説明

検査対象受体、検査方法および検査装置

【課題】検査チップ内部の検査液体が、意図しない室へ移動してしまうこと。
【解決手段】公転によって生じる遠心力と、自転によって保持される所定角度とに応じて検査液体を内部で移動させて検査する用途に用いられる検査チップ40であって、検査液体に対して検査工程を実行可能な遠心分離部404と、遠心分離部404に対して検査液体を注入可能な注入口403を有する液溜部401と、遠心分離が実行された検査液体の少なくとも一部を、収容部414へ経由する第一案内経路421と、遠心分離部404に注入される検査液体のうち余剰分を貯留可能な貯留部420へ経由する第二案内経路422と、を備え、遠心分離部404の開口面のうち第一接続部位423は、印加される遠心力と垂直で、第二接続部位424を含む平面よりも、遠心力と平行な方向について注入口403に近い位置にあることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、検査対象となる物質に対して化学的、医学的、生物学的な検査を行うための検査対象受体、検査方法および検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療や健康、食品、創薬などの分野でDNA(Deoxyribo Nucleic Acid)や酵素、抗原、抗体、タンパク質、ウィルス、細胞などの生体物質、ならびに化学物質を検知、検出あるいは定量する重要性が増している。それら生体物質や化学物質などを簡便に測定できる様々なバイオチップおよびマイクロ化学チップなどのマイクロチップ(検査チップ)が提案されている。
【0003】
マイクロチップは、内部に流体回路を有している。流体回路は、たとえば、液体試薬を保持する液体試薬保持部、血液など検査・分析の対象となる血液などの検体あるいは検体中の特定成分や液体試薬を計量するための計量部、検体や検体中の特定成分と、液体試薬とを混合する混合部、混合液について検査・分析をおこなうための検出部などの各部と、これら各部を適切に接続する微細な経路とから構成されている。
【0004】
具体的には、たとえば、マイクロチップでは血液中の血漿成分などを用いて各種検査をおこなうことがある。このような場合、マイクロチップの流体回路は、流体回路内に注入された血液から、遠心分離により血球成分を取り除いて血漿成分を分離、抽出するための遠心分離部を備えている。
【0005】
ここで、図10を用いて、従来におけるマイクロチップとしての試料プロセッサ・カードの概要について説明する。図10は、従来における試料プロセッサ・カードの概要を示す説明図である。特許文献1では、図10に示すように試料プロセッサ・カード100は、血液などの検査対象となる試料が開口101から内部に注入される。内部に試料が注入された試料プロセッサ・カード100は、図示しない遠心装置によって回転される。試料は、遠心装置の回転によって付与される遠心力によって、試料プロセッサ・カード100内部で移動や検査などがおこなわれる。
【0006】
具体的には、開口101から注入された試料は、遠心力によって出口毛管102を通過し、試料分離室103に投入される。試料分離室103に投入された試料は、遠心力によって遠心分離がおこなわれる。遠心分離がおこなわれた試料は、分離された成分に応じて分析や検査などを実行するために、遠心力によって試料プロセッサ・カード100内部の他の室へ移動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭60−238760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の技術では、出口毛管102と、試料分離室103の開口と、他の室へ試料を案内する流路との形状についてはなんら考慮されていなかった。したがって、移動や遠心分離の際に印加される遠心力によって、試料プロセッサ・カード100内部の試料が、意図しない室へ流出や滴下されてしまうという問題があった。すなわち、試料分離室103における遠心分離前の試料であっても、遠心分離後の試料を受け入れるはずの室に流出してしまうという問題が一例として挙げられる。
【0009】
また、試料の滴下対象となる室に試料が滴下される場合であっても、室に保持されている気体によって、試料が適切に滴下されないという問題があった。すなわち、図10における紙面下側である出口毛管102から試料分離室103向かって試料が滴下される場合、試料分離室103の底部104に気泡が残存してしまい、適切に試料を滴下することができないという問題が一例として挙げられる。
【0010】
この発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、検査対象となる試料が意図しない部位へ移動することを防ぎ、試料の適切な検査をおこなうことができる検査対象受体、検査方法および検査装置を提供することを目的とする。また、検査対象となる試料が移動する部位に気泡を残存させることなく、試料の適切な検査をおこなうことができる検査対象受体、検査方法および検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1の発明の検査対象受体は、公転によって生じる遠心力と、自転によって保持される所定角度とに応じて検査対象となる検査液体を内部で移動させて検査する用途に用いられる検査対象受体であって、前記検査液体に対する所定の検査に際し、遠心分離を実行可能な遠心分離部と、前記遠心分離部に対して前記検査液体を注入可能な注入口を有する供給部と、前記遠心分離部によって遠心分離が実行された前記検査液体の少なくとも一部を、前記遠心分離部から前記検査液体を収容可能な収容部へ案内する第一案内経路と、前記遠心分離部に注入される前記検査液体のうち余剰分を、前記遠心分離部から前記余剰分を貯留可能な貯留部へ案内する第二案内経路と、を備え、前記遠心分離部の開口面のうち前記第一案内経路側の第一接続部位は、前記検査液体の注入または遠心分離の実行に際して印加される前記遠心力と垂直で、前記第二案内経路側の第二接続部位を含む平面よりも、前記遠心