説明

植物のディスプレイ装置

【課題】苔を植え付けた植生パネルをライトアップして展示する植物のディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】窓部12を有し該窓部12が前面側に間隙をおいてパネル24で囲われたディスプレイユニット13と、窓部12に臨んで設置される植生パネル14と、該植生パネル14に植え付けられた低背な植物15を前面側の側方から照らす照明装置16と、植物15への灌水手段17とを少なくともディスプレイユニット13内に備える植物のディスプレイ装置11であって、照明装置16は、パネル24の裏部の間隙において植生パネル14の高さ方向に沿って配設される複数個のLED照明25と、該LED照明25の前側近傍に配置される導光レンズ26とから成り、LED照明25の光を導光レンズ26によって植生パネル14の表面に均一に照射するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苔等の低背な植物が植え付けられた植生パネルをライトアップして展示する植物のディスプレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、植物のディスプレイ装置としては、図9及び図10に示す構成のものが知られている。この植物のディスプレイ装置1は、植物2が植え付けられたシート状の植付け体3と、植付け体3を垂直に保持する枠体4と、枠体4を立設させる脚部材5と、植付け体3の裏側に培養液を供給する培養液供給パイプ6と、培養液供給パイプ6の上部に設けられる培養液槽7とから構成される(特許文献1参照)。
【0003】
このような構成の植物のディスプレイ装置1は、オフィス等の室内に観賞用として展示される。また、植物2に培養液槽7から培養液が供給されるので、生きた植物を長期間に渡って観賞することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平4−35756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この従来例の植物のディスプレイ装置1においては、専用の照明機器を備えていないので、室内の天井照明を利用することとなる。この場合、上方からの光源だけでは明るさが不充分で、且つ不均一であって、ディスプレイ装置1のアートな表現としては不完全なものとなるという問題点を有している。
【0006】
また、室内の天井照明だけでは、植物の成長に不可欠な光の照射が不充分であって、植物の育成に悪影響を与えたり、あるいは植物が枯れたりするおそれがあるという問題点も有している。
【0007】
更に、植物のディスプレイ装置1は、植物の成長に必要な通風性が確保されていない。つまり、植物の育成には適度な空気の流れが必要であり、空気が淀んだ状態にあると植物の育成に悪影響を与えたり、あるいは植物が枯れたりする原因になるという問題点を有している。
【0008】
従って、従来例における植物のディスプレイ装置1においては、照明機器及び照明方法に工夫を凝らしてアートな表現力を向上させ、芸術品としての価値を高めることと、明るさと通風性とを向上させて植物の育成環境を良好にすることとに解決しなければならない課題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来例の課題を解決するための本発明の要旨は、窓部を有し該窓部が前面側に間隙をおいてパネルで囲われたディスプレイユニットと、前記窓部に臨んで設置される植生パネルと、該植生パネルに植え付けられた低背な植物を前面側の側方から照らす照明装置と、前記植物への灌水手段とを少なくとも前記ディスプレイユニット内に備える植物のディスプレイ装置であって、前記照明装置は、前記パネルの裏部の前記間隙において前記植生パネルの高さ方向に沿って配設される複数個のLED照明と、該LED照明の前側近傍に配置される導光レンズとから成り、前記LED照明の光を前記導光レンズによって前記植生パネルの表面に均一に照射するように構成したことである。
【0010】
また、前記灌水手段は、水タンクと、前記植生パネルの上部に沿って設置される上部水受け樋と、前記水タンクから前記上部水受け樋まで連通するホースと、前記水タンクの水を前記上部水受け樋へ送水するポンプと、前記植生パネルの下部に沿って設置される下部水受け樋と、該下部水受け樋に流下した水を前記水タンクに戻す返水ホースとから成り、前記上部水受け樋に送水した水を前記植生パネルの前面側へ伝わせて前記植物に循環させて灌水すること、;
前記ディスプレイユニット内には、前記植物への送風手段を備えること、;
前記送風手段は、前記パネルの裏側の前記照明装置と前記植生パネルとの間隙において該植生パネルの両側部に吹出口を有する送風ダクトと、該送風ダクトに接続する送風ファンとから成ること、;
