説明

椅子

【課題】異物が進入する可能性を少しでも低減させることができ、更に美観を損なうことなく、よりテーブル板を引き出し易い椅子を提供すること。
【解決手段】テーブル板11が肘掛部4に沿った姿勢でテーブル箱収納空間22に収容された状態から第1回転軸心13b回りに回転した場合にテーブル板11が肘掛部4の外部に引き出され、さらにその状態から第2回転軸心13c回りに回転した場合に座面2aの前部上方に載置面11cを構成する姿勢で配置される椅子1であって、テーブル板11が肘掛部4のテーブル箱収納空間22に収容された場合にテーブル板11の一部をテーブル箱収納空間22の開口から突出した状態に維持する係止部14aと、テーブル板11が肘掛部4のテーブル箱収納空間22に収容された状態でその開口を塞ぐ蓋部材4aとを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出し入れ可能なテーブル板を備えた椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、劇場や会議場等に配置される椅子において、使用者の任意に出し入れ可能なテーブル板を椅子の側部に設けたものがある(例えば特許文献1参照)。この椅子は、肘掛と椅子の脚を兼ねた側脚部を備えており、この側脚部にテーブル板が収納されている。側脚部は、その前面に開口を有し、その内部には開口と連通した収納空間が形成されている。テーブル板は、この収納空間に収納されており、椅子の座面の左右方向に沿って延在する第1回転軸心回りに回転して、肘掛部内から引き出された状態となり、その状態から第1回転軸心と交差する第2回転軸心回りに回転して、座面の前部上方に水平な状態に配置されるようになっている。
【0003】
この椅子は、テーブル板を引き出す際には、開口に指を入れてテーブル板の端部に形成された凹部に指をかけて引っ張り出すものである。
【0004】
また、このような椅子においては、側脚部内にテーブル板を収納する収納箱を設けることがある。収納箱を設けると、側脚部内の他の部分にテーブル板が、衝突することを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−313422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、テーブル板を引き出す開口は、開口から異物が進入する可能性を少しでも低減するため及び美観の観点から、小さめに形成されている。従って、テーブル板を引き出す際に、指を開口内部に入れ難く、テーブル板を引き出し損ねる可能性があるという問題があった。
【0007】
また、テーブル板の上でメモなどを書いていた際に、鉛筆を収納箱内に落としてしまった場合、収納箱内からその鉛筆を取り出すことが困難であるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明はこのような従来の問題に鑑み、異物が進入する可能性を少しでも低減させることができ、更に美観を損なうことなく、よりテーブル板を引き出し易い椅子を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、収納箱内に鉛筆などの異物を落とした際にも、容易にこれを取り出すことが可能な椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、所期の目的を達成するための本発明にかかる椅子は、上部に座面が構成された座部と、前記座部の座面よりも上方に延在する状態で前記座部の側方に配設し、内部に収納空間を有した肘掛部と、前記肘掛部との間に介在させた回転機構により前記収納空間に対して出し入れ可能に支持されたテーブル板とを備えた椅子であって、前記テーブル板が前記肘掛部の収納空間に収容された場合に前記テーブル板の一部を前記収納空間の開口から突出した状態に維持する係止部と、前記テーブル板が前記肘掛部の収納空間に収容された状態でその開口を塞ぐ蓋部材とを備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる椅子は、上部に座面が構成された座部と、前記座部の座面よりも上方に延在する状態で前記座部の側方に配設し、内部に収納空間を有した肘掛部と、前記肘掛部との間に介在させた回転機構により前記収納空間に対して出し入れ可能に支持されたテーブル板とを備えた椅子であって、前記テーブル板を収納するテーブル板収納箱を、前記肘掛部の収納空間に着脱可能に配設したことを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上述した椅子において、前記回転機構は、前記肘掛部に対して前記テーブル板を前記座部の左右方向に沿って延在する第1回転軸心回りに回転可能、かつこの第1回転軸心とは異なる方向に延在する第2回転軸心回りに回転可能に支持し、前記テーブル板が前記肘掛部に沿った姿勢で前記収納空間に収容された状態から前記第1回転軸心回りに回転した場合に前記テーブル板が前記肘掛部の外部に引き出され、さらにその状態から前記第2回転軸心回りに回転した場合に前記座面の前部上方に載置面を構成する姿勢で配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、肘掛部の収納空間に収納された状態でテーブル板の一部が開口から突出した状態となるため、収納空間の開口を小さく構成した場合にも外部に引き出す操作を容易に行うことが可能となる。