説明

検出器用の能動分圧器

光電子増倍管に供給する分圧器に関する。分圧器は、光電子増倍管の別々のポートで分割電圧レベルを確立するように各々が構成された複数の能動回路を含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シンチレーション検出器に関し、より詳細には、シンチレーション検出器と併用できる分圧器に関する。
【背景技術】
【0002】
シンチレーション検出器は、例えば、ガンマ線、低および高エネルギーX線、電子、陽電子および中性子を含む放射線を評価または測定するのに利用することができる。シンチレーション検出器は、石油ガス業界における検層から陽電子断層撮影(PET)スキャニングおよびコバルト治療などの各種医学的用途までを含む多くの用途で使用することができる。一般に、検出器は、放射線のエネルギーを光パルスに変換する結晶を含むことができる。次に、例えば光電陰極で光パルスを、電気信号に変換する光電子増倍管または他の光検出器を用いて、光パルスを検出することができる。光電子増倍管は、電気信号を増幅できる中間ダイノードと、増幅された電気信号を出力する陽極とを含むことができる。分圧器によって分割してダイノードに送出できる比較的高い電圧で光電子増倍管を動かすことができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示の1つの態様は、シンチレーション検出器用の分圧器に関する。分圧器は、能動回路に対して関連分割電圧を確立するように構成された少なくとも1つの関連抵抗器を各々が含む複数の能動回路と、第1の電流を光電子増倍管に供給するように構成された少なくとも1つのトランジスタであって、電流は関連分割電圧に基づいている、トランジスタとを含むことができる。
【0004】
本開示の別の態様は、シンチレーション検出器を構成する方法に関し、この方法は、複数の関連分割電圧に供給電圧を分割し、複数の関連分割電圧の各分割電圧を少なくとも1つの関連トランジスタに提供する分圧回路を構成するステップであって、複数の関連分割電圧の各分割電圧は関連抵抗器の関連公称値に基づいており、少なくとも1つの関連トランジスタは第1の関連電流を光電子増倍管の複数のポートのうち関連ポートに供給するように構成されているステップと、分圧回路を光電子増倍管に結合するステップとを含む。
【0005】
本開示のさらに別の態様は、シンチレーション検出システムに関する。システムは、シンチレーション結晶と、シンチレーション結晶と光通信している光電子増倍管と、光電子増倍管に結合された分圧器と、光電子増倍管に結合された分析器とを含むことができる。分圧器は、能動回路に対して関連分割電圧を確立するように構成された少なくとも1つの関連抵抗器を各々が含む複数の能動回路と、第1の電流を光電子増倍管に供給するように構成された少なくとも1つのトランジスタであって、電流は関連分割電圧に基づいている、トランジスタとを含むことができる。
【0006】
この開示の上述のおよび他の特徴と、それらの特徴を達成する方法は、添付図面と併せてここに記載の実施形態の下記の説明を参照することによって一層明らかになりより良く理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】シンチレーション検出システムの例である。
【図2】結晶、光電子増倍管、分圧器および検出回路を含むシンチレーション検出システムの一部の機能ブロック図である。
【図3】能動分圧回路の例の例示的な概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
この開示は、その適用において、下記の説明に記載されるまたは図面に例示される構成要素の配置および構成の詳細に限定されないことを理解されたい。ここに記載の実施形態は、他の実施形態で可能であり、各種方法で実施または実現可能である。また、ここで使用される表現および用語は、説明する目的のためであり、限定とみなすべきではないものとする。ここで、「含む(including)」、「含む(comprising)」または「有する(having)」およびそれらの変形の使用は、後で列挙された項目、その等価物、追加項目を包含することを意味する。特に限定がない限り、ここで、「接続され(connected)」、「結合され(coupled)」および「装着され(mounted)」という用語およびそれらの変形用語は、広く使用され、直接および間接の接続、結合および装着を包含する。さらに、「接続され(connected)」および「結合され(coupled)」という用語およびそれらの変形用語は、物理的または機械的な接続または結合に限定されない。
【0009】
