説明

椅子

【課題】業務に応じて適切な使い分けができるようにした、全く新たな機能に基づく椅子を提供する。
【解決手段】背の傾動を支持する主反力機構4および補助反力機構8を備え、第1の傾動範囲である前傾角度範囲A1で作動する補助反力機構8の構成と第2の傾動範囲であるロッキング角度範囲A2で作動する主反力機構4の構成とが両角度範囲A1,A2の境界位置で切り替わるように構成したものであり、境界位置から背凭れ荷重の変化に伴い前傾角度範囲A1側に背の傾動が始まるときの第1の反力閾値f1と、境界位置から背凭れ荷重の変化に伴いロッキング角度範囲A2側に背の傾動が始まるときの第2の反力閾値f2との間に、背凭れ荷重の変化が背の傾動につながらない安定域Δfを設けることとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の反力機構を用いて従来にない機能の反力特性を実現した椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の反力機構を用いたものとして、例えば特許文献1に示すもの等が知られている。このものは、背や座を後傾可能に支持するにあたり、背座の角度を任意の位置で固定するガススプリングを採用しつつ、ガススプリングに不足する付勢力を補うために、ねじりコイルばねを新たに採用して、これらガススプリングとねじりコイルばねとの協働作用によって、背および座をそれぞれ垂直位置、水平位置に向かって付勢し、所要の反力と固定機能を実現するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06−327532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の従来の椅子は、通常の執務を行う起立姿勢から安息に適した後傾姿勢までを連続的に反力特性の変化する反力機構によってバックアップするように構成されており、起立角度は通常の執務を行う角度に設定されているのが通例である。
【0005】
しかしながら、近時におけるデスクワークは、コンピュータを扱う作業が大半であり、前傾姿勢で行うことが望ましいことが種々の研究によって明らかとなっている。
【0006】
そこで、このような執務姿勢に対応できるように、背の起立角度を、着座者がやや前傾となるような角度に設定することも考えられるが、このようにすると、通常の業務を行う際に必要以上に前傾ぎみとなり、むしろ不適切な姿勢を強いられることになる。そして、より好ましい姿勢にしようとして背に凭れると、背のロッキングが始まる不都合があり、逆にロッキング位置を所望の位置に固定してしまうと、逐一ロッキング機構のロックを解除しなければ再度ロッキングさせることができなくなるという煩わしさが生じて、通常の椅子としての使用感が損なわれることとなる。
【0007】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、業務に応じて適切な使い分けができるようにした、全く新たな機能に基づく椅子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
すなわち、本発明の椅子は、背の傾動を支持する反力機構を2以上備え、第1の傾動範囲で作動する反力機構の構成と第2の傾動範囲で作動する反力機構の構成とが両傾動範囲の境界位置で切り替わるものであって、境界位置から背凭れ荷重の変化に伴い第1の傾動範囲側に背の傾動が始まるときの第1の反力閾値と、境界位置から背凭れ荷重の変化に伴い第2の作動範囲側に背の傾動が始まるときの第2の反力閾値との間に、背凭れ荷重の変化が背の傾動につながらない安定域を設けたことを特徴とする。
【0009】
このように構成すると、第1の傾動範囲で背を傾動させて使用する態様と、第2の傾動範囲で背を傾動させて使用する態様とを、利用者が目的・用途に応じて適切に使い分けることができる。すなわち、例えば第1の傾動範囲よりも第2の傾動範囲の方が傾動角度が大きいものとした場合、背を比較的起立させて使用する第1の傾動範囲では利用者は背凭れに軽く凭れて傾動機能を利用することができ、第1の傾動範囲から第2の傾動範囲に移るときの境界位置では背凭れ荷重をある程度増大させても安定域の範囲で背を半固定状態で使用することができ、背を深く傾動させて使用する第2の傾動範囲では利用者はロッキング状態で傾動機能を利用することができる。このため、背凭れ荷重の変化に応じて傾動が連続的に起こる通常の椅子に比べて、より多彩な使い方が可能となる。
【0010】
具体的な実施の一態様としては、第1、第2の反力機構が並列に設けられて、第1の傾動範囲で第1の反力機構のみが作動し、第2の傾動範囲で第1、第2の反力機構が作動するように構成されているものが挙げられる。
【0011】
このような安定域を構成するためには、第2の反力機構に初期反力を与えておくことが有効である。
【0012】
また、起立位置においても背を安定的に使用可能とするためには、第1の反力機構に、起立位置で背凭れ荷重の変化が背の傾動につながらない補助安定域を構成する初期反力が与えられていることが望ましい。
【0013】
本発明の好適な適用例としては、第1の傾動範囲を通常姿勢からOA執務に適した前傾姿勢までをバックアップする前傾角度範囲とし、第2の傾動範囲を通常姿勢から安息に適した後傾姿勢までをバックアップするロッキング角度範囲としているものが挙げられる。
