説明

検出センサ及びセンサシステム

【課題】検出信号レベルと比較するしきい値を表示する構成において、ヒステリシスを有したしきい値を適切に表示することができる検出センサ及びセンサユニットを提供する。
【解決手段】しきい値を設定すると、ヒステリシスを有するように上側のON点しきい値S1と下側のOFF点しきい値S2とが設定される。しきい値の表示方法としてON点しきい値S1とOFF点しきい値S2の自動切替表示を設定した場合、受光量Dと現在の出力との関係に基づいて表示しきい値が比較対象のしきい値に自動的に切替わる。これにより、表示されるしきい値と出力とが対応するようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出信号レベルと所定のしきい値とを比較して生成した検出信号を出力すると共に所定のしきい値を表示する検出センサ及びこのような機能を有したセンサユニットを備えたセンサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
検出エリアにおける物体の存在の有無などに応じて検出信号を出力する光センサにおいては、例えば検出エリアに投光してその透過光あるいは反射光を検出し、その光の強度に比例した電気信号のレベルをしきい値と比較して検出信号を生成して出力している。
例えば、受光信号の強度に対応する検出レベルがしきい値レベル以上のときに検出対象物が存在する状態であることを検出し、検出レベルがしきい値レベル未満のときには検出対象物が存在しない状態であることを検出する。
【0003】
ところで、一般に検出センサでは内部回路で生じるノイズによって検出信号レベルが微少に変動しているので、例えば検出信号レベルがしきい値と非常に近い場合、その内部ノイズの変動によってしきい値に対して上回ったり、下回ったりを繰り返すことがある。このため、検出対象物が存在する検出状態と検出対象物が存在しない非検出状態とが繰り返されることになり、検出出力が極めて不安定ないわゆるチャタリング状態となってしまう場合がある。
【0004】
これを避けるための構成として次のようなものがある。例えば、検出センサのしきい値を設定すると、その比較回路にはヒステリシス特性が設けられており、設定されたしきい値に対して、検出出力がオフからオンへ反転する際のON点しきい値とオンからオフへ反転する際のOFF点しきい値を異なるレベルに設定するものである。
【0005】
例えば、検出対象物が存在するときの検出レベルと存在しないときの検出レベルの中間レベルに対して所定レベルプラスしたレベルをON点しきい値、マイナスしたレベルをOFF点しきい値とする。一旦検出レベルがON点しきい値を上回ると、次に検出レベルがOFF点しきい値を下回らない限り検出状態が反転しないので、不安定な検出状態を避けることができる(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−24314号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したような検出センサでしきい値を表示する場合は、ヒステリシスを有するように設定された2つのしきい値のうち一方のしきい値を固定表示するようにしているので、しきい値の表示は例えば上側のON点しきい値のみが表示される。この場合、受光信号レベルも同時に表示されるので、受光信号レベルとしきい値の比較でもって出力される検出信号レベルと実際の表示とが対応しなくなり、作業者が検出に違和感を覚えるという問題がある。
【0007】
一方、光センサがライトオン(受光時オン出力)モードに設定されている状態では、検出信号レベルが上側のしきい値を上回った場合に検出状態となり、検出信号レベルが下側のしきい値を下回った場合に非検出状態となる。これに対して、光センサがダークオン(非受光時オン出力)モードに設定された状態では、検出信号レベルが下側のしきい値を下回った場合に検出状態となり、検出信号レベルが上側のしきい値を上回った場合に非検出状態となる。このような検出状態であっても、しきい値の表示は上側のしきい値に固定されているので、上述した場合と同様に、作業者が違和感を覚えることになる。