説明

棒状体あるいは紐状体の保持具

【課題】被保持体に対する仮止めと、組立時における正規の位置への移動とを簡単に行える棒状体あるいは紐状体の保持具を提供する。
【解決手段】棒状体あるいは紐状体(ケーブル9)の保持具(1)を、被取付体(車体18)に対する結合部(クリップ7)と、棒状あるいは紐状をなす被保持体を比較的緊密に保持する第1保持部(10)と、被保持体を所定の空所をもって保持する第2保持部(11)とを有し、第1保持部と第2保持部との間に、被保持体が移動可能な隙間(G)を空けたことを特徴とするものとする。これにより、第1保持部にて被保持体を仮止めして運搬し、対象物に組み付けた後、隙間を経て第2保持部に被保持体を移動させ、正規の位置で保持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状体あるいは紐状体の保持具に関し、特にサブアセンブリ状態で運搬する際に棒状体あるいは紐状体に仮止めすることのできる保持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の電動スライドドアにおいては、電動モータの回転力でドアを開閉駆動するために、電動モータとドアとの間が駆動力伝達ケーブルで連結されている。そしてドアあるいは車体に対し所定の空所をもってケーブルを保持するために、ケーブルを挿通させるリング状部分を備えた保持具が用いられている。
【0003】
一方、自動車の組立ラインでの部品管理を簡略化するために、電動モータとケーブルとからなる駆動装置のサブアセンブリは、ケーブルに保持具を予め取り付けた状態で運搬される。この際にケーブルの所定の位置から保持具が大きく移動しないように仮止めする必要があり、従来は、この仮止め手段として、粘着テープが用いられていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、この従来の仮止め手法によると、適宜な長さに切り分けた粘着テープを貼り付ける作業や、剥がし取った粘着テープを廃棄する作業が必要である。これらの作業は、自動車の製造には何ら寄与しない無駄な作業なので、改善が望まれていた。
【0005】
本発明は、このような従来技術の不都合を解消すべく案出されたものであり、その主な目的は、被保持体に対する仮止めと、組立時における正規の位置への移動及び保持とを簡単に行える棒状体あるいは紐状体の保持具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために本発明の請求項1は、棒状体あるいは紐状体(例えばケーブル9)の保持具(1)を、被取付体(例えば車体18)に対する結合部(クリップ7)と、棒状あるいは紐状をなす被保持体を比較的緊密に保持する第1保持部(10)と、被保持体を所定の空所をもって保持する第2保持部(11)とを有し、第1保持部と第2保持部との間に、被保持体が移動可能な隙間(G)を空けたことを特徴とするものとした。これにより、第1保持部にて被保持体を仮止めして運搬し、対象物に組み付けた後、隙間を経て第2保持部に被保持体を移動させ、正規の位置で保持させることができる。
【0007】
また本発明の請求項2は、一端をヒンジ(6)を介して接続され且つ他端に相互係合手段(凸片2、フック4)を備えた可動部(3)と固定部(5)との間に第1及び第2保持部を形成するものとし、請求項3は、所定の力を加えると隙間を広くする向きに弾性変形する押さえ片(12)を第1保持部に設けるものとし、そして請求項4は、被保持体の軸線に直交する向きの突条(14)を第1保持部に設けるものとした。
【発明の効果】
【0008】
このような本発明によれば、被保持体に対する保持具の仮止めと、組立時における正規の位置への移動とを簡単に行うことができるので、無駄な作業を省き、生産性の向上に貢献することができる。特に一端をヒンジ接続した固定部と可動部とからなるものとして第1及び第2保持部を開閉可能とすることにより、被保持体に対する保持具の装着容易性が高められ、所定の力が加わると弾性変形する押さえ片を設けることで外力が加わらない状態での仮止め保持の確実性が高められ、被保持体の軸線に直交する向きの突条によって被保持体の軸線上でのずれ止めを確実化し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に添付の図面を参照して本発明について詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明によるケーブル用保持具の全体を示す斜視図である。この保持具1は、弾性に富む合成樹脂材で一体成型されたものであり、断面形状が略矢尻形をなす凸片2が一端に形成された可動部3と、凸片2と弾発係合するフック4が一端に形成された固定部5との他端同士を、薄肉のヒンジ6を介して互いに連結した構成を採っている。また固定部5には、例えば自動車の車体などの被取付体に対して弾発的に結合するクリップ7が一体形成されている。そして凸片2とフック4とを相互に係合させて固定部5に可動部3を接合すると、図2に示すように、アウタチューブ8を被着してなるケーブル9を比較的緊密に保持し得る第1保持部10と、アウタチューブ8を被着してなるケーブル9を所定の空所をもって(比較的緩く)保持し得る第2保持部11とが、可動部3と固定部5との間に画定されるようになっている。
