説明

植物栽培器及びそれを用いた植物栽培システム

【課題】転倒しても容易に修復でき、しかも、簡素な構造でありながら高い剛性を発揮することができる植物栽培器を提供する。また、限られた土地面積のなかで多くの収穫を得ることができる植物栽培システムを提供する。
【解決手段】植物栽培器1は、内部を培地材収容部とし、管軸方向を水平方向に向けて設置される管本体4を備え、管本体4の周壁の上面部に、定植用の開口部が複数、管軸方向に間隔をおくようにして設けられたものからなっている。管本体4の端部は、蓋の着脱で開閉できるようになっているとよい。植物栽培システムは、上記の管本体4が、複数本、上下方向に間隔をおいて平行状態となるように設置されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物栽培器及びそれを用いた植物栽培システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、種々の植物栽培器が提供されているが、上部が外に開放された箱形のものからなっている植物栽培器では、転倒してしまうと、なかの培地材が全部外に飛び出し、元の状態に修復するのが容易でないという問題があったり、上部全体が開放されているがゆえに剛性が低く、そのためリブ等の多くの補強部が必要で、構造が複雑なものになってしまうという問題があった。
【0003】
また、例えば、葉菜類や根菜類の栽培において、多くの収穫を得る方法として、栽培面積を地面に沿う水平2次元方向に拡大して栽培することは、従来より行われているが、そのような方法では、植物の栽培に広い土地を必要とし、そのような土地を確保できないと多くの収穫も得ることができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−263869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような問題点に鑑み、転倒しても容易に修復でき、しかも、簡素な構造でありながら高い剛性を発揮することができる植物栽培器を提供することを課題とする。また、本発明は、限られた土地面積のなかで多くの収穫を得ることができる植物栽培システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題は、内部を培地材収容部とし、管軸方向を水平方向に向けて設置される管本体を備え、該管本体の周壁の上面部に、定植用の開口部が複数、管軸方向に間隔をおくようにして設けられていることを特徴とする植物栽培器によって解決される(第1発明)。
【0007】
この植物栽培器では、内部を培地材収容部とする管本体を備え、該管本体の周壁の上面部に、定植用の開口部が複数、管軸方向に間隔をおくようにして設けられているものであるから、転倒しても、なかの培地材が外に飛び出すのを、定植用開口部間の周壁部が阻止するように働き、それによって、転倒後の修復を容易にすることができる。
【0008】
しかも、定植用開口部は、管本体の周壁に、複数、管軸方向に間隔をおくようにして設けられているので、定植用開口部間の周壁部が植物栽培器の剛性を高いものにし、それによって、補強のためのリブなどをなくす、ないしは、少なくすることができて、簡素な構造でありながら高い剛性を発揮することのできる植物栽培器を実現することができる。
【0009】
第1発明において、前記管本体の一方の端部が、蓋の着脱で開閉できるようになっていて、管本体内に収容されている培地材を、前記蓋を外して前記一方の端部を開くことにより、該端部開口を通じて、管本体の外に排出することができるようになされているとよい(第2発明)。
【0010】
この場合は、定植用開口部が管本体の周壁に管軸方向に間隔をおくようにして設けられていることで、定植用開口部を通じた培地材の排出が必ずしも容易ではなくなっているが、管本体の一方の端部が、蓋の着脱で開閉できるようになっているので、蓋を外して管本体の一方の端部を開けば、開いた端部開口部を下向きにして上下に振る、などの操作をすることにより、なかの培地材を容易に外に出すことができて、培地材の取り扱いを容易にすることができる。もちろん、培地材を管本体内に入れる作業も、端部の蓋を外して開くことにより、容易に行っていくことができる。
【0011】
第1,第2発明において、前記管本体の一方の端部に一端が連結され、管本体内をもう一方の端部がわに向けて延ばされた灌水管と、
管本体の前記一方の端部に備えられ、水源からの管を前記灌水管に連通状態となるように接続する継ぎ手と
が備えられているとよい(第3発明)。
【0012】
この場合は、管本体内部への灌水を容易にすることができると共に、継ぎ手を利用して水源からの管を容易に接続することができる。
【0013】
また、上記の課題は、第1〜第3発明の植物栽培器を用いた植物栽培システムであって、
前記管本体が、複数本、上下方向に間隔をおいて平行状態となるように設置され、各管本体で植物を栽培することができるようになされていることを特徴とする植物栽培システムによって解決される(第4発明)。このシステムでは、第1〜第3発明の植物栽培器を構成している管本体が複数本、上下方向に間隔をおいて平行状態となるように設置されて、植物を栽培するようになされているので、広い土地面積を必要とせず、限られた土地面積のなかで多くの収穫を得ることができる。
【0014】
第4発明において、前記管本体が、複数本、直列状に配置されて設置され、各管本体で植物を栽培することができるようになされているとよい(第5発明)。この場合は、上下方向に加え、管軸方向においても管本体を配置した構成とすることで、限られた土地面積のなかでより多くの収穫を得ることができる。
