説明

植物における改良されたタンパク質生産および貯蔵

1つ以上の植物種子貯蔵タンパク質の欠乏を有し、貯蔵タンパク質プロモーターおよびERシグナル配列に作動可能に連結されたオープンリーディングフレームを含むトランスジェニックポリヌクレオチドコンストラクトをさらに有する、トランスジェニック双子葉植物。前記ポリヌクレオチドコンストラクトは、種子中に高レベルで集積することができるタンパク質産物をコードする。植物種子中で異種タンパク質を生産する方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は米国仮特許出願第61/076,616号(出願日2008年6月28日)に基づく優先権を主張し、前記仮特許出願は引用によりその全てが本明細書に組み込まれる。
【0002】
[連邦政府の後援による研究または開発に関する陳述]
本発明は、その一部が、USDAによって交付されミズーリ大学コロンビア校(University of Missouri, Columbia)によって管理された特別研究助成金(special research grant)#2006-06103の下に、また、USDA農業研究局(USDA Agricultural Research Service)の局内研究支援(intramural research support)プロジェクト番号#3622-210000-025-00により、米国政府の後援を受けてなされた。米国政府は本発明に一定の権利を有しうる。
【0003】
[共同研究契約当事者の名称]
本発明は、Donald Danforth Plant Science Centerと米国農務省農業研究局(「USDA」)によって代表される米国政府との共同研究契約の結果としてなされた。したがって米国政府は本発明に一定の権利を有しうる。
【0004】
[発明の分野]
本発明は植物遺伝子学の分野に関する。より具体的には、本発明は、遺伝子コンストラクトに関すると共に、目的のタンパク質の生産量を高めるためにそれらのコンストラクトを使って植物種子を改変する方法に関する。
【背景技術】
【0005】
[発明の背景]
種子はヒトおよび家畜にとって重要な食物タンパク質源になる。ダイズ(soybean)など、あるタイプの種子は、比較的高レベルの内在性タンパク質を集積(accumulate)する能力を持ち、それが、導入されたタンパク質の生産を目的とする遺伝子改変に関して、ダイズを良い選択肢にしている。しかし、数多くの分子ツールを利用できるにもかかわらず、種子の遺伝子改変は、多くの場合、工学的に操作されたタンパク質の不十分な集積による制約を受ける。転写、翻訳、タンパク質の集合および折りたたみ、メチル化、リン酸化、輸送、ならびにタンパク質分解を含む数多くの細胞内プロセスが、総タンパク質集積量に影響を及ぼしうる。これらのプロセスの一つ以上に介入することにより、遺伝子操作された種子において生産されるタンパク質の量を増加させることができる。
【0006】
遺伝子の導入は植物の成長および発生に対して有害な効果を引き起こす場合がある。そのような状況では、遺伝子の発現を所望の標的組織に限定する必要があるだろう。例えば、収量または他の作物栽培学的形質に影響を及ぼしうる望しくない表現型を避けるために、アミノ酸調節解除遺伝子を種子特異的に発現させる必要があるかもしれない。
【0007】
ダイズ種子は乾燥重量ベースで35%〜43%のタンパク質を含有するが、このタンパク質の大半は貯蔵タンパク質である。2つの主要なダイズ種子貯蔵タンパク質がある。グリシニン(11Sグロブリンとも呼ばれる)とβ-コングリシニン(7Sグロブリンとも呼ばれる)である。これらは、合わせると、種子の全タンパク質の70〜80%、または種子の乾燥重量の25〜35%を占める。
【0008】
グリシニンは約360kDaの分子量を持つ大きなタンパク質である。これは、G1、G2、G3、G4およびG5と呼ばれる5つの主要サブユニットのさまざまな組合せで構成される六量体である。
【0009】
β-コングリシニンは150〜240kDaの範囲にわたる分子量を持つ不均質な糖タンパク質である。これは、α、α'およびβと呼ばれる強く負に帯電したサブユニットのさまざまな組合せで構成される。
【0010】
KinneyとHerman(「Cosuppression of the α Subunits of β-conglycinin in Transgenic Soybean Seeds Induces the Formation of Endoplasmic Reticulum-Derived Protein Bodies」Plant Cell 13:1165-1178 (2001))は、β-コングリシニン5'非翻訳リーダー配列に転写されうる領域を含有するコンストラクトによる形質転換がβ-コングリシニンタンパク質のαおよびα'サブユニットの減少をもたらすと報告している。KinneyとHermanは「β-コングリシニンタンパク質の減少は、ERにおけるグリシニンおよび他の液胞タンパク質の集積量の増加によって補償されているようだった」と記しており、それに基づいて、「たぶん、他のタンパク質を、おそらくは切断可能なスペーサーを使ったグリシニン融合タンパク質として、共発現させることにより、ERによる折りたたみおよびプロセシング事象を必要とする外来タンパク質を高レベルに発現させ集積するように、ダイズを構成させることができるだろう」と推測している。KinneyとHermanは、ダイズ種子におけるβ-コングリシニン発現を減少させると同時に、ERシグナルペプチドに融合された外来タンパク質をグリシニンプロモーターの制御下で発現させることは教示していない。
【0011】
Oulmassovら(米国特許出願公開第2005/0079494号)は、グリシニンプロモーターなどのプロモーターの制御下にある突然変異型グリシニンの発現を記載している。さらに、Oulmassovらは、必須アミノ酸含有量は低いが、特定の組織で比較的高レベルに発現される配列、例えばβ-コングリシニンおよびグリシニンなどの、アンチセンスによるサプレッションを記載している。Oulmassovらは、グリシニンプロモーターの制御下で発現されるタンパク質の発現と集積に関して、β-コングリシニンの発現を低下させることの考えうる帰結を、何も教示していないし、ダイズ種子におけるβ-コングリシニン発現を抑制すると同時に、ERシグナルペプチドに融合された外来タンパク質をグリシニンプロモーターの制御下で発現させることの考えうる帰結も、何ら教示していない。
【0012】
Wu(米国特許出願公開第2007/0067871号)は、種子β-コングリシニン含有量が増加しているダイズであって、グリシニンサブユニットの少なくとも2つについてヌル表現型を与える非トランスジェニック突然変異を含むものを提供することを記載している。Wuは、β-コングリシニンまたはグリシニンの発現を低下させることも、外因性タンパク質を発現させることも教示していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
当技術分野で必要とされているのは、ダイズを使って高レベルの目的のタンパク質、例えば食品用、燃料用、飼料用のタンパク質、工業用酵素、バイオプロセシング用酵素、ワクチン、治療用タンパク質、抗体などを生産するための方法である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
[発明の概要]
種子中で増加した量の目的の異種タンパク質を生産する方法を、ここに提供する。ある実施形態では、ある種子タンパク質の生産を遺伝子的に抑制することで、種子は、正常な種子タンパク質含有量を維持するために他のタンパク質の生産量を増加させることにより、そのタンパク質組成を再調整(rebalance)することになる。異種タンパク質の発現を駆動するために、この効果を、タンパク質含有量を再調整するためにアップレギュレートされる遺伝子の「対立遺伝子模倣物(allele mimic)」の使用と組み合わせることができる。
【0015】
ある実施形態では、1つ以上の植物貯蔵タンパク質の欠乏(deficiency)と、貯蔵タンパク質プロモーターおよびERシグナル配列に作動可能に連結されたオープンリーディングフレームを持つ異種ポリヌクレオチドとを有する、トランスジェニック双子葉植物が、ここに提供される。異種ポリヌクレオチドは、5'翻訳エンハンサードメイン(TED)および/または3'TEDを、さらに含んでもよい。異種ポリヌクレオチドは、ERまたはER由来小胞の内腔における異種ポリヌクレオチドの蓄積(accretion)を誘発するためのER保留配列を、さらに含んでもよい。
【0016】
もう一つの態様では、内在性種子貯蔵タンパク質を野生型植物のそれと比較して少なくとも50%は減少させる1つ以上の種子貯蔵タンパク質の欠乏と、種子貯蔵タンパク質プロモーター、ならびにその種子貯蔵タンパク質プロモーターに作動可能に連結された、ERシグナル配列、所望のタンパク質コード配列、およびER保留シグナルを含むオープンリーディングフレームを持つ異種ポリヌクレオチドとを有する、トランスジェニック双子葉植物であって、その種子が異種タンパク質を種子の全乾燥重量の5%より高いレベルで生産する能力を持つトランスジェニック植物が提供される。異種ポリヌクレオチドは、5'翻訳エンハンサードメインおよび/または3'翻訳エンハンサードメインも持つことができる。ER保留配列は、ERまたはER由来小胞の内腔における異種タンパク質の蓄積を誘発することができる。双子葉植物は、例えばマメ科(Fabaceae family)、場合によってはマメ目(Fabales order)のメンバーであることができ、ダイズ属(soya genus)のメンバーであってもよい。双子葉植物は、ダイズ属(Glycine genus)のメンバー、例えばダイズ(soybean)であることができる。プロモーターは、例えばクニッツ(Kunitz)トリプシンインヒビター、ダイズレクチン、免疫優性ダイズアレルゲンP34もしくはGly m Bd 30k、グルコース結合タンパク質、種子成熟タンパク質、グリシニン、またはコングリシニンに由来するものであることができる。翻訳エンハンサードメインは、クニッツトリプシンインヒビター、ダイズレクチン、免疫優性ダイズアレルゲンP34もしくはGly m Bd 30k、グルコース結合タンパク質、種子成熟タンパク質、グリシニン、またはコングリシニンに由来するものであることができる。貯蔵タンパク質欠乏は、例えばクニッツトリプシンインヒビター、ダイズレクチン、免疫優性ダイズアレルゲンP34もしくはGly m Bd 30k、グルコース結合タンパク質、種子成熟タンパク質、グリシニン、またはコングリシニンの1つ以上であることができる。ある実施形態では、欠乏が、例えば種子貯蔵タンパク質をコードする核酸のRNAi、アンチセンス、またはセンスフラグメントの存在によるものであることができる。
【0017】
ここで提供される双子葉植物種子は、例えば、種子の内在性貯蔵タンパク質の75%を上回る欠乏を有することができる。異種タンパク質は、双子葉植物の種子中に、種子の全乾燥重量の約2%より高いレベル、または約4%より高いレベル、または約5%より高いレベルまで集積することができる。もう一つの実施形態では、トランスジェニック種子、またはその種子から得られるタンパク質が提供される。異種タンパク質は精製することができる。
【0018】
ある実施形態では、タンパク質コード配列が、酵素またはそのフラグメントをコードする。酵素は、セルロース分解酵素、例えばβ-グルコシダーゼ、エキソグルカナーゼ1、エキソグルカナーゼII、エンドグルカナーゼ、キシラナーゼ、ヘミセルラーゼ、リグニナーゼ、リグニン(ligin)ペルオキシダーゼ、またはマンガンペルオキシダーゼであることができる。ある実施形態では、商業的に有用な酵素組成物が提供される。
【0019】
ある実施形態では、野生型植物と比較して内在性植物貯蔵タンパク質のレベルを少なくとも50%は減少させる1つ以上の内在性植物貯蔵タンパク質の欠乏と、ERシグナル配列、所望のタンパク質コード配列、およびER保留シグナルを持つ配列をコードするオープンリーディングフレームに作動可能に連結された補償(compensating)タンパク質の遺伝子調節領域を持つ異種ポリヌクレオチドとを有する、トランスジェニック双子葉植物であって、その種子が異種タンパク質を種子の全乾燥重量の5%より高いレベルで生産する能力を持つトランスジェニック双子葉植物が、ここに提供される。
【0020】
もう一つの実施形態では、使用前に酵素を安定に貯蔵する方法であって、内在性種子タンパク質を少なくとも50%は減少させる1つ以上の植物貯蔵タンパク質の欠乏と、種子貯蔵タンパク質プロモーター、ならびにその種子貯蔵タンパク質プロモーターに作動可能に連結された、ERシグナル配列、目的の酵素、およびER保留シグナルをコードする核酸を持つオープンリーディングフレームを持つ異種ポリヌクレオチドとを有するトランスジェニック双子葉植物であって、その種子が前記酵素を種子の全乾燥重量の5%より高いレベルで生産し、かつ、その酵素をトランスジェニック双子葉植物の種子中に貯蔵する能力を持つトランスジェニック植物から得られる種子中に、前記酵素を貯蔵することによる方法が、ここに提供される。
【0021】
さらにもう一つの実施形態では、双子葉植物中で増加した量の異種タンパク質を生産する方法であって、種子貯蔵タンパク質プロモーターと、その種子貯蔵タンパク質プロモーターに作動可能に連結された、ERシグナル配列、所望のタンパク質コード配列、およびER保留シグナルを持つオープンリーディングフレームとを持つポリヌクレオチドで、植物細胞を安定に形質転換すること、安定形質転換植物細胞からホモ接合型植物系統を得ること、安定形質転換植物系統を、内在性種子貯蔵タンパク質を野生型植物のそれと比較して少なくとも50%は減少させる内在性種子貯蔵タンパク質の欠乏を有する植物に、遺伝子移入させる(introgressing)こと、遺伝子移入(introgressed)トランスジェニック植物の種子を成長させること、およびその種子が異種タンパク質を種子の全乾燥重量の5%より高いレベルで生産する能力を持つ遺伝子移入トランスジェニック植物の種子から異種タンパク質を得ることを含む方法が、ここに提供される。内在性種子貯蔵タンパク質の欠乏は、例えば種子貯蔵タンパク質をコードする核酸のRNAi、アンチセンス、またはセンスフラグメントの存在によるものであることができる。
【0022】
さらにもう一つの実施形態では、双子葉植物中で増加した量の異種タンパク質を生産する方法であって、種子貯蔵タンパク質プロモーターと、その種子貯蔵タンパク質プロモーターに作動可能に連結された、ERシグナル配列、所望のタンパク質コード配列、およびER保留シグナルを含むオープンリーディングフレームとを持ち、かつ内在性種子貯蔵タンパク質をダウンレギュレートする能力を持つRNAi配列をさらに含有するポリヌクレオチドで、植物細胞を安定に形質転換すること、ホモ接合型植物系統を得ること、およびその植物の種子を成長させて異種タンパク質を得ることによる方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】小胞体(ER)からタンパク質貯蔵液胞またはプロテインボディー(PB)に至る細胞内局在のさまざまな経路のモデルである。
【図2】グリシニンを抑制するために設計されたRNAiコンストラクトを表す概略図である。グリシニン遺伝子とfad2(脂肪酸デサチュラーゼ)遺伝子の両方に対するセグメントをRNAiコンストラクトに含めた。fad2セグメントは、このコンストラクトのオプション機能として加えられたもので、追加スクリーニングのためのマーカーになる。
【図3】種子タンパク質欠乏系統「SP-」植物から得られる細胞が、WT種子から得られる細胞中で形成されるPSV(パネルB)にサイズおよび外観が明らかに類似するタンパク質貯蔵液胞(PSV)(パネルA)を形成することを示す、電子顕微鏡像である。PSV:タンパク質貯蔵液胞;OB:油体;AV:自己貪食液胞;ER:小胞体;Nucl:核;G:ゴルジ装置。バーは1μmに相当する。
【図4】野生型(WT)品種「Jack」種子のプロテオームとSP-種子のプロテオームの間の2次元等電点電気泳動/ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミド遺伝子電気泳動(IEF/SDS-PAGE)比較の写真である。
【図5】Affymetrix DNAアレイプラットフォームアッセイを使ってWT品種「Jack」と比較したSP-の大規模トランスクリプトームアッセイの散布図である。
【図6】WT(「Jack」)ダイズ系統とSP-ダイズ系統の種子における種子タンパク質組成の変化を示す円グラフである。さまざまな種子タンパク質の組成百分率を示す。
【図7】GFP-kdelコンストラクトの詳細を示す概略図である。グリシニンプロモーター、グリシニン5'UTR(「TED」)、ERシグナル配列、GFPコード配列、kdel ER保留シグナル配列、およびグリシニン3'UTR(「TED」)を示す。転写開始部位、翻訳開始部位、および翻訳停止部位を示す。
【図8】2つのホモ接合型親系統および交配体のホモ接合型子孫のダイズ種子全体の白色光像(パネルA)および青色光像(パネルB)を示す一群の写真である。表示の種子は子葉組織を露出させるために削ってある(パネルAおよびB)。パネルCおよびDは、WTバックグラウンド(パネルC)およびGFP-kdel×βCS(パネルD)種子において、GFP-kdel(C末端KDEL ER保留タグが付加されているGFPタンパク質)から得られる貯蔵柔細胞の擬似カラーGFP像である。バーは10μmに相当する。
【図9】βCS種子(β-コングリシニン抑制;パネルA)、GFP-kdel種子(パネルB)、およびGFP-kdel×βCS種子(パネルC)から得たタンパク質溶解物の2D IEF-PAGE分離の一群の写真、ならびにGFPについてプローブしたレプリケート溶解物ゲルのイムノブロット(パネルD)である。GFP-kdelタンパク質スポット(パネルBおよびC)またはGFP対照タンパク質スポットを、表示のとおり枠で囲む。GFP-kdel形質のβCS系統への遺伝子移入(introgression)は、GFP-kdel集積の強化をもたらした。市販のモノクローナル抗体プローブを使用し、ブロット上での免疫反応性によって、GFPスポットの実体(identity)を決定した(パネルD)。
