説明

検体分析用具

情報量が十分であり、情報を正確に提供することができ、しかもその情報の読み取りにおいて分析装置に特別な機構を必要としない検体分析用具を提供する。 基板13の上に、試薬層11および情報記録層12が形成された検体分析用具1において、前記情報記録層を、一つ若しくは複数の領域に分割し、これらの領域のそれぞれを、単一色で着色し、前記複数の領域における前記単一色の濃淡の組み合わせおよび前記各領域の面積の少なくとも一つにより情報を記録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体分析用具に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床検査において、プラスチック製基板の上に、試薬を含浸させたパッドが配置された検体分析用具が汎用されている。例えば、尿検査では、ブドウ糖(GLU)、タンパク質(PRO)、ビリルビン(BIL)、ウロビリノーゲン(URO)、pH、潜血(BLD)、ケトン体(KET)、亜硝酸塩(NIT)、白血球(LEU)、S.G(比重)および色調等の各検査試薬が、それぞれの検査項目毎に、各パッドに含浸され、これらのパッドがプラスチック製基板上に配置されている。この検体分析用具の各パッドに尿を浸し、前記試薬の色調変化を目視若しくは光学的分析装置で測定することで、前記各検査項目の検査を行うことができる。光学的分析装置による場合は、尿検体を所定のチューブに入れて、これを前記装置にセットすると共に、前記検体分析用具を装置にセットすることにより、自動若しくは半自動で分析できる。なお、このような検体分析用具は、試験片若しくは試験紙と呼ばれることもある。
【0003】
分析装置に使用する検体分析用具には、その種別情報、ロット情報若しくは販売会社情報などを装置に提供するために、黒マーカー、複数のカラーマーカー、バーコード等が形成されている場合がある(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)。しかし、黒マーカーでは、その有無の2つの情報しかなく、情報量が小さいという問題がある。また、カラーマーカーを複数使用する方法では、装置の光源の測定波長に合ったカラーマーカーを選択しないと、装置の種類の相違やカラーマーカーのロット差により、その情報を検出できないという場合もあり得る。バーコードは、情報量が十分であるものの、分析装置にバーコードリーダーを組み込む必要があり、分析装置の高コスト化、複雑化などにつながる。
【特許文献1】特開昭51−23791号公報
【特許文献2】特開昭50−104991号公報
【特許文献3】特開平10−132734号公報
【特許文献4】米国特許第4592893号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、情報量が十分であり、情報を正確に提供することができ、しかも、その情報の読み取りにおいて分析装置に特別な機構を必要としない検体分析用具の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明の検体分析用具は、基板の上に、試薬層および情報記録層が形成された検体分析用具であって、前記情報記録層が、一つの領域もしくは複数の領域に分割され、これらの領域のそれぞれが、単一色で着色されており、前記単一色の種類、前記複数の領域における色の濃淡の組み合わせおよび前記各領域の面積の少なくとも一つから情報が記録されており、この記録が光学的に読み取り可能である検体分析用具である。
【発明の効果】
【0006】
このように、本発明の検体分析用具では、前記情報記録層により、十分な情報を正確に分析装置に提供することができ、また通常の測定用の光学系で情報を読み取ることができ、このため分析装置に特別な機構を組み込む必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
[図1]図1は、本発明の検体分析用具の一例を示す側面図および斜視図である。
[図2]図2は、本発明の検体分析用具における情報記録の一例を示す図である。
[図3]図3は、本発明の検体分析用具における情報記録のその他の例を示す図である。
[図4]図4は、本発明の検体分析用具における情報記録のさらにその他の例を示す図である。
[図5]図5は、本発明の検体分析用具のその他の例を示す側面図および斜視図である。
[図6]図6は、本発明の検体分析用具における情報記録のさらにその他の例を示す図である。
[図7]図7は、本発明の検体分析用具における情報記録のさらにその他の例を示す図である。
[図8]図8は、本発明の検体分析用具における情報記録層のさらにその他の例を示す図である。
[図9]図9は、本発明の検体分析用具における情報記録層のさらにその他の例を示す図である。
[図10]図10は、本発明の検体分析用具における情報記録層のさらにその他の例を示す図である。
[図11]図11は、本発明の検体分析用具における情報記録層のさらにその他の例を示す図である。
[図12]図12は、本発明の検体分析用具における情報記録層のさらにその他の例を示す図である。
[図13]図13は、ベースフィルムに情報記録部を印刷で形成した一例を示す図である。
[図14]図14は、本発明の検体分析用具のさらにその他の例の図である。
【符号の説明】
【0008】
1 検体分析用具
11 試薬層
12 情報記録層
13 基板
121 情報記録部
131 ベースフィルム
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
つぎに、本発明について、さらに詳しく説明する。
【0010】
本発明の検体分析用具において、前記単一色の種類、前記複数の領域における色の濃淡の組み合わせおよび前記各領域の面積の少なくとも一つと、前記試薬層の数および配置の少なくとも一つとから情報が記録されており、これらの記録が光学的に読み取り可能であるという態様であってもよい。この場合、前記試薬層が複数形成されており、前記複数の試薬層が一定のピッチで直列に配列されており、その先頭、途中および最後の少なくとも一つにおいてピッチを変え、このピッチの変化で情報を記録する態様であってもよい。