以下は、より具体的な構成の態様である。
【0014】
第1の反力機構が後傾に伴って反力を略一定に保ち、第2の反力機構が後傾に伴って反力を増大させるように、両反力機構のバネ特性や取付位置を設定しているもの。
【0015】
第1の反力機構が後傾に伴って反力を減少させ、第2の反力機構が後傾に伴って反力を増大させるように、両反力機構のバネ特性や取付位置を設定しているもの。
【0016】
第1の反力機構が後傾に伴って反力を増大させ、第2の反力機構が後傾に伴って前記第1の反力機構よりも更に大きいバネ定数で反力を増大させるように、両反力機構のバネ特性や取付位置を設定しているもの。
【発明の効果】
【0017】
以上説明した本発明によれば、境界位置の前後に明確に画された第1の傾動範囲と第2の傾動範囲の各々において、背の傾動を有効に利用することができ、しかも、境界位置やロッキング終端位置において安定したバックアップ機能を確保して、これらの機能を、着座者が背に凭れた状態で円滑に切り替えて利用できるようにした、新規有用な椅子を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る椅子の側面図。
【図2】同椅子の支持基部周辺の部分分解斜視図。
【図3】同椅子の支持基部周辺の平面図。
【図4】同椅子を構成する主反力機構の分解斜視図。
【図5】図3におけるA−A線断面図。
【図6】図5に対応した作用説明図。
【図7】主反力機構の作用説明図。
【図8】反力調節後の図3に対応した平面図。
【図9】反力調節部の分解斜視図。
【図10】反力調節部の作用説明図。
【図11】同椅子の座周辺の分解図。
【図12】起立時の椅子の状態を示す側面図。
【図13】通常仕様時の椅子の状態を示す側面図。
【図14】ロッキング中の椅子の状態を示す側面図。
【図15】ロッキング中の椅子の状態を示す側面図。
【図16】ロッキング中の椅子の状態を示す側面図。
【図17】ロッキング動作を示す作用説明図。
【図18】同椅子を構成する主反力機構および補助反力機構の作用を示す説明図。
【図19】同椅子を構成する角度調節装置を示す分解斜視図。
【図20】椅子の後傾動作を規制する角度調節装置の作用説明図。
【図21】後傾側角度調節部材の作用説明図。
【図22】起立側角度調節部材の作用説明図。
【図23】背の支持構造を示す斜視図。
【図24】本発明の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0020】
この実施形態の椅子は、図1に示すように、脚1に支持された支持基部2と、この支持基部2に背フレーム31を介して傾動可能に取り付けられた背3と、この背3の荷重を支持する主反力機構4(図2参照)と、前記支持基部2と前記背フレーム31とに支持された座5とを具備する回転椅子である。
【0021】
具体的に説明すると、脚1は、下端部にキャスタ11aを備えた脚羽根11の中心より支柱12を、図示しないガススプリングによって昇降可能に突出させたもので、この支柱12に支持基部2を回転可能に取り付けている。
【0022】
支持基部2は、図2に示すように、アルミダイキャスト等の剛体により構成され、底壁21と、この底壁21の両側に位置する側壁22とを備えたもので、側壁22には背フレーム31を取り付けるための支軸60や座5を支持するためのリンク50a、55a等が設けられているとともに、内部に、前記主反力機構4や当該主反力機構4の反力を調節する反力調節部7等を組み込んでいる。
【0023】
主反力機構4は、図2及び図3に示すように、基端41aを軸4aを介して支持基部2の底壁21に取り付けられ先端41bを圧縮力入力端として設定された弾性部材である圧縮バネ41と、基端42aを支点である軸4bを介して支持基部2の底壁21に回転可能に取り付けられ先端42bを前記圧縮バネ41の圧縮力入力端41bに接続部である軸4cを介して接続された回転アーム42とを備えたもので、回転アーム42に背凭れ荷重を作用させることにより、回転アーム42が支点4bの回りに回転して圧縮バネ41を圧縮する構造になっている。回転アーム42の基端42aと先端42bの間における側面には、ほぼ直線状に延びる平坦な受圧面42cが形成してある。
【0024】
一方、この主反力機構4に背3の荷重を支持させるために、図3〜図5に示すように、背3のロッキングに応じて回転する後傾連動部材6を前記支軸60に回転自在に取り付けるとともに、背フレーム31の基端を支持する支軸60から変位した部位に遊動軸63(図1参照)を、当該背フレーム31の支軸60まわりの回転に伴って遊動可能に取り付け、この遊動軸63を前記後傾連動部材6の支軸60から変位した部位に取り付けて、後傾連動部材6が背フレーム31の傾動動作に連動して回転するようにしている。具体的にこの後傾連動部材6は、チャネル状のブラケット61の一対の対向壁61a、61a間に前記支軸60を貫通させるとともに、支軸60から変位した部位において前記一対の対向壁61a、61a間に遊動軸63を貫通させたものである。この遊動軸63は支軸60の下方に位置するが、支持基部2の底壁21に対しても側壁22に対しても干渉しない状態で図5の位置と図6の位置との間で遊動可能とされている。なお、後傾連動部材6が後傾時のみならず起立時にも支軸60の回転に連動することは言うまでもない。
