説明

植物栄養素により食料品の栄養価を高める方法及びそれにより得られた食品

本発明は、健康利益有効量のトマトの植物栄養素により食料品の栄養価を高める方法であって(ここで前記食料品の風味は、前記トマトの植物栄養素により実質的に影響を受けない)、トマトオレオレジン又はトマト成分を、食料品に、食料品の風味に実質的に影響を与えない量で加えることを含む方法を提供する。本発明は、更に、トマトの植物栄養素で栄養価が高められた食料品を開示し、ここで前記食料品の風味は、トマトの植物栄養素により実質的に影響を受けていない。本発明は、更に、本発明のトマトの植物栄養素で栄養価が高められた食料品を対象に投与することを含む、トマトの植物栄養素の消費に関連する健康利益を得る方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栄養の分野、特に植物栄養素により食料品の栄養価を高める方法に関する。
【背景技術】
【0002】
種々のトマトの植物栄養素の消費に関連する健康利益は多く、文献に記載されてきた。前記の健康利益として、とりわけ、多様な種類の癌、心臓血管疾患、眼科(opthamological)障害、不妊障害及び肝疾患の予防及び治療が挙げられる。更に、トマトの植物栄養素は、DNA損傷からDNAを保護することに関連する場合があり、前記の損傷を修復するのを助ける場合があることが確認されている。更に、天然のトマトに存在するトマトの植物栄養素の組み合わせからの健康利益は、トマト成分単独の健康利益よりも大きいことが確認されている。すなわち、組み合わせにおいて相乗効果がある。したがって、トマトの植物栄養素を組み合わせて消費することが極めて重要である。
【0003】
トマトの植物栄養素の消費に関連する健康利益は、主に、トマトの水不溶性画分に含有されている植物栄養素及びその組み合わせに由来する。トマトの加工において、トマトを2つの画分、トマトの水溶性成分を含有する画分と水不溶性成分を含有する画分に分けることができる。トマトの前記画分を得る多様な方法があるが、大部分の方法は、トマトをつぶして、液体相から固体を分離する基本的操作に基づいている。固体相は果肉と呼ばれ、液体相は漿液と呼ばれる。果肉は、トマトの約8%であり、水不溶性成分のほとんどを含有する。果肉は、トマトの水不溶性植物栄養素の良好な供給源である。果肉は、水溶性成分の画分を含有することもある。果肉は、所望の製品に応じて多様な方法で加工することができる。例えば、果肉を抽出に付すと、トマトオレオレジンが得られ、これはトマトの植物栄養素を比較的高濃度で含有する。
【0004】
現在、前記のトマトの植物栄養素を投与する方法として、トマト及びトマト製品の消費、並びに錠剤、カプセル剤などのような、トマトの植物栄養素を含有する栄養補助剤の投与が挙げられる。しかし、これら投与方法は限定されており、対象が、前記の投与手段を意識的に努力して消費することが必要である。あるいは、トマトの植物栄養素の健康利益を食物に付与するため、多様な食物が、トマト製品により栄養価を高められてもよい。しかし、有効投与量のペースト、ジュース及び粉末などのトマト製品による食物の栄養補充は、製品に典型的なトマト風味及び色を付与することにより問題を起こす。有効投与量のトマトの植物栄養素により食物に栄養補充するためには、相当量のトマト製品が必要となり、これは食物にトマト風味を付与することになり、したがって食物の風味に影響を与え、これは多くの場合、望ましくない。
【0005】
したがって、トマトの植物栄養素を、トマトの植物栄養素のビヒクルである食料品が前記トマトの植物栄養素の風味により影響を受けないように投与する、代替的な方法に対する、長年にわたる切実な要求が存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、トマトの植物栄養素により食料品の栄養価を高める方法を提供することが、本発明の目的であり、ここで、食料品の風味は前記トマトの植物栄養素により実質的に影響を受けない。
【0007】
トマトの植物栄養素を有効用量で含有する新規食料品を提供することが、本発明の更なる目的であり、ここで、前記食料品の風味はトマトの植物栄養素により実質的に影響を受けない。
【0008】
本発明の他の目的は、記載が進むにしたがって明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要約)
