説明

検出システム

(a)標的核酸配列を含有していると思われる試料に、前記標的配列に対して特異的な蛍光標識されたプローブと、該プローブ上の前記蛍光標識から生じる蛍光エネルギーを吸収することができるが可視光を発しないDNA二重鎖結合物質とを添加すること、(b)このようにして形成された混合物を、標的核酸が増幅される増幅反応に供すること、(c)前記プローブが前記標的配列にハイブリダイズする条件に前記試料を供すること、(d)前記試料から得られる蛍光をモニターすることを含む、試料中の標的核酸配列の存在を検出する方法。この方法は、試料中に存在する標的配列の量が測定できるように、例えば、PCR反応等の増幅反応をモニターするのに使用できる。これに加えて又はこれに代えて、増幅をモニタリングするための又は多型若しくは対立遺伝子変異を検出若しくは低了するための融解ヒステレシス情報等の二重鎖の不安定化データを作成するのに使用できるため、遺伝子診断に役に立つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、増幅反応を定量的にモニターすることによって、試料中の標的ポリヌクレオチドを検出する方法、並びにこれらの方法で使用するためのプローブ及びキットを提供する。本方法は、多型又は対立遺伝子変異を検出するのに特に適しており、従って、診断方法に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
公知の蛍光ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)モニタリング技術は、第二世代PCRの僅かなサーマルサイクリング装置上で使用できる、ストランド特異的なDNAインターカレーター技術と非特異的なDNAインターカレーター技術とがある。これらの反応は、サーマルサイクラー上において閉管形式で均一に実行される。反応は、蛍光計を用いてモニターされる。アッセイの正確な形態は様々であるが、増幅生成物の存在を示すシグナルを発生させるために、システム内の2つの蛍光成分間で行われる蛍光エネルギー転移、すなわちFETに依存することが多い。
【0003】
WO 99/28500は、試料中の標的核酸配列の存在を検出するための極めて優れたアッセイについて記述している。この方法では、DNA二重鎖結合物質と前記標的配列に特異的なプローブとを試料に添加する。このプローブは、前記DNA二重鎖結合物質から生じる蛍光を吸収することができるか、又は前記DNA二重鎖結合物質に蛍光エネルギーを供与できる反応性分子を備えている。次に、標的核酸を増幅する増幅反応にこの混合物を供し、前記プローブが標的配列にハイブリダイズする増幅過程期間の間又は期間後に、条件を誘導する。前記試料から生じる蛍光をモニターする。
【0004】
プローブが標的配列にハイブリダイズすると、インターカレート色素等のDNA二重鎖結合物質がストランド間に捕捉される。通常、これにより、前記色素に伴う波長の蛍光が増加する。しかし、反応性分子が色素から生じた蛍光を吸収できる場合には(すなわち、アクセプター分子である場合)、反応性分子は、FET、特にFRETを用いて、色素から生じた発光エネルギーを受容するので、特有の波長で蛍光を発する。色素の蛍光とは波長が異なるため、アクセプター分子から生じる蛍光の波長が増加することは、プローブが二重鎖で結合することを示唆する。
【0005】
同様に、反応性分子が色素に蛍光を供与できる場合(すなわちドナー分子である場合)には、FRETの結果としてドナー分子からの発光が減少し、この減少を検出することができる。色素の蛍光は、これらの状況下では、予測された以上に増加する。
【0006】
プローブ上の反応性分子から生じるシグナルはストランド特異的なシグナルであり、試料内に標的が存在することの指標となる。このように、プローブを含む二重鎖の形成又は不安定化の指標となる、反応性分子から生じる蛍光のシグナル変化をモニターすることが好ましい。
【0007】
本方法に使用し得るDNA二重鎖結合物質(DNA duplex binding agent)は、それ自体二重鎖の形態のDNAに接着又は会合し且つエネルギードナー又はアクセプターとして作用することができる任意の物質である。具体例は、本分野において周知であるインターカレート色素である。
【0008】
二重標識されたプローブが必要とされる他のアッセイに比べて、これらの成分はずっと経済的である点で、単一標識されたインターカレート色素やプローブなどのDNA二重鎖結合物質を使用することは有利である。ただ1つのプローブを用いることによって、プローブの基礎を形成するために必要な公知の配列の長さを比較的短くすることができるので、本方法は、困難な診断状況においても使用することが可能である。
【0009】
前記アッセイで使用されるDNA二重鎖結合物質は、典型的には、インターカレート色素、例えば、それ自身蛍光性であるSYBRGreen I、SYBRGold、臭化エチジウム及びYOPRO−1等のSYBRGreenである。
【0010】
反応性分子と色素の間にFRETなどのEFTが生じるためには、前記ドナー(インターカレート色素又はプローブ上の反応性分子のうち何れでもよい)の蛍光発光は、アクセプター(すなわち、色素又は反応性分子のうち残りの一方)より波長が短くなければならない。ドナー及び/又はアクセプターとして使用される分子によって生じた蛍光シグナルは、可視スペクトル中のピークとして表れ得る。
【0011】
一般的には、発光の波長には重複が少なくとも幾らか存在するであろう。シグナルが先鋭なピークである場合でさえ、蛍光分子からシグナルが幾らか「漏出」するので、プローブによって生成されたストランド特異的なピークを、DNA二重鎖結合物質のシグナルから分離する必要があるのが一般的である。これは、例えば、ドナーとアクセプターのスペクトル間の関係を経験的に決定し、この関係を使用してドナー及びアクセプターからのシグナルを標準化することによって、行うことができる。
【0012】
本出願人は、この種のアッセイを実施する改良法を発見するに至った。
【0013】
本発明は、
(a)標的核酸配列を含有していると思われる試料に、前記標的配列に対して特異的な蛍光標識したプローブと、該プローブ上の前記蛍光標識から生じる蛍光エネルギーを吸収できるが可視光を発しないDNA二重鎖結合物質を添加すること、
(b)このようにして形成された混合物を標的核酸が増幅される増幅反応に供すること、
(c)前記プローブが前記標的配列にハイブリダイズする条件に前記試料を供すること、
(d)前記試料から得られる蛍光をモニターすること、
を含む試料中の標的核酸配列の存在を検出する方法を提供する。
【0014】
本明細書で使用する「可視光」という表現は、スペクトルの可視域にある放射(radiation)を表し、すなわち、390nmないし750nmの範囲にある波長の放射である。
【0015】
スペクトルの可視域で光を発しないDNA二重鎖結合物質を使用することによって、プローブのシグナルと重複し得るシグナルを与えるという問題が回避される。このように、DNA二重鎖結合物質から生じるシグナルからプローブのシグナルを分離する必要性はなくなり、意味のあるシグナルが測定できるバンド幅をさらに広く利用することが可能である。つまり、装置、又は少なくとも装置に配置される計算条件(computational requirement)を簡素化することができる。
【0016】
従って、前記アッセイは、より広範な機器で実行できる。
【0017】
或いは、2個以上の標的を同時にモニターできるように、異なる波長で蛍光を発する様々な標識を含むプローブをさらに取り込ませることによって、可視スペクトル中の使用されていないバンド幅の任意の領域を活用することができる。これは、多重PCR反応の場合では特に有益であると考えられる。
【0018】
DNA二重鎖結合物質がスペクトルの可視部分で放射を発しなければ、使用するDNA二重鎖結合物質は二重鎖に結合する任意の化合物とすることができる。従って、前記DNA二重鎖結合物質は、インターカレート剤、副溝結合剤、DNAの主溝と結合する化合物、又はプローブの末端塩基上に結合するか若しくは堆積する化合物、並びにこれらの組み合わせとすることができる。特定の実施形態では、前記DNA二重鎖結合物質はインターカレート剤又は副溝結合剤を含むであろう。前記DNA二重鎖結合物質は、スペクトルの可視域外の波長、例えば、赤外線範囲で放射を発することがある。しかし、本発明の方法においては、このような発光は検出できないと思われるので、事実上、DNA二重鎖結合物質は、「暗消光剤(Dark Quencher)」として働くにすぎない。
【0019】
このような化合物は蛍光インターカレート色素よりずっと経済的であることが多いので、本発明の費用対効果はさらに高いものとなる。
【0020】
このように使用することができる適切なDNA結合剤の例には、共役芳香環系を有するDNA結合剤がある。環は、フェニル、ナフチル若しくはアントラセン環等のアリール環、又は、例えば、原子を最大20個含有し、そのうち最大5個が酸素、硫黄及び窒素等のヘテロ原子である複素芳香環であり得る。このような系の例として、アントラサイクリン又はアントラキノンが挙げられる。これらは、適切なDNA結合特性を提供するために、置換してもよい。
【0021】
特に、この化合物は、必要に応じて置換された構造(I)のアントラキノンを含み、
【0022】
【化3】

【0023】
式中、R、R、R及びRは水素、官能基、若しくは例えば官能基によって必要に応じて置換されたヒドロカルビル基から独立に選択され、又はRとR又はRとRは、必要に応じて互いに結合して、ヘテロ原子を必要に応じて含有し及び/又は官能基又はヒドロカルビル基によって必要に応じて置換された環を形成する。
