椅子
【課題】製造に高い技術力や手間を必要とせずに、座り心地のよい椅子を提供する。
【解決手段】椅子本体A2に座板A3及び背板A4を支持させてなる椅子A1であって、前記座板A3及び背板A4の少なくとも一方が、厚み方向に撓み可能な複数本の帯状部材A61を隣接させて配するとともに、隣り合う帯状部材A61同士を当該帯状部材A61よりも幅の狭い接続片A62により直線で接続するよりも長い経路をもってそれぞれ弾性変形可能に接続した構造をなす板材A31を備える。
【解決手段】椅子本体A2に座板A3及び背板A4を支持させてなる椅子A1であって、前記座板A3及び背板A4の少なくとも一方が、厚み方向に撓み可能な複数本の帯状部材A61を隣接させて配するとともに、隣り合う帯状部材A61同士を当該帯状部材A61よりも幅の狭い接続片A62により直線で接続するよりも長い経路をもってそれぞれ弾性変形可能に接続した構造をなす板材A31を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、学校用または事務用等として好適に使用される椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の椅子では、比較的長時間着座されることが少なくないため、座り心地が重視され、種々の改善がなされてきた。近時、非常に座り心地のよい椅子として、枠材に張設したメッシュにより着座者の荷重を弾性的に受けるようにしたメッシュタイプの椅子が開発されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
ところが、このようなメッシュタイプの椅子では、枠材にメッシュを適切な張力をもって張り設ける必要があり、その支持構造が複雑であるとともに、その張設作業に高い技術力が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−202591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような事情に着目してなされたものであり、製造に高い技術力や手間を必要とせずに、座り心地のよい椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以上のような課題を解決するために、次のような構成を採用したものである。すなわち、本発明に係る椅子は、椅子本体に座板及び背板を支持させてなるものであって、前記座板及び背板の少なくとも一方が、厚み方向に撓み可能な複数本の帯状部材を隣接させて配するとともに、隣り合う帯状部材同士を当該帯状部材よりも幅の狭い接続片により直線で接続するよりも長い経路をもってそれぞれ弾性変形可能に接続した構造をなす板材を備えたものであることを特徴とする。
【0007】
このようなものであれば、板材により着座者の荷重を弾性的に受けるようにしているので、従来のような枠材にメッシュを張り設けたものに比べて製造に高い技術力や手間を必要とせずに、座り心地のよい椅子となる。すなわち、前記各帯状部材が、厚み方向に撓みながら着座者の荷重を主として受けるとともに、これら各帯状部材よりも幅の狭い各接続片が帯状部材の相対変位に伴って変形し、これら各帯状部材の動きを適切なものにしている。そのため、板材が着座者の荷重に応じて撓み変形し、座り心地のよいものとなる。
【0008】
前記板材が、椅子本体に支持される周縁部と、この周縁部の内側に位置する中間部とを有し樹脂で一体に成形されたものである場合の好適な一態様としては、前記中間部の特定箇所が、前記帯状部材及び接続片を備えた構造をなしているものが挙げられる。
【0009】
前記各帯状部材が、対向する前記周縁部の2箇所をつなぐように配置されたものである場合の好適な一態様としては、前記周縁部の2箇所を直線で接続するよりも長い経路をもって弾性変形可能に接続し得る形状をなしているものが挙げられる。
【0010】
前記各帯状部材は、直線に対する余剰長さを相互に異ならせたものであることが好ましい。具体的には、前記各帯状部材の余剰長さが、漸次変化するように設定されているものや、特定の帯状部材の余剰長さが、他の帯状部材の余剰長さと異なるように設定されているものが考えられる。
【0011】
前記各帯状部材が、環状をなすものである場合の好適な一態様としては、複数の帯状部材が同心円状に配列されているものが挙げられる。ここで、「同心円状」には、中心を同じくする円、楕円、多角形状等の形状も含まれる。
【0012】
前記板材が、前記座板を構成するものである場合の好適な一態様としては、前記中間部の左右の隣接する2箇所に前記特定箇所を設定し、それらの特定箇所にそれぞれ前記帯状部材及び接続片を配置しているものが挙げられる。
【0013】
前記帯状部材及び接続片は、ほぼ同一面内に配置されており、各帯状部材及び各接続片の少なくとも一方が波状をなしているものが好ましい。ここで、「同一面」には、平面や曲面が含まれる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以上のような構成であるから、製造に高い技術力や手間を必要とせずに、座り心地のよい椅子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態を示す全体斜視図。
【図2】同実施形態の背面側を示す全体斜視図。
【図3】同実施形態の座板を示す平面図。
【図4】同実施形態の座板を示す斜視図。
【図5】本発明の第2実施形態を示す全体斜視図。
【図6】同実施形態の背面側を示す全体斜視図。
【図7】同実施形態の側断面図。
【図8】本発明の第3実施形態の要部を示す分解斜視図。
【図9】同実施形態の椅子を模式的に示す側面図。
【図10】本発明の第4実施形態を示す全体斜視図。
【図11】同実施形態の椅子の使用態様を模式的に示す側面図。
【図12】同実施形態の椅子の使用態様を模式的に示す側面図。
【図13】本発明の第5実施形態を示す板材の平面図。
【図14】本発明の取付体の変形例を模式的に示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の第1実施形態について図1ないし図4を参照して説明する。
【0017】
この実施形態は、本発明を上下方向にスタッキング可能な椅子A1に適用したものである。この椅子A1は、椅子本体A2に座板A3及び背板A4を支持させてなるものである。
【0018】
椅子本体A2は、図1及び図2に示すように、接地体A211を介して床上に載置される左右のベースA21と、これら各ベースA21の前端から上方に延出する左右の前脚A22と、前記各ベースA21の後端から上方に延出する左右の後脚A23と、これら後脚A23の上端間に架設された後フレームA24と、この後フレームA24の両端近傍部と前記前脚A22の上端とを繋ぐ左右の側フレームA25と、これら側フレームA25の前端近傍部間に架設された前フレームA26と、前記後脚A23の上端から上方に延出する左右の背フレームA27とを備えてなる。前記ベースA21、前脚A22、後脚A23、側フレームA25、及び、背フレームA27は、共通の金属線材を折曲げることにより一体に構成されたもので、前記座板A3及び背板A4に作用する荷重を受けることが可能な強度を備えている。そして、前記左右の側フレームA25に前記座板A3を支持させている。また、本実施形態においては、前記椅子本体A2に前記座板A3を取り付けた状態で、前記前フレームA26と前記座板A3との間に当該座板A3の下方への撓みを許容できるだけの隙間が形成されるように設定してある。
【0019】
座板A3は、図1ないし図4に示すように、板材A31と、この板材A31の下面に突設した取付体A32とを備えたもので、この実施形態においては、樹脂により一体に成形されている。
【0020】
板材A31は、図1ないし図4に示すように、椅子本体A2の左右の側フレームA25に支持される周縁部A5と、この周縁部A5の内側に位置する中間部A6とを有し樹脂で一体に成形されたものであり、前記中間部A6の特定箇所、この実施形態では、中間部A6の全域が、前記帯状部材A61及び接続片A62を備えた構造をなしている。
【0021】
前記周縁部A5は、図1ないし図4に示すように、中間部A6の左右両側に位置する側縁部分A51と、中間部A6の後側に位置する後縁部分A52と、中間部A6の前側に位置する前縁部分A53とを備えたものである。前記側縁部分A51は、前記側フレームA25を包み込むように下方に湾曲している。前記後縁部分A52は、後上方に向けて湾曲している。前記前縁部分A53は、前下方に向けて湾曲している。
【0022】
前記中間部A6は、図1ないし図4に示すように、厚み方向に撓み可能な複数本の帯状部材A61を隣接させて配するとともに、隣り合う帯状部材A61同士を当該帯状部材A61よりも幅の狭い接続片A62により直線で接続するよりも長い経路をもってそれぞれ弾性変形可能に接続した構造をなしている。
【0023】
前記各帯状部材A61は、図1ないし図4に示すように、対向する前記周縁部A5の2箇所をつなぐように配置されたものであり、前記周縁部A5の2箇所を直線で接続するよりも長い経路をもって弾性変形可能に接続し得る形状をなしている。この実施形態では、各帯状部材A61は、周縁部A5の左右の側縁部分A51を、同じ前後方向位置同士で接続している。前記各帯状部材A61は、直線に対する余剰長さを相互に異ならせたものであり、特定の帯状部材A61の余剰長さが、他の帯状部材A61の余剰長さと異なるように設定されている。詳述すれば、前記中間部A6の中央付近の帯状部材A61の余剰長さは、前記中間部A6の前側及び後側の帯状部材A61の余剰長さよりも長くなるようにしている。換言すれば、着座者の臀部を受ける部分の帯状部材A61の余剰長さが最も長く設定されており、その帯状部材A61から周縁部A5の前縁部分A53及び後縁部分A52に向かって漸次帯状部材A61の余剰長さが短くなるように設定されている。