しかも、テーブル板を収納空間に収納した状態では、収納空間の開口を蓋部材によって塞ぐことができるため、例えば応接室に設置した場合にも、椅子としても美観を何ら損なう恐れがない。
【0014】
また、本発明によれば、テーブル板収納箱が肘掛部の収納空間に着脱可能に配設してあるため、異物を落としても、テーブル板収納箱を肘掛部内から取り出すことによって、テーブル板収納箱内から容易に取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の実施の形態にかかる椅子を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1に示した椅子の断面側面図である。
【図3】図3は、図1に示した椅子の肘掛部を示すもので、(a)は蓋部材を閉めた状態を示す断面側面図、(b)は蓋部材を開けた状態を示す断面側面図である。
【図4】図4は、図1に示した椅子の要部を拡大して示す図である。
【図5】図5は、図3の(a)におけるA−A線断面図である。
【図6】図6は、図1に示した椅子の肘掛部に設けた蓋部材を開けた状態を示す平面図である。
【図7】図7は、図1に示した椅子のテーブル板収納箱を示す斜視図である。
【図8】図8は、図1に示した椅子の動作状態を示す斜視図である。
【図9】図9は、図1に示した椅子の動作状態を示す斜視図である。
【図10】図10は、図1に示した椅子の動作状態を示す斜視図である。
【図11】図11は、図1に示した椅子の動作状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明にかかる椅子の実施の形態を図1〜図11に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態である椅子を示している。この椅子1は、所謂応接用の椅子1であり、座部2と、左右一対の肘掛部3,4と、背もたれ部5とを備えている。
【0017】
座部2は、使用者が座る部分であり、略直方体状に形成され、上面が座面2aとなっている。座部2の後方には、背もたれ部5が配設されている。背もたれ部5は、使用者が座部2に座った際に背中で寄りかかる部分であり、座部2から上方に延在している。肘掛部3,4は、座部2の左右側方に配設されている。肘掛部3,4の上端は、それぞれ座部2の座面2aよりも上方に延在している。また、肘掛部3,4の下端は、座部2より下方にまで延在しており、座部2を支持する脚を兼ねている。これら肘掛部3,4の下面には、図2に示すようにキャスター6,7が配設されており、椅子1を持ち上げずに移動させることができるようになっている。
【0018】
一方側(図示の例では正面向かって左側)の肘掛部4は、図3の(a)及び図3の(b)に示すように、上端が開口した肘掛部外殻4bと、肘掛部外殻4bの開口を開閉可能に配設された蓋部材4aとを有する。肘掛部外殻4bは、上端が開口した直方体箱状に形成されている。肘掛部外殻4bの内部には、テーブル板11及びテーブル板収納箱21が配設されている。
【0019】
テーブル板11は、略平板状を成し、長手方向の一方側端部が円弧状となるように形成されたもので、肘掛部4に沿った姿勢で肘掛部外殻4bの内部に収容されている。テーブル板11の長手方向の他方側端部であって、短手方向の他方側端部には、取り出し部11aが形成されている。取り出し部11aには、引っ掛け部11bが形成されている。引っ掛け部11bは、略円形状に開口した凹部であり、テーブル板11を引き出す際に、指を引っ掛ける部分である。
【0020】
また、テーブル板11の長手方向の他方側端部であって、短手方向の一方側端部には、回転機構取付部12が形成されている。回転機構取付部12は、略板状に形成され、テーブル板11の裏面に重ね合わされるように配設されている。回転機構取付部12には、回転機構13が取り付けられている。テーブル板11は、この回転機構13を介して、肘掛部外殻4bの取付ブラケット14に取り付けられている。
【0021】