【0011】
本発明の検体分析用具において、前記単一色は、特に制限されず、例えば、黄色(吸収波長350以上430nm未満)、褐色、赤色(吸収波長430nm以上530nm未満)、紫色(吸収波長530nm以上580nm未満)、青色(吸収波長580nm以上640nm未満)、緑色(吸収波長640nm以上800nm以下)などの有彩色があり、この他に、白、灰色、黒の無彩色もある。また、前記単一色の濃淡は、複数段階に設定してもよいし、後述のように、グラデーション的に連続的に変化させてもよい。複数段階に設定する場合、例えば、1〜10段階、好ましくは、1〜6段階、より好ましくは1〜4段階、さらに好ましくは3〜4段階である。前記単一色の濃淡の段階の例としては、例えば、白、灰色および黒の無彩色の濃淡の例がある。有彩色の濃淡の例としては、例えば、黄色、褐色、赤色、紫色、青色、緑色等において、光吸収若しくは光反射を複数段階に設定することができる。つまり、その色の特有波長はほぼ変化せずに、光吸収性若しくは光反射性が段階的に変化するように設定することができる。光吸収若しくは光反射性を複数段階に設定する例としては、例えば、濃が100〜80%、中間70〜40%、淡が20〜5%の例がある。なお、本発明において、単一色とは、有彩色の場合、その色の特有波長の光吸収若しくは反射(100%および0%吸収若しくは反射も含む)を示すことをいい、その濃淡は、光吸収若しくは反射の程度をいう。また、無彩色の場合の単一色とは、300〜900nmの全波長領域において、ほぼ同一の光吸収性若しくは光反射(100%および0%吸収若しくは反射も含む)のまま変化していくことをいう。本発明において、前記単一色の濃淡は、分析装置が通常具える光学系で測定できるが、別途光学系を備えてもよい。例えば、点着ノズルが検体分析用具表面を動くので、そのノズルに光学系を取り付けることができる。また。検体分析用具を自動的に取り出すフィーダーのドラムに光学系を取り付けることもできる。光学的な測定手段としては、例えば、反射率測定手段や吸光度測定手段があげられる。
【0012】
本発明の検体分析用具において、前記情報記録層の分割領域数は、特に制限されず、例えば、8〜10領域、好ましくは、4〜6領域、より好ましくは2つ若しくは3つの領域である。
【0013】
本発明の検体分析用具において、前記情報記録層が2つ以上形成されていることが好ましい。このようにすれば、さらに多くの情報が記録できる。前記情報記録層の数は、特に制限されず、1〜10個、好ましくは、1〜5個、より好ましくは1〜3個である。前記情報記録層が複数の場合、本発明の検体分析用具において、前記試薬層が複数形成されており、2つ以上形成された前記情報記録層の少なくとも一つが、前記試薬層と試薬層との間に形成されていることが好ましい。このようにすれば、基板表面のスペースを有効利用しながら記録できる情報量を増加させることができる。
【0014】
本発明の検体分析用具の前記複数の領域における色の濃淡の組み合わせにおいて、隣接する前記領域での単一色の濃淡の変化は、特に制限されず、連続的変化および段階的変化のいずれか、若しくは、これらの組み合わせであってもよい。すなわち、前記複数の領域における前記単一色の濃淡の変化は、段階的であって、相互に隣接する複数領域の間で明確に濃淡の変化が分かる場合であってもよいし、連続的であって、徐々に濃淡が変化してもよいし、これらを組み合わせても良い。連続的に濃淡が変化する場合、これらの光学的測定は、絶対反射率若しくは吸光度ではなく、その反射光強度若しくは吸光度の変化率(またはduty比)の測定が好ましい。例えば、白、黒および灰色の無彩色の濃淡で情報を段階的に記録する場合、簡易な光学センサでは、ダイナミックレンジが広すぎるため、灰色を認識するための光学的校正が必要となるが、無彩色の濃淡を連続的(グラデーション的)に変化させれば、その反射率や吸光度の変化を測定することにより、灰色があっても、情報を簡単に読取ることが可能である。なお、単一色の濃淡が段階的に明確に変化している場合であっても、吸光度や反射率の変化により情報を読取ることも可能である。
【0015】
本発明の検体分析用具において、前記情報記録層が、相互に接して2つ以上形成されており、前記隣接する情報記録層間において、前記単一色の濃淡が連続的に変化していてもよい。この場合も、前述と同様に、情報が記録でき、かつ読取ることができる。
【0016】
本発明の検体分析用具において、前記試薬層の数は、特に制限されず、例えば、1〜15個であり、好ましくは1〜10個であり、より好ましくは1〜8個である。また、前記試薬層の配置による情報の記録としては、例えば、前記試薬層を複数形成し、前記複数の試薬層を一定のピッチで直列に配列させ、その先頭、途中および最後の少なくとも一つにおいてピッチを変え、このピッチの変化で情報を記録することがあげられる。具体例としては、前記基板上に、一定のピッチで試薬層を直列に配列すると仮定した場合、試薬層が位置すべき場所に試薬層を設けないことにより、ピッチを変化させることができる。さらに、この場合、試薬層があるべき場所に試薬層がある場合を[1]とし、試薬層があるべき場所に試薬層がない場合を[0]とすれば、[1]と[0]を用いた2進法によるデジタル情報を形成することも可能である。本発明において、前記試薬層の数および配置は、分析装置が通常具える光学系で判別でき、例えば、反射率や吸光度の測定により判別できる。
【0017】
本発明の検体分析用具において、前記情報記録層に記録される情報は、特に制限されないが、例えば、以下の情報がある。
・検体分析用具の販売会社を自動識別するための情報
・検体分析用具の販売国を自動識別するための情報
・検査項目数及び検査項目の貼付順序を自動識別するための情報
・検体分析用具のロット情報(検量線又は感度情報)
・検体分析用具が目視専用か、装置読取専用か、若しくは目視・装置読取併用かに関する情報
・検体分析用具の表側(試薬側)および裏側を識別するための情報
・検体分析用具の試薬の有無を識別するための情報
