説明

検出器と変換器の回転構造

【課題】検出器に対して容易に変換器を回転させることができる検出器と変換器の回転構造を提供する。
【解決手段】 検出器と変換器の回転構造において、大径部と小径部からなる断面凸状に形成された検出器と、該検出器の小径部が挿入され、一端が前記検出器の大径部に接触した状態で他端が前記小径部の端部と略面一になる程度に形成され、かつ前記他端側から所定の深さに形成され前記検出器の小径部との間に円筒状の空間を有する変換器と、前記空間に前記小径部を巻き回して配置されたコイルばねと、前記コイルばねを押圧するばね押圧部材を備えると共に、前記検出器の大径部と前記変換器の接触部を噛合い構造とし、前記コイルばねは前記変換器を持ち上げて前記コイルばねを押圧したときに前記噛合いが外れる程度に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば差圧計や流量計などのフィールド機器の検出器と変換器の回転構造に関し、ねじ止めされた検出器と変換器の回転構造の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
現場に設置された差圧計や流量計などフィールド機器では配管の配置具合などにより変換器の目盛等が見にくくなったりすることがある。その場合、検出器に対して変換器を回転させる作業が発生する。
【0003】
図3(a)はフィールド機器の検出器1と変換器2および接合部3の要部構成を示すものである。このような検出器1と変換器2では接合部3を摺動面として変換器2を矢印A方向に回転させ、変換器の向きを調整している。検出器1と変換器2は数本のねじにより固定されている。
【0004】
図3(b〜d)は検出器1と変換器2を固定するための要部の一例を示すもので、図3(b)は正面図、図3(c)は図3(b)のA−A断面図、図3(d)は図3(b)のA−A断面図斜視図である。
【0005】
これらの図において、検出器1と変換器2の摺動面は円板状の鍔(1a,2a)を合わせた状態とされ、変換器2側の4箇所に形成されたねじ穴2b二検出器1側に形成された通し孔1bを介してねじ4がねじ込まれて固定されている。
【0006】
図3(e〜g)は検出器1と変換器2を固定するための他の従来例の要部の一例を示すもので、図3(e)は正面図、図3(f)は図3(e)のA−A断面図、図3(g)は図3(e)のA−A断面図斜視図である。
【0007】
これらの図において、検出器1の鍔部1aが変換器2に形成された穴2cに挿入され、検出器1の鍔1aの側面に形成されたリング溝1cに変換器2の側面に形成されたねじ孔2dを介してねじ4がねじ込まれて固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−347351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述の従来技術において、変換器2を所望の方向に回転させるには検出器1と変換器2を分離する必要があるが、設置後の回転は時間と工数を要するので、可能な限り設置状況に合わせて向きを調整しておく方が望ましい。
【0010】
図では省略するが検出器1と変換器2の間にはこれらを電気的に接続するためのケーブルなども通っていて設置後の回転は非常に難しい。また、図(b〜d)に示す従来例では検出器1と変換器2のねじ4の数(図では4個)にもよるが、回転角度に制約があるという課題がある。
【0011】
また、図(e〜g)に示す従来例では変換器2の外周に配置されたねじ4を緩めて回転させ再度締め付けを行う必要があるが、設置後は工具などの作業スペースの問題があり作業性がよいとは言えない。
また、この従来例では、ねじ4を検出器1に押し当てることにより固定しているため、固定後も回転方向に力を加えると変換器2が回転してしまうという課題がある。
【0012】
従って本発明は、検出器に対して容易に変換器を回転させることができる検出器と変換器の回転構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、請求項1においては、
検出器と変換器の回転構造において、大径部と小径部からなる断面凸状に形成された検出器と、該検出器の小径部が挿入され、一端が前記検出器の大径部に接触した状態で他端が前記小径部の端部と略面一になる程度に形成され、かつ前記他端側から所定の深さに形成され前記検出器の小径部との間に円筒状の空間を有する変換器と、前記空間に前記小径部を巻き回して配置されたコイルばねと、前記コイルばねを押圧するばね押圧部材を備えると共に、前記検出器の大径部と前記変換器の接触部を噛合い構造とし、前記コイルばねは前記変換器を持ち上げて前記コイルばねを押圧したときに前記噛合いが外れる程度に形成されたことを特徴としている。
【0014】
請求項2においては、請求項1に記載の検出器と変換器の回転構造において、
前記ばね押圧部材はねじにより前記検出器の小径部の端部に固定されたことを特徴とする。
【0015】
請求項3においては、請求項1または2に記載の検出器と変換器の回転構造において、前記噛み合い構造は歯形状、波型状、三角波状を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したことから明らかなように本発明の請求項1〜3によれば、