【図10】βCS、WTにおけるGFP-kdel、またはGFP-kdel×βCSに関する蛍光顕微鏡法(パネルA)、1D PAGE(パネルB)、およびβ-コングリシニン・イムノブロット(パネルC)である。
【図11】βCS、WTにおけるGFP-kdel、またはGFP-kdel×βCS種子から調製し、対照標準として市販のGFPを使用してアッセイした、種子溶解物におけるGFP-kdel存在量の蛍光分析の棒グラフである。
【図12】WT(「Jack」)、βCS、およびGFP-kdel×βCSにおけるグリシニンのプロセシングを示す、分画した種子タンパク質の1次元PAGEの写真である。得られた染色ゲルをスキャンし、合わせたプログリシニン、グリシニンA4、グリシニン酸性サブユニット、およびグリシニン塩基性サブユニットのプログリシニン画分の相対的分布を決定した。その結果から、グリシニンタンパク質集団のプログリシニン画分は、3分の1未満に減少したことがわかる。分子量マーカーおよび貯蔵タンパク質アイソフォームを示す。
【図13】SP-植物(パネルA)、WTバックグラウンドに形質転換されたGFP-kdel(パネルB)、およびGFP-kdelの遺伝子移入を受けたSP-植物(パネルC)におけるタンパク質生産の2Dゲル分析の写真である。
【図14】SP-植物、GFP-kdelで形質転換されたWT植物、およびGFP-kdel×SP-交配体の種子から調製された種子溶解物におけるGFP-kdel存在量の蛍光分析の棒グラフである。市販のGFPを対照標準として使用した。
【図15】βCS×GFP-kdel植物の成熟後期(late maturation)種子細胞の細胞質におけるプロテインボディーの存在を示す電子顕微鏡像である。パネルA:プロテインボディーは分散したマトリックスを含有し、ER膜に結合している。パネルB:プロテインボディーのER起源を証明する画像。PSV;タンパク質貯蔵液胞;OB=油体。バーは1μmに相当する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[発明の詳細な説明]
大量の目的の異種タンパク質を生産する種子を持つ遺伝子改変双子葉植物が、ここに提供される。一定の実施形態において、種子は、少なくとも1つの内在性種子貯蔵タンパク質が欠乏していて、増加した量の外来タンパク質がそこで生産されることを可能にする。異種タンパク質をコードする核酸配列は、種子タンパク質由来の調節領域に作動可能に連結させることができる。いくつかの実施形態では、この調節領域が、内在性種子タンパク質の欠乏に呼応して自然にアップレギュレートされる種子タンパク質に由来する。
【0025】
一定の実施形態では、双子葉植物における遺伝的プログラミングをうまく利用して、目的のタンパク質、例えば質的および量的に優れたタンパク質(例えば組換えタンパク質)を、生産することができる。
【0026】
一定の実施形態では、1つ以上の貯蔵タンパク質の量(例えば重量)の欠乏が起こるように、植物の遺伝的背景が改変される。1つ以上の貯蔵タンパク質プロモーターを使って標的タンパク質の転写を駆動することにより、植物の再調整機構が、とりわけ高レベルの異種タンパク質生産をもたらしうる。
【0027】
理論に束縛されることは望まないが、この実施形態では、主要種子貯蔵タンパク質の喪失を引き起こす遺伝子的欠乏に呼応して、種子は、他の種子貯蔵タンパク質の生産を増加させることによって「再調整」する。種子中のタンパク質の総量を再調整するためにアップレーギュレートされる内在性種子タンパク質の遺伝子調節要素に目的の異種遺伝子を連結することにより、種子中で高レベルの異種タンパク質を生産することができる。外来タンパク質のこの高レベルな集積ゆえに、「対立遺伝子模倣物」法は、ダイズまたは他の双子葉植物種子でタンパク質、特に商業的価値があるタンパク質を生産するのに有用である。
【0028】
さらにまた、随意に異種タンパク質をERにターゲティングすることにより、それを種子中で安定に、さらに高レベルに集積させることができる。その植物が生来、生理的にプロテインボディーを生産するかどうかに関わりなく、ER由来小胞における標的タンパク質の隔離をもたらすことができるシグナルを、異種タンパク質上に工学的に作り出すことができる。これらのER由来小胞は、他のタンパク質、例えばプロテアーゼ、グリコシダーゼなどを驚くほど含まず、分解が少ない状態または分解性が低い状態のタンパク質を、より高レベルに集積させる。本明細書では以下の略号および定義が適用される。
【0029】
用語「グリシニン」は、ダイズ種子中に存在する主要種子貯蔵タンパク質であって、11Sグロブリンとも呼ばれているものを指す。
【0030】
用語「β-コングリシニン」は、ダイズ種子中に存在する主要種子貯蔵タンパク質であって、7Sグロブリンとも呼ばれているものを指す。
【0031】
用語「GBP」はグルコース結合タンパク質を指す。
【0032】
用語「KTI」はクニッツトリプシンインヒビターを指す。
【0033】
用語「LE」はダイズレクチンを指す。
【0034】
用語「P34」は、免疫優性ダイズアレルゲンP34またはGly m Bd 3を指す。
【0035】
略号「fad2」は「脂肪酸デサチュラーゼ」遺伝子の一部をコードする配列を指す。
【0036】
本明細書で使用する用語「植物」には、植物細胞、植物プロトプラスト、植物カルス、植物凝集塊(clump)、および植物または植物の一部、例えば花粉、花、胚、種子、さや、葉、茎などに含まれるインタクトな植物細胞が含まれる。
【0037】
用語「PB」はプロテインボディーを指す。これらの単一膜小胞はタンパク質を貯蔵する能力を持ち、(後述のPSVとは異なり)小胞体に直接由来する。
【0038】
用語「PSV」はタンパク質貯蔵液胞を指す。種子において、これらの小胞は、通例、種子の成熟および乾燥の過程で液胞が仕切られることによって形成される。したがって、液胞中に通常存在するタンパク質分解酵素は、PSV中にも存在することができる。通常のダイズ種子では、集積したタンパク質の大半がこれらの細胞小器官に局在化している。
【0039】
用語「SMP」は、種子成熟タンパク質を指す。
【0040】
用語「貯蔵タンパク質」は、植物に、例えば種子に、特異的に集積するタンパク質を指す。
【0041】
略号「BBI」は、セリンプロテアーゼインヒビターである「ボウマン・バークインヒビター」を指す。
【0042】
用語「βCS」は貯蔵タンパク質β-コングリシニンだけが欠乏している植物を指す。
【0043】
用語「SP-」は、貯蔵タンパク質ノックダウン、すなわち、グリシニンとβ-コングリシニンがどちらも欠乏している植物を指す。
【0044】
用語「種子」には、一般に、本来の種子、種皮および/もしくは種子殻、またはその任意の部分が含まれる。
【0045】
「種子成熟」は、受精に始まり、代謝可能な貯蔵物、例えばデンプン、糖、オリゴ糖、フェノール類、アミノ酸、およびタンパク質が、種子中のさまざまな組織に沈着されて、種子の拡大、種子の充実をもたらし、種子の乾燥で終わる期間を指す。
【0046】
用語「WT」は野生型を指し、ある植物の天然のバックグラウンドを指すか、あるいは文脈から明らかなように、WTは、本発明の遺伝子操作を除けば天然の遺伝的背景を持つ植物を指すことができる。
【0047】
用語「ORF」はオープンリーディングフレーム、すなわちペプチドをコードする配列(例えば「標的タンパク質」)を指す。一般に、この配列は、アミノ酸配列をコードする開始コドンと終止コドンの間がイントロンによって中断されていない。
【0048】
用語「異種ポリヌクレオチド」は一般に、形質転換事象の結果として存在する場合を除き、宿主植物中に同じ形では存在しないポリヌクレオチドを指す。用語「異種DNA」「異種遺伝子」または「外来DNA」は、植物細胞中に別の源から(すなわち非植物源から、または別の植物種から)導入されたDNA、典型的にはDNAコード配列(「異種コード配列」)を指すか、通常は別のコード配列を制御している植物プロモーターの制御下に置かれた同種のコード配列を指す。
【0049】
用語「内在性」遺伝子は、ゲノムにおいてその本来の位置に通常見いだされるネイティブ遺伝子を指し、単離されていないものである。「外来」遺伝子は、宿主生物中に通常は見いだされないが、遺伝子導入によって導入された遺伝子を指す。
【0050】
用語「コード配列」または「コード領域」は特定のタンパク質をコードするDNA配列を指す。
【0051】
「キメラ遺伝子」または「発現カセット」は、本発明においては、所望の遺伝子産物をコードするDNA配列と好ましくは転写ターミネーター配列とに作動可能に連結されたプロモーター配列を指す。好ましい実施形態では、キメラ遺伝子が、プロモーターと遺伝子産物コード配列との間に遺伝子産物コード配列と同じ翻訳フレームで作動可能に連結されたシグナルペプチドコード領域も含有する。このシグナル配列は、タンパク質をERに局在化させるのに役立つ。配列は、転写調節要素、例えば上記の転写終結シグナル、および翻訳調節シグナル、例えば停止コドンなどを、さらに含有してもよい。
【0052】
「作動可能に連結された」は、一つのユニットとして、異種タンパク質を発現させる機能を果たすように連結された、発現カセットの構成要素を指す。例えば、タンパク質をコードする異種DNAに作動可能に連結されたプロモーターは、その異種DNAに対応する機能的mRNAの生産を促進する。
【0053】
「RNA転写産物」は、RNAポリメラーゼが触媒するDNA配列の転写によって得られる生成物を指す。
【0054】
用語「メッセンジャーRNA(mRNA)」は、一般に、細胞によってタンパク質に翻訳されうるRNAを指す。
【0055】
用語「センス」RNAは、一般に、mRNAを含むRNA転写産物を指す。用語「アンチセンスRNA」は、標的一次転写産物またはmRNAの全部または一部に対して相補的であり、標的遺伝子の発現を阻害することができる、RNA転写産物を指す。アンチセンスRNAの相補性は、特異的遺伝子転写産物のどの部分との相補性であってもよく、例えば5'非コード配列、3'非コード配列、イントロン、またはコード配列における相補性であることができる。用語「アンチセンス阻害」は、標的タンパク質の発現を妨げる能力を持つアンチセンスRNA転写産物の生産を指す。
【0056】
用語「RNAi」または「RNA干渉」は、一般に、RNAフラグメントを細胞中に導入することによってタンパク質の発現を阻害する方法を指す。RNAは、ゲノムに組み込まれるDNAフラグメントによってコードされることができる。RNAiは、当技術分野で知られる他の任意の手段によって準備することもできる。RNAiフラグメントは任意の適切な長さを持つことができ、一本鎖または二本鎖であることができる。
【0057】
一般に「調節配列」は、タンパク質コード領域の上流(5'側)、内部、または下流(3'側)に位置する、内在性遺伝子または異種(キメラ)遺伝子中のヌクレオチド配列である。これらの調節配列または「調節領域」は、転写および/または翻訳を調節することができる。
【0058】
「転写調節領域」または「プロモーター」は、転写の開始に影響を及ぼし、かつ/または転写の開始を促進する核酸配列を指す。プロモーターは、通例、エンハンサー要素またはインデューサー要素などの調節領域を含むとみなされる。
【0059】
用語「上流調節領域」は、一般に、タンパク質翻訳開始コドンの上流にある領域を指す。したがって「上流調節領域」は例えばプロモーターを包含するか、あるいはプロモーターと5'UTRとを包含することができる。上流調節領域は、典型的なプロモーター配列のさらに上流にある領域、例えば「エンハンサー要素」も指すことができる。
【0060】
用語「TED」は翻訳エンハンサードメインを指す。
【0061】
5'TED(または5'非翻訳領域(UTR))は、一般に、mRNAをコードする領域であって、翻訳開始部位の5'(上流)側にある領域を指す。したがってこの領域は、転写開始部位と翻訳開始部位の間にある。5'TEDは「上流調節領域」の一部であることができる。
【0062】
3'TED(または3'非翻訳領域(UTR))は、一般に、mRNA上の領域であって、タンパク質コード配列の停止コドンより下流にある領域を指す。この領域は、例えばポリアデニル化シグナルおよび/またはmRNAプロセシングもしくは遺伝子発現に影響を及ぼす能力を持つ他の任意の調節シグナルを含有することができる。
【0063】
「開始コドン」および「終止コドン」は、コード配列中の3つの隣り合うヌクレオチドの単位であって、タンパク質配列の開始および鎖終結をそれぞれ指定するものを指す。
【0064】
以下にさまざまな例、随意の技術的特徴、および一般的教示を挙げて、本発明の範囲を例証する。
【0065】
貯蔵タンパク質
多くの植物種の種子は貯蔵タンパク質を含有している。これらのタンパク質はそれらのサイズおよび溶解度に基づいて分類されている(Higgins, T.J. (1984) Ann. Rev. Plant Physiol. 35:191-221)。全ての種に全てのクラスが見いだされるわけではないが、ほとんどの植物種の種子は2クラス以上のタンパク質を含有している。特定の溶解度クラスまたはサイズクラスに含まれるタンパク質は、一般に、同じ種内の異なるクラスのメンバーよりも、同じクラスのメンバーとの構造的関連性が高い。多くの種では、所与のクラスの種子タンパク質が、しばしば、多重遺伝子族によってコードされており、その多重遺伝子族は、時には、配列ホモロジーに基づいてサブクラスに細分できるほど複雑である。
【0066】
ダイズ種子は比較的高いタンパク質含有量を有し、それは主に2つの貯蔵タンパク質、β-コングリシニンおよびグリシニンからなる。野生型種子ではβ-コングリシニンが全ダイズタンパク質の約15〜20%を占める。これらのタンパク質はどちらも遺伝子ファミリーに由来する複数のアイソフォームで構成されている。
【0067】
ここでは、中心的貯蔵タンパク質が植物のプログラムされた発生に関与することを確認した。しかし当業者は、今や、機能、構造または配列ホモロジーにより、他の標的植物における他の貯蔵タンパク質を容易に同定することができる。そのような貯蔵タンパク質が同定されたら、本明細書に記載するようなノックダウン実験によって、タンパク質再調整に関与する他の貯蔵タンパク質を同定することができる。本発明によれば、調節要素(例えばプロモーター、TEDなど)を使って、所望のタンパク質を高レベルに生産することができる。したがって、本明細書に示す多くの例は、商業または人類にとって潜在的に重要な他の植物に、今すぐにでも応用することができる。
【0068】
遺伝子的欠乏(Genetic Deficiencies)
本発明の植物は、その植物の内在性種子貯蔵タンパク質含有量のかなりの部分を減少させる欠乏(例えば遺伝子的欠乏など)を含む。例えば、さまざまな具体的実施形態において、植物の種子は、種子中の全可溶性タンパク質の量の約75%未満、70%未満、または60%未満または約50%未満または約40%未満または約25%未満または15%未満を含むことができる。
【0069】
別の具体的実施形態では、遺伝子的欠乏が、特異的種子貯蔵タンパク質の量を、WTダイズ種子中に通常存在するその内在性種子貯蔵タンパク質の量の約1%未満、約2%未満、約5%未満、約10%未満、約25%未満、約50%未満、約75%未満、または約85%未満にする。
【0070】
一例として、本発明の植物は、グリシニン、コングリシニン、KTI、LE、P34、GBP、およびSMP、または他の種子貯蔵タンパク質の1つまたは2つまたは3つまたは4つまたはそれ以上に欠乏を起こしうる。
【0071】
ある実施形態において、種子貯蔵タンパク質の欠乏を生じさせるための遺伝子操作は、コサプレッション、アンチセンス、RNAiなどの方法、または他の方法によって得ることができる。米国特許第5,190,931号には、アンチセンスコンストラクトを使って遺伝子をダウンレギュレートする例示的方法が記載されている。米国特許第5,231,020号には、センス核酸コンストラクトを使って遺伝子をダウンレギュレートする例示的方法が記載されている。二本鎖mRNAを使った遺伝子産物発現の遺伝子阻害は、米国特許第6,506,559号に開示されている。
【0072】
別の実施形態では、従来の育種法に続いて、1つ以上の種子タンパク質のレベルが低いものをスクリーニングすることにより、ある特定種子貯蔵タンパク質の欠乏、または種子貯蔵タンパク質全体としての欠乏を達成することもできる。種子貯蔵タンパク質の欠乏は、自然突然変異または誘発突然変異と、それに続いて行われる、1つ以上の種子貯蔵タンパク質のレベルが低い植物を同定するためのスクリーニング方法とによって、達成することもできる。もう一つの実施形態では、種子貯蔵タンパク質の欠乏を有する植物を、例えば一般利用が可能な種子バンクまたは種子リポジトリから入手することができる。
【0073】
種子中のあるタンパク質の遺伝子的欠乏は他の種子タンパク質による補償(再調整)につながる
本明細書で述べるように、ある種子タンパク質のサプレッションは、他の種子タンパク質の生産量の増加による補償(これを「補償(compensation)」または「再調整(rebalancing)」と名付ける)につながりうる。この再調整を、ここでは、グリシニンとβ-コングリシニンの両方が欠乏している植物系統(「SP-」実施例1)、およびβ-コングリシニンだけが欠乏している植物(実施例11)を使って証明する。
【0074】
