説明

梳き鋏

【課題】 髪を多く挟むことが可能で、確実に剪断動作が可能であり、多くの髪に対して髪梳き操作を容易に行うことができ、効率よく梳くことができる梳き鋏を提供する。
【解決手段】 櫛状に連続する櫛刃32が鋏身28に形成された櫛刃体12と、棒刃体14が、互いにネジ部材16を介して軸止されている。鋏体22の、棒刃体14に対面する面に設けられ、ネジ部材用の透孔24を通過する研削中心線Mを有する凹面状の窪みである第一ひぞこ23を有する。櫛刃体12は、鋏体22から段差を設けて峰側に太く形成された鋏身28と、鋏身28に設けられた櫛刃32の間に形成され峰付近に達する櫛溝31と、鋏身28の棒刃体14に対面する面に設けられた裏刃33とを有する。鋏身28には、裏刃33を除く部分に設けられ、鋏身28の長手方向に沿う中心線を通過し第一ひぞこ38の研削中心線Mと異なる研削中心線Mを有する窪みである第二ひぞこ34を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、理容または美容に用いられ、髪の毛を梳く梳き鋏に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に鋏は、一対の刃体がネジ部材によって回動可能に結合され、被切断物の剪断の際には、一対の刃体の間に被剪断物が挟みこまれ、一対の刃体には互いに離れる方向に広がるように力が働く。このとき、一対の刃体が離れると、一対の刃体が交差する点に効果的な剪断力がかからなくなり、切断に支障が生じる。これを防ぐため、各刃体は刃元から刃先にかけて、弓なりに僅かに互いに近づく向きに湾曲して形成されている。さらに、一対の刃体の交点の圧力を高めるために、一対の刃体が互いに接触する裏刃の面積は、刃元から刃先においてどの部分でも均一に小さくする必要がある。そこで、細く均一な裏刃を形成するために、裏刃以外の部分に凹面状の窪みであるひぞこが設けられている。ひぞこは、裏刃を均一に細くするために、例えば100分の1mm以下の高い精度でグラインダーで研削され、ひぞこの形成は、技術的に難しく熟練を要するものである。このひぞこの窪みのセンターとなる研削中心線は、刃体の幅のほぼ中心に位置している。
【0003】
一方、鋏の一種類で理美容に用いられる梳き鋏があり、これは髪を梳き切るものであり、いろいろな梳き方に対応して、梳き切る量が多いものや少ないもの等種々の梳き鋏が提供されている。ここで、この梳き鋏について、図5から図8を基に説明する。この梳き鋏1は、櫛刃体2と棒刃体3がネジ部材により枢着されている。図6(a)には、櫛刃体2の、棒刃体3と対面する面が示され、櫛刃体2のほぼ中心には、棒刃体3に軸止される部分である板状の鋏体2aが設けられている。さらに鋏体2のほぼ中心にはネジ部材用透孔2bが形成されている。そして、鋏体2aの図面において右側の端部には、ハンドル2cが設けられている。
【0004】
鋏体2aの、ハンドル2cと反対側の端部には、鋏身4がハンドル2cと反対方向に突出して設けられている。鋏身4は鋏体2aと同じ幅で段差などがなくなめらかに連続する細長い板状であり、鋏身4の鋏体2aと反対側は先細の刃先側の端部4aである。そして、図面において上側は峰である側縁部4bであり、側縁部4bと反対側は刃が設けられた側縁部4cである。側縁部4cには側縁部4cから鋏身4の中心線と側縁部4bの間に達して、側縁部4cに対してほぼ直角に形成された複数本の櫛溝が設けられ、各々の櫛溝の間が櫛刃5となっている。櫛刃5の側縁部4c側の先端部裏面が、剪断時に棒刃体3に擦れ合う裏刃となっている。
【0005】
