説明

梱包ユニット

【課題】緩衝部材の塑性変形を回避しつつ、梱包ユニットの衝突や落下に基づく衝撃から被梱包物を保護する。
【解決手段】梱包ユニット100は、平らな壁面112を有する梱包箱110と、梱包箱110に収容され、一方を梱包箱110の壁面112の一部に当接し、他方を被梱包物102の側部104に当接する緩衝部材120と、緩衝部材120が当接する方向(白抜き矢印で示す方向)に摺動可能に保持する内包部材130と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被梱包物を梱包するための、梱包箱と緩衝部材とを含んでなる梱包ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器等の精密機器を保管および輸送する際に精密機器に加わりうる振動や、衝突または落下による衝撃から精密機器を保護するため、精密機器は、通常、段ボール等の梱包箱に収容され、梱包箱内部において緩衝部材に支持されている。
【0003】
緩衝部材としては、従来、衝撃を比較的吸収し易く、衝撃に対する繰り返し耐久性にも優れる発泡スチロール等の発泡材が利用されていたが、近年では、環境への配慮からその利用が難しくなりつつある。そこで、精密機器等の被梱包物の横断面における外形に対応させて打ち抜いた段ボールを幾重にも重畳して緩衝部材を生成し、その中に被梱包物を収容することで、段ボールのみで被梱包物を保護する技術が知られている。
【0004】
しかし、段ボール自体は比較的剛性が高く、それを重畳したところで変形幅はあまり大きくならないので、衝撃が加わった際にその衝撃による圧力を十分に吸収できなかった。このような問題点を改善すべく、段ボールを筒状に形成して緩衝部材自体の弾性を高め、衝突または落下による衝撃を吸収する技術が公開されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−102047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1の緩衝部材では、梱包箱に衝撃が加わった場合にも、自体を変形させつつ衝撃による圧力を吸収することで、被梱包物を保護することができる。しかし、被梱包物の重量によっては、緩衝部材が塑性変形したり、破損したりして、元の形状に戻らなくなり、その緩衝部材を再利用することができなくなる場合があった。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、緩衝部材の塑性変形を回避しつつ、衝突や落下に基づく衝撃から被梱包物を保護することが可能な梱包ユニットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の梱包ユニットは、平らな壁面を有する梱包箱と、梱包箱に収容され、一方を梱包箱の壁面の一部に、他方を被梱包物の側部に当接する緩衝部材と、緩衝部材が当接する方向に摺動可能に保持する内包部材と、を備えることを特徴とする。
【0009】
緩衝部材は、当接方向の摺動が内包部材によって所定範囲に制限されるとしてもよい。
【0010】
緩衝部材に一体形成された突出部と、内包部材に突出部を嵌入可能とするスリットと、を備え、スリットは緩衝部材が梱包箱の壁面に当接する方向に所定の長さの空間を有してもよい。
【0011】
梱包箱における壁面端部の内側周囲には空隙が設けられていてもよい。
【0012】
緩衝部材は、梱包箱における壁面に対応して複数設けられてもよい。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明によれば、緩衝部材の塑性変形を回避しつつ、衝突や落下に基づく衝撃から被梱包物を保護することが可能となる。したがって、緩衝機能の劣化を抑制して緩衝部材を繰り返し利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】梱包ユニットの概略的な構成を示した斜視図である。
【図2】緩衝部材の組み立て工程を説明するための説明図である。
【図3】衝撃を吸収する構造を説明するための梱包ユニットの横断面図である。
【図4】衝撃を吸収する構成を説明するための梱包ユニットの横断面図である。
【図5】図1における緩衝部材と内包部材との嵌合状態を示した斜視図である。
【図6】衝撃を吸収する構成を説明するための梱包ユニットの縦断面図である。
【図7】緩衝部材と内包部材との他の嵌合状態を示した説明図である。
