説明

検体情報管理装置および検体情報管理方法

【課題】検体採取作業の効率向上を図るとともに検体情報の一元管理を容易に行うことが可能なこと。
【解決手段】検体情報管理装置のサーバ100は、受信部301と、送信部302と、制御部303と、データ管理部304と、DB308とを備える。データ管理部304は、登録部305と、検索部306と、紐付け部307とを含む。紐付け部307では、予めDB308に格納された患者ID情報D1および検査情報D2と、受信された採血管ID情報D3との関連づけを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、採血管、試験管、シャーレ等の検体用容器に収容された検体の各種情報(以下、検体情報と呼ぶ)を管理する検体情報管理装置および検体情報管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
病院では、採血や採尿等により得られた患者(被験者)の血液や尿(以下、これらを検体と総称する)を検体用容器に収容して検査に供する際、検体用容器にラベルを貼着し、このラベルに患者の情報(例えば、氏名、性別、診療科名、病棟等)、検査の情報(例えば、検査項目等)および検体の処理に関する情報(例えば、感染症マークや至急区分等)を記入する。従来は、これらの情報が手書きや印刷によってラベルに記入されるとともに、各種情報が記入されたラベルの各々を、手作業により各検体用容器に貼着する。それゆえ、このようなラベルの記入作業および貼着作業は手間を要し、作業効率が悪い。
【0003】
例えば、病院では、多岐にわたる各種の検査が行われており、これらの検査に対応してそれぞれ検体用容器が準備される。検体用容器は、各種の検査項目のうち対象とする検査項目の検体用容器であることを一目で識別可能なように、検査項目の各々に対応して異なる形状や色違いのキャップを有する。このような検体用容器にラベルを貼着する際には、作業者がラベルに記入された患者の情報や検査の情報に対応する検体用容器を適切に選定した上でラベルを貼着する必要がある。それゆえ、貼着作業に手間がかかるとともに、ラベルを誤った検体用容器に貼着するおそれがある。ラベルの誤貼着は、本来行うべき検査とは異なる検査を行うこととなるため、医療ミスにつながる可能性がある。
【0004】
そこで、ラベル貼着作業の効率向上および誤貼着の防止を図る方法として、患者の情報や検査の情報等の各種情報を印字したラベルを当該情報に対応した適切な検体用容器に自動で貼着するとともに、この検体用容器を患者別に自動で分ける装置(以下、検体用容器準備装置と呼ぶ)を利用する方法がある(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)。かかる方法では、このような検体用容器準備装置を用いて、予め検体用容器を準備する。
【0005】
図9は、検体用容器準備装置により作成された従来のラベルの例を示す模式図である。図9に示すように、作成されたラベルには、患者の氏名901、感染症マーク902、検体用容器の種類903、至急区分904、検体種材料名称(具体的には、血液、血漿、血清、透析液、髄液等)905、採取量906、メモ907、バーコード908、採取日909、依頼元910、患者ID911および検体番号912が記入されている。ここで、検体番号912とは、バーコード908の内容を示すものである。最近の病院では、サーバによる病院全体の一元管理が行われており、それに伴って、各種情報がバーコード化して利用されている。
【0006】
検体用容器準備装置によりこのようなラベル900が作成されるとともに、作成されたラベル900が検体用容器に貼着される。それにより、検体採取に用いる検体用容器が、検体採取の前に予め準備される。そして、この検体用容器を用いて検体を採取するとともに、得られた検体について適宜検査が行われる。
【0007】
例えば、病院では、外来患者が受付において所定の手続きをすると、患者に対して患者IDが付与されるとともに、当該患者に関する情報、具体的には、患者の氏名、診療科名、検査の指示(例えば検査項目)、来院日(検査日)等の情報がサーバに入力される。
【0008】
そして、検体用容器準備装置は、サーバに入力された上記の情報に基づいて、図9のラベル900を作成するとともに、このラベル900を検体用容器に貼着して当該患者に必要な検体用容器を準備する。患者の検体採取を行う際には、採取室(例えば、採血室)において、サーバに接続された端末から患者ID情報に基づいて当該患者の検査情報を確認するとともに、患者ID情報の内容と、図9のラベル900に記載された情報の内容とを確認する。そして、患者から検体を採取するとともに、採取した検体を適切な検体用容器に収容する。
【0009】
このようにして採取された検体は、検体用容器に保持された状態で検査室に搬送され、各種処理が行われる。それにより、検査結果が得られる。このような病院における検査は、外来患者に限定されず、病棟患者についても同様に行われる。
【0010】
【特許文献1】特開平5−97133号公報
【特許文献2】特開平8−198226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のような検体用容器準備装置の導入には、高コストを要する。また、高コストを要して導入を行っても、病院では、外来患者および病棟患者を合わせて1日に非常に多数の患者の検査を行い、かつ、例えば採血検査では一人の患者について平均3本程度の採血管を用いて採血を行うことから、検査に必要な数の検体用容器の全てを検体用容器準備装置によってまかなうことができず、病院で使用する検体用容器の8〜9割程度にしか対応することができない。それゆえ、残りの検体用容器については、従来のような手作業によるラベル貼着が必要となるとともに、手作業に用いるラベル作成のためのプリンタ等が検体用容器準備装置とは別に必要となる場合もある。
【0012】
また、検体用容器準備装置を用いる場合には、予め患者に対応して検体用容器を準備する構成となるため、検体用容器が予め準備されていない患者や、準備していた数よりも多くの検体用容器が必要となった患者等への対応が不十分であり、緊急時への対応が困難である。例えば、救急患者に対して緊急で検査が必要となった場合や、検体用容器の破損や検査項目の追加等により、準備していた検体用容器の数よりも多くの検体用容器が必要となった場合には、検体用容器準備装置を用いた検体用容器の準備が間に合わず、よって、従来のような手作業によるラベル貼着が必要となる。
【0013】
また、病院では、通常、検体の有効期限が設定されており、この有効期限の判断等において検体の採取時刻が重要となるが、検体用容器準備装置により準備された検体用容器では、検体を採取した時刻に関する情報をラベル900に自動で印字することができない。したがって、当該時刻情報を記録しようとすると、手作業による記入が必要となる。
【0014】
さらに、作成したラベルには、患者に関する個人情報が記載されているため、患者のプライバシーを侵害する可能性を有する。
