説明

植物を空中栽培で生長および発育させるための装置

植物を空中栽培で生長および発育させるための自己完結型装置であって、該装置は、液体栄養液を収容するための貯蔵器と、円錐塔と、動力供給装置と、該装置を通して液体栄養液を移動させるポンプとを備える。装置は液体栄養液を貯蔵器から分配管に鉛直に移動させるためにポンプを用いる。次に、重力は反対端で封止された分配管を介して液体栄養液を下向きに引っ張る。分配管内に生じた圧力は、露出した根群上に、液体栄養液を分配管の開口を介して放散させる十分な力を生じる。栄養液は円錐塔内に放散されたならば、露出した根群によって吸収される。吸収されなかった液体栄養液は、円錐塔の基部に集まり、貯蔵器に戻されて再使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体栄養液が導入される気体環境における空中栽培並びに植物の生長発育に関する。
【背景技術】
【0002】
植物の生長発育用の空中栽培装置が普及する前には、人々は、土の代わりに無機栄養物溶液を用いて植物を生育する方法である水耕法を試みた。水耕法は、土壌において生育されるものよりも速く生長する、より健全な植物を提供すると言われている。水耕法では、植物は土壌がない状態で生育されるが、根は液体環境中に維持される。従って、水耕法が広く受け入れられない理由のうちの1つは、水の継続的な存在による根の適当な通気の不足が根の病気の主な原因であるためである。
【0003】
この問題を解決するために、人々は空中栽培を始めた。一般に知られているように、空中栽培は、土または団粒培地(aggregate medium)を使用することなく、空気またはミスト環境中で植物を生育するプロセスである。空中栽培がそのように需要が高まってきている理由の1つは、土壌および水耕栽培によって栽培された植物の間におけるフザリウム(Fussarium)、ボイトリティス(Boytrytis)、スクレロティウム(Sclerotium)、バーティシリウム(Verticilium)およびリゾクトニア(Rhizoctonia)のような病気の蔓延のためである。土壌で生育される植物の栽培における他の問題は、生長を増進する特殊な栄養物を要することであり、より重要なことには、土地が必要なことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、空中栽培の主体(principals)を所与の規模でより効率的かつ効果的に実施する装置が必要とされる。
本発明は、図面と共に解釈される以下の詳細な説明からより完全に理解され、認識されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
植物を空中栽培で生育するための装置は貯蔵器を備える。前記貯蔵器にはポンプが接続されている。前記貯蔵器には円錐塔が接続されている。前記円錐塔は第1端部および第2端部を有し、第1端部は栄養物供給口を備え、第2端部は前記貯蔵器に接続されている。第1植物支持体および第2植物支持体は、前記円錐塔に沿って配置されている。第1植物支持体は第1直径を有し、かつ第1端部と第2植物支持体との間に配置されている。第2植物支持体は第2直径を有し、第2直径は第1植物支持体の直径よりも大きい。各植物支持体は、種子容器を保持するように適合された少なくとも1つの開口を有する。第1植物支持体の開口は、第2植物支持体の開口の位置から偏倚されている。加えて、前記開口に隣接する植物支持体の表面にはアンカーが設けられている。前記アンカーは、該アンカーが前記開口の少なくとも一部を横切って延在する第1位置と、前記開口から離れた第2位置との間を移動するように、前記植物支持体に旋回可能に取り付けられている。
【0006】
別の実施形態において、前記円錐塔は複数の植物支持体として形成される。各植物支持体は第1円錐壁を有する。第1平面は前記円錐壁から離れて下方に延びている。第2表面は円錐壁から下方にかつ内側に延びて、植物支持体の本体を形成する。第2パネルから延びる第2円錐壁は、液体栄養物用の誘導路を形成する。第2円錐壁は、第1円錐壁よりも長く、第1円錐壁の内径よりも小さい外径を有する。このように、第1円錐壁は、第2円錐壁が隣接する植物支持体の本体の内部に延在することを許容すると同時に、第2円錐壁を内部に受容して支持する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に従って構成された商業用の空中栽培の生長発育システムを示す図。