【0025】
そして、この後傾連動部材6の一部に反力伝達部64を設けている。この反力伝達部64は、図4等に示すように、後傾連動部材6を構成するブラケット61の対向壁61a、61a間に前記遊動軸63を介して取り付けられた揺動ブラケット64aと、この揺動ブラケット64aにピン64bを介して取り付けたローラ64cとからなるもので、支軸60から変位した位置で遊動軸63が図5の位置と図6の位置との間で遊動するに伴い、反力伝達部64が回転アーム42の受圧面42cに向かって進退する構造をなしている。すなわち、前記反力伝達部64の回転に伴い当該反力伝達部64のローラ64cと前記回転アーム42とが接触し、更に反力伝達部64が回転アーム42を回転させる方向に移動することで、図7に示すように回転アーム42が圧縮バネ41を圧縮して反力を増大させるものである。このため、背3のロッキングに伴って回転アーム42が回転するにつれて回転アーム42の延出方向m1と圧縮バネ41の作動中心m2とのなす交叉角度θが変化し、この実施形態では後述するロッキング終端位置(30°の後傾位置)で前記交叉角度θが最大(略直角)となるように設定してある。
【0026】
また、前記反力調節部7は、前記反力伝達部64のローラ64cの位置を、回転アーム42の受圧面42cに沿って図3→図8のように変化させるべく、図2、図3及び図9等に示すように、グリップ71aを備えた反力操作要素たる操作軸71と、この操作軸71の回転操作に伴って前記支軸60の軸心と直交する方向(図9における矢印方向)に側壁22に沿って移動する変位部材たる進退部材72と、この進退部材72と後傾連動部材6との間に設けられて進退部材72の動作を後傾連動部材6の直交方向の動作に変換する動作変換部73とを備える。
【0027】
操作軸71は先端にピニオン71bを取り付けられ、このピニオン71bを進退部材72の一部に設けたラック72aに噛み合わせた状態で、内方端が支持基部2に固定したブラケット70の軸受部70aに回転可能に支持されている。進退部材72は、一部に平面視三角形状のブロック部を有し、進退方向に対して所定角度をなす斜面72cが形成されて、その斜面に図10に示すように斜面方向に突条72b1と凹溝72b2が繰り返す鋸歯状に近い波状の凹凸部72bが形成されている。一方、図3及び図9等に示すように、前記後傾連動部材6の一方の対向壁61aの隣接位置には、前記支軸60の軸心に沿った方向に移動可能かつ支軸60を回転自在に貫通させる中間部材74が取り付けてある。この中間部材74は、平面視三角形状のブロックから構成され、前記斜面72cに平行な斜面74cを有するもので、この斜面74cに、図10に示すように前記凹凸部72bの突条72b1および凹溝72b2と同一形状、同一ピッチの突条74b1および凹溝74b2からなる鋸歯状に近い波状の凹凸部74bが形成してある。前記後傾連動部材6の他方の対向壁61a側には、図3及び図9等に示すように、当該後傾連動部材6に弾接することによって中間部材74を進退部材72に向けて押し付けるオフセットバネ75が支軸60に巻装した状態で弾接してある。
【0028】
すなわち、進退部材72を図3→図8の位置まで移動させると、進退部材72の斜面72cに形成された凹凸部72bが中間部材74の斜面74cに形成された凹凸部74bに対する嵌め合い位置を所定ピッチで変化させながら、進退部材72が中間部材74に潜り込むように相対移動するので、中間部材74を介して後傾連動部材6をバネ75に抗して支軸60の軸心に沿った方向に移動させる。図10に示すように、凹凸部72b、74bは、一方の凹と他方の凸が嵌り合うことで一時係止部を構成し、進退部材72と中間部材74の相対位相関係を一定の保持力で保持する。一時係止部は、進退部材72と中間部材74が一旦支軸60の軸心方向に離れなければ嵌め合い位置を変化させることができない関係にある。そして、図3及び図4等に示す後傾連動部材6に支持された反力伝達部64が回転アーム42の受圧面42cに沿って例えば図8の位置に移動することで、後傾連動部材6が図5→図6に示すように回転して反力伝達部64を回転アーム42に押し付けて回転アーム42が図7に示すように回転する際の、反力伝達部64と回転アーム42との接触点から当該回転アーム42の支点4bまでのモーメントの腕の長さLが変化する。
【0029】
座5は、図1及び図11等に一部破砕して示すように、樹脂製のシェル51の上端側に樹脂プレート等よりなる弾性変形可能な表面側支持部材たる表側面材52を、クッション材53や張り地54等とともに取り付けて構成されるもので、シェル51は座枠50に支持されている。座枠50は、前リンク50aと、後リンクである背フレーム31とを介して支持基部2に支点5a、5b、5c、5dからなる4点リンク構造の下に支持され、この4点は、背3の後傾に伴って座枠50とともに表側面材52を図12→図13→図14→図15→図16のように後方に沈み込ませるように作動して、連動機構である表側シンクロロッキング機構X1を構成する。
【0030】
