説明

植物においてストレス耐性を高める方法およびその方法

【課題】植物の細胞中で低温ショックタンパク質(Csp)を発現する植物を提供する。
【解決手段】5’から3’の方向で、a)植物中で機能し、かつ、ポリアデニル化配列として機能する3’転写終結DNAポリヌクレオチドに作動可能に連結された、低温ショックタンパク質、例えば細菌低温ショックタンパク質をコードするDNAポリヌクレオチドを発現するDNAを植物細胞に導入することによって、植物における非生物ストレスに対する上昇した耐性を示すトランスジェニック植物からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2003年9月29日に出願した米国仮特許出願番号60/506,717および2003年12月17日に出願した出願番号60/530,453の35 USC§119(e)の利益を主張する。
【0002】
配列表の取込み
ほぼ98メガバイトである(MS−DOSで測定して)、各々CSP.ST25.txtと命名したファイルを含む、すべてCD−ROMに存在する、配列表のコンピュータ読出し可能な形態の配列表の2のコピー(配列表コピー1および配列表2コピー2)は2004年9月28日に作製し、出典明示して本明細書の一部とみなす。
【0003】
本発明は、植物における低温、渇水、塩、低温発芽、熱および他の非生物ストレス耐性、ならびに植物におけるウイルス、菌類、細菌および他の生物ストレス耐性に関する。
【背景技術】
【0004】
種子および果実生産は、数十億ドルの商用産業であり、合衆国の多くの州および世界中の多くの国々の主たる収入源である。商業的に価値のある種子には、種子から搾ることができる植物油にふさわしい、例えばキャノーラ、ワタ種子およびヒマワリ種子が含まれる。エンドウ、インゲンおよびヒラマメのごときマメ科植物の種子も、それらはタンパク質に富むため商業的に価値がある。例えば、ダイズに関しては、40−45%のタンパク質および18%の油脂からなる。また、コーヒーはCoffea arabica植物の乾燥およびローストした種子から生産される価値ある作物であり、一方、チョコレートはカカオの種子または"ビーン"から生産される。同様にして、例えば、トウモロコシ、コメ、コムギ、オオムギおよび他の穀物、堅果、豆果、トマトおよび柑橘類果実を含む多くの果実および種子は商業的に価値がある。例えば、トウモロコシ種子は、タコス、コーン油、トルティア、コーンフレーク、コーンミールおよび他の多くのもののごとき多くの食品品目または調理に使用する品目に製造される。トウモロコシは、限定するものではないが、飼料およびエタノール生産を含む多くの製造方法における原料としても使用される。
【0005】
種子および果実の生産は両方とも、生物的および非生物的ストレスに固有に起因して制限される。例えば、ダイズ(Glycine max)は、貯蔵の間の種子発芽の損失に苦しめられ、および土壌温度が低温である場合は発芽することができない作物種である(Zhangら, Plant Soil 188: (1997))。このことは、トウモロコシおよび農業経済学的に重要な他の植物についてもあてはまる。植物における非生物的ストレス耐性の改善は、低温、渇水、洪水、熱、UVストレス、オゾン増加、酸性雨、汚染、塩ストレス、重金属、無機化土壌、および他の非生物的ストレス下の生長および/または発芽を増加させるのに栽培者に有利であろう。菌類およびウイルス感染のごとき生物的ストレスは、世界的に大きな作物の損失も生じる。
【0006】
伝統的な育種(1の遺伝子型の特定のアレルを他のものに交雑する)が何世紀もの間用いられてきて、生物的ストレス耐性、非生物的ストレス耐性および収量が増加されている。伝統的な育種は、親植物に存在する制限された数のアレルに固有的に起因して制限される。これは、つぎに、このようにして付加し得る遺伝的変異性の量を制限する。分子生物学は、植物におけるストレス耐性を改善するであろう遺伝子について、本発明者が遠くかつ広く見ることを許容している。本発明者らは、他の生物がストレスの多い条件に対してどのように反応し、耐えるのかを決定することを探求した。低温ショックタンパク質は、低温およびストレスの多い条件で生存するために、細菌および他の生物によって使用されるシステムの一部である。本発明者らは、低温ショックタンパク質およびそれと関連するタンパク質をコードする遺伝子を植物に入れ、それを発現させると、植物の低温、渇水、熱、水および他の非生物的ストレス耐性ならびに植物の菌類、ウイルスおよび他の生物的ストレス耐性を上昇すると仮定した。本発明者らは、低温ショックタンパク質に相同であるか、または配列類似性を有する遺伝子を用いれば、生物的および非生物的ストレス耐性を上昇するであろうことも考えた。
【0007】
本発明は、生物的および非生物的ストレスに起因するそれらの消失を制限する農業従事者にとって有用である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、植物の細胞中で低温ショックタンパク質(Csp)を発現する植物を提供する。このcspの発現は、該植物内におけるより大きな非生物的ストレス耐性に通じる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1の形態において、cspをコードするポリヌクレオチドは、作動可能に連結した植物中で機能するプロモーターおよび植物中で機能するターミネーターによって発現する。
より詳細には、本発明は、ポリアデニル化部位を提供する3'転写終結DNAポリヌクレオチドに作動可能に連結した低温ショックタンパク質をコードする第2のDNAポリヌクレオチドに作動可能に連結した、植物中で機能するプロモーターを含む第1のDNAポリヌクレオチドを含む組換えDNA分子を提供する。第1のDNAポリヌクレオチドは、第2のDNAポリヌクレオチドに有利に異種性である場合がある。該発明は、第1のDNAポリヌクレオチドと第2のDNAポリヌクレオチドとの間に挿入したイントロンを有する組換えDNA分子も提供する。また、本発明は、第2のDNAポリヌクレオチドが配列番号:3中のモチーフを含むタンパク質をコードする組換えDNA分子も提供する。本発明の組換えDNAの特定の形態において、第2のDNAポリヌクレオチドは以下の中から選択されるタンパク質をコードする:
(a)グラム陽性細菌からの低温ショックタンパク質のアミノ酸配列に実質的同一性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質、
(b)バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)からの低温ショックタンパク質、
(c)バチルス・ズブチリス低温ショックタンパク質B(CspB)のホモログ、
(d)配列番号:2に実質的に同一であるアミノ酸配列を有するタンパク質、
(e)グラム陰性細菌からの低温ショックタンパク質のアミノ酸配列に実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(f)エスシェリキア・コリ(Escherichia coli)からの低温ショックタンパク質を含むタンパク質、
(g)エスシェリキア・コリ低温ショックタンパク質A(CspA)のホモログ、
(h)配列番号:1に実質的同一性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質、
(i)アグロバクテリウム・ツメファシエンスからの低温ショックタンパク質、および
(j)配列番号:5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63または65のいずれかに実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質。
【0010】
本発明は、プロモーターが、誘導性プロモーター(inducible promoter)、構成的プロモーター(constitutive promoter)、時期調節型プロモーター(temporal-regulated promoter)、発生段階調節型プロモーター(developmentally-regulated promoter)、組織優先型プロモーター(tissue-preferred promoter)、低温亢進型プロモーター(cold enhanced promoter)、低温特異的プロモーター(cold-specific promoter)、ストレス亢進型プロモーター(stress enhanced promoter)、ストレス特異的プロモーター(stress specific promoter)、渇水誘導性プロモーター(drought inducible promoter)、水分欠乏誘導性プロモーター(water deficit inducible promoter)および組織特異的プロモーター(tissue-specific promoter)よりなる群から選択される組換えDNA分子も提供する。
【0011】
本発明は、前記した組換えDNA分子をゲノム中に含む植物細胞および植物、ならびにそれから作製した伝播体および子孫も提供する。植物には、限定するものではないが、作物植物、単子葉および双子葉植物が含まれる。より好ましくは詳細には、それには、ダイズ、トウモロコシ、キャノーラ、イネ、ワタ、オオムギ、エンバク、シバ、ワタ、およびコムギが含まれ得る。
【0012】
本発明は、低温ショックタンパク質を発現する組換えDNA分子で形質転換されている非生物的ストレス耐性のトランスジェニック植物も提供する。かかる植物ならびにその細胞および種子のごとき伝播体には、そのゲノムの中に、低温ショックタンパク質を発現する組換えDNA分子が含まれる。かかる植物は、1またはそれを超える高められた特性を示す:低温が同種の非形質転換植物の生長を制限するであろう条件下でのより高い生長速度、
(a)高温が同種の非形質転換植物の生長を限定するであろう場合の条件下でのより高い生長速度、
(b)水分が同種の非形質転換植物の生長を限定するであろう場合の条件下でのより高い生長速度、
(c)土壌および/または水分中の高塩分または高イオンが同種の非形質転換植物の生長を限定するであろう場合の条件下でのより高い生長速度、
(d)同種の非形質転換植物よりもコールドショック後に生存する植物のより高いパーセントを有すること、
(e)同種の非形質転換植物と比較した場合のより高い収量、または
(f)同種の非形質転換植物と比較した渇水に対する耐性。
【0013】
本発明の方法は、例えば種子を発生する目的で、単純にかかる種子を土壌に播き、例えばストレス条件下で、それを生長させることによって、本発明の植物を繁殖するさせることを含む。より詳細には、本発明は、非生物的ストレス耐性、増大した収量または増大した根の大きさのごとき高められた特性を有する植物を作製する方法を提供する。方法には、
a)低温ショックタンパク質をコードするDNAを含む組換えDNA分子を植物細胞または複数の細胞のゲノムに挿入し、
b)形質転換植物細胞または複数の細胞を得、
c)該形質転換植物細胞(または複数の細胞)から植物を再生し、ついで
d)高められた特性を示す植物を選択する
工程が含まれる。
本発明の1の態様において、熱耐性、塩耐性、渇水耐性および低温ショック後の生存よりなる群から選択される高められた非生物ストレス耐性を示す植物を選択する。
【0014】
本発明は、配列番号:5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63および65よりなる群から選択されるアミノ酸配列を有するタンパク質に対して少なくとも40%同一である単離されたタンパク質も提供する。ある種の態様において、匹敵する特性は、低温ショックタンパク質を、40%を超える同一性を有するタンパク質と、例えば本明細書に詳細に開示した低温ショックタンパク質に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%または少なくとも95%同一性を有するタンパク質と置換することによって達成し得る。同様にして、本発明は、配列番号:4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、90および92を含む群から選択されるDNA配列を有する核酸にハイブリダイズする低温ショックタンパク質をコードする単離された核酸も提供する。
【0015】
本発明は、詳細には、配列番号:5、7、9、29、31、33、35、37、39、41、43、53、55、57、59、61、63および65よりなる群の配列に実質的に同一であるDNA配列を有する低温ショックタンパク質をコードする単離された核酸も提供する。
【0016】
本発明は、伝播体を植えるかまたは発芽させた場合の、前記の組換えDNA分子を含む伝播体、および、例えばかかる伝播体が種子である場合には、該伝播体から発芽した植物の圃場(field)も提供する。
【0017】
本発明は、請求項59の種子を土壌に植え;
b)該植物から種子;およびそれから生成した種子を収穫することを含む種子の生産方法も提供する。
【0018】
また、トランスジェニック植物の作製方法を提供し、当該方法には、
(i)配列番号:5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63および65よりなる群から選択されるアミノ酸配列を有するタンパク質、またはそのフラグメントもしくはシス・エレメントに少なくとも40%相同であるDNAポリヌクレオチドを含むDNA分子を植物細胞のゲノムに導入し、ここに該DNAポリヌクレオチドはプロモーターに作動可能に連結されており、かつ、3'転写終結DNAポリヌクレオチドに作動可能に連結されており;ついで、
(ii)該トランスジェニック植物細胞を選択し;ついで、
(iii)該トランスジェニック植物細胞をトランスジェニック植物に再生する工程を含み、またこの方法によって作製した植物も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1はpMON57396のプラスミド地図を示す。
【図2】図2はpMON23450のプラスミド地図を示す。
【図3】図3はpMON57397のプラスミド地図を示す。
【図4】図4はpMON57398のプラスミド地図を示す。
【図5】図5はpMON23450のプラスミド地図を示す。
【図6】図6はpMON57399のプラスミド地図を示す。
【図7】図7はpMON48421のプラスミド地図を示す。
【図8】図8はpMON56609のプラスミド地図を示す。
【図9】図9はpMON56610のプラスミド地図を示す。
【図10】図10はpMON73607のプラスミド地図を示す。
【図11】図11はpMON61322のプラスミド地図を示す。
【図12】図12はpMON73608のプラスミド地図を示す。
【図13】図13はpMON65154のプラスミド地図を示す。
【図14】図14はpMON72472のプラスミド地図を示す。
【図15】図15はpENTR1のプラスミド地図を示す。
【図16】図16は示した遺伝子を発現する植物および対照の生長パターンを示し、導入した遺伝子が非生物的ストレス耐性を提供することを示している。
【図17】図17はpMON42916のプラスミド地図を示す。
【図18】図18はpMON73983のプラスミド地図を示す。
【図19】図19はpMON73984のプラスミド地図を示す。
【0020】
本発明は、生物的および非生物的ストレスに対する増大した耐性を有する植物を提供する。提供する植物は、該植物の細胞における低温ショックタンパク質(csp)の発現に起因する増大したストレス耐性を有する。本発明は、幾つかの形態の例を提供し、本発明において機能することが予想される他の形態も意図する。
【0021】
以下の定義および方法は、本発明をより良好に定義するため、および、当業者が本発明を実施することを案内するために提供する。別段注記しない限り、用語は当業者による慣習的な用法に従って理解されるべきである。例えば、分子生物学および分子遺伝学で使用される一般用語の定義は、Lewin, Genes VII, Oxford University Press and Cell Press, New York, 2000;Buchananら, Biochemistry and Molecular Biology of Plants, Courier Companies, USA, 2000;Lodishら, Molecular Cell Biology, W. H. Freeman and Co., New York, 2000に見出すことができる。遺伝学の一般用語は、先の刊行物ならびにLynchら, Genetics and Analysis of Quantitative Traits, Sinauer and Associates, Sunderlant, MA, 1998;Hartwellら, Genetics:From Genes to Genomes, McGraw-Hill Companies, Boston, MA, 2000;Martlら, Genetics: Analysis of Genes and Genomes, Jones and Bartlett Publishers, Sudbury, MA;Strachanら, Human Molecular Genetics, John Wiley and Sons, New York, 1999に見出すことができる。
【0022】
37 CFR§1.822に記載のDNA塩基の命名法を用いる。アミノ酸残基の標準的な一文字および三文字命名法を用いる。
【0023】
多くの農業経済学的特性が"収量"に影響し得る。例えば、それには、限定するものではないが、植物の高さ、莢の数、植物上の莢の位置、節間の数、莢破壊の発生率(incidence of pod shatter)、種子サイズ、根粒着生および窒素固定の効率、栄養同化の効率、生物的および非生物的ストレスに対する抵抗性、炭素同化、植物構造、倒伏に対する抵抗性、パーセント種子発芽、苗木活力および幼植物特性が含まれ得る。例えば、それには、限定するものではないが、発芽の効率(ストレスを負荷した条件下での発芽を含む)、いずれかまたはすべての植物部分の生長速度(ストレスを負荷した条件下での生長速度を含む)、穂の数、穂当たりの種子の数、種子のサイズ、種子の組成(デンプン、油、タンパク質)、種子中身の特徴(characteristic of seed fill)も含まれ得る。収量は多くの方法で測定することができ、それには、試験重量、種子重量、植物当たりの種子の数、植物当たりの種子重量、単位面積当たりの種子の数または重量(すなわち、エーカー当たりの種子、または種子の重量)、エーカー当たりのブッシェル重量、エーカー当たりのメートルトン、エーカー当たりのトン、ヘクタール当たりのキロが含まれる。1の形態において、本発明の植物は収量の要素である高められた特性を示す。
【0024】
"核酸(配列)"または"ポリヌクレオチド(配列)"とは、ゲノムまたは合成起源の一本鎖または二本鎖のDNA(デオキシリボ核酸)またはRNA(リボ核酸)、すなわち5’(上流)末端から3'(下流)末端に読まれる、各々、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド塩基の高分子である。核酸はセンスまたは相補(アンチセンス)鎖を表し得る。
【0025】
"自然のまま"とは、天然に生じる("野生型")核酸配列をいう。
"外来性"配列とは、外来起源または外来種から生じる配列をいい、あるいは同一起源からの場合にはその起源形態から修飾された配列をいう。例えば、自然のままのプロモーターを用いて、同一または異なる種からの外来性遺伝子の転写を引き起こし得る。
【0026】
植物の"部分"には、植物のすべての部分または片が含まれ、限定するものではないが、根、若枝、葉、茎、花粉、種子、花、おしべ、めしべ、卵(egg)、胚、花弁、花糸、心皮(carpel)(柱頭、子房、および花柱を含む)、細胞(または複数の細胞)、または前記したもののいずれかの片が含まれる。
【0027】
"伝播体"には、減数分裂および有糸分裂のすべての産物が含まれ、限定するものではないが、新しい植物を伝播し得る植物の種子および部分が含まれる。例えば、伝播体には、若枝、根または全植物に生長し得る他の植物の部分が含まれる。伝播体には、植物の一の部分を異なる植物(異なる種のものでさえ)の他の部分に移植して生きている生物を創り出す場合の移植片も含まれる。伝播体には、減数分裂生成物をクローニングするまたは互いに一緒にする、あるいは減数分裂生成物を一緒にして胚または受精卵を形成させる(自然またはヒトの介在でもって)ことによって生成する全植物および種子も含まれる。
【0028】
"単離された"核酸配列は、中で核酸が自然に生じる生物の細胞中で自然に核酸が関連する他の核酸配列、すなわち他の染色体DNAまたは染色体外DNA、から実質的に分離または精製されている。この用語には、汚染する核酸および他の細胞コンポーネントを実質的に除去するように生化学的に精製された核酸が包含される。この用語は、組換え核酸および化学合成核酸も包含される。
【0029】
本明細書中で用いる"同一性"または"同一"は、タンパク質(または複数のタンパク質)または核酸(または複数の核酸)の間の比較をいう場合は98%またはそれを超える同一性を意味する。
【0030】
第1の核酸またはタンパク質配列は、他の核酸(またはその相補鎖)またはタンパク質と最適に整列(比較のウインドウにわたり参照配列の総計20%未満の適当なヌクレオチドまたはアミノ酸の挿入または欠失でもって)した場合に、参照核酸配列またはタンパク質に対して"実質的同一性"または"実質的類似性"を示し、少なくとも20ヌクレオチドまたはアミノ酸位置の、好ましくは少なくとも50ヌクレオチドまたはアミノ酸位置、より好ましくは少なくとも100ヌクレオチドまたはアミノ酸位置、および最も好ましくは第1の核酸またはタンパク質の全長にわたっての比較ウインドウにわたって少なくとも約60%の核酸配列等価、なお良好には70%、好ましくは少なくとも約80%の等価、より好ましくは少なくとも約85%の等価、および最も好ましくは少なくとも約90%の等価が存在する。比較ウインドウを整列するための配列の最適整列は、ローカルホモロジーアルゴリズム(それは、例えば、Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WI)によって、好ましくはこれらのアルゴリズムのコンピュータ化された実行によって行い得る。参照核酸は完全長の分子であっても、またはより長い分子の部分であってもよい。あるいは、一方の核酸がストリンジェントな条件下で他方の核酸にハイブリダイズする場合には、2の核酸は実質的同一性を有する。適当なハイブリダイゼーション条件は経験的に決定し得、あるいは例えば、分かっている場合には、プローブの相対的G+C含量およびプローブと標的配列との間のミスマッチ数に基づいて概算することができる。ハイブリダイゼーション条件は、例えば、ハイブリズの温度または塩濃度である(Sambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Mannual, 第2版, Cold Spring Harbor Harbor Press、1989)。
【0031】
第1の核酸配列が第2の核酸配列の機能に影響するようにそれらの配列が整列する場合、第1の核酸配列は第2の核酸配列と"作動可能に連結する"。好ましくは2の配列は単一の隣接する核酸分子の部分であり、より好ましくは近接している。例えば、プロモーターが細胞中の遺伝子の転写を調節または仲介する場合には、該プロモーターは該遺伝子に作動可能に連結している。例えば、転写終結領域(ターミネーター)がターミネーターにおいてまたはその付近で遺伝子を含む転写物を終結するようRNAポリメラーゼを導く場合には、該ターミネーターは該遺伝子に作動可能に連結している。例えば、エンハンサーはそれがその効果を示しているプロモーターに近接していない場合もあるが、一般的には同じ核酸分子に存在する。
【0032】
"組換え"核酸もしくはDNA、またはRNA分子は、例えば化学合成によって、または遺伝子工学技術による核酸の単離したセグメントの操作によって、2ほかの配列の分離したセグメントの人工的結合によって作製する。核酸操作の技術はよく知られている(例えば、Sambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor Press, 1989)。核酸の化学合成の方法は、例えば、BeaucageおよびCarruthers, Tetra. Letts. 22: 1859-1862, 1981およびMatteucciら, J. Am. Chem. Soc. 103: 3185, 1981に論じられている。核酸の化学合成は、例えば、市販の自動オリゴヌクレオチドシンセサイザー上で行うことができる。
【0033】
遺伝子の"発現"とは、遺伝子が転写されて対応するmRNAを生成し、ついでこのmRNAが翻訳されて対応する遺伝子産物、すなわちペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を生成することをいう。遺伝子発現は、プロモーターのごとき5'調節エレメントを含む調節エレメントによって制御またはモジュレートされる。
【0034】
"組換えDNA構築物"、"組換えベクター"、"発現ベクター"または"発現カセット"とは、プラスミド、コスミド、ウイルス、BAC(細菌人工染色体)、自律複製配列、ファージ、またはいずれかの起源由来の、ゲノム組み込みまたは自律複製することができる、1またはそれを超えるDNA配列が機能的に作動可能な様式で連結しているDNA分子を含む、線状もしくは環状の一本鎖もしくは二本鎖のDNAもしくはRNAヌクレオチド配列のごときいずれかの因子をいう。
【0035】
"相補的"とは、塩基対形成による核酸配列の自然の会合をいう。核酸対のうちのいくつかのみが相補的である場合、2の二本鎖分子の間の相補性は部分的になり得る;あるいは、すべての塩基対が相補的である場合、完全である。相補性の度合いは、ハイブリダイゼーションおよび増幅反応の効率および強度に影響する。
【0036】
"ホモロジー"とは、ヌクレオチドまたはアミノ酸の同一性または類似性からみた、各々、核酸またはアミノ酸配列の間の類似性、すなわち配列の類似性または同一性のレベルをいう。ホモロジー、ホモログおよび相同も、異なる核酸またはタンパク質の中での類似の機能特性の概念をいう。相同は、1またはそれを超える以下の方法で本明細書に開示したまたは適当なデータベース(NCBIまたはほかのような)に見出される遺伝子のコード配列を用いることによって決定し得る。タンパク質配列については、配列はアルゴリズムを用いて比較すべきである(例えば、"同一性"および"実質的同一性"のセクションをご参照)。ヌクレオチド配列については、1のDNA分子の配列をほぼ同じ方法で知られているまたは推定ホモログの配列に比較することができる。ホモログは、分子(DNA、RNAまたはタンパク質分子)のいずれかの実質的な(25ヌクレオチドまたはアミノ酸、より好ましくは50ヌクレオチドまたはアミノ酸、より好ましくは100ヌクレオチドまたはアミノ酸、または最も好ましくはより短い配列の全長の)領域の間で、少なくとも20%同一、より好ましくは30%、より好ましくは30%、より好ましくは40%、より好ましくは50%同一、より好ましくは60%、より好ましくは70%、より好ましくは80%、より好ましくは88%、より好ましくは92%、最も好ましくは95%同一である。
【0037】
あるいは、2の配列または1もしくは両方の配列の相補体がストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズし、同様の機能を示す場合、2の配列、またはアミノ酸配列をコードするもしくはコードし得るDNAもしくはRNA分子は相同またはホモログであるか、または相同配列をコードする。したがって、2のタンパク質配列が相同であるかを決定することができれば、本明細書に記載するコンピュータ訓練を行い、およびタンパク質をコードし得るすべての可能な核酸配列の配列をコードする縮重を作製し、それらがストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るかを決定し得るであろう。DNAハイブリダイゼーションを促進する適当なストリンジェンシー条件、例えば、6.0×塩化ナトリウム/酢酸ナトリウム(SSC)、約45℃、つづいて2.0×SSC、50℃の洗浄は、当業者に知られており、あるいはCurrent Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N.Y.(1989), 6.3.1-6.3.6に見出すことができる。例えば、洗浄工程における塩濃度は、約2.0×SSC、50℃の低ストリンジェンシーないし約0.2×SSC、50℃の高ストリンジェンシーから選択し得る。また、洗浄工程における温度は、室温、約22℃の低ストリンジェンシー条件から約65℃の高ストリンジェンシー条件まで増大させ得る。温度および塩濃度は両方とも変化させることができ、あるいは温度または塩濃度のうちのいずれかの変数を変化させつつ他方のものを一定に保持することができる。1の好ましい形態において、本発明に記載するタンパク質をコードする核酸は、非常にストリンジェントな条件、例えば約2.0×SSCおよび約65℃にて、1またはそれを超える核酸分子またはその相補体もしくはいずれかのフラグメントに特異的にハイブリダイズするであろう。標的DNA分子へのプローブのハイブリダイゼーションは、当業者に知られている多くの方法によって検出することができ、これらには限定されるものではないが、蛍光タグ、放射性タグ、抗体ベースタグおよび化学ルミネセンスタグが含まれ得る。
【0038】
"低温ショックタンパク質(または複数のタンパク質)"(Csp(s)またはCSP(s))は、エスシェリキア・コリのCspAタンパク質(配列番号:1)またはバチルス・ズブチリスのCspBタンパク質(配列番号:2)に対して40%を超える同一性を有し、あるいは、低温ショックタンパク質は文献において決定された保存されたドメインを用いることによって見出し得る。例えば、本願明細書中で用いるように、低温ショックタンパク質は、イー・コリのCspAまたはビー・ズブチリスのCspBの全長にわたり、イー・コリCspAまたはビー・ズブチリスCspBに40%同一、より好ましくは50%同一、より好ましくは60%同一、より好ましくは70%同一、より好ましくは80%同一、より好ましくは90%同一、より好ましくは95%同一である。Genbankないしタンパク質の関係を決定し、および/または関連するタンパク質を見出すことができるように設計されたタンパク質データベースのような、幾つかのデータベースが利用可能であり、それによって当業者は新たなまたは既存のタンパク質が低温ショックドメインを含むか否かまたは低温ショックタンパク質であるかを決定することができる。本明細書の定義内に含まれるものは、すべての知られている低温ショックタンパク質であり、限定されるものではないが、エスシェリキア・コリからのCspA、CspB、CspC、CspD、CspE、CspF、CspG、CspHおよびCspI(米国特許第6,610,533号)が含まれる。
【0039】
保存された低温ショックドメインを配列番号:3に示す([FY]-G-F-I-x(6,7)-[DER]-[LIVM]-F-x-H-x-[STKR]-x-[LIVMFY])(プロサイトモチーフPS00352;Bucher and Bairoch, (In) ISMB-94; Proceedings 2nd International Conference on Intelligent Systems for Molecular Biology, Altman R., Brutlag D., Karp P., Lathrop R., Searls D., Eds., pp53-61, AAAIPress, Menlo Park, 1994; Hofmannら, Nucleic Acids Res.27: 215, 1999)。別法として、低温ショックタンパク質はSprint データベースを用いて見出することができる(関係のあるタンパク質のフィンガープリントデータベース)(Attwoodら, Nucleic Acids Res. 28(1): 225, 2000; Attwoodら, Nucleic Acids Research, 30(1), 印刷中, 2002)。別法として、低温ショックタンパク質はマトリックスベースのデスクリプションまたはPfamを用いて見出すことができる。Pfamは複数の配列アライメントおよび多くの一般的なタンパク質ドメインをカバーする隠れマルコフモデルの大きな収集である(Batemanら, Nucleic Acids Reserch, 28:263, 2000)。この記載では(2001年11月;Pfam release 6)、3071のファミリーが存在する。低温ショックタンパク質はPF00313として含まれる。種系統樹はPfamデータベースにおいて決定された低温ショックタンパク質の分布を示している。
【0040】
本明細書中で用いる"低温ショックタンパク質"には、限定されるものではないが、National Center for Biotechnology Informationで見出すことができる"Blink"(Blast Link)機能を用いるデータベースの、クエリー配列として低温ショックタンパク質を用いたサーチで見出されるいずれのタンパク質も含まれる。"Blink"は同様の配列を用いてタンパク質を見出すために用いる高速サーチ関数である。"低温ショックタンパク質"または"低温ショックドメイン"のこの定義は、前記に用いたものに加わるものであり、該定義を置き換えるものではない。低温ショックタンパク質または低温ショックドメインを含むタンパク質には、限定するものではないが、公共および個人的なデータベースにおいてすべての現在知られているタンパク質、ならびにBlast Linkで現在(2001年11月1日)用いられている標準blastサーチ設定下で"ヒット"する特許請求するタンパク質に十分に類似していることがいままでに発見されているもの(例えば、イー・コリのCspAおよびビー・ズブチリスのCspB)が含まれる。このライティングでBlast2を稼働し、Blast Link("Blink")はタンパク質−タンパク質blastサーチにデフォルトパラメータを稼働する。このライティングのもののように、本発明者らは、Blinkで使用したデフォルト設定は以下のように考える;"nr"データベースを用いてBLOSUM62マトリックスを稼働する、CDサーチが"低複雑度"、予想値を10、3のワード・サイズ、ギャップコストは;イグジスタンス(existance)11、および伸長1として選択された複雑度のコンポジションベースの統計学としてCDサーチが選択される。表Iのリストは、これらの標準的設定を用いたイー・コリのCspAについての最初の200ヒットを示しているが、本発明者らは特許請求の範囲を最初の200に限定しない。当業者はこれらのかなりストリンジェントな基準下では細菌起源の167のタンパク質を見出したが、28の後生動物および5の植物のタンパク質も見出すであろう。これらのタンパク質には、本発明者らにより本発明において機能すると予想される、CspAに対してその相同性を行ったように、広い範囲のタンパク質が含まれる。これは決して全包含リストではなく、他のタンパク質も本発明において機能することが予想される。
【0041】
表20.幾つかの低温ショックタンパク質およびイー・コリCspAに対する類似性によって見出された低温ショックドメインを含む幾つかのタンパク質
このリストはNational Center for Biotechnology Informationにおいて標準Blast Link設定を用いてコンパイルした。各タンパク質のGenbank配列番号および名称を示す:タンパク質を命名する方法に起因して、幾つかのタンパク質および配列は、タンパク質、cDNA、アレルほかのように幾つかのエントリーを有するであろう。Genbank配列番号は、各エントリーの特定の識別名と考えることができる。エントリーは、クエリー配列を用いる比較において、最高から最低のアイデンティティーの大体の順序で存在する。
【0042】
【表1−1】