【図2】本発明に従って構成された空中栽培の生育塔を示す図。
【図3】本発明に従って構成された空中栽培システムの操作を示す概略図。
【図4】本発明に従って構成された生育塔の概略図。
【図5】本発明に従って構成された空中栽培の生育塔の平面図。
【図6】本発明の別の実施形態に従って構成された空中栽培の生育塔の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ニール(Nir)の米国特許第4,332,105号は、多数の植物を空中栽培で生長および発育させるための方法並びに装置について検討している。前記装置では、植物は、その根部の上方で固定して根部を大気に露出させるように適合された穴あき植物支持部材によって支持される。米国特許第4,332,105号に示されるような発明に関する問題は、生長発育ユニットが矩形であり、脚部を有する支持フレームと、そこに取り付けられた周囲支持構造とを備えるということである。従って、栽培することができる植物の数は、横型の発育ユニットを置く土地の大きさによって限定される。加えて、限定された空間内で栽培される植物の量を増大させるために矩形ユニットを積層しようと試みる場合、下方の発育ユニットによって受容される光量が、上部に積層された発育ユニットによって制限されることにより、植物の生長に悪影響を与える。しかしながら、本発明は矩形植物発育ユニットを用いない。本出願人の発明から認識されるように、前記塔の円錐形状および植物を偏倚させて離間することは、より長命な植物およびより大きな根群(root mass)を有する植物が同時に生育されることを可能にする。同様に、偏倚させて離間することにより、異なる寸法の植物に採用され得る開口を備えた異なる寸法のパネルの使用が可能となる。さらに、重力を利用することで、露出された植物の根群に霧吹きするための高価な高圧ポンプを必要とせず、本発明を用いて、より費用効率が高く、エネルギー効率が高く、かつ環境に配慮した方法で、より多くの植物を生育することが可能となる。
【0009】
ショールらの米国特許第4,514,930号は、断続的栄養物供給システムの使用、すなわち、水系植物生育栄養物と、閉鎖室内に吊るされた植物断片に断続的な水霧状(hydro−atomized)ミストとして適用されるホルモン組成物との使用による空中栽培環境における植物の繁殖のための装置および方法について検討している。米国特許第4,514,930号に示されるような発明の1つの不都合は、植物を栽培する異なる容器から、一定量の栄養物、ホルモンまたは他の溶液を引き出すために必要な吸引力を生成するために標準的または共通の蛇口圧力(tap pressure)で水道水を供給する必要があることである。前記栄養物、ホルモン、および植物生長促進組成物は、逆止弁を備えた適当な導管によって接続された別個の容器内に収容されている。従って、水道水圧力によって生成される吸引力なしでは、植物は必要とされる栄養物を受容しない。さらに、一定時間後、水道水の流れは停止されて、該システムは排水される。しかしながら、本出願人の装置は自己完結型(self contained)システムであるので、本発明は、栄養液を導入して混合するために、標準的な蛇口源からの一定の水圧を必要としない。さらに、本出願人の発明において認識されるように、各サイクル後に装置を排水する必要はない。その代りに、本出願人の発明に用いられる液体栄養液は、基部に集まり、貯蔵器に戻されて、再使用される。
【0010】
