説明

検出装置

【課題】 走行方向変化時、高速走行時および障害物検出時に、障害物の検出とその状態の監視を適正かつ円滑に行う。
【解決手段】 スキャン制御ルーチン10aは、走行方向および走行速度に関する外部信号と、距離測定ルーチン10bからの障害物検出結果およびそれまでの距離に関する信号をもとに、レーザ光のスキャン軌跡を制御する。たとえば、右折時には、走行方向中心軸から右折方向に偏った部分のスキャン頻度が高められるスキャン軌跡を設定する。また、高速走行時には、走行方向中心部分のスキャン頻度が高められるスキャン軌跡を設定する。さらに、障害物が閾値距離よりも接近する位置に検出されたときには、障害物近傍のスキャン頻度が高められるスキャン軌跡を設定する。これにより、走行方向変化時、高速走行時および障害物検出時において、障害物の検出とその状態の監視が適正かつ円滑に行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を目標領域に照射して目標領域内の障害物を検出する検出装置に関し、たとえば、自動車や飛行機等の移動体に搭載して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、走行時の安全性を高めるために、目標領域にレーザ光を照射して走行方向前方の障害物を検出する検出装置が家庭用乗用車等に搭載されている。かかる検出装置は、レーザ光を目標領域内にてスキャンさせ、その反射光の有無から目標領域内の障害物を検出する。通常走行時には、走行方向前方に設定された目標領域をレーザ光がくまなくスキャンするようなスキャンパターンが設定される。各スキャン位置においてパルス光を出力し、その反射光を光検出器が受光するかによって、そのスキャン位置における障害物の有無を検出する。このとき同時に、パルス光の出力タイミングから反射光の受光タイミングまでの時間をもとに障害物までの距離が測定される。
【0003】
なお、以下の特許文献1には、加速度センサーを用いて走行方向とレーザ光の照射方向のズレを検出し、レーザ光の照射方向を走行方向に向けるように調整する技術が記載されている。
【特許文献1】特開平11−325885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる検出装置においては、たとえば走行方向が右旋回あるいは左旋回に変化するような場合、特に、これから旋回しようとする方向の障害物をいち早く検出して次の走行制御の適正化を図るのが重要となる。また、高速走行時においては、走行方向遠方の障害物をいち早く検出して走行制御に反映するのが重要となる。さらに、走行方向前方に障害物を検出した場合には、特に、その障害物がどのような動き、状態にあるのかを細かく監視する必要がある。
【0005】
上記特許文献1には、レーザ光の照射方向を走行方向に向けるように調整する技術が記載されているものの、高速走行時や障害物検出時におけるスキャン制御については記載されておらず、また、走行方向変化時においても、単に、レーザ光の照射方向を走行方向に向けるように調整することが記載されるに留まっている。
【0006】
そこで、本発明は、スキャン制御の適正化を図ることにより、走行方向変化時、高速走行時および障害物検出時において障害物の動きや状態を精度よく検出できる検出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に鑑み本発明は、以下の特徴を有する。
【0008】
請求項1の発明は、レーザ光を目標領域に照射して前記目標領域内の障害物を検出する検出装置において、前記レーザ光のスキャン軌跡を該検出装置が搭載される移動体の移動状態に関する信号に基づいて制御するスキャン制御手段を有することを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の検出装置において、前記スキャン制御手段は、前記移動体の進行方向および/もしくは進行速度に関する信号に基づいて、前記レーザ光のスキャン軌跡を設定することを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2に記載の検出装置において、前記スキャン制御手段は、前記移動体の進行方向に関する信号に基づいて、前記レーザ光のスキャン軌跡を、前記進行方向の中心軸から前記進行方向の変化方向に偏った部分のスキャン頻度が高められるスキャン軌跡に設定することを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項3に記載の検出装置において、前記スキャン制御手段は、前記移動体の進行方向に関する信号に基づいて、前記目標領域を、前記進行方向の中心軸から前記進行方向の変化方向にシフトさせることを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、請求項3または4に記載の検出装置において、前記スキャン制御手段は、前記移動体の進行方向に関する信号に基づいて、前記目標領域内における前記レーザ光のスキャンパターンを、前記目標領域の中心部から前記進行方向の変化方向に偏った部分のスキャン頻度が高められるスキャンパターンに設定することを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明は、請求項2に記載の検出装置において、前記スキャン制御手段は、前記移動体の進行速度に関する信号に基づいて、前記レーザ光のスキャン軌跡を、前記進行方向の中心部分のスキャン頻度が高められるスキャン軌跡に設定することを特徴とする。
【0014】
請求項7の発明は、請求項6に記載の検出装置において、前記スキャン制御手段は、前記移動体の進行速度に関する信号に基づいて、前記目標領域を、前記進行方向の中心部分に向けて縮小させることを特徴とする。
【0015】
請求項8の発明は、請求項6または7に記載の検出装置において、前記スキャン制御手段は、前記移動体の進行速度に関する信号に基づいて、前記目標領域内における前記レーザ光のスキャンパターンを、前記目標領域の中心部分のスキャン頻度が高められるスキャンパターンに設定することを特徴とする。