また、図1及び図11等に示す座5には、傾動に伴ってクッション性を変化させるためのクッション性連動可変機構Yが設けてある。このクッション性連動可変機構Yは、前記表側面材52に対し、その下方に配置されたやや硬質の樹脂プレート等よりなる裏面側支持部材たる裏側面材55を具備するもので、表側面材52が座5の荷重に伴って下方へ変形する可撓性を備えるのに対し、裏側面材55は補助弾性材であるコイルバネ56aを介して台座56に支持されている。この台座56は、前リンク55aと、後リンクである背フレーム31とを介して支持基部2に支点5a、5e、5f、5dからなる4点リンク構造の下に支持され、この4点は、背3の後傾に伴って台座56を図12→図13→図14→図15→図16のように後方に沈み込ませるように作動して、連動機構である裏側シンクロロッキング機構X2を構成している。図11に示すシェル51は下端側に開口部を有したすり鉢状のもので、上面に表側面材52を取り付けた状態で、シェル51と表側面材52との間に形成される内部空間に前記裏側面材55を上下遊動可能に収容しておくことができる。
【0031】
この場合、台座56等は座枠50の開口50xの内側を介して前記シェル51の空洞内に位置づけられ、座枠50等と干渉することなく動作することができるようにしている。そして、座5の後傾に伴い、支点5e、5fの各々が支点5b、5cよりも早く後下方に回動するように設定することにより、図12→図13→図14→図15→図16のように表面側シンクロロッキング機構X1による表側面材52の沈み込み量に対して、裏面側シンクロロッキング機構X2による裏側面材55の沈み込み量がより大きくなるように構成している。このように、背3の後傾に連動して表側面材52に対する裏側面材55の相対位置が表側面材52から連続的に離れる方向に移動するため、次第に座5のクッション性が柔らかくなる方向に変化することとなる。
【0032】
図1等に示す支持基部2の側壁22には、背フレーム31に図12に示す傾動始端位置と図16に示す傾動終端位置とを与えるストッパ20が配置してある。このストッパ20は、三角形状の板材からなるもので、二辺20a、20bを規制辺としており、背フレーム31が図12に示す最大起立位置(後述する−5°の位置)にあるときに当該背フレーム31の基端側の一部に設定した第1の規制部31aを前記ストッパ20の第1の規制辺20aに係り合わせ、背フレーム31が図16に示す最大傾動位置(後述する30°の位置)あるときに当該背フレーム31の基端側の他の一部に設定した第2の規制部31bを前記ストッパ20の第2の規制辺20bに係り合わせ、その間における背フレーム31の中間傾動位置でストッパ20が背フレーム31と干渉しないように構成されている。
【0033】
そして、本実施形態では、前記主反力機構4以外に背3の傾動を支持すべく、図1等に示される補助反力機構8を備えている。この補助反力機構8は、前記支持基部2の後端側に架設した軸5gと前記背フレーム31の中間部間に架設した軸3gとの間を接続する位置に配置したガススプリング方式のもので、シリンダ81からピストンロッド82を突没させることにより、支持基部2を足場にして背フレーム31に起立方向の反力を付与するものである。
【0034】
ここに、従来の椅子のタイプを考えると、通常執務を行う椅子の背の起立位置に対してOA用に特化された椅子の背は5°程度の前傾姿勢に設定されていることを踏まえ、この実施形態は、通常執務時における背3の傾動角度を図13に示す0°と称することにしている。そして、この0°を基準に、OA執務に適した前傾姿勢をとる場合の図12に示す背3の傾動角度(最大起立角度)を−5°とし、更にここから図13→図14→図15のように後傾した後、最大に傾動した図16の状態で30°の後傾姿勢をとり得るようにしたものである。そして、図17に示すように−5°から0°までを第1の傾動範囲である前傾角度範囲A1に設定し、0°から30°までを第2の傾動範囲であるロッキング角度範囲A2に設定している。
【0035】
そして、図18に示すように、(a)、(b)間の前傾角度範囲A1で補助反力機構8のみが働き、(b)、(c)間のロッキング角度範囲A2で主反力機構4および補助反力機構8の双方が同時に働くように設定している。すなわち、同図(d)に示すように、前傾角度範囲A1とロッキング角度範囲A2の境界位置を基準にして、前傾角度範囲A側に背5の傾動が始まるときの第1の反力閾値f1と、ロッキング角度範囲A2側に背5の傾動が始まるときの第2の反力閾値f2との間には、背凭れ荷重の変化が背5の傾動につながらない安定域Δfが設けてある。ここで用いているように、背凭れ荷重には、広義には後傾側に作用する荷重とともに起立側に作用する荷重も含まれる。以下においても、必要に応じて広義の意味で用いる。このような安定域Δfを設けるにあたり、圧縮バネ41の圧縮力入力端41bや回転アーム42の一部に、圧縮バネ41を所定位置を越えて復元させないためのストッパ等が設けられている。補助反力機構8は、背3が−5°から30°まで後傾する間に常に連続的にピストンロッド82を没入させる関係に設定してあり、−5°の位置においても初期反力が与えられ、一定以上の背凭れ荷重によって傾動が始まるような補助安定域Δf´が構成されている(但し、−5°から30°までのピストンロッド82の没入量は本実施形態においては僅かである)。
【0036】