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、検出信号レベルと比較するしきい値を表示する構成において、ヒステリシスを有したしきい値を適切に表示することができる検出センサ及びセンサユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、検出対象の物理量を検知しその物理量に応じた検出信号を出力する物理量検知手段と、しきい値と前記検出信号レベルとの比較を行う比較手段と、この比較手段の比較結果によって前記検出対象の検出を行う検出手段と、表示部と、この表示部へ前記しきい値を表示させる表示制御手段と、前記しきい値として、所定のヒステリシス幅を有するように高レベル側の第一しきい値と低レベル側の第二しきい値とを設定するしきい値設定手段と、前記検出信号レベルが前記第一しきい値以下の状態から前記第一しきい値を上回った場合は、前記比較手段に対して前記検出信号レベルと前記第二しきい値とを比較させ、前記検出信号レベルが前記第二しきい値以上の状態から前記第二しきい値を下回った場合は、前記比較手段に対して前記検出信号レベルと前記第一しきい値とを比較させるしきい値制御手段とを備えた検出センサにおいて、前記表示制御手段は、前記比較手段が前記検出信号レベルと前記第一しきい値とを比較しているときは前記第一しきい値を、前記比較手段が前記検出信号レベルと前記第二しきい値とを比較しているときは前記第二しきい値を、それぞれ前記表示部に切替表示させるものである(請求項1)。
【0010】
上記構成において、前記検出信号レベルを周期的にサンプリングし、その移動平均相当値を求める算出手段と、この算出手段で求められる移動平均相当値に基づいて前記第一しきい値及び前記第二しきい値を補正する補正手段とを備え、前記表示制御手段は、前記表示部に前記第一しきい値を表示させるときは前記補正手段で補正された第一しきい値を表示し、前記表示部に前記第二しきい値を表示させるときは前記補正手段で補正された第二しきい値を表示するようにしてもよい(請求項2)。
【0011】
また、前記表示制御手段は、前記表示部に前記第一しきい値または前記第二しきい値を表示する際に、それぞれ異なる表示色で表示させるようにしてもよい(請求項3)。
また、自動切替表示と固定表示を選択可能な表示選択手段を備え、前記表示制御手段は、前記自動切替表示が選択されたときは、前記比較手段が前記検出信号レベルと前記第一しきい値とを比較しているときは前記第一しきい値を、前記比較手段が前記検出信号レベルと前記第二しきい値とを比較しているときは前記第二しきい値を、それぞれ前記表示部に表示させ、前記固定表示が選択されたときは、前記第一しきい値または前記第二しきい値の何れかを固定表示させるようにしてもよい(請求項4)。
【0012】
本発明は、検出対象の物理量を検知しその物理量に応じた検出信号を出力する物理量検知手段と、しきい値と前記検出信号レベルとの比較を行う比較手段と、この比較手段の比較結果によって前記検出対象の検出を行う検出手段と、表示部と、この表示部へ前記しきい値を表示させる表示制御手段と、前記しきい値として、所定のヒステリシス幅を有するように高レベル側の第一しきい値と低レベル側の第二しきい値とを設定するしきい値設定手段と、前記検出信号レベルが前記第一しきい値以下の状態から前記第一しきい値を上回った場合は、前記比較手段に対して前記検出信号レベルと前記第二しきい値とを比較させ、前記検出信号レベルが前記第二しきい値以上の状態から前記第二しきい値を下回った場合は、前記比較手段に対して前記検出信号レベルと前記第一しきい値とを比較させるしきい値制御手段と、前記検出信号レベルが前記第一しきい値以下の状態から前記第一しきい値を上回った場合は、前記検出対象を検出したとすると共に、前記検出信号レベルが前記第二しきい値以上の状態から前記第二しきい値を下回った場合は、前記検出対象が非検出となったとする第一モードと、前記検出信号レベルが前記第二しきい値を上回った状態から前記第二しきい値以下となった場合は、前記検出対象を検出したとすると共に、前記検出信号レベルが前記第一しきい値以下の状態から前記第一しきい値を上回った場合は、前記検出対象を非検出したとする第ニモードとを切替えるモード切替手段を備えた検出センサにおいて、前記表示制御手段は、前記第一モードが選択された場合は前記第一しきい値を、前記第ニモードが選択された場合は前記第二しきい値を前記表示部に切替表示させるものである(請求項5)。
【0013】
上記構成において、前記表示制御手段は、前記比較手段が前記検出億号レベルと前記第一しきい値とを比較しているときは前記第一しきい値を、前記比較手段が前記検出信号レベルと前記第二しきい値とを比較しているときは前記第二しきい値を、それぞれ前記表示部に表示させるようにしてもよい(請求項6)。
