説明

椅子型マッサージ機

【課題】座部に座った使用者の側部をマッサージするための手段を備えた椅子型マッサージ機において、マッサージ手段が背もたれ部の後方へ突出することがないものとして、壁際へ近づけた設置を可能にし、また背もたれ部後方を通る者にとって障害とならないようにする。
【解決手段】本発明の椅子型マッサージ機1では、背もたれ部3の左右両側に、互いに対向配置とされ且つ使用者に押圧マッサージを施すべく背もたれ部の前方へ突出した一対のマッサージ手段17が設けられており、この一対のマッサージ手段17は、背もたれ部3の前方へ突出した状態を維持させながら相互離反状態と相互近接状態とに切り換え自在とする幅切換機構20を介して、背もたれ部3に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子型マッサージ機に関する。
【背景技術】
【0002】
椅子型マッサージ機として、座部の後部に背もたれ部が設けられ、背もたれ部に使用者の背部をマッサージするマッサージ機構が備えられたものは周知である。この種の椅子型マッサージ機には、背もたれ部の左右両側にエアバッグが対向配置で設けられ、座部に座った使用者の両肩や両腕を、それらの左右両外側からマッサージできるようにした側部揉み装置付きの椅子型マッサージ機が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
この側部揉み装置付きの椅子型マッサージ機において、側部揉み装置は背もたれ部に固定されていた。そのため、座部へ座ったり立ち上がったりするに際し、側部揉み装置に肩などの体の一部が引っ掛かることがあった。また、この椅子型マッサージ機を、通常座る椅子(リクライニング椅子)として用いる際は、側部揉み装置が邪魔になるばかりか、見栄えを損なう一因となっていた。
【0004】
そこで、側部揉み装置として使用する一対のマッサージ手段を、位置切換機構により、背もたれ部の前方へ突出した使用状態と、この使用状態より後方へ後退した収納状態とに切り換え自在にできる椅子型マッサージ機が提案された(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−255156号公報
【特許文献2】特開2010−167154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2で提案された椅子型マッサージ機では、前記したように一対のマッサージ手段が、前方の使用状態と後方の収納状態とに切り換えできる。そのため、一対のマッサージ手段を収納状態とさせれば、使用者が、座部へ座ったり立ち上がったりする際に、各マッサージ手段が邪魔となることはない。加えて、一対のマッサージ手段には、使用者の体型に応じた左右方向の位置調整もできる構成が採用されたので、エアバッグによる指圧力が強すぎたり反対に弱すぎたりすることを防止できる利点もあった。
【0007】
しかしながら、一対のマッサージ手段は、収納状態とさせたときに、背もたれ部の後方(マッサージ椅子の後方)へ大きく突出することがあった。そのため、この椅子型マッサージ機を壁際へ近接させて設置する場合に、一対のマッサージ手段が壁と接触干渉する虞が若干ながら存在した。また椅子型マッサージ機を壁際に設置しない場合であっても、背もたれ部の後方を人が通るときに、後方へ突出した一対のマッサージ手段が目障りになったり、場合によっては人に接触したりする虞があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、座部に座った使用者の側部をマッサージするための手段を備えた椅子型マッサージ機において、前記マッサージ手段が背もたれ部の後方へ突出することがないものとして、壁際へ近づけた設置を可能にし、また背もたれ部後方を通る者にとって外観的に見栄えがよく障害となることがないようにした椅子型マッサージ機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
本発明の椅子型マッサージ機は、座部と、座部の後部に設けられた背もたれ部とを有する椅子型マッサージ機において、前記背もたれ部の左右両側に、互いに対向配置とされ且つ使用者の体の側部にマッサージを施すべく背もたれ部の前方へ突出した一対のマッサージ手段が設けられており、前記一対のマッサージ手段は、背もたれ部の前方へ突出した状態を維持させながら相互離反状態と相互近接状態とに切り換え自在とする幅切換機構を介して、前記背もたれ部に取り付けられていることを特徴とする。
