説明

検査用台車

【課題】効率的に配管の状態を検査することができる検査用台車を提供すること。
【解決手段】配管の検査に用いられる検査用台車であって、前記配管に接する第1配管接触部を備える2つのアーム部と、前記2つのアーム部を摺動可能に収容するアーム収容部と、前記配管に接する2つの第2配管接触部と、前記配管を検査するための検査装置を収容する検査装置収容部とを備える検査用台車であって、前記2つのアーム部が前記アーム収容部から延びるときの軌道が曲線軌道であり、該曲線軌道の曲率中心が前記配管の中心よりも前記本体側にあり、前記第2配管接触部は前記配管の前記本体側の半円に接し、前記本体部から前記アーム部が延びたときの前記第1配管接触部は前記配管の前記本体側とは反対側の半円に接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管の検査に用いられる検査用台車に関する。
【背景技術】
【0002】
配管を通る材料は、流動性を良好にするために特定の温度に高められて配管を通過させられる。このように、材料が所定の温度に維持されるために、配管は断熱材などに被われていることがある。
配管の断熱材が水分を含んでいると配管自体が錆び付いてしまうという問題がある。そのために、配管の長手方向について断熱材がどの程度の水分を含んでいるのかを測定する必要がある。
特許文献1には、排水パイプの管外周に取り付けられる受け皿と、受け皿の漏水液面位置により、排水パイプの漏水を検出する漏水検出装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−292893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高所に設置された配管の断熱材に含まれる水分量を検査するためには、作業用の架台を建設する必要がある。しかしながら、配管は長い距離にわたって配設されているため、このような架台を配管に沿って設けることとすると建設費用が莫大となり、全体として配管検査のコストが高くなるという問題がある。よって、このような架台などの建設を行うことなく、効率的に配管の状態を検査できるようにすることが望まれる。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、効率的に配管の状態を検査することができる検査用台車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的を達成するために本発明に係る検査用台車は、配管の検査に用いられる検査用台車であって、前記配管に接する第1配管接触部を備える2つのアーム部と、前記2つのアーム部を摺動可能に収容するアーム収容部と、前記配管に接する2つの第2配管接触部と、前記配管を検査するための検査装置を収容する装置収容部と、を備える本体部と、を備える。そして、前記2つのアーム部が前記アーム収容部から延びるときの軌道が曲線軌道であり、該曲線軌道の曲率中心が前記配管の中心よりも前記本体側にあり、前記第2配管接触部は前記配管の前記本体側の半円に接し、前記本体部から前記アーム部が延びたときの前記第1配管接触部は前記配管の前記本体側とは反対側の半円に接する。
【0006】
このように、2つのアーム部がアーム収容部から延びるときにおける曲率軌道の曲率中心が、配管の中心よりも本体側にあるようにすることで、検査用台車の配管に対する開口部を広くすることができ、検査用台車を効率的に配管周囲に配置することができる。そして、容易に配管の状態の検査することができる。
【0007】
また、本発明に係る検査用台車において、前記アーム部が前記アーム収容部から延びたときの前記第1配管接触部の面からの法線と、前記第2配管接触部の面からの法線とが前記配管の中心で交差する。
このように、アームが延びたときの第1配管接触部の面からの法線と、第2配管接触部の面からの法線が配管の中心で交差する構成とすることで、第1配管接触部と第2配管接触部とが確実に配管に接触することができる。
【0008】
また、本発明に係る検査用台車において、前記本体部は、さらに、前記配管の円周方向に移動するための第1クローラを備える。
このように、配管の円周方向に移動するための第1クローラを備えることで、配管の円周方向にずれて検査用台車が配置されてしまった場合であっても、その位置を移動して修正することができる。
【0009】
また、本発明に係る検査用台車において、前記第1クローラは、前記配管に接触及び非接触となるために、前記本体側から前記配管の中心方向に移動可能である。
このように、第1クローラを配管に対して接触又は非接触にすることによって、円周方向に移動するときにのみ配管に接触させることができる。
【0010】
また、前記第1配管接触部は、前記配管の長手方向に移動するための第2クローラである。
このように、第1配管接触部を配管の長手方向に移動するための第2クローラとすることで、検査用台車を配管の長手方向に移動させることができる。そして、配管の長手方向について連続的に配管の検査をすることができるようになる。