【0016】
請求項9の発明は、レーザ光を目標領域に照射して前記目標領域内の障害物を検出する検出装置において、前記レーザ光のスキャン軌跡を前記障害物の検出結果に基づいて制御するスキャン制御手段を有することを特徴とする。
【0017】
請求項10の発明は、請求項9に記載の検出装置において、前記スキャン制御手段は、前記障害物の検出結果に基づいて、前記レーザ光のスキャン軌跡を、前記障害物近傍のスキャン頻度が高められるスキャン軌跡に設定することを特徴とする。
【0018】
請求項11の発明は、請求項10に記載の検出装置において、前記スキャン制御手段は、前記障害物の検出結果に基づいて、前記スキャン軌跡の原点を前記障害物の検出位置に設定し、前記目標領域内における前記レーザ光のスキャンパターンを、前記設定された原点に反復回帰するスキャンパターンに設定することを特徴とする。
【0019】
請求項12の発明は、請求項9ないし11の何れかに記載の検出装置において、前記スキャン制御手段は、前記障害物との距離が閾値距離よりも小さいときに、前記レーザ光のスキャン軌跡を前記障害物近傍のスキャン頻度が高められるスキャン軌跡に設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1ないし8の発明によれば、走行方向変化時および高速走行時にスキャン軌跡の適正化が図られる。これにより、走行方向変化方向および走行方向遠方の障害物を精度よく検出することができる。
【0021】
すなわち、請求項3ないし5の発明によれば、走行方向中心軸から走行方向の変化方向に偏った部分のスキャン頻度が高められるため、走行方向の変化方向にある障害物をいち早く検出することができる。また請求項6ないし8の発明によれば、走行方向中心部分のスキャン頻度が高められるため、走行方向遠方の障害物をいち早く検出することができる。
【0022】
請求項9ないし12の発明によれば、障害物検出時にスキャン軌跡の適正化が図られる。これにより、障害物の動きや状態を精度よく検出することができる。
【0023】
すなわち、請求項10および11の発明によれば、障害物近傍のスキャン頻度が高められるため、障害物の動きや状態を細かく検出することができる。また、請求項12の発明によれば、障害物が接近しているときにのみ障害物近傍のスキャン頻度が高められ、障害物が未だ遠方にあり障害物の動きや状態を細かく検出する必要がないときは障害物近傍のスキャン頻度は高められない。よって、不必要な障害物の監視を回避でき、スキャン制御の適正化を図ることができる。
【0024】
本発明の特徴は、以下に示す実施形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施形態は、あくまでも実施形態の例示であって、これにより本発明ないし各構成要件の用語の意義が制限されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照して説明する。なお、本実施の形態は、自動車に搭載されるビーム照射装置に本発明を適用したものである。本実施の形態では、自動車前方からビームがスキャン照射されることにより、スキャン領域内の障害物の有無と、障害物までの距離が測定される。
【0026】
図1に実施の形態に係るビーム照射装置の構成を示す。
【0027】
図示の如く、ビーム照射装置は、DSP(Digital Signal Processor)制御回路10と、DAC(Digital Analog Converter)20と、レーザ駆動回路30と、アクチュエータ駆動回路40と、ビーム照射ヘッド50と、PSD(Position Sensitive Detector)信号処理回路60と、ADC(Analog Digital Converter)70と、PD(Photo Detector)信号処理回路80と、ADC90を備えている。
【0028】
DSP制御回路10は、レーザ駆動回路30およびアクチュエータ駆動回路40を駆動制御するためのデジタル信号をDAC20に出力する。また、ADC90から入力されるデジタル信号をもとに、スキャン領域内に含まれる障害物の位置と障害物までの距離を検出する。DSP制御回路10には、スキャン制御ルーチン10aと距離測定ルーチン10bが配備されている。
【0029】
このうち、スキャン制御ルーチン10aには、自動車の操舵方向と速度に関する信号が外部信号として入力され、また、距離測定ルーチン10bによって検出された障害物の位置と障害物までの距離に関する信号が入力される。スキャン制御ルーチンは、これらの信号をもとに、スキャンパターンないしスキャン領域を変更する。スキャン制御ルーチンにおけるスキャン制御については、追って詳述する。
【0030】
距離測定ルーチン10bには、高周波の内部クロックが入力されている。距離測定ルーチンは、各スキャン位置において出力されるパルス光の出力タイミングからその反射光の受光タイミングまでのクロック数Nをカウントする。そして、カウントしたクロック数Nをもとに、当該スキャン位置における障害物の有無と障害物までの距離Lを検出する。たとえば、内部クロックの周期をTとして、L=C(光速)×T×N/2を演算することにより障害物までの距離を検出する。なお、予め決められた時間内に反射光を受光できない場合は、当該スキャン位置には障害物が存在しないとされる。
【0031】
DAC20は、DSP制御回路10から入力されたデジタル信号をアナログ信号(制御信号)に変換してレーザ駆動回路30およびアクチュエータ駆動回路40に出力する。レーザ駆動回路30は、DAC20から入力された制御信号に応じて、ビーム照射ヘッド50内の半導体レーザ100を駆動する。アクチュエータ駆動回路40は、DAC20から入力された制御信号に応じて、ビーム照射ヘッド50内のレンズアクチュエータ300を駆動する。
【0032】
ビーム照射ヘッド50は、前方空間に設定された目標領域にレーザ光をスキャンさせながら照射する。図示の如く、ビーム照射ヘッド50は、半導体レーザ100と、アパーチャ200と、レンズアクチュエータ300と、ビームスプリッタ400と、集光レンズ500と、PSD600と、受光レンズ700と光検出器800を備えている。
