説明

検体採取装置

【課題】内容物を建築部材の厚さ全長まで均一に採取できる検体採取装置を提供する。
【解決手段】既設の建築物において防火区画の壁や床を貫通しているケーブルや配管を工事する場合、予め耐火材にアスベストが使用されていないか調査する必要がある。本装置は、壁や床などに差し込んで内容物を採取するもので、内容物を掴持する挟持アーム1と、握り2と、挟持アーム1と握り2を連結するクロス部材3とから構成されている。クロス部材3は、挟持アーム1が平行に開閉するように中央に支点軸5を有するX状として挟持アーム1に長孔6a,6bを介して連結している。また、挟持アーム1は、先端部1cを尖らせるとともに長さを150〜250mmとし、挟持する面には複数の切欠き8が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁、床、天井などの建築部材の内容物を採取するための検体採取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、壁や床などの建築部材には断熱を目的としてアスベストが使用されてきた。また、壁または床に貫通穴を設けてケーブルや配管を通す場合、防火措置として貫通穴とケーブルとの隙間を耐火材で埋めているが、この耐火材としてアスベストが使用されていた。しかし、アスベストは人体への有害性が問題となり、近年では使用されていない。
【0003】
ところで、既設の建築物において、補修や解体などを行う場合、壁や床にはアスベストが混入している可能性が否定できないので、有無を予め調査する必要がある。また、防火区画の壁や床を貫通しているケーブルや配管を工事する場合も、予め耐火材にアスベストが使用されていないか調査する必要がある。
従来、貫通部防火措置における耐火材の採取は、一般に壁や床の一部に穴を開けペンチなどで内容物を掴み取るものであった。
また、文献としては、建築部材の内容物を採取する手段として外装板をホルソーで円形にカットし、コアドリルを差し込んで試料を切り出すものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3008338号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
壁や床に加工を施す場合、断熱材としてアスベストが使用されているかどうかは、壁や床の一部にドリルで穴を開け、内容物を少し採取すれば、簡便に知ることができる場合が多い。
しかしながら、壁や床の厚みが大きい場合には、種々のものが混合しているものがある。また、貫通穴を設けてケーブルを挿通して隙間を耐火材で埋めている場合では、過去にケーブルの追加や引き換えが行われ、アスベスト以外の耐火材が使用された場合であっても、それ以前に使用されたアスベストが一部残っていることが少なくない。
このため、内容物を採取する場合は、表面の一部のみではなく、奥まで均一に掴み取って分析することが必要となっている。しかしながら、壁や床の厚みは100mm以上あり、奥の内容物を採取することは、困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、内容物を建築部材の厚さ全長まで均一に確実に採取できる検体採取装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の検体採取装置は、上記の目的を達成するため、次の手段を採った。すなわち、壁や床などの建築部材中に差し込んで内容物を採取する手持ちの採取装置であって、内容物を掴持する挟持アームと、握りと、挟持アームと握りを連結するクロス部材とからなり、該クロス部材は、挟持アームが平行に開閉するように中央に支点軸を有するX状として挟持アームに長孔を介して連結し、挟持アームは、先端部を尖らせるとともに長さを150〜250mmとしたことを特徴としている。
【0008】
挟持アームを平行に開閉させる機構は、中央に支点軸を有するX状のクロス部材を挟持アームに設けた長孔にピン連結することによっている。挟持アームに設ける長孔は、クロス部材の挟持アーム側の先端部または後端部のいずれでもよい。
壁や床などの建築部材の厚さは、150mmまでが多いが、それ以上の場合もある。
挟持アームの長さは、長くすると内容物を掴持する力が不足するので、250mmまでとする。
【0009】
また、挟持アームの開く量は20〜30mmとする。この範囲外だと建築部材の厚さの全長にわたって内容物を採取することが難しくなる。なお、この開く量は、挟持アームの長さが短い場合は大きくてもよいが、長い場合は小さくするとよい。
挟持アームの開く量の制限は、クロス部材に係止部材を付設してもよいが、上記の挟持アームに設ける長孔の長さ寸法による(請求項3)と簡便である。
また、挟持アームの先端部は尖らせるが、安全上などの点から先端を丸めたものも含まれる。
【発明の効果】
【0010】
上記のように、本発明の検体採取装置は、挟持アームを平行に開閉可能に構成するとともに先端部を尖らせて、長さを150〜250mmとしたので、挟持アームを開いた状態で内容物へ簡便に奥深く挿入し、内容物を均一に採取でき、検査精度が向上する。
【0011】
また挟持アームは、挟持する面に複数の切欠きを設けることにより(請求項2)、挟持部が長く(150〜250mm)ても、内容物を確実に強固に掴むことができる。
また、挟持アームの開きを20〜30mmに制限するようにした(請求項3)ので、掴む量が制限され、確実に内容物を掴むことができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の検体採取装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1および図2は、検体採取装置の全体を示す平面図で、図1は、挟持アームを開いた状態、図2は閉じた状態を示している。
検体採取装置10は、全体がハサミのような形状を有しており、挟持アーム1と握り2とクロス部材3とからなっている。
【0013】
挟持アーム1は、第1アーム1aと第2アーム1bとからなり、先端部1cは尖ら(先端は丸めてある)せ、挟持する部分となる位置にはそれぞれ挟持材1aと挟持材1bが固設されている。