【0024】
本明細書において使用する「官能基」という用語は、反応性の基、好適にはヘテロ原子を含有する反応性の基を表す。官能基の例には、ハロ、シアノ、ニトロ、オキソ、−OC(O)R、−OR、−C(O)OR、S(O)、NR、OC(O)NR、C(O)NR、OC(O)NR、−NRC(O)、−NRCONR、−C=NOR、−N=CR、S(O)NR、C(S)、C(S)OR、C(S)NR又は−NRS(O)(式中、R、R及びRは、独立に、水素又は必要に応じて置換されたヒドロカルビルから選択されるか、又はRとRの両者で、必要に応じて置換され、S(O)、酸素及び窒素などのヘテロ原子を必要に応じてさらに含有する環を形成し、nは1又は2の整数であり、sは0、1又は2の整数であり、tは0又は1−3の整数である。)が含まれる。
【0025】
ヒドロカルビル基に対する適切な置換基R、R及びRは、官能基としてもよい。
【0026】
本明細書において使用する「ヒドロカルビル」という用語は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール又はアラルキルなど、炭素と水素原子を有する有機性の基を表す。「アルキル」という用語は、好適には最大20、より好適には最大10、好ましくは最大6の炭素原子を含有する直鎖又は分枝鎖アルキル基を表す。「アルケニル」又は「アルキニル」という用語は、2ないし10の炭素原子を有する不飽和の直鎖又は分枝鎖を表す。「シクロアルキル」という用語は、少なくとも3つの炭素原子を有し、構造が環状であるアルキル基を表す。「アリール」という用語は、フェニル及びナフチルなどの芳香環を表す。アラルキルという用語は、ベンジルなどのアリール基によって置換されたアルキル基を表す。
【0027】
、R、R及びRの置換基の具体例は、ケトエノール互変異性を生じるヒドロキシ基である。
【0028】
好ましくは、前記化合物は、DNAへの結合を補助する電荷を提供するために1つ以上のヘテロ原子を含有する。酸素、窒素又は硫黄等のヘテロ原子は置換基の側鎖に含まれていてもよい。ある種の実施例では、式(I)の化合物は、置換基R、R、R及びR内に少なくとも1つの窒素原子を含む。
【0029】
このような化合物の例は、製薬分野で、特にDNA結合機能の結果としての抗癌又は抗菌用途において見出すことができる。例えば、本発明のアッセイでDNA結合剤としての使用に適した特性を有すると思われる化合物については、米国特許第4197249号、米国特許第3183157号、米国特許第4012284号及び米国特許第3997662号に記述がある。
【0030】
他の具体的な化合物は式(IA)の化合物であり、米国特許513327に記載されている。これらの化合物は、上記式(I)の化合物であるが、この化合物の場合、R、R、R及びRは、水素、X、NH−ANHR及びNH−A−N(O)R’R”から独立に選択され(式中、Xはヒドロキシ、ハロ、アミノ、C1−4アルコキシ又はC2−8アルカノイルオキシであり、AはNHとNHR又はN(O)R’R”との間の鎖長が少なくとも2炭素原子であるC2−4アルキレン基であり、R、R’及びR”は、C1−4アルキル及びC2−4ヒドロキシアルキル及びC2−4ジヒドロキシアルキルから各々独立に選択されるか(但し、窒素原子に結合した炭素原子はヒドロキシ基を有しておらず、何れの炭素原子も2個のヒドロキシ基によって置換されていないものとする。)、又はR’とR”は、両者で、C2−6アルキレン基であり、R’及びR”が結合する窒素原子とともに、3ないし7個の原子を有する複素環を形成している。)、但し、R、R、R及びRのうち少なくとも1個はNH−A−N(O)R’R”基である。具体例は米国特許第5132,327号に記載されており、その内容を参照により本明細書に援用する。
【0031】
本発明においてDNA二重鎖結合物質として使用するのに適切な可能性がある化合物は、例えば、従来の方法を用いて、特定の標識、又は多種類の標識からの蛍光エネルギーを吸収するか否かを確認するため、試験することができる。特に、消光特性を試験するため、また、増幅反応そのものの進行を妨害させないようにするため、標識プローブ、又はある場合にはSybr Green若しくはSybr Gold等の蛍光インターカレート剤であり得る蛍光剤を用いたPCR反応に、前記化合物を導入してもよい。この試験を実行するのに適したプロトコルは本明細書の実施例3に記載されている。
【0032】
具体例は、ミトキサントロン(1,4−ジヒドロキシ5,8−ビス[[2−[(2−ヒドロキシエチル)アミノ]エチル]アミノ]−9,10−アントラセンジオン)又は塩酸塩若しくは二塩酸塩等のその塩類、ノガラマイシン(2R−(2α,3β,4α,5β,6α,11β,13α,14α)]−11−[6−デオキシ−3−C−メチル−2,3,4−トリ−O−メチル−α−L−マンノピラノシル)オキシ]−4−(ジメチルアミノ)−3,4,5,6,9,11,12,13,14,16−デカヒドロ−3,5,8,10,13−ペンタヒドロキシ−6,13−ジメチルl−9,16−ジオキソ−2,6−エポキシ−2H−ナフタセノ[1,2−b]オキソシン−14−カルボン酸メチルエステル)又はダウノマイシン(8S,−シス)−8−アセチル−10−[3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−α−L−lyxo−ヘキソピラノシル)オキシ]−7,8,9,10−テトラヒドロ−6,8,11−トリヒドロキシ−1−メトキシ−5,12−ナフタセンジオン)がある。
【0033】
その他の具体例には、米国特許第5132327号(EP−A−0450021)に記載されている化合物があり、特に、Biostatusの商標名で販売されている細胞浸透性DNA化合物、「Draq5」、及び「Apoptrak」の商標名で販売されているNオキシド誘導体が挙げられる。
【0034】
本発明で使用するDNA二重鎖結合物質の具体的なグループは、ミトロキサノン(mitroxanone)、ダウノマイシン、Draq5(TM)及びApoptrak(TM)である。
【0035】
特定の実施形態では、前記DNA二重鎖結合物質はミトキサントロンである。
【0036】
これに代えて又はこれに加えて、4−(4−ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸(DABCYL)等の消光成分を、公知のDNA結合剤、インターカレート剤、又は副溝若しくは主溝結合剤に結合、好ましくは共有結合させてもよい。この場合、前記消光成分によって完全に消光されるのであれば、前記DNA結合剤はある程度の蛍光を有してもよい。これらの化合物は、二重鎖安定化効果を有する。これは、2つの点で有利である。第一に、プローブの標的への結合を向上させるため増幅時の温度変化に要する時間が短縮され、このため、反応をさらに迅速に実行できるようになる。第二に、さらに短い核酸配列をプライマー及びプローブに使用できる。プローブが短いほどミスマッチが原因で生じる融点の差が著しくなるので、これは、一般的に、例えば融点分析を行う場合に有用である。プローブ及びプライマーのアニーリングに必要とされ得る温度が低いために長いプライマー及びプローブが反応の特異性を低減させることがある、例えばATリッチな標的において特に有益であろう。
【0037】
一重鎖形態の場合でも、プローブは前記DNA二重鎖結合物質の消光効果をある程度知覚することができる。しかし、二重鎖DNAの場合には、著しくかつ区別可能なように、消光がさらに顕著なものとなるであろう。リガンド間では会合が形成されないので、一般的に、本システム中に存在する何れの遊離標識も、前記DNA二重鎖結合物質による消光の対象にはならないであろう。
【0038】
好適には、反応混合物に添加されるDNA二重鎖結合物質の量は、蛍光標識から生じたシグナルを測定可能に消光させるには十分であるが、増幅を阻害するには十分でない量である。これを達成する濃度の範囲は、使用した厳密なDNA二重鎖結合物質により異なり、下記に例示されている慣用の方法で測定することができる。ミトキサントロン又はダウノマイシン等のDNA二重鎖結合物質の場合、1μMないし100μMのオーダーの濃度、好適には約10μMないし25μMの濃度が使用されるであろう。Draq5の場合は、1μMないし100μMの範囲の濃度、好ましくは約50μMの濃度が単一標識されたフルオレセインプローブの消光に有効である。フルオレセイン標識されたプローブを十分に消光するためには、さらに高濃度(例えば、1mM)のApoptrak(TM)が必要となる場合がある。
【0039】
本発明の方法は極めて多用途に使用できる。詳細は後述するが、試料中の標的核酸配列の定量及び定性的なデータの作成に本方法を使用できる。特に、本発明は定量的増幅を提供するだけではなく、これに加えて又はこれに代えて、二重鎖を不安定にする温度又は融点等の特徴的データを得るためにも使用できる。
【0040】
本発明の方法では、前記試料は、増幅反応の前、間又は後で、プローブが試料にハイブリダイズする条件に供することができる。従って、最初に単一の容器に全試薬を加えて増幅及びモニターができる点で、本方法は均一な様式での検出を可能とする。その後に試薬を添加する工程は不要である。固体支持体の存在下で本方法を行う必要もない(これも選択可能である。)。
【0041】
プローブは、標的核酸配列にハイブリダイズすると思われるDNA又はRNA(RNAの場合は1本鎖の形態のRNA)等の核酸分子を含むことができる。この例では、工程(c)は、標的核酸を一本鎖とする条件を使用することを含むことになるであろう。
【0042】
