説明

植込み型医療装置

【課題】弁金属キャパシタと共に最終的に使用される改良された植込み型医療装置を提供する。
【解決手段】炭化チタンのカソードの群は、アノードに隣接するが、該アノードとの直接の電気的連通状態から絶縁されたチタンケーシングの内面のような、既存の金属表面に位置し得るよう製造することができる。チタンカソードと共に、フォイル型弁金属アノード及び金属粉体にて形成された多孔質の弁金属アノードを使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として、植込み型医療装置に関し、特に、本発明は、弁金属アノードと共に使用されるカソード及び高エネルギ密度キャパシタを製造するためかかるカソードを組み立てる方法に関する。より具体的には、かかるカソードは、その他の用途のうち、特に、植込み型医療装置(IMDs)内に組み込まれる高電圧キャパシタにて使用される。
【背景技術】
【0002】
「弁金属」という語は、その全てが導電性溶液内にて陽極分極されたとき、粘着性の電気絶縁性金属酸化物膜を形成するアルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ジルコニウム等を含む一群の金属を表わす。実際のキャパシタ内における弁金属アノードの性能は、例えば、電解液が接触することのできるアノード及びカソードの有効表面積、金属表面に形成される酸化物の絶縁定数、金属表面の頂部の酸化物層の厚さ、電解液の伝導率等のような幾つかのファクタに依存する。陽極酸化物層の厚さは、アノードを形成する間(すなわち、アノードが形成電解液内に浸漬されるとき)アノードに印加される電位にほぼ比例する。アルミニウムの場合、酸化物は、約〜1.1nm/ボルトにて成長し、タンタルの場合、この「成長速度」は多少より速く、約1.8nm/ボルトである。ニオブ及びタンタルアノードは、典型的に、電解キャパシタにて使用されるとき、加圧した粉体パレット又は「スラグ」の形態にて製造される。
【0003】
加圧したアノードスラグの密度は、典型的に、粉体が形成されるバルク金属の密度よりも顕著に低い、すなわち、所定のスラグ容積の2/3までは開放した空間(孔空間)である。アノードスラグの最終密度は、既知の量の粉体が加圧されて既知の容積になる加圧時点にてほぼ決まる。従来、形成電解液は、アノードのカースト状の内部構造内にて最も「遠方」キャビティさえも湿らせる必要があるから、アノードスラグの形成は、アノードスラグの全体に亙ってかなり均一な開放空間の分布状態を必要とすると考えられていた。このことは、1立方センチメートル以上の程度の容積を有する比較的大きいアノードにとって特に重要なことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
医療装置の形態において、キャパシタは、典型的に、低電圧又は高電圧の刺激を提供し得るよう迅速に充電され且つ放電される。生命の危険の可能性のある不整脈を検知したとき又は検知する間、適宜な電気変換器回路は、充電源として低電圧の電池を使用して1つ又はより多数の高電圧キャパシタを充電する。次に、適宜な時点にて、キャパシタ内に蓄えられたエネルギは、患者の心臓内又は心臓付近に配置された1対の電極を通じて放電される。放電されたエネルギを使用して不整脈を終了させ且つ、秩序立った心臓の活動を回復する。カルジオバーション及び(又は)除細動療法を提供する医療装置は、自動式の外部除細動器(AEDs)及び植込み型カルジオバータ−除細動器(ICDs)を有している。本発明の目的上、ICDは、少なくとも高電圧カルジオバーション又は除細動能力を有するかかるIMDsの全てを包含するものと理解される。殆んど全てのIMDsにおいて、エネルギ、容積、厚さ及び質量は重要な特徴である。効果的なカルジオバーション/除細動療法に必要なエネルギを提供し且つ、蓄積するために使用される電池及び高電圧キャパシタは、歴史的に比較的大型で且つ高価であった。このため、業界は、より小型の電池及びキャパシタの容積に向けた努力を行ってきた。本明細書にて提案されたような高静電容量カソードは、これらの継続的な努力に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、弁金属キャパシタと共に最終的に使用される改良された植込み型医療装置を提供するものである。本発明に従った一群のカソードは、アノードに隣接するが、該アノードとの直接の電気的連通状態から絶縁されたチタンケーシングの内面のような、既存の金属表面に位置し得るよう製造することができる。本発明のカソードと共にフォイル型弁金属アノードを使用することができる。しかし、多孔質弁金属アノード(タンタル、ニオブ等の金属粉体から形成される)が有益に採用される。