【0043】
【表1−2】

【0044】
【表1−3】

【0045】
【表1−4】

【0046】
【表1−5】

【0047】
バチルス・ズブチリスのCspBは、低温ショックに応答して蓄積するタンパク質である(Willimskyら, Journal of Bacteriology 174: 6326 (1992))。それはイー・コリからのCspAに対して相同性を有し(表1を参照されたい)、一本鎖核酸結合ドメインを含む(Lopezら, The Journal of Biological Chemistry 276: 15511 (2001))。NCBIにおける同じベーシックBlastサーチ(Blink)を用いて、以下のタンパク質が"ヒット"として指定された。本明細書に示すヒットの数は200に限定されるが、多くの他のタンパク質が本発明で機能的であると予想される。
【0048】
表21.幾つかの低温ショックタンパク質およびビー・ズブチリスCspBを用いたサーチで見出された低温ショックドメインを含むタンパク質
このリストはNational Center for Biotechnology Informationにおいて標準Blast Link設定を用いてコンパイルした。各タンパク質のGenbank配列番号および名称を示す:タンパク質を命名する方法に起因して、幾つかのタンパク質および配列は、タンパク質、cDNA、アレルほかのように幾つかのエントリーを有するであろう。Genbank配列番号は、各エントリーの特定の識別名と考えることができる。エントリーは、クエリー配列に対する最高から最低のアイデンティティーの大体の順序で存在する。
【0049】
【表2−1】