【図8】緩衝部材と内包部材とのさらに他の嵌合状態を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
(梱包ユニット100)
図1は、梱包ユニット100の概略的な構成を示した斜視図である。図1に示すように、梱包ユニット100は、梱包箱110と、緩衝部材120と、内包部材130とを含んで構成され、緩衝部材120および内包部材130により精密機器等の被梱包物102を包囲して被梱包物102を所定位置に固定支持すると共に、被梱包物102に加わりうる振動や、衝突または落下による衝撃から被梱包物102を保護する。
【0017】
梱包箱110は、被梱包物102を梱包(収容)可能な所定の形状、例えば、6つの壁面112をそれぞれ直交させた、被梱包物102より大きな箱形状(四角柱形状)で形成される。また、本実施形態では、緩衝部材120が当接する少なくとも1つの壁面112が略平らに形成されており、その略平らな壁面112は、面全体において壁面112に垂直な方向に歪曲可能に形成される。したがって、梱包箱110は、紙段ボールやプラスチック段ボール等、所定の曲げ剛性を有する平板を組み合わせて形成するのが好ましい。
【0018】
このように、紙段ボールやプラスチック段ボールを採用することで、梱包箱110を1枚の平板から所定の形状に切り出して形成することができるので、製造コストを削減することが可能となる。また、糊や接着剤等の貼着剤を用いなくとも1枚の平板を折り曲げて箱形状に形成することができるので、壁面同士の接合強度を高く維持することが可能となる。
【0019】
緩衝部材120は、例えば、6つの平面をそれぞれ直交させた箱形状で形成され、梱包箱110の壁面112内側の一部に自体の外周部の一方の面を当接し、被梱包物102の側部104にその外周部の他方の面を当接した状態で梱包箱110に収容される。ここで、緩衝部材120が当接する壁面112は梱包箱110の側面のみならず天面や底面も含む。ただし、本実施形態においては、開梱時に被梱包物102が取り出しやすいように天面側に緩衝部材120を配置していない。
【0020】
また、緩衝部材120は、内包部材130と別体に形成され、梱包箱110に収容される前の状態では、被梱包物102と共に内包部材130と独立して、図1中白抜き矢印で示す、収容される梱包箱110の、それぞれが当接する壁面112方向(以下、単に当接方向という)に摺動自在に形成される。したがって、梱包箱110に収容された後であっても、梱包箱110の壁面112が撓めば、緩衝部材120は梱包箱110の当接方向に摺動することができる。
【0021】
図2は、緩衝部材120の組み立て工程を説明するための説明図である。緩衝部材120は、図2の最上段における展開図に示すように、例えば、紙段ボールやプラスチック段ボールといった1枚の平板を所定の形状に切り出して形成される。このように緩衝部材120として発泡スチロール等の発泡材を利用しない構成により環境負荷を低減することができる。
【0022】
また、緩衝部材120には、2つの角筒140が形成される。2つの角筒140は、平板において対向する2つの帯部142をそれぞれ筒形状に折り込んで形成される。また、角筒140は、それぞれ梁部144に延設された先端部146を帯部142中程に設けられた孔148に嵌挿してその形状を維持する。そして、2つの角筒140は、一方の帯部142から切り起こされた嵌合部150と、他方の帯部142に形成された切欠152とによって嵌着する。最後にフラップ154が角筒140の貫通口を塞ぐように折り込まれて緩衝部材120が完成する。フラップ154には、後述する突出部156も一体形成されている。
【0023】
このように、箱形状の緩衝部材120を、平板の段ボールの折り曲げおよび嵌合のみで形成する構成により、糊や接着剤等の貼着剤を用いる必要がなくなり、材料費や製造コストを著しく削減することができる。また、当該緩衝部材120は、平板の状態で保管できるため、輸送時における緩衝部材120の占有体積を最小限に留めることができ、輸送コストも削減することが可能となる。さらに、2つの角筒140を嵌着させて箱形状を形成する構成により、段ボールの材料面積や重量を抑えつつ、被梱包物102を固定するための所定の剛性を確保することができる。
【0024】
