説明

植栽用容器及びそれを用いた屋上緑化システム

【課題】軽量で嵩張ることなく、運搬性や保管性に優れている植栽用容器及びそれを用いた屋上緑化システムを提供すること。
【解決手段】形状復元性があって折り畳み可能な防水シート材で底部11と少なくとも3面の側壁部12によって箱形になるように形成され、側壁部12の内側面に上下方向に棒状材を差し込めるように設けられた縦長の袋部13を備える。また、側壁部12に他の容器と連結できると共に水を流通できるように連結孔14が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、植栽用容器及びそれを用いた屋上緑化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の屋上緑化システムでは、樹脂製などの箱形の植栽用容器を並べて所望のスペースを緑化する方法が考えられている。
例えば、都市部の建造物・屋上・壁面・防音壁等に蔦で緑化を図り、ヒートアイランドの解消や都市の美化と炭酸ガスの吸収・酸素放出で都市環境を保全するように、アクリル又はABS樹脂で組み合わせ箱を作り、連続組み合わせ接合した防水防根の水耕槽と水耕礫バインダーで登這性の蔦を自動灌漑の水耕栽培によって育成して都市建造物緑化をする構成が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−176850号公報(第1頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
植栽用容器及びそれを用いた屋上緑化システムに関して解決しようとする問題点は、従来の植栽用容器は、樹脂、木材又は金属材などで形成された剛性のある箱形であるため、嵩張り、その運搬性や保管性に劣ることにある。
そこで、本発明の目的は、軽量で嵩張ることなく、運搬性や保管性に優れている植栽用容器及びそれを用いた屋上緑化システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記目的を達成するために次の構成を備える。
本発明にかかる植栽用容器の一形態によれば、形状復元性があって折り畳み可能な防水シート材で底部と少なくとも3面の側壁部によって箱形になるように形成されている。
また、本発明にかかる植栽用容器の一形態によれば、形状復元性があって折り畳み可能な防水シート材で底部と筒状の側周壁部とを備えてポット状に形成されている。
【0006】
また、本発明にかかる植栽用容器の一形態によれば、前記側壁部又は前記側周壁部の下部、及び/又は前記底部に設けられた排水孔と、該排水孔を内側から覆うと共に透水性を有する材料で設けられた内部ポケット部と、該内部ポケット部に挿入されて前記排水孔を覆うと共に濾過機能を有するフィルタ部材とを具備することを特徴とすることができる。
【0007】
また、本発明にかかる植栽用容器の一形態によれば、前記側壁部又は前記側周壁部の下部、及び/又は前記底部に、鳩目状の枠が設けられた枠付排水孔が形成され、該枠付排水孔にくびれ部を有する立体フィルタ部材が嵌められていることを特徴とすることができる。
【0008】
また、本発明にかかる植栽用容器の一形態によれば、形状復元性があって折り畳み可能な防水シート材で底部と少なくとも3面の側壁部によって箱形になるように形成され、前記側壁部の側面に上下方向に補強用挿入材を差し込めるように設けられた縦長の袋部を備える。
【0009】
また、本発明にかかる植栽用容器の一形態によれば、前記側壁部に他の容器と連結できると共に水を流通できるように連結孔が設けられていることを特徴とすることができる。
また、本発明にかかる植栽用容器の一形態によれば、前記防水シートがテントシートであることを特徴とすることができる。
また、本発明にかかる植栽用容器の一形態によれば、前記側壁部の上縁に折り曲げ部が設けられていることを特徴とすることができる。
【0010】
また、本発明にかかる植栽用容器を用いた屋上緑化システムの一形態によれば、形状復元性があって折り畳み可能な防水シート材で底部と少なくとも3面の側壁部によって箱形になるように形成され、前記側壁部の内側面に上下方向に棒状材を差し込めるように設けられた縦長の袋部を備える植栽用容器を複数並べて設けられる屋上緑化システムであって、隣接する前記植栽用容器の前記袋部の双方に二股の差し込み棒状材を挿入することで、隣接する側壁部を起立状態に保持させる。