【0024】
前記各接続片A62は、図1ないし図4に示すように、隣接する帯状部材A61の2箇所をつなぐように配置されたものであり、前記帯状部材A61の2箇所を直線で接続するよりも長い経路をもって弾性変形可能に接続し得る形状をなしている。この実施形態では、各接続片A62は、一の帯状部材A61の前縁と、その一の帯状部材A61の前方に隣接配置される他の帯状部材A61の後縁とを、同じ左右方向位置同士で接続している。前記各接続片A62は、直線に対する余剰長さを相互に異ならせたものであり、特定の接続片A62の余剰長さが、他の接続片A62の余剰長さと異なるように設定されている。詳述すれば、前記中間部A6の中央付近の接続片A62の余剰長さは、前記中間部A6の左右両側の接続片A62の余剰長さよりも長くなるようにしている。換言すれば、着座者の臀部を受ける部分の接続片A62の余剰長さが最も長く設定されており、その接続片A62から周縁部A5の左右の側縁部分A51に向かって漸次帯状部材A61の余剰長さが短くなるように設定されている。そして、これらの帯状部材A61及び接続片A62が、ほぼ同一面内に配置されており、各帯状部材A61及び各接続片A62は、それぞれ波状をなしている。
【0025】
取付体A32は、図1及び図2に示すように、前記側縁部分A51の下面に一体に設けられている。この取付体A32は、横断面C字形をなす溝A321を有したもので、その溝A321を前記側フレームA25に係わり合わせることにより、前記座板A3を前記椅子本体A2に取り付けている。
【0026】
背板A4は、図1及び図2に示すように、両側縁に下方に開口する取付孔A41を備えたもので、その取付孔A41を前記背フレームA27に嵌め合わせることによって、この背板A4を椅子本体A2に支持させている。
【0027】
以上に述べたように、第1実施形態に係る椅子A1は、椅子本体A2に座板A3及び背板A4を支持させてなる椅子A1であって、前記座板A3が、厚み方向に撓み可能な複数本の帯状部材A61を隣接させて配するとともに、隣り合う帯状部材A61同士を当該帯状部材A61よりも幅の狭い接続片A62により直線で接続するよりも長い経路をもってそれぞれ弾性変形可能に接続した構造をなす板材A31を備えたものである。そのため、前記座板A3の全部または主要部を樹脂による一体成形により製造することができ、枠材にメッシュを張り設ける場合のような高い技術力や手間を必要としない。しかも、接続片A62が直線で接続するよりも長い経路をもって弾性変形可能に接続しているので、接続片A62自体の素材の伸縮だけではなく、前記接続片A62が変形部を形成することになり、この接続片A62が接続されている帯状部材A61が変形しやすくなり、板材A31により着座者の荷重を弾性的に受けることができるため、座り心地のよい椅子A1となる。特に実施形態のように、帯状部材A61及び接続片A62の余剰長さを荷重分布に応じて設定しておけば、座板全体の強度を保ちつつ、荷重を直接受ける部分は撓み易くすることができる。
【0028】
すなわち、前記各帯状部材A61が、厚み方向に撓みながら着座者の荷重を主として受けるとともに、これら各帯状部材A61よりも幅の狭い各接続片A62が、厚み方向に撓みながら着座者の荷重を補助的に受けつつ、前記各帯状部材A61の動きを制御しているので、帯状部材A61の本数や余剰長さ、或いは接続片A62の形成箇所や余剰長さ等を適宜設定することにより、種々の特性を有した座り心地のよい座板を作ることができる。したがって、荷重に応じた適切な弾性を有する座板A3を容易に設計することが可能になる。
【0029】
特に前記実施形態においては、前記周縁部A5と中間部A6とを有した板材A31と、取付体A32とを樹脂により一体に成形しているので、部品点数が少なくて済み、また、枠材にメッシュを張り設ける場合に比べて、組立に要する工数を大幅に削減することが可能になる。さらにこの板材A31は樹脂で一体成形されたものであるため、メッシュタイプに較べて強度が高く、破れたり、切れたり、摺り減るおそれが少ない。すなわち、メッシュタイプのものは、細い糸を編んだり織ったりしているので、全体がほつれる可能性があるが、本実施形態の板材A31は、上記のように板材A31が一部破損しても、メッシュタイプのように破損が全体に広がることを抑制できる。
【0030】
前記中間部A6の特定箇所、本実施形態では着座者の臀部及び大腿部を受ける部分が、前記帯状部材A61及び接続片A62を備えた構造をなしているので、座板A3の周辺領域はフレームでしっかり支持されるが、内側領域はソフトな座り心地を得ることができる。
【0031】
また、前記中間部A6が、波状をなす帯状部材A61及び接続片A62を複数備えているので、これらが厚み方向に撓み、座り心地がよい。さらに、前記帯状部材A61及び接続片A62が、ほぼ同一平面内に配置されているので、中間部A6に厚み方向の極端な突出がなく、フラットな座り心地が得られる。
【0032】
さらに、各帯状部材A61が、対向する前記周縁部A5、換言すれば左右の側縁部分A51の2箇所をつなぐように配置されたものであり、前記周縁部A5の2箇所を直線で接続するよりも長い経路をもって弾性変形可能に接続し得る形状をなしているので、帯状部材A61の素材の伸縮だけではなく、前記経路の余剰長さ分が撓み代となるため、前記帯状部材A61が曲げ方向に変形する許容範囲が大きくなり、座板A3が柔軟性に富んだものとなる。特に、左右の側縁部分A51間における余剰長さが長いほど撓み易く、本実施形態においては、この余剰長さが他の部分よりも長い前後方向中間部よりもやや後側が最も撓み易くなっている。そして、前記各帯状部材A61は左右の側縁部分A51をつないでいるので、各帯状部材A61によってしっかりと荷重を受けることができる。また、接続片A62は、隣接する帯状部材A61同士を適切な余剰長さをもって接続しているため、ある帯状部材A61に集中的に荷重がかかったときや、着座姿勢の変化が起こったとき等、帯状部材A61に前後左右方向の力がかかったときでも、各帯状部材A61の撓み特性を損なわずに隣接する帯状部材A61に力を分散して、座板A3全体として適切な撓みを得ることができる。
【0033】
前記各帯状部材A61及び各接続片A62がそれぞれ、直線に対する余剰長さを相互に異ならせたものであるため、座板A3の柔軟性を各部において適切に異ならせることが可能になる。具体的には、着座者の臀部を受ける部分を、他の帯状部材A61や接続片A62の余剰長さよりも長く設定しているので、着座者の臀部を受ける部分を他の部分に比べて大きく撓ませることができる。したがって、部分によって変形許容量を異ならせることができ、心地よい座り心地を与えることができる。
【0034】
また、周縁部A5は、上述したように湾曲しているため座板A3として必要な高い剛性を有することとなる。
【0035】
次に、本発明の第2実施形態について図5ないし図7を参照して説明する。
【0036】
この実施形態は、本発明を前後方向にネスティング可能な椅子B1に適用したものである。この椅子B1は、椅子本体B2に座板B3及び背板B4を支持させてなるものである。
【0037】
椅子本体B2は、図5ないし図7に示すように、下端にキャスタB211を有した左右の前脚B21と、下端にキャスタB221を有した左右の後脚B22と、これら後脚B22の上端と前記前脚B21の上端とをそれぞれ繋ぐ左右の側フレームB24と、これら側フレームB24の前端近傍部間に架設された前フレームB25と、これら側フレームB24の後端近傍部間に架設された後フレームB23と、この後フレームB23に基端部B28を回転可能に支持させた左右の支持フレームB26と、前記後脚B22の上端から上方に延出する左右の背フレームB27とを備えてなる。前記前脚B21と側フレームB24とは、共通の金属パイプ材を折曲げることにより一体に構成されたもので、側フレームB24の後端は後脚B22の上端に溶接等により剛結されている。前記前脚B21、後脚B22、側フレームB24、前フレームB25、後フレームB23、支持フレームB26、及び背フレームB27は、前記座板B3及び背板B4に作用する荷重を受けることが可能な強度を備えている。そして、前記支持フレームB26の前端部及び後端部に前記座板B3を支持させており、座板B3が略水平になる使用位置(U)と座板B3が背板B4と略平行になる図示しない跳ね上げ位置との間で回動し得るようになっている。支持フレームB26の中間部B29には凹陥部B291が形成されており、前記使用位置(U)においてこの凹陥部B291が前フレームB25に係わり合うようになっている。なお、前記左右の前脚B21間の距離は、前記左右の後脚B22間の距離よりも小さく設定されており、座板B3を跳ね上げた状態で同一の構造をなす他の椅子とネスティング可能になっている。
【0038】
座板B3は、図5ないし図7に示すように、板材B31と、この板材B31の下面に突設した前後の取付体B32、B33とを備えたもので、この実施形態においては、樹脂により一体に成形されている。
【0039】
板材B31は、図5ないし図7に示すように、椅子本体B2の左右の支持フレームB26に支持される周縁部B5と、この周縁部B5の内側に位置する中間部B6とを有し樹脂で一体に成形されたものであり、前記中間部B6の特定箇所、この実施形態では、中間部B6の全域が、前記帯状部材及び接続片を備えた構造をなしている。
【0040】