【0015】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、検体採取作業の効率向上を図るとともに検体情報の一元管理を容易に行うことが可能な検体情報管理装置および検体情報管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1の発明にかかる検体情報管理装置は、検体採取前に予め被験者に付与された被験者識別情報と、当該被験者の検査情報とが入力され、前記被験者識別情報と前記検査情報とをデータベースに登録するデータベース登録手段と、前記被験者識別情報の読み取り手段と、検体用容器に予め付与された検体用容器識別情報を読み取る容器識別情報読み取り手段と、前記被験者識別情報と前記検査情報と前記検体用容器識別情報との関連付けを行う紐付け手段と、を備えることを特徴とする。
【0017】
かかる構成によれば、紐付け手段によって、検体用容器識別情報を、予めデータベース登録手段に登録された被験者識別情報および検査情報と関連付けることが可能となる。したがって、従来のように検体用容器に予めラベル等によって被験者識別情報や検査情報を記載する必要がなく、言い換えれば、予め個々の被験者に被験者専用の検体用容器を準備しておかなくても、検体採取時の検体用容器識別情報の読み取りにより、随時、被験者と検体用容器とを自動的に対応付けることが可能となる。
【0018】
したがって、かかる構成では、検体用容器識別情報が付与された検体用容器を予め準備するだけでよく、それゆえ、被験者の数が多い場合や、緊急および不測の場合においても、速やかに対応することが可能となる。その結果、ラベルの貼着を手作業で行う必要が一切なくなり、検体採取の作業効率の向上が図られるとともに、被験者の取り違え等による誤作業の防止が図られる。
【0019】
また、請求項2の発明にかかる検体情報管理装置は、請求項1に記載の発明において、入力された前記被験者識別情報に基づいて前記データベースから前記検査情報を検索するとともに、入力された前記検体用容器識別情報に基づいて前記データベースから前記被験者識別情報および前記検査情報の検索を行うデータベース検索手段をさらに備えることを特徴とする。
【0020】
かかる構成によれば、被験者識別情報、検査情報および検体用容器識別情報の一元管理が実現されるので、検体情報を正確にかつ効率よく管理することが可能となる。特に、ここでは、検体用容器識別情報のみが付与された検体用容器について、データベースの検索から被験者識別情報および検査情報を取得することが可能となるので、従来のように被験者の個人情報を記載したラベル等を検体用容器に貼着する必要がない。したがって、個人情報の保護が図られる。
【0021】
また、請求項3の発明にかかる検体情報管理装置は、請求項1または2に記載の発明において、前記被験者識別情報、前記検査情報および前記検体用容器識別情報を表示する表示手段をさらに備え、前記表示手段に表示された前記検査情報に基づいて検体採取および検体検査を行うことを特徴とする。
【0022】
かかる構成によれば、表示手段に表示された被験者識別情報、検査情報および検体用容器識別情報に基づいて、処理等の内容を確認することが可能となる。また、被験者識別情報、検査情報および検体用容器識別情報の間の対応関係を一目で確認することが可能となる。
【0023】
また、請求項4の発明にかかる検体情報管理装置は、請求項2または3に記載の発明において、検体採取受付部に配設された第1の端末と、検体採取部に配設された第2の端末と、検体処理部に配設された第3の端末と、ネットワークを介して前記第1、第2および第3の端末が接続されたサーバとを備え、前記サーバは、前記データベース登録手段と、前記紐付け手段と、前記データベース検索手段とを少なくとも備え、前記第1の端末は、前記被験者識別情報と前記検査情報とを入力する入力手段を備え、前記第2の端末は、前記被験者識別情報の読み取り手段と、前記容器識別情報読み取り手段と、前記表示手段とを備え、前記第3の端末は、前記容器識別情報読み取り手段と、前記表示手段とを備えることを特徴とする。
【0024】
かかる構成によれば、サーバによる検体情報の一元管理が容易に実現可能となる。そして、このようなサーバによる管理の下で、ミスのない処理を効率よく行うことが可能となる。
【0025】
また、請求項5の発明にかかる検体情報管理装置は、請求項1〜4のいずれか一つに記載の発明において、前記検体用容器識別情報がバーコードで表示され、前記容器識別情報読み取り手段がバーコードリーダであることを特徴とする。
【0026】
かかる構成によれば、バーコードリーダを用いて容易かつ正確に検体用容器識別情報を読み取ることが可能となる。それゆえ、さらに検体採取の作業効率の向上が図られる。
【0027】
また、請求項6の発明にかかる検体情報管理装置は、請求項1〜5のいずれか一つに記載の発明において、計時手段をさらに備え、前記データベース登録手段は、前記計時手段により取得される検体採取時刻情報を前記データベースに登録することを特徴とする。
【0028】
かかる構成によれば、検体がいつ採取されたものであるかという検体採取時刻情報を、自動的にデータベースに登録することが可能となる。このようにして取得された検体採取時刻情報により、検体の有効期限管理等を容易にかつ正確に行うことが可能となる。
【0029】
また、請求項7の発明にかかる検体情報管理装置は、請求項1〜6のいずれか一つに記載の発明において、前記容器識別情報読み取り手段による第1回目の読み取りにより取得された前記検体用容器識別情報が、前記紐付け手段による前記関連付けに用いられ、前記容器識別情報読み取り手段による第2回目の読み取りにより取得された前記検体用容器識別情報が、検体採取の終了確認に用いられることを特徴とする。
【0030】
かかる構成によれば、第2回目の読み取りにより取得された検体用容器識別情報によって検体採取の終了確認が行われるので、データベースに登録された検査情報に基づき、採取漏れ等を生じることなく必要な検体採取を適切に行うことが可能となる。また、例えば、第2回目の検体用容器識別情報の読み取りが行われた時刻を検体採取時刻とする構成では、当該読み取りによって、検体採取時刻情報を容易に取得することが可能となる。
【0031】
また、請求項8の発明にかかる検体情報管理装置は、請求項1〜7のいずれか一つに記載の発明において、前記表示手段は、検体採取が終了した前記検体用容器の前記検体用容器識別情報と、検体が未終了の前記検体用容器の前記検体用容器識別情報とを、判別可能に表示することを特徴とする。
【0032】
かかる構成によれば、検体用容器毎に検体採取の終了/未終了を確認することが可能となるので、採取漏れ等を生じることなく速やかな作業を実現することが可能となる。
【0033】
