説明

棚設備

【課題】昇降自在に吊持された棚の停止位置を高精度に制御することができる棚設備を提供する。
【解決手段】棚設備10は、棚11と、棚11を昇降自在に吊持する吊持材12と、吊持材12を送り出すことにより、棚11を昇降させる駆動機構13と、予め定められた高さにおける棚11の有無を検出する棚検出器14と、駆動機構13による吊持材12の送り出し量を検出する送出量検出器15と、駆動機構13を制御する制御部20とを備え、制御部20は、棚検出器14によって棚11が検出された際に送出量検出器15によって検出される送り出し量に基づいて、駆動機構13を制御して棚11を停止させる停止制御部21を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降自在に吊持された棚を備える棚設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、昇降自在に吊持された棚によって、コンベアにより搬送された物品をすくい取ることができる棚設備が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の棚設備は、自動倉庫における入庫側バッファとして機能している。
【0003】
このような棚設備は、予め定められた高さにおける棚の有無を検出することにより、予め定められた高さに棚を停止させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−359431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の棚設備では、棚の有無を検出できる上下方向の精度よりも高精度に棚の停止位置を制御することができない。すなわち、従来の棚設備は、例えば予め定められた高さに棚を停止させる場合、棚の上面と下面との間のどこかが予め定められた高さに停止するように、棚の停止位置を制御することができる。しかし、従来の棚設備は、棚の上面と下面との所定位置(例えば、上下方向の中央位置)が予め定められた高さに停止するように、棚の停止位置を制御することができない。
【0006】
そこで、本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、昇降自在に吊持された棚の停止位置を高精度に制御することができる棚設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る棚設備は、棚と、前記棚を昇降自在に吊持する吊持材と、前記吊持材を送り出すことにより、前記棚を昇降させる駆動機構と、予め定められた高さにおける前記棚の有無を検出する棚検出器と、前記駆動機構による前記吊持材の送り出し量を検出する送出量検出器と、前記駆動機構を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記棚検出器によって前記棚が検出された際に前記送出量検出器によって検出される送り出し量に基づいて、前記駆動機構を制御して前記棚を停止させる停止制御部を有する。
【0008】
これにより、棚検出器によって棚が検出された際に送出量検出器によって検出される送り出し量を用いて、棚の停止位置を高精度に制御することができる。
【0009】
また、前記送出量検出器は、前記吊持材が所定の基準位置から送り出された量を前記送り出し量として検出し、前記制御部は、さらに、前記棚が前記予め定められた高さに位置するときに検出される送り出し量の基準値を記憶している記憶部と、前記棚検出器によって前記棚が検出されている間に前記送出量検出器によって検出された送り出し量と、前記記憶部に記憶された基準値との相違度が許容値未満であるか否かを判定し、判定結果を出力する判定部とを有することが好ましい。
【0010】
これにより、吊持材の伸び又は縮みを検出することができるので、吊持材の伸び又は縮みが許容値を超える場合に警報などを出力することができる。
【0011】
また、前記吊持材は、前記棚の前後左右の4点をそれぞれ吊持する4つの吊持材を有し、前記棚検出器は、前記棚の前後左右の4点のそれぞれに対応する位置において、前記棚の有無を検出し、前記送出量検出器は、前記棚の前方の2点を吊持する2つの吊持材について、前記駆動機構による送り出し量を検出することが好ましい。
【0012】
これにより、棚の前方の上下方向の位置を高精度に制御することができる。したがって、例えば棚に載置された物品を搬出入する方向が前方である場合に、物品を搬出入する方向における棚の上下方向の位置を、2つの送出量検出器によって高精度に制御することができる。
【0013】
また、前記制御部は、さらに、前記予め定められた高さに前記棚を停止させる場合に、前記予め定められた高さよりも所定高さだけ低い高さに対応する送り出し量が検出されたとき、前記棚の上昇速度が所定速度以下となるように前記駆動機構を制御する速度制御部を有することが好ましい。
【0014】