【0033】
半導体レーザ100から出射されたレーザ光は、アパーチャ200によって所望の形状に整形された後、レンズアクチュエータ300に支持された照射レンズに入射される。ここで、照射レンズは、同図のY−Z平面方向に変位可能となるよう、レンズアクチュエータ300によって支持されている。したがって、照射レンズを通過したレーザ光は、レンズアクチュエータ300の駆動に応じて、Y−Z平面方向に出射角度が変化する。これにより、目標領域におけるレーザ光のスキャンが行われる。
【0034】
照射レンズを通過したレーザ光は、ビームスプリッタ400によってその一部が反射され、照射レーザ光(目標領域に照射されるレーザ光)から分離される。分離されたレーザ光(分離光)は、集光レンズ500を通してPSD600上に収束される。PSD600は、同図のX−Y平面に平行な受光面を有しており、この受光面上における分離光の収束位置に応じた電流を出力する。ここで、受光面上における分離光の収束位置と目標領域上における前記照射レーザ光の照射位置は一対一に対応している。よって、PSD60から出力される電流は、目標領域上における前記照射レーザ光の照射位置に対応するものとなっている。なお、PSD600の構成および電流の出力動作については、図4、図5を参照しながら追って詳述する。
【0035】
PSD600からの出力電流はPSD信号処理回路60に入力される。PSD信号処理回路60は、入力された電流から分離光の収束位置を表す電圧信号をADC70に出力する。ADC70は、入力された電圧信号をデジタル信号に変換してDSP制御回路10に出力する。かかる電圧信号はDSP制御回路10内のスキャン制御ルーチン10aに入力される。スキャン制御ルーチン10aは、入力された電圧信号をもとに、受光面上における分離光の収束位置を検出する。
【0036】
なお、DSP制御回路10には、レーザ光の照射位置を目標領域内においてスキャンさせるためのテーブル(スキャンテーブル)と、このテーブルに従ってレーザ光をスキャンさせたときの、受光面上における分離光の収束位置の軌道を示すテーブル(軌道テーブル)が配備されている。
【0037】
スキャン制御ルーチン10aは、レーザ光のスキャン動作時、スキャンテーブルを参照しながらアクチュエータ駆動回路40を制御するための信号をDAC20に出力する。また、同時に、ADC70から入力された信号をもとに受光面上における分離光の収束位置を検出し、検出した位置と軌道テーブルにて規定された所期の収束位置とを比較して、検出位置が所期の収束位置に引き込まれるよう、アクチュエータ駆動回路40を制御するための信号をDAC20に出力する。かかるサーボ動作によって、照射レーザ光は、スキャンテーブルにて規定された軌道に沿うよう目標領域内をスキャンする。なお、サーボ動作の詳細は、図7を参照しながら追って詳述する。
【0038】
さらに、スキャン制御ルーチン10aは、レーザ光のスキャン動作時、半導体レーザ100の出射パワーを低レベルPwaに設定するための信号を、DAC20を介してレーザ駆動回路30に出力する。また、これと同時に、受光面上における分離光の収束位置を監視し、この収束位置が、障害物検出や距離検出等を行うための位置(発光点)として予め設定され位置に到達したタイミングにて、半導体レーザ100の出射パワーを一定期間だけパルス状に高レベルPwbに設定するための信号を、DAC20を介してレーザ駆動回路30に出力する。ここで、パワーPwaは、少なくとも、上記受光面上における分離光の位置検出を行える程度の電流がPSD600から出力される程度のものとなるようなパワーに設定される。また、パワーPwbは、所期の障害物検出や距離検出等を行うに十分なパワーに設定される。しかして、照射レーザ光は、目標領域内を低パワーにてスキャンしながら、発光点に到達したタイミングにて高パワーに発光する。
【0039】
目標領域内の各スキャン位置に障害物が存在するとき、高パワーにて発光されたレーザ光は、障害物によって反射され、その反射光が、受光レンズ700を介して光検出器800にて受光される。光検出器800は、受光量に応じた大きさの電気信号をPD信号処理回路80に出力する。PD信号処理回路80は、光検出器800から入力された電気信号を増幅およびノイズ除去してADC90に出力する。ADC90は、入力された信号をデジタル信号に変換して距離測定ルーチン10bに出力する。距離測定ルーチン10bは、ADC90から入力されたデジタル信号をもとに反射レーザ光の受光タイミングを検出し、この受光タイミングと、スキャン制御ルーチン10aから入力される高パワーレーザ光の出力タイミングとから、当該スキャン位置における障害物までの距離を検出する。そして、その検出結果をスキャン制御ルーチン10aに出力する。
【0040】
図2に、レンズアクチュエータ300の構成(分解斜視図)を示す。
【0041】
同図を参照して、照射レンズ301は、レンズホルダー302中央の開口に装着される。レンズホルダー302には、4つの側面にそれぞれコイルが装着されており、各コイル内にヨーク303中央の突出部が図示矢印のように挿入される。各ヨーク303は、両側の舌片が一対のヨーク固定部材305の凹部に嵌入される。さらに、それぞれのヨーク固定部材305に、ヨーク303の舌片を挟むようにして磁石304が固着される。この状態にて、ヨーク固定部材305が磁石304とともにベース(図示せず)に装着される。
【0042】
さらに、ベースには一対のワイヤー固定部材306が装着されており、このワイヤー固定部材306にワイヤー307を介してレンズホルダー302が弾性支持される。レンズホルダー302には四隅にワイヤー307を嵌入するための孔が設けられている。この孔にそれぞれワイヤー307を嵌入した後、ワイヤー307の両端をワイヤー固定部材306に固着する。これにより、レンズホルダー302がワイヤー307を介してワイヤー固定部材306に弾性支持される。
【0043】
駆動時には、レンズホルダー302に装着されている各コイルに、上記アクチュエータ駆動回路40から駆動信号が供給される。これにより、電磁駆動力が発生し、照射レンズ301がレンズホルダーとともに2次元駆動される。
