説明

植物処理方法およびそのための手段

クロロフィルを含む採取された植物細胞、またはクロロフィルを含む採取された植物組織中の少なくとも1種の植物化学物質のレベルを変更する方法であって、植物細胞もしくは植物組織は、光合成を行うことができるか、かつ/または、植物細胞もしくは植物組織の表面に青色光を照射することによって青色光吸収(adsorption)を行うことができ、その際、細胞表面または組織表面を照らす青色光の光強度が、細胞または組織内で生化学的プロセスを開始させ、それによって、その中の少なくとも1種の植物化学物質のレベルを変更するのに十分である方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物細胞および/または植物組織中の植物化学物質のレベルを変更するための方法、ならびにそのための手段に関する。詳細には、本発明は、採取された植物細胞および/または植物組織中の植物の一次代謝産物や二次代謝産物などの植物化学物質のレベルを、白色光または可視スペクトルに由来する光の波長から選択される、選択された波長および強度の光の波長をそれらに適用することによって変更するための方法、ならびにそのための手段に関する。
【背景技術】
【0002】
UV-BやUV-CなどのUVスペクトルに由来する光を適用すると、例えば、全植物中の「精油」および二次代謝産物のレベルを上昇させるのに寄与しうることは公知である。しかし、UV-BおよびUV-Cは、ヒト用に取り扱うには問題があり、かつ、癌の疾患プロセスに大いに関係があるとされている。したがって、UV-B光およびUV-C光は、健常な哺乳動物組織にとって潜在的に有害であるとみなされており、使用するには危険であるとみなされている。
【0003】
「精油」は、芳香を有する花および料理用のハーブなどのハーブを含む植物など多くの植物に関連した芳香性の大部分を担っている。精油は、主にテルペノイドからなり、かつ、1,8-シネオール、リモネン、リナロオール、およびβ-オシメンなどの化合物を含みうる。精油中に存在しうる他の化合物、すなわち、テルペノイドではない油としては、メチルカビコール、ケイ皮酸メチル、オイゲノール、およびメチルオイゲノールなどフェニルプロパノイド由来の化合物を挙げることができる。したがって、「精油」という用語は、芳香を有する観葉植物や調理用ハーブなどの植物の芳香性に寄与する、本明細書において示される化合物を包含するために、定性的な意味で使用される。
【0004】
紫外線(具体的にはUV-B)は、フェニルアラニン(phenylalaline)アンモニアリアーゼ(Kuhn, D.N.ら、(1984)Proc.Natl.Acad.Sci. USA、81巻、1102〜1106頁)やカルコン合成酵素(Batschauer, A.ら、(1996)The Plant Journal 9、63〜69頁、ならびにChristie, J.M.および Jenkins, G.I.、(1996)The Plant Cell 8、1555〜1567頁)などの重要な調節酵素に対する作用を介して、植物のフェニルプロパノイド経路の二次化合物のレベルに影響を及ぼすことが公知である。表面のフラボノールおよびフラボノイド(Cuadra, P.およびHarborne, J.B.、(1996)Zeitschrift fur Naturforschung 51c、671〜680頁、ならびに Cuadra, P. ら、(1997)Phytochemistry 45、1377〜1383頁)、アントシアニン(Yatsuhashi, H.ら、(1982)Plant Physiology 70、735〜741頁、ならびにOelmuller, R.および Mohr, H.、(1985)Proc. Natl. Acad. Sci., USA 82、6124〜6128頁)、ならびにベタシアニン(Rudat, A.およびGoring, H.、(1995)J.Expl. Bot. 46、129〜134頁)を含めて、フェノール系化合物のUV-B刺激に関する多くの公開された報告があり、また、これらの化合物は、植物の防御(Chappell, J.およびHahlbrock, K.、(1984)Nature 311、76〜78頁およびGuevara, P. ら、(1997)Phyton 60、137〜140頁)ならびにUV光からの保護(Lois, R.、(1994)Planta 194、498〜503頁、Ziska, L.H.ら、(1992)Am.Jnl.Bot. 79、863〜871頁、および Fiusello, N. ら、(1985)Allionia(Turin)26、79〜88頁)の両方に関係があるとされている。
【0005】
FR3542567では、日数で測定される長期間に渡って、夜間に、ある種の果実、典型的には、未収穫の果実に青色光および/または赤色光を適用することを記載している。さらに、このような光の効果は、インキュベーターにおいて0.1モルショ糖溶液中でインキュベートされたリーフディスクにおいても確認されたようである。この発明の目的は、果実の表皮中のアントシアニン濃度を変更して、消費者にとってそれらがより魅力的に見えるようにすることと思われる。果実の表面を照らす光強度の実際のレベルに関する言及は無いようであり、また、使用される光源とそれらが果実表面から離れるべき距離との任意の関係に関する言及も無いようである。
【0006】
FR3542567において言及されている光源強度は、使用される光波長に応じて1〜200μW/cm2(100マイクロアインシュタインから20,000マイクロアインシュタインまで)の範囲内にあるとされている(例えば、114時間の期間に渡って0.82μW/cm2(82アインシュタイン)の青色光および赤色光1.19W/cm2(119マイクロアインシュタイン)(リーフディスク)、例えば、一晩当たり15分、30夜の間、リンゴの木を10μW/cm2(1000マイクロアインシュタイン)および20μW/cm2(2000マイクロアインシュタイン)の赤色光で処理、例えば、22時〜午前2時の間の4時間、リンゴに約100μW/cm2(10,000マイクロアインシュタイン)の青色光および赤色光)。
【0007】
WO 2004/103060では、光合成を行うことができる採取された植物材料に対する、青色を強化した白色光の適用を記述している。しかし、この国際出願は、標的植物材料表面に個々の光強度で適用される青色光に関する技術的教示を含まない。
【0008】
植物細胞内のある種の植物化学物質のレベルを変更、典型的には上昇させるに際してのUV光の特定のバンドおよび赤外線光の効果に関する観察結果が報告されているが、利用可能な技術分野は、指定された光強度の可視スペクトル波長に由来する光を植物細胞表面または植物組織表面に照射する効果に関しては、言及していないと思われる。
【特許文献1】FR3542567
【特許文献2】WO 2004/103060
【特許文献3】US5665576
【特許文献4】GB0623636.8
【非特許文献1】Kuhn, D.N.ら、(1984)Proc.Natl.Acad.Sci. USA、81巻、1102〜1106頁
【非特許文献2】Batschauer, A.ら、(1996)The Plant Journal 9、63〜69頁
【非特許文献3】Christie, J.M.および Jenkins, G.I.(1996)The Plant Cell 8、1555〜1567
【非特許文献4】Cuadra, P.およびHarborne, J.B.、(1996)Zeitschrift fur Naturforschung 51c、671〜680頁
【非特許文献5】Cuadra, P. ら、(1997)Phytochemistry 45、1377〜1383頁
【非特許文献6】Yatsuhashi, H.ら、(1982)Plant Physiology 70、735〜741頁
【非特許文献7】Oelmuller, R.および Mohr, H.、(1985)Proc. Natl. Acad. Sci., USA 82、6124〜6128頁
【非特許文献8】Rudat, A.およびGoring, H.、(1995)J.Expl. Bot. 46、129〜134頁
【非特許文献9】Chappell, J.およびHahlbrock, K.、(1984)Nature 311、76〜78頁
【非特許文献10】Guevara, P. ら、(1997)Phyton 60、137〜140頁
【非特許文献11】Lois, R.、(1994)Planta 194、498〜503頁
【非特許文献12】Ziska, L.H.ら、(1992)Am.Jnl.Bot. 79、863〜871頁
【非特許文献13】Fiusello, N. ら、(1985)Allionia(Turin)26、79〜88頁
【非特許文献14】Taylors Guide to Herbs 1995年、Buchanan R.およびTenebaum F.編、Houghton Mifflin Co. (ニューヨーク)
【非特許文献15】Hansatech Instruments Ltd.(キングズリン、英国)の取扱い説明マニュアル
【非特許文献16】Foyerら、(1983)Planta 157:239〜44頁
【非特許文献17】WiseおよびNaylor、(1987)Plant Physiol. 83:278〜82頁
【非特許文献18】Yoshimuraら、(2000)Plant Physiol. 123:223〜33頁
【非特許文献19】製造業者の取扱い説明パンフレット(PAL-3 Pocket Refractometer、ATAGO(登録商標)、東京、日本)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