挟持材1aと挟持材1bは、90度折り曲がった形材を対向させて使用している(図3参照)。そして、挟持部にはノコギリの刃のような切欠き8、8がそれぞれ形成されている。なお、ここでは、挟持部の長さは200mm、幅は18mmとしている。
【0014】
クロス部材3は、連結材3aと連結材3bとからなり、連結材3aの一端は第1アーム1aの中央より後部寄りにピン4aで連結され、他端側は第2アーム1bの後端側に設けた長孔6aにピン7aで連結されている。そして、連結材3bの一端は第2アーム1bの中央より後部寄りにピン4bで連結され、他端側は第1アーム1aの後端側に設けた長孔6bにピン7bで連結されている。さらに、連結材3aと連結材3bは、中央部を支点軸5によって連結されている。
握り2は、第1握材2aと第2握材2bとからなり、それぞれ連結材3aと連結材3bの後端に固設されている。
【0015】
検体採取装置10は、このように構成されているので、挟持アーム1を閉じた状態(図2)から、第1握材2aと第2握材2bを持って開くと、第1アーム1aと第2アーム1bが平行に開き、図1の状態となる。
挟持アーム1が開くにしたがって、ピン7aおよびピン7bは長孔6a、長孔6bの後端から前端へ移動する。なお、ここでは、最大25mmまで開くように長孔6a、6bの長さが決められている。
【0016】
次に、第1握材2aと第2握材2bを持って閉じると、第1アーム1aと第2アーム1bが平行に移動して閉鎖され、図2の状態となる。このときの状態は、挟持材1aと挟持材1bが当接し、菱形の空間9が形成され、挟持アーム1の先端部1cが尖った状態となる(図3参照)。
【0017】
この検体採取装置10で壁や床などの建築部材の内容物を採取する場合は、まず、建築部材の表装部に径50mm程度の穴を開ける。そして、検体採取装置10の握り2を持って、挟持アーム1を開いた状態として、該穴から建築部材の厚さ一杯まで差し込む。挟持アーム1の先端部1cは尖っているので、押込む抵抗を少なくできる。
【0018】
次に、握り2を閉じて挟持アーム1を閉じた状態とする。これにより、内容物は挟持アーム1の菱形の空間9に掴かまれる。挟持材1aと挟持材1bにはノコギリ状の切欠き8が形成されているので、内容物を強固に噛んだ状態となり、この状態で検体採取装置10を引き出すことにより、挟持アーム1の全長にわたってほぼ均一に内容物を採取できる。
【0019】
次に、床に貫通穴を設けてケーブルを挿通して隙間を耐火材で埋めている場合における耐火材の採取を検体採取装置10を用いて行う場合について、説明する。
図4に示すように、上ボード11と下ボード12間に貫通部13が形成され、床上の制御盤16から、ケーブル15が該貫通部13を通して床下へ配線されている。貫通部13は、耐火材14がケーブル15を包み込んで内装されている。
【0020】
この耐火材14を検体採取装置10で採取する場合は、まず、貫通部13の下ボード12の一部にドリルで50mm径の穴を開けて開口部17を形成する。
次に、上記で説明したように、検体採取装置10の握り2を持って、挟持アーム1を開いた状態にして、開口部17から建築部材の厚さ一杯まで差し込んで、握り2を閉じて挟持アーム1を閉じた状態とし、引き出す。これにより、耐火材14が挟持アーム1の全長にわたって採取できる。なお、先端は丸めてあるので、誤ってケーブルに当たっても傷付けることがない。
【0021】
上記の実施の形態では、挟持材1d,1eをそれぞれ第1アーム1a、1bに固設したもので説明したが、削り出しや形鍛造で一体に形成したものでもよい。また、連結材3aと第1握材2a、連結材3bと第2握材2bも一体としてもよい。
また、実施形態では、具体的な寸法を示して説明したが、発明をより理解しやすいようにするためであって、これに限定するものでないことはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のアスベスト検体採取装置の実施の形態の平面図で、挟持アームが開いた状態を示している。
【図2】同、挟持アームを閉じた状態を示す平面図である。
【図3】同、図2におけるA−A視断面図である。
【図4】同、本発明装置を防火区画のケーブル貫通部で使用した状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0023】
1挟持アーム
1a第1アーム
1b第2アーム
1c先端部
1d挟持材
1e挟持材
2握り
2a第1握材
2b第2握材
3クロス部材
3a第1連結材
3b第2連結材
4aピン
4bピン
5支点軸
6a長孔
6b長孔
7aピン
7bピン
8切欠き
9空間
10検体採取装置
11ボード
12ボード
13貫通部
14耐火材
15ケーブル
16制御盤
17開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁や床などの建築部材中に差し込んで内容物を採取する手持ちの採取装置であって、内容物を掴持する挟持アームと、握りと、挟持アームと握りを連結するクロス部材とからなり、該クロス部材は、挟持アームが平行に開閉するように中央に支点軸を有するX状として挟持アームに長孔を介して連結し、挟持アームは、先端部を尖らせるとともに長さを150〜250mmとしたことを特徴とする検体採取装置。
【請求項2】
前記挟持アームは、挟持する面に複数の切欠きを設けたことを特徴とする請求項1に記載の検体採取装置。
【請求項3】
前記握りに連結するクロス部材の長孔は、挟持アームの開きが20〜30mmに制限される長さとしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の検体採取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−83127(P2013−83127A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225251(P2011−225251)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(391019658)株式会社中部プラントサービス (28)
【Fターム(参考)】