【0014】
本発明は、検出対象の物理量を検知しその物理量に応じた検出信号を出力する物理量検知手段と、しきい値と前記検出信号レベルとの比較を行う比較手段と、前記しきい値として、所定のヒステリシス幅を有するように高レベル側の第一しきい値と低レベル側の第二しきい値とを設定するしきい値設定手段と、前記比較手段の比較結果によって前記検出対象の検出を行う検出手段と、前記検出信号レベルが前記第一しきい値以下の状態から前記第一しきい値を上回った場合は、前記比較手段に対して前記検出信号レベルと前記第二しきい値とを比較させ、前記検出信号レベルが前記第二しきい値以上の状態から前記第二しきい値を下回った場合は、前記比較手段に対して前記検出信号レベルと前記第一しきい値とを比較させるしきい値制御手段とを備えた一つまたは複数のセンサユニットと、表示装置と、前記表示装置の表示内容を制御する表示制御手段を備える制御ユニットとからなるセンサシステムにおいて、前記制御ユニットは、前記センサユニットの前記しきい値制御手段の制御内容を読み取り、前記比較手段が前記検出信号レベルと前記第一しきい値とを比較しているときは前記第一しきい値を、前記比較手段が前記検出信号レベルと前記第二しきい値とを比較しているときは前記第二しきい値を、それぞれ前記表示装置に切替表示させるものである(請求項7)。
【発明の効果】
【0015】
従来は、ヒステリシスを有するように設定された2つのしきい値のうち一方のしきい値を固定表示しているので、比較手段が表示されていない他のしきい値と検出信号レベルとを比較するような状態であっても、作業者が他のしきい値を認識することができず、検出信号レベルが表示されているしきい値をまたぐにしても検出結果が反転しないことによる違和感を覚えるものであったが、請求項1の発明では、比較手段でのしきい値が切替えられると、それに追従して表示されるしきい値も切替えられるので、表示されるしきい値と比較結果が一致するようになり、作業者の違和感が解消される。
【0016】
請求項2の発明によれば、検出信号レベルが温度特性などの要因で変動するのにつれて第一、第二しきい値を自動補正する構成であっても、しきい値が補正されるにつれて表示される表示内容も変更されるので、表示内容と実際の検出状態とが一致しないという違和感が解消される。
【0017】
請求項3の発明によれば、第一しきい値と第二しきい値との表示が切替わるに際して表示色が変わるので、作業者は第一しきい値と第二しきい値との切替えがなされたことを容易に認識することができる。
【0018】
請求項4の発明によれば、従来のしきい値の固定表示も行なうこともできるので、ユーザの種々の要望に応えることができる。
請求項5の発明によれば、従来においては、第一モードと第ニモードを切替えても表示されるしきい値は例えば第一しきい値に固定表示されていたが、モードの切替えに応じて表示されるしきい値が第一しきい値と第二しきい値に自動的に切替表示されるので、例えば検出対象を検出するためのしきい値を確認したい場合にも、モードに応じて所望の表示が自動的になされる。
【0019】
請求項6の発明によれば、モード切替によって表示されるしきい値が切替えられた後も、検出状態に応じて適切なしきい値に切替表示されるので、常に自動的に最適なしきい値表示がなされる。
請求項7の発明によれば、外部の表示装置でしきい値の表示確認を行う構成であっても、検出状態に応じてしきい値が第一しきい値と第二しきい値との間で切替えられたときに、表示されるしきい値もそれにつれて切替表示されるので、表示内容とセンサの検出結果との不一敦による違和感は解消される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の検出センサをデジタルファイバセンサに適用した一実施例について図面を参照して説明する。図2は、デジタルファイバセンサの外観斜視図を示している。デジタルファイバセンサ(検出センサに相当)1の筐体2の上面部2aには、動作表示灯3、安定表示灯4、第1のモード表示部5、第2のモード表示部6、表示部7、モードキー8及びジョグスイッチ9が配設されている。
【0021】