収穫された野菜または収穫された野菜部分に関連する、認識されている問題は、植物の二次代謝産物など植物の植物化学物質のレベルが、収穫後ほぼすぐに低下し始めることである。例えば、収穫された野菜は、冷凍および/もしくは缶詰製造のために加工されるか、または、後で消費者が食べるために、家庭電化器具などの冷蔵庫中に、もしくは、短期間、単に室内の開放された表面に置かれた場合、その中に存在する植物化学物質のレベルの観点から、栄養性内容物の多くを失う。このような植物化学物質には、ビタミン(例えば、ビタミンCおよび/またはビタミンE)、シニグリン、スルホラファン、4-メチルスルフィニルブチルグルコシノラート、および/または3メチル-スルフィニルプロピルグルコシノラート、プロゴイトリン、ならびにグルコブラッシシンなどのグルコシノラート、イソチオシアナート、インドール(グルコシノラート加水分解の産物)、グルタチオン、カロテノイド(β-カロテン、リコペン、およびルテインやゼアキサンチンなどのキサントフィルカロテノイドなど)、フラボノール(例えば、クエルセチン、ルチン)、フラバン/タンニン(クマリン、プロアントシアニジン、カテキン、およびアントシアニンを含むプロシアニジンなど)、フラボン(例えば、アーティチョーク由来のルテオリン)などのフラボノイドを含むフェノール類、クメスタン、リグナン、レスベラトロール、イソフラボン(例えば、ゲニステイン、ダイゼイン、およびグリシテイン)およびレゾル環状酸(resorcyclic acid)ラクトンなどの植物エストロゲン、ならびに有機硫黄化合物、植物ステロール、テルペノイド(カルノソール、ロスマリン酸、グリシルリジンおよびサポニン、ならびにクロロフィルおよびクロロフィリン(chlorphyllin)など)、糖などの抗酸化物質、ならびに、他の食料製品(アントシアニン、バニラ、ならびに他の果実香料および野菜香料など)、ならびに口当たり改良物質などが含まれる。研究により、ある種の植物化学物質の抗酸化特性は、哺乳動物、特にヒトにおける、加齢および癌や心血管疾患などの慢性疾患の影響に対抗する保護に寄与しうることが示唆されている。
【0010】
したがって、植物化学物質は、ヒトなどの哺乳動物種において、それ自体で薬剤化合物としての機能を果たすことができ、または、薬剤として有効な誘導体は、その中間化合物など他の植物化学物質から合成することができ、また、植物から単離することができる。したがって、実質的に薬剤として不活性な可能性がある植物化学物質は、癌などの疾患を治療するための活性物質を合成するための中間体を提供する際に、かつ/または、ヒトなど疾患に罹患している哺乳動物の疼痛管理において、使用されうる。薬剤として有効な化合物の設計および/または提供において有用であることが公知の植物化学物質には、ニチニチソウ(Catharanthus roseus)に由来するビンクリスチンおよびビンブラスチン、US 5665576に記載されているものなどのタキサン、例えば、ウラジロイヌガヤ(Amentotaxus)属、ニューカレドニアイチイ(Austrotaxus)属、プセウドタクスス(Pseudotaxus)属、カヤ(Torreya)属、およびタクスス(Taxus)属の植物などイチイ科(Taxaceae)の植物に由来する、例えば、タイヘイヨウイチイ(T. brevifolia)、ヨーロッパイチイ(T. baccata)、メジアイチイ(T. x media)(例えば、タクスス・メジアヒクシー(Taxus media hicksii)、タクスス・メジアレーデル(Taxus x media Rehder)、ヒマラヤイチイ(T. wallichiana)、タクスス・カナデンシス(T.Canadensis)、タクスス・カスピダータ(T. cuspidata)、タクスス・フロリジアーナ(T. floridiana)、タクスス・セレビカ(T. celebica)、およびタクスス・フンネウェリアナ(T. x hunnewelliana)、タクスス・カナデンシス(T.Canadensis)などのタクスス属の植物に由来する、タキソール(パクリタキセル)、バッカチンIII、10-デスアセチルバッカチンIII、10-デスアセチルタキソール、キシロシルタキソール、7-エピタキソール、7-エピバッカチンIII、10-デスアセチルセファロマンニン、7-エピセファロマンニン、タキソテール、セファロマンニン、キシロシルセファロマンニン、タキサジフィン、8-ベンゾイルオキシ(benxoyloxy)タキサジフィン、9-アセチルオキシタクスシン、9-ヒドロキシタクスシン、タイワンキサム(taiwanxam)、タキサンla、タキサンlb、タキサンlc、タキサンld、GMPパクリタキセル、9-ジヒドロ13-アセチルバッカチンIII、および10-デスアセチル-7-エピタキソール、ならびに、大麻(Cannabis sativa)、インド大麻(Cannabis indica)、およびカンナビス・ルデラリス(Cannabis ruderalis)などのカンナビス植物に由来するテトラヒドロカンナビノール(THC)およびカンナビジオール(CBD)、ならびに、ゲニステイン、ダイゼイン(diadzein)、コデイン、モルフィン、キニーネ、シコニン、アジマリシン、およびセルペンチンなど他の薬剤が含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
緑色植物の一部分やクロロフィルを含む植物細胞など採取された植物材料に、白色光を構成する波長から選択された特定の波長を曝露または誘導することによって、それらの中の植物化学物質のレベルを一過性に上昇させることができることがここに観察された。このような植物化学物質には、本明細書において説明する一次代謝産物および二次代謝産物、ならびに、例えば、本明細書において言及するように、薬剤として使用するための他の植物化学物質が含まれる。結果として、植物二次代謝産物例えば、抗酸化物質など所望の植物由来植物化学物質のレベルは、冷光、すなわち可視光中に存在する波長またはバンドから選択される波長の光を、比較的短い期間、単に適用することによって、採取された植物材料において上昇させることができる。
【0012】
本発明によれば、クロロフィルを含む採取された植物細胞またはクロロフィルを含む採取された植物組織中の少なくとも1種の植物化学物質のレベルを変更する方法であって、前記植物細胞または前記植物組織は、光合成を行うことができるか、または、植物細胞もしくは植物組織の表面に可視スペクトルに由来する青色光のみを照射することによって光エネルギーの吸収を行うことができ、植物細胞の前記表面または植物組織の前記表面を照らす青色光の光強度は、前記植物細胞または前記植物組織内で生化学的プロセスを開始させ、それによって、その中の少なくとも1種の植物化学物質のレベルを変更するのに十分である方法が提供される。
【0013】
「採取された植物組織」は、ブロッコリー小房、サヤインゲン、キャベツ結球など切断された植物部分を含む採取された野菜物質、リンゴ、セイヨウナシなど収穫された果実、および、まだ若いトマトなど他の未熟な果実またはまだ若い果実を含んでよく、かつ、少なくとも青色光をそれに適用すると植物由来植物化学物質を形成することができる任意の形態のプラスチドを含んでよい。このようなプラスチドの例には、エチオプラスト、葉緑体、およびクロモプラストが含まれる。
【0014】
採取された植物細胞または採取された植物組織の表面を照らす青色光の強度のレベルは、植物細胞または植物組織内部の少なくとも1種の植物化学物質のレベルの変化に影響する任意のものでよい。採取された植物細胞または植物組織を照らす青色光の強度は、少なくとも5マイクロアインシュタイン+/-3マイクロアインシュタインでよい。本発明の方法において使用される青色光の強度のレベルは、計画に応じて、5マイクロアインシュタイン+/-3マイクロアインシュタインから400マイクロアインシュタイン+/-50マイクロアインシュタインまで、5マイクロアインシュタイン+/-3マイクロアインシュタインから300マイクロアインシュタイン+/-50マイクロアインシュタインまで、5マイクロアインシュタイン+/-3マイクロアインシュタインから200マイクロアインシュタイン+/-50マイクロアインシュタインまで、50マイクロアインシュタイン+/-10マイクロアインシュタインから150マイクロアインシュタイン+/-30マイクロアインシュタインまで、約100マイクロアインシュタイン+/-20マイクロアインシュタイン、200マイクロアインシュタイン+/-50マイクロアインシュタイン、および250マイクロアインシュタイン+/-50マイクロアインシュタインまでなどの範囲に存在してよい。赤色光と組み合わせた、すなわち、植物材料が青色光および/または赤色光以外の他のいかなる光源にも曝露されない場合の青色光のレベルの例は、0℃〜1℃の冷蔵条件、すなわち典型的な家庭用冷蔵庫中で使用されうる温度を用いる、以下の実施例において与えられる。本発明のプロセスは、青色光のみを使用するか、赤色および青色の可視スペクトルのみから選択される2種の波長の光の組合せを使用するかを問わず、-0.5℃から、採取された植物細胞が光合成活動を引き続きすることができる、より高い周囲温度までの範囲の任意の温度で使用されうる。本発明のプロセスが使用されうる適切な温度範囲は、-0.5℃〜約45℃であり、また、本発明のプロセスの1つの応用では、-0.5℃〜18℃、好ましくは約1℃〜約16℃、最も好ましくは約1℃〜約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16℃など、家庭用冷蔵庫条件および商業用冷蔵庫条件または他の冷却条件下で典型的に認められる冷蔵温度範囲内でこれを使用することができる。当業者(skilled addressee)はまた、本発明の方法が、約+8℃から室温近くの温度(+25℃)の範囲の温度で使用されうることも理解するであろう。