【0006】
本発明の一例としての実施の形態は、炭素層をキャパシタケーシングの内面に堆積させるステップを含む。該内面は、チタンを備え、また、ケーシング自体の一部分を含むか又は該ケーシング内に配置された1つ又はより多数の別個のチタン板を含むことができる。
【0007】
カソードに関し及びかかるアノードを製造する加工ステップに関する詳細の多くは、当該技術にて既知である。しかし、材料の選択は、本発明の重要な側面である。すなわち、その他のカソード材料に代えて、可能な限り最大限、本明細書に記載した本発明の過程、方法、組成及び構造体の全てを含む、チタンに堆積させた炭素材料の少なくとも組み合わせが選ばれる。
【0008】
植込み型カルジオバータ−除細動器(ICD)のような心臓装置にて使用されるものの如き電解キャパシタは、共に電気的に直列に連結された2つのキャパシタとして説明できることは周知である。すなわち、典型的に陽極処理したアルミニウム又はタンタルを備える、本明細書にて「アノード側キャパシタ」として説明する第一のキャパシタと、カソードとして作用する流体的電解質により寄与される主として陰極に荷電されたイオンとである。アノード側キャパシタはまた、「第一の二重層」と称することもできる。本明細書にて「カソード側キャパシタ」として説明した第二のキャパシタは、典型的に、カソード作用可能材料と、アノードとして作用する流体的電解質により起因する、主として陽に荷電されたイオンとを備えている。カソード側キャパシタは、「第二の二重層」と称することができる。二重層の双方、すなわち「アノード側キャパシタ」及び「カソード側キャパシタ」の双方に対する電荷量(「Q」)は、大きさが等しく且つ逆極性でなければならない、すなわち、C=Cであり、「C」は静電容量を示し、「U」はアノード及びカソードそれぞれの電圧を示す。(勿論、下付き文字は、アノード及びカソードを表す)。更に、全ての二重層領域を亙る電圧降下は約1ボルトに保たなければならず、さもなければ、電解質を介してガスが形成されるであろう(IMDにとって潜在的に重大な問題である)。このように、約300マイクロファラッドの静電容量を有し且つ、250ボルトにて作動されるキャパシタの場合、カソードは、約100ミリファラッドの静電容量を必要とする。上記のことは、ICDに作用可能に連結されたキャパシタの場合、利用可能な表面積が約10平方センチメートルであり、このため、カソードの特定の静電容量は10ミリファラッド/平方センチメートル程度でなければならない典型的なハウジング又は囲い物に基づくものである。本発明は、キャパシタのカソードに対しこの静電容量値を実現する新規で且つ、非自明の方策を提供するものである。僅かに別の表現にて説明すれば、ICDに作用可能に連結された湿式電解タンタルキャパシタにて使用可能な一例としてのカソードの場合、以下の近似値及び寸法を検討することができる。炭素カソード層は、キャパシタ囲い物の内部にて約10平方センチメートルのチタン基板の表面積を占めることができる。任意の電解キャパシタの全静電容量Cトータルは、2つの個別のキャパシタCアノード及びCカソードの合計値から成っており且つ、等式1/Cトータル=1/Cアノード+1/Cカソードにより表現される。Cトータルを最大にするため、静電容量Cカソードは可能な限り大きくなければならない。このため、カソードの比静電容量は、約10mF/平方センチメートル以上(又はそれ以上)程度でなければならい。
【0009】