エンルリッヒ(Enrlich)の米国特許第4,869,019号は、栄養液を収容するための貯蔵器を備えた自己完結型空中栽培システムの使用について検討している。米国特許第4,869,019号は、植物支持体が、鉛直断面において、直立した後壁と、管状カップを有する斜辺前壁とを備えた直角をなす、自己完結型空中栽培装置を示している。このシステムによれば、栄養液が噴霧棒に到達するためには、栄養液はパイプを通って上向きに水平パイプまで推進されなければならない。ポンプが栄養液を上向きに推進しなければならないという事実は、装置の高さ、および一度に生育され得る植物の数に対して有意な制限をもたらす。装置の高さ、よって生育され得る植物の数は、ポンプの出力に直接関連するので、この特徴は問題を生じる。ポンプが弱いほど、鉛直パイプは短くなり、生育される植物の数は少なくなる。しかしながら、本出願人の発明は、露出した根群に対して霧吹きする(mist)、散霧する(fog)、または噴霧する(spray)のに必要な圧力を形成するために重力を用いるので、高価な高圧ポンプを必要としない。
【0011】
図1は、貯蔵器10、ポンプ20、タイマー25、動力供給装置30、および第1端部および第2端部を有する円錐塔60を備えた商業用の空中栽培生長発育システムを示している。第1端部は大気から密封されており、第2端部は貯蔵器10に接続されている。
【0012】
図2を参照すると、円錐塔60は開口165を有する上部160を備え、開口165は円錐塔60の開口165を通って延びる分配管65によって大気から密封されている。分配管65に対する上部160の開口165以外は、図3(75)に示されるように、前記上部は液体栄養液の不要な蒸発や漏出を防止するために大気から密封されている。
【0013】
分配管65が位置する密封された上部を有することに加えて、円錐塔60は、種子容器100を保持する少なくとも1つの開口を備えた外側下方に延びる少なくとも1つのパネル95を有する。この下方外側に傾斜したパネル95を円錐塔60に接続するのは、前記外側に傾斜したパネル95の端部から下方内側へ延びる別のパネル90であり、これは植物支持体140を形成する。下方内側に延びるパネル90と接続する下方外側に延びるパネル95は、円錐塔60のまわりを周方向に延びて、図1に見られるように、複数の植物支持体140を形成する。
【0014】
図1に戻って参照すると、本発明の好ましい実施形態において、植物支持体140の上部パネル95は、塔60から外側に(円錐塔60の軸線から実質的に離れて)、かつ下方へ(第2端部に向かって)傾斜しており、上部パネル95に接続した下部パネル90は、上部パネル95から円錐塔60へ、内側に(実質的に円錐塔60の軸線に向かって)、かつ下方へ傾斜している。上部パネル95は、円錐塔60のまわりに周方向に離間された地点において、図2(100)に表されたような植物、種子または出発培地を支持するための種子容器を保持する少なくとも1つの開口115を備える。図2(100)に表されたような種子容器は、植物、種子または出発培地を維持する孔、メッシュ、バスケットなどを備える。
【0015】
各円錐塔60は少なくとも1つの植物支持体140を備える。好ましいが限定されない実施形態において、複数の植物支持体140a〜140eは円錐塔60に沿って配置されている。垂直に積層された植物支持体による1つの課題は、最上部の植物支持体140aが、円錐塔60を下に照らす光を、より下方の植物支持体140b〜140eなどから、上から下へ順番に遮るということである。すなわち、植物支持体140bもまた、植物支持体140cなどへの光を遮る。更に植物が開口115内で生長して枝や葉を出すにつれて、それらの植物はさらに、陰を生じる植物よりも円錐塔60の第2端部により近い位置において円錐塔60に沿って配置された植物支持体の開口115内で生長する植物を妨げる。
【0016】
ここで、太陽遮断効果を低減するための構造が示されている図2および図5を参照する。支持体140の直径は、円錐塔60の第2端部により接近して配置されるほど増大する。それゆえ、植物支持体140aの直径は植物支持体140bの直径よりも小さく、植物支持体140bの直径は植物支持体140cの直径よりも小さく、次いで植物支持体140cは植物支持体140dの直径より小さい直径を有し、次いで植物支持体140dは植物支持体140eの直径より小さい直径を有する。換言すると、好ましいが限定されない本発明の実施形態では、第1植物支持体140aが第2植物支持体140bに隣接している場合、円錐塔60の第2端部により接近している植物支持体140は、円錐塔60の第1端部に相対的により接近した植物支持体140aの第1直径よりも大きい第2直径を有する。
【0017】