力と平行な方向について前記注入口に近い位置にあることを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明の検査対象受体は、上記発明において、前記第一案内経路は、前記遠心力と垂直で前記第二接続部位を含む平面に対して、前記遠心力と逆方向に鋭角をなすことを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明の検査対象受体は、公転によって生じる遠心力と、自転によって保持される所定角度とに応じて検査対象となる検査液体を内部で移動させて検査する用途に用いられる検査対象受体であって、前記検査液体に対する所定の検査に際し、遠心分離を実行可能な遠心分離部と、前記遠心分離部に対して前記検査液体を注入可能な注入口を有する供給部と、前記遠心分離部によって遠心分離が実行された前記検査液体の少なくとも一部を、前記遠心分離部から前記検査液体を収容可能な収容部へ案内する第一案内経路と、前記遠心分離部に注入される前記検査液体のうち余剰分を、前記遠心分離部から前記余剰分を貯留可能な貯留部へ案内する第二案内経路と、を備え、前記第一案内経路は、前記遠心分離部の開口面のうち前記第二案内経路側の第二接続部位を含み、前記検査液体の注入または遠心分離の実行に際して印加される前記遠心力と垂直な平面に対して、前記遠心力と逆方向に鋭角をなすことを特徴とする。
【0014】
請求項4の発明の検査対象受体は、上記発明において、前記第二案内経路は、前記遠心力と垂直で前記第二接続部位を含む平面に対して、前記遠心力の方向に鋭角をなすことを特徴とする。
【0015】
請求項5の発明の検査対象受体は、上記発明において、前記遠心分離部における底面上の任意の点と、前記注入口とを結んだ直線と、前記第一案内経路とが交差しないことを特徴とする。
【0016】
請求項6の発明の検査方法は、上記発明において、所定位置に配置された前記検査対象受体を前記所定角度自転する自転工程と、前記自転工程によって自転された前記検査対象受体に、前記遠心力を印加するよう公転する公転工程と、前記検査対象受体に対する、前記自転工程における自転動作と、前記公転工程における公転動作とを制御する回動制御工程と、を含むことを特徴とする。
【0017】
請求項7の発明の検査装置は、上記発明において、所定位置に配置された前記検査対象受体を前記所定角度自転する自転手段と、前記自転手段によって自転された前記検査対象受体に、前記遠心力を印加するよう公転する公転手段と、前記検査対象受体に対する、前記自転手段における自転動作と、前記公転手段における公転動作とを制御する回動制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、遠心分離部の開口面のうち、収容部へ経由する第一接続部位の方が、遠心力に垂直で貯留部へ経由する第二接続部位を含む平面よりも注入口に近い位置にある。したがって、検査液体は、注入や遠心分離などに際して遠心力が印加されている状態で、収容部へ流出することがない。より具体的には、遠心分離を実行した後の検査液体を収容するべき部位に、遠心分離を実行する前の検査液体が流出することがないため、検査液体に対して適切な検査をおこなうことができる。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、第一案内経路が、遠心力と垂直で第二接続部位を含む平面に対して、遠心力と逆方向に鋭角をなすため、検査液体の余剰分が収容部に流出することを防ぐことができる。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、第一案内経路が、遠心力と垂直で第二接続部位を含む平面に対して、遠心力と逆方向に鋭角をなすため、検査液体の余剰分が収容部に流出することを防ぐことができる。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、第二案内経路が、遠心力と垂直で第二接続部位を含む平面に対して、遠心力の方向に鋭角をなすため、検査液体の余剰分は、第二案内経路側に留まることなく貯留部に案内されるため、収容部に流出することを防ぐことができる。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、検査液体が注入される遠心分離部の底面に対して検査液体を注入する構成であるため、遠心分離部に存在していた気体を滞留させることなく検査液体の注入をすることができるため、適切に遠心分離をおこなうことができる。また、検査液体が注入される遠心分離部の底面と、注入口とを結んだ直線が第一案内経路と交差しないため、遠心分離部によって遠心分離が実行されていない検査液体が収容部に流出することを防ぐことができる。
【0023】
請求項6に記載の発明によれば、検査対象受体内部の検査液体に対して、意図しない部位への流出を防ぎ、適切な検査をおこなうことができる。
【0024】
請求項7に記載の発明によれば、検査対象受体内部の検査液体に対して、意図しない部位への流出を防ぎ、適切な検査をおこなうことができる。
【0025】
以上説明したように、本発明にかかる検査対象受体、検査方法および検査装置によれば、必要な処理を経ていない検査液体が、意図しない部位へ流出することを防ぐことができるため、検査対象受体で適切な検査をおこなうことができるという効果を奏する。また、検査液体に気泡を混入させることなく遠心分離を実行可能とすることができるため、検査対象受体で適切な検査をおこなうことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態の検査装置の一例を示す平面図である。
【図2】本発明の実施形態の検査装置の一例を示す断面図である。
【図3】本発明の実施形態の検査装置における角度調整機構の一例を示す説明図である。
【図4】本発明の実施形態の検査チップの一例を示す説明図である。
【図5】本発明の実施形態の検査装置の処理の内容を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態の検査装置による遠心力の印加(図5に示したステップS505)における検査液体の動作の一例を示す説明図である。