本開示は、シンチレーション検出器と併用する分圧器に関する。上述のように、放射線のエネルギーを光パルスまたは光子に変換することによって放射線を評価または測定するのにシンチレーション検出器を使用することができる。放射線は、電磁気、即ち、ガンマ線、低および高エネルギーX線など、波または光子の形であってもよい。また、放射線は、粒子放射線、即ち、電子、陽電子または中性子を含む亜原子粒子の形であってもよい。シンチレーション検出器は、光パルスまたは光子を電気エネルギーに変換し、例えば光電子増倍管で電気エネルギーを増幅することができる。
【0010】
光電子増倍管は、光パルスまたは光子を受信して光エネルギーを電気エネルギーに変換できる陰極と、電気エネルギーを増幅できる複数のダイノードと、増幅された電気エネルギーを出力する陽極とを含むことができる。比較的高い電圧で光電子増倍管にバイアスをかけることができる。分圧器は、比較的高い電圧を分割でき、分割された電圧を光電子増倍管のダイノードに提供できる。光電子増倍管の利得は、分圧器によって供給される電圧と電流に左右されることがある。分かるように、シンチレーション検出器の利得直線性により、放射線の評価または測定が一層正確になる。
【0011】
シンチレーション検出システムの例を図1に例示する。検出器110は、放射線を吸収して吸収エネルギーの一部を光子として発するまたは放出することができるシンチレーション結晶112を含むことができる。比較的一般的なシンチレーション結晶の例は、タリウムをドープしたヨウ化ナトリウム(NaI(TI))またはタリウムをドープしたヨウ化セシウム(CsI(TI))を含むことができる。シンチレーション結晶の追加例は、フッ化バリウム、セリウムをドープした塩化ランタン(LaCl(Ce))、ゲルマン酸ビスマス(BiGe12)、セリウムをドープしたイットリウムアルミニウムガーネット(Ce:YAG)、セリウムをドープした臭化ランタン(LaBr(Ce))、ヨウ化ルテチウム(LuI)、テルビウムをドープした酸硫化ガドリニウム(GOS(Tb))、タングステン酸カルシウム(CaWO)、タングステン酸カドミウム(CdWO)、タングステン酸鉛(PbWO)、タングステン酸亜鉛(ZnWO)または酸オルトケイ酸ルテチウム(LuSiO)を含むことができる。次に、結晶と光通信している光検出器114によって放出光子を検出することができる。
【0012】
一例では、光検出器114は、光電子増倍管(PMT)であってもよい。結晶から放出された光子は光電子増倍管内で光電陰極に当たるので、シンチレーション結晶によって吸収された入射放射線を表す信号を生成する電子を生成することができる。分圧器118に接続する高圧電源116によって光電子増倍管114にバイアスをかけることができる。分圧器118は、1つの光電子増倍管段階から次の段階に電子を加速する一連の段階に高電圧を分割することができる。光電子増倍管は、少なくとも数桁、例えば10から10の範囲で生成された信号を増倍または増幅することができる。他の光検出器114は、フォトダイオードまたは電荷結合素子を含むことができる。次に、光検出器114によって提供された信号を、前置増幅器(Pre−Amp)120および増幅器122、アナログ・デジタル変換器(ADC)123によって処理してから、光検出器114が電気通信可能なマルチチャネル分析器(MCA)124によって処理することができる。一例では、前置増幅器は、光検出器から受信された信号を増幅または増加することができ、増幅器は、前置増幅器から受信された信号を整形するまたはフィルターにかけることができる。しかし、ここで同様に他の構成も利用できることが分かる。
【0013】
図2は、図1に例示のシンチレーション検出システムの一部210の機能ブロック図の例を示す。一部210は、シンチレーション結晶212、光電子増倍管214(例えば、光電子増倍管)および分圧回路218を含むことができる。上述のように、シンチレーション検出システムは、放射線を吸収して吸収エネルギーの一部を光子として放出できる結晶(XTAL)を含むことができる。次に光電子増倍管214で増幅できる電気エネルギー(例えば、電子)に光子を変換することができる。光電子増倍管は、電子を増幅する複数のダイノードを含むことができる。多くの種類の光電子増倍管がある。光電子増倍管の種類は、複数のダイノードの特定の構成、例えば、構造および/または数に左右されることがある。
【0014】
光電子増倍管214では、光電陰極Kによって光子を電子に変換することができる。次に、集束格子ポートGに結合可能な集束格子によって電子を集束することができる。次いで、一連のダイノード(段)D1〜Dnの中で第1のダイノードD1によって集束電子を受け取ることができる。各連続ダイノードD2〜Dnは、前のダイノードから1つ以上の電子を受け取ることができ、一連の中で次のダイノードによって順に受け取り可能な各受け取り電子に対して複数の二次電子を生成することができる。例えば、入射電子1個当たりの生成二次電子の数は、4〜5個の範囲にある場合がある。その処理を、n番目のダイノードDnまで繰り返すことができる。ダイノードDnによって生成された二次電子は、陽極によって受け取られ、次いでPMTから流出することができる。出力電流を、負荷抵抗器、例えばR18に提供することができる。次いで、負荷抵抗器R18の両端間に生じた電圧を、検出回路、例えば前置増幅器120、増幅器122、ADC124およびMCA124に提供することができる。