・検体分析用具の分析装置での位置ずれを検知し、補正するための情報
・検体分析用具を光学系で測定する場合、光量を補正する情報
【0018】
本発明の検体分析用具の用途は、特に制限されず、例えば、尿検査用、生化学検査用、微生物検査用、免疫検査用、遺伝子検査用、環境検査用、農薬検査用もしくはアレルゲン検査用等がある。また、尿検査の場合の検査項目としては、例えば、ブドウ糖(GLU)、タンパク質(PRO)、ビリルビン(BIL)、ウロビリノーゲン(URO)、pH、潜血(BLD)、ケトン体(KET)、亜硝酸塩(NIT)、白血球(LEU)、S.G(比重)、色調、アスコルビン酸、塩濃度、高感度タンパク、アルブミン、クレアチニン、ベンスジョーンズ蛋白、ホルモン類および生理活性物質等がある。このように複数の検査項目に対応する検体分析用具では、前記検査項目毎に対応する試薬層が少なくとも一つ形成されている。
【0019】
本発明の検体分析用具は、分析装置に使用されることが好ましいが、目視判定に使用してもよい。また、前記分析装置の種類は、特に制限されず、手動式、半自動式、全自動式のいずれであってもよい。
【0020】
つぎに、本発明の検体分析用具の実施例について、図面に基づき説明する。なお、図1〜図14において、同一部分には同一符号を付している。
【実施例1】
【0021】
図1に本発明の検体分析用具の一例を示す。同図(A)は、側面図であり、同図(B)は斜視図である。図示のように、この検体分析用具1は、短冊状の基板13の上に、11個の試薬層11および1個の情報記録層12が形成されている。前記基板の材質は特に制限されず、例えば、樹脂、金属、ガラスなどがある。基板の色は、特に制限されず、白色、灰色、黒色、有彩色、透明のいずれであってもよい。前記基板の大きさは、特に制限されず、検査項目、使用する分析装置の規格等により適宜決定され、例えば、長さ50〜150mm、幅2〜10mm、厚み0.1〜1.0mmである。各試薬層11は、検査項目に対応した所定の試薬を含浸させたパッドを前記基板13上に貼着することにより形成されている。前記パッドの材質としては、例えば、ろ紙、ガラス繊維ろ紙、編物、織物、不織布、メンブランフィルター、多孔質樹脂シートなどがある。また、各試薬層11(パッド)の形は特に制限されず、正方形、長方形、円形、楕円形などがある。各試薬層11(パッド)の大きさは、特に制限されず、形状が正方形状の場合、例えば、縦と横2〜10mm、厚み0.05〜1.0mmである。前記試薬層11の数は、検査項目に応じ増減可能である。これらの試薬層11は、一定のピッチで11個の試薬層を直列に配置されている。このピッチは、特に制限されないが、例えば、1.0〜100mmである。情報記録層12は、印刷、フィルムの貼着等の方法により形成できる。前記情報記録層12の形は、特に制限されず、正方形、長方形、円形、楕円形などがある。情報記録層12の大きさは、特に制限されず、正方形状のプラスチックフィルムを貼着した場合、例えば、縦と横1.0〜10mm、厚み0.05〜1.0mmである。情報記録層12の数は、特に制限されず、この例のように1個でもよいし、2個以上設けてもよい。情報記録層12と、これと隣り合う試薬層11との距離は、特に制限されず、例えば、0(隣接する場合)〜100mmの範囲である。この検体分析用具の基板13の一方の端(同図において右側端部)では、試薬層11および情報記録層12を設けないことにより、スペースを確保し、この部分を指先で摘まんで取り扱えるようにしている。
【0022】
つぎに、この検体分析用具の情報記録の例について、図2、図3および図4に基づき説明する。なお、これらの図において、図1と同一部分には、同一符号を付している。また、これら例では、単一色の濃淡の例として、白、灰色、黒および赤の例を挙げているが、本発明はこれらに限定されず、黄色(吸収波長350nm以上430nm未満)、褐色、紫色(吸収波長530nm以上580nm未満)、青色(吸収波長580nm以上640nm未満)、緑色(吸収波長640nm以上800nm以下)などの有彩色の濃淡を使用してもよい。
【0023】
図2は、前記検体分析用具の一例の平面図である。同図において、R1〜R11は、各試薬層を表す符号であり、IF1は、情報記録層12を示す。図示のように、この検体分析用具1の情報記録層12では、領域を長方形状に3等分しており、白色と黒色で情報を記録している。領域が3領域で、使用する色が無彩色の白色と黒色の場合、2×2×2の組み合わせとなり、8種類の情報が記録できる。同図では、(1)〜(7)の7種類の情報を記録した例を示している。このような情報は、特別な装置を必要とせず、分析装置が具える光学系で読み取ることが可能である。
【0024】
(情報例1)
つぎに、前記検体分析用具に記録された種々の情報を、分析装置が識別し、情報を取り込む具体的な手順の一例を以下に示す
(1)検体分析用具の試薬層11に、点着又はDipping等で、検体を供給する。
(2)検体分析用具1の試薬層11を上にして、分析装置の指定された検体分析用具ホルダーの一定の位置に、検体分析用具1を置く。
(3)予め決められた位置(スタート位置)に、分析装置の光学系が移動する。
(4)光学系が検体分析用具の表面を順次スキャニングを開始し、スタート位置からの距離と反射率を計測する。
(5)一定距離ごとの全ての波長(例:400、450、500、550、630、750nm)の反射率を測定する。
(6)情報記録層12(IF1)の分割された部分のそれぞれの位置と、前記全ての波長でのシグナル量から、検体分析用具1の情報を自動的に分析装置に取り込む。
(7)取り込んだ情報を基に、分析装置において適切な操作、措置および分析を行う。
【0025】
(情報例2)
つぎに、図2の(1)の検体分析用具の例を用いて、IF1に記録された情報の取り込み、およびこの情報による分析の一例を以下に示す。
(1)分析装置の光学系が、スタート位置からスキャンを開始し、スタート位置からaの距離にある部分において、全ての波長の反射率が90〜100%の場合、白と識別する。
(2)スタート位置からbの距離にある部分において、全ての波長の反射率が90〜100%の場合、白と識別する。