前記植生パネルに植え付けられた低背な植物は、蘚類、苔類、コケ植物、地衣類、シダ類、小形の種子植物であること、;
前記ディスプレイユニットは、底面にキャスターが設けられて移動可能であること、;
前記ディスプレイユニットは、上部の展示台と下部の飾り台とから構成され、当該展示台と飾り台とが分割可能であること、;
を含むものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る植物のディスプレイ装置によれば、LED照明の光を導光レンズによって植生パネルの表面に均一に照射するように構成したことによって、植物の緑が非常に美しく見える。従って、植物のディスプレイ装置のアートな表現力が向上して、芸術品としての価値を高めることができる。
また、植物の成長に不可欠な光を、LED照明を利用して充分に照射するので、植物の育成が良好であるという種々の優れた効果を奏する。
【0012】
灌水手段は、水タンクと、前記植生パネルの上部に沿って設置される上部水受け樋と、前記水タンクから前記上部水受け樋まで連通するホースと、前記水タンクの水を前記上部水受け樋へ送水するポンプと、前記植生パネルの下部に沿って設置される下部水受け樋と、該下部水受け樋に流下した水を前記水タンクに戻す返水ホースとから成り、前記上部水受け樋に送水した水を前記植生パネルの前面側へ伝わせて前記植物に循環させて灌水することによって、水タンクの水を循環使用できるだけでなく、生きた植物を長期間に渡って観賞することができるという優れた効果を奏する。
【0013】
ディスプレイユニット内には、前記植物への送風手段を備え、該送風手段は、前記化粧パネルの裏側の前記照明装置と前記植生パネルとの間隙において該植生パネルの両側部に吹出口を有する送風ダクトと、該送風ダクトに接続する送風ファンとから成ることによって、植物の成長に必要な通風性が確保できるので、植物の育成が良好であるという優れた効果を奏する。
【0014】
植生パネルに植え付けられた低背な植物は、蘚類、苔類、コケ植物、地衣類、シダ類、小形の種子植物であることによって、苔が持つ独特な落ち着いた雰囲気が醸し出されて、癒しの空間を演出することができる。
また、苔に備わる高い保水力と蒸散作用によって、室内の湿度を快適に保つことができるという種々の優れた効果を奏する。
【0015】
ディスプレイユニットは、底面にキャスターが設けられて移動可能であることによって、ディスプレイ装置を容易に移動することができるという優れた効果を奏する。
【0016】
ディスプレイユニットは、上部の展示台と下部の飾り台とから構成され、当該展示台と飾り台とが分割可能であることによって、ディスプレイ装置の展示方法に種々のバリエーションを持たせることが可能であるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る植物のディスプレイ装置11の正面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】窓部12、化粧パネル24、植生パネル14、照明装置16の平面を破断して略示的に示す説明図である。
【図4】照明装置16の平面を拡大して略示的に示す説明図である。
【図5】図3のB−B線断面図である。
【図6】窓部12、化粧パネル24、植生パネル14、照明装置16、送風手段18の平面を破断して略示的に示す説明図である。
【図7】図6のE−E線断面図である。
【図8】第2実施例の植物のディスプレイ装置35の側面を示す縦断面図である。
【図9】従来例に係る植物のディスプレイ装置1の正面図である。
【図10】従来例に係る植物のディスプレイ装置1の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。まず、図1及び図2において、符号11は植物のディスプレイ装置を示し、このディスプレイ装置11は、窓部12を有し該窓部12が前面側に間隙をおいて化粧パネル(パネル)24で囲われたディスプレイユニット13と、窓部12に臨んで設置される植生パネル14と、植生パネル14に植え付けられた苔(低背な植物)15を前面側の側方から照らす照明装置16と、苔15への灌水手段17とから構成される。
【0019】
ディスプレイユニット13は、下部の飾り台19と、この飾り台19の上部に一体に設けられる展示台21とから構成される。
なお、飾り台19と展示台21とは別体構造にして、これらを上下に分割できるような構成にしてもよく(図示せず)、この場合は、ディスプレイ装置11の展示方法に種々のバリエーションを持たせることが可能である。
【0020】
飾り台19は、箱形に形成され、その底面にはキャスター22が設けられており、ディスプレイ装置11を容易に移動することができる。
また、飾り台19の上部にはカウンター23が設けられており、このカウンター23の上に適宜の装飾品等を載置することができる。