内包部材130は、梱包箱110に内包される部材のうち、上述した緩衝部材120以外の部材をいい、図1においては、天板と底板として、被梱包物102の鉛直上下に位置している。当該内包部材130も紙段ボールやプラスチック段ボールによって構成することができ、平板を複数回折り返し重畳された状態で被梱包物102に当接する。したがって、内包部材130は、鉛直上下方向の振動や衝撃を吸収できる。ただし、内包部材130は、平板を複数回折り返し重畳する場合に限られず、その厚みを確保できれば、緩衝部材120の如く、材料を折り込んだ箱形状等様々な形状で構成することが可能である。同様に、上述した緩衝部材120も、箱形状に限られず、平板を複数回折り返し重畳した構造等様々な形状で構成することができる。
【0025】
また、緩衝部材120や内包部材130が図1のように複数設けられる場合、それぞれを対称的かつ共通化された形状で形成する。かかる構成により、製造コストや保管コストの削減を図ることができる。
【0026】
(衝撃の吸収)
上述した梱包ユニット100では、梱包ユニット100に対する振動等の小さな衝撃は緩衝部材120に吸収させ、被梱包物102への影響を抑制する。しかし、衝突または落下といった大きな衝撃が生じた場合、変形幅の小さい緩衝部材120では、その衝撃を十分に吸収することができない。そこで、本実施形態では、梱包箱110の壁面の弾性を利用してその衝撃を吸収する。以下、本実施形態における衝撃を吸収する構成を説明する。
【0027】
図3は、衝撃を吸収する構造を説明するための梱包ユニット100の横断面図である。ここでは、理解を容易にするため、衝撃により矢印方向に被梱包物102の荷重がかかった場合の構造の変化を示す。
【0028】
図3(a)における黒塗り矢印の方向に荷重が加わると、図3(b)の如く、梱包箱110の壁面112がその拡張性によって歪曲するので、弾性体として機能し(以下、単に弾性機能という)、本来、緩衝部材120aや被梱包物102に加わるはずの圧力が著しく減じられる。
【0029】
ここでは、被梱包物102が慣性力により緩衝部材120aを通じて壁面112を押し出すかたちとなり、被梱包物102および緩衝部材120aは、梱包ユニット100に対し、図3(b)において黒塗り矢印で示した方向に変位する。上述したように、緩衝部材120bは、梱包箱110との当接方向に摺動可能に構成されているため、加わった衝撃のほとんどを壁面112に吸収させることが可能である。
【0030】
このとき、梱包ユニット100に加えられた衝撃は、梱包箱110の壁面112全体に亘って吸収されるため、壁面112は、部分的に塑性変形したり、破損したりすることもなく、一旦、梱包箱110の外側に向けて撓むものの、すぐに、図3(b)において白抜き矢印で示した方向の弾性機能により元の位置および形状に復帰する。かかる構成により、ある程度の剛性で梱包箱110の形状を確保すると共に、衝突または落下による衝撃から被梱包物102を保護することが可能となる。
【0031】
また、梱包箱110の壁面112の曲げ剛性と緩衝部材120の剛性とを比較すると、壁面112の曲げ剛性の方が低くなるので、衝撃による緩衝部材120の塑性変形や破損を回避でき、緩衝部材120の緩衝機能の劣化を抑制し、緩衝部材120を繰り返して利用することが可能となる。したがって、衝突または落下による衝撃の繰り返し耐久性も高いこととなる。
【0032】
ここで、緩衝部材120の一方の面は、被梱包物102の側部104における被梱包物102の重心に相当する位置に当接し、かつ、他方の面は、梱包箱110の壁面112内側の略中央に当接している。
【0033】
緩衝部材120の一方の面を被梱包物102の重心に相当する位置に当接させることで、被梱包物102の慣性力を偏らせることなくすべて緩衝部材120で受けることができる。したがって、梱包ユニット100の稜、角のいずれに衝撃が加わった場合であっても、被梱包物102の加重負荷を1または複数の緩衝部材120それぞれに均等に分散することが可能となる。
【0034】
ここで、被梱包物102の重心に相当する位置に当接するとは、単体の緩衝部材120が重心に相当する位置を含んで当接する場合のみならず、1の壁面112に対して緩衝部材120が複数設けられているときに、その複数の緩衝部材120がそれぞれ当接している部分の中央位置が、被梱包物102の重心に相当する位置に対応している場合を含む。
【0035】
また、緩衝部材120の他方の面を梱包箱110の壁面112内側の略中央に当接させることで、梱包箱110の壁面112の撓み、すなわち当接方向の変位をより大きくすることができるので、歪曲に基づいて吸収可能な許容圧力が大きくなり、衝撃に対する被梱包物102への影響をより抑えることが可能となる。
【0036】
さらに、緩衝部材120の梱包箱110の壁面112との当接面積を小さくすることで、当接方向の変位をより大きくすることができ、衝撃に対する被梱包物102への影響をさらに抑えることが可能となる。
