説明

梳鋏

【課題】2本の刃体が枢着され、前記刃体の少なくとも一本が櫛歯と櫛溝とを交互に設けた櫛刃体である梳鋏であって、頭髪を梳く時には、局所的な髪梳きが容易に行える梳鋏を提供することにある。
【解決手段】梳鋏において、髪を梳き切るための刃を、2本の刃体の長手の先端側に設けると共に、刃の設けられていない刃体の長手の基端側は、梳鋏を開いた時に互いに向かい合う側の外縁形状が、梳鋏を閉じることにより合わさって刃体の表裏方向に貫通する穴部を成す様に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、理美容用鋏の一種である梳鋏の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
梳鋏は、髪を梳く時に用いられるものであり、2本の刃体が枢着されている。この2本の刃体は、一般には、図15に示す様に一方の刃体が櫛刃体51であり、他方の刃体が棒刃体52である。櫛刃体51は櫛歯53と櫛溝54とが交互に設けられており、棒刃体52は狭い幅55の刃体52で、刃先は直線刃56となっている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−140953号公報
【0003】
この梳鋏50で髪を梳く時は、髪の束を手や櫛で頭髪から取り出す様にして、この毛束を梳鋏で梳き切るのである。この様に、梳鋏は髪を梳いて髪の量を減らすのがその機能である。ただ、最近はヘアースタイルに様々な工夫が成され通り、特に女性のヘアースタイルに関しては、この髪の量の加減に、微妙な変化を求める様になってきている。
【0004】
例えば、単に伸びた髪の量を減らす為だけではなく、或いは髪を大雑把に取り出して梳くのではなく、梳く髪の位置を頭髪の中からピンポイントに狙って、髪の一部分だけを梳くことが美容技術として重要になってきている。具体的には、図16に示す様に、頭部から取り出した帯状毛束57に対し、その一部(図16の58など)だけを梳きたい場合がある。
或いは、頭髪の中の小さな場所を狙い、その髪だけを摘んで小さな毛束にして頭部から引き出し、この毛束を梳き過ぎない様に少しづつ梳きながら、髪型全体を女性のおしゃれにマッチしたヘアースタイルに仕上げてゆくのである。
【0005】
この様な細かく少しづつ仕上げてゆく場合には、一般に梳鋏の先端側を用いるのであり、切り過ぎない様に梳鋏先端を細かく使って、仕上がりを確認しながら作業を進めてゆくのである。
【0006】
なお本願発明に関係する、この鋏の一般的な技術を説明しておく。
(カット鋏の刃裏の受け面):理美容鋏のカット鋏は2本の刃体が共に直線刃になっているが、このカット鋏の刃先は、図17は鋏を開いた時の刃体の断面図であるが、この図に示す様に鋭利な刃先59,59が互いに向かい合っている。ただ本当に刃先59,59が向かい合っていると、互いの鋭利な刃先59,59が噛み合って鋏が閉じにくくなり、また刃先59,59が破損してしまう。従って実際には、図18に示す様に刃先62の刃裏60側を僅かに研磨して、刃先62の刃裏60側に相手の刃先を受ける為の微小な受け面61が設けてある。これにより刃先62,62同士が噛み合うことを無くし、刃先62,62が保護された状態で使用することができるのである。
【0007】
(梳鋏の櫛歯の受け面):この様な問題は梳鋏も同様であり、図19に示す様に梳鋏の櫛歯63も、刃先の刃裏側を僅かに研磨して受け面64が設けてある。なお櫛歯63の先端は端面65になっていて、この端面65と受け面64との稜線部分66が刃になっており、他方の棒刃体だけが、カット鋏と同様に鋭利な刃先になっている。又この櫛歯63の先端には、髪を捉える溝67が設けられているのが一般的であるが、この櫛歯63を研ぐとこの溝67が消失してしまうので、櫛歯63は研がないものである。或いは、溝67がない櫛歯であっても、1本々々の櫛歯を均一に研ぐのは困難であり、その為に研がなくてもいい様に、櫛歯の先端が切り落とされた様な端面65になっていているのであり、棒刃だけを鋭利な刃先にしてあるのである。ただこの様に、棒刃の「鋭利な刃」か櫛歯の「端面状の刃」かの違いがあっても、刃先同士の噛み合う問題は同じなので、櫛歯もその刃裏側を研いで図20に示す様に受け面64が設けてある。