【0050】
【表2−2】

【0051】
【表2−3】

【0052】
【表2−4】

【0053】
【表2−5】

【0054】
【表2−6】

【0055】
CSPは、温度が低下するかまたは他のストレスが加えられた場合に、量において増加し得るまたは増加しないタンパク質の群である。事実、低温ショックタンパク質に関して最もよく研究された生物、イー・コリにおいては、幾つかの低温ショックタンパク質が構成的に発現し、他のタンパク質は低温によって誘導され、いまだ他のものは特定のストレスおよび/または成長条件またはステージに特異的のようである。この概説はYamanakaら, Molecular Microbiology, 27: 247(1998)である。この概説において、Yamanakaおよび共同研究者は、イー・コリにおいて9の低温ショックタンパク質(CspAないしCspI)がどのように発現されるかを詳述している。CspA、CspBおよびCspGは低温誘導性である。CspDは細胞周期の定常期および飢餓の間に誘導される。CspCおよびEは細胞分割に関係付けられている。
【0056】
CspAはエスシェリキア・コリからの主低温ショックタンパク質である(配列番号:1)。CspAは主低温ショックタンパク質7.4とも呼ばれる。CspAは低温ショックに応答して高度に誘導される(Goldsteinら, Proceedings of the National Academy of Science (USA) 87: 283 (1990))。より遅い増殖の幾つかの条件において、RNAまたはDNA二次構造形成に起因してリボソームが鈍化され、これは、その本来の生物中のCSPの増大した合成についてのシグナルとして作用し得る。CSPは、イン・ビトロ(in vitro)条件下でssDNAおよびRNAに結合する(Phadtareら, Molecular Microbiology 33: 1004 (1999))。CSPは翻訳の間に比較的非特異的な様式でRNAに結合し、二次構造形成を妨害し、RNAを安定化させる(この機能はRNAシャペロンといわれることがある)と考えられている。ついで、リボソームが簡単にCSPに取って代わり、線状RNAテンプレート上で翻訳を開始する。本発明者らは、これらのタンパク質の一本鎖核酸結合機能を含み得ると考え、この機能は、例えば原核生物低温ショックタンパク質、真核生物Y−ボックス含有遺伝子、幾つかのグリシンに富むタンパク質(GRP)、および低温ショックドメインを含む他のタンパク質を包含する、いずれかの低温ショックタンパク質または低温ショックドメインを含むタンパク質から生じ得る。これらのタンパク質には、限定されるものではないが、図4、Trends in Biochemical Science, 23(8):289 (1998)(出典明示して本明細書の一部とみなす)に示されるものが含まれる。この図は、これらのタンパク質間の進化の関係を明らかに示している。これらのタンパク質の起源は、現代の細菌および真核生物の分岐よりも先のようであり、これらのタンパク質は単細胞進化の出現時、35億年前に存在していたと仮定されている。本発明者らは、前記に引用した図に示すように、例として2のタンパク質を選択して植物に形質転換した。これらのタンパク質はそれらの多くの真核生物相対物からよりも互いにより大きく分岐している。本発明者らは、これらのタンパク質の異なる場所での発現は生物的および非生物的ストレスに対する耐性を改善し得ると予想し、それは、限定されるものではないが、低温、渇水、塩ストレス、熱、低温ショック後の生存、菌類感染、ウイルス感染、微生物感染、および低温発芽を含み得る種々のストレスの多い条件下での植物の生長、活力、収量および健康を包含し得る。
【0057】
ストレス下での植物の増大した生長速度のもう1の可能な説明は、CSPの発現によって提供される病原菌関連分子パターン(PAMP)の顕在化とし得る。このモデルにおいては、植物がストレス適用に先立ってそのストレスに対して"準備する"ように、幾分全身獲得抵抗性(生物的ストレスに対してはほとんどSARのように作動する)のような植物応答を顕在化するPAMPを発揮する。CSPが存在することが、植物がシグナル伝達しなければならないが植物に作動するこのモデルについては、このメカニズムはCSPを結合する植物受容体を介して最近提供されたものかもしれない(Felixら, Journal of Biological Chemistry, 278(8): 6201-8 (2003))。このメカニズムは、PAMP−型応答を顕在化する受容体結合をいずれかの遺伝子が本発明において機能するであろうことを意味するであろう。PAMP−型応答の顕在化は、一般的に生物的ストレスについて研究されており、因子の外因的な投与を介して顕在化する場合がある。本明細書において、本発明者らは、CSPトランス遺伝子から生成するCSPに対するPAMP−型応答を顕在化し得た。トランスジーンは、パーティクルガンまたはアグロバクテリウム媒介形質転換を通して、組換えDNA構築物の一部分として植物細胞に形質転換した。ついで、これは、植物における全身獲得型の応答を創製し得、ついで、非生物的ストレスに対する抵抗性を増大し得た。この応答は、限定するものではないが、トウモロコシ、ダイズ、ムギ、イネ、アラビドプシス(Arabidopsis)、キャノーラおよびワタを含む単子葉植物および双子葉植物の両方において作動し得た。前記PAMP法がCSPに対して活動の様式である場合、CSPは生物的ストレス保護ならびに非生物的ストレス保護を提供すると予想し得る。これらのメカニズムは限定することを意味するものではなく、1または両方または無数の他のものが現れた表現型に含まれ得る。
【0058】
バチルス・チューリンジェンシス(Bacillus thuringensis)からのCsp様タンパク質であるMF2は、植物におけるウイルス感染に対して何らかの保護を与えると評判となっている。米国特許第6,528,480号は、タンパク質を含有する抽出物で植物の葉を擦ることおよび植物をウイルスに感染させることを介する生物的ストレスに対するこの耐性を示している。それらは、その中で作製していないが、トランスジェニック植物を黙考している。
【0059】
"同種の非形質転換植物"とは、形質転換植物と同種のすべての植物を含むことを意味する。1の形態において、形質転換植物は、形質転換植物と同じ種および株のものである。もう1の形態において、植物は、形質転換植物と可能な限り同一である。
【0060】
"低温ショックドメイン"(CSD)は、低温ショックタンパク質と相同であるタンパク質配列である。本発明の目的につき、低温ショックドメインを含有するタンパク質は"低温ショックタンパク質"である。イー・コリCspAまたはビー・ズブチリスCspBおよび低温ショックドメインを含有するタンパク質の低温ショックドメインの間には40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または98%を超えるアミノ酸同一性が見られる(Wistow, Nature, 344:823 (1990);Yamanakaら, Mol. Micro., 27: 247, 詳細にはYamanaka参考文献中の図1Bを参照されたい;Graumannら, TIBS 23: 286)。
【0061】
本明細書中で用いる"酵母"は、規則正しくはサッカロマイセス・セレビシア(Saccharomyces cerevisiae)をいうが、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)および他の種(例えば、ピキア(Pichia)属からのもの)も含み得る。"トウモロコシ"とはジア・メイズ(Zea mays)および、それと繁殖し得るすべての種および品種をいう。"コムギ"とは限定するものではないが、春、冬およびすべての環境適応性のムギ品種が含まれる。"コムギ"には限定するものではないが、デュラムコムギ(Triticum durum)、スペルトコムギ(Triticum spelta)、エンマーコムギ(Triticum dicoccum)およびヒトツブコムギ(Triticum monococcum)を含むいずれかのほかのコムギ種が含まれる。"コムギ"には前記したコムギ種のいずれかと繁殖し得るいずれの種のもの、該交雑の子孫(ライムギ、コムギおよびライムギの雑種を含む)も含まれる。"ダイズ"とは、グリシン・マックス(Glycine max)またはグリシン・ソジャ(Glycine soja)およびそれらと繁殖し得るいずれの種または品種をもいう。"イネ"とはオリザ・サティバ(Oryza sativa)およびそれと繁殖し得るいずれの種または品種をもいう。”オオムギ”とはホルデウム・ブルガレ(Hordeum vulgare)およびそれと繁殖し得るいずれの種または品種をもいう。"エンバク"とはアベナ・サティバ(Avena sativa)およびそれと繁殖し得るいずれの種または品種をもいう。"キャノーラ"とは遺伝的に改変されたナタネ植物、アブラナ科植物(Brassica napus L.)およびターニップ・レイプ(B. campestris L)によって生産される種子、油および粉に対して最近与えられた新造名であり、本明細書中においてキャノーラにはすべてのナタネ植物およびそれと繁殖し得る生物が含まれる。本明細書中で用いるイー・コリおよびエスシェリキア・コリには、エスシェリキア・コリ種およびこの生物のすべての菌株;例えば、イー・コリK12が含まれる。本明細書中で用いるイー・コリおよびエスシェリキア・コリには1がF+またはHft株で、他がそれでない場合にいずれかのイー・コリと接合し得るいずれの生物をも含み得る。ビー・ズブチリスおよびバチルス・ズブチリスとは、バチルス属、ズブチリス種のすべての生物をいう。本明細書中で用いるアグロバクテリウム・ツメファシエンスには、この種のすべての菌株および型が含まれる。"ターフグラス"には、芝生を生成するためにいままでに植えられたまたは植えることができたすべてのシバの種および株が含まれ、ターフには限定されるものではないが;ゲーム(すなわち、フットボール、野球またはサッカー)を行うフィールドおよびゴルフコースのすべてのエリア(すなわち、ティー、フェアウェイ、グリーン、ラフほか)である芝生が含まれる。"ワタ"とはゴシピウム属のすべての植物およびそれと繁殖し得るすべての植物をいう。
【0062】
"熱耐性"とは、高温または暖かい温度が同種の植物の生長、活力、収量、サイズに有害に作用する条件下で生長する植物の能力の尺度を意味する。熱耐性植物は、同種の非熱耐性植物よりも熱ストレスの条件下でより良好に生長するであろう。
【0063】
"塩耐性"とは、浸透ストレス下、または水および土壌中の塩またはイオンによって生じるストレス下で生長するある植物の能力をいう。例えば、液体を潅漑した場合または同種のほかの植物の生長に有害な影響を与える水およびイオンの混合物を含有する培地に植えた場合に、同種および/または同品種の植物と比較して増大した生長速度を有する植物は、塩耐性であるというであろう。ある形質転換植物は、同種および同株の非形質転換植物よりもこれらの型の条件に対してより大きな耐性を有する。
【0064】
本明細書中で用いるすべての数値は"約"なる語によって修飾されなければならず、約とは10パーセントまでいずれかの向きで変化し得、なお同じ意味を保持している。例えば、1M溶液は、1.1M以下であって0.9Mを超える型のすべての溶液を含まなければならない。例えば、パーセントも修飾されなければならず、10%は9%ないし11%のすべてのパーセントを含むものである。"正確には"なる形容詞によって定義される用語は、"約"なる用語によっては定義されない。
【0065】
"グリシンに富むタンパク質"とは、低温ショックドメインを含むタンパク質であるかまたはそれと実質的同一性を有する、またはそのホモログである真核生物におけるタンパク質と定義される。
【0066】
"低温ショック後の生存(率)"とは、その植物の生長ステージにおいてその種の植物が通常出くわす温度未満の温度に置かれた後の、有意な期間に生長を続ける植物の能力と定義される。ある植物が、同種のものでさえが、低温条件下での生長について選択されていることは注意しなければならない。トウモロコシの同系繁殖体Wigor株は低温条件に耐えることができ、合衆国において市販されている大部分の系統よりもその条件に置いた場合に有意により高い生存率を有する。Wigorはポーランドにおいて市販されている。したがって、トランスジェニック植物についての低温耐性は、同じ相対年齢における同株ならびに同種の植物内で比較して、意味のある科学的データを取得しなければならない。その場合、植物は、直ちに、または数日または数週間後にスコアを付けて、ショック後のその生存能力、生長速度およびほかの表現型を判定しなければならない。
【0067】
"渇水"または"水分が生長を制限するであろう"とは、特に持続した場合に、作物に対して損傷を生じ得るまたはその首尾よい生長を妨害し得る乾燥の期間と定義される。ここでも、同種の異なる植物、および同種の異なる株の植物が、渇水、乾燥および/または水欠乏に対して異なる耐性を有する場合がある。研究室においては、渇水は対照植物よりも95%以下の水を与え、ついで、活力、生長、サイズ、根の長さ、およびほかの無数の生理学的および物理的測定値における差異を探すことによってシミュレートし得る。渇水は、特に水がその植物の生長を厳格に制限する場合には、ある植物は灌水するがほかの植物は灌水せず、その生長速度を比較することによって圃場においてもシミュレートすることができる。
【0068】
非生物的ストレス耐性には、限定されるものではないが、増大した収量、生長、バイオマス、健康またはストレスに対する耐性を示す他の測定値が含まれ、該ストレスには、限定されるものではないが、熱ストレス、塩ストレス、低温ストレス(発芽の間の低温ストレスを含む)、水ストレス(限定されるものではないが、渇水ストレスを含む)、窒素ストレス(高および低窒素を含む)が含まれる。
【0069】
生物的ストレス耐性には、限定されるものではないが、増大した収量、生長、バイオマス、健康またはストレスに対する耐性を示す他の測定値が含まれ、ストレスには菌類感染、最近感染および植物のウイルス感染が含まれる。
【0070】
本発明の一部分として開示したある種の遺伝子配列は、起源が細菌であり、例えばある種の原核生物低温ショックタンパク質である。非改変細菌遺伝子がトランスジェニック植物細胞においてほとんど発現しない場合があることは当業者に知られている。植物コドンの慣習法は、細菌のごとき単細胞生物よりもヒトおよび他の高等生物のものにより類似している。幾つかのレポートは、植物における組換え遺伝子の発現を修飾する方法を開示している。これらのレポートは、疑われるポリアデニル化またはA/Tに富むドメインまたはイントロン・スプライシング共通配列を回避する組換え配列を用いて、植物コドン出現頻度表、コドン第三塩基位置のバイアスにおける修飾に基づいて、より効率的である配列を表すコード配列を設計する種々の方法を開示している。合成遺伝子構築物に関するこれらの方法は注目に値するが、本発明者らはBrownら(出典明示してその全体を本明細書の一部とみなす米国特許第5,689,052号、1997年)の方法および/または前記に引用した方法、ならびに他のものに従って低温ショックタンパク質または低温ショックドメインを含むタンパク質の合成遺伝子を作製することを熟考する。かくして、本発明は、所望のタンパク質産物をイン・プランタ(in planta)で発現する合成植物遺伝子を調製する方法を提供する。簡単には、Brownらに従って、所望のタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列で低頻度でしか利用されていないコドンおよび半低頻度でしか利用されていないコドンの頻度を減少させ、より好ましい単子葉植物コドンで置き換える。単子葉植物における改変ポリヌクレオチド配列によってコードされる所望のポリペプチドの蓄積の増加は、連続する6ヌクレオチドフラグメント中のコード配列を解析し、単子葉植物における最も低頻度の284、484および664の6merの出現の頻度と同様に6merの出現の頻度を改変したことによる好ましいコドンの出現頻度の増大の結果である。さらに、Brownらは、ヌクレオチド配列中のポリアデニル化シグナルおよびイントロン・スプライスサイトの発生を減少する方法とともに低頻度コドンの出現頻度を低下させる方法を適用し、ヌクレオチド配列中の自己相補的配列を除去し、ポリペプチドをコードする構造遺伝子を維持しつつかかる配列を非−自己相補的ヌクレオチドで置き換え、ついでヌクレオチド配列中の5'−CG−3'ジヌクレオチド対の出現の頻度を減少させることによる組換え遺伝子の発現の上昇を開示している。これらの工程は、順次行い、所望のポリペプチド中に存在する大部分のアミノ酸について単子葉植物により好ましい単子葉植物コドンの優先的な利用を含むヌクレオチド配列を生じる累積的効果を有する。詳細には、本明細書で言及するすべてのタンパク質は、前記に論じたようにまたは同様の方法を用いて合成遺伝子に作製することが意図され、限定されるものではないが、エスシェリキア・コリCspAおよびバチルス・ズブチリスCspBが含まれる。
【0071】
本明細書中に記載する作業は、低温ショックタンパク質および低温ショックドメインを含むタンパク質のイン・プランタでの発現を活性化する方法を同定し、それは多くの植物ストレスに対する耐性を付与し得、それには限定されるものではないが、感受性植物の核、プラスチドまたは葉緑体ゲノムに取り込んだ後に正規の場所以外で発現する低温、熱、渇水、塩および他のストレス、あるいはストレス関連表現型(低温発芽、低温ストレス後の生存率、および他の非生物的ストレス)が含まれる。米国特許第5,500,365号(特に出典明示して本明細書の一部とみなす)は、合成遺伝子がコードするタンパク質の発現レベルを最適化する植物遺伝子を合成する方法を記載している。この方法は、外来性トランス遺伝子をより"植物様"とし、したがって植物、単子葉植物または双子葉植物によってより翻訳および発現される見込みがあるようにするための、その構造遺伝子配列の修飾に関する。しかしながら、米国特許第5,689,052号に開示する方法は、好ましくは単子葉植物におけるトランスジーンの高められた発現を提供している。
【0072】
本発明の核酸構築物を開発することにおいて、構築物の種々のコンポーネントまたはそのフラグメントは、通常は、都合のよいクローニングベクター、例えば細菌宿主、例えばイー・コリ中で複製することができるプラスミドに挿入する。文献に記載されている膨大な数のベクターが存在し、その多くは市販されている。各クローニングの後に、所望の配列のコンポーネントを仕立てるように、所望のインサートを有するクローニングベクターを単離し、制限分解、新たなフラグメントまたはヌクレオチドの挿入、連結、欠失、突然変異導入、レセクションほかのごときさらなる操作に付することができる。構築物が完成されたら、ついでそれは、宿主細胞の形質転換の様式と一致するようにさらに操作するために適当なベクターに移すことができる。
【0073】
例えば、発現カセット中に低温ショックタンパク質を含む本発明の二本鎖DNA分子は、いずれかの適当な方法によって植物のゲノムに挿入し得る。好適な植物形質転換ベクターには、アグロバクテリウム・ツメファシエンスのTiプラスミド由来のもの、ならびにHerrera-Estrellaら(1983)、Bevan(1984)、Kleeら(1985)およびEPO公報120,516によって開示されたものが含まれる。アグロバクテリウムのTiまたは毛状根誘導(Ri)プラスミド由来の植物形質転換ベクターに加えて、別の方法を用いて本発明のDNA構築物を植物細胞に挿入することができる。かかる方法には限定されるものではないが、例えばリポソームの使用、エレクトロポレーション、遊離DNA取込みを増加させる化学剤、マイクロプロジェクタイル・ボンバードメントを介する遊離DNAデリバリー、およびウイルスまたは花粉を用いた形質転換が含まれ得る。
【0074】
エレクトロポレーションを用いて単子葉植物に低温ショックタンパク質または低温ショックドメインを含むタンパク質をコードする遺伝子を導入するのに好適なプラスミド発現ベクターは、以下のものからなり得る:植物中で機能するプロモーター;スプライスサイトを提供してHsp70(PCT国際公開公報、WO93/19189)のごとき遺伝子の発現を促進するイントロン;およびノパリンシンターゼの3'配列(NOS 3')のごとき3'ポリアデニル化配列。この発現カセットは、大量のDNAの生成に好適な高コピー複製起点に会合し得る。
【0075】
植物形質転換に有用なTiプラスミドカセットベクターの例はpMON−17227である。このベクターはPCT国際公開WO 92/04449に記載され、グリホセート耐性を付与する酵素をコードする遺伝子(CP4と命名された)を含み、これは多くの植物の優れた選択マーカー遺伝子である。遺伝子は前記したようにアラビドプシスEPSPS葉緑体トランジット(transit)ペプチド(CTP2)に融合し、FMVプロモーターから発現させる。セドヘプツロース−1,7−ビスホスファターゼ遺伝子またはcDNAを含有する十分な数の細胞(またはプロトプラスト)を得た場合、該細胞(またはプロトプラスト)を全植物に再生する。再生工程の方法の選択は極めて重要ではないが、マメ科植物(アルファルファ、ダイズ、クローバーほか)、セリ科植物(ニンジン、セロリー、パースニップ)、アブラナ科植物草本(キャベツ、ハツカダイコン、キャノーラ/ナタネほか)、ウリ科植物(メロンおよびキュウリ)、イネ科植物(コムギ、オオムギ、イネ、トウモロコシほか)、ナス科植物(ジャガイモ、タバコ、トマト、コショウ)、ヒマワリのごとき種々のフローラル作物(floral crop)、およびアーモンド、カシュー、ウォールナッツおよびペカンのごとき堅果をぶら下げた木本からの宿主に利用可能である適当なプロトコールを有する。
【0076】
本発明の実施によって低温ショックタンパク質を発現するように作製し得る植物には、限定されるものではないが、アカシア属植物、アルファルファ、アニス、リンゴ、アプリコット、アーチチョーク、キバナスズシロ、アスパラガス、アボガド、バナナ、オオムギ、マメ、ビート、セイヨウヤブイチゴ、ブルーベリー、ブロッコリ、メキャベツ、キャベツ、キャノーラ、カンタロープ、ニンジン、キャッサバ、カリフラワー、セルリー、サクラ、コエンドロ、カンキツ属植物、クレメンタイン、コーヒーノキ、トウモロコシ、ワタ、キュウリ、アメリカトガサワラ、ナス、エンダイブ、キクジシャ、ユーカリノキ、フェンネル、イチジク、ヒョウタン、ブドウ、グレープフルーツ、ハネージューメロン、クズイモ、キーウィ、レタス、ニラネギ、レモン、ライム、テーダマツ、マンゴー、メロン、マッシュローム、堅果(nut)、エンバク、オクラ、タマネギ、柑橘類植物、観賞植物、パパイヤ、パセリ、エンドウ、モモ、ラッカセイ、セイヨウナシ、コショウ、カキ属の木、マツ、パイナップル、オオバコ、スモモ、ザクロ、ポプラ、ジャガイモ、カボチャ、マルメロ、ラジアータマツ、アカチコリー、ハツカダイコン、ラズベリー、イネ、ライムギ、サトウモロコシ、ダイオウマツもしくはダイオウショウ(Southern pine)、ダイズ、ホウレンソウ、カボチャ(squash)、イチゴ、テンサイ、サトウキビ、ヒマワリ、サツマイモ、モミジバフウ 、タンジェリン、チャノキ、タバコ、トマト、ターフ、ブドウノキ、スイカ、コムギ、ヤムイモ、ズッキーニ、またはいずれかのほかの植物が含まれる。
【0077】
"プロモーター"とは、RNAポリメラーゼ(および、しばしば他の転写因子)に結合し、下流DNA配列の転写を促進するDNA配列をいう。プロモーターは、他のものと比較して、ある組織においては高められたまたは減じられた発現を提供する場合がある。プロモーターの選択、特に植物が非生物的ストレスを受ける場合に発現を増大するプロモーターを選択することは、本発明において特に有用となり得る。
【0078】
あるストレス応答が植物に対して同様の効果を有することが当該分野において観察されており、1のものに対する抵抗性は他のものに対する抵抗性を提供し得る。これは、例えば、脱水および低温に対する応答の間に見られる(Shinozakiら, Current Opinions in Plant Biology 3(3):217, 2000)。多くの他の論文は、異なる非生物的ストレス間の一般的な相互関係を示し、1のストレスに対する耐性は幾つかの他の非生物的ストレスのより大きな耐性に通じ得ることを示し得る(Pernasら, FEBS Lett 467(2-3): 206, 2000; Knight, Int Rev Cytol 195: 269, 2000; Didierjeanら, Planta 199: 1, 1996; Jeongら, Mol Cells 12: 185, 2001)。
【0079】
T−DNA中に含まれる植物発現因子の外側のDNAセグメント中に見出される発現カセットおよび調節因子は、多くのプラスミドDNAバックボーンで共通であり、および、プラスミド維持因子として機能し、これらには限定されるものではないが、細菌スペクチノマイシン/ストレプトマイシン抵抗性のaad(Spc/Str)遺伝子、イー・コリ中での維持のための複製起点を提供するpBR322 ori(ori322)、アグロバクテリウム・ツメファシエンス細胞への接合移入のためのbomサイトが含まれ、DNAセグメントはRK2プラスミドからの複製起点を含む0.75kbのoriVである。また、植物への形質転換を意図するこれらのプラスミドは、因子を挿入するように機能するためのアグロバクテリウムの内因性DNA一体化タンパク質に必要な因子を含む場合がある。これらには、ボーダー(右側(RB)および左側(LB)ボーダー)が含まれる。
【0080】
本明細書中で用いる組換えDNA技術における研究室の手順は当該技術分野においてよく知られているものであり、普通に利用されている。標準的な技術を、クローニング、DNAおよびRNA単離、増幅および精製に使用する。一般的に、DNAリガーゼ、DNAポリメラーゼ、制限エンドヌクレアーゼなどを含む酵素反応は、製造業者の説明書に従って行う。これらの技術および種々の他の技術は、一般的に、Sambrookら, Molecular Cloning- A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laborator, New York (1989)に従って行う。
【0081】
本願明細書で引用したすべての出版物および公開された特許書類は、各々個別の出版物または特許出願が出典明示して本明細書の一部とみなすと特異的および個別的に示される場合と同じ程度で参照して出典明示して本明細書の一部とみなす。
【0082】
以下の実施例を含めて本発明の形態を示す。本発明者によって発見された以下の代表的な技術が本発明の実施において良好に機能することは当業者によって理解されるべきである。しかしながら、当業者は、本開示に鑑みて、本発明の意図および範囲から逸脱することなく、多くの変化を特定の形態で作成することができ、類似するまたは同様の結果がいまだ得られることは正しく認識しなければならず、したがって、添付する図面および実施例に記載されているまたは示されているすべての事項は説明で、それらに限定する意味ではないと理解されるべきである。
【0083】
実施例
実施例1
pMON57396(図1)は、アラビドプシス(Arabidopsis)におけるエスシェリキア・コリCspAと同様のタンパク質(配列番号:56)のアグロバクテリウム媒介形質転換および構成的発現のためのバイナリーベクターである。イー・コリCspA遺伝子をクリーニングするために、2の遺伝子特異的プライマー、MF1およびMFを、National Institutes of Health の一部分であるNational Library of Medicineの一部分であるNational Center for Biotechnology Information(NCBI)からのCspA配列情報(Genbank M30139, GI: 409136)に基づいて設計した。MF1の配列は、CspAの翻訳開始部位にアニールし、5'末端にNcoIサイトを導入するAGGTAATACACCATGGCCGGTAA(配列番号:66)であり、一方MF2の配列はCspAの最後のコドンにアニールし、プライマーの末端にEcoRIサイトを導入するTTAAGCAGAGAATTCAGGCTGGTT(配列番号:67)である。PCRを行って、イー・コリCspAを単離した。詳細には、イー・コリDH5α細胞を溶解し、少量のライゼートを鋳型として用い、MF1およびMF2プライマー、ならびにRoche Molecular Biochemicals社(Indianapolis, IN)からのTaqポリメラーゼおよびdNTPを用いてCspA遺伝子を増幅した。温度サイクル条件は以下のとおりとした:94℃、1分、その後に94℃、16秒;55℃、1分および72℃、1分のサイクルを30回繰り返す。増幅したCspA DNAは、ゲル電気泳動によって精製し、NcoIおよびEcoRIで消化し、予めNcoIおよびEcoRIでの消化によって線状化しておいたバイナリーベクターpMON23450(図2)に連結した。連結はT4リガーゼを用い、および製造業者によって推奨された以下の手順に従って行った(BRL/Life Technologies, Inc., Gaithersburg, MD)。連結混合物はプラスミド増殖のためにイー・コリ細胞に形質転換した(Sambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、 Cold Spring Harbor Press, 1989)。形質転換した細胞を適当な選択培地にプレートし(Sambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版, Cold Spring Harbor Press, 1989)、数時間または数日後にコロニーを評点付けした。プラスミドを個々のコロニーから調製し、完全インサート配列を決定した。
【0084】
得られたプラスミドは、制限マッピング(例えば、Griffithsら, An introduction to Genetic Analysis, 第6版 pp.449-451, ISBN 0-7167-2604-1, W.H. Freeman and Co., New York)および配列決定によっても確認した。ベクター中の選択したNcoI−EcoRIクローニングサイトと同様に、ベクターを上流(5')のCaMV e35Sプロモーターおよび下流(3’)のエピトープタグ(Flag, これはオリゴペプチドDYKDDDK(配列番号:68)をコードする)によって挟み、したがってこの構築物中のイー・コリCspAはFlagエピトープタグによってC−末端で標識され、アラビドプシスにおける形質転換の際にはCaMV e35Sプロモーターによって転写的に駆動されるであろう。前記クローニングは、配列番号:55に類似するタンパク質をコードするプラスミドを生じる。得られたプラスミドはpMON57396という。
【0085】
実施例2
pMON57397(図2)は、アラビドプシスにおけるアグロバクテリウム媒介形質転換およびエスシェリキア・コリCspAのようなタンパク質の構成的発現のためのバイナリーベクターである。pMON57397を作製するためには、FlagエピトープタグによってC−末端で標識されたエスシェリキア・コリCspA遺伝子を含むバイナリーベクターpMON57396を制限酵素XhoIおよびSalIで消化してベクター中のこれらのサイトを切断し、FLAGエピトープタグを放出した(FLAGタグはオリゴペプチドDYKDDDK, Sigma, St. Louisをコードする)。ついで、線状化したプラスミドを精製し、再連結した。連結はT4リガーゼを用い、かつ、製造業者(BRL/Life Technologies, Inc., Gaithersburg, MD)によって推奨されている手法に従って行った。連結混合物はプラスミド増殖のためにイー・コリに形質転換した(Sambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor Press, 1989)。形質転換細胞は適当な選択培地(Sambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor Press, 1989)にプレートし、数時間または数日後にコロニーを評点付けした。プラスミドを個々のコロニーから調製し、完全なインサート配列を決定した。前記クローニングは、配列番号:57に類似するタンパク質をコードするプラスミドを生じる。
【0086】
得られたプラスミドは、XhoIおよびSalIサイトが存在しないことを確認する制限マッピング(例えば、Griffithsら, An Introduction to Genetic Analysis, 第6版 pp449-451, ISBN 0-7167-2604-1,W.H.Freeman and Co., New York)および配列決定によっても確認した。この構築物中のイー・コリCspA遺伝子はC−末端において標識されておらず、CaMV e35Sプロモーターによって転写的に駆動する。
【0087】
実施例3
pMON57398(図4)は、アラビドプシスにおけるアグロバクテリウム媒介形質転換およびバチルス・ズブチリスCspBのようなタンパク質(配列番号:59)の構成的発現のためのバイナリーベクターである。ビー・ズブチリスCspB遺伝子をクローニングするためには、2の遺伝子特異的プライマーMF3およびMF4aを、National Institutes of Health の一部分であるNational Library of Medicineの一部分であるNational Center for Biotechnology Information(NCBI)からのCspB配列情報(Genbank U58859, gi:1336655)に基づいて設計した。MF3の配列は、CspBの翻訳開始部位にアニールし、5'末端にNcoIサイトを導入するAGGAGGAAATTCCATGGTAGAAG(配列番号:69)であり、一方MF4aの配列はCspBの最後のコドンにアニールし、プライマーの末端にEcoRIサイトを導入するTCAATTTATGAATTCGCTTCTTTAGT(配列番号:70)である。PCRを行って、ビー・ズブチリスCspBを単離した。バチルス・ズブチリス細胞はCarolina Biological Supply(Burlington, NC)から得、細胞を溶解し、少量のライゼートを鋳型として用い、MF3およびMF4aプライマー、ならびにRoche Molecular Biochemicals社(Indianapolis, IN)からのTaqポリメラーゼおよびdNTPを用いてCspB遺伝子を増幅した。温度サイクル条件は以下のとおりとした:94℃、1分、その後に94℃、16秒;55℃、1分および72℃、1分のサイクルを30回繰り返す。増幅したCspB DNAは、ゲル電気泳動によって精製し、NcoIおよびEcoRIで消化し、予めNcoIおよびEcoRIでの消化によって線状化しておいたバイナリーベクターpMON23450(図5)に連結した。連結はT4リガーゼを用い、および製造業者によって推奨された手順に従って行った(BRL/Life Technologies, Inc., Gaithersburg, MD)。連結混合物はプラスミド増殖のためにイー・コリ細胞に形質転換し(Sambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、 Cold Spring Harbor Press, 1989)、後日、コロニーを評点付けした。プラスミドを個々のコロニーから調製し、完全インサート配列を決定した。
【0088】
得られたプラスミドは、制限マッピング(例えば、Griffithsら, An Introduction to Genetic Analysis, 第6版 pp.449-451, ISBN 0-7167-2604-1, W.H. Freeman and Co., New York)および配列決定によっても確認した。ベクター中の選択したNcoI−EcoRIクローニングサイトを上流(5')のCaMV e35Sプロモーターおよび下流(3’)のエピトープタグ(Flag、これはオリゴペプチドDYKDDDK(SIGMA, St Louis)をコードする)によって挟んだ場合、この構築物中のビー・ズブチリスCspB様遺伝子はFlagエピトープタグによってC−末端で標識され、アラビドプシスにおける形質転換の際にはCaMV e35Sプロモーターによって転写的に駆動される。このクローニングは、該プラスミドにインサートされた配列番号:59に類似するタンパク質をコードする配列を含むプラスミドを生じる。
【0089】
実施例4
pMON57399(図6)は、アラビドプシスにおけるアグロバクテリウム媒介形質転換およびバチルス・ズブチリスCspBのようなタンパク質(配列番号:61)の構成的発現のためのバイナリーベクターである。pMON57399を作製するために、FlagエピトープタグによってC−末端で標識されたバチルス・ズブチリスCspB遺伝子を含有するバイナリーベクターpMON57398(前記実施例を参照されたい)を制限酵素XhoIおよびSalIで消化してベクター中のこれらのサイトを切断し、FLAGエピトープタグを放出した(FLAGタグはオリゴペプチドDYKDDDK, SIGMA, St Louisをコードする)。ついで、線状化したプラスミドを精製し、再連結した。連結はT4リガーゼを用い、かつ、製造業者(BRL/Life Technologies, Inc., Gaithersburg, MD)によって推奨されている手法に従って行った。連結混合物はプラスミド増殖のためにイー・コリ細胞に形質転換した(Sambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor Press, 1989)。形質転換細胞は適当な選択培地(Sambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor Press, 1989)にプレートし、数時間または数日後にコロニーを評点付けした。プラスミドを個々のコロニーから調製し、完全なインサート配列を決定した。このクローニングは、該プラスミドに挿入された配列番号:61に類似するタンパク質をコードする配列を有するプラスミドを生じる。
【0090】
得られたプラスミドは、XhoIおよびSalIサイトが存在しないことを確認する制限マッピング(例えば、Griffithsら, An Introduction to Genetic Analysis, 第6版, pp 449-451, ISBN 0-7167-2604-1,W. H. Freeman and Co., New York)および配列決定によっても確認した。ベクター中の選択したNcoI−EcoRIクローニングサイトを上流(5’)N−末端でCaMV e35プロモーターによって挟んだ場合、この構築物中のビー・ズブチリスCspB遺伝子はC−末端で非標識化され、アラビドプシスにおける形質転換の際にCaMV e35Sプロモーターによって転写的に駆動された。該プラスミドをアグロバクテリウム・ツメファシエンスに形質転換した。
【0091】
実施例5
アラビドプシス植物は、多くの利用可能な方法のうちのいずれか1によって形質転換し得る。例えば、アラビドプシス植物は、真空浸潤によるイン・プランタ形質転換法を用いて形質転換し得る(Bechtoldら, In planta Agrobacterium mediated gene transfer by infiltration of adult Arabidopsis thaliana plants. CR Acad. Sci. Paris Sciences de la vie/life sciences 316: 1194-1199 (1993))。この例は、どのようにしてアラビドプシス植物を形質転換し得るかを説明する。
【0092】
ストック植物材料および生長条件
土壌を入れた2.5インチのポットを準備し、それを土壌が締まりすぎて充填されないようかつメッシュが土壌表面と接触することを確かめつつ、メッシュスクリーンでカバーする(これは、発芽する幼植物がメッシュを通して生長し得ることを保証する)。播種し、発芽ドームでカバーする。種子を3−4日春化処理する。16時間明所/8時間暗所、20−22℃、70%湿度の条件下で植物を生長させる。一週間に2回水を与え、1/2×(製造業者によって推奨されている強度の半分)のPeters 20-20-20肥料(Hummert International, Earth City, MOからのもの))を下方から与えた。微量元素(Hummert's Dyna-grain Soluble Trace Elements)(製造業者によって推奨されている全部の強度で)を一週おきに添加した。約1−2週間後に、ドームを除去し、ポット当たり1または2の植物までポットを間引きした。発達した場合には第一の薹(primary bolt)を摘み取って、第2の薹形成をより促進する。5−7日内に、植物は浸潤する準備ができるであろう。
【0093】
アグロバクテリウムの調製(小スケールおよび大スケール培養);
アグロバクテリウムABI株を、100mg/mLのスペクチノマイシン、100mg/Lのストレプトマイシン、25mg/Lのクロラムフェニコールおよび50mg/Lのカナマイシン(SSCKと表示する)を含有するLBプレートにストリークする。浸潤の2日前に、アグロバクテリウムのループを10mlのLB/SSCKを含有する試験管に入れ、シェーカーに設置し、暗所下、28℃にて一晩増殖させる。翌日、アグロバクテリウムを400mlのYEP/SSCK中に1:50で希釈し、シェーカーに設置し、28℃にて16−20時間増殖させる。(注記:本発明者らは、LBを最初の一晩培養に使用し、YEPを大スケールの一晩培養に使用した場合、形質転換率が顕著に良好であることを見出した)。
【0094】
浸潤
500mlの遠心ボトルに注入し、ついで3500rpmにて20−25分間遠心することによってアグロバクテリウム細胞を集める。上清を捨てる。ペレットを乾燥し、ついで0.44nMのベンジルアミノプリン(BAP)(DMSO中の1.0mg/Lストック液をリットル当たり10μl)およびLehle Seeds社(Round Rock, TX)からの0.02%のVac-In-Stuffを含む25mlの浸潤培地(0.5%のMSベース塩、1%のGamborg’s B−5ビタミン、5%のスクロース、0.5g/LのMES、pH5.7)に再懸濁する。新たにBAPおよびSilwet L-77を浸潤の日に添加する。200μlのSilwet L-77および20μlのBAP(0.5mg/Lのストック液)を添加する。残余部(blank)として浸潤培地を用いて、1:10希釈のアグロバクテリウム懸濁液のOD600を測る。真空浸潤するための400mlのアグロバクテリウム懸濁液/浸潤培地、OD600=0.6に必要な体積を計算する。
【0095】
【数1】