【0011】
また、本発明にかかる植栽用容器を用いた屋上緑化システムの一形態によれば、前記植栽用容器の前記側壁部に他の容器と連結できると共に水を流通できるように連結孔が設けられ、該連結孔に挿通されると共に軸方向に中空に設けられた中空ボルトと、該中空ボルトに螺合するナットによって隣接する前記植栽用容器同士を連結すると共に水を流通させることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の植栽用容器及びそれを用いた屋上緑化システムによれば、軽量で嵩張ることなく、運搬性や保管性に優れているという特別有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る植栽用容器の形態例を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る屋上緑化システムの形態例を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る植栽用容器の形態例を示す展開図である。
【図4】図2の屋上緑化システムの形態例の詳細を示す拡大断面図である。
【図5】中空ボルト及びナットの形態例を示す斜視図である。
【図6】本発明に係る植栽用容器の他の形態例を示す破断斜視図である。
【図7】本発明に係る植栽用容器の他の形態例を示す斜視図である。
【図8】図7の形態例の植栽用容器に係る要部を示す断面図である。
【図9】本発明に係る排水孔の他の形態例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の植栽用容器及びそれを用いた屋上緑化システムに係る形態例を、添付図面(図1〜5)に基づいて詳細に説明する。
本発明に係る植栽用容器10は、形状復元性があって折り畳み可能な防水シート材で底部11と少なくとも3面の側壁部12によって箱形になるように形成され、側壁部12の内側面に上下方向に棒状材を差し込めるように設けられた縦長の袋部13を備える。本形態例では、4面の側壁部12を備えた矩形状の箱形になっている。
【0015】
この植栽用容器10を複数並べ、隣接する植栽用容器10、10の袋部13、13の双方に二股の差し込み棒状材20を挿入することで、隣接する側壁部12、12を起立状態に保持させる(図4参照)。これにより、植栽用容器10を用いた屋上緑化システムが構成されている(図2参照)。
二股の差し込み棒状材20は、例えば、ピアノ線を折り曲げたようなバネ性のあるピン状の部材(バネピン)を用いればよい。この二股の差し込み棒状材20によれば、隣接する側壁部12、12を挟んだ状態で、その形状復元性を好適に利用して起立させることができる。
【0016】
この植栽用容器10が防水シート材で形成されているため、軽量であると共に折り畳めることで、運搬性及び保管性に極めて優れている。従って、生産や運送等のコストを低減できると共に、使用しなくなった場合にも簡単に撤去・処理ができ、仮設性に優れる利点がある。また、このように仮設性に優れるため、レイアウト変更に容易に対応でき、作業性にも優れる利点がある。
【0017】
また、側壁部12に他の容器と連結できると共に水を流通できるように連結孔14が設けられている。そして、その連結孔14に挿通されると共に軸方向に中空に設けられた中空ボルト31と、その中空ボルト31に螺合するナット32によって隣接する植栽用容器10、10同士を連結すると共に水を流通させている(図4及び図5参照)。これによれば、植栽用容器10の相互間で水が流通して平均化し、適度な水分を植物に与えることができる。
【0018】
この植栽用容器10を形成する防水シートは、例えばテントシートとすることができる。テントシートは、適度の形状復元性があって折り畳み可能で、しかも防水性や耐候性に優れている。このため、このテントシートを素材とする植栽用容器10は、耐久性に優れたものになっている。
【0019】
このテントシートは、中空ボルト31とナット32で連結する場合にテントシート自体が水密をするためのパッキン材として作用し、別途特別なパッキン材を用いる必要がない。従って、植栽用容器10同士を連結する作業を容易且つ低コストで行うことができる。また、水密を確実に行うことができるため、水洩れによる屋根の腐食を好適に防止できる。
【0020】