また、請求項9の発明にかかる検体情報管理方法は、検体採取の前に予め被験者に付与された被験者識別情報と、当該被験者の検査情報とを入力して前記被験者識別情報と前記検査情報とをデータベースに登録する工程と、検体採取の前に予め検体用容器に付与された検体容器識別情報の読み取りを行う検体用容器識別情報読み取り工程と、前記検体用容器識別情報読み取り工程で読み取った前記検体用容器識別情報を、前記データベースに登録された前記被験者識別情報および前記検査情報と関連付ける工程と、含むことを特徴とする。
【0034】
かかる構成によれば、紐付け工程によって、検体用容器識別情報を、予めデータベース登録手段に登録された被験者識別情報および検査情報と関連付けることが可能となる。したがって、従来のように検体用容器に予めラベル等によって被験者識別情報や検査情報を記載する必要がなく、言い換えれば、予め個々の被験者に被験者専用の検体用容器を準備しておかなくても、検体採取時の検体用容器識別情報の読み取りにより、随時、被験者と検体用容器とを自動的に対応付けることが可能となる。
【0035】
したがって、かかる構成では、検体用容器識別情報が付与された検体用容器を予め準備するだけでよく、それゆえ、被験者の数が多い場合や、緊急および不測の場合においても、速やかに対応することが可能となる。その結果、ラベルの貼着を手作業で行う必要が一切なくなり、検体採取の作業効率の向上が図られるとともに、被験者の取り違え等による誤作業の防止が図られる。
【0036】
また、請求項10の発明にかかる検体情報管理方法は、請求項9に記載の発明において、前記被験者識別情報の読み取りを行うとともに、読み取った前記被験者識別情報に基づいて、前記データベースから前記検査情報の検索を行う工程と、前記検索により取得された前記検査情報に基づいて検体用容器を選定する工程と、前記検体用容器識別情報の読み取りを行うとともに、読み取った前記検体用容器識別情報に基づいて、前記データベースから前記被験者識別情報および前記検査情報の検索を行う工程とをさらに含むことを特徴とする。
【0037】
かかる構成によれば、被験者識別情報、検査情報および検体用容器識別情報の一元管理が実現されるので、検体情報を正確にかつ効率よく管理することが可能となる。特に、ここでは、検体用容器識別情報のみが付与された検体用容器について、データベースの検索から被験者識別情報および検査情報を取得することが可能となるので、従来のように被験者の個人情報を記載したラベル等を検体用容器に貼着する必要がない。したがって、個人情報の保護が図られる。
【0038】
また、請求項11の発明にかかる検体情報管理方法は、請求項9または10に記載の発明において、前記検体用容器識別情報がバーコードで表示され、前記検体用容器識別情報読み取り工程は、前記検体用容器識別情報の読み取りをバーコードリーダにより行うことを特徴とする。
【0039】
かかる構成によれば、バーコードリーダを用いて容易かつ正確に検体容器識別情報を読み取ることが可能となる。それゆえ、さらに検体採取の作業効率の向上が図られる。
【発明の効果】
【0040】
本発明にかかる検体情報管理装置および検体情報管理方法によれば、検体採取作業の効率向上が図られるとともに検体情報の一元管理を容易に行うことが可能になるという効果が奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる検体情報管理装置および検体情報管理方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。ここでは、本発明に適用される検体採取として採血を例示するとともに、検体用容器として採血管を例示する。採血検査対象は、外来患者および病棟患者のいずれであってもよい。
【0042】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態にかかる検体情報管理装置の全体構成を示す模式図である。図1に示すように、検体情報管理装置では、サーバ100により、受付101、採血室102および検査室103の情報管理がネットワーク104を介して行われる。ここで、受付101とは、病院の外来受付や診療科の受付に該当する。
【0043】
検体情報管理装置は、病院全体の情報管理を行うサーバ100と、受付101に配設された端末105と、採血室102に配設された端末107と、検査室103に配設された端末109および分析装置111と、サーバ100、端末105,107,109および分析装置111を接続する病院内に配設されたネットワーク(LAN)104とから構成される。
【0044】
なお、ここでは、ネットワーク104を介してサーバ100に接続された受付101の端末105が1つである場合を例示したが、複数の端末105が接続された構成であってもよい。また、採血室102および検査室103についても、受付101と同様、複数の端末107,109が接続された構成であってもよい。
【0045】
受付101に配設された端末105、採血室102に配設された端末107および検査室103に配設された端末109のハードウェア構成の詳細については、図示および詳細説明を省略するが、端末105は、例えば、CPU、メモリ、ディスプレイ、入力手段であるキーボード106やマウス等を備える。また、端末107および端末109は、例えば、CPU、メモリ、ディスプレイ、入力手段であるバーコードリーダ108,110やキーボード等を備える。これらの端末105,107,109は、プリンタ等の周辺機器に適宜接続されていてもよい。
【0046】
検査室103に配設された分析装置111は、検査の種類に対応して複数配設されていてもよく、また、同一種類の検査を行う分析装置111が複数配設されていてもよい。分析装置111とは、具体的には、測定装置等に相当する。
【0047】
図2は、図1のサーバ100のハードウェア構成を示すブロック図である。図2に示すように、図1のサーバ100は、CPU201と、ROM202と、RAM203と、HDD(ハードディスクドライブ)204と、HD(ハードディスク)205と、ディスプレイ206と、ネットワークI/F(インターフェース)207と、キーボード208と、マウス209とから構成されている。
【0048】
上記の各構成部201〜209は、バス200によってそれぞれ接続されている。なお、ここでは図示を省略しているが、サーバ100(図1参照)は、FDドライブ、CD/DVDドライブ、着脱可能な記録媒体の一例であるFD、CD、DVDとを適宜含んで構成されてもよく、また、スキャナやプリンタ等の周辺機器を適宜含んで構成されてもよい。
【0049】
CPU201は、サーバ100(図1参照)全体の制御を司る。ROM202は、ブートプログラム等を記憶している。RAM203は、CPU201のワークエリアとして使用される。HDD204は、CPU201の制御にしたがってHD205に対するデータのリード/ライトを制御する。HD205は、HDD204の制御にしたがって書き込まれたデータを記憶する。ディスプレイ206は、カーソル、ウィンドウ、アイコン等をはじめ、文書や画像等の各種の情報を表示する。ネットワークI/F207は、ネットワーク104に接続され、当該ネットワーク104とサーバ100(図1参照)の内部との情報の送受信を司る。キーボード208およびマウス209は、サーバ100(図1参照)内部へ情報を入力するための入力手段である。