櫛刃体2の裏面には、図6,図7に示すように、鋏体2aと鋏身4の裏刃以外の部分に、第一ひぞこ6が形成されている。第一ひぞこ6は凹面状に形成された窪みであり、第一ひぞこ6の最も深い部分は研削中心線Mであり、研削中心線Mは鋏体2aでは鋏体2aのハンドル2c突き当て部2dと鋏身4を結ぶ直線に沿ってネジ部材用透孔2bを通過し、鋏身4では側縁部4cに対して平行にカーブを描いている。鋏身4の側縁部4cは、通常半径800mmから1000mm程度の曲線であり、研削中心線はそれに沿って設けられている。鋏身4の端部4a付近では、峰側の側縁部4bに向かっている。
【0006】
図6(b)には、棒刃体3の、櫛刃体2と対面する面が示され、棒刃体3のほぼ中心には、櫛刃体2に軸止される部分である板状の鋏体3aが設けられている。さらに鋏体3aのほぼ中心にはネジ部材用透孔3bが形成されている。そして、鋏体3aの図面において右側の端部には、ハンドル3cが設けられている。鋏体3aの、ハンドル3cと反対側の端部には、鋏身7がハンドル3cと反対方向に長く突出して設けられている。鋏体3aには、図8に示すように、第二ひぞこ8が設けられている。第二ひぞこ8の研削中心線Mは、鋏身3aのハンドル3cの突き当て部3dと鋏身7を結ぶ直線に沿ってネジ部材用透孔3bを通過している。
【0007】
鋏身7は鋏体3aよりも細く形成された板状であり、鋏体3aと反対側は先細の刃先側の端部7aであり、上側は峰である側縁部7bである。側縁部7bと反対側は側縁部7cであり、側縁部44cには、剪断時に櫛刃体2に擦れ合う裏刃が設けられている。鋏身7の裏刃以外の部分は、第三ひぞこ9が形成されている。第三ひぞこ9の研削中心線は、鋏身7の中心付近に位置し、鋏身7の側縁部7cに対して平行にカーブを描いている。研削中心線は、鋏身7の端部7a付近では、峰側の側縁部7bに向かっている。
【0008】
棒刃体3の鋏身7は、峰側の側縁部7bは鋏体3aと一連の曲線であるが、刃側の側縁部7cは鋏体3aとの境目に段差があり、鋏体3aの約半分の幅付近に位置している。このように、鋏身7の幅を鋏体3aの幅より細くすることで櫛刃体2の櫛溝に入った髪の毛が切り残され、梳き鋏1としての機能を果たす。そのため鋏体3aと鋏身7の中心線が一致せず、第二ひぞこ8と第三ひぞこ9も、それにともない異なる研削中心線で形成されている。
【特許文献1】特開2003−126569号公報
【特許文献2】特開2003−190672号公報
【特許文献3】特開2003−230774号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような梳き鋏1は、処理する髪の量を多くして効率よく梳き操作を行うために、櫛刃体2の鋏身4の幅を広くし櫛溝を長くすることが考えられる。しかし、櫛刃体2の鋏身4の幅を広くするためには鋏体2aに対して峰側の側縁部4bが外側に位置するように段差を設けて広くする方法があるが、第一ひぞこ6の研削中心線がネジ部材用透孔2bに一致しているため、図7(a)に示すように、第一ひぞこ6は鋏身4の側縁部4bに近づくにつれて浅くなり、側縁部4cの裏刃と同じ高さになる恐れがあり、剪断動作に支障が生じるという問題がある。
【0010】
また裏刃と峰が同じ高さであると、研磨して刃付けする時にも支障が生じ、この状態では裏刃を切れ刃として形成できない問題がある。これは刃体の素材がステンレス合金であるという金属の特性上、エッジに砥石が当たらなければバリがとれないためである。また、第一ひぞこ6の凹面状の窪みは、半径を大幅に変更することは好ましくなく、適切な半径の第一ひぞこ6で裏刃を形成し、同時に鋏身4の幅を広くする方法が求められる。
【0011】
また、櫛刃体2の鋏身4の幅を広くして櫛溝を長くするためには、棒刃体3の鋏身7も峰側の側縁部7bの方向に鋏体3aよりもずれて平行移動した位置に設ける必要がある。しかし、図8に示すように、鋏身7とともに第三ひぞこ9が移動すると、第三ひぞこ9の研削中心線Mが鋏体3aに設けられた第二ひぞこ8の研削中心線Mと離れ、第二ひぞこ8と第三ひぞこ9の境界部分が浅くなり、剪断動作や刃付けの際に支障があるという問題があった。