また、本形態例では、側壁部12の上縁に折り曲げ部15が設けられている。図1に示すように、直交する二辺となる二つの側壁部12、12の上縁に折り曲げ部15をそれぞれ設けることによって、図2に示すように前後左右の二方向へ同一形態に連結できる。これにより、雨水などが、隣接する植栽用容器10同士の側壁部12、12の隙間に入り込むことを防止でき、屋根の表面を保護できる。
【0021】
さらに、本形態例の植栽用容器10は、例えば、図3の展開図に示すような十字型の防水シートに折り目を付けて、熱溶着によって辺同士を溶着して箱形に成形できる。袋部13は、例えば、植栽用容器10の本体よりも薄くて加工しやすい短冊状のシート材を熱溶着して、上下が開放した長細いトンネル状に形成すればよい。
【0022】
以上の構成を備える植栽用容器10によれば、例えば、図4に示すように下層(点線より下の層)をろ過層41にして水はけを良くし、栽培用の土42を入れて使用すればよい。
また、隣接する植栽用容器10、10の側壁部12、12は、シート状であって薄いため、無駄なスペースが生じない。このため、土42を盛れば、システム全体が一面として見える状態にすることも簡単にでき、美しく緑化できる。
【0023】
次に、図6に基づいて、本発明に係る植栽用容器の他の形態例を説明する。16は袋部であり、側壁部12の外側面に上下方向に補強用挿入材21を差し込めるように、上下端が開いた縦長の袋状に設けられている。この袋部16は、前述した袋部13と同等に接着又は縫い付けによって側壁部12のシート面に固定されて設けられている。
本形態例の補強用挿入材21は、L字状の金具になっており、一方が袋部16に挿入され、他方が底部11の下に敷かれ、側壁部12を起立状態に保持するように作用する。
【0024】
17は舌状シート部であり、底部11上で内底の周縁部に所要の巾で重なるように、本形態例では側壁部12と同じ材質のシート材で設けられている。この舌状シート部17と底部11との間に不織布状などに設けられたろ過材50の周縁部が挟まれ、そのろ過材50の周縁がシールされるようになっている。
これによれば、ろ過材50の周縁からのリークが防止され、植栽用容器内の水が必ずろ過材50を通過して排水されることになり、設置場所をきれに保つことができる。
なお、18は網材であり、底部11の部分に、排水性を高めるように設けられている。
【0025】
60はマルチシートであり、多数の植栽用の貫通孔61が設けられていると共に、周縁部に複数の鳩目62が設けられている。
このマルチシート60は、植栽用容器に、例えば、鳩目62を利用して紐(図示せず)などによって舞い上がらないように括り付けて固定すればよい。このようにマルチシート60を植栽用容器上に張ることによって、草の生長を妨げると共に、植栽用土壌の飛散を適切に防止できる。
【0026】
次に、図7、8に基づいて、本発明に係る植栽用容器の他の形態例を説明する。
この植栽用容器70は、形状復元性があって折り畳み可能な防水シート材で底部71と筒状の側周壁部72とを備えてポット状に形成されている。また、73は手提げ把持部であり、吊下げて搬送できるように、帯状に設けられている。
75は排水孔であり、側周壁部72(又は側壁部12)の下部、及び/又は底部71(11)に設けられている。
【0027】
76は内部ポケット部であり、排水孔75を内側から覆うと共に透水性を有する材料で設けられている。この内部ポケット部76は、例えば、樹脂材によって形成された矩形の網状材を、一辺を除いて側周壁部72の内側に縫い付けることによって設けることができる。75aは鳩目であり、76aは縫い目である。これによれば、水などによって洗浄することで、透水性を容易に回復できる。
【0028】
77はフィルタ部材であり、内部ポケット部76に挿入されて排水孔75を覆うと共に濾過機能を有する。このフィルタ部材77としては、例えば、不織布によって構成できる。内部ポケット部76が側周壁部72の内部に設けられているため、充填された栽培用の土の圧力によって、フィルタ部材77を、内部ポケット部76を介して排水孔75側へ密着できる。
これによれば、植栽用容器内の土が洩れ出ることを防止しつつ、余分な水分を好適に排出できる。また、フィルタ部材77を、内部ポケット部76から取り出して、交換や洗浄を簡単に行うことができ、保守管理を容易に行うことができる。
【0029】
次に、図9に基づいて、本発明に係る植栽用容器の排水孔の他の形態例を説明する。