図3に示すように、第1のモード表示部5は、検出モードであるときに点灯する「RUN」表示灯5a、しきい値設定モードであるときに点灯する「TEACH」表示灯5b及びしきい値を微調整するモードであるときに点灯する「ADJ」表示灯5cが配列されて構成されている。第2のモード表示部6は、受光時オンか非受光時オンかを設定するときに点灯する「L/D ON」表示灯6a、タイマを使用するか否かを設定するときに点灯する「TIMER」表示灯6b及びメモリ機能などの高度な機能を設定するときに点灯する「PRO」表示灯6cが配列されて構成されている。
【0022】
表示部7は、第1のデジタル表示部(表示部に相当)10と第2のデジタル表示部11とから構成されている。第1のデジタル表示部10は、4個の7セグメントLED10a〜10dを備え、4桁の表示が可能に構成されている。第2のデジタル表示部11は、4個の7セグメントLED11a〜11dを備え、4桁の表示が可能に構成されている。
【0023】
図2に戻って、モードキー8は、作業者がモードを選択するキーであり、ジョグスイッチ9は、作業者が選択されたモード内の詳細な項目を設定したり数値を変更したりするスイッチである。
筐体2の前面部2bには、先端部に投光ヘッド12aを有した投光用ファイバ12、及び先端部に受光ヘッド13aを有した受光用ファイバ13が取付可能となっている。尚、この種の透過形のファイバに代えて先端に投受光ヘッドを有した反射形のファイバを取付可能となっている。
筐体2の両側面部2c,2dには、光通信用窓14,15が配設されている。この光通信用窓14,15は、複数のデジタルファイバセンサ1が隣接配置されている場合に隣接する他のデジタルファイバセンサ1との間で送受信される光信号が通過する。
【0024】
図1は、上記したデジタルファイバセンサ1の電気的な構成を機能ブロック図として示している。デジタルファイバセンサ1は、マイクロコンピュータからなる制御回路(比較手段、検出手段、表示制御手段、しきい値設定手段、しきい値制御手段、モード切替手段に相当)16に、各表示灯3,4,5a〜5c,6a〜6cの点灯動作及び各デジタル表示部10,11の表示動作を制御する表示制御回路17、投光素子18を駆動する駆動回路19、受光素子(物理量検知手段に相当)20から出力された検出信号を増幅する増幅回路21、隣接する他のデジタルファイバセンサ1との間で信号を光通信により送受信する光通信回路22、出力信号を外部に出力する出力回路23が接続されて構成されている。
【0025】
次に上記構成の作用について説明する。
作業者は、デジタルファイバセンサ1を使用して所望の検出対象物を検出する場合は、検出動作或いは出力動作するために必要な設定を行なう必要がある。
所望のモードを設定したい場合は、モードキー8に対する操作により図4に示すように第1のデジタル表示部10に表示されるモードを順に切替え、所望のモードを表示した状態でジョグスイッチ9を押圧操作することにより設定対象となるモードを決定することができる。
【0026】
デジタルファイバセンサ1をライトオン(受光時オン出力)モードで使用する場合は、「TEACH」モードで所望のしきい値を設定すると共に、必要に応じて「ADJ」モードで設定したしきい値の微調整を行なうと共に、「TIMER」モードによりタイマ動作を設定してから、「RUN」モードを設定する。これにより、通常検出動作となり、設定条件に基づいて検出動作が行なわれると共に出力動作が行なわれる。
【0027】
さて、例えば検出状態と非検出状態とにおける受光信号レベルの幅が小さくて、出力が不安定となる場合は、しきい値のヒステリシスが大きくなるように、次のようにして設定変更する。
モードキー8に対する操作により第1のデジタル表示部10に「PRO」を表示した状態でジョグスイッチ9に対する操作により「PRO1」を表示させ、その状態でジョグスイッチ9を押圧操作して設定対象のモードを決定する。
【0028】
次に、ジョグスイッチ9に対する揺動操作によりヒステリシスを設定することを示す「HYS」を表示した状態でジョグスイッチ9を押圧操作することによりヒステリシスを設定することを決定してから、ジョグスイッチ9に対する揺動操作によりヒステリシスの大きさを設定する。この場合、ヒステリシスの大きさは、ヒステリシスの大きさの大小関係である「小さい」、「標準」、「大きい」の3段階を設定可能で、各設定に対応して第1のデジタル表示部10には「H−01」、「H−02」、「H−03」が表示される。初期値としては、「標準」が設定されている。
【0029】