前記周縁部B5は、図5ないし図7に示すように、中間部B6の左右両側に位置する側縁部分B51と、中間部B6の後側に位置する後縁部分B52と、中間部B6の前側に位置する前縁部分B53とを備えたものである。
【0041】
前記中間部B6は、前記第1実施形態と同じ構造をなしており、図5ないし図7では、詳しい形態を省略して、中間部B6を網掛けで示している。
【0042】
取付体B32、B33は、図6及び図7に示すように、前記前縁部分B53及び後縁部分B52の下面に一体に設けられている。前の取付体B32は、前記周縁部B5の前縁部分B53に設けられ、後の取付体B33は、前記周縁部B5の後縁部分B52に設けられている。前の取付体B32に支持フレームB26の前端部を前後方向にスライド可能に取り付けるとともに、後の取付体B33に支持フレームB26の後端部を離脱不能に取り付けている。そして、前記前後の取付体B32、B33間は、前記支持フレームB26と前記座板B3の中間部B6とが隙間B34を介して離間しており、その隙間B34によって前記中間部B6の厚み方向の弾性変形を許容している。
【0043】
背板B4は、図5ないし図7に示すように、両側縁に下方に開口する取付孔B41を備えたもので、その取付孔B41を前記背フレームB27に嵌め合わせることによって、この背板B4を椅子本体B2に支持させている。
【0044】
このような構成のものであれば、従来のネスティング可能な椅子と同様に使用することができる上に、座板に関しては前述した第1実施形態に準じた効果が得られる
次に、本発明の第3実施形態について図8及び図9を参照して説明する。
【0045】
この実施形態は、本発明を背板C4と座板C3とが一定の比率で同期して傾動するシンクロロッキング可能な椅子C1に適用したものである。この椅子C1は、椅子本体C2に座板C3及び背板C4を支持させてなるものである。
【0046】
椅子本体C2は、図8及び図9に示すように、キャスタC211を有する脚C21と、この脚C21の上端に支持される支持基部C22と、この支持基部C22に傾動可能に支持される背支桿C23と、この背支桿C23及び前記支持基部C22の上方に配された座受C24と、この座受C24を前記支持基部C22及び背支桿C23に支持させる支持機構C25とを備えてなる。前記座受C24は、環状をなす座フレームC26と、この座フレームC26の四隅に設けられた取付板C27と、前記支持機構C25と連結するための前連結部C28及び後連結部C29とを備えてなる。そして、前記座フレームC26に座板C3を載置し、前記取付板C27に挿通させた図示しないボルト等の止着具により前記座フレームC26に前記座板C3を固定した状態で支持させている。前記支持機構C25は、例えば、図9に模式的に示すように、座フレームC26の前連結部C28を支持基部C22の前端部に連結する自由端構造をなす前リンク要素C251と、背支桿C23の中間部に設けられ前記座フレームC26の後連結部C29を回動可能に支持する座取付部C252とを具備してなる。
【0047】
座板C3は、図8及び図9に示すように、樹脂製の板材C31と、この板材C31の下面側に設けられた図示しない埋設ナットとを備えたもので、前記取付板C27に挿通させた止着具が前記埋設ナットに螺着されるようになっている。
【0048】
板材C31は、図8及び図9に示すように、椅子本体C2の座フレームC26に支持される周縁部C5と、この周縁部C5の内側に位置する中間部C6とを有し樹脂で一体に成形されたものであり、前記中間部C6の特定箇所、この実施形態では、中間部C6の全域が、前記帯状部材及び接続片を備えた構造をなしている。
【0049】
前記周縁部C5は、図8及び図9に示すように、中間部C6の左右両側に位置する側縁部分C51と、中間部C6の後側に位置する後縁部分C52と、中間部C6の前側に位置する前縁部分C53とを備えたものである。前記側縁部分C51は、前記座フレームC26を包み込むように下方に湾曲している。前記後縁部分C52は、後上方に向けて湾曲している。前記前縁部分C53は、前下方に向けて湾曲している。
【0050】
前記中間部C6は、前記第1実施形態と同じ構造をなしており、図8では、詳しい形態を省略して、中間部C6を網掛けで示している。
【0051】
背板C4は、図9に示すように、前記背支桿C23の上端部に取り付けられることで、この背板C4を椅子本体C2に支持させており、前記背支桿C23と一体的に後傾動作を行うようになっている。
【0052】
このような構成のものであれば、従来のシンクロロッキング可能な椅子と同様に使用することができる上に、座板に関しては前述した第1実施形態に準じた効果が得られる。特に、この実施形態では、図8に示すように、座枠C24の前連結部C28及び後連結部C29が、座板C3の撓む範囲下で座フレームC26の左右を連結する構造ではないため、座板C3の下方への撓み変形を阻害するものが存在しない。したがって、座板C3の変形し得る範囲を大きく設定することも可能である。
【0053】
次に、本発明の第4実施形態について図10ないし図12を参照して説明する。
【0054】
この実施形態は、本発明を上下方向にスタッキングすることも前後方向にネスティングすることも可能な椅子D1に適用したものである。この椅子D1は、椅子本体D2に座板D3及び背板D4を支持させてなるものである。
【0055】
椅子本体D2は、図10に示すように、接地体D211を介して床上に載置される左右のベースD21と、これら各ベースD21の前端から上方に延出する左右の前脚D22と、前記各ベースD21の後端から上方に延出する左右の後脚D23と、これら後脚D23の上端間に架設された後フレームD24と、この後フレームD24の両端近傍部と前記前脚D22の上端とを繋ぐ左右の側フレームD25と、これら側フレームD25の前端近傍部間に架設された前フレームD26と、前記後脚D23の上端から上方に延出する左右の背フレームD27とを備えてなる。前記ベースD21、前脚D22、後脚D23、側フレームD25、及び、背フレームD27は、共通の金属線材を折曲げることにより一体に構成されたもので、前記座板D3及び背板D4に作用する荷重を受けることが可能な強度を備えている。そして、座板D3は、左右の側フレームD25と前フレームD26に載置されるとともに、前記後フレームD24に回動可能に支持されており、図10及び図11に示すように座板D3が略水平になる使用位置(U)と、図12に示すように座板D3が背板D4と略平行になる跳ね上げ位置(L)との間で回動し得るようになっている。
【0056】
なお、第1実施形態と同様に、左右のベースD21同士の離間距離は、前記左右の側フレームD25の離間距離よりも大きく設定してあり、図11に示すように、同一の構造をなす他の椅子D1と上下方向にスタッキング可能になっている。特に、図11に示すような上下方向にスタッキングする際には、上下方向に隣接する上の椅子D1の設置体D211の下面が、下の椅子D1のベースD21の上面に載るかたちとなり、上下の椅子D1の座板D3同士が直接接触しないように設定されている。そのため、上下方向にスタッキングした際に、上の椅子D1の座板D3は、跳ね上げ方向に浮き上がらないようになっている。
【0057】
また、前記左右の前脚D21間の距離は、前記左右の後脚D22間の距離よりも小さく設定されており、図12に示すように、座板D3を跳ね上げた状態で同一の構造をなす他の椅子とネスティング可能になっている。すなわち、前記左右の側フレームD25同士の離間距離、及び左右のベースD21同士の離間距離は、それぞれ前方に向かって漸次小さくなるように設定されている。
【0058】
座板D3は、図10に示すように、板材D31と、この板材D31の下面に突設した取付体D32とを備えたもので、この実施形態においては、樹脂により一体に成形されている。
【0059】
板材D31は、図10に示すように、椅子本体D2の左右の側フレームD25及び前フレームD26及び後フレームD24に支持される周縁部D5と、この周縁部D5の内側に位置する中間部D6とを有し樹脂で一体に成形されたものであり、前記中間部D6の特定箇所、この実施形態では、中間部D6の全域が、前記帯状部材及び接続片を備えた構造をなしている。
【0060】
前記周縁部D5は、図10に示すように、中間部D6の左右両側に位置する側縁部分D51と、中間部D6の後側に位置する後縁部分D52と、中間部D6の前側に位置する前縁部分D53とを備えたものである。前記側縁部分D51は、前記側フレームD25を包み込むように下方に湾曲している。前記後縁部分D52は、後上方に向けて湾曲している。前記前縁部分D53は、前下方に向けて湾曲している。
【0061】
前記中間部D6は、前記第1実施形態と同じ構造をなしており、図10では、詳しい形態を省略して、中間部D6を網掛けで示している。
【0062】
取付体D32は、図10に示すように、前記後縁部分D52の下面に一体に設けられている。この取付体D32は、横断面C字形をなす溝D321を有したもので、その溝D321を前記後フレームD25に回動可能に係わり合わせることにより、前記座板D3を前記椅子本体D2に取り付けている。
【0063】
背板D4は、図10に示すように、両側縁に下方に開口する取付孔D41を備えたもので、その取付孔D41を前記背フレームD27に嵌め合わせることによって、この背板D4を椅子本体D2に支持させている。
【0064】
このような構成のものであれば、図11に示すように上下方向にスタッキングすることも、図12に示すように前後方向にネスティングすることも可能になる上に、座板に関しては前述した第1実施形態に準じた効果が得られる。
【0065】
次に、本発明の第5実施形態について図13を参照して説明する。