回転機構13は、ヒンジプレート13aと、ヒンジプレート13a及び取付ブラケット14の間を回転可能に支持させる第1回転軸心13bと、ヒンジプレート13a及び回転機構取付部12の間を回転可能に支持させる第2回転軸心13cとを有して構成したものである。第1回転軸心13bは、座面2aの左右方向に沿って延在するように配設されている。即ち、第1回転軸心13bは、椅子1を水平面上に設置した際に、座部2の左右方向に沿って水平に延在するように配設されている。第2回転軸心13cは、第1回転軸心13bに対してねじれの位置の関係となり、かつ第1回転軸心13bに対して略直交する平面上に位置するように配設されている。
【0022】
取付ブラケット14とヒンジプレート13aとの間には、係止部14aが形成されている。係止部14aは、テーブル板11が肘掛部4の内部に収容された状態で、テーブル板11の取り出し部11aが肘掛部4の外部に突出するようにテーブル板11を係止するためのものである。本実施の形態の係止部14aは、ヒンジプレート13aに当接することによってその回転範囲を制限するもので、図4に示すように、取付ブラケット14においてヒンジプレート13aの回転移動域に一体に形成されている。ヒンジプレート13aがこの係止部14aに当接した場合には、図3の(b)に示すように、テーブル板11の収納位置が規定され、テーブル板11の取り出し部11aが開口から外部に突出した位置に維持されることになる。
【0023】
テーブル板収納箱21は、テーブル板11が肘掛部外殻4bの内部に収納された場合にその周囲を覆うケース状部材であり、図3の(a)及び図3の(b)に示すように、側面視が略扇形状を成している。テーブル板収納箱21の内部は、テーブル箱収納空間22を構成している。テーブル板収納箱21は、扇形の中心が肘掛部4の前側上部に位置するように配設されている。テーブル板収納箱21の上面は、長方形状に開口しており、その開口縁は、フランジ状に形成されたフランジ部21aとなっている。このフランジ部21aを、図5に示すように、肘掛部外殻4bの箱支持部4c上に載置するようにして、テーブル板収納箱21を肘掛部外殻4bに設置支持させている。従って、テーブル板収納箱21は、持ち上げるだけで、肘掛部外殻4bから外部に取り出すことができる。即ち、テーブル板収納箱21は、肘掛部外殻4bに対して着脱可能に配設されている。箱支持部4cは、肘掛部外殻4bの開口内周に沿って配設されるよう略コ字形に形成されている。箱支持部4cの上部端面にフランジ部21aが載置されている。
【0024】
テーブル板収納箱21内には、図6に示すように、テーブル板収納箱21の開口の短手方向一方側に片寄せてテーブル板11が配設されている。また、図3の(b)及び図7に示すように、テーブル板収納箱21の前面上部も開口しており、取付ブラケット14が挿通されるようになっている。
【0025】
テーブル板収納箱21には、ガイド部21bが形成されている。ガイド部21bは、図5及び図6に示すように、テーブル板収納箱21の後方側の上部に、上から下に向かって狭まる方向に傾斜するように形成されている。また、ガイド部21bは、テーブル板収納箱21の短手方向他方側に形成されている。即ち、ガイド部21bは、収納されているテーブル板11の裏面と向き合う位置に形成されている。テーブル板11を収納する際には、ガイド部21bによってテーブル板11が確実にテーブル板収納箱21内に案内されるようになっている。
【0026】
テーブル板収納箱21の開口は、蓋部材4aによって開閉されるようになっている。蓋部材4aは、略矩形板状に形成され、短手方向一端部が肘掛部外殻4bに軸支されている。従って、蓋部材4aは、短手方向一端側を中心として回転することにより、開口を開閉するようになっている。また、蓋部材4aの裏側には、図3の(a)に示すように、テーブル板11をテーブル板収納箱21に収納した状態の際に蓋部材4aを閉じた状態とした場合に、テーブル板11の開口より突出した端部と干渉しないように、凹部31が設けられている。
【0027】
上述のように構成された椅子1は、図1に示すテーブル板11が収納された状態から、蓋部材4aを回転させて開口を開放した状態とし、テーブル板11を第1回転軸心13b回りに回転すれば、図8の状態を経て、図9に示すように、肘掛部4のテーブル板収納箱21から外部に引き出した状態とすることができる。更に、その状態からテーブル板11を第2回転軸心13c回りに回転させれば、図10及び図11に示すように、座面2aの前部上方に載置面11cを構成する姿勢でテーブル板11を水平な状態に配置することができる。
【0028】
一方、この状態から、テーブル板11を第2回転軸心13c回りに先程とは逆の方向に回転させれば、テーブル板収納箱21の開口延長域においてテーブル板11を肘掛部4に沿った姿勢とすることができ、更に、第1回転軸心13b回りに先程とは逆に回転させれば、テーブル板11を肘掛部4のテーブル板収納箱21に収納した状態とすることができる。そして、蓋部材4aを回転させて、図1に示すように閉じた状態とすることができる。この状態においては、肘掛部4の開口やテーブル板11が外部に露出しないため、椅子1としての美観を何ら損なう恐れがない。