プローブは、溶液中に遊離させてもよいし、固相支持体上に、例えば、磁気ビーズ(産物を分離するのに有用である)などのビーズの表面に又は表面プラズモン共鳴検出器の導波管などの検出装置の表面に固定してもよい。何れを選択するかは、観察しているアッセイの性質や使用している検出手段に応じて決められるであろう。
【0043】
特に、用いる増幅反応には、試料中に存在する標的核酸配列のすべてが一本鎖となる条件に前記試料を供する工程が含まれることになるであろう。このような増幅反応にはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)又はリガーゼ連鎖反応(LCR)があるが、PCR反応が好ましい。
【0044】
ハイブリダイゼーション条件が適切であれば、増幅反応の経過中にプローブはハイブリダイズすることが可能である。
【0045】
好ましい実施形態では、増幅反応の各サイクルの最中にこれらの条件を満たすように、プローブを設計することも可能である。このように、増幅反応の各サイクル中のある時点で、プローブは標的配列にハイブリダイズし、それにより、プローブと標的配列間に捕捉されたDNA二重鎖結合物質に近接した結果として蛍光シグナルは消光するであろう。増幅が進行するにつれて、標的配列からプローブは分離されるか、又は融解され、プローブによって生じたシグナルは回復されるであろう。すなわち、増幅の各サイクルにおいて、プローブがアニールされる時点で蛍光標識から蛍光ピークを発生する。プローブの結合にさらに多くの標的配列を利用できるようになるため、ピークの強度は増幅が進行するにつれて低下するであろう。
【0046】
各サイクル中で試料中の蛍光標識の蛍光をモニタリングすることによって、様々な方法で増幅反応の進行をモニターすることができる。例えば、融解ピークによって与えられるデータは、例えば、融解ピーク下の面積を計算し、このデータをサイクル数に対してプロットすることによって分析することができる。
【0047】
蛍光は、公知の蛍光計を用いて適切にモニターされる。これらから生じたシグナルは、例えば光電子増倍管電流の形で、データ処理基盤に送られ、各試料管に伴うスペクトルに変換される。例えば96チューブの複数のチューブを同時に検査することが可能である。このようにして、反応中ずっとデータを頻繁に(例えば、10ms毎に)収集することができる。
【0048】
本データによって、試料中に存在する標的核酸の量を定量する機会が提供される。
【0049】
さらに、プローブハイブリダイゼーションの速度論によって、標的配列の濃度を絶対的に決定することが可能あろう。試料から得られた蛍光の変化によってプローブの試料へのハイブリダイゼーションの割合を算出できる。ハイブリダイゼーションの割合の増加は、試料中に存在する標的配列の量と関連があるであろう。
【0050】
増幅反応が進行するにつれて標的配列の濃度は増加するので、プローブのハイブリダイゼーションはさらに急速に起こるであろう。このように、このパラメータは定量化の基礎としても使用できる。このデータ処理方法は、情報を提供するシグナルの強度に依存しないので有益である。
【0051】
適切な蛍光標識は、ローダミン色素、又はCy5、Cy3、Cy5.5、フルオレセイン又はそれらの誘導体等のその他の色素である。具体的な誘導体は、FAMという商標名で販売されている5−カルボキシフルオレセイン、6−カルボキシフルオレセイン、又はそれらのサクシジミニルエステル等のカルボキシフルオレセイン化合物である。
【0052】
蛍光標識の選択は通常、吸収剤の選択に関係するであろう。前記標識は、インターカレート剤によって吸収され得る範囲内にその蛍光がなければならないことは明白である。
【0053】
ミトキサントロン、ダウノマイシン、Draq5及びApoptrakは、フルオレセインとその誘導体、特にFAM化合物のとりわけ優れた消光剤である。
【0054】
前記標識は従来の方法でプローブと結合することができる。一般的に蛍光標識は、プローブの末端領域に位置するであろうが、プローブ上の蛍光標識の位置は重要ではない。
【0055】
標識はその後立体的又は化学的遮断剤として作用すると思われるので、増幅時にポリメラーゼによってプローブの伸長を防ぐために、プローブの3’末端に位置するのが好ましい。これによって、増幅反応時のプローブの3’末端を遮断するために、リン酸化等の他の処置を講じる必要がなくなる可能性がある。
【0056】
増幅反応に使用したDNAポリメラーゼによって前記プローブが加水分解され、それによって蛍光標識を放出するように、プローブ及びアッセイ条件を設計することが可能である。
【0057】
この場合、プローブはPCR反応のアニーリング段階と伸長段階との間で結合するように設計され、アッセイで使用されるポリメラーゼは5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を有するものであろう。DNA二重鎖結合物質によって消光されることはなくなったので、放出された蛍光標識はより多くのシグナルを産生することができる。従って、この場合、遊離の蛍光標識のシグナルの増加を観察することによって前記反応をモニターできる。プローブが標的又は産物と相互作用する場合よりも高温で前記シグナルをモニターする必要がある。
【0058】
しかし、プローブを解離させずにシグナルを生成させることができるので、このアッセイではこのようにプローブを消費する必要はない。
【0059】
反応の各段階に存在する増幅産物の量に直接関連する完全に可逆的なシグナルを得るために、及び/又は、反応速度(例えば迅速PCRの反応速度)が最も重要な場合には、標的配列から無傷(intact)で放出されるようにプローブを設計するのが好ましい。これは、例えば、増幅反応の伸長段階の間とすることができる。しかし、前記シグナルはプローブの加水分解に依存していないので、増幅サイクル中であれば何れの段階においても、標的配列をハイブリダイズし、標的配列から融解されるように前記プローブを設計することが可能である。例えば、前記サイクルの伸長相以外の段階で最も強力にハイブリダイズするプローブは、増幅反応への干渉が最小限になるであろう。
【0060】
伸長温度以下で強力に結合するプローブを使用する場合、増幅反応中のポリメラーゼと同様に、Taq又はPwoのStoffleフラグメント等の5’−3’エキソヌクレアーゼ欠損酵素を用いることによって標的配列からの前記プローブを無傷で放出することができる。
【0061】
次いで、プローブは再び反応に関与することが可能となるので、プローブは経済的に利用できる。
【0062】
可逆的に標的にハイブリダイズするが加水分解されないプローブを用いて、このように取得されたデータは、様々に解釈され得る。その最も簡潔な形では、増幅反応の経過中又は終了時に、蛍光標識の蛍光がプローブのアニーリング温度で減少するが、これは存在する標的配列の量の増加を意味しており、増幅反応が進行したこと、従って、実際に標的配列は試料中に存在したことを示唆している。
【0063】
しかし、上記のように、増幅反応を通じてモニタリングを行うことによって、定量化することもできる。
【0064】
最後に、後に詳述するように、配列に関する情報を取得するために、終点時の測定、又は期間全体を通じた測定として、特性データ、特に融点分析を取得することできる。
【0065】
このように、本発明の好ましい実施例には、核酸増幅の検出方法を含み、(a)核酸ポリメラーゼと、(b)標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズできる少なくとも一つのプライマーと、(c)標的ポリヌクレオチド配列に結合でき、蛍光標識を含有するオリゴヌクレオチドプローブと、(d)前記蛍光標識から蛍光エネルギーを吸収でき、スペクトルの可視域で光を発しないDNA二重鎖結合物質との存在下において、標的ポリヌクレオチドに対して核酸増幅を実施すること、及び増幅反応中の蛍光の変化をモニタリングすることを含む、核酸増幅を検出する方法が包含される。
【0066】
本分野において周知であるように、DNA鎖内の標的ヌクレオチド配列のみが増幅されるように設計されている1対のプライマーを用いて、好適に増幅が実行される。核酸ポリメラーゼは、好適にはTaqポリメラーゼ等の耐熱性ポリメラーゼである。
【0067】
増幅反応が実行できる適切な条件は本分野において周知である。最適な条件は、使用される具体的なアンプリコン、使用するプライマーの性質及び使用する酵素に応じて、各事例で異なる可能性がある。最適な条件は、当業者によって事例ごとに決定してよい。典型的な変性温度は約95℃のオーダーであり、典型的なアニーリング温度は55℃のオーダー及び伸長温度は72℃のオーダーである。
【0068】
好適には、増幅過程を通して蛍光をモニターし、好ましくは、少なくとも各増幅サイクル中の同じ点でモニターする。特に、プローブが標的にアニールする時の温度で蛍光をモニターする必要がある。例えば、約60℃の温度でこれを行い得る。
【0069】
さらに多くの標的が形成されるにつれて、より多くのプローブが前記標的にアニールされるようになり、DNA二重鎖結合物質に近接する結果、消光される。この蛍光の減少が、増幅の進行の指標となる。
【0070】
試料中に存在するTAQ(TM)ポリメラーゼ等のポリメラーゼは、標的からプローブを除去する効果を有するであろう。この効果は低いレベルで起こり、プローブのアニーリング温度等、ポリメラーゼの最適以下の温度で起こる。このため、この温度では、これらの2つの反応、すなわちそのアニーリング温度でのプローブの結合と標的からプローブを除去するポリメラーゼの効果とが競合することになろう。一般的に、反応が多数繰り返すにつれて、前者の反応が優越するため、増幅反応のモニターが可能となる。しかし、最終的には、バランスがシフトし、ポリメラーゼの効果がさらに優勢になると、蛍光の上昇が観察されるであろう。すなわち、この結果により、蛍光の増加によって増幅反応の最後に引き起こされる「フック(hook)」効果が明らかになり得る。