【0010】
好ましくは、前記マッサージ手段はその基端側に上下方向に軸芯が向く揺動支点が設けられ、前記揺動支点回りにマッサージ手段が揺動するように構成されているとよい。
さらに好ましくは、前記幅切換機構は、一対のマッサージ手段を相互離反状態から相互近接状態とする際に、両マッサージ手段の対向間距離を段階的に狭くしつつ保持可能にするラチェット部を有していて、前記ラチェット部は、前記マッサージ手段の揺動軸芯回りの揺動に連動して移動する爪部と、背もたれ部に固設され且つ前記爪部が噛み合う複数の送り歯が形成されたラック部材と、を有し、前記ラック部材には、爪部が噛み合う一方の送り歯から他方の送り歯へと当該爪部を復帰させることで、前記一対のマッサージ手段を相互近接状態から相互離反状態へと戻すリセット機構が設けられているとよい。
【0011】
なお、前記マッサージ手段の幅方向内側には、使用者の肩部又は腕部の側部を押圧可能なエアバッグが備えられているとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る椅子型マッサージ機によれば、座部に座った使用者の側部をマッサージするためのマッサージ手段は背もたれ部の後方へ突出することがなく、もって、壁際へ近づけた設置を可能にし、また背もたれ部後方を通る者にとって外観的にも、また実質的にも障害となることはない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図7のA−A線断面図(相互離反状態)である。
【図2】図7のA−A線断面図(相互離反状態から狭幅方向へ1段階動作させた状態)である。
【図3】図7のA−A線断面図(相互近接状態)である。
【図4】図7のA−A線断面図(相互近接状態からリセットを開始した直後の状態)である。
【図5】図7のA−A線断面図(相互近接状態から相互離反状態へ向けてリセット中の状態)である。
【図6】図5の要部拡大図である。
【図7】本発明に係る椅子型マッサージ機の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、図を基に説明する。
図1〜図7は、本発明に係る肩揉み装置付き椅子型マッサージ機1の実施形態を示している。
図7に示すように、この椅子型マッサージ機1は、使用者の臀部を下方から支持するに十分な広さの座部2と、この座部2の後部に設けられた背もたれ部3とを有しており、この背もたれ部3の両側には側部揉み装置4が設けられている。この側部揉み装置4は、後述するように、使用者の両腕や両肩の側部をマッサージするためのマッサージ手段17を具備している。
【0015】
座部2の下部には、この椅子型マッサージ機1を床面へ設置するための脚体6が設けられており、この脚体6によって座部2が所定高さに支持されるようになっている。
なお、以下の説明では、図7に添え書きした前後・左右方向を示す矢符に基づき、実際の装置での前後方向及び左右方向(幅方向)を説明する。これらの各方向は、椅子型マッサージ機1に座った使用者から見たものと一致する。
【0016】
背もたれ部3は、その下端部が座部2の後部又は脚体6の後部に対して枢支され、前後揺動自在な状態に保持されている。この背もたれ部3は、脚体6内に配設されたリニアアクチュエータ機構などのリクライニング機構により、リクライニング可能となっている。また背もたれ部3の内部には、揉みや叩き、或いは振動などのマッサージ動作を行う背部用マッサージ機構(図例では背部用マッサージ機構の収納スペースのみを示している)が上下移動自在に設けられている。
【0017】
なお、本実施形態の椅子型マッサージ機1は、座部2に着座した使用者の下肢を支持可能なフットレスト(オットマン)5が、座部2に対して前方突出及び水平保持可能であり且つ後方移動及び座部2の下方へ収納可能に設けられたものとしてある。このフットレスト5には、前方突出時に上下反転させたり、収納状態で前後反転させたりすることで、使用者の下肢を揉みマッサージできるようにした足揉み機構(図示略)が内蔵されているものとしてある。
【0018】
また、本実施形態の椅子型マッサージ機1は、座部2の左右両側に肘掛け部7が設けられたものとしている。これら肘掛け部7の互いに対向する内側面(左側の肘掛け部7の右側面、及び右側の肘掛け部7の左側面)には、エアバッグ式などによるマッサージ動作を行う太股・腰マッサージ機構(図例では太股・腰マッサージ機構の収納スペースのみを示している)が設けられている。