配列媒介的(sequence mediated)遺伝子サイレンシングによる種子タンパク質β-コングリシニンのサプレッションは、グリシニンの存在量が増加することによって補償された(実施例11)。β-コングリシニンα/α'サプレッションは、RNAi技術でも、やはり実施例11で述べるように達成された。この方法ではa/a'β-コングリシニンの完全なサイレンシングがもたらされた。増加したグリシニン生産量の一部はその前駆体プログリシニンの形で保持され、PB中に隔離された。PSVではなくプロテインボディーにおけるタンパク質の集積は、次に挙げる2つの重要な点を示している:1)ダイズ種子では、ER由来PBを誘導することができ、そのER由来PBはタンパク質を集積できること、および2)内在性貯蔵タンパク質のサプレッションは、質量損失を補償するために別の貯蔵タンパク質の集積量の増加をもたらすこと。この現象により、ダイズ種子の総タンパク質含有量は-40%迄に維持され、これを「再調整」と名付ける。
【0075】
β-コングリシニンとグリシニンの両方が欠乏している植物系統(「SP-」)を、実施例1で述べるように作出した。β-コングリシニンとグリシニンの両方が遺伝子的に欠乏しているこれらの種子では、タンパク質損失が他のタンパク質の生産によって補償された。タンパク質生産量の変化を図4に見ることができる。図4は、SP-系統と比較したWT(「Jack」)の種子タンパク質抽出物のIEF-PAGEである。図5は、これら2つの系統の間のトランスクリプトームの相違を示している。図6は、WT(「Jack」)とSP-系統のダイズ種子中に存在するいくつかの主要貯蔵タンパク質のパーセンテージを示す円グラフである。SP-系統における種子タンパク質β-コングリシニンおよびグリシニンの除去は、明らかに他のタンパク質による補償をもたらす。
【0076】
再調整現象は種子中で大量の外来タンパク質を生産するために使用することができる
再調整プロセスに外来タンパク質を関与させ、その外来タンパク質を安定なPB集団に集積させることによってタンパク質生産プラットフォームの土台として活用することができる、固有のバイオロジーを有する種子が、ここに提供される。全体として、これは、タンパク質生産プラットフォームとしての双子葉植物種子を開発する基礎になる。
【0077】
したがって、いくつかの実施形態では、1つ(またはそれ以上)の種子貯蔵タンパク質を上述のように減少させ、所望の異種タンパク質をその種子中で生産させる。ある実施形態では、任意の適切なプロモーターを、異種タンパク質をコードする配列に作動可能に連結する。もう一つの実施形態では、異種タンパク質をコードする配列が、種子特異的プロモーターである。プロモーターは、例えばグリシニン、コングリシニン、KTI、LE、P34、GBP、またはSMPのプロモーターから選択することができる。
【0078】
ある好ましい実施形態では、ダイズ種子における上述の遺伝子的欠乏に呼応してアップレギュレートされるタンパク質をコードする遺伝子のプロモーターに、異種タンパク質の遺伝子配列を作動可能に連結した場合に、その異種タンパク質の発現量の増加が起こり得る。種子から除去される具体的タンパク質のそれぞれについて、別のタンパク質(またはタンパク質群)が、その代わりに生産されうる。この「補償」タンパク質の遺伝子調節領域(例えばプロモーター、ターミネーター、および随意に他の領域)を使って目的の異種遺伝子の発現を駆動することにより、その種子において、さらに高レベルのタンパク質生産を得ることができる。
【0079】
したがって、ある実施形態では、抑制される種子タンパク質がβ-コングリシニンであり、異種タンパク質の発現がグリシニンの調節領域の少なくとも一部によって制御される。ある実施形態では、この調節領域が異種配列の上流にある。もう一つの実施形態では、調節領域が異種配列の下流、すなわち3'側にある。ある実施形態では、調節領域がグリシニンプロモーターを含む。ある実施形態では、調節領域がグリシニン上流調節領域であり、これは、例えばプロモーターおよび/または5'UTRを含むことができる。もう一つの実施形態では、グリシニン調節領域がグリシニン3'調節領域も含む。
【0080】
もう一つの実施形態では、抑制される種子タンパク質がβ-コングリシニンとグリシニンの両方であり、異種タンパク質が、KTI、LE、P34、GBP、またはSMPの一つから得られる調節領域(5'、3'、または両方)の少なくとも一部によって制御される。
【0081】
グリシニン要素の調節制御下にあってER移行(transit)シグナル配列および保留シグナル配列(KDEL)が隣接しているレポータータンパク質GFPを使って導入遺伝子を構築することにより、タンパク質再調整およびPBにおけるタンパク質隔離という概念的枠組みを検証した(実施例9)。GFP-kdelコンストラクトをグリシニン遺伝子要素下に置くことにより、GFP-kdel転写産物の発現はグリシニン遺伝子発現およびグリシニン遺伝子調節のそれを模倣することになり、その結果、グリシニン遺伝子のアップレギュレーションを伴う栄養素配分(nutrient allocation)に参加することになるだろう。この導入遺伝子を発現させるダイズは種子中に1.6%のGFP-kdelを集積した。しかしGFP-kdel植物を遺伝子的にβCS植物と交配すると、その種子ではGFP-kdel発現のレベルが約7%へとほぼ4倍強化された(実施例12)。このように、βCS種子におけるGFP-kdel集積の強化は、タンパク質再調整に参加する遺伝子の対立遺伝子を模倣することで目的の異種タンパク質の集積量の大きな増加が起こり得ることを証明している。
【0082】
したがって実施形態では、大量の目的のタンパク質を種子中で生産させることができる。例えば、種子中の全可溶性タンパク質の約1%、2%、5%、7%、10%、12%、15%、18%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、70%、またはそれ以上の異種タンパク質を発現させることができる。
【0083】
さらに、ある実施形態では、種子の全乾燥重量の約0.5%、1%、2%、4%、5%、7%、10%、12%、15%、18%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%またはそれ以上の乾燥重量の異種タンパク質を発現させることができる。異種タンパク質は、例えば種子あたり約50、100、150、200、250mgまたはそれ以上のタンパク質量で、生産させることができる。
【0084】
ある実施形態では、生産される異種タンパク質の量を、植物個体あたりベースで測定することができる。例えば1植物個体あたり3g、6g、8g、10g、15gもしくは20gまたはそれ以上の異種タンパク質量で、異種タンパク質を生産させることができる。
【0085】
例えば1シーズンあたり1エーカーあたり約25、50、100、200、300、400、500、600、700、850、1,000、1,500、2,000ポンドまたはそれ以上の量で、異種タンパク質を生産させることができる。実際の収量は、1エーカーあたりの植物個体数、植物品種、土壌品質、耕作手法、植物ストレスなどといった多くのパラメータに依存し、生産される異種タンパク質の純度のレベルにも依存しうる。
【0086】
プロモーター
ある実施形態では、ここに提供される異種ポリヌクレオチドが、植物貯蔵タンパク質遺伝子から得られるプロモーターまたは植物貯蔵タンパク質遺伝子に由来するプロモーターを含む。さまざまな実施形態において、プロモーターは、本発明のコンストラクトによって形質転換させる植物と同じ目、科、属または種の植物に由来する。
【0087】
任意の適切なプロモーターを使用することができる。ある実施形態では、プロモーターが種子特異的プロモーターである。もう一つの実施形態では、プロモーターが初期(early)種子特異的プロモーターである。さらにもう一つの実施形態では、プロモーターが後期(late)種子特異的プロモーターである。もう一つの実施形態では、プロモーターが、種子タンパク質の遺伝子的欠乏を補償する遺伝子に由来する。
【0088】
プロモーター配列は、開始コドンで、または開始コドンの近くで終わることができ、上流(5'側)の隣接配列を含むことができる。プロモーター配列は少なくとも約500ヌクレオチドまたは少なくとも約1000ヌクレオチドまたは少なくとも約1500ヌクレオチドであることができる。厳密な長さは本発明にとって決定的な問題ではなく、当業者は容易に(例えば転写レベルを測定し比較することなどによって)プロモーターの長さを決定し、最適化することができる。
【0089】
ある実施形態では、上流調節配列またはプロモーター配列が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、または配列番号8の一つの少なくとも一部に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、99.5%、またはそれ以上の核酸同一性を持つことができる。
【0090】
ある具体的実施形態では、プロモーターと後述の5'UTRを含む上流調節領域が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7から選択される。配列番号1および配列番号2がグリシニンに由来するのに対し、配列番号3〜8はそれぞれコングリシニン、KTI、LE、P34、GBP、およびSMP上流調節領域を表す。
【0091】
UTR翻訳エンハンサードメイン
本発明の異種ポリヌクレオチドは植物貯蔵タンパク質由来の翻訳エンハンサードメイン(TED)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、これが、mRNA転写産物の非翻訳領域である。そのような非翻訳領域は、遺伝子の5'(上流)または3'(下流)領域に存在することができる。TEDまたはUTRの配列は別の生物に由来してもよく、完全に合成された配列であることもできる。
【0092】
5'UTR(または「5'TED」):本発明のコンストラクトは、グリシニン、コングリシニン、KTI、LE、P34、GBP、またはSMPなどの植物貯蔵タンパク質をコードするmRNAの5'領域に由来する5'TEDを含むことができる。5'TEDは、一般に、植物貯蔵タンパク質のプロモーターと開始コドンの間に同定することができる。5'TEDは、少なくとも約5、10、25、30、35、40ヌクレオチドもしくはそれ以上、または少なくとも約50ヌクレオチド、または少なくとも約100ヌクレオチド、または少なくとも約150ヌクレオチドであることができる。厳密な長さは本発明にとって決定的な問題ではないが、当業者は容易に(例えば翻訳レベルを測定し比較することなどによって)ターミネーターの長さを決定し、最適化することができる。具体的実施形態では、配列番号1(グリシニン)、配列番号2(もう一つのグリシニン配列)、配列番号3(コングリシニン)、配列番号4(KTI)、配列番号5(LE)、配列番号6(P34)、配列番号7(GBP)、および配列番号8(SMP)に示す上流調節配列の3'末端の一部が、それぞれ、5'UTR配列を含む。
【0093】
3'UTR(または「3'TED」または「ターミネーター」):TEDは、例えば、グリシニン、コングリシニン、KTI、LE、P34、GBP、またはSMPなどの植物貯蔵タンパク質をコードするmRNAの3'領域に由来することができる。そのような3'TEDは停止コドンで始まるか、停止コドンの近くで始まり、下流(3'側)の隣接ヌクレオチドを含むことができる。3'TEDは、少なくとも約10、25、40、50、75、100、150ヌクレオチドまたは少なくとも約250ヌクレオチドまたは少なくとも約500ヌクレオチドであることができる。厳密な長さは本発明にとって決定的な問題ではないが、当業者は容易に(例えば翻訳レベルを測定し比較することなどによって)ターミネーターの長さを決定し、最適化することができる。
【0094】
ある実施形態では、ターミネーター配列が配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、および配列番号21から選択される。これらの配列は、それぞれ、グリシニン、もう一つのグリシニンターミネーター配列、β-コングリシニン、もう一つのβ-コングリシニンターミネーター配列、KTI、LE、P34、GBP、およびSMPの3'TED配列を表す。
【0095】
ある実施形態では、ターミネーター配列が、配列番号13〜21の一つに対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、99.5%、またはそれ以上の核酸同一性を持つことができる。
【0096】
さらなる実施形態では、キメラコンストラクトが目的の遺伝子の上流遠くまたは下流遠くにあるエンハンサー配列などの遺伝子調節配列も含むことができる。例えば転写「エンハンサー」領域は、目的の遺伝子の上流遠くまたは下流遠くに存在することができる。例えばエンハンサー領域は、ある配列の5'(上流)端まで1,000〜2,000ヌクレオチドの位置、まあたは1kb以上の位置に存在することができ、あるいはある遺伝子の転写領域の下流1,000〜2,000ヌクレオチドの位置、または1kb以上の位置に存在することができる。したがって、いくつかの実施形態では、グリシニン、コングリシニン、KTI、LE、P34、GBP、およびSMPなどの植物貯蔵タンパク質の、より遠くにあるこれらのエンハンサー配列も、キメラ配列中に存在する。一定の実施形態では、これらのエンハンサー配列の存在が、種子中で生産される異種タンパク質の量を増加させる。
【0097】
小胞体
植物の小胞体(ER)は、真核生物において高度に保存された系の一つである細胞内膜系の一部である。ERで生産されたタンパク質は、他の細胞小器官に輸送されたり、ERそのものに会合したままであったりもするので、ERへのタンパク質のターゲティングは非常に興味深い。ER由来のコンパートメントは、タンパク質、油、および病原体の攻撃に呼応して使用される加水分解酵素の貯蔵などといった、多様な機能を持つ。ERへの貯蔵タンパク質輸送の機構に関する知識の増加が、タンパク質生物工場としての植物の使用における改良につながっている。植物は他の細胞内膜コンパートメントだけでなくER内にも外因性タンパク質を貯蔵することができる。
【0098】
ER由来小胞−プロテインボディー対タンパク質貯蔵液胞
図1に、ダイズ種子におけるプロテインボディーまたはタンパク質貯蔵液胞へのタンパク質の局在化につながる異なる細胞内タンパク質輸送経路の概略図を示す。ダイズを除く多くの植物種では、ER由来PBが、非グルコシル化タンパク質の安定な集積を可能にする。なぜなら、ERからゴルジに移行し、さらにプレ液胞(prevacuole)に至るという典型的な細胞内膜経路を、それらのタンパク質は辿らないからである。
【0099】
しかし、WTダイズ植物ではそうではなく、大半の種子タンパク質がタンパク質貯蔵液胞(PSV)に集積する。しかし、ダイズ種子のタンパク質貯蔵液胞(PSV)にターゲティングされるタンパク質またはプレ液胞にターゲティングされるタンパク質(これは次にPSVにターゲティングされる)は、おそらく迅速に分解されるだろう。というのも、液胞は通例、多くの分解酵素を含有しているからである。
【0100】
これに対し、トランスジェニック・ダイズ種子に関して本明細書に開示するように、C末端ERターゲティング配列(KDEL)を使って得られるタンパク質のER滞留時間は、デノボ(de novo)生成PBへの大量の外来タンパク質の輸送を誘発する。したがってタンパク質をダイズ種子中のER由来PBに隔離することができる。その結果生じたプロテインボディーは細胞小器官の安定な集団であり、種子成熟の間も存続して、乾燥成熟種子中に残る。これを、ここでは、実施例9に示すように、27kDaのレポータータンパク質緑色蛍光タンパク質(GFP-kdel)を使って証明する。
【0101】
本発明の随意の実施形態では、ERまたはER由来小胞の内腔における異種ポリペプチドの蓄積を誘発するために、異種配列がさらにER保留配列を含む。そのようなERまたはER由来小胞には、ER、PB、PSV、輸送小胞などが含まれる。そのような小胞は、構造的には膜(例えば脂質二重膜)、内腔を含むことを確認することができ、標的タンパク質は少なくとも部分的にはその内腔内に存在する可溶性または不溶性構成要素である。理論に拘泥するわけではないが、目的のタンパク質のERまたはER由来小胞局在化は、本発明に従って植物中で生産される異種タンパク質のレベルが高いことの一因である。ある実施形態では、異種ポリペプチドがゴルジ装置またはゴルジ小胞中に集積する。
【0102】
ERシグナル配列
いくつかの実施形態では、異種ポリヌクレオチドがERシグナル配列を含む。ERシグナル配列は、小胞体上のシグナル認識粒子によるタンパク質の認識を可能にしてER内腔内へのタンパク質の移行(translocation)をもたらすアミノ酸配列をコードする任意のポリヌクレオチド配列である。この配列は、通例、タンパク質のN末端領域に存在する。
【0103】
いくつかの実施形態では、生来的にはERターゲティング配列を持たないタンパク質に、ERシグナル配列を付加することができる。ただし異種タンパク質がERシグナル配列を既に持っていてもよい。所望であれば、このシグナル配列を、下記表1に示すような別のERシグナル配列と置き換えることができる。あるいは、そのタンパク質の元来のシグナル配列を使用することもできる。完全に合成されたシグナル配列も使用することができる。新たに合成されたタンパク質を小胞体に向かわせるシグナル配列の例には、オオムギ・レクチン(Dombrowskiら, 1993, Plant Cell 5:587-596)、オオムギ・アリューレイン(aleurain)(Holwerdaら, 1992, Plant Cell 4:307-318)、サツマイモ・スポラミン(Matsuokaら, 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:834-838)、パタチン(Sonnewaldら, 1991, Plant J. 1:95-106)、ダイズ・栄養貯蔵タンパク質(Masonら, 1988, Plant Mol. Biol. 11:845-856)、およびβ-フルクトシダーゼ(Fayeら, 1989, Plant Physiol. 89:845-851)に由来する配列が含まれる。
【0104】
当業者は有用なERシグナル配列を容易に決定することができるが、他の例を表1に示す。
表1
【表1】