【0066】
この実施形態は、本発明を上下方向にスタッキング可能な椅子(全体としては図示しない)に適用したものである。この椅子は、前記第1実施形態と同様な構成をなす椅子本体に図13に示す座板E3及び図示しない背板を支持させてなるものである。
【0067】
図13に示す座板E3の板材E31は、周縁部E5と中間部E6とを有し樹脂で一体に成形されたものである。前記周縁部E5は、前記第1実施形態と同様の構成であるため、説明を省略する。
【0068】
前記中間部E6は、厚み方向に撓み可能な複数本の帯状部材E61を隣接させて配するとともに、隣り合う帯状部材E61同士を当該帯状部材E61よりも幅の狭い接続片E62により直線で接続するよりも長い経路をもってそれぞれ弾性変形可能に接続した構造をなしている。本実施形態においては、前記中間部E6の左右の隣接する2箇所に前記特定箇所を設定し、それらの特定箇所にそれぞれ前記帯状部材E61及び接続片E62を配置している。
【0069】
前記各帯状部材E61は、それぞれ環状をなすものであり、複数の帯状部材E61が同心円状に配列されている。各帯状部材E61は、後部が半円弧状をなしているとともに前方に向かって漸次幅を狭くした涙形状をなしている。
【0070】
前記各接続片E62は、隣接する帯状部材E61の2箇所をつなぐように配置されたものであり、前記帯状部材E61の2箇所を直線で接続するよりも長い経路をもって弾性変形可能に接続し得る形状をなしている。具体的には、各接続片E62は、それぞれ波状をなしており、この実施形態では、各接続片E62は、一の帯状部材E61の内縁と、その一の帯状部材E61の内方に隣接配置される他の帯状部材E61の外縁とを、最短距離よりも長い経路で結ぶ位置で接続している。すなわち、前記接続片E62同士は、ほぼ一定の隙間をもって、隣接する帯状部材E61の間を埋めるように配置されている。
【0071】
また、中間部E6は、前記帯状部材E61及び接続片E62とは別に、前記右の特定箇所における帯状部材E61のうち最も内側に位置する部分と、左の特定箇所における帯状部材E61のうち最も内側に位置する部分を弾性変形可能に接続し得るほぼ直線形状をなす補助部材E63を備えている。そして、これらの帯状部材E61、接続片E62及び補助部材E63が、ほぼ同一面内に配置されている。
【0072】
このような構成のものであれば、前述した第1実施形態に準じた効果が得られる。すなわち、座板E3の前後左右方向において、着座者の臀部から大腿部に及ぶ体重分布に対応した撓み特性を得ることができる。特に、この実施形態では、中間部E6の2箇所に前述したような構成を有しているので、体重のかかり具合に合わせて着座者の臀部を受ける部分が最も変形しやすくなっている。そのため、臀部全体を均等に支持することが可能となり、座り心地を良くすることができる。また、第1実施形態において図1ないし図4で図示した中間部A6であると、座板A3に比較的大きな隙間が存在するため、着座者に違和感を与えるおそれがあるが、本実施形態のように、中間部E6において隙間を埋めるように帯状部材E61、接続片E62、及び補助部材E63を密に配するようにすれば、前述した違和感を与えるおそれがなくなる。
【0073】
また、以上説明した第5実施形態の座板に準じた構成をなす座板を、前記第2実施形態の椅子本体、前記第3実施形態の椅子本体、または前記第4実施形態の椅子本体に組み合わせることも考えられる。
【0074】
なお、本発明は以上に述べた実施形態に限られない。
【0075】
板体は、座板を構成するものに限らず、背板を構成するものであってもよい。
【0076】
帯状部材及び接続片は、同一平面上に配置されるものに限られないのはもちろんであり、例えば、接続片を厚み方向に波打たせる等種々変形が可能である。
【0077】
また、帯状部材の断面形状は、例えば円形状または楕円形状等角縁部をなくしたものとしてもよい。このようなものであれば、着座によって帯状部材が下方に撓むのと同時に前後左右方向に捩れても、帯状部材に角縁部がないため、着座者に角縁部が当たることがなくなり、座り心地はさらに向上する。接続片の断面形状も前述した帯状部材と同様に、角縁部をなくしたものとすることができる。
【0078】
各帯状部材の余剰長さは、漸次変化するように設定されているものであってもよい。例えば、中間部の各帯状部材が、座板の前側から後側に向かって漸次その長さを変化させるものや、座板の中央から左右に向かって漸次その長さを変化させるものなどが考えられる。
【0079】
座板が、板材の上面を張り地で覆い設けたものや、さらに、その張り地と板材との間にクッションを介在させたものであってもよい。
【0080】
また、板材の素材は、椅子用のシェル等を成形するための樹脂に限らず、エラストマーを用いてもよい。
【0081】
以上説明した実施形態では、中間部の全域が、前記帯状部材及び接続片を備えた構造をなしていたが、本発明はこのようなものに限られず、中間部の一部の領域にのみ前記帯状部材及び接続片を備えているものであってもよい。その一例として、中間部の複数箇所の領域に前記帯状部材及び接続片を備えているものが考えられる。
【0082】
前記座板の取付体は、図示実施例のものに限られないのはもちろんであり、板材に一体に設けられるものの他、別体の取付体を板材に取り付けるようにしたものであってもよい。また、取付体の形状についても種々変更可能であり、例えば、前記第1実施形態における取付体A32に代えて、図14に模式的に示すようなものが考えられる。この取付体F7は、前記周縁部F5の側縁部分F51の下面に一体に設けられ下方に突出する突起状のものであり、その先端部分F71が外側方に向かって湾曲している。すなわち、この取付体F7と下方に湾曲する周縁部F5の側縁部分F51における端縁F511とにより、横断面C字形をなす溝F72を構成したもので、その溝F72を前記側フレームF25に係わり合わせることにより、前記座板F3を前記椅子本体F2に取り付けるものである。この溝F72は、前記側フレームF25を包み込むような形状をなしており、前記溝F72の開口端F73と前記側フレームF25の下端部が略一致している。
【0083】
このようなものであれば、第1実施形態と比べて、座板F3を側フレームF25により接近させることができるので、スタックピッチをより小さくすることができ、スタッキング効率を上げることが可能となる。
【0084】
上記第1実施形態の前フレームは、前記中間部が厚み方向に撓んだ場合に、前記中間部の下面と前フレームの上面との間になお隙間を介したものになっているが、中間部の下面が前フレームの上面に当接して中間部の下方への撓み範囲を制限するものであってもよい。
【0085】
上記第2実施形態の支持フレームは、前記中間部が厚み方向に撓んだ場合に、前記中間部の下面と支持フレームの上面との間になお隙間を介したものになっているが、中間部の下面が支持フレームの上面に当接して中間部の下方への撓み範囲を制限するものであってもよい。
【0086】
上記第3実施形態の支持機構は、座フレームの前端側を前リンク要素を介して支持基部に支持させるとともに、座フレームの後端側を背支桿の座取付部に枢支させたものであるが、このようなものに限られるものでなく、背板と座板とが一定の比率で同期して傾動するシンクロロッキング可能なものであれば、適宜なものを使用できる。
【0087】
その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々に変更してよい。
【符号の説明】
【0088】
A1、B1、C1、D1…椅子
A2、B2、C2、D2…椅子本体
A3、B3、C3、D3、E3…座板
A31、B31、C31、D31、E31…板材
A4、B4、C4、D4…背板
A5、B5、C5、D5、E5…周縁部
A6、B6、C6、D6、E6…中間部
A61、E61…帯状部材
A62、E62…接続片
【技術分野】
【0001】
本発明は、学校用または事務用等として好適に使用される椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の椅子では、比較的長時間着座されることが少なくないため、座り心地が重視され、種々の改善がなされてきた。近時、非常に座り心地のよい椅子として、枠材に張設したメッシュにより着座者の荷重を弾性的に受けるようにしたメッシュタイプの椅子が開発されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
ところが、このようなメッシュタイプの椅子では、枠材にメッシュを適切な張力をもって張り設ける必要があり、その支持構造が複雑であるとともに、その張設作業に高い技術力が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−202591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような事情に着目してなされたものであり、製造に高い技術力や手間を必要とせずに、座り心地のよい椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以上のような課題を解決するために、次のような構成を採用したものである。すなわち、本発明に係る椅子は、椅子本体に座板及び背板を支持させてなるものであって、前記座板及び背板の少なくとも一方が、厚み方向に撓み可能な複数本の帯状部材を隣接させて配するとともに、隣り合う帯状部材同士を当該帯状部材よりも幅の狭い接続片により直線で接続するよりも長い経路をもってそれぞれ弾性変形可能に接続した構造をなす板材を備えたものであることを特徴とする。
【0007】