これにより、棚を停止させる前に速度が所定速度以下となるように制御することができるので、棚の停止位置をさらに高精度に制御することができる。また、高速に棚を移動させる場合であっても、急停止させることなく棚を停止させることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
以上の説明から明らかなように、本発明の一態様に係る棚設備は、棚検出器によって棚が検出された際に送出量検出器によって検出される送り出し量を用いて、棚の停止位置を高精度に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る棚設備の正面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る棚設備の断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る棚設備が備える棚検出器を説明するための図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る基準値テーブルの一例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る棚設備において、上昇中の棚を棚定位置に停止させるときの動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態に係る棚設備の動作の一例を説明するための図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る棚設備の動作の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る棚設備の正面図である。また、図2は、本発明の実施の形態に係る棚設備の断面図である。具体的には、図2は、図1に示す棚設備におけるA−A断面図である。また、図3は、本発明の実施の形態に係る棚設備が備える棚検出器を説明するための図である。
【0018】
図1に示すように棚設備10は、棚11と、吊持材12と、駆動機構13と、棚検出器14と、送出量検出器15と、制御部20とを備える。
【0019】
棚11は、昇降自在な棚であり、下方から順に第1〜第8の棚111〜118を有する。この棚11には、図2に示すように左右方向(X軸方向)に伸びる孔部33が形成される。そして、コンベア31は、棚11が昇降する際にこの孔部33を通過する。したがって、コンベア31の搬送面の下方に積み重ねられた棚11が上方へ上昇した場合、コンベア31に載置された物品32が棚11にすくい取られる。
【0020】
なお、棚11に形成される孔部33の形状は、必ずしも図2に示した形状である必要はなく、コンベア31が通過可能な形状であって、物品32を載置可能な形状であればよい。例えば、コンベア31がローラコンベアである場合、孔部33は、コンベア31が有するローラが通過可能なように、前後方向(Y軸方向)に伸びる複数の孔部を有すればよい。
【0021】
吊持材12は、例えばチェーンであり、第1〜第8の棚111〜118を連結して吊持する。吊持材12は、各棚の前後左右の4点をそれぞれ吊持する第1〜第4の吊持材121〜124を有する。
【0022】
駆動機構13は、例えばモータ及び歯車などによって実現され、吊持材12を上方又は下方に送り出すことにより、棚11を上昇又は下降させる。具体的には、駆動機構13は、棚11の左方を吊持する第1及び第2の吊持材121、122を上方又は下方へ送り出す第1の駆動機構131と、棚11の右方を吊持する第3及び第4の吊持材123、124を上方又は下方へ送り出す第2の駆動機構132とを有する。
【0023】
棚検出器14は、予め定められた高さ(以下、「棚定位置」という)における棚11の有無を検出する。また、棚検出器14は、支柱17の棚定位置に対応する高さに設置される。具体的には、図2に示すように、棚検出器14は、棚11の前後左右の4点において棚11の有無を検出する第1〜第4の棚検出器141〜144を有する。
【0024】
さらに具体的には、棚検出器14は、棚11の側面に設けられた被検出体16を検出することにより、棚11の有無を検出する。すなわち、棚検出器14は、図3に示すように、発光部18が出力した光(例えば赤外線)を受光部19が検出できるか否かにより、被検出体16を検出する。
【0025】
つまり、棚検出器14は、被検出体16によって光が遮られることにより光が検出されない場合には、棚11が棚定位置に有るとして検出し、光が検出される場合には、棚11が棚定位置に無いとして検出する。すなわち、制御部20は、棚検出器14のみを用いて棚11を停止させる場合、被検出体16の上下方向(Z軸方向)の幅W以上の精度で棚11を停止させることができない。
【0026】
送出量検出器15は、駆動機構13による吊持材12の送り出し量を検出する。具体的には、送出量検出器15は、例えば、吊持材12を送り出すための歯車(例えば、スプロケット)の回転量を検出することにより、吊持材12の送り出し量を検出するロータリーエンコーダである。この場合、送出量検出器15は、例えば、ロータリーエンコーダから得られるパルスをカウントすることにより、吊持材12の送り出し量を検出する。