【0105】
ERシグナル配列の他の例は、Emanuelssonら(J. Mol. Biol. 300, 1005-1016 (2000))に記載されている。
【0106】
ER保留配列
異種ポリヌクレオチドはさらにER保留配列を含んでもよい。そのような配列を、ERシグナル配列も含有する異種ポリヌクレオチドに付加すると、タンパク質産物はER由来小胞に保持されて、その産物は、タンパク質分解などの一定のプロセシング作用から隔離されることになることを発見した。驚いたことに、本コンストラクトは、宿主植物がプロテインボディーを生来的に生産するかどうかに関わりなく、異種ポリヌクレオチドタンパク質産物を「プロテインボディー」と呼ばれるER由来小胞にターゲティングする。したがって、異種ペプチド産物を安定化し、それを高レベルに集積させることが、ここに可能になった。
【0107】
ER保留配列は、小胞体における所与のタンパク質の保留または小胞体と会合した所与のタンパク質の保留をもたらすことが知られているアミノ酸配列をコードする任意のポリヌクレオチド配列、例えばアミノ酸(1文字アミノ酸表記で表したもの)KDEL(配列番号23)、KHDEL(配列番号25)、HDEL(配列番号26)、KEEL(配列番号27)、SEKDEL(配列番号28)、およびSEHDEL(配列番号29)をコードする配列などである。KDELまたはKHDELをコードする例示的核酸を、それぞれ配列番号22および24に示す。通例、これらの配列は小胞タンパク質のC末端にあり、一般にORFの3'側である。
【0108】
あるいは、随意のER保留配列は液胞タンパク質のC末端領域に由来する(この場合、そのような配列は液胞タンパク質を植物液胞に送達する役割を果たす)。そのような液胞配列の限定でない例は、引用により本明細書に組み込まれる米国特許第6,054,637号に記載されている。当業者は機能アッセイを使って他の配列も容易に同定することができる。
【0109】
発現させようとする異種ポリヌクレオチドのオープンリーディングフレーム
本発明の異種ポリヌクレオチドは、オープンリーディングフレーム(ORF)を含む。種子中で発現させようとする目的のタンパク質をコードするORFは、任意のORFであることができる。通例、本発明のORFは、種子貯蔵タンパク質、脂肪酸経路酵素、トコフェロール生合成酵素、セルロース分解酵素、ワクチン、治療用ペプチド、化粧品に使用されるタンパク質もしくはペプチド、アミノ酸生合成酵素、またはデンプン分枝酵素の一部または全部をコードすることができる。通例、ORFは、例えば目的の標的タンパク質をコードする核酸を、N末端領域の隣接ERシグナル配列およびカルボキシ末端配列のER保留シグナル配列と共に含む。
【0110】
好ましいコドン使用頻度パターンが得られるように、ORFには、植物コドン最適化を行ってもよい。植物において最適なコドン使用頻度を得るためのORFの改変は、米国特許第5,689,052号に記載されている。
【0111】
発現させようとするタンパク質の選択
キメラコンストラクトにコードされる目的のタンパク質は、所望する任意のタンパク質であることができる。タンパク質は完全長タンパク質であるか、完全長タンパク質のフラグメントであることができる。配列は、例えば植物源、動物源、真菌源、ウイルス源、細菌源に由来するか、完全にまたは部分的に合成された配列であることができる。
【0112】
所望する任意のタンパク質を、その起源種またはその正常な細胞内位置に関わりなく、本明細書に記載する系を使って工学的に操作することができる。本明細書に記載する系で生産することができるタンパク質の例示的タイプには、例えばキナーゼ、構造タンパク質、プロテアーゼ、酵素、アミラーゼ、セルロース分解酵素、インヒビター、栄養価の高いタンパク質、医薬タンパク質、化粧品に使用されるタンパク質またはタンパク質フラグメント、バイオプロセシングに役立つタンパク質、商業的に有用なタンパク質、抗体またはそのフラグメント、膜タンパク質、核タンパク質、輸送タンパク質、シグナリングタンパク質、貯蔵タンパク質、受容体タンパク質、ホルモン前駆体、ホルモン、ペプチド、および完全に合成されたタンパク質、ポリペプチド、またはペプチド配列などがあるが、これらに限るわけではない。
【0113】
グリシニン、KTI、P34、SBP、SMPまたはLEに由来する5'および3'調節要素を含有する本明細書記載のダイズ種子特異的遺伝子発現カセットには、工業用酵素、治療用酵素、治療用タンパク質、ワクチンおよび抗体など(ただしこれらに限るわけではない)の目的のタンパク質をコードする合成遺伝子を挿入することができる。
【0114】
ある実施形態では、タンパク質補償機構を利用してタンパク質発現の強化を達成するために、グリシニン調節要素を使って、βCSバックグラウンドにおけるタンパク質の発現を駆動することができる。ある実施形態では、KTI、P34、SBP、SMP、またはLEの調節要素を使って、SP-バックグラウンドにおけるタンパク質の発現を駆動することができる。本明細書に記載するコンストラクトは、コングリシニンおよび/またはグリシニンのサプレッションに起因してタンパク質の合成および集積を強化するタンパク質再調整プロセスに、タンパク質を参加させることができる。
【0115】
いくつかの実施形態では、ORFが、遺伝子の5'側に融合されたアラビドプシス(Arabidopsis)塩基性キチナーゼ遺伝子由来のERターゲティングシグナル配列をコードするヌクレオチド配列と、遺伝子の3'側に融合されたカルボキシ末端KDEL ER保留配列をコードするヌクレオチド配列とを持つ。発現させようとするタンパク質には、それぞれに固有のERシグナル配列を有するものもあるが、その場合、それらの配列は、所望であれば、本明細書に開示するERシグナル配列で置き換えてもよい。
【0116】
プラスミドは、形質転換体を選択するために、ジャガイモ・ユビキチン3遺伝子に由来する強力な構成的プロモーターの下にハイグロマイシン耐性マーカーも含有することができる。目的の遺伝子を含有するホモ接合型系統の形質転換および作出は、本明細書に記載するように行うことができる。トランスジェニック植物をSP-、βCS、または他の種子貯蔵タンパク質欠乏系統のいずれかに遺伝子移入させることができる。
【0117】
ある実施形態では、発現させようとするタンパク質が、バイオ燃料産業で有用なセルロース分解酵素である。バイオ燃料産業は急速に成熟しつつある。しかし、さまざまなバイオ燃料生産プロセスに必要な酵素の多くを得るためのコストは、法外に高くなりうる。これに代えて、ダイズまたは他の双子葉植物収穫物から酵素を得れば、バイオ燃料生産に付随するコストを低下させることができるし、そのような酵素を得る伝統的な方法より環境にも優しいだろう。
【0118】
一例として、本明細書に記載するトランスジェニック・ダイズ植物を使って、セルロース系エタノール生産に関与する数多くのタンパク質を生産するための「生物工場」を作り出すことができる。したがって、ある実施形態では、発現させようとするタンパク質が、セルロース系酵素(cellulosic enzyme)である。これらの酵素の例には、β-グルコシダーゼ、エキソグルカナーゼ1、エキソグルカナーゼII、エンドグルカナーゼ、キシラナーゼ、ヘミセルラーゼ、およびリグニナーゼ(例えばリグニン(ligin)ペルオキシダーゼまたはマンガンペルオキシダーゼ)などがあるが、これらに限るわけではない。発現させようとするタンパク質は、バイオ燃料産業において有用な他の任意の酵素であることもできる。
【0119】
ある実施形態では、発現させようとするタンパク質がβ-グルコシダーゼである。任意の種に由来するβ-グルコシダーゼの核酸配列またはアミノ酸配列を使用することができる。例示的β-グルコシダーゼはタンパク質ファミリーEC 3.2.1.21に属する。この酵素の配列は、任意の適切な種から、例えばアスペルギルス(Aspergillus)属から、例えばアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)などから得ることができる。例示的β-グルコシダーゼの核酸配列およびアミノ酸配列を配列番号35〜42に示す。
【0120】
ある実施形態では、発現させようとするタンパク質が、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)に由来するβ-グルコシダーゼ、例えば配列番号36に示すもの、またはアスペルギルス・カワチ由来のβ-グルコシダーゼの改変型、例えば配列番号37、38、および39に示すものである。もう一つの実施形態では、発現させようとするタンパク質がアスペルギルス・ニガー由来のβ-グルコシダーゼ(配列番号40)である。さらにもう一つの実施形態では、発現させようとするタンパク質がアスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)由来のβ-グルコシダーゼ(例えばXM_00121222;配列番号42)である。
【0121】
ある実施形態では、発現させようとするタンパク質が、エキソセロビオヒドロラーゼI、CBHI、または1,4-β-セロビオヒドロラーゼとも呼ばれるエキソグルカナーゼ1、例えばタンパク質ファミリーEC 3.2.1.91に含まれるものである。この酵素の配列は、任意の適切な源から、例えばトリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)(ヒポクレア・ジェコリナ(Hypocrea jecorina))などから得ることができる。例示的エキソグルカナーゼIアミノ酸配列を配列番号43および44に示す。
【0122】
ある実施形態では、発現させようとするタンパク質が、エキソセロビオヒドロラーゼII、CBHII、CBH2、および1,4-β-セロビオヒドロラーゼとも呼ばれるエキソグルカナーゼII、例えば上記タンパク質ファミリー(EC 3.2.1.91)に含まれるものである。この酵素の配列は、任意の適切な源から、例えばトリコデルマ・リーセイ(ヒポクレア・ジェコリナ)などから得ることができる。例示的エキソグルカナーゼIIアミノ酸配列を配列番号45および46に示す。
【0123】
ある実施形態では、発現させようとするタンパク質がエンドグルカナーゼである。エンドグルカナーゼは一般にタンパク質ファミリーEC 3.2.1.4に属し、エンド-1,4-β-グルカナーゼE1、セルラーゼE1、およびエンドセルラーゼE1とも呼ばれている。この酵素の配列は、任意の適切な源から、例えばアシドサーマス・セルロリティカス(Acidothermus cellulolyticus)などから得ることができる。例示的エンドグルカナーゼアミノ酸配列を配列番号47に示す。
【0124】
ある実施形態では、発現させようとするタンパク質がキシラナーゼである。一定のキシラナーゼ、例えば酵素群EC 3.2.1.8に属するもの(1,4-β-D-キシランキシラノヒドロラーゼ)は、キシラン中の(1,4)-β-D-キシロシド結合のエンド加水分解を触媒することができる。1,3-β-キシラナーゼ(EC 3.2.1.32)など、いくつかのキシラナーゼは1,3-β-D-グリコシド結合の分解を触媒する。アスペルギルス・ニガー由来の例示的キシラナーゼ核酸配列を配列番号48に示す。アスペルギルス・ニガー由来の例示的キシラナーゼタンパク質配列を配列番号49に示す。
【0125】
ある実施形態では、発現させようとするタンパク質がヘミセルラーゼである。この酵素の配列は任意の適切な源から得ることができる。
【0126】
ある実施形態では、発現させようとするタンパク質がリグニナーゼである。これらの酵素は、植物細胞壁由来のリグニンの分解を触媒する。この酵素の配列は、任意の適切な源から、例えばファネロキーテ・クリソスポリウム(Phanerochaete chrysosporium)などのリグニン分解性担子菌から得ることができる。ファネロキーテ・クリソスポリウム由来の例示的リグニナーゼアミノ酸配列を配列番号50に示す。
【0127】
ある実施形態では、発現させようとするタンパク質が、マンガンペルオキシダーゼ(EC 1.11.1.13)酵素などのリグナーゼ酵素である。この酵素のタンパク質配列は任意の源から、例えばカワラタケ(Trametes versicolor)などから得ることができる。例示的マンガンペルオキシダーゼアミノ酸配列を配列番号51に示す。
【0128】
もう一つのタイプのリグニン分解酵素はリグニンペルオキシダーゼ(例えば酵素群EC 1.11.1.14)であり、これは、いくつかのリグニン化合物におけるC-C結合およびエーテル(C-O-C)結合の酸化的切断を触媒することができるヘムタンパク質である。この酵素は次の反応を触媒することができる:1,2-ビス(3,4-ジメトキシフェニル)プロパン-1,3-ジオール+H2O2=3,4-ジメトキシベンズアルデヒド+1-(3,4-ジメトキシフェニル)エタン-1,2-ジオール+H2O。微生物ファネロキーテ・クリソスポリウム由来の例示的リグニンペルオキシダーゼアミノ酸配列(アクセッション番号P49012)を配列番号52に示す。
【0129】
ある実施形態では、発現させようとするタンパク質が、上記の配列の一つに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、99.5%の同一性を持つことができる。あるいは、発現させようとするタンパク質は、他の任意の適切な目的のタンパク質であることもできる。
【0130】
植物の安定形質転換の方法
植物細胞中に安定に導入されうる組換え核酸コンストラクト、通例、DNAコンストラクトに、核酸を組み込むことができる。
【0131】
本発明の実施には、ベクターおよび宿主細胞を調製し使用するための従来の組成物および方法が、例えばSambrookら編(1989)「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」第2版、第1〜3巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press:ニューヨーク州コールドスプリングハーバーや、Ausubelら編(1992)「Current Protocols in Molecular Biology」Greene Publishing and Wiley-Interscience、ニューヨークで述べられているように使用される。
【0132】
植物細胞の安定形質転換やトランスジェニック植物の樹立に適したベクターは、例えばPouwelsら(1985、追補1987)「Cloning Vectors: A Laboratory Manual」;Weissbachら(1989)「Methods for Plant Molecular Biology」Academic Press、ニューヨーク;およびGelvinら(1990)「Plant Molecular Biology Manual」Kluwer Academic Publishersに、いくつか記載されている。通例、植物発現ベクターは、例えば、5'および3'調節配列の転写制御下にある1つ以上のクローニングされた植物遺伝子と、優性選択可能マーカーとを含む。そのような植物発現ベクターは、プロモーター調節領域(例えば誘導性発現もしくは構成的発現、環境による調節もしくは発生段階による調節を受ける発現、または細胞特異的もしくは組織特異的発現を制御する調節領域)、転写開始部位、リボソーム結合部位、RNAプロセシングシグナル、転写終結部位、および/またはポリアデニル化シグナルも含有することができる。
【0133】
植物ゲノムへの目的のコンストラクトの安定形質転換の方法はいくつかある。例示的方法には、例えばマイクロプロジェクタイルボンバードメント(microprojectile bombardment)、エレクトロポレーション、アグロバクテリウムによる形質転換、およびプロトプラストによる直接的なDNA取り込みなどがあるが、これらに限るわけではない。
【0134】
エレクトロポレーションに基づく形質転換法では、細胞の懸濁培養物、胚形成カルス、または未熟胚などの組織もしくは他の(pther)植物組織の直接形質転換を利用することができる。植物のエレクトロポレーション形質転換にはプロトプラストも使用することができる(Lazzeriら, 1985,「A procedure for plant regeneration from immature cotyledon tissue of soybean」Plant Mol. Biol. Rep., 3:160-167)。
【0135】
パーティクルボンバードメント(particle bombardment)による形質転換
形質転換DNAセグメントを植物細胞に送達するための特に効率の良い方法は、マイクロプロジェクタイルボンバードメントと呼ばれる。この方法は多くの植物種の形質転換に使用されて成功を収めてきた。この方法では、粒子が核酸で被覆され、推進力によって細胞中に送達される。例示的粒子として、タングステン、白金、または金でできた粒子が挙げられる。ボンバードメントのために、懸濁状態の細胞をフィルター上または固形培養培地上で濃縮する。あるいは、未熟胚または他の標的細胞を固形培養培地上に配置してもよい。
【0136】
形質転換プロセスには数多くのパーティクルボンバードメントシステムを使用することができる。典型的なパーティクルボンバードメントの設定では、金粒子またはタングステン粒子を目的のDNAコンストラクトで被覆し、プラットフォーム上に置き、そこで、強い力(通例、ガス)を使って、DNA被覆粒子を受容するように置かれた待機中の細胞中へと粒子を加速する。例示的システムの一つは、Biolistics Particle Delivery System(Bio-Rad Laboratories、カリフォルニア州ハーキュリーズ)である。
【0137】
パーティクルボンバードメントによる形質転換の成功は、一般に、標的細胞が活発に分裂していて、マイクロプロジェクタイルが接近でき、インビトロ培養が可能であり、全能性である(すなわち再生して成熟稔性植物を作り出す能力を持つ)ことを要求する。適切なパーティクルボンバードメント法は、例えば米国特許第5,100,792号、米国特許第5,179,022号、および米国特許第5,204,253号に記載されている。さらに米国特許第5,015,580号には、ダイズ種子から得られる胚軸を衝撃することによる、粒子を介したダイズ植物の形質転換方法が記載されている。
【0138】
マイクロプロジェクタイルボンバードメントの標的組織として、例えば単一細胞、細胞の集合体、未熟胚、未熟胚から生じる若い胚形成カルス、小胞子、小胞子由来の胚、および頂端分裂組織を挙げることができるが、これらに限るわけではない。
【0139】
ある実施形態では、形質転換操作が、例えばSchmidtら (2008), In Vitro Cellular & Developmental Biology Plant, 44:162-168に記載されているように、パーティクルボンバードメントと体細胞胚形成との組合せを含む。体細胞胚形成は、Bailey, 1993, In Vitro Cellular and Developmental Biology Plant 29(3):102-108に記載されている。さらなる方法は、Parrottら, 2004「Transgenic soybean」, J.E. SpechtおよびH.R. Boerma編「Soybeans: Improvement, Production, and Uses」第3版, Agronomy Monograph No.16. ASA-CSA-SSSA, ウィスコンシン州マディソン, p.265-302に記載されている。