このようなものであれば、板材により着座者の荷重を弾性的に受けるようにしているので、従来のような枠材にメッシュを張り設けたものに比べて製造に高い技術力や手間を必要とせずに、座り心地のよい椅子となる。すなわち、前記各帯状部材が、厚み方向に撓みながら着座者の荷重を主として受けるとともに、これら各帯状部材よりも幅の狭い各接続片が帯状部材の相対変位に伴って変形し、これら各帯状部材の動きを適切なものにしている。そのため、板材が着座者の荷重に応じて撓み変形し、座り心地のよいものとなる。
【0008】
前記板材が、椅子本体に支持される周縁部と、この周縁部の内側に位置する中間部とを有し樹脂で一体に成形されたものである場合の好適な一態様としては、前記中間部の特定箇所が、前記帯状部材及び接続片を備えた構造をなしているものが挙げられる。
【0009】
前記各帯状部材が、対向する前記周縁部の2箇所をつなぐように配置されたものである場合の好適な一態様としては、前記周縁部の2箇所を直線で接続するよりも長い経路をもって弾性変形可能に接続し得る形状をなしているものが挙げられる。
【0010】
前記各帯状部材は、直線に対する余剰長さを相互に異ならせたものであることが好ましい。具体的には、前記各帯状部材の余剰長さが、漸次変化するように設定されているものや、特定の帯状部材の余剰長さが、他の帯状部材の余剰長さと異なるように設定されているものが考えられる。
【0011】
前記各帯状部材が、環状をなすものである場合の好適な一態様としては、複数の帯状部材が同心円状に配列されているものが挙げられる。ここで、「同心円状」には、中心を同じくする円、楕円、多角形状等の形状も含まれる。
【0012】
前記板材が、前記座板を構成するものである場合の好適な一態様としては、前記中間部の左右の隣接する2箇所に前記特定箇所を設定し、それらの特定箇所にそれぞれ前記帯状部材及び接続片を配置しているものが挙げられる。
【0013】
前記帯状部材及び接続片は、ほぼ同一面内に配置されており、各帯状部材及び各接続片の少なくとも一方が波状をなしているものが好ましい。ここで、「同一面」には、平面や曲面が含まれる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以上のような構成であるから、製造に高い技術力や手間を必要とせずに、座り心地のよい椅子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態を示す全体斜視図。
【図2】同実施形態の背面側を示す全体斜視図。
【図3】同実施形態の座板を示す平面図。
【図4】同実施形態の座板を示す斜視図。
【図5】本発明の第2実施形態を示す全体斜視図。
【図6】同実施形態の背面側を示す全体斜視図。
【図7】同実施形態の側断面図。
【図8】本発明の第3実施形態の要部を示す分解斜視図。
【図9】同実施形態の椅子を模式的に示す側面図。
【図10】本発明の第4実施形態を示す全体斜視図。
【図11】同実施形態の椅子の使用態様を模式的に示す側面図。
【図12】同実施形態の椅子の使用態様を模式的に示す側面図。
【図13】本発明の第5実施形態を示す板材の平面図。
【図14】本発明の取付体の変形例を模式的に示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の第1実施形態について図1ないし図4を参照して説明する。
【0017】
この実施形態は、本発明を上下方向にスタッキング可能な椅子A1に適用したものである。この椅子A1は、椅子本体A2に座板A3及び背板A4を支持させてなるものである。
【0018】
椅子本体A2は、図1及び図2に示すように、接地体A211を介して床上に載置される左右のベースA21と、これら各ベースA21の前端から上方に延出する左右の前脚A22と、前記各ベースA21の後端から上方に延出する左右の後脚A23と、これら後脚A23の上端間に架設された後フレームA24と、この後フレームA24の両端近傍部と前記前脚A22の上端とを繋ぐ左右の側フレームA25と、これら側フレームA25の前端近傍部間に架設された前フレームA26と、前記後脚A23の上端から上方に延出する左右の背フレームA27とを備えてなる。前記ベースA21、前脚A22、後脚A23、側フレームA25、及び、背フレームA27は、共通の金属線材を折曲げることにより一体に構成されたもので、前記座板A3及び背板A4に作用する荷重を受けることが可能な強度を備えている。そして、前記左右の側フレームA25に前記座板A3を支持させている。また、本実施形態においては、前記椅子本体A2に前記座板A3を取り付けた状態で、前記前フレームA26と前記座板A3との間に当該座板A3の下方への撓みを許容できるだけの隙間が形成されるように設定してある。
【0019】
座板A3は、図1ないし図4に示すように、板材A31と、この板材A31の下面に突設した取付体A32とを備えたもので、この実施形態においては、樹脂により一体に成形されている。
【0020】
板材A31は、図1ないし図4に示すように、椅子本体A2の左右の側フレームA25に支持される周縁部A5と、この周縁部A5の内側に位置する中間部A6とを有し樹脂で一体に成形されたものであり、前記中間部A6の特定箇所、この実施形態では、中間部A6の全域が、前記帯状部材A61及び接続片A62を備えた構造をなしている。
【0021】
前記周縁部A5は、図1ないし図4に示すように、中間部A6の左右両側に位置する側縁部分A51と、中間部A6の後側に位置する後縁部分A52と、中間部A6の前側に位置する前縁部分A53とを備えたものである。前記側縁部分A51は、前記側フレームA25を包み込むように下方に湾曲している。前記後縁部分A52は、後上方に向けて湾曲している。前記前縁部分A53は、前下方に向けて湾曲している。
【0022】
前記中間部A6は、図1ないし図4に示すように、厚み方向に撓み可能な複数本の帯状部材A61を隣接させて配するとともに、隣り合う帯状部材A61同士を当該帯状部材A61よりも幅の狭い接続片A62により直線で接続するよりも長い経路をもってそれぞれ弾性変形可能に接続した構造をなしている。
【0023】
前記各帯状部材A61は、図1ないし図4に示すように、対向する前記周縁部A5の2箇所をつなぐように配置されたものであり、前記周縁部A5の2箇所を直線で接続するよりも長い経路をもって弾性変形可能に接続し得る形状をなしている。この実施形態では、各帯状部材A61は、周縁部A5の左右の側縁部分A51を、同じ前後方向位置同士で接続している。前記各帯状部材A61は、直線に対する余剰長さを相互に異ならせたものであり、特定の帯状部材A61の余剰長さが、他の帯状部材A61の余剰長さと異なるように設定されている。詳述すれば、前記中間部A6の中央付近の帯状部材A61の余剰長さは、前記中間部A6の前側及び後側の帯状部材A61の余剰長さよりも長くなるようにしている。換言すれば、着座者の臀部を受ける部分の帯状部材A61の余剰長さが最も長く設定されており、その帯状部材A61から周縁部A5の前縁部分A53及び後縁部分A52に向かって漸次帯状部材A61の余剰長さが短くなるように設定されている。
【0024】
前記各接続片A62は、図1ないし図4に示すように、隣接する帯状部材A61の2箇所をつなぐように配置されたものであり、前記帯状部材A61の2箇所を直線で接続するよりも長い経路をもって弾性変形可能に接続し得る形状をなしている。この実施形態では、各接続片A62は、一の帯状部材A61の前縁と、その一の帯状部材A61の前方に隣接配置される他の帯状部材A61の後縁とを、同じ左右方向位置同士で接続している。前記各接続片A62は、直線に対する余剰長さを相互に異ならせたものであり、特定の接続片A62の余剰長さが、他の接続片A62の余剰長さと異なるように設定されている。詳述すれば、前記中間部A6の中央付近の接続片A62の余剰長さは、前記中間部A6の左右両側の接続片A62の余剰長さよりも長くなるようにしている。換言すれば、着座者の臀部を受ける部分の接続片A62の余剰長さが最も長く設定されており、その接続片A62から周縁部A5の左右の側縁部分A51に向かって漸次帯状部材A61の余剰長さが短くなるように設定されている。そして、これらの帯状部材A61及び接続片A62が、ほぼ同一面内に配置されており、各帯状部材A61及び各接続片A62は、それぞれ波状をなしている。
【0025】
取付体A32は、図1及び図2に示すように、前記側縁部分A51の下面に一体に設けられている。この取付体A32は、横断面C字形をなす溝A321を有したもので、その溝A321を前記側フレームA25に係わり合わせることにより、前記座板A3を前記椅子本体A2に取り付けている。
【0026】
背板A4は、図1及び図2に示すように、両側縁に下方に開口する取付孔A41を備えたもので、その取付孔A41を前記背フレームA27に嵌め合わせることによって、この背板A4を椅子本体A2に支持させている。
【0027】
以上に述べたように、第1実施形態に係る椅子A1は、椅子本体A2に座板A3及び背板A4を支持させてなる椅子A1であって、前記座板A3が、厚み方向に撓み可能な複数本の帯状部材A61を隣接させて配するとともに、隣り合う帯状部材A61同士を当該帯状部材A61よりも幅の狭い接続片A62により直線で接続するよりも長い経路をもってそれぞれ弾性変形可能に接続した構造をなす板材A31を備えたものである。そのため、前記座板A3の全部または主要部を樹脂による一体成形により製造することができ、枠材にメッシュを張り設ける場合のような高い技術力や手間を必要としない。しかも、接続片A62が直線で接続するよりも長い経路をもって弾性変形可能に接続しているので、接続片A62自体の素材の伸縮だけではなく、前記接続片A62が変形部を形成することになり、この接続片A62が接続されている帯状部材A61が変形しやすくなり、板材A31により着座者の荷重を弾性的に受けることができるため、座り心地のよい椅子A1となる。特に実施形態のように、帯状部材A61及び接続片A62の余剰長さを荷重分布に応じて設定しておけば、座板全体の強度を保ちつつ、荷重を直接受ける部分は撓み易くすることができる。