チタン基板に堆積させた炭素の比較的薄い熱処理層(例えば、約1μm以上の深さの炭素層)は、ICDに対する250ボルトキャパシタの上記の仕様に適合すると考えられる(実際の処理状態に依存する程度)。堆積させた炭素の比較的大きい部分がその当初の位置から除去(又は変位)された場合でさえ、チタン炭素の境界面に残る炭素系材料は、十分な比静電容量を提供し、キャパシタセルは、依然として効果的に作用し続ける(すなわち、カルジオバーション及び(又は)除細動療法を提供する)。かかる継続的な作用の機序は、現時点にて完全には解明されていない。しかし、上述した処理は、真空熱処理ステップを含むから、チタン−炭素境界面に残る炭素系材料は、殆ど炭化チタン材料から成っている。この表面間材料はキャパシタの平衡状態を保つのに十分な静電容量を提供することは明らかである。このため、本発明により製造されたカソードを保持するキャパシタは、かかるキャパシタがIMD内にて配備されたとき、特に望ましい特徴である、ある程度の欠陥許容公差を有する。すなわち、
本発明に従い、最初に炭素被覆を金属基板、好ましくは、チタンに配置するため多数の各種の技術を採用することができる。その他の技術も使用可能であるが、以下の技術を明確に説明し且つ、特許請求の範囲に記載する。
【0010】
炭素材料は、黒鉛、元素炭素の顆粒球、比較的純粋な形態のカーボンブラック(炭素煤、ランプブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック等としても既知)を含む任意の形態の炭素とすることができる。単独にて又は炭素ブラックの上記の形態の1つ以上と組み合わせて、本発明を実施するとき、炭素ナノチューブ材料を使用することができる。かかるナノチューブ材料は、単層ナノチューブ(SWNT)又は多層ナノチューブ(MWNT)の何れかを含むことができる。純粋な形態、ナノチューブの形態又はその他の形態であるかどうかを問わずに、炭素は、流体担体又は溶液を含浸させ又は流体担体又は溶液内に保持することができる。適宜な溶液は、例えば、揮発性有機質溶媒及び特定の重合系材料のような、焼鈍中、蒸発する任意の材料を含む。
【0011】
本発明の上記及びその他の形態及び特徴は、全体を通じて同様の部品を同様の参照番号で表示する、添付図面と共に検討したとき、本発明の色々な実施の形態の以下の詳細な説明から一層良く理解されるのに伴い明確になるであろう。図面は、正確な縮尺通りではなく、本発明の幾つかの一例としての実施の形態のみを単に示すものに過ぎない。本発明の範囲に明確に属するその他の実施の形態は、当該技術の当業者に容易に明らかになるであろうし、かかる実施の形態の各々は、特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。
【0012】
本発明は、AVMキャパシタと共に最終的に使用される改良されたカソード及びかかるカソードを製造する方法を提供するものである。本発明に従ったカソードの群は、これらのカソードがアノードに隣接するが、アノードと直接に連通する状態から絶縁されたチタンケーシングの内面のような既存の金属表面に位置し得るよう製造することができる。フォイル型弁金属アノード(アルミニウムのような)を本発明のカソードと共に使用することができるが、多孔質弁金属アノード(タンタル、ニオブの金属粉体等から形成される)が有益に採用される。
【0013】
本発明の一例としての実施の形態は、炭素層をキャパシタケーシングの内面に堆積させるステップを含む。該内面は、チタンを備えており、また、ケーシング自体の一部分又は該ケーシング内に配置された1つ又はより多数の別個のチタン板を有することができる。
【0014】
植込み型カルジオバータ−除細動器(ICD)に作用可能に連結された湿式タンタルキャパシタにて使用可能な一例としてのカソードについて、次の近似値及び寸法とすることが考えられる。炭素カソード層は、チタン基板にて約10平方センチメートルの利用可能な表面積を占めることができる。任意の電解キャパシタ全静電容量Cトータルは、2つのキャパシタCアノードとCカソードとの合計値から成っており且つ、等式1/Cトータル=1/Cアノード+1/Cカソードにより表現される。Cトータルを最大にするためには、静電容量Cカソードは可能な限り大きくならなければならない。このため、カソードの比静電容量は、約10mF/平方センチメートル以上程度である必要がある。チタン基板に堆積させた炭素の薄い処理層はこの仕様に適合することができる。