【0008】
(梳鋏の櫛溝による引っ掛かり):ただ刃先同士の噛み合わせについては、梳鋏には、もう一つ梳鋏特有の問題がある。それは櫛歯が一本々々独立していて、櫛歯の間に櫛溝があるために、鋏を閉じる時には棒刃体の刃先が、図21に示す様に、僅かではあるがこの櫛溝54に嵌ってしまうことである。この様に棒刃体55の直線刃56が櫛溝54に嵌るとは、言い換えるとその櫛溝54の向こう隣の櫛歯53(図21の68参照)に刃先56が引っかかることであり、これが梳鋏の閉じ操作を妨げる原因となっている。ただ櫛歯53への引っかかりが微小であるため、引っかかりを無視して強く閉じれば閉じることはできるが、棒刃の直線刃56を傷付けてしまう。その為、櫛歯53の受け面64の研磨を深くすることにより、受け面64の先端64aを刃表68側に後退させ(図22の符号D)、これにより櫛溝に入ろうとする棒刃をこの深い受け面64で受けて、引っかかりを無くしている。
【0009】
(刃先同士の交点と交点の移動):通常の鋏であれば、鋏を開いた状態であっても、図23に示す様な2本の刃体70,70は刃先が触れ合った状態(図23のP)になっている。この触れ合っている点を交点Pと呼ぶが、鋏を閉じる時にはこの交点Pが、閉じるに連れて先端71側へと連続的に移動するのである。
この点、梳鋏の場合は、細かく見れば櫛歯と櫛歯の間に櫛溝があるので、この交点はこの櫛溝で不連続に移動することとなる。ただ、この櫛溝は狭いので小さな不連続であるとして無視すれば、大局的に見て、梳鋏を開いた状態から閉じ切るまでの交点の移動は、梳鋏の場合も概ね連続的に移動していると云うことができる。
【0010】
(刃体の湾曲と側圧):鋏は、図24に示す様に、刃体70の刃裏72が、長手方向に僅かに凹状に湾曲している。これは図25に示す様に、鋏は互いに、刃先の刃裏72同士の押し合う力A(これを「側圧」という)が必要だからであり、湾曲はこの側圧Aを得るためのものである。つまり、湾曲した刃裏72を向かい合わせて、図24中のBに示した様に、刃体70,70を枢着ネジ73で締めると、交点Pでは側圧Aが掛かり、互いに相手刃体側に押し合っているのである。この側圧Aがないと、髪を切る時、刃裏72と刃裏72との間74に髪が挟まってしまうことがあるからである。図26は、図24と同じアングルで、刃体70を線で略示したものであるが、側圧があると、開いた状態の時の図26(a)に示す様に、交点Pは基端寄りとなるが、この交点Pは鋏を閉じるに従って先端71方向に移動し、同図(b)の状態を経て、最終的に閉じた時の同図(c)の様に、交点Pが先端71に到達した状態になるのである。閉じる最中の刃体70は、湾曲により、その交点Pから先端側75が、同図(a)〜(b)に示す様に、相手刃体側に入り込んだ状態になるのである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
梳鋏は、髪を大雑把に取り出して単に梳くだけではなく、髪の一部分をピンポイントに狙って、梳鋏の先端だけで梳く用いられ方をされている。最近では、この様な少しづつ梳いて仕上げてゆくことが、理美容技術に求められてきているのである。
ただこの様に注意をして梳鋏の先端だけで作業を進めようとしても、狙った毛束の周辺にある髪も、間違って切ってしまうことがある。技術の高い美容師であればその様な間違いはなくなるが、それでも周辺の髪を切らない様にするには手間や注意が必要である。
【0012】
以上の問題を鑑み、本願発明の目的とするところは、局所的な髪梳きが容易に行える梳鋏を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以上の課題を解決するため本願発明は、2本の刃体が枢着され、前記刃体の少なくとも一本が櫛歯と櫛溝とを交互に設けた櫛刃体である梳鋏であって以下の特徴を有するものである。