【0011】
また、前記第2配管接触部は、前記配管の長手方向に移動するための第3クローラである。
このように、第2配管接触部を配管の長手方向に移動するための第3クローラとすることで、検査用台車を配管の長手方向に移動させることができる。そして、配管の長手方向について連続的に配管の検査をすることができるようになる。
【0012】
また、前記検査装置は、中性子水分計である。
このように、本体に収容される検査装置を中性子水分計とすることで、配管の断熱材に含まれる水分量を計測することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、2つのアーム部がアーム収容部から延びるときにおける曲率軌道の曲率中心が、配管の中心よりも本体側にあるようにすることで、検査用台車の配管に対する開口部を広くすることができ、検査用台車を効率的に配管周囲に配置することができる。そして、容易に配管の状態の検査することができる。
【0014】
また、上述のような構成とすることにより、検査用台車が逆さまになり配管から脱落し易い状況となった場合であっても、重力をアームが配管を締めこむように作用させることができる。よって、検査用台車は配管から脱落することなく、安全性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態における検査用台車の斜視図である。
【図2】アーム収容状態における検査用台車の正面図である。
【図3】アーム伸張状態における検査用台車の正面図である。
【図4】アーム20のアーム収容部11における摺動について説明する斜視図である。
【図5】円周方向移動用のクローラ30の説明図である。
【図6】第1クローラ32の断面図である。
【図7】長手方向移動用クローラアセンブリ40の断面図である。
【図8】検査用台車1の配管110への設置方法について説明する図である。
【図9】検査用台車1の円周方向の移動について説明する図である。
【図10】アーム20が配管を保持した状態を示す図である。
【図11】検査用台車1の長手方向の移動について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本実施形態における検査用台車1は、配管を抱え込むように保持し、配管の長手方向に移動しつつ、配管における水分量を計測するための台車である。ここで、配管とは、配管自体を指すこともあるが、配管を取り巻く断熱材を含んだ状態の配管のことをいう。よって、本実施形態における検査用台車1は、配管と断熱材との間における水分量を計測することに用いられる。以下、検査用台車1の概略について説明し、その後に各部の詳細と検査用台車1の動作について説明する。
【0017】
図1は、本実施形態における検査用台車1の斜視図である。図には、検査用台車1のメインフレーム10、アーム収容部11、検査装置収容部12、アーム20、円周方向移動用クローラ30(第1クローラを含む)、第2クローラ42、第3クローラ43、及び、中性子水分計90が示されている。
【0018】
メインフレーム10には、アーム収容部11及び検査装置収容部12が設けられている。また、メインフレーム10には、円周方向移動用クローラ30と第3クローラ43が取り付けられる。
【0019】
アーム収容部11は、アーム20を摺動可能に収容するためにメインフレーム10の側部に設けられる。アーム収容部11は、後述するように、アーム20を曲線軌道に沿って収容できるように曲線形状を有している。検査装置収容部12は、例えば後述する中性子水分計90を収容するためにメインフレーム10の上部に設けられる。
【0020】
アーム20は、アーム収容部11に収容されることができ、かつ、アーム収容部11から摺動可能に伸張が可能なアームである。アーム20は、配管に設置される前においてアーム収容部11に収容されており、配管に設置されるときにアーム収容部11から延び、配管を保持する。
【0021】
円周方向移動用クローラ30は、必要なときに第1クローラ32を配管に接触させ、検査用台車1を配管の円周方向に移動させる。第2クローラ42は、アーム20の先端部に取り付けられたクローラであって、配管に接触して検査用台車1を配管の長手方向に移動させる。第2クローラ50は、メインフレーム1に取り付けられたクローラであって、配管に接触して検査用台車1を配管の長手方向に移動させる。
【0022】
中性子水分計90は、配管と配管に巻かれた断熱材との間における水分量を測定するための装置である。中性子水分計90は、線源から高エネルギを有する高速中性子を放出する。高速中性子は、質量の最も小さい水素原子と衝突するとエネルギを失い、低速の熱中性子となる。熱中性子へと変換される変化量は、測定対象物中の水素量に比例する。中性子水分計90は、この熱中性子だけを選択的に検出するセンサを有しており、熱中性子の検出量に基づいて水分量を計測できるようになっている。