堆積させた炭素の比較的大きい部分がその当初の位置から除去(又は変位)された場合でさえ、チタン炭素境界面に残る炭素系材料は、キャパシタセルが作用を継続するのに十分な比静電容量を提供するものと考えられる。かかる継続的な作用機序は現時点にて完全には解明されていないが、上述した処理ステップは、熱処理ステップを含むから、チタン−炭素境界面に残る炭素系材料は、殆ど炭化チタン材料から成る。この境界面材料は、キャパシタの平衡状態を維持するのに十分な静電容量キャパシタを提供するものと考えられる。このように、本発明に従って製造されたカソードを保持するキャパシタは、かかるキャパシタIMD内に配備されたとき、特に望ましい特徴である、程度の欠陥許容公差を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に従って基板として作用可能な主内面を示すD字形キャパシタに対する一例としてのチタンケーシングの斜視図である。
【図2】別個の一連のチタン基板片が静止型の炭素放出装置を経て動く、炭素カソードを該一連の別個の片上に堆積させるシステムの斜視図である。
【図3】真空熱処理されたとき、炭化チタン(TiC)のインターフェース層が形成させるようにする、その上に堆積させた炭素層と相互接続するチタン面を示す平面断面図である。
【図4】印刷ヘッド(又は、炭素放出装置)が炭素又は炭素を含む材料を基板上に放出するとき、印刷ヘッドが前後に往復運動する、炭素カソードをチタン基板の別個の片に堆積させるシステムの斜視図である。
【図5】炭素を含むリボンが圧力下及び(又は)加熱された状態にて基板に対して押し付けられ炭素を基板に付与する共通の位置を経て片が動く、炭素カソードを別個の一連のチタン基板片に堆積させるシステムを示す斜視図である。
【図6】炭素が基板に転写され、また、選択的に、基板が所望の形態又は形状に押し付けられるよう炭素を含むリボンを基板に対して押し付ける、スタンピング過程を示す斜視図である。
【図7】リボンのような炭素を含む媒質に衝突する収束した放射線ビームを使用して炭素を基板に付与し、炭素が昇華を介してリボンから解放され且つ、基板に接着するようにする、染料昇華過程を示す斜視図である。
【図8】炭素層をチタン基板上に堆積させ又成長させるときに使用することのできる化学的気相成長装置の簡略図である。
【図9】図9Aは、チタン基板上に堆積させた炭素層、その間に形成された炭化チタン層、及び残る全ての炭素が除去されて炭化チタンカソード面のみが残る状態を示す平面断面図である。図9Bは、チタン基板上に堆積させた炭素層、その間に形成された炭化チタン層、及び残る全ての炭素が除去されて炭化チタンカソード面のみが残る状態を示す別の平面断面図である。図9Cは、チタン基板上に堆積させた炭素層、その間に形成された炭化チタン層、及び残る全ての炭素が除去されて炭化チタンカソード面のみが残る状態を示す更に別の平面断面図である。
【図10】本発明の1つの実施の形態に従って炭素をチタン基板上に提供し且つ、炭素及び基板を処理する方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明に従った基板として作用可能である主要な内面領域10を示す、D字形キャパシタに対する一例としてのチタンケーシング20の斜視図である。本発明に従い、炭素のコーティング(その他の図面に参照番号25で表示)をチタンのような金属基板20に配置するため色々な技術を採用することができる。その他の技術が使用可能であるが、本明細書に記載した技術は、明白に説明され且つ、特許請求の範囲に含まれている。
【0017】