【0037】
また、梱包箱110における壁面112端部の内側周囲には、図3に示すように、空隙162が設けられている。このように緩衝部材120の周囲に空隙162を設けることで、梱包箱110における緩衝部材120に対応した壁面112のみならず、その壁面112と直交する壁面112の一部も図3(b)のように梱包箱110内側に傾倒する。こうして、梱包箱110の壁面112の撓みをさらに大きくでき、衝撃に対する被梱包物102への影響を最小限に抑えることが可能となる。
【0038】
上述した例では、理解を容易にするため、梱包箱110の壁面112に垂直な方向に衝撃が加わった場合における梱包箱110の構造の変化を説明したが、梱包箱110が鉛直軸から傾斜した状態で、梱包箱110の稜が地面等に衝突する場合もある。
【0039】
図4は、衝撃を吸収する構成を説明するための梱包ユニット100の横断面図である。ここでは、落下等により、梱包ユニット100の稜に対し斜め45°から衝撃が加わったときの被梱包物102の構造の変化を示す。
【0040】
落下等により、梱包ユニット100に対して、図4(a)における黒塗り矢印の方向に衝撃が加わると、梱包ユニット100はその衝撃を受け、梱包箱110および緩衝部材120(120a、120b、120c、120d)は、図4(b)の如く制止しようとする。したがって、慣性力により落下を継続しようとする被梱包物102に対し、緩衝部材120aを通じて、衝撃に相当する圧力が加わるはずである。しかし、本実施形態においては、梱包箱110の壁面112がその拡張性によって歪曲するので、弾性機能を担い、本来、緩衝部材120a、120bや被梱包物102に加わるはずの圧力が著しく減じられる。
【0041】
ここでは、慣性力により落下を継続しようとする被梱包物102が緩衝部材120aおよび120bを通じて壁面112を押し出すかたちとなり、被梱包物102は、梱包ユニット100に対し、図4(b)において黒塗り矢印で示した方向に変位する。また、それに伴い、緩衝部材120aおよび120bは、図3(b)においてクロスハッチングした矢印で示したように、相対的に当接方向に変位する。すなわち直交する2つの方向に対して弾性機能が働き、加重負荷を分散してそれぞれの壁面112で衝撃を吸収することができる。
【0042】
このとき、梱包ユニット100に加えられた衝撃は、図3を用いて説明したように、梱包箱110の壁面112全体に亘って吸収されるため、壁面112は、部分的に塑性変形したり、破損したりすることもなく、一旦、梱包箱110の外側に向けて撓むものの、すぐに、その弾性機能により元の位置および形状に復帰する。かかる構成により、ある程度の剛性で梱包箱110の形状を確保すると共に、衝突または落下による衝撃から被梱包物102を保護することが可能となる。
【0043】
本実施形態では、梱包ユニット100の稜や角を面内に含む2または3の壁面112それぞれに緩衝構造を有すると好適に被梱包物102を保護することができる。一方、このような緩衝部材120と壁面112との緩衝構造は、それぞれが独立しているので、必要な壁面112に対して必要な数だけ個別に設定することができる。すなわち、緩衝構造を必要とする、例えば、落下に弱い稜や角に近い壁面112が一つであれば、それに対応して緩衝構造を一つ準備すればよく、6面すべてに必要であれば、6つ準備すればよい。
【0044】
また、上述したように、本実施形態の緩衝部材120の梱包箱110における壁面112端部の内側周囲には空隙162が形成されている。したがって、緩衝部材120を壁面112と被梱包物102とで単に狭持する構造とすると、緩衝部材120が当接方向に垂直な面方向に移動してしまい、壁面112の中心位置や被梱包物102の重心位置から離脱するおそれがある。さらに、緩衝部材120が移動し被梱包物102の側部104から離脱すると、被梱包物102の固定支持さえできなくなってしまう。そこで、本実施形態において、緩衝部材120は、当接方向に垂直な面方向の移動が制限されている。
【0045】
図5は、図1における緩衝部材120と内包部材130との嵌合状態を示した斜視図である。ここで、図1における内包部材130のうち、被梱包物102を鉛直下方向から支持する内包部材130は、図5(a)に示すスリット部材170として機能する。
【0046】