【0023】
図2は、アーム収容状態における検査用台車1の正面図である。図には、アーム20がアーム収容部11に収容されているときにおける検査用台車1の高さHsが示されている。このように、アーム20がアーム収容部11に収容されることにより、検査用台車1の高さを低くすることができる。そして、後述するように、配管間の隙間が狭い場合であっても、検査用台車1を配管に設置することができるようになっている。
【0024】
図3は、アーム伸張状態における検査用台車1の正面図である。図には、アーム20がアーム収容部11から延びているときにおける検査用台車1の様子が示されている。また、このときの検査用台車1の高さHLが示されている。
【0025】
アーム20がアーム収容部11から延びると、アーム20に取り付けられている第2クローラ42が配管に接触する。そうすると、アーム20が配管を抱え込むことができ、検査用台車1が配管から外れることのないようにすることができる。また、このとき、第2クローラ42と第3クローラ43が共に配管表面に接触する。このため、第2クローラ42と第3クローラ43を作動させることによって、検査用台車1を配管の長手方向に移動させることができる。
【0026】
図4は、アーム20のアーム収容部11における摺動について説明するための斜視図である。図には、アーム20をメインフレーム10に対して移動させるための、スライド駆動モータ111、レール112、及び、スライダ113が示されている。
【0027】
スライド駆動モータ111の出力軸にはピニオンギヤが取り付けられている。また、アーム20には、スライド駆動モータ111のピニオンギヤに噛み合うようなギヤが形成されている。そして、ラックアンドピニオンによりアーム20を移動可能としている。
【0028】
メインフレーム10のアーム収容部11には、スライダ113がガイドされるレール112が設けられている。アーム20にはスライダ113が形成されている。このようにすることで、スライド駆動モータ111が作動することによって、アーム20がレール112に沿ってアーム収容部11に収容されること、及び、アーム収容部11から延びることを可能としている。
【0029】
このような、スライド駆動モータ111,レール112,及び、スライダ113の組が、メインフレーム10の4箇所に設けられる。そして、4つのスライド駆動モータ111が同期して駆動されることにより、2つのアーム20を同時にアーム収容部11へ収容させること、及び、アーム収容部11から延びることを可能にしている。
【0030】
図5は、円周方向移動用クローラ30の説明図である。円周方向移動用クローラ30は、上下移動ユニット31と第1クローラ32とからなる。上下移動ユニット31は、第1クローラ32をメインフレーム10に対して上下方向に移動させるためのユニットである。また、第1クローラ32は、検査用台車1を配管の円周方向に移動するためのクローラである。
【0031】
上下駆動ユニット31は、第1上下移動用フレーム311A、第2上下移動用フレーム311B、上下移動用モータ312、第1歯車313、第2歯車314、第1駆動プーリー315、第1従動プーリー315B、第1動力伝達ベルト316、回転ネジ317、及び、移動用ブロック318からなる。
【0032】
第1上下移動用フレーム311Aには、上下移動用モータ312が取り付けられている。上下移動用モータ312の出力軸には、第1歯車313が固定される。第2歯車314と第1駆動プーリー315Aは、回転ネジ317の軸と一体に回転可能に取り付けられる。そして、第2歯車314は第1歯車313と噛み合う位置に配置されている。
【0033】
第2上下移動用フレーム311B側の構成は上下移動用モータ312、第1歯車313、及び、第2歯車314が上記構成から除かれたものとなっている。また、第2上下移動用フレーム311B側の回転ネジ317の軸には、第1従動プーリー315Bが一体に回転可能なように取り付けられている。そして、第1駆動プーリー315Aと第1従動プーリー315Bには、第1動力伝達ベルト316が架け渡されている。
【0034】
移動用ブロック318には回転ネジ317と同じピッチのネジ孔が形成されている。このネジ孔に回転ネジ317が組み付けられ、さらに、移動用ブロック318は、上下移動用フレーム311A、Bの壁面に当接する。そして、回転ネジ317が回転することにより、移動用ブロックが上下方向に移動するようになっている。
【0035】
このようにすることにより、上下移動用モータ312が駆動されることにより、移動用ブロックが上下方向に移動し、第1クローラ32も上下方向に移動する。
【0036】
図6は、第1クローラ32の断面図である。第1クローラ32は、クローラユニットフレーム321、第1クローラ用モータ322、連結部材323、ウォームギヤ付き軸324、ベアリング325、第2駆動プーリー326A、第2従動プーリー326B、第1歯付きベルト327、及び、ウォームホイール328からなる。