典型的には、本発明のプロセスは、周囲の相対湿度が、65%RH、70%RH、75%RH、または80%RHなど、60%〜100%である場合に、採取された植物材料に対して実施される。植物部分表面での青色光の強度のレベルは、第2の光源からの白色光を用いて増大されてよく、または、白色光が使用されない場合には、第2の光源は赤色光を提供して良く、前記光源の両方に由来する、植物材料の表面を照らす光強度の組み合わせたレベルは、計画に応じて、40マイクロアインシュタイン+/-25マイクロアインシュタインから3000マイクロアインシュタイン+/-300マイクロアインシュタインまで、またはそれを超える範囲にあってよい。本発明において使用されうる赤色光および青色光の組合せの強度の範囲の例としては、240マイクロアインシュタイン+/-100マイクロアインシュタインから2000マイクロアインシュタイン+/-200マイクロアインシュタインまで、300マイクロアインシュタイン+/-100マイクロアインシュタインから1500マイクロアインシュタイン+/-150マイクロアインシュタインまで、500マイクロアインシュタイン+/-200マイクロアインシュタイン、40マイクロアインシュタイン+/-10マイクロアインシュタインから100マイクロアインシュタイン+/-25マイクロアインシュタインまで、15マイクロアインシュタイン+/-5マイクロアインシュタインから300マイクロアインシュタイン+/-50マイクロアインシュタインまで、15マイクロアインシュタイン+/-5マイクロアインシュタインから200マイクロアインシュタイン+/-20マイクロアインシュタインまで、15マイクロアインシュタイン+/-5マイクロアインシュタインから150マイクロアインシュタイン+/-15マイクロアインシュタインまで、および40マイクロアインシュタイン+/-10マイクロアインシュタインなどが挙げられる。当然、当業者には、30マイクロアインシュタイン+/-10マイクロアインシュタイン〜約100マイクロアインシュタイン+/-25マイクロアインシュタインの、赤色光、青色光、または赤色光および青色光の組合せのより低い光強度が、冷蔵庫、または家庭内の家庭用道具など他のカバー下の応用例(application)などにおいて使用するのに十分であることが理解されよう。
【0015】
使用する青色光の波長は、選択される1つまたは複数の波長の青色光が、採取された植物細胞または採取された植物組織中に存在する植物化学物質のレベルを変更することができるように、410nm〜490nmの範囲から選択されうる。典型的には、採取された植物材料内部に含まれる植物化学物質のレベルは、本発明に従って、適切な時間幅かつ適切な光強度で所望の波長の光に曝露すると、上昇する。本発明の方法において使用される青色光波長の範囲および値の例としては、420nm〜480nm、435nm〜465nm、および450nm+/-15nmが挙げられる。したがって、当業者には、採取された野菜もしくは緑葉物質または培養状態の緑色植物細胞(コケ細胞など、例えばニセツリガネゴケ(Physcomitrella patens)の細胞)などの植物材料に対して、本発明の方法に従って本発明において使用される青色光の波長が、青色光の波長を構成し、かつ、紫色波長も、より高エネルギーの光波長も含まないことが理解されよう。
【0016】
さらに、採取された植物材料は、第2の光源からの白色光(すなわち、可視スペクトルからの光)と組み合わせた、1つの光源からの青色光に曝露されてもよい。この第2の供給源の白色光は、青色光発光に対するバイアスを有する光を発する従来の発光ダイオード(LED)の場合、およびある種の白色ハロゲン光、例えばGeneral Electric Quartzline EHJ、250W、24V光の場合などには、青色光が既に強化されていてよい。また、第1および/または第2の光源は、600nm〜700nmの範囲にある波長の赤色光をさらに強化されていてもよい。本明細書において説明する標的植物材料を照らす赤色光の赤色光強度は、典型的には、1〜200マイクロアインシュタイン+/-50マイクロアインシュタインの範囲にある。植物材料表面を照らす赤色光強度の例としては、5マイクロアインシュタイン+/-2マイクロアインシュタインから150マイクロアインシュタイン+/-50マイクロアインシュタインまで、30マイクロアインシュタイン+/-5マイクロアインシュタインから150マイクロアインシュタイン+/-50マイクロアインシュタインまで、および25マイクロアインシュタイン+/-10マイクロアインシュタインから100マイクロアインシュタイン+/-20マイクロアインシュタインまでなどが挙げられる。当業者には、植物表面/に対して使用すべき光の実際の強度が、使用される計画および植物材料に依存することが理解されよう。
【0017】
さらに、本発明において使用される1つまたは複数の光波長が、いわゆる「冷光」波長から選択されること、すなわち、本発明において使用される光は、UV波長を含まず、かつ、赤外線波長を構成しない(どちらの形態も、使用するのが潜在的に有害である)ことを理解すべきである。好ましい実施形態では、使用される光の波長またはバンドは、計画および対象の植物化学物質に応じて、青色光の場合は420nm〜490nmの範囲、本明細書において説明する青色光を強化した白色光の場合は400nm〜700nm、および/もしくは、赤色光の場合は600nm〜700nmの範囲に存在するか、またはその範囲内の任意の組合せの光波長に存在する。本発明において使用される赤波長の例は、600nm〜700nm、620nm〜680nm、625nm〜670nmの範囲内、または約640nm+/-15nmから選択されうる。赤色光もしくは青色光、または任意の所与のエネルギー比の赤色光と青色光両方の組合せが、本発明の方法において使用されうる。例えば、青色光:赤色光のエネルギー比は、10:1〜1:10、9:1〜1:9、8:1〜1:8、7:1〜1:7、6:1〜1:6、および5:1〜1:5、例えば、5:2〜2:5、5:3〜3:5、または5:4〜4:5などの範囲内から選択されうる。他の青色光:赤色光の比は、計画に応じて、4:1〜1:4、3:1〜1:3、2:1〜1:2、および1:1の範囲内、ならびにこれらの範囲内の任意の並べ替えから選択されうる。選択される実際の赤色、青色、または青色光:赤色光もしくは赤色光:青色光のエネルギー比は、種、植物部分の年齢、対象の植物化学物質、および計画に依存しうる。典型的には、青色光のエネルギーの1単位は、約15マイクロアインシュタイン+/-3マイクロアインシュタインでよく、赤色光のエネルギーの1単位は、約2マイクロアインシュタイン+/-1マイクロアインシュタインでよい。このような推定から、葉表面などの植物材料上に照射される、赤色光もしくは青色光の光強度、または青色光:赤色光の比が決定されうる。当然、当業者には、使用される植物細胞または植物組織に応じて、本明細書において概説する波長の光に植物細胞または植物組織が曝露される時間の長さが、計画と共に変化することが理解されよう。適切には、植物化学物質レベルに対する影響を観察するために、植物細胞または植物組織が本発明において使用される波長に曝露されてよい時間の長さは、所定の時間幅である。時間幅は、連続的な時間幅または間欠的な時間幅から選択されうる。典型的には、時間幅は、所定の頻度の間欠的な時間幅であり、これは、前記間欠的な時間幅よりも持続期間がより長い時間帯に渡っている。時間帯は、任意の長さの持続期間でよく、最長96時間以上、持続してよい。間欠的な時間幅が使用される場合、間欠的な時間幅は任意の長さでよく、計画、植物部分の種類、および必要に応じて、例えば、1秒から120分まで、1分〜60分、5分〜40分、10〜30分、10〜20分、および15分などの範囲でよい。当然、当業者には、説明した光源が対象の植物材料を照射していない、光パルス間の時間幅が存在するであろうことが理解されよう。さらに、当業者には、個々の光パルス間の前記時間幅が、間欠的な光間隔の持続期間より短くても、間欠的な光間隔の持続期間と同じでも、または間欠的な光間隔の持続期間より長くてもよいことも理解されよう。典型的には、植物化学物質のレベルは、本明細書において言及するように、短い時間幅で植物組織または植物細胞培養物に光を適用すると上昇する。
【0018】
本発明の方法を実施する際のさらなる変形では、前記1つまたは複数の光源からの光が、連続的な時間幅で、所定の時間幅の間、植物細胞または植物組織の表面に照射される。連続的な時間幅は、最長96時間以上持続する任意の長さの時間でよい。連続的な時間幅の例としては、168時間、144時間、96時間、および72時間などが挙げられる。連続的な間隔が選択されうる範囲の例としては、30分〜96時間、30分〜96時間、30分〜48時間、30分〜24時間、30分〜12時間、および30分〜8時間などが挙げられる。当然、当業者は、分数または時間数が、計画、植物の種類、および必要性に応じて選択されることも理解するであろう。
【0019】
