説明

検査システム

【課題】少量の検体や試薬を用いて検出部に液体が充填されたことを短時間で検知できる検査システムを提供する。
【解決手段】マイクロチップの流路を移動させた検体と試薬とを検出部に充填し、反応させた結果を測定する検査システムにおいて、流路を流れる液体を溜める液溜部と、
液溜部に溜まった液体を検知する液体検知手段と、検出部から反応結果を検出する検出ユニットと、液体検知手段を移動させる検知部駆動手段と、検知部駆動手段の駆動を制御する検知部駆動制御手段と、を有し、検知部駆動制御手段は、液体検知手段が検出部の下流に設けられた液溜部の液体を検知した後、検知部駆動手段を制御し、検出ユニットが検出部から反応結果を検出可能な位置に液体検知手段を移動させることを特徴とする検査システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロマシン技術および超微細加工技術を駆使することにより、従来の試料調製、化学分析、化学合成などを行うための装置、手段(例えばポンプ、バルブ、流路、センサなど)を微細化して1チップ上に集積化したシステムが開発されている(例えば、特許文献1参照)。これは、μ−TAS(Micro total Analysis System:マイクロ総合分析システム)、バイオリアクタ、ラボ・オン・チップ(Lab−on−chips)、バイオチップとも呼ばれ、医療検査・診断分野、環境測定分野、農産製造分野でその応用が期待されている。特に遺伝子検査に見られるように、煩雑な工程、熟練した手技、機器類の操作が必要とされる場合には、μ−TASを用いることによりコスト、必要試料量、所要時間を削減できる。
【0003】
本出願人は、マイクロチップの微細流路内に試薬などを封入し、マイクロポンプによって微細流路に駆動液を注入して検体と試薬などの液体を移動させ、反応部、次いで検出部へ流すことにより、血液など検体との反応結果を測定することができる検査装置を提案している(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
このような検査装置では、検出部に流入した検体と試薬との反応を促進するため温度調節ユニットにより検出部を加熱する。検体と試薬が反応するために必要な時間が経過後、検出ユニットは検出部の検体と反応した試薬に光を照射し、発光する蛍光の光量を測定することにより反応結果を測定している。
【特許文献1】特開2004−28589号公報
【特許文献2】特開2006−149379号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
検出部に流入する検体と試薬の量が少ないと検出部に空気が残り、温度調節ユニットにより加熱されることにより空気が膨張して検査結果に誤差を生じることがある。このような問題を解決するため、検出部の下流に検出部よりも浅い液溜部を設け、液溜部が液体で充填されたことを検知すれば検出部が充填されたことを確認できる。
【0006】
しかしながら、液溜部を検出部の近くに配置すると、液溜部の液体を検知する液体検知手段が検出部を覆ってしまい、検出部から反応結果を検出することができない。そのため液溜部を検出部から離れた位置に配置すると、検出部から微細な流路を通って液溜部が充填されるまでに時間がかかる上に、必要な検体や試薬の量が増えるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、少量の検体や試薬を用いて検出部に液体が充填されたことを短時間で検知できる検査システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、下記構成により達成することができる。
【0009】
1.
マイクロチップの流路を移動させた検体と試薬とを検出部に充填し、反応させた結果を測定する検査システムにおいて、
前記流路を流れる液体を溜める液溜部と、
前記液溜部に溜まった前記液体を検知する液体検知手段と、
前記検出部から反応結果を検出する検出ユニットと、
前記液体検知手段を移動させる検知部駆動手段と、
前記検知部駆動手段の駆動を制御する検知部駆動制御手段と、
を有し、
前記検知部駆動制御手段は、
前記液体検知手段が前記検出部の下流に設けられた前記液溜部の前記液体を検知した後、前記検知部駆動手段を制御し、前記検出ユニットが前記検出部から反応結果を検出可能な位置に前記液体検知手段を移動させることを特徴とする検査システム。
【0010】
2.