【0050】
図3は、図1のサーバ100の機能的構成を示すブロック図である。図3に示すように、サーバ100は、受信部301と、送信部302と、制御部303と、データベース管理部304と、データベース(以下、DBと略す)308とを備える。そして、データベース管理部304は、登録部305と、検索部306と、紐付け部307とを含んで構成される。制御部303は、受信部301、送信部302、データベース管理部304およびDB308の各部の制御を行い、後述する検体情報管理を実現する機能部である。
【0051】
受信部301は、ネットワーク104(図1参照)を介して受付101(図1参照)、採血室102(図1参照)および検査室103(図1参照)の端末105,107,109(図1参照)等から送信される各種の情報、具体的には、後述する患者ID情報D1や、検査情報D2や、採血管ID情報D3や、紐付け情報D4や、採血時刻情報D5等の受信情報を受信する。
【0052】
データベース管理部304は、受信部301で受信された各情報を登録部305で登録し、各情報をDB308に格納する。そして、各端末105,107,109(図1参照)からの読み出し要求に応じて、データベース管理部304の検索部306が、DB308から情報を適宜検索して読み出す。このようにして読み出された情報は、送信部302からネットワーク104(図1参照)を介して各端末105,107,109(図1参照)に適宜送信される。
【0053】
また、データベース管理部304の紐付け部307は、各端末105,107,109(図1参照)からサーバ100に送信された情報(例えば、後述する採血管ID情報D3に相当)とDB308に格納された情報(例えば、後述する患者ID情報D1および検査情報D2に相当)との関連付けを行う、言い換えると、受信した情報(採血管ID情報D3)をDB308内の情報(患者ID情報D1および検査情報D2)とを関連付けて紐付けする。
【0054】
ここでは、受信した情報(採血管ID情報D3)とDB308内の情報(患者ID情報D1および検査情報D2)との関連を示す情報を、紐付け情報D4と呼ぶ。この紐付け情報D4は、登録部305で登録された後、DB308に格納される。詳細は後述するが、例えば、検査室103(図1参照)の端末109(図1参照)からサーバ100に採血管ID情報D3が送信されると、サーバ100では、受信した採血管ID情報D3に基づいて、検索部306がDB308の検索を行う。
【0055】
この検索では、入力された採血管ID情報D3から、紐付け情報D4を利用して、当該採血管ID情報D3に関連する患者ID情報D1および検査情報D2を検索して読み出すことが可能となる。このようにして読み出した患者ID情報D1および検査情報D2は、送信部302からネットワーク104(図1参照)を介して端末109(図1参照)に送信される。それにより、端末109(図1参照)では、採血管ID情報D3から患者ID情報D1および検査情報D2を取得することが可能となる。
【0056】
以上のように、本実施の形態にかかる検体情報管理装置では、サーバ100の登録部305およびDB308がデータベース登録手段に相当し、採血室102の端末107が被験者識別情報の読み取り手段に相当し、採血室102のバーコードリーダ108および端末107が容器識別情報読み取り手段に相当し、サーバ100の紐付け部307が紐付け手段に相当し、サーバ100の検索部306がデータベース検索手段に相当し、受付101、採血室102および検査室103の端末105,107,109およびサーバ100のディスプレイが、表示手段に相当する。また、採血室102の端末107が内蔵する時計が、計時手段に相当する。さらに、ここでは、被験者識別情報が患者ID情報D1に相当し、検査情報が検査情報D2に相当し、検体用容器識別情報が採血管ID情報D3に相当する。
【0057】
続いて、上記の構成を有する検体情報管理装置における検体情報管理の処理について説明することにより、本実施の形態における検体情報管理方法を説明する。ここでは、通常の外来患者または病棟患者の採血における検体情報管理について説明する。図4は、図1に示す検体情報管理装置における検体情報管理の処理概要を示すフローチャートである。また、図5は、図4に示すサーバ100と端末107との間における処理の具体的態様を示す図である。
【0058】
まず、図4に示すように、患者が受付101(図1参照)にて所定の手続きを行うと、患者IDが付与される(ステップS101)。ここで、患者IDとは、例えば、受付101(図1参照)で患者に付与されたIDカード等の識別番号のことであり、以下で説明する患者ID情報D1とは、具体的には、当該識別番号の情報に相当する。また、所定の手続きとは、例えば、氏名、性別、診療科名、病棟等の記入であり、この手続きによって、患者の情報が取得される。
【0059】
患者の手続きが終了すると、受付101(図1参照)では、端末105(図1参照)がサーバ100に患者情報登録要求を送信する。サーバ100は、当該要求を受信すると、患者情報登録フォームを端末105に送信する。そして、患者情報登録フォームを受信した端末105(図1参照)では、取得した患者ID情報D1と、当該患者への検査の内容を示す検査情報D2とを入力する(ステップS102)。入力が終了した患者情報登録フォームは、端末105から再びサーバ100に送信されてサーバ100で受信される。それにより、サーバ100において、端末105から送信された患者ID情報D1および検査情報D2が、登録部305(図3参照)に登録されてDB308(図3参照)に格納される(ステップS103)。
【0060】
図6は、患者ID情報D1および検査情報D2を格納したDB308の構成を示す模式図である。図6に示すように、DB308は、患者ID、患者名、検査日および検査項目に関する情報を含む。なお、図6では、後述する採血時において新たに情報が格納される採血管1,2のIDおよび採血時刻を空欄としている。
【0061】
例えば、このDB308から、「12345」という患者ID情報D1(図4参照)が付与されたのは「山田太郎」であるという情報が得られる。また、「山田太郎」については、「採血管1」および「採血管2」を用いて採血を行うとともに、「採血管1」は「グルコース」および「HbA1c」の検査に供し、「採血管2」は「CRP」および「AST」の検査に供するという検査情報D2(図4参照)が得られる。
【0062】
「山田太郎」が採血室102(図1参照)に行くと、まず、患者IDの読み取りが行われる(ステップS104)。そして、かかる読み取りにより取得された患者ID情報D1が、採血室102(図1参照)の端末107からサーバ100に送信される。サーバ100では、受信された患者ID情報D1に基づいて、検索部306がDB308の検索を行い(ステップS105)、それにより、当該患者の検査情報D2を読み出す。そして、このようにして取得された検査情報D2を、端末107に送信する。