【0071】
本発明の方法を使用して取得したデータは、増幅反応の進行をモニターするために処理することができ、従って、試料中に存在する標的の量を定量するために使用できる。
【0072】
取得したデータを解釈するために、何らかの調整を行う必要があるであろう。例えば、WO 99/28500に記述されている従来のPCRモニタリング反応では、PCR反応が蛍光の指数関数的な増加を招くため、取得した最低値からバックグラウンド蛍光のベースライン補正を導き出す必要があるであろう。
【0073】
これに対して、本出願の方法では、DNA二重鎖結合物質によって、次第により多くの標識プローブが消光されるにつれて、PCR反応の進行が蛍光を指数関数的に減少させるであろう。このため、達成した蛍光の最高レベルに基づいてベースラインの補正が必要となる。
【0074】
これは、好適にはサンプル反応からデータを採取し、各データポイントに次の式を適用することによって行う。
【0075】
y=1/x
z=y−MIN
式中、xはLightCyler等のPCR装置から得られるデータポイントであり、Zはベースライン補正したデータポイントであり、MINは全データセットを通したyの最小値である。zをサイクル数に対してプロットすると、適切なベースライン補正が計算できるであろう。
【0076】
特定の配列の特性を決定するためにハイブリダイゼーションアッセイで本方法を使用することができる。
【0077】
このように別の側面において、本発明は、
a)配列を含有すると思われる試料に、前記標的配列に対して特異的な蛍光標識プローブと、該プローブ上の蛍光標識から生じる蛍光を吸収することができるがスペクトルの可視域において放射を発しないDNA二重鎖結合物質とを添加すること、
(b)前記プローブが前記標的配列にハイブリダイズする条件に前記試料を供すること、
(c)前記試料から生じる蛍光をモニターし、前記プローブの前記試料へのハイブリダイゼーションの結果として又は前記プローブと前記標的核酸配列との間で形成された前記二重鎖の不安定化の結果として蛍光が変化する、前記配列に特有の反応条件を決定すること、
を含む、配列の特徴を決定する方法を提供する。
【0078】
好適な反応条件には、温度、電気化学、又は特定の酵素若しくは化学物質の存在に対する反応がある。これらの特性が変化する時の蛍光の変化をモニタリングすることによって、配列の正確な性質に特有な情報を決定できる。例えば、温度の場合、プローブが標的配列から分離又は「融解(melt)」する時の温度を決定できる。これは、例えば、遺伝子診断における対立遺伝子変異(allelic variation)を含む配列の多型を検出し、所望であれば定量化するためには、極めて有益となり得る。「多型」に関しては、配列中、特に天然に生じる可能性がある転移、塩基転換、挿入、欠失又は逆位が含まれる。
【0079】
標的配列が一塩基対のみによって変化すれば、プローブ融解のヒステレシスは、違ってくるであろう。このように、試料が単一の対立遺伝子変異体のみを含む場合、プローブの融解温度は、別の対立遺伝子変異体のみを含有する試料で認められたものとは異なる特定の値となるであろう。両対立遺伝子変異体を含有する試料は、対立遺伝子変異体の各々に対応する2つの融点を示す。
【0080】
電気化学的特性に関して、又は酵素若しくは化学物質の存在下にも同様の考えが当てはまる。プローブは電気化学的ポテンシャルを適用できる固体の表面上に固定できる。標的配列は、前記配列の正確な性質に応じて、特定の電気化学値でプローブと結合することもあるし、あるいはプローブから拒絶されることもある。
【0081】
この実施形態は、上述したPCR反応等の増幅反応と共に実行することも可能であるし、単独で使用することも可能である。
【0082】
本発明の別の側面には、本発明の方法で使用するためのキットが含まれる。これらのキットは、プローブ上に認められることのある蛍光標識から生じる蛍光エネルギーを吸収することができるが、スペクトルの可視域の光を発光しないDNA二重鎖結合物質を含有する。その他に使用可能なキットの成分には、DNAポリメラーゼ(「ホットスタート」反応のために化学修飾されたTAQを含む。)、プライマー、緩衝液、PCR進行を改良することが知られた抗TAQ抗体等の「ホットスタート」試薬等の補助剤、又は同時係属出願である国際特許出願PCT/GB02/01861に記載されているピロリン酸及びピロホスファターゼ等の、増幅反応で使用される試薬がある。前記キットは、これに加えて又はこれに代えて、蛍光標識される標的配列に対するプローブを装備することも可能である。
【0083】
前記キットは、単一の容器に全ての試薬を一緒に含んでもよいし、又は現場で混合するために一部の試薬を別個の容器に入れてもよい。
【0084】
別の側面において、本発明は、蛍光エネルギーを吸収できるが試料中の標的核酸配列の存在を検出する方法において可視光を発光しないDNA二重鎖結合物質の使用を提供する。
【0085】
好適な方法は上記のとおりである。DNA二重鎖結合物質の具体例も上述されている。
【0086】
ここで、添付の図面を参照しながら、一つの例として、本発明をさらに具体的に説明する。
【0087】
図1は、本発明の方法を用いて発生する相互作用を図示する。
図2は、本発明に記載の増幅反応時の段階を図説する。
図3は、本発明に記載の増幅反応の結果を図示するる図は、サイクル数に対して、アニーリング段階の最後に発生する蛍光の逆関数をプロットしたグラフであり、1:100の0.0193Mミトキサントロンがヒト胎盤のDNAの10倍希釈液3つに及ぼす効果を示す。
図4は、純粋な(0.0193M)ミトキサントロンの複数の10倍希釈液がCTW19プローブに及ぼす消光効果を示すグラフである。
図5は、純粋な(5mM)ダウノマイシンの複数の10倍希釈液がCTW19プローブに及ぼす消光効果を図示するグラフである。
図6は、様々な濃度の暗消光剤を含む蛍光がFAM標識プローブの存在下で実行されるPCR反応に及ぼす効果を示すグラフである。
【0088】
本発明の方法の要素は、好ましくは3’末端に蛍光標識(2)を保有するプローブ(1)である。標的配列と特異的に結合するこのプローブは、DNA二重鎖結合物質(3)とともに、標的配列を含むとされる試料に添加される。
【0089】
プローブ(1)が溶液中に遊離していれば、蛍光標識(2)は蛍光を発するであろう。DNA二重鎖結合物質の中には、プローブと会合してシグナルをわずかに消光できるものもあるが、その消光レベルは低い(図1A)。しかし、プローブ(1)が、一本鎖の標的配列(4)とハイブリダイズして図1Bに図説したように二重鎖を形成すると、DNA二重鎖結合物質(3)は二重鎖と会合するようになり、従って蛍光標識に近接する。前記標識から発せられた蛍光エネルギーは、DNA二重鎖結合物質(3)に伝わるため、前記試料から生じる蛍光は減少するか又は消光する。このように、標識の蛍光が減少することは、プローブの標的配列へのハイブリダイゼーションの指標となるであろう。
【0090】
例えば、温度が低下する時に標識の蛍光の減少を測定することによって、ハイブリダイゼーションが行われる時点を検出できる。同様に、この標識はDNA二重鎖結合物質からもはや影響を受けなくなるので、プローブ(1)が標的配列(4)から融解する温度に上昇するにつれて、標識の蛍光が増加するであろう。
【0091】
融解温度はプローブ及び標的配列のハイブリダイゼーション特性に応じて、変化するであろう。例えば、標的配列に完全に相補的なプローブは、前記標的配列とハイブリダイズするが、1個以上のミスマッチを含むプローブとは異なる温度で融解するであろう。
【0092】
図2は、本発明の方法をPCR反応等の増幅反応で使用する方法について図説する。プローブ(1)は、DNA二重鎖結合物質(3)と共に一本鎖DNAにハイブリダイズするので、標識シグナルは消光されることになる(図2A)。図説の実施形態では、これは、プライマー(5)がアニールしている間のサイクルのアニーリング段階で起こる。増幅の結果として標的配列の量が増加するにつれて、プローブ及びDNA二重鎖結合物質も取り込んだ二重鎖をさらに多く形成することによって消光が増加する結果、アニーリング段階中に標識により発生するシグナルが減少することになるであろう。
【0093】
伸長段階の間に、DNAポリメラーゼがプローブを置換するので、プローブは前記標的配列から除去される。この時点で、プローブがDNA二重鎖結合物質から離れるので標識シグナルが増加する(図2B)。
【0094】
標識から生じる蛍光をモニタリングすることによって、増幅反応の進行を追跡することができ、元の試料中に存在する標的配列の量の測定が可能になるであろう。
【実施例1】
【0095】
PCR増幅反応
本発明の方法は、Carl Wittwerのアッセイを用いて、ヒトβグロビン遺伝子を試験した。何れの実施例でも、下記の実験プロトコルに従った。
【0096】
第一に、下記の成分を含む10mlの2倍濃度のマスターミックスを調製した。
【0097】
2倍濃度のマスターミックス:
2000μlのトリス、pH8.8、500mM
2000μlのdUTPヌクレオチド、2mM
250μlのB.S.A、20mg/ml
1600μlのグリセロール
200μlのウラシル−N−グリコシラーゼ、1ユニット/μl
160μlのTaqポリメラーゼ、5ユニット/μl
3190μlのHPLCグレードの水
600μlの塩化マグネシウム溶液、0.1M
【0098】
次に、Carl Wittwerアッセイの実行に好適なPCRミックスを調製して下記の成分を含めた。