【0021】
展示部21は、箱形に形成され、正面側に窓部12を有し、この窓部12の上端部、下端部、及び両端部は、化粧パネル24で囲われている。なお、図中の符号36は壁部を示し、符号39は天井を示し、符号40は床を示す。
【0022】
植生パネル14は平板状に形成され、図3に示すように、窓部12に臨んで設置すると共に、化粧パネル24の裏側から数cm程度の隙間を開けて配置される。また、植生パネル14は、取付け取外しが可能なように構成されており、別体の植生パネルと適宜に交換可能である。
【0023】
植生パネル14の構造は、防水性のあるパネルの上に水苔又はガーゼ等の吸水素材を張り付け、その上に網を張り付けて(いずれも図示せず)、この網に対して苔15を植え付けたものである。また、植生パネル14にはアクセントとして、図示しない偽石等を取り付けてもよい。
【0024】
苔15は、更に詳しくは、蘚類、苔類などのコケ植物や、地衣類、シダ類、小形の種子植物が含まれる。
【0025】
このような苔15を植え付けた植生パネル14を室内に展示することによって、
1)苔は建物等の壁面緑化に適しており、癒し空間を演出することができ、
2)苔植物も一般の植物と同様に光合成よってCO の削減を行い、
3)他の植物とは異なり、光、水、CO だけを糧にして生育し、
4)屋内の垂直面でLED照明による育成が可能であり、
5)高い保水力と蒸散作用によって、空間の湿度調力を期待できる、
という種々の作用、効果を有する。
【0026】
照明装置16は、図3から図5に示すように、化粧パネル24の裏部の前記隙間において、植生パネル14の高さ方向に沿って配設される複数個のLED照明25と、このLED照明25の前側近傍に配置される円柱状の導光レンズ26とから成る。なお、図中の符号20は、断面が略コ字状で縦長に形成されたカバーを示し、このカバー20の内側にLED照明25と導光レンズ26とが配置される。また、符号24aは側面化粧パネルを示す。
【0027】
導光レンズ26は、凸レンズ柱状体であって、光源の光を所定の方向に導光できるレンズである。この導光レンズ26は、図3及び図4で光の方向Cを示したように、直進するLED照明25の光を植生パネル14の表面に均一に照射するよう導光方向の調整が成されている。このように、植生パネル14に均一に光が照射されることによって、苔15が非常に美しく見えると共に、成長にムラがなく全体的に良好となる。
【0028】
灌水手段17は、図2に示すように、ディスプレイユニット14の底部に設置する水タンク27と、植生パネル14の上部に沿って設置する上部水受け樋28と、水タンク27から上部水受け樋28まで連通するホース29と、水タンク27の水を上部水受け樋28に送水するポンプ30と、植生パネル14の下部に沿って設置する下部水受け樋31と、下部水受け樋31に流下した水を水タンク27に戻すための返水ホース32とから構成される。
【0029】
このような構成の灌水手段17は、ポンプ30を作動させて、水タンク17の水をホース29を通って上部水受け樋28まで送水する。上部水受け樋28の水は、該上部水受け樋28から植生パネル14の上部に渡って張り付けた水苔等(図示せず)を伝って、該植生パネル14に流れることとなり、植生パネル14の苔15が全体的に灌水する。また、下部水受け樋31に流下した水は、返水ホース32を通って水タンク27に戻る仕組みになっている。従って、水タンク27の水は循環して使用されこととなり、苔15を長期間に渡って育成できて、観賞することができる。
【0030】
次に、ディスプレイユニット13内には、図6及び図7に示すように、苔15への送風手段18を設けてもよい。送風手段18は、化粧パネル24の裏側の照明装置16(LED照明25、導光レンズ26)と植生パネル14との間隙において植生パネル14の両側部に縦型スリット状の吹出口33aを有する送風ダクト33と、この送風ダクト33に接続する送風ファン34とから構成される。
【0031】
このような構成の送風手段18は、送風ファン34を作動させると、矢印Dに示すように、空気が送風ダクト33を通って吹出口33aから風が出るので、植物の成長に必要な通風性が確保できて植物の育成が良好となると共に、LED照明25による発熱を冷やす効果がある。
【0032】
以上のように構成される植物のディスプレイ装置11は、壁面緑化として小さな自然空間を室内に取り込むことができるだけでなく、苔15が持つ独特な落ち着いた雰囲気が醸し出されて、癒しの空間を演出することができる。また、苔15に備わる高い保水力と蒸散作用によって、室内の湿度を快適に保つことができる。
【0033】
次に、図8に本発明の第2実施例に係る植物のディスプレイ装置35を示す。この第2実施例においては、前記第1実施例と同一部分には同一符号を付して、その詳細は省略する。
【0034】