【図7】本発明の変形例における検査チップの形状の一例(その1)を示す説明図である。
【図8】本発明の変形例における検査チップの形状の一例(その2)を示す説明図である。
【図9】本発明の変形例における検査チップの形状の一例(その3)を示す説明図である。
【図10】従来における試料プロセッサ・カードの概要を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる検査対象受体、検査方法および検査装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0028】
(実施形態)
(検査装置の構成)
図1〜図3を用いて、本発明にかかる検査対象受体としての検査チップ内部に収容される検査対象となる検査液体に対して、所定の検査をおこなうために検査チップに遠心力を印加する検査装置の概要について説明する。図1は、本発明の実施形態の検査装置の一例を示す平面図である。
【0029】
図1において、検査装置1は、軸6を中心として回転可能なターンテーブル3と、検査対象である検査液体を収容可能な検査チップ40を着脱可能なチップホルダ4と、筐体の外壁部2から延設された外壁延出部22に設けられた光学検査部9とを備え、外壁部2の外部に設けられた制御装置70が接続されている。検査液体は、たとえば、血液などの検体または薬剤などの試薬を含む構成であり、本発明の実施形態では、血液などの検体からなる検査液体について説明する。
【0030】
検査装置1は、ターンテーブル3を高速で回転させることにより、チップホルダ4に取付けられた検査チップ40に遠心力を印加する。検査装置1は、検査チップ40に遠心力を印加することで、検査チップ40内部の流体回路に収容された検査液体に対して、各部への移動、複数の相に分離する遠心分離、薬剤との混合、希釈、定量、保持、各種測定などがおこなわれる。
【0031】
図2を用いて、外壁部2を図1に示したX−X線における矢視方向の断面について説明する。図2は、本発明の実施形態の検査装置の一例を示す断面図である。図2において、検査装置1は、ターンテーブル3と、チップホルダ4と、軸6を中心にターンテーブル3の回転制御をおこなうモータ5と、検査チップ40内部の検査液体に対して検査をおこなうよう外壁延出部22に設けられた光学検査部9としての光源7および検出器8と、軸18を中心にチップホルダ4を所定角度に保持可能な角度調整機構19と、外壁部2内を上下に二分する内壁21とを備えている。
【0032】
外壁部2は、検査装置1における円筒形の筐体を構成している。ターンテーブル3は、外壁部2の内径よりも小径の円盤体であり、直径方向の両端部である円周近傍に一対のチップホルダ4を各々備えている。
【0033】
チップホルダ4は、たとえば、底板と上板と側壁とで外形が形成された箱状体である。具体的には、チップホルダ4は、平面視長方形に形成された検査チップ40を内部に収納および保持できるように、検査チップ40より一回り大きい平面視長方形に形成された箱状の部材である。利用者は、ターンテーブル3の回転中心側から、図1に示す矢印Aの方向である放射方向に向けて、検査チップ40をチップホルダ4に取付け可能である。
【0034】
内壁21は、中心付近に孔23を備えており、孔23を介してターンテーブル3と、モータ5とが軸6によって連通する。軸6は、モータ5の回転制御に伴って回転する。ターンテーブル3は、軸6の回転に伴って回転する。チップホルダ4に取付けられた検査チップ40は、ターンテーブル3の回転に応じて回転する。以降、軸6を中心とした検査チップ40の回転を「公転」として説明する。
【0035】
軸18は、ターンテーブル3の回転中心から外周方向に離間した位置で、ターンテーブル3下方の角度調整機構19と、ターンテーブル3上方のチップホルダ4とを接続する。詳細は図3を用いて説明するが、軸18は、角度調整機構19の制御にしたがって、上端部にチップホルダ4を回転自在に軸支する。以降、軸18を中心とした検査チップ40の回転を「自転」として説明する。
【0036】
図3を用いて、本発明の実施形態の検査装置1における角度調整機構19について、外壁部2を図1に示したY−Y線における矢視方向の断面について説明する。図3は、本発明の実施形態の検査装置における角度調整機構の一例を示す説明図である。図3において、角度調整機構19は、ステッピングモータ10と、ギア12,13と、プーリ15,16と、ベルト17とを備えている。
【0037】
ステッピングモータ10は、ターンテーブル3下方で、軸6と、軸6から外周方向に離間した軸18との間に設けられている。ギア12は、ステッピングモータ10の軸11に軸支されている。ギア13は、ギア12と噛合する減速用ギアであり、ターンテーブル3に回転可能に支持された軸14により軸支されている。
【0038】
プーリ15は、ギア13の軸14に対して同軸に軸支されている。プーリ16は、ターンテーブル3の上下方向に孔24を通じて延設され、上端部にてチップホルダ4を回転可能に軸支している軸18の下端部に対して同軸に固定されている。ベルト17は、プーリ15とプーリ16との間に掛け渡されている。
【0039】
角度調整機構19は、ステッピングモータ10の回転制御に応じて、チップホルダ4を所定角度回転させ、検査チップ40の自転を制御する。具体的には、角度調整機構19は、ステッピングモータ10によって軸11を所定角度回転させることによりギア12を回転させる。ギア12の回転に応じて、ギア12と噛合しているギア13が回転する。ギア13の回転に伴って、軸14に固定されているプーリ15が回転する。プーリ15の回転はベルト17によりプーリ16に伝えられて、プーリ16が所定角度回転し、軸18が所定角度回転することで、チップホルダ4が所定角度回転する。
【0040】
図2に戻って、光学検査部9は、ターンテーブル3上面に設けられているチップホルダ4に対し、同一方向に並んで設けられている光源7および検出器8により構成されている。光源7は、チップホルダ4に取付けられた検査チップ40内の検査液体に、検査チップ40の上方から光を照射する。
