説明

植物栽培用培地およびその製造工程で得られる液肥

【課題】雑草が生えず、害虫が発生せず、化学薬品や殺虫剤などを一切必要としない植物栽培用培地を提供する。
【解決手段】容器内に栄養源を入れて、栄養源または容器に付着した土着微生物群を培養するA工程と、別の容器に、籾殻、生ごみ、およびA工程で得られた土着微生物群を約1対0.3〜0.8対0.001〜0.005の重量割合で入れ、生ごみを液状化するB工程と、土着微生物群と家畜の糞との混合による発酵分解処理するC工程と、B工程で得られた処理物とC工程で得られた処理物を混合するD工程を経て生成する植物栽培用培地。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植物栽培用培地およびその製造工程で得られる液肥に関するものであり、化学肥料、化学薬品、特殊液肥、殺虫剤等を一切使用せず、雑草が生えず、害虫被害や病気の心配なく植物を栽培でき、かつ植物の生育を早くする植物栽培用培地およびその製造工程で得られる液肥に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、植物の栽培に使用される土にはいろいろ知られているが、その中の一つとして植物栽培用培養土があった。この植物栽培用培養土は生薬を拙出及び搾り出した残滓を用いる方法であった。(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平6−245643
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の植物栽培用培養土は以下のような問題点があった。
(1)すべての栄養分が根に吸収されにくい。
(2)培地が土に限定されている。
(3)生薬が主成分であるため、摂取量も少なく高価である。
(4)雑草が生えるので、害虫や病気が発生し易く、殺虫や除草が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、以上のような従来技術の問題点に鑑み為されたもので、下記工程を経て得られることを第一の特徴とする。
(1)容器内に栄養源を入れて、栄養源または容器に付着した土着微生物群を培養する工程(以下A工程と記す。)
(2)別の容器に、籾殻、生ごみ、および(1)の工程で得られた土着微生物群を約1対0.3〜0.8対0.001〜0.005の重量割合で入れ、生ごみを液状化する生ごみ処理工程(以下B工程と記す。)
(3)(1)の工程で得られた土着微生物群と家畜の糞との混合による発酵分解処理工程(以下C工程と記す。)
(4)(2)の工程で得られた処理物と(3)の工程で得られた処理物を混合する工程(以下D工程と記す。)
【0005】
また、前記容器が、発泡スチロール製であることを第二の特徴とする。
【0006】
また、前記栄養源が、糠・海産物・農産物・豆類の生ものまたは乾物からなる群から選ばれた少なくとも1つを含むことを第三の特徴とする。
【0007】
また、請求項1の(3)の工程で得られた液肥を第四の特徴とする。
【0008】
本発明における容器の材質はいろいろあり特に限定されないが、中でも発泡スチロール製が好適である。発泡スチロール製の容器は通気性が良く、好気性の微生物を繁殖させる効果がある。プラスチック製や木製の容器では、酸素が完全に入らず細菌が発生したり、容器自体が微生物の働きで分解を始めたりすることが起こり易い。
【0009】
また、本発明における土着微生物群とは、バチルス菌、麹、酵母または乳酸菌等であり、中でも好適な土着微生物群はバチルス菌である。
【0010】
また、本発明における栄養源とは、糠、魚の骨や昆布等の海産物、卵の殻、キャベツ、白菜、小松菜等の農産物、大豆等の豆類等の生ものまたは乾物であり、単独または二種類以上混合して使用される。これ等が栄養源として使用される理由は、糠は発酵し易い、海産物はミネラルまたはヨウ素の成分が多く含まれている、農産物は薬、自然治癒の成分が多く含まれ、また、特殊な微生物の発生源にもなる、豆類は微生物や野菜の栄養源が多く含まれ、また、特殊な微生物の発生源にもなる、からである。栄養源としては、糠を主体(好ましくは60重量%以上)にした上記他の栄養源の混合体(好ましくは3品種の混合体)を使用すると良い効果が得られる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の植物栽培用培地およびその製造工程で得られる液肥を使用すると以下の効果が得られる。
(1)雑草が生えず、害虫が発生しないため、化学薬品や殺虫剤などを一切使用する必要がない。
(2)害虫が発生しないため、野菜などが病気にかからないため、質の高い、柔らかい野菜が得られる。
(3)通常の土壌での栽培に比較して、水やり回数がかなり少なくて済む。
(4)野菜の成長が種類にもよるが一ヶ月ほど早い。
(5)室内での栽培や計画栽培ができる。
(6)通常の土壌では、ハーブなどの挿木は不可能に近いが、本発明の培地および液肥を使用すると、挿木は可能となり一週間程で根が出て来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明における各工程について詳細に説明する。
(A工程) 容器に栄養源を入れ、15℃〜20℃の雰囲気で一日一回程度よく混ぜる。かき混ぜることにより栄養源の不完全発酵を防ぎ、発酵を熟成させるとともに、2ヶ月程度かけて好気性の微生物を一律に繁殖させる。この工程では、栄養源が糠の場合、表面に綿状の白色の菌で覆われた、甘い匂いがする塊の混合体になる。