【0028】
すなわち、前記各帯状部材A61が、厚み方向に撓みながら着座者の荷重を主として受けるとともに、これら各帯状部材A61よりも幅の狭い各接続片A62が、厚み方向に撓みながら着座者の荷重を補助的に受けつつ、前記各帯状部材A61の動きを制御しているので、帯状部材A61の本数や余剰長さ、或いは接続片A62の形成箇所や余剰長さ等を適宜設定することにより、種々の特性を有した座り心地のよい座板を作ることができる。したがって、荷重に応じた適切な弾性を有する座板A3を容易に設計することが可能になる。
【0029】
特に前記実施形態においては、前記周縁部A5と中間部A6とを有した板材A31と、取付体A32とを樹脂により一体に成形しているので、部品点数が少なくて済み、また、枠材にメッシュを張り設ける場合に比べて、組立に要する工数を大幅に削減することが可能になる。さらにこの板材A31は樹脂で一体成形されたものであるため、メッシュタイプに較べて強度が高く、破れたり、切れたり、摺り減るおそれが少ない。すなわち、メッシュタイプのものは、細い糸を編んだり織ったりしているので、全体がほつれる可能性があるが、本実施形態の板材A31は、上記のように板材A31が一部破損しても、メッシュタイプのように破損が全体に広がることを抑制できる。
【0030】
前記中間部A6の特定箇所、本実施形態では着座者の臀部及び大腿部を受ける部分が、前記帯状部材A61及び接続片A62を備えた構造をなしているので、座板A3の周辺領域はフレームでしっかり支持されるが、内側領域はソフトな座り心地を得ることができる。
【0031】
また、前記中間部A6が、波状をなす帯状部材A61及び接続片A62を複数備えているので、これらが厚み方向に撓み、座り心地がよい。さらに、前記帯状部材A61及び接続片A62が、ほぼ同一平面内に配置されているので、中間部A6に厚み方向の極端な突出がなく、フラットな座り心地が得られる。
【0032】
さらに、各帯状部材A61が、対向する前記周縁部A5、換言すれば左右の側縁部分A51の2箇所をつなぐように配置されたものであり、前記周縁部A5の2箇所を直線で接続するよりも長い経路をもって弾性変形可能に接続し得る形状をなしているので、帯状部材A61の素材の伸縮だけではなく、前記経路の余剰長さ分が撓み代となるため、前記帯状部材A61が曲げ方向に変形する許容範囲が大きくなり、座板A3が柔軟性に富んだものとなる。特に、左右の側縁部分A51間における余剰長さが長いほど撓み易く、本実施形態においては、この余剰長さが他の部分よりも長い前後方向中間部よりもやや後側が最も撓み易くなっている。そして、前記各帯状部材A61は左右の側縁部分A51をつないでいるので、各帯状部材A61によってしっかりと荷重を受けることができる。また、接続片A62は、隣接する帯状部材A61同士を適切な余剰長さをもって接続しているため、ある帯状部材A61に集中的に荷重がかかったときや、着座姿勢の変化が起こったとき等、帯状部材A61に前後左右方向の力がかかったときでも、各帯状部材A61の撓み特性を損なわずに隣接する帯状部材A61に力を分散して、座板A3全体として適切な撓みを得ることができる。
【0033】
前記各帯状部材A61及び各接続片A62がそれぞれ、直線に対する余剰長さを相互に異ならせたものであるため、座板A3の柔軟性を各部において適切に異ならせることが可能になる。具体的には、着座者の臀部を受ける部分を、他の帯状部材A61や接続片A62の余剰長さよりも長く設定しているので、着座者の臀部を受ける部分を他の部分に比べて大きく撓ませることができる。したがって、部分によって変形許容量を異ならせることができ、心地よい座り心地を与えることができる。
【0034】
また、周縁部A5は、上述したように湾曲しているため座板A3として必要な高い剛性を有することとなる。
【0035】
次に、本発明の第2実施形態について図5ないし図7を参照して説明する。
【0036】
この実施形態は、本発明を前後方向にネスティング可能な椅子B1に適用したものである。この椅子B1は、椅子本体B2に座板B3及び背板B4を支持させてなるものである。
【0037】
椅子本体B2は、図5ないし図7に示すように、下端にキャスタB211を有した左右の前脚B21と、下端にキャスタB221を有した左右の後脚B22と、これら後脚B22の上端と前記前脚B21の上端とをそれぞれ繋ぐ左右の側フレームB24と、これら側フレームB24の前端近傍部間に架設された前フレームB25と、これら側フレームB24の後端近傍部間に架設された後フレームB23と、この後フレームB23に基端部B28を回転可能に支持させた左右の支持フレームB26と、前記後脚B22の上端から上方に延出する左右の背フレームB27とを備えてなる。前記前脚B21と側フレームB24とは、共通の金属パイプ材を折曲げることにより一体に構成されたもので、側フレームB24の後端は後脚B22の上端に溶接等により剛結されている。前記前脚B21、後脚B22、側フレームB24、前フレームB25、後フレームB23、支持フレームB26、及び背フレームB27は、前記座板B3及び背板B4に作用する荷重を受けることが可能な強度を備えている。そして、前記支持フレームB26の前端部及び後端部に前記座板B3を支持させており、座板B3が略水平になる使用位置(U)と座板B3が背板B4と略平行になる図示しない跳ね上げ位置との間で回動し得るようになっている。支持フレームB26の中間部B29には凹陥部B291が形成されており、前記使用位置(U)においてこの凹陥部B291が前フレームB25に係わり合うようになっている。なお、前記左右の前脚B21間の距離は、前記左右の後脚B22間の距離よりも小さく設定されており、座板B3を跳ね上げた状態で同一の構造をなす他の椅子とネスティング可能になっている。
【0038】
座板B3は、図5ないし図7に示すように、板材B31と、この板材B31の下面に突設した前後の取付体B32、B33とを備えたもので、この実施形態においては、樹脂により一体に成形されている。
【0039】
板材B31は、図5ないし図7に示すように、椅子本体B2の左右の支持フレームB26に支持される周縁部B5と、この周縁部B5の内側に位置する中間部B6とを有し樹脂で一体に成形されたものであり、前記中間部B6の特定箇所、この実施形態では、中間部B6の全域が、前記帯状部材及び接続片を備えた構造をなしている。
【0040】
前記周縁部B5は、図5ないし図7に示すように、中間部B6の左右両側に位置する側縁部分B51と、中間部B6の後側に位置する後縁部分B52と、中間部B6の前側に位置する前縁部分B53とを備えたものである。
【0041】
前記中間部B6は、前記第1実施形態と同じ構造をなしており、図5ないし図7では、詳しい形態を省略して、中間部B6を網掛けで示している。
【0042】
取付体B32、B33は、図6及び図7に示すように、前記前縁部分B53及び後縁部分B52の下面に一体に設けられている。前の取付体B32は、前記周縁部B5の前縁部分B53に設けられ、後の取付体B33は、前記周縁部B5の後縁部分B52に設けられている。前の取付体B32に支持フレームB26の前端部を前後方向にスライド可能に取り付けるとともに、後の取付体B33に支持フレームB26の後端部を離脱不能に取り付けている。そして、前記前後の取付体B32、B33間は、前記支持フレームB26と前記座板B3の中間部B6とが隙間B34を介して離間しており、その隙間B34によって前記中間部B6の厚み方向の弾性変形を許容している。
【0043】
背板B4は、図5ないし図7に示すように、両側縁に下方に開口する取付孔B41を備えたもので、その取付孔B41を前記背フレームB27に嵌め合わせることによって、この背板B4を椅子本体B2に支持させている。
【0044】
このような構成のものであれば、従来のネスティング可能な椅子と同様に使用することができる上に、座板に関しては前述した第1実施形態に準じた効果が得られる
次に、本発明の第3実施形態について図8及び図9を参照して説明する。
【0045】
この実施形態は、本発明を背板C4と座板C3とが一定の比率で同期して傾動するシンクロロッキング可能な椅子C1に適用したものである。この椅子C1は、椅子本体C2に座板C3及び背板C4を支持させてなるものである。
【0046】
椅子本体C2は、図8及び図9に示すように、キャスタC211を有する脚C21と、この脚C21の上端に支持される支持基部C22と、この支持基部C22に傾動可能に支持される背支桿C23と、この背支桿C23及び前記支持基部C22の上方に配された座受C24と、この座受C24を前記支持基部C22及び背支桿C23に支持させる支持機構C25とを備えてなる。前記座受C24は、環状をなす座フレームC26と、この座フレームC26の四隅に設けられた取付板C27と、前記支持機構C25と連結するための前連結部C28及び後連結部C29とを備えてなる。そして、前記座フレームC26に座板C3を載置し、前記取付板C27に挿通させた図示しないボルト等の止着具により前記座フレームC26に前記座板C3を固定した状態で支持させている。前記支持機構C25は、例えば、図9に模式的に示すように、座フレームC26の前連結部C28を支持基部C22の前端部に連結する自由端構造をなす前リンク要素C251と、背支桿C23の中間部に設けられ前記座フレームC26の後連結部C29を回動可能に支持する座取付部C252とを具備してなる。