複数の前記液体検知手段が搭載された検知基板を有し、
前記検知部駆動手段は前記検知基板を移動させることにより複数の前記液体検知手段を移動させることを特徴とする1に記載の検査システム。
【0011】
3.
前記液溜部は、前記検知基板に搭載された複数の前記液体検知手段と同じ間隔で前記マイクロチップに複数配置されていることを特徴とする2に記載の検査システム。
【0012】
4.
前記液溜部は、前記液体検知手段の移動方向に沿って複数配置されていることを特徴とする1乃至3の何れか1項に記載の検査システム。
【0013】
5.
前記検査システムの各部を制御する制御手段と、
前記液体検知手段の検知出力に基づいて前記液体の有無を判定する充填判定手段と、を有し、
前記制御手段は、前記充填判定手段の判定に基づいて制御することを特徴とする1乃至4の何れか1項に記載の検査システム。
【0014】
6.
警告情報を表示する表示手段を有し、
前記制御手段は、前記充填判定手段の判定に基づいて前記表示手段に前記警告情報を表示させることを特徴とする5に記載の検査システム。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、液体検出手段が検出部の下流の液溜部の液体を検知した後、検出ユニットが検出部から反応結果を検出できるように液体検出手段を移動させるので、少量の検体や試薬を用いて検出部に液体が充填されたことを短時間で検知できる検査システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面に基づき本発明の実施形態を説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態における検査装置80の外観図である。
【0018】
検査装置80はマイクロチップ1に予め注入された検体と、試薬との反応を自動的に検出し、表示部84に結果を表示する装置である。
【0019】
検査装置80の筐体82には挿入口83があり、マイクロチップ1を挿入口83に差し込んで筐体82の内部にセットするようになっている。なお、挿入口83はマイクロチップ1を挿入時に挿入口83に接触しないように、マイクロチップ1の厚みより十分高さがある。85はメモリカードスロット、86はプリント出力口、87は操作パネル、88は入出力端子、89は電源スイッチである。
【0020】
検査担当者は電源スイッチ89をオンにした後、図1の矢印方向にマイクロチップ1を挿入し、操作パネル87を操作して検査を開始させる。検査装置80の内部では、マイクロチップ1内の反応の検査が自動的に行われ、検査が終了すると液晶パネルなどで構成される表示部84に結果が表示される。検査結果は操作パネル87の操作により、プリント出力口86よりプリントを出力したり、メモリカードスロット85に挿入されたメモリカードに記憶することができる。また、外部入出力端子88から例えばLANケーブルを使って、パソコンなどにデータを保存することができる。
【0021】
検査担当者は、検査終了後、マイクロチップ1を挿入口83から取り出す。
【0022】
次に、本発明の実施形態に係わるマイクロチップ1の一例について、図2を用いて説明する。
【0023】
図2は本発明の実施形態におけるマイクロチップ1の外観図である。
【0024】
図2(a)のマイクロチップ1の側面図に示すように、マイクロチップ1は溝形成基板108と、溝形成基板108を覆う被覆基板109から構成されている。図2(a)の矢印は、検査装置80にマイクロチップ1を挿入する挿入方向である。
【0025】
図2(b)はマイクロチップ1の平面図であり、透明な被覆基板109を通して見える溝形成基板108の溝を図示している。溝形成基板108の溝を被覆基板109が覆うことにより流路を形成している。マイクロチップ1には、検査、試料の処理などを行うための、微小な溝状の流路250(微細流路)および機能部品(流路エレメント)が、用途に応じた適当な態様で配設されている。
【0026】
流路はマイクロメーターオーダーで形成されており、例えば幅は数μm〜数百μm、好ましくは10〜200μmで、深さは25〜500μm程度、好ましくは25〜250μmである。
【0027】
本実施形態では、特定の遺伝子の増幅およびその検出を行う処理に用いるマイクロチップ1を例に説明する。