ジョグスイッチ9に対する揺動操作により所望のヒステリシスの大きさが表示された状態でジョグスイッチ9を押圧操作することによりヒステリシスの大きさを確定することができる。そして、モードキー8を3回または2秒以上押圧操作することにより、「RUN」モードに移行して通常検出状態に復帰することができる。
【0030】
ところで、上述のようにして設定したしきい値には、ヒステリシスに対応してオン出力となる上側のON点しきい値S1とオフ出力となる下側のOFF点しきい値S2とが設定されている。この場合、初期設定時においては、ON点しきい値が表示されるように設定されている。
【0031】
しかしながら、ユーザによっては、OFF点しきい値が表示されることを望んだり、比較対象となるON点しきい値S1(第一しきい値に相当)とOFF点しきい値(第二しきい値に相当)とが表示されることを望んだりして、その要望は様々である。そこで、本実施例では、次のようにしてユーザの要望を満足するようにした。
【0032】
即ち、本実施例では、「PRO」モードの一つとして表示しきい値を選択可能となっている。以下に、表示可能なしきい値と、そのときに表示される表示内容を示す。
(1)ON点しきい値S1……「on」
(2)OFF点しきい値S2……「oFF」
(3)ON点しきい値S1とOFF点しきい値S2とを自動切替え……「turn」
このような表示しきい値は、図5に示すようにジョグスイッチ9に対する揺動操作により切替えることができる。
【0033】
図8は、上記(1)のON点しきい値S1を固定表示するように設定した場合におけるデジタルファイバセンサ1の制御回路16の動作を示すフローチャートである。
尚、図8は、ライトオンが設定されている場合を示している。つまり、「L/D ON」モードでジョグスイッチ9に対する揺動操作でライトオン(受光時オン出力、第一モードに相当)とダークオン(非受光時オン出力、第二モードに相当)とを切替え可能となっている。初期設定はライトオンが設定されていることから、ライトオンで使用する場合は、通常はその設定を行なう必要はない。但し、ダークオンが設定されている場合は、ライトオンの設定を行なう必要がある。
【0034】
図8において、デジタルファイバセンサ1の制御回路16は、投光タイミングとなったときは(A1:YES)、投光素子18に通電することにより投光すると同時に(A2)、受光素子20から受光量Dを取得してから(A3)、フラグがセットされているかを判断する(A4)。このフラグは、出力状態を示すもので、オフ出力の場合はセットされ、オン出力の場合はリセットされている。
図6は、ライトオンが設定されている場合の受光量Dとしきい値、出力、フラグ、表示しきい値との関係を示している。この図6に示すように受光量DがOFF点しきい値S2よりも小さい当初においてはオフ出力となっている。
【0035】
制御回路16は、図8に示すようにフラグがセットされていることから(A4:YES)、受光量DがON点しきい値S1以上となったかを判断する(A5)。この場合、図6に示すt1までは受光量DはON点しきい値S1を下回っているので(A5:NO)、受光量D及びON点しきい値S1を表示する(A9)。また、オフ出力を継続すると共に(A10)、フラグのセット状態を継続する(A11)。
【0036】
そして、受光量Dが上昇し、図6に示すt1となると、受光量DがON点しきい値S1となるので(A5:YES)、受光量D及びON点しきい値S1を表示する(A6)。また、オン出力すると共に(A7)、フラグをリセットする(A8)。
以上の動作により、図6に示すt1でデジタルファイバセンサ1からの出力がオフ出力からオン出力に切替わる。また、第1のデジタル表示部10にはON点しきい値S1の表示状態が継続される。
【0037】
次に、制御回路16は、フラグがリセットされていることから(A4:NO)、受光量DがOFF点しきい値S2以下となったかを判断する(A12)。図6に示すt1以降のように受光量DがOFF点しきい値S2を上回っている状態では、ステップA12において「NO」と判断し、受光量D及びON点しきい値S1の表示状態を継続する(A16)。また、オン出力を継続すると共に(A17)、フラグのリセット状態を継続する(A18)
受光量Dが減少し、図6に示すt2となると、受光量DがOFF点しきい値S2となるので(A12:YES)、受光量D及びON点しきい値S1の表示状態を継続する(A13)。また、オフ出力すると共に(A14)、フラグをセットする(A15)。
【0038】
以上の動作により、図6に示す当初と同様に、比較対象のしきい値がON点しきい値S1に設定される。