【0019】
これら背部用マッサージ機構、リクライニング機構、フットレスト5及び足揉み機構、肘掛け部7及び太股・腰マッサージ機構等は、いずれも椅子型マッサージ機1における装備の一例であり、その有無や細部構造が限定されるものではない。
図1〜図5に示すように、本発明に係る椅子型マッサージ機1において、背もたれ部3の両側に設けられた側部揉み装置4は、背もたれ部3に対して前方突出状となるマッサージ手段支持部15を有している。これらマッサージ手段支持部15は、互いに対向する内面側を凹部とするケース状に形成されており、このケース内に、それぞれ、エアバッグ等を駆動源とするマッサージ手段17が格納状態となるように設けられている。
【0020】
すなわち、マッサージ手段17は左右一対あり、背もたれ部3の正面を挟んで左右方向で互いに対向する配置となっており、背もたれ部3に対して使用者がもたれ掛かるようにしたときには、左右のマッサージ手段17が使用者の両肩、両腕の位置を、その左右両側から挟むようになる。
これら左右のマッサージ手段17は、エアバッグを駆動源とする場合であれば、ポンプ等からエアバッグへエアを供給することで膨出し、またエアバッグからエアを排気することで収縮する動きを利用して、この膨出と収縮とを所定リズムで繰り返させ、もって脈動動作を発生させる構成となっている。すなわち、この脈動動作により、使用者の肩などを、左右両側からリズミカルに押圧(指圧)するようにマッサージすることができる。
【0021】
なお、このように本実施形態において側部揉み装置4は、エアバッグとエアの供給排気システムとで構成される左右のマッサージ手段17が、左右のマッサージ手段支持部15に格納されたものとしたが、マッサージ手段17は、エアバッグ式に限定されるものではない。
図1〜図5に示すように、左右のマッサージ手段17を備えた左右のマッサージ手段支持部15は、図1に示すような「相互離反状態」と、この相互離反状態よりも左右方向内方へ狭めた図4に示す如き「相互近接状態」と、を切り換え自在とする幅切換機構20を介して、背もたれ部3に取り付けられている。
【0022】
本実施形態において幅切換機構20は、左右のマッサージ手段支持部15を、相互離反状態から相互近接状態へ切り換える間に、図2や図3で示すような複数の中間位置で停止させることができる段階切換型とされている。
左右のマッサージ手段支持部15が、図1に示す相互離反状態となっているときは、使用者の肩部に接しない、広幅状態となっており、それ以外(図2〜図5)では、背もたれ部3の正面に、標準的な体型を有した使用者の肩幅に接する幅距離が保持されている。
【0023】
幅切換機構20は、揺動機構21及びラチェット部22を有して構成されている。以下、主として、図5の要部を拡大した図6に基づいて幅切換機構20を説明する。
揺動機構21は、背もたれ部3の側部に対して不動状態で設けられた枢支基台25と、この枢支基台25に揺動支点26を介して可動状態で設けられた揺動基部27とを有している。この揺動基部27がマッサージ手段支持部15の根本部と一体的に連結された構造(具体的な連結構造の図示は省略した)となっている。
【0024】
枢支基台25と揺動基部27とを連結している揺動支点26は、枢支基台25及び揺動基部27において、それぞれ後部寄りに配置されており、また軸芯を上下方向(背もたれ部3の前面に沿った高さ方向)へ向けて設けられている。言い換えれば、マッサージ手段17は、その基端側に上下方向に軸芯が向く揺動支点26が設けられ、この揺動支点26回りにマッサージ手段17が揺動するように構成されている。従って、揺動基部27は、その前端部を左右方向へ揺動させるように保持されており、これに伴って、マッサージ手段17を備えたマッサージ手段支持部15も、その前端部を左右方向(図6中のX,Y方向)へ揺動させることができる。
【0025】
ラチェット部22は、揺動基部27の前部寄りに設けられた爪部32と、この爪部32に噛合するラック部材33とを有している。爪部32は、揺動基部27に対し、軸芯を上下方向(背もたれ部3の前面に沿った高さ方向)へ向けて設けられた爪枢支部35を介して揺動自在に保持されている。これに対し、ラック部材33は、枢支基台25の前端部に固定状態で設けられている。ラック部材33の具体的な配置は、揺動基部27の揺動時に、揺動支点26を支点として一緒に円弧移動するようになる爪部32の移動軌跡に沿わせるようにして決めてある。