PCRミックス: 50μlの2倍濃度のマスターミックス、3mM Mg2+
10μlのフォワードプライマー(PC03)、10μM
10μlのリバースプライマー(PC04)、10μM
10μlのプローブ(CTW19)、2μM
5μlのHPLCグレードの水
5μlのミトキサントロン、10μM concs
プライマー配列(PCO3): ACA CAA CTG TGT TCA CTA GC
プライマー配列(PCO4): CAA CTT CAT CCA CGT TCA CC
CTW19: CAA ACA GAC ACC ATG GTG CAC CTG ACT CCT GAG GAT(3’蛍光)。
【0099】
このPCRミックス調合物は全部で90μlであった。次に前記ミックスを徹底的にボルテックスし、45μlずつになるよう2つに分けた。テンプレートを加えない対照(NTC;No Template Control)とするため、このうちの一つに5μlのHPLCグレードの水を添加し、もう一つには、正の対照として機能するように5μlのヒト胎盤のDNA(様々な濃度)を添加した。次にこれらの2つの50μlをさらに4つの20μlに分け、2個のNTCと2個の+(陽性対照)を作成するためにLightcycler毛細管にピペットで分注した。
【0100】
各実験で試験する変数の各数値について上記混合物を作成する。
【0101】
次に毛細管を遠心沈殿し、下記のサイクルプログラム上でRoche Lightcyclerで実行する。
【0102】
持ち越し予防 x 1
50℃で60秒間
95℃で15秒間
サイクル x 50
95℃で5秒間
60℃で5秒間。蛍光はF1チャネルでこの段階で採集した(530nm)。
74℃で5秒間
融解分析 x 1
50℃で15秒間
0.1℃/秒で95℃まで緩やかな勾配をなす。蛍光はF1チャネルでこの段階で採集した(530nm)。図3に代表的な結果を示す。
【0103】
図3は、10倍の希釈系列について、バックグラウンドのシグナルを上回る、識別可能なシグナルが示されている。最適なPCR中の標的鋳型の10倍希釈は、指数関数的な増幅が生じるように増幅する場合には、サイクル毎に単位複製配列の数が増加して2倍になる。標的の初期量を推測することによってアンプリコンの濃度を検出するために使用されるプローブシステムは、各10倍希釈についてPCRの機能的範囲内から約3.31サイクル過ぎた任意のサイクル値においてバックグラウンドを超えて上昇するシグナルを生成するはずである。図3には、これが明白に示されている。
【実施例2】
【0104】
DNA二重鎖結合物質の最適濃度の測定
様々な濃度のDNA二重鎖結合物質であるミトキサントロン及びダウノマイシンを用いて実施例1に記述したとおりにPCR反応を繰り返した。結果はそれぞれ図4及び図5に示す。開始材料のミトキサントロン(0.0193M)を1/20に希釈した前記反応混合物に添加する前に、1:100まで効率的に希釈して最終濃度を約10μMにした場合に、これらの図から、増幅反応を示す明瞭なシグナルが表れたことは明らかである。
【0105】
同様に、開始材料の5mMのダウノマイシンを1:10まで希釈し、その後さらにPCR反応混合物中で希釈した(1: 20)。この例の最終濃度は25μMであった。
【実施例3】
【0106】
別の消光DNA結合剤の特定
段階1
吸収剤の特定
下記の方法を用いて、蛍光エネルギーを吸収するために使用できる多数の別のDNA二重鎖結合物質を特定した。
【0107】
消光剤の候補を有する多数の10倍の希釈液を調製し、各希釈液5μlを下記のPCR反応ミックスに添加した。
【0108】
PCRミックス: 実施例1で定義されたとおりに50μlの2x マスターミックス、但し3mM Mg2+
10μlのフォワードプライマー(PC03)、10μM。
10μlのリバースプライマー(PC04)、10μM。
5μlのSybr Gold。
10μlのHPLCグレードの水。
様々な濃度の5μlの暗消光剤(Dark Quencher)。
【0109】
次にこれを実施例1に記述通りに増幅反応に供した。この実験の目的は2つある。第1に、混合物中に消光剤の候補を加えるとPCRが抑制されるか否か、抑制される場合にはどの濃度で抑制されるかを確立する。第二に、(前記ミックス中に消光剤の候補を加えると、消光剤を含有しない対照を用いて実行した場合のベースライン及び最大蛍光の比較によって)、Sybr Goldの蛍光が減少(消光剤)するかどうかを知ることができる。比較したこれら2つの結果によって、前記候補分子がDNA二重鎖結合物質として特に有益であり得、暗消光剤として作用できる濃度範囲を決定できる。
【0110】
しかし、Sybr Goldのシグナルの減少の原因は、副溝中の結合部位についてSybr Goldを凌ぐ前記消光剤候補によるものであると考えられる。これと消光の違いを識別するのは難しいが(或いは恐らく両方)、有益な観察でもあり、前記消光剤候補が実際にインターカレートできることを意味すると考えられる。
【0111】
次に、この方法で特定した消光剤の候補を、これを明確にするために下記の実験に供した。
【0112】
段階2
FAM標識プローブを用いて完全な暗消光剤(Dark Quencher)型中の分子候補を試験する。
【0113】
実験1)で確立した消光剤の候補の濃度の範囲を狭め、選択した消光剤の候補5μlを下記の混合物に添加した。
【0114】
PCRミックス:
50μlの2x マスターミックス、3mM Mg2+
10μlのフォワードプライマー(PC03)、10μM
10μlのリバースプライマー(PC04)、10μM
10μlのプローブ(CTW19)、2μM
5μlのHPLCグレードの水
実験1)で範囲を狭めた様々な濃度の5μlの暗消光剤(Dark Quencher)
次にこれを実施例1に記述どおりに増幅に供し、蛍光をモニターした。指数関数的に良好な直線の配分を用いて、図6で例証した種類の結果を出した前記消光剤を、さらに評価を行うために選択した。
【0115】
効果が観察されなかった場合、Cy3(565nmで蛍光する)及びCy5.5(694nmで蛍光する)等の別の色素を用いてさらに試験を行うため前記消光剤候補を確保した。
【0116】
PCR装置のベースライン補正機能は反応の「誤った」結果を除去するので、曲線を斜めにする(図6参照)。生データをエクスポートし、前述通りに蛍光の増加よりもむしろ減少を補正するベースライン補正の式を適用することによって補正することができる。
【0117】
段階3
効果を定量化
実験2で成功した消光剤候補を標的DNAの10倍希釈液シリーズを用いた実験に使用した。追加した希釈液間のCT値の差3.3サイクルは、その効果が標的DNAの量と直接関係があり、従ってPCRプロセスにも関連することを明らかにした。
【0118】
PCRミックス:
50μlの2x マスターミックス、3mM Mg2+
10μlのフォワードプライマー(PC03)、l0μM
10μlのリバースプライマー (PC04)、l0μM
10μlのプローブ(CTW19)、2μM
5μlのHPLCグレード水
実験1)及び2)で定義した濃度の5μlの暗消光剤
次に、標的DNAの濃度である変化に応じた変数を用いて、このミックスを実施例1に記述どおりに増幅した(本明細書の10倍希釈液)。テンプレートを加えない対照(NTC)は1組のみを実行した。
【0119】
このプロトコルを使用して、有益な暗消光剤として、ミトキサントロン、ダウノマイシン、DRAQ5(TM)及びApoptrak(TM)を特定した。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本発明の方法を用いて発生する相互作用を図示する。
【図2A】本発明に記載の増幅反応時の段階を図説する。
【図2B】本発明に記載の増幅反応時の段階を図説する。
【図3】本発明に記載の増幅反応の結果を図示する。図は、サイクル数に対して、アニーリング段階の最後に発生する蛍光の逆関数をプロットしたグラフであり、1:100の0.0193Mミトキサントロンがヒト胎盤のDNAの10倍希釈液3つに及ぼす効果を示す。
【図4】純粋な(0.0193M)ミトキサントロンの複数の10倍希釈液がCTW19プローブに及ぼす消光効果を示すグラフである。
【図5】純粋な(5mM)ダウノマイシンの複数の10倍希釈液がCTW19プローブに及ぼす消光効果を図示するグラフである。
【図6】様々な濃度の暗消光剤を含む蛍光がFAM標識プローブの存在下で実行されるPCR反応に及ぼす効果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)標的核酸配列を含有していると思われる試料に、前記標的配列に対して特異的な蛍光標識されたプローブと、該プローブ上の前記蛍光標識から生じる蛍光エネルギーを吸収することができるが可視光を発しないDNA二重鎖結合物質とを添加すること、
(b)このようにして形成された混合物を、標的核酸が増幅される増幅反応に供すること、
(c)前記プローブが前記標的配列にハイブリダイズする条件に前記試料を供すること、
(d)前記試料から得られる蛍光をモニターすること、
を含む、試料中の標的核酸配列の存在を検出する方法。
【請求項2】