【0044】
図3は、レンズアクチュエータ300を駆動して照射レンズ301を一方向に変位させたときの、照射レーザ光の出射角度とPSD受光面上における分離光(同図ではモニター光)の収束位置の関係(シミュレーション)を示すものである。同図に示す如く、分離光の変位量は照射レーザ光の出射角度に比例して増加する。なお、同図の特性にうねりが生じているのは、照射レンズを2次元駆動することによって、PSD受光面上の分離光に収差が生じるためである。
【0045】
図4に、PSD600の構造を示す。なお、同図は、図1において、PSD600をY軸方向から見たときの構造を示すものである。
【0046】
図示の如く、PSD600は、N型高抵抗シリコン基板の表面に、受光面と抵抗層を兼ねたP型抵抗層を形成した構造となっている。抵抗層表面には、図1のX方向における光電流を出力するための電極X1、X2と、図1のY方向における光電流を出力するための電極Y1、Y2(同図では図示省略)が形成されている。また、裏面側には共通電極が形成されている。
【0047】
受光面に分離光が収束されると、収束位置に光量に比例した電荷が発生する。この電荷は光電流として抵抗層に到達し、各電極までの距離に逆比例して分割されて、電極X1、X2、Y1、Y2から出力される。ここで、電極X1、X2、Y1、Y2から出力される電流は、分離光の収束位置から各電極までの距離に逆比例して分割された大きさを有している。よって、電極X1、X2、Y1、Y2から出力される電流値をもとに、受光面上における収束位置を検出することができる。
【0048】
図5(a)は、PSD600の有効受光面を示す図である。また、図5(b)は、電極X1、X2、Y1、Y2から出力される電流をもとにPSD信号処理回路60にて生成される位置検出電圧と、有効受光面上における分離光の収束位置の関係を示す図である。なお、図5(a)では有効受光面を正方形としている。また、図5(b)では、有効受光面のセンター位置を基準位置(0位置)として、基準位置に対する収束位置のX方向およびY方向の変位量と出力電圧の関係を示している。
【0049】
上記PSD信号処理回路60は、電極X1、X2、Y1、Y2から出力される電流をもとに、収束位置のX方向変位量に対応する電圧Xoutと、Y方向変位量に対応する電圧Youtを生成し、ADC70を介してDSP制御回路10に出力する。DSP制御回路10は、入力された電圧XoutとYoutから収束位置のX方向変位量とY方向変位量を検出する。
【0050】
図6を参照して、本実施例におけるスキャン動作について説明する。
【0051】
同図(a)に示すように、ビーム照射装置の前方空間に設定された目標領域をマトリクス状に分割したとき、照射レーザ光は、スキャン軌跡上のマトリクスを順番に照射するようにしてスキャンされる。ここで、マトリクスのスキャン順序は任意に設定できる。同図(b)は、左上隅のマトリクス位置から順次1ラインずつスキャンするようにスキャン軌跡が設定されたときのものである。なお、スキャン軌道(スキャン順序)は、上述の如く、DSP制御回路10内のスキャンテーブルによって規定される。
【0052】
同図(b)のようにしてスキャンされる場合、PSD600の受光面上における分離光の収束位置は、同図(c)に示す軌道に沿って移動する。ここで、同図(c)の軌道は、同図(b)のスキャン軌道に対し、一対一に対応している。したがって、同図(c)の軌道上における収束位置から照射レーザ光のスキャン位置を識別することができる。なお、この場合、同図(c)の軌道は、上述の如く、DSP制御回路10内の軌道テーブルに従うこととなる。
【0053】
ビーム照射装置においては、同図(b)に示すスキャン軌道に沿って照射レーザ光がスキャンされるのが最も理想的である。しかし、通常は、ビーム照射装置に対して不所望な振動や外乱等が加えられることにより、照射レーザ光のスキャン位置が所期のスキャン軌道から外れてしまう。この場合、かかるスキャン位置の外れに応じて、有効受光面上における分離光の収束位置も同図(c)に示す軌道から外れることとなる。
【0054】
図7は、有効受光面上における分離光のスポット軌道の一例を示すものである。かかる場合、スキャン制御ルーチン10aは、上述の如く、分離光の収束位置を目標軌道に引き込むよう、アクチュエータ駆動回路40にサーボ信号を供給する。
【0055】
今、分離光の収束位置がP(x,y)にあり、このとき、目標軌道上にあるべき収束位置がP’(x',y')であるとする。ここで、目標軌道上の収束位置P’(x',y')は、DSP制御回路10内に設定された軌道テーブルから取得される。具体的には、照射レーザ光のスキャン位置に対応する収束位置が軌道テーブルから取得される。
【0056】
このとき、スキャン制御ルーチン10aは、P(x,y)とP’(x',y')をもとに、Ex=x−x’とEy=y−y’を演算し、演算結果をもとに、Ex=0、Ey=0になるよう、アクチュエータ駆動回路40にサーボ信号を供給する。これにより、照射レーザ光のスキャン位置は、当該タイミングにおいてスキャン軌道上にあるべきスキャン位置方向に引き戻される。これに応じて、分離光の収束位置も、当該タイミングにおいて目標軌道上にあるべき収束位置P’(x',y')の方向に引き込まれる。かかるサーボ動作によって、照射レーザ光は所期のスキャン軌道に追従するようスキャンされる。
【0057】
このようにサーボを掛けながらスキャン動作を行っている間、スキャン制御ルーチン10aは、上述の如く、分離光の収束位置が、障害物検出や距離検出等を行うための位置(発光点)として予め設定され位置に到達したかを監視する。そして、収束位置が発光点に到達したタイミングにて、半導体レーザ100の出射パワーを一定期間だけパルス状に高レベルPwbに設定する。
【0058】
ここで、収束位置が発光点に到達したかの判別は、収束位置と発光点の間の距離差が予め設定した距離差より小さくなったかによって行う。これにより、収束位置が目標軌道から多少外れていても、所期の収束位置近傍で、高パワーの発光を行うことができる。
【0059】