【0140】
目的の導入遺伝子を含有する安定形質転換植物の作出には、アグロバクテリウムによる安定形質転換も使用することができる。アグロバクテリウムによる植物組込みベクターを使った植物細胞へのDNAの導入は当技術分野ではよく知られている(Fraleyら, 1985;米国特許第5,563,055号)。アグロバクテリウムに基づく系を使ったダイズ形質転換の方法は米国特許第5,569,834号に記載されており、その開示は特に、引用によりそのまま本明細書に組み込まれる。米国特許第5,932,782号には、パーティクルボンバードメントに使用される微粒子上にコーティングされたアグロバクテリウム・コンストラクトを使った形質転換の方法が記載されている。米国特許出願公開第2006260012号には、アグロバクテリウムに基づく方法でダイズ細胞またはダイズ組織を形質転換する方法が記載されている。
【0141】
植物プロトプラストの形質転換は、リン酸カルシウム沈殿法、ポリエチレングリコール処理、エレクトロポレーション、およびこれらの処理の組合せなどといった、他のさまざまな方法を使って達成することもできる(Potrykusら, 1985,「Direct gene transfer to protoplasts: an efficient and generally applicable method for stable alterations of plant genomes」UCLA Sym Mol Cell Biol, 35:181-199)。さらに、花粉へのエレクトロポレーションに基づく遺伝子導入による植物形質転換が、米国特許第5,629,183号に記載されている。
【0142】
選択可能マーカー
本発明の実施形態では、外来遺伝子コンストラクトの形質転換を完了することに成功した細胞を検出するために、選択可能マーカー遺伝子が使用される。通例、細胞は、形質転換操作後、数日〜数週間以内に、形質転換の成功に関してスクリーニングされる。成功を収めた形質転換体のスクリーニングは、1つ以上の導入遺伝子発現カセットを選択可能マーカー発現カセットと共に同時形質転換することによって最も迅速に、また、形質転換プロセスを経て採取されたカルス細胞を培地中でまたは培地プレート上で選択可能マーカーに関してスクリーニングすることによって便利に行うことができる。
【0143】
選択可能マーカー発現カセット中の選択可能マーカー遺伝子は、プロモーターおよびターミネーターを含む選択可能マーカー調節要素に作動可能に連結される。トランスジェニック植物細胞における選択可能マーカー遺伝子の発現は、一般に、抗生物質または除草剤に対する耐性を付与するタンパク質をコードする。一般的な選択可能マーカー遺伝子には、例えば、カナマイシン含有培地で選択するためのnptII/カナマイシン耐性遺伝子、ホスフィノトリシン(PPT)を含有する培地で選択するためのホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子、またはハイグロマイシンBを含有する培地で選択するためのhphハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子などがある。他の選択可能マーカーには、ブレオマイシン耐性マーカー遺伝子およびグルホシネート耐性マーカー遺伝子などがある。
【0144】
ある実施形態では、選択可能マーカーがハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼである。例示的ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ配列を配列番号33に示す。もう一つの実施形態では、選択可能マーカー配列にジャガイモ・ユビキチン3上流調節要素(配列番号30)が隣接している。さらにもう一つの実施形態では、選択可能マーカー配列にジャガイモ・ユビキチン3ターミネーター配列(例えば配列番号31および32に示すもの)が隣接している。
【0145】
形質転換植物の再生
形質転換された植物材料の再生には任意の適切な方法を使用することができる。体細胞胚形成の一般的方法はParrottら, 1994,「Somatic embryogenesis in legumes」p.199-227, Y.P.S. Bajaj編「Biotechnology in Agriculture and Forestry. Somatic embryogenesis」Vol.31, Springer Verlag, ベルリン・ハイデルベルクに記載されている。
【0146】
遺伝子的に形質転換された材料から植物体を再生させるには、周知の再生培地をどれでも使用することができる。本明細書において「植物培養培地」とは、植物細胞もしくは植物組織の生存能および成長を支えるために、または全植物体標本の成長のために、当技術分野において使用される、任意の培地を指す。そのような培地は、一般に、例えば限定するわけではないが次に挙げるような明確な構成要素を含む:窒素、リン、カリウム、硫黄、カルシウム、マグネシウム、および鉄の栄養源になる多量栄養元素化合物;ホウ素、モリブデン、マンガン、コバルト、亜鉛、銅、塩素、およびヨウ素などの微量栄養素;糖質;ビタミン;植物ホルモン;選択剤(形質転換された細胞または組織の選択用、例えば抗生物質または除草剤);およびゲル化剤(例えば寒天、バクトアガー(Bactoagar)、アガロース、フィタゲル(Phytagel)、ゲルライト(Gelrite)など)。培地は固形培地でも液体培地でもよい。適切な培地および再生方法は、例えばSchmidtら, 2005,「Towards normalization of soybean somatic embryo maturation」Plant Cell Rep. 24:383-391に記載されている。
【0147】
推定上の形質転換植物が同定されたら、組織を調べて、導入遺伝子が植物ゲノム中に安定に形質転換されていることを確認することができる。
【0148】
異種遺伝子を持つホモ接合型系統の作出には、通例、数段階の追加交配工程が要求されるだろう。いくつかの実施形態では、次に、形質転換組織を成熟した植物体または「一次形質転換体」(T0)に成長させ、次にそれを自家交配させる。この自家交配で得られる種子を成長させ(T1世代)、陽性形質転換体を同定し、自家交配させる。次に、これらの種子を成熟植物(T2世代)に成長させ、形質転換された配列のホモ接合性の存在を同定するためにスクリーニングして、ホモ接合型植物系統を得る。
【0149】
双子葉植物
ここに提供される双子葉植物(「双子葉類」)は任意の双子葉植物であることができる。双子葉植物はマメ目のメンバーであってもよい。双子葉植物はマメ科のメンバー(一般に豆類と呼ばれているもの)であってもよい。双子葉植物はダイズ(soybean)、例えばダイズ(Glycine max)であってもよい。
【0150】
ここに提供される組成物および方法において有用な双子葉植物の例を次に挙げる:トウアズキ属(Abrus Adans.)(例えばアブラス(abrus))、アカシア属(Acacia P. Mill)(例えばアカシア(acacia))、アデナンテラ属(Adenanthera L.)(例えばビードツリー(beadtree))、クサネム属(Aeschynomene L.)(例えばジョイントベッチ(jointvetch))、アフゼリア属(Afzelia Smith)(例えばマホガニー(mahogany))、ネムノキ属(Albizia Durazz.)(例えばアルビジア(albizia))、アルハジ属(Alhagi Gagnebin)(例えばアルハジ(alhagi))、ササハギ属(Alysicarpus Neck, ex Desv.)(例えばマネーウォート(moneywort))、イタチハギ属(Amorpha L.)(例えばフォールス・インディゴ(false indigo)、インディゴブッシュ(indigobush)、アンフィカルパ属(Amphicarpa)、ヤブマメ属(Amphicarpaea Ell. ex Nutt.)(例えばアンフィカルパエア(amphicarpaea)、ホグピーナット(hogpeanut))、アナデナンテラ属(Anadenanthera Speg.)(例えばアナデナンテラ(anadenanthera))、アンディラ属(Andira Juss.)(例えばアンディラ(andira))、アンティリス属(Anthyllis L.)(例えばキドニーベッチ(kidneyvetch))、アピオス属(Apios Fabr.)(例えばグラウンドナット(groundnut))、ラッカセイ属(Arachis L.)(例えばラッカセイ(peanut))、アスパラサス属(Aspalathus L.)(例えばアスパラサス(aspalathus))、アスパルチウム属(Aspalthium Medik.)、アストラガルス属(Astragalus L.)(例えばアストラガラス(astragales)、アストラガラス各種(astragalus spp.)、ロコ草(locoweed)、ロコ草各種(locoweed species)、ミルクベッチ(milkvetch))、バフィア属(Baphia Lodd.)(例えばバフィア(baphia))、バプチジア属(Baptisia Vent.)(例えばバプチジア(baptisia)、フォールス・インディゴ(False indigo)、ワイルド・インディゴ(wild indigo))、バルビエリア属(Barbieria DC.)(例えばバルビエリア(barbieria))、バウヒニア属(Bauhinia L.)(例えばバウヒニア(bauhinia))、ビツミナリア属(Bituminaria Heister ex Fabr.)(例えばビツミナリア(bituminaria))、ボナベリア属(Bonaveria Scop.)、ブロングニアルチア属(Brongniartia Kunth)(例えばグリーントゥイグ(greentwig))、ブリア属(Brya P. Br.)(例えばコッカスウッド(coccuswood))、ブテア属(Butea Roxb. ex Willd.)(例えばブテア(butea))、ジャケツイバラ属(Caesalpinia L.)(例えばセザルピニア(caesalpinia)、ニッカー(nicker)、ポインシアナ(poinciana))、カイアンドラ属(Caiandra Benth.)、キマメ属(Cajanus Adans.)(例えばカジャナス(cajanus))、カリアンドラ属(Calliandra Benth.)(例えばカリアンドラ(calliandra)、フォールスメスキート(false mesquite)、スティックピー(stickpea))、カロポゴニウム属(Calopogonium Desv.)(例えばカロポゴニウム(calopogonium))、アマナズナ属(Camelina sp.)(例えば「フォールス・フラックス(false flax)」)、カナバイア属(Canavaia Adans. Mut. Dc.)、ナタマメ属(Canavalia Adans.)(例えばタチナタマメ(jackbean))、ムレスズメ属(Caragana Fabr.)(例えばピーシュラブ(peashrub))、カシア属(Cassia L.)(例えばカシア(cassia)、カシア各種(cassia species))、ケントロセマ属(Centrosema (DC.) Benth.)(例えばバタフライ・ピー(butterfly pea)、セントロセマ(centrosema))、セラトニア属(Ceratonia L.)(例えばセラトニア(ceratonia))、セルシジウム属(Cercidium L. R. Tulasne, Cercis L.)(例えばハナズオウ(redbud))、カワラケツメイ属(Chamaecrista (L.) Moench)(例えばセンシティブ・ピー(sensitive pea))、カマエキスティス属(Chamaecystis Link)(例えばカメシスティス(chamaecystis))、カマエセンナ(Chamaesenna (Dc.) Raf. Ex Pittier)、カプマンニア属(Chapmannia Torr. & Gray)(例えばチャプマンニア(chapmannia))、ホオズキハギ属(Christia Moench)(例えばアイランド・ピー(island pea))、ヒヨコマメ属(Cicer L.(例えばサイサー(cicer))、フジキ属(Cladrastis Raf.)(例えばイエローウッド(yellowwood))、チョウマメ属(Clitoria L.)(例えばクリトリア(clitoria)、ピジョンウィングス(pigeonwings))、マイハギ属(Codariocalyx Hassk.)(例えばチック・トレフォイル(tick trefoil))、コヨバ属(Cojoba Britt. & Rose)(例えばコヨバ(cojoba))、コロガニア属(Cologania Kunth)(例えばコロガニア(cologania))、ボウコウマメ属(Colutea L.)(例えばコルテア(colutea))、コパイフェラ属(Copaifera L.)(例えばコパイフェラ(copaifera))、オウゴンハギ属(Coronilla L.)(例えばクラウンベッチ(crownvetch))、コリネラ属(Corynella DC.)(例えばコリネラ(corynella))、コウルセティア属(Coursetia DC.)(例えばベビーボンネッツ(babybonnets)、コーセチア(coursetia))、クラッカ属(Cracca Benth.)、タヌキマメ属(Crotalaria L.)(例えばラトルボックス(rattlebox))、クルディア属(Crudia Schreb.)、カレン属(Cullen Medik.)(例えばスカーフピー(scurfpea))、クアスタマメ属(Cyamopsis DC.)(例えばサイアモプシス(cyamopsis))、キノメトラ属(Cynometra L.)(例えばサイノメトラ(cynometra))、シチスカス属(Cytiscus Linnaeus)、エニシダ属(Cytisus Desf.)(例えばブルーム(broom))、ダルベルギア属(Dalbergia L. f.)(例えばインディアン・ローズウッド(Indian rosewood))、ダレア属(Dalea L.)(例えばダレア(dalea)、ダレア各種(dalea spp.)、プレーリー・クローバー(prairie clover)、プレーリークローバー(prairieclover)、プレーリークローバー類(prairieclovers))、ダニエリア属(Daniellia Bennett)(例えばダニエリア(daniellia))、ホウオウボク属(Delonix Raf.)(例えばデロニクス(delonix))、ドクフジ属(Derris Lour.)(例えばデリス(derris))、デスマンツス属(Desmanthus Willd.)(例えばバンドルフラワー(bundleflower))、ヌスビトハギ属(Desmodium Desv.)(例えば多年生マメ科植物(perennial legumes)、チック・トリフォイル(tick trefoil)、チッククローバー(tickclover)、チックトレフォイル(ticktrefoil))、ディアリウム属(Dialium L.)(例えばディアリウム(dialium))、ディクロスタキス属(Dichrostachys (DC.) Wight & Arn.)(例えばディクロスタキス(dichrostachys))、ジオクレア属(Dioclea Kunth)(例えばジオクレア(dioclea))、ディフィサ属(Diphysa Jacq.)(例えばディフィサ(diphysa))、ディポゴン属(Dipogon Lieb.)(例えばディポゴン(dipogon))、トンカマメ属(Dipteryx Schreber)(例えばトンカマメ(dipteryx))、エベノプシス属(Ebenopsis Britt. & Rose)(例えばテキサス・コクタン(Texas ebony))、マダモ属(Entada Adans.)(例えばコーリングカード・バイン(callingcard vine))、エンテロロビウム属(Enterolobium Mart.)(例えばエンテロロビウム(enterolobium))、エリオセマ属(Eriosema (DC.) D. Don)(例えばハマエンドウ(sand pea))、エルラズリジア属(Errazurizia Phil.)(例えばデューンブルーム(dunebroom))、デイゴ属(Erythrina L.)(例えばエリスリナ(erythrina))、エリツロフレウム属(Erythrophleum Afzel. ex R. Br.)(例えばサスウッド(sasswood))、エイセンハルドティア属(Eysenhardtia Kunth)(例えばキドニーウッド(kidneywood))、ファイドヘルビア属(Faidherbia A. Chev.)(例えばアカシア(acacia))、ファルカタリア属(Falcataria (Nielsen) Barneby & Grimes)(例えばピーコックスプルーム(peacocksplume))、エノキマメ属(Flemingia Roxb. ex Ait. f.)(例えばフレミンギア(flemingia))、ハギカズラ属(Galactia P. Br.)(例えばミルクピー(milkpea))、ガレガ属(Galega L.)(例えばプロフェッサーウィード(professor-weed))、ヒトツバエニシダ属(Genista L.)(例えばブルーム(broom))、ゲニスティディウム属(Genistidium I.M. Johnston)(例えばブラシピー(brushpea)、ゲニスティディウム(genistidium))、サイカチ属(Gleditsia L.)(例えばアメリカサイカチ(honey locust)、ローカスト(locust))、グリリキディア属(Gliricidia Kunth)(例えばクイックスティック(quickstick))、グロティディウム属(Glottidium Desv.)(例えばグロティディウム(glottidium))、ダイズ(Glycine max)(例えばダイズ(soybean))、ダイズ属(Glycine Willd.)(例えばダイズ)、カンゾウ属(Glycyrrhiza L.)(例えば甘草(licorice))、ギムノカドゥス属(Gymnocadus Lam.)、ギムノクラドゥス属(Gymnocladus Lam.)(例えばコーヒーノキ(coffeetree))、ハエマトクシルム属(Haematoxylum L.)(例えばヘマトキシラム(haematoxylum))、ハリモデンドロン属(Halimodendron Fischer ex DC.)(例えばハリモデンドロン(halimodendron))、ハウァルディア属(Havardia Small)(例えばハワルディア(havardia))、イワオウギ属(Hedysarum L.)(例えばスウィートベッチ(sweet vetch)、スウィートベッチ(sweetvetch))、ヒッポクレピス属(Hippocrepis L.)(例えばヒポクレピス(hippocrepis))、ホッフマンセッギア属(Hoffmannseggia Cav.)