別の態様では、本発明は、本明細書において概説する波長の光への曝露、またはそれによる照射に応答することができる任意の植物組織に対して使用することができる。好ましくは、植物組織は、光合成ならびに/または青色光および赤色光吸収を行うことができる組織を含む。本発明の方法において使用されうる植物材料としては、すべての緑色野菜および緑色種子、例えば、エンドウマメ、サヤインゲン、ホウレンソウ、スノーエンドウ(マンジュ・トゥー)、キャベツ(Brassica oleracea)由来の種、例えば、ブロッコリー、グリーンキャベツ、赤キャベツ、芽キャベツ(Brussels sprout)、コールラビ、カリフラワー、および白キャベツなど、ならびに緑色植物材料などすべての植物材料、例えば、クロロフィルを含む細胞、緑色の茎、がく、葉、および、先に説明したような波長の光に応答することができる同種のものが挙げられる。本発明の方法に従って処理されうる他の植物材料は、本明細書において説明するイチイ目の植物など野菜以外の供給源に由来する緑色針状葉、茶葉、ならびに、ニセツリガネゴケ由来のコケ細胞およびコケ組織(例えば、原糸体)などバイオリアクター中の植物細胞培養物において増殖させた細胞などの緑色材料、ならびに他の植物細胞培養物、例えば、カルス細胞培養物、レムノスポラ(lemnospora)種の培養物、藻類、またはさらに、体細胞胚クラスター、および、トマト、リンゴ、ブドウ、まだ若い(未熟な)バナナ、マンゴ、キウイフルーツ、およびパイナップルなどの果実でよい。当然、当業者には、「果実」は、スーパーマーケットまたは青果店における買い物客という文脈で使用されることが理解されよう。
【0020】
別の実施形態では、人工光源からの冷光中に存在する波長の光から選択される少なくとも1つの波長の光に植物細胞または植物組織を曝露することによって、ある環境における生きた植物細胞または植物組織中の植物化学物質含有量を増加させる方法が提供される。当然、当業者には、本明細書において説明し、かつ、本発明において使用する光が、植物細胞または植物組織、例えば採取された組織の植物化学物質プロファイルを変化させることが理解されよう。好ましくは、光源の組合せとしては、600nm〜700nm、好ましくは620nm〜680nm、より好ましくは625nm〜670nm、一般に約640nm+/-15nmの範囲内の波長から選択されうる波長の赤色光が挙げられる。赤色光もしくは青色光または赤色光および青色光の組合せ、または任意の選択されたエネルギー比の赤色光および/もしくは青色光と白色光との組合せが、本発明の方法において使用されうる。好ましい実施形態では、前記植物細胞または植物組織は、カバーの下に置かれてよい。「カバーの下」とは、細胞または組織が、例えば、以下に言及するように、冷凍もしくは缶詰製造または熱処理もしくは調理などさらなる加工をする前の食品加工ステップの間に曝露される際に、カバーの下に置かれることを意味する。
【0021】
採取された植物細胞または採取された植物組織を熱処理することから利益が得られる場合には、本発明の方法は、植物組織のタイプおよび計画に応じて、+35℃〜約+45℃の範囲内の温度で、例えば、+40、+41、+42、+43、+44、または+45℃で、数秒、例えば30秒から最長数分間、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15分以上の期間、使用してよい。当然、当業者には、熱処理温度が、熱処理ステップに供される植物材料の全般的生存力に有害な影響を及ぼさないような温度であるべきことが理解されよう。
【0022】
別の態様では、カバー下の植物細胞または植物組織を採取する方法であって、前記植物細胞または植物組織が、1つまたは複数の人工光源からの本明細書において説明する光に曝露される方法が提供される。
【0023】
また、本発明による方法によって得ることができ、かつ、本発明の方法において使用される波長の光に曝露されていない植物材料または植物細胞と比較した場合に、レベルの変化した植物化学物質、典型的にはレベルの上昇した植物化学物質を有する、採取された植物材料または植物細胞も、本発明の態様として含まれる。
【0024】
「カバー」は、一般的用語として理解されるべきであり、また、植物材料または植物細胞を置くことができる容器、例えば、組込みの光源をその中に有する閉鎖系容器、例えば、所定の時間幅の間、要望に応じて作動させることができる組込みの光源を含む冷蔵庫装置を意味すると解釈してよい。したがって、本発明の方法を実施するために、以下に説明する様式で青色光を発することができる光源を含む従来の冷蔵庫などの冷却手段を利用することができる。あるいは、「カバー下」は、採取された植物材料が、植物材料の缶詰製造、冷凍などの加工作業中、または缶詰製造のため、もしくはベビーフード製造、例えばピューレなど、およびさらに加工された食品、例えば、スープ、野菜ベースのソースなどのために食品を調理する直前に、短期間に渡って、適切な1つまたは複数の波長の光を生じる1つまたは複数の光源に曝露される、加工工場を意味すると解釈してよい。
【0025】
したがって、本発明の別の態様として、本明細書において説明する光強度で、本明細書において説明する波長の光に生きた植物細胞を曝露することによる食品加工方法によって得ることができる加工食品が提供される。光の適切な波長は、本明細書において説明するものであり、これらは、本明細書において説明する適切な所定の時間幅で適用される。本発明のさらに別の態様は、少なくとも1つの人工光源に由来する本明細書において説明する光波長に生きた植物細胞を曝露するステップを含む食品加工方法を提供する。典型的には、光の1つまたは複数の波長は、本明細書において説明する波長から選択され、かつ、曝露された植物細胞および/または採取された植物組織の植物化学物質プロファイルを変更するのに十分な所定の期間、適用される。
【0026】
「植物細胞」は、切断または採取された場合に、ヒト嗅覚によって検出可能な芳香性を示す植物部分または植物組織も含む。このような植物は、天然に、例えば、切断されたハーブの場合には、切断された葉に由来する芳香性を示しうる。植物細胞もしくは植物組織または植物部分には、広葉のハーブなどシソ科(Labiatae)のメンバーが含まれる。広葉のハーブの適切な例としては、バジル、オレガノ、セージ、コリアンダー、イノンド、マヨラナ、およびタイムが挙げられる。本発明に従って処置することにより利益を受けうる、切断されたハーブなどの他のハーブには、チャイブ、ニンニク、ベイリーフ、レモンバーム、ミント、ラベンダー、パセリ、ウイキョウ、例えば、ブロンズフェンネルおよびより一般的なウイキョウなどが含まれる。本発明を適用することができる一般的ハーブのより完全なリストは、Taylors Guide to Herbs 1995年、Buchanan R.およびTenebaum F.編、Houghton Mifflin Co. (ニューヨーク)において確認することができ、この参考文献である指導書の教示は、本明細書によって、本明細書の教示に組み入れられる。当然、当業者には、本発明に従って光に曝露される際に前記植物細胞または植物部分が生きていて、かつ、冷光に由来する光刺激の適用に応答できることが理解されよう。
【0027】
植物細胞または植物部分は、採取された植物細胞または植物組織が、本明細書において概説する波長および持続期間の光の適用に応答できる限り、任意の成長段階に採取してよい。好ましい実施形態では、広葉のハーブの採取された植物細胞または植物組織は、3葉期〜4葉期、最も好ましくは、バジルなどの料理用ハーブの場合には5葉期に、本発明において使用される波長の光に曝露されてよい。料理用ハーブや緑色野菜などの植物細胞および/または植物組織は、加工(例えば、凍結乾燥、ソース、スープ、缶詰商品などの加工食品への添加)直前に、すなわち、そのような植物から切断物を採取した後、および/または、例えばドライハーブとして加工するために若い植物を提供した後に、本明細書において説明するようにして、最も有用に曝露されることが想定される。採取直後に短期間、本明細書において概説するように光で処理したドライハーブ、特に、5葉期に測定されたものは、本明細書において説明する光に曝露されていない対照と比べて増大した芳香性を示すと考えられる。
【0028】
1つまたは複数の人工光源は、発光ダイオード、またはさらには、所望の波長の光を通過させるフィルターを含む白色光源など、任意の適切な従来型のものでよい。使用される光エネルギーが影響する、例えば、光化学系II反応中心での酸素発生を誘導もしくは飽和させるか、かつ/または、一過性の光酸化ストレスおよび/もしくは中程度の光合成電子輸送阻害を誘発する、すなわち引き起こすのに十分であることを条件として、光源は、採取された材料から任意の距離の位置に配置してよい。光エネルギーおよび光組成の最適化は、例えば、従来の方法を用いて(例えば、Hansatech Instruments Ltd.、(キングズリン、英国)の取扱い説明マニュアルおよびソフトウェアに従って)、酸素発生およびクロロフィル蛍光を観察することによって実施することができる。採取された植物材料の平方単位(例えば、cm2、m2など)当たり最大量の照射をもたらす位置に光源を配置することが好ましい。適切には、カバーされる領域のサイズ、例えば、加工工場中の加工区画のサイズ、または、例えば、時間測定手段を利用し、それによって、本明細書において指示し、かつ本明細書において説明するような波長の光を発することによって、手動的もしくは自動的に作動させることができる適切な光源を装備した、冷蔵庫もしくは電子レンジや磁電管など他の容器のサイズに依存する。別法として、本明細書において説明する波長の光に植物部分または植物細胞を曝露するために特に設計された独立した容器も使用されうる。別の代替案では、光源の数は、わずか1つの光源から、直列に、かつ/または並列に並べられた全「バッテリー」の光源でよく、例えば、食品加工工場の設定において、各光源は、本明細書において説明する波長の光への植物材料の曝露に影響して、その中に存在する植物化学物質レベルの有意な変化、好ましくは、所望の植物化学物質の増加をもたらすように、互いから妥当な間隔だけ離して適切に置かれる。
【0029】
本発明の別の実施形態では、カバー下の植物細胞または採取された植物組織を加工する方法における、人工光源からの青色光の使用が提供される。好ましくは、青色光の波長は、本明細書において説明するようにして見出される光の波長から選択される。青色光は、本明細書において説明する他の波長の光と組み合わせて使用してよい。