【0026】
なお、本実施形態の爪部32には、爪先32aとこれに付随する補助爪先32bとが二股状に設けられ、これら両方の爪先32a,32bの相互間に爪股部32cが形成されるようになったものを示している。
爪部32は、マッサージ手段支持部15が相互近接方向へ向けて移動するとき(図6中のX方向参照)の爪部32の円弧移動方向に対し、移動方向の後方へ爪先32a,32bが向くように形成されている。
【0027】
なお、この爪部32には、爪枢支部35を支点として、爪先32a,32bが常にラック部材33へ向かうように付勢するバネ36が設けられている。
これに対してラック部材33は、爪部32の円弧移動軌跡に倣って歯先を並べるような配置で突出する複数の送り歯37を有している。送り歯37は、隙間無く複数が並んで設けられたものとしてある。従って、送り歯37と送り歯37との相互間には歯谷部38が形成されている。これにより、マッサージ手段支持部15を相互近接方向へ位置換えするときの段階的な停止及び保持(すなわち、段階的な幅距離の保持)が、多数段にわたりきめ細かく行えるようになっている。
【0028】
各送り歯37は、マッサージ手段支持部15が相互近接方向へ向けて移動するとき(図6中のX方向参照)の爪部32の円弧移動方向に対し、移動の先方へ歯先を指向させるように形成されている。
これらのことから、背もたれ部3の左側に配置されるラチェット部22で説明すると、爪部32が揺動支点26を支点に、図6中のX方向へ向けて円弧移動するとき、爪部32は、爪枢支部35を支点とした揺動を伴いながら各送り歯37上へ簡単に乗り上げ、乗り越すことを繰り替えして移動して、他方の送り歯37(幅方向外側の送り歯37)から一方の送り歯37(幅方向内側の送り歯37)へと移り行くようになる。このように爪部32が円弧移動を許容される方向を「順方向」とおく。
【0029】
しかし、これとは反対に、爪部32を図6中のY方向へ円弧移動させようとした場合、爪部32(爪先32a,32b及び爪股部32c)は最初に遭遇する送り歯37及び歯谷部38と噛合して、それ以上、爪枢支部35を支点とした揺動を起こさない状態に固定化される。そのため、爪部32は一つの送り歯37をも乗り越すことができず、結果として爪部32は、図6中のY方向へ向けて円弧移動することはない。このように爪部32が円弧移動を阻止される方向を「逆方向」とおく。
【0030】
このように、ラック部材33に対して爪部32が円弧移動を許容される方向は、原則として一方向のみ(順方向のみ)に制限されている。
このラック部材33には、爪部32が円弧移動を許容される順方向において、最も終端側に位置する送り歯37Z(図4にのみ示す:以下、「終端送り歯37Z」と言う)まで爪部32が送られた後、爪部32を逆方向に回帰させる(爪部32が噛み合う一方の送り歯37Zから他方の送り歯37へと爪部32を復帰させる)のを可能にするためのリセット機構42が設けられている。
【0031】
このリセット機構42は、揺動機構21の揺動支点26を利用して、ラック部材33上で揺動自在に設けられた解除レバー43と、この解除レバー43の揺動範囲を始端位置側で規制する始端ストッパ45と、解除レバー43の揺動範囲を終端位置側で規制する終端ストッパ46とを有している。
解除レバー43は、爪部32が円弧移動を許容される順方向において、爪部32に先行するような配置で設けられている。また解除レバー43のレバー端部(揺動支点26から径方向に最も遠く離れた円弧状の端面)は、ラック部材33の歯谷部38を超えて、送り歯37の歯先と略同じか又は若干高くなる高さとなるように設けられている。そのためこの解除レバー43は、爪部32を順方向で円弧移動させるときには、爪部32の補助爪先32bに係合して円弧移動の先方側へ押されつつ、爪部32と同行するようになる。
【0032】
終端ストッパ46は、ラック部材33の終端送り歯37Z(図3参照)まで爪部32が送られたときに、爪部32に押されて移動する解除レバー43を当て止めするためのもので、枢支基台25を背もたれ部3へ連結させている側壁を利用して形成されている。
従って、終端送り歯37Zまで爪部32が送られた後、引き続きこの爪部32に対して順方向へ移動するように力が加えられても、解除レバー43は終端ストッパ46に当て止めされた状態を保持するため、爪部32は、その補助爪先32bが解除レバー43のレバー端部へ乗り上げるようになる(図4参照)。そのため、爪部32(爪先32a,32b及び爪股部32c)が送り歯37及び歯谷部38と噛合した状態は解除される。