【0027】
より具体的には、送出量検出器15は、所定の基準位置から吊持材12が送り出された量を送り出し量として検出する。ここで所定の基準位置とは、棚11の位置を特定するために基準となる吊持材12の位置である。例えば、所定の基準位置は、すべての棚11がコンベア31の搬送面の下方に積み重ねられているときにおける吊持材12の位置である。
【0028】
また、送出量検出器15は、棚11の前方を吊持する第1及び第3の吊持材121、123の送り出し量をそれぞれ検出する第1及び第2の送出量検出器151、152を有する。なお、送出量検出器15は、被検出体16の上下方向の幅Wよりも高い精度で送り出し量を検出できる。
【0029】
制御部20は、CPU及びメモリ、IC、又はLSIなどによって実現される処理部であって、駆動機構13を制御する。図1に示すように、制御部20は、停止制御部21と、判定部22と、速度制御部23と、記憶部24とを有する。
【0030】
停止制御部21は、棚検出器14によって棚11が検出された際に送出量検出器15によって検出される送り出し量に基づいて、駆動機構13を制御して棚11を停止させる。
【0031】
具体的には、停止制御部21は、棚検出器14によって棚11が検出された時に送出量検出器15によって検出された送り出し量に基づいて、棚検出器14が棚11を検出できる精度に応じた送り出し量だけ吊持材12を駆動機構13に送り出させることにより、棚11を停止させる。
【0032】
より具体的には、停止制御部21は、例えば、棚11が検出された時に検出された送り出し量に対してW/2に相当する送り出し量を加算した送り出し量を目標値として、棚11を停止させる。これにより、停止制御部21は、棚11の上下方向の中央位置が棚定位置に位置するように、棚11を停止させることができる。
【0033】
なお、停止制御部21は、必ずしも、棚11の上下方向の中央位置が棚定位置に位置するように棚11を停止させる必要はない。例えば、停止制御部21は、棚11の側面の上端あるいは下端が棚定位置に位置するように棚11を停止させてもよい。
【0034】
判定部22は、棚検出器14によって棚11が検出されている間に送出量検出器15によって検出された送り出し量と、記憶部24に記憶された基準値との相違度が、許容値を超えるか否かを判定する。そして、判定部22は、判定結果を出力する。
【0035】
具体的には、判定部22は、例えば、停止制御部21によって棚11が停止された時に検出された送り出し量と基準値との差分絶対値を相違度として算出し、算出した差分絶対値が許容値を超えるか否かを判定する。そして、判定部22は、差分絶対値が許容値を超える場合、警報を出力する。なお、判定部22は、例えば、停止制御部21によって棚11が停止された時に検出された送り出し量と基準値との比率を相違度として算出してもよい。
【0036】
速度制御部23は、棚定位置に棚11を停止させる場合に、棚定位置よりも所定高さだけ低い高さに対応する送り出し量(以下、「速度制御用送出量」という)が検出されたとき、棚11の上昇速度が所定速度以下となるように駆動機構13を制御する。
【0037】
具体的には、速度制御部23は、例えば、基準値テーブル25を参照することにより、棚定位置に停止させるべき棚11に対応する基準値を読み出す。そして、速度制御部23は、読み出した基準値から一定値を減算した値を速度制御用送出量として用いて、駆動機構13を制御する。
【0038】
なお、所定速度は、棚検出器14が棚11の有無を検出することができる速度以下の速度である。また、所定速度とは、棚11を停止させたときに急停止とならない速度であり、例えば、停止の際に物品32の位置が所定距離を超えて移動したりしない速度である。
【0039】
記憶部24は、棚11が棚定位置に位置するときに検出される送り出し量の基準値が第1〜第8の棚111〜118ごとに格納された基準値テーブル25を記憶している。
【0040】
図4は、本発明の実施の形態に係る基準値テーブルの一例を示す図である。
基準値テーブル25には、棚11を特定するための棚IDに対応付けて、第1基準値と第2基準値と許容値とが格納されている。第1基準値は、第1の駆動機構131による送り出し量の基準値であり、第2基準値は、第2の駆動機構132による送り出し量の基準値である。また、許容値は、第1の駆動機構131及び第2の駆動機構132の双方に対応する値であり、棚11が棚定位置に停止されたときに検出される送り出し量と基準値との差分絶対値の上限を示す値である。
【0041】
例えば、図4に示す基準値テーブル25は、棚IDが「8」である第8の棚118に対応する第1基準値、第2基準値及び許容値が、「500」、「500」及び「50」であることを示す。
【0042】
なお、図4に示すように、基準値テーブル25には、下段の棚11に対応する許容値ほど小さな値の許容値が格納されることが好ましい。これは、吊持材12の伸び縮みによって影響を受ける棚11が棚定位置に停止された棚11よりも上段の棚11のみであるので、下段の棚11ほど吊持材12の伸び縮みによって影響を受ける棚11が多いからである。特に、最上段の棚(ここでは第8の棚118)は、当該棚よりも上段の棚が存在しないので、許容値は、他の棚よりも特に大きく設定されてもよい。