【0041】
検出器8は、検査液体にて反射された光を、検査チップ40の上方で検出する。本発明の実施形態では、検査液体にて反射された光を検出器8で検出するよう、検査チップ40上方に検出器8を設けたが、検査液体にて透過する光を検出器8で検出する場合、検出器8は、検査チップ40下方に設けることとしてもよい。
【0042】
図1に戻って、検査装置1の外部に接続された制御装置70は、検出器8で検出された受光量に基づいて各種測定をおこなう。制御装置70は、図示しないCPU、RAM、ROM等を内蔵して、検査装置1のターンテーブル3の回転(公転)や、チップホルダ4の回転(自転)など各種動作を制御する。制御装置70は、利用者が検査装置1の各種動作を指示するための操作部を備えている。本発明の実施形態では、制御装置70を外部接続することとしたが、これに限ることはなく、制御装置70の機能を検査装置1内部に備えることとしてもよい。
【0043】
なお、図1〜図3を用いて説明した本発明の実施形態では、円筒形の外壁部2からなる筐体内部に円盤体のターンテーブル3を備えることとして説明したが、これに限ることはない。すなわち、検査チップ40に遠心力を印加できる構成であればよく、筐体やターンテーブル3の形状は限定することはない。また、チップホルダ4は、ターンテーブル3の円周近傍に一対設けることとしたが、これに限ることはない。すなわち、一つであったり複数であったりしてもよく、検査チップ40に所望の遠心力を印加できる配置であればよい。
【0044】
また、チップホルダ4、検査チップ40の形状を平面視長方形として説明したが、これに限ることはない。すなわち、検査チップ40内部の検査液体に対して、所定の検査をおこなうための遠心力を印加できる構成であればよい。また、検査チップ40の取付け方向は、図1に示した矢印Aの方向に限ることはない。検査チップ40の取付けは、いずれの方向から取付ける構成でもよく、公転面に対して水平に限ることもない。具体的には、検査チップ40を公転面に対して垂直に取付けることとしてもよく、検査液体の特徴、機器の配置などに応じて設定してもよい。このようにすることで、汎用性に富んだ検査装置1の活用を図ることができる。
【0045】
(検査チップの構成)
図4を用いて、本発明の実施形態の検査チップ40の構成について説明する。図4は、本発明の実施形態の検査チップの一例を示す説明図である。図4では、図1に示した検査装置1に検査チップ40を設置する場合における検査チップ40の平面視について説明する。
【0046】
図4において、検査チップ40は、平面視長方形で所定の厚みを有する板部材から構成されており、所定の検査の対象となる検査液体について収容、移動、測定などを実行するための流体回路を備えている。板部材の材質は、たとえば、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアリレート樹脂(PAR)、アクリロニトル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリメチルペンテン樹脂(PMP)、ポリブタジエン樹脂(PBD)、生分解性ポリマー(BP)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などの有機材料や、シリコン、ガラス、石英などの無機材料など特に制限されない。また、検査チップ40は、図4における紙面手前側である検査チップ40の表面側は、内部に検査液体を保持するたに流体回路を覆う構成となっている。
【0047】
検査チップ40は、内部の流体回路として、板部材の厚み方向における所定深さの凹部からなる液溜部401,411と、液溜部401,411に対して検査液体を供給する供給口402,412と、液溜部401,411に収容された検査液体を検査チップ40内の別の部屋へ注入する注入口403,413と、注入口403,413から注入された検査液体に対して遠心分離や収容などが可能な遠心分離部404と、検査液体を収容可能な収容部414と、検査液体のうち余剰分を貯留可能な貯留部420と、各部に検査液体を流す経路である第一案内経路421,第二案内経路422とを備えている。
【0048】
なお、本発明の実施形態では、遠心分離を実行可能な部位である遠心分離部404は、検査液体を遠心分離する場合について説明するがこれに限ることはない。具体的には、たとえば、検査液体の保持、定量、希釈、混合などをおこなう構成でもよい。さらには、たとえば、検査液体を保持、定量、希釈、混合などの後に遠心分離をおこなう部位であってもよい。また、収容部414は、検査液体を収容可能な部位として説明するが、収容の目的を限定するものではない。すなわち、収容部414は、たとえば、検査液体を定量するために収容したり、混合のために収容したり、希釈するために収容したり、一時的に保持するために収容したりする構成でもよい。
【0049】
本発明の実施形態では、検査チップ40は、血液などの検体を検査液体として用い、利用者などによって供給口402から検査液体が液溜部401に供給される。液溜部401に供給された検査液体は、遠心分離をおこなうために注入口403から遠心分離部404へ注入される。検査液体の注入時における余剰分は、第二案内経路を経由して貯留部420へ流出する。遠心分離後の検査液体のうち上澄み液は、第一案内経路を経由して収容部414へ流出する場合について説明する。
【0050】
詳細は図5および図6を用いて説明するが、供給口402から液溜部401に検査液体が供給された検査チップ40は、角度調整機構19の制御による自転によって所定角度に保持され、ターンテーブル3上における公転によって遠心力が印加される。検査液体は、検査チップ40内部において印加された遠心力によって、注入口403から遠心分離をおこなうための遠心分離部404へ注入される。
【0051】