加えて、図5においてより明確に見られるように、各植物支持体140a〜140eは、少なくとも1つの開口115、好ましくは複数の離間された開口115a〜115fを備える。第1植物支持体140aの開口115a〜115fの配置は、隣接する植物支持体140bの開口215a〜215fの配置に対して偏倚されている。換言すると、植物支持体140はすべて円錐塔60のまわりにおいて同軸を有する。隣接する植物支持体140同士は、隣接する植物支持体の開口115eが隣接する植物支持体上の任意の他の開口115と同軸を有さないように、円錐塔60の軸線を中心に互いに対して所定数の角度だけ回転されている。前記開口は同軸を有さないように互いから偏倚されている、すなわち、円錐塔60の軸線を中心として互いに対して回転されている。このように、植物が各開口115から生長する際に、それらの植物は、すぐ下の、すなわち塔60の第2端部により近い植物支持体140で生長している植物に干渉しない。
【0018】
植物が生長するにつれ、質量は根構造から、枝および葉構造、すなわち開口115から上パネル95の上へ延びる植物の部分へシフトする。上パネル95は、使用時には地面に平行ではない。従って、重力は、葉および枝を種子容器100中の根に向かってではなく、地面に向かって引っ張るように作用する。結果として、パネル95より上方に露出する質量がパネル95より下方の質量よりも有意に大きくなるにつれて、植物は開口115から傾く傾向にあり、植物および種子容器100を開口95から「傾ける」。
【0019】
好ましいが限定されない実施形態では、アンカーのようなロック装置が各開口115に設けられている。図5により具体的に見られるように、少なくとも1つのアンカー300は、各開口115に隣接するパネル95に旋回可能に取り付けられている。好ましいが限定されない実施形態において、アンカー300はパネル95に旋回可能に取り付けられた棒として形成される。前記棒は、種子容器100を適所に維持するように開口115を横切って延在する第1位置と、開口115から離れた第2位置との間で両矢印Aの両方向に移動することができる。さらに好ましい実施形態において、アンカー300は縦に並べて、すなわち開口115の両側に提供されてもよい。棒はほんの一例として示されており、開口115を少なくとも部分的に被覆する位置と、開口115から離れた第2位置との間において回転可能である蝶ナット、摺動可能カバーまたは他の構造が用いられてもよい。
【0020】
図3を参照すると、本空中栽培装置は、ポンプ20を制御するタイマー25を用いる。ポンプ20は、本空中栽培システムにおいて用いられる液体栄養液75の供給を行う。空中栽培システムに動力を供給するために用いられる動力供給装置30は、120交流電圧(VAC)の交流電流(AC)システムまたは12直流電圧(VDC)の直流(DC)システムであってもよい。
【0021】
図4を参照すると、前記交流電流または直流電流は太陽エネルギーまたは風力から得ることができる。太陽光発電のような代替エネルギーによって作動させるためには、太陽パネル120、電圧調節器125およびバッテリー130を用いて、ポンプ20およびタイマー25のために必要なエネルギーを提供しなければならない。本願において用いられる「液体栄養液」という用語は、溶液中または混合物中に栄養物を含有する液体を指す。
【0022】
図3を参照すると、タイマー25を設定する様々な間隔が存在するが、好ましい間隔は、1分間の作動(on)および5分間の停止(off)である。本発明の代替実施形態によれば、栄養液の温度は、温度調節要素5の使用によって維持することができる。前記温度調節要素5は、動力供給装置30に接続された冷却装置またはヒーターのように貯蔵器10から独立して離れていてもよいし、または氷嚢のように貯蔵器10内に位置してもよい。pHレベル、温度、および溶液中に含有される栄養物は、前記貯蔵器の内部においてデジタル計測器によって制御され得る。
【0023】