本発明によると、健康利益有効量のトマトの植物栄養素により食料品の栄養価を高める方法であって(ここで前記食料品の風味は、前記トマトの植物栄養素により実質的に影響を受けない)、トマトオレオレジン又はトマト成分を、食料品に、食料品の風味に実質的に影響を与えない量で加えることを含む方法が提供される。
【0010】
本発明のなお更なる態様によると、トマトの植物栄養素で栄養価が高められた食料品が提供され、ここで前記食料品の風味は、トマトの植物栄養素により実質的に影響を受けていない。
【0011】
本発明の更なる態様は、本発明のトマトの植物栄養素で栄養価が高められた食料品を対象に投与することを含む、トマトの植物栄養素の消費に関連する健康利益を得る方法を提供することである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(発明の詳細な説明)
以下の記載は本発明の実施態様を説明するものである。以下の記載は限定するものとして解釈されるべきでなく、当業者は、本発明の多くの明白な変形を実行できるものと考える。
【0013】
記載の全体を通して、成分の百分率は、特に別に示されない限り、重量に基づく。トマトの植物栄養素という用語は、前記植物栄養素を消費する対象に、健康利益を、個別に又は組み合わせて提供するトマトの成分に関する。記載の全体を通して、トマトオレオレジンという用語は、実質的に水に可溶性でないトマトの植物栄養素を含有する、トマトの脂質画分を意味する。用語「食料品」は、とりわけ食物、焼き製品、加工食品及び飲料を含む、あらゆる食品又は飲料に関する。
【0014】
予想外のことに、食料品は、トマトオレオレジン又はトマト成分を、前記食料品に、健康利益を提供し、かつ前記食料品の風味に実質的に影響を与えない量で加えることにより、トマトの植物栄養素により栄養価が高められうることが見出された。水に実質的に不溶性であるトマトオレオレジン及びトマト成分は、比較的高濃度の植物栄養素を含有し、例えば、リコピン、β−カロチン、フィトエン、フィトフルエン、トコフェロール、リン脂質及びフィトステロールである。したがって、比較的少量のトマトオレオレジン及び水不溶性トマト成分(以降、トマト成分)は、有効量のトマトの植物栄養素を提供する。このことは、食料品を栄養的に強化する添加剤としての、少量のトマト成分及びオレオレジンの使用を可能にする。記載の全体を通して、トマトオレオレジンという用語は、トマトオレオレジン成分を含有する組成物も含む。トマト成分という用語は、トマトオレオレジンも包含する。
【0015】
本発明の一実施態様によると、トマトオレオレジンは、特定の食物の性質及び用いられる加工に従って、食品加工の多様な段階で食料品に添加される。食料品に添加することが意図されるオレオレジンは、意図される食料品に適した多様な形態で調製されることができる。オレオレジンは、加工及び保存の間にオレオレジンに安定性を付与するために、乳化、可溶化、溶解、封入もしくはマイクロカプセル化されることができ、又はトマトの植物栄養素を含有するトマト繊維に貯蔵、含有することができる。
【0016】
食料品に添加されるオレオレジン又はトマト成分の量は、食料品の消費が所望の健康利益を達成するために有効用量のトマトの植物栄養素を提供し、かつ前記添加が食物の典型的な風味に影響を与えないように調整される。量は食物の種類及び一人分の大きさに従って変わる。本発明の特定の実施態様によると、食料品に添加されるオレオレジン及びトマト成分の量は、そのリコピン含有量に基づいて決定される。したがって、最初に所望の投与量のリコピンが、意図される食料品のために決定され、添加されるオレオレジン、トマト成分又はそれらを含有する組成物の量が、前記投与量に基づいて計算される。食料品に添加される他のトマトの植物栄養素の量は、前記植物栄養素の供給源として用いられるトマト成分中の前記植物栄養素の濃度により左右される。食料品中のオレオレジン又はトマト成分の量は、好ましくは、前記食料品を消費する対象に、5から20mgの範囲のリコピンの1日摂取を提供する範囲である。
【0017】
本発明のなお更なる態様では、栄養価が高められた食料品が提供され、ここで前記食料品は、トマトの植物栄養素により栄養価が高められ、前記食料品の風味は、前記トマトの植物栄養素により実質的に影響を受けていない。前記食料品は、一人分あたり0.5mgから20mgのトマトリコピンを含有する。
【0018】