【0028】
図2(b)の110a、110b、110cはマイクロチップ1内部の流路に連通する駆動液注入部であり、各駆動液注入部110から駆動液を注入し内部の検体や試薬等を駆動する。113はマイクロチップ1に検体を注入するための検体注入部であり、注射器などを用いて検体注入部113から血液などの検体を注入する。
【0029】
本実施形態のマイクロチップ1では検体注入部113の下流の流路250は2方向に分岐し、検体を2分割するように構成されている。駆動液注入部110bから駆動液を注入すると、検体注入部113に注入されている検体は、検体注入部113と連通する流路250aaと流路250abを通ってそれぞれ検体収容部121a、121bに収容される。検体収容部121a、121bは所定量の検体を収容するために他の流路より溝が深くなっている。
【0030】
検体収容部121a、121bが検体で充填されると、検体は駆動液によって検体収容部121a、121bの下流の流路250baと流路250bbに押し出され、それぞれの流路に設けられた液溜部140a、140bを充填する。液溜部140a、140bは検体収容部121a、121bがそれぞれ充填されたことを検出するために設けられており、検体収容部121a、121bより溝が浅く、他の流路250より溝が深くなっている。
【0031】
検体収容部121a、121bの溝の深さは例えば1.5μm、液溜部140a、140bの溝の深さは例えば1μm、他の流路の溝の深さは例えば0.25μmである。
【0032】
120a、120bは試薬類を収容する試薬収容部である。駆動液注入部110a、110cから駆動液を注入すると、試薬収容部120a、120bに収容された試薬は流路250に押し出されて、それぞれ下流の検体収容部121a、121bに注入される。検体と試薬が混合された液体は、流路250caと流路250cbを通ってそれぞれ下流の検出部111a、111bに収容される。
【0033】
後に説明するように検査装置80の内部で検出部111a、111bを加熱または吸熱して所定の温度で検体と試薬とを所定の時間反応させる。
【0034】
検出部111a、111bは検体と試薬の反応を光学的に検出するために設けられ、所定量の検体と試薬を収容するために他の流路より溝が深くなっている。
【0035】
検出部111a、111bの下流には液溜部141a、141bが設けられており、検出部111a、111bが試薬や検体などの液体で充填されたことを検出できるようになっている。液溜部141a、141bは検出部111a、111bより溝が浅く、他の流路より溝が深くなっている。
【0036】
検出部111a、111bの溝の深さは例えば1.5μm、液溜部141a、141bの溝の深さは例えば1μm、他の流路の溝の深さは0.25μmである。検出部111a、111bが充填されたことをできるだけ早く検出できるように、液溜部141a、141bは検出部111a、111bのできるだけ近い位置に設けることが望ましい。
【0037】
検出部111a、111bに光を照射すると、検体と反応した試薬が例えば蛍光を発光するので蛍光の光量を測定することにより反応結果を計測する。
【0038】
次に、マイクロチップ1を構成する溝形成基板108と被覆基板109に用いる材料について説明する。
【0039】
マイクロチップ1は、加工成形性、非吸水性、耐薬品性、耐候性、コストなどに優れていることが望まれており、マイクロチップ1の構造、用途、検出方法などを考慮して、マイクロチップ1の材料を選択する。その材料としては従来公知の様々なものが使用可能であり、個々の材料特性に応じて通常は1以上の材料を適宜組み合わせて、基板および流路エレメントが成形される。
【0040】
特に、多数の測定検体、とりわけ汚染、感染のリスクのある臨床検体を対象とするチップは、ディスポーサブルタイプであることが望ましい。そのため、量産可能であり、軽量で衝撃に強く、焼却廃棄が容易なプラステック樹脂、例えば、透明性、機械的特性および成型性に優れて微細加工がしやすいポリスチレンが好ましい。また、例えば分析においてチップを100℃近くまで加熱する必要がある場合には、耐熱性に優れる樹脂(例えばポリカーボネートなど)を用いることが好ましい。また、タンパク質の吸着が問題となる場合にはポリプロピレンを用いることが好ましい。樹脂やガラスなどは熱伝導率が小さく、マイクロチップの局所的に加熱される領域に、これらの材料を用いることにより、面方向への熱伝導が抑制され、加熱領域のみ選択的に加熱することができる。