【0037】
クローラユニットフレーム321には、第1クローラ用モータ322が取り付けられている。第1クローラ用モータ322の出力軸には、連結部材323を介して、ウォームギヤ付き軸324が取り付けられている。ウォームギヤ付き軸324は、軸の一部にウォームギヤが形成されている。
【0038】
ウォームギヤ付き軸はベアリング325により支持される。そして、ウォームギヤ付き軸324のウォームギヤの部分がウォームホイール328に噛み合うようにされている。ウォームホイール328は第2駆動プーリー326Aの軸と一体に回転可能となるように取り付けられる。また、クローラユニットフレーム321には、第2従動プーリー326Bが回転可能に取り付けられる。そして、第2駆動プーリー326Aと第2従動プーリー326Bに第1歯付きベルト327が架け渡される。このようにすることによって、第1クローラ用モータ322の動力が第1歯付きベルト327に伝達される。
【0039】
第1歯付きベルト327は、配管接触側において、クローラユニットフレーム321よりも外部にせり出しており、そのため第1歯付きベルト327の外周側が配管に接触可能となっている。尚、第1歯付きベルト327の配管接触側には、スリットが形成されている。
【0040】
図7は、長手方向移動用クローラアセンブリ40の断面図である。第2クローラ42及び第3クローラ43は、この長手方向移動用クローラアセンブリ40からなる。第2クローラ42と第3クローラ43との違いは、取り付けられる対象物の違いである。
【0041】
長手方向移動用クローラアセンブリ40は、クローラフレーム41、第2クローラ用モータ44、クローラとしての第2歯付きベルト45、第3駆動プーリー46A、第3従動プーリー46B、第1小歯車47A、第2小歯車47B、すぐばかさ歯車48、及び、第2動力伝達ベルト49からなる。ここで、第3駆動プーリー46A及び第3従動プーリー46Bは、歯付きプーリーとなっている。
【0042】
第2クローラ用モータ44の出力軸には、すぐばかさ歯車48が取り付けられている。すぐばかさ歯車48のうちの1つの歯車は第2小歯車47Bの回転軸と一体に回転可能に取り付けられる。第2動力伝達ベルト49は、第1小歯車47Aと第2小歯車47Bに架け渡されている。尚、第2動力伝達ベルト49も歯付きのベルトとなっており、動力伝達効率が高められている。
【0043】
第1小歯車47Aは、第3駆動プーリー46Aの回転軸と一体に回転可能に取り付けられる。第2歯付きベルト45は、第3駆動プーリー46Aと第3従動プーリー46Bに架け渡される。このようにすることによって、第2クローラ用モータ44の動力が第2歯付きベルト45に伝達できる。
【0044】
第2歯付きベルト45は、長手方向用クローラアセンブリ40における配管接触側において、クローラフレーム41よりも外部にせり出しており、そのため第2歯付きベルト45の外周側が配管に接触可能となっている。また、第2歯付きベルト45の配管接触面には、スリットが形成されている。このようにすることにより、第2クローラ用モータ44が駆動されることにより、第2歯付きベルト45に動力が伝達され、検査用台車1を配管の長手方向に移動させることができる。
【0045】
図8は、検査用台車1の配管110への設置方法について説明する図である。図には、高所に配置された配管110と、高さ方向に移動される作業床101を有する高所作業車100が示されている。また、作業床101からは、横方向に伸縮可能な水平移動部材102が延びている。
【0046】
検査用台車1には、作業床101に設けられた操縦装置からの各種信号及び電力を供給するためのケーブルが接続されている。これにより、アーム20の収容及び伸張、円周方向移動用クローラ30における第1クローラの上下移動及び第1クローラの駆動、第2クローラ42の駆動、及び、第3クローラ43の駆動について遠隔操作可能になっている。また、検査装置である中性子水分計90の遠隔操作も可能となっている。
【0047】
検査用台車1は水平移動部材102の先端に着脱可能に取り付けられている。高所作業車100によって作業床101の高さが調整され、また、水平移動部材102の位置が調整されることによって、検査用台車1は配管110の上部に移動させられる。そして、再度、検査用台車1の高さ方向の位置が調整され、配管110の頂部に乗せられる。この際、検査用台車1のアーム20はアーム収容部11に収容されているので、検査用台車1の高さは前述のようにHsとなり低くなっている。そのため、配管同士の間隔が狭い場合や、配管と梁との間隔が狭い場合であっても、検査用台車1を容易に配管の上部に移動させることができる。
【0048】