【0015】
第4,第5発明において、各管本体が、地上からの立ち上がり部にフックで受け掛けされて着脱可能に設置されているとよい(第6発明)。この場合は、フックによる受け掛けでありながら、植物栽培器そのものが高い剛性を備えていることにより、しっかりとした保持状態を簡素な構造により実現することができ、しかも、着脱可能であるから、植物栽培器を好みの位置に付け代えることができるし、植物栽培器を増減することもできる。
【0016】
第4,第5発明において、各管本体の端部が支柱にフックで受け掛けされると共に、
前記水源からの管が、前記支柱に沿って上方に延ばされて、管本体の継ぎ手に着脱可能に接続され、灌水用の水が管本体内の灌水管内に供給されるようになされているとよい(第7発明)。
【0017】
この場合は、第6発明の作用効果のほか、各管本体の荷重を効率良く支柱に伝えることができてしっかりとした取付け状態を形成することができると共に、水源からの管を、種々の高さ位置に設置されている各植物栽培器に、支柱を利用して容易に導くことができ、かつ、植物栽培器の端部が支柱の位置に位置していることから、水源からの管の接続を、支柱を介して容易にすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の植物栽培器は、以上のとおりのものであるから、転倒しても容易に修復でき、しかも、簡素な構造でありながら高い剛性を発揮することができる。また、本発明の植物栽培システムでは、限られた土地面積のなかで多くの収穫を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図(イ)は一実施形態に係る植物栽培器の断面正面図、図(ロ)は同端面図、図(ハ)は平面図、図(ニ)は他の実施形態に係る植物栽培器の正面図である。
【図2】図(イ)は、灌水のための接続部を示す一部断面正面図、図(ロ)はフックによる受け掛けのための構成を示す側面図、図(ハ)は同正面図である。
【図3】図(イ)は植物栽培器の全体正面図、図(ロ)は実施形態に係る植物栽培システムの全体正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1〜図3に示す実施形態において、1は植物栽培器であり、該植物栽培器1は、図1(イ)〜(ハ)に示すように、内部を、培地材2を収容する収容部3とし、管軸方向を水平方向に向けて設置される管本体4を備えており、該管本体4の周壁の上面部に、定植用の開口部5が、図3(イ)に示すように、複数、管軸方向に間隔をおくようにして設けられている。なお、管本体4は、断面形状が円形、四角形等の各種形状をしていてよいし、金属やプラスチック等各種材料で構成されていてよい。
【0022】
管本体4の一方の端部の端面部には、図1(イ)〜(ハ)に示すように、灌水管6の一端が連結され、該灌水管は、管本体4内の空間部を、培地材2の上面の高さ位置よりも上方の高さ位置であって、側方に偏心した位置に、もう一方の端部がわに向けて片持ち梁状態で延ばされており、該灌水管6の周壁部に設けられた吐出口6a…から吐出される水が内部の培地材2に供給されるようになされている。
【0023】
なお、培地材2としては、種々のものが用いられてよいが、スポンジ、不織布、ウレタン樹脂等の軽量培地材を用いることにより、植物栽培器1の取付け扱いを容易にすることができる。
【0024】
また、管本体4の前記一方の端部の端面部には、図2(イ)に示すように、継ぎ手7が備えられ、水源からの管8を該継ぎ手7に着脱可能に接続することができるようになされていて、接続することにより、該管8を灌水管6に連通状態となるように接続することができるようになされている。なお、接続には、ユニオン継ぎ手などが用いられてよい。
【0025】
更に、図1(イ)〜(ハ)に示す実施形態では、管本体4の一方の端部、本実施形態では、継ぎ手が設けられている端部とは反対がわの端部は、開閉不能に塞がれているが、該端部を、図1(ニ)に示すように、ねじ式等による蓋4aの着脱で開閉できるようにし、管本体4内に収容されている培地材2を、蓋4aを外して端部を開くことにより、該端部開口4bを通じて、管本体4の外に排出することができるようになされていると、なおよい。
【0026】
そして、上記の植物栽培器1は、図3(ロ)に示すように、管本体4が、複数本、上下方向に間隔をおいて平行状態となるように設置され、各管本体4…で植物を栽培することができるようになされていると共に、各管本体4が、複数本、直列状にも配置されて設置され、各管本体4…で植物を栽培することができるようになされている。
【0027】
それを具体的に実現するため、本実施形態では、各管本体4は、図2(ロ)(ハ)、及び、図3(ロ)に示すように、その各端部が、地上からの立ち上がり部としてのフェンスの支柱9に、フック10で受け掛けされて着脱可能に設置されている。なお、フック10は跳上げ式のものからなっていて、使用しないフックは、邪魔にならぬよう退避状態にしておくことができるようになされている。
【0028】
また、水源からの管8は、支柱9に沿って上方に延ばされて、管本体4の継ぎ手7に着脱可能に接続され、灌水用の水が管本体4内の灌水管6内に供給されて、管本体4内において灌水を行うことができるようになされている。
【0029】
上記の植物栽培器1では、内部を培地材収容部3とする管本体4を備え、該管本体4の周壁の上面部に、定植用開口部5が複数、管軸方向に間隔をおくようにして設けられているものであるから、転倒しても、なかの培地材2が外に飛び出すのを、定植用開口部5…間の周壁部4cが阻止するように働き、それによって、転倒後の修復を容易にすることができる。
