説明

検査台

【課題】車椅子技能者であっても精度良く検査が実施できる検査台を提供することを課題とする。
【解決手段】検査物載せ台30は、車両のインストルメントパネルに倣って傾けられている。検査員48は検査物載せ台30に面直な理想的な目線49で上段目線確認部材34を見ている。上段目線確認部材34がミラーである場合には、ミラーに自己の瞳が写る。瞳が中立線44に合致すれば、目線49とミラーの中心とが一致したことになる。車椅子47に座っている検査員48は、上段目線確認部材34、中段目線確認部材35又は下段目線確認部材36を見ながら検査物載せ台30を昇降させ、次に検査作業を行う。
【効果】検査員は首を上下に振る必要がない。すなわち、車椅子技能者にとって使い勝手のよい検査台が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目視によって検査する検査対象物が載せられる検査台に関する。
【背景技術】
【0002】
検査対象物の一例を図面に基づいて説明する。
図6に示すように、検査対象物100は、計器の要部を収納するケース101と、このケース101に内蔵される目盛板102と、この目盛板102上を旋回する指針103と、この指針103及び目盛板102を覆うレンズ104と、ケース101内部へ外部信号を導入する信号入力部105からなる。
【0003】
信号入力部105に、外から模擬情報を与えて、指針103の挙動や停止位置を検査することが、計器供給者や計器受け入れ者で実施される。なお、計器の種類によっては、模擬情報が与えられてから、指針103が安定(静定)するまでに、時間を要する物があり、本発明ではそのような時間がかかる計器を検査対象とする。
このような検査には、平板検査台が用いられる(例えば、特許文献1(図1)参照。)。
【0004】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図7は従来の検査台を説明する図であり、検査台110は、床111に置かれる架台112と、この架台112に鉛直軸廻りに矢印(1)のように回転自在に立てられている支軸113と、この支軸113に立てられたコ字枠114と、このコ字枠114に水平軸廻りに矢印(2)のように回転可能に取付けられる方形枠115とからなる。
【0005】
方形枠115は比較的大きな平板であるため、方形枠115に、上下に3段の検査対象物(上段検査対象物116、中段検査対象物117、下段検査対象物118)をセットすることができる。
例えば、中段検査対象物117を目視検査する間に、上段検査対象物116や下段検査対象物118の静定時間を稼ぐことができる。
【0006】
ところで、車両のインストルメントパネルに装置されるメータを検査するには、インストルメントパネルの傾きに、方形枠115を傾ける。このような方形枠115に垂直な目線119が、理想な目線となる。
【0007】
上段検査対象物116、中段検査対象物117及び下段検査対象物118が上下にセットされるため、健常な技能者であれば、立ち姿勢で上段検査対象物116を目視し、中腰姿勢で中段検査対象物117を目視し、屈み姿勢で下段検査対象物118を目視することで、検査が行える。
【0008】
しかし、検査員には健常な技能者の他に、車椅子に座っている技能者(以下、車椅子技能者と記す。)120が含まれる。車椅子技能者120は、上下に姿勢を変えることが困難である。そこで、車椅子技能者120は、首を傾けて上向き目線121で上段検査対象物116を目視し、下向き目線122で下段検査対象物118を目視することになる。
【0009】
上向き目線121や下向き目線122では、図6に示す目盛板102に記された目盛りと指針103との間に幾何学的なずれが生じる。結果、検査の精度が低下する。
【0010】
そこで、上下姿勢を簡単に変えることができない車椅子技能者120であっても精度良く検査が実施できる検査台が、必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】実用新案登録第3024193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、車椅子技能者であっても精度良く検査が実施できる検査台を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に係る発明は、目視によって検査する検査対象物が載せられる検査台であって、この検査台は、床に固定される架台と、この架台の上方に配置され上下方向で異なる高さに前記検査対象物を載せることができる検査物載せ台と、この検査物載せ台と前記架台との間に設けられ前記架台に対して前記検査物載せ台を昇降させる昇降部材と、前記検査物載せ台に載せられる前記検査対象物の高さごとに前記検査物載せ台に付属され検査員の目線位置を確認する目線確認部材と、からなることを特徴とする。