【0030】
別の実施形態では、採取された生植物材料中の植物化学物質含有量を増加させるための本明細書において説明する方法における、少なくとも青色光の使用が提供される。好ましくは、前記植物材料は、カバー下に配置される。
【0031】
本発明の別の実施形態では、冷凍野菜(例えば、ホウレンソウ、もしくはアブラナ属の種に由来する植物部分)または冷凍種子(例えばエンドウマメ)、瓶入りまたは缶入りの調味料、例えば、肉、魚、および家禽料理用のソース、矯味剤、例えばタペナード、サラダドレッシング、オリーブ油、ヒマワリ油などの調理用油、スープ、パスタ、ならびにチーズなどヒト用の食料品の製造における、本明細書において説明するように青色光に曝露される植物部分の使用が提供される。
【0032】
本発明の別の応用として、青色光もしくは赤色光、または赤色光および青色光の組合せを、温室設定において生育中の植物に対して使用してよい。オランダ、スカンジナビア諸国、ベルギー、ドイツ、および英国など北半球諸国では、多種多様の観葉植物、温室で生産されるレタス、トマト、および他のサラダ用野菜がカバー下で栽培されている。照明は、典型的にはナトリウムランプからの黄色光の形態で供給される。しかし、このような照明システムは、熱として多くのエネルギーを失い、かつ、天然太陽光線の青色、赤色、または赤色および青色のスペクトルを再現しない。植物に照射される青色光および/または赤色光の光強度を調節することによって、植物の生育段階を最適化し、かつ、結実、草姿(plant habit)、および収量を改善することが可能である。したがって、最適な健康状態にあり、かつ、本明細書において言及する植物化学物質の全量を有する植物を生産することができる。本発明のさらに別の実施形態では、温室または水耕栽培システムにおいてカバー下で栽培される植物の結実を改善するに際しての青色光および/または赤色光の使用が提供される。さらに、本発明の別の態様として、温室または水耕システムにおいて栽培される植物の草姿を最適化するに際しての青色光および/または赤色光の使用が提供される。このような使用は、観葉植物、サラダ用植物、例えばレタス、トマト、トウガラシなど、温室中のカバー下で栽培される植物のより効率的な生産を提供する。
【0033】
本発明の別の態様によれば、前述の態様のうちいずれかによる方法を実施するための装置が提供され、この装置は、曝露チャンバーを画定する囲い、複数の方向からの光への曝露を可能にするような様式および位置で、その中の植物材料を支持するための、チャンバー中に配置された支持手段、ならびに、青色光を発生させるため、および、発生させた光を、所定の期間、かつ、複数の方向から、支持された植物材料に適用して、複数の側面からの光に材料を曝露させるための、光を発生させかつ適用する手段を含む。
【0034】
囲いは、好ましくは、任意の適切な容量形態、例えば、立方体のハウジングの形態を有し、側面の一部またはすべてが閉じられている。このようなハウジングは、家庭用用途に適合する、例えば、電子レンジと概念が類似した種類の比較的小型の器具から、商業的な食品調製建物、例えばレストランにおいて使用するのに適した中程度のサイズの機器を経て、食品加工工場など産業的な場面での大量の材料処理に適した大型サイズの設備まで様々でよい。より大きなサイズの応用例の場合、囲いは、建物の一体化されたまたは装着された内部要素に相当する、壁、土台、および天井によって境界を定められた構造体の形態をとってよい。
【0035】
囲いによって画定された曝露チャンバーは、同様に、それが、意図される方向すべてにおいて、支持された植物材料に光の通路を供給するのに十分な大きさであるべきだが、好ましくは、材料に対するそれらの通路が、必要な強度の光の適用を徹底させるために、エネルギーの過度の消費が必要であるような長さとなるほどには大きくはないということのみを条件として、任意の適切な体積のものでよい。
【0036】
その基本的な形態の支持手段は、植物材料を置くことができる表面を形成する、棚などの部材を含む。この場合の部材は、ガラスや透明プラスチックなどの透明材料からの構築によろうと、光を通過する穴を有する本質的に透明ではないか、または不透明な材料、例えば、格子、メッシュ、または穴の開いたプレートからの構築によろうと、光透過性であるべきである。支持手段の他の形態も、植物材料の種類に応じて、同様に可能であり、例えば、安定な形態の場合には、材料の末端部分の下に係合可能なストリップ、材料を固定し、かつ伸ばすか、もしくは吊り下げるためのクランプもしくはクリップ、材料を点で支持するか、もしくはさらには、材料を串刺しにするための1つもしくは複数のピン、または、材料、特にばらばらの材料を受けるための容器(透明もしくは穴開き)がある。光が、材料のいくつかの側面に到達することができ、その結果、材料の十分な比率の面積が光に曝露されるという条件で、多数の他の形態の支持手段が可能である。
【0037】
さらに、支持手段は、植物材料が、固定された位置のチャンバー中に存在するべきであるか、またはチャンバーを通って移動するべきであるかに応じて、固定されていても、可動性でもよい。材料が移動する場合、支持手段は、固定されていてよく、また、囲いそれ自体は、光を発生させかつ適用する手段を含めて、支持手段に対応して、かつ支持された材料中で、おそらくは往復様式で移動できるように、可動性でよい。可動性支持手段または可動性囲いの場合、囲いは、入口および出口または組み合わせられた出口/入口を規定する1つまたは複数の開口部と共に形成されてよく、その開口部または各開口部は、任意選択で、ドアまたは他の閉鎖手段によって閉鎖可能である。
【0038】
光を発生させかつ適用する手段は、好ましくは、複数の光源、適切に配置された適切な数の反射板を備えた単一の光源、または、反射板と組み合わせた複数の光源を含む。反射板の使用により、光強度のいくらかの減弱という犠牲を払ってエネルギーコストが減少され、この減弱は、曝露チャンバーのサイズおよび処理すべき植物材料の量に応じて考慮してもしなくてもよい。したがって、1つまたは複数の光源および反射板の数および配置は、好ましくは、装置の構造パラメーター、および同様に個々の処理方法のパラメーターに応じて選択される。サイズの小さな器具では、光源は、電源供給装置を提供する際の便宜のため、同じ一般的領域、例えば、チャンバーの天井に据えられてよく、また、反射板は、チャンバーの土台の領域に提供される。供給源の光出口の表面および反射板の反射面の平面は、選択された1つまたは複数の波長の光が、支持された植物材料の上面、底面、および側面に直接向けられることを徹底するように向きを定めることができる。このような光源は、既に言及したように、単一のランプ、または並べられたランプ、例えば、白熱電球または蛍光灯の光でよい。反射板は、例えば、鏡、磨かれた金属パネル、または、適切に方向付けられた囲い内表面に貼り付けられた、単に反射性のコーティングもしくはカバーでよい。本明細書において説明する好ましい波長範囲の光の発光は、選択された個々の波長の光のみを通過させる伝達フィルターを介して、その供給源または各供給源によって発される光を伝達することによって実現することができる。同様に、支持された植物材料に光を適用する持続期間は、時間選択設備を伴う時間測定手段を用いて、1つまたは複数の光源の動作電圧を切り替えることによって管理することができる。しかし、光への曝露の持続期間の管理は、植物材料の選別または遮蔽、1つまたは複数の光源および1つまたは複数の反射板の選別または遮蔽、ならびに選択可能に反射性の表面に影響して光伝達可能にすることを含む、他の光学的方法によって、同様にうまく実施することができる。あるいは、処理された植物材料は、静止状態での休止時間後の突出しによって、または、所定の期間、その中を移動した後のチャンバーからの離脱によって、所定の期間の終わりに曝露チャンバーから取り出すこともでき、このような移動は、材料を支持する支持手段の移動と、1つまたは複数の光源および任意の随伴する反射板を含む囲みの移動の両方を包含する。
【0039】
光を発生させる手段は、様々な形態の光に対する複数の光源、例えば、1つまたは複数の青色光発光ダイオード(LED)などの青色光発光源、および、1つまたは複数の従来の白色光発光ダイオード(LED)などの白色光発光源を含んでよい。また、光を発生させる手段は、1つまたは複数の赤色LEDなど1つまたは複数の赤色光発光源も含んでよい。選択された波長の光波長を発する単一の光源が本発明の装置で使用されるか、異なる波長の光の組合せを発する複数の光源が使用されるかは、装置の性質および目的に依存する。
【0040】
本明細書に引用されるすべての参考文献の教示は、本明細書に組み入れられることを理解すべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下の実施例を参照して、本発明を以下に説明する。これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものと決して考えるべきではないことを理解すべきである。
【0042】
【表1】

【0043】
(実施例)
A.ブロッコリー
対照:試料1.1〜1.3は、スーパーマーケットから入手したブロッコリー小房である。試料中のビタミンCレベルをアッセイ法(Foyerら、(1983)Planta 157:239〜44頁、WiseおよびNaylor、(1987)Plant Physiol. 83:278〜82頁、Yoshimuraら、(2000)Plant Physiol. 123:223〜33頁)によって測定した後、光で処理した。
【0044】