(例えばホフマンセギア(hoffmanseggia)、ラッシュピー(rushpea)、ラッシュピー各種(rushpea species)、ホッフマンセッギア属(Hoffmanseggia Cavanilles))、ホイタ属(Hoita Rydb.)(例えばレザールート(leather-root))、オオイナゴマメ属(Hymenaea L.)(例えばハイメナエア(hymenaea))、コマツナギ属(Indigofera L.)(例えばインジゴ(indigo))、インガ属(Inga P. Mill)(例えばインガ(inga))、イノカルプス属(Inocarpus J. R. & G. Forst)、カナロア属(Kanaloa D.H. Lorence & K. R. Wood)(例えばカナロア(kanaloa))、ヤハズソウ属(Kummerowia Schindl.)(例えばクメロウイア(kummerowia))、ラブラブ属(Lablab Adans.)(例えばフジマメ(lablab))、キングサリ属(Laburnum Medik.)(例えばキングサリ(golden chain tree))、レンリソウ属(Lathyrus L.)(例えばエンドウ(pea)、ピーバイン(peavine)、ピーバイン各種(peavine spp.))、ヒラマメ属(Lens P. Mill.)(例えばヒラマメ(lentil))、ハギ属(Lespedeza Michx.)(例えばハギ(lespedeza)、メドハギ(perennial lespedeza))、ギンゴウカン属(Leucaena Benth.)(例えばギンゴウカン(leadtree))、ロンコカルプス属(Lonchocarpus Kunth)(例えばランスポッド(lancepod))、ロトノニス属(Lotononis (DC.) Ecklon & Zeyh.)(例えばロトノニス(lotononis))、ミヤコグサ属(Lotus L.)(例えばディアベッチ(deervetch)、ディアベッチ各種(deervetch spp.)、トレフォイル(trefoil))、ルピナス属(Lupinus L.)(例えばルーピン(lupine)、ルーピン類(lupins))、リシロマ属(Lysiloma Benth.)(例えばフォールス・タマリンド(false tamarind)、ライシローマ(lysiloma))、イヌエンジュ属(Maackia Rupr.)(例えばマーキア(maackia))、マカエリウム属(Machaerium Pers.)(例えばマケリウム(machaerium))、マクロプティリウム属(Macroptilium (Benth.) Urban)(例えばブッシュビーン(bushbean)、マクロプティリウム(macroptilium))、マクロティロマ属(Macrotyloma (Wight & Amort) Verdc.)(例えばマクロタイローマ(macrotyloma))、マリーナ属(Marina Liebm.)(例えばフォールス・プレーリークローバー(false prairie-clover)、マリーナ(marina))、ウマゴヤシ属(Medicago L.)(例えばアルファルファ(alfalfa))、メイボミア属(Meibomia Heist. Ex Fabr.)、シナガワハギ属(Melilotus P. Mill.)(例えばシナガワハギ(sweet clover)、スイートク
ローバー(sweetclover))、オジギソウ属(Mimosa L.)(例えばミモザ(mimosa)、オジギソウ(sensitive plant))、トビカズラ属(Mucuna Adans.)(例えばムクナ(mucuna))、ミロスペルムム属(Myrospermum Jacq.)(例えばミロスペルムム(myrospermum))、ミロクシロン属(Myroxylon L. f.)(例えばミロクシロン(myroxylon))、ネオノトニア属(Neonotonia Lackey)(例えばネオノトニア(neonotonia))、ネオルドルフィア属(Neorudolphia Britt.)(例えばネオルドルフィア(neorudolphia))、ネプチュニア属(Neptunia Lour.)(例えばネプチュニア(neptunia)、パフ(puff))、ニッソリア属(Nissolia Jacq.)(例えばニッソリア(nissolia)、イエローフード(yellowhood))、オルネイア属(Olneya Gray)(例えばオルネヤ(olneya))、オノブリキス属(Onobrychis P. Mill.)(例えばイガマメ(sainfoin))、ハリモクシュク属(Ononis L.)(例えばハリモクシュク(restharrow))、オルベクシルム属(Orbexilum Raf.)(例えばレザールート(leather-root)、オーベキシラム(orbexilum))、オルモシア属(Ormosia G. Jackson)(例えばオルモシア(ormosia))、オルニソパス属(Ornithopus L.)(例えばバーズフット(bird's-foot))、オクシリンクス属(Oxyrhynchus Brandeg.)(例えばオキシリンカス(oxyrhynchus))、オヤマノエンドウ属(Oxytropis DC.)(例えばクレイジー・ウィード(crazy weed)、ロコ草(locoweed))、クズイモ属(Pachyrhizus L. C. Rich, ex DC.)(例えばパキリーザス(pachyrhizus))、パラセリアンテス属(Paraserianthes I. Nielsen)(例えばパラセリアンテス(paraserianthes))、パルキア属(Parkia R. Br.)(例えばパルキア(parkia))、パルキンソニア属(Parkinsonia L.)(例えばパロベルデ(paloverde)、パーキンソニア(parkinsonia))、パッリエラ属(Parryella Torr. & Gray ex Gray)(例えばパリエラ(parryella))、ペディオメルム属(Pediomelum Rydb.)(例えばビードルート(beadroot)、インディアン・ブリードルート((Indian breadroot)、ペディオメラム(pediomelum)、スカーフピー(scurfpea))、ペルトフォルム属(Peltophorum (T. Vogel) Benth.)(例えばペルトフォルム(peltophorum))、ペンタクレツラ属(Pentaclethra Benth.)(例えばペンタクレスラ(pentaclethra)、ペリコプシス属(Pericopsis Thwaites)、ペテリア属(Peteria Gray)(例えばペテリア(peteria))、インゲンマメ属(Phaseolus Linnaeus)、インゲンマメ属(Phaseolus L.)(例えばインゲンマメ(bean)、ワイルド・ビーン(wild bean))、フィゾスチグマ属(Physostigma Balf.)(例えばフィゾスチグマ(physostigma))、ピッカリンギア属(Pickeringia Nutt. ex Torr. & Gray)(例えばチャパラル・ピー(chaparral pea))、ピクテティア属(Pictetia DC.)(例えばピクテティア(pictetia))、ピスキディア属(Piscidia L.)(例えばピサディア(piscidia))、エンドウ属(Pisum L.)(例えばエンドウ(pea))、ピッチェリア属(Pitcheria Nutt.)、キンキジュ属(Pithecellobium Mart.)(例えばブラックビード(blackbead)、ピテセロビウム(pithecellobium))、ポイテア属(Poitea Vent.)(例えばワッタパマ(wattapama))、クロヨナ属(Pongamia Ventenat)、プロソピス属(Prosopis L.)(例えばメスキート(mesquite))、シカクマメ属(Psophocarpus Necker ex DC.)(例えばソフォカーパス(psophocarpus))、プソラレア属(Psoralea Linnaeus)、プソラリディウム属(Psoralidium Rydb.)(例えばブリードルート(breadroot)、スカーフピー(scurfpea))、プソロタムヌス属(Psorothamnus Rydb.)(例えばデイリア(dalea)、スモークブッシュ(smokebush))、シタン属(Pterocarpus Jacq.)(例えばテロカーパス(pterocarpus))、クズ属(Pueraria DC.)(例えばクズ(kudzu))、レタマ属(Retama Raf.,保留名)、タンキリマメ属(Rhynchosia Lour.)(例えばスナウトビーン(snoutbean))、ロビニア属(Robinia L.)(例えばローカスト(locust))、ルペルティア属(Rupertia J. Grimes)(例えばルパーティア(rupertia))、サビネア属(Sabinea DC.)(例えばサビネア(sabinea))、サマネア属(Samanea Merr.)(例えばアメリカネム(raintree))、スキゾロビウム属(Schizolobium Vogel)(例えばブラジリアン・ファイアツリー(Brazilian firetree))、シュランキア属(Schrankia Willd.)(例えばシュランキア(shcrankia))、スコルピウルス属(Scorpiurus L.)(例えばスコーピオンズテール(scorpion's-tail))、セキュラ属(Secula Small)、センナ属(Senna P. Mill.)(例えばセンナ(senna))、ツノクサネム属(Sesbania Scop.)(例えばリバーヘンプ(riverhemp)、セスバニア(sesbania))、クララ属(Sophora L.)(例えばネックレスポッド(necklacepod)、ソフォラ(sophora))、レダマ属(Spartium L.)(例えばブルーム(broom))、スファエロフィサ属(Sphaerophysa DC.)(例えばスファエロフィサ(sphaerophysa))、スフェノスティリス属(Sphenostylis E. Meyer)(例えばスフェノスティリス(sphenostylis))、スフィンクトスペルムム属(Sphinctospermum Rose)(例えばスフィンクトスペルムム(sphinctospermum))、スフィノトスペルムム属(Sphinotospermum Rose))、スターリア属(Stahlia Bello)(例えばスターリア(stahlia))、ヒスイカズラ属(Strongylodon Vogel)(例えばストロンギロドン(strongylodon))、ストロフォスタイレス属(Strophostyles Ell.)(例えばファジービーン(fuzzy bean)、ファジービーン(fuzzybean)、ワイルドビーン(wildbean))、ストリフノデンドロン属(Stryphnodendron C. Martius)(例えばストリフノデンドロン(stryphnodendron))、スティロサンテス属(Stylosanthes Sw.)(例えばペンシルフラワー(pencilflower))、ステルランディア属(Sutherlandia R. Br.)(例えばサザーランディア(sutherlandia))、スウェンソニア属(Swainsonia Salisb.)、タマリンド属(Tamarindus L.)(例えばタマリンド(tamarind))、タラレア属(Taralea Aublet)(例えばタラレア(taralea))、ナンバンクサフジ属(Tephrosia Pers.)(例えばホーリーピー(hoarypea)、テフロジア(tephrosia))、テラムヌス属(Teramnus P. Br.)(例えばテラムヌス(teramnus))、テトラゴノロブス属(Tetragonolobus Scop.)(例えばテトラゴノロバス(tetragonolobus))、センダイハギ属(Thermopsis R. Br. ex Ait. f.)(例えばゴールデンバナー(goldenbanner)、ゴールデン・ピー各種(golden pea spp.)(ゴールデンバナー)、サーモプシス(thermopsis))、チカント属(Ticanto Adans.)(例えばグレイ・ニカー(gray nicker))、シャジクソウ属(Trifolium L.)(例えばクローバー(clover)、クローバー各種(clover spp.)、トレフル類(trefles))、フェヌグリーク属(Trigonella L.)(例えばフェヌグリーク(fenugreek))、ハリエニシダ属(Ulex L.)(例えばハリエニシダ(gorse))、ベキシリフェラ属(Vexillifera)、ソラマメ属(Vicia L.)(例えばベッチ(vetch)、ベッチ各種(vetch spp.))、ササゲ属(Vigna Savi)(例えばササゲ(cowpea)、ビグナ(vigna))、フジ属(Wisteria Nutt.)(例えばフジ(wisteria))、ザポテカ属(Zapoteca H. Hernandez)(例えばホワイト・スティックピー(white stickpea))、スナジマメ属(Zornia J. F. Gmel.)(例えばゾルニア(zornia))など。
【0151】
タンパク質プロセシング
本明細書に開示する方法によって生産されるタンパク質は、種子から抽出して、商業的プロセスにそのまま使用することができる。あるいは、タンパク質を部分精製するか、完全に精製した後、貯蔵するか、直ちに使用することもできる。また、ダイズ「粉」(soybean 「meal」)またはひき割りダイズ(soybean grinadte)をトランスジェニック植物から製造し、その材料を必要時まで貯蔵しておくこともできる。
【0152】
タンパク質の単離、精製、および分析
タンパク質レベルは、標準的なプロテオミクスの手法を使ってアッセイすることができる。全タンパク質含有量は、例えばブラッドフォード(Bradford)法(Bradford, 1976, Analytical Biochem., 72:248-254)に基づくアッセイを使って決定することができる。
【0153】
タンパク質分析は広く知られている方法に従って進めることができる。タンパク質の実体は、例えばゲルに基づくアッセイ、イムノブロット、および質量分析を使って確認することができる。タンパク質のサイズは、例えば高速液体クロマトグラフィーを使って決定することができる。
【0154】
粗製物または精製酵素の比活性(enzymatic activity of a specific mass)は、目的の酵素をアッセイするための標準的プロトコールを使って測定することができる。酵素安定性、温度プロファイル、pHプロファイル、および酵素の有効半減期(useful half-life)の測定も、標準的方法を使って決定することができる。
【0155】
目的のトランスジェニックタンパク質は、その後の使用に要求される任意の精製度まで精製することができる。要求される精製度は、例えばコスト、精製タンパク質と種子中に留まっているタンパク質の安定性、下流要件、夾雑物の除去、タンパク質のさらなるプロセシングに関する要件(すなわち適正なタンパク質折りたたみまたは翻訳後修飾)など数多くのパラメータに依存しうる。ダイズ種子中で生産されたタンパク質を単離し精製する方法の一例を実施例16に示す。
【0156】
本発明の実施形態では、ダイズ種子を、例えばひき割りまたは製粉によって加工することができる。製粉した材料の粗抽出物は、液体を加え、しばらく撹拌した後、随意に濾過を行って大きな粒子を除去することにより、製造することができる。あるいは、いくつかの実施形態では、目的のタンパク質を精製する必要が全くない場合もあり、単に、目的のタンパク質をダイズ種子の残りの部分と一緒に含有するひき割り種子を使用することもできる。
【0157】
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)
いくつかの実施形態では、当技術分野において広く知られているELISA法を、発現されたタンパク質の分析に使用することができる。一例としてダイズにおけるβ-グルコシダーゼの生産を挙げると、次の設定を使用することができる。マルチウェルプレートをウサギ抗β-グルコシダーゼ抗体で被覆し、次にダイズ種子抽出物および対照試料を、そのプレートの個々のウェルに加え、35℃で1時間インキュベートする。次に、抗ウサギセイヨウワサビペルオキシダーゼコンジュゲートを各ウェルに加え、35℃で1時間インキュベートしてから、テトラメチルベンジジン基質(Sigma、米国)を加え、室温で3分間インキュベートする。1N H2SO4を各ウェルに加えることによって反応を停止する。プレートをMicroplate Reader(Bio-Rad、モデル3550)において450nmで読み取り、データを、例えばMICROPLATE MANAGER(商標)III(Bio-Rad)を使って処理する。いくつかのホモ接合型系統の分析の結果を評価して、種子1個あたりの発現されたタンパク質の量を決定する。
【0158】
ダイズ種子におけるトランスジェニックタンパク質の貯蔵
本明細書に開示するトランスジェニックダイズ種子は、自然のタンパク質貯蔵容器として使用することもできる。トランスジェニックタンパク質を含有する成熟乾燥ダイズ種子は、必要になるまで、室温またはそれ以下の温度で貯蔵することができる。したがって、タンパク質のさらなる加工は、使用時まで遅らせることができる。この方法は、商業的プロセスに使用されるトランスジェニック酵素を貯蔵する効率のよい安価な手段になりうる。
【0159】
本発明の予想外の技術的特徴
驚いたことに、本発明は、優れた特徴を持つ植物をもたらす。例えば本発明では、自然界で天然に存在する目的のタンパク質、天然タンパク質に改変が加えられたタンパク質、合成(新設計)タンパク質、またはそれらの組合せを有するタンパク質の生産が可能である。これは、望ましい物理化学的性質(例えば溶解度またはさまざまな条件下での安定性)を持つタンパク質として生産することができ、精製を助けるための残基またはその有用性を強化するための残基に連結された融合タンパク質として生産することができる。
【0160】
本発明は、他の方法では分解を受けやすいが本明細書に教示する区画化によって隔離すると顕著な安定性を示すことができるタンパク質を生産するのに、とりわけ有用である。
【0161】
本発明は、機能を保存するために低い湿度を要求するタンパク質を生産するのに、とりわけ有用である。そのようなタンパク質は、例えば、種子ではER由来小胞にターゲティングすることができ、数ヶ月または数年間貯蔵しても、栄養価、酵素活性、または所望の性質を保存することができる。
【0162】
本発明は、種子中または他の植物部分中に高レベルに存在するので未精製の状態または部分精製された状態で商業的に使用することができるタンパク質を生産するのに、とりわけ有用である。いくつかの実施形態では、凝集に備える部分または凝集を防ぐ部分を加えることができる。
【0163】
本発明のコンストラクトは、時間的シグナルまたは外部シグナルによる遺伝子の稼働化(turn on)または非働化(turn off)を可能にする追加の調節要素など、他の有用な特徴と組み合わせることができる。有用な実施形態の例を表2に示す。
表2−例示的キメラ配列
【表2−1】