【0014】
請求項2に係る発明では、目線確認部材は、ミラーであることを特徴とする。
【0015】
請求項3に係る発明では、検査員は、車椅子に座っている技能者であることを特徴とする。
【0016】
請求項4に係る発明では、検査対象物は、外部から与えられる模擬情報により、指針が回転する指針型メータであることを特徴とする。
【0017】
請求項5に係る発明では、昇降部材は、地面に鉛直な鉛直線に沿って検査物載せ台を上下させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明では、検査員の目線位置を確認する目線確認部材が、検査物載せ台に付属されている。
検査員は、目線確認部材を注視しながら、検査物載せ台を昇降させ、当該目線確認部材が理想的な目線に合致したら、昇降を停止する。次に、検査対象物の目視検査を実施する。その段の検査が終わったら、検査物載せ台を昇降させる。別の新たな段の目線確認部材が理想的な目線に合致したら、昇降を停止し、この段の目視検査を実施する。
【0019】
検査員は首を上下に振る必要がない。すなわち、車椅子技能者であっても精度良く検査が実施できる検査台が提供される。
【0020】
請求項2に係る発明では、目線確認部材は、ミラーである。ミラーは安価であり、検査台のコストダウンが図れる。
【0021】
請求項3に係る発明では、検査員は、車椅子に座っている技能者である。本発明の検査台は健常者にとっても便利であるが、車椅子技能者に特に適している。
【0022】
請求項4に係る発明では、検査対象物は、外部から与えられる模擬情報により、指針が回転する指針型メータである。本発明の検査台は各種の検査対象物に適用できが、指針型メータに特に適している。
【0023】
請求項5に係る発明では、昇降部材は、鉛直線に沿って検査物載せ台を上下させる。検査物載せ台を上下動させても検査物載せ台と検査員との間の距離が変化しない。検査員が移動する必要がない。特に、検査員が車椅子技能者である場合、車椅子を検査物載せ台に向かって横移動させる必要がない。そのため、検査作業の能率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る検査台の正面図である。
【図2】本発明に係る検査台の側面図である。
【図3】中段検査対象物を目視検査する手順を説明する図である。
【図4】下段検査対象物を目視検査する手順を説明する図である。
【図5】比較例と実施例との相違を説明する図である。
【図6】検査対象物の一例を示す図である。
【図7】従来の検査台を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0026】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示されるように、検査台10は、床11に固定される架台12と、この架台12に設けた昇降部材20と、この昇降部材20で昇降される検査物載せ台30とを主たる構成要素とする。なお、昇降部材20は検査物載せ台30側に設け、架台12へ延ばしても良い。
【0027】
また、床11に「固定される」とは、取り外し不能に固定すること、移動可能に一時的に固定することの双方を意味する。架台12が作業中に横ずれする心配が無ければ、架台12は床11に載せるだけでも差し支えない。すなわち、本発明では、これらの形態の全てを、床11に固定されると表記する。
【0028】
架台12は、4本の脚13と、これらの脚13の状態に水平に渡した横梁14とからなる。
【0029】
昇降部材20は、例えば電動機21と、動力配分機能付き減速機22と、複数本(この例では2本)のボールねじ23とからなる。ボールねじ23は、ボールねじに減速機及び電動機を組合せて一体化した電動ジャッキであってもよい。電動ジャッキや電動機21であれば、モータ軸の回転量で昇降ストロークを決定することができ、位置精度が良好になる。
【0030】
なお、昇降部材20は、位置制御に優れたステッピング油圧シリンダ又は、ステッピング空圧シリンダであってもよい。