図8に、スキャン動作時のフローチャートを示す。
【0060】
S101にてスキャン動作が開始されると、S102にて半導体レーザ100から低パワー(Pwa)のレーザ光が出射された後、S103にて照射レーザ光の照射位置がホームポジションへ移動される。なお、ホームポジションは、たとえば、図6(b)に示すマトリクスのうち、左端で且つ上下方向中央あたりのマトリクス位置に設定される。さらに、S104にて照射レーザ光に対する軌道サーボがONとされた後、S105にてスキャン動作が開始される。
【0061】
次に、S106にてスキャン位置が発光点に到達したかが判別される。発光点に到達していなければ、S108にてスキャン動作が終了したかが判別された後、S105に戻り、軌道サーボONの状態にて引き続きスキャン動作が実行される。他方、スキャン位置が発光点に到達した場合には、S107にて半導体レーザ100の出射レーザパワーが一定期間だけパルス状に高パワーPwbに設定され、高パワーの照射レーザ光が目標領域に照射される。このとき、目標領域からの反射光を受光することにより、当該ビーム照射装置を搭載した検出器において、障害物測定や距離測定等の処理が行われる。
【0062】
しかる後、S108にてスキャン動作が終了したかが判別され、終了していなければ、S105に戻り、上述のスキャン動作(低パワーPwaによる)が繰り返される。他方、スキャン動作が終了すれば、S109にて軌道サーボがOFFとされた後、S110にて半導体レーザがOFFとされる。
【0063】
このように、本実施の形態によれば、照射レーザ光のスキャン位置が所期のスキャン軌道から外れた場合にも、これを当該スキャン軌道に円滑に引き戻すことができる。よって、不所望な振動や外乱がビーム照射装置に加えられた場合にも、安定したスキャン動作を実現することができる。
【0064】
なお、上記では、図7を参照して説明したように、分離光の収束位置P(x,y)を、当該タイミングにおいて目標軌道上にあるべき収束位置P’(x',y')に引き込むようにしてサーボを掛けるようにしたが、この他のサーボ処理にて、分離光の収束位置を目標軌道上に引き込むようにすることもできる。たとえば、図9に示すように、当該タイミングよりΔTだけ経過したタイミングにおいて目標軌道上にあるべき収束位置P’(xa',ya')に引き込むようにすることもできる。この場合、DSP制御回路10は、P(x,y)とP’(xa',ya')をもとに、Ex=x−xa’とEy=y−ya’を演算し、演算結果をもとに、Ex=0、Ey=0になるよう、アクチュエータ駆動回路40にサーボ信号を供給する。こうすると、照射レーザ光のスキャン位置を次に予定されているスキャン位置に円滑に引き込むことができ、効率的なスキャン動作を実現することができる。
【0065】
次に、スキャンパターンとスキャン領域の設定について説明する。
【0066】
図10に、上記スキャン制御ルーチン10aにて設定され得るスキャンパターンのバリエーションを示す。なお、これらのスキャンパターンは、右左折時、高速走行時あるいは障害物検出時に用いて好ましいものである。これらのスキャンパターンは、上記の如く、レーザ光の照射位置を目標領域内においてスキャンさせるためのテーブル(スキャンテーブル)と、このテーブルに従ってレーザ光をスキャンさせたときの受光面上における分離光の収束位置の軌道を示すテーブル(軌道テーブル)として、DSP制御回路10に保持される。
【0067】
図10(a)は、スキャン領域中心部のスキャン比重を高める場合のスキャンパターンである。このスキャンパターンは、高速走行時に用いて好ましいものである。すなわち、高速走行時には、自動車の走行路上、遠方に存在する障害物をいち早く検出する必要がある。図10(a)のように、スキャン領域中心部のスキャン比重を高めることにより、直進遠方位置のスキャン頻度が高められ、これにより、遠方位置にある障害物を円滑に検出することができる。
【0068】
図10(b)は、左右幅方向中央部のスキャン比重を高める場合のスキャンパターンである。このスキャンパターンも図10(a)の場合と同様、高速走行時に用いて好ましいものである。すなわち、このスキャンパターンにおいても、直進遠方位置のスキャン頻度が高められるため、直進遠方位置にある障害物を円滑に検出することができる。
【0069】
図10(c)は、上下幅方向中央部のスキャン比重を高める場合のスキャンパターンである。このスキャンパターンも、上記のパターンと同様、高速走行時に用いて好ましいものである。すなわち、このスキャンパターンにおいても、直進遠方位置のスキャン頻度が高められ、直進遠方位置にある障害物を円滑に検出することができる。また、このパターンの場合は、図10(b)の場合に比べ、スキャン頻度が大きい領域が左右方向に拡張されるため、障害物の検出精度を高め得る領域を直進左右方向に拡張することができる。よって、直進進行路に対する障害物の急な飛び出しの可能性等を検出することができる。
【0070】
図10(d)は、左右幅方向右側部分のスキャン比重を高める場合のスキャンパターンである。このスキャンパターンは、右折走行時に用いて好ましいものである。すなわち、右折走行時には、自動車が曲がろうとする右側部分に障害物が存在しないかをいち早く検出する必要がある。図10(d)のように、右側領域のスキャン比重を高めることにより、右側領域のスキャン頻度が高められ、これにより、進行方向右側位置にある障害物を円滑に検出することができる。なお、左右幅方向左側部分のスキャン比重を高める場合のスキャンパターンは、図10(d)のスキャンパターンを左右対称に折り返したものとなる。この場合は、左側領域のスキャン頻度が高められ、進行方向左側位置にある障害物を円滑に検出することができる。
【0071】
図10(e)は、左右幅方向右側部分のスキャン比重を高める場合のスキャンパターンである。このスキャンパターンも、上記図10(d)のパターンと同様、右折走行時に用いて好ましいものである。すなわち、このスキャンパターンにおいても、右側領域のスキャン頻度が高められるため、進行方向右側位置にある障害物を円滑に検出できる。なお、左右幅方向左側部分のスキャン比重を高める場合のスキャンパターンは、図10(e)のスキャンパターンを左右対称に折り返したものとなる。この場合は、左側領域のスキャン頻度が高められ、進行方向左側位置にある障害物を円滑に検出することができる。