貯蔵器10に接続されたポンプ20は、液体栄養液75を鉛直管50内に上向きに(円錐塔60の第1端部の方向に)押し進める。認識されるように、代替実施形態において、前記鉛直管を貯蔵器に接続する管は、液体栄養液75中の不純物を除去するフィルタ35および/または液体栄養液75が貯蔵器10に戻って流れ込むのを防止する逆止弁15を含んでもよい。前記管はまた圧力計40を含んでもよい。本発明の好ましい実施形態によれば、液体栄養液75は、直径2.54cm〜直径7.62cm(直径1インチ〜直径3インチ)以上に及ぶ鉛直管50を通って上向きに推進される。そのような小さな直径を有する管の使用により、液体栄養液75を貯蔵器10から分配管65へ上向きに推進するためにより少ないエネルギーのみを必要とすることで、該装置をより効率的にしている。
【0024】
液体栄養液75は、少なくとも1つの閉端分配管65に接続された閉端供給管路55を使って円錐塔60内に放散される。前記閉端分配管55は、少なくとも直径1.27cm(直径1/2インチ)であり、円錐塔60の中央を通って下方へ延びている。円錐塔60の中央を通って下方へ延びる閉端分配管65は、反対端において封止されており(85)、その側面上に植物当たり少なくとも1つの開口135を備え、該開口を介して、液体栄養液が霧吹きされる、散霧される、または噴霧される(75)。次に、吸収されなかった液体栄養液は、第2端部の基部105に収集され、帰還路110を通って貯蔵器10へ流れて再使用される。
【0025】
再び図3を参照すると、稼働中、液体栄養液は、ポンプ20によって、貯蔵器10から鉛直管50を通って上向きに推進される。液体栄養液が鉛直管50を通って上向きに推進されて閉端供給管路55へ運ばれたならば、前記液体栄養液を重力が閉端分配管65を通って下向きに引っ張る。分配管65は、反対端85において封止されているため、液体栄養液で満たされている。分配管65が液体栄養液で満たされているとき、下向きに流れる液体栄養液から生じる圧力は、液体栄養液を分配管65から分配管65の開口135を介して放出させる。分配管65へ入来する液体栄養液75から生じる圧力は、円錐塔60内の液体栄養液75の霧吹き、散霧、または噴霧を生じるのに十分である。
【0026】
好ましい実施形態は、円錐塔60の内部を通る分配管65を用いる。しかしながら、分配管が、円錐塔60に沿って個々の植物支持体140にホースをわたすこと(hosing)によって接続されている各円錐塔60の外側に沿って延びることは、十分に本発明の範囲内にある。外部分配管65からの各接続ホースは、少なくとも1つの種子容器100に隣接する植物支持体140の内部に位置する少なくとも1つ噴霧ヘッドで終了する。
【0027】
図4を参照すると、種子容器は、植物の根群70を図2(100)に表されるように、分配管65から放散される液体栄養液75および円錐塔60内に含まれる大気に曝露する。植物80の上部は、人工または天然の光に曝露される。円盤状構造は、曝露された根群70によって吸収されない液体栄養液のための排水路として作用するように意図されている。吸収されなかった液体栄養液は、次に、図3(105)に表されるように円錐塔60の第2末端に位置し、円錐塔60に接続された基部内に蓄積され、帰還路110を通って貯蔵器10に流れて、吸収されなかった液体栄養液の再利用および再使用を可能にする。
【0028】
稼動中、液体栄養液75は、開口135を介して、開口115に配置された各種子容器100の方向に向かって噴霧される。液体栄養物のすべてが種子容器100内の根群70によって吸収されるとは限らない。上記で検討したように、重力の作用として、液体栄養物は円錐塔60の第2端部に集まる。しかしながら、主として水である液体栄養物は、水の表面付着性(surface adhesion properties)の結果として、表面に沿って基部105に移動する傾向がある。従って、重力下で作用する液体栄養物の表面付着性は、使用されなかった液体栄養物を各植物支持体140および円錐塔60の内面に沿って移動させる。換言すると、栄養物が落下する際の栄養物の経路は、底パネル90に沿って隣接する円錐塔60の壁に向かって下向きに、次のより下方の植物支持体140の上パネル95までである。
【0029】
しかしながら、水が開口115および/または種子容器100に接すると、流路は破壊されて、液体栄養物は任意の凹部に貯留する傾向を有する。液体栄養物の貯留は藻の繁殖を促進する。藻の繁殖は、藻が噴霧ジェットを詰まらせたり、システム全体の美観を損ねたり、噴霧される液体栄養物をめぐって所望の植物と争ったりする(雑草のように)ので、システムの全体的な稼働に不利益である。