【0096】
再懸濁した培養液を真空デシケーター内側のRubbermaid容器に入れる。ロゼットを含む全体の植物はカバーされるが土壌があまり冠水しないように、浸潤すべき植物を含むポットを逆さにする。浸潤前は、少なくとも30分間、植物を水に浸す(これは、土壌がアグロバクテリウム懸濁液を吸収することを保つ)。
【0097】
〜23−27インチHgの真空を10分間引く。真空を迅速に開放する。簡単には、ポットの水を切り、それをダイアパーに並べるトレイの傍らに置き、トレイをドームでカバーして湿度を維持し、生長チャンバーに戻す。翌日、ポットのカバーを外し、それを直立に設置し、ダイアパーを除去する。〜5日に植物に水は与えない。5日が終わった後に、植物に水を与え、前と同じ条件下で生長を続けさせる(浸潤した葉は変性し得るが、植物は花成を終了するまで生存する)。
【0098】
種子の収穫および滅菌
ほぼ浸潤2週間後に、Lehle Aracons(Lehle Seeds, Round Rock, TX)を用いることによって、植物を個別に円錐形にする。すべての種子が成熟しおよび種子をつけた後(浸潤後〜4週間)、水から植物を取り出して種子を乾燥する。ほぼ2週間後に、円錐形の下方の枝を切り取ることによって種子を収穫する。篩を用いることによって種子を浄化して、長角果および枝材料を捕獲し、種子がそれを通ることを許容する。種子をエンベロープまたは15mlの三角試験管に入れる。
【0099】
滅菌する前に所望の量の種子を15mlの三角試験管に移す。三角試験管の蓋を緩め、それを、400mlの漂白剤Clorox(Clorox Company, Oakland, CA)および4mlの塩酸を含有するビーカーを含む真空デシケーターの傍らに置く(HClはドラフトチャンバー中でCloroxに添加する)。デシケーターを密閉すると同時に真空を引き、〜16時間、吸引部を閉じる(すなわち、デシケーターはなお真空下にあるが、真空はもはや直接的に引かれていない)。滅菌後、真空を開放し、種子を含む試験管を滅菌したフードに入れる(ガスをなお放出し得るようにキャップは緩めたままにしておく)。
【0100】
250mg/Lのカルベニシリン、100mg/Lのセフォタキシムを入れた4.3g/LのMSベース塩、2.0g/LのGamborg's B-5(500×)、10g/Lのスクロース、0.5g/LのMES、および8g/LのPhytagar(Life Technologies, Inc., Rockville, MD)を含有する選択プレートに種子をプレートする("播く")。選択レベルは、カナマイシン60mg/L、グリホセート60μMまたはビアラフォス10mg/Lのいずれかであろう。
【0101】
非常に少量の種子を最初にプレートし、コンタミネーションをチェックし得る。コンタミネーションが存在する場合、種子をさらに〜4時間再滅菌し、コンタミネーションについて再度チェックする。第2の滅菌は通常必要でないが、種子が菌類汚染物を保有している場合があり、繰り返して滅菌する必要がある(滅菌時間は、一般的には16時間より短い。24時間滅菌時間から顕著な発芽率の低下が始まるからである)。プレートをパラフィルムで密閉し、〜2−4日低温室に置いて春化処理する。種子を春化処理した後に、低温白球根(cool white bulb)を入れたパーシバルに入れる。
【0102】
土壌への移行
〜26℃および16/8の明暗サイクルにて5−10日後に、形質転換体は緑色植物体として見えるであろう。さらに1−2週間後に、植物は少なくとも1セットの本葉を有するであろう。植物を土壌に移し、発芽ドームでカバーし、正常なアラビドプシス生長条件を有する生長チャンバーに移動する。新たな生長が明らかになるまでカバーを維持する(通常5−7日)。
【0103】
実施例6
野生型非トランスジェニックおよびCspAまたはCspBトランスジェニック・アラビドプシス植物の生長を比較するために、滅菌ペトリ皿で垂直生長(verticle growth)させた:
野生型またはトランスジェニック種子は以下の方法を用いて液体滅菌した:
・70%エタノール中での5分インキュベートにつづくボルテックス混合
・30%Chlorox(6.15%次亜塩素酸ナトリウム)+0.01%Triton X-100中での5分インキュベートにつづくボルテックス混合
・5の連続滅菌水洗浄
【0104】
種子は、各々以下のもの:多量養素、微量養素およびビタミンを含み、水酸化アンモニウムでpH5.8に調節し、土壌支持用の1%のPhytagel(Sigma #P8169)を含有する0.5×Murashige and Skoog培地、からなる40mlの寒天培地を含む100×15mm正方形皿(Becton Diclinson-Falcon #35-1112)にプレートした。
【0105】
10の野生型アラビドプシス種子を、端部からほぼ1cmで等しく離してペトリ皿の1/2の全域にプレートした。これは無菌チップを用いるGilson P-200 Pipettemanで行った。10のCspAまたはCspBトランスジェニック・アラビドプシス種子を等しく離して、ペトリ皿の他の1/2の全域に同様にプレートした。プレートにペンで印を付けて、どちらの半分がトランスジェニック種子を含むかを示した。
【0106】
ペトリ皿を暗所下、4℃に3日間置いて種子を等級別に分け、ついで24時間連続光(120マイクロアインシュタイン/m)下、8℃にて6週間、Percivalインキュベーター(モデルAR-36L)に入れた。このインキュベーションの最後に、CspAおよびCspBのロゼットのサイズを野生型のものと比較し、より大きいことを見出した。これは図16に見ることができる。これは、前記アッセイを用いた第1、第2および最後に描いたプレートにおいて見ることができる。図16において、第3の写真(CspB+Flag、pMON57399)は、植物を以下に記載するのと同様の低温ショックアッセイを通したプレートを示している。
【0107】
トランスジェニック・アラビドプシス・タリアーナ(Arabidopsis thaliana)種子の低温ショック幼植物活力評価:水平プレートアッセイ
導入:
これは、水平ペトリ皿中の寒天培地上で通常の温度にて発芽させて冷やすのにシフトする際に生長し続けたトランスジェニック・アラビドプシス種子の能力を評価する手順である。要するに、対照植物からの種子およびテスタートランスジェニック植物からの種子を滅菌し、等級別に分類し、ペトリ皿のいずれかの半分に6×8のグリッドでプレートした。プレートは水平位置、通常温度にて、1週間インキュベートし、ついで、プレートの水平位置を維持しつつ、さらに2週間冷蔵温度にシフトした。幼植物の天蓋領域をデジタル写真によって記録し、画像ソフトウェアを用いて定量化した。テスター幼植物の全天蓋領域の対照幼植物のそれとの比率は、トランスジェニックテスター系統において関心のある種々の遺伝子の低温耐性潜在性を比較することができる。
【0108】
材料:以下のものは、標準的なバイオテクノロジー研究室において入手可能な醜状の主要な装備(オートクレーブ、バランス、層状流動フードほか)であると仮定する。
【0109】
−アラビドプシス種子:このプロトコールをArabidopsis thaliana cv. Columbiaで用いたが、他のアラビドプシス種にも同様に適当のはずである。
−ペトリ皿:Falcon #35-1112(100mm×深さ15mm)
−培地:Sigma M5519=Murashige & Skoog Basal Media
−Phytagel(Sigma #P-8169)
−寒天培地をオートクレーブ処理し、そこからプレートに注ぐ1リットルのガラスボトル。
【0110】
本発明者らは、1のオレンジ色スクリューキャップを有するコーニングガラス・ボトルを用いる。
−磁気スターラーおよび磁気攪拌バー
−50mlのプラスチック製ピペットを使用し得る電気ピペッター
−種子をプレートするためのプラスチック製拡大レンズを有する小さな蛍光ボックス
−P1000 Gilsonピペッター(または相等物)および無菌チップ
−P200 Gilsonピペッター(または相等物)および無菌チップ
−70%エタノール、無菌
−30%Chlorox漂白剤+0.1% Tween 20
−滅菌ろ過した脱イオン水
−無菌の小型遠心チューブおよび試験管ラック
−好ましくは暗所の、4℃低温室、冷温ボックスまたは冷蔵庫
−〜150μE/m/秒の光源を含む、22℃のPercival植物生長チャンバーまたは相等物
−〜150μE/m/秒の光源を含む、8℃のPercival植物生長チャンバー
−半透過性外科テープ3M Microporeテープ(3M #1530-1)
−黒色(Sharpie)マーカー
−トラップを有する真空吸引機
−グラシン・バランスウェイト紙(VWR #12578−165)
−計算機
−ノート
−IBM コンパチブル・コンピュータ
−Image-Pro Plusソフトウェア, version 4.1.0.0
−Microsoft Excelソフトウェア
【0111】
プロトコール:
1−保存バイアル用または無菌小型遠心チューブのエンベロープ用の小分けした種子
2−種子の同一性を保持するためのシャーピエで試験管を標識する
3−以下の溶液で順次洗浄し、ついで以下に示す時間待機することによる、試験管中の種子の表面滅菌。洗浄の間に少なくとも2回試験管をひっくり返して種子上の溶液の良好な表面接触を確実にする。種子は試験管の底部に沈み、柔軟なペレットを作る:
a.3ないし5分間の、70%エタノールでの滅菌
b.3ないし5分間の、30%Chlorox漂白剤+0.1% Tween 20
c.30秒間の滅菌ろ過した脱イオン水
d.c工程をさらに4回繰り返し、最後の回に〜0.5mlの滅菌水を種子ペレットの上に残す。
【0112】
1−小型遠心チューブを暗所下、4℃にて3日間置いて、プレートした際のより均一な発芽のために種子を等級別に分類する。
[別法として、種子は寒天培地ペトリ皿に直接的に置いてテープを貼って密閉し、ペトリ皿を、以下に示す8℃インキュベーションに先だって、暗所下、4℃にて3日間置くこともできる]
【0113】
2−ガラスボトル中に1リットルアリコットの0.5×Murashige and Skoog培地を調製し、水酸化アンモニウムでpHを5.8に調節し、ついで10gのPhytagelを添加することによってプレートを作成する。pHを調節する場合およびPhytagel中で均一に混合するためには磁気スターラーを使用し、ついで液体設定(徐々の排出)で45分間、オートクレーブ処理する。
3−50ml無菌ピペットを付けた電動ピペッターを用いてプレートに層状流動フードで注いで各プレートに40mlの培地を配達し、直ちにプレートを蓋でカバーする。
【0114】
4−送風機を切って、少なくとも2時間、層状流動フード中でプレートを冷やし、日付をつけたプラスチックバッグ中、4℃にて保存する。
5−プレートを標識し、種子をプレートする:
【0115】
1−半透過ミクロ細孔テープを用いてプレートの全四隅にテープを貼り、日付を標識し、プレートを、22℃、〜100μE/m秒の16時間の日照サイクルに設定したPercivalインキュベーターに入れた。デジタルカメラで各プレートの写真を撮り、データをコンパクトディスクに保存する。
【0116】
2−プレートを、8℃、〜100μE/m秒の24時間の日照サイクルに設定したPercivalインキュベーターに移す。1層の厚さのみでプレートを水平位置に置き、さらに3週間までインキュベートする。デジタルカメラで各プレートを撮影し、データをコンパクトディスクに保存する。
【0117】
3−テスター生殖質が対照と比較してどのように進行しているかを見るために2または3日ごとにプレートを観察し、生殖質の一般的な性能の代表的なものである時点でデジタル撮影する。これには2週間未満(せいぜい3週間)の8℃でのインキュベーションがかかるにちがいない。相異を示すのにより長時間をとる生殖質は、デジタル写真を撮る時点での過密を回避するために、より低い種子密度でプレートする必要がある。
【0118】
4−デジタルカメラ写真およびImage-Pro Plusソフトウェアを用いてロゼット天蓋面積(rosette canopy area)を測定する。対照およびテスター集団について平均幼植物天蓋を計算し、発芽していない種子を分析から除去する。対照幼植物およびテスター幼植物について平均幼植物天蓋面積間の比を計算し、対照およびテスター幼植物セットについて標準偏差および標準誤差を計算する。テスター幼植物と対照幼植物との間に統計学的な差異が存在するかを確認する。結果をノートに記録する。
【0119】
5−トランスジェニック植物材料用の適当な廃棄容器(透明プラスチック廃棄バッグと灰色のビン)にプレートおよび幼植物を廃棄する。
【0120】
実施例7
CspAおよびCspB遺伝子のPCR産物を、製造業者のプロトコール(Invitrogen, Carlsbad, CA)に従ってベクターpCR−TOPO2.1に連結した。pCR−TOPO2.1誘導体のNcoI/EcoRIフラグメントをpMON48421にサブクローニングし(図7)、同じ制限酵素によって線状化した。35Sプロモーター、Csp遺伝子およびe9ターミネーターを包含するpMON48421誘導体のNotIフラグメントを、NotIサイトでpMON42916にサブクローニングして(図17)、各々CspAおよびCspB遺伝子を含むpMON56609(図8)およびpMON56610(図9)を作製した。該プラスミドを、公知の方法によってアグロバクテリウム・ツメファシエンスに形質転換した。pMON56609は配列番号:7に類似するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むと考えられる。pMON56610は配列番号:9に類似するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むと考えられる。
【0121】
実施例8
アグロバクテリウムの調製:
アグロバクテリウムEHA105株を、カナマイシン50mg/Lおよびハイグロマイシン50mg/Lを含有するLBプレート(LB/KHと表示する)上にストリークする。共培養の2日前に、アグロバクテリウムのループを10mlのLB/KHを含む試験管に移し、暗所下、28℃にて24時間、シェーカー上でインキュベートする。この培養物を20mlのLB/KH中で1:100に希釈し、暗所下、28℃にて一晩、シェーカー上でインキュベートする。翌日に、この培養物の1:2希釈物1mlをキュベットに採り、残部としてLB/KHを用いてOD600を採った。共培養のO.D. 1.0のアグロバクテリウム懸濁液5mlに必要な体積を計算する。
【0122】
【数2】

【0123】
40ml遠心チューブに必要な体積のアグロバクテリウム培養物を採り、7000rpmにて7分間遠心する。上清を破棄し、ペレットを乾燥する。ペレットを、20mg/Lのアセトシリンゴンを含む5mlの共培養培地(CC MEDIA-MSベース塩、スクロース20g/L、グルコース10g/L、チアミンHCl 0.5mg/L、L−プロリン115mg/L、2,4−D 2mg/L)に再懸濁する。
【0124】
イネ胚の形質転換:
温室で生長した日本晴および台北309イネ品種から円錐花序を採取する。円錐花序は50%の市販の漂白剤に10分間浸漬し、つづいて滅菌蒸留水ですすぐことによって滅菌した。円錐花序を70%のアルコール処理に3分間付した。ついで、種子を円錐花序から採り、個々に殻を取り、0.1%のTween20溶液を含むFalcon試験管に移した。ついで、層状エア流動チャンバー中で、種子を70%アルコールで処理した。ついで、種子を無菌水ですすいだ。この後に、50%漂白剤処理を45分間行った。種子は無菌蒸留水で5回すすいだ。最後に、種子を0.1%の塩化水銀(II)処理に付した。種子は滅菌蒸留水で再度8回洗浄した。
【0125】
層状流動チャンバー中で無菌種子から胚を無菌的に切除し、固体共培養培地(2g/LのPhytagelを入れたCC MEDIA)に置いた。50μLの滴のアグロバクテリウム懸濁液を無菌ペトリ皿に置いた。10の胚を各滴に移した。感染は15分間放置した。アグロバクテリウム懸濁液を無菌ピペットチップで除去した。感染した胚を新たな固体CC MEDIAプレートに移し、暗所下にて2日間維持した。3日目に、胚を500mg/Lのセフォタキシムで洗浄した。ついで、胚を無菌濾紙上で乾燥し、Delay培地(MSベース塩、チアミンHCl 1mg/L、グルタミン500mg/L、塩化マグネシウム750mg/L、カゼイン加水分解物100mg/L、スクロース20mg/L、2,4−D 2mg/L、ピクロラム2.2mg/L、セフォタキシム250mg/L)に置いた。胚はDelay培地上、暗所下にて7日間維持する。この期間に、カルスが形成する。カルスを選択培地(50mg/Lのハイグロマイシンを含むDelay培地)に移し、暗所下にて10日間保存する。この10日の期間後にカルスを新たな選択培地に継代培養する。さらに10日後に、カルスを再生培地(MSベース塩、スクロース30mg/L、カイネチン2mg/L、NAA0.2mg/L、セフォタキシム250mg/L、ハイグロマイシン25mg/L)に移し、暗所下で7日間維持する。ついで、カルスを新鮮な再生培地に移し、30℃の16時間の光周期に動かす。このカルス上で発育したシュートを発根培地(半分の強度のMSベース塩、スクロース15g/L、セフォタキシム250mg/L、ハイグロマイシン25mg/L)に移す。発根したシュートを水を含有する試験管に移し、硬化のためにミストチャンバーに入れる。
【0126】
植物を陽性として選択した。これは、例えば、実施例12−14および26−29に記載した方法と同様の方法を用いて行い得た。記載した育種方法を含めるのは、次世代のトランスジェニック植物を作出するためである。
【0127】
実施例9
第3本葉展開期における低温ストレス応答−CspBおよびCspAイネ・トランスジェニック植物
植物材料の調製:
発芽:種子は0.01%塩化水銀(II)で3分間処理することによって滅菌し、milique水中で10回よく洗浄して微量の塩化水銀(II)を除去した。滅菌種子は、milique水に3時間浸漬することによって吸収させた。吸収した種子は、種子発芽機(Serwell Instruments Inc.)を用いて、30℃および60%RH、滅菌した湿潤濾紙上で発芽した。
【0128】
第3本葉展開期の幼植物の確立:3日齢の発芽幼植物を、800μmol./mt2/秒の光強度を有する温室中のポートレイ(portray)(52.5mm(長さ)×26mm(深さ)×5.2mm(直径))に移した。幼植物は、赤色砂質ローム土を含むポートレイ中で第3本葉展開期(ほぼ12日)まで生育させた。肥料溶液は、実験が完了するまで一週間に1回幼植物に適用する(N−75PPM、P−32PPM、K−32PPM、Zn−8PPM、Mo−2PPM、Cu−0.04PPM、B−0.4PPMおよびFe−3.00PPM)。
【0129】
CspB−R2植物の分析
プロトコール:第3本葉展開期のイネ幼植物(12日齢)を、100μmol./mt2/秒の光および70% RH(Percival生長チャンバー)の存在下、10℃にて4日間、低温ストレスに付した。ストレス処理の後に、植物を10日間温室内で回復させ、10日目に生存した植物の生長観察および写真証拠を記録した。各処理は1列当たり10回反復し、それらは完全に無作為化した。
【0130】
結果:低温ストレス耐性について試験した8の異なる系統の中で、6の系統が野生型と比較して顕著に高い低温耐性を示した。R2−226−6−9−3、R2−226−29−1−1、R2−257−20−2−1、R2−238−1−1−3、R2−230−4−4−2およびR2−257−3−1−3を含む系統は、野生型と比較して(非ストレス負荷対照に対して)高い回復生長および生長におけるより生長における低いパーセントの低下(表−1、プレート−1)を示すことによって高い低温耐性を示した。系統R2−230−4−42は、極めて良好に実行し、それは100%の生存を示し、回復の間に良好な生長を維持した(表1)。
【0131】
【表3】