図2は、チタン基板20の一連の別個の片領域10にカソードとして炭素材料25を堆積させるシステムであって、チタン基板20の片20が静止炭素放出装置30を経て動く、システムの斜視図である。装置30は、1つ又はより多数の別個の印刷ヘッドを有し、印刷ヘッドの各々が複数のインク放出ポートを有するインクジェット印刷装置を備えることができる。インクは、染料系インクのような、炭素を保持する流体担体を備え又は単にインクジェット印刷に適した1つ又はより多数のインク内に懸濁させた炭素ブラック顔料を備えることができる。かかる担体は、インクジェット印刷技術にて既知であるようにグリコール及び同様のものを含むことができる。在庫品のカーボンブラックインクジェットインクを使用することもできる。本発明のこの形態に従い、インクジェット印刷技術は、流体又はインクを放出する孔に近接した小さいレジスタが少量の流体を加熱し、流体の量を実質的に沸騰させ、流体の泡が孔から迅速に噴出される、感熱インクジェット印刷を含むこともできる。印刷ヘッドからの圧電インクの噴出を含む、その他の形態のインクジェット印刷とすることも考えられ、これは、本発明に包含されるものである。この本発明の形態において、電気信号は圧電材料を通じてパルス状に送られ且つ、材料を撓ませて少量の流体が隣接する孔から噴出されるようにする。流体が加熱され又は沸騰してはならない場合、かかる印刷は有益である。例えば、重合インク又は炭素を保持する流体が使用されるならば、流体は印刷ヘッドの孔の回りにて重合化する可能性が最も大きいから、感熱インクジェット印刷ヘッドの性能は圧電印刷ヘッドの場合と比較して劣化することが予想される。これと比較して、「常温流体」圧電印刷過程は、重合系流体を遥かにより均一に且つ迅速に噴出する傾向となる。炭素を保持する流体25が基板20に印刷された後(好ましくは、一定の液滴の寸法を使用して一定の深さ又は厚さまで)、後続の後処理ステップを実行することが望ましい。かかる処理は、約600ないし1000℃にて焼鈍し(好ましくは、真空チャンバ内にて)、炭素−チタン境界面にて炭化チタン(TiC)層を形成し、印刷インク又は流体中の溶媒を蒸発させ且つ、全てのポリマーを熱分解させるステップを含むことができる。次に、活性化ステップとしても知られた第二の焼鈍ステップを実行し、カソードは約0.1ないし4時間、約200ないし500℃の温度にて雰囲気状態下にて焼鈍させる。炭素層の部分が緊密に接着しない程度まで、炭素層を除去することができる(例えば、超音波刺激又は同様のものを用いて)。
【0018】
図3は、炭素−チタン境界面にて炭化チタン(TiC)境界面を形成し得るようチタン面10と該チタン面に堆積させた炭素層25との間の境界面の平面断面図である。
図4は、チタン基板20の別個の片10にカソードとして炭素25材料を堆積させるシステムであって、ヘッド30が炭素25又は炭素を保持する材料を基板20に放出するとき、印刷ヘッド30(又は別の炭素放出装置に対するキャリッジ)が軸方向部材40に沿って前後に往復運動するシステムの斜視図である。
【0019】
図5は、チタン基板20の一連の別個の部分10にカソードとして炭素25を堆積させ、共通の位置を経て動くシステムの斜視図である。炭素を保持するリボン45が圧力及び(又は)加熱状態にて往復運動するプラテン60、70の間にて基板20に加圧され、炭素25を基板20に付与する。炭素25を基板20に配置するこの過程は、炭素25を転写リボン45から基板20の所望の領域10まで熱転写印刷する従来のステップを含む。この過程の幾つかの有利な効果は過剰噴霧しないこと、正確にコーティングすること、均一なコーティング厚さ及び寸法となること等を含む。本発明のこの特徴の1つの形態において、炭素コーティングした重合系リボン45を使用して炭素25を基板20の表面に転写する。リボン45は、典型的に、剥離ライナー(又は層)を有し、このため、(耐熱性)リボン45が加熱され且つ、基板20と接触する位置に配置された後、炭素材料25は基板20に実質的に接着する。上述したように、堆積させた炭素の特定の後処理ステップを実行することが望ましい。かかる処理は、約600ないし1000℃にて焼鈍し(好ましくは真空チャンバ内にて)、炭化チタン(TiC)層を形成し、印刷インク又は流体中に存在する溶媒を蒸発させ且つ、全てのポリマーを熱分解させるステップを含むことができる。次に、活性化ステップとしても知られた第二の焼鈍ステップを実行し、カソードは、約0.1ないし4時間、約200ないし500℃の温度にて雰囲気状態下にて焼鈍させる。炭素層の部分が緊密に接着しない程度まで、炭素層を除去することができる(例えば、超音波刺激又は同様のものを用いて)。
【0020】