【0030】
今度は図6を参照すると、ここでは、本発明の別の実施形態に従って構成された全体を参照符号600として示されている塔が提供されている。この実施形態では、塔600が積層した植物支持体440から形成されるように、各植物支持体は隣接する植物支持体内に受容されている。説明を容易にするために、類似した数字は同等の構造を示すために用いられている。植物支持体440bは植物支持体440a〜440cの各々の代表として記載されており、それらの植物支持体中での唯一の差異は、上記で検討したように直径の差である。
【0031】
植物支持体440bは円錐壁291を備える。本体620bは、円錐壁291から下方に遠ざかって延びる第1パネル295を備える。本体620bは、パネル295の縁からほぼ下方に(塔600の第2端部の方向に)延びる側壁293を備える。下部パネル290は、側壁293から下方かつ内側に(塔600の軸線に向かって)延びている。本体620bは、栄養物供給および排水路を収容するために、少なくとも部分的に中空の内部を有する。本体620bが種子容器100を収容し、かつ液体栄養物の供給および排出を容易にするいかなる形状のものであってもよく、上記で検討したように円盤状または三角形状である必要はない。
【0032】
栄養物誘導構造297は、内部本体620bと流体が流れるように連通しており、下部パネル290から栄養物誘導路297の下端へ経路に沿って栄養物を誘導するように設けられている。好ましい実施形態において、栄養物誘導路297は円錐壁である。しかしながら、複数の離間されたパイプ、ひも、または液体栄養物を運ぶことができる表面を有する他の構造が用いられてもよい。栄養物誘導部297は、隣接するより下方の植物支持体440cの上部パネル295を避けるように栄養物の経路を変更する。
【0033】
環状壁297は、本体620bのパネル290から下方へ延びている。植物支持体140でのように、第1パネル295は該パネル内に配置された開口115を備える。更に、好ましいが限定されない実施形態において、第2円錐壁297の長さは、第1円錐壁291の長さよりも大きい。更に、円錐壁297は第1壁291の内径より小さい外径を有する。
【0034】
円錐壁297の外径が円錐壁291の内径よりも小さいため、第1円錐壁291は第2円錐壁297を内部に受容して支持し、その結果、円錐塔600は、複数の植物支持体440a〜440cを互いの中に入れ子にすることによって構成され得る。従って、好ましい実施形態において、第1円錐壁291および第2円錐壁297は、第1円錐壁291の内面と第2円錐壁297の外面との間において、植物支持体440a〜440bを、例として使用の間には接続された状態に維持するが、普通の使用者の手動労力を越えるものを要することなく、分離または結合を可能にするのに十分な張力嵌合(tension fit)を提供するような寸法に形成されている。更に第2円錐壁297の長さは第1円錐壁291の長さよりも大きいため、代替栄養物経路は、隣接するより下方の植物支持体440cの内部に延びており、栄養物は上部パネル295には接触せず、従って植物支持体440cの内面に沿って移動しない。このように、液体栄養物は、隣接する植物支持体のパネルではなく円錐塔600の内部に沿って移動し、所望の通りに、塔600の第2端部(基部105)以外には貯留しない。
【0035】
露出した根群70に霧吹きする、散霧する、または噴霧するために必要な圧力を生じるものは液体栄養液75の下向きの流れであるので、より多くの植物に霧吹きするためには、よりエネルギー効率がよいポンプが用いられる。本発明の実施を通じて形成される三次元的な農業用生育空間により、比較的少ないエネルギーを用いて生育することができる植物の数および品種は、事実上無限である。これにより、本発明は、よりエネルギー効率がよく、費用効果がよく、かつ環境に配慮したものになり得る。
【0036】