コイルばねと噛み合い構造により、検出器に対して変換器を持ち上げるだけで容易に回転させることができ、所望の位置で固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の検出器と変換器の回転構造の要部正面図(a)、図(a)のA−A断面図(b)、図(a)のA−A断面斜視図(c)および分解斜視図(d)である。
【図2】本発明の検出器と変換器の回転構造の他の実施例を示す図である。
【図3】従来の検出器と変換器の回転構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は本発明の検出器と変換器の回転構造を示す要部正面図(a)、図(a)のA−A断面図(b)、図(a)のA−A断面斜視図(c)および分解斜視図(d)である。
これらの図において、11は大径部11aと小径部11bからなる断面凸状に形成された検出器である。12は中心部に検出器の小径部11bが挿入され、一端が検出器の大径部11aに接触した状態で他端が小径部の端部より僅かに長く段差dを有する程度に形成された変換器である。
【0019】
変換器12には他端側(小径部の端部側)から所定の深さeに形成され前記検出器の小径部との間に円筒状の空間Pが形成されている。この空間Pには検出器の小径部11bを巻き回してコイルばね6が配置されている。5は円板状のばね押さえであり、段差dを埋める程度の厚さに形成されている。
【0020】
この円板状のばね押さえ5は複数(図では4本)のねじ4により検出器の小径部11bの端部にばね4を押圧した状態で固定され、同時に変換器12をコイルばね6により検出器11に押圧した状態となっている。7で示す部分は噛合い構造とされ、図では変換器12の一端と検出器の大径部11aが接触する部分が歯型状に形成されて噛合った状態とされている。
【0021】
上述の構成において、変換器12を噛合い構造が外れる程度に持ち上げ検出器11に対して変換器12を回転させる。その場合噛合い構造の歯数を細かく形成しておけば、小刻みに回転位置を決めることができる。
【0022】
図2は他の実施例を示すもので、この例では噛合い構造7aを波(山)型にしたものでり、他の部分は図1と同様なのでここでの説明は省略する。
このような構成においても、噛合いが外れる程度に変換器を持ち上げるだけで検出器に対して容易に変換器を回転させることができる
【0023】
なお、以上の説明は、本発明の説明および例示を目的として特定の好適な実施例を示したに過ぎない。実施例ではばね押圧部材のねじを4本としたが、1本以上であれば2本、3本でも4本以上でも良く、ねじに限らず接着、リベットのようなものでも良い。
【0024】
また、ばね押圧部材は実施例では段差dに収めるために円板状としたが、変換器の一端が検出器の大径部に接触した状態で他端が小径部の端部と略面一になる程度に形成しておけば、矩形の中心付近に穴を開けたようなものであってもよく、コイルばねを押圧可能であれば変換器の他端から突き出た状態であってもよい。
【0025】
即ち本発明では、略面一とは変換器の一端が検出器の大径部に接触した状態で他端が小径部の端部よりコイルばねを押圧可能な状態で多少突き出ていても、本実施例に示したように多少凹んだ状態でもよい状態と定義している。
要はコイルばねで変換器の一端を検出器の大径部に押さえつけ、変換器をコイルばねの力に抗して持ち上げたときに噛合いが外れるような構成であれば良い。
【0026】
また、検出器と変換器の形状は要部のみを示したが、図示の例に限ることなく任意に設計可能である。
従って本発明は、上記実施例に限定されることなく、その本質から逸脱しない範囲で更に多くの変更、変形を含むものである。
【符号の説明】
【0027】
1、11 検出器
1a、2a 鍔
1b 通し孔
1c リング溝
2、12 変換器
2b、2d ねじ孔
2c 穴
3 接合部
4 ねじ
5 ばね押圧部材
6 コイルばね
7、7a 噛合い構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出器と変換器の回転構造において、大径部と小径部からなる断面凸状に形成された検出器と、該検出器の小径部が挿入され、一端が前記検出器の大径部に接触した状態で他端が前記小径部の端部と略面一になる程度に形成され、かつ前記他端側から所定の深さに形成され前記検出器の小径部との間に円筒状の空間を有する変換器と、前記空間に前記小径部を巻き回して配置されたコイルばねと、前記コイルばねを押圧するばね押圧部材を備えると共に、前記検出器の大径部と前記変換器の接触部を噛合い構造とし、前記コイルばねは前記変換器を持ち上げて前記コイルばねを押圧したときに前記噛合いが外れる程度に形成されたことを特徴とする検出器と変換器の回転構造。
【請求項2】
前記ばね押圧部材はねじにより前記検出器の小径部の端部に固定されたことを特徴とする請求項1に記載の検出器と変換器の回転構造。
【請求項3】
前記噛み合い構造は歯形状、波型状、三角波状を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の検出器と変換器の回転構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−198153(P2012−198153A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63446(P2011−63446)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】