【0072】
図10(f)は、スキャン領域内のある一点(目標位置)のスキャン比重を高める場合のスキャンパターンである。このスキャンパターンは、障害物検出時に用いて好ましいものである。すなわち、障害物検出位置を目標位置に設定することにより、障害物位置近傍のスキャン頻度が高められ、障害物の位置変化等を円滑に検出できる。なお、図10(f)のスキャンパターンは、図10(a)のスキャンパターンのスキャン原点(図10(a)ではスキャン領域中心部)を目標位置に変更する演算処理を実行することにより取得することができる。この場合、DSP制御回路10には、図10(a)のスキャンパターンが保持される。スキャン制御ルーチン10aは、保持されたスキャンパターンに対して、スキャン原点を変更するための演算処理を実行する。
【0073】
図11および図12は、右折走行時におけるスキャン領域とスキャンパターンの変更例を示すものである。
【0074】
まず、図11を参照して、直進走行時には、同図(a)のスキャンパターンが設定されている。この状態から、ドライバーがハンドルを右側に旋回し右折操舵に関する信号がスキャン制御ルーチン10aに入力されると、同図(b)(c)(d)に示す如く、スキャン領域のシフトあるいはスキャンパターンの変更が行われる。
【0075】
図11(b)は、進行方向前方の中心軸に対してスキャン領域が右側にそのままシフトされるときの例を示している。この場合、進行方向前方の中心軸に対して非対称な範囲(右側にシフトした範囲)がスキャンされる。これにより、自動車が曲がろうとする右側部分に障害物が存在しないかをいち早く検出することができる。この場合、DSP制御回路10には図11(a)のスキャンパターンが保持される。また、スキャン制御ルーチン10aは、保持されたスキャンパターンに対して、スキャン領域を操舵方向およびその角度に応じて変更するための処理を実行する。なお、この場合、スキャン領域の中心軸と進行方向の中心軸との角度は、たとえば、操舵角度に対して単純増加となるように設定される。 図11(c)は、スキャン領域はシフトせずに、スキャンパターンを右側領域の比重が高められるパターンに変更するときの例を示している。この場合も、右折方向に障害物が存在しないかをいち早く検出することができる。また、進行方向前方の中心軸に対して対称な領域がスキャンされるため、図11(a)の場合と異なり、進行方向前方方向の障害物も検出できる。なお、この場合、DSP制御回路10には、図11(a)のスキャンパターンの他に、図11(c)のスキャンパターンが保持される。また、スキャン制御ルーチン10aは、保持されたスキャンパターンのうち操舵方向に対応するスキャンパターンを選択設定する処理を実行する。
【0076】
図11(d)は、スキャン領域を右側にシフトさせ、さらに、スキャンパターンを右側領域の比重が高められるパターンに変更するときの例を示している。この場合は、図11(b)および図11(c)の場合よりもさらに右折方向に障害物が存在しないかをいち早く検出することができる。なお、この場合、DSP制御回路10には、図11(a)のスキャンパターンの他に、図11(c)のスキャンパターンが保持される。また、スキャン制御ルーチン10aは、保持されたスキャンパターンのうち、舵方向に対応するスキャンパターンを選択設定する処理と、操舵方向およびその角度に応じてスキャン領域を変更するための処理を実行する。
【0077】
図12は、図11の例において、直進走行時のスキャンパターンを、図11(a)のスキャンパターンから図12(a)のスキャンパターンに置き換えた場合を例示するものである。この場合、右折操舵に関する信号がスキャン制御ルーチン10aに入力されると、同図(b)(c)(d)に示す如く、スキャン領域のシフトあるいはスキャンパターンの変更が行われる。これらの例においては、図11(a)(b)(c)の例と同様、右側部分に障害物が存在しないかをいち早く検出することができる。
【0078】
なお、左折操舵時の場合には、図11および図12の例とは反対に、スキャン領域が左側にシフトされ、あるいは、スキャンパターンが左側領域加重のパターンに変更される。
【0079】
図13は、走行速度が増加したときのスキャン領域とスキャンパターンの変更例を示すものである。図中、速度1は第1の閾値速度を越えるまでの走行速度、速度2は第1の閾値速度を越えてから第2の閾値速度を越えるまでの走行速度、速度3は第2の閾値速度を越える速度である。この場合、スキャン制御ルーチン10aは、外部信号として走行速度に関する信号をモニタし、そのときの速度に応じて、スキャン領域とスキャンパターンを適宜変更する。
【0080】
図13(a)(b)の例では、速度の増加に応じてスキャン領域が次第に縮小される。これにより、直進遠方位置のスキャン頻度が高められ、直進遠方位置にある障害物を円滑に検出できるようになる。なお、この場合、DSP制御回路10には、速度1のときに適用されるスキャンパターンが保持される。また、スキャン制御ルーチン10aは、スキャン領域を走行速度に応じて変更するための処理を実行する。
【0081】
図13(c)の例では、まず、速度の増加に応じてスキャンパターンが中央部加重のパターンに変更され、さらに速度が増加するとスキャン領域が縮小される。この例においても、直進遠方位置のスキャン頻度が高められ、直進遠方位置にある障害物を円滑に検出できる。なお、この場合、DSP制御回路10には、速度1のときに適用されるスキャンパターンと速度1のときに適用されるスキャンパターンが保持される。また、スキャン制御ルーチン10aは、そのときの速度に応じてスキャンパターンを選択設定する処理と、スキャン領域を走行速度に応じて変更するための処理を実行する。
【0082】
図14は、障害物検出時におけるスキャンパターンの変化を示すものである。
【0083】