(3)スタート位置からcの距離にある部分において、全ての波長の反射率が5〜20%の場合、黒と識別する。
(4)前記(1)から(3)の識別により検体分析用具に記録された情報を読取り、分析装置が記憶している情報と突き合わせる。例えば、試薬層の項目数(同図では10項目)と、試薬層の位置を突き合わせて、一致するか否かを判断する。一致しない場合はエラーとなる。また、前記識別の際に、検体分析用具が分析装置内の所定個所にセットされていること、向きが正しいこと(表側に置かれたこと)も識別することができる。
(5)スタート位置からcの位置にある黒マーカーの中央、またはエッジ位置を識別し、その位置から各試薬層の中央の位置情報を読み取り、これに従って光学系はその試薬層の中央位置の反射率を測定することができる。すなわち、検体分析用具が分析装置の所定個所(ホルダー)の一定位置に置かれなくても、黒マーカーを基準に試薬層の位置を計算することができるので、検体分析用具がホルダー内でずれても、試薬層の位置を正確に認識し、かつ測定できる。
【0026】
(情報例3)
前記情報例1においては、スタート位置からcの距離の部分の色が黒の場合であったが、以下に、同部分が灰色の濃淡若しくは白によって、情報が異なる例を示す。
(1)スタート位置からcの距離にある部分において、全ての波長の反射率が20〜30%の場合、濃い灰色と識別する。この情報は、9項目の試薬層、その位置および検体分析用具が表側を向いていることに関する情報である。
(2)スタート位置からcの距離にある部分において、全ての波長の反射率が30〜50%の場合、中濃度の灰色と識別する。この情報は8項目の試薬層、その位置および検体分析用具が表側に向いていることに関する情報である。
(3)スタート位置からcの距離にある部分において、全ての波長の反射率が50〜80%の場合、薄い灰色と識別する。この情報は7項目の試薬層、その位置および検体分析用具が表側を向いていることに関する情報である。
(4)スタート位置からcの距離にある部分において、全ての波長の反射率が90〜100%の場合、白と識別する。この情報は、検体分析用具が裏側を向いていることを示す情報であり、この場合は、セットミスとなり、エラーメッセージを表示することになる。
【0027】
前記情報例2および情報例3は、スタート位置からcの距離にある部分の黒色、灰色、白に濃淡での情報を用いて、5種類の情報を記録した。この他に、スタート位置からa部分およびb部分での濃淡情報の組み合わせでも情報を記録することができる(図2の(2)〜(7)、図3の(8)〜(9)参照)。また、黒色の濃淡だけでなく、黄色の濃淡、褐色の濃淡、赤色の濃淡、紫色の濃淡、青色の濃淡、緑色の濃淡の組み合わせで、検体分析用具の情報を記録することができる。これらの例では、IF1は3分割したが、4分割以上に分割しても良い。
【0028】
(情報例4)
つぎに、図3に、検体分析用具の情報記録例のその他の例を示す。同図において、R1〜R11は、各試薬層を表す符号であり、IF1は、情報記録層12を示す。図示のように、この検体分析用具1の情報記録層12では、領域を長方形状に3等分しており、白色、黒色および灰色で情報を記録している。領域が3領域で、使用する色の濃淡が3種類の場合、3×3×3の組み合わせとなり、ここで、27種類の情報が記録できる。同図では、(8)と(9)の2種類の情報を前記情報記録層に記録した例を示している。このような情報は、特別な装置を必要とせず、分析装置が具える光学系で読み取ることが可能である。
【0029】
(情報例5)
図3の(9)の検体分析用具の例を用いて、有彩色を用いて情報を記録し、かつ読み取る例を説明する。
(1)この検体分析用具(図3(9))では、スタート位置からaの部分はピンク、bの部分は白色、cの部分は赤色に着色されている。
(2)光学系のスキャンを開始し、スタート位置からaの距離にある部分において、500nmの波長の反射率が40〜60%で、他の波長(400、450、550、630、750nm)の反射率が全て40〜60%より大きく、500nmの反射率が最も低い反射率を示す場合、この部分の着色をピンク色と識別する。
(3)スタート位置からbの距離にある部分において、全ての波長の反射率が80〜100%の場合、白色と識別する。
(4)スタート位置からcの距離にある部分において、500nmの波長の反射率が5〜20%で、他の波長(400、450、550、630、750nm)の反射率が全て5〜20%より大きく、500nmの反射率が最も低い反射率を示す場合、赤色と識別する。
(5)これらのステップから、情報記録層12に記録された情報を読み取ることができる。例えば、前述の情報例1〜5と同様に、試薬層の種類、項目数、検体分析用具の向き(裏表)等の情報を読み取ることができる。
(6)スタート位置からcの位置にある赤色マーカーの中央、またはエッジ位置を識別し、その位置から各試薬層の中央の位置が記憶されており、光学系はその試薬層の中央位置の反射率を測定することができる。このことにより、検体分析用具が分析装置のホルダーの所定位置に置かれなくても、赤色マーカーを基準に距離を計算することができるので、検体分析用具がホルダー内でずれても、各試薬層の位置を正確に認識でき、かつ測定できる。
【0030】
図4は、前記検体分析用具のその他の例の平面図である。同図において、R1〜R11は、各試薬層を表す符号であり、IF1およびIF2は、情報記録層12を示す。図示のように、この検体分析用具1の情報記録層12のIF1では、領域を長方形状に3等分しており、白色と黒色で情報を記録している。また、(10)、(11)および(12)では、試薬層11が10個であり、前述の例より試薬層が1個抜けており、その抜けた部分に、他の情報記録層12として、IF2が形成されている。また、(13)および(14)では、試薬層11のR10とR11の間の領域に、他の情報記録層12としてIF2が形成されている。
【実施例2】
【0031】