以上のような動作の繰返しにより、受光量Dの変化に応じて出力が変化すると共に、比較対象のしきい値が切替わる。この場合、第1のデジタル表示部10にはON点しきい値S1が固定表示されている。
【0039】
一方、上記(2)のOFF点しきい値S2の固定表示に設定した場合は、第1のデジタル表示部10にはON点しきい値S1に代えてOFF点しきい値S2が固定表示される(図6参照)。また、ダークオンモードを設定した場合は、図8におけるステップA7、A10、A14、A17に示すオン出力とオフ出力とが切替わる(図7参照)。
【0040】
ところで、ヒステリシスを小さく設定した場合は、上述したようにON点しきい値S1或いはOFF点しきい値S2を固定表示するにしても使用上不便を感じることはないものの、ヒステリシスを大きく設定した場合は、受光量Dと表示しきい値との関係に基づく出力とが一致せず、作業者が違和感を覚えることがある。
【0041】
このような場合は、しきい値の表示方法として、上記(3)に示すON点しきい値S1とOFF点しきい値S2との自動切替表示を設定する。
図9は、自動切替が設定されている場合の動作を示すフローチャートで、図8に示すフローチャートと同一動作には、同一ステップ番号を付して説明を省略し、異なるステップに異なるステップ番号を付して説明する。
【0042】
制御回路16は、図6に示すt1までは受光量DはON点しきい値S1を下回っているので、図8に示すフローチャートの場合と同様に、受光量D及びON点しきい値S1を表示する(A9)。
そして、図6に示すt1となると、受光量DがON点しきい値S1となるので(A5:YES)、受光量D及びOFF点しきい値S2を表示してから(B6)、オン出力すると共に(A7)、フラグをリセットする(A8)。
以上の動作により、t1でデジタルファイバセンサ1からの出力がオフ出力からオン出力に切替わると共に、第1のデジタル表示部10に表示されているしきい値がON点しきい値S1からOFF点しきい値S2に切替わる。
【0043】
上述のようにフラグがリセットされた状態では、制御回路16は、フラグがリセットされていることから(A4:NO)、受光量DがOFF点しきい値S2以下となったかを判断し(A12)、受光量DがOFF点しきい値S2を上回っている場合は(A12:NO)、受光量D及びOFF点しきい値S2の表示を継続する(B16)。また、オン出力を継続すると共に(A17)、フラグのリセット状態を継続する(A18)。
【0044】
受光量Dが減少し、図6に示すt2で受光量DがOFF点しきい値S2以下となったときは(A12:YES)、受光量D及びON点しきい値S1を表示すると共に(A13)、オフ出力してから(A14)、フラグをセットする(A15)。
以上の動作により、図6に示す当初と同様に、比較対象のしきい値がON点しきい値S1に設定されると共に、第1のデジタル表示部10に表示されるしきい値がON点しきい値S1に設定される。
【0045】
以上のような動作の繰返しにより、受光量Dの変化に応じて出力が変化する。この場合、第1のデジタル表示部10に表示されるしきい値は、受光量Dに応じて比較対象のしきい値であるON点しきい値S1とOFF点しきい値S2とに自動的に切替わる。従って、第1のデジタル表示部10に表示される受光量Dと第1のデジタル表示部10に表示されるしきい値と、それらの比較に応じて出力されるオン出力またはオフ出力が一致するようになる。
また、ダークオンモードが設定された場合は、図9におけるステップB6、A9、A13、B16に示すON点しきい値S1とOFF点しきい値S2とが反転すると共に、ステップA7、A10、A14、A17に示すオン出力とオフ出力とが反転する(図7参照)。
【0046】
このような実施例によれば、デジタルファイバセンサ1のモードとして表示しきい値の自動切替表示モードを設け、この自動切替表示モードが設定されたときは、受光量Dとの比較対象となるしきい値S1,S2を自動的に切替表示するようにしたので、表示しきい値とデジタルファイバセンサ1の出力とが一致するようになる。従って、表示しきい値が固定されている従来例のものと違って、作業者が違和感を覚えてしまうことを回避することができる。
また、表示対象のしきい値として、ON点しきい値S1或いはOFF点しきい値S2の固定表示も設定できるようにしたので、種々の形態でしきい値表示を行なうことができ、ユーザの様々な要求を満足させることができる。
【0047】