即ち請求項1記載の発明では、髪を梳き切るための刃を、前記2本の刃体の長手の先端側に設けると共に、前記刃の設けられていない前記刃体の長手の基端側は、梳鋏を開いた時に互いに向かい合う側の外縁形状が、梳鋏を閉じることにより合わさって前記刃体の表裏方向に貫通する穴部を成す様に形成されることを特徴とする梳鋏。
【0014】
これにより、髪は、梳鋏の先端部分だけで梳くことができる。また、閉じる時に基端寄りで挟まれる状態の髪は、梳鋏を閉じても、刃がないので切られることはない。しかも刃体を閉じても、閉じた2本の刃体の間には穴部が出現するので、髪がここに入り、実際には梳鋏で髪を挟んで掴んでしまうということはない。よって例えば、閉じた梳鋏をそのまま髪から引き抜く場合にも、髪は梳鋏の基端側には挟まってはいないので、抜くことができるのである。
【0015】
ところで、通常の鋏であれば、鋏を開いた状態であっても、図23に示す様に、2本の刃体は刃先が交点Pで触れ合った状態になっている。しかし請求項1記載は梳鋏を開き切った状態では、上述した様な交点Pが存在せず(図1参照)、梳鋏を閉じ操作して、一番基端寄りの櫛歯が棒刃と噛み合う時に、始めて交点が出現するのである(図9の符号P参照)。この場合問題となるの、最初に噛み合った時点ですでに側圧が必要なため、最初の交点になる刃先同士は、互いに相手刃体側に入り込んだ位置状態となっており、その為に、棒刃が櫛歯の受け面から刃表側に外れ、刃先同士が引っかかって、閉じ難い、或いは閉じれなくなってしまうという問題が生じる場合もあるのである。この様に従来の梳鋏であれば、梳鋏を開き切った時から、互いの刃先(櫛歯と棒刃)が交点で側圧を受けながら接触しており、閉じる途中でも側圧に抗しながら交点が連続的に移動することにより滑らかな閉じ操作が実現していたが、請求項1記載の梳鋏では、製造時の仕上げ調整の具合にもよるが、棒刃が櫛歯の受け面から刃表側に外れ引っかかり、その滑らかさを失う可能性が出てくるのである。そのために本願では更に下記の発明を提案した。
【0016】
即ち、請求項2記載の発明では、請求項1記載の梳鋏において、櫛刃体の少なくとも一番基端寄りの櫛歯が、他の櫛歯の先端よりも突き出て形成されると共に、前記基端寄りの櫛歯の刃先を刃裏側から研磨して形成された受け面を設けたものである。そして、前記受け面は梳鋏を閉じる時に相手刃先を受けて前記櫛歯の刃裏に案内する案内歯であることを特徴としている。
【0017】
梳鋏を閉じる時には、一番基端寄りの櫛歯が、相手刃体と最初に噛み合うのであるが、請求項2記載の発明によれば、その噛み合いがスムーズ行える。尚、相手刃体(例えば棒刃)の刃先にも受け面が設けられているのが通常である。しかし受け面同士が当接しただけでは、図27の実線80で示す様に、まだ互いに相手刃体に入り込んだ状態である。そしてさらに閉じると、相手刃体とは、図27の破線81で示す様に、受け面同士ではなく刃裏同士が押し返し合って、相手刃体に入り込まない状態になっている。これにより、次の櫛歯が交点となる時には、互いに相手刃体への入り込みが小さく、よって引っ掛かりの少ない状態となるのである。
尚ここで、入り込んだ相手刃体を押し返すのは、受け面であるため、受け面の傾斜の長さが押し返す量に関連する。よって、相手刃体の入り込みが大きい場合には、1本目の案内歯で半分押し返し、2本目で残りの半分を押し返し、3本目が突き出ていない通常の櫛歯となる様にしてもよい。この様に、突き出して形成された案内歯は、1〜3本などと、適宜に決めればよい。
【0018】
請求項3記載の発明では、請求項1又は2記載の梳鋏において、受け面が、基端側に向けて設けられたことを特徴とする(図4の符号18参照)。
櫛歯が、最初に相手刃体に接触するのは、櫛歯基端側である。よって受け面をこの基端側に向けることにより、相手刃体を確実に受けることができる様になるのである。