【0011】
可動部3における第1保持部10の一部をなす部分には、アウタチューブ8の外形輪郭に対応した半円形の押さえ片12が形成されている。この押さえ片12は、可動部3のヒンジ6の近傍にコ字形の切り込み13を入れることで形成されており、弾性変形可能になっている。そして固定部5における第1保持部10の一部をなす部分には、ケーブル9の軸線に直交する向きの突条14が形成されている。
【0012】
固定部5に一体成型されたクリップ7は、固定部5から突出された脚部15と、該脚部15の遊端からV字形に拡開して延出された一対の弾性係止片16とからなり、矢尻形をなしており、一対の弾性係止片16の遊端同士間が弾性的に縮径可能になっている。また脚部15の基部には、皿ばね部17が形成されている。
【0013】
図1に示すように、可動部3を開いた状態でヒンジ6の近傍にケーブル9を載せ、次いで可動部3を閉じて凸片2をフック4に係合させる。ここで第1保持部10の可動部3側部分には、その一部が半円形をなす押さえ片12が形成されているので、固定部5側に形成された突条14がアウタチューブ8に食い込むことと相俟って、第1保持部10に比較的緊密にケーブル9が保持される(図2参照)。従って、ケーブル9は、外力が加わらない限り第1保持部10にしっかりと仮止めされ、運搬時にずれることが防止される。
【0014】
このケーブル9に仮止めされた状態のまま、車体18に設けられた孔19にクリップ7を挿入して保持具1を車体18に結合させた後、ケーブル9に所定の力を加えて仮止め位置から第2保持部11内の実使用位置へとケーブル9をずらすと、押さえ片12が外向きに弾性変形して第1保持部10と第2保持部11との間の隙間Gが広くなるので、ケーブル9の軸線に直交する向きに、つまり大径の第2保持部11へとケーブル9を容易に移動させることができる(図3参照)。
【0015】
このようにして、駆動装置サブアセンブリの運搬中にケーブル9に仮止めされた保持具1がずれることがなく、駆動装置を車体に取り付けた後は、正規の保持位置である第2保持部11へとケーブル9を移動させ、ケーブル9を所定の空所をもって(緩く)保持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明に係る保持具は、比較的簡単に外せる仮止め機能を有し、フレキシブルケーブルのみならず、ロッドや電線の保持にも有用である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による保持具の全体斜視図である。
【図2】ケーブルに仮止めされた保持具を車体に結合させる様子を示す側面図である。
【図3】ケーブルを仮止め位置から正規位置へ移動させる様子を示す側面図である。
【符号の説明】
【0018】
1 保持具
2 凸片(相互係合手段)
3 可動部
4 フック(相互係合手段)
5 固定部
6 ヒンジ
7 クリップ
9 ケーブル(被保持体)
10 第1保持部
11 第2保持部
12 押さえ片
14 突条
18 車体(被取付体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付体に対する結合部と、棒状あるいは紐状をなす被保持体を比較的緊密に保持する第1保持部と、前記被保持体を所定の空所をもって保持する第2保持部とを有し、前記第1保持部と前記第2保持部との間に、前記被保持体が移動可能な隙間を空けたことを特徴とする棒状体あるいは紐状体の保持具。
【請求項2】
前記第1及び第2保持部は、一端同士がヒンジを介して接続され且つ他端に相互係合手段を備えた固定部と可動部との間に形成されることを特徴とする請求項1に記載の棒状体あるいは紐状体の保持具。
【請求項3】
前記第1保持部には、所定の力を加えると隙間を広くする向きに弾性変形する押さえ片が設けられることを特徴とする請求項1若しくは2に記載の棒状体あるいは紐状体の保持具。
【請求項4】
前記第1保持部には、前記被保持体の軸線に直交する向きの突条が設けられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の棒状体あるいは紐状体の保持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−64001(P2006−64001A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−243967(P2004−243967)
【出願日】平成16年8月24日(2004.8.24)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】