本発明の更なる態様によると、トマトの植物栄養素の消費に関連する健康利益は、上記で記載されたトマトの植物栄養素で栄養価が高められた食料品を、対象に投与することにより、前記対象に提供される。前記栄養価が高められた食料品の消費に関連しうる健康利益の非限定例は、DNA損傷の予防及び修復、心臓血管障害の、多様な種類の癌の、眼科障害の、不妊障害の及び肝疾患の予防及び治療である。食料品は、有効量のトマトの植物栄養素を対象に提供する方法において投与される。植物栄養素は、製造過程で食品中に導入され、その知覚特性に影響を与えることなしにその組成の一部になる。したがって、トマトと関連していない食料品は、トマトの植物栄養素により強化されることができ、健康に対するその有益な効果を、前記食料品がトマト風味を付与されることなしに、受け取るこができる。
【0019】
記載された本発明での使用に適したオレオレジンは、トマト又はトマト製品から得ることができる。市販のトマトオレオレジンの例は、Lycored Natural Products Industries Ltd.によるLyc−O−Mato(登録商標)である。本発明の目的に適したオレオレジンは、オレオレジンと更なる希釈剤、佐剤及び担体とを含有する多様な組成物で更に提供されてもよい。
【0020】
本発明の利点は、トマトの植物栄養素を健康に対するその有益な効果と共に、広範囲の食料品の中へ、前記食料品の風味を実質的に変えることなく導入することが可能であることに組み入れられている。したがって本発明は、トマトの植物栄養素を、十分な量のトマト又はトマト製品を食べていない人々に投与する方法を、更に提供する
(実施例)
【実施例1】
【0021】
Lyc−O−Mato(登録商標)1%を用いるマーガリンの調製
油脂を70℃で溶解し、次にLyc−O−Mato(登録商標)1%(Lyc−O−Mato(登録商標)1%は、1%のリコピンを含有するトマトオレオレジン組成物である)と、マーガリン100kgあたり150gのLyc−O−Mato(登録商標)1%の割合において混和する。混和した混合物を、次に、水相及び最終マーガリンの調製に用いられる他の成分と、50から60℃で混合する。得られた混合物を、次に、17から22℃及び300から700rpmでチラーを使用して予備結晶させる。次に、ピン・ワーカー(pin worker)を300から700rpmで使用する結晶化を、最終包装の前に実施する。
【実施例2】
【0022】
Lyc−O−Mato(登録商標)10%又はLyc−O−Mato(登録商標)Fibersを用いるヨーグルトの調製
最大5%のスキムミルクパウダー及びLyc−O−Mato(登録商標)10%(Lyc−O−Mato(登録商標)10%は、10%のリコピンを含有するトマトオレオレジン組成物である)240gのLyc−O−Matoをミルク1000kg又はLyc−O−Mato(登録商標)Fibers(2.4kg/ミルク1000kg)に添加することにより、ミルクが固形物中に濃縮される。次に、ヨーグルトの質感を向上させるために、タンパク質及び砂糖を加える。得られた混合物を次に均質化し、続いて平版熱交により90から95℃で、約5から10秒間の非常に短い時間加熱し、次に低温殺菌温度で約3から10分間維持して、発酵状態を向上させる。次に混合物を42から44℃に冷却し、容器に充填し、その間、同時に培養物を加える。次に果物風味を加え、容器を高温室に42から44℃で2.5から5時間保存する。低い温度は、インキュベーションを遅らせ、停止させる。ヨーグルトを高温室から取り出し、低温室に2から4℃で保存する前に、冷却する。
【実施例3】
【0023】
Lyc−O−Mato(登録商標)Fibersを用いるパンの調製
Lyc−O−Mato(登録商標)Fibers 2.23kg、水159.3kg及び酵母菌12.5kgを一緒に混合する。次に小麦粉の230kg、塩5.06kg、砂糖14.88kg、マーガリンの7.44kg及びビタミンC 20gを加え、混合物全体を混和して、生地を作り、これを40℃で1時間維持する。生地を230から235℃で焼き、室温に冷却する。
【実施例4】
【0024】
Lyc−O−Mato(登録商標)Fibersを用いるフランクフルト・ソーセージの調製
・香辛料、風味組成物及び塩を、Lyc−O−Mato(登録商標)Fibers(ソーセージ100kgあたり500gのLyc−O−Mato(登録商標)Fibers)と混合する。
・肉(脂肪分25%)の60kgをデンプン18kg及びカラゲーナンの1.6kgと混和する。
・水及び香辛料ミックスの10kgを加え、混和する。
・包装する。
・下ごしらえする。
【実施例5】
【0025】
Lyc−O−Mato(登録商標)Fibersを用いるチキン・バーガーの調製
約20%w/wの水を含有する鶏ひき肉に、タマネギ、塩及び香辛料で味をつけ、これに、0.5%(肉のw/w)Lyc−O−Mato(登録商標)Fibersを加える。得られた混合物を、次に、多様な形態、例えばグリルパテとして料理する。