昇降部材20の起動停止は、制御箱24で実施する。制御箱24は脚13に取付けることができる。制御箱24のおもて面に上昇ボタン25、下降ボタン26及び緊急停止ボタン27が設けられる。
【0031】
検査物載せ台30は、矩形板31と、この矩形板31に区画された複数(この例では3段×4個で合計12個)の検査対象物収納部32と、この検査対象物収納部32の下部位置に矩形板31から図面手前へ延ばされた支持ピン33、33と、矩形板31の右辺(又は左辺)に設けられた目線確認部材(上段目線確認部材34、中段目線確認部材35及び下段目線確認部材36)と、さらに矩形板31の右辺(又は左辺)に設けられ検査開始ボタン37〜39及び検査終了ボタン41〜43とからなる。
【0032】
上段目線確認部材34の左横の検査対象物収納部32の収納される、4個の検査対象物100の検査を開始するときには検査開始ボタン37が押され、検査を終了するときには検査終了ボタン41が押される。同様に、中段目線確認部材35の左横の検査対象物に対しては、検査開始ボタン38や検査終了ボタン42が操作され、下段目線確認部材36の左横の検査対象物に対しては、検査開始ボタン39や検査終了ボタン43が操作される。 すなわち、上段、中段、下段を各グループにして検査が行われる。
【0033】
目線確認部材34〜36は、矩形のミラーであってもよい。ミラーの高さ中央に中立線44を描いておくことは望ましい。
【0034】
検査開始ボタン37〜39及び検査終了ボタン41〜43の近傍にも非常停止ボタン45を配置することが望まれる。
支持ピン33、33により想像線で示す検査対象物100(図6参照)が支持される。
【0035】
検査員は上昇ボタン25又は下降ボタン26を押すことで検査物載せ台30を上昇又は下降させることができる。
この際に、図2に示すように、車椅子47に座っている検査員(車椅子技能者)48は、上段目線確認部材34、中段目線確認部材35又は下段目線確認部材36を見ながら検査前の昇降作業を行う。
【0036】
検査物載せ台30は、車両のインストルメントパネルに倣って傾けられている。検査員48は検査物載せ台30に面直な理想的な目線49で上段目線確認部材34を見ている。
上段目線確認部材34がミラーである場合には、ミラーに自己の瞳が写る。瞳が中立線44に合致すれば、目線49とミラーの中心とが一致したことになる。
【0037】
以上の構成からなる検査台の作用を図3及び図4で説明する。
図3(a)に示すように、検査員48は、中段目線確認部材35に注目しながら、中段目線確認部材35の高さ中央(中立線44)が自己の目線49に重なるまで上昇操作又は下降操作を行う。目線49が重なった時点で昇降作業を終える。昇降作業の終了時における中立線44の床11からの高さをH1とする。
【0038】
なお、目視検査を実施する前に、図3(b)に示す検査対象物100に模擬情報を与え、指針(図6、符号103)を回転させておく。検査対象物100が電気信号で作動するときには模擬情報は電気的信号とし、検査対象物100が圧力信号で作動するときには模擬情報は圧力信号とするように、持ち情報は、検査対象物100に適合する情報であればよい。すなわち、模擬情報は、指針を回転させる情報であれば何でもよく、単に指針の回転指令値などでもよい。図4(b)の検査対象物100においても同様である。
【0039】
次に、検査員48は、身体を図面奥へ移動させる。そして、(b)に示すように、中段に載せられている検査対象物100を目視する。検査対象物100の注目点51(図6、指針103の回転中心など)の床11からの高さをH2とする。このH2と前記H1は同一又はほぼ同一に設定されているため、検査員48は理想的な目線49で検査対象物100を目視検査することができる。
【0040】
中段での検査対象物100の検査が終了したら、検査員48は検査物載せ台30を上昇させる。
図4(a)に示すように、検査員48は、下段目線確認部材36に注目しながら、下段目線確認部材36の高さ中央(中立線44)が自己の目線49に重なるまで上昇操作を行う。目線49が重なった時点で昇降作業を終える。昇降作業の終了時における中立線44の床11からの高さをH3とする。このH3は図3でのH1と同一又はほぼ同一になる。
【0041】