【0015】
図2に例示するように、陰極Kを接地でき、抵抗器R2を介して陽極Aに正電圧を提供できる。この構成では、直流供給電圧HVが前置増幅器120および他の信号処理回路に伝わるのを阻止するのに結合コンデンサC29を含んでもよい。次に、陽極電流を負荷抵抗器R18に供給して、電圧出力信号SIG OUTを生成することができる。この構成を、例えばシンチレーション検出のために使用することができる。代わりに、負荷抵抗器を介して陽極Aを接地し、負電圧を陰極Kに結合することもできることが分かる。次いで、直流阻止コンデンサC29を除くこともできる。
【0016】
二次電子を生成するダイノードの場合、ダイノードは入射電子をまず受け取る必要があることが分かる。一連の中で第1のダイノードとしてのダイノードD1に、最少入射電子、即ち光電陰極Kによって生成され集束格子によって集束された電子を提供することができる。従って、光電陰極Kによって生成された電子がダイノードD1に到達する可能性は、PMTが増倍できる重要な要因である。電子をダイノードD1の有効面積で受け取る確率と収集効率を定義することができる。有効面積は、入射電子を受け取り次第、一連の中で後のダイノードの有効面積に着地できる軌道の二次電子を生成できるダイノードの面積を意味すると理解できる。換言すれば、有効面積で受け取られない電子は、二次電子を生成できず、その結果、増倍に貢献できない。ダイノードD1の収集効率は、陰極Kと第1のダイノードD1との間の電圧に左右されることがある。この電圧が低すぎると、D1の収集効率を減らすことがある。
【0017】
図2に例示するように、光電子増倍管は、複数のダイノードを含むことができる。例えば、光電子増倍管は、8個のダイノードを含むことができる。別の例では、光電子増倍管は、10個のダイノードを含むことができる。上述のように、各ダイノードは、4〜5倍に電子を効果的に増倍することができる。従って、10ダイノードPMTは、陰極Kと陽極Aとの間で約10の電流利得を得ることができる。利得は、陽極Aでの電流と陰極Kでの電流との比を意味すると理解できる。利得は、中間ダイノードD2〜Dnの増倍率(受け取った入射電子1個当たりの放出二次電子の数、即ち二次電子放出比)だけでなくダイノードD1の収集効率にも左右されることがある。増倍率は、ダイノードの段間電圧、即ち一連の中で1つのダイノードと前のダイノードとの間の電圧に左右されることがある。例えば、ダイノードD2の段間電圧は、段間回路IS2の両端間の電圧、即ちダイノードD1とダイノードD2との間の電圧であることがある。段間電圧を減らすと、ダイノードの増倍率を減らすことができ、これによって光電子増倍管の正味の利得が減る。これは、出力信号が比較的小さいので、適切な検出のために、前置増幅器120および/または増幅器122による増幅がさらに必要であることを意味する。これにより、増幅器が光電子増倍管よりも比較的雑音があるにつれて、シンチレーション検出システム110の信号対雑音比を減らすことができる。
【0018】
光電子増倍管は、比較的高い強度の入力を検出する場合、非直線性の別の源を含むことができる。この非直線性は、陽極Aに一層近いダイノード、例えばダイノードDnにおける空間電荷効果のせいであろう。電子数、即ち電流の大きさが陽極Aに一層近いダイノード、例えばDn、Dn−1、Dn−2で比較的一層高いように入射電子を増幅(増倍)するように各ダイノードを構成していることが分かる。ダイノード間の空間電荷効果は、利得飽和の原因となる更なる増倍を抑制することができ、即ち、陰極電流の増加に伴って出力電流は増加できない。飽和電流レベルは、陽極およびダイノード構造および/または段間電圧に左右されることがある。陽極Aに近いダイノード、例えばDn、Dn−1、Dn−2に対する段間電圧を増加することによって、利得飽和を減少することができる(即ち、飽和電流を増加することができる)。
【0019】