試料2.1〜2.3は、i)青色光を強化した白色光(光源と試料の距離、50cm)で4時間(ハロゲンランプ(Quartzline EHJ、250W、24Vの光、General Electric社から入手)からの青色を強化した白色光600μE+/-50)、およびii)さらに、15分のパルス(15分間オン、15分間オフ、光源と試料の距離、30cm)の青色光のみ(20μE+/-3、LED(333/2UBC/C340、Everlight Electronics社(台北236台湾)によって供給されたGaN/SiC)によって生成させた)を同じ4時間に渡って適用して処理したブロッコリー小房である。
【0045】
ビタミンCレベルは、対照において使用したのと同じアッセイ法を用いて測定した。
【0046】
試料3.1〜3.3は、青色光を強化した白色光のみ(光源と試料の距離、50cm)で4時間(ハロゲンランプ(Quartzline EHJ、250W、24Vの光、General Electric社から入手)からの青色を強化した白色光600μE+/-50)処理したブロッコリー小房である。
【0047】
結果を表1に示す。
【0048】
B.ロケット
対照:試料4.1〜4.3は、スーパーマーケットから入手したロケットレタスの試料である。試料中のビタミンCレベルをアッセイ法(Foyerら、(1983)Planta 157:239〜44頁、WiseおよびNaylor、(1987)Plant Physiol. 83:278〜82頁、Yoshimuraら、(2000)Plant Physiol. 123:223〜33頁)によって測定した後、光で処理した。
【0049】
試料5.1〜5.3は、i)青色光を強化した白色光(光源と試料の距離、50cm)で4時間(上記のブロッコリーの実施例で説明したようなハロゲンランプからの青色を強化した白色光600μE+/-50)、およびii)さらに、15分のパルス(15分間オン、15分間オフ、光源と試料の距離、30cm)の青色光のみ(50μE+/-5、上記のブロッコリーの実施例で使用したLEDによって生成させた)を同じ4時間に渡って適用して処理したロケットレタスの葉である。
【0050】
ビタミンCレベルは、対照において使用したのと同じアッセイ法を用いて測定した。
【0051】
試料6.1〜6.3は、青色光を強化した白色光のみ(光源と試料の距離、50cm)で4時間(前述のハロゲンランプからの青色を強化した白色光600μE+/-50)処理したロケットレタスの葉である。
【0052】
ビタミンCレベルは、対照において使用したのと同じアッセイ法を用いて測定した。
【0053】
結果を表1に示す。
【0054】
C.エンドウマメ
上記に提供したブロッコリーおよびロケットの試料に関して説明したようにして、エンドウマメを処理した。ビタミンCレベルの変化を観察した。
【0055】
D.グリーンキャベツ
スーパーマーケットから入手したグリーンキャベツを、上記に提供したブロッコリーおよびロケットの試料に関して説明したようにして処理した。ビタミンCレベルの変化を観察した。
【0056】
E.サヤインゲン
スーパーマーケットから入手したサヤインゲンを、上記に提供したブロッコリーおよびロケットの試料に関して説明したようにして処理した。ビタミンCレベルの変化を観察した。
【0057】
F.スノーエンドウ
スーパーマーケットから入手したスノーエンドウ(マンジュ・トゥー)を、上記に提供したブロッコリーおよびロケットの試料に関して説明したようにして処理した。ビタミンCレベルの変化を観察した。
【0058】
冷蔵温度で赤色光および青色光を適用することによる、収穫された野菜の栄養価の改善
以下に、採取された新鮮な植物農作物を家庭用冷蔵庫または商業用冷蔵庫および別の貯蔵領域において貯蔵するために使用されうる、採取された植物部分のいくつかの適切な光処理を例示する方法を提示する。
【0059】
材料および方法
ブロッコリー、フレンチサラダ(ローマン)レタス、スノーエンドウ、およびピーマン(トウガラシ)を地域のスーパーマーケットから入手した。
【0060】
植物材料を冷蔵庫中の暗所(0℃〜1℃、相対湿度80%)に、10日間置いた。
【0061】
この期間中、同時係属中の英国特許出願GB0623636.8(この教示は、本明細書に組み入れられる)において記述されているような、赤色光ダイオード12個および青色光ダイオード12個(それぞれ、「Lumiled」LXHL-LD3C(商標)ダイオードおよび「Lumiled」LXHL-LR3C(商標)ダイオード)を含む、特注の光ディスプレイを用いて、青色光および赤色光の組合せに植物材料を曝露した。所与の光強度の以下の光組合せで、10日間の期間に渡って1日2.5時間、青色光および赤色光の組合せ条件に植物材料を曝露した:青色(B)光5μE×s-1m-2(0.5W)および赤色(R)光10μE×s-1m-2(1.0W)、0℃。棚から光源の距離は35cmであった。
【0062】
ビタミンおよび甘味を解析するための試料は、実験開始時(T0)、ならびに上記の光、温度、および湿度条件への曝露の2日目、4日目、および8日目の後に採取した。対照の植物材料は、同じ冷蔵庫中、ただし暗所に保存した。
【0063】
甘味
製造業者の取扱い説明パンフレット(PAL-3 Pocket Refractometer、ATAGO(登録商標)、東京、日本)に従ってポケット屈折計を用いて甘味を測定した。測定用の試料は、各事例で赤色光:青色光の組合せにそれぞれ曝露する直前に採取した。
【0064】
ビタミンC
全試料中のビタミンC(アスコルビン酸)(Foyerら、(1983)Planta 157:239〜44頁、WiseおよびNaylor、(1987)Plant Physiol. 83:278〜82頁、Yoshimuraら、(2000)Plant Physiol. 123:223〜33頁)レベルを、当技術分野において説明されている方法論を用いたアッセイ法によって測定した。
【0065】
結果および考察
実験中の植物の全体的状態
上記の条件に植物材料を曝露してから初めの数日間(4日間未満)、暗所で保存した対照植物材料と比較して、植物材料の老化ならびに新鮮重および鮮度の低下に有意な差異は観察されなかった。しかし、4日後以降、差異が明らかになった。曝露された植物材料、すなわち、試験植物材料は、一般に、対照植物材料よりも良い状態にあった。対照植物材料の老化および分解の徴候は、7日後に観察されたが、試験植物材料は、良好または非常に良好な状態のままであった。さらに1週間後、試験植物材料は、良いにおいがしたが、対照植物材料は、特徴的ではあるが強烈ではない老化および分解のにおいを発した。7日間の期間の間に、差異は明らかになった。これらの観察結果は、表1および表2(下記)に提示するデータと合致している。
【0066】
甘味
解析した全植物の甘味(ブリックス指標として測定)は、後述するように(表1)、0℃、赤色光および青色光の組合せへの曝露後に、0℃で保存した対照植物と比較して増大した。糖レベルの上昇は、試験植物において光合成活性のスイッチが入ったことに起因した。光合成により、CO2およびH2Oが、糖およびアデノシン三リン酸(ATP)の形態で貯蔵される化学エネルギーに変換されることは周知である。暗所で保存された植物材料において観察された糖レベルの低下は、増大した呼吸プロセス(糖および脂質を代謝して化学エネルギーにする)に関連している、植物材料の加速度的な老化および分解と相関している。
【0067】
表1 レタス、ブロッコリー、エンドウマメ、およびピーマンの甘味(Brix)。赤色光および青色光の組合せによる処理の後、試料を様々な時点(T0、2日目、4日目、および8日目)に採取した。
【0068】
【表2】

【0069】
ビタミンC
甘味レベルの変化は、アスコルビン酸レベルの上昇を伴っていた(表2)。
【0070】
ビタミンC含有量の増加は、青色光および赤色光の組合せに曝露された植物材料において観察された。まとめると、提示される結果により、青色光および赤色光の組合せによる処理が、甘味およびビタミンC含有量の増加の点で、最適な結果を与えることが示唆される。
【0071】
ここに、採取された植物材料を青色光および赤色光で処理することにより、ビタミンおよび糖のレベルを上昇させ、かつ、冷蔵庫で保存される植物の老化を防ぐことができることが提示される。
【0072】
表2 レタス、ブロッコリー、スノーエンドウ、およびピーマンのビタミンC含有量(新鮮重1g当たりのμmol)。赤色光および青色光の組合せによる処理の後、試料を様々な時点(T0、2日目、4日目、および8日目)に採取した。
【0073】
【表3】

【0074】
室温で強度の高い赤色光および青色光を適用することによる、収穫された野菜の栄養価の迅速な改善
前置き
以下に、消費する直前に収穫された新鮮な植物農作物の栄養価を迅速に改善するために使用されうる、採取された植物部分のいくつかの適切な光処理を例示する方法を提示する。
【0075】
材料および方法
ブロッコリー、ペッパー(pepper)(トウガラシ)、およびキャベツを地域のスーパーマーケットから入手した。
【0076】
植物材料を初めにガラス製混合用ボール中の水に浸し、かつ、最長45分までの期間、強度の高い赤色光および青色光の組合せに直接曝露させた。
【0077】
緑色植物材料を、以下の光の組合せで、上記の光条件に最長45分間曝露させた:20℃、赤色光(R)340μE×s-1m-2(34.0 W)および青色光(B)200μE×s-1m-2(20W)。
【0078】
ビタミンおよび甘味を解析するための試料は、実験開始時(T0)、ならびに所与の光条件および温度への曝露の15分後(T15)、30分後(T30)、および45分後(T45)に採取した。対照植物は暗所で保存し、かつ、ビタミンおよび甘味を解析するための試料をT0およびT45に採取した。
【0079】
甘味
製造業者の取扱い説明パンフレット(PAL-3 Pocket Refractometer、ATAGO(登録商標)、東京、日本)に従ってポケット屈折計を用いて甘味を測定した。