【0033】
一方で、爪部32が解除レバー43に乗り上げた状態(送り歯37との噛合が解除された状態)から爪部32を逆方向へ円弧移動させるようにすると、図5に示すように、爪部32への乗り上げ状態で生起する係合摩擦力で、解除レバー43は、爪部32に随伴する状態として、揺動支点26を支点に揺動することになる。
始端ストッパ45は、ラック部材33において、爪部32の順方向で最も始端位置となる送り歯37A(図5にのみ示す:以下、「始端送り歯37A」と言う)に爪部32が噛合するようになるときに、その直前のタイミングで、解除レバー43から爪部32が外れるようにするためのもので、枢支基台25から解除レバー43の揺動領域へ向けて突出したボス部を利用して形成されている。
【0034】
従って、始端送り歯37Aへ向けて爪部32が復帰したとき、解除レバー43は始端ストッパ45に当て止めされるようになる。そのため、爪部32(爪先32a,32b)が解除レバー43から外れて(降りて)、ラック部材33の始端送り歯37Aと確実に噛合する状態となる(図5→図1参照)。
なお、解除レバー43は、揺動支点26を支点として回動自在な構造となっているが、当該揺動支点26を支点として常に前記終端ストッパ46へ向かうように付勢するバネ(図示略)を設けるようにしてもよい。このように付勢バネを設けておけば、解除レバー43が始端ストッパ45に当て止めされて爪部32が解除レバー43から外れると同時に、速やかに、解除レバー43を始端ストッパ45に近接又は当接した待機状態に確実に戻すことができる。
【0035】
以上、詳説した幅切換機構20は、揺動機構21及びラチェット部22が、背もたれ部3を挟んだ左右両側(即ち、左右のマッサージ手段支持部15)に対して、左右対称で同様に設けられている。
次に、本実施形態で採用された幅切換機構20により、マッサージ手段支持部15を「相互離反状態(幅広施療状態又は開放状態)」にしたり反対に「相互近接状態(狭幅施療状態)」にしたりする状況を説明する。
【0036】
いま、背もたれ部3に対してマッサージ手段支持部15が相互離反状態となっているとする(図1の状態)。この状態において、左右のマッサージ手段支持部15も、また左右のマッサージ手段17も、背もたれ部3の後方へ突出するものではない。
従って、この状況下にある椅子型マッサージ機1は、壁際へ寄せて設置することができる。また壁際に設置しない場合に、背もたれ部3の後方を人が通っても、外観的及び実質的に、障害となるもの(突出物)は何もなく、何ら弊害は起こらないものである。
【0037】
なお、左右のマッサージ手段17が相互離反しているため、背もたれ部3の正面は完全に開放された状態となっており、座部2へ座ったり立ち上がったりするのに左右のマッサージ手段17が邪魔となることはない。従って、殊に、この椅子型マッサージ機1を単なる椅子として使用する際には非常に好適である。このとき、爪部32はラック部材32の始端送り歯37Aと噛合した状態にある。
【0038】
かかる相互離反状態から、使用者がマッサージ手段支持部15に手を掛けて相互近接させるようにすると、揺動基部27が揺動支点26を支点として、図6中の矢符X方向へ向けて揺動する。従って、これにより爪部32が、揺動支点26を支点に順方向へ円弧移動する。そのため、前記したように爪部32は、始端送り歯37Aを乗り越えるようになる。
【0039】
そして図2に示すように、爪部32は次に遭遇する送り歯37(外側から2つ目の送り歯37)に噛合するようになる。この状態でマッサージ手段支持部15から手を離せば、爪部32と送り歯37との噛合状態は維持される。すなわち、左右のマッサージ手段支持部15,15を同じ状態にすれば、左右のマッサージ手段17,17間の距離が1段階、狭められた近接状態となる。
【0040】
なお、この状況で爪部32が逆方向へ円弧移動することはない。このことは、マッサージ手段17を作動させたとき(エアバッグを駆動源とする場合であれば、ポンプ等からエアを供給し、膨出を含むマッサージ動作を行わせたとき)も、マッサージ手段17の位置が確実に維持されることになる。
爪部32が送り歯37と噛合した状態から、更にマッサージ手段支持部15を左右方向の内方へ移動させると、爪部32は、それまで噛合状態にあった送り歯37を乗り越えて、次に遭遇する送り歯37に噛合するようになる。このようにすることで、左右のマッサージ手段支持部15,15(左右のマッサージ手段17,17)間の距離は、段階的に狭められることになる。この操作を爪部32が終端送り歯37Zと噛合するまで繰り返すことができる。