【0043】
次に、以上のように構成された本実施の形態に係る棚設備10の動作について説明する。
【0044】
図5は、本発明の実施の形態に係る棚設備において、上昇中の棚を棚定位置に停止させるときの動作を示すフローチャートである。
【0045】
まず、送出量検出器15は、吊持材12の上方への送り出し量を検出する(S102)。続いて、速度制御部23は、検出された送り出し量が速度制御用送出量以上であるか否かを判定する(S104)。ここで、送り出し量が速度制御用送出量未満である場合(S104のNo)、ステップS102に戻る。
【0046】
一方、送り出し量が速度制御用送出量以上である場合(S104のYes)、速度制御部23は、棚11の上昇速度が所定速度を超えないように、駆動機構13を制御する(S106)。続いて、停止制御部21は、棚検出フラグが1であるか否かを判定する(S108)。なお、棚検出フラグの初期値は0である。
【0047】
ここで、棚検出フラグが0である場合(S108のNo)、停止制御部21は、棚定位置に停止させようとしている棚11が棚検出器14により検出されているか否かを判定する(S110)。ここで、棚11が検出されていない場合(S110のNo)、ステップS102に戻って、送出量検出器15は、吊持材12の上方への送り出し量を検出する(S102)。一方、棚11が検出されている場合(S110のYes)、停止制御部21は、棚11を停止させるための目標値を算出する(S112)。具体的には、停止制御部21は、検出された送り出し量に対して、被検出体16の上下方向の幅の半分(W/2)に対応する送り出し量を加算した値を目標値として算出する。次に、停止制御部21は、棚検出フラグを1に更新し(S114)、ステップS102に戻って、送出量検出器15は、吊持材12の上方への送り出し量を検出する(S102)。
【0048】
一方、棚検出フラグが1である場合(S108のYes)、停止制御部21は、検出された送り出し量が算出された目標値以上であるか否かを判定する(S116)。ここで、送り出し量が目標値未満である場合(S116のNo)、ステップS102に戻って、送出量検出器15は、吊持材12の上方への送り出し量を検出する(S102)。一方、送り出し量が目標値以上である場合(S116のYes)、停止制御部21は、駆動機構13を制御することにより、棚11を停止させる(S118)。
【0049】
続いて、判定部22は、基準値テーブル25を参照することにより、検出された送り出し量と、基準値テーブル25に格納された基準値との差分絶対値が許容値未満であるか否かを判定する(S120)。ここで、差分絶対値が許容値未満である場合(S120のYes)、判定部22は、検出された送り出し量に従って基準値テーブル25に格納された基準値を更新し(S122)、処理を終了する。一方、差分絶対値が許容値以上である場合(S120のNo)、判定部22は、警報を出力し(S124)、処理を終了する。
【0050】
このように、棚設備10は、ステップS102からステップS124までの処理を実行することにより、棚定位置に棚11を高精度に停止させることができる。
【0051】
次に、さらに詳細に、図5に示した棚設備10の動作について、図6及び図7を用いて説明する。
【0052】
図6は、本発明の実施の形態に係る棚設備の動作の一例を説明するための図である。具体的には、図6は、第8の棚118を棚定位置に停止させたときにおける棚設備10の動作の一例を説明するための図である。
【0053】
図6(a)には、第8の棚118を棚定位置に停止させたときに検出されている、第1の駆動機構131及び第2の駆動機構132による送り出し量が、「500」及び「540」であることが示されている。つまり、図6(a)では、第2の駆動機構132と第8の棚118との間において、第3の吊持材123に伸びが発生したことにより、第2の駆動機構132による送り出し量が基準値よりも増加している。
【0054】
ここで、第1の駆動機構131による送り出し量「500」と、図6(b)に示す基準値テーブル25に格納された第1基準値「500」との差分絶対値「0」は、許容値「50」未満である。また、第2の駆動機構132による送り出し量「540」と、図6(b)に示す基準値テーブル25に格納された第2基準値「500」との差分絶対値「40」も、許容値「50」未満である。つまり、第1及び第3の吊持材121、123の伸び縮みの量は許容値よりも小さい。
【0055】
したがって、判定部22は、図6(c)に示すように、検出された送り出し量に従って基準値テーブル25に格納された基準値を更新する。つまり、判定部22は、検出された送り出し量に対応する棚11である第8の棚118の基準値を、検出された送り出し量に更新する。さらに、判定部22は、第8の棚118より下段の棚11(第1〜第7の棚111〜117)の基準値を、差分絶対値を加算した値に更新する。
【0056】