即ち、植物のディスプレイ装置35は、壁面埋込式であって、壁部36に窓部37が形成されており、この窓部37が壁パネル(化粧パネル24)で囲まれている。要するに、壁部36及びその内部は、第1実施例のディスプレイユニット13と同様の役目を成す。なお、図8中の符号38は、壁部36に設けられた点検扉であって、この点検扉38を開けて水タンク27の水の補給や清掃等ができるようになっている。
【0035】
また、窓部37を臨んで植生パネル14が設けられており、植生パネル14に植え付けた苔(植物)15を照らす照明装置16と、苔15への灌水手段17とが設けられている。なお、図8には送風手段18が記載されていないが、第1実施例と同様に当該送風手段18(送風ダクト33、送風ファン34)を設けてもよく、あるいは必要なければ設けなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の植物のディスプレイ装置11は、主に苔15を植え付けた植生パネル14をライトアップして展示するものであるが、苔以外の様々な植物を植生パネル14に植え付けてもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0037】
1 植物のディスプレイ装置
2 植物
3 植付け体
4 枠体
5 脚部材
6 培養液供給パイプ
7 培養液槽
11 植物のディスプレイ装置
12 窓部
13 ディスプレイユニット
14 植生パネル
15 苔(低背な植物)
16 照明装置
17 灌水手段
18 送風手段
19 飾り台
20 カバー
21 展示台
22 キャスター
23 カウンター
24 化粧パネル(パネル)
24a側面化粧パネル
25 LED照明
26 導光レンズ
27 水タンク
28 上部水受け樋
29 ホース
30 ポンプ
31 下部水受け樋
32 返水ホース
33 送風ダクト
33a吹出口
34 送風ファン
35 第2実施例の植物のディスプレイ装置
36 壁部
37 窓部
38 点検扉
39 天井
40 床

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓部を有し該窓部が前面側に間隙をおいてパネルで囲われたディスプレイユニットと、前記窓部に臨んで設置される植生パネルと、該植生パネルに植え付けられた低背な植物を前面側の側方から照らす照明装置と、前記植物への灌水手段とを少なくとも前記ディスプレイユニット内に備える植物のディスプレイ装置であって、
前記照明装置は、前記パネルの裏部の前記間隙において前記植生パネルの高さ方向に沿って配設される複数個のLED照明と、該LED照明の前側近傍に配置される導光レンズとから成り、
前記LED照明の光を前記導光レンズによって前記植生パネルの表面に均一に照射するように構成したこと
を特徴とする植物のディスプレイ装置。
【請求項2】
灌水手段は、水タンクと、前記植生パネルの上部に沿って設置される上部水受け樋と、前記水タンクから前記上部水受け樋まで連通するホースと、前記水タンクの水を前記上部水受け樋へ送水するポンプと、前記植生パネルの下部に沿って設置される下部水受け樋と、該下部水受け樋に流下した水を前記水タンクに戻す返水ホースとから成り、
前記上部水受け樋に送水した水を前記植生パネルの前面側へ伝わせて前記植物に循環させて灌水すること
を特徴とする請求項1に記載の植物のディスプレイ装置。
【請求項3】
ディスプレイユニット内には、前記植物への送風手段を備えること
を特徴とする請求項1に記載の植物のディスプレイ装置。
【請求項4】
送風手段は、前記パネルの裏側の前記照明装置と前記植生パネルとの間隙において該植生パネルの両側部に吹出口を有する送風ダクトと、該送風ダクトに接続する送風ファンとから成ること
を特徴とする請求項3に記載の植物のディスプレイ装置。
【請求項5】
植生パネルに植え付けられた低背な植物は、蘚類、苔類、コケ植物、地衣類、シダ類、小形の種子植物であること
を特徴とする請求項1に記載の植物のディスプレイ装置。
【請求項6】
ディスプレイユニットは、底面にキャスターが設けられて移動可能であること
を特徴とする請求項1に記載の植物のディスプレイ装置。
【請求項7】
ディスプレイユニットは、上部の展示台と下部の飾り台とから構成され、当該展示台と飾り台とが分割可能であること
を特徴とする請求項1に記載の植物のディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−239706(P2011−239706A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112956(P2010−112956)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000166432)戸田建設株式会社 (328)
【Fターム(参考)】