その後、水平移動部材102の先端から検査用台車1が切り離される。一方、遠隔操作を行うために作業床101から延びるケーブルについては切り離されない。このようにすることで、検査用台車1には電力及び各種信号が供給される。検査用台車1はアーム20を延ばし配管110を保持する。そして、配管110を保持しつつ自走して検査を行うことができる。尚、作業床101から延びるケーブルを切り離さないこととしたが、検査用台車1にバッテリー及び無線装置を搭載することによってケーブルを切り離す構成とすることもできる。
【0049】
ここでは、配管110の頂部に設置する場合について説明を行ったが、配管の底部に設置する場合についてもほぼ同様に行うことができる。
【0050】
図9は、検査用台車1の円周方向の移動について説明する図である。上述のように、配管110上に検査用台車1が乗せられても、配管110の頂部に対して検査用台車1が傾いた位置に配置される場合がある。このように検査用台車1が配管110の円周方向に移動する必要がある場合おいて、前述の上下移動ユニット31が作動させられ、第1クローラ32が配管110の中心に向かって移動させられる。そして、第1クローラ32が駆動させられ、検査用台車1を配管110の円周方向に移動させることができる。
【0051】
検査用台車1を配管110に対して適切な位置へ移動させると、再度、上下移動ユニット31が作動させられ、第1クローラ32がメインフレーム10方向に移動する。このようにすることによって、後述するような配管断熱材カバーのバンドのジョイント箇所があった場合でも、ジョイント箇所に円周方向移動用クローラ30の第1クローラ32を接触しないようにすることができる。
【0052】
図10は、アーム20が配管を保持した状態を示す図である。図には、アーム20がアーム収容部11から延び、第2クローラ42と第3クローラ43とが配管110を保持する様子が示されている。
【0053】
また、図には、配管110の中心Pcと配管110の半径rpが示されている。また、図には、アーム20が延びるときの曲線軌道Caが破線で示されている。本実施形態において、アーム20は中心をMcとした半径rmの円軌道に沿って移動する。ここで、アーム20の軌道Caの半径rmと配管110の半径rpは、rm>rpの関係がある。また、曲線軌道Caの中心Mcは配管110の中心Pcよりも検査用台車1のメインフレーム10(本体)側にある。
【0054】
このようにすることによって、配管110に設置するための開口幅Wmを配管110の直径よりも大きくすることができ、容易に検査用台車1を配管110に設置することができるようになる。また、アーム20を延ばしたときには、配管110を抱え込むように保持することができるようになる。
【0055】
また、図に示したようにアーム20が延びきったときにおいて、第2クローラ42の配管接触部としての第2歯付きベルト45の面からの法線は、配管110の中心にほぼ一致する。また、第3クローラ43の配管接触部としての第2歯付きベルト45の面からの法線は、配管110の中心にほぼ一致する。
【0056】
このようにすることによって、アーム20が延びきったときにおいて、第2クローラ42と第3クローラ43における接触面が配管110に確実に接触する。そして、検査用台車1は配管110を確実に保持することができる。
【0057】
ここでは、配管110の頂部に検査用台車1を設置する方法について説明を行ったが、前述のように検査用台車1を逆さにして配管110の底部に設置することもできる。このようにすることによって、配管の底部付近における断熱材の水分量も計測することができるようになる。
【0058】
尚、検査用台車1を配管110に設置する際、アーム20を完全に延ばしきらないようにしてもよい。断熱材を含む配管110には、断熱材のカバーには、カバー同士をつなぎ止めるためのバンドを有する場合があるが、このバンドのジョイント箇所の径は配管直径よりも大きくなってしまう。よって、アーム20を延ばしきらずに、第2クローラ42が配管110に接触しないようにして、検査用台車1が配管110の長手方向に移動する際にも、前述のバンドのジョイント箇所を乗り越えることができるようにしてもよい。
【0059】
図11は、検査用台車1の長手方向の移動について説明する図である。前述のように配管110に設置された検査用台車1は、配管110の長手方向に移動することができる。そして、中性子水分計90により、配管110の断熱材における水分量が計測される。
【0060】
具体的には、例えば、検査用台車1は配管110の長手方向について300mm移動する毎に停止する。そして、停止しているときに、中性子水分計90によって、水分量が計測され記録される。このような動作が繰り返されることによって、配管110の断熱材の水分量が計測される。
【0061】
検査用台車1が配管110の頂部に設置されているときにおいて、配管110の頂部の±35度の範囲における水分量が計測される。また検査用台車1が配管110の底部に設置されているときにおいて、配管110の底部の±35度の範囲における水分量が計測される。これは、経験上、配管110に錆が生ずるときには配管の頂部又は底部に生ずることが分かっているためである。