このような機能を実現するために、圧縮バネ41を採用した本実施形態の主反力機構4は、−5°から0°の領域で反力を発生しないように構成してある。すなわち、この主反力機構4は、図3、図7及び図18(a)等に示したように、背フレーム3の傾動に伴い前記反力伝達部64が回転アーム42に接触して当該回転アーム42を回転させることにより圧縮バネ41を圧縮させるものであり、−5°のときには主反力機構4からの反力が反力伝達部64に及ばず、背フレーム31が補助反力機構8によって最大起立位置に移動されて、反力伝達部64が回転アーム42の受圧面42cから離間した位置にあるように設定している。そして、−5°から0°に向かって背3がガススプリング方式の補助反力機構8を圧縮しながら傾動することにより、図7及び図18(b)に示すように0°において初めて反力伝達部64が回転アーム42に接触し、更に背フレーム31が傾動することによって、ガススプリング方式の補助反力機構8の更なる圧縮とともに図7及び図18(c)に示すように回転アーム42を回転させながら主反力機構4の圧縮バネ41を圧縮するように構成している。
【0037】
さらに、この実施形態は、背3の傾動角度を上述した−5°から30°のなかの一定範囲に制限するために、図2及び図19等に示すようなロッキング角度調節装置9を設けている。
【0038】
このロッキング角度調節装置9は、支軸60に設けた一対の角度連動部材91,92と、前記支軸60に平行な軸93b、94bを有する後傾側角度規制部材93および起立側角度規制部材94と、これらの角度規制部材93,94を前記角度連動部材91,92に対して接離動作させるための第1の操作手段95および第2の操作手段96とを具備する。
【0039】
角度連動部材91、92は、前記支軸60回りに回転自在に支持され、その支軸60から変位した部位に前記遊動軸63を取り付けた概略扇形をなす板状のもので、背フレーム31は前記支軸60回りに回転する際にこの遊動軸63を駆動して角度連動部材91、92を連動させるように構成されている。そして、径方向に延出したその一端側にギヤ部91a、92aを有している。
【0040】
後傾側角度規制部材93は、扇状または鎌状をなす板状のもので、前記一方の角度連動部材91に対向する位置において、下端側の一部に設けた直線状の摺動面93aを支持基部2の底壁21に設定した静止面21aに摺動可能に接地させて配置される。ここに言う「静止」とは、背フレーム31の傾動動作に連動しないという程度の意味である。具体的には、図2、図3及び図19等に示すように、支持基部2に起立させて設けた互いに平行な支持壁90a、90bの少なくとも一方に長孔90cを設け、その長孔90cに後傾側角度規制部材93の中間部に厚み方向に突出させた前記支軸60に平行な軸93bを挿通して、軸93bが長孔90c内を移動する範囲で図20(a)に示すように後傾側角度規制部材93の摺動面93aを静止面21a上にスライドさせながら前記角度連動部材91に対して接離動作をさせ得るようにしている。そして、前記角度連動部材91側に延出させたその端部に前記角度連動部材91のギヤ部91aと同一ピッチのギヤ部93cを設け、所定範囲でスライドすることによって両者の厚み内で噛み合い状態又は非噛み合い状態の何れかの状態をとり得るようにしているとともに、スライドにより噛み合った位置より図20(b)に示すように摺動面93aが静止面21aから離れる方向にのみ後傾側角度規制部材93を前記軸93b回りに従動回転させるように構成されている。摺動面21aは軸93bよりも反ギヤ部側に設けてあり、噛み合った位置から角度連動部材91の起立方向(図20(b)における右回り方向)への動作のみを許容し、後傾方向(左回り方向)への動作を禁止する。そして、起立方向に回転した後、逆転して戻ってきたときには、再び背3の同じ後傾角度位置で摺動面93aが静止面21aに当接するようにしている。後傾側角度規制部材93のギヤ部93cは前記角度連動部材91のギヤ部91aに噛み合って同期回転するに必要な所定領域のみに形成されている。
【0041】
起立側角度規制部材94は、図19等に示すように、扇状または鎌状をなす板状のもので、前記他方の角度連動部材92に対向する位置において、下端側の一部に設けた直線状の摺動面94aを支持基部2の静止面21aに摺動可能に接地させて配置される。具体的には、図2、図3及び図19等に示すように、支持基部2に起立させて設けた互いに平行な支持壁90d、90eの少なくとも一方に長孔90fを設け、その長孔90fに起立側角度規制部材94の中間部に厚み方向に突出させた前記支軸60に平行な軸94bを挿通して、軸94bが長孔90f内を移動する範囲で図21(a)に示すように起立側角度規制部材94の摺動面94aを静止面21a上にスライドさせながら前記角度連動部材92に対して接離動作をさせ得るようにしている。そして、前記角度連動部材92側に延出させたその端部に前記角度連動部材92のギヤ部92aと同一ピッチのギヤ部94cを設け、所定範囲でスライドすることによって両者の厚み内で噛み合い状態又は非噛み合い状態の何れかの状態をとり得るようにしているとともに、スライドにより噛み合った位置より図21(b)に示すように摺動面94aが静止面21aから離れる方向にのみ起立側角度規制部材94を前記軸94b回りに従動回転させるように構成されている。
【0042】