【0063】
サーバ100から検査情報D2を受信した端末107は、検査情報D2に基づいて採血指示に関する情報を作成し、図5に示すように、当該採血指示情報を端末107のディスプレイに表示(すなわち、採血指示表示)する(ステップS106)。図6のDB308の説明において前述したように、当該患者には、「グルコース」および「HbA1c」の検査のための採血管1と、「CRP」および「AST」の検査のための採血管2とを用いて採血を行う必要があることから、端末107のディスプレイには、図5に示すように、採血管1に該当する茶栓の採血管と、採血管2に該当する青栓の採血管とを各一本ずつ採血に用いるよう指示が表示される。
【0064】
ここで、茶栓の採血管とは、具体的には、グルコース値およびHbA1c値の検査に供される検体のための採血管、すなわち、図5の採血管500aであり、また、青栓の採血管とは、具体的には、CRP値およびAST値の検査に供される検体のための採血管、すなわち、図5の採血管500bである。通常、採血検査では検査の内容に応じてそれぞれ種類の異なる採血管が用いられ、それゆえ、採血室102(図1参照)には、8種類程度の採血管が各種類毎に複数準備されている。このため、採血者の作業性や採血管誤選定の防止等の点から、採血管の種類に応じて栓(キャップ)の色を変えており、一目で採血管の種類の識別が可能な構成としている。この場合、グルコース値およびHbA1c値の検査に用いられる図5の採血管500aには、茶色の栓501aが装着されており、一方、CRP値およびAST値の検査に用いられる図5の採血管500bには、青色の栓501bが装着されている。
【0065】
採血者は、図5に示すように、端末107のディスプレイに表示された採血指示表示に基づいて、茶色の栓501aが装着された採血管500aと、青色の栓501bが装着された採血管500bとを各一本ずつ選定する。そして、選定した採血管500a,500bの各々に貼着されたラベル502のバーコード502a,502bの各々を、バーコードリーダ108(図1参照)により読み取る(ステップS107)。ここでは、後述の読み取りステップS110と区別して、この読み取りを第1回の読み取りとする。
【0066】
図7は、図5の採血管500aのラベル502の拡大図である。図7に示すように、ラベル502には、バーコード502aと、採血管500aの容器の種類(すなわち、いずれの検査に用いるかを表す表示)701と、採取量702と、前述のバーコード502aの内容を数表示した採血管ID番号703とが記載されている。ラベル502のバーコード502aは、異なる種類の検査に用いられる採血管500bとの間ではもちろんのこと、同種の検査に用いられる採血管500aの間においても採血管毎に異なっており、個々の採血管固有のものである。なお、図7はラベル502の構成の例示であり、これ以外の構成であってもよい。例えば、必要に応じて、ラベル502に、至急区分や感染症マーク等の表示を記載してもよい。
【0067】
バーコードリーダ108(図1参照)によりバーコード502a,502bの読み取りを行うと、バーコード502a,502bによって表される採血管500a,500bの各採血管ID情報D3が取得される。具体的には、採血管500aの採血管ID情報D3は、後述の図8に示す「228−44658」であり、採血管500bの採血管ID情報D3は、後述の図8に示す「002−38597」である。これらの採血管ID情報D3は、端末107からサーバ100に送信される。そして、サーバ100では、受信した採血管500a,500bの各採血管ID情報D3が、紐付け部307(図3参照)により、患者ID情報D1および検査情報D2と紐付けされる(ステップS108)。
【0068】
かかる紐付けにより、採血管500a(図5参照)が、患者ID「12345」(図6参照)の「山田太郎」(図6参照)の「グルコース」(図6参照)および「HbA1c」(図6参照)の検査に供される「採血管1」(図6参照)であり、また、採血管500b(図5参照)が、当該患者の「CRP」(図6参照)および「AST」(図6参照)の検査に用いられる「採血管2」(図6参照)であるとの情報、すなわち、紐付け情報D4が、登録部305(図3参照)において登録された後、DB308(図3参照)に格納される(ステップS109)。
【0069】
ここでは、採血管500a(図5参照)が、図6に示すDB308中の採血管1および採血管2のいずれに該当するか、また、採血管500b(図5参照)が、図6に示すDB308中の採血管1および採血管2のいずれに該当するかは、各採血管500a,500b(図5参照)に貼着された各バーコード502a,502b(図5参照)に表示された情報に基づいて自動で識別される。
【0070】
図8は、かかる紐付けにより取得されたDB308の構成を示す模式図である。図8に示すように、図5の採血管500aのバーコード502a(図5参照)の読み出しにより取得された「228−44658」という採血管ID情報D3が、「採血管1のID」としてDB308に格納される。一方、図5の採血管500bのバーコード502b(図5参照)の読み出しにより取得された「002−38597」という採血管ID情報D3が、「採血管2のID」としてDB308に格納される。
【0071】
上記のようにして患者ID情報D1と検査情報D2と採血管ID情報D3との紐付けを行った後、図5に示すように、採血者は、患者の採血を行い、採取した血液を採血管500a,500bにそれぞれ収容する。そして、採血終了の確認のため、再度、バーコードリーダ108(図1参照)により採血管500a,500bのバーコード502a,502bを読み取る(ステップS110)。この第2回目のバーコード502a,502bの読み取りにより取得された採血管ID情報D3は、採血終了の信号として端末107に入力される。それにより、端末107のディスプレイに採血済みの表示が行われる。
【0072】
図5に示すように、ここでは、採血済みの表示が、チェック記号を用いて行われる。具体的に、採血管500aの採血が終了すると茶栓表示横のチェックボックスにチェック記号が表示されるとともに、採血管500bの採血が終了すると青栓表示横のチェックボックスにチェック記号が表示される。なお、採血済みの表示は、このようなチェック記号を用いたものに限定されるものではなく、これ以外の表示であってもよい。例えば、採血終了の信号である採血管ID情報D3が端末107に入力されると採血指示表示が消えるか、または、文字の表示色が変わる等の表示変化が実現される構成等であってもよい。
【0073】
採血管500a,500bの採血が終了し全てのチェックボックスにチェック記号が表示されると、採血者は、検査が終了したことを示す採血終了信号をキーボードやマウス等の入力手段を用いて端末107に入力する。それにより、採血が終了する。この採血終了時には、図4に示すように、端末107が、内蔵の時計から取得される採血時刻情報D5をサーバ100に送信する。そして、サーバ100は、受信した採血時刻情報D5を登録部305に登録してDB308(図3参照)に格納する(ステップS111)。それにより、図8に示すように、DB308に、採血管1および採血管2の採血時刻情報D5が加えられる。