具体的には、検査液体は、遠心分離部404と第一案内経路421との接続部分である第一接続部位423と、遠心分離部404と第二案内経路422との接続部分である第二接続部位424とからなる開口を通過して、遠心分離部404の底面405の任意の点の方向に注入される。すなわち、遠心分離部404に対して検査液体を注入する遠心力の方向は、注入口403から底面405の任意の点に向かう方向であればよい。このように、遠心分離部404に検査液体を注入する遠心力の方向が、注入口403から底面405に向かう方向であるため、注入される検査液体が遠心分離前に意図しない部位である収容部414へ流出することがない。さらに、遠心分離部404の底面405にある気体を適切に取り除きつつ注入されることとなるため、遠心分離に気泡が混入することがない。また、検査液体の注入に際する遠心力は、たとえば、注入開始時から注入終了時までに変動してもよく、注入終了時に液溜部401の検査液体がすべて注入可能な方向であればよい。
【0052】
液溜部401に供給された検査液体が遠心分離部404に注入されると、検査装置1は、遠心分離部404に保持された検査液体の遠心分離をおこなう。遠心分離部404において検査液体の遠心分離をおこなう遠心力は、遠心分離部404内部の検査液体が分離できる方向であればよく、角度調整機構19の制御による検査チップ40の自転で保持される所定角度によって調整される。
【0053】
遠心分離部404に対する検査液体の注入の際や、遠心分離部404における遠心分離の際に余剰となる検査液体は、第二案内経路422を経由して貯留部へ流出する。また、遠心分離後の検査液体のうち、以降に必要となる上澄み液などは、第一案内経路421を経由して異なる他の部屋である収容部414へ流出する。具体的には、角度調整機構19の制御による検査チップ40の自転によって保持される所定角度と、ターンテーブル3上における公転によって印加される遠心力とに応じて、遠心分離部404から上澄み液が流出する。
【0054】
なお、本発明の実施形態では、検査液体は、血液などの検体として説明したが、これに限ることない。具体的には、検査液体は、薬剤などの試料や、混合液体などであってもよく、所望の検査に応じて利用者によって適宜選択可能である。また、液溜部401,411、遠心分離部404,収容部414、貯留部420など、各部屋を経由する経路の数量なども、所望の検査に応じて適宜設定可能としてもよい。また。本発明の実施形態では、各部でおこなわれる処理として、遠心分離可能な遠心分離部404で遠心分離がおこなわれる場合について説明したが、その他、他の液体との混合、希釈、定量などがおこなわれることがあってもよい。
【0055】
なお、各構成要素と、各機能を対応付けて説明すると、図4に示した遠心分離部404によって、本発明の遠心分離部の機能を実現する。また、収容部414によって、本発明の収容部の機能を実現する。また、液溜部401,411によって、本発明の供給部の機能を実現する。また、第一案内経路421によって、本発明の第一案内経路の機能を実現する。また、第二案内経路422によって、本発明の第二案内経路の機能を実現する。
【0056】
(検査装置の処理の内容)
図5、図6を用いて、本発明の実施形態の検査装置1の処理の内容について説明する。図5は、本発明の実施形態の検査装置の処理の内容を示すフローチャートである。なお、本発明の実施形態においては、液溜部411、供給口412、収容部414などにおける検査液体については説明を省略し、供給口402から液溜部401に検査液体が供給され、遠心分離部404によって検査液体が遠心分離される場合について説明する。
【0057】
図5のフローチャートにおいて、まず、利用者は、供給口402を上側にした状態で、検査液体を検査チップ40の供給口402に滴下する(ステップS501)。ステップS501において、検査液体の滴下が完了すると、利用者は、チップホルダ4に検査チップ40をセットする(ステップS502)。具体的には、たとえば、利用者は、ターンテーブル3の回転中心側から、図1に示す矢印Aの方向である放射方向に向けて、検査チップ40をチップホルダ4に取付ける。
【0058】
ステップS502において、検査チップ40のセットが完了すると、利用者は、制御装置70の操作部を操作して、検査装置1の電源をONする(ステップS503)。そして、利用者は、制御装置70の操作部を操作する。制御装置70のCPUは、ROMに記憶されている制御プログラムの制御にしたがって検査装置1を制御して、検査チップ40に所定の遠心力の印加を開始する(ステップS504)。
【0059】
ここで、図6を用いて、本発明の実施形態の検査装置1による遠心力の印加(図5に示したステップS504)における検査液体の動作について説明する。図6は、本発明の実施形態の検査装置による遠心力の印加(図5に示したステップS504)における検査液体の動作の一例を示す説明図である。
【0060】
図6における注入前工程610において、検査液体600は、注入前の遠心力611によって液溜部401に保持されている。具体的には、検査装置1は、角度調整機構19の制御にしたがって所定角度に保持された検査チップ40に対して、モータ5の回転制御による公転によって遠心力611を印加する。
【0061】
注入開始工程620において、検査液体600は、注入開始の遠心力621によって注入口403を介して、点線601に沿って遠心分離部404へ注入される。具体的には、検査装置1は、角度調整機構19の制御にしたがって検査チップ40を自転させる。検査チップ40は、自転によって所定角度に保持されて、印加される遠心力の方向が注入前の遠心力611から注入開始の遠心力621へ変動する。注入開始工程620における所定角度は、遠心力621が注入口403から遠心分離部404の底面405の任意の点へ向かう方向となるよう制御される。
【0062】
注入中工程630において、検査液体600は、注入中の遠心力631によって注入口403を介して、点線601に沿って遠心分離部404へ注入される。遠心分離部404に注入された検査液体600は、遠心分離部404によって保持されている。
【0063】