本発明は、上記実施例に限定されることなく、次のように変形または拡張できる。
受光量Dを周期的にサンプリングすることによりその移動平均相当値を求める算出手段を設けると共に、この算出手段で求められる移動平均相当値に基づいてON点しきい値S1及びOFF点しきい値S2を補正する補正手段を設け、この補正手段で補正されたON点しきい値S1及びOFF点しきい値S2を受光量Dとの比較に基づいて自動的に切替表示するようにしてもよい。このような構成によれば、受光量Dの移動平均値に追従して補正されたON点しきい値S1及びOFF点しきい値S2を確実に自動的に切替表示することができる。
ON点しきい値S1とOFF点しきい値S2を表示する際に、それらの表示色を異なるようにしてもよい。この場合、作業者がしきい値が切替わったことを確実に認識することができる。
【0048】
実施例のデジタルファイバセンサ1の表示部の機能を備えた表示装置をデジタルファイバセンサ1から独立して設け、一つまたは複数のデジタルファイバセンサ1のON点しきい値S1またはOFF点しきい値S2を表示装置に自動的に切替表示するようにセンサユニット、表示装置、制御ユニットからなるセンサシステムとして構成するようにしてもよい。
本発明を光電スイッチ、磁気センサ、超音波センサなどの各種センサに適用するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施例を示すデジタルファイバセンサの電気的構成を示すブロック図
【図2】デジタルファイバセンサの斜視図
【図3】デジタルファイバセンサのデジタル表示部を示す平面図
【図4】モードの変更順番を示す図
【図5】表示対象しきい値の変更順番を示す図
【図6】ライトオンの場合に受光量Dと検出出力との関係を示す図
【図7】ダークオンの場合を示す図6相当図
【図8】S1固定表示の場合におけるデジタルファイバセンサの動作を示すフローチャート
【図9】S1,S2自動切替表示の場合を示す図8相当図
【符号の説明】
【0050】
図面中、1はデジタルファイバセンサ(検出センサ)、10は第1のデジタル表示部(表示部)、11は第2のデジタル表示部、16は制御回路(比較手段、検出手段、表示制御手段、しきい値設定手段、しきい値制御手段、モード切替手段)、18は投光素子、20は受光素子(物理量検知手段)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象の物理量を検知しその物理量に応じた検出信号を出力する物理量検知手段と、
しきい値と前記検出信号レベルとの比較を行う比較手段と、
この比較手段の比較結果によって前記検出対象の検出を行う検出手段と、
表示部と、
この表示部へ前記しきい値を表示させる表示制御手段と、
前記しきい値として、所定のヒステリシス幅を有するように高レベル側の第一しきい値と低レベル側の第二しきい値とを設定するしきい値設定手段と、
前記検出信号レベルが前記第一しきい値以下の状態から前記第一しきい値を上回った場合は、前記比較手段に対して前記検出信号レベルと前記第二しきい値とを比較させ、前記検出信号レベルが前記第二しきい値以上の状態から前記第二しきい値を下回った場合は、前記比較手段に対して前記検出信号レベルと前記第一しきい値とを比較させるしきい値制御手段とを備えた検出センサにおいて、
前記表示制御手段は、
前記比較手段が前記検出信号レベルと前記第一しきい値とを比較しているときは前記第一しきい値を、前記比較手段が前記検出信号レベルと前記第二しきい値とを比較しているときは前記第二しきい値を、それぞれ前記表示部に切替表示させることを特徴とする検出センサ。
【請求項2】
前記検出信号レベルを周期的にサンプリングし、その移動平均相当値を求める算出手段と、
この算出手段で求められる移動平均相当値に基づいて前記第一しきい値及び前記第二しきい値を補正する補正手段とを備え、
前記表示制御手段は、
前記表示部に前記第一しきい値を表示させるときは前記補正手段で補正された第一しきい値を表示し、前記表示部に前記第二しきい値を表示させるときは前記補正手段で補正された第二しきい値を表示することを特徴とする請求項1記載の検出センサ。
【請求項3】
前記表示制御手段は、
前記表示部に前記第一しきい値または前記第二しきい値を表示する際に、それぞれ異なる表示色で表示させることを特徴とする請求項1または2記載の検出センサ。
【請求項4】
自動切替表示と固定表示を選択可能な表示選択手段を備え、
前記表示制御手段は、