【0041】
検出部111において、呈色反応の生成物や蛍光物質などの検出を光学的に行うので、少なくとも被覆基板109のこの部位は光透過性の材料(例えばアルカリガラス、石英ガラス、透明プラスチック類)を用い、光が透過するようにする必要がある。
【0042】
液溜部140a、140b、液溜部141a、141bに収容されている液体を光学的に検知する場合は、少なくとも被覆基板109の液溜部140a、140b、液溜部141a、141bを覆う部分はガラスや樹脂などの透明な部材で構成する必要がある。なお、超音波、電波などを用いて液体を検知する場合は、必ずしも透明な部材を用いる必要はない。
【0043】
図3は、本発明の実施形態における検査装置80の内部構成の一例を説明するための斜視図、図4は、本発明の実施形態における検査装置80の内部構成の一例を示す断面図、である。図3、図4に示すX、Y、Zの座標軸を基準に各部の説明を行う。
【0044】
検査装置80は、温度調節ユニット152、検出ユニット22、マイクロポンプユニット75、パッキン90、駆動液タンク91、送りネジ301、送りネジ351、ジョイント302、ジョイント352、検知基板駆動モータ60、検出ユニット駆動モータ61などから構成される。図3、図4はマイクロチップ1をパッキン90bに密着させている状態を示している。検知基板駆動モータ60は本発明の検知部駆動手段である。
【0045】
以下、図3、図4を用いて検査装置80の内部構成の例を説明する。
【0046】
温度調節ユニット152とマイクロチップ1は、図示せぬ駆動部材により駆動され、Z軸方向に移動可能である。初期状態において、駆動部材により温度調節ユニット152を、図3の状態からマイクロチップ1の厚み以上上昇させる。すると、マイクロチップ1はY軸方向に挿抜可能であり、検査担当者は挿入口83から図示せぬ規制部材に当接するまでマイクロチップ1を挿入する。所定の位置までマイクロチップ1を挿入するとフォトインタラプタなどを用いたチップ検知部95がマイクロチップ1を検知し、オンになる。
【0047】
温度調節ユニット152は、ペルチェ素子、電源装置、温度制御装置などを内蔵し、発熱または吸熱を行ってマイクロチップ1の面を所定の温度に調整するユニットである。
【0048】
次に、駆動部材により温度調節ユニット152とマイクロチップ1を下降させて、マイクロチップ1を温度調節ユニット152とパッキン90bに密着させる。
【0049】
本実施形態では、マイクロチップ1の液溜部140a、140b、液溜部141a、141bにそれぞれ収容されている液体を光学的に検知する例を説明する。
【0050】
図4の断面図では、液溜部140(液溜部140a、140bの何れか)に収容されている液体を光学的に検知できる位置にある液体検知部20を図示している。
【0051】
たとえば、液体検知部20から光を液溜部140に照射し、液溜部140で反射する光を液体検知部20で受光し、光量や色の変化から液溜部140に液体が充填されていることを検知する。後に詳しく説明する手順で駆動部60が液体検知部20を液溜部141を光学的に検知できる位置に移動させた後、液溜部141の検知も同様の手順で行う。
【0052】
図4に示す液体検知部20は、例えば発光部と受光部を備えたフォトリフレクタであり、液体検知部20は検知基板21に搭載されている。後に説明するように本実施形態では検知基板21に2つの液体検知部20a、20bが搭載されている。液体検知部20は本発明の液体検知手段である。
【0053】
なお、液体検知部20の数は2つに限定されるものではなく、1つ以上であればいくらでも良い。図2で説明したマイクロチップ1のように検体を複数の流路に分割して検査を行う場合は、分割する流路250に設けた液溜部141を同時に検査できるように複数の液体検知部20を設けると良い。
【0054】
なお、本実施形態では液溜部140a、140b、液溜部141a、141bに光を照射し、反射する光を検知する例を説明するが、液溜部140a、140b、液溜部141a、141bを透過する光や超音波または電波を検知するようにしても良い。