スリット部材170における緩衝部材120が配置される面には、上述した緩衝部材120の突出部156の高さに相当する深さを有し、スリット部材170上で緩衝部材120の位置を特定するスリット172およびスリット174が形成されている。壁面112側のスリット172は緩衝部材120の一方の突出部156と嵌合する事によりスリット部材170の側面が面一となるように形成される。また緩衝部材120の他方の突出部156が嵌入されるスリット174には当接方向に所定の長さを有する空間が形成されている。ここでは、図5(b)の如く、突出部156をスリット172およびスリット174に嵌入させることで、緩衝部材120を保持すると共に緩衝部材120のスリット部材170上での位置を特定する。また、スリット174は壁面112の方向に所定の長さ有するため、図5(b)に黒塗り矢印で示したように、緩衝部材120を当接する壁面112方向に摺動可能としている。かかる構成により、被梱包物102の加重負荷を、当接する壁面112の略中央に集約することができるので、壁面112の弾性を有効に利用することが可能となり、衝撃による緩衝部材120の塑性変形や破損を回避できる。
【0047】
また、スリット部材170では、スリット174を所定長とすることで、緩衝部材120の当接方向の摺動も所定範囲に制限している。こうすることで、想定以上の衝撃により過大に加重負荷がかかった場合においても、その加重負荷の一部をスリット174の端部で受けることができるので、過大な加重負荷による壁面112の塑性変形や破損を回避することが可能となる。
【0048】
さらに、緩衝部材120は、スリット174によって、図5(b)でハッチングした矢印で示す被梱包物102方向の移動も制限されるので、被梱包物102に対し不用意に加重負荷が加わるのを回避できる。また、図3や図4に示したように、当該梱包ユニット100に衝撃が加わった場合においても、緩衝部材120(図3の120cや図4の120c、120d)自体の荷重がスリット174の端部で吸収されるので、壁面102では被梱包物102および当接する緩衝部材120のみの加重負荷を吸収すればよく、壁面112の弾性を有効に利用することが可能となる。
【0049】
図6は、衝撃を吸収する構成を説明するための梱包ユニット100の縦断面図である。ここでは、梱包ユニット100が地面に衝突したことにより、緩衝部材120aと被梱包物102が、図6中、黒塗り矢印の方向に一旦摺動し、その後元の位置に復帰する。このとき、緩衝部材120の突出部156がスリット174内を黒塗り矢印の方向に摺動しているのが理解できる。
【0050】
また、スリット174は、緩衝部材120を当接方向に摺動させると共に、当接方向に垂直な面方向に移動を制限している。したがって、図5(b)においてハッチングした矢印で示す方向には緩衝部材120は移動しない。かかる構成により、緩衝部材120が当接方向に垂直な面方向に移動して壁面112の中心や被梱包物102の重心位置から離脱する事象を回避でき、安定して被梱包物102を保護することが可能となる。
【0051】
(他の実施例)
図7は、緩衝部材120と内包部材130との他の嵌合状態を示した説明図である。ここで、内包部材130は案内部材180として機能する。案内部材180は、梱包箱110に収容され、緩衝部材120における当接方向以外の側面に接触する。例えば、案内部材180は、図7(a)に示すように、梱包箱110の壁面112内側に壁面112と平行するように配設され、その中央には、緩衝部材120の胴体形状に合わせて緩衝部材120を挿通できるように案内孔(貫通孔)182が設けられている。緩衝材120には梱包箱110と当接する面に掛止板184が設けられ、他方の面には案内孔182に挿通した後切り起こされる掛止キー186が設けられる。また、このような緩衝構造を4つの壁面112にそれぞれ配設すると図7(b)のようになる。ここでは、壁面112端部の内側周囲に空隙162を設けるため、案内部材180を井の字状に組み合わせて配置されている。
【0052】
緩衝部材120は、梱包箱110の壁面112と被梱包物102の側部104に狭持され、さらに、案内部材180の案内孔182によって当接方向に垂直な面方向の移動が制限されて、梱包ユニット100内での位置決めがなされる。そして、梱包ユニット100が衝撃を受けた際には、図7(a)中、両矢印で示したように、案内部材180の案内孔182内を摺動して壁面112を押圧する。こうして、緩衝部材120が当接方向に垂直な面方向に移動して壁面112の中心や被梱包物102の重心位置から離脱するといった事象を回避でき、安定して被梱包物102を保護することが可能となる。
【0053】