ただし、この起立側角度規制部材94の摺動面94aは軸94bよりもギヤ部94c側に設けてあり、噛み合った位置から角度連動部材92の後傾方向(図21(b)における左回り方向)への動作のみを許容し、起立方向(右回り方向)への動作を禁止する。そして、後傾方向に回転した後、逆転して戻ってきたときには、再び背3の同じ起立角度位置で摺動面94aが静止面21aに当接するようにしている。起立傾側角度規制部材94のギヤ部94cは前記角度連動部材92のギヤ部92aに噛み合って同期回転するに必要な所定領域のみに形成されている。
【0043】
これらの角度連動部材91,92及び角度規制部材93,94は、図2に示すように、支持基部2を構成する一対の側壁22,22のうち一方(本実施形態では着座者からみて左側)に偏倚させて配置されている。
【0044】
このように、角度連動部材91,92に対して、後傾側角度規制部材93および起立側角度規制部材94はいずれも、同じ方向から接離して個別に係り合うことができるように構成されていて、通常は図19等に示すように、両部材93,94の反ギヤ部側に設けた引っ張りバネ93d、94dによって角度連動部材91,92から離間し、かつ摺動面93a、94aを静止面21aに突き当てた初期位置に保持されるようにしている。そして、第1の操作手段95及び第2の操作手段96から操作がなされることにより、各々対応する角度規制部材93,94を角度連動部材91,92に噛み合う位置に移動させ得るようにしている。
【0045】
第1の操作手段95は、図2及び図19等に示すように、レバー式の操作部95aと、この操作部95aから前記後傾側角度規制部材93の近傍に向かうワイヤー95bと、ワイヤー95bの伝達端に設けた回転部材95cとを具備している。操作部95aは、背フレーム31の外側面において着座者が左手を後ろに回せば上体(上半身の姿勢)を変えずに手が届く範囲に設けられたもので、図22に示すように、操作部95aのレバー95a1を同図(a)に示す非操作位置から同図(b)に示す操作位置に押し込むことによって、カム95a2が回転してワイヤー95bを牽引する構造になっている。ワイヤー95bはチューブ95dに収容されて基端から伝達端に向かって操作量を伝達する。図19に示す回転部材95cは、起立壁90aに軸95c1を介して回転可能に支持され、回転端側にワイヤー95bを接続したもので、一部にねじりバネ95eが巻回され、そのねじりバネ95eの斜め下方端が後傾側角度規制部材93の軸93bに近接する位置に配置してある。そして、図20(a)に示すように、操作部95aが非操作位置にあるときには、ねじりバネ95eが後傾側角度規制部材93の軸93bに対して非接触な位置に保持され、操作部95aが操作位置に移動すると、回転部材95cが回転してバネ95eを軸93bに押し付け、これにより後傾側角度規制部材93を引っ張りバネ93dに抗して角度連動部材91に噛み合う位置に移動させるようにしている。
【0046】
第2の操作手段96もほぼ同様の構成からなるもので、図2、図19及び図22等に示すように、レバー式の操作部96aと、この操作部96aから前記起立側角度規制部材94に向かうワイヤー96bと、ワイヤー96bの伝達端に設けた回転部材96cとを具備している。操作部96aは、背フレーム31の外側面において着座者が左手を後ろに回せば上体(上半身の姿勢)を変えずに手が届く範囲に設けられたもので、図2に示すように後傾側を規制する操作部95aとともに前後に並べて配置され、起立側を規制する操作部96aの方が後傾側を規制する操作部95aよりも前に配置されている。ワイヤー96bはチューブ96dを介して伝達端が図19等に示す回転部材96cに接続され、回転部材96cにはねじりバネ96eが巻回されて、下端が起立側角度規制部材94の軸94bに近接する位置に配置してある。そして、操作部96aが非操作位置にあるときには、図21(a)に示すようにねじりバネ96eが起立側角度規制部材94の軸94bに対して非接触な位置に保持され、操作部96aが操作位置に移動すると、回転部材96cが回転してねじりバネ96eを軸94bに押し付け、これにより起立側角度規制部材94を引っ張りバネ94dに抗して角度連動部材92に噛み合う位置に移動させるようにしている。
【0047】
このように、角度規制部材93,94をねじりバネ95e、96eによって付勢しているのは、角度規制部材93,94が角度連動部材91,92に接近した際にそれらのギヤ部93c、91aの山同士、ギヤ部94c、92aの山同士が突き当たっても、角度連動部材93,94がそこから若干回転すればバネ弾性で噛み合い状態を実現することを可能にするためである。
【0048】
操作部95a、96aが再び非操作位置に移動すると、角度連動部材91と角度規制部材93とのギヤ部91a、93cを介した係り合い状態が解除されることとなるが、このとき引っ張りバネ93d、94d等が当該角度規制部材93,94を初期位置に復帰させるオフセット手段としての役割を果たしている。起立側角度規制部材94は、重心位置が軸よりもギヤ部94c側にあるため、その自重自体が起立側角度規制部材94を初期位置に保持するオフセット手段の一部として機能している。勿論、後傾側角度規制部材93においても同様の構成を採用することができる。
【0049】