【0055】
図3に示すように、検知基板21の一端は、送りネジ351と螺合するネジ部を有するガイド部材354に支持され、送りネジ351が回転することによりY軸方向に移動する。検知基板21の他端は、ガイド棒353が貫通する図示せぬ部材に支持されており、検知基板21はマイクロチップの流路250と平行に移動する。
【0056】
液体検知部20a、20bは、検知基板21が送りネジ351によって移動すると、液溜部140a、140b、液溜部141a、141bのそれぞれの中心部に、液体検知部20a、20bの液体を検知可能な範囲が一致するように検知基板21上に配置されている。
【0057】
液体検知部20a、20bは、所定の位置に移動した後、液溜部140a、140bまたは液溜部141a、141bに順次光を照射し、反射光を受光して電気信号を出力する。
【0058】
送りネジ351は検知基板駆動モータ60によりジョイント352を介して駆動される。検知基板駆動モータ60は例えばパルスモータであり、パルスにより所定量回転する。第1位置センサ40は、検知基板21の初期位置を検知するために設けられたフォトリフレクタなどのセンサまたはメカニカルスイッチなどである。
【0059】
検出ユニット22は発光部と受光部から成り、検出部111に光を照射して検体と反応した試薬が発光する蛍光を、光学的に分離して受光部に受光するように構成されている。検出ユニット22は送りネジ301と螺合するネジ部を有し、送りネジ301が回転することによりX軸方向に移動する。送りネジ301は直線Fと平行に配設されており、検出ユニット22が送りネジ301によって移動すると、検出部111a、111bのそれぞれの中心部に、検出ユニット22のレンズ23の光軸が一致するように配置されている。検出ユニット22は、所定の位置に移動した後、検出部111a、111bにレンズ23から順次励起光を照射し、蛍光物質が発光する蛍光を受光して電気信号を出力する。
【0060】
送りネジ301は検出ユニット駆動モータ61によりジョイント302を介して駆動される。検出ユニット駆動モータ61は例えばパルスモータであり、パルスにより所定量回転する。第2位置センサ41は検出ユニット22の初期位置を検知するために設けられたフォトリフレクタなどのセンサまたはメカニカルスイッチなどである。
【0061】
なお、検出ユニット22には回転防止用に図3には図示せぬガイド穴が設けられており、ガイド穴を貫通するガイド棒に沿って移動する。ガイド棒は送りネジ301と平行に配設されている。
【0062】
なお、本実施形態ではマイクロチップ1に検出部111a、111bが2つ設けられている場合について説明したが、検出部111の数は1つ以上であればいくつでも良い。
【0063】
図4では、液体検知部20(液体検知部20a、20bの何れか)が液溜部140(液溜部140a、140bのうち対応する何れか)の液体を検知する位置にある場合を図示している。また、検出ユニット22は検出部111(検出部111a、111bの何れか)でおこる試薬の反応結果を光学的に検出できる位置にある場合を図示している。
【0064】
マイクロチップ1の駆動液注入口110は、マイクロチップ1をパッキン90bを介してマイクロポンプ75と密着させたときに、パッキン90bに設けられた対応する開口とそれぞれ連通する位置に設けられている。
【0065】
マイクロポンプユニット75の吸入口145は、パッキン90aを介して駆動液タンク91が接続され、駆動液タンク91に充填された駆動液をパッキン90aを介して吸い込むようになっている。一方、吐出口146はパッキン90bを介してマイクロチップ1の駆動液注入口110と連通している。
【0066】
圧電素子112を駆動することにより、マイクロポンプユニット75から送り出された駆動液は、マイクロチップ1の駆動液注入口110からマイクロチップ1内に形成された流路250に注入される。このようにして、マイクロポンプユニット75から駆動液注入口110に駆動液を注入する。
【0067】
マイクロポンプユニット75には少なくとも一つのマイクロポンプが設けられている。図2に図示したマイクロチップ1を駆動する場合は、3つの駆動液注入口110a、110b、110cに対応する3つのマイクロポンプが必要である。