注入終了工程640において、検査液体600は、注入終了の遠心力641によって遠心分離部404への注入が完了されている。液溜部401から遠心分離部404に注入される検査液体600のうち余剰分は、点線602に沿って、第二案内経路422を経由して貯留部420へ流出する。注入開始工程620、注入中工程630、注入終了工程640を経て、液溜部401に保持された検査液体600は、遠心分離部404または貯留部420に注入される。
【0064】
平面Hは、第二接続部位424を含み、検査液体600の注入の際における遠心力621,631,641に垂直な平面である。具体的には、液溜部401から遠心分離部404に対する検査液体600の注入経路を示す点線601と垂直な平面である。第一接続部位423は、平面Hに対して遠心力621,631,641と逆方向について注入口403に近い位置にある。このように、平面Hに対して第一接続部位423が注入口403に近い位置であるため、検査液体600は、注入に際して第一案内経路421を経由して収容部414など図6の例における注入対象である遠心分離部404と異なる部位である収容部414などへ流出することを防ぐことができる。特に、遠心分離では、検査液体の注入や移動などにおける遠心力より大きな遠心力とすることもあるため、このような構成とすることで、遠心分離前の検査液体が意図しない部位へ流出するのを防ぐのに顕著な効果を奏する。
【0065】
また、遠心力621,631,641によって検査液体600が注入される経路である、遠心分離部404における底面405上の任意の点と、注入口とを結んだ点線601は、第一案内経路421とは交差しない構成である。したがって、検査液体600は、他の部位である収容部414に注入されることなく、遠心分離部404に注入される。さらに、遠心分離部404の底面405にある気体を底面405に残留させることなく検査液体600を注入することができるため、以降の遠心分離などの処理が的確に実行できることとなる。
【0066】
遠心分離開始工程650において、検査液体600は、遠心分離開始の遠心力651によって遠心分離がおこなわれる。具体的には、検査装置1は、角度調整機構19の制御にしたがって検査チップ40を自転させる。検査チップ40は、自転によって所定角度に保持されて、印加される遠心力の方向が注入終了の遠心力641から遠心分離開始の遠心力651へ変動する。
【0067】
遠心分離部404における遠心分離によって、検査液体600は、第一成分603と、第二成分604とに分離される。具体的には、たとえば、検査液体600が血液である場合、第一成分603は、検査液体600のうち比重の高い成分の血球成分であり、第二成分604は、検査液体600のうち比重の低い成分の血漿成分である。すなわち、遠心分離部404における遠心分離によって、検査液体である血液について、ほぼ1:1の割合である血漿成分と血球成分とを分離することとなる。また、特に図示はしないが、遠心分離時に生じる余剰分は、第二案内経路422を経由して貯留部420へ流出する。
【0068】
分離後移動工程660において、検査液体が遠心分離された上澄み液である第二成分604は、移動の遠心力661によって、矢印605の方向に流出し第一案内経路421を経由して、以降のために収容部414へ移動する。具体的には、検査装置1は、角度調整機構19の制御にしたがって検査チップ40を自転させる。検査チップ40は、自転によって所定角度に保持されて、印加される遠心力の方向が遠心分離の遠心力651から移動の遠心力661へ変動する。また、収容部414は、たとえば、定量、混合、遠心分離などの各処理のため収容可能な部位である。
【0069】
なお、図6では、遠心力621,631,641の方向を一定の方向として図示したが、これに限ることはない。すなわち、遠心力621,631,641の方向は、変動する構成としてもよく、注入終了工程640において、液溜部401内部の検査液体600の注入が完了する方向であればよい。具体的には、たとえば、遠心力641の方向は、液溜部401において、図6における右側(第一案内経路421側)の底面405に垂直な方向であれば、検査液体600の注入が完了することとなる。
【0070】
また、図6では、遠心力621,631,641は、底面405の任意の点へ向かう方向となるよう制御されることとして説明したが、これに限ることはない。すなわち、遠心力621,631,641は、遠心分離部404における遠心分離をおこなうために十分な検査液体600を注入できる方向であればよい。具体的には、たとえば、注入開始工程620における遠心力621は、図6における底面405の右側(第一案内経路421側)に向かう方向とすると、確実に底面405付近の気体を取り除くことができ、正確な遠心分離を実行することが可能となる。
【0071】
また、図6では、注入終了の遠心力641と、遠心分離開始の遠心力651を異なる方向として説明したが、これに限ることはない。また、各遠心力611,621,631,641,651,661の強さについても、モータ5の制御によって適宜調整可能である。
【0072】
図5に戻って、ステップS504における遠心力の印加の後、所定の処理を経て遠心力の印加を終了する(ステップS505)。遠心力の印加終了は、たとえば、検査液体に対して所定のプログラムに基づいた必要な処理を経て終了することとなる。ステップS505において、遠心力の印加が終了すると、検査装置1は、検査液体のうち光学検査部9による検査の対象となる液体の保持された部屋が光源7の下方となるように検査チップ40を移動する(ステップS506)。
【0073】
ステップS506において、検査チップ40を移動すると、検査装置1は、制御装置70の制御にしたがって、光学検査部9によって検査液体の測定をおこなう(ステップS507)。検査液体の測定は、たとえば、光源7から検査チップ40内部の検査液体に対して光を照射する。そして、検査液体によって反射された光を検出器8によって検出することによっておこなわれる。
【0074】
ステップS507において、光学検査部9によって測定された情報は制御装置70に出力される。制御装置70は、測定された情報に基づいて、検査液体の検査結果を出力し(ステップS508)、一連の処理を終了する。検査結果は、たとえば、測定された情報を所定のプログラムによって解析することによって取得し、図示しない表示部に表示することとしてもよい。