【0047】
座板C3は、図8及び図9に示すように、樹脂製の板材C31と、この板材C31の下面側に設けられた図示しない埋設ナットとを備えたもので、前記取付板C27に挿通させた止着具が前記埋設ナットに螺着されるようになっている。
【0048】
板材C31は、図8及び図9に示すように、椅子本体C2の座フレームC26に支持される周縁部C5と、この周縁部C5の内側に位置する中間部C6とを有し樹脂で一体に成形されたものであり、前記中間部C6の特定箇所、この実施形態では、中間部C6の全域が、前記帯状部材及び接続片を備えた構造をなしている。
【0049】
前記周縁部C5は、図8及び図9に示すように、中間部C6の左右両側に位置する側縁部分C51と、中間部C6の後側に位置する後縁部分C52と、中間部C6の前側に位置する前縁部分C53とを備えたものである。前記側縁部分C51は、前記座フレームC26を包み込むように下方に湾曲している。前記後縁部分C52は、後上方に向けて湾曲している。前記前縁部分C53は、前下方に向けて湾曲している。
【0050】
前記中間部C6は、前記第1実施形態と同じ構造をなしており、図8では、詳しい形態を省略して、中間部C6を網掛けで示している。
【0051】
背板C4は、図9に示すように、前記背支桿C23の上端部に取り付けられることで、この背板C4を椅子本体C2に支持させており、前記背支桿C23と一体的に後傾動作を行うようになっている。
【0052】
このような構成のものであれば、従来のシンクロロッキング可能な椅子と同様に使用することができる上に、座板に関しては前述した第1実施形態に準じた効果が得られる。特に、この実施形態では、図8に示すように、座枠C24の前連結部C28及び後連結部C29が、座板C3の撓む範囲下で座フレームC26の左右を連結する構造ではないため、座板C3の下方への撓み変形を阻害するものが存在しない。したがって、座板C3の変形し得る範囲を大きく設定することも可能である。
【0053】
次に、本発明の第4実施形態について図10ないし図12を参照して説明する。
【0054】
この実施形態は、本発明を上下方向にスタッキングすることも前後方向にネスティングすることも可能な椅子D1に適用したものである。この椅子D1は、椅子本体D2に座板D3及び背板D4を支持させてなるものである。
【0055】
椅子本体D2は、図10に示すように、接地体D211を介して床上に載置される左右のベースD21と、これら各ベースD21の前端から上方に延出する左右の前脚D22と、前記各ベースD21の後端から上方に延出する左右の後脚D23と、これら後脚D23の上端間に架設された後フレームD24と、この後フレームD24の両端近傍部と前記前脚D22の上端とを繋ぐ左右の側フレームD25と、これら側フレームD25の前端近傍部間に架設された前フレームD26と、前記後脚D23の上端から上方に延出する左右の背フレームD27とを備えてなる。前記ベースD21、前脚D22、後脚D23、側フレームD25、及び、背フレームD27は、共通の金属線材を折曲げることにより一体に構成されたもので、前記座板D3及び背板D4に作用する荷重を受けることが可能な強度を備えている。そして、座板D3は、左右の側フレームD25と前フレームD26に載置されるとともに、前記後フレームD24に回動可能に支持されており、図10及び図11に示すように座板D3が略水平になる使用位置(U)と、図12に示すように座板D3が背板D4と略平行になる跳ね上げ位置(L)との間で回動し得るようになっている。
【0056】
なお、第1実施形態と同様に、左右のベースD21同士の離間距離は、前記左右の側フレームD25の離間距離よりも大きく設定してあり、図11に示すように、同一の構造をなす他の椅子D1と上下方向にスタッキング可能になっている。特に、図11に示すような上下方向にスタッキングする際には、上下方向に隣接する上の椅子D1の設置体D211の下面が、下の椅子D1のベースD21の上面に載るかたちとなり、上下の椅子D1の座板D3同士が直接接触しないように設定されている。そのため、上下方向にスタッキングした際に、上の椅子D1の座板D3は、跳ね上げ方向に浮き上がらないようになっている。
【0057】
また、前記左右の前脚D21間の距離は、前記左右の後脚D22間の距離よりも小さく設定されており、図12に示すように、座板D3を跳ね上げた状態で同一の構造をなす他の椅子とネスティング可能になっている。すなわち、前記左右の側フレームD25同士の離間距離、及び左右のベースD21同士の離間距離は、それぞれ前方に向かって漸次小さくなるように設定されている。
【0058】
座板D3は、図10に示すように、板材D31と、この板材D31の下面に突設した取付体D32とを備えたもので、この実施形態においては、樹脂により一体に成形されている。
【0059】
板材D31は、図10に示すように、椅子本体D2の左右の側フレームD25及び前フレームD26及び後フレームD24に支持される周縁部D5と、この周縁部D5の内側に位置する中間部D6とを有し樹脂で一体に成形されたものであり、前記中間部D6の特定箇所、この実施形態では、中間部D6の全域が、前記帯状部材及び接続片を備えた構造をなしている。
【0060】
前記周縁部D5は、図10に示すように、中間部D6の左右両側に位置する側縁部分D51と、中間部D6の後側に位置する後縁部分D52と、中間部D6の前側に位置する前縁部分D53とを備えたものである。前記側縁部分D51は、前記側フレームD25を包み込むように下方に湾曲している。前記後縁部分D52は、後上方に向けて湾曲している。前記前縁部分D53は、前下方に向けて湾曲している。
【0061】
前記中間部D6は、前記第1実施形態と同じ構造をなしており、図10では、詳しい形態を省略して、中間部D6を網掛けで示している。
【0062】
取付体D32は、図10に示すように、前記後縁部分D52の下面に一体に設けられている。この取付体D32は、横断面C字形をなす溝D321を有したもので、その溝D321を前記後フレームD25に回動可能に係わり合わせることにより、前記座板D3を前記椅子本体D2に取り付けている。
【0063】
背板D4は、図10に示すように、両側縁に下方に開口する取付孔D41を備えたもので、その取付孔D41を前記背フレームD27に嵌め合わせることによって、この背板D4を椅子本体D2に支持させている。
【0064】
このような構成のものであれば、図11に示すように上下方向にスタッキングすることも、図12に示すように前後方向にネスティングすることも可能になる上に、座板に関しては前述した第1実施形態に準じた効果が得られる。
【0065】
次に、本発明の第5実施形態について図13を参照して説明する。
【0066】
この実施形態は、本発明を上下方向にスタッキング可能な椅子(全体としては図示しない)に適用したものである。この椅子は、前記第1実施形態と同様な構成をなす椅子本体に図13に示す座板E3及び図示しない背板を支持させてなるものである。
【0067】
図13に示す座板E3の板材E31は、周縁部E5と中間部E6とを有し樹脂で一体に成形されたものである。前記周縁部E5は、前記第1実施形態と同様の構成であるため、説明を省略する。
【0068】
前記中間部E6は、厚み方向に撓み可能な複数本の帯状部材E61を隣接させて配するとともに、隣り合う帯状部材E61同士を当該帯状部材E61よりも幅の狭い接続片E62により直線で接続するよりも長い経路をもってそれぞれ弾性変形可能に接続した構造をなしている。本実施形態においては、前記中間部E6の左右の隣接する2箇所に前記特定箇所を設定し、それらの特定箇所にそれぞれ前記帯状部材E61及び接続片E62を配置している。
【0069】
前記各帯状部材E61は、それぞれ環状をなすものであり、複数の帯状部材E61が同心円状に配列されている。各帯状部材E61は、後部が半円弧状をなしているとともに前方に向かって漸次幅を狭くした涙形状をなしている。
【0070】
前記各接続片E62は、隣接する帯状部材E61の2箇所をつなぐように配置されたものであり、前記帯状部材E61の2箇所を直線で接続するよりも長い経路をもって弾性変形可能に接続し得る形状をなしている。具体的には、各接続片E62は、それぞれ波状をなしており、この実施形態では、各接続片E62は、一の帯状部材E61の内縁と、その一の帯状部材E61の内方に隣接配置される他の帯状部材E61の外縁とを、最短距離よりも長い経路で結ぶ位置で接続している。すなわち、前記接続片E62同士は、ほぼ一定の隙間をもって、隣接する帯状部材E61の間を埋めるように配置されている。
【0071】
また、中間部E6は、前記帯状部材E61及び接続片E62とは別に、前記右の特定箇所における帯状部材E61のうち最も内側に位置する部分と、左の特定箇所における帯状部材E61のうち最も内側に位置する部分を弾性変形可能に接続し得るほぼ直線形状をなす補助部材E63を備えている。そして、これらの帯状部材E61、接続片E62及び補助部材E63が、ほぼ同一面内に配置されている。
【0072】
このような構成のものであれば、前述した第1実施形態に準じた効果が得られる。すなわち、座板E3の前後左右方向において、着座者の臀部から大腿部に及ぶ体重分布に対応した撓み特性を得ることができる。特に、この実施形態では、中間部E6の2箇所に前述したような構成を有しているので、体重のかかり具合に合わせて着座者の臀部を受ける部分が最も変形しやすくなっている。そのため、臀部全体を均等に支持することが可能となり、座り心地を良くすることができる。また、第1実施形態において図1ないし図4で図示した中間部A6であると、座板A3に比較的大きな隙間が存在するため、着座者に違和感を与えるおそれがあるが、本実施形態のように、中間部E6において隙間を埋めるように帯状部材E61、接続片E62、及び補助部材E63を密に配するようにすれば、前述した違和感を与えるおそれがなくなる。