このように、棚設備10は、差分絶対値が許容値より小さい場合、その差分絶対値に従って基準値を更新することにより、吊持材12の伸び縮みを基準値に反映させることができるので、さらに高精度に棚11を棚定位置に停止させることができる。
【0057】
図7は、本発明の実施の形態に係る棚設備の動作の一例を説明するための図である。具体的には、図7は、第5の棚115を棚定位置に停止させたときにおける棚設備10の動作の一例を説明するための図である。
【0058】
図7(a)には、第5の棚115を棚定位置に停止させたときに検出されている、第1の駆動機構131及び第2の駆動機構132による送り出し量が、「2001」及び「2020」であることが示されている。つまり、図7(a)では、第6の棚116と第5の棚115との間において、第3の吊持材123に伸びが発生したことにより、第2の駆動機構132による送り出し量が基準値よりも増加している。
【0059】
ここで、第1の駆動機構131による送り出し量「2001」と、図6(b)に示す基準値テーブル25に格納された第1基準値「2000」との差分絶対値「1」は、許容値「16」未満である。しかしながら、第2の駆動機構132による送り出し量「2020」と、図6(b)に示す基準値テーブル25に格納された第2基準値「2000」との差分絶対値「20」は、許容値「16」以上である。
【0060】
したがって、判定部22は、図7(c)に示すように警報を出力する。つまり、判定部22は、吊持材12に伸び縮みが発生したことにより、第5の棚115よりも上段の棚11(第6〜第8の棚116〜118)の停止位置の精度が低下したことを示す警報を出力することができる。
【0061】
以上のように、本実施の形態に係る棚設備10は、棚検出器14によって棚11が検出された時に送出量検出器15によって検出された吊持材12の送り出し量を用いて、棚11の停止位置を高精度に制御することができる。
【0062】
また、棚設備10は、送り出し量と基準値とを相違度を用いて、吊持材の伸び又は縮みを検出することができるので、吊持材の伸び又は縮みが許容値を超える場合に警報などを出力することができる。
【0063】
また、棚設備10は、第1及び第3の吊持材121、123の送り出し量を第1及び第2の送出量検出器151、152によって検出することにより、棚11の前方の上下方向の位置を高精度に制御することができる。したがって、棚設備10は、例えば、棚11に載置された物品32を搬出入する方向が前方である場合に、物品を搬出入する方向における棚11の上下方向の位置を、2つの送出量検出器15によって高精度に制御することができる。
【0064】
また、棚設備10は、棚11を停止させる前に速度が所定速度以下となるように制御することができるので、棚11の停止位置をさらに高精度に制御することができる。また、棚設備10は、高速に棚を移動させる場合であっても、急停止させることなく棚を停止させることが可能となる。
【0065】
以上、本発明の一態様に係る棚設備について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものも本発明の範囲内に含まれる。
【0066】
例えば、上記実施の形態において、棚11ごとに許容値は1つであったが、2つ以上であってもよい。その場合、許容値ごとの判定結果に応じて、棚設備10は動作を変更すればよい。例えば、第1の許容値と、第1の許容値よりも値が大きい第2の許容値とを用いて、棚設備10は、相違度が第1の許容値以上第2の許容値未満である場合に注意を表す警報を出力し、相違度が第2の許容値以上である場合に異常を表す警報を出力すればよい。これにより、棚設備10は、吊持材12の伸び縮みによる異常に関する情報をより早期に出力することができ、棚設備10の異常停止を抑制することができる。
【0067】
また、上記実施の形態において、基準値テーブル25には、棚11ごとに送り出し量の絶対値が基準値として格納されていたが、上段の棚11との送り出し量の相対値が基準値として格納されてもよい。この場合、棚設備10は、基準値を更新する際に、棚定位置に停止された棚11の基準値のみを更新すればよい。
【0068】
また、上記実施の形態において、制御部20は、停止制御部21、判定部22、速度制御部23、及び記憶部24のすべてを有していたが、必ずしもすべてを有する必要はない。例えば、制御部20は、停止制御部21、判定部22、速度制御部23、及び記憶部24のうち、停止制御部21のみを有してもよい。この場合であっても、制御部20は、棚検出器14によって棚11が検出された際に送出量検出器15によって検出される送り出し量を用いて、棚11の停止位置を高精度に制御することができる。
【0069】
また、上記実施の形態では、棚11を上昇させるときの動作を中心に説明したが、棚設備10は、棚11を下降させるときも上記と同様の制御を行なうことにより、棚11の停止位置を高精度に制御することができる。
【0070】