同図(a)に示す通常走行時において、同図(b)または(c)に示す如く、スキャン領域内に障害物が検出されると、スキャンパターンの原点位置が障害物検出位置に変更され、それに応じてスキャン領域のスキャン軌跡が同図に示すように変更される。このスキャン軌跡の変更により、障害物位置近傍のスキャン頻度が高められ、障害物の位置変化等を円滑に検出できる。この場合、DSP制御回路10には、図14(a)のスキャンパターンが保持される。また、スキャン制御ルーチン10aは、保持されたスキャンパターンに対して、スキャン原点を障害物検出位置に変更してスキャン軌跡を再設定するための演算処理を実行する。
【0084】
図15は、操舵方向と速度が変化したことに応じてスキャンパターンを変更する場合の処理フローチャートである。
【0085】
スキャン動作が開始されると、まず、スキャンパターンの原点位置がスキャン領域の中心位置に設定される。(S11)さらに、通常走行時に適用されるべきスキャンパターンがスキャン動作時のパターンとして設定される(S12)。次に、逐次入力される外部信号をもとに、進行方向に変化があるか(右旋回操舵or左旋回操舵)が判別され(S13)、進行方向に変化があれば(S13:Yes)、初期設定されたスキャンパターンが、変化方向のスキャン比重を高めるスキャンパターン(たとえば、図11b〜dまたは図12b〜d)に変更される(S14)。進行方向に変化がなければ(S13:No)、初期設定されたスキャンパターンのままとされる。
【0086】
このようにしてスキャンパターンの設定がなされると、次に、そのとき入力される走行速度に関する外部信号をもとに走行速度が所定の閾値を越えているかが判別される(S15)。ここで、走行速度が閾値を越えていれば(S15:Yes)、走行速度に応じてスキャン領域が通常のスキャン領域よりも縮小され、走行方向中央部分のスキャン比重が高められる(S16)。走行速度が閾値を越えていなければ(S15:No)、通常のスキャン領域が当該スキャン動作時のスキャン領域として設定される。
【0087】
しかして、スキャンパターンとスキャン領域が設定されると、そのスキャン領域にスキャンパターンを当てはめて当該スキャン動作時のスキャン軌跡が設定される。そして、このスキャン軌跡に沿ってレーザ光がスキャンされ、そのときの反射光の状態から、各スキャン位置における障害物の検出と障害物までの距離測定処理が行われる(S17)。
【0088】
このようにして、1回のスキャン動作が終了すると、S11に戻り、同様の処理が繰り返し行われる。そして、スキャン毎に障害物の検出と障害物までの距離測定処理が行われ、自動車の走行状態を制御する制御回路等に出力される。
【0089】
なお、S16では、スキャン領域を縮小するに代えて、別のスキャンパターンを設定するようにしても良い。たとえば、S13にて進行方向に変化がないとされた場合は、S12にて初期化されたスキャンパターンを、S16にて高速走行時に適したスキャンパターンに変更するようにしても良い。具体的には、初期設定されたスキャンパターンが図12(a)に示すものである場合、これをS16にて図10(a)または(b)のものに変更するようにしても良い。あるいは、S13にて設定された右左折時に適したスキャンパターン、たとえば、図11(c)または図12(c)のスキャンパターンを、高速走行時と右左折時の両方に適したスキャンパターン、たとえば、スキャン領域のうち進行方向中央部と操舵方向側部のスキャン頻度を高めたスキャンパターンに変更するようにしてもよい。
【0090】
また、S14では、スキャンパターンの変更に代えて、あるいは、スキャンパターンの変更とともに、たとえば図11(b)(d)および図12(b)(d)に示すように、スキャン領域を操舵方向にシフトさせるようにしても良い。
【0091】
なお、図15は、操舵方向と速度が変化したことに応じてスキャンパターンを変更する場合の処理フローチャートであるが、操舵方向の変化のみに応じてスキャンパターンを変更する場合には、図15のS15、16が省略される。また、速度の変化のみに応じてスキャンパターンを変更する場合には、図15のS13、14が省略される。
【0092】
図15のフローチャートによれば、右左折時に操舵方向に存在する障害物をいち早く検出できるとともに、高速走行時に走行方向遠方に存在する障害物をいち早く検出することができる。
【0093】
図16は、障害物を検出したことに応じてスキャンパターンを変更する場合の処理フローチャートである。
【0094】
スキャン動作が開始されると、まず、スキャンパターンの原点位置がスキャン領域の中心位置に設定され(S21)、さらに、通常走行時に適用されるべきスキャンパターンがスキャン動作時のパターンとして設定される(S22)。次に、設定されたスキャン領域にスキャンパターンを当てはめてスキャン動作時のスキャン軌跡が設定される。そして、このスキャン軌跡に沿ってレーザ光がスキャンされ、そのときの反射光の状態から、各スキャン位置における障害物の検出と障害物までの距離測定が行われる(S23)。
【0095】
かかる処理においてスキャン領域内に障害物が検出されると、各スキャン位置における障害物までの距離をもとに最も近いスキャン位置(スキャン領域内の座標位置)が決定される(S24)。そして、この最も近いスキャン位置における障害物までの距離が閾値距離よりも小さいかが判別され(S25)、小さければ(S25:Yes)、この位置をスキャン座標の原点位置に設定して、設定後の原点位置に応じたスキャン軌跡が演算により求められる(S26)。次のスキャンタイミングでは、求めたスキャン軌跡に沿ってレーザ光がスキャンされる。そして、各スキャン位置における障害物の検出と障害物までの距離の測定処理が行われる(S23)。
【0096】
かかるスキャン軌跡の再設定とそれによるスキャン動作は、スキャン領域内において障害物が検出されなくなるか、あるいは、最も近いスキャン位置における障害物までの距離が閾値距離よりも大きくなるまで繰り返される(S25:Yes→S26)。S25における判別がNoとなると、S21に戻り、スキャン原点位置とスキャンパターンが初期設定され(S21、S22)、これをもとにした障害物検出と距離測定が行われる(S23)。
【0097】