以上により、第1の操作部95および第2の操作部96は、背3のロッキング動作中の何れの位置においても操作可能であって、第1の操作部95が操作されると、後傾側角度規制部材93が角度連動部材91に係り合って背3のそれ以上の後傾動作を禁止することによりロッキング終端側の角度位置を規制し、第2の操作部96が操作されると、起立側角度規制部材94が角度連動部材92に係り合って背3のそれ以上の起立動作を禁止することによりロッキング始端側の角度位置を規制することとなる。
【0050】
角度連動部材91,92の外周に設けたギヤ部91a、92aは、支軸60を中心とした円周上にあるため、所定範囲でどの角度位置に回転しても、角度規制部材93,94との相対距離を変化させずに、換言すれば角度規制部材93、94の接離動作時の作動距離を変化させずに、背3に連動することとなる。
【0051】
機構的な位置関係は、図2に示すように、支軸60回りの背フレーム31の回転に対して反力を作用させる主反力機構4と、支軸60回りの背フレーム31の回転に対して規制を加える角度規制部材93,94とは、ともに支軸60に対して交叉する方向に並列的に延在している。そして、支軸60から変位した部位に支軸60と平行な遊動軸63を有し、背フレーム31は前記支軸60回りに回転する際にこの遊動軸63を駆動して角度連動部材91,92を連動させるとともに反力機構4の反力伝達部64を駆動するものである。
【0052】
さらにまた、この実施形態の椅子は、上述した背3のロッキング動作時に、背3の位置が座5に対して可変となるように構成している。
【0053】
すなわち、図1に一部破砕して示すように、背3は、樹脂製のシェル30の前端側にクッション材32や張り地33を取り付けて構成されるもので、背面にブラケット34が取り付けられ、このブラケット34と背フレーム31の先端との間を、図1、図2及び図23等に示すリンク機構35および制御桿36からなる姿勢制御手段3Xによって接続している。リンク機構35は、傾動に応じて背3の適切な位置及び姿勢を実現すべく、ブラケット34と背フレーム31との間を一対のリンクメンバ35a、35bで接続して点3p、3q、3r、3sからなる4点リンク部35cを構成したものであり、制御桿36はさらに前記支持基部2と前記リンクメンバ35bとの間を連結する位置に配置されている。背支桿36のリンクメンバ35bへの枢着点36pは、4点リンク部35cから外れた位置に設定してある。制御桿36の回転中心は支持基部2の支点5gであり、背フレーム31の回転中心は支持基部2の支点5dであり、回転支点が異なることから、背フレーム31の傾動に伴って制御桿36が回転すると、図17に示すロッキング角度範囲A2で図13→図14→図15→図16に示すごとく制御桿36が4点リンク部35cを潰す方向に変形させて、背3の下端3aを座5の後方に沈み込む方向に移動させるとともに、背3のブラケット34を背フレーム31側に引き寄せ、これにより背3を座5に対して相対的に後方に遠ざかる方向に相対移動させるようにしている。
【0054】
背3の下端3aが沈み込む様子は図17から明らかであり、また、背3の前方に最も突出したランバーサポート部3Pに着目すれば、背3が座5から後方に逃げる様子も明らかである。背3の後傾速度は座5の後傾速度に比して速いため、背3と座5の交叉角度も図17に符号φで示すように後傾に伴って次第に広角になり、また、背3が座5から後方に移動することで、座面に実質的に着座できる領域が広がり、後傾するほどゆったりした姿勢で背座に凭れかかることができるようになる。このとき、図24に示すように、着座者の臀部が座面と接触している部分の後部位置5Pから衣類の捲れ上がりの基点となり易いランバーサポート部3Pまでの距離δを変化を抑止して、背3の傾動に伴って殆ど変化がないようにし、着座者の背に対して椅子の背3がせり上がることなく略一定高さに保つことを可能にしている。
【0055】
以上のように、本実施形態の椅子は、背3の傾動を支持する2つの反力機構4、8を備え、これらの反力機構4,8のうち、第1の傾動範囲である前傾角度範囲A1で作動するものと第2の傾動範囲であるロッキング角度範囲A2で作動するものとが両角度範囲A1,A2の境界位置で切り替わるように構成したものである。そして、境界位置から背凭れ荷重の変化に伴い前傾角度範囲A1側に背3の傾動が始まるときの第1の反力閾値f1と、境界位置から背凭れ荷重の変化に伴いロッキング角度範囲A2側に背3の傾動が始まるときの第2の反力閾値f2との間に、背凭れ荷重の変化が背3の傾動につながらない安定域Δfを設けている。
【0056】
このように構成することにより、前傾角度範囲A1で背3を傾動させて使用する態様と、ロッキング角度範囲A2で背3を傾動させて使用する態様とを、利用者が目的・用途に応じて適切に使い分けることができる。すなわち、上記実施形態のように第1の傾動範囲である前傾角度範囲A1よりも第2の傾動範囲であるロッキング角度範囲A2の方が傾動角度が大きい設定において、背3を比較的起立させて使用する前傾角度範囲A1では利用者は背3に軽く凭れて傾動機能を利用することができ、前傾角度範囲A1からロッキング角度範囲A2に移るときの境界位置では背凭れ荷重をある程度増大させても安定域Δfの範囲で背3が半固定状態となるために通常執務を安定して行うことができ、背3を深く傾動させて使用するロッキング角度範囲A2では利用者はロッキング状態で傾動機能を利用することができる。このため、背凭れ荷重の変化に応じて傾動が連続的に起こる通常の椅子に比べて、両角度範囲A1,A2においてそれぞれ背3の傾動を有効に利用することができるとともに、それらの境界位置やロッキング終端位置において背3を安定的に利用することができるため、目的・用途に応じてより多彩な利用の態様を実現することが可能となる。