85は枠付排水孔であり、側壁部12又は側周壁部72の下部、及び/又は底部11(71に、鳩目状の枠が設けられた形態の排水孔になっている。この枠付排水孔85に、くびれ部を有する立体フィルタ部材88が嵌められている。
これによれば、植栽用容器内の土が洩れ出ることを防止しつつ、余分な水分を好適に排出できる。また、立体フィルタ部材88を枠付排水孔85から外して、交換や洗浄を簡単に行うことができ、保守管理を容易に行うことができる。
【0030】
以上、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの形態例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。
【符号の説明】
【0031】
10 植栽用容器
11 底部
12 側壁部
13 袋部
14 連結孔
15 折り曲げ部
16 袋部
20 差し込み棒状材
21 補強用挿入材
31 中空ボルト
32 ナット
50 ろ過材
70 植栽用容器
71 底部
72 側周壁部
75 排水孔
76 内部ポケット部
77 フィルタ部材
85 枠付排水孔
88 立体フィルタ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
形状復元性があって折り畳み可能な防水シート材で底部と少なくとも3面の側壁部によって箱形になるように形成されていることを特徴とする植栽用容器。
【請求項2】
形状復元性があって折り畳み可能な防水シート材で底部と筒状の側周壁部とを備えてポット状に形成されていることを特徴とする植栽用容器。
【請求項3】
前記側壁部又は前記側周壁部の下部、及び/又は前記底部に設けられた排水孔と、
該排水孔を内側から覆うと共に透水性を有する材料で設けられた内部ポケット部と、
該内部ポケット部に挿入されて前記排水孔を覆うと共に濾過機能を有するフィルタ部材とを具備することを特徴とする請求項1又は2記載の植栽用容器。
【請求項4】
前記側壁部又は前記側周壁部の下部、及び/又は前記底部に、鳩目状の枠が設けられた枠付排水孔が形成され、
該枠付排水孔にくびれ部を有する立体フィルタ部材が嵌められていることを特徴とする請求項1又は2記載の植栽用容器。
【請求項5】
前記側壁部又は前記側周壁部の側面に上下方向に棒状材を差し込めるように設けられた縦長の袋部を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに植栽用容器。
【請求項6】
前記側壁部又は前記側周壁部に他の容器と連結できると共に水を流通できるように連結孔が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の植栽用容器。
【請求項7】
前記防水シートがテントシートであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の植栽用容器。
【請求項8】
前記側壁部の上縁に折り曲げ部が設けられていることを特徴とする請求項1、3〜7のいずれかに記載の植栽用容器。
【請求項9】
形状復元性があって折り畳み可能な防水シート材で底部と少なくとも3面の側壁部によって箱形になるように形成され、前記側壁部の内側面に上下方向に棒状材を差し込めるように設けられた縦長の袋部を備える植栽用容器を複数並べて設けられる屋上緑化システムであって、隣接する前記植栽用容器の前記袋部の双方に二股の差し込み棒状材を挿入することで、隣接する側壁部を起立状態に保持させることを特徴とする植栽用容器を用いた屋上緑化システム。
【請求項10】
前記植栽用容器の前記側壁部に他の容器と連結できると共に水を流通できるように連結孔が設けられ、該連結孔に挿通されると共に軸方向に中空に設けられた中空ボルトと、該中空ボルトに螺合するナットによって隣接する前記植栽用容器同士を連結すると共に水を流通させることを特徴とする請求項9記載の植栽用容器を用いた屋上緑化システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−44983(P2012−44983A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85409(P2011−85409)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(597005509)株式会社北信帆布 (4)
【Fターム(参考)】