【0012】
この発明は、上記従来の技術の問題点に鑑みてなされたものであり、髪を多く挟むことが可能で、また確実に剪断動作が可能であり、多くの髪に対して髪梳き操作を行い効率よく梳くことができる梳き鋏を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、櫛状に連続する櫛刃が鋏身に形成された櫛刃体と、鋏身が棒刃である棒刃体が、互いにネジ部材を介して軸止された梳き鋏であり、上記櫛刃体は、上記ネジ部材が取り付けられ上記棒刃体に重ねて取り付けられる板状の鋏体と、上記鋏体に設けられ上記ネジ部材を挿通するネジ部材用透孔と、上記鋏体の上記棒刃体に対面する面に設けられ上記ネジ部材用透孔を通過する研削中心線を有する凹面状の窪みである第一ひぞこと、上記鋏体から段差を設けて峰側に太く形成された鋏身と、上記鋏身に設けられた上記櫛刃の間に形成され峰付近に達する長い櫛溝と、上記鋏身の上記棒刃体に対面する面に設けられた裏刃と、上記鋏身の上記裏刃を除く部分に設けられ上記鋏身の長手方向に沿う中心線を通過し上記第一ひぞこの研削中心線と異なる研削中心線を有する凹面状の窪みである第二ひぞこが設けられている梳き鋏である。
【0014】
また、例えば上記第二ひぞこの研削中心線は、上記第一ひぞこの研削中心線とほぼ平行で上記櫛刃体の峰側に移動した位置に設けられている。
【0015】
また、上記棒刃体は、上記ネジ部材が取り付けられ上記櫛刃体に重ねて取り付けられる板状の鋏体と、上記鋏体に設けられ上記ネジ部材を挿通するネジ部材用透孔と、上記鋏体の上記櫛刃体に対面する面に設けられ上記ネジ部材用透孔を通過する研削中心線を有する凹面状の窪みである第三ひぞこと、上記鋏体から段差を設けて峰側の側縁部が上記鋏体の側縁部から略平行に外側に位置し峰と反対の刃側の側縁部が上記鋏体の反対の側縁部から所定距離だけ内側に離れている鋏身と、上記鋏身の上記櫛刃体に対面する面に設けられた裏刃と、上記鋏身の上記裏刃を除く部分に設けられ上記鋏身の長手方向に沿う中心線を通過し上記第三ひぞこの研削中心線と異なる研削中心線を有する凹面状の窪みである第四ひぞこと、上記第三ひぞこと上記第四ひぞこを連結しその境界付近に設けられているとともに、上記第三ひぞこと上記第四ひぞこの各研削中心線と異なる研削中心線を有する第五ひぞこが設けられている。
【0016】
また、例えば上記第四ひぞこの研削中心線は、上記第三ひぞこの研削中心線とほぼ平行で上記棒刃体の峰側に移動した位置に設けられ、上記第五ひぞこの研削中心線は、上記第三ひぞこの研削中心線に対して平行で、上記第三ひぞこと上記第四ひぞこの各研削中心線の間に位置している。
【発明の効果】
【0017】
本発明の梳き鋏は、髪の毛を多く挟むことが可能であるとともに、円滑に剪断動作が可能であり、効率よく梳くことができる。さらに、一度に多くの髪の毛を挟んで髪梳き操作を行うことができるので、髪梳きの回数も少なくすることが出来、髪梳きによる髪の毛の損傷も少なくすることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1〜図4はこの発明の一実施形態を示すもので、この実施形態の梳き鋏10は、櫛刃体12と棒刃体14がネジ部材16により枢着されている。
【0019】