【0062】
ところで、架台には鉛直方向の梁が存在し、この梁は例えば6m毎に現れる。そうすると、検査用台車1がこれらの梁に干渉し、梁がある箇所について移動ができない場合も生ずる。よって、この梁のために、その都度、検査用台車1を配管110から取り外し、梁を超え、再度配管に設置するという作業が必要になる。しかしながら、本実施形態における検査用台車1は、容易に配管110に設置し、かつ、配管110を確実に保持することができるので、このような作業を効率的に行うことができる。
【0063】
尚、中性子水分計90を上下方向に微調整できるような機構を設けることとしてもよい。このようにすることによって、水分量の計測をより正確に行えるようになる。また、本実施形態では、検査装置収容部12に中性子水分計90を収容することとして、断熱材に含まれる水分量を計測することとしたが、他の計測装置を収容することとしてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 検査用台車、
10 メインフレーム、
11 アーム収容部、
111 スライド駆動モータ、112 レール、
12 検査装置収容部、
20 アーム、
30 円周方向移動用クローラ、
31 上下移動ユニット、
311A 第1上下移動用フレーム、311B 第2上下移動用フレーム、
312 上下移動用モータ、313 第1歯車、314 第2歯車、
315A 第1駆動プーリー、315B 第1従動プーリー、
316 第1動力伝達ベルト、317 回転ネジ、318 移動用ブロック、
32 第1クローラ、
321 クローラユニットフレーム、322 第1クローラ用モータ、
323 連結部材、324 ウォームギヤ付き軸、325 ベアリング、
326A 第2駆動プーリー、326B 第2従動プーリー、
327 第1歯付きベルト、328 ウォームホイール、
40 長手方向移動用クローラアセンブリ、
42 第2クローラ、43 第3クローラ、
41 クローラフレーム、44 第2クローラ用モータ、45 第2歯付きベルト、
46A 第3駆動プーリー、46B 第3従動プーリー、
47A 第1小歯車、47B 第2小歯車、48 すぐばかさ歯車、
49 第2動力伝達ベルト、
90 中性子水分計、
100 高所作業車、101 作業床、102 水平移動部材、
110 配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管の検査に用いられる検査用台車であって、
前記配管に接する第1配管接触部を備える2つのアーム部と、
前記2つのアーム部を摺動可能に収容するアーム収容部と、前記配管に接する2つの第2配管接触部と、前記配管を検査するための検査装置を収容する装置収容部と、を備える本体部と、を備え、
前記2つのアーム部が前記アーム収容部から延びるときの軌道が曲線軌道であり、該曲線軌道の曲率中心が前記配管の中心よりも前記本体側にあり、
前記第2配管接触部は前記配管の前記本体側の半円に接し、前記本体部から前記アーム部が延びたときの前記第1配管接触部は前記配管の前記本体側とは反対側の半円に接する、検査用台車。
【請求項2】
前記アーム部が前記アーム収容部から延びたときの前記第1配管接触部の面からの法線と、前記第2配管接触部の面からの法線とが前記配管の中心で交差する、請求項1に記載の検査用台車。
【請求項3】
前記本体部は、さらに、前記配管の円周方向に移動するための第1クローラを備える、請求項1又は2に記載の検査用台車。
【請求項4】
前記第1クローラは、前記配管に接触及び非接触となるために、前記本体側から前記配管の中心方向に移動可能である、請求項3に記載の検査用台車。
【請求項5】
前記第1配管接触部は、前記配管の長手方向に移動するための第2クローラである、請求項1〜4のいずれかに記載の検査用台車。
【請求項6】
前記第2配管接触部は、前記配管の長手方向に移動するための第3クローラである、請求項1〜5のいずれかに記載の検査用台車。
【請求項7】
前記検査装置は、中性子水分計である、請求項1〜6のいずれかに記載の検査用台車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−203525(P2010−203525A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49691(P2009−49691)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、経済産業省、地域イノベーション創出研究開発事業「仮設足場を不要とする化学プラント配管外面腐食診断システム開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000233044)株式会社日立エンジニアリング・アンド・サービス (276)
【出願人】(598163064)学校法人千葉工業大学 (101)
【Fターム(参考)】