによって形成されている。本実施の形態におけるポリエチレンフォームは、圧縮応力(45〜180kPa)、永久圧縮歪10%以下のものを用いている。
【0040】
図5を用いてポリエチレンフォームの圧縮応力、及び永久圧縮歪について説明する。なお、図5は、積層した複数枚の半導体装置4が保持部材3a・3bによって保持される様子を側面断面図によって模式的に表している。
【0041】
まずポリエチレンフォームの圧縮応力について説明する。本実施の形態におけるポリエチレンフォームの圧縮応力は45〜180kPaであることが好ましい。圧縮応力が45kPaより小さいと、図5の左下拡大図で示すように、複数枚積層した半導体装置4は保持部材3aに沈み込みやすくなる。そして、複数枚積層した半導体装置4が保持部材3aから受ける反力(加重)は、複数枚積層した半導体装置4のうち最も外側に位置する箇所(矢印a部)に集中しやすくなる。その結果、最も外側に位置する半導体装置4に破損が生じやすくなる。圧縮応力が180kPa以上ある場合、保持部材3aが硬すぎるために、保持部材3aのクッション性が衝撃・振動に対して低下する。その結果、半導体装置4に破損が生じやすくなる。なお、圧縮応力はISO11752に準じて測定することができる。
【0042】
なお、図5の右側・左側拡大図では半導体装置4がそれぞれ6枚積層されているが、積層する半導体装置4の数は6枚に限定されるわけではない。
【0043】
次にポリエチレンフォームの永久圧縮歪について説明する。ポリエチレンフォームは、特に衝撃を低減するための高い緩衝力に優れ、かつ、半導体装置4による常時荷重に対し、体積収縮をおこさないという特性を有する。ある梱包材に圧力を加えた後にその圧力を開放すると、その梱包材は、元の状態からいくらか歪みが生じるのが通常である。元の状態からの歪みの割合を永久圧縮歪と称するが、ポリエチレンフォームはその永久圧縮歪が小さい。従って、ポリエチレンフォームによって形成された保持部材3aを用いることにより、半導体装置4をより好適に保護することができる。本実施の形態では、永久圧縮歪が小さいほど半導体装置4の保護に有効であり、理想は永久圧縮歪が0%である。つまり、複数回使用しても歪みが生じることなく、元の状態に戻る保持部材が最適である。なお、永久圧縮歪が10%以上ある場合、複数回の使用により歪みが大きくなり、図5の右下拡大図で示すように複数枚積層した半導体装置4が保持部材3aに沈み込み、それにより複数枚積層した半導体装置4が外部から受ける衝撃・振動が大きくなる。結果として、複数枚積層した半導体装置4は破損が生じやすくなる。なお、永久圧縮歪はJIS−K−6767に準じて測定することができる。
【0044】
なお、ポリエチレンフォームは、半導体装置4を安定に保持するための適度な応力、外部からの振動又は衝撃を低減するための高い緩衝力を有するものであれば特に限定されない。一例として架橋高発泡ポリエチレンやゲルテープ等が挙げられる。
【0045】
また、上蓋5に設置された保持部材3bは、軟質ウレタンフォームである必要はなく、半導体装置4を保持する緩衝材であればよい。保持部材3aは、梱包ケース1の底面において半導体装置4の端面に対して垂直方向に設置されるが、梱包ケース1の底面全面に取り付ける必要はない。上蓋5に取り付けられる保持部材3bも同様で、上蓋全体に取り付ける必要はない。
【0046】
なお、本実施の形態では、半導体装置4を複数個重ね合わせてスタック状し、スタック状になった半導体装置を仕切り溝2aおよび2bに収納しているが、半導体装置4をスタック状にせず、個別に仕切り溝2aおよび2bに収納することも、もちろん可能である。
(実施例1)
実際に太陽電池セル40を本実施の形態の梱包ケース1により梱包して、実輸送実験を行った結果について説明する。
【0047】
実輸送試験では、156mm角で厚さが約160〜300μmの多結晶シリコン太陽電池セルを用いた。本実施の形態における梱包ケース1は、一対の仕切り溝2aおよび2bを計60対設けている。太陽電池セル40は、15枚を重ねてひとつのスタックにし、それを一対の仕切り溝2aおよび2bに収納する。従って、梱包ケース1には、計900枚の太陽電池セル40を収納することができる。本実験においては、梱包ケース1に900枚の太陽電池セル40を収納して行った。なお、本実験で用いたポリエチレンフォームは、圧縮応力が95kPa、永久圧縮歪みが3.1%(30分後)であった。
【0048】
比較の対象として、梱包ケース1の底面の保持部材3aおよび上蓋5の保持部材3bをともに軟質ウレタンフォームによって形成した梱包ケースを用いた実輸送試験を行った。