前記DNA二重鎖結合物質が縮合共役環系を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記DNA二重鎖結合物質が、ミトキサントロン(1,4−ジヒドロキシ5,8−ビス[[2−[(2−ヒドロキシエチル)アミノ]エチル]アミノ]−9,10−アントラセンジオン)又は塩酸塩若しくは二塩酸塩等のその塩類、ノガラマイシン(2R−(2α,3β,4α,5β,6α,11β,13α,14α)]−11−[6−デオキシ−3−C−メチル−2,3,4−トリ−O−メチル−α−L−マンノピラノシル)オキシ]−4−(ジメチルアミノ)−3,4,5,6,9,11,12,13,14,16−デカヒドロ−3,5,8,10,13−ペンタヒドロキシ−6,13−ジメチル−9,16−ジオキソ−2,6−エポキシ−2H−ナフタセノ[1,2−b]オキソシン−14−カルボン酸メチルエステル)又はダウノマイシン(8S,−シス)−8−アセチル−10−[3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−α−L−lyxo−ヘキソピラノシル)オキシ]−7,8,9,10−テトラヒドロ−6,8,11−トリヒドロキシ−1−メトキシ−5,12−ナフタセンジオン)である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記DNA結合物質がミトキサントロンである請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記DNA結合物質が式(I)
【化1】

[式中、R、R、R及びRは、水素、X、NH−ANHR及びNH−A−N(O)R’R”から独立に選択される(式中、Xはヒドロキシ、ハロ、アミノ、C1−4アルコキシ又はC2−8アルカノイルオキシであり、AはNHとNHR又はN(O)R’R”との間の鎖長が少なくとも2炭素原子であるC2−4アルキレン基であり、R、R’及びR”は、C1−4アルキル及びC2−4ヒドロキシアルキル及びC2−4ジヒドロキシアルキルから各々独立に選択されるか(但し、窒素原子に結合した炭素原子はヒドロキシ基を有しておらず、何れの炭素原子も2個のヒドロキシ基によって置換されていないものとする。)、又はR’とR”は、両者で、C2−6アルキレン基であり、R’及びR”が結合する窒素原子とともに、3ないし7個の原子を有する複素環を形成しており、但し、R、R、R及びRのうち少なくとも1個はNH−A−N(O)R’R”基である。)。]
の化合物である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
工程(c)におけるプローブへのハイブリダイゼーションに先立って前記標的核酸が一本鎖にされる、請求項1から5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記増幅反応がポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である、請求項1から6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記増幅反応のすべてのサイクル中に前記プローブが前記標的核酸とハイブリダイズする、請求項1から7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記増幅反応全体を通して前記試料から生じた蛍光がモニターされる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
生成された蛍光データがプローブハイブリダイゼーションの割合を測定するために使用される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記蛍光データが前記試料中に存在する標的核酸の量を定量するために使用される、請求項8から10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記蛍光標識がローダミン色素、Cy5、フルオレセイン又はフルオレセイン誘導体である、請求項1から11の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記蛍光標識が前記プローブの末端領域に結合されている、請求項1から12の何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記蛍光標識が前記プローブの3’末端に結合されており、ポリメラーゼによるプローブの伸長を防止する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記プローブが伸長段階以外の増幅工程の段階の間に前記標的配列から無傷の状態で放出されるように、前記プローブが設計されている、請求項1から14の何れか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記プローブが、増幅工程の伸長段階の間に、前記ポリメラーゼの作用によって前記標的配列から無傷の状態で放出され、前記増幅反応が5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を欠いたポリメラーゼを用いて行われる、請求項1から14の何れか1項に記載の方法。
【請求項17】
(a)核酸ポリメラーゼと、(b)標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズできる少なくとも一つのプライマーと、(c)前記標的ポリヌクレオチド配列に結合でき、蛍光標識を含有するオリゴヌクレオチドプローブと、(d)前記蛍光標識から蛍光エネルギーを吸収することができ且つスペクトルの可視域で光を発しないDNA二重鎖結合物質と、の存在下において、標的ポリヌクレオチドに対して核酸増幅を実施すること、及び増幅反応中の蛍光の変化をモニターすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
1対の増幅プライマーを使用して前記増幅が好適に実施される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記核酸ポリメラーゼが耐熱性ポリメラーゼである、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
さらなる工程において、ハイブリダイゼーションアッセイが実施され、前記配列に特有のハイブリダイゼーション条件が測定される、請求項1から19の何れか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記条件が温度、電気化学的ポテンシャル又は酵素若しくは化学物質との反応である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記条件が温度である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
標的配列中の対立遺伝子変異又は多型を検出するために使用される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
a)配列を含有すると思われる試料に、標的配列に対して特異的な蛍光標識プローブと、該プローブ上の蛍光標識から生じる蛍光を吸収することができるがスペクトルの可視域において放射を発しないDNA二重鎖結合物質とを添加すること、
(b)前記プローブが前記標的配列にハイブリダイズする条件に前記試料を供すること、
(c)前記試料から生じる蛍光をモニターし、前記プローブの前記試料へのハイブリダイゼーションの結果として又は前記プローブと前記標的核酸配列との間で形成された前記二重鎖の不安定化の結果として蛍光が変化する、前記配列に特有の反応条件を決定すること、
を含む、配列の特徴を決定する方法。
【請求項25】
前記配列に特有の前記反応条件が、温度、電気化学的ポテンシャル又は酵素若しくは化学物質との反応である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記条件が温度である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
2個の配列から得られた結果が、の間の多型又は変異の存在を決定するために比較される、請求項24から26の何れか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記DNA二重鎖結合物質が、ミトキサントロン(1,4−ジヒドロキシ5,8−ビス[[2−[(2−ヒドロキシエチル)アミノ]エチル]アミノ]−9,10−アントラセンジオン)又は塩酸塩若しくは二塩酸塩等のその塩類、ノガラマイシン(2R−(2α,3β,4α,5β,6α,11β,13α,14α))−11−[6−デオキシ−3−C−メチル−2,3,4−トリ−O−メチル−α−L−マンノピラノシル]オキシ]−4−(ジメチルアミノ)−3,4,5,6,9,11,12,13,14,16−デカヒドロ−3,5,8,10,13−ペンタヒドロキシ−6,13−ジメチル−9,16−ジオキソ−2,6−エポキシ−2H−ナフタセノ[1,2−b]オキソシン−14−カルボン酸メチルエステル)又はダウノマイシン(8S,−シス)−8−アセチル−10−[3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−α−L−lyxo−ヘキソピラノシル]オキシ]−7,8,9,10−テトラヒドロ−6,8,11−トリヒドロキシ−1−メトキシ−5,12−ナフタセンジオン)である、請求項24から27の何れか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記DNA二重鎖結合物質が請求項5に定義した式(IA)の化合物である、請求項24から27の何れか1項に記載の方法。
【請求項30】
(i)蛍光エネルギーを吸収することができるがスペクトラムの可視域で放射を発しないDNA二重鎖結合物質と、(ii)標的ヌクレオチド配列に特異的な蛍光標識プローブ又は(iii)増幅反応を実施するのに必要な1若しくは複数の試薬のうち何れかと、を備えた、請求項1から29の何れか1項に記載の方法で使用するためのキット。