【0132】
CspB−R3植物の分析
プロトコール:第3本葉展開期の幼植物を、1000μmol./mt2/秒の光の存在下、8℃の低温ストレスに1日間曝した。その後に、幼植物を温室中、28℃にて15日間回復させ、回復の終期に植物の高さを記録した。
【0133】
結果:8の異なる系統を低温ストレス耐性について試験し、8系統すべてが野生型(非トランスジェニック)植物と比較して改善した耐性を示した。これらの結果は、改善した低温耐性を示すR2分析データを確認した(表2)。
【0134】
【表4】

【0135】
CspA−R2植物の分析
プロトコール:第3本葉展開期のイネ幼植物(12日齢)を、生長チャンバー中、1000μmol./mt2/秒の光および70%RHの存在下、10℃の低温ストレスに3日間付した。ストレス処理の後、植物を温室中で15日間回復させ、15日目に生長観察を記録した。各値は12の観察の平均値であり、実験は以下の完全無作為化(CRD)実験法によって行った。
【0136】
結果:試験した7の独立のCspAトランスジェニック系統のうちの6系統が、野生型と比較して改善された低温耐性を示した。この実験において、植物の高さは非ストレス植物と比較して低温処理対照植物(WT)では50%近くまで減少していた。一方、CspA遺伝子を有するトランスジェニック植物では、低温処理時の植物の高さの減少は異なる独立系統の中で4.5%から22.50%まで変化した(生長における低下が47.09%であった1の系統を除いて)。これらの結果は、CspAがイネの低温耐性を改善することを示唆している(表3)。
【0137】
【表5】

【0138】
CspA−R3植物の分析
実験I
プロトコール:第3本葉展開期の幼植物を、1000μmol.の光の存在下、10℃の低温ストレスに3日間曝した。その後に、幼植物を温室中、28℃にて30日間回復させ、回復の終期に植物の高さおよびパーセント幼植物生存を記録した(この実験においては、各トランスジェニック系統について8の反復を用い、野生型については10の反復を用いた)。
【0139】
結果:低温ストレスに付した6のトランスジェニック系統は、野生型よりも低温ストレス下でより良好に実行した。これらの結果は、改善された低温耐性を示すことによってR2分析データをさらに確認した(表4)。
【0140】
【表6】

【0141】
注記:植物の高さは生存した植物についてのみ記録し、その平均を上記表に記載している。
【0142】
実験II
プロトコール:第3本葉展開期の幼植物を、1000μmol.の光の存在下、10℃の低温ストレスに1日間曝した。その後に、幼植物を温室中、28℃にて30日間回復させ、回復の終期に植物の高さおよびパーセント幼植物生存を記録した。
【0143】
結果:低温ストレスに付した5のトランスジェニック系統は、野生型よりも低温ストレス下でより良好に実行した。これらの結果は、改善された低温耐性を示すことによってR2分析データをさらに確認した(表5)。
【0144】
【表7】

【0145】
第3本葉展開期における熱ストレス応答
植物材料の調製:
発芽:種子は0.01%塩化水銀(II)で3分間処理することによって滅菌し、よく洗浄して微量の塩化水銀(II)を除去した。滅菌種子は、milique水に3時間浸漬することによって吸収させた。吸収した種子は、種子発芽機(Serwell Instruments Inc.)を用いて、30℃および60%RH、滅菌した湿潤濾紙上で発芽した。
【0146】
第3本葉展開期の幼植物の確立:3日齢の発芽幼植物を、800μmol./mt2/秒の光強度および60%RHを有する温室中のポートレイ(portray)(52.5mm(長さ)×26mm(深さ)×5.2mm(直径))に移した。幼植物は、赤色土を含むポートレイ中で第3本葉展開期(ほぼ12日間)まで生育させた。肥料溶液は、実験が完了するまで一週間に1回幼植物に噴霧した(N−75PPM、P−32PPM、K−32PPM、Zn−8PPM、Mo−2PPM、Cu−0.04PPM、B−0.4PPMおよびFe−3.00PPM)。
【0147】
CspA−R2植物の分析
プロトコール:第3本葉展開期のイネ幼植物(12日齢)を、70%RHの存在下、50℃の熱ストレスに3時間付した。ストレス処理の後に、植物を温室中で15日間回復させ、15日目に生長観察を記録した。各値は12の観察の平均値である。
【0148】
結果:試験した7の独立したCspAトランスジェニック系統のうち、6系統が野生型と比較して改善された熱耐性を示した。この実験において、植物の高さは非ストレス植物と比較して熱処理対照植物(WT)では50%を超えて減少していた。一方、CspA遺伝子を有するトランスジェニック植物では、熱処理時の植物の高さの減少は異なる独立系統の中で9.5%から35%まで変化した。これらの結果は、CspAがイネの熱耐性を改善することを示唆している(表6)。
【0149】
【表8】

【0150】
CspB−R3植物の分析
プロトコール:第3本葉展開期の幼植物を、53℃の高温ストレスに2時間曝し、その後に、幼植物を温室中、28℃にて15日間回復させ、回復の終期に植物の高さを記録した。
【0151】
結果:試験した8のトランスジェニック系統のうち、7系統が野生型と比較して試験した熱ストレス下で良好に実行した。これらの結果は、CspBがイネの熱耐性を改善することを示唆している(表7)。
【0152】
【表9】

【0153】
CspA−R3植物の分析
実験I
プロトコール:第3本葉展開期の幼植物を、53℃の高温ストレスに3時間曝し、その後に、幼植物を温室中、28℃にて30日間回復させ、回復の終期に植物の高さを記録した。
【0154】
結果:これらの結果は、改善された熱耐性を示すことによってR2分析を確認した(表8)。
【0155】
【表10】

【0156】
実験II
プロトコール:第3本葉展開期の幼植物を、1000μmol.の光の存在下、50℃の高温ストレスに1日間曝し、その後に、幼植物を温室中、28℃にて30日間回復させ、回復の終期に植物の高さを記録した。
【0157】
結果:これらの結果は、改善された熱耐性を示すことによってR2分析データを確認した(表9)。
【0158】
【表11】

【0159】
水ストレス応答
植物材料の調製:
発芽:種子は0.01%塩化水銀(II)で3分間処理することによって滅菌し、その後にmilique水で10回よく洗浄して微量の塩化水銀(II)を除去した。滅菌種子は、milique水に3時間浸漬することによって吸収させた。吸収した種子は、種子発芽機(Serwell Instruments Inc.)を用いて、30℃および60%RH、滅菌した湿潤濾紙上で発芽した。
【0160】
CspB−R2植物の分析
実験プロトコール
発芽した幼植物(3日齢)を、容水量(FC)の点からみてバーミキュライトを含有するPVCポット中に作製した、2の異なるレベルの水ストレスに移した。FC−100%は飽和条件(すなわち、100gのバーミキュライトは350mlの水を必要とする)である(Sharpら, 1988, Planl Physiol. 87: 50-57)。必要な量の水を添加することによって、バーミキュライトを含有するPVCポットに異なるレベルの水ストレス(すなわち、50%FCおよび25%FC)を作製した。異なるストレスレベルにおける水の状態は、実験を通して、蒸発散に起因して損失した水の量を毎日添加することによって一定に維持した。幼植物は800μmol./mt2/秒の光強度および60%RHの存在下、温室中で、水ストレス条件にて15日間生長させた。15日目に、根およびシュートの生長を記録し、写真を撮影した。各処理を列当たり10回繰り返し、それらを完全に無作為化した。
【0161】
生長におけるパーセント低下は、以下の式に当てはめることによって計算した。
【0162】
【数3】

【0163】
結果:4の異なるCspBトランスジェニック系統を水ストレス耐性について分析した。試験したすべてのCspBトランスジェニック系統は、野生型植物と比較してストレスの間に顕著に高い生長を示した。R2−257−15−1−1、R2−238−1−1−3、R2−257−3−1−6およびR2−226−6−9−3を含むトランスジェニック系統は、非ストレス対照(FC−100%)を超える根およびシュートの生長における最小限のパーセント減少を示した。これらの系統における根およびシュートの生長における減少は、11ないし25%の範囲であった。一方、野生型は生長における最大の減少を示し、それは50%に近かった。これらの結果は、CspAがイネの水ストレス耐性を改善することを示唆している(表−10および表−11)。
【0164】
【表12】

【0165】
【表13】

【0166】
CspA−R2植物の分析
a.植物材料の調製:
発芽:種子は0.01%塩化水銀(II)で3分間処理することによって滅菌し、その後にmilique水で10回よく洗浄して微量の塩化水銀(II)を除去した。滅菌種子は、milique水に3時間浸漬することによって吸収させた。吸収した種子は、種子発芽機(Serwell Instruments Inc.)を用いて、30℃および60%RH、滅菌した湿潤濾紙上で発芽した。
【0167】
第3本葉展開期の幼植物の確立:3日齢の発芽幼植物を、800μmol./mt2/秒の光強度および60%RHを有する温室中のポートレイ(52.5mm(長さ)×26mm(深さ)×5.2mm(直径))に移した。幼植物は、赤色砂質ローム土を含むポートレイ中で第3本葉展開期(ほぼ12日間)まで生育させた。肥料溶液は、実験が完了するまで一週間に1回幼植物に噴霧した(N−75PPM、P−32PPM、K−32PPM、Zn−8PPM、Mo−2PPM、Cu−0.04PPM、B−0.4PPMおよびFe−3.00PPM)。
【0168】
プロトコール:1月齢の幼植物を、温室中、800μmol./mt2/秒の光および60%RHの存在下で3日間、水ストレスに付した。水ストレスは、差し控え潅漑(withholding irrigation)によって負荷した。3日の終期に、植物はしおれまたは立枯れ症状を示し始めた。ストレスは、植物を水で潅漑することによって緩和され、24時間後に、しおれまたは立枯れ症状を示すパーセント植物の観察を記録した。処理当たり系統当たり、最小12の植物を維持した。
【0169】
結果:試験した7の独立したCspAトランスジェニック系統のうちの6の系統が、野生型と比較して改善された水ストレス耐性を示した。対照植物の66%は、潅漑後にしおれまたは立枯れから回復しなかった。一方、CspAトランスジェニック植物においては、潅漑後にしおれまたは立枯れ症状を示した植物のパーセントは異なる独立した系統の中で5%から43%まで変化した(しおれまたは立枯れを示す植物のパーセンテージが85%であった1の系統を除いて)。これらの結果は、CspAがイネにおける水ストレス耐性を改善することを示唆している(表12)。
【0170】
【表14】

【0171】
塩ストレス応答
CspB−R3植物の分析
プロトコール:発芽種子(48時間齢)を、200mMのNaClを含有するバーミキュライトを含むPVCポットに移すことによって塩ストレスに付し、ついで10日間生長させた。ストレスの10日後に、幼植物を水を含有するバーミキュライトの新たなトレイに移すことによって15日間回復させた。植物の高さのごとき生長観察は回収の終期に記録した。この実験は、完全無作為化法(CRD)に従って温室中で行い、処理当たり8回の繰り返しを維持した。
【0172】
結果:7のCspBトランスジェニック系統および野生型植物を200mMのNaClストレスに付した。この条件下で、5のトランスジェニック系統が野生型と比較してより良好に実行した。これらの結果は、CspBが塩ストレスに対するイネ植物の耐性を改善することを示唆している(表13)。
【0173】
【表15】

【0174】
R3水ストレスアッセイ
CspAおよび野生型(日本晴−農林5号)の4の独立したトランスジェニック系統(1、2、3、4)からの発芽幼植物を、バーミキュライトを含有するポットに移すことによって水ストレスに付した。3のレベルの水様式を維持し、それらは100%容水量(FC−100=3.72mlの水/gバーミキュライト)、25%容水量(FC25=0.93mlの水/gバーミキュライト)、15%容水量(FC15=0.558ml/gバーミキュライト)である。幼植物は、温室中、800μmol./mt2/秒の光強度および60%RHの存在下で30日間、異なる水様式で生長した。異なるストレスレベルにおける水の状態は、実験を通して、蒸発散に起因して損失した水の量を毎日添加することによって一定に維持した。30日の終期に、植物に水を添加することによって回復させ、レベルをFC100とし、15日間維持した。実験の間、ストレスの終期(ES)の植物の高さ(pl.ht)および根(R)シュート(S)の長さおよび乾燥重量を記録した。
各処理は系統当たり10回繰り返し、それらを完全に無作為化した。
【0175】
【表16】

【0176】
【表17】

【0177】
【表18】

【0178】
実施例10
cspA
pMON73607の構築(図10)
1.ベクターpMON61322をNcoIおよびApaIで切断して、バックボーンを開け、CspA遺伝子を取り出す。バックボーンフラグメントをゲル精製によって単離する。
2.イー・コリcspA遺伝子をpMON56609(図8)ベクターからPCR増幅する。PCRプライマーは遺伝子の5'末端のNcoIサイトの左で使用し、3'末端にSwaIおよびApaIサイトを作製する。
3.PCRフラグメントおよびpMON61322(図11)バックボーンを連結する。ライブラリー有効DH5α細胞に形質転換する。ApaIおよびNcoIを用いてコロニーをスクリーニングしてインサートを含むクローンを同定する。
4.ベクターを配列決定して、プラスミドのcspA遺伝子および他の選択した領域の忠実性を確認する。
【0179】
cspB
pMON73608の構築(図12)
1.ベクターpMON61322をNcoIおよびApaIで切断して、バックボーンを開け、HVA1遺伝子を取り出す。バックボーンフラグメントをゲル精製によって単離する。
2.ビー・ズブチリスcspB遺伝子をpMON56610ベクターからPCR増幅する。PCRプライマーは遺伝子の5'末端のNcoIサイトの左で使用し、3'末端にSwaIおよびApaIサイトを作製する。
3.PCRフラグメントおよびpMON61322バックボーンを連結する。ライブラリー有効DH5α細胞に形質転換する。ApaIおよびNcoIを用いてコロニーをスクリーニングしてインサートを含むクローンを同定する。
4.ベクターを配列決定して、プラスミドのCspB遺伝子および他の選択した領域の忠実性を確認する。
【0180】
実施例11 トウモロコシ植物の形質転換
トウモロコシ植物は、当該技術分野で知られている方法(例えば本明細書中の実施例20−25を参照されたい)によって形質転換し得る。
【0181】
実施例12
コピー数についてのトランスジェニック植物の分析は、以下の様式で行う。
葉組織は若葉から、出来るだけ基部近くからかつ葉の1の側から収集する。試料は96ウェルプレートに入れ、一晩凍結乾燥する。組織は各ウェルに3の3mm金属ボールを入れ、Mega Grinderを用いて1200rpmにて2分間振盪することによってホモジナイズする。DNAはβ−メルカプトエタノール、pH8に緩衝化したTris、EDTA、NaClおよびドデシル硫酸ナトリウムを含有する標準的な緩衝液を用いて抽出する。抽出は酢酸カリウムにつづいてクロロホルムを用いて行い、沈殿はイソプロパノールを用いて行う。遠心した後に、エタノール溶液で洗浄し、乾燥し、DNAをさらに分析する前にTris−EDTA緩衝液に再懸濁する。
【0182】
DNAは複数の制限エンドヌクレアーゼで消化し、フラグメントを非変性アガロースゲル電気泳動によって分離する。DNAはNaOH溶液によって変性する。ゲルをNaClを含有するTris緩衝液中で中和し、毛管現象によってナイロンフィルターにブロットする。ナイロンフィルターは、放射性同位元素またはDIGのいずれかで標識した適当なプローブを添加する前に、サケ精子DNAを含有する緩衝液中で予めハイブリダイズさせる。ハイブリダイゼーション後に、ブロットを洗浄し、オートラジオグラフィーフィルムに感光するかまたは抗−DIG抗体コンジュゲートおよび適当な基質を用いてDIGを検出することによって検出する。
【0183】
実施例13
本発明者らは、His−標識抗原を合成および精製し得るベクター(Novagen, Merck KgaA, Darmstadt, Germanyの系列会社)を用いてイー・コリ中で発現させるために、cspAおよびcspBの全長オープンリーディングフレームを用いる。精製した抗原を用いて、市場の供給業者、例えばStrategic Biocolutionsを用いてポリクローナル抗体を生成する。生成した抗体を用いて、CSPタンパク質の発現について植物を試験する。
【0184】
実施例14
トランスジェニック・トウモロコシ系統の発達
初代形質転換体はCORN OF GERMPLASM A、CORN OF GERMPLASM CおよびCORN OF GERMPLASM Dのごとき生殖質において作製する。初代形質転換体は自殖(self)ならびに同系遺伝子型の非トランスジェニック植物に戻し交配する。自殖植物からの種子を圃場に植え、Taqman接合子アッセイによってアッセイして、推定ホモ接合選択体、推定ヘテロ接合選択体および陰性選択体を同定する。推定ヘテロ接合選択体は、適当なテスター、例えばCORN OF GERMPLASM BおよびCORN OF GERMPLASM Dの複数の植物と交配する。雑種種子を収穫し、手で殻を剥き、選択によって保存する。他の繁殖方法を用いることもできる。例えば、本明細書の実施例29を参照されたい。
【0185】
実施例15
幼植物は、処理が測定可能な表現型応答を生じるように、最適下限レベルに利用可能な水を限定する処理を受ける。例えば、この処理は、進行的な水不足に通じる長期間にわたって水の量を制限する形態、または、幼植物を水耕的にまたは塩処理で浸透的にストレスをかけることによる急激な欠乏の態様をとる。トランスジーン陽性植物は、処理に対する改善された表現型応答でスクリーニングされる。測定する表現型応答には、処理の間または処理後回復期間後のシュート生長速度または乾燥重量蓄積、しおれもしくは立枯れまたは立枯れ回復、および根の増殖速度および乾燥重量蓄積が含まれ得る。改善された応答を有するものは、圃場効率試験に進める。スクリーニングには、生長チャンバーまたは温室のごとき制御された環境中の小ポットで生長させた多くのトランスジーン陽性およびトランスジーン陰性の植物が必要であろう。スクリーニングした植物の数は、適用した処理および測定した表現型と関連する分散によって示す。
【0186】
実施例16
圃場生長植物は、処理が測定可能な表現型応答を生じるように最適下限レベルまで利用可能な水を限定する処理を受ける。例えば、この処理は、植物の後期栄養または早期繁殖発育のいずれかの間に進行的な水不足に通じる、長期間にわたり植物の利用可能な水の量を制限する形態をとり得る。トランスジーン陽性植物は、トランスジーン陰性植物に対して、処理に対する改善された表現型応答についてスクリーニングされるであろう。測定される表現型応答には、処理の間のシュート生長速度、葉のしおれまたは立枯れ(leaf wilting)、穀物収量、ならびに穀粒数および穀粒重量のごとき穂収量要素が含まれ得る。改善された応答を有するこれらの事象は、初年収量試行を促進するであろう。スクリーニングは、制御可能な潅漑を有する2の乾燥圃場場所において典型的な栽培密度で適用するであろう。スクリーニングされた植物の数は、適用した処理および測定された表現型と関連する変化によって指図される。
【0187】
実施例17
記載した遺伝子の幾つかを、以下(実施例17−30)同様にしてクローニングし、植物に形質転換し、表現型決定する。例えば、ヌクレオチドおよび配列番号:4−53をコードするヌクレオチド。
【0188】
デスティネーションベクターの構築
GATEWAY(登録商標)デスティネーション(Invitrogen Life Technologies, Carlsbad, CA)植物発現ベクターは、当業者に知られている方法を用いて構築した。発現ベクターのエレメントを表17に要約する。イー・コリで発現する細菌複製機能を含むプラスミドpMON65154のバックボーンおよびアンピシリン抵抗性遺伝子はプラスミドpSK−に由来する。pMON64154における植物発現エレメントは当業者が入手可能であり、各エレメントについて表17に参照を記載する。位置に関する表17中のすべての参照は、図13に開示するプラスミドマップ上の各エレメントの塩基対座標を示す。一般的に、pMON65154はネオマイシン・ホスフォトランスフェラーゼII(nptII)をコードする遺伝子に作動可能に連結したカリフラワーモザイクウイルスS35プロモーターを含む選択マーカー発現カセットを含む。選択マーカー発現カセットの3'領域には、アグロバクテリウム・ツメファシエンスのノパリンシンターゼ遺伝子(nos)の3'領域につづいて3'にジャガイモプロテイナーゼ・インヒビターII(pinII)遺伝子の3'領域が含まれる。プラスミドpMON65154には、さらに、GATEWAY(登録商標)クローニング法を用いて関心のある遺伝子を挿入することができる植物発現カセットが含まれる。GATEWAY(登録商標)クローニングカセットは、イネ・アクチン1プロモーター、エキソンおよびイントロンによって5'で挟まれ、かつ、ジャガイモpinII遺伝子の3’領域によって3'で挟まれている。GATEWAY(登録商標)法を用いて、クローニングカセットを関心のある遺伝子によって置き換えた。関心のある遺伝子を含むベクターpMON65154およびその誘導体は、マイクロインジェクタイル・ボンバードメントのごとき直接DNAデリバリーを介する植物形質転換の方法に特に有用であった。当業者であれば、当業者に知られている方法を用いて、同様の特徴を有する発現ベクターを構築し得るであろう。なお、当業者であれば、他のプロモーターおよび3'領域が関心のある遺伝子の発現に有用であり、他の選択マーカーを使用し得ることを認識するであろう。
【0189】
【表19】