【0075】
なお、本発明の各構成要素における処理と、本発明の実施形態の各処理または各機能とを関連付けて説明すると、ステップS504、ステップS505、ステップS506およびステップS507における制御装置70のCPUは、ROMの処理によって、本発明の自転手段による自転工程、公転手段による公転工程、回動制御工程による回動制御工程の処理が実行される。
【0076】
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、遠心分離部404における開口について、収容部414側の第一接続部位423が平面Hよりも注入口403に近い位置であるため、必要な処理を経ていない検査液体が、意図しない部位へ流出することを防ぐことができる。すなわち、遠心分離部404において、遠心分離をおこなう前の検査液体が他の部位である収容部414へ流出することを防ぐことができるため、遠心分離後の上澄み液以外の成分が以降で混入することなく的確な検査をおこなうことができる。
【0077】
また、検査液体600が注入される経路である、遠心分離部404における底面405上の任意の点と、注入口とを結んだ点線602は、第一案内経路421とは交差しない構成であるため、検査液体600は、収容部414に注入されることなく、遠心分離部404に確実に注入される。さらに、遠心分離部404の底面405にある気体を底面405に残留させることなく検査液体600を注入することができるため、以降の遠心分離を的確に実行できる。
【0078】
(その他一部の変形例)
本発明の実施形態では特に、図6に示した検査チップ40にける遠心分離部404の開口周辺の形状について、第一接続部位421が、遠心力621,631,641と逆方向について平面Hよりも注入口403に近い位置にある構成として説明したがこれに限ることはない。具体的には、平面Hに対する第一案内経路421や第二案内経路422の傾きや、第一接続部位423と、第二接続部位424とからなる遠心分離部404の開口の形状などに特徴を有する構成としてもよい。
【0079】
図7〜図9を用いて、本発明の変形例における検査チップ40の形状の一例について説明する。なお、図7〜図9では、検査液体の図示は省略し、液溜部401から遠心分離部404に対する検査液体の注入を例に挙げて説明する。図7は、本発明の変形例における検査チップの形状の一例(その1)を示す説明図である。
【0080】
図7において、検査チップ40は、角度調整機構19の制御による自転にしたがって所定角度に保持され、モータ5の回転制御による公転によって遠心力701が印加されている。検査液体は、遠心力701によって注入口403を介して、点線710に沿って遠心分離部404へ注入される。
【0081】
第二接続部424を含み、遠心力701に対して垂直な平面Hは、第二案内経路422と、遠心力701の方向に対して鋭角θ1を構成している。このようにすることで、検査液体の余剰分が第一案内経路421側に流出することなく、第二案内経路422を経由して貯留部420へ流出し易くなる。
【0082】
換言すれば、平面Hと、第二案内経路422とを遠心力701の逆方向に対して鋭角にしないため、遠心分離部404の上方に検査液体が留まって、第一案内経路421側に検査液体が流出してしまうことを防ぐことができる。したがって、検査液体が意図しない部位へ流出することを防ぎ、検査精度の向上を図ることができる。
【0083】
図8は、本発明の変形例における検査チップの形状の一例(その2)を示す説明図である。図8において、検査チップ40は、角度調整機構19の制御による自転にしたがって所定角度に保持され、モータ5の回転制御による公転によって遠心力801が印加されている。検査液体は、遠心力801によって注入口403を介して、点線810に沿って遠心分離部404へ注入される。
【0084】
第二接続部424を含み、遠心力801に対して垂直な平面Hは、第一案内経路421と、遠心力801の逆方向に対して鋭角θ2を構成している。このようにすることで、検査液体の余剰分が第一案内経路421側に流出することなく、第二案内経路422を経由して貯留部420へ流出し易くなる。さらに、余剰分が第一案内経路421側に流出した場合であっても、第一案内経路421内に留めることができるため、収容部414まで流出することを防ぐことができる。
【0085】
換言すれば、平面Hと、第一案内経路421とを遠心力801の方向に対して鋭角にしないため、遠心力801が印加された状態で第一案内経路421上に検査液体がある場合でも、他の部位などへ流出することなく貯留部420へ流出することとなる。したがって、検査液体が意図しない部位へ流出することを防ぎ、検査精度の向上を図ることができる。
【0086】
また、上述した本発明の実施形態および変形例では特に、遠心分離部404の例として、ほぼ矩形の形状を図示して説明したが、これに限ることはない。具体的には、面取りされている構成や台形や多角形でもよい。このようにすることで、検査チップ40における各部位の形状に汎用性を持たせることができる。図9を用いて、本発明の変形例における検査チップ40の形状について、矩形でない遠心分離部404の一例を説明する。図9は、本発明の変形例における検査チップの形状の一例(その3)を示す説明図である。
【0087】
図9において、検査チップ40は、角度調整機構19の制御による自転にしたがって所定角度に保持され、モータ5の回転制御による公転によって遠心力901が印加されている。検査液体は、遠心力901によって注入口403を介して、点線910に沿って遠心分離部404へ注入される。
【0088】
ここで、第一接続部位423と、第二接続部位424と、底面405とを有する遠心分離部404は、第一接続部位423側に屈曲部位920を備えている。屈曲部位920は、第一接続部位423と、第二接続部位424とからなる遠心分離部404の開口が広くなるように構成されている。このように、屈曲部位920などによって、遠心分離部404の形状を矩形でない構成として開口を広くすることで、液溜部401から遠心分離部404に対する検査液体600の注入が容易になる。