【0057】
特に、本実施形態では第1の反力機構である補助反力機構8および第2の反力機構である主反力機構4を並列に設け、第1の傾動範囲である前傾角度範囲A1では補助反力機構8のみが作動し、第2の傾動範囲であるロッキング角度範囲A2では両反力機構4,8が同時に作動するように構成しているため、両角度範囲A1,A2の間に反力特性の変化をもたらす明確な境界を設けることが容易になるとともに、反力を広いレンジに亘って効果的に変化させる構成を容易に実現することが可能となる。
【0058】
特に、主反力機構4に、安定域Δfを構成する初期反力が与えてあるため、この初期反力を通じて前記安定域Δfを有効に実現することができ、また初期反力の大きさを変えることによって、安定域Δを自在に調節することが可能となる。
【0059】
また、補助反力機構8にも、第2の安定域Δf´を構成する初期反力を与えているため、背3が最大起立位置にある状態から当該背3に凭れた際に一定以上の背凭れ荷重を掛けない限り背3が後傾し始めることがなく、OA執務時における前傾姿勢を安定的にサポートすることが可能となる。
【0060】
さらに、OA執務時と安息時とでは、前者の背凭れ荷重の方が後者の背凭れ荷重に比して遥かに小さいことに鑑みて、第1の傾動範囲を、OA執務に適した前傾姿勢から通常執務に適した所定傾動位置までをバックアップする前傾角度範囲A1に設定し、第2の傾動範囲を、通常執務に適した所定傾動位置から安息に適した後傾姿勢までをバックアップするロッキング角度範囲A2に設定しているので、休息をとりながら長時間にわたってOA執務を行うようなオフィスワークに特に効果的に利用することが可能となる。
【0061】
具体的な反力特性としては、図18(c)に示したものでは第1の反力機構である補助反力機構8が後傾に伴って反力を略一定に保ち、第2の反力機構である主反力機構4が後傾に伴って反力を増大させるように構成されているが、これ以外にも、図24(a)に示すように、第1の反力機構である補助反力機構8が後傾に伴って反力を減少させ、第2の反力機構である主反力機構4が後傾に伴って反力を増大させるような態様ものや、図24(b)に示すように、第1の反力機構である補助反力機構8が後傾に伴って反力を増大させ、第2の反力機構である主反力機構4が後傾に伴って前記補助反力機構8よりも更に大きいバネ定数で反力を増大させる態様なども、有効に実現することができる。このような反力特性は、両反力機構4,8のバネ特性や背フレーム31等への取付位置を通じて適宜に設定することが可能である。
【0062】
なお、反力機構を3つ以上備えるなど、各部の具体的な構成は上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0063】
3…背
4…第2の反力機構(主反力機構)
8…第1の反力機構(補助反力機構)
A1…第1の傾動範囲(前傾角度範囲)
A2…第2の傾動範囲(ロッキング角度範囲)
f1…第1の反力閾値
f2…第2の反力閾値
Δf…安定域
Δf´…補助安定域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背の傾動を支持する反力機構を2以上備え、第1の傾動範囲で作動する反力機構の構成と第2の傾動範囲で作動する反力機構の構成とが両傾動範囲の境界位置で切り替わるものであって、境界位置から背凭れ荷重の変化に伴い第1の傾動範囲側に背の傾動が始まるときの第1の反力閾値と、境界位置から背凭れ荷重の変化に伴い第2の作動範囲側に背の傾動が始まるときの第2の反力閾値との間に、背凭れ荷重の変化が背の傾動につながらない安定域を設けたことを特徴とする椅子。
【請求項2】
第1、第2の反力機構が並列に設けられて、第1の傾動範囲で第1の反力機構のみが作動し、第2の傾動範囲で第1、第2の反力機構が作動するように構成されている請求項1記載の椅子。
【請求項3】
第2の反力機構に、安定域を構成する初期反力が与えられている請求項2記載の椅子。
【請求項4】
第1の反力機構に、起立位置で背凭れ荷重の変化が背の傾動につながらない補助安定域を構成する初期反力が与えられている請求項2又は3何れかに記載の椅子。
【請求項5】
第1の傾動範囲を通常姿勢からOA執務に適した前傾姿勢までをバックアップする前傾角度範囲に設定し、第2の傾動範囲を通常姿勢から安息に適した後傾姿勢までをバックアップするロッキング角度範囲に設定している請求項1〜4何れかに記載の椅子。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate


【公開番号】特開2010−158439(P2010−158439A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−2995(P2009−2995)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(000001351)コクヨ株式会社 (961)
【Fターム(参考)】