【0074】
なお、ここでは、2本の採血管500a,500b(図5参照)の採血が終了した時刻を採血終了時刻としたが、例えば、採血管500a,500b(図5参照)毎に採血が終了したらバーコード502a,502b(図5参照)の読み取りを行い、各採血管500a,500b(図5参照)毎に採血時刻情報D5を取得する構成であってもよい。
【0075】
ところで、採血に失敗した場合には、失敗した採血管500a,500b(図5参照)のバーコード502a,502b(図5参照)を読み取って、DB308(図8参照)から当該採血管500a,500b(図5参照)の採血管ID情報D3(図8参照)を読み出すとともに、DB308(図8参照)から当該採血管ID情報D3(図8参照)を消去する。それにより、図4中の記号Aの段階に戻り、採血管500a,500b(図5参照)の選定から改めて動作を行うことが可能となる。
【0076】
図5に示すように、採血が終了した採血管500a,500bは、検査室103に搬送される。そして、検査室103では、採血管500a,500bの到着確認が行われるとともに(ステップS201)、バーコードリーダ110(図1参照)を用いて、採血管500a,500bのバーコード502a,502bの読み取りが行われる(ステップS202)。このようなバーコード502a,502bの読み取りによって、バーコード502a,502bに表示された各採血管500a,500bの採血管ID情報D3(図8参照)が取得される。そして、取得された採血管ID情報D3(図8参照)は、検査室103の端末109(図1参照)からサーバ100(図1参照)に送信される。
【0077】
サーバ100では、受信した採血管ID情報D3(図8参照)に基づいて、検索部306(図3参照)がDB308(図3参照)の検索を行う。それにより、図8に示すように、患者ID情報D1と検査情報D2とが、DB308から読み出される(ステップS203)。このようにして取得されたこれらの各情報D1,D2,D5は、サーバ100(図3参照)から検査室103の端末109(図1参照)に送信され、端末109(図1参照)のディスプレイに表示される。
【0078】
このように、検査室103では、採血管500a,500bのラベル502(図7参照)に患者ID情報D1(図8参照)および検査情報D2(図8参照)が一切記載されていないにもかかわらず、バーコード502a,502bを読み取ることにより取得される採血管ID情報D3(図8参照)に基づいて、サーバ100(図3参照)のDB308(図8参照)から容易かつ正確に患者ID情報D1(図8参照)および検査情報D2(図8参照)を読み出すことが可能となる。
【0079】
図5に示すように、検査室103では、端末109(図1参照)のディスプレイに表示された検査情報D2(図8参照)に基づいて、採血管500a,500bに収容された検体の各々について分析装置111(図1参照)を用いてそれぞれ適切な処理が実施され、それにより、検体分析が行われる(ステップS204)。例えば、採血管500aに収容された検体については、読み出された検査情報D2(図8参照)に基づく分析処理が行われ、それにより、検体のグルコース値およびHbA1c値が測定される。また、採血管500bに収容された検体については、読み出された検査情報D2(図8参照)に基づく分析処理が行われ、それにより、検体のCRP値およびAST値が測定される。
【0080】
図1に示すように、ここでは、分析装置111がサーバ100に接続されており、このようにして取得された各検査の結果情報は、ネットワーク104を通じてサーバ100に送信される。サーバ100では、これらの検査結果情報を登録部305(図3参照)に登録してDBに格納される。例えば、検査結果情報は、図8のDB308に格納されてもよく、あるいは、新たに作成したDBに格納されてもよい。DBに格納された検査結果情報は、例えばネットワーク104を通じて医局等の端末から読み出し可能である。
【0081】
ステップS204の検体分析の際には、採血管500a,500bに収容された検体(いわゆる親検体)の一部の検体(いわゆる子検体)を、新たに用意した別の採血管に分注し、この子検体を親検体とは別の分析処理や保存等の用途に供してもよい。この場合、子検体を分注する採血管は、図5に示す採血管500a,500bと同様、採血管ID情報D3を含むバーコード502a,502bがラベルに記載されており、子検体の分注の際には、図4で前述した採血時と同様、採血管ID情報D3と患者ID情報D1の紐付けが行われる。
【0082】
以上のように、本実施の形態にかかる検体情報管理装置およびそれを用いた検体情報管理方法では、採血管500a,500b(図5参照)と患者との対応付け(すなわち紐付け)が、採血時にサーバ100(図1参照)の一元管理の下で自動的に行われる。それゆえ、従来のように患者に対応した採血管(言い換えれば、個々の患者専用の採血管)を予め準備する必要がなく、採血管ID情報D3(図4参照)を含むバーコード502a,502b(図5参照)が付与された採血管500a,500b(図5参照)を予め準備するだけでよい。このような採血管500a,500b(図5参照)は、ラベル502(図5参照)のバーコード502a,502b(図5参照)の自動印字と当該ラベルの自動貼着とにより、効率よく低コストで大量に準備することが可能である。
【0083】
したがって、本実施の形態の検体情報管理装置および検体情報管理方法によれば、従来技術で前述した検体用容器準備装置を導入することなく、病院で使用する採血管の全部を準備することが可能となる。それゆえ、手作業によるラベル貼着が一切不要となり、採血の作業効率が向上して患者の待ち時間が低減されるとともに、ラベル誤貼着による採血管の取り違えや患者取り違え等の医療ミスの発生が防止される。
【0084】
また、患者に応じて当該患者専用の採血管を選定し採血を行う必要がないので、採血管の誤選定による患者の取り違えの発生が防止される。さらに、ここでは、図4に示すように、患者ID情報D1と検査情報D2と採血管ID情報D3とが一元管理されているので、効率よく正確な情報管理を行うことが可能であり、かつ、これらの情報D1〜D3に基づいて適切な採血指示が与えられる等の、誤作業の発生が防止される。
【0085】
また、従来の検体用容器準備装置を用いた構成では、病院内に当該装置を配設して随時検体用容器を準備する必要があるが、本実施の形態の構成では、採血管500a,500b(図5参照)を準備するための装置を必ずしも病院内に配設する必要はなく、例えば外注による採血管500a,500b(図5参照)の導入が可能である。また、採血管500a,500b(図5参照)を準備する段階では患者との対応関係がないことから、その日に検査を受ける患者の人数に関係なく、予め十分な数の採血管500a,500b(図5参照)を準備することが可能となる。さらに、採血管500a,500bはいずれの患者にも使用可能であり、よって、その日に使用されなかった採血管500a,500bを、例えば、翌日に別の患者に使用することが可能となる。