したがって、本発明の好ましい実施形態に適用される本発明の新規な特徴について示し、説明し、注目してきたが、形態および詳細における様々な省略、置き換え、および変更が、開示された本発明に対して企図され、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者によって為されることが理解されるであろう。従って、ここに添付される特許請求の範囲によって示されるようにのみ限定されるものとする。また、以下の特許請求の範囲は、本願に記載された本発明の一般的特徴および特定の特徴のすべて、並びに、言語の問題としてそれらの範囲内にあると言える本発明の範囲のすべての記述に及ぶように意図されることが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵器と、
前記貯蔵器に作動可能に接続されたポンプと、
前記貯蔵器に接続された円錐塔とを備える装置であって、前記円錐塔は第1端部および第2端部を有し、第1端部は栄養物供給口を備え、第2端部は前記貯蔵器に接続されており、前記円錐塔は少なくとも1つの第1植物支持体および第2植物支持体を備え、第2植物支持体は第1植物支持体と第2端部との間に配置されており、第1植物支持体は第1直径を有し、第2植物支持体は第2直径を有し、第2直径は第1直径よりも大きい、装置。
【請求項2】
各植物支持体は表面領域を備え、各々の表面領域内には少なくとも1つの開口が形成されており、該開口は種子容器を保持するように適合されており、少なくとも第1植物支持体は、少なくとも第2植物支持体に対して、第1植物支持体の少なくとも1つの開口が第2植物支持体の少なくとも1つの開口から偏倚するように配向されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
各少なくとも1つの開口に隣接する表面領域に旋回可能に取り付けられたロック装置をさらに備え、前記ロック装置は、前記ロック装置が前記少なくとも1つの開口を横切って延在する第1位置と、前記ロック装置が前記開口を横切って延在しない第2位置との間で移動可能である、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
貯蔵器と、
前記貯蔵器に接続されたポンプと、
前記貯蔵器に接続された円錐塔とを備える装置であって、前記円錐塔は第1端部および第2端部を有し、第1端部は栄養物供給口を備え、第2端部は前記貯蔵器に接続されており、前記円錐塔は少なくとも1つの第1植物支持体および第2植物支持体を備え、第2植物支持体は第1植物支持体と第2端部との間に配置されており、各植物支持体は表面領域を有し、各々の表面領域内には少なくとも1つの開口が形成されており、該開口は種子容器を保持するように適合されており、少なくとも第1植物支持体は、少なくとも第2植物支持体に対して、第1植物支持体の少なくとも1つの開口が第2植物支持体の少なくとも1つの開口から偏倚するように配向されている、装置。
【請求項5】
第1植物支持体は第1直径を有し、第2植物支持体は第2直径を有し、第2直径は第1直径よりも大きい、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
各少なくとも1つの開口に隣接する表面領域に旋回可能に取り付けられたロック装置をさらに備え、前記ロック装置は、前記ロック装置が前記少なくとも1つの開口を横切って延在する第1位置と、前記ロック装置が前記開口を横切って延在しない第2位置との間で移動可能である、請求項4に記載の装置。
【請求項7】
空中栽培塔用の植物支持体であって、
上面と、下面と、前記上面に形成されており、かつ種子容器を保持するように適合された少なくとも1つの開口とを有する本体と、
前記上面より本体から離れるように延び、かつ前記本体の内部と流体が流れるように連通した円錐壁と、
前記本体と流体が流れるように連通し、前記本体の下面から延びて前記本体の内部から栄養物を誘導する栄養物誘導部とを備える、植物支持体。
【請求項8】
前記円錐壁は内径を有し、前記栄養物誘導部は外径を有し、前記内径は前記外径よりも大きい、請求項7に記載の支持体。
【請求項9】
前記栄養物誘導部は第2円錐壁である、請求項7に記載の植物支持体。
【請求項10】
上面と、下面と、前記上面に形成されており、かつ種子容器を保持するように適合された少なくとも1つの開口とを有する第1本体と、前記本体の上面より本体から離れて延び、かつ前記第1本体の内部と流体が流れるように連通した円錐壁と、第1本体の内部と流体が流れるように連通し、かつ前記第1本体の下面から延びて前記第1本体の内部から栄養物を誘導する栄養物誘導部とを備える第1植物支持体であって、前記円錐壁の長さは前記栄養物誘導部の長さよりも小さい、第1植物支持体と、