図5に、本発明の検体分析用具のさらにその他の例を示す。同図(A)は、側面図であり、同図(B)は斜視図である。図示のように、この検体分析用具1は、短冊状の基板13の上に、10個の試薬層11および1個の情報記録層12が形成されている。前記基板の材質は特に制限されず、例えば、樹脂、金属、ガラスなどがある。基板の色は、特に制限されず、白色、灰色、黒色、有彩色、透明のいずれであってもよい。前記基板の大きさは、特に制限されず、検査項目、使用する分析装置の規格等により適宜決定され、例えば、長さ50〜150mm、幅2〜10mm、厚み0.1〜1.0mmである。各試薬層11は、検査項目に対応した所定の試薬を含浸させたパッドを前記基板13上に貼着することにより形成されている。前記パッドの材質としては、例えば、ろ紙、ガラス繊維ろ紙、編物、織物、不織布、メンブランフィルター、多孔質樹脂シートなどがある。また、各試薬層11(パッド)の形は特に制限されず、正方形、長方形、円形、楕円形などがある。各試薬層11(パッド)の大きさは、特に制限されず、形状が正方形状の場合、例えば、縦と横2〜10mm、厚み0.05〜1.0mmである。前記試薬層11の数は、検査項目に応じ増減可能である。これらの試薬層11は、11個の試薬層を直列に配置するという仮定で一定のピッチで配置しているが、途中で(同図(A)の左から8番目と9番目の間)で、1個の試薬層が抜けた状態となっており、これによって情報が記録されている。このピッチは、特に制限されないが、例えば、1.0〜100mmである。情報記録層12は、印刷、フィルムの貼着等の方法により形成できる。前記情報記録層12の形は、特に制限されず、正方形、長方形、円形、楕円形などがある。情報記録層12の大きさは、特に制限されず、正方形状のプラスチックフィルムを貼着した場合、例えば、縦と横1.0〜10mm、厚み0.05〜1.0mmである。情報記録層12の数は、特に制限されず、この例のように1個でもよいし、2個以上設けてもよい。情報記録層12と、これと隣り合う試薬層11との距離は、特に制限されず、例えば、0(隣接する場合)〜100mmの範囲である。この検体分析用具の基板13の一方の端(同図において右側端部)では、試薬層11および情報記録層12を設けないことにより、スペースを確保し、この部分を指先で摘まんで取り扱えるようにしている。
【0032】
つぎに、この検体分析用具の情報記録の例について、図6および図7に基づき説明する。なお、これらの図において、図5と同一部分には、同一符号を付している。また、これら例では、単一色の濃淡の例として、白、灰色、黒および赤の例を挙げているが、本発明はこれらに限定されず、黄色(吸収波長350以上430nm未満)、褐色、紫色(吸収波長530以上580nm未満)、青色(吸収波長580以上640nm未満)、緑色(吸収波長640以上800nm以下)などの有彩色の濃淡を使用してもよい。
【0033】
図6に示すように、この検体分析用具の情報記録層12では、領域を3等分しており、白色と黒色で情報記録している。領域が3領域で、使用する色が白色と黒色の2色の場合、2×2×2の組み合わせとなり、ここでは、8種類の情報が記録できる。図6(1)〜(7)には、情報記録層12において、7種類の情報を前記情報記録層に記録した例を示している。
【0034】
図6におけるR1〜R10は、最大10項目の各試薬層を示す。IF1は、情報記録層12を示し、IF2は、直列に配置した試薬層の一箇所を取り除いて「空きピッチ」を形成することにより情報記録した部分を示す。また、IF3は、試薬層を除去して形成した「空きピッチ」に単一色の着色を施して情報を記録した部分を示す。前記着色は、印刷またはカラーフィルムやカラーテープを貼付することにより実施できる。IF4は、各試薬層の間の基材表面に単一色を着色することにより情報記録した部分を示す。前記着色は、印刷またはカラーフィルムやカラーテープを貼付することにより実施できる。さらに、図示していないが、基材の裏面に同様に単一色を着色することにより、情報記録することもできる(これをIF5とする)。前記着色は、印刷またはフィルムや色テープを貼付することにより実施できる。そして、これらのIF1〜IF5までの情報記録部分を組み合わせることによって、情報量を多くすることができる。
【0035】
図6の検体分析用具では、IF2の空きピッチは一つであるが、空きピッチを数箇所設けて、記録する情報を増やすこともできる。また、R1〜R11の試薬層は厚みを持っているので、試薬層単独でも検体分析用具の情報を取り込むことができる。例えば、基材と試薬層で高さが異なるので、その高さの違いによる反射シグナルや透過シグナルにおいて、基材部分と試薬層部分との間で差が発生するので、これを情報記録に利用できる。さらに、試薬層のエッジ部分では、さらに急激にシグナルの変化が発生するので、そのシグナルを、試薬層の数量に関する情報とすることもできる。
【0036】
この様に多くの情報を単一色の濃淡の組み合わせによって簡便に記録する方法、及び検体分析用具が構造的に持つ特徴(試薬層の配置など)から情報を取り込む方法は、特別な装置を必要とせず、分析装置が具える試験層の発色を測定する光学系で記録を読み取ることができる。また、分析装置に簡単な光学系を追加するだけで、試薬や装置に関する多数の情報を取り込むことが可能である。
【0037】
(情報例2−1)
つぎに、前記検体分析用具に記録された種々の情報を、分析装置が識別し、情報を取り込む具体的な手順の一例を以下に示す
(1)検体分析用具の試薬層11に、点着又はDipping等で、検体を供給する。
(2)検体分析用具1の試薬層11を上にして、分析装置の指定された検体分析用具ホルダーの一定の位置に、検体分析用具1を置く。
(3)予め決められた位置(スタート位置)に、分析装置の光学系が移動する。
(4)光学系が検体分析用具の表面を順次スキャニングを開始し、スタート位置からの距離と反射率を計測する。
(5)一定距離ごとの全ての波長(例:400、450、500、550、630、750nm)の反射率を測定する。
(6)情報記録層12(IF1)の分割された部分のそれぞれの位置と、前記全ての波長でのシグナル量から、検体分析用具1の情報を自動的に分析装置に取り込む。