【表2−2】

【実施例】
【0164】
下記の実施例は、別段の詳細な記載がある場合を除き、当業者にとっては周知でありルーチンである標準的技法を使って行われる。これらの実施例は例示であり、本発明を限定するものではない。
【0165】
[実施例1]
貯蔵タンパク質ノックダウン系統「SP-」の作出
種子における貯蔵タンパク質含有量を抑制するために図2に従って設計したRNAiコンストラクトを、バイオリスティック(biolistic)形質転換プロトコール(Parrottら, 2004, 「Transgenic soybean」J.E. SpechtおよびH.R. Boerma編「Soybeans: Improvement, Production, and Uses」第3版、Agronomy Monograph No. 16、ASA-CSA-SSSA、ウィスコンシン州マディソン、p.265-302)を使って、ダイズに導入した。内在性ダイズ貯蔵タンパク質とFAD2-1ω-6脂肪酸デサチュラーゼとの同時サプレッションに特異的なRNAiカセットを、グリシニンプロモーターおよび3'ターミネーター下に、イントロンの左右で、これらのオープンリーディングフレームに特異的な配列を反転させることによって作製した。グリシニンA1bB2遺伝子の331bp領域(配列番号55)をFAD2-1a遺伝子の128bp領域(配列番号57)に隣接して配置した。次に、この459bpの異種DNAを、イントロンの左右に、逆方向反復として配置した。合成イントロンはサイレンシングベクターp3UTR12850Sの一部から得た。次にこのカセット(配列番号56)をグリシニンの調節要素の下に置いた(図2)。FAD2 RNAiは、高オレイン酸表現型に関する追加スクリーニングを可能にするマーカーとなるように、そしてまた、FAD2ノックダウンをも含む先のコングリシニンノックダウンとの一貫性を保つために(KinneyおよびHerman「Cosuppression of the α Subunits of β-conglycinin in Transgenic Soybean Seeds Induces the Formation of Endoplasmic Reticullum-Derived Protein Bodies」Plant Cell 13:1165-1178 (2001))、コンストラクトのオプション機能として付加した。
【0166】
再生体細胞胚およびT0種子を、全タンパク質分布に関する1D SDS/PAGEと抗グリシニン抗体および抗コングリシニン抗体の交差反応性に関するイムノブロットアッセイで、スクリーニングした。
【0167】
回収されたトランスジェニック系統は、抑制されたグリシニン含有量という表現型を示しただけでなく、コングリシニンのα/α'-およびβ-サブユニットの本質的に完全なノックダウンも示した。ここで作製されたグリシニンおよびコングリシニンのノックダウンを持つ系統を、SP-(storage protein knockdown:貯蔵タンパク質ノックダウン)と呼ぶことにする。
【0168】
[実施例2]
SP-におけるタンパク質含有量と油含有量
SP-系統をダイズ植物に再生させた。得られた植物は、対照と比較して大差なく、成長し、種子を付けた。T0種子を削り取って表現型をアッセイし、SP-種子を再成長させ、さらに2回再選択することにより、ホモ接合型集団を作り出した。SP-表現型は、以後の各世代では安定であり、α/α'およびβ-コングリシニンサブユニットは検出されず、グリシニンレベルも著しく低下していた。SP-種子中のオレイン酸レベルは>94%であったことから、FAD2スクリーニングマーカーノックダウンも存在することが示された。
【0169】
平均146mgという温室栽培SP-休眠種子の乾燥サイズおよび乾燥重量は、163mgという野生型(WT)温室栽培品種「Jack」休眠種子平均と類似している。SP-(40.2%、19.1%)とWT品種「Jack」(37.5%、20.5%)の全タンパク質含有量および油含有量は類似している。このように、ダイズの全タンパク質の大部分に相当するタンパク質のノックダウンは、ほぼ同じタンパク質/油含有量および種子サイズへのダイズタンパク質組成の再調整をもたらすことを、これらのアッセイは証明している。
【0170】
[実施例3]
電子顕微鏡法およびイムノゴールド免疫細胞化学
組織試料をBalzerの高圧装置(Bal-Tech、リヒテンシュタイン公国)を使って凍結固定(cryofix)し、アセトン/OsO4で凍結置換し、エポン樹脂(epon plastic)に包埋した。観察に先だって超薄切片を飽和酢酸ウラン水溶液とクエン酸鉛(33mg/ml)で二重染色した。次に免疫細胞化学的分析を行った。並行試料を凍結固定してから、固定剤なしの凍結置換で処理した。置換試料をLowicryl HM-20樹脂に移し、それをUV光照射によって重合させた。薄切片を抗GFP MAb(Clontech)または本研究室が以前作製したウサギポリクローナル抗グリシニンでラベルした。切片を抗IgG(ウサギまたはマウス)-10nmコロイド金(Sigma)で間接的にラベルし、次に5%酢酸ウラニルで対比染色してから、EM観察を行った。全てのTEMをLEO 912AB顕微鏡で行い、モンタージュモードで作動する2k×2k CCDカメラを使って撮像した。
【0171】
[実施例4]
SP-の正常な外部形態(gross morphology)
SP-の細胞構造をWTと比較して調べるために、成熟過程にある両者の子葉を高圧凍結固定によって調製し、得られた試料をアセトン/OsO4で凍結置換してから、エポン樹脂に包埋し、上に詳述したように加工した。SP-ダイズは、WT種子中で形成されるPSV(図3B)とサイズおよび外観が明らかに類似するPSV(図3A)を形成する。SP-中のPSVは、ダイズに特有の、タンパク質で満たされた無定形マトリックスを有する。
【0172】
[実施例5]
二次元タンパク質分析
Josephら, (2006),「Evaluation of Glycine germplasm for nulls of the immunodominant allergen P34/Gly m Bd 30k」Crop Science 46:1755-1763に記述されているように、全タンパク質を成熟ダイズ種子から単離した。簡単に述べると、合計150μgのタンパク質を、11cm固定化pH勾配(IPG)ゲルストリップ(pH3-10NL)(BioRad、カリフォルニア州ハーキュリーズ)上にローディングし、次に一晩、水和した。Protean IEFセル(BioRad)を使って等電点電気泳動(IEF)を合計40kVh行ってから、2次元目のSDS-PAGEゲル(8-16%直線勾配)で泳動した。ゲルを40%(v/v)メタノールおよび10%酢酸中の0.1%クマシーブルーで一晩染色し、ブロッティングとその後の免疫検出には、Josephら(前掲)に記述されているようにGFPモノクローナル抗体(Clontech Inc.、カリフォルニア州マウンテンビュー)を使用した。各試料を3つ1組のゲルで泳動し、Phoretix 2D Evolution(バージョン2005;Nonlinear Dynamics Ltd.)でスキャンし、解析した。イムノブロット上に同定されたGFPスポットによって、対応するスポットをレプリケートゲル上に位置付けることができ、これらのスポットの体積を全プロテオームスポット体積に対して規格化することにより、全可溶性ダイズ種子プロテオームにおけるGFPタンパク質の体積率を決定した。
【0173】
[実施例6]
SP-に起因して増加したレベルで発現されたタンパク質の同定
SP-ダイズのプロテオミクス解析により、貯蔵タンパク質ポリペプチドの欠如は、他の貯蔵タンパク質によって補償されることが示される。
【0174】
SP-の二次元(2D)IEF/SDS-PAGE分画を、WTの場合と比較すると、貯蔵タンパク質のノックダウンによって起こるタンパク質のスポット分布の劇的な変化が明らかになる。
【0175】
図4に、広範囲(pH3〜10)二次元目2Dゲルを使ったWTと貯蔵タンパク質ノックダウンとの比較を示す。全タンパク質染色により、SP-ではタンパク質の分布に大規模な変化が起こっていて、欠如した貯蔵タンパク質が他の豊富なタンパク質スポットで置き換えられていることが示される。
【0176】
貯蔵タンパク質のノックダウンは、レプリケートイムノブロットをコングリシニンおよびグリシニン貯蔵タンパク質画分に特異的な抗体でプローブすることによって(これはコングリシニンサブユニットおよびアイソフォームの欠如ならびにグリシニンサブユニットおよびアイソフォームの著しい減少を示した)、さらに確認された。3つ1組のSP- 2Dゲルを、全タンパク質のゲル体積により、野生型と比較して評価した。著しく変化したタンパク質は、ゲルスキャニング/スポット体積ソフトウェアを利用して、目視検査によってスコア化した。選ばれたタンパク質スポットを切り出し、トリプシンフラグメント化に付し、タンデムMS/MS質量分析法で分析した。質量分析用に選択した番号付きタンパク質スポットのマップを図4Cに示す。
【0177】
図4Cのタンパク質スポットから得られるコンパイル済みのプロテオミクスデータを表3に示す。タンパク質含有量再調整の大半は、クニッツトリプシンインヒビター(KTI)、「アグルチニン」とも呼ばれるダイズレクチン(LE)、および免疫優性ダイズアレルゲンP34またはGly m Bd 30kの含有量の増加によるものである。含有量が増加している他のタンパク質には、グルコース結合タンパク質(GBP)および種子成熟タンパク質(SMP)が含まれる。プロテオミクスおよび質量分析同定により、貯蔵タンパク質の不足の再調整は、わずか数種類のタンパク質の集積の増加によって起こることが示される。
表3
【表3−1】

【表3−2】

【0178】
WT(「Jack」)ダイズ種子とSP-種子におけるさまざまなタンパク質を示す円グラフを、図6に示す。このグラフは、他のタンパク質を種子中で減少させた時に一定のタンパク質の増加が起こる再調整プロセスまたは補償プロセスを、明確に示している。
【0179】
[実施例7]
SP-種子は発生的に正しい形態およびパターンでPSVを形成する
ダイズなどの双子葉植物種子のタンパク質貯蔵液胞(PSV)は、貯蔵タンパク質の合成および沈着と協調して、中心液胞の細分化によって形成される。これは、タンパク質で満たされたPSVをもたらし、それは貯蔵タンパク質を集積している種子の細胞質の大半を満たす。
【0180】
例えば上記実施例で説明したSP-系統の場合のように、グリシニン貯蔵タンパク質とβ-コングリシニン貯蔵タンパク質の両方がノックダウンされた植物の貯蔵柔細胞は、PSVだけを含有するように見える。これは、補償PSVタンパク質が液胞中に留まっていて、ER由来プロテインボディーへのタンパク質の転送(redirection)は起こらないことを示している。他の全ての細胞内小器官および細胞内構造物の構造および分布も、SP-およびWT対照において同一であるように見えた。
【0181】
これに対し、コングリシニンの単一ノックダウンは、以下に(例えば実施例11に)示す指向的(directed)遺伝子工学によるか、自然の突然変異によるかにかかわりなく、前駆体プログリシニン型に留まるグリシニンの大部分を、ER由来プロテインボディーに蓄積させることになる。
【0182】
[実施例8]
SP-ダイズ種子は転写変化をほとんど示さない
Affymetrix DNAジーンチップを、バイオロジカルレプリケート(biological replicate)およびテクニカルレプリケート(technical replicate)と共に使って、成熟後期SP-ダイズを、WT(野生型)と比較した。得られたトランスクリプトームデータを解析したところ、正の相関比(positive correlation ratio)で、比較的ストリンジェントな2倍アップ/ダウンカットオフ(two-fold up/down cutoff)を使用すると、アップレギュレートまたはダウンレギュレートされた転写産物をほとんど示さなかった。
【0183】
Affymetrixジーンチップは、Shoemakerら, 2002,「A compilation of soybean ESTs: generation and analysis」Genome, 45(2):329-38によるダイズESTに基づき、これらのESTの大部分は、発現遺伝子であるという以上のアノテーションはなされていない。注目すべきことに、有意な変動を示さなかった転写産物には、SP-種子プロテオームにおいて増加したタンパク質存在量を示したタンパク質、すなわちKTI、P34およびLEのものが含まれていた。
【0184】
油体に関連する主要タンパク質オレオシンをコードする転写産物は、SP-種子中で異ならなかったものに含まれた。ダイズ種子プロテオームの大部分は、並行する影響をトランスクリプトームにほとんど与えることなく、再構築(remodel)される。SP-転写産物とWT転写産物のアレイデータの高い類似性は、図5の散布図が示している。
【0185】
[実施例9]
グリシニンプロモーターによって駆動されるGFP-KDEL
本方法を使って種子中で高レベルのタンパク質を生産できることを証明するために、GFPをERシグナルペプチドおよび例示的ER保留シグナル「KDEL」と共にコードする異種ポリヌクレオチドのORFを持ち、それがグリシニンプロモーターおよびグリシニン由来の3'TEDによって駆動されるコンストラクトを作製した(図7参照)。バイオリスティックス(biolistics)によるダイズ(Glycine max WT品種「Jack」)体細胞胚形質転換はTrickら, 1997,「Recent advances in soybean transformation」Plant Tissue Culture and Biology, 3(1):9-26に記述されているように行い、再生はSchmidtら, 2004,「Towards normalization of soybean somatic embryo maturation」Plant Cell Reports 24:383-391に記述されているように行った。ジャガイモ・ユビキチン3調節要素(GarbarinoおよびBelknap, 1994,「Isolation of ubiquitin-ribosomal protein gene (ubi3) from potato and expressioni of its promoter in transgenic plants」Plant Mol Biol. 24(1):119-127)の制御下にあるハイグロマイシン耐性遺伝子を、組織培養における選択可能マーカーとして使用した。市販のGFP(Clontech Inc.、カリフォルニア州マウンテンビュー)オープンリーディングフレーム(配列番号34)から開始コドンと停止コドンを除いたものを、種子特異的グリシニン調節要素(Nielsenら, 1989,「Characterization of the glycinin gene family in soybean」Plant Cell, 1(3):313-328)、アラビドプシス・キチナーゼ遺伝子由来の21アミノ酸ER-シグナル配列(配列番号12)、およびMoravecら, 2007,「Production of Escherichia coli heat labile toxin (LT) B subunit in soybean seed and anlysis of its immunogenicity as an oral vaccine」Vaccine, 25(9):1647-57に記載されているKDEL保留タグ(配列番号23)を含有するカセットに入れた。そのコンストラクトを図7に示す。
【0186】
成熟乾燥種子を収穫し、蛍光解剖顕微鏡下、青色(450nm)光を励起に使って、GFP-kdel発現について目視観察した。GFP-kdel陽性植物をT1世代に成長させてホモ接合型種子を得た。GFP-kdel種子は、二光子励起Zeiss LSM510顕微鏡を使用し、488nmでの励起、512nmの吸収フィルターを使って、細胞レベルで調べた。
【0187】
コンストラクトをバイオリスティック形質転換によってダイズに導入した後、植物の選択および再生を行った。T1世代とT2世代についてGFP-kdel陽性種子を再成長させて、種子特異的GFP-kdel発現種子のホモ接合型系統を作出した。
【0188】
親ホモ接合型種子におけるGFP-KDEL発現は、2D IEF/SDS-PAGEによるスポット体積比較によって、また市販のGFPを用いる標準曲線を対照とする蛍光計アッセイを使った種子溶解物のアッセイによってアッセイすると、ダイズ中に1.6%のGFP-kdelの集積をもたらす。蛍光光学顕微鏡像は、GFP-kdel PBが細胞質全体に分布することを示した。GFPに特異的な市販のMAbを使ったGFP-kdel PBのTEM-イムノゴールドアッセイにより、先の観察と同様に、ERに結合した直径0.2〜0.3μmのPB様構造物がラベルされた。
【0189】
[実施例10]
SP-系統における、グリシニンプロモーターによって駆動されるGFP-kdel
外来タンパク質の発現の影響を、SP-で起こるタンパク質再調整プロセスとの関連で、さらに調べた。グリシニンプロモーターによって駆動されるGFP-kdelを含有するコンストラクトを、バイオリスティック形質転換によってダイズに導入した後、実施例9で述べたように植物の選択と再生を行った。T1世代とT2世代についてGFP-kdel陽性種子を再成長させて、種子特異的GFP-kdel発現種子のホモ接合型系統を得た。
【0190】
親ホモ接合型種子におけるGFP-kdel発現は、2D IEF/SDS-PAGEによるスポット体積比較によって、また市販のGFPを用いる標準曲線を対照とする蛍光計アッセイを使った種子溶解物のアッセイによってアッセイすると、ダイズ中に1.6〜2%のGFP-kdelの集積をもたらす。これらのデータを、遺伝子移入SP-植物で得られるデータと比較して、図13および図14に示す。
【0191】
蛍光光学顕微鏡はGFP-kdel PBが細胞質全体に分布することを示す。GFPに特異的な市販のMAbを使ったGFP-kdel PBのTEM-イムノゴールドアッセイにより、先の観察と同様に、ERに結合した直径0.2〜0.3μmのPB様構造物がラベルされた。
【0192】
[実施例11]
βCSダイズ系統の作出
種子貯蔵タンパク質のレベルを低下させる方法をさらに実証するために、β-コングリシニンのα/αサブユニットが欠乏しているトランスジェニック・ダイズ系統(「βCS」)を、2つの異なるタイプの遺伝子ノックダウンによって作製した。一つの方法では、植物を、FAD2遺伝子の発現を駆動するβ-コングリシニンプロモーターを持つ「センス」コンストラクトで形質転換した。これにより、β-コングリシニンのサプレッションがもたらされた。
【0193】
もう一つの例では、β-コングリシニンを抑制するように設計されたRNAiコンストラクトでダイズ植物を形質転換することによって、ダイズのβCS系統を作製した。RNAiコンストラクトを作製するために、β-コングリシニン遺伝子(genbank AB030495)由来の配列フラグメント(配列番号53)を、FAD2遺伝子由来の128bpフラグメント(配列番号57)に隣接して配置した。次に、その256bp領域全体を、Wesleyら, (2001)「Construct design for efficient, effective and high-throughput gene silencing in plants」Plant J. 27, 581-590に記載されている方法に従って、pKannibalベクターを使ってクローニングされたイントロンの左右に、逆方向反復として配置する。全カセット配列を配列番号54に示す。
【0194】
この配列を使った形質転換は、ダイズ種子におけるβ-コングリシニンレベルを抑制し、a/a'β-コングリシニンの完全なサイレンシングをもたらした。増加したグリシニン生産量の一部はその前駆体プログリシニンの形で保たれ、PB中に隔離された。
【0195】
[実施例12]
βCSダイズ系統における、グリシニンプロモーターによって駆動されるGFP-kdel
外来タンパク質を外因性(extrinsic)遺伝子産物として発現させることは、タンパク質含有量再調整の内因性(intrinsic)プロセスとは、比較的無関係なはずである。選択した外来タンパク質、すなわちKDEL ER保留配列を含むように改変したGFPは、ERに蓄積してER由来プロテインボディー(これは、ダイズには通常は見いだされない、デノボ生成される不活性な細胞小器官である)を形成するように設計されている。GFP-kdelボディーは種子成熟の間、安定に集積されるので(SchmidtおよびHerman 2008)、GFP-kdelを定量することで、種子成熟によるその集積を測定することができる。
【0196】
GFP-kdel系統を、遺伝子ノックダウンの結果としてβ-コングリシニンのα/αサブユニットが欠乏しているトランスジェニック・ダイズ系統(「βCS」)に、遺伝子移入させた。得られた交配体を、GFP-kdel発現について分析される成熟乾燥種子として、視覚的にスクリーニングした。
【0197】
図8に、ダイズにおけるGFP-kdel発現の白色光像(パネルA)および青色光像(パネルB)を示す。ダイズを削り、水和させ、それを使って、二光子励起Zeiss LSM510顕微鏡を使用し、488nmでの励起、512nmの吸収フィルターを使って、GFP-kdelの細胞内分布を撮像した。図8(下側)は、WT遺伝的バックグラウンド(パネルC)およびβCSバックグラウンド(パネルD)におけるGFP-kdelを示す。
【0198】
水和した破片の残りの部分を使って2D広範囲IEF/SDS-PAGEゲルを作製した。図9に関して述べると、βCS種子から得られるタンパク質溶解物をパネルAに示し、WTバックグラウンドで発現させたGFP-kdelから得られる種子タンパク質溶解物をパネルBに示し、βCS×GFP-kdelから得られるタンパク質溶解物をパネルCに示す。また、レプリケート溶解物ゲルのイムノブロット(パネルD)を使って、どのスポットがGFP-kdel(枠で囲んだ部分)であるかを同定した。
【0199】
GFP-kdelは、WTバックグラウンドでは種子プロテオームの約2%を占め、βCSバックグラウンドへと交配すると、それが種子プロテオームの>7%に増える。
【0200】
図10(パネルA)に示すように、水和した破片の一部を蛍光顕微鏡で可視化したところ、得られた画像は、GFP-kdelがβCSバックグラウンドではWTバックグラウンドよりも高レベルに発現されることを示した。
【0201】
次に種子破片の溶解物を1D PAGEで分画した。図10(パネルB)は、WTバックグラウンドでGFP-kdelを発現させる形質転換されたホモ接合型植物から得られるタンパク質の1Dゲルを、βCSバックグラウンドのものと比較して示す。図10(パネルC)は、β-コングリシニンに対する抗体を使ったイムノブロットであり、βCS種子溶解物とβCS×GFP-kdel種子溶解物におけるβ-コングリシニンタンパク質の欠如を裏付けている。
【0202】
GFP-kdel存在量をさらに評価するために、種子溶解物を調製し、蛍光計を使用し、市販のGFPを対照標準としてアッセイした。図11に示す結果は、βCS植物に遺伝子移入されたGFP-kdelコンストラクトが、GFP-kdelで形質転換されたWT植物と比較して、GFP-kdel集積の約3.5〜4.0倍の増加をもたらすという、GFP-kdel蛍光の視覚的印象(図10、パネルA)と、スポット体積存在量(図9)の両方を裏付けている。
【0203】
蓄積してER由来プロテインボディーを形成するプログリシニンとGFP-kdelの同時生産および集積は、2つの異なるER結合型プロテインボディー集団の形成をもたらす。デノボ形成されるER由来プロテインボディーと、導入遺伝子産物のER隔離は、そうでなければ翻訳は不安定なタンパク質の安定性を強化する。ダイズのβ-コングリシニンのα/αサブユニットノックダウンはプログリシニンプロテインボディーを生成させる。また、同様にプロテインボディーを生成させるGFP-kdel系統の遺伝子移入は、GFP-kdelプロテインボディーの形成をもたらし、そのプロテインボディーは、GFP-kdel親系統におけるプロテインボディーと比較して、数とサイズがどちらも大きい。α-ゼインおよびγ-ゼインなどの近縁タンパク質は同時蓄積して、単一のプロテインボディー集団を形成する。これは、発現させた場合に2つの別個のプロテインボディーを形成させ、GFP-kdelの方がプロテインボディーへの蓄積には有利だった、プログリシニンおよびGFP-kdelの結果とは対照的である。これは、プロテインボディーを形成するERにおけるタンパク質の蓄積が、たとえ2つ以上のプロテインボディー隔離タンパク質が合成されたとしても、1タイプのタンパク質だけを含むプロテインボディーを形成するタンパク質種依存的プロセスであることを示している。これは、蓄積物に隔離されるタンパク質が比較的純粋になることを保証するので、バイオテクノロジーのためのプラットフォームとしてプロテインボディー形成を使用するには、潜在的に有利である。その場合は、プロテインボディーを溶解物から直接単離することができ、下流の精製経路が著しく簡略化される。
【0204】
[実施例13]
βCSダイズ系統における異種タンパク質のプロセシング
グリシニンをコードする異種ポリヌクレオチドのプロセシングをWTダイズ植物およびβCSダイズ植物で調べた。
【0205】
図12(レーン1)に示すように、WT(非トランスジェニック)ダイズでは、種子中にプログリシニンは全く検出できなかった。レーン2は、βCS植物において、レベルの上昇したグリシニンが、プロテインボディー中にプログリシニンとして貯蔵されることを示している。プログリシニン/グリシニンのパーセンテージは約24%である。
【0206】
[実施例14]
ダイズ種子におけるβ-グルコシダーゼの生産
本明細書に記載するコンストラクトは、ダイズ種子中でβ-グルコシダーゼなどの酵素を生産するために使用することができる。例えば、アスペルギルス・カワチβ-グルコシダーゼ配列(配列番号35)を、ダイズグリシニン調節配列を持つ遺伝子コンストラクトに、ERシグナル配列およびER保留配列と共に挿入することができる。次に、そのコンストラクトをダイズ組織にバイオリスティックボンバードメントを使って形質転換することができ、植物を再生させ、交配し、安定なホモ結合型植物を得る。次にこれらの植物をβCSダイズ系統に遺伝子移入させる。次にこれらの植物からの目的のタンパク質の生産量を決定する。β-グルコシダーゼの発現レベルが高い植物を、目的のタンパク質のスケールアップ生産のために選択する。
【0207】
[実施例15]
ダイズ種子におけるエキソセロビオヒドロラーゼIの生産
本明細書に記載するコンストラクトは、ダイズ種子中でエキソセロビオヒドロラーゼIなどの酵素を生産するために使用することができる。例えば、改変トリコデルマ・リーセイ配列エキソセロビオヒドロラーゼI(アクセッション番号P26294)を、アラビドプシス(Arabisopsis)キチナーゼERシグナル配列および配列番号22に示すKDEL保留シグナル配列を含むように、改変することができる。KTI由来の遺伝子調節領域(または遺伝子的欠乏を有するダイズ系統中で減少したタンパク質を補償することが見いだされる別のタンパク質の遺伝子調節領域)を使って、タンパク質の発現を駆動することができる。次に、そのコンストラクトをダイズ組織にバイオリスティックボンバードメントを使って形質転換し、次いで植物を、上記酵素の発現に関してホモ接合型の集団へと再生させる。次に、上記酵素を発現させるホモ接合型植物をホモ接合型SP-植物との遺伝子移入に付して、エキソセロビオヒドロラーゼI酵素およびSP-形質に関してホモ接合型である植物を形成させることができる。次に、これらの植物からのエキソセロビオヒドロラーゼIの生産量を決定する。エキソセロビオヒドロラーゼIの発現レベルが高い植物を、このタンパク質のスケールアップ生産のために選択することが好ましい。
【0208】
[実施例16]
種子から得られる目的のタンパク質の加工
タンパク質はダイズ種子粉から精製せずに直接利用することができ、あるいは目的のタンパク質を部分的または実質的に精製することができる。厳密な方法は、生産されるタンパク質のタイプ、および必要とされる純度に依存するだろう。一例として、ひき割りダイズ種子をPBS中の0.35M NaClと、75g/Lの割合で、室温で2.5時間混合することにより、目的のトランスジェニックタンパク質を、成熟乾燥大豆から抽出することができる。次に、その抽出物を数層のチーズクロスに通し、4℃、12,000gで、1時間遠心分離することができる。次に上清を回収し、NaCl濃度を0.4M(pH8.0)に調節する。2回目の遠心分離を4℃、12,000gで10分間行った後、上清を集め、0.45μmニトロセルロースメンブレンを通して濾過することができる。濾液を、前もって50mMリン酸ナトリウムpH8.0中の0.4M NaCl(結合バッファー)で平衡化しておいたSP SEPHAROSE(商標)カラム(Bio-Rad、カリフォルニア州ハーキュリーズ)に、5ml/分の流速でローディングすることができる。カラムは夾雑物が溶出しなくなるまで結合バッファーで洗浄することができる。次に、目的のタンパク質を直線的勾配によって溶出させた後、PBSに対して透析する。次に、精製されたタンパク質を、例えばSDS-PAGEおよび/またはイムノブロットによって分析し、-80℃で貯蔵するか、あるいは凍結乾燥し、必要になるまで室温以下で貯蔵することができる。
【0209】
[実施例17]
ダイズ種子における他の酵素の生産
選択した目的の工業用酵素をコードする合成遺伝子を、グリシニン、KTI、P34、SBP、SMPまたはLEのいずれかに由来する5'および3'調節要素を含有する本明細書記載のダイズ種子特異的遺伝子発現カセットに挿入することができる。KTI、P34、SBP、SMP、またはLEの調節要素が、SP-バックグラウンドにおけるβ-グルコシダーゼなどの工業用酵素の発現を駆動するために使用されるだろう。このコンストラクトは、工業用酵素を、コングリシニンおよび/またはグリシニンのサプレッションに起因するタンパク質再調整プロセスに参加させて、その工業用酵素の合成および集積を強化する。
【0210】
ORFは、好ましくは、遺伝子の5'側に融合されたアラビドプシス塩基性キチナーゼ遺伝子由来のERターゲティングシグナルをコードするヌクレオチド配列と、遺伝子の3'側に融合されたカルボキシ末端KDEL ER保留配列をコードするヌクレオチド配列とを持つ。プラスミドは、形質転換体を選択するためのハイグロマイシン耐性マーカーも含有することができる。形質転換および目的の遺伝子を含有するホモ接合型系統の生成は、本明細書に記載するように行われるだろう。次に、そのトランスジェニック植物を、SP-、βCS、または他の種子貯蔵タンパク質欠乏系統に遺伝子移入させる。次に、種子中のトランスジェニックタンパク質の量が決定されるだろう。目的の工業用タンパク質の発現レベルが高い植物が、そのタンパク質のスケールアップ生産に使用されるだろう。この方法を利用して、目的の工業用タンパク質を増大した収量で得ることができる。
【0211】
[実施例18]
ダイズ種子におけるヒト抗体フラグメントの生産
本明細書に記載する方法は、ダイズ種子中で抗体フラグメントを生産するために使用することができる。例えば生産しようとする抗体フラグメントを選択する。次に、その抗体フラグメントをコードする核酸を、本明細書に記載するようにグリシニン上流および下流調節要素を持つベクターコンストラクトに挿入する。次にそのコンストラクトをエレクトロポレーションを使ってダイズ種子に形質転換する。次に、形質転換された植物を再生し、交配し、安定なホモ接合型植物を得る。次にこれらの植物をβCS系統に遺伝子移入させる。抗体フラグメントの生産を確認する。目的のタンパク質のスケールアップ生産のために植物を成長させる。次に抗体フラグメントを成熟ダイズ種子から単離し、精製する。
【0212】
本明細書では例示のために本発明の具体的な実施形態を説明したが、本発明の要旨および範囲から逸脱することなく、さまざまな変更を加えうることは、上記の説明から理解されるだろう。本明細書において言及する参考文献は全て、引用によりそのまま本明細書に組み込まれる。
【0213】
表4−核酸およびタンパク質配列
【表4−1】