光電子増倍管のポートの両端間に印加される電圧および供給電圧+HVは、光電子増倍管の動作(即ち、収集効率、利得および/または直線性)における重要なパラメータである。光電子増倍管のポートは、陰極K、集束格子ポートG、ダイノードD1〜Dnおよび陽極Aを含むことができる。すべての光電子増倍管が、ポートGと内部集束格子との間の内部接続部を含むとは限らないことが分かる。分圧回路218によって光電子増倍管を一般に供給することができる。比較的高い電圧供給、例えば800または1000ボルトを、多くの回路、例えば段間回路IS1〜ISn、陰極・集束格子回路CKGおよび最終ダイノード・陽極回路CDAによって分割することができる。例えば、段間回路IS2を、段階(即ち、ダイノード)D1およびD2の間に結合することができる。比較的単純な構成、即ち受動回路では、各回路CKG、IS1〜ISn、CDAは、同じ公称値を有する全抵抗器を用いた抵抗器であってもよい。陽極電流が比較的小さい、例えば比較的低い強度パルスを検出したと仮定して、CKG、CDAの両端間の電圧および各段間電圧は、供給電圧の何分の1にほぼ等しいことがある。この状況では、ダイノードからの電流は、電源+HVからの電流と比べて小さい。次に、光電子増倍管の利得は、陰極電流と無関係であり、即ち直線である。比較的高い強度パルスの場合、この近似はもはや正確ではない。
【0020】
比較的高い強度入力の場合、陽極およびダイノード電流は、供給電流と比べて小さくない。次に、ダイノード電流は、段間回路、例えばIS1〜ISnに流入することができる。これらのダイノード電流は、電圧源+HVによって供給される電流に抵抗することがある。段間回路における正味の減少電流は、段間電圧の減少になることがある。各段階(例えば、ダイノード)における増倍のために、正味の減少電流は、陽極に一層近いダイノード、例えばDn、Dn−1に対して一層大きいことがある。その結果、段間電圧は、(各連続ダイノードにおける電流増幅のために)陰極に一層近いダイノード、例えばD1、D2に対して比較的一層高く、陽極に一層近いダイノードに対して比較的一層低いことがある。分圧回路の両端間の電圧を、電源の容量の範囲内で、電源電圧に保持することができる。電源の容量を超えると、一層高い強度入力は、供給電圧+HVの減少になることがある。従って、抵抗分圧器を有する検出器回路は、制限されたダイナミックレンジを有することがある。
【0021】
図3は、ダイナミックレンジを増加できる、本開示に従う能動分圧回路318の例の例示的な概略図を示す。換言すれば、図1に例示した検出回路は、図3に従って構成された、分圧器118を用いて一層高い強度パルスを検出することができる。例えばシンチレーション検出器において比較的高い強度パルスを検出する場合、直線性を向上させるように能動分圧回路318を構成することができる。能動分圧回路は、収集効率を維持し、ダイナミックレンジを向上させて、より広い入力範囲にわたって直線出力を与えることができる。
【0022】
図2に示す陰極・格子ポート回路CKG、Dn・陽極回路CDAおよび段間回路IS1〜ISn、に対応する回路素子の例を示すのに図3に注釈が付けられている。図3に示す能動分圧回路は、例えば10個のダイノードを有する光電子増倍管用に構成されていることが分かる。例えばジャンパーJ1およびJ2を除去して段間回路IS8を回路CDAに結合することによって、能動分圧回路318を8ダイノード光電子増倍管用に構成することができる。能動分圧回路318は、8個または10個のダイノードを有する光電子増倍管に限定されない。段間回路、即ちIS1〜ISnの数を調整して、光電子増倍管におけるダイノードの数に一致させることができる。
【0023】
回路CKG、CDAおよび段間回路IS1は、段間回路IS2〜IS10とは違って構成されていることが分かる。陰極Kおよび陽極Aと相対的な位置に従って各回路を構成することができる。換言すれば、回路の望ましい特性は、陰極Kと第1のダイノードD1との間、または第2のダイノードD2と第3のダイノードD3との間、または最後のダイノード、例えばD10と陽極Aとの間に回路を結合するかに左右されることがある。例えば、段間回路IS2は、第1のPNPバイポーラ接合トランジスタQ5を含むことができる。Q5のコレクタをダイノードD1に結合することができる。Q5のエミッタをダイノードD2に結合することができ、Q5のベースを第2のPNPトランジスタQ18のエミッタに結合することができる。第1のコンデンサC5を、第2のPNPトランジスタQ18のコレクタとエミッタとの間に結合することができる。第2のトランジスタQ18のベースを、抵抗器R8に結合することができる。コンデンサC19を、R8と並列に結合することができる。段間回路IS3から、例えばIS10までを、同様に構成することができる。
【0024】