図2(a)には、櫛刃体12の、棒刃体14と対面する面が示され、櫛刃体12の、ほぼ中心には、棒刃体14に軸止される部分である板状の鋏体22が設けられている。鋏体22のほぼ中心には、ネジ部材16用の透孔24が設けられている。そして、鋏体22の図面において右側の端部には、細長い柄の先端に薬指を通す環部が設けられたハンドル26が設けられている。鋏体22の、ハンドル26と反対側の端部には、鋏身28がハンドル22と反対方向に長く突出して設けられている。なお、鋏体22には棒刃体14に擦れ合う平面22aが形成され、平面22aの内側には凹面状にくぼむ第一ひぞこ23が設けられている。第一ひぞこ23は裏梳きという技法により高い精度でグラインダーで研削され、研削中心線は、鋏体22のハンドル26の突き当て部26aと鋏身28を結ぶ直線に沿ってネジ部材用透孔24を通過している。
【0020】
鋏身28の基端部、つまり刃元側の端部は、鋏体22の、図面において上下方向の幅よりも鋏身28の上下方向の幅が広く設けられ、鋏体22の、図面において上側の側縁部22bには、鋏身28との間に段差30が形成されている。
【0021】
鋏身28は長い板状であり、鋏体22と反対側は先細の刃先側の端部28aであり、鋏体22と段差30が設けられている上側は峰である側縁部28bである。側縁部28bと反対側は刃が設けられた側縁部28cであり、側縁部28cには側縁部28cから鋏身28の中心線と側縁部28bの間に達して、側縁部28cに対してほぼ直角に、複数本の櫛溝31が設けられている。そして、各櫛溝31の間は、櫛刃32となっている。
【0022】
櫛刃体12の裏面の、櫛刃32の側縁部28c側の先端部には、剪断時に棒刃体14に擦れ合う裏刃33が設けられている。櫛溝31の形状は、鋏身28の端部28a側の約半分はほぼ直線であり、鋏体22側の残り半分は櫛溝31の中間付近が端部28aに向かう湾曲線で形成され、櫛刃32も湾曲している。
【0023】
櫛刃32の側縁部28c側の先端部である刃線は、端部28a側に傾斜され、剪断時に髪が滑って多めに髪を逃がして、切る髪の量が少なくなるように設定されている。例えば、刃線を逆に鋏体22側に傾斜させると、髪の逃げ量が抑制され切る髪の量が多く設定される。また、櫛刃32の刃線は、切断されない毛髪の保護や、刃先の補強などのために、曲線で形成されたり、部分的に刃を設ける等の工夫がなされている。
【0024】
鋏身28の裏刃33以外の部分は、第一ひぞこ23と同様の方法で第二ひぞこ34が形成されている。第二ひぞこ34の研削中心線は、鋏身28の中心付近に位置し、鋏身28の側縁部28cに対して平行にカーブを描いている。鋏身28の側縁部28bは通常、半径800mmから1000mm程度の曲線であり、それに沿って設けられ、鋏身28の端部28a付近では、峰側の側縁部28bに向かっている。
【0025】
図2(b)には、棒刃体14の、櫛刃体12と対面する面が示され、棒刃体14のほぼ中心には、櫛刃体12に軸止される部分である板状の鋏体36が設けられている。鋏体36のほぼ中心には、ネジ部材16用の透孔40が設けられている。そして、鋏体36の図面において右側の端部には、細長い柄の先端に親指を通す環部が設けられたハンドル42が設けられている。鋏体36の、ハンドル42と反対側の端部には、鋏身44がハンドル42と反対方向に長く突出して設けられている。なお、鋏体36には櫛刃体12に擦れ合う平面36aが形成され、平面36aの内側には凹面状にくぼむ第三ひぞこ38が設けられている。第三ひぞこ38の研削中心線は、鋏体36のハンドル42の突き当て部42aと鋏身44を結ぶ直線に沿ってネジ部材用透孔24を通過している。
【0026】
鋏身44は鋏体36よりも細く形成された板状であり、鋏身44の、鋏体36と反対側は先細の刃先側の端部44aであり、鋏体36と段差46が設けられている上側は峰である側縁部44bである。側縁部44bと反対側は側縁部44cであり、側縁部44cには、剪断時に櫛刃体12に擦れ合う裏刃50が設けられている。
【0027】