【0041】
図3に示すように、爪部32が終端送り歯37Zと噛合したとき、左右のマッサージ手段支持部15,15(左右のマッサージ手段17,17)間の距離は最も近接した状態(狭幅施療状態)になる。なお、送り歯37の形成数を増やすことで、更に多段階の幅調節ができる。また送り歯37の形成領域を広げることで、相互近接距離や相互離反距離を拡大させることができる。
【0042】
爪部32が終端送り歯37Zと噛合した状態から、図4に示すように、マッサージ手段支持部15を左右方向の内方へ向け、少しだけ移動させる(軽く押す)と、爪部32は解除レバー43に乗り上げて終端送り歯37Zとの噛合が解除され、逆方向への円弧移動が可能な状態とされる。
かくして、マッサージ手段支持部15は、揺動支点26を支点として図6中の矢符Y方向へ向けて揺動させることができ(図5参照)、この揺動を行うことで、爪部32が始端送り歯37Aと噛合した状態(図1参照)に戻り、マッサージ手段支持部15は、相互離反状態に戻ることになる。
【0043】
ところで、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は前記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
例えば、左右のマッサージ手段にエアバッグを採用する場合にあって、エアバッグは、膨出と収縮とを行う方向で蛇腹構造になったものや単一の袋構造を有したものなどとすることも可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 椅子型マッサージ機
2 座部
3 背もたれ部
4 側部揉み装置
5 フットレスト
6 脚体
7 肘掛け部
15 マッサージ手段支持部
17 マッサージ手段
20 幅切換機構
21 揺動機構
22 ラチェット部
25 枢支基台
26 揺動支点
27 揺動基部
32 爪
32a 爪先
32b 補助爪先
32c 爪股部
33 ラック部材
35 爪枢支部
37 送り歯
37A 他方の送り歯
37Z 一方の送り歯
38 歯谷部
42 リセット機構
43 解除レバー
45 始端ストッパ
46 終端ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座部と、座部の後部に設けられた背もたれ部とを有する椅子型マッサージ機において、
前記背もたれ部の左右両側に、互いに対向配置とされ且つ使用者の体の側部にマッサージを施すべく背もたれ部の前方へ突出した一対のマッサージ手段が設けられており、
前記一対のマッサージ手段は、背もたれ部の前方へ突出した状態を維持させながら相互離反状態と相互近接状態とに切り換え自在とする幅切換機構を介して、前記背もたれ部に取り付けられていることを特徴とする椅子型マッサージ機。
【請求項2】
前記マッサージ手段はその基端側に上下方向に軸芯が向く揺動支点が設けられ、前記揺動支点回りにマッサージ手段が揺動するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項3】
前記幅切換機構は、一対のマッサージ手段を相互離反状態から相互近接状態とする際に、両マッサージ手段の対向間距離を段階的に狭くしつつ保持可能にするラチェット部を有していて、
前記ラチェット部は、前記マッサージ手段の揺動軸芯回りの揺動に連動して移動する爪部と、背もたれ部に固設され且つ前記爪部が噛み合う複数の送り歯が形成されたラック部材と、を有し、
前記ラック部材には、爪部が噛み合う一方の送り歯から他方の送り歯へと当該爪部を復帰させることで、前記一対のマッサージ手段を相互近接状態から相互離反状態へと戻すリセット機構が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項4】
前記マッサージ手段には、使用者の肩部又は腕部の側部を押圧可能なエアバッグが備えられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の椅子型マッサージ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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