【請求項31】
(iii)を含有し、前記試薬がプライマー、DNAポリメラーゼ、緩衝液、又はPCRを改良することが知られた補助剤から選択される、請求項30に記載のキット。
【請求項32】
前記DNA二重鎖結合物質が、ミトキサントロン(1,4−ジヒドロキシ5,8−ビス[[2−[(2−ヒドロキシエチル)アミノ]エチル]アミノ]−9,10−アントラセンジオン)又は塩酸塩若しくは二塩酸塩等のその塩類、ノガラマイシン(2R−(2α,3β,4α,5β,6α,11β,13α,14α)]−11−[6−デオキシ−3−C−メチル−2,3,4−トリ−O−メチル−α−L−マンノピラノシル)オキシ]−4−(ジメチルアミノ)−3,4,5,6,9,11,12,13,14,16−デカヒドロ−3,5,8,10,13−ペンタヒドロキシ−6,13−ジメチルl−9,16−ジオキソ−2,6−エポキシ−2H−ナフタセノ[1,2−b]オキソシン−14−カルボン酸メチルエステル)又はダウノマイシン(8S,−シス)−8−アセチル−10−[3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−α−L−lyxo−ヘキソピラノシル)オキシ]−7,8,9,10−テトラヒドロ−6,8,11−トリヒドロキシ−1−メトキシ−5,12−ナフタセンジオン)である、請求項30又は31に記載のキット。
【請求項33】
前記DNA二重鎖結合物質が請求項5に定義した式(IA)の化合物である、請求項30又は31に記載のキット。
【請求項34】
(i)及び(ii)の両方を備えた、請求項28から33の何れか1項に記載のキット。
【請求項35】
試料中の標的核酸配列の存在を検出するための方法における、蛍光エネルギーを吸収できるが可視光を発しないDNA二重鎖結合物質の使用。
【請求項36】
前記DNA二重鎖結合物質が共役芳香環系を含む、請求項35に記載の使用。
【請求項37】
前記DNA二重鎖結合物質がアントラサイクリン又はアントラキノンを含む、請求項36に記載の使用。
【請求項38】
前記DNA二重鎖結合物質が必要に応じて置換された構造(I)のアントラキノン
【化2】

(式中、R、R、R及びRは、水素、官能基、又は例えば官能基によって必要に応じて置換されたヒドロカルビル基から独立に選択されるか、又は、RとR又はRとRが、必要に応じて互いに結合されて、ヘテロ原子を必要に応じて含有し及び/又は官能基又はヒドロカルビル基によって必要に応じて置換された環を形成する。)である、請求項35乃至37の何れか1項に記載の使用。
【請求項39】
前記DNA二重鎖結合物質が、ミトキサントロン(1,4−ジヒドロキシ5,8−ビス[[2−[(2−ヒドロキシエチル)アミノ]エチル]アミノ]−9,10−アントラセンジオン)又は塩酸塩若しくは二塩酸塩等のその塩類、ノガラマイシン(2R−(2α,3β,4α,5β,6α,11β,13α,14α))−11−[6−デオキシ−3−C−メチル−2,3,4−トリ−O−メチル−α−L−マンノピラノシル]オキシ]−4−(ジメチルアミノ)−3,4,5,6,9,11,12,13,14,16−デカヒドロ−3,5,8,10,13−ペンタヒドロキシ−6,13−ジメチル−9,16−ジオキソ−2,6−エポキシ−2H−ナフタセノ[1,2−b]オキソシン−14−カルボン酸メチルエステル)又はダウノマイシン(8S,−シス)−8−アセチル−10−[3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−α−L−lyxo−ヘキソピラノシル]オキシ]−7,8,9,10−テトラヒドロ−6,8,11−トリヒドロキシ−1−メトキシ−5,12−ナフタセンジオン)である、請求項35から38の何れか1項に記載の使用。
【請求項40】
前記DNA二重鎖結合物質が請求項5に定義した式(IA)の化合物である、請求項35から38の何れか1項に記載の使用。
【請求項41】
前記DNA二重鎖結合物質がミトキサントロンである、請求項39に記載の使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)標的核酸配列を含有していると思われる試料に、前記標的配列に対して特異的な蛍光標識されたプローブと、該プローブ上の前記蛍光標識から生じる蛍光エネルギーを吸収することができるが可視光を発しないDNA二重鎖結合物質とを添加すること、
(b)このようにして形成された混合物を、標的核酸が増幅される増幅反応に供すること、
(c)前記プローブが前記標的配列にハイブリダイズする条件に前記試料を供すること、
(d)前記試料から得られる蛍光をモニターすること、
を含む、試料中の標的核酸配列の存在を検出する方法。
【請求項2】
前記DNA二重鎖結合物質が縮合共役環系を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記DNA二重鎖結合物質が、トキサントロン(1,4−ジヒドロキシ5,8−ビス[[2−[(2−ヒドロキシエチル)アミノ]エチル]アミノ]−9,10−アントラセンジオン)又は塩酸塩若しくは二塩酸塩等のその塩類、又はノガラマイシン(2R−(2α,3β,4α,5β,6α,11β,13α,14α)]−11−[6−デオキシ−3−C−メチル−2,3,4−トリ−O−メチル−α−L−マンノピラノシル)オキシ]−4−(ジメチルアミノ)−3,4,5,6,9,11,12,13,14,16−デカヒドロ−3,5,8,10,13−ペンタヒドロキシ−6,13−ジメチル−9,16−ジオキソ−2,6−エポキシ−2H−ナフタセノ[1,2−b]オキソシン−14−カルボン酸メチルエステル)である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記DNA結合物質がミトキサントロンである請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記DNA結合物質が式(I)
【化1】

[式中、R、R、R及びRは、水素、X、NH−ANHR及びNH−A−N(O)R’R”から独立に選択される(式中、Xはヒドロキシ、ハロ、アミノ、C1−4アルコキシ又はC2−8アルカノイルオキシであり、AはNHとNHR又はN(O)R’R”との間の鎖長が少なくとも2炭素原子であるC2−4アルキレン基であり、R、R’及びR”は、C1−4アルキル及びC2−4ヒドロキシアルキル及びC2−4ジヒドロキシアルキルから各々独立に選択されるか(但し、窒素原子に結合した炭素原子はヒドロキシ基を有しておらず、何れの炭素原子も2個のヒドロキシ基によって置換されていないものとする。)、又はR’とR”は、両者で、C2−6アルキレン基であり、R’及びR”が結合する窒素原子とともに、3ないし7個の原子を有する複素環を形成しており、但し、R、R、R及びRのうち少なくとも1個はNH−A−N(O)R’R”基である。)。]
の化合物である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
工程(c)におけるプローブへのハイブリダイゼーションに先立って前記標的核酸が一本鎖にされる、請求項1から5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記増幅反応がポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である、請求項1から6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記増幅反応のすべてのサイクル中に前記プローブが前記標的核酸とハイブリダイズする、請求項1から7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記増幅反応全体を通して前記試料から生じた蛍光がモニターされる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
生成された蛍光データがプローブハイブリダイゼーションの割合を測定するために使用される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記蛍光データが前記試料中に存在する標的核酸の量を定量するために使用される、請求項8から10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記蛍光標識がローダミン色素、Cy5、フルオレセイン又はフルオレセイン誘導体である、請求項1から11の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記蛍光標識が前記プローブの末端領域に結合されている、請求項1から12の何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記蛍光標識が前記プローブの3’末端に結合されており、ポリメラーゼによるプローブの伸長を防止する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記プローブが伸長段階以外の増幅工程の段階の間に前記標的配列から無傷の状態で放出されるように、前記プローブが設計されている、請求項1から14の何れか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記プローブが、増幅工程の伸長段階の間に、前記ポリメラーゼの作用によって前記標的配列から無傷の状態で放出され、前記増幅反応が5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を欠いたポリメラーゼを用いて行われる、請求項1から14の何れか1項に記載の方法。
【請求項17】