【0013】
(B工程) 別の容器にA工程で得られた土着微生物群と籾殻と生ごみを投入し、15℃〜25℃の雰囲気で土着微生物群の働きを良くするため、1日1回の割合で、一ヶ月間内容物を撹拌する。生ごみにもよるが、1〜3日程度で生ごみの液状化が進み、最終的には、生ごみ液状化物を吸収した茶褐色の籾殻だけとなる。籾殻と生ごみと土着微生物群は1対0.3〜0.8対0.01〜0.005の重量割合で投入する。さらに籾殻と生ごみの好適な重量割合は1対0.4〜0.6である。生ごみの割合が0.8重量部より多くなると生ごみの分解が不十分になり、アンモニア分が多くなり好ましくない。一方、0.4重量部より少ないと生ごみの分解時間が長くなり、培地の生産性が悪くなる。この工程で得られる液状化物を含んだ籾殻は単独で肥料として使用でき、栄養の無い培地でも野菜を生育させることができる。
【0014】
(C工程) 土着微生物群と、にわとり、牛、豚等の家畜の糞を容器に入れ蓋をするか、または、地面で両者を混ぜ、全体をシートで被い、15℃〜25℃の雰囲気で攪拌せずに放置する。1ヶ月程度経過すると家畜の糞の温度が40℃〜60℃に上昇し、水蒸気が発生するようになり、家畜の糞を発酵分解させる。シートの色は特に関係はないが、夏場は透明シート、冬場は黒色シートを使用すると太陽熱の吸収がよくなり、発酵分解を促進できる。この工程では、家畜の糞自体の表面は固いが、内部は軟らかく液化状態になっており、黒褐色の籾殻や藁が混ざった団子状態のものが得られる。家畜の糞と土着微生物群との混合割合は重量比で100:0.05〜0.1にするのが良い。この割合に混ぜると家畜の糞の発酵分解が1週間程度から始まり1ケ月程度で終わり、シートの底に黄褐色透明の液が溜まってくる。これが液肥である。2ヶ月程度になると家畜の糞の水分が蒸発し始め、やや湿ったミネラルの豊富な固形物が得られる。土着微生物群の割合が該比で0.1より多くなると、家畜糞の発酵分解の期間は変わらないが、菌の匂いが強くなり、ミネラルも分解し、塩素分が残るようになる。一方、該比が0.05より少ないと該発酵分解に時間がかかり、微生物の働きが不規則で完全に発酵させることが出来ない。
【0015】
尚、家畜の糞は乾燥状態のものでも、家畜の尿と混じった湿態状態のものでも良い。また、家畜の糞は単独または適宜量混合して使用しても良い。
【0016】
(D工程) B工程で得られた籾殻主体の物とC工程で得られた籾殻と藁の混ざった家畜の糞の固形物を常温雰囲気で混合する。この混合で籾殻が黒ずんだ扁平状塊の本発明の植物栽培用培地が得られる。前者と後者の混合重量比は7対3程度にするのが良い。その理由は、生ごみのミネラルと家畜の糞の窒素、リン酸およびカリウムがバランス良く混ざっているからである。分析した結果では全量窒素0.02%、リン酸0.01%、カリウム0.09%、炭素率19.80%の数値が得られた。後者が3重量部より多くなると塩分が多く残るようになり、植物の生育が悪くなる。また、前者が7重量部程度より多くなると水分が多くなり、うじ虫等が発生し易くなる。
【0017】
尚、以上説明した各工程のうち、B工程とC工程は逆に行っても良いし、同時並行で行っても良く、前記説明順の工程に限定されるものではない。
【0018】
本発明の植物とは主として野菜全般であるが、その他、トマト、メロン、マンゴー、ブドウ、キウイなどの果物類、ハーブ、コスモス、カーネーション、チューリップ、ばらなどの草花、ラン、サボテン、ゴムの木などの観賞用植物が挙げられ、栽培可能な植物はすべて含まれる。
【0019】
以下、製造例と栽培例により本発明をさらに詳細に説明する。
[製造例1]
発泡スチロールの容器に糠10kgを入れ、さらに大豆100g、昆布100g、鰹節30g、椎茸200gを混合した。一日一回の割合で攪拌し、2ヶ月放置して土着微生物群を得た。
【0020】
次に、蓋付きの発泡スチロールの容器(40cm×45cm×20cm)に乾燥した籾殻2kgを入れ、一日野菜の屑や一般の生ごみ1kgを水切りをせず、細かく切って籾殻の上に置き、その上に先に得た土着微生物群5gを蒔き散らした。翌日になると、籾殻に汁が出てきて、白い綿状の菌が生ごみに見られるようになったので、攪拌することにより、該菌を万遍なく広げた。
【0021】
3日もすると、籾殻の色が茶褐色から黒色になり、また、容器内の温度が30℃程度になり、水蒸気が出始めた。一日一回の割合で攪拌を続け、一ヶ月もすると容器の下に水が出始めたので、生ごみの分解終了を確認した。最終の攪拌を一回行って、一日放置し、生ごみの分解液を吸収した籾殻を得た。
【0022】
次に、シートの上に牛の糞1tを広げて乗せ、乾燥した前記土着微生物群100gを糞の上に降りかけた。2日もすると匂いの発生や、うじ虫の発生がなくなり、1週間も経過すると糞が溶け始めた。一ヶ月もすると、シートの底に黄褐色の液が溜まり、液肥を得た。2ヶ月放置すると、糞の水分が抜け、籾殻や藁主体のやや湿ったミネラル豊富な固形物が得られた。
【0023】
次に、先に得られた、生ごみの分解液を吸収した籾殻1kgを植物栽培用の容器に入れ、ついで上記で得られた籾殻や藁主体のミネラル豊富な固形物450g入れて混合し、扁平状に固まった植物栽培用培地を得た。
【0024】
[栽培例1]
上記製造例で得られた籾殻培地と土を準備し、大根の種子をそれぞれ3粒、1cm深さに3cm間隔で蒔き、両者を日当たりの良い場所に置き、朝晩30ccほど水道水をかけて栽培した。その結果を表1に示す。
【0025】
【表1】