図6は、炭素を保持するリボン45を基板20に対して押し付け、炭素25が基板20に転写され、また、選択的に、基板20が所望の形態又は形状となるように押し付けられるスタンピング過程の斜視図である。本発明のこの形態において、炭素25を基板20に堆積させる上述した熱リボンモードと同様に、加熱(例えば、抵抗加熱)されたリボンがスタンピング装置30と基板20との間に配置され、装置30の軸方向に伸びる部分が基板20に押し付けられる。このため、装置のヘッドは完成したカソード(すなわち基板20)の寸法に相応し、また、所望であるならば、基板20の物理的寸法をキャパシタのその他の構成要素(又はキャパシタが内部に配置される電気的装置の内側部分)に相応する形態又は形状となるよう形成することができる。先行技術の場合と同様に、この場合にも、後処理ステップを同様に採用することができる。
【0021】
図7は、炭素25が昇華を介してリボン45から解放され且つ、基板20に接着されるように、リボンのような炭素を保持する媒質55に衝突するレーザ源80からの収束放射線ビームを使用して、炭素25を基板20に付与する色素昇華過程を示す斜視図である。本発明のこの形態において、レンズ90(又はその他の光学的要素)を透過し且つ、色素昇華リボン55に収束したビームを発生させる放射線を発生させ得るよう放射線源80(例えば、レーザ)がプロセッサ100に連結する。炭素(顔料)25は、迅速に昇華し且つ、リボン55と密着した基板20上に堆積する。上述したように、炭素層の各種の後処理ステップを選択的に実行することができる。
【0022】
図8は、炭素25の層をチタン基板20に堆積させ又は成長させるときに使用することのできる化学的気相成長装置105の簡略化した図である。炭素25のチタン20への化学的気相成長法(CVD)は、選択的にメタン又はアセチレンの分解と共に、本発明に従って実行することができる。本発明のこの形態において、供給源又はタンク110からのメタン、アセチレン又はその他の炭化水素ガスの600ないし800℃の流れが比較的低温度の基部部材115に対して規制されたチタン基板20に向けられる。その結果、炭素の層25が基板20の表面10にて成長する。過度に厚い炭素の層25が基板20にて成長するならば、層を減少させる多岐に亙る手段を採用することができ、また、上記と同様に、各種の後処理ステップを実行し、基板にて堅固な炭素コーティングを実現することができる。選択的に、基板の部分はマスキングし、炭素層が所望の位置でのみ成長するように必要があるようにしてもよい。1つの関連した実施の形態において、本発明に従ってプラズマ増強CVDを使用することができる。本発明のこの形態において、高強度のマイクロ波源120は、CVDチャンバ105内にて供給源110からの炭素を保持するガスをイオン化する。次に、ガス120からのイオン化された部分は、基板20上に堆積され且つ成長する。その結果、炭素層25は基板20の表面10上にて成長する。過度に厚い炭素層が基板20にて成長するならば、層を減少させる多岐に亙る手段を採用することができ、また、上記と同様に、各種の後処理ステップを実行し、基板にて堅固な炭化−チタンコーティングを実現することができる。選択的に、基板の部分をマスキングし、炭素層が所望の位置でのみ成長するようにしてもよい。この場合にも、各種の後処理ステップを実行し、最終的な堅固な炭素コーティングを形成することができる。
【0023】
次に、図9A及び図9Bを参照して電極100を製造する方法又は過程200について説明する。参照の容易化のため、かかる方法又は過程200を示すフロー図が図10に示されている。
【0024】
図9A及び図10に示すように、基板20は、ステップ210にて提供される。上述したように、基板20は、チタン又はチタン合金を備えており且つ、電気化学的セル、対向した主要面130、132を有するチタン金属のフォイル又はシートの一部分に対する囲い物の一部として提供される。
【0025】
ステップ220において、基板20の表面132は、比較的粗面の造作又は形態を有するよう変更し又は変形させる。各種の方法を使用して、その比較的粗の仕上げ表面132を提供することができる。例えば、一例としての実施の形態に従い、グリットブラスティング技術を利用して表面132を変化させることができる。グリットは、約1μmの粒子直径を有するアルミナ(AI203)又は炭化ケイ素(SiC)とすることができる。グリットは、約137.895kPa(約20psi)ないし275.79kPa(40psi)の範囲の圧力の圧縮空気を使用して加速することができる。