(7)さらに、試薬層(R1〜R10など)や、IF2、IF3、IF4、IF5(基板裏側の記録情報)の位置や単一色の濃淡の反射率を測定し、検体分析用具1の情報を自動的に分析装置に取り込む。
(8)取り込んだ情報を基に、分析装置において適切な操作、措置および分析を行う。
【0038】
(情報例2−2)
つぎに、図6の(1)の検体分析用具の例を用いて、IF1に記録された情報の取り込み、およびこの情報による分析の一例を以下に示す。
(1)分析装置の光学系が、スタート位置からスキャンを開始し、スタート位置からaの距離にある部分において、全ての波長の反射率が90〜100%の場合、白と識別する。
(2)スタート位置からbの距離にある部分において、全ての波長の反射率が90〜100%の場合、白と識別する。
(3)スタート位置からcの距離にある部分において、全ての波長の反射率が5〜20%の場合、黒と識別する。
(4)前記(1)から(3)の識別により検体分析用具に記録された情報を読取り、分析装置が記憶している情報と突き合わせる。例えば、試薬層の項目数(同図では10項目)と、試薬層の位置、および試薬層R8と試薬層R9との間にIF2があるという情報を突き合わせて、一致するか否かを判断する。一致しない場合はエラーとなる。また、前記識別の際に、検体分析用具が分析装置内の所定個所にセットされていること、向きが正しいこと(表側に置かれたこと)も識別することができる。
(5)スタート位置からcの位置にある黒マーカーの中央、またはエッジ位置を識別し、その位置から各試薬層の中央の位置情報を読み取り、これに従って光学系はその試薬層の中央位置の反射率を測定することができる。すなわち、検体分析用具が分析装置の所定個所(ホルダー)の一定位置に置かれなくても、黒マーカーを基準に試薬層の位置を計算することができるので、検体分析用具がホルダー内でずれても、試薬層の位置を正確に認識し、かつ測定できる。
【0039】
(情報例2−3)
前記情報例2−1においては、スタート位置からcの距離の部分の色が黒の場合であったが、以下に、同部分が灰色の濃淡若しくは白によって、情報が異なる例を示す。
(1)スタート位置からcの距離にある部分において、全ての波長の反射率が20〜30%の場合、濃い灰色と識別する。この情報は、9項目の試薬層、その位置および検体分析用具が表側を向いていることに関する情報である。
(2)スタート位置からcの距離にある部分において、全ての波長の反射率が30〜50%の場合、中濃度の灰色と識別する。この情報は8項目の試薬層、その位置および検体分析用具が表側に向いていることに関する情報である。
(3)スタート位置からcの距離にある部分において、全ての波長の反射率が50〜80%の場合、薄い灰色と識別する。この情報は7項目の試薬層、その位置および検体分析用具が表側を向いていることに関する情報である。
(4)スタート位置からcの距離にある部分において、全ての波長の反射率が90〜100%の場合、白と識別する。この情報は、検体分析用具が裏側を向いていることを示す情報であり、この場合は、セットミスとなり、エラーメッセージを表示することになる。
【0040】
前記情報例2−2および情報例2−3は、スタート位置からcの距離にある部分の黒色、灰色、白に濃淡での情報を用いて、5種類の情報を記録した。この他に、スタート位置からa部分およびb部分での濃淡情報の組み合わせでも情報を記録することができる(図6の(2)〜(7)、図7の(8)〜(9)参照)。また、黒色の濃淡だけでなく、黄色の濃淡、褐色の濃淡、赤色の濃淡、紫色の濃淡、青色の濃淡、緑色の濃淡の組み合わせで、検体分析用具の情報を記録することができる。これらの例では、IF1は3分割したが、4分割以上に分割しても良い。
【0041】
(情報例2−4)
つぎに、図6の(1)の検体分析用具の例において、試薬層の高さおよび空きピッチ(IF2)により情報を記録し、かつ読み取る例について、以下に説明する。
(1)スキャン開始後、光学系が、R10の部分に来た場合、R10は、基板部分より高くなっているので、R10での反射率が、基板部分の反射率より高くなることで、R10を確認できる。したがって、これにより試薬層の数量が10であることを記録でき、かつ分析装置は、それを認識できる。
(2)R10の両方のエッジ部分に光学系の光が当たると、その反射率の急激なシグナル変化を起こす。そのシグナル数を測定し、2で割ると試験層の数となるから、これを利用して情報を記録し、かつ読み取ることができる。
(3)さらに、エッジ部分は2箇所あり、スタート位置からその試薬層の2箇所の中央までの距離から、試薬層の貼付位置の情報を記録でき、かつ読み取ることができる。
(4)スキャン開始後、空きピッチ(IF2)の位置に光学系が来て全波長の反射率が70〜100%となった場合、白色と識別され、この部分には試薬層が存在しないという情報が記録され、かつ読み取ることができる。
【0042】
この情報例2−4では、試薬層R8とR9の間に空きピッチ(IF2)を設置した例を示したが、本発明はこれに限定されない。IF2の位置は、試薬層R1〜R10の何処にでも設定できる。また、IF2を、複数設けることにより、多くの情報を記録することもできる。
【0043】
(情報例2−5)
図6の(6)の検体分析用具の例を用いて、IF3の情報記録と読み取りの手順の一例について説明する。IF3は、試薬層の空き部分を単一色に着色したものである。
(1)スタート位置から光学系によるスキャンを開始し、スタート位置からeの距離にある部分において、全ての波長の反射率が5〜20%の場合、黒と識別する。
(2)スタート位置からeの距離にある部分において、全ての波長の反射率が30〜50%の場合、中濃度の灰色と識別する。
(3)スタート位置からeの距離にある部分において、全ての波長の反射率が90〜100%の場合、白と識別し、試薬層が無いことを識別する。
【0044】
この情報例2−5では、黒色の濃淡の実施例を示したが、黄色の濃淡、褐色の濃淡、赤色の濃淡、紫色の濃淡、青色の濃淡、緑色の濃淡でも、検体分析用具の情報を記録することができる。また、この情報例2−5は、試薬層の空き部分R10をIF3としたが、本発明はこれに限定されず、IF3は、R1〜R10のいずれの試薬層の空き部分であってもよく、またIF3は1個所若しくは複数個所であってもよい。