また、上記本実施の形態では、送出量検出器15は、所定の基準位置から吊持材12が送り出された量を送り出し量として検出したが、必ずしもこのように送り出し量を検出する必要はない。例えば、送出量検出器15は、棚検出器14によって棚11が検出された時から吊持材12が送り出された量を送り出し量として検出してもよい。この場合、停止制御部21は、送出量検出器15によって検出される送り出し量が、棚検出器14の検出精度に応じた送り出し量(例えば、被検出体16の幅Wの半分に応じた送り出し量)と一致するように、棚11を停止させればよい。つまり、停止制御部21は、棚検出器14によって棚11が検出された後に、送出量検出器15によって検出される送り出し量に基づいて、棚検出器14が棚11を検出できる精度に応じた送り出し量だけ吊持材12を駆動機構13に送り出させることにより、棚11を棚定位置に停止させればよい。このような構成であっても、棚設備10は、棚11の停止位置を高精度に制御することができる。
【0071】
また、本発明は、このような棚設備として実現することができるだけでなく、このような棚設備が備える制御部の動作をステップとする棚制御方法として実現することもできる。また、本発明は、そのような棚制御方法に含まれるステップをCPU(Central Processing Unit)が実行することにより棚制御方法をコンピュータに実行させるプログラムとして実現することもできる。そして、そのようなプログラムは、CD−ROMもしくは不揮発性メモリ等の記録媒体、又はインターネット等の伝送媒体を介して配信することができるのは言うまでもない。さらに、棚制御方法に含まれる1以上のステップは、ロジック回路などのIC(Integrated Cercuit)によって実行されてもよい。
【0072】
また、本発明は、棚設備が備える制御部の機能の一部を実現する半導体集積回路(LSI:Large Scale Integration)として実現されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の一態様に係る棚設備は、昇降自在に吊持された棚の停止位置を高精度に制御することができる棚設備に適用することができる。
【符号の説明】
【0074】
10 棚設備
11 棚
12 吊持材
13 駆動機構
14 棚検出器
15 送出量検出器
16 被検出体
17 支柱
18 発光部
19 受光部
20 制御部
21 停止制御部
22 判定部
23 速度制御部
24 記憶部
25 基準値テーブル
31 コンベア
32 物品
33 孔部
111 第1の棚
112 第2の棚
113 第3の棚
114 第4の棚
115 第5の棚
116 第6の棚
117 第7の棚
118 第8の棚
121 第1の吊持材
122 第2の吊持材
123 第3の吊持材
124 第4の吊持材
131 第1の駆動機構
132 第2の駆動機構
141 第1の棚検出器
142 第2の棚検出器
143 第3の棚検出器
144 第4の棚検出器
151 第1の送出量検出器
152 第2の送出量検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棚と、
前記棚を昇降自在に吊持する吊持材と、
前記吊持材を送り出すことにより、前記棚を昇降させる駆動機構と、
予め定められた高さにおける前記棚の有無を検出する棚検出器と、
前記駆動機構による前記吊持材の送り出し量を検出する送出量検出器と、
前記駆動機構を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記棚検出器によって前記棚が検出された際に前記送出量検出器によって検出される送り出し量に基づいて、前記駆動機構を制御して前記棚を停止させる停止制御部を有する
棚設備。
【請求項2】
前記送出量検出器は、前記吊持材が所定の基準位置から送り出された量を前記送り出し量として検出し、
前記制御部は、さらに、
前記棚が前記予め定められた高さに位置するときに検出される送り出し量の基準値を記憶している記憶部と、
前記棚検出器によって前記棚が検出されている間に前記送出量検出器によって検出された送り出し量と、前記記憶部に記憶された基準値との相違度が許容値未満であるか否かを判定し、判定結果を出力する判定部とを有する
請求項1に記載の棚設備。
【請求項3】
前記吊持材は、前記棚の前後左右の4点をそれぞれ吊持する4つの吊持材を有し、
前記棚検出器は、前記棚の前後左右の4点のそれぞれに対応する位置において、前記棚の有無を検出し、
前記送出量検出器は、前記棚の前方の2点を吊持する2つの吊持材について、前記駆動機構による送り出し量を検出する
請求項1又は2に記載の棚設備。
【請求項4】
前記制御部は、さらに、
前記予め定められた高さに前記棚を停止させる場合に、前記予め定められた高さよりも所定高さだけ低い高さに対応する送り出し量が検出されたとき、前記棚の上昇速度が所定速度以下となるように前記駆動機構を制御する速度制御部を有する
請求項1〜3のいずれか1項に記載の棚設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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