【0089】
以上説明したように、図7〜図9を用いて説明した変形例によれば、遠心分離部404へ注入される検査液体は、確実に遠心分離部404に注入される。また、遠心分離部404へ注入される検査液体は、余剰分について貯留部420へ流出されやすくなる。さらに、検査液体は、意図しない部位へ流出されることを防ぐことができる。したがって、検査チップ40による検査の適切化を図ることができる。
【0090】
また、上述した説明では、実施形態および一部の変形例について別々の例として説明したが、これに限ることはない。すなわち、それぞれを組み合わせた構成として、実施形態および一部の変形例を適宜組み合わせて利用してもよい。適宜組み合わせることで、確実に検査液体の意図しない部位への流出を防ぐことができる。
【0091】
なお、上述で説明した方法は、あらかじめ用意されたプログラムをパーソナルコンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することにより実現することができる。このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク、CD−ROM、MO、DVDなどのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行される。またこのプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することが可能な伝送媒体であってもよい。
【符号の説明】
【0092】
1 検査装置
5 モータ
9 光学検査部
19 角度調整機構
40 検査チップ
401,411 液溜部
402,412 供給口
403,413 注入口
404 遠心分離部
405 底面
414 収容部
420 貯留部
421 第一案内経路
422 第二案内経路
423 第一接続部位
424 第二接続部位
600 検査液体
603 第一成分
604 第二成分
100 (従来の)検査チップ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
公転によって生じる遠心力と、自転によって保持される所定角度とに応じて検査対象となる検査液体を内部で移動させて検査する用途に用いられる検査対象受体であって、
前記検査液体に対する所定の検査に際し、遠心分離を実行可能な遠心分離部と、
前記遠心分離部に対して前記検査液体を注入可能な注入口を有する供給部と、
前記遠心分離部によって遠心分離が実行された前記検査液体の少なくとも一部を、前記遠心分離部から前記検査液体を収容可能な収容部へ案内する第一案内経路と、
前記遠心分離部に注入される前記検査液体のうち余剰分を、前記遠心分離部から前記余剰分を貯留可能な貯留部へ案内する第二案内経路と、
を備え、
前記遠心分離部の開口面のうち前記第一案内経路側の第一接続部位は、前記検査液体の注入または遠心分離の実行に際して印加される前記遠心力と垂直で、前記第二案内経路側の第二接続部位を含む平面よりも、前記遠心力と平行な方向について前記注入口に近い位置にあることを特徴とする検査対象受体。
【請求項2】
前記第一案内経路は、前記遠心力と垂直で前記第二接続部位を含む平面に対して、前記遠心力と逆方向に鋭角をなすことを特徴とする請求項1に記載の検査対象受体。
【請求項3】
公転によって生じる遠心力と、自転によって保持される所定角度とに応じて検査対象となる検査液体を内部で移動させて検査する用途に用いられる検査対象受体であって、
前記検査液体に対する所定の検査に際し、遠心分離を実行可能な遠心分離部と、
前記遠心分離部に対して前記検査液体を注入可能な注入口を有する供給部と、
前記遠心分離部によって遠心分離が実行された前記検査液体の少なくとも一部を、前記遠心分離部から前記検査液体を収容可能な収容部へ案内する第一案内経路と、
前記遠心分離部に注入される前記検査液体のうち余剰分を、前記遠心分離部から前記余剰分を貯留可能な貯留部へ案内する第二案内経路と、
を備え、
前記第一案内経路は、前記遠心分離部の開口面のうち前記第二案内経路側の第二接続部位を含み、前記検査液体の注入または遠心分離の実行に際して印加される前記遠心力と垂直な平面に対して、前記遠心力と逆方向に鋭角をなすことを特徴とする検査対象受体。
【請求項4】
前記第二案内経路は、前記遠心力と垂直で前記第二接続部位を含む平面に対して、前記遠心力の方向に鋭角をなすことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の検査対象受体。
【請求項5】
前記遠心分離部における底面上の任意の点と、前記注入口とを結んだ直線と、前記第一案内経路とが交差しないことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の検査対象受体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一つに記載の検査対象受体について、所定位置に配置された前記検査対象受体を前記所定角度自転する自転工程と、
前記自転工程によって自転された前記検査対象受体に、前記遠心力を印加するよう公転する公転工程と、
前記検査対象受体に対する、前記自転工程における自転動作と、前記公転工程における公転動作とを制御する回動制御工程と、
を含むことを特徴とする検査方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一つに記載の検査対象受体について、所定位置に配置された前記検査対象受体を前記所定角度自転する自転手段と、
前記自転手段によって自転された前記検査対象受体に、前記遠心力を印加するよう公転する公転手段と、
前記検査対象受体に対する、前記自転手段における自転動作と、前記公転手段における公転動作とを制御する回動制御手段と、
を備えたことを特徴とする検査装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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