【0019】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか記載の梳鋏において、案内歯の刃先形状が傾斜形状に形成されることにより(図12の符号29〜31参照)、髪を切らずに案内歯から逃がすことのできる様に形成されたことを特徴とする。
これにより、梳鋏を閉じる時の最初の交点での閉じ抵抗が軽減される。一般に髪を切る時には、切断の抵抗が閉じ難さとして手に感じられる。ただそれは、通常の梳鋏では気にならない程度であるが、本願梳鋏の様に、閉じる途中で突然交点が出現する本願梳鋏では、最初の噛み合わせに負荷が掛かりやすい状況にある。そんな状況において、本請求項4においては、案内歯を単に相手刃体を受けるためだけで、切断の機能を持たせない様にしたので、最初の交点での閉じ抵抗を少なくすることができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次ぎに本願発明の実施形態を、図をもって説明する。
図1〜2に示すこの梳鋏1は、櫛刃体2と棒刃体3の2本の刃体が枢着されたものであり、また櫛刃体2は櫛歯4と櫛溝5とを交互に設けたものである。
またこれら櫛刃体2と棒刃体3は、髪を梳き切るための刃が、共に刃体2,3の長手の先端6側に設けられている。つまり櫛刃体2は櫛歯4が、棒刃体3は直線刃7がそれぞれの先端6側に設けられている。また刃体2,3の基端8側はこの様な刃は設けられていないが、この基端8側は、梳鋏1を開いた時に互いに向かい合う側9,10の外縁形状が切り欠かれた形状になり、刃体の背11,12側だけが残された形状になっている。その為、梳鋏1を閉じて刃体2,3の先端6側が重なった時には、図2に示す様に、基端8側はこの切り欠かれた形状が合わさって穴部13を形成するのであり、この穴部13は閉じて重なった刃体(櫛刃体2と棒刃体3)の表裏方向に貫通した状態となるのである。
【0021】
また櫛刃体2の櫛歯4は、図3に示す様に、基端8寄りの2本の櫛歯4,4が他の櫛歯4よりも突き出して0.7〜0.8mm程度長くして案内歯14,15にしてある。そして図4に示した様に、他の櫛歯4と同様に案内歯14,15の先端側の刃裏16側が研磨され、棒刃に対する受け面17が設けられている。ただ研磨の際には、櫛歯4を一本々々研磨するのではなく、案内歯14,15を含めた全ての櫛歯4を一つの砥石で一度に研磨して受け面17を設けている。そのため図4〜5に示す様に、基端8寄りの長い案内歯14,15だけは、長い分だけたくさん研磨され、案内歯14,15の受け面17,17の後退量D1は、他の櫛歯の後退量D2よりも大きくなっている。
更に、一番基端寄りの案内歯14だけは、受け面17の基端寄りの上角が、図4に示した様に面取りしてあり、これにより基端に向けられた受け面18を設けてある。
ただ面取りをすると受け面17,18に稜線ができ、相手側の受け面を傷付ける場合もあるので、実際には研磨布などにより研磨して、図6に示す様な丸味のある受け面19を基端に向けて形成するのがよい。
【0022】
以上の梳鋏により、髪を梳く時には、図7に示す様に、頭髪19の中に梳鋏1の先端を差し入れ、目的の毛束を梳くことができる。この時、梳鋏1の基端8側に挟まれた髪は穴部13に入るので切られることもなく、目的の毛束だけを梳くことができる。或いは、図8に示す様に、頭部から取り出した帯状毛束20に対し、その一部だけ(図8の21など)を梳くことができる。この様に、先端6側の櫛歯だけで毛束だけを狙って挟めば、その周囲の髪を間違って挟んでも、穴部13がある為に余分に梳くこともなく、梳く場所をピンポイントで狙うことが容易になる。必要であれば、櫛歯の並び幅をもっと狭くし、梳く場所を更に狭くすることもできる。
【0023】