同様に、例えば、段間回路IS1は、第1および第2のPNPトランジスタQ1およびQ2を含むことができる。第1のトランジスタQ1のコレクタを、陰極Kおよび電源の出力、例えばGNDに結合することができる。第1のトランジスタQ1のエミッタを、第2のトランジスタQ2のコレクタに結合することができる。第1のトランジスタQ1のベースを、第3のトランジスタQ14のエミッタおよび第4のトランジスタQ15のコレクタに結合することができる。第2のトランジスタQ2のベースを、第4のトランジスタQ15のエミッタに結合することができる。第2のトランジスタQ2のエミッタを、集束格子ポートGに結合することができる。第3のトランジスタQ14のコレクタを、電源の出力、例えばGNDに結合することができる。第1のコンデンサC1を、第1のトランジスタQ1のコレクタとベースとの間に結合することができる。第2のコンデンサC2の第1の電極を、第1のトランジスタQ1のベースに結合することができ、第2のコンデンサC2の第2の電極を、第2のトランジスタQ2のベースに結合することができる。第1の抵抗器R4を、第3のトランジスタQ14のコレクタとベースとの間に結合することができる。第2の抵抗器R5を、第3のトランジスタQ14のベースと第4のトランジスタQ15のベースとの間に結合することができる。第3のコンデンサC15を、第1の抵抗器R4と並列に結合することができ、第4のコンデンサC16を、第2の抵抗器R5と並列に結合することができる。段間回路IS1を、同様に構成することができる。
【0025】
上述のように、光電子増倍管、例えば光電子増倍管214の利得直線性は、収集効率、増倍率に左右されることがあり、利得飽和の影響を受けやすいことがある。これらの要因は、陽極および/または陰極に対するダイノード位置、段間電圧および/または供給電流に左右されることがある。名目上同じ抵抗器の値を有する上述の受動抵抗分圧器は、この複雑さに対処できず、従って制限されたダイナミックレンジを有する検出回路になることがある。ダイナミックレンジを増加して直線性を向上させるように、図3に示す例示的な能動分圧回路を構成することができる。
【0026】
特に、CKG回路、CDA回路、および供給電圧+HVの一部としての段間電圧を、抵抗器R4〜R17によって設定することができる。各抵抗器の値を、段階および/または光電子増倍管ポート、例えば回路が供給している集束格子ポートGに従って選択することができる。ある実施形態では、抵抗器R8〜R13の値よりも比較的大きい値を有するように、抵抗器R4〜R7を選択することができる。その結果、陰極Kと集束格子ポートGとの間、および集束格子ポートGと第1のダイノードD1との間の電圧は、D1とD2との間、D2とD3との間などの段間電圧よりも比較的高い。このようにして、収集効率を維持および/または増大することができる。ある実施形態では、抵抗器R8〜R13の値よりも比較的大きい値を有し、R14〜R17から徐々に増加するように、抵抗器R14〜R17を選択することができる。このようにして、電子密度が比較的高い、陽極に一層近いダイノード、例えばD10〜D8間の電圧勾配を増加することができる。電圧勾配の増加により、空間電荷効果が減少し、これによって利得飽和を回避しながら比較的高い強度パルスの検出に対処することができる。
【0027】
供給電流以上の大きさのオーダーであるダイノード電流が存在する状態で段間電圧を維持するように、能動構成要素、例えばトランジスタを構成することができる。そのようなダイノード電流は、比較的高い強度パルスを検出する場合に生成されることができ、陽極Aに一層近いダイノードに対して比較的一層高い。ある実施形態では、ダイノード電流(即ち、ダイノードからの電子の流れ)を受け取るようにトランジスタQ1〜Q13を構成することができ、この電流を使用して段間電圧を維持することができる。トランジスタQ14〜Q26は、抵抗器R4〜R16と光電子増倍管との間に比較的高い入力インピーダンスを与えることができる。このようにして、能動分圧回路は、比較的高い強度パルスの検出中に段間電圧を維持することができる。
【0028】
ある実施形態では、能動分圧回路318は、複数のコンデンサ、例えばコンデンサC1〜C28をさらに含むことができる。短時間、比較的高い強度パルスを受け取ると、これらのコンデンサC1〜C28は追加電流を提供することができる。荷電したコンデンサは、電荷Q(ただし、Qはコンデンサの両端間の電圧(定数)を掛けた静電容量に等しい)を含むことができる。コンデンサの両端間の電圧が減少すると、コンデンサは電流を供給する、即ち放電することができる。コンデンサC1〜C28は、パルス間で充電することができ、パルスを検出すると、少なくとも部分的に放電して追加電流を供給することができる。これにより、検出システムのダイナミックレンジをさらに向上できる。
【0029】
能動分圧回路における構成要素の値の選択は、光電子増倍管114、結晶112および/または検出される信号の性質に左右される場合があることが分かる。例えば、抵抗器R4〜R17の相対値を、光電子増倍管114、結晶112および/または検出される信号の性質によって調整することができる。一実施形態では、抵抗器R4〜R7は665kΩ、抵抗器R8〜R13は510kΩ、R14、R15、R16およびR17はそれぞれ665kΩ、768kΩ、1000kΩおよび1250kΩであってもよい。ここで使用される状況では、Ωはオームを意味すると理解でき、kΩはキロオームを意味すると理解できる。記載の抵抗器の値は、実際の抵抗器の値が許容誤差、例えば記載の公称値の±1%の範囲内である、公称抵抗器の値であると理解できる。