図16のフローチャートによれば、障害物の検出に応じて障害物位置近傍のスキャン頻度が高められるため、障害物の位置変化等を円滑に検出できる。
【0098】
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
【0099】
たとえば、上記実施の形態は、自動車用のビーム照射装置に本発明を適用したものであったが、船舶や飛行機等、他の移動体用のビーム照射装置に本発明を適用することも可能である。
【0100】
本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】実施形態に係るビーム照射装置の構成を示す図
【図2】実施形態に係るビーム照射ヘッドの構成を示す図
【図3】照射レーザ光の出射角度と分離光の収束位置の関係を示す図
【図4】実施形態に係るPSD600の構造を示す図
【図5】PSD600の構造と位置検出電圧の変動を説明する図
【図6】実施形態に係るスキャン動作を説明する図
【図7】実施形態に係る軌道サーボの掛け方を説明する図
【図8】実施形態に係るスキャン動作時のフローチャート
【図9】実施形態に係る軌道サーボの掛け方の変更例を説明する図
【図10】実施形態に係るスキャンパターン例を示す図
【図11】実施形態に係る進行方向変化時におけるスキャンパターンの変更例を示す図
【図12】実施形態に係る進行方向変化時におけるスキャンパターンの変更例を示す図
【図13】実施形態に係る進行速度変化時におけるスキャンパターンの変更例を示す図
【図14】実施形態に係る障害物検出時におけるスキャンパターンの変更例を示す図
【図15】実施形態に係る進行方向変化および進行速度変化時におけるスキャンパターン変更処理の流れを示すフローチャート
【図16】実施形態に係る障害物検出時におけるスキャンパターン変更処理の流れを示すフローチャート
【符号の説明】
【0102】
10 DSP制御回路
30 レーザ駆動回路
40 アクチュエータ駆動回路
50 ビーム照射ヘッド
60 PSD信号処理回路
80 PD信号処理回路
100 半導体レーザ
300 レンズアクチュエータ
301 照射レンズ
400 ビームスプリッタ
500 集光レンズ
600 PSD
700 受光レンズ
800 光検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を目標領域に照射して前記目標領域内の障害物を検出する検出装置において、
前記レーザ光のスキャン軌跡を該検出装置が搭載される移動体の移動状態に関する信号に基づいて制御するスキャン制御手段を有する、
ことを特徴とする検出装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記スキャン制御手段は、前記移動体の進行方向および/もしくは進行速度に関する信号に基づいて、前記レーザ光のスキャン軌跡を設定する、
ことを特徴とする検出装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記スキャン制御手段は、前記移動体の進行方向に関する信号に基づいて、前記レーザ光のスキャン軌跡を、前記進行方向の中心軸から前記進行方向の変化方向に偏った部分のスキャン頻度が高められるスキャン軌跡に設定する、
ことを特徴とする検出装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記スキャン制御手段は、前記移動体の進行方向に関する信号に基づいて、前記目標領域を、前記進行方向の中心軸から前記進行方向の変化方向にシフトさせる、
ことを特徴とする検出装置。
【請求項5】
請求項3または4において、
前記スキャン制御手段は、前記移動体の進行方向に関する信号に基づいて、前記目標領域内における前記レーザ光のスキャンパターンを、前記目標領域の中心部から前記進行方向の変化方向に偏った部分のスキャン頻度が高められるスキャンパターンに設定する、
ことを特徴とする検出装置。
【請求項6】
請求項2において、
前記スキャン制御手段は、前記移動体の進行速度に関する信号に基づいて、前記レーザ光のスキャン軌跡を、前記進行方向の中心部分のスキャン頻度が高められるスキャン軌跡に設定する、
ことを特徴とする検出装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記スキャン制御手段は、前記移動体の進行速度に関する信号に基づいて、前記目標領域を、前記進行方向の中心部分に向けて縮小させる、
ことを特徴とする検出装置。
【請求項8】
請求項6または7において、
前記スキャン制御手段は、前記移動体の進行速度に関する信号に基づいて、前記目標領域内における前記レーザ光のスキャンパターンを、前記目標領域の中心部分のスキャン頻度が高められるスキャンパターンに設定する、
ことを特徴とする検出装置。
【請求項9】
レーザ光を目標領域に照射して前記目標領域内の障害物を検出する検出装置において、
前記レーザ光のスキャン軌跡を前記障害物の検出結果に基づいて制御するスキャン制御手段を有する、
ことを特徴とする検出装置。
【請求項10】
請求項9において、
前記スキャン制御手段は、前記障害物の検出結果に基づいて、前記レーザ光のスキャン軌跡を、前記障害物近傍のスキャン頻度が高められるスキャン軌跡に設定する、
ことを特徴とする検出装置。
【請求項11】
請求項10において、
前記スキャン制御手段は、前記障害物の検出結果に基づいて、前記スキャン軌跡の原点を前記障害物の検出位置に設定し、前記目標領域内における前記レーザ光のスキャンパターンを、前記設定された原点に反復回帰するスキャンパターンに設定する、
ことを特徴とする検出装置。
【請求項12】
請求項9ないし11の何れかにおいて、
前記スキャン制御手段は、前記障害物との距離が閾値距離よりも小さいときに、前記レーザ光のスキャン軌跡を前記障害物近傍のスキャン頻度が高められるスキャン軌跡に設定する、
ことを特徴とする検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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