【0073】
また、以上説明した第5実施形態の座板に準じた構成をなす座板を、前記第2実施形態の椅子本体、前記第3実施形態の椅子本体、または前記第4実施形態の椅子本体に組み合わせることも考えられる。
【0074】
なお、本発明は以上に述べた実施形態に限られない。
【0075】
板体は、座板を構成するものに限らず、背板を構成するものであってもよい。
【0076】
帯状部材及び接続片は、同一平面上に配置されるものに限られないのはもちろんであり、例えば、接続片を厚み方向に波打たせる等種々変形が可能である。
【0077】
また、帯状部材の断面形状は、例えば円形状または楕円形状等角縁部をなくしたものとしてもよい。このようなものであれば、着座によって帯状部材が下方に撓むのと同時に前後左右方向に捩れても、帯状部材に角縁部がないため、着座者に角縁部が当たることがなくなり、座り心地はさらに向上する。接続片の断面形状も前述した帯状部材と同様に、角縁部をなくしたものとすることができる。
【0078】
各帯状部材の余剰長さは、漸次変化するように設定されているものであってもよい。例えば、中間部の各帯状部材が、座板の前側から後側に向かって漸次その長さを変化させるものや、座板の中央から左右に向かって漸次その長さを変化させるものなどが考えられる。
【0079】
座板が、板材の上面を張り地で覆い設けたものや、さらに、その張り地と板材との間にクッションを介在させたものであってもよい。
【0080】
また、板材の素材は、椅子用のシェル等を成形するための樹脂に限らず、エラストマーを用いてもよい。
【0081】
以上説明した実施形態では、中間部の全域が、前記帯状部材及び接続片を備えた構造をなしていたが、本発明はこのようなものに限られず、中間部の一部の領域にのみ前記帯状部材及び接続片を備えているものであってもよい。その一例として、中間部の複数箇所の領域に前記帯状部材及び接続片を備えているものが考えられる。
【0082】
前記座板の取付体は、図示実施例のものに限られないのはもちろんであり、板材に一体に設けられるものの他、別体の取付体を板材に取り付けるようにしたものであってもよい。また、取付体の形状についても種々変更可能であり、例えば、前記第1実施形態における取付体A32に代えて、図14に模式的に示すようなものが考えられる。この取付体F7は、前記周縁部F5の側縁部分F51の下面に一体に設けられ下方に突出する突起状のものであり、その先端部分F71が外側方に向かって湾曲している。すなわち、この取付体F7と下方に湾曲する周縁部F5の側縁部分F51における端縁F511とにより、横断面C字形をなす溝F72を構成したもので、その溝F72を前記側フレームF25に係わり合わせることにより、前記座板F3を前記椅子本体F2に取り付けるものである。この溝F72は、前記側フレームF25を包み込むような形状をなしており、前記溝F72の開口端F73と前記側フレームF25の下端部が略一致している。
【0083】
このようなものであれば、第1実施形態と比べて、座板F3を側フレームF25により接近させることができるので、スタックピッチをより小さくすることができ、スタッキング効率を上げることが可能となる。
【0084】
上記第1実施形態の前フレームは、前記中間部が厚み方向に撓んだ場合に、前記中間部の下面と前フレームの上面との間になお隙間を介したものになっているが、中間部の下面が前フレームの上面に当接して中間部の下方への撓み範囲を制限するものであってもよい。
【0085】
上記第2実施形態の支持フレームは、前記中間部が厚み方向に撓んだ場合に、前記中間部の下面と支持フレームの上面との間になお隙間を介したものになっているが、中間部の下面が支持フレームの上面に当接して中間部の下方への撓み範囲を制限するものであってもよい。
【0086】
上記第3実施形態の支持機構は、座フレームの前端側を前リンク要素を介して支持基部に支持させるとともに、座フレームの後端側を背支桿の座取付部に枢支させたものであるが、このようなものに限られるものでなく、背板と座板とが一定の比率で同期して傾動するシンクロロッキング可能なものであれば、適宜なものを使用できる。
【0087】
その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々に変更してよい。
【符号の説明】
【0088】
A1、B1、C1、D1…椅子
A2、B2、C2、D2…椅子本体
A3、B3、C3、D3、E3…座板
A31、B31、C31、D31、E31…板材
A4、B4、C4、D4…背板
A5、B5、C5、D5、E5…周縁部
A6、B6、C6、D6、E6…中間部
A61、E61…帯状部材
A62、E62…接続片
【特許請求の範囲】
【請求項1】
椅子本体に座板及び背板を支持させてなる椅子であって、
前記座板及び背板の少なくとも一方が、厚み方向に撓み可能な複数本の帯状部材を隣接させて配するとともに、隣り合う帯状部材同士を当該帯状部材よりも幅の狭い接続片により直線で接続するよりも長い経路をもってそれぞれ弾性変形可能に接続した構造をなす板材を備えたものであることを特徴とする椅子。
【請求項2】
前記板材が、椅子本体に支持される周縁部と、この周縁部の内側に位置する中間部とを有し樹脂で一体に成形されたものであり、前記中間部の特定箇所が、前記帯状部材及び接続片を備えた構造をなしている請求項1記載の椅子。
【請求項3】
前記各帯状部材が、対向する前記周縁部の2箇所をつなぐように配置されたものであり、前記周縁部の2箇所を直線で接続するよりも長い経路をもって弾性変形可能に接続し得る形状をなしている請求項1または2記載の椅子。
【請求項4】
前記各帯状部材が、直線に対する余剰長さを相互に異ならせたものである請求項3記載の椅子。
【請求項5】
前記各帯状部材の余剰長さが、漸次変化するように設定されている請求項4記載の椅子。
【請求項6】
特定の帯状部材の余剰長さが、他の帯状部材の余剰長さと異なるように設定されている請求項4記載の椅子。
【請求項7】
前記各帯状部材が、環状をなすものであり、複数の帯状部材が同心円状に配列されている請求項1または2記載の椅子。
【請求項8】
前記板材が、前記座板を構成するものであり、
前記中間部の左右の隣接する2箇所に前記特定箇所を設定し、それらの特定箇所にそれぞれ前記帯状部材及び接続片を配置している請求項7記載の椅子。
【請求項9】
前記帯状部材及び接続片が、ほぼ同一面内に配置されており、各帯状部材及び各接続片の少なくとも一方が波状をなしている請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載の椅子。
【請求項1】
椅子本体に座板及び背板を支持させてなる椅子であって、
前記座板及び背板の少なくとも一方が、厚み方向に撓み可能な複数本の帯状部材を隣接させて配するとともに、隣り合う帯状部材同士を当該帯状部材よりも幅の狭い接続片により直線で接続するよりも長い経路をもってそれぞれ弾性変形可能に接続した構造をなす板材を備えたものであることを特徴とする椅子。
【請求項2】
前記板材が、椅子本体に支持される周縁部と、この周縁部の内側に位置する中間部とを有し樹脂で一体に成形されたものであり、前記中間部の特定箇所が、前記帯状部材及び接続片を備えた構造をなしている請求項1記載の椅子。
【請求項3】
前記各帯状部材が、対向する前記周縁部の2箇所をつなぐように配置されたものであり、前記周縁部の2箇所を直線で接続するよりも長い経路をもって弾性変形可能に接続し得る形状をなしている請求項1または2記載の椅子。
【請求項4】
前記各帯状部材が、直線に対する余剰長さを相互に異ならせたものである請求項3記載の椅子。
【請求項5】
前記各帯状部材の余剰長さが、漸次変化するように設定されている請求項4記載の椅子。
【請求項6】
特定の帯状部材の余剰長さが、他の帯状部材の余剰長さと異なるように設定されている請求項4記載の椅子。
【請求項7】
前記各帯状部材が、環状をなすものであり、複数の帯状部材が同心円状に配列されている請求項1または2記載の椅子。
【請求項8】
前記板材が、前記座板を構成するものであり、
前記中間部の左右の隣接する2箇所に前記特定箇所を設定し、それらの特定箇所にそれぞれ前記帯状部材及び接続片を配置している請求項7記載の椅子。
【請求項9】
前記帯状部材及び接続片が、ほぼ同一面内に配置されており、各帯状部材及び各接続片の少なくとも一方が波状をなしている請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載の椅子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−244958(P2011−244958A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119774(P2010−119774)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000001351)コクヨ株式会社 (961)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000001351)コクヨ株式会社 (961)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]