【0068】
図5は、本発明の実施形態における検出装置80の回路ブロック図である。
【0069】
制御部99は、CPU98(中央処理装置)とRAM97(Random Access Memory),ROM96(Read Only Memory)等から構成され、不揮発性の記憶部であるROM96に記憶されているプログラムをRAM97に読み出し、当該プログラムに従って検出装置80の各部を集中制御する。制御部99は本発明の制御手段である。
【0070】
以下、いままでに説明した機能と同一機能を有する機能ブロックには同番号を付し、説明を省略する。
【0071】
CPU98はポンプ駆動制御部411、充填判定部412、検出ユニット駆動制御部413、検知基板駆動制御部414を有する。充填判定部412は本発明の充填判定手段、検知基板駆動制御部414は本発明の検知部駆動制御手段である。
【0072】
本実施形態では、液体検知部20aと液体検知部20bの2つが検知基板21に搭載されている例について説明する。充填判定部412は、液体検知部20aの発光する光が液溜部140aまたは液溜部141aから反射した光を検出した出力信号を、所定の信号レベルと比較し結果を判定する。同様に、液体検知部20bの発光する光が液溜部140bまたは液溜部141bから反射した光を検出した出力信号を、所定の信号レベルと比較し結果を判定する。
【0073】
検出ユニット駆動制御部413は、検出ユニット駆動検出ユニット駆動モータ61に指令し検出ユニット22を移動させる。
【0074】
検知基板駆動制御部414は、検知基板駆動モータ60に指令し液体検知部20a、液体検知部20bを搭載した検知基板21を移動させる。
【0075】
ポンプ駆動部500は、各マイクロポンプの圧電素子112を駆動する駆動部である。ポンプ駆動制御部411はプログラムに基づいて、所定量の駆動液を注入または吸入するようにポンプ駆動部500を制御する。ポンプ駆動部500はポンプ駆動制御部411の指令を受けて、駆動電圧を発生して圧電素子112を駆動する。
【0076】
CPU98は所定のシーケンスで検査を行い、検査結果をRAM97に記憶する。検査結果は、操作部87の操作によりメモリカード501に記憶したり、プリンタ503によってプリントすることができる。
【0077】
次に、本発明の実施形態の検査装置80が検査を行う手順を図6〜図9を用いて説明する。
【0078】
図6は本発明の実施形態の検査装置80が検査を行う手順を説明するフローチャート、図7、図8、図9は制御部99が検知基板21と検出ユニット22を移動させる手順を説明するための説明図である。図7、図8、図9には送りネジ301、送りネジ351、ジョイント302、ジョイント352、ガイド棒353などを図示していないが、図3で説明したようにこれらの機構により検知基板駆動モータ60は検知基板21をY軸方向に、検出ユニット駆動モータ61は検出ユニット22をX軸方向に移動させる。
【0079】
図7は初期状態であり、液体検知部20a、液体検知部20bが液溜部140aと液溜部140bの充填状態を検知するときの状態である。図8は、液体検知部20a、液体検知部20bが液溜部141aと液溜部141bの充填状態を検知するときの状態である。図9は、検出ユニット22が検出部111aの反応結果を検出するときの状態である。
【0080】
図7を用いて各部を説明する。検知基板21には液体検知部20aと液体検知部20bが液溜部140aと液溜部140bの間隔と同じ間隔X1で搭載されている。液溜部141aと液溜部141bも液体検知部20aと液体検知部20bが移動する直線上に配置され、その間隔も同じ間隔X1である。
【0081】
図7は検知基板21と検出ユニット22の初期位置を示しており、検知基板駆動制御部414は第1位置センサ40により検知基板21の初期位置を、検出ユニット駆動制御部413は第2位置センサ41により検出ユニット22の初期位置を検出する。電源投入時に、検出ユニット駆動制御部413は検出ユニット22を、検知基板駆動制御部414は検知基板21を初期位置に移動させる。
【0082】