前記自動切替表示が選択されたときは、前記比較手段が前記検出信号レベルと前記第一しきい値とを比較しているときは前記第一しきい値を、前記比較手段が前記検出信号レベルと前記第二しきい値とを比較しているときは前記第二しきい値を、それぞれ前記表示部に表示させ、前記固定表示が選択されたときは、前記第一しきい値または前記第二しきい値の何れかを固定表示させることを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の検出センサ。
【請求項5】
検出対象の物理量を検知しその物理量に応じた検出信号を出力する物理量検知手段と、
しきい値と前記検出信号レベルとの比較を行う比較手段と、
この比較手段の比較結果によって前記検出対象の検出を行う検出手段と、
表示部と、
この表示部へ前記しきい値を表示させる表示制御手段と、
前記しきい値として、所定のヒステリシス幅を有するように高レベル側の第一しきい値と低レベル側の第二しきい値とを設定するしきい値設定手段と、
前記検出信号レベルが前記第一しきい値以下の状態から前記第一しきい値を上回った場合は、前記比較手段に対して前記検出信号レベルと前記第二しきい値とを比較させ、前記検出信号レベルが前記第二しきい値以上の状態から前記第二しきい値を下回った場合は、前記比較手段に対して前記検出信号レベルと前記第一しきい値とを比較させるしきい値制御手段と、
前記検出信号レベルが前記第一しきい値以下の状態から前記第一しきい値を上回った場合は、前記検出対象を検出したとすると共に、前記検出信号レベルが前記第二しきい値以上の状態から前記第二しきい値を下回った場合は、前記検出対象が非検出となったとする第一モードと、前記検出信号レベルが前記第二しきい値を上回った状態から前記第二しきい値以下となった場合は、前記検出対象を検出したとすると共に、前記検出信号レベルが前記第一しきい値以下の状態から前記第一しきい値を上回った場合は、前記検出対象を非検出したとする第ニモードとを切替えるモード切替手段を備えた検出センサにおいて、
前記表示制御手段は、前記第一モードが選択された場合は前記第一しきい値を、前記第ニモードが選択された場合は前記第二しきい値を前記表示部に切替表示させることを特徴とする検出センサ。
【請求項6】
前記表示制御手段は、
前記比較手段が前記検出億号レベルと前記第一しきい値とを比較しているときは前記第一しきい値を、前記比較手段が前記検出信号レベルと前記第二しきい値とを比較しているときは前記第二しきい値を、それぞれ前記表示部に表示させることを特徴とする請求項5記載の検出センサ。
【請求項7】
検出対象の物理量を検知しその物理量に応じた検出信号を出力する物理量検知手段と、
しきい値と前記検出信号レベルとの比較を行う比較手段と、
前記しきい値として、所定のヒステリシス幅を有するように高レベル側の第一しきい値と低レベル側の第二しきい値とを設定するしきい値設定手段と、
前記比較手段の比較結果によって前記検出対象の検出を行う検出手段と、
前記検出信号レベルが前記第一しきい値以下の状態から前記第一しきい値を上回った場合は、前記比較手段に対して前記検出信号レベルと前記第二しきい値とを比較させ、前記検出信号レベルが前記第二しきい値以上の状態から前記第二しきい値を下回った場合は、前記比較手段に対して前記検出信号レベルと前記第一しきい値とを比較させるしきい値制御手段とを備えた一つまたは複数のセンサユニットと、
表示装置と、
前記表示装置の表示内容を制御する表示制御手段を備える制御ユニットとからなるセンサシステムにおいて、
前記制御ユニットは、前記センサユニットの前記しきい値制御手段の制御内容を読み取り、前記比較手段が前記検出信号レベルと前記第一しきい値とを比較しているときは前記第一しきい値を、前記比較手段が前記検出信号レベルと前記第二しきい値とを比較しているときは前記第二しきい値を、それぞれ前記表示装置に切替表示させることを特徴とするセンサシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−101188(P2007−101188A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−287303(P2005−287303)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000106221)サンクス株式会社 (578)
【Fターム(参考)】