【0080】
ビタミンC
全試料中のビタミンC(アスコルビン酸)(Foyerら、(1983)Planta 157:239〜44頁、WiseおよびNaylor、(1987)Plant Physiol. 83:278〜82頁、Yoshimuraら、(2000)Plant Physiol. 123:223〜33頁)レベルを、当技術分野において説明されている方法論を用いたアッセイ法によって測定した。
【0081】
結果および考察
甘味
解析した全植物材料の甘味(ブリックス指標として測定)は、後述するように(表1)、20℃、赤色光および青色光の組合せへの曝露後に、暗所で保存した未曝露植物材料と比較して増大した。糖レベルの上昇は、光に曝露された植物において光合成活性が増大したことに起因した。光合成により、CO2およびH2Oが、糖およびアデノシン三リン酸(ATP)の形態で貯蔵される化学エネルギーに変換されることは周知である。
【0082】
表1 ブロッコリー、キャベツ、およびピーマンの甘味(ブリックス)。本明細書において説明する赤色光および青色光の組合せによる処理の後、試料を様々な時点(T0、15分(T15)、30分(T30)、および45分(T45))に採取した。
【0083】
【表4】

【0084】
ビタミンC
甘味レベルの変化は、アスコルビン酸レベルの上昇を伴っていた(表2)。
【0085】
ビタミンC含有量の増加は、青色光および赤色光の組合せに曝露された植物材料において観察された(表2を参照されたい)。まとめると、提示される結果により、強度の高い青色光および赤色光の組合せによる処理が、甘味およびビタミンC含有量の迅速な増加の点で、最適な結果を与えることが示唆される。
【0086】
ここに、採取された植物部分を青色光および赤色光で処理することにより、消費の直前にビタミンおよび糖のレベルを迅速に上昇させうることが提示される。
【0087】
表2 ブロッコリー、キャベツ、およびピーマンのビタミンC含有量(新鮮重1g当たりのμmol)。赤色光および青色光の組合せで処理した後、試料を様々な時点(T0、15分(T15)、30分(T30)、および45分(T45))に採取した。
【0088】
【表5】

【0089】
以下に、添付図を参照して、本発明を例示する方法を実行するのに適した装置10の概略正面図を示す。装置10は、例に過ぎないが、台所での使用に適した家庭用器具の形態を有し、かつ、持続的に閉じた天井、土台、および3つの壁、ハウジングの内部への道筋を与えるドアとして機能する第4の壁(示さない)を備えた、一般に立方体の形態のハウジング11を含む。
【0090】
ハウジングは、チャンバー中の処理用光に曝露されるべき植物材料13の支持体としての機能を果たすガラスプレート12をほぼ中央の位置に有する曝露チャンバーと境界を画す。このような光は、チャンバーの上側の領域に配置され、かつ、一般にプレート12の上面、したがって、その上で支持された植物材料の上側表面に向かって、および、一般に、チャンバーの土台に向かってプレートの側面に、光を誘導するように向きを定められた光出口表面15を有する、3つの互いに個別の光源14によって生成される。入射角がプレート12の下面、したがって、植物材料の下側の表面に向かって方向付けられ、その下側表面が、プレートの透過性のおかげで光に曝露されるように角度を付けられた鏡の形態の反射板16が、土台の近傍、かつ側面に誘導される光を遮断するような位置に配列されている。反射板16および関連する反射された光束の例示した位置は、例にすぎず、また、図面の平面に対して斜め前方および後方に光束を反射させるために、さらに別のこのような反射板を提供してもよい。このようにして、プレート12上に支持された材料13は、上側表面および下側表面の両方に、また、様々な程度で、その側表面に、光を曝露される。このような光源および反射板の配置は、生成された光への支持された植物材料の効果的な曝露と、運転経費が経済的な単純な構築物との妥協点を提供することが見出されている。
【0091】
光源は、400〜700nmの範囲の選択された1つまたは複数の波長の光のみを通過させる伝達フィルターを含み、また、処理された植物材料の細胞または組織の植物化学物質の所望の一時的な変化を実現させるのに十分となるように予め定められた期間、光を発するように、供給源へのパワーフィード18中のプログラム可能なタイマー17によって制御される。
【0092】
したがって、この器具は、処理された材料を料理または消費する直前に、処理方法を実施するのに簡便に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】図1は、本発明を例示する方法を実行するのに適した装置10の概略正面図を示す。
【符号の説明】
【0094】
10:装置
11:ハウジング
12:ガラスプレート
13:植物材料
14:光源
15:光出口表面
16:反射板
17:タイマー
18:パワーフィード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロロフィルを含む採取された植物細胞またはクロロフィルを含む採取された植物組織中の少なくとも1種の植物化学物質のレベルを変更する方法であって、前記植物細胞または前記植物組織は、光合成を行うことができるか、かつ/または、植物細胞もしくは植物組織の表面に青色光のみを照射することによって青色光の吸収を行うことができ、植物細胞の前記表面または植物組織の前記表面を照らす青色光の光強度は、前記植物細胞または前記植物組織内で生化学的プロセスを開始させ、それによって、その中の少なくとも1種の植物化学物質のレベルを変更するのに十分である方法。
【請求項2】
前記採取された植物細胞または植物組織を照らす青色光の光強度が、少なくとも5マイクロアインシュタイン+/-3マイクロアインシュタインである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記採取された植物細胞または植物組織を照らす青色光の光強度が、5マイクロアインシュタイン+/-3マイクロアインシュタインから400マイクロアインシュタイン+/-50マイクロアインシュタインまでの範囲にある、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記青色光が、少なくとも第1の光源から適用され、かつ、赤色光が、少なくとも第2の光源から適用される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記植物細胞または植物組織を照らす青色光および赤色光の供給源からの組み合わせた光強度が、15マイクロアインシュタイン+/-5マイクロアインシュタインから300マイクロアインシュタイン+/-50マイクロアインシュタインまでの範囲にある、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記光強度が、15マイクロアインシュタイン+/-5マイクロアインシュタインから200マイクロアインシュタイン+/-20マイクロアインシュタインまでの範囲にある、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記光強度が、15マイクロアインシュタイン+/-5マイクロアインシュタインから150マイクロアインシュタイン+/-15マイクロアインシュタインまでの範囲にある、請求項4から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記光強度が、40マイクロアインシュタイン+/-10マイクロアインシュタインである、請求項4から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記青色光波長が、420nm〜490nmの範囲にある、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記青色光の波長が、430nm〜470nmの範囲にある、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記青色光の波長が、435nm〜465nmの範囲にある、請求項9または請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記赤色光が、600nm〜700nmの範囲にある波長を有する、請求項4から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
青色光:赤色光のエネルギー比が、7:1〜1:7の範囲にある、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
青色光:赤色光のエネルギー比が、6:1〜1:6の範囲にある、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
青色光:赤色光のエネルギー比が、5:1〜1:5の範囲にある、請求項13または請求項14に記載の方法。
【請求項16】
青色光:赤色光のエネルギー比が、2:1〜1:2の範囲にある、請求項13〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
青色光:赤色光のエネルギー比が、1:1である、請求項13〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
周囲温度が、-0.5℃〜45℃の範囲にある、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
周囲温度が、-0.5℃〜18℃の範囲にある、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