【0026】
別の一例としての実施の形態に従い、エッチング過程を利用して表面132に対し比較的粗面の表面仕上げを提供することができる。例えば、シュウ酸を約80℃の温度にて利用することができる。
【0027】
別の実施の形態に従い、基板20には、別個の処理ステップを実行することを必要とせずに、粗面とした表面部分(参照番号132)を提供することができる。例えば、真空焼結過程を使用して焼結した金属粒子(例えば、焼結したチタン)を金属シートの表面(例えば、チタンシート)に堆積させることができる。
【0028】
図10を参照すると、ステップ230にて、基板20の少なくとも一部分に隣接して炭素層136(例えば、炭素を含む材料の層)が提供される。別の実施の形態に従い、炭素層136は、アルコール(例えば、メタノール、イソプロパノール等)内に炭素又は黒鉛粉末の懸濁物として提供することができ、また、重合化可能又は重合化不能な形態の何れかにて提供することができる。
【0029】
炭素層136は、任意の適宜な手段により堆積させ又は形成することができる。本明細書にて説明し且つ図示したように、炭素層136は、静電噴霧ガン又は等価的な代替的装置を使用して提供してもよい。採用される特定の堆積方法は、コスト、機械加工容易性及び堆積させた材料の所望の特徴を含む、多岐に亙るファクタに基づいて選ぶ必要がある。
【0030】
1つの実施の形態に従い、炭素層136は、約1μm(例えば、約0.1ないし2μmの範囲)の粒子寸法を有する黒鉛粒子を含む。かかる材料の1つの非限定的な例は、マサチューセッツ州、ワードミルのアルファエーザ(AlfaAesar)により黒鉛、コロイド、潤滑剤、エーロゾル噴霧として商業的に入手可能である。炭素材料は、イソプロパノール中の黒鉛の懸濁物として提供される。代替的な実施の形態に従い、代替的なイソプロパノールに代えて又はイソプロパノールに加えて、その他の型式のアルコールを使用してもよい。
【0031】
一例としての形態に従い、炭素層136は、単一層に代えて、多数の堆積ステップにて堆積される炭素を含む材料の多数の層を有する。例えば、炭素層136は、3ないし20の層の炭素を含む材料を有することができ、また、約20ないし30μm範囲の厚さとすることができる。炭素層の層の数及び厚さは、多岐に亙る代替的な実施の形態に従って変更可能である。
【0032】
図9A及び図9Bに示すように、ステップ240において、基板20及び炭素層136は、約1時間(例えば、約30分ないし90分の範囲)、約1.3322ないし0.7993kPa(約10E−6トル)の圧力にて約800ないし1000℃の範囲の温度まで加熱する。この真空加熱ステップの間、炭素を含む材料と共に提供されたアルコールは、蒸発し且つ(又は)熱分解される。炭素材料136の層内に含まれた炭素原子の少なくとも一部分は、金属原子と化学的に反応して炭化層134を形成する。例えば、基板がチタンにて出来た実施の形態に従い、真空加熱ステップ240の間、炭化チタン層134が形成される。炭素原子は、基板20の表面に形成された自然の酸化物(例えば、二酸化チタン)内の酸素原子を追い出し且つ(又は)基板20内に含まれる金属原子と反応することができる。
【0033】
炭化層134の厚さは、少なくとも部分的に、真空加熱ステップ240にて基板20及び炭素層136が加熱される時間によって決定することができる。1つの実施の形態に従い、真空加熱ステップ240の間、炭素層136の一部分のみが消費され、反応しなかった炭素を含む材料136の層は、炭化層134に隣接したままである。図9A又は図9Bに図示されていないが、本発明の1つの代替的な実施の形態に従い、真空加熱ステップ240にて炭素層136の全体が消費され、炭素を含む材料の別の層は、選択的に、炭化層134に隣接する位置に提供することができる。炭素を含む材料の追加的な層は、炭化層を形成するために使用した炭素材料と同一又は異なる組成のものとすることができる。
【0034】