【0030】
表1、2および3は、受動の純抵抗分圧器、等分割電圧用の能動分圧器、および分割電圧の範囲用に構成された本開示に従う能動分圧器に関してエネルギー直線性に対する例示的な試験データを含む。データに関して、エネルギー準位662keVを有するセシウム(Cs−137)の同位体を基準として使用し、セリウムをドープした臭化ランタン(LaBr(5%Ce))のシンチレーション結晶を使用した。セリウムをドープした臭化ランタンの結晶は比較的速くて比較的高い強度光パルスを生成できることが分かる。表1は、2つのエネルギー準位(1172.5keVおよび1332.5keV)におけるコバルト(Cobalt−60)の同位体、トリウム(Th−228)の同位体およびキュリウム(Cm−244)の同位体に関するピークエネルギー、およびCs−137に対するこれらのピークエネルギーの比を含む。検出システムの非直線性の程度を、表1に列挙した理想比と検出エネルギー比との間の偏差によって示すことができる。
【表1】

【0031】
表2は、例示的な10段分圧器に関して検出エネルギー比を含む。「受動」は、ほぼ等分割電圧を有する純抵抗分圧器を意味すると理解できる。「能動、等電圧」は、例えば、図3に示す分圧器として構成され、ほぼ等分割電圧を有する能動分圧器を意味すると理解できる。「能動」は、例えば、図3に示す分圧器として構成された能動分圧器を意味すると理解できる。表示データに関して、中間ダイノードD2〜D8間の分割電圧よりも陰極Kと集束格子ポートGとの間、および集束格子ポートGと第1のダイノードD1との間の分割電圧を比較的高くするように分圧器を構成した。中間ダイノードD2〜D8間の分割電圧よりもダイノードD8とD9との間、ダイノードD9とD10との間、およびダイノードD10と陽極Aとの間の電圧を比較的高くするように分圧器をさらに構成した。ダイノードD9とD10との間に印加される電圧よりもダイノードD8とD9との間の電圧を比較的低くするように分圧器をさらに構成した。同様に、ダイノードD10と陽極Aとの間に印加される電圧よりもダイノードD9とD10との間の電圧を比較的低くするように分圧器をさらに構成した。本開示の一実施形態に従って構成された能動分圧器は、列挙したエネルギーに対する受動および/または等電圧を有する能動の分圧器と比較して比を向上させたことが分かる。
【表2】

【0032】
表3は、例示的な8段分圧器に関して検出エネルギーデータを含む。ジャンパーJ1およびJ2が存在せず、段間回路IS8を回路CDAに結合して8段分圧器を得ることを除いて、「受動」および「能動、等電圧」は表2の場合と同じ意味を有する。ジャンパーJ1およびJ2無しで、中間ダイノードD2〜D8間の電圧よりもダイノードD8と陽極Aとの間の電圧を比較的高くするように分圧器をさらに構成したことを除いて、「能動」は表2の場合と同じ意味を有する。8段構成の直線性は10段構成の直線性ほど良くないことが分かる。しかし、能動構成は、表1に列挙した比と比較的一層厳密に一致する。
【表3】

【0033】
本開示に従う能動分圧器を、各種シンチレーション検出器で利用することができる。ここで、米国特許第5,869,836号明細書、同第6,222,192号明細書、同第6,359,282号明細書および米国特許出願公開第2007/0007460号明細書を参照し、その開示内容はここに参照として取り込まれ、ここで考えられた能動分圧器を利用できる多くのシンチレーション検出器が記載されている。さらに、ここに記載の分圧器を含むシンチレーション検出器を、医療機器、地球物理学的機器、検査機器、研究機器および保健物理学の用途を含む各種用途および機器に使用することができる。医療機器は、陽電子放射断層撮影装置、ガンマカメラ、コンピュータ断層撮影装置および放射免疫測定の用途を含むことができる。地球物理学的機器は、検層検出器を含むことができる。検査機器は、放射輝度検出器、例えば、熱中性子放射化分析検出器、荷物スキャナー、厚さ計、液面計、能動および受動の安全および明示検証、能動および受動の分光法(放射性同位体識別機器)、および能動および受動の総合計算器を含むことができる。研究機器は、分光計および熱量計を含むことができる。保健物理学の用途は、洗濯監視およびエリア監視を含むことができる。
【0034】
幾つかの方法および実施形態の上記説明は、例示の目的で提示されている。開示されている厳密な工程および/または形態に特許請求の範囲を限定する、またはすべて網羅しているものではなく、明らかに、上記の教示に照らして多くの修正および変形が可能である。本発明の範囲を、ここに添付の特許請求の範囲によって規定する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電子増倍管に供給する分圧器であって、