なお、本実施形態では温度調節ユニット152による発熱または吸熱の影響を避けるため、検出ユニット22を温度調節ユニット152から離れた位置に移動させているが、例えば検出部111から反応結果を検出する位置を初期位置にしても良い。
【0083】
以下、図6のフローチャートの順に説明する。
【0084】
マイクロチップ1は、図4のように検査が可能な位置にセットされ、操作部87の操作によってCPUに検査の開始が指令されているものとする。また、検知基板21と検出ユニット22は図7の初期位置にあるものとする。
【0085】
S101:送液を開始するステップである。
【0086】
ポンプ駆動制御部411は、ポンプ駆動部500に指令し、マイクロポンプユニット75から所定の順でマイクロチップ1に送液を行う。
【0087】
S102:検体が2分割されていることを確認するステップである。
【0088】
充填判定部412は、液体検知部20aと液体検知部20bを発光させ、液溜部140aと液溜部140bからそれぞれ反射した光を受光した液体検知部20aと液体検知部20bの出力信号レベルが所定のレベル以上か、否か、判定する。判定のレベルとして、例えば検体の量が規定の量の90%のときの出力信号レベルを予め実測して求めた値をROM96に記憶している。
【0089】
所定のレベル以下の場合、(ステップS102;No)、ステップS110に進む。
【0090】
S110:警告を表示するステップである。
【0091】
制御部99は、表示部84に検体の量が不足しているという警告を表示し、検査装置80を停止する。
【0092】
所定のレベル以上の場合、(ステップS102;Yes)、ステップS103に進む。
【0093】
S103:液体検知部20を移動するステップである。
【0094】
検知基板駆動制御部414は、検知基板駆動検知基板駆動モータ60に所定の数のパルスを送り図7の矢印S1方向に検知基板21を移動させ、図8の液体検知部20a、液体検知部20bが液溜部141aと液溜部141bの充填状態を検知する位置に停止させる。
【0095】
S104:検出部111a、111bが充填されていることを確認するステップである。
【0096】
充填判定部412は、液体検知部20aと液体検知部20bを発光させ、液溜部141aと液溜部141bからそれぞれ反射した光を受光した液体検知部20aと液体検知部21bの出力信号レベルが所定のレベル以上か、否か、判定する。判定のレベルとして、例えば検体の量が規定の量の90%のときの出力信号レベルを予め実測して求めた値をROM96に記憶している。
【0097】
所定のレベル以下の場合、(ステップS104;No)、ステップS110に進む。
【0098】
S110:警告を表示するステップである。
【0099】
制御部99は、表示部84に検体の量が不足しているという警告を表示し、検査装置80を停止する。
【0100】
所定のレベル以上の場合、(ステップS104;Yes)、ステップS105に進む。
【0101】
S105:液体検知部20を移動するステップである。
【0102】
検知基板駆動制御部414は、検知基板駆動検知基板駆動モータ60に所定の数のパルスを送り図8の矢印S3方向に検知基板21を移動させ、図9の位置に停止させる。
【0103】
S106:検出ユニット22を移動するステップである。
【0104】
検出ユニット駆動制御部413は、検出ユニット駆動検出ユニット駆動モータ61に所定の数のパルスを送り図8の矢印S2方向に検出ユニット22を移動させ、図9の検出ユニット22が検出部111aの反応結果を検出する位置に停止させる。
【0105】
S107:反応結果を測定するステップである。
【0106】
所定の時間経過後、CPU98は、検出ユニット22の発光部を発光させ、検出ユニット22からの出力信号レベルを測定し、結果をRAM97に記憶する。
【0107】
S108:検出ユニット22を移動するステップである。
【0108】
検出ユニット駆動制御部413は、検出ユニット駆動検出ユニット駆動モータ61に所定の数のパルスを送り図8の矢印S2方向に検出ユニット22をさらに移動させ、検出部111bの反応結果を検出する位置に停止させる。
【0109】
S109:反応結果を測定するステップである。
【0110】
CPU98は、検出ユニット22の発光部を発光させ、検出ユニット22からの出力信号レベルを測定し、結果をRAM97に記憶する。