【0086】
また、採血終了時に自動的に採血時刻情報D5(図4参照)がサーバ100に送信されてDB308(図8参照)に格納されるので、従来のように採血終了時刻の記入作業を別工程で行う必要がない。したがって、作業効率がさらに向上するとともに、正確な採血終了時刻を把握して適切な検体管理を行うことが可能となる。
【0087】
また、本実施の形態では、採血管500a,500b(図5参照)のラベル502には、バーコード502a,502bおよび必要最低限の情報だけが表示されていればよく、それ以外の患者の情報や検査に関する情報(具体的には、図9に示す従来のラベル900の項目901,902等)が不要となる。したがって、従来の場合に比べて、プライバシーの保護が図られるとともに、ラベル900の面積の低減化も可能となる。さらに、本実施の形態では、サーバ100(図1参照)による一元管理の下で、個々の採血管500a,500bの履歴を追うことも可能である。
【0088】
さらに、上記においては、通常の外来患者または病棟患者の採血に本発明の検体情報管理装置を適用する場合について説明したが、本発明の検体情報管理装置は、救急患者等の不測の事態により緊急の採血が必要になった場合において、より有効な効果が奏される。以下、かかる場合を詳細に説明する。
【0089】
例えば、救急患者に緊急の採血が必要になった場合に、検体情報管理装置では、患者情報の記入等の所定の手続きを省略し、図4に示すように、患者に患者IDが付与される(ステップS101)。そして、ステップS102において患者名を除き患者IDおよび検査項目のみを入力した患者情報登録フォームを、受付の端末105からサーバ100に送信する。それにより、患者ID情報D1と検査情報D2とがDB308(図3参照)に格納されるが(ステップS103)、DB308(図3参照)には患者名が未登録のままである。
【0090】
採血時には、このように患者名が未登録のDB308(図3参照)を用いて、上記の通常の場合と同様に、ステップS104〜ステップS111の処理が行われる。ここで、この場合には、採血室102(図1参照)の端末107から送信された患者ID情報D1に基づいてサーバ100がDB308(図3参照)の検索を行うと(ステップS105)、検査情報D2を取得することは可能であるが、DB308(図3参照)に格納されていない患者名については不明のままである。したがって、検査情報D2に基づいて端末107のディスプレイに表示される採血指示表示では、患者名が表示されない。
【0091】
しかしながら、採血時に患者名が不明であっても、検体情報管理装置では、処理の停滞や不備をきたすことはなく、上記の通常の場合と同様の処理を実施することが可能となる。また、患者名は、採血中または採血後において判明した際にDB308(図3参照)に適宜登録することが可能である。したがって、このような緊急の採血においても、患者名に関する点以外は、上記の通常の場合と何ら相違がなく、通常の場合と同様の効果を奏することが可能である。
【0092】
一方、検体用容器準備装置を用いる方法をこのような緊急の場合に適用すると、患者名が不明なので検体用容器準備装置によるラベルの印字が実行不可能であり、ラベル記入および貼着を手作業で行う必要がある。また、受付時に患者名が判明したとしても、受付後にラベルの印字や貼着等を行って採血管を準備したのでは、準備に時間を要し受付後に速やかに採血を行うことができない。よって、この場合も、ラベル記入および貼着を手作業で行う必要が生じる。このように、検体用容器準備装置を用いる方法では、緊急および不測の事態への対応が困難である。
【0093】
このように、本発明にかかる検体情報管理装置および検体情報管理方法によれば、緊急時や不測の事態においても、通常の場合と同様の処理により速やかに採血を行って、通常の場合と同様の検体情報管理を行うことが可能となる。したがって、緊急時や不測の事態においても、通常の場合と同様の効果が奏され、緊急時や不測の事態への高い対応性を実現することが可能となる。
【0094】
なお、上記においては、不測の救急患者への緊急対応について説明したが、検査を予定していた患者についても、予定していた検査の他に追加で検査を行う場合や、採血の失敗および採血管500a,500b(図5参照)の破損等といった不測の事態が生じた場合は、いわゆる緊急対応となる。検体用容器準備装置を用いる構成では、これらの場合における緊急対応も困難であるが、本発明にかかる検体情報管理装置および検体情報管理方法によれば、高い対応性を実現することが可能となる。
【0095】
以上のように、本発明にかかる検体情報管理装置および検体情報管理方法によれば、採血検査に関する種々の情報をサーバ100により一元管理することが可能となり、その結果、患者や採血管の取り違えによるミスのない採血を、効率よく速やかに行うことが可能となる。また、このような検体情報管理装置および検体情報管理方法では、通常検査および緊急検査のいずれの場合においても同様の検体情報管理が可能であり、いずれの場合も同様の効果を実現可能となる。例えば、採血が必要な患者の数が多く非常に多数の採血管が必要な場合や、予定していなかった採血検査を行う場合にも、十分な対応が可能である。
【0096】
上記の実施の形態は、本発明にかかる検体情報管理装置および検体情報管理方法の例示であり、本発明にかかる検体情報管理装置および検体情報管理方法の構成は、これに限定されるものではない。例えば、上記においては、図5に示すように、採血管500a,500bの本体にラベル502が貼着される構成を例示したが、採血管500a,500bのラベル502の位置はこれに限定されるものではない。
【0097】
具体例として、体積が小さい採血管500a,500bを用いる場合には、採血管500a,500bの本体表面も小さいので、採血管500a,500bへのラベル502の貼着が困難となる。そこで、この場合には、採血管500a,500bにラベル502を直接貼着するのではなく、例えば、採血管500a,500bの保持具等にラベル502を配置してもよい。また、ラベル502のバーコード502a,502bは、一次元バーコードであってもよく、二次元バーコードであってもよい。
【0098】
また、上記の実施の形態では、採血管ID情報D3をバーコード502a,502bにより表示する場合を例示したが、バーコード502a,502b以外により採血管ID情報D3を表示する構成であってもよい。例えば、バーコード502a,502bが記載されたラベル502の代わりに、採血管ID情報D3を含むICタグや無線タグ等を用いてもよい。バーコード502a,502bやICタグを用いる場合には、採血管ID情報D3の読み取りを正確かつ速やかに行うことが可能となるので好ましい。