【0045】
(情報例2−6)
図6の(7)の検体分析用具の例を用いて、試薬層間に設けられたIF4の情報の記録および読み取りの一例について説明する。IF4は、試薬層間の部分を単一色に着色したものである。
(1)光学系によるスキャンを開始し、スタート位置からfの距離にある部分(IF4)において、全ての波長の反射率が5〜20%の場合、黒と識別する。
(2)光学系によるスキャンを開始し、スタート位置からfの距離にある部分(IF4)において、全ての波長の反射率が30〜50%の場合、中濃度の灰色と識別する。
(3)光学系によるスキャンを開始し、スタート位置からfの距離にある部分(IF4)において、全ての波長の反射率が80〜100%の場合、白と識別する。
【0046】
この情報例2−6では、黒色の濃淡のIF4の例を示したが、黄色の濃淡、褐色の濃淡、赤色の濃淡、紫色の濃淡、青色の濃淡、緑色の濃淡でも、検体分析用具の情報を記録することができる。また、この情報例2−6は、試薬層R7とR8の間をIF4としたが、本発明はこれに限定されず、IF4は、R1〜R10のいずれの試薬層の間であってもよく、またIF4は1個所若しくは複数個所であってもよい。
【0047】
(情報例2−7)
つぎに、図7に、検体分析用具の情報記録例のその他の例を示す。同図において、R1〜R11は、各試薬層を表す符号であり、IF1は、情報記録層12を示し、IF2は、直列に配列した試薬層のピッチの変化部分(情報記録部分)を示す。図示のように、この検体分析用具1の情報記録層12では、領域を長方形状に3等分しており、白色、黒色および灰色で情報を記録している。領域が3領域で、使用する色が3色の場合、3×3×3の組み合わせとなり、ここで、27種類の情報が記録できる。同図では、(8)と(9)の2種類の情報を前記情報記録層に記録した例を示している。また、(8)では、試薬層R6とR8との間のIF2で試薬層の配列ピッチを変化させており、(9)では、試薬層R1とR3との間のIF2で試薬層の配列ピッチを変化させている。これらの試薬層の配列ピッチの変化によって情報を記録している。また、試薬層の数にも情報を持たせることが可能である。このような情報は、特別な装置を必要とせず、分析装置が具える光学系で読み取ることが可能である。
【0048】
(情報例2−8)
図7の(9)の検体分析用具の例を用いて、有彩色を用いて情報を記録し、かつ読み取る例を説明する。
(1)この検体分析用具(図7(9))では、スタート位置からaの部分はピンク、bの部分は白色、cの部分は赤色に着色されている。
(2)光学系のスキャンを開始し、スタート位置からaの距離にある部分において、500nmの波長の反射率が40〜60%で、他の波長(400、450、550、630、750nm)の反射率が全て40〜60%より大きく、500nmの反射率が最も低い反射率を示す場合、この部分の着色をピンク色と識別する。
(3)スタート位置からbの距離にある部分において、全ての波長の反射率が80〜100%の場合、白色と識別する。
(4)スタート位置からcの距離にある部分において、500nmの波長の反射率が5〜20%で、他の波長(400、450、550、630、750nm)の反射率が全て5〜20%より大きく、500nmの反射率が最も低い反射率を示す場合、赤色と識別する。
(5)これらのステップから、情報記録層12に記録された情報を読み取ることができる。例えば、前述の情報例1〜7と同様に、試薬層の種類、項目数、検体分析用具の向き(裏表)等の情報を読み取ることができる。
(6)スタート位置からcの位置にある赤色マーカーの中央、またはエッジ位置を識別し、その位置から各試薬層の中央の位置が記憶されており、光学系はその試薬層の中央位置の反射率を測定することができる。このことにより、検体分析用具が分析装置のホルダーの所定位置に置かれなくても、赤色マーカーを基準に距離を計算することができるので、検体分析用具がホルダー内でずれても、各試薬層の位置を正確に認識でき、かつ測定できる。
【実施例3】
【0049】
つぎに、情報記録層の複数領域の単一色の濃淡を、連続的に変化させた例について、図8〜図14に基づき説明する。なお、図8〜図14において、図1〜図7と同一部分には同一符号を付している。
【0050】
図8に示す情報記録層12では、無彩色が、同図において、左から右に進むにしたがい、黒色から灰色に徐々に連続的に変化し、さらに灰色から白色に徐々に連続的に変化している。また、図9に示す情報記録層12では、無彩色が、同図において、左から右に進むにしたがい、白色から灰色を経て黒色(図の略中央)に徐々に連続的に変化し、そして黒色から灰色を経て白色に徐々に連続的に変化している。図10に示す情報記録層12では、図9とは逆に、一つの情報記録層12において、無彩色が、同図において、左から右に進むにしたがい、黒色から灰色を経て白色(図の略中央)に徐々に連続的に変化し、そして白色から灰色を経て黒色に徐々に連続的に変化している。
【0051】
図11に、3つの情報記録層12が、隙間無く接した状態で配置され、かつ隣接する情報記録層間において、単一色の濃淡が連続的に変化している状態の一例を示す。この3つの情報記録層12において、同図の左から右に行くにしたがい、無彩色が、白色から灰色を経て黒色(真中の情報記録層)に徐々に連続的に変化し、そして、黒色から灰色を経て白色に徐々に連続的に変化している。
【0052】
図12に、基板13の上に6つの情報記録層12が配置された一例を示す。この例では、矢印で示すように、情報の読み取り方向は、基板13の幅方向である。図示のように、この例では、同図において、左から、第1番目の情報記録層は、白色一色であり、第2番目から第5番目までの情報記録層2は無彩色の濃淡が、基板の幅方向において、連続的に変化しており、第6番目の情報記録層は黒色一色である。
【0053】