【0029】
一方、蓋部材4aを開放すれば、テーブル板11は、図3の(b)及び図5に示すように、テーブル板収納箱21内に収納された状態において、テーブル板11の取り出し部11aの端部がテーブル板収納箱21の開口及び肘掛部外殻4bの開口よりも突出しているので、使用者は、引っ掛け部11bに指をかけ易い。従って、使用者は、容易にテーブル板11を引き出すことができる。これにより、肘掛部外殻4bの開口及びテーブル板収納箱21の開口を小さく構成することができ、テーブル板11を外部に引き出した状態であっても、テーブル板収納箱21の内部に異物が進入する可能性を低減させることが可能になる。
【0030】
また、テーブル板収納箱21は、肘掛部4内に着脱可能に配設されているので、仮に鉛筆などの物体が、テーブル板収納箱21内に落ちた場合でも、テーブル板収納箱21自体を肘掛部4から取り出して、物体を容易に取り出すことができる。
【0031】
尚、本実施の形態においては、蓋部材4aの裏側に凹部を設けた形状としているが、テーブル板11がテーブル板収納箱21内に収納された状態において、テーブル板収納箱21の開口から突出したテーブル板11の取り出し部11aの端部が、蓋部材4aと干渉せず、開口を閉塞状態とすることができる形状であればよい。即ち、開口から突出したテーブル板11の取り出し部11aの端部が収納される空間があればよい。
【0032】
また、本実施の形態においては、テーブル板11がテーブル板収納箱21内に収納された状態において、テーブル板11の取り出し部11aの端部が、テーブル板収納箱21の開口から突出するように取付ブラケット14に係止部14aを設けているが、テーブル板収納箱21内にテーブル板11と当接してテーブル板11をそれ以上回転させないような係止部を設けてもよい。
【0033】
さらに、本実施の形態では、肘掛部の上端にテーブル板を出し入れするための開口を設けるようにしているが、肘掛部の前端等、端面に開口を設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 椅子
2 座部
2a 座面
3,4 肘掛部
4a 蓋部材
4b 肘掛部外殻
4c 箱支持部
5 背もたれ部
11 テーブル板
11a 取り出し部
11b 引っ掛け部
11c 載置面
12 回転機構取付部
13 回転機構
13a ヒンジプレート
13b 第1回転軸心
13c 第2回転軸心
14 取付ブラケット
14a 係止部
21 テーブル板収納箱
21a フランジ部
21b ガイド部
22 テーブル箱収納空間
31 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に座面が構成された座部と、
前記座部の座面よりも上方に延在する状態で前記座部の側方に配設し、内部に収納空間を有した肘掛部と、
前記肘掛部との間に介在させた回転機構により前記収納空間に対して出し入れ可能に支持されたテーブル板と
を備えた椅子であって、
前記テーブル板が前記肘掛部の収納空間に収容された場合に前記テーブル板の一部を前記収納空間の開口から突出した状態に維持する係止部と、
前記テーブル板が前記肘掛部の収納空間に収容された状態でその開口を塞ぐ蓋部材と
を備えたことを特徴とする椅子。
【請求項2】
上部に座面が構成された座部と、
前記座部の座面よりも上方に延在する状態で前記座部の側方に配設し、内部に収納空間を有した肘掛部と、
前記肘掛部との間に介在させた回転機構により前記収納空間に対して出し入れ可能に支持されたテーブル板と
を備えた椅子であって、
前記テーブル板を収納するテーブル板収納箱を、前記肘掛部の収納空間に着脱可能に配設したことを特徴とする椅子。
【請求項3】
前記回転機構は、前記肘掛部に対して前記テーブル板を前記座部の左右方向に沿って延在する第1回転軸心回りに回転可能、かつこの第1回転軸心とは異なる方向に延在する第2回転軸心回りに回転可能に支持し、
前記テーブル板が前記肘掛部に沿った姿勢で前記収納空間に収容された状態から前記第1回転軸心回りに回転した場合に前記テーブル板が前記肘掛部の外部に引き出され、さらにその状態から前記第2回転軸心回りに回転した場合に前記座面の前部上方に載置面を構成する姿勢で配置されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−217845(P2011−217845A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88076(P2010−88076)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】