【0099】
また、上記の実施の形態においては、本発明にかかる検体情報管理装置および検体情報管理方法を採血に適用する場合について適用したが、採血以外の検体採取への適用も可能である。
【産業上の利用可能性】
【0100】
以上のように、本発明にかかる検体情報管理装置および検体情報管理方法は、作業効率が高く誤作業の防止が図られた検体採取の実現と検体情報の一元管理の実現とが可能な検体情報管理装置および検体情報管理方法として有用である。特に、1日に多数の患者の検査が行われる病院や、緊急時への対応が要求される病院において、本発明にかかる検体情報管理装置および検体情報管理方法の使用は有効である。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明にかかる検体情報管理装置の全体構成を示す模式図である。
【図2】図1のサーバのハードウェア構成を示すブロック図である。
【図3】図1のサーバの機能的構成を示すブロック図である。
【図4】図1の検体情報管理装置における検体情報管理の処理概要を示すフローチャートである。
【図5】図4に示すサーバと端末との間における処理の具体的態様を示す図である。
【図6】患者ID情報および検査情報を格納したデータベースの構成を示す模式図である。
【図7】図5のラベルの拡大図である。
【図8】患者ID情報、検査情報および採血管ID情報を格納したデータベースの構成を示す模式図である。
【図9】従来のラベルの例を示す図である。
【符号の説明】
【0102】
100 サーバ
101 受付
102 採血室
103 検査室
104 ネットワーク
105,107,109 端末
108,110 バーコードリーダ
111 分析装置
301 受信部
302 送信部
303 制御部
304 データベース管理部
305 登録部
306 検索部
307 紐付け部
308 データベース
500a,500b 採血管
502a,502b バーコード
502 ラベル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体採取前に予め被験者に付与された被験者識別情報と、当該被験者の検査情報とが入力され、前記被験者識別情報と前記検査情報とをデータベースに登録するデータベース登録手段と、
前記被験者識別情報の読み取り手段と、
検体用容器に予め付与された検体用容器識別情報を読み取る容器識別情報読み取り手段と、
前記被験者識別情報と前記検査情報と前記検体用容器識別情報との関連付けを行う紐付け手段と、
を備えることを特徴とする検体情報管理装置。
【請求項2】
入力された前記被験者識別情報に基づいて前記データベースから前記検査情報を検索するとともに、入力された前記検体用容器識別情報に基づいて前記データベースから前記被験者識別情報および前記検査情報の検索を行うデータベース検索手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の検体情報管理装置。
【請求項3】
前記被験者識別情報、前記検査情報および前記検体用容器識別情報を表示する表示手段をさらに備え、前記表示手段に表示された前記検査情報に基づいて検体採取および検体検査を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の検体情報管理装置。
【請求項4】
検体採取受付部に配設された第1の端末と、検体採取部に配設された第2の端末と、検体処理部に配設された第3の端末と、ネットワークを介して前記第1、第2および第3の端末が接続されたサーバとを備え、
前記サーバは、前記データベース登録手段と、前記紐付け手段と、前記データベース検索手段とを少なくとも備え、
前記第1の端末は、前記被験者識別情報と前記検査情報とを入力する入力手段を備え、
前記第2の端末は、前記被験者識別情報の読み取り手段と、前記容器識別情報読み取り手段と、前記表示手段とを備え、
前記第3の端末は、前記容器識別情報読み取り手段と、前記表示手段とを備えることを特徴とする請求項2または3に記載の検体情報管理装置。
【請求項5】
前記検体用容器識別情報がバーコードで表示され、前記容器識別情報読み取り手段がバーコードリーダであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の検体情報管理装置。
【請求項6】
計時手段をさらに備え、
前記データベース登録手段は、前記計時手段により取得される検体採取時刻情報を前記データベースに登録することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の検体情報管理装置。
【請求項7】
前記容器識別情報読み取り手段による第1回目の読み取りにより取得された前記検体用容器識別情報が、前記紐付け手段による前記関連付けに用いられ、
前記容器識別情報読み取り手段による第2回目の読み取りにより取得された前記検体用容器識別情報が、検体採取の終了確認に用いられることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の検体情報管理装置。
【請求項8】
前記表示手段は、検体採取が終了した前記検体用容器の前記検体用容器識別情報と、検体が未終了の前記検体用容器の前記検体用容器識別情報とを、判別可能に表示することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の検体情報管理装置。
【請求項9】
検体採取の前に予め被験者に付与された被験者識別情報と、当該被験者の検査情報とを入力して前記被験者識別情報と前記検査情報とをデータベースに登録する工程と、
検体採取の前に予め検体用容器に付与された検体用容器識別情報の読み取りを行う検体用容器識別情報読み取り工程と、
前記検体用容器識別情報読み取り工程で読み取った前記検体用容器識別情報を、前記データベースに登録された前記被験者識別情報および前記検査情報と関連付ける工程と、
を含むことを特徴とする検体情報管理方法。
【請求項10】
前記被験者識別情報の読み取りを行うとともに、読み取った前記被験者識別情報に基づいて、前記データベースから前記検査情報の検索を行う工程と、
前記検索により取得された前記検査情報に基づいて検体用容器を選定する工程と、
前記検体用容器識別情報の読み取りを行うとともに、読み取った前記検体用容器識別情報に基づいて、前記データベースから前記被験者識別情報および前記検査情報の検索を行う工程とをさらに含むことを特徴とする請求項9に記載の検体情報管理方法。
【請求項11】
前記検体用容器識別情報がバーコードで表示され、前記検体用容器識別情報読み取り工程は、前記検体用容器識別情報の読み取りをバーコードリーダにより行うことを特徴とする請求項9または10に記載の検体情報管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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