周囲温度が、1℃〜約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16℃の範囲にある、請求項18または請求項19に記載の方法。
【請求項21】
周囲温度が、1℃〜12℃の範囲にある、請求項18〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
60%〜100%RHの範囲にある相対湿度で実施される、請求項1〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記1つまたは複数の光源からの光が、所定の時間幅、前記植物細胞または植物組織の表面に照射される、請求項1〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記時間幅が、間欠的な時間幅または連続的な時間幅から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記時間幅が所定の頻度で間欠的であり、前記間欠的な時間幅よりも持続時間がより長い時間帯に渡っている、請求項23または請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記時間帯が最長96時間である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記時間幅が、各光パルスに関して1秒〜120分の範囲にある、請求項25または請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記時間幅が、1分〜60分の範囲にある、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記時間幅が、5分〜45分の範囲にある、請求項23〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記間欠的な時間幅が、10分〜30分の範囲にある、請求項23〜29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記時間幅が、10分〜20分の範囲にある、請求項23〜30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記時間幅が15分である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記時間幅が、30分〜最長96時間持続する連続的な時間幅である、請求項23または請求項24に記載の方法。
【請求項34】
前記時間幅が60分〜96時間である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記時間幅が60分〜最長48時間である、請求項33または請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記時間幅が60分〜最長24時間である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記時間幅が60分〜最長12時間である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記採取された植物細胞または植物組織が、高等植物の緑色の茎、がく、および葉から選択される、光合成を行うことができる植物組織、藻類細胞、コケ原糸体、ならびに、食用および/または非食用もしくは不味な高等植物種および下等植物種の細胞培養物から選択される、請求項1〜37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記採取された植物細胞または植物組織が、ハーブ、ニチニチソウ(Catharanthus roseus)、イチイ科(Taxaceae)の植物、カンナビス(Cannabis)植物、緑色野菜、および緑色種子を含む群から選択される植物から得られる、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記採取された植物細胞または植物組織が、ニチニチソウ、エンドウマメ、サヤインゲン、ホウレンソウ、スノーエンドウ(マンジュ・トゥー)、キャベツ(Brassica oleracea)由来種、例えば、ブロッコリー、グリーンキャベツ、赤キャベツ、芽キャベツ、コールラビ、カリフラワー、白キャベツ、レタス、ハクサイなど、ニセツリガネゴケ(Physcomitrella patens)の原糸体などのコケ組織、レムノスポラ種の培養物、藻類細胞培養物、体細胞胚クラスター、ならびに、トマト、リンゴ、ブドウ、まだ若い(未熟な)バナナ、マンゴ、キウイフルーツ、およびパイナップルなどの果実を含む群から選択される植物から得られる、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
少なくとも1種の植物化学物質が、抗酸化物質から選択される、請求項1〜40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記植物化学物質が、ビタミンCおよびビタミンEから選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
請求項1〜42のいずれか一項に記載の方法によって得られる植物材料または植物細胞。
【請求項44】
請求項1〜43のいずれか一項に記載の方法によって得られる、処理された植物材料または植物細胞を含む加工食品。
【請求項45】
温室または水栽培システムにおいて栽培される植物の結実の改善における、青色光および/または赤色光の使用。
【請求項46】
温室または水栽培システムにおいて栽培される植物の草姿の最適化における、青色光および/または赤色光の使用。
【請求項47】
曝露チャンバーを画定する囲い、複数の方向からの光への曝露を可能にするような様式および位置で、その中の植物材料を支持するための、チャンバー中に配置された支持手段、ならびに、青色光を発生させるため、および、発生させた光を、所定の期間、かつ、複数の方向から、支持された植物材料に適用し、それによって、複数の側面からの光に材料を曝露させるための、光を発生させかつ適用する手段を含む、請求項1〜43のいずれか一項に記載の方法を実施するための装置。
【請求項48】
前記囲いが、その側面の少なくとも一部が閉じられたハウジングの形態を有する、請求項47に記載の装置。
【請求項49】
ベンチトップ型の家庭用器具である、請求項47に記載の装置。
【請求項50】
前記囲いが、少なくとも一部が、建物の一体化されたまたは装着された内部要素によって提供される、壁、土台、および天井によって境界を画された構造体を含む、請求項47に記載の装置。
【請求項51】
曝露チャンバーが、少なくとも大多数の方向の光路の長さが、光を発生させかつ適用する手段の動作エネルギーの消費を所与の最小値にするために、所定の光強度に材料を曝露することが可能にするように寸法を決められている、請求項47〜50のいずれか一項に記載の装置。
【請求項52】
支持手段が、所定の最小限の比率の領域を光に曝露させるために、材料のいくつかの側面に光が到達できるように配置されている、請求項47〜51のいずれか一項に記載の装置。
【請求項53】
支持手段が、前記材料を置くことができる表面を有する部材を含む、請求項47〜52のいずれか一項に記載の装置。
【請求項54】
前記部材が、光透過性の材料および/または構造を有する、請求項53に記載の装置。
【請求項55】
前記支持手段および囲いが、互いに対して可動性である、請求項47〜54のいずれか一項に記載の装置。
【請求項56】
光を発生させかつ適用する前記手段が、異なる方向に光を発するための複数の光源を含む、請求項47〜55のいずれか一項に記載の装置。
【請求項57】
光を発生させかつ適用する前記手段が、単一の光源、および供給源からの光を異なる方向に反射させるための複数の反射板を含む、請求項47〜56のいずれか一項に記載の装置。
【請求項58】
光を発生させかつ適用する前記手段が、それぞれ異なる方向に光を発し、かつ光を反射させるための複数の光源および複数の反射板を含む、請求項47〜54のいずれか一項に記載の装置。
【請求項59】
前記光源または各光源が発光ダイオードを含む、請求項56〜58のいずれか一項に記載の装置。
【請求項60】
光を発生させかつ適用する前記手段が、囲いの複数の側面に配置された光発光要素および/または光反射要素を含む、請求項47〜59のいずれか一項に記載の装置。
【請求項61】
光を発生させかつ適用する前記手段が、青色光および赤色光の少なくとも1つを発するためにさらに作動可能である、請求項60に記載の装置。
【請求項62】
光を発生させかつ適用する前記手段を、所定の期間作動させた後に停止するためのスイッチ手段を含む、請求項47〜61のいずれか一項に記載の装置。
【請求項63】
所定の期間を選択するための時間調節手段を含む、請求項47〜62のいずれか一項に記載の装置。

【図1】
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【公表番号】特表2009−524423(P2009−524423A)
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551875(P2008−551875)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際出願番号】PCT/GB2007/000266
【国際公開番号】WO2007/085842
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(508225185)
【Fターム(参考)】