鋏体36の基端部、つまり刃元側の端部は、鋏体36の、図面において上側の側縁部36b側にずらしたように位置し、鋏身44の上方の側縁部44bは、鋏体36の側縁部36bから段差46が設けられて上方に位置し、鋏身44の下方の側縁部44cは、鋏体36の側縁部36cからくぼむ方向の段差45が設けられ、鋏体36の約半分の幅よりも上方に位置している。これにより鋏身44は、剪断時に、図2(a)に示す櫛刃体12の、鋏身28の側縁部28cに少ししか重ならず、鋏身28の櫛溝31に長く空間が残り、多くの髪の毛を挟むことが可能となる。
【0028】
鋏身44の裏刃50以外の部分は、第三ひぞこ38とは研削中心線が異なる第四ひぞこ52が形成されている。第四ひぞこ52の研削中心線は、鋏身44の側縁部44cに対して平行にカーブを描いている。第四ひぞこ52の研削中心線は、鋏身44の中心付近に位置し、鋏身44の側縁部44cの曲線に沿って設けられ、鋏身44の端部44a付近では、峰側の側縁部44bに向かっている。また、鋏体36の、鋏身44の基端部近傍の、透孔40と段差46の間の部分には、第三ひぞこ38、第四ひぞこ52とは研削中心線が異なる第五ひぞこ53が設けられている。第五ひぞこ53の研削中心線は、例えば第三ひぞこ38の研削中心線に対して平行で、第三ひぞこ38と第四ひぞこ52の間に位置している。
【0029】
次に、この実施形態の梳き鋏10の組立方法について説明する。まず、櫛刃体12の鋏体22の平面22aと、棒刃体14の鋏体36の平面36aを重ね合わせ、透孔24,40を一致させ、ネジ部材16を棒刃体14側から挿通させる。ネジ部材16の、櫛刃体12側に突出する端部に板バネ54をセットし、板バネ54の上からナット56を螺合させ、固定する。ナット56の締め付け強さを調整し、最適な剪断圧状態にする。ネジ部材を強く締めすぎると梳き鋏10の開閉ができなくなり、道具として使用できなくなる。逆にネジ部材の締め付けがゆるい状態では鋏身28,44の交点の圧力が適したものとならず、「こじる」という人的な要素が影響することになり、鋏本来の機能から逸脱してしまう。従ってネジ部材の締め付け具合には適正な強さがあり、適宜調整が必要である。
【0030】
この実施形態の梳き鋏10によれば、多くの髪の毛を挟むことができ、多くの髪の毛に対して髪を梳く操作を行い、効率よく整髪することができる。梳き鋏10の櫛刃体12は、櫛溝31が長くて太く形成され、また剪断操作をしたとき、図5に示す従来の梳き鋏1に比べて櫛刃体12と棒刃体14の重なりが少ないため櫛溝31に広く空間が残り、このため多くの髪の毛を挟んで梳く操作を行うことができる。また、櫛刃体12と棒刃体14の互いに対面する面には、第一ひぞこ23から第五ひぞこ53が設けられ、櫛刃体12の鋏身28が幅広でも、裏刃33,50以外の部分は互いに接触せず、剪断動作や刃付けの際に支障となることがない。
【0031】
なお、この発明の梳き鋏は、上記実施の形態に限定されるものではなく、各部材の形状等自由に選択可能であり、例えば櫛溝31の本数や太さ、湾曲した直径など、自由に選択可能である。ハンドル26,42の形状も自由に選択可能であり、ハンドル26,42に挿通する指の、隣の指をのせる突起が設けられていても良い。また、各ひぞこの凹面の半径は、裏刃より高くならず、また深すぎない、適したものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明の一実施形態の梳き鋏の開いた状態(a)と閉じた状態(b)を示す正面図である。
【図2】この実施形態の梳き鋏の櫛刃体(a)の背面図と、棒刃体(b)の背面図である。
【図3】図2のA−A線縦断面図(a)とB−B線縦断面図(b)である。
【図4】図2のC−C線縦断面図(a)とD−D線縦断面図(b)とE−E線縦断面図(c)である。
【図5】従来の技術の梳き鋏の閉じた状態を示す正面図である。