【0026】
表1からわかるように、本発明の籾殻培地を使用すると、大根葉の成長が早く、葉の肉質も厚く、葉は先端まで緑色を呈し、雑草も虫も見られないという土培地に比較して、優れた効果が得られた。
【0027】
[栽培例2]
培地を土のみにして、本発明の液肥を水で100倍に薄めたもの(イ)、水(ロ)、HB101を100倍に薄めたもの(ハ)の3種について、以下の方法で野菜の成長比較を行った。容器に土を入れ、大根の種子をそれぞれ3粒、1cm深さに3cm間隔に蒔いたものを3個用意し、それを日当たりの良い場所に置き、前記(イ)、(ロ)、(ハ)を朝晩30ccほどそれぞれにかけた。その結果を表2に示す。
【0028】
【表2】

【0029】
表2からわかるように、本発明の液肥を使用すると、栽培例1と同様に、水やHB101に比較して大きい効果が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程を経て得られることを特徴とする植物栽培用培地。
(1)容器内に栄養源を入れて、栄養源または容器に付着した土着微生物群を培養する工程
(2)別の容器に、籾殻、生ごみ、および(1)の工程で得られた土着微生物群を約1対0.3〜0.8対0.001〜0.005の重量割合で入れ、生ごみを液状化する生ごみ処理工程
(3)(1)の工程でえられた土着微生物群と家畜の糞との混合による発酵分解処理工程
(4)(2)の工程で得られた処理物と(3)の工程で得られた処理物を混合する工程
【請求項2】
容器が発泡スチロール製であることを特徴とする請求項1記載の植物栽培用培地。
【請求項3】
栄養源が、糠、海産物、農産物、豆類の生ものまたは乾物からなる群から選ばれた少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の植物栽培用培地。
【請求項4】
請求項1の(3)の工程で得られる液肥。

【公開番号】特開2007−29079(P2007−29079A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−73511(P2006−73511)
【出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(399044609)
【Fターム(参考)】