【表4−2】

【表4−3】

【表4−4】

【表4−5】

【表4−6】

【表4−7】

【表4−8】

【表4−9】

【表4−10】

【表4−11】

【表4−12】

【表4−13】

【表4−14】

【表4−15】

【表4−16】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.内在性種子貯蔵タンパク質を野生型植物のそれと比較して少なくとも50%は減少させる1つ以上の種子貯蔵タンパク質の欠乏;および、
b.種子貯蔵タンパク質プロモーターと、該種子貯蔵タンパク質プロモーターに作動可能に連結された、ERシグナル配列、所望のタンパク質コード配列、およびER保留シグナルを含むオープンリーディングフレームとを含む異種ポリヌクレオチド
を含み、その種子が異種タンパク質を種子の全乾燥重量の5%より高いレベルで生産する能力を持つ、トランスジェニック双子葉植物。
【請求項2】
異種ポリヌクレオチドが5'翻訳エンハンサードメインおよび/または3'翻訳エンハンサードメインをさらに含む、請求項1に記載の双子葉植物。
【請求項3】
ER保留配列がERまたはER由来小胞の内腔における異種タンパク質の蓄積を誘発する、請求項1に記載の双子葉植物。
【請求項4】
マメ科、場合によってはマメ目、場合によってはダイズ属のメンバーである、請求項1に記載の双子葉植物。
【請求項5】
ダイズ属のメンバーである、請求項4に記載の双子葉植物。
【請求項6】
ダイズである、請求項5に記載の双子葉植物。
【請求項7】
プロモーターが、クニッツトリプシンインヒビター、ダイズレクチン、免疫優性ダイズアレルゲンP34もしくはGly m Bd 30k、グルコース結合タンパク質、種子成熟タンパク質、グリシニン、またはコングリシニンに由来する、請求項1に記載の双子葉植物。
【請求項8】
翻訳エンハンサードメインが、クニッツトリプシンインヒビター、ダイズレクチン、免疫優性ダイズアレルゲンP34もしくはGly m Bd 30k、グルコース結合タンパク質、種子成熟タンパク質、グリシニン、またはコングリシニンに由来する、請求項2に記載の双子葉植物。
【請求項9】
貯蔵タンパク質欠乏が、クニッツトリプシンインヒビター、ダイズレクチン、免疫優性ダイズアレルゲンP34もしくはGly m Bd 30k、グルコース結合タンパク質、種子成熟タンパク質、グリシニン、またはコングリシニンの1つ以上の欠乏である、請求項1に記載の双子葉植物。
【請求項10】
双子葉植物種子がその種子の内在性貯蔵タンパク質の75%を上回る欠乏を有する、請求項9に記載の双子葉植物。
【請求項11】
5'翻訳エンハンサードメインおよび3'翻訳エンハンサードメインをさらに含み、プロモーターならびに3'および5'翻訳エンハンサードメインが同じ貯蔵タンパク質に由来する、請求項1に記載の双子葉植物。
【請求項12】
異種タンパク質が双子葉植物の種子にその種子の全乾燥重量の約2%より高いレベルまたは約4%より高いレベルまたは約5%より高いレベルまで集積する、請求項1に記載の双子葉植物。
【請求項13】
請求項1に記載の双子葉植物の種子。
【請求項14】
請求項13に記載の種子から得られるトランスジェニックタンパク質。
【請求項15】
異種タンパク質が精製されている、請求項14に記載のトランスジェニックタンパク質。
【請求項16】
標的タンパク質コード配列が酵素またはそのフラグメントをコードする、請求項1に記載の双子葉植物。
【請求項17】
酵素がセルロース分解酵素である、請求項16に記載の双子葉植物。
【請求項18】
セルロース分解酵素が、真菌源、細菌源、動物源、または植物源に由来する、請求項17に記載の双子葉植物。
【請求項19】
セルロース分解酵素が、β-グルコシダーゼ、エキソグルカナーゼ1、エキソグルカナーゼII、エンドグルカナーゼ、キシラナーゼ、ヘミセルラーゼ、リグニナーゼ、リグニンペルオキシダーゼ、またはマンガンペルオキシダーゼである、請求項17に記載の双子葉植物。
【請求項20】
請求項14に記載のタンパク質を含む製品。
【請求項21】
請求項14に記載のタンパク質を含む、商業的に有用な酵素組成物。
【請求項22】
1つ以上の種子貯蔵タンパク質の該欠乏が種子貯蔵タンパク質をコードする核酸のRNAi、アンチセンス、またはセンスフラグメントの存在によるものである、請求項1の双子葉植物。
【請求項23】
a.野生型植物と比較して内在性植物貯蔵タンパク質のレベルを少なくとも50%は減少させる1つ以上の内在性植物貯蔵タンパク質の欠乏;および
b.ERシグナル配列、所望のタンパク質コード配列、およびER保留シグナルを含む配列をコードするオープンリーディングフレームに作動可能に連結された補償タンパク質の遺伝子調節領域を含む異種ポリヌクレオチド
を含み、その種子が異種タンパク質を種子の全乾燥重量の5%より高いレベルで生産する能力を持つ、トランスジェニック双子葉植物。
【請求項24】
使用前に酵素を安定に貯蔵する方法であって、
a.内在性種子タンパク質を少なくとも50%は減少させる1つ以上の植物貯蔵タンパク質の欠乏;および
b.種子貯蔵タンパク質プロモーターと、該種子貯蔵タンパク質プロモーターに作動可能に連結された、ERシグナル配列、目的の酵素、およびER保留シグナルをコードする核酸を含むオープンリーディングフレームとを含む異種ポリヌクレオチド
を含み、その種子が該酵素を種子の全乾燥重量の5%より高いレベルで生産し、かつ、該酵素をトランスジェニック双子葉植物の該種子中に貯蔵する能力を持つトランスジェニック双子葉植物から得られる種子に、該酵素を貯蔵することによる方法。
【請求項25】
双子葉植物中で増加した量の異種タンパク質を生産する方法であって、
a.種子貯蔵タンパク質プロモーターと、該種子貯蔵タンパク質プロモーターに作動可能に連結された、ERシグナル配列、所望のタンパク質コード配列、およびER保留シグナルを含むオープンリーディングフレームとを含むポリヌクレオチドで、植物細胞を安定に形質転換すること;
b.該安定形質転換植物細胞からホモ接合型植物系統を得ること;
c.該安定形質転換植物系統を、内在性種子貯蔵タンパク質を野生型植物のそれと比較して少なくとも50%は減少させる内在性種子貯蔵タンパク質の欠乏を有する植物に、遺伝子移入させること;
d.該遺伝子移入トランスジェニック植物の種子を成長させること;および
e.その種子が異種タンパク質を種子の全乾燥重量の5%より高いレベルで生産する能力を持つ遺伝子移入トランスジェニック植物の種子から異種タンパク質を得ること
を含む方法。
【請求項26】
内在性種子貯蔵タンパク質の該欠乏が、種子貯蔵タンパク質をコードする核酸のRNAi、アンチセンス、またはセンスフラグメントの存在によるものである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
双子葉植物中で増加した量の異種タンパク質を生産する方法であって、
a.種子貯蔵タンパク質プロモーターと、該種子貯蔵タンパク質プロモーターに作動可能に連結された、ERシグナル配列、所望のタンパク質コード配列、およびER保留シグナルを含むオープンリーディングフレームとを含み、かつ内在性種子貯蔵タンパク質をダウンレギュレートさせる能力を持つRNAi配列をさらに含むポリヌクレオチドで、植物細胞を安定に形質転換すること;
b.該安定形質転換植物細胞からホモ接合型植物系統を得ること;
c.該ホモ接合型植物系統の種子を成長させること;および
d.該ホモ接合型植物の種子から異種タンパク質を得ること
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A−8D】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【公表番号】特表2011−526155(P2011−526155A)
【公表日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516781(P2011−516781)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/049097
【国際公開番号】WO2009/158716
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(511002799)ドナルド・ダンフォース・プラント・サイエンス・センター (1)
【氏名又は名称原語表記】Donald Danforth Plant Science Center
【出願人】(511002593)
【氏名又は名称原語表記】The United States of America, As Represented By The Secretary of Agriculture
【Fターム(参考)】