【実施例6】
【0026】
Lyc−O−Mato(登録商標)Fibersマイクロエマルションを用いる透明なグレープフルーツ飲料の調製
飲料を、以下の成分を混合し最初にマイクロエマルションを調製することにより、調製する。
【0027】
【表1】

【0028】
マイクロエマルションのHPLC分析:
リコピン 0.085%
フィトエン 0.049%
フィトフルエン 0.035%
次にマイクロエマルションを飲料に加え、混合し、瓶に詰めて、下記で提示される飲料の最終組成物を得る。
【0029】
【表2】

【実施例7】
【0030】
Lyc−O−Mato(登録商標)5%ビードレットを用いるマーガリンの調製
実施例1で記載されたものと同じ手順を用いるが、ここでLyc−O−Mato(登録商標)1%を、マーガリン100kgあたり300gのLyc−O−Mato(登録商標)5%ビードレットの比率でLyc−O−Mato(登録商標)5%ビードレット(5%のリコピンを含有するトマトオレオレジン組成物の封入ビートレット)に代える。
【0031】
本発明の実施態様を例示により記載してきたが、本発明は、その精神から逸脱することなく、又は請求項の範囲を超えることなく、多くの変更、変形及び適応により実施できることが明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トマトの植物栄養素の健康利益有効量により食料品の栄養価を高める方法であって、トマトオレオレジン又はトマト成分を、食料品に、前記食料品の風味が前記オレオレジン又はトマト成分により実質的に影響を受けない量で加えることを含む方法。
【請求項2】
トマトオレオレジン又はトマト成分が、マイクロエマルション、エマルション、ビードレット、封入形態、佐剤もしくは賦形剤を含む組成物、又は油中の溶液の形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記食料品が、加工食品、焼き製品、乳製品及び飲料を含む食品又は飲料のうちから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
トマト成分が、前記食料品を調製する過程で食料品に添加される、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
トマト成分が、食料品の調製の後で食料品に添加される、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
トマトの植物栄養素により栄養価が高められた食料品であって、前記食料品の風味が、トマトの植物栄養素により実質的に影響を受けていない、食料品。
【請求項7】
前記食料品が、加工食品、焼き製品、乳製品及び飲料を含む食品又は飲料のうちから選択される、請求項6に記載の食料品。
【請求項8】
トマトの植物栄養素の消費に関連する健康利益を得る方法であって、トマトの植物栄養素で栄養価が高められた食料品を対象に投与することを含む方法。
【請求項9】
前記健康利益が、DNA損傷の予防、血圧低下、心臓血管の病気の予防及びフリーラジカルの捕捉のうちから選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記食料品が、0.5から20mgのリコピンの1日投与量を提供する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記トマトの植物栄養素で栄養価が高められた食料品が、請求項1から5に従って得られる、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
請求項6及び7に記載のトマトの植物栄養素で栄養価が高められた食料品を対象に投与することを含む、請求項8に記載の方法。

【公表番号】特表2008−517618(P2008−517618A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−538605(P2007−538605)
【出願日】平成16年10月26日(2004.10.26)
【国際出願番号】PCT/IL2004/000974
【国際公開番号】WO2006/046222
【国際公開日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【出願人】(507137232)ライコード・リミテツド (3)
【Fターム(参考)】