能動回路に対して関連分割電圧を確立するように構成された少なくとも1つの関連抵抗器を各々が含む複数の能動回路と、
第1の電流を前記光電子増倍管に供給するように構成された少なくとも1つのトランジスタであって、前記電流は前記関連分割電圧に基づいている、トランジスタと、
を含む分圧器。
【請求項2】
前記能動回路のうち第1の能動回路に関連した前記関連抵抗器のうち第1の抵抗器は、前記能動回路のうち第2の能動回路に関連した前記関連抵抗器のうち第2の抵抗器と異なる公称抵抗を有し、前記異なる公称抵抗は、前記光電子増倍管の別々のポートで異なる分割電圧レベルを確立するように構成されている、請求項1に記載の分圧器。
【請求項3】
前記分割電圧のうち関連分割電圧を前記光電子増倍管の各ポートに提供するように構成された前記能動回路のうち関連能動回路を含む、請求項1に記載の分圧器。
【請求項4】
前記複数の能動回路の各々は少なくとも1つのコンデンサをさらに含み、前記コンデンサの各々は、第2の電流を前記光電子増倍管に提供するように構成されている、請求項1に記載の分圧器。
【請求項5】
前記複数の能動回路のうち第1の能動回路は前記光電子増倍管の集束格子ポートと陰極との間に結合されるように構成されており、前記複数の能動回路のうち第2の能動回路は前記光電子増倍管の第1のダイノードと前記集束格子ポートとの間に結合されるように構成されており、前記能動回路のうち第1の群の各々は前記光電子増倍管のダイノードの第1の群の各々の間に結合されるように構成されており、前記能動回路のうち第2の群の各々は前記光電子増倍管のダイノードの第2の群の各々の間に結合されるように構成されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の分圧器。
【請求項6】
前記複数の能動回路のうち前記第1の能動回路および前記複数の能動回路のうち前記第2の能動回路は、前記能動回路のうち前記第1の群の各能動回路によって提供される分割電圧よりも大きい分割電圧を提供するように構成されている、請求項5に記載の分圧器。
【請求項7】
前記能動回路のうち前記第2の群の各能動回路は、能動回路のうち前記第1の群の各能動回路によって提供される前記分割電圧よりも大きい分割電圧を提供するように構成されている、請求項5に記載の分圧器。
【請求項8】
前記能動回路のうち前記第2の群の第1の能動回路は、前記能動回路のうち前記第2の群の第2の能動回路よりも大きい分割電圧を提供するように構成されている、請求項7に記載の分圧器。
【請求項9】
シンチレーション検出器を構成する方法であって、
複数の関連分割電圧に供給電圧を分割し、前記複数の関連分割電圧の各分割電圧を少なくとも1つの関連トランジスタに供給する分圧回路を構成するステップであって、前記複数の関連分割電圧の各分割電圧は関連抵抗器の関連公称値に基づいており、前記少なくとも1つの関連トランジスタは第1の関連電流を前記光電子増倍管の複数のポートのうち関連ポートに供給するように構成されているステップと、
前記分圧回路を光電子増倍管に結合するステップと、
を含む方法。
【請求項10】
前記能動回路のうち第1の能動回路に関連した前記関連抵抗器のうち第1の抵抗器は、前記能動回路のうち第2の能動回路に関連した前記関連抵抗器のうち第2の抵抗器と異なる公称抵抗を有し、前記異なる公称抵抗は、前記光電子増倍管の別々のポートで異なる分割電圧レベルを確立するように構成されている、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つの関連コンデンサを設けるステップをさらに含み、前記関連コンデンサは、第2の関連電流を前記複数のポートのうち少なくとも1つの関連ポートに供給するように構成されている、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記複数の分割電圧のうち第1の分割電圧は前記光電子増倍管の集束格子ポートと陰極との間に提供されるように構成されており、前記複数の分割電圧のうち第2の分割電圧は前記光電子増倍管の第1のダイノードと前記集束格子ポートとの間に提供されるように構成されており、前記分割電圧のうち第1の群の各々は前記光電子増倍管のダイノードの第1の群の各々の間に提供されるように構成されており、前記分割電圧のうち第2の群の各々は前記光電子増倍管のダイノードの第2の群の各々の間に提供されるように構成されている、請求項9〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記複数の関連分割電圧のうち前記第1の分割電圧および前記複数の関連分割電圧のうち前記第2の分割電圧は、前記能動回路のうち前記第1の群の各能動回路によって提供される関連分割電圧よりも大きい電圧を提供するように構成されている、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記能動回路のうち前記第2の群の各能動回路は、能動回路のうち前記第1の群の各能動回路によって提供される前記電圧よりも大きい電圧を提供するように構成されている、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