【0190】
植物形質転換のアグロバクテリウム媒介法に使用するために、別のプラスミドベクター(pMON72472、図14)を構築した。プラスミドpRG76は、関心のある植物発現の遺伝子、GATEWAY(登録商標)クローニング、およびpMON65154中に存在する植物選択マーカー発現カセットを含む。加えて、アグロバクテリウムからの左側および右側T−ボーダー配列をプラスミドに加えた。右側ボーダー配列はイネ・アクチン1プロモーターの5'に位置し、左側ボーダー配列はnptII遺伝子の3'に位置するpinII 3'配列の3'に位置する。さらに、pMON65164のpSK−バックボーンをプラスミド・バクボーンによって置き換えて、イー・コリおよびアグロバクテリウム・ツメファシエンスの両方におけるプラスミドの複製を容易にした。該バックボーンは、アグロバクテリウムにおいて機能的なDNA複製のoriV広宿主域複製起点、rop配列、イー・コリにおいて機能的なDNA複製のpBR322複製起点、ならびにイー・コリおよびアグロバクテリウムにおけるプラスミドの存在について選択するためのスペクチノマイシン/ストレプトマイシン抵抗性遺伝子を含む。
プラスミドベクターpRG81に存在するエレメントを表18に記載する。
【0191】
【表20−1】

【0192】
【表20−2】

【0193】
実施例18
コード配列は、pMON65154(図13)のごときGATEWAY(登録商標)デスティネーション植物発現ベクターにインサートする前に、PCRによって増幅した。すべてのコード配列は、クローニングした完全長配列またはcDNAライブラリーから所望の配列の増幅を許容するDNA配列情報のいずれかとして入手可能であった。PCR増幅用のプライマーは、5'および3'非翻訳領域の大部分を排除するために、コード配列の開始コドンおよび終止コドンにおいてまたはその付近において設計した。GATEWAY(登録商標)ベクター(Invitrogen, Life Technologies, Carlsbad, CA)への組換えによるクローニングを許容するために、PCR産物にattB1およびattB2配列を付けた。
【0194】
2の方法を用いて、関心のあるattBで挟んだPCR増幅配列を作製した。両方の方法は、GATEWAY(登録商標)Cloning Technology Instruction Manual(Invitrogen Life Technologies, Carlsbad, CA)に詳細に記載されている。第1の方法においては、attBおよび鋳型の特異的配列を含む単一のプライマーセットを用いた。プライマー配列は以下のとおりである:
attB1フォワード・プライマー:
5' GGG CAC TTT GTA CAA GAA AGC TGG GTN鋳型特異的配列3’(配列番号:71)
【0195】
attB2リバース・プライマー
5'GGGG CAC TTT GTA CAA GAA AGC TGG GTN鋳型特異的配列3'(配列番号:72)
【0196】
別法として、attBアダプターPCRを用いて、attBで挟んだPCR産物を調製した。attB1アダプターPCRは2セットのプライマー、すなわち遺伝子特異的プライマーおよびattB配列をインストールするためのプライマーを用いる。所望のDNA配列プライマーを設計し、それには5'にattB1またはattB2配列の12塩基対が含まれていた。使用したプライマーは以下のとおりである:
attB1遺伝子特異的フォワード・プライマー:
5' CCTGCAGGACCATGフォワード遺伝子特異的プライマー3'(配列番号:73)
【0197】
attB2遺伝子特異的リバース・プライマー:
5' CCTGCAGGCTCGAGCTAリバース遺伝子特異的プライマー3’(配列番号:74)
【0198】
第2のセットのプライマーは以下の配列を有するattBアダプタープライマーであった:
attB1アダプターフォワードプライマー:
5' GGGGACAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCTCCTGCAGGACCATG 3'(配列番号:75)
【0199】
attB2アダプターリバースプライマー:
5' GGGGACCACTTTGTACAAGAAAGCTGGGTCCCTGCAGGCTCGAGCTA 3'(配列番号:76)
【0200】
attB1およびattB2で挟んだ配列を、Invitrogen Life Technologies(Carlsbad, CA)によって記載された方法に従ってPCRによって増幅した。attBで挟んだPCR産物を、前記したように精製し、ゲルから回収した。
【0201】
幾つかの例において、attBで挟んだ配列をPCRから回収したが、GATEWAY(登録商標)技術を用いてドナーベクターにインサートし得なかった。ドナーベクターへのGATEWA(登録商標)組換えを失敗した場合には、リガーゼを用いる慣用的なクローニング方法を用いて、DNA配列をエントリーベクターにインサートした(Invitrogen Life Technologies, Carlsburg,CA)。
【0202】
エントリーベクターの選択は、エントリーベクターおよび所望のインサート配列中の制限エンドヌクレアーゼ部位の和合性に依存した。エントリーベクターを選択した制限エンドヌクレアーゼで消化してccdB遺伝子を除去し、脱リン酸化し、ゲル精製した。選択した制限エンドヌクレアーゼは使用したエントリーベクターおよび所望のインサート配列の配列に依存した。例えば、ccdB遺伝子は、EcoR1を用いて、またはEcoRVおよびXmaIまたはNcoIおよびXhoIのごとき制限エンドヌクレアーゼの他の組合せを用いて、pENTR11(図15)から除去した。他の制限エンドヌクレアーゼは、GATEWAY(登録商標)工程で使用するために他のエントリーベクターと使用し得る。制限エンドヌクレアーゼ消化したエントリーベクターを使用するために、所望のPCR産物上に和合性の粘着末端を作製できることが必要であった。粘着末端は、制限エンドヌクレアーゼ消化、アダプター連結またはPCRの間の制限部位の付加のごとき当業者に知られている多数の方法により作製し得るであろう。
【0203】
幾つかの例において、PCRフラグメントおよびエントリーベクター上に和合性の粘着末端を作製することができなかった。別法として、和合性の粘着末端は、cDNAクローンの制限酵素消化によっても作製し得る。しかしながら、PCRフラグメントをエントリーベクターに平滑末端連結することができた。この方法を用いて、エントリーベクターを制限エンドヌクレアーゼで切断してccdB遺伝子を除去した。ゲル精製した線状エントリーベクターを、T4 DNAポリメラーゼで平滑末端とした。当業者は、クレノーDNAポリメラーゼの使用のごとき、平滑末端化したDNA分子を作製する他の法補に気付く。PCR産物を平滑末端化し、好ましくはT4 DNAポリメラーゼ、または他の好適なポリメラーゼ、T4 ポリヌクレオチド・キナーゼおよびフォスファターゼ酵素とインキュベーションすることによって脱リン酸化した。エントリーベクターおよびPCR産物は、当該技術分野で知られている方法を用いて平滑末端連結した。連結産物はイー・コリに形質転換し、個々のコロニーからのプラスミドをインサートDNAの存在およびエントリーベクター中のattL部位に対する所望の向きについて分析した。オープンリーディングフレームのアミノ末端に次いでattL1配列を有するクローンを選択した。
【0204】
好ましくは、attBで挟んだPCR産物をGAYEWAY(登録商標)法を用いてプラスミドにインサートし得なかった場合には、PCR産物をクローニングするTA法(Marchukら, 1991)を用いた。TA法は、Taqポリメラーゼのターミナルトランスフェラーゼ活性の利点を採用している。エントリーベクターを制限エンドヌクレアーゼで切断し、本明細書に記載する方法を用いて平滑末端とした。平滑末端化した線状エントリーベクターはdTTPおよびTaqポリメラーゼとインキュベートして、各DNA鎖の3'末端に単一のチミジン残基の付加を生じた。TaqポリメラーゼはdATPに強い優先性を有するため、PCR産物は3'末端に付加した単一のアデノシンを有して作製される場合が多くある。したがって、エントリーベクターおよびPCR産物は相補的な単一塩基3'オーバーハングを有する。当業者に知られている条件下で連結した後に、プラスミドをイー・コリに形質転換した。プラスミドは個々のコロニーから単離し、分析して正確な向きの所望のインサートを有するプラスミドを同定する。別法として、attBサイトを付加したPCR産物を、pGEM−T EASY(Promega Corporation, Madison, WI)のごとき市販のTAクローニングベクターにTAクローニングした。
【0205】
すべてのPCR増幅産物は、植物に導入する前に配列決定した。GATEWAY(登録商標)法によって作製したデスティネーション発現ベクター中のPCRインサートを配列決定して、配列決定したインサートが予想されるアミノ酸配列をコードすることを確認した。エントリーベクターを連結方法を用いて作製した場合、インサートした配列は、GATEWAY(登録商標)技術を用いてデスティネーション発現ベクターの作製前にエントリーベクターで配列決定した。アミノ酸コード配列に影響しない点突然変異、すなわちサイレント突然変異は認めた。
【0206】
実施例19 発現ベクターの構築
GATEWAY(登録商標)クローニング法(Invitrogen Life Technologies, Carlsbad, CA)を用いて、トウモロコシ形質転換に使用するための発現ベクターを構築した。GATEWAY(登録商標)法は、GATEWAY(登録商標)Cloning Technology Instruction Manual(Invitrogen Life Technologies, Carlsbad, CA)に十分に記載されている。GATEWAY(登録商標)システムの使用により、植物発現ベクターへのコード配列のハイスループットクローニングが促進される。attB1およびattB2配列によって挟まれた遺伝子配列は、前記のようにPCRによって作製した。いずれの組換え配列、attB1およびattB2がコード配列の5'および3'に位置するかに依存して、センスおよびアンチセンス発現ベクターが作製された。センスまたはアンチセンス向きでいずれかのコード配列をインサートし得る植物発現ベクター、pMON65154(図13)は、実施例1に記載したように構築し、GATEWAY(登録商標)クローニング手法におけるデスティネーションベクターとして使用した。
【0207】
PCR増幅したコード配列を植物発現ベクターにインサートするために、2の別の方法を用いた。第1の方法においては、5'および3'末端でattB1およびattB2配列によって挟まれた関心のあるコード配列を含むPCR産物を、BP CLONASE(登録商標)の存在下でドナーベクター(pDONR201(登録商標)、Invitrogen Life Technologies, Carlsbad, CA)とインキュベートした。GATEWAY(登録商標)エントリークローンは、この反応から作製し、イー・コリに形質転換した。プラスミドDNAはエントリークローンから単離した。インサートしたコーディング配列は、PCR増幅の忠実度を確認するために、エントリーベクターから配列決定し得た。エントリークローン、イー・コリのコロニーから単離したプラスミドDNAを、LR CLONASE(登録商標)の存在下で、線状化したデスティネーションベクター、好ましくはpMON65154とインキュベートして、関心のあるコード配列を含む植物発現ベクターを作製した。LR CLONASE(登録商標)反応からのDNAをイー・コリに形質転換した。植物発現ベクターの正確な向きおよび配列を決定するために、デスティネーション発現ベクターからのプラスミドDNAを単離し、配列決定した。
【0208】
植物発現ベクターを作製する第2の方法においては、attB1およびattB2配列によって挟まれたPCR産物を、前記したごとくドナーベクター(pDONR201(登録商標)、Invitrogen Life Technologies, Carlsbad, CA)およびBP CLONASE(登録商標)とインキュベートした。インキュベーション後に、反応混合物のアリコットを線状化したデスティネーションベクターおよびLR CLONASE(登録商標)とさらにインキュベートした。得られたDNAをイー・コリに形質転換し、関心のあるコード配列を含む植物発現ベクターを当該技術分野で知られているPCRおよびサザンブロット分析技術を用いて選択した。関心のあるコード配列を含む植物発現ベクターを作製する両方の方法は、Invitrogen Life Technologies (GATEWAY(登録商標)Cloning Technology Instruction Manual)によって記載されていた。
【0209】
別法として、エントリーベクターは制限エンドヌクレアーゼおよびリガーゼを用いて作製した。エントリーベクターはInvitrogen Life Technologies(Carlsbad, CA)から入手可能である。各エントリーベクター、例えばpENTR1A、pENTR2B、pENTR3C、pENTR4およびpENTR11はユニークなクローニングおよび発現特徴を有する。pENTR11を本発明の実施において好ましく使用した。当業者は、他のエントリーベクターの有用性を認識するであろう。制限エンドヌクレアーゼおよびリガーゼを用いて所望の配列をエントリーベクターにインサートする前に、ccdB遺伝子の各側でエントリーベクターを制限消化することが必要であった。制限エンドヌクレアーゼの多数の異なる組合せは、エントリーベクターにインサートするDNA配列上に存在する制限サイトに依存して制限された。好ましくは、制限消化した後にエントリーベクターを脱リン酸化し、ゲル精製した。所望のDNA配列を、当業者に知られている分子生物学の慣用的な方法を用いてEntry Vecterにインサートした。TAクローニング(米国特許第5,827,657号)は、PCRフラグメントをエントリーベクターにクローニングする好ましい方法である。
【0210】
GATEWAY(登録商標)クローニング方法を用いて作製したベクター(pMONおよび5デジタル番号と命名した)およびその中に含まれるコード配列は、例えば配列番号:4−28である。本発明のコード配列の幾つかを、本明細書に記載する方法を用いて植物発現ベクターにクローニングし得ることは予想される。
【0211】
実施例20
生殖質のトウモロコシ 植物は温室で生育させた。雌穂は、胚が1.5ないし2.0mm長である場合、通常は授粉10ないし15日後、たいていの場合は授粉11ないし12日後に植物から収穫した。雌穂は80%エタノールを雌穂に噴霧するかまたは浸漬し、その後に風乾することによって表面滅菌した。別法として、雌穂は10%SDSを含有する50%CLOROX(登録商標)中に20分間浸漬し、その後に滅菌水で3回濯ぐことによって表面滅菌した。
【0212】
未熟な胚は、当業者に知られている方法を用いて個々の穀粒から単離した。未熟な胚は、マイクロプロジェクタイル・ボンバードメントの前の3−6日間、好ましくは3−4日間、16.9mg/L AgNOを含有するmedium 211(N6塩、2%スクロース、1mg/L 2,4−D、0.5mg/Lナイアシン、1.0mg/L チアミン−HCl、0.91g/L L−アスパラギン、100mg/Lミオイノシチオール(myoinositiol)、0.5g/L MES、100mg/Lカゼイン加水分解物、1.6g/L MgCl、0.69g/L L−プロリン、2g/L GELGRO(登録商標)、pH5.8)(medium 211Vという)上で培養した。
【0213】
実施例21
トウモロコシ細胞および他の単子葉植物のアグロバクテリウム媒介形質転換の方法は知られている(Hieiら, 1997; 米国特許第5,591,616号;米国特許第5,981,840号;公開欧州特許出願 EP 0 672 752)。種々の菌株のアグロバクテリウムを使用し得る(前記参考文献を参照されたい)が、本発明者らはABI株を好ましく用いた。アグロバクテリウムのABI株は、37℃にて培養することによりTiプラスミドを排除した、さらに修飾したTiプラスミドpMP90RK(KonczおよびSchell, 1986)を含むC58ノパリン型菌株であるA208株に由来する。アグロバクテリウム・ツメファシエンスのバイナリーベクターシステム(Anら, 1998)を、トウモロコシを形質転換するために好ましく使用した。別の同時組込みTiプラスミドベクターが記載されており(Rogersら, 1988)、トウモロコシを形質転換するために使用し得た。関心のある1またはそれを超える遺伝子を含むバイナリーベクターは、エレクトロポレーション(Wen-junおよびForde, 1989)またはtriparental mating(Dittaら, 1980)を用いて、無力化したアグロバクテリウム株に導入し得る。バイナリーベクターは、選択マーカー遺伝子、スクリーニングマーカー遺伝子および/または形質転換植物に所望の表現型特性を付与する1もしくはそれを超える遺伝子を含み得る。例示的なバイナリーベクター、pMON30113を図4に示す。他のバイナリーベクターを用いることができ、それらは当業者に知られている。
【0214】
トウモロコシ細胞の共培養の前に、アグロバクテリウム細胞は、修飾したTiプラスミドおよびバイナリーベクターの維持につき選択するための適当な抗生物質を含むLB(DIFCO)液体培地中、28℃にて増殖させ得る。例えば、ABI/pMON30113は、pMP90RK修飾Tiプラスミドの保持について選択するための50μg/mlカナマイシンおよびバイナリーベクターpMON30113の保持について選択するための100μg/mlスペクチノマイシンを含有するLB培地中で増殖させ得る。宿主アグロバクテリウム菌株中にプラスミドを保持するために適当な選択剤を使用することは当業者に明らかであろう。トウモロコシ細胞を接種する前に、アグロバクテリウム細胞はプラスミド保持についての適当な抗生物質および200μMアセトシリンゴンを含むAB培地(Chiltonら, 1974)中、室温にて一晩増殖させる。トウモロコシ細胞の接種の直前に、アグロバクテリウムは好ましくは遠心分離によってペレット化し、200μMアセトシリンゴンを含有する1/2のMSVI培地(2.2g/L GIBCO(Carlsbad, CA)MS塩、2mg/Lグリシン、0.5g/Lナイアシン、0.5g/L L−ピリドキシン−HCl、0.1mg/Lチアミン、115g/L L−プロリン、10g/L D−グルコースおよび10g/Lスクロース、pH5.4)中で洗浄し、200μMアセトシリンゴンを含有する1/2のMSPL培地(2.2g/L GIBCO(Carlsbad, CA)MS塩、2mg/Lグリシン、0.5g/Lナイアシン、0.5g/L L−ピリドキシン−HCl、0.1mg/Lチアミン、115g/L L−プロリン、26g/L D−グルコース、68.5g/Lスクロース、pH5.4)中に0.1ないし1.0×10細胞/mlで再懸濁した。当業者は、1/2のMSVIまたは1/2のMSPLの代わりに他の培地を使用し得る。
【0215】
未熟トウモロコシ胚は、先に記載したように単離する。胚は、摘出後0−7日、好ましくは摘出後直ちにアグロバクテリウムを接種する。別法として、未熟胚は7日を超えて培養し得る。例えば、胚形成カルスは前記したように開始し、アグロバクテリウムと共培養し得る。好ましくは、未熟トウモロコシ胚を摘出し、前記したように調製した1/2のMSPL培地中のアグロバクテリウム懸濁液に浸漬し、アグロバクテリウムと室温にて5−20分間インキュベートし得る。
【0216】
接種後、胚は、3.0mg/L 2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)、1% D−グルコース、2%スクロース、0.115g/L L−プロリン、0.5mg/Lチアミン−HCl、200μMアセトシリンゴンおよび20μM硝酸銀またはチオ硫酸銀を含有する1/2強度のMS培地(MurashigeおよびSkoog, 1962)に移す。未熟胚は、暗所下、23℃にて1ないし3日間、アグロバクテリウムと共培養する。当業者は、記載した培地の代わりに他の培地を使用し得る。
【0217】
共培養した胚は、medium 15AA(462mg/L (NH)SO、400mg/L KHPO、186mg/L MgSO・7HO、166mg/L CaCl−2HO、10mg/L MnSO・2HO、3mg/L HBO、2mg/L ZnSO・7HO、0.25mg/L NaMoO・2HO、0.025mg/L CuSO・5HO、0.025mg/L CoCl・6HO、0.75mg/L KI、2.83g/L KNO、0.2mg/Lナイアシン、0.1mg/Lチアミン−HCl、0.2mg/Lピリドキシン−HCl、0.1mg/L D−ビオチン、0.1mg/L 塩化コリン、0.1mg/Lパントテン酸カルシウム、0.05mg/L葉酸、0.05mg/L p−アミノ安息香酸、0.05mg/Lリボフラビン、0.015mg/LビタミンB12、0.5g/Lカザミノ酸、33.5mg/L NaEDTA、1.38g/L L−プロリン、20g/Lスクロース、10g/L D−グルコース)、または1.5mg/L 2,4−D、500mg/L カルベニシリン、3%スクロース、1.38g/L L−プロリンおよび20μM硝酸銀またはチオ硫酸銀を含有するMS培地に移し、選択することなく、暗所下、27℃にて0ないし8日間培養する。形質転換体の選択および植物の再生に使用した培地は、好ましくは500mg/Lカルベニシリンを含有する。当業者は、アグロバクテリウムの増殖を制御する他の抗生物質を代わりに使用し得る。細胞培養を支持する他の培養培地をそれに代えて使用し得る。選択の遅延がない(0日培養)場合には、選択を25mg/Lパロモマイシンで開始し得る。選択培地は、medium 211(前記した)またはN6塩をMS塩で置き換えたmedium 211の変形を含み得る。2週間後に、胚形成カルスを100mg/Lパロモマイシンを含有する培養培地に移し、約2週間間隔で継代培養する。共培養後に選択が遅延した場合、胚は最初に50mg/Lパロモマイシンを含有する培地で培養し、つづいて胚形成カルスを100−200mg/Lパロモマイシンを含有する培地で継代培養する。当業者は、選択マーカーを欠いている細胞の増殖を阻害するが形質転換カルスは増殖する濃度のパロモマイシン上で組織を培養する。別法として、他の選択マーカーを用いて形質転換細胞を同定し得る。25ないし50mg/Lパロモマイシン上の約2週間の初期培養につづく50−200mg/Lパロモマイシン上の培養は、形質転換カルスの回収を生じると考えられる。形質転換体は選択の開始後6ないし8週に回収する。植物は、マイクロインジェクタイル・ボンバードメント後に回収した形質転換体について前記したように、形質転換胚形成カルスから再生する。
【0218】
実施例22 トウモロコシカルスのアグロバクテリウム媒介形質転換
本実施例では、アグロバクテリウムを用いたトウモロコシカルスの形質転換の方法を記載する。該方法を、nptII選択マーカー遺伝子およびパロモマイシン選択剤を用いて例示する。当業者は、その代わりに他の選択マーカーおよび選択剤の組合せを使用し得ることに気付くであろう。
【0219】
カルスは当業者に知られている方法を用いて未熟胚から開始した。例えば、1.5mmないし2.0mmの未熟胚をCORN OF GERMPLASM Aのごとき遺伝子型の発育トウモロコシ種子から摘出し、胚軸側を下方にしてmedium 211V上で通常摘出後8−21日培養した。別法として、確立したカルス培養物は、当業者に知られている方法によって開始および維持し得る。
【0220】
アグロバクテリウムは、実施例21に記載した方法に従って植物組織の接種用に調製した。50ないし100片のカルスを、0.1ないし1.0×10cfu/mlのアグロバクテリウム懸濁液約15mlを含有する60mm×20mmペトリ皿に移した。カルスの片は、通常、培養21日までの未熟胚によって生成したすべてのカルス、または直径2mmないし8mmの確立したカルスの片とした。カルスはアグロバクテリウム懸濁液と室温にて約30分間培養し、つづいて吸引によって液体を除去した。
【0221】
約50μlの滅菌蒸留水を60mm×20mmペトリ皿中のWhatman #1濾紙に添加した。1−5分後に、15ないし20片のカルスを各濾紙に移し、プレートを例えばPARAFILM(登録商標)で密閉した。カルスおよびアグロバクテリウムは、暗所下、23℃にて約3日間共培養した。
【0222】
カルスは、濾紙から、20μM硝酸銀および500mg/Lカルベニシリンを含むmedium 211に移し、暗所下、27ないし28℃にて2−5日間、好ましくは3日間培養した。選択は、カルスを20μM硝酸銀、500mg/Lカルベニシリンおよび25mg/Lパロモマイシンを含有するmedium 211
に移すことによって開始した。暗所下、27ないし28℃にて2週間培養した後に、カルスは20μM硝酸銀、500mg/Lカルベニシリンおよび50mg/Lパロモマイシンを含むmedium 211(medium 211QRG)に移した。カルスは2週間後に新鮮なmedium 211 QRGに継代培養し、さらに暗所下、27ないし28℃にて2週間培養した。ついで、カルスは、20μM硝酸銀、500mg/Lカルベニシリンおよび75mg/Lパロモマイシンを含むmedium 211に移した。暗所下、27ないし28℃にて2−3週間培養した後に、パロモマイシン抵抗性カルスを同定した。当業者は、カルスの継代培養の間の期間が概算であって、より頻繁な間隔、例えば2週間よりも1週間で組織を移すことによって選択プロセスを加速し得ることを認識するであろう。
【0223】
植物は、実施例に記載したように、形質転換カルスから再生し、土壌に移し、温室中で生育させた。アグロバクテリウム媒介形質転換後、medium 217(実施例9を参照されたい)はさらに500mg/Lカルベニシリンを含有し、medium 127T(実施例9を参照されたい)はさらに250mg/Lカルベニシリンを含有した。アグロバクテリウム媒介形質転換を用いて作製した本発明の遺伝子を含む形質転換トウモロコシ植物を表Yに要約する。
【0224】
実施例23 マイクロプロジェクタイル・ボンバードメントの方法
マイクロプロジェクタイル・ボンバードメントのほぼ4時間前に、未熟胚をmedium 211SV(12%までスクロースを添加したmedium 211V)に移した。25の未熟胚を、胚盤の子葉鞘の末端を20°の角度で培養培地に僅かに押しつけつつ5×5のグリッドで配置して、好ましくは60×15mmペトリ皿に置いた。組織はボンバードメントの前に暗所下で維持した。
【0225】
マイクロプロジェクタイル・ボンバードメントの前に、その上に所望のDNAが沈澱する金粒子の懸濁液を調製した。10mgの0.6μm金粒子(BioRad)を50μL緩衝液(150mM NaCl、10mM Tris−HCl、pH8.0)に懸濁した。25μLの所望のDNAの2.4nM溶液を金粒子の懸濁液に添加し、約5秒間やさしくボルテックス攪拌した。75μLの0.1Mスペルミジンを添加し、溶液を約5秒間やさしくボルテックス攪拌した。75μLのポリエチレングリコール(分子量3000−4000、American Type Culture Collection)の25%溶液を添加し、溶液を5秒間やさしくボルテックス攪拌した。75μLの2.5M CaClを添加し、溶液を5秒間やさしくボルテックス攪拌した。CaClを添加した後に、溶液を室温にて10ないし15分間インキュベートした。つづいて、懸濁液を12,000rpm(Sorval MC-12V遠心分離機)にて20秒間遠心分離し、上清を捨てた。金粒子/DNAペレットを100%エタノールで2回洗浄し、10mLの100%エタノールに再懸濁した。金粒子/DNA調製物は、2週まで−20℃にて保存した。
【0226】
DNAは、放電粒子加速遺伝子デリバリーデバイス(米国特許第5,015,580号)を用いてトウモロコシ細胞に導入した。金粒子/DNA懸濁液をMylarシート(Du Pont Mylarポリエステルフィルム タイプSMMC2、両方の側にPVDCコポリマーがコートされており、1の側ではそのうえにアルミニウムがコートされている、18mm四方に裁断)上に310ないし320μLの金粒子/DNA懸濁液を分散させることにより、そのシート上にコートした。金粒子懸濁液を1ないし3分間静置した後に、過剰量のエタノールを除去し、シートを風乾した。トウモロコシ組織のマイクロプロジェクタイル・ボンバードメントは、米国特許第5,015,580号に記載されているように行った。AC電圧は、放電粒子デリバリーシステムにおいて変化させ得る。CORN OF GERMPLASM Aの前培養未熟胚のマイクロプロジェクタイル・ボンバードメントについては、最大電圧の35%ないし45%を好ましく使用した。マイクロプロジェクタイル・ボンバードメント後に、組織は暗所下、27℃にて培養した。
【0227】
実施例24 形質転換細胞の選択
形質転換体は、トランスジェニック・ネオマイシンホスフォトランスフェラーゼII(nptII)遺伝子の発現に基づいて、パロモマイシンを含む培養培地上で選択した。DNAデリバリーの24時間後に、組織は25mg/Lパロモマイシンを含有する211V培地(medium 211HV)に移した。暗所下、27℃にて3週間インキュベートした後に、組織を50mg/Lパロモマイシンを含有するmedium 211(medium 211G)に移した。組織は3週間後に75mg/Lパロモマイシンを含有するmedium 211(medium 211XX)に移した。形質転換体は、選択の9週間後に単離した。表Yは、本明細書に開示したマイクロプロジェクタイル・ボンバードメントの方法を用いた形質転換体実験の結果を開示する。
【0228】
実施例25 繁殖性トランスジェニック植物の再生
繁殖性トランスジェニック植物は、形質転換したトウモロコシ細胞から作製した。形質転換カルスをmedium 217(N6塩、1mg/Lチアミン−HCl、0.5mg/Lナイアシン、3.52mg/Lベンジルアミノプリン、0.91mg/L L−アスパラギン一水和物、100mg/Lミオイノシトール、0.5g/L MES、1.6g/L MgCl・6HO、100mg/Lカゼイン加水分解物、0.69g/L L−プロリン、20g/Lスクロース、3g/L GERGRO(登録商標)、pH5.8)に暗所下、27℃にて5ないし7日間移した。体細胞胚成熟およびシュート再生はmedium 217で開始した。組織は、シュート発達のために、medium 127T(MS塩、0.65mg/Lナイアシン、0.125mg/Lピリドキシン−HCl、0.125mg/Lチアミン−HCl、0.125mg/L パントテン酸カルシウム、150mg/L L−アスパラギン、100mg/Lミオイノシトール、10g/Lグルコース、20g/L L−マルトース、100mg/Lパロモマイシン、5.5g PHYTAGAR(登録商標)、pH5.8)に移した。
【0229】
medium 127T上の組織は、400−600ルクスの光下、26℃にて培養した。苗木は、苗木が約3インチの高さで根を有する場合、127T培地に移行した約4ないし6週間後に、土壌、好ましい3インチのポットに移した。植物は生長チャンバー中、26℃にて2週間維持し、その後、温室生長のために5ガロンのポットに移植する前に温室のミストベンチ上で2週間維持した。植物は温室で成熟するまで生長させ、同系CORN OF GERMPLASM Aで相互授粉を行った。植物から種子を収集し、さらなる育種活動に使用した。
【0230】
実施例26 植物からの核酸の単離
核酸はR0植物の葉組織から単離し、収集し、96ウェル収集ボックスで瞬間凍結させ、0ないし2週間後に苗木を土壌に移した。ほぼ100mgの組織を各植物から収集し、分析まで−80℃にて保存した。
【0231】
DNAおよびRNAは、修飾を有するQiagen Rneasy 96(登録商標)キット(Quiagen Inc., Valencia, CA)を用いて単一組織試料から単離した。100mgの凍結組織を、Bead Beater(登録商標)(Biospec Products, Bartlesville, OK)を用いて、700μLのRneasy(登録商標)RTL緩衝液(Qiagen Inc., Valencia, CA)にホモジナイズした。試料は3200rpmで15分間遠心分離し、すべての上清をPromega WIZARD(登録商標)クリーニングプレート(Promega Corpaoration, Madison, WI)のウェルに移した。試料溶液は、クリーニングプレートを通す真空ろ過によって透明化した。透明な上清を核酸抽出に用いた。
【0232】
DNA抽出については、70μLの透明化した試料を、粘着フォイルでカバーしたv−ウェルPCRプレートに移し、95℃まで8分間加熱した。試料は0℃にて5分間インキュベートし、その後に3分間遠心分離して不溶性の物質を除去した。Sephadex G-50ゲルろ過ボックス(Edge Biosystems, Gaithersburg, MO)を2000rpmにて2分間調子を整えた。40μLの熱処理した上清を各ウェルにロードし、ボックスを2500rpmにて2分間遠心した。さらに20μLのTE緩衝液をカラム流出液に加え、分析まで試料プレートを−20℃にて保存した。
【0233】
RNA抽出のために、500μLの透明化した溶液を清潔な96ウェル試料ボックスに移した。250μLの100%エタノールを各試料に添加し、試料をよく混合した。ついで、ほぼ750μLのすべての溶液を、Promega WIZARD(登録商標)濾過ユニット中のQiagen Rneasy(登録商標)結合プレートのウェルにロードした。500μLのRW1緩衝液(Qiagen Inc., Valencia, CA)を各ウェルに添加し、緩衝液を真空乾燥によって除去した。80μLの無RNAアーゼDNAアーゼ(Qiagen Inc., Valencia, CA)を各ウェルに添加し、室温にて15分間インキュベートし、真空濾過によってウェルを通してDNAアーゼ溶液を引き入れた。さらに500μLのRW1緩衝液(Qiagen Inc., Valencia, CA)をウェルに添加し、真空濾過によって緩衝液を除去した。試料は500μL RPE緩衝液2×(Qiagen Inc., Valencia, CA)を用いて真空濾過によってさらに洗浄した。抽出プレートをマイクロタイタープレート上に置き、3000rpmにて3分間遠心分離してフィルター中のいずれの残余RPE緩衝液溶液を除去した。80μlのRNA等級の水(無DNAアーゼ)を各ウェルに添加し、つづいて室温にて2分間インキュベートした。抽出プレートおよびマイクロタイタープレートを3000rpmにて3分間遠心分離し、保存したRNA調製物を−80℃にて収集プレート中で凍結した。
【0234】
実施例27 コピー数のアッセイ
R0植物中のトランスジーンのコピー数を、TAQMAN(登録商標)法を用いて決定した。pMON65154およびpRG76 GATEWAY(登録商標)デスティネーションベクターは、トランスジーン挿入のコピー数をアッセイするのに使用し得たジャガイモpinII遺伝子の3'領域由来の配列を用いて構築した。pinIIフォワードおよびリバース・プライマーは以下の通りであった:
フォワード・プライマー 5'ccccaccctgcaatgtga 3'(配列番号:77)
リバース・プライマー 5'tgtgcatccttttatttcatacattaattaa 3'(配列番号:78)
【0235】
pinII TAQMAN(登録商標)プローブ配列は
5'cctagacttgtccatcttctggattggcca 3'(配列番号:79)であった。
プローブは蛍光色素FAM(6−カルボキシフルオレセイン)で5'末端を標識し、クエンチャー色素TAMRA(6−カルボキシ−N,N,N',N'−テトラメチルローダミン)をリンカーを介してプローブの3'末端に結合した。TAQMAN(登録商標)プローブは、Applied Biosystems(Foster City, CA)から得た。 SAT、単一コピーのトウモロコシ遺伝子を、TAQMAN(登録商標)コピー数アッセイにおける内部対照として使用した。SATプライマーは以下の通りであった:
フォワード・プライマー 5'gcctgccgcagaccaa 3'(配列番号:80):
リバース・プライマー 5'atgcagagctcagcttcatc 3'(配列番号:81)。
【0236】
SAT TAQMAN(登録商標)プローブ配列は
5'tccagtacgtgcagtccctcctcc 3'(配列番号:82)であり、プローブはその5'末端を蛍光色素VIC(登録商標)(Applied Biosystems, Foster City, CA)で、その3'末端をクエンチャー色素TAMRAで標識した。
【0237】
TAQMAN(登録商標)PCRは製造業者の指示書(Applied Biosystems, Foster City, CA)に従って行った。5ないし100ngのDNAを各アッセイに用いた。PCR増幅およびTAQMAN(登録商標)プローブ検出は、AmpliTaq Gold(登録商標)DNAポリメラーゼ、AmpErase(登録商標)UNG、dUTPを含むdNTP、受動参照1および最適化した緩衝液を含む1×TAQMAN(登録商標)Universal PCR Master Mix(Applied Biosystems, Foster City, CA)中で行った。800nMの各フォワードおよびリバースpinIIプライマーおよび150nMのpinII TAQMAN(登録商標)プローブをTAQMAN(登録商標)アッセイにおいて使用した。200nMの各Satフォワードおよびリバース・プライマーならびに150nM Sat TAQMAN(登録商標)プローブを、TAQMAN(登録商標)コピー数アッセイにおいて使用した。TAQMAN(登録商標)PCRは、50℃にて2分、95℃にて10分、その後95℃にて15秒および60℃にて1分間の40サイクルで行った。リアルタイムTAQMAN(登録商標)プローブ蛍光は、ABI Prism 7700 Sequence Detection SystemまたはABI 900HT Sequence Detection System(Applied Biosystems, Foster City, CA)を用いて測定した。C値は、TAQMAN(登録商標)EZ RT−PCRキット指示マニュアル(Applied Biosystems, Foster City, CA)に従って計算した。△△C値は、C(内部対照遺伝子(Sat))−C(トランスジーン)−C(非トランスジェニック植物中の内部対照遺伝子(Sat))として計算した。コピー数は、表12の基準に従って以下のように示された。
【0238】
【表21】