【図6】従来の技術の梳き鋏の櫛刃体(a)の背面図と、棒刃体(b)の背面図である。
【図7】図6のA−A線縦断面図(a)とB−B線縦断面図(b)である。
【図8】図6のC−C線縦断面図(a)とD−D線縦断面図(b)とE−E線縦断面図(c)である。
【符号の説明】
【0033】
10 梳き鋏
12 櫛刃体
14 棒刃体
16 ネジ部材
22,36 鋏体
23 第一ひぞこ
24 透孔
26,42 ハンドル
28,44 鋏身
30,45,46 段差
31 櫛溝
32 櫛刃
33,50 裏刃
34 第二ひぞこ
38 第三ひぞこ
52 第四ひぞこ
53 第五ひぞこ
M 研削中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
櫛状に連続する櫛刃が鋏身に形成された櫛刃体と、鋏身が棒刃である棒刃体が、互いにネジ部材を介して軸止された梳き鋏において、上記櫛刃体は、上記ネジ部材が取り付けられ上記棒刃体に重ねて取り付けられる板状の鋏体と、上記鋏体に設けられ上記ネジ部材を挿通するネジ部材用透孔と、上記鋏体の上記棒刃体に対面する面に設けられ上記ネジ部材用透孔を通過する研削中心線を有する凹面状の窪みである第一ひぞこと、上記鋏体から段差を設けて峰側に太く形成された鋏身と、上記鋏身に設けられた上記櫛刃の間に形成され峰付近に達する長い櫛溝と、上記鋏身の上記棒刃体に対面する面に設けられた裏刃と、上記鋏身の上記裏刃を除く部分に設けられ上記鋏身の長手方向に沿う中心線を通過し上記第一ひぞこの研削中心線と異なる研削中心線を有する凹面状の窪みである第二ひぞこが設けられていることを特徴とする梳き鋏。
【請求項2】
上記第二ひぞこの研削中心線は、上記第一ひぞこの研削中心線とほぼ平行で上記櫛刃体の峰側に移動した位置に設けられていることを特徴とする請求項1記載の梳き鋏。
【請求項3】
上記棒刃体は、上記ネジ部材が取り付けられ上記櫛刃体に重ねて取り付けられる板状の鋏体と、上記鋏体に設けられ上記ネジ部材を挿通するネジ部材用透孔と、上記鋏体の上記櫛刃体に対面する面に設けられ上記ネジ部材用透孔を通過する研削中心線を有する凹面状の窪みである第三ひぞこと、上記鋏体から段差を設けて峰側の側縁部が上記鋏体の側縁部から略平行に外側に位置し峰と反対の刃側の側縁部が上記鋏体の反対の側縁部から所定距離だけ内側に離れている鋏身と、上記鋏身の上記櫛刃体に対面する面に設けられた裏刃と、上記鋏身の上記裏刃を除く部分に設けられ上記鋏身の長手方向に沿う中心線を通過し上記第三ひぞこの研削中心線と異なる研削中心線を有する凹面状の窪みである第四ひぞこと、上記第三ひぞこと上記第四ひぞこを連結しその境界付近に設けられているとともに、上記第三ひぞこと上記第四ひぞこの各研削中心線と異なる研削中心線を有する第五ひぞこが設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の梳き鋏。
【請求項4】
上記第四ひぞこの研削中心線は、上記第三ひぞこの研削中心線とほぼ平行で上記棒刃体の峰側に移動した位置に設けられ、上記第五ひぞこの研削中心線は、上記第三ひぞこの研削中心線に対して平行で、上記第三ひぞこと上記第四ひぞこの各研削中心線の間に位置していることを特徴とする請求項3記載の梳き鋏。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−20745(P2006−20745A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−200118(P2004−200118)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(504261952)有限会社シザーズジャパン (3)
【Fターム(参考)】