【0030】
しかも、定植用開口部5は、管本体4の周壁に、複数、管軸方向に間隔をおくようにして設けられているので、定植用開口部5…間の周壁部4cが、管本体4の剛性、即ち、植物栽培器1の剛性を高いものにし、それによって、補強のためのリブなどをなくす、ないしは、少なくすることができて、簡素な構造でありながら高い剛性を発揮することのできる植物栽培器1を実現することができる。
【0031】
また、定植用開口部5…が管本体4の周壁に管軸方向に間隔をおくようにして設けられていることで、定植用開口部5…を通じた培地材2の排出が必ずしも容易ではなくなっているが、図1(ニ)に示す実施形態のように、管本体4の一方の端部を、蓋4aの着脱で開閉できるようにする構成とすることにより、蓋4aを外して管本体4の一方の端部を開けば、開いた端部開口部4bを下向きにして上下に振る、などの操作をすることにより、なかの培地材2を容易に外に出すことができて、培地材2の取り扱いを容易にすることができる。
【0032】
更に、管本体4には、灌水管6と、水源からの管8を灌水管6に連通状態となるように接続する継ぎ手7とが備えられているので、管本体4の内部への灌水を容易にすることができると共に、継ぎ手7を利用して水源からの管8を容易に接続することができる。灌水では、肥料溶液の供給も行われせるようにしておくとよい。
【0033】
そして、上記の植物栽培システムは、上記の管本体4が、複数本、上下方向に間隔をおいて平行状態となるように設置されると共に、複数本、直列状に配置されて設置されて構成されているので、広い土地面積を必要とせずに、限られた土地面積のなかで多くの収穫を得ることができる。
【0034】
また、植物栽培システム内における各管本体4の取付け関係についても、フック10による受け掛けでありながら、各管本体4、即ち、植物栽培器1そのものが高い剛性を備えていることにより、しっかりとした保持状態を簡素な構造により実現することができ、しかも、着脱可能であるから、システムのなかで、植物栽培器1を好みの位置に付け代えたり、増減したりすることもできる。
【0035】
特に、各管本体4…は、その端部が支柱9にフック10で受け掛けされると共に、水源からの管8が、支柱9に沿って上方に延ばされて、管本体4の継ぎ手7に着脱可能に接続され、灌水用の水が管本体4内の灌水管6内に供給されるようになされているから、各管本体4…の荷重を効率良く支柱9に伝えることができてしっかりとした取付け状態を形成することができると共に、水源からの管8を、種々の高さ位置に設置されている各植物栽培器1に、支柱9を利用して容易に導くことができ、かつ、植物栽培器1の端部が支柱9の位置に位置していることから、水源からの管8の接続を、支柱9を介して容易にすることができる。
【0036】
なお、管本体4内での蓄熱を防ぐため、該管本体4に遮熱塗料を塗布したり、灌水用の水や肥料溶液を常時流すようにするのもよい。
【符号の説明】
【0037】
1…植物栽培器
2…培地材
3…培地材収容部
4…管本体
4a…蓋
4b…端部開口部
4c…周壁部
5…定植用開口部
6…灌水管
7…継ぎ手
8…水源からの管
9…支 柱(立ち上がり部)
10…フック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を培地材収容部とし、管軸方向を水平方向に向けて設置される管本体を備え、該管本体の周壁の上面部に、定植用の開口部が複数、管軸方向に間隔をおくようにして設けられていることを特徴とする植物栽培器。
【請求項2】
前記管本体の一方の端部が、蓋の着脱で開閉できるようになっていて、管本体内に収容されている培地材を、前記蓋を外して前記一方の端部を開くことにより、該端部開口を通じて、管本体の外に排出することができるようになされている請求項1に記載の植物栽培器。
【請求項3】
前記管本体の一方の端部に一端が連結され、管本体内をもう一方の端部がわに向けて延ばされた灌水管と、
管本体の前記一方の端部に備えられ、水源からの管を前記灌水管に連通状態となるように接続する継ぎ手と
が備えられている請求項1又は2に記載の植物栽培器。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一に記載の植物栽培器を用いた植物栽培システムであって、
前記管本体が、複数本、上下方向に間隔をおいて平行状態となるように設置され、各管本体で植物を栽培することができるようになされていることを特徴とする植物栽培システム。
【請求項5】
前記管本体が、複数本、直列状に配置されて設置され、各管本体で植物を栽培することができるようになされている請求項4に記載の植物栽培システム。
【請求項6】
前記各管本体が、地上からの立ち上がり部にフックで受け掛けされて着脱可能に設置されている請求項4又は5に記載の植物栽培システム。
【請求項7】
前記各管本体の端部が支柱にフックで受け掛けされると共に、
前記水源からの管が、前記支柱に沿って上方に延ばされて、管本体の継ぎ手に着脱可能に接続され、灌水用の水が管本体内の灌水管内に供給されるようになされている請求項4又は5に記載の植物栽培システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−29573(P2012−29573A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169201(P2010−169201)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】