また、緩衝材120の掛止板184によって、被梱包物102方向の移動が制限され、被梱包物102を加重負荷から保護することができる。さらに、緩衝材120の当接方向の摺動範囲を掛止板184と掛止キー186との間に制限することで、過大な加重負荷を壁面112のみにかけることなく、壁面112の塑性変形や破損を回避することが可能となる。
【0054】
図8は、緩衝部材120と内包部材130とのさらに他の嵌合状態を示した説明図である。ここでも、内包部材130は、案内部材190として機能する。図8の場合、案内部材190は、図1の内包部材130同様、梱包箱110の底板として配設される。例えば、図8(a)において、案内部材180は、被梱包物102および緩衝部材120を鉛直下方向から支持し、緩衝部材120の側面のうち梱包箱110の壁面側端に案内キー192を有している。緩衝材120には梱包箱110と当接する面に掛止板194が設けられ、他方の面には掛止キー196が設けられる。また、このような緩衝構造が梱包箱110に収容されると図8(b)のようになる。
【0055】
緩衝部材120は、梱包箱110の壁面112と被梱包物102の側部104に狭持され、さらに、案内部材180の案内キー192によって当接方向に垂直な面方向の移動が制限されて、梱包ユニット100内での位置決めがなされる。そして、梱包ユニット100が衝撃を受けた際には、案内部材180の案内キー192間を摺動して壁面112を押圧する。こうして、緩衝部材120が当接方向に垂直な面方向に移動して壁面112の中心や被梱包物102の重心位置から離脱するといった事象を回避でき、安定して被梱包物102を保護することが可能となる。
【0056】
また、緩衝材120の掛止板194と案内キー192によって、被梱包物102方向の摺動が制限され、被梱包物102を加重負荷から保護することができる。さらに、緩衝材120の当接方向の摺動範囲を掛止板194と掛止キー196との間に制限することで、過大な加重負荷による壁面112の塑性変形や破損を回避することが可能となる。
【0057】
以上、述べた梱包ユニット100によって、緩衝部材の塑性変形を回避しつつ、衝突や落下に基づく衝撃から被梱包物を保護することが可能となる。したがって、緩衝機能の劣化を抑制して緩衝部材を繰り返し利用することができる。
【0058】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、被梱包物を梱包するための、梱包箱と緩衝部材とを含んでなる梱包ユニットに利用することができる。
【符号の説明】
【0060】
100 …梱包ユニット
102 …被梱包物
104 …側部
110 …梱包箱
112 …壁面
120 …緩衝部材
130 …内包部材
156 …突出部
162 …空隙
170 …スリット部材
172 …スリット
174 …スリット
180、190 …案内部材
182 …案内孔
184、194 …掛止板
186、196 …掛止キー
192 …案内キー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平らな壁面を有する梱包箱と、
前記梱包箱に収容され、一方を前記梱包箱の壁面の一部に、他方を被梱包物の側部に当接する緩衝部材と、
前記緩衝部材が当接する方向に摺動可能に保持する内包部材と、
を備えることを特徴とする梱包ユニット。
【請求項2】
前記緩衝部材は、前記当接方向の摺動が前記内包部材によって所定範囲に制限されていることを特徴とする請求項1に記載の梱包ユニット。
【請求項3】
前記緩衝部材に一体形成された突出部と、
前記内包部材に前記突出部を嵌入可能とするスリットと、を備え、
前記スリットは前記緩衝部材が前記梱包箱の壁面に当接する方向に所定の長さの空間を有することを特徴とする請求項1または2に記載の梱包ユニット。
【請求項4】
前記梱包箱における壁面端部の内側周囲には空隙が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の梱包ユニット。
【請求項5】
前記緩衝部材は、前記梱包箱における壁面に対応して複数設けられることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の梱包ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−121632(P2011−121632A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282974(P2009−282974)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】