(a)核酸ポリメラーゼと、(b)標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズできる少なくとも一つのプライマーと、(c)前記標的ポリヌクレオチド配列に結合でき、蛍光標識を含有するオリゴヌクレオチドプローブと、(d)前記蛍光標識から蛍光エネルギーを吸収することができ且つスペクトルの可視域で光を発しないDNA二重鎖結合物質と、の存在下において、標的ポリヌクレオチドに対して核酸増幅を実施すること、及び増幅反応中の蛍光の変化をモニターすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
1対の増幅プライマーを使用して前記増幅が好適に実施される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記核酸ポリメラーゼが耐熱性ポリメラーゼである、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
さらなる工程において、ハイブリダイゼーションアッセイが実施され、前記配列に特有のハイブリダイゼーション条件が測定される、請求項1から19の何れか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記条件が温度、電気化学的ポテンシャル又は酵素若しくは化学物質との反応である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記条件が温度である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
標的配列中の対立遺伝子変異又は多型を検出するために使用される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
a)配列を含有すると思われる試料に、標的配列に対して特異的な蛍光標識プローブと、該プローブ上の蛍光標識から生じる蛍光を吸収することができるがスペクトルの可視域において放射を発しないDNA二重鎖結合物質とを添加すること、
(b)前記プローブが前記標的配列にハイブリダイズする条件に前記試料を供すること、
(c)前記試料から生じる蛍光をモニターし、前記プローブの前記試料へのハイブリダイゼーションの結果として又は前記プローブと前記標的核酸配列との間で形成された前記二重鎖の不安定化の結果として蛍光が変化する、前記配列に特有の反応条件を決定すること、
を含む、配列の特徴を決定する方法。
【請求項25】
前記配列に特有の前記反応条件が、温度、電気化学的ポテンシャル又は酵素若しくは化学物質との反応である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記条件が温度である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
2個の配列から得られた結果が、その間の多型又は変異の存在を決定するために比較される、請求項24から26の何れか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記DNA二重鎖結合物質が、ミトキサントロン(1,4−ジヒドロキシ5,8−ビス[[2−[(2−ヒドロキシエチル)アミノ]エチル]アミノ]−9,10−アントラセンジオン)又は塩酸塩若しくは二塩酸塩等のその塩類、又はノガラマイシン(2R−(2α,3β,4α,5β,6α,11β,13α,14α))−11−[6−デオキシ−3−C−メチル−2,3,4−トリ−O−メチル−α−L−マンノピラノシル]オキシ]−4−(ジメチルアミノ)−3,4,5,6,9,11,12,13,14,16−デカヒドロ−3,5,8,10,13−ペンタヒドロキシ−6,13−ジメチル−9,16−ジオキソ−2,6−エポキシ−2H−ナフタセノ[1,2−b]オキソシン−14−カルボン酸メチルエステル)である、請求項24から27の何れか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記DNA二重鎖結合物質が請求項5に定義した式(IA)の化合物である、請求項24から27の何れか1項に記載の方法。
【請求項30】
(i)蛍光エネルギーを吸収することができるがスペクトラムの可視域で放射を発しないDNA二重鎖結合物質と、(ii)標的ヌクレオチド配列に特異的な蛍光標識プローブ又は(iii)増幅反応を実施するのに必要な1若しくは複数の試薬のうち何れかと、を備えた、請求項1から29の何れか1項に記載の方法で使用するためのキット。
【請求項31】
(iii)を含有し、前記試薬がプライマー、DNAポリメラーゼ、緩衝液、又はPCRを改良することが知られた補助剤から選択される、請求項30に記載のキット。
【請求項32】
前記DNA二重鎖結合物質が、ミトキサントロン(1,4−ジヒドロキシ5,8−ビス[[2−[(2−ヒドロキシエチル)アミノ]エチル]アミノ]−9,10−アントラセンジオン)又は塩酸塩若しくは二塩酸塩等のその塩類、又はノガラマイシン(2R−(2α,3β,4α,5β,6α,11β,13α,14α)]−11−[6−デオキシ−3−C−メチル−2,3,4−トリ−O−メチル−α−L−マンノピラノシル)オキシ]−4−(ジメチルアミノ)−3,4,5,6,9,11,12,13,14,16−デカヒドロ−3,5,8,10,13−ペンタヒドロキシ−6,13−ジメチルl−9,16−ジオキソ−2,6−エポキシ−2H−ナフタセノ[1,2−b]オキソシン−14−カルボン酸メチルエステル)である、請求項30又は31に記載のキット。
【請求項33】
前記DNA二重鎖結合物質が請求項5に定義した式(IA)の化合物である、請求項30又は31に記載のキット。
【請求項34】
(i)及び(ii)の両方を備えた、請求項30から33の何れか1項に記載のキット。
【請求項35】
標的核酸を増幅することによって試料中の標的核酸配列の存在を検出するための方法における、蛍光エネルギーを吸収できるが可視光を発しないDNA二重鎖結合物質の使用。
【請求項36】
前記DNA二重鎖結合物質が共役芳香環系を含む、請求項35に記載の使用。
【請求項37】
前記DNA二重鎖結合物質がアントラサイクリン又はアントラキノンを含む、請求項36に記載の使用。
【請求項38】
前記DNA二重鎖結合物質が必要に応じて置換された構造(I)のアントラキノン
【化2】

(式中、R、R、R及びRは、水素、官能基、又は例えば官能基によって必要に応じて置換されたヒドロカルビル基から独立に選択されるか、又は、RとR又はRとRが、必要に応じて互いに結合されて、ヘテロ原子を必要に応じて含有し及び/又は官能基又はヒドロカルビル基によって必要に応じて置換された環を形成す。)である、請求項35乃至37の何れか1項に記載の使用。
【請求項39】
前記DNA二重鎖結合物質が、ミトキサントロン(1,4−ジヒドロキシ5,8−ビス[[2−[(2−ヒドロキシエチル)アミノ]エチル]アミノ]−9,10−アントラセンジオン)又は塩酸塩若しくは二塩酸塩等のその塩類、又はノガラマイシン(2R−(2α,3β,4α,5β,6α,11β,13α,14α))−11−[6−デオキシ−3−C−メチル−2,3,4−トリ−O−メチル−α−L−マンノピラノシル]オキシ]−4−(ジメチルアミノ)−3,4,5,6,9,11,12,13,14,16−デカヒドロ−3,5,8,10,13−ペンタヒドロキシ−6,13−ジメチル−9,16−ジオキソ−2,6−エポキシ−2H−ナフタセノ[1,2−b]オキソシン−14−カルボン酸メチルエステル)である、請求項35から38の何れか1項に記載の使用。
【請求項40】
前記DNA二重鎖結合物質が請求項5に定義した式(IA)の化合物である、請求項35から38の何れか1項に記載の使用。
【請求項41】
前記DNA二重鎖結合物質がミトキサントロンである、請求項39に記載の使用。
【請求項42】
(a)標的核酸配列を含有していると思われる試料に、前記標的配列に対して特異的な蛍光標識されたプローブと、ダウノマイシン(8S,−シス)−8−アセチル−10−[3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−α−L−lyxo−ヘキソピラノシル)オキシ]−7,8,9,10−テトラヒドロ−6,8,11−トリヒドロキシ−1−メトキシ−5,12−ナフタセンジオンとを添加すること、
(b)このようにして形成された混合物を、標的核酸が増幅される増幅反応に供すること、
(c)前記プローブが前記標的配列にハイブリダイズする条件に前記試料を供すること、
(d)前記試料から得られる蛍光をモニターすること、
を含む、試料中の標的核酸配列の存在を検出する方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−501836(P2006−501836A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−542659(P2004−542659)
【出願日】平成15年10月10日(2003.10.10)
【国際出願番号】PCT/GB2003/004412
【国際公開番号】WO2004/033726
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(390040604)イギリス国 (58)
【氏名又は名称原語表記】THE SECRETARY OF STATE FOR DEFENCE IN HER BRITANNIC MAJESTY’S GOVERNMENT OF THE UNETED KINGDOM OF GREAT BRITAIN AND NORTHERN IRELAND
【Fターム(参考)】