【0111】
以上検査を終了し、検出ユニット駆動制御部413は、検出ユニット22を初期位置に戻す。
【0112】
検査を行う手順の説明は以上である。
【0113】
以上このように、本発明によれば、少量の検体や試薬を用いて検出部に液体が充填されたことを短時間で検知できる検査システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明の実施形態における検査装置80の外観図である。
【図2】本発明の実施形態に係わるマイクロチップ1の説明図である。
【図3】本発明の実施形態の検査装置80の内部構成の一例を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態の検査装置80の内部構成の一例を示す断面図である。
【図5】本発明の実施形態における検査装置80の回路ブロック図である。
【図6】本発明の実施形態の検査の手順を説明するフローチャートである。
【図7】検知基板21と検出ユニット22の初期状態を説明するための説明図である。
【図8】液体検知部20a、液体検知部20bが液溜部141aと液溜部141bの充填状態を検知するときの状態を説明するための説明図である。
【図9】検出ユニット22が検出部111aの反応結果を検出するときの状態を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0115】
1 マイクロチップ
20 液体検知部
21 検知基板
22 検出ユニット
60 検知基板駆動モータ
61 検出ユニット駆動モータ
75 マイクロポンプユニット
80 検査装置
82 筐体
83 挿入口
84 表示部
87 操作ボタン
90 パッキン
110 駆動液注入口
111 検出部
113 検体注入部
121 検体収容部
141 液溜部
150 光検出部
152 温度調整ユニット
250 流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロチップの流路を移動させた検体と試薬とを検出部に充填し、反応させた結果を測定する検査システムにおいて、
前記流路を流れる液体を溜める液溜部と、
前記液溜部に溜まった前記液体を検知する液体検知手段と、
前記検出部から反応結果を検出する検出ユニットと、
前記液体検知手段を移動させる検知部駆動手段と、
前記検知部駆動手段の駆動を制御する検知部駆動制御手段と、
を有し、
前記検知部駆動制御手段は、
前記液体検知手段が前記検出部の下流に設けられた前記液溜部の前記液体を検知した後、前記検知部駆動手段を制御し、前記検出ユニットが前記検出部から反応結果を検出可能な位置に前記液体検知手段を移動させることを特徴とする検査システム。
【請求項2】
複数の前記液体検知手段が搭載された検知基板を有し、
前記検知部駆動手段は前記検知基板を移動させることにより複数の前記液体検知手段を移動させることを特徴とする請求項1に記載の検査システム。
【請求項3】
前記液溜部は、前記検知基板に搭載された複数の前記液体検知手段と同じ間隔で前記マイクロチップに複数配置されていることを特徴とする請求項2に記載の検査システム。
【請求項4】
前記液溜部は、前記液体検知手段の移動方向に沿って複数配置されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の検査システム。
【請求項5】
前記検査システムの各部を制御する制御手段と、
前記液体検知手段の検知出力に基づいて前記液体の有無を判定する充填判定手段と、を有し、
前記制御手段は、前記充填判定手段の判定に基づいて制御することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の検査システム。
【請求項6】
警告情報を表示する表示手段を有し、
前記制御手段は、前記充填判定手段の判定に基づいて前記表示手段に前記警告情報を表示させることを特徴とする請求項5に記載の検査システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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