【0239】
本発明の遺伝子を含む植物は、コピー数についてTAQMAN(登録商標)法によって分析する。TAQMAN(登録商標)およびサザンブロット・ハイブリダイゼーションの両方によって分析した植物の約80%において、サザンブロット分析がTAQMAN(登録商標)コピー数の決定を確認した。
【0240】
実施例28 遺伝子発現のアッセイ
本発明のトランスジーンの発現は、Applied Biosystems(Foster City, CA)からのTAQMAN(登録商標)EZ RT−PCRキットを用いるTAQMAN(登録商標)RT−PCRによってアッセイした。RNA発現は、トランスジェニック標準における発現、pinII3'非翻訳領域に作動可能に連結したビー・チューリンジエンシス(B. thuringiensis)cryIAI遺伝子を含むDBT418と命名したトランスジェニック・トウモロコシ事象に対してアッセイした。DBT418事象は、アワノメイガのごとき鱗翅目昆虫に対する商業レベルの抵抗性を付与するレベルでcryIAI遺伝子を発現し、ブランド名DEKAKBt(登録商標)でDEKALB Genetics Corporationによって市販されている。pMON65154およびpRG76 GATEWAY(登録商標)デスティネーションベクターは、デスティネーションベクターに挿入したいずれかのコード配列についてトランスジーン転写レベルをアッセイするために使用し得るジャガイモpinII遺伝子の3'領域由来の配列を用いて構築した。pinIIプライマーおよび以前に記載したプローブを、TAQMAN(登録商標)RT−PCRに使用した。ユビキチン融合タンパク質(UBI)RNAを、すべてのTAQMAN(登録商標)RT−PCRアッセイにおける内部対照として使用した。使用したUBIプライマーは以下の通りであった:
フォワード・プライマー 5'cgtctacaatcagaaggcgtaatc 3'(配列番号:83):
リバース・プライマー 5'ccaacaggtgaatgcttgatagg 3'(配列番号:84)。
【0241】
UBI TAQMAN(登録商標)プローブの配列は
5'catgcgccgctttgcttc 3'(配列番号:85)であった。UBI TAQMAN(登録商標)プローブはその5'末端を蛍光色素VIC(登録商標)(Applied Biosystems, Foster City, CA)で、およびその3'末端をクエンチャー色素TAMRAで標識した。
【0242】
逆転写、PCR増幅およびTAQMAN(登録商標)プロービングは、TAQMAN(登録商標)EZ RT−PCRキット(Applied Biosystems, Foster City, CA)に記載した1工程手法に従って行った。5ないし100ngの全RNAを各アッセイに使用した。DBT418事象からのイン・ビトロ(in vitro)転写された対照RNAを毎プレート上の対照として含め、0.01pgないし10pgの範囲の濃度で行った。DBT418の葉からの全RNAおよび非トランスジェニック近交系CORN OF GERMPLASM Aからの全RNAを、各々陽性および陰性対照として行った。RT−PCRは、3mM酢酸マンガン、300μMの各dATP、dCTP、dGTPおよびdUTP、100単位のrTth(登録商標)Applied Biosystems, Foster City, CA)DNAポリメラーゼおよび25単位のAmpErase UNG(Applied Biosystems, Foster City, CA)を含有するTAQMAN(登録商標)EZ緩衝液(50mMビシン、115mM酢酸カリウム、0.01mM EDTA、60mM受動参照1、8%グリセリン、pH8.2、Applied Biosystems, Foster City, CA)中で行った。RT−PCRは以下のように行った:50℃にて2分、60℃にて30分、95℃にて5分、その後に、95℃にて20秒および60℃にて1分の40サイクル。400nMの各フォワードおよびリバース・プライマーをpinII配列の増幅に使用し、200nMのTAQMAN(登録商標)pinIIプローブを検出に使用した。UBI RNAは400nMの各フォワードおよびリバース・プライマーを用いて増幅し、200nM UBI TAQMAN(登録商標)プローブを検出に使用した。TAQMAN(登録商標)蛍光は、ABI Prism 7700 Sequence Detection SystemまたはABI 7900HT Sequence Detection System(Applied Biosystems, Foster City, CA)を用いて測定した。本発明のトランスジーンの発現は、DBT418におけるトランスジーン発現に対して定量化し、DBT418発現に対するトランスジーン発現の比、すなわち2△△C)(トランスジーン)/2△△C)(DBT418)
として報告する。
【0243】
実施例29 植物育種
戻し交雑を用いて、出発植物を改良し得る。戻し交雑は、特定の所望の特性を1の源から同系へとまたはその特性を欠いている他の植物へと移行する。これは、例えば、最初に優れた同系繁殖体(A)(反復親)を、問題の特性に関する適当な遺伝子(または複数の遺伝子)、例えば本発明により調製した構築物、を運搬している供与同系繁殖体(非反復親)に交雑することによって成し得る。この交雑の子孫は、最初に非反復親から移行すべき所望の特性について得られた子孫において選択され、ついで選択された子孫を優れた反復親(A)に戻し交配する。所望の特性について選択された5またはそれを超える戻し交雑世代の後、子孫は移行する特性を制御する遺伝子座についてはヘミ接合であるが、大部分またはほぼすべての他の遺伝子については優れた親と同様である。最後の戻し交雑世代は自家受粉させて、移行すべき遺伝子(または複数の遺伝子)について純粋な家系、すなわち1またはそれを超える形質転換事象、である子孫を得る。
【0244】
したがって、一連の育種操作を介して、さらなる組換え操作を必要とすることなく、選択したトランスジーンを1の系統から全く異なる系統に動かすことができる。トランスジーンは、それが典型的にはいずれか他の遺伝子と遺伝学的に同様にふるまい、かつ、いずれか他のトウモロコシ遺伝子と同様に育種技術によって操作し得る点において貴重である。したがって、1またはそれを超えるトランスジーンについて真の家系である同系繁殖体植物を作出することができる。異なる同系繁殖体植物を交雑することにより、異なる組合せのトランスジーンを有する多数の異なる雑種を作出することができる。このようにして、雑種("雑種強勢")としばしば関連する所望の作物学的性質、ならびに1またはそれを超えるトランスジーンによって付与された所望の特徴を有する植物を作出することができる。
【0245】
形質転換植物中の各遺伝子によって付与される表現型の特徴付けのために、本発明の遺伝子をトウモロコシ雑種に遺伝子移入することが望ましい。トランスジーン、好ましくはCORN OF GERMPLASM Aが導入された宿主遺伝子型は、選りすぐりの同系繁殖体であり、したがって高収量トウモロコシ雑種を作出するためには限られた育種しか必要でない。カルスから再生した形質転換植物は同じ遺伝子型、例えばCORN OF GERMPLASM Aに交雑する。子孫は2回自家受粉し、トランスジーンについてホモ接合である植物を同定する。ホモ接合トランスジェニック植物は、雑種を作出するために試験交雑親に交雑する。試験交雑親は、トランスジェニック親とは異なる雑種強勢群に属し、かつ、高収量雑種を作出し得ることが知られている、例えばCORN OF GERMPLASM AのCORN OF GERMPLASM EまたはCORN OF GERMPLASM Bのいずれかに対する交雑から生じた、同系繁殖体である。
【0246】
実施例30 表現型を評価する方法
本発明の遺伝子の発現は、形質転換細胞および植物において本明細書に開示するような種々の表現型に通じる。表現型データは、カルスの形質転換プロセスならびに植物再生の間、ならびに植物および子孫において収集する。表現型データは、形態的外観ならびにカルスの生長、例えばシュートの性質、根の性質、デンプン質、粘液質、非胚形成性、増大した生長速度、低下した生長速度、死滅、に関して形質転換カルスにおいて収集する。当業者は、形質転換カルスにおける他の表現型特徴を認識し得るであろう。
【0247】
表現型データは、植物再生のプロセスの間ならびに土壌に移行した再生植物においても収集する。表現型データには、正常植物、潅木植物、幅の狭い葉、縞の入った葉、節のある表現型、アルビノ、アントシアニン産生、バギーウィップ(buggy whipped)(直近に出現した葉が細長く、互いに巻きつく、当該技術分野で知られている現象)または変化した雄穂、雌穂または根のごとき特徴が含まれる。当業者は、形質転換植物における他の表現型特徴を認識し得る。
【0248】
広範な種々の表現型を植物育種のプロセスの間に、ならびに同系繁殖体および雑種植物の両方において試験する間にモニターする。例えば、R0およびR1植物(カルスから直接的に再生した植物およびそれら植物の直接の子孫)においては、植物の型(苗木について前記したもののような一般的な形態的特徴)および植物によって産生された穀物の栄養組成を記録する。栄養組成分析にはアミノ酸組成を含めることができ、タンパク質、デンプンおよび油の量、タンパク質、デンプンおよび油の特徴、ファイバー、灰、無機物含量をすべて測定し得る。当業者が穀物の他のコンポーネントの分析を含め得ることは予想される。R2およびR3植物においては、花粉を収めるまでの日、開花するまでの日、植物の型を観察する。さらに、R2植物の代謝産物調査を行う。当業者に入手可能な方法を用いて、50ないし100またはそれを超える代謝産物を植物において分析し、それによって植物の代謝フィンガープリントを確立し得る。また、R3植物においては、圃場条件下で葉の伸長速度を測定する。種々の表現型を、本発明のトランスジーンを含む雑種においてアッセイする。例えば、収量、水分、試験重量、栄養組成、クロロフィル含量、葉の温度、起立、幼植物の活力、植物の高さ、葉の数、分蘖、支柱根、常緑(stay green)、茎倒伏(stalk lodging)、根倒伏(root lodging)、植物の健康、バレネス(barreness)/多産性、グリーンスナップ(green snap)、害虫抵抗性(疾患、ウイルスおよび昆虫を含む)および代謝プロフィールを記録する。また、雑種から収穫した穀物の表現型特徴を記録し、それには雌穂の列当たりの穀粒の数、雌穂の穀粒の列の数、穀粒の発育停止、穀粒重量、穀粒サイズ、穀粒密度および物理的穀物品質が含まれる。さらに、光合成、葉面積、穀皮構造、穀粒乾燥落下速度(dry down rate)および節間の長さのような特徴を、雑種または同系繁殖体で測定し得る。本発明の遺伝子を発現しているトランスジェニック植物において転写特徴付けを行い得ることは予想される。
【0249】
本発明の遺伝子を発現しているトランスジェニック植物における雑種収量を決定するためには、トウモロコシが都合よく生長する地理的場所、例えばアイオワ、イリノイまたは合衆国中西部の他の場所における複数の場所で雑種を試験しなければならないことは認識される。トウモロコシ雑種の改良に寄与するトランスジーンを同定するために1年を超える収量試験が望ましいことは予想される。したがって、トランスジェニック雑種は、最初の年は十分な数の場所で評価して、非トランスジェニック雑種相対物からの少なくともほぼ10%の収量の差異を同定する。収量試験の2年目は、2の雑種間の4−5%収量の差異を同定することができる十分な場所および十分な反復で行う。さらに、収量試験の2年目においては、雑種を正常な圃場条件下ならびにストレス条件下、例えば水または集団密度ストレスの条件下で評価する。当業者は、所望の比率の精度で2の雑種間で統計学的に有意な収量の差異を検出し得るように収量試行をどのように設計するかを知っている。
【0250】
実施例31 トウモロコシ種子の表面滅菌および吸収
各トランスジェニックロットについて、トウモロコシ種子を50mlの0.01%Triton X-100を含有する30%漂白剤(過酸化水素ナトリウム溶液=Chloroxまたは等価物)を入れた無菌の500mlのエルレンマイヤーフラスコに入れ、フラスコをオービタルシェイカーで5分間回転することによってそれらを表面滅菌する。ついで、漂白剤溶液を注ぎ出し、約100mlの滅菌脱イオン水で洗浄し、水洗浄液を注ぎ出す。無菌水洗浄をさらに4回繰り返し、再度の水洗浄液を種子上に残す。エアバブリング下(0.2μmフィルターを通す)での吸収のために、種子をこの水の中で、室温にて24時間インキュベートする。
【0251】
I.ファイトトレイ(Phytotray)中の培地の調製
幾つかのファイトトレイ用の水−寒天培地を調製する。本発明者らは、容器の長い方の深さの側部が底面上にあり、小さい方の側部が蓋として使用されるような逆さにした位置でファイトトレイII(またはプラスチックボックス:60×30×15cm)を使用している。脱イオン水中の0.3%BactoAgarを液体サイクル上の45分間オートクレーブ処理することによって、ファイトトレイ当たり100mlに対して十分な水−寒天培地を調製する。容易に取扱いし得る程度まで培地を冷却し、溶解したままでファイトトレイ当たりほぼ100mlを注入する。
【0252】
II.トウモロコシ低温幼植物活力アッセイ
・培地が固化したら、それと無菌種子を層状流動蓋(laminar flow hood)にする。
・無菌ピンセットを用いて、20の健全な最も均一な種子を選択し、アッセイに使用する各ファイトトレイに、後に個々の種子を簡単に取り出し得るように均等に種子を離しながら、種子を置く。
・胚の側が下方に斜めに挿入し、種子がちょうど寒天の表面下となるように種子を置く。この位置では、現れるシュートおよび根は束縛されることなる直接的に伸長することができるであろう。
・種子を培地中、22℃にて1週間または大部分の種子が小根を押出し、寒天から現れ始めるまでインキュベートする。
・層状流動蓋中の10の最も均一に生長した幼植物を除いてすべてを除去する。
・ファイトトレイを16時間日照サイクルで10℃に設定した定温植物生長チャンバーに移し、そこで2週間インキュベートする。
・ファイトトレイを1週間22℃に戻す。
・幼植物を取り出し、幼植物毎に根の長さおよびシュートの長さを測定し、新鮮重g/3幼植物を測定し、ノートに記録する。
【0253】
低温発芽および出現アッセイ
以下の点を除いて前記と同様である:
・Iにおける最後の水洗の後に、一晩吸収工程の間にフラスコを10℃に置く。
・固化した培地と一緒にファイトトレイを10℃に置く。
・冷却したファイトトレイに低温吸収種子を播種した後に、それを10℃のチャンバーに直接置く。
・約5日後に、小根がほぼ同じ長さである10の最も均一に発芽した種子を除いて、すべてを除去する。ファイトトレイを1−2週間10℃のチャンバーに戻す。幼植物を取り出し、各々の幼植物について根の長さおよびシュートの長さを測定し、3の幼植物ごとに新鮮重を測定し、ノートに記録する。
・第2のセットのファイトトレイを22℃に1週間移す。
【0254】
幼植物を取り出し、各幼植物について根の長さおよびシュートの長さを測定し、ノートに記録する。
【0255】
実施例31.ダイズ形質転換用のプラスミドの作製
実施例(CspAおよびB構築物−pMON73983および73984)
pMON73983(図18)は、アグロバクテリウム媒介形質転換およびダイズにおけるバチルス・ズブチリスCspAのようなタンパク質(配列番号:1)を構成的に発現するためのバイナリーベクターである。ビー・ズブチリスCspA遺伝子をクローニングするためには、2の遺伝子特異的プライマーMSA452およびMS453を、National Institute of Health (NCBI)の一部であるNational Library of Medicineの一部であるNational Center for Biotechnology InformationからのCspA配列の情報(Genbank# M30139)に基づいて設計した。MSA452の配列は:
CspAの翻訳開始サイトにアニールし、StuIおよびBglIIサイトを5'末端に導入する
GCGCAGGCCTAGATGTACCATGTCCGGTAAAATGACTGGTATCGTAAAATGG(配列番号:86)であり、一方、MSA453の配列は:
CspAの最後のコドンにアニールし、プライマーの末端にBamHIおよびEcoRIサイトを導入する
CGCGAATTCGGATCCTTATTACAGGCTGGTTACGTTACCAGCTGCC(配列番号:87)である。リバース・プライマーMSA453はGenbank遺伝子配列の3'末端にマッチするように設計した。PCR反応はプライマーMSA452およびMSA453、High Fidelity Taqポリメラーゼ(BRL)およびpMON57397(図3)を鋳型として使用して行った。この鋳型は遺伝子CspAの3'末端で、GenBank配列のものとは異なる。増幅したCspB DNAをゲル電気泳動によって精製し、pCR−XL−TOPOベクター(Invitrogen)に連結した。連結反応物を、製造業者のプロトコールに従ってイー・コリTop10細胞(Invitrogen)に形質転換した。4の形質転換体コロニーを取り、Qiagen Miniprepキットを用いてminiprep DNAを調製した。M13−特異的フォワードおよびリバース・プライマーを用いてインサートを配列決定した。正確な配列を有するクローンをpMON73981と命名し、さらなるサブクローニングに使用した。
【0256】
pMON73881 DNAをStuIおよびBamHIで消化して、CspA遺伝子フラグメントを単離した。pMON73980 DNAを順次StuIおよびBamHIで消化し、ついでGene Clean IIキットによって精製した。CspBフラグメントおよびこの精製したベクターpMON73980を連結し、連結反応物をイー・コリDH10B細胞に電気的に形質転換した。形質転換体はスペクチノマイシン含有培地で選択した。miniprep DNAを形質転換体から調製し、CaMV 35S−プロモーター特異的フォワード・プライマーを用いることによってインサートの存在についてDNAをチェックした。このインサートを含むクローンをpMON73983と命名した。より大きなDNA prepを作製し、BglII、EcoRI、PstI、EcoRI+BamHI、StuI+XhoIを含む一連の確認消化を行った。これらは、正確なクローニングを確認した。
【0257】
pMON73984は、アラビドプシスにおいて、アグロバクテリウム媒介形質転換およびバチルス・ズブチリスCspBのようなタンパク質(配列番号:2)の構成的発現のためのバイナリーベクターである。ビー・ズブチリスCspB遺伝子をクローニングするために、2の遺伝子特異的プライマー、MSA454およびMSA455を、National Institute of Health (NCBI)の一部であるNational Library of Medicineの一部であるNational Center for Biotechnology InformationからのCspB配列の情報(GenBank# X59715)に基づいて設計した。MSA454の配列は:
CspBの翻訳開始サイトにアニールし、StuIおよびBglIIサイトを5'末端に導入する
GCGCAGGCCTAGATGTACCATGTTAGAAGGTAAAGTAAAATGGTTCAACTCTG(配列番号:88)であり、一方、MSA455の配列は:
CspBの最後のコドンにアニールし、プライマーの末端にBamHIおよびEcoRIサイトを導入する
CGCGAATTCGGATCCTTATTACGCTTCTTTAGTAACGTTAGCAGCTTGTGG(配列番号:89)である。リバース・プライマーMSA455はGenBank遺伝子配列の3'末端にマッチするように設計した。PCR反応はプライマーMSA454およびMSA455、High Fidelity Taqポリメラーゼ(BRL)およびpMON57399を鋳型として使用して行った。この鋳型は遺伝子CspBの3'末端で、GenBank配列のものとは異なる。増幅したCspB DNAをゲル電気泳動によって精製し、pCR−XL−TOPOベクター(Invitrogen)に連結した。連結反応物を、製造業者のプロトコールに従ってイー・コリTop10細胞(Invitrogen)に形質転換した。4の形質転換体コロニーを取り、Qiagen Miniprepキットを用いてminiprep DNAを調製した。M13−特異的フォワードおよびリバース・プライマーを用いてインサートを配列決定した。正確な配列を有するクローンをpMON73982と命名し、さらなるサブクローニングに使用した。
【0258】
pMON73882 DNAをStuIおよびBamHIで消化して、CspB遺伝子フラグメントを単離した。pMON73980 DNAを順次StuIおよびBamHIで消化し、ついでGene Clean IIキットによって精製した。CspBフラグメントおよびこの精製したベクターpMON73980を連結し、連結反応物をイー・コリDH10B細胞に電気的に形質転換した。形質転換体はスペクチノマイシン含有培地で選択した。miniprep DNAを形質転換体から調製し、CaMV 35S−プロモーター特異的フォワード・プライマーを用いることによってインサートの存在についてDNAをチェックした。このインサートを含むクローンをpMON73984と命名した。より大きなDNA prepを作製し、BglII、EcoRI、PstI、EcoRI+BamHI、StuI+XhoIを含む一連の確認消化を行った。これらは、クローニングが正確であることを確認した。
【0259】
ゲノムに前記のpMON構築物を安定して組み込んだ形質転換を介してダイズ植物を作製した。
【0260】
実施例32
前記実施例10および11からのDNA構築物で形質転換したトウモロコシ植物を実験した。
温室
・渇水耐性について1は10のcspA事象を試験し、1は10のcspB事象を試験する2の実験を行った。
・各事象からの24のトランスジーン陽性および24のトランスジーン陰性ハイブリッド幼植物を試験した(すべて、分離したハイブリッドの雌穂に由来する種子)。
・試験は温室のベンチ上で行った。
・処理は水を差し控えることおよび植物を含有する各ポットの総ポット重量をモニターすることからなる。完全に給水したポットは各々約1000gと秤量され、各ポットの重量が400gに達するまで水を差し控え、ついで処理の残りの期間はポットをその重量で維持した。
・処理の全体を通して、ポットの土壌の表面から"最も高い"葉の先端までの距離を測定することによって植物の高さを決定した。これらの測定から、測定の間の間隔における高さを比較することによって、LER(leaf extension rates、葉伸長速度)を決定した。
・渇水の間のLER比較は、事象内のトランスジーン陰性およびトランスジーン陽性植物の間で作成した。
・試験した10の事象のうちの3については、cspAトランスジェニック植物は処理の間にLERについて有意に(p<0.10)改善された。
・試験した10の事象のうちの3については、cspBトランスジェニック植物は処理の間にLERについて有意に(p<0.10)改善された。
【0261】
圃場効率
・ハイブリッド種子を用いて3の実験を行った。生長の後期生長期の渇水耐性について、1は16のcspB事象(CA)を試験し;1は21のcspB事象(KS)を試験し;1は14のcspA事象(HI)を試験した。
・CAおよびHI試行については、トランスジーンの存在について分離している〜34の植物を含む列が各々6および4の反復で存在した。分離している列は、分離している雌穂から由来した。
・KS実験については、列は6の反復でもって、トランスジェニックおよび非トランスジェニックの対を形成をする列として〜34の植物を含ませた。
・処理は、生長の後期生長期の間にほぼ10日水を差し控える(生存植物を維持するために必要な少量の水を与えつつ)ことからなった。10日の終期において、植物は収穫までよく潅漑した。
・処理の全体を通して、LER、クロロフィル(SPADメーターによって)および光合成率を含む多くの表現型を測定した。処理の後には、花粉を収めるまでおよびトウモロコシの毛(silk)が出現するまでの日数、ならびに穀粒/雌穂のごとき雌穂コンポーネント、穀粒を有する雌穂、穀粒重量および収量:を含む測定したさらなる表現型を含めた。
・事象内および構築物を横切って、トランスジーン陽性および陰性植物の間で表現型比較を作成した。
・CA試行、(栄養繁殖特性についてはすべての事象を横切り、生殖特性については"最良の"6の事象を横切る)構築物としてcspBにおいては、トランスジーン陽性植物は渇水処理の間または後にLER、葉の温度、および穀粒/雌穂cspBについて有意に(p<0.10)改善されていた。
・CA試行において、個々の事象は、渇水処理の間または後のLER、平均雌穂長、穀粒体積/雌穂、気孔コンダクタンス、および開花までの日数について有意に(p<0.10)改善されたいた。
・KS試行、(栄養繁殖特性についてはすべての事象を横切り、生殖特性については"最良の"6の事象を横切る)構築物としてcspBにおいて、トランスジーン陽性植物は、LER、穀粒を結んでいる雌穂/列、穀粒/雌穂、穀粒/植物、殻重量および収量について有意に(p<0.10)改善されていた。
・KS試行において、個々の事象は、LER、光合成率、気孔コンダクタンス、雌穂/列、および穀粒/植物について有意に(p<0.10)改善されたいた。
・HI試行において、3の事象は、LER(クロロフィル含量はHIにおいて測定した唯一の他の表現型であった)について有意に(p<0.10)改善されていた。
【0262】
CAおよびKS結果の要約:
cspB−KSサイト圃場効率結果の概要
1.植物を植えるおよびサンプリングする圃場設計、サイト均一性および完成は、有益なデータセットを生成することができる高品質な実験ですべて一致した。
2.水を制限した処理、測定したすべての表現型、特にLER、クロロフィルおよび光合成率に対して
3.栄養繁殖および生殖表現型に対する処理の影響は、統計学的に真正であるのに十分であり、統計学的に有意なレベルで観察されるトランスジーン媒介改善を許容するのに十分であった。
4.LER、クロロフィル、光合成率、気孔コンダクタンス、葉の温度、花粉を収めるまでの日数、開花までの日数、開花−トウモロコシの毛が出現する間隔、雌穂/区画、穀粒/雌穂、穀粒/植物、殻重量および概算収量を含む1またはそれを超える事象が統計学的に改善された。
5.乾燥処理におけるLER、雌穂/区画、穀粒/雌穂、穀粒/植物、殻重量および概算収量について、ならびに湿潤処理におけるLERについて、構築物レベルの統計学的改善がp<0.10で観察された。
【0263】
【表22】