図13および図14において、単一色の濃淡が連続的に変化する情報記録層を有する検体分析用具の製造について説明する。通常、検体分析用具は、一枚の大きなベースフィルムを短冊状に裁断して基板を作成し、これに試薬パッド(試薬層)を配置することにより製造される。本発明の検体分析用具を製造するにあたっては、図13に示すように、予めベースフィルム131に情報記録層となる情報記録部121を印刷により形成し、ついで、これを短冊状に裁断することにより、図14に示すような、基板13上に情報記録層12が形成された検体分析用具が得られる(試薬層は図示せず)。この場合、ベースフィルム131の情報記録部121において、単一色の濃淡を明確に段階的に形成すると、裁断時の位置づれにより、製造後の情報記録層12において、正確な情報が記録されないおそれがある。そこで、ベースフィルム131の情報記録部121において、図13に示すように、図の上から下に行くにしたがい、黒色から灰色を経て白色に連続的に徐々に濃淡を変化させ、かつこの変化の割合を一定にすれば、どの位置で裁断して検体分析用具を作製したとしても、その情報記録層12では、前記濃淡の変化の割合が同一であるため、正確に情報が記録される。なお、図13および図14の情報記録部121若しくは情報記録層12の単一色の濃淡の変化は一例であり、これ以外の変化であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上のように、本発明の検体分析用具では、前記情報記録層により、十分な情報を正確に記録することができ、この情報は、分析装置の通常の光学系で読み取ることができ、このため分析装置に特別な機構を組み込む必要がない。したがって、本発明の検体分析用具の使用により、検査の自動化、省力化、信頼性の向上等の様々なメリットが期待できる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に、試薬層および情報記録層が形成された検体分析用具であって、前記情報記録層が、一つ若しくは複数の領域に分割され、これらの領域のそれぞれが、単一色で着色されており、前記単一色の種類、前記複数の領域における色の濃淡の組み合わせおよび前記各領域の面積の少なくとも一つから情報が記録されており、この記録が光学的に読み取り可能である検体分析用具。
【請求項2】
前記単一色の種類、前記複数の領域における色の濃淡の組み合わせおよび前記各領域の面積の少なくとも一つと、前記試薬層の数および配置の少なくとも一つとから情報が記録されており、これらの記録が光学的に読み取り可能である請求項1記載の検体分析用具。
【請求項3】
前記試薬層が複数形成されており、前記複数の試薬層が一定のピッチで直列に配列されており、その先頭、途中および最後の少なくとも一つにおいてピッチを変え、このピッチの変化で情報を記録する請求項2記載の検体分析用具。
【請求項4】
前記単一色が、白、灰色および黒の無彩色を含む請求項1記載の検体分析用具。
【請求項5】
前記単一色が、黄色(吸収波長350nm以上430nm未満)、褐色、赤色(吸収波長430nm以上530nm未満)、紫色(吸収波長530nm以上580nm未満)、青色(吸収波長580nm以上640nm未満)、緑色(吸収波長640nm以上800nm以下)からなる群から選択される少なくとも一つの単一色である請求項1記載の検体分析用具。
【請求項6】
前記情報記録層が、2つ若しくは3つの領域に分割されている請求項1記載の検体分析用具。
【請求項7】
前記情報記録層が2つ以上形成されている請求項1記載の検体分析用具。
【請求項8】
前記複数の領域における色の濃淡の組み合わせにおいて、隣接する前記領域での単一色の濃淡の変化が、連続的変化および段階的変化の少なくとも一方である請求項1記載の検体分析用具。
【請求項9】
前記情報記録層が、相互に接して2つ以上形成されており、前記隣接する情報記録層間において、前記単一色の濃淡が連続的に変化している請求項1記載の検体分析用具。
【請求項10】
前記試薬層が複数形成されており、2つ以上形成された前記情報記録層の少なくとも一つが、前記試薬層と試薬層との間に形成されている請求項7記載の検体分析用具。
【請求項11】
前記情報記録層に記録される情報が、
検体分析用具の販売会社を自動識別するための情報、
検体分析用具の販売国を自動識別するための情報、
検査項目数及び検査項目の貼付順序を自動識別するための情報、
検体分析用具のロット情報(検量線又は感度情報)、
検体分析用具が目視専用か、装置読取専用か、若しくは目視・装置読取併用かに関する情報、
検体分析用具の表側(試薬側)および裏側を識別するための情報、
検体分析用具の試薬の有無を識別するための情報、
検体分析用具の分析装置での位置ずれを検知し、補正するための情報および
検体分析用具を光学系で測定する場合、光量を補正する情報
からなる群から選択される少なくとも一つである請求項1記載の検体分析用具。
【請求項12】
その用途が、尿検査用、生化学検査用、微生物検査用、免疫検査用、遺伝子検査用、環境検査用、農薬検査用もしくはアレルゲン検査用である請求項1記載の検体分析用具。
【請求項13】
その用途が尿検査用であり、その検査項目が、ブドウ糖(GLU)、タンパク質(PRO)、ビリルビン(BIL)、ウロビリノーゲン(URO)、pH、潜血(BLD)、ケトン体(KET)、亜硝酸塩(NIT)、白血球(LEU)、S.G(比重)、色調、アスコルビン酸、塩濃度、高感度タンパク、アルブミン、クレアチニン、ベンスジョーンズ蛋白、ホルモン類および生理活性物質からなる群から選択される少なくとも一つであり、前記検査項目毎に対応する試薬層が少なくとも一つ形成されている請求項1記載の検体分析用具。
【請求項14】
分析装置に使用される請求項1記載の検体分析用具。

【国際公開番号】WO2005/038456
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【発行日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514828(P2005−514828)
【国際出願番号】PCT/JP2004/015428
【国際出願日】平成16年10月19日(2004.10.19)
【出願人】(000141897)アークレイ株式会社 (288)
【Fターム(参考)】