次に、検査員48は、身体を図面奥へ移動させる。そして、(b)に示すように、下段に載せられている検査対象物100を目視する。検査対象物100の注目点51の床11からの高さをH4とする。このH4と前記H3は同一又はほぼ同一に設定されているため、検査員48は理想的な目線49で検査対象物100を目視検査することができる。
【0042】
次に、本発明が検査物載せ台を鉛直軸に沿って上下移動することの利点を図面に基づいて説明する。
図5(a)に示すように、傾斜板131を設け、この傾斜板131に検査物載せ台132を沿わせ、シリンダなどの昇降部材133で、実線で示す検査物載せ台132を想像線で示す位置まで下降させる構造の検査台130を比較例とする。
検査物載せ台132が傾斜板131でガイドされるために、昇降部材133に曲げ力が作用しない。結果、昇降部材133の小径化が可能という利点がある。
【0043】
ところで、車椅子技能者134と、実線で示す検査物載せ台132の前面下端との距離をD1とし、車椅子技能者134と、想像線で示す検査物載せ台132の前面下端との距離をD2とすると、D2はD1より小さくなる。想像線で示す検査物載せ台132の前面下端に車椅子技能者134に接触することが心配される場合には、車椅子技能者134は距離をD1からD2に変更するように、車椅子を移動させることになる。すなわち、比較例では車椅子の横移動が必要となる。作業性の向上を図る上では、車椅子の操作が少ないほどよい。
【0044】
一方、本発明に係る実施例では、図5(b)に示すように、実線で示す検査物載せ台30は、地面に鉛直な鉛直線52に沿って想像線の位置まで下がる。車椅子技能者48と、実線で示す検査物載せ台30の前面下端との距離と、車椅子技能者48と、想像線で示す検査物載せ台30の前面下端との距離とは、同じD3となる。結果、車椅子技能者48は検査物載せ台30に向かって前後進する必要がない。そのため、実施例によれば作業性の向上を図ることができる。
【0045】
尚、目線確認部材34〜36は、ミラーが安価であり、交換が容易であり、好適である。しかし、やや精度に欠ける。そこで、目線確認部材34〜36は、CCDカメラに変えることができる。CCDカメラであれば、画像解析により検査員の目(瞳)の位置が正確に割り出せる。ただし、システムが複雑で、効果ではある。
したがって、目線確認部材34〜36は、ミラー、CCDカメラ、その他の部材が採用可能である。
【0046】
また、本発明の検査台は車椅子技能者の他、健常者や片手技能者が使用することは差し支えない。ただし、高さ方向の姿勢を変更し難い車椅子技能者に特に適している。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の検査台は車椅子技能者に好適である。
【符号の説明】
【0048】
10…検査台、11…床、12…架台、20…昇降部材、30…検査物載せ台、34〜36…目線確認部材、47…車椅子、48…作業員、49…目線(理想的な目線)、52…鉛直線、100…検査対象物、102…指針。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目視によって検査する検査対象物が載せられる検査台であって、
この検査台は、床に固定される架台と、この架台の上方に配置され上下方向で異なる高さに前記検査対象物を載せることができる検査物載せ台と、この検査物載せ台と前記架台との間に設けられ前記架台に対して前記検査物載せ台を昇降させる昇降部材と、前記検査物載せ台に載せられる前記検査対象物の高さごとに前記検査物載せ台に付属され検査員の目線位置を確認する目線確認部材と、からなることを特徴とする検査台。
【請求項2】
前記目線確認部材は、ミラーであることを特徴とする請求項1記載の検査台。
【請求項3】
前記検査員は、車椅子に座っている技能者であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の検査台。
【請求項4】
前記検査対象物は、外部から与えられる模擬情報により、指針が回転する指針型メータであることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3記載の検査台。
【請求項5】
前記昇降部材は、地面に鉛直な鉛直線に沿って前記検査物載せ台を上下させることを特徴とする請求項1記載の検査台。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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