上面と、下面と、前記上面に形成されており、かつ種子容器を保持するように適合された少なくとも1つの開口とを有する第2本体と、前記上面より本体から離れて延び、かつ前記本体の内部と流体が流れるように連通した円錐壁と、前記本体と流体が流れるように連通し、前記本体の下面から延びて前記本体の内部から栄養物を誘導する栄養物誘導部とを備える第2植物支持体であって、第1本体の円錐壁の長さは前記栄養物誘導部の長さよりも小さく、第2本体の栄養誘導部は第1本体の円錐壁内に配置されている、第2植物支持体と
を有する、空中栽培生育塔。
【請求項11】
第1植物支持体は、第2植物支持体に対して、第1植物支持体の少なくとも1つの開口が第2植物支持体の少なくとも1つの開口から偏倚するように配向されている、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
各少なくとも1つの開口に隣接する前記本体に旋回可能に取り付けられたロック装置をさらに備え、前記ロック装置は、前記ロック装置が少なくとも1つの開口を横切って延在する第1位置と、前記ロック装置が前記開口を横切って延在しない第2位置との間で移動可能である、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
第1植物支持体は第1直径を有し、第2植物支持体は第2直径を有し、第2直径は第1直径よりも大きい、請求項10に記載の装置。
【請求項14】
少なくとも1つの栄養物誘導部は第2円錐壁である、請求項10に記載の装置。
【請求項15】
前記円錐壁は前記第2円錐壁と摩擦嵌合を形成する、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
貯蔵器と、
前記貯蔵器に接続されたポンプと、
前記貯蔵器に接続された円錐塔とを備える装置であって、前記円錐塔は第1端部および第2端部を備え、第1端部は栄養物供給口を備え、第2端部は前記貯蔵器に接続されており、前記円錐塔は、種子容器を保持するように適合された少なくとも1つの開口を有する表面領域を備える、装置。
【請求項17】
液体栄養液を収容するための貯蔵器と、
前記貯蔵器に接続された円錐塔であって、前記円錐塔は第1端部および第2端部を備え、第1端部は栄養物供給口を備え、第2端部は前記貯蔵器に接続されており、前記円錐塔は、種子容器を保持するように適合された少なくとも1つの開口を有する表面領域を備え、第1端部は前記円錐塔の第2端部の高度より高い高度に位置する栄養物供給口を備える、円錐塔と、
液体栄養液を前記貯蔵器から前記栄養物供給口に移動させるためのポンプと
を備える装置。
【請求項18】
貯蔵器と、
前記貯蔵器に接続された温度調節要素と、
前記貯蔵器に接続されたポンプと、
前記ポンプに接続されたフィルタと、
前記ポンプに接続されたタイマーと、
前記貯蔵器に接続された円錐塔とを備える装置であって、前記円錐塔は第1端部および第2端部を備え、前記第1端部は大気から閉鎖されており、第2端部は貯蔵器に接続されており、前記円錐塔は種子容器を保持するように適合された少なくとも1つの開口を有する表面領域を備え、第1端部は前記円錐塔の第2端部の高度より高い高度に位置する栄養物供給口を備える、装置。

【図2】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2013−504327(P2013−504327A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528920(P2012−528920)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/048386
【国際公開番号】WO2011/031939
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(512063265)
【氏名又は名称原語表記】SIMMONS,Robert
【Fターム(参考)】