【0049】
この梱包ケースは、一対の仕切り溝2aおよび2bを計60対設けている。太陽電池セル40は、15枚を重ねてひとつのスタックにし、それを一対の仕切り溝2aおよび2bに収納する。従って、梱包ケース1には、計900枚の太陽電池セル40を収納することができる。本実験は、梱包ケースに900枚の太陽電池セル40を収納して行った。多結晶シリコン太陽電池セル40は2回の実験とも同一のものを用いた。
【0050】
実輸送試験は、実際に、奈良県より栃木県の間をトラックにより輸送することにより実施した。結果を表1に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
本実施の形態 :割れ率 0.37% 比較例(従来形態) :割れ率 0.96%
表1に示すように、本実輸送試験において、太陽電池セル40の割れ率は比較例では0.96%であった。これに対し、本実施の形態では0.37%となり、4割程度の割れ率に抑えることができた。このように、本実施の形態による梱包ケース1は、梱包ケースの底面および上蓋の保護材ともに軟質ウレタンフォームによって形成された梱包ケースを用いた比較例に比べ、割れ率が顕著に低くなることを示せた。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明に係る梱包ケースは、ポリエチレンフォームからなる保持部材を備えているため、輸送時における半導体装置の破損をより抑制することができる。よって、太陽電池等の梱包ケースとして好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施の形態を示すものであり、梱包ケースの要部構成を示す平面断面図である。
【図2】上記梱包ケースの構成を示す正面断面図である。
【図3】上記梱包ケースの構成を示す側面断面図である。
【図4】一般的な太陽電池セルの断面図の一例である。
【図5】積層した複数枚の半導体装置が、保持部材によって保持される様子を表す模式図である。
【図6】従来の梱包方法(シュリンク方式)に用いる梱包ケースの断面図の一例である。
【図7】従来の梱包方法(積層トレー方式)に用いる梱包ケースの断面図の一例である。
【図8】一般的な太陽電池セルの断面図の一例である。
【図9】従来の梱包方法(積層トレー方式)による半導体装置の梱包状態を表す模式図であり、(a)は厚みのある積層物を梱包する場合を、(b)は通常の厚みを有する積層物を梱包する場合を、(c)は、薄い厚みの積層物を梱包する場合を表す模式図である。
【符号の説明】
【0055】
1 梱包ケース
2a、2b、2c 仕切り溝
3a、3b 保持部材
4 半導体装置
5 上蓋
6a、6b 側面
40 太陽電池セル
41 受光面電極
42 半導体基板
43 裏面コンタクト用電極
44 表面層
45 裏面層
61 外装箱
62 空気マット
63 半導体装置
64 第2の空気マット
71 半導体装置
72 外装箱
73 スペーサ
80 太陽電池セル
81 受光面電極
82 半導体基板
83 裏面コンタクト用電極
84 表面層
85 裏面層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に凹凸を形成した層が設けられた半導体装置を収納する梱包ケースにおいて、
該半導体装置の両端を挿入できるように、該梱包ケースの底面に対して垂直に、該梱包ケースの内部に対をなして形成された仕切り溝と、
該半導体装置の端面を保持する保持部材とを備え、
該梱包ケースの底面に設置される該保持部材はポリエチレンフォームによって形成されていることを特徴とする梱包ケース。
【請求項2】
前記保持部材は、前記梱包ケースの底面および上蓋に設置されることを特徴とする請求項1に記載の梱包ケース。
【請求項3】
前記ポリエチレンフォームは、圧縮応力が45〜180kPa、永久圧縮歪が10%以下であることを特徴とする請求項1また請求項2のいずれかに記載の梱包ケース。
【請求項4】
前記半導体装置は太陽電池セルであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の梱包ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−40478(P2009−40478A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−208650(P2007−208650)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】