またこの梳鋏1は、穴部13の存在により、梳鋏1を開いた時には交点がなく、図9に示す様に、閉じる途中で突然交点Pが出現することとなる。この交点Pで、始めて接触する双方の刃先2,3は、互いに相手刃体3,2側に入り込んだ位置関係となっている。しかし櫛刃体2側の最初の交点Pとなる箇所には案内歯14が設けられているので、入り込んだ状態で接触する棒刃体3の刃先を受け面17,18で受けることができる。またこの案内歯14の受け面18は少し基端8側に向けられているので、相手の刃を受けるのに好適な向きとなっていて、交点Pでの刃先同士のぶつかり合いなどの、閉じ抵抗となる要素を抑えることができ、スムーズな噛み合わせで閉じることができる。
【0024】
(実施例2)なお、基端寄りの案内歯は、実施例1の様は突き出させずに、図10の様に他の櫛歯4と同様の長さの案内歯23〜25にしておき、その代わりに、受け面26の後退D3を大きく設ける様にしてもよい。この場合、図11に示す様に、基端寄りの3本の案内歯23〜25の受け面26〜28を基端側に向けさせ、後退量も大きくて設けてある。この受け面26〜28は、研磨布で丸味を持たせてある。この様な案内歯23〜25は、一番基端寄りの案内面26が、一番後退(符号D3)して設けられ、二番目、三番目の案内歯27,28になるにつれて、次第にその後退(符号D4〜D5)が浅くなり、四番目からは案内歯ではなく通常の櫛歯4になっている。これにより閉じ操作により最初の噛み合わせの時にも、深く入り込んだ棒刃体3の刃先を、一番目の大きく後退した受け面26で受けることができ、受けた刃先を2番目の少し浅い後退量の受け面27に導くことができ、三番の受け面28をへて、通常の櫛歯4に引き継ぐことができる。これにより、通常の梳鋏と同様のスムーズな閉じ操作が可能となるのである。
【0025】
(実施例3)図12に示す実施例3の梳鋏は、基端寄りの案内歯が他の櫛歯よりも突き出して長くしてある点が、実施例1の梳鋏と同様である。また案内歯先端の刃裏に受け面が設けられている点も同様である。相違点は、突き出させてある案内歯29〜31先端の刃先形状が、刃体の先端6側に傾斜した湾曲形状になっている点である。この様な傾斜した湾曲形状であると、この案内歯29〜31の先端では髪が滑って逃げるために、切ることができなくなる。その為に、棒刃体との交点がこの案内歯29〜31にある時には、梳鋏の閉じ操作に関する閉じ抵抗が軽くなる。つまり髪を切る時には、必ず切断抵抗が生じ、鋏の閉じ操作をする手に負荷が掛かるものである。ただ通常は支障にならない程度の負荷なのである。しかし本願発明の梳鋏は、閉じる途中で突然に交点が出現するので、その分、閉じ抵抗が大きくなる傾向がある。その為に実施例1〜2でも例を示した様に種々の工夫が成されているが、これらに加え、案内歯では髪を切らない様にし、切断抵抗をなくする様にしたのである。これにより、刃先同士のぶつかり合いによる抵抗を弱めただけでなく、切断抵抗も無くしたので、最初の交点での閉じ抵抗が一層軽減され、よりスムーズな閉じ操作が可能となるのである。
【0026】
(実施例4)図13〜14に示す実施例4の梳鋏32は、櫛刃体33と棒刃34体を枢着した点は、実施例1と同様であるが、櫛刃体33だけは基端8寄りの約半分が切り欠かれており、棒刃体34の方は切り欠かれていない。櫛刃体33の切り欠き35に対応する棒刃体34の箇所36は、単に板状になっていて、刃付けはしてない。
この梳鋏32を閉じると図14の様に穴部37ができ、この穴部37に入った髪は切られることも、挟んで掴まれることもない。
【0027】
なお本願発明は上記実施例に限るものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、どの様に実施されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この図は、実施例1の梳鋏を開いた図である。
【図2】この図は、図1の梳鋏を閉じた図である。
【図3】この図は、案内歯を説明する図である。
【図4】この図は、櫛歯や櫛歯の一部である案内歯に設けられた受け面を説明する図である。