ステップ250において、基板20、炭化層134及び反応しなかった炭素層136は、約20ないし100℃の温度まで冷却させる。
図10のステップ260において、また、図9Cに示すように、反応しなかった炭素層136は、炭化層のみが露出され、従って、電気化学的セルに対するカソード作用可能な材料として機能するように除去される。炭素層136は、多岐に亙る手動、機械支援、化学的又はそれらの組み合わせの任意のものを使用して除去することができる。炭素層136の除去は、摩耗、摩擦、きさげ仕上、かじり、擦損、やすり仕上、グレーティング、ブラシ掛け、研磨、拭き取り及び(又は)サンディングの手動又は機械支援の方法及び同様のものを備えることができる。これと代替的に、炭素層136を除去する方法は、サンディング、粉砕、バフ研磨、微粒子材料による空気圧−ブラスト法及び(又は)研磨及び同様のものを備えるものでもよい。
【0035】
選択的に、本発明に従って、炭化チタン層134及びチタン基板20は、ステップ260にて約30分ないし90分の範囲の時間、酸素を含む周囲状態又は雰囲気(例えば、空気、純粋な酸素等)内にて約300ないし500℃の温度まで加熱される。このステップにおいて、反応しなかった炭素層134の少なくとも一部分が活性化され、CO、COOH、C=Oのような酸素を含む官能基が形成されて活性炭化領域を形成する。
【0036】
本発明に従い、ESRが減少し、僅かな欠陥許容公差であり、及び炭素カソードをキャパシタキャニスタ又はその他の基板の一部分に堆積させ又はその堆積を容易にする多岐に亙る技術のため、製造容易性が向上した湿式電解質弁金属キャパシタを製造することができる。
【0037】
上記の特定の実施の形態は、キャパシタ、特に本発明に従ってIMD内に組み込まれるキャパシタにて使用可能な炭化チタンカソードを製造するため、炭素材料をチタン基板上に堆積させる過程を示すものである。しかし、本明細書に開示した当該技術の当業者に既知のその他の便宜な措置及び本出願の出願日以前に存在するものを本発明から逸脱せずに採用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植込み型医療装置であって、
該植込み型医療装置は、キャパシタと、該キャパシタ用のケーシング(20)とを備え、
該キャパシタは炭素カソードを備え、該炭素カソードは、チタン基板(20)と、該チタン基板の所定表面部分上に配置された炭化チタン層(134)とからなり、
前記チタン基板(20)は、キャパシタ用ケーシング(20)の内側部分を備え、
該キャパシタは更に、該炭素カソードから隔てられた弁金属アノードと、該弁金属アノードと該炭素カソードとの間に配置された多孔質仕切り材料と、該弁金属アノード及び該炭素カソードの双方と流体的に連通した液体電解質とを備え、
前記弁金属アノードはタンタルアノードスラグを備える、装置
【請求項2】
請求項1に記載の植込み型医療装置において、
チタン基板(20)は実質的に平坦なチタンのシートを備える、装置
【請求項3】
請求項に記載の植込み型医療装置において、
前記キャパシタは、植込み型医療装置内にて作用可能に連結される、装置
【請求項4】
請求項に記載の植込み型医療装置において、
前記植込み型医療装置は、カルジオバータ−除細動器を備える、装置
【請求項5】
請求項に記載の植込み型医療装置において、
前記カルジオバータ−除細動器内にて作用可能に連結された1対のキャパシタを更に備える、装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−228714(P2011−228714A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100407(P2011−100407)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【分割の表示】特願2006−536742(P2006−536742)の分割
【原出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(507020152)メドトロニック,インコーポレイティド (20)
【Fターム(参考)】