能動回路のうち前記第2の群の第1の能動回路は、前記能動回路のうち前記第2の群の第2の能動回路よりも大きい電圧を提供するように構成されている、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
シンチレーション結晶と、
前記シンチレーション結晶と光通信している光電子増倍管と、
前記光電子増倍管に結合された分圧器であって、
能動回路に対して関連分割電圧を確立するように構成された少なくとも1つの関連抵抗器を各々が含む複数の能動回路と、
第1の電流を前記光電子増倍管に供給するように構成された少なくとも1つのトランジスタであって、前記電流は前記関連分割電圧に基づいている、トランジスタとを含む分圧器と、
前記光電子増倍管に結合された分析器と、
を含むシンチレーション検出システム。
【請求項17】
前記能動回路のうち第1の能動回路に関連した前記関連抵抗器のうち第1の抵抗器は、前記能動回路のうち第2の能動回路に関連した前記関連抵抗器のうち第2の抵抗器と異なる公称抵抗を有し、前記異なる公称抵抗は、前記光電子増倍管の別々のポートで異なる分割電圧レベルを確立するように構成されている、請求項16に記載のシンチレーション検出システム。
【請求項18】
光電子増倍管と、
前記光電子増倍管に供給する分圧器であって、
能動回路に対して関連分割電圧を確立するように構成された少なくとも1つの関連抵抗器を各々が含む複数の能動回路と、
第1の電流を前記光電子増倍管に供給するように構成された少なくとも1つのトランジスタであって、前記電流は前記関連分割電圧に基づいている、トランジスタとを含む分圧器と、
を含む医療機器。
【請求項19】
陽電子放射断層撮影装置、ガンマカメラおよびコンピュータ断層撮影装置からなる群から選択されている、請求項18に記載の医療機器。
【請求項20】
光電子増倍管と、
前記光電子増倍管に供給する分圧器であって、
能動回路に対して関連分割電圧を確立するように構成された少なくとも1つの関連抵抗器を各々が含む複数の能動回路と、
第1の電流を前記光電子増倍管に供給するように構成された少なくとも1つのトランジスタであって、前記電流は前記関連分割電圧に基づいている、トランジスタとを含む分圧器と、
を含む検層検出器。
【請求項21】
光電子増倍管と、
前記光電子増倍管に供給する分圧器であって、
能動回路に対して関連分割電圧を確立するように構成された少なくとも1つの関連抵抗器を各々が含む複数の能動回路と、
第1の電流を前記光電子増倍管に供給するように構成された少なくとも1つのトランジスタであって、前記電流は前記関連分割電圧に基づいている、トランジスタとを含む分圧器と、
を含む検査装置。
【請求項22】
熱中性子放射化分析検出器、荷物スキャナー、厚さ計、液面計、能動安全および明示検証、受動安全および明示検証、能動分光法、受動分光法、能動総合計算器および受動総合計算器からなる群から選択されている、請求項21に記載の検査装置。
【請求項23】
光電子増倍管と、
前記光電子増倍管に供給する分圧器であって、
能動回路に対して関連分割電圧を確立するように構成された少なくとも1つの関連抵抗器を各々が含む複数の能動回路と、
第1の電流を前記光電子増倍管に供給するように構成された少なくとも1つのトランジスタであって、前記電流は前記関連分割電圧に基づいている、トランジスタとを含む分圧器と、
を含む研究機器。
【請求項24】
分光計および熱量計からなる群から選択されている、請求項23に記載の研究機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−527087(P2011−527087A)
【公表日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516820(P2011−516820)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/049275
【国際公開番号】WO2010/002902
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(593150863)サン−ゴバン セラミックス アンド プラスティクス,インコーポレイティド (139)
【Fターム(参考)】