【図5】この図は、受け面の図である。
【図6】この図も、受け面の図である。
【図7】この図は、実施例1の梳鋏の用い方の図である。
【図8】この図も、梳鋏の用い方の図である。
【図9】この図は、最初の交点の説明の図である。
【図10】この図は、実施例2の梳鋏を開いた図である。
【図11】この図は、受け面の図である。
【図12】この図は、実施例3の梳鋏の案内歯を説明する図である。
【図13】この図は、実施例4の梳鋏を開いた図である。
【図14】この図は、図13の梳鋏を閉じた図である。
【図15】この図は、従来の一般的な梳鋏を開いた図である。
【図16】この図は、髪を部分的に梳く様子の説明図である。
【図17】この図は、従来のカット鋏を開き、その刃体同士が向かい合った図である。
【図18】この図は、従来のカット鋏の刃先には受け面が設けてあることを説明する図である。
【図19】この図は、従来の梳鋏の櫛歯の先端を説明する図である。
【図20】この図は、梳鋏を開いた時の、棒刃と櫛刃の向かい合う様子と、両方の刃体に受け面が設けてある様子の説明図である。
【図21】この図は、従来の梳鋏は閉じる時に棒刃が櫛歯に引っかかる、と云うことを説明する図である。
【図22】この図は、櫛歯の受け面を説明する図である。
【図23】この図は、従来のカット鋏における交点の特性を説明する図である。
【図24】この図は、カット鋏の側圧を説明する図である。
【図25】この図も、側圧を説明する図である。
【図26】この図は、交差する刃体の先端側が、相手刃体の側に入り込む様子の説明図である。
【図27】この図は、鋏を閉じる時には、刃体が噛み合う前後で、刃体の入り込みま位置関係が変わることを説明する図である。
【符号の説明】
【0029】
1 梳鋏
2 櫛刃体
3 棒刃体
4 櫛歯
5 櫛溝
6 刃体(櫛刃体及び棒刃体)の先端
7 棒刃体の直線刃
8 刃体の基端
9、10 刃体の基端側の部位であって、梳鋏を開いた時に向かい合う側
11、12 刃体の背
13 穴部
14、15 案内歯
16 刃裏
17、18、19 受け面
23、24、25 案内歯
29、30、31 案内歯
32 梳鋏
33 櫛刃体
34 棒刃体
35 切り欠き
37 穴部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本の刃体が枢着され、前記刃体の少なくとも一本が櫛歯と櫛溝とを交互に設けた櫛刃体である梳鋏であって、
髪を梳き切るための刃を、前記2本の刃体の長手の先端側に設けると共に、
前記刃の設けられていない前記刃体の長手の基端側は、梳鋏を開いた時に互いに向かい合う側の外縁形状が、梳鋏を閉じることにより合わさって前記刃体の表裏方向に貫通する穴部を成す様に形成されることを特徴とする梳鋏。
【請求項2】
櫛刃体の少なくとも一番基端寄りの櫛歯が、
他の櫛歯の先端よりも突き出て形成されると共に、前記基端寄りの櫛歯の刃先を刃裏側から研磨して形成された受け面を設け、
前記受け面は梳鋏を閉じる時に相手刃先を受けて前記櫛歯の刃裏に案内する案内歯であることを特徴とする請求項1記載の梳鋏。
【請求項3】
受け面が、基端側に向けて設けられたことを特徴とする請求項1又は2記載の梳鋏。
【請求項4】
案内歯の刃先形状が傾斜形状に形成されることにより、髪を切らずに案内歯から逃がすことのできる様に形成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の梳鋏。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate


【公開番号】特開2006−191940(P2006−191940A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−3317(P2005−3317)
【出願日】平成17年1月11日(2005.1.11)
【出願人】(390038209)足立工業株式会社 (24)
【Fターム(参考)】