【0264】
cspB−CSサイトについての圃場効率の概要(フォント変化)
1.植物を植えるおよびサンプリングする圃場設計、サイト均一性および完成は、有益なデータセットを生成することができる高品質な実験ですべて一致した。
2.水を制限した処理は、測定したすべての栄養繁殖表現型、詳細にはLER、クロロフィルおよび光合成率に処理の影響を生じるが、すべての生殖表現型に処理の影響が生じないように適用した。
3.関心のある表現型(栄養繁殖)に対する処理の影響は、統計学的に真正であるのに十分であり、統計学的に有意なレベルで観察されるトランスジーン媒介改善を許容するのに十分であった。
4.LER、クロロフィル、光合成率、気孔コンダクタンス、葉の温度、花粉を収めるまでの日数、開花までの日数、開花−トウモロコシの毛が出現する間隔、穀粒/雌穂、平均雌穂長、および穀粒体積/雌穂について、1またはそれを超える事象がトランスジーンを含む植物において統計学的に改善された。
5.乾燥処理におけるLER、葉の温度、および花粉を収めるまでの日数、および湿潤処理におけるASIについては、構築物レベルの有意な改善が観察された。
【0265】
【表23】

【0266】
これらの事象の多くを、低温発芽効率における改善および低温条件下の幼植物生長についてつづいて試験し、効果を生じることは証明されなかった。したがって、このプロモーターによって駆動されるこれらの遺伝子は、低温発芽または低温条件下での幼植物生長の改善についてはトウモロコシにおいて機能しないようであったが、同じ遺伝子を駆動する異なるプロモーター、または異なる低温ショックタンパク質は、トウモロコシにおいてこれらの表現型を改善するために機能し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
5'から3'の方向で
a)植物中で機能し、かつ、下記の第2のDNAポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む第1のDNAポリヌクレオチド;
b)下記の3'転写終結DNAポリヌクレオチドに作動可能に連結された、配列番号:63または配列番号:65のアミノ酸配列を有する低温ショックタンパク質をコードする第2のDNAポリヌクレオチド;および
c)ポリアデニル化配列として機能する3'転写終結DNAポリヌクレオチド、
を含む組換えDNA分子。
【請求項2】
プロモーターが、誘導性プロモーター(inducible promoter)、構成的プロモーター(constitutive promoter)、時期調節型プロモーター(temporal-regulated promoter)、発生段階調節型プロモーター(developmentally-regulated promoter)、組織優先型プロモーター(tissue-preferred promoter)、低温亢進型プロモーター(cold enhanced promoter)、低温特異的プロモーター(cold-specific promoter)、ストレス亢進型プロモーター(stress enhanced promoter)、ストレス特異的プロモーター(stress specific promoter)、渇水誘導性プロモーター(drought inducible promoter)、水分欠乏誘導性プロモーター(water deficit inducible promoter)および組織特異的プロモーター(tissue-specific promoter)よりなる群から選択される、請求項1記載の組換えDNA分子。
【請求項3】
該低温ショックタンパク質の発現が植物に渇水耐性を付与する、請求項1記載の組換えDNAが植物の細胞のゲノムに挿入されている植物。
【請求項4】
単子葉植物である請求項3記載の植物。
【請求項5】
双子葉植物である請求項3記載の植物。
【請求項6】
植物が、ダイズ、トウモロコシ、キャノーラ、イネ、ワタ、オオムギ、エンバク、シバ、ワタおよびコムギよりなる群から選択される請求項3記載の植物。
【請求項7】
請求項3記載の植物の伝播体。
【請求項8】
請求項3記載の植物の子孫。
【請求項9】
細胞のゲノムに組換えDNAが挿入されている植物細胞であって、該組換えDNAは配列番号:63または配列番号:65のアミノ酸配列を有する低温ショックタンパク質をコードし、該タンパク質の発現が該植物細胞に水欠乏耐性を付与する該植物細胞。
【請求項10】
渇水耐性を有するトランスジェニック植物の作物を作製するために使用することができる、配列番号:63または配列番号:65のアミノ酸配列を有する細菌低温ショックタンパク質をコードする組換えDNAを含むトランスジェニック種子を生産する方法であって:
(a)低温ショックドメインを含むタンパク質をコードする組換えDNAを含む第1の植物を選択し;
(b)該組換えDNAを第2の植物に遺伝子移入し;
(c)第2の植物からの種子を生長させて植物の集団を作り;
(d)渇水耐性を示す植物について植物の集団をスクリーニングし;
(e)該集団から、渇水耐性を示す1またはそれを超える植物を選択し;
(f)該組換えDNAが該選択した植物に安定して組み込まれていることを証明し;
(g)選択した植物が低温ショックドメインを含むタンパク質を発現しているかを判定し;ついで
(h)選択した植物から種子を収集する
ことを含む該方法。
【請求項11】
組換えDNAがホモ接合体である請求項10記載の方法。
【請求項12】
土壌に植物の種子を植栽してそれを生育させることによる、種子を生成するために植物を繁殖させる方法であって、該植物は配列番号:63または配列番号:65のアミノ酸配列を有する低温ショックタンパク質をコードする組換えDNAがその細胞のゲノムに挿入されており、ここに該タンパク質の発現が該植物に渇水耐性を付与する該方法。
【請求項13】
配列番号:63または配列番号:65のアミノ酸配列を有する低温ショックタンパク質をコードする組換えDNAが植物のゲノムに挿入されているトランスジェニック植物を生育させることを含む、水が生長を限定する場合の条件下で圃場作物を作出する方法であって、生長の後期栄養繁殖期の間は水を差し控えることを特徴とする該方法。
【請求項14】
配列番号:63または配列番号:65のアミノ酸配列を有する単離されたタンパク質。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−125340(P2011−125340A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−288205(P2010−288205)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【分割の表示】特願2006−534030(P2006−534030)の分割
【原出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(501